JP7279842B2 - ポリエステル系樹脂、接着剤組成物及び接着剤 - Google Patents
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Description
(2)多価カルボン酸類由来の構造単位と多価アルコール類由来の構造単位を含むポリエステル系樹脂であって、酸価が3mgKOH/g以上であり、温度23℃、相対湿度50%RH環境下での10GHzにおける誘電正接(α)が0.0050以下であるポリエステル系樹脂。
(3)多価カルボン酸類由来の構造単位と多価アルコール類由来の構造単位を含むポリエステル系樹脂であって、ガラス転移温度(Tg)が-5℃以上であり、酸価が3mgKOH/g以上であり、温度23℃、相対湿度50%RH環境下での10GHzにおける誘電正接(α)が0.0050以下であるポリエステル系樹脂。
(4)多価カルボン酸類由来の構造単位と多価アルコール類由来の構造単位を含むポリエステル系樹脂であって、温度23℃、相対湿度50%RH環境下での10GHzにおける誘電正接(α)が0.0030以下であるポリエステル系樹脂。
[1] 多価カルボン酸類由来の構造単位と多価アルコール類由来の構造単位を含むポリエステル系樹脂であって、ガラス転移温度(Tg)が-5℃以上であり、温度23℃、相対湿度50%RH環境下での10GHzにおける誘電正接(α)が0.0050以下であるポリエステル系樹脂。
[2] 多価カルボン酸類由来の構造単位と多価アルコール類由来の構造単位を含むポリエステル系樹脂であって、酸価が3mgKOH/g以上であり、温度23℃、相対湿度50%RH環境下での10GHzにおける誘電正接(α)が0.0050以下であるポリエステル系樹脂。
[3] 多価カルボン酸類由来の構造単位と多価アルコール類由来の構造単位を含むポリエステル系樹脂であって、ガラス転移温度(Tg)が-5℃以上であり、酸価が3mgKOH/g以上であり、温度23℃、相対湿度50%RH環境下での10GHzにおける誘電正接(α)が0.0050以下であるポリエステル系樹脂。
[4] 多価カルボン酸類由来の構造単位と多価アルコール類由来の構造単位を含むポリエステル系樹脂であって、温度23℃、相対湿度50%RH環境下での10GHzにおける誘電正接(α)が0.0030以下であるポリエステル系樹脂。
[5] 多価カルボン酸類が、芳香族多価カルボン酸類を含む[1]~[4]のいずれかに記載のポリエステル系樹脂。
[6] 多価カルボン酸類が、酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸類を含む[1]~[5]のいずれかに記載のポリエステル系樹脂。
[7] 多価アルコール類が、ダイマージオールを含む[1]~[6]のいずれかに記載のポリエステル系樹脂。
[8] 多価カルボン酸類及び多価アルコール類の少なくとも一方が、縮合多環式芳香族化合物を含む[1]~[7]のいずれかに記載のポリエステル系樹脂。
[9] 非結晶性である[1]~[8]のいずれかに記載のポリエステル系樹脂。
[10] [1]~[9]のいずれかに記載のポリエステル系樹脂を含有することを特徴とする接着剤組成物。
[11] 更に、硬化剤を含有する[10]の接着剤組成物。
[12] 硬化剤の含有量が、ポリエステル系樹脂100重量部に対して、30重量部以下である[10]又は[11]記載の接着剤組成物。
[13] [10]~[12]のいずれかに記載の接着剤組成物が硬化されてなる接着剤。
[14] 電子材料部材の貼り合せに用いられる[13]記載の接着剤。
[15] 電子材料部材が、フレキシブル銅張積層板、カバーレイ及びボンディングシートから選ばれる少なくとも1種である[14]記載の接着剤。
本発明者は、ポリエステル系樹脂を構成するモノマーの組成等を調製し、更に、酸価、ガラス転移温度(Tg)等を最適化することにより、従来のポリエステル系樹脂より更に低誘電率及び低誘電正接であり、硬化後の初期接着性、更には湿熱環境下での長期耐久性にも優れることを見出し、本発明を完成させたものである。
なお、本発明において、化合物名の後に付された「類」は当該化合物に加え、当該化合物の誘導体をも包括する概念である。例えば、「カルボン酸類」との用語は、カルボン酸に加え、カルボン酸塩、カルボン酸無水物、カルボン酸ハロゲン化物、カルボン酸エステル等のカルボン酸誘導体も含むものである。
