JP2004306544A - フッ素樹脂成型体及びその製造方法 - Google Patents

フッ素樹脂成型体及びその製造方法 Download PDF

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透 栗野
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Abstract

【課題】優れた摩擦摩耗特性と、格段に優れた機械的特性、特に高度の圧縮クリープ特性を有するフッ素樹脂成型体及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】芳香族ポリアミドパルプとフッ素樹脂粉末とを主成分としてなるシート状物を複数枚積層してなる成型体であって、該成型体がフッ素樹脂粉末を付着された繊維及び/又はその集合体により補強されている。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、軸受けやギアなどの摺動材、或いは免震構造体用の支承材等に好適に使用できるフッ素樹脂成型体及びその製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、芳香族ポリアミドパルプとフッ素樹脂粉末とを主成分とするシート状物の積層体を、繊維及び/又はその集合体で補強することにより、機械的特性、摩擦摩耗特性、耐熱性および耐薬品性を可及的に向上させたフッ素樹脂系成型体及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
フッ素樹脂は、摩擦摩耗特性、摺動性、耐熱性および耐薬品性に優れているため、各種のパッキンや軸受け、スラストワッシャなどの摺動材として幅広く用いられている。しかしながらフッ素樹脂単独では機械的強度が低いうえ変形が起こりやすく、また摩耗量も多いため、種々の補強用充填材を配合することが行なわれている。
【0003】
具体的には、黒鉛、ブロンズ粉などの粒子状の充填材をフッ素樹脂に添加する方法が挙げられるが、これらの充填材を添加することにより、硬度や摩耗特性は改善されるものの、フッ素樹脂と充填材との接着性が悪いため引張強度や圧縮クリープ特性などの機械的物性は改善できない。
【0004】
このような問題を改良すべく、特開平5−117476号公報(特許文献1)には、高度にフィブリル化した芳香族ポリアミドパルプとフッ素樹脂粉末とを組み合わせた摺動材用樹脂組成物が提案されている。この組成物においては、高度にフィブリル化した芳香族ポリアミドパルプを補強材として用いているため、芳香族ポリアミドパルプ同士の物理的な絡み合いによりフッ素樹脂が補強され、摩擦摩耗特性が大幅に改善されると共に機械的特性も向上する。
【0005】
しかしながら、該樹脂組成物の機械的特性は、免震構造体用の支承材等、より高い圧縮クリープ特性が求められる用途に使用する場合には、充分満足できるものではなかった。
【0006】
また、特開平9−188767号公報(特許文献2)には、高度にフィブリル化した芳香族ポリアミドパルプとフッ素樹脂粉末との水分散液から抄造してフッ素樹脂シートを得、これを複数枚積層して加圧、焼成して複合成型体を得る方法が開示されているが、該複合成型体においても、免震構造体用の支承材等の、より高い圧縮クリープ特性が求められる用途に使用できるほどの機械的物性は得られていない。
【0007】
このように、従来の技術では、摩擦摩耗特性が改良されたフッ素樹脂成型体を得ることは可能であるものの、格段に優れた機械的特性、特に免震構造体用の支承材等に使用できるほど高度の圧縮クリープ特性を有するフッ素樹脂成型体の製造方法は知られておらず、かかる成型体及びその製造方法の開発が強く求められていた。
【0008】
【特許文献1】
特開平5−117476号公報
【0009】
【特許文献2】
特開平9−188767号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来技術の有する問題点を解消し、優れた摩擦摩耗特性と、格段に優れた機械的特性、特に高度の圧縮クリープ特性を有するフッ素樹脂成型体及びその製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討した結果、フッ素樹脂シートを積層してなる複合成型体を繊維及び/又はその集合体で補強するとき、その変形が大幅に抑制されて、圧縮クリープ特性が可及的に向上できることを究明し、本発明に到達した。
