JP2007246590A - 摩擦材 - Google Patents

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Abstract

【課題】機械強度が良好で、引張強度や引張剪断強度等の機械的性質の高温耐久性に優れ、且つ相手材の摩耗性も少ない摩擦材を提供する。
【解決手段】繊維状材料、無機フィラー、摩擦調整剤、結合剤樹脂を主成分として成る摩擦材において、パラ型全芳香族ポリアミドの非晶質含水フィブリッド及び高度にフィブリル化されたアラミドパルプを該繊維状材料の原料として含む摩擦材とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、自動車等の自動変速機における動力伝達系のクラッチフェーシングなどに使用される、耐熱性や引張層間剪断特性に優れた湿式摩擦材に関する。
一般に湿式摩擦材は、例えば特公昭58−47345号公報や特開平11−201206号公報などに開示されているように、アラミド繊維やセルロース繊維などの繊維材料、と摩擦調整剤や固体潤滑剤等の各種無機フィラーを抄造して紙状の基材を得、これにフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸して加圧・硬化して製造されるが、近年の自動車エンジンの出力増大や変速機の小型化等により、動力を伝達するために使用される湿式摩擦材への耐熱性の向上、特に引張層間剪断強度などの機械的特性の高温耐久性の向上が必要とされ、それらの要求を満たす湿式摩擦材の開発が精力的に行われている。
例えば、引張層間剪断強度を向上させる手段としては、特開2004−182911号公報などで、三次元織物を基材として用い、これに熱硬化性樹脂を含浸・硬化させた摩擦材が開示されている。この方法では、確かに従来の紙状物が基材のものに比べ、繊維材料の層間剪断剥離が起こりにくい摩擦材を作製することが可能である。しかしながら、織物の表面密度を上げると結合剤の含浸が阻害され引張層間剪断強度が低くなり、また表面密度を低くすると結合剤の含浸は十分に行えるが逆に繊維量が不足し引張層間剪断強度は低下するという問題点があった。織物の場合使用する繊維の繊度が大となるため、相手材を摩耗するため、摩耗性を調整するため弾性のある樹脂を使用しなければならない、という問題点もあった。更に、引張層間剪断強度は使用する結合剤樹脂の耐熱性に依存するため、結合剤樹脂の耐熱性を向上させることが重要であり種々の検討がなされている。例えば特開2005−213399号公報などでは、トリアジン類で変性したレゾール型フェノール樹脂およびこれを用いた摩擦材が開示されているが、結合剤樹脂自体の耐熱性向上には限界があった。
こうした現状に鑑み、引張強度や引張層間剪断強度の高温耐久性に優れ、且つ相手材の摩耗性も少ない摩擦材の開発が大いに望まれていた。
特公昭58−47345号公報 特開平11−201206号公報 特開2004−182911号公報 特開2005−213399号公報
引張強度や引張層間剪断強度等の機械強度の高温耐久性に優れ、且つ相手材の摩耗性も少ない摩擦材を提供することを目的とする。
繊維状材料、無機フィラー、摩擦調整剤、結合剤樹脂を主成分として成る摩擦材において、パラ型全芳香族ポリアミド樹脂溶液を水系凝固液に導入して得られる非晶質含水成形物からなる有機繊維フィブリッド及びパラ型全芳香族ポリアミドからなる高度にフィブリル化したアラミドパルプを該繊維状材料の原料として含む摩擦材とすることにより解決する。