なお、本発明において、「x及び/又はy(x,yは任意の構成又は成分)」とは、xのみ、yのみ、x及びy、という3通りの組合せを意味するものである。
ポリエステル系樹脂は、多価カルボン酸類由来の構造単位と多価アルコール類由来の構造単位を分子中に含むものであり、好ましくは、多価カルボン酸類と多価アルコール類とをエステル結合させて得られるものである。
多価カルボン酸類における多価カルボン酸としては、例えば、後述する芳香族多価カルボン酸;後述する酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸;1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸とその酸無水物等の脂環族多価カルボン酸;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の脂肪族多価カルボン酸を挙げることができる。多価カルボン酸類は1種又は2種以上を用いることができる。
これらのうちでも誘電特性の観点から、多環式芳香族多価カルボン酸類が好ましく、中でも縮合多環式芳香族多価カルボン酸類が特に好ましく、縮合多環式芳香族多価カルボン酸類の中でも、ナフタレンジカルボン酸ジメチルが特に好ましい。
また、単環式芳香族多価カルボン酸類の中ではテレフタル酸、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸、イソフタル酸ジメチルが好ましい。
また、結晶性を下げて溶剤溶解後の安定性を確保するためには、複数種の多価カルボン酸類を使用することが好ましい。
芳香族多価カルボン酸類の含有量(モル%)=(芳香族多価カルボン酸類(モル)/多価カルボン酸類(モル))×100
また、酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸類のうち芳香族多価カルボン酸類以外のものとしては、例えば、水添トリメリット酸無水物等が挙げられる。
多価アルコール類としては、例えば、ダイマージオール類、ビスフェノール骨格含有モノマー、脂肪族多価アルコール、脂環族多価アルコール、芳香族多価アルコールが挙げられる。多価アルコール類は1種又は2種以上を用いることができる。
ダイマージオール類としては、例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸等から誘導されるダイマー酸類(炭素数36~44のものを主とする)の還元体であるダイマージオール類、及びそれらの水素添加物等が挙げられる。なかでもポリエステル系樹脂の製造時におけるゲル化抑制の点から、水素添加物が好ましい。
側鎖を有する多価アルコールの含有量としては、多価アルコール類全体に対して、10モル%以上であることが好ましく、より好ましくは20モル%以上、更に好ましくは30モル%以上である。なお、上限は95モル%である。また、ポリエステル系樹脂全体に対して、5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、更に好ましくは15重量%以上である。なお、上限は50重量%である。
側鎖を有する多価アルコールの含有量が少なすぎると、溶剤溶解性及び得られるポリエステル系樹脂溶液の溶液安定性が低下する傾向がある。
ポリエステル系樹脂を構成する化合物は、上記多価カルボン酸類及び多価アルコール類の少なくとも一方が、縮合多環式芳香族化合物を含有していることが低誘電正接の点から好ましい。縮合多環式芳香族化合物は、多価カルボン酸類の縮合多環式芳香族化合物として、例えば、ナフタレンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸ジメチル、アントラセンジカルボン酸等が挙げられ、なかでも、価格や入手容易性の観点からナフタレンジカルボン酸類が好ましく、反応性の点からナフタレンジカルボン酸ジメチルがより好ましい。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。また、多価アルコール類の縮合多環式芳香族化合物としては、例えば、ビスフェノールフルオレンやビスフェニルフェノールフルオレン及びそのエチレンオキサイド、プロピロンオキサイド付加物等の誘導体が挙げられ、なかでも、エチレンオキサイド付加物が好ましく、ビスフェノキシエタノールフルオレン、ビスフェニルフェノキシエタノールフルオレンが特に好ましい。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