【0012】
かくして本発明によれば、芳香族ポリアミドパルプとフッ素樹脂粉末とを主成分としてなるシート状物を複数枚積層してなる成型体であって、該成型体がフッ素樹脂粉末を付着された繊維及び/又はその集合体により補強されていることを特徴とするフッ素樹脂成型体が提供される。
【0013】
また本発明によれば、下記(イ)〜(ハ)の工程を逐次的に有することを特徴とするフッ素樹脂成型体の製造方法が提供される。
(イ)芳香族ポリアミドパルプとフッ素樹脂粉末とを同時に分散させた水系分散液から抄造してシート状物を得る工程、
(ロ)繊維及び/又はその集合体をフッ素樹脂粉末の水分散液に浸漬し、該繊維及び/又はその集合体にフッ素樹脂粉末を付着させる工程、及び
(ハ)複数枚のシート状物を積層し、その層間にフッ素樹脂粉末を付着させた繊維及び/又はその集合体を配置し、加圧及び焼成する工程
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる芳香族ポリアミドパルプ(以下アラミドパルプと称する)は、アミド結合の85モル%以上が芳香族ジアミン成分、芳香族ジカルボン酸成分からなる芳香族ポリアミド(アラミド)から得られるものである。
【0015】
その具体例としては、ポリパラフェニレンテレフタルアミド、コポリパラフェニレン−3,4’オキシジフェニレン−テレフタルアミド、ポリメタフェニレンイソフタルアミド、ポリパラベンズアミド、ポリ−4,4’−ジアミノベンズアニリド、ポリパラフェニレン−2,6−ナフタリックアミド、コポリパラフェニレン/4,4’−(3,3’−ジメチルビフェニレン)テレフタルアミド、ポリオルソフェニレンテレフタルアミド、ポリパラフェニレンフタルアミド、ポリメタフェニレンイソフタルアミド等を挙げることができる。
【0016】
そして、本発明に用いられるアラミドパルプは、上記のアラミドからなる繊維を高度にフィブリル化させたものをいう。通常、フィブリル化の指標としてBET比表面積が用いられるが、本発明の方法に適した好ましいアラミドパルプのBET比表面積の値は3〜25m/g、より好ましくは5〜20m/g、さらに好ましくは9〜16m/gである。
【0017】
上記BET比表面積の値が小さすぎる場合は、パルプ同士の絡み合いが十分に起こらないので機械的強度の高い成型体が得られず、またパルプへのフッ素樹脂粉末の沈着も困難となる。一方、BET比表面積の値が大きすぎる場合は濾水性が悪くなるため、抄造に長時間を要するようになり、製造コストが高くなる。
【0018】
また、本発明で用いられるフッ素樹脂としては、例えば、四フッ化エチレン樹脂(以下PTFEと称する)、パーフルオロ−アルコキシ樹脂(以下PFAと称する)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体樹脂(以下FEPと称する)、四フッ化エチレン−エチレン共重合体樹脂(以下ETFEと称する)、フッ化ビニリデン樹脂(以下PVDFと称する)、三フッ化塩化エチレン(以下PCTFEと称する)などが挙げられるが、中でも耐熱性、摺動特性等の点でPTFEが特に好ましい。
【0019】
フッ素樹脂粉末の好ましい平均粒径は0.01〜10μm、さらに好ましくは0.1〜1μmである。粒径が小さすぎると粒子の繊維表面への沈着が困難となり、逆に大きすぎると安定な分散液を得ることが難しくなり、また成型体中に樹脂を均一に分散させることが困難となる場合がある。
【0020】
本発明においては、先ず、上記アラミドパルプとフッ素樹脂粉末とを主成分としてなるシート状物を製造する。
【0021】
この際のアラミドパルプとフッ素樹脂粉末との配合比率は、目的とする最終製品に応じて適宜選択すれば良いが、アラミドパルプ/フッ素樹脂比(重量比)として、10/90から70/30の範囲であることが好ましい。
【0022】
上記シート状物を製造するには、上記アラミドパルプおよびフッ素樹脂粉末が水中に分散した分散液を調製する。該分散液の調整方法は特に限定されるものではなく、例えば予めフッ素樹脂粉末が水中に分散された分散液を調製し、該フッ素樹脂粉末の水系分散液とアラミドパルプとを水中に分散させる方法、予めフッ素樹脂粉末が水中に分散された分散液を調製し、該フッ素樹脂粉末の水系分散液にアラミドパルプを分散させる方法、あるいはフッ素樹脂粉末とアラミドパルプとを同時に水中に分散させる方法等が挙げられるが、もっとも好ましいのは、予めフッ素樹脂粉末が水中に分散された分散液を調製し、該フッ素樹脂粉末の水系分散液にアラミドパルプを分散させる方法である。以下、分散液の好ましい調整方法を具体的に説明する。