本発明者は、本課題達成のため鋭意検討を重ねた結果、まず繊維状材料として、パラ型全芳香族ポリアミドからなる高度にフィブリル化したアラミドパルプ(以後アラミドパルプと略称)とパラ型全芳香族ポリアミド樹脂溶液を水系凝固液に導入して得られる非晶質含水成形物からなるパラ型全芳香族ポリアミド繊維フィブリッド(以後非晶質含水フィブリッドと略称する)を水に分散させたスラリーとし、抄造することにより得られた紙状物を乾燥・熱プレスすることにより、非常に高強度の紙が得られること、またこの非晶質含水フィブリッドが乾燥する際、バインダー樹脂のようなバインダー性能を有すること、更にこの非晶質含水フィブリッドと無機フィラーを混合したスラリー中で、非晶質含水フィブリッドがこの無機フィラーを有効に保持することに着目した。これは、この非晶質含水フィブリッドが十分に結晶化が進行していないこと、またポリマー内部に大量の水を含んでおり、これが抄造後の乾燥・熱プレス工程において、ポリマー内部の水が除去されることにより結晶化が進行して高強度が発現すること、更にスラリー中では薄葉状などの形態を有することにより無機フィラー等を容易に保持しやすい形態を有していることなどが要因と推測される。そこで、摩擦材の配合物である、繊維材料、無機フィラー、摩擦調整剤等の成分に、この非晶質含水フィブリッドを加え抄造し、紙状物を作製しこれを基材として摩擦材を作製したところ、摩擦材の層間剪断剥離を抑制する高い効果があることを見出すとともに、従来に比べ結合剤樹脂である熱硬化性樹脂の含浸量を減らしても、高い機械的特性を示し、その結果として耐熱性の高い湿式摩擦材が作製できることを見出し、本発明に到達した。
クラッチ等に使用される湿式摩擦材の引張強度や引張剪断強度等の高温耐久性が向上し、且つ相手材の摩耗の低減された摩擦材が簡単な工程で得られるので自動車等の自動変速機における動力伝達系のクラッチフェーシングなどに有用に使用される。
本発明における非晶質含水フィブリッドとは、例えば、WO2004/099476A1、特公昭35−11851号公報、特公昭37−5732号公報などに記載されているような、有機系高分子重合体溶液を、該高分子重合体溶液の凝固液と剪断力とが存在する系において混合するなどの方法より作製される、微小のフィブリルを有する薄葉状、鱗片状の小片、ランダムにフィブリル化した微小短繊維、または粒状の粒子状物を指す。ここで非晶質とは一般に水素結合に基づく結晶構造を形成する前の構造物を指す。さらに非結晶構造中に水分が含まれたものを非晶質含水成形物と総称する。一般にポリマーは凝固後、乾燥や延伸により結晶化が進行するが、凝固ポリマー中にある程度の水を含むことによりその結晶化が抑制され、それゆえ該非晶質含水フィブリッドの結晶化度は含水率とある程度相関しているといえる。一概には言えないが含水率が高いほど結晶化度は低く、含水率が低いほど結晶化度は高いと推定される。低結晶化度であるほど柔軟であり、かつ他の繊維材料との絡み合いにおいてバインダー的な特性を有するものとなり、乾燥プレス工程で結晶化が進むことにより、耐熱性のある高強度バインダーとなる。
一旦乾燥工程等を経て該非晶質含水フィブリッド内の水が除去された場合、ポリマーの結晶化が進行することにより、再びポリマー中へ大量の水が存在することが困難となり、その結果、本発明で期待されるような、バインダー的な特性は示せず、高強度が発現しないため好ましくない。
よって、該非晶質含水フィブリッドは一般には有機高分子重合体溶液を水系凝固液に導入後、急激な剪断力をかけて微小なフィブリッドとした後、水洗後/又は水洗することなく、かつ乾燥することなくして得ることが好ましい。また非晶質含水フィブリッドとしては、有機系高分子重合体溶液を、水系凝固液で凝固して作製された非晶質含水成形物を湿潤状態で粘状叩解用リファイナリーやビーターを使用して更にフィブリル化したものを乾燥工程等を経ることなく回収されたものでも良い。
非晶質含水フィブリッドの水分率としては、10〜99%であることが必要であり、10%未満では結晶化度が高くなり、本発明の高強度、高シール性は得られない。また99%以上であれば、水分が殆んどで効率が悪くなり、好ましくない。好ましくは20%以上、最も好ましくは50%以上である。