芳香環含有量とは、ポリエステル系樹脂中における芳香環を構成する原子が占める重量割合である。なお、ビスフェノール骨格由来の2つの芳香環部分については、低誘電特性に寄与しないため本発明における芳香環含有量には含めない。ビスフェノール骨格由来の2つの芳香環部分が低誘電正接に寄与しない理由は定かではないが、例えば立体的要因からビスフェノール骨格由来の2つの芳香環は芳香環同士のスタッキングに関与できないためと推測される。
芳香環含有量(重量%)=A1×(a11×m11+a12×m12+a13×m13・・・)/(x1-y1)+A2×(a21×m21+a22×m22+a23×m23・・・)/(x2-y2)+A3×(a31×m31+a32×m32+a33×m33・・・)/(x3-y3)・・・
A:ポリエステル系樹脂中における各モノマー由来の構造単位の含有量(重量%)
a:各モノマー中の芳香環を構成する原子の原子量(例えば、炭素であれば12、窒素であれば14、等である。また原子が2種以上存在する場合には、上式のa11、a12、a13、・・・に相当し、例えば、a11:炭素、a12:窒素、a13:酸素となる。)
m:各モノマー中の芳香環を構成する原子の数
x:各モノマーの分子量
y:各モノマー中の脱離基の式量の総和
なお、ビスフェノール骨格由来の2つの芳香環部位については、上記理由のとおり、芳香環を構成する原子として含めない(m=0として扱う)。
なお、前述のとおり、多価カルボン酸類としては芳香族多価カルボン酸類が湿熱環境下での長期耐久性、低誘電正接の観点から好ましいため、脂環骨格の導入は多価アルコール類側で行うことが好ましい。
脂環含有量とは、ポリエステル系樹脂中における脂環を構成する原子が占める重量割合である。
脂環含有量=A1×(a11×n11+a12×n12+a13×n13・・・)/(x1-y1)+A2×(a21×n21+a22×n22+a23×n23・・・)/(x2-y2)+A3×(a31×n31+a32×n32+a33×n33・・・)/(x3-y3)・・・
A:ポリエステル系樹脂中における各モノマー由来の構造単位の含有量(重量%)
a:各モノマー中の脂環を構成する原子の原子量(例えば、炭素であれば12、窒素であれば14、等である。また原子が2種以上存在する場合には、上式のa11、a12、a13、・・・に相当し、例えば、a11:炭素、a12:窒素、a13:酸素となる。)
n:各モノマー中の脂環を構成する原子の数
x:各モノマーの分子量
y:各モノマー中の脱離基の式量の総和
また、3官能以上の多価アルコール類としては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
3官能以上の多価カルボン酸類及び3官能以上の多価アルコール類は、それぞれ1種又は2種以上を用いることができる。
本発明に用いるポリエステル系樹脂は周知の方法により製造することができる。例えば、多価カルボン酸類と多価アルコール類とを、必要に応じて触媒の存在下で、エステル化反応に付してポリエステル系樹脂を得て、更に酸価を導入することにより製造することができる。
解重合における温度は、通常200~260℃であり、反応時間は通常10分~3時間である。
本発明に用いるポリエステル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-5℃以上であり、好ましくは0~70℃、より好ましくは5~60℃、特に好ましくは10~50℃、更に好ましくは12~40℃、最も好ましくは15~30℃である。
ガラス転移温度(Tg)が低すぎると、初期接着性やタックフリー性が不充分となる。なお、ガラス転移温度(Tg)が高すぎると、初期接着性や屈曲性が不充分になる傾向がある。
ガラス転移温度(Tg)は示差走査熱量計を用いて測定することにより求めることができる。なお、測定条件は、測定温度範囲-70~140℃、温度上昇速度10℃/分である。
本発明に用いるポリエステル系樹脂の酸価は3mgKOH/g以上であり、好ましくは4~60mgKOH/g、より好ましくは5~40mgKOH/g、特に好ましくは6~30mgKOH/g、更に好ましくは7~20mgKOH/gである。
酸価が低すぎると、接着剤組成物にポリエポキシ系化合物等の硬化剤を含有させた場合、硬化剤との架橋点が不足し架橋度が低くなるので、耐熱性が不充分となる。また、酸価が高すぎると、吸湿性や湿熱環境下での長期耐久性が低下したり、硬化時に多量の硬化剤を必要とすることから、近年要求されることが多くなった低誘電特性が得にくい傾向がある。
酸価(mgKOH/g)は、ポリエステル系樹脂1gをトルエン/メタノールの混合溶剤(例えば、体積比でトルエン/メタノール=9/1)30gに溶解し、JIS K0070に基づき中和滴定により求めることができる。
なお、本発明において、ポリエステル系樹脂の酸価は、樹脂中におけるカルボキシ基の含有量に起因するものである。
本発明に用いるポリエステル系樹脂のエステル結合濃度は、8mmol/g以下であることが好ましく、より好ましくは2~7.5mmol/g、更に好ましくは2.5~7mmol/g、特に好ましくは3~6.5mmol/g、殊に好ましくは3.5~6mmol/gである。
エステル結合濃度が高すぎると、低吸湿性が不充分となる傾向があり、エステル結合濃度が低すぎると、初期接着性が不充分となる傾向がある。
エステル結合濃度(mmol/g)とは、ポリエステル系樹脂1g中のエステル結合のモル数のことであり、例えば、仕込み量からの計算値で求められる。かかる計算方法は、多価カルボン酸類と多価アルコール類の各仕込み量のうち、より少ない方のモル数を樹脂全体重量で割った値であり、計算式の例を以下に示す。
なお、多価カルボン酸類と多価アルコール類の各仕込み量が同モル量の場合には、下記のどちらの計算式を用いてもよい。
また、モノマーとして、カルボキシ基と水酸基を両方持ったものを使ったり、カプロラクトン等からポリエステルを作製する場合等は、計算方法を適宜変えることとなる。
エステル基濃度(mmol/g)=〔(A1/a1×m1+A2/a2×m2+A3/a3×m3・・・)/Z〕×1000
A:多価カルボン酸類の仕込み量(g)
a:多価カルボン酸類の分子量
m:多価カルボン酸類の1分子あたりのカルボン酸基の数
Z:出来上がり重量(g)
エステル基濃度(mmol/g)=〔(B1/b1×n1+B2/b2×n2+B3/b3×n3・・・)/Z〕×1000
B:多価アルコール類の仕込み量(g)
b:多価アルコール類の分子量
n:多価アルコール類の1分子あたりの水酸基の数
Z:出来上がり重量(g)
その他極性基としては、例えば、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基、エーテル基、カーボネート基等が挙げられる。
エーテル基としては、例えば、アルキルエーテル基やフェニルエーテル基が挙げられ、低吸湿性や湿熱環境下での長期耐久性の点から特にアルキルエーテル基の濃度を低くすることが好ましい。アルキルエーテル基濃度としては、3mmol/g以下であることが好ましく、より好ましくは2mmol/g以下、特に好ましくは1.5mmol/g以下、更に好ましくは1mmol/g以下であり、最も好ましくは0.5mmol/g以下である。また、フェニルエーテル基濃度としては、5mmol/g以下であることが好ましく、より好ましくは4mmol/g以下、特に好ましくは3mmol/g以下、更に好ましくは2.5mmol/g以下である。
カーボネート基濃度としては、3mmol/g以下であることが好ましく、より好ましくは2mmol/g以下、特に好ましくは1mmol/g以下、更に好ましくは0.5mmol/g以下であり、最も好ましくは0.2mmol/g以下である。
本発明に用いるポリエステル系樹脂のピークトップ分子量(Mp)は、5000~150000が好ましく、より好ましくは10000~100000、特に好ましくは15000~70000、更に好ましくは25000~50000である。
ピークトップ分子量(Mp)が低すぎると、低吸湿性、タックフリー性、湿熱環境下での長期耐久性が不充分となったり、フレキシブル銅張積層板やフレキシブルプリント基板等のフレキシブル積層板を作製する際のプレス加工時に接着剤層のポリエステル系樹脂が流動し染み出してしまう等の不具合が生じる傾向がある。また、ピークトップ分子量(Mp)が高すぎると、初期接着性が不充分となったり、塗布時の溶液粘度が高すぎて、均一な塗膜が得られ難くなる傾向がある。