また本発明における非晶質含水フィブリッドの配合量としては、繊維状材料全量に対して、1〜50重量%、好ましくは3〜30重量%、さらに好ましくは5〜20重量%である。配合量が1重量%未満の場合、配合量が少なすぎるために、このような非晶質含水フィブリッドを添加することによる明確な効果は得られない。一方、配合量が50重量%を超える場合、一般に非晶質含水成形体有機繊維フィブリッドは、微小のフィブリルを有する薄葉状等の細かい形態を有しているために、他の繊維材料や無機フィラーなどとともに抄造する際に、ワイヤーメッシュに目詰まりが起こる、濾水時間が長くなる等、作業効率が低下して生産性が悪化する、更に非常に高密度の紙となるためにバインダー樹脂の含浸が不均一となるために好ましくない。
本発明における非晶質含水フィブリッドのポリマー樹脂としては、クラッチ等の高熱が発生するような用途に用いられるので、熱分解開始温度が350℃以上である有機高分子重合体が好ましく、より好ましくはポリ−p−フェニレンテレフタルアミドに代表されるパラ型全芳香族ポリアミドや、その共重合体、メタ型全芳香族ポリアミド、ポリ−p−フェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)ホモポリマーなどが好ましい。また、ポリマーの種類や、ポリマーの構造や重合度などは特に限定されるものではなく、前記工程で作製される非晶質含水フィブリッドであれば特に差し支えないが、耐熱性や作業性などを考慮すると、パラ型全芳香族ポリアミドの非晶質含水フィブリッドが最も好ましい。
本発明における繊維状材料としては、パラ型全芳香族ポリアミド繊維やその共重合体、芳香族ポリエステル繊維、ポリベンザゾール繊維、リンターパルプや木材パルプ等のセルロース繊維、メタ型アラミド繊維やその共重合体、アクリル繊維、ポリイミド繊維、ポリアミド繊維などの有機繊維を高度にフィブリル化したパルプ状繊維や短繊維、好ましくはパラ型全芳香族ポリアミド繊維の高度にフィブリル化したアラミドパルプが挙げられる。またガラス繊維、ロックウール、チタン酸カリウム繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、金属繊維などの無機繊維を、単一または複数種組み合わせて用いることができ、その種類や形態、組合せ、配合比率等は特に限定されるものではなく、その配合量としては、10〜80重量%、好ましくは20〜70重量%、さらに好ましくは30〜60重量%である。
本発明における無機フィラーは、摩擦性能調整や固体潤滑等を目的に添加され、例えば硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭化ケイ素、炭化チタン、アルミナ、シリカ、カシューダスト、珪藻土、グラファイト、タルク、カオリン、酸化マグネシウムなどを単一または複数種組み合わせて用いることができ、その種類や形態、粒径、組合せ、配合比率等は特に限定されるものではなく、その配合量としては、20〜80重量%、好ましくは30〜70重量%、さらに好ましくは40〜60重量%である。
本発明における結合剤樹脂としては、フェノール樹脂やメラミン樹脂およびその変性体等、摩擦材に一般的に用いられる熱硬化性樹脂をそのまま使用することができ、その種類や変性方法等は特に限定されるものではない。紙状物への含浸を行うために液状のものが最も好ましい。紙状物への含浸量としては、紙状物に対して20〜70重量%、好ましくは25〜60重量%、さらに好ましくは30〜50重量%である。
次に、本発明の方法を説明する。