重量平均分子量(Mw)が低すぎると、低吸湿性、タックフリー性、湿熱環境下での長期耐久性が不充分となったり、フレキシブル銅張積層板やフレキシブルプリント基板等のフレキシブル積層板を作製する際のプレス加工時に接着剤層のポリエステル系樹脂が流動し染み出してしまう等の不具合が生じる傾向がある。また、重量平均分子量(Mw)が高すぎると、初期接着性が不充分となったり、塗布時の溶液粘度が高すぎて、均一な塗膜が得られ難くなる傾向がある。
ピークトップ分子量(Mp)及び重量平均分子量(Mw)は、高速液体クロマトグラフィー(東ソー社製、「HLC-8320GPC」)にてカラム(TSKgel SuperMultipore HZ-M(排除限界分子量:2×106、理論段数:16000段/本、充填剤材質:スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:4μm)の2本直列を用いて測定し、標準ポリスチレン分子量換算により求めることができる。
本発明に用いるポリエステル系樹脂の吸水率は、2重量%以下が好ましく、より好ましくは1重量%以下、特に好ましくは0.8重量%以下、更に好ましくは0.6重量%以下である。
吸水率が高すぎると湿熱耐久性、絶縁信頼性が低下したり、誘電特性が劣る傾向がある。なお、誘電特性に劣るとは、比誘電率や誘電正接の値が小さくならないこと、あるいは、値が大きくなることを意味するものである。
ポリエステル系樹脂溶液(硬化剤配合前)を離型フィルム上にアプリケーターで塗布、120℃で10分間乾燥し、ポリエステル系樹脂層の乾燥膜厚が65μmのシートを作製する。このシートを7.5cm×11cmのサイズに6枚切り出す。次に、切り出したシートの離型フィルムを剥がし、これらのシートを積層した後、シートの一方のポリエステル系樹脂層面をガラス板上にラミネートすることによりガラス板上に厚み390μmのポリエステル系樹脂層を有する試験板を得る。
このようにして得られる試験板を23℃の精製水に24時間浸漬させた後、取り出して表面の水気をふき取り、70℃で2時間乾燥させた。これらの各工程において必要な重量を測定して、下記式に従って重量変化から吸水率(重量%)を算出する。
吸水率(重量%)=(c-d)×100/(b-a)
a:ガラス板単独の重量
b:初期の試験板の重量
c:精製水から取り出して水気をふき取った直後の試験板の重量
d:70℃で2時間乾燥させた後の試験板の重量
(比誘電率(Dk))
本発明に用いるポリエステル系樹脂の温度23℃、相対湿度50%RH環境下での周波数10GHzにおける比誘電率は、2.8以下が好ましく、より好ましくは2.7以下、特に好ましくは2.6以下、更に好ましくは2.5以下である。上記比誘電率が高すぎると基板にした際の伝送速度が劣ったり伝送損失が大きくなる傾向がある。
本発明に用いるポリエステル系樹脂の温度23℃、相対湿度50%RH環境下での周波数10GHzにおける誘電正接は、0.0050以下であり、好ましくは0.0045以下、より好ましくは0.0040以下、特に好ましくは0.0035以下、更に好ましくは0.0030以下、殊に好ましくは0.0025以下、最も好ましくは0.002以下である。上記誘電正接が高すぎると基板にした際の伝送損失が大きくなる。
そして、誘電正接の非常に小さいポリエステル系樹脂は、高周波数領域での伝送損失を抑制できる点から、電子材料部材の貼り合わせ等に用いる接着剤の原料として非常に有用となる。
非結晶性は、示差走査熱量計により確認することができ、例えば、測定温度範囲-70~400℃、温度上昇速度10℃/分で測定した際に結晶融解による吸熱ピークが観測されないものを言う。なお、測定温度範囲や昇温速度はサンプルに応じて適宜変更することができる。
本発明の接着剤組成物は、硬化剤を更に含有することが好ましい。硬化剤を含有させることにより、ポリエステル系樹脂中の官能基とかかる官能基と反応する官能基を有する硬化剤とが反応し、硬化して、接着力や耐熱性、耐久性に優れた接着剤を得ることができる。
かかる硬化剤としては、例えば、ポリイソシアネート系化合物、ポリエポキシ系化合物等、ポリエステル系樹脂に含まれる水酸基及びカルボキシ基の少なくとも一方と反応する官能基を有する化合物が挙げられ、なかでも、半田耐熱性の点でポリエポキシ系化合物であることが好ましい。
かかる窒素原子含有ポリエポキシ系化合物の含有量が多すぎると、過度に剛直性が高くなり、接着性が低下する傾向にあり、また、接着シート保存中に架橋反応が進み易く、シートライフが低下する傾向にある。
当該当量が大きすぎると、初期接着性や低吸湿性が不充分となったり、誘電特性が劣ったりする傾向がある。また、小さすぎると、湿熱環境下での長期耐久性や半田耐熱性が不充分となる傾向がある。
COOHに対するエポキシの当量=(a÷WPE)/(AV÷56.1÷1000×b)
a:配合に用いたポリエポキシ系化合物の重量(g)
WPE:ポリエポキシ系化合物のエポキシ当量(g/eq)
AV:ポリエステル系樹脂の酸価(mgKOH/g)
b:配合に用いたポリエステル系樹脂の重量(g)
本発明の接着剤組成物は、ポリエステル系樹脂を少なくとも含有し、好ましくは、更に硬化剤を含有し、低誘電特性に優れ、低吸湿性、高接着性、湿熱環境下での長期耐久性に優れるという効果を奏する。
本発明の接着剤組成物には、その機能性の更なる向上を目的として、上記に挙げた成分以外のその他成分を含んでいてもよい。その他成分としては、例えば、無機フィラー、シランカップリング剤等のカップリング剤、紫外線防止剤、酸化防止剤、可塑剤、フラックス、難燃剤、着色剤、分散剤、乳化剤、低弾性化剤、希釈剤、消泡剤、イオントラップ剤、レベリング剤、触媒等が挙げられる。
本発明の接着剤組成物がその他成分を含有する場合、その他成分の含有量は、好ましくは70重量%以下であり、より好ましくは0.05~60重量%、特に好ましくは0.1~50重量%、更に好ましくは0.2~40重量%である。
本発明の接着剤は、上記接着剤組成物を硬化することにより得られ、初期接着性、低吸湿性、湿熱環境下での長期耐久性に優れるという効果を奏する。
本発明における「硬化」とは熱及び/又は光等により接着剤組成物を意図的に硬化させることを意味し、その硬化の程度は所望の物性、用途により制御することができる。硬化の程度は接着剤のゲル分率によって確認することができ、好ましくはゲル分率が50%以上、より好ましくは60%以上、特に好ましくは70%以上、更に好ましくは75%以上である。ゲル分率が低すぎると耐熱性や湿熱環境下での長期耐久性が不充分となる傾向がある。
なお、上記のゲル分率とは、接着剤をメチルエチルケトン中に23℃×24時間浸漬し、浸漬前の接着剤重量に対する不溶解の接着剤成分の重量百分率を意味する。
そのような触媒としては、例えば、2-メチルイミダゾールや1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール系化合物;トリエチルアミンやトリエチレンジアミン、N'-メチル-N-(2-ジメチルアミノエチル)ピペラジン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)-ノネン-5、6-ジブチルアミノ-1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7等の三級アミン類;及びこれらの三級アミン類をフェノールやオクチル酸、四級化テトラフェニルボレート塩等でアミン塩にした化合物;トリアリルスルフォニウムヘキサフルオロアンチモネートやジアリルヨードニウムヘキサフルオロアンチモナート等のカチオン触媒;トリフェニルフォスフィン等が挙げられる。これらのうち、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7や1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)-ノネン-5、6-ジブチルアミノ-1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7等の三級アミン類;及びこれらの三級アミン類をフェノールやオクチル酸、四級化テトラフェニルボレート塩等でアミン塩にした化合物が、熱硬化性及び耐熱性、金属への接着性、配合後の保存安定性の点で好ましい。
その際の配合量は、ポリエステル系樹脂100重量部に対して0.01~1重量部であることが好ましい。この範囲であればポリエステル系樹脂と硬化剤との反応に対する触媒効果が一段と増し、強固な接着性能を得ることができる。
本発明の接着剤は、初期接着性、低吸湿性、湿熱環境下での長期耐久性に優れるので、樹脂や金属等の各種材料からなる基材の接着に有効であり、特に、金属層とプラスチック層との積層板を作製するための接着剤、例えば、電子材料部材の貼り合せに用いられる接着剤に好適である。
本発明における「電子材料部材」としては、例えば、フレキシブルプリント基板、カバーレイ、ボンディングシート等が挙げられる。