本発明における摩擦材の製造工程として、まず原料のスラリーを調製する。このスラリーの水への投入順序等に特に規定はなく、繊維状材料や非晶質含水フィブリッド、無機フィラーなどを水へ投入し、主に繊維状材料を開繊する等の目的で、例えばナイアガラビーターやディスクリファイナーなどの公知の叩解機を用いて叩解する。なお、叩解により形状が変わるなどの支障がある材料の場合は、繊維状材料等を予め叩解した後に添加しても特に差し支えない。また叩解を行わなくても、単なる混合などで繊維状材料などの開繊が十分達成される等の場合は、必ずしも叩解を行う必要はない。
次に、このスラリーに叩解時に添加しなかった材料を投入し混合する。混合は、パルパーなどの公知のミキサーを用いることができる。これらの工程で、混合や叩解の際、気泡の発生を抑制する目的で、一般の抄造の際に用いられる公知の消泡剤を用いることができる。また、無機フィラーの繊維材料への定着率を向上させる目的で、スラリーのpHを調整したり、必要に応じて一般の抄造の際に用いられる定着剤を適宜用いたりすることができる。
次に、このスラリーを抄造し、紙状物を得る。抄造は、長網抄紙機や丸網抄紙機といった連続抄紙機や、TAPPI箱型抄紙機など公知の抄造装置を用いて抄造することができ、また抄造後、連続抄紙機の場合はそのまま乾燥工程を経てローラーへ巻き取る。箱型抄紙機などのバッチ式での抄紙機の場合は、抄造後の紙を金枠等に保持し、乾燥機などで乾燥する。乾燥温度は、水が十分に除去できる温度であれば特に制限は無いが、原料の劣化等を考慮すると、80℃〜150℃が好ましいが、この温度に限定されるものではない。この乾燥の過程で非晶質フィブリッドは、結晶化が促進され、繊維状材料、特に高度にフィブリル化したアラミドパルプ同士を繋ぐ耐熱性バインダー樹脂としてだけでなく、摩擦性能調整や固体潤滑等を目的に添加した無機フィラーを強固に保持し、そういった無機フィラーの脱落が少なく、また層間剥離強力がより増大した紙状物が得られる。
次に得られた紙状物へ、結合剤樹脂溶液を含浸する。紙状物への結合剤樹脂溶液の含浸方法としては、スプレーなどの噴霧器により吹き付ける方法、紙状物を結合剤樹脂が入った浴へディップする方法などあるが、これらの方法に限定されるものではなく、紙状物へ結合剤樹脂溶液を均一に含浸できる手法であれば、特に差し支えない。その後、結合剤樹脂溶液を含浸した紙状物から揮発成分を除去しプリプレグを作製する。揮発成分を除去する方法には特に規定はなく、室温以上で結合剤が完全に硬化してしまわない程度の温度以下であれば、問題はない。ただこの過程で、紙状物中で結合剤樹脂のマイグレーションが起こることがあるため、注意が必要である。
その後、プリプレグを加熱プレスする。プリプレグの加熱プレスの方法としては、特に規定はなく、公知のプレス機などを用いることにより行うことができる。このときの、プレス温度やプレス圧、加圧・加熱時間については特に規定はなく、用いた結合剤樹脂の組成や硬化温度、また最終の摩擦材の厚みや気孔率等を考慮した条件で行えば特に問題はない。更に、その後結合剤樹脂を完全に硬化させる目的で、後硬化を行うこともできる。この後硬化条件については、特に規定はなく用いた結合剤樹脂の硬化温度等を考慮して適宜決定して差し支えない。
そして得られた摩擦材は、必要に応じて任意の大きさや形状に裁断し、金属製のディスクに接着してクラッチフェーシングなどに用いることができる。なお、プリプレグを任意の大きさや形状に裁断し、金属製のディスク上で加熱・加圧して結合剤を硬化させるとともにディスクに接着させることもできる。
本実施例に使用した物性項目の測定法は下記の通りで行った。
1)引張強度
下記条件により引張強度および破断伸度を測定した。
温度:室温
試験機:INSTRON 5565型(INSTRON社製)を用い、平板形状のチャックに試験片を挟み引張試験を行った。