電子材料部材の貼り合せにより作製されるものとしては、例えば、フレキシブル銅張積層板やフレキシブルプリント基板等のフレキシブル積層板が挙げられる。フレキシブル積層板は、例えば、「可撓性を有するフレキシブル基板/接着剤層/銅やアルミニウム、これらの合金等からなる導電性金属層」を順次積層した積層体であり、接着剤層を構成する接着剤として本発明の接着剤を用いることができる。なお、フレキシブル積層板は、上記の各種層以外に、他の絶縁層、他の接着剤層、他の導電性金属層を更に含んでいてもよい。
ポリエステル系樹脂に対するダイマージオールの含有量(%)を示す。
以下の表1で記載する組成は、出来上がりの組成比(樹脂組成比)であり、得られたポリエステル系樹脂の各構成モノマー量の相対比(モル比)とその%である。
温度計、撹拌機、精留塔、窒素導入管の付いた反応缶に、多価カルボン酸類としてイソフタル酸(IPA)263.7部(1.5872モル)、トリメリット酸無水物(TMAn)3.1部(0.0161モル)、多価アルコール類としてビスフェノールAのエチレンオキサイド約2モル付加物「ニューポールBPE-20」(BPE-20)(三洋化成工業社製)105.0部(0.3221モル)、エチレングリコール(EG)65.0部(1.0472モル)、ダイマージオール「プリポール2033」(P2033)(クローダ社製)234.5部(0.4431モル)、ネオペンチルグリコール(NPG)62.9部(0.6039モル)、触媒としてテトラブチルチタネート0.1部を仕込み、内温が270℃となるまで2.5時間かけて昇温し、270℃で1.5時間、エステル化反応を行った。
次いで、触媒としてテトラブチルチタネート0.1部を追加し、系内を2.5hPaまで減圧し、2時間かけて重合反応を行った。
その後、内温を230℃まで下げ、トリメリット酸無水物(TMAn)15.8部(0.0822モル)を添加し230℃で1時間解重合反応を行い、ポリエステル系樹脂(A-1)を得た。
樹脂組成を表1に記載のとおりになるよう変更した以外はA-1と同様にしてポリエステル系樹脂(A-2~12、A'-1~2)を得た。
「NDCM」:ナフタレンジカルボン酸ジメチル
「TPA」:テレフタル酸
「IPA」:イソフタル酸
「DMI」:イソフタル酸ジメチル
「P1009」:ダイマー酸「プリポール1009」(クローダ社製)
「TMAn」:トリメリット酸無水物
「BPEF」:ビスフェノキシエタノールフルオレン
「BOPPEF」:ビスフェニルフェノキシエタノールフルオレン
「BPE-20」:ビスフェノールAのエチレンオキサイド約2モル付加物「ニューポールBPE-20」(三洋化成工業社製)
「TCD-DM」:トリシクロデカンジメタノール
「EG」:エチレングリコール
「2MPG」:2-メチルー1,3-プロパンジオール
「NPG」:ネオペンチルグリコール
「1.4BG」:1.4-ブタンジオール
「1.6HG」:1,6-ヘキサンジオール
「1.10DG」:1,10-デカンジオール
「P2033」:ダイマージオール「プリポール2033」(クローダ社製)
硬化剤として、以下のポリエポキシ系化合物を用意した。
・ポリエポキシ系化合物(B-1):フェノールノボラック型エポキシ樹脂「YDPN-638」(日鉄ケミカル&マテリアル社製)(エポキシ当量=177(g/eq))
・ポリエポキシ系化合物(B-2):グリシジルエーテル型特殊多官能エポキシ樹脂「jER-1031S」(三菱ケミカル社製)(エポキシ当量=200(g/eq))
・ポリエポキシ系化合物(B-3):トリグリシジルパラアミノフェノール「jER-630」(三菱ケミカル社製)(エポキシ当量=96(g/eq))
・ポリエポキシ系化合物(B-4):テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン「jER-604」(三菱ケミカル社製)(エポキシ当量=120(g/eq))
上記で得られたポリエステル系樹脂及び硬化剤を用いて、下記のとおり接着剤組成物を製造した。
上記で得られたポリエステル系樹脂(A-1)をトルエン/シクロヘキサン=4/1(重量比)混合溶媒で固形分濃度50%に希釈し、このポリエステル系樹脂(A-1)溶液(固形分として100部)に対し、ポリエポキシ系化合物(B-1)(固形分)を10部配合し、更にトルエン/シクロヘキサン=4/1(重量比)混合溶媒で固形分50%になるように希釈、撹拌、混合することにより、接着剤組成物を得た。