試験片:100mm×15mmに裁断したしたものを試験片として用いた。
試験速度:10mm/分
チャック間距離:60mm
この測定結果を表1に示す。
2)湿式摩擦材の引張剪断強度
下記の試験方法・条件で、得られた湿式摩擦材の引張剪断強度を測定した。
なお下記の通り得られた試験片は、片端を固定しもう片端を垂直に引張ることにより、湿式摩擦材を剪断破壊させて、引張り剪断強度を測定した。
試験機:INSTRON 5565型(INSTRON社製)
試験片:20mm×20mmに切断した湿式摩擦材の片面を、20mm×100mmのサンドブラスト板の端に、市販の2液型エポキシ系接着剤を用いて接着させた。続いてもう片方の面も同様に接着剤でサンドブラスト板に接着させて試験片を得た。
温度:室温
ゲージ間距離:25mm
引張速度:10mm/分
この測定結果を表1に示す。
3)耐熱性試験
空気雰囲気下、250℃で、100時間で熱処理を行った後、1.2.と同じ方法で引張強度および引張剪断強度を測定した。この測定結果を表1に示す。
以下に本発明を実施例に基づき具体的に説明する。なお本発明はこれらに限定されるものではない。
4)水分率(%)
JIS L1013に準拠して測定し下記の式で算出した。
(W0−W)/W0×100 W0は乾燥前重量 Wは乾燥後重量
5)気孔率
表1に記載した各配合物の比重、および得られた湿式摩擦材の厚み、面積などから湿式摩擦材中の固体体積分率(vol%、以下Vsと記載)を下記(1)式より算出し、更に(2)式の通り気孔率を算出した。
(1)Vs(vol%)=1000×Σ(Wn/ρn)/T×S
Wn:各配合物の仕込み重量(g)
ρn:各配合物の比重
T:得られた湿式摩擦材の厚さ
S:得られた湿式摩擦材の面積
(2)気孔率(vol%)=100−Vs
[実施例1]
WO2004/099476A1の実施例1に準拠し、ポリ−p−フェニレンテレフタルアミドからなる非晶質含水フィブリッドを作製した。なお得られた非晶質含水フィブリッドの長さ加重平均繊維長は0.81mm、水分率は91.5%であった。その他の繊維材料としては、ポリ−p−フェニレンテレフタルアミド繊維を高度にフィブリル化させたアラミドパルプ(商品名「トワロン1097」、帝人トワロン製、長さ加重平均繊維長:0.95mm)、無機フィラーとしては、珪藻土(商品名「ラヂオライト#200」昭和化学工業製)、摩擦調整材としては、カシューダスト(カシュー製)を、それぞれ表1のような組成で配合したスラリーを調製し、定着剤、消泡剤、pH調整剤を添加した後、これを抄造し乾燥後、紙状物を得た。次に、この紙状物に、結合剤樹脂として、レゾール型フェノール樹脂(商品名「スミライトレジン PR−53123」、住友ベークライト製、固形分濃度:45%)をメタノールで固形分濃度:12%となるように希釈したものにディップして含浸した。そして、室温で一昼夜乾燥してプリプレグを得た。
その後、このプリプレグを、プレス機を用いて180℃で5分間、面圧:6×103kPaで熱プレスを行った。この際、厚みを調節するために、厚み:0.55mmのスペーサーを挿入してプレスした。更にプレス後、180℃で2時間後硬化を行い、摩擦材を得た。得られた摩擦材の目付けは、403g/m、厚みは0.54mm、気孔率は51vol%であった。この摩擦材の室温と空気雰囲気下、250℃で、100時間で熱処理後の引張強度と引張剪断強度を測定した。得られた結果を表1に示す。この結果引張強度と引張剪断強度とも熱処理後の維持率が80%を超え、一方非晶質含水フィブリッドを用いない比較例1では維持率が50%程度で明らかに非晶質含水フィブリッドを用いることにより、摩擦材としての高温耐久性が向上している。このものはクラッチ用摩擦材として有用であった。
[実施例2]