実施例1において、表3に示すとおりの樹脂組成とした以外は同様にして、接着剤組成物を得た。
得られた接着剤組成物を用いて以下のとおり評価を行い、その結果を表3に示す。
上記で調製した接着剤組成物を厚み50μmのポリイミドフィルム「カプトン200H」(東レ・デュポン社製)にアプリケーターで塗布した後、120℃で5分間乾燥し、乾燥膜厚25μmの接着層を形成した。次に厚み30μmの圧延銅箔を上記接着層付きポリイミドフィルムの接着層面とラミネート(ラミネート条件:170℃、0.2MPa、送り速度1.5m/min)し、次いで160℃のオーブンで4時間熱処理、硬化させることで積層体を得た。
上記で得られた積層体を1cm幅に切り出したものを試験片とした。両面テープを用いて試験片を厚み2mmのガラス板に固定し、温度23℃、相対湿度50%RHの環境下で剥離試験機を用いて、試験片の引張剥離強度を測定した(剥離速度:50mm/min、剥離角度:180°)。評価基準は下記のとおりとした。
◎:12N/cm以上
○:9N/cm以上、12N/cm未満
△:6N/cm以上、9N/cm未満
×:6N/cm未満
上記で得られた積層体を温度85℃、相対湿度85%RHの恒温恒湿機に入れ、所定時間後に取り出し、温度23℃、相対湿度50%RHの環境下に一晩静置した後、上記の初期接着力と同様にして、引張剥離強度を測定した。初期の接着力に対する湿熱処理後の接着力の百分率を「維持率」とした。
接着力の絶対値については初期接着力と同様の評価基準を用いて評価した。
接着力の維持率については下記の評価基準に基づいて評価した。
◎:維持率が80%以上
○:維持率が60%以上、80%未満
△:維持率が40%以上、60%未満
×:維持率が40%未満
上記で得られた接着層付きポリイミドフィルムを160℃で4時間熱処理し硬化させた後、4cm×4cmサイズに切り出した。これを200メッシュのSUS製金網で包み、メチルエチルケトン中に23℃×24時間浸漬し、浸漬前の接着剤重量に対する金網中に残存した不溶解の接着剤成分の重量百分率をゲル分率とした。
一方、比較製造例1のポリエステル系樹脂(A'-1)は低誘電正接に劣り、それを用いて得られた比較例1は硬化後の初期接着性、更には湿熱環境下での長期耐久性にも劣るものであった。また、比較製造例2のポリエステル系樹脂(A'-2)は低誘電率、低誘電正接に関して劣るものであった。
Claims (8)
- ポリエステル系樹脂と硬化剤とを含有する接着剤組成物であって、
上記ポリエステル系樹脂が、多価カルボン酸類由来の構造単位と多価アルコール類由来の構造単位を含むポリエステル系樹脂であって、上記多価カルボン酸類が芳香族ジカルボン酸を含み、上記多価アルコール類がダイマージオールを含み、上記多価カルボン酸類及び多価アルコール類の少なくとも一方が、3価以上の多価カルボン酸類及び3官能以上の多価アルコール類の少なくとも一方を含み、ガラス転移温度(Tg)が-5℃以上であり、温度23℃、相対湿度50%RH環境下での10GHzにおける誘電正接(α)が0.0050以下であり、
上記硬化剤が、ポリエポキシ系化合物であることを特徴とする接着剤組成物。 - 多価カルボン酸類が、酸無水物基数が0又は1である3価以上の多価カルボン酸類を含むことを特徴とする請求項1記載の接着剤組成物。
- 多価カルボン酸類及び多価アルコール類の少なくとも一方が、縮合多環式芳香族化合物を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の接着剤組成物。
- ポリエステル系樹脂が、非結晶性であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
- 硬化剤の含有量が、ポリエステル系樹脂100重量部に対して、30重量部以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
- 請求項1~5のいずれか一項に記載の接着剤組成物が硬化されてなることを特徴とする接着剤。
- 電子材料部材の貼り合せに用いられることを特徴とする請求項6記載の接着剤。
- 電子材料部材が、フレキシブル銅張積層板、カバーレイ及びボンディングシートから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項7記載の接着剤。
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