実施例1と同様に作製したポリ−p−フェニレンテレフタルアミドの非晶質含水フィブリッドを、アラミドパルプの一部と置き換え、配合量をそれぞれ表1のように調節したこと以外は、実施例1と同じ処方で摩擦材を作製した。得られた摩擦材の目付けは、405g/m、厚みは0.55mm、気孔率は53vol%であった。この摩擦材の室温と空気雰囲気下、250℃で、100時間で熱処理後の引張強度と引張剪断強度を測定した。得られた結果を表1に示す。このものは実施例1と同様、引張強度と引張剪断強度とも熱処理後の維持率が良好で高温耐久性が高く、クラッチ用摩擦材として有用であった。
[実施例3]
実施例1と同様に作製したポリ−p−フェニレンテレフタルアミドの非晶質含水フィブリッドを、フェノール樹脂の一部と置き換え、配合量をそれぞれ表1のように調節したこと以外は、実施例1と同じ処方で湿式摩擦材を作製した。得られた湿式摩擦材の目付けは、401g/m、厚みは0.54mm、気孔率は52vol%であった。この摩擦材の室温と空気雰囲気下、250℃で、100時間で熱処理後の引張強度と引張剪断強度を測定した。得られた結果を表1に示す。このものは実施例1、2と同様、引張強度と引張剪断強度とも熱処理後の維持率が良好で90%を超え、高温耐久性が高いものでクラッチ用摩擦材として有用であった。
[実施例4]
実施例1と同様に作製したポリ−p−フェニレンテレフタルアミドの非晶質含水フィブリッドを、フェノール樹脂の一部と置き換え、配合量をそれぞれ表1のように調節したこと以外は、実施例1と同じ処方で湿式摩擦材を作製した。得られた湿式摩擦材の目付けは、406g/m、厚みは0.55mm、気孔率は53vol%であった。この摩擦材の室温と空気雰囲気下、250℃で、100時間で熱処理後の引張強度と引張剪断強度を測定した。得られた結果を表1に示す。このものは実施例1〜3と同様、引張強度と引張剪断強度とも熱処理後の維持率が良好で90%を超え、最も高温耐久性が高いものでクラッチ用摩擦材として有用であった。
[実施例5]
実施例1と同様に作製したポリ−p−フェニレンテレフタルアミドの非晶質含水フィブリッドを適度に乾燥して水分率を24.2%まで下げ、配合量をそれぞれ表1のように調節したこと以外は実施例1と同じ処方で摩擦材を作製した。得られた摩擦材の目付けは、400g/m、厚みは0.54mm、気孔率は52vol%であった。この摩擦材の室温と空気雰囲気下、250℃で、100時間で熱処理後の引張強度と引張剪断強度を測定した。得られた結果を表1に示す。このものも実施例1〜4と同様、引張強度と引張剪断強度とも熱処理後の維持率が良好で高温耐久性が高く、クラッチ用摩擦材として有用であり、ポリ−p−フェニレンテレフタルアミドの非晶質含水フィブリッドから脱水する過程での結晶化の促進やバインダー効果を十分に確認することができた。
[比較例1]
実施例1の組成に関し、ポリ−p−フェニレンテレフタルアミドの非晶質含水フィブリッドを全く使用せず、この全量をフェノール樹脂で置き換え、配合量をそれぞれ表1のように調節したこと以外は、実施例1と同じ処方でビーターシートガスケットを作製した。得られた湿式摩擦材の目付けは、404g/m、厚みは0.55mm、気孔率は53vol%であった。この摩擦材の室温と空気雰囲気下、250℃で、100時間で熱処理後の引張強度と引張剪断強度を測定した。得られた結果を表1に示す。得られた摩擦材は高温耐久性が悪く実用的には問題があるものであった。
[比較例2]
実施例1と同様に作製したポリ−p−フェニレンテレフタルアミドの非晶質含水フィブリッドを、80℃で2時間乾燥し、その後、標準雰囲気下で24時間調湿しフィブリッドを得た。このフィブリッドの長さ加重平均繊維長は0.79mm、水分率は6.5%であった。この乾燥したフィブリッドを用いたこと以外は実施例1と同じ組成、処方で湿式摩擦材を作製した。得られた湿式摩擦材の目付けは、406g/m、厚みは0.55mm、気孔率は53vol%であった。この摩擦材の室温と空気雰囲気下、250℃で、100時間で熱処理後の引張強度と引張剪断強度を測定した。得られた結果を表1に示す。このものは比較例1と同様、引張強度と引張剪断強度とも熱処理後の維持率が悪く、高温耐久性に劣るものであった。
各例示についての各成分の配合量及び物性データを表1に示す(数値は重量部)。
引張強度および引張剪断強度ともに、室温での評価においては実施例および比較例で明確な差は見られなかった。この原因として、常温ではフェノール樹脂の劣化は全く起こらないこと、また紙状基材に対してフェノール樹脂の機械的特性が高いために、常温での引張強度や引張剪断強度といった特性はフェノール樹脂の物性が支配的になるためであると考えられる。
しかし、熱処理後のサンプルについて引張強度や引張剪断強度を測定したところ、実施例と比較例に明確な差が見られた。これは、実施例および比較例ともにフェノール樹脂が一定量含まれ、これが高温化に長時間さらされることにより劣化が起こり、その結果、引張強度や剪断強度は低下するものと考えられる。しかしながら、実施例のようにポリ−p−フェニレンテレフタルアミドの非晶質含水フィブリッドが含まれる場合、これが一種のバインダーのような効果を発揮し、結果としてこれらを含まない場合に比べ強度低下が抑制されるものと思われる。その裏付けとして、比較例2のように、ポリ−p−フェニレンテレフタルアミドの非晶質含水フィブリッドを、乾燥し調湿したものを用いた場合においては、比較例1と同様、明らかな強度低下が見られた。これは、ポリ−p−フェニレンテレフタルアミドの非晶質含水フィブリッドが脱水したことにより、紙状物を作製する前に、該フィブリッドのポリマーの結晶化が進み、その結果として該フィブリッドの柔軟性が失われるばかりでなく、バインダー性能をも失い、得られた湿式摩擦材への強度へ寄与しなかったことによるものと考えられる。
Figure 2007246590
自動車等の自動変速機における動力伝達系のクラッチフェーシングや車両ディスクブレーキやドラムブレーキ用に使用できる高性能の摩擦材として有用である。

Claims (8)

  1. 繊維状材料、無機フィラー、摩擦調整剤、結合剤樹脂を主成分として成る摩擦材において、有機高分子重合体溶液を水系凝固液に導入して得られる非晶質含水成形物からなる有機繊維フィブリッドを繊維状材料の原料として含み、該非晶質含水成形物からなる有機繊維フィブリッドの水分率が10〜99%であることを特徴とする摩擦材。
  2. 該非晶質含水成形物からなる有機繊維フィブリッドの水分率が20〜99%である請求項1記載のいずれか一項記載の摩擦材。
  3. 該非晶質含水成形物からなる有機繊維フィブリッドが、熱分解開始温度が350℃以上である有機高分子重合体を水系凝固液に導入して得られた非晶質含水成形物からなる有機繊維フィブリッドである請求項1〜2記載の摩擦材。
  4. 該熱分解開始温度が350℃以上である有機高分子重合体がパラ型全芳香族ポリアミドである請求項3記載の摩擦材。
  5. 該繊維状材料の熱分解開始温度が350℃以上である有機高分子重合体からなる高度にフィブリル化されたパルプ状有機繊維を含む請求項1〜4記載の摩擦材。
  6. 該熱分解開始温度が350℃以上である有機高分子重合体がパラ型全芳香族ポリアミドである請求項5記載の摩擦材。
  7. 繊維状材料、無機フィラー、摩擦調整剤を水系スラリーとして湿式抄造された紙状物に結合剤樹脂が含浸されたものである請求項1〜6記載の摩擦材。
  8. 該紙状物に結合剤を含浸前及び/又は含浸後に加熱プレスされたものである請求項1〜7記載の摩擦材。
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