【0023】
アニオン系、カチオン系またはノニオン系の界面活性剤を含む水中にフッ素樹脂粉末が安定に分散されたフッ素樹脂分散液を調製する。この分散液は、1種類以上の界面活性剤の存在下で、フッ素樹脂の原料のモノマーを水系でラジカル重合させることによって、容易に調整することができる。
【0024】
また、市販されているフッ素樹脂粉末の分散液をそのまま用いることもでき、そのようなフッ素樹脂粉末の水分散液として、例えば旭硝子(株)やダイキン工業(株)等から市販されているフッ素樹脂粉末の水系分散液を挙げることができる。
【0025】
ついで、フッ素樹脂粉末の水分散液にアラミドパルプを分散させる。このときの分散方法は、木質パルプを抄造する際に従来から用いられている方法をそのまま適用することができる。例えば、各種の離解機(パルパー)、ナイアガラビーター等の各種のビーター、あるいはシングルディスクリファイナー等の各種のリファイナー等を用いて分散させることができる。
【0026】
分散液中のアラミドパルプとフッ素樹脂粉末の濃度は目的に応じて自由に選ぶことができるが、分散液の流動性を損なわない範囲で得きるだけ高い濃度を選ぶ方が製造コスト低減の点からは好ましい。
【0027】
分散液中のアラミドパルプ/フッ素樹脂粉末の配合比率は、最終製品のアラミドパルプ/フッ素樹脂粉末の組成比から決められるが、重量比で10/90から70/30の範囲であることが好ましい。
【0028】
この際、アラミドパルプの割合が少なすぎると十分な補強効果が得られず、逆に多すぎても十分な機械的強度と摩擦摩耗特性を持ったフッ素樹脂成型体を得ることができなくなる場合がある。さらに、得られるシート状物の性能を向上させたり、その他の特性を付与する目的で、分散液にグラファイト、ブロンズ粉等の充填材、添加剤あるいはその他の成分を分散液の均質性を損なわない範囲で添加することもできる。
【0029】
ついでこのアラミドパルプ/フッ素樹脂粉末の分散液に、フッ素樹脂の粒子を不安定化させる作用を呈する凝集剤を添加し、フッ素樹脂の粒子をアラミドパルプに沈着させる。凝集剤の種類および添加量は、界面活性剤の種類およびアラミドパルプの比表面積に応じて適宜決定すれば良い。
【0030】
例えば、フッ素樹脂粉末がアニオン性の界面活性剤により安定化されている場合には、凝集剤として、強酸または強電解質、あるいはポリアクリルアミド系、ポリアクリル酸塩等の高分子凝集剤、さらにはこれらの高分子凝集剤と強酸または強電解質とを組み合わせて適用することができる。
【0031】
また、フッ素樹脂粉末がカチオン性の界面活性剤により安定化されている場合には、凝集剤として、塩基または強電解質、あるいはポリアクリルアミド系、ポリメタアクリル酸エステル等の高分子凝集剤、さらにはこれらの高分子凝集剤と塩基または強電解質とを組み合わせて適用することができる。
【0032】
さらに、フッ素樹脂粉末がノニオン性の界面活性剤により安定化されている場合には、凝集剤として、強電解質、あるいはポリアクリルアミド系の高分子凝集剤、さらにはこれらの高分子凝集剤と強電解質とを組み合わせて適用することができる。
【0033】
また凝集剤として、ポリヒドロキシ芳香族カルボン酸とグルコース類との縮合物および多価の金属塩を併用することは、使用する界面活性剤の種類に関わらず、特に有効である。縮合物の例としては、タンニン酸、没食子酸等が挙げられる。また、金属塩の例としては、硫酸アンモニウム、塩化カルシウム等が挙げられる。この時、分散液に水酸化カルシウムやアンモニア等のアルカリ成分を加え、液のpHを3.5〜6.0の範囲に調製することは、フッ素樹脂粉末の実質上すべてをアラミドパルプに沈着させるので有効である。
【0034】
本発明においては、以下の点に留意してアラミドパルプ、フッ素樹脂粉末の分散液および凝集剤の最適な組み合わせを選択することが好ましい。
(1)分散液中のフッ素樹脂粉末をできるだけアラミドパルプに沈着させること、好ましくは実質的にすべてのフッ素樹脂粉末をアラミドパルプに沈着させること。これは高価なフッ素樹脂材料の有効利用という観点からも重要であるが、フッ素樹脂が沈着されずに、抄造時の廃液中に流出した場合にはそれに応じた排水の処理が必要になり、処理コストがかさむことになる。つまり、ここで実質的にすべてのフッ素樹脂が沈着するとは、抄造時に排水中に流出するフッ素樹脂の量が廃水処理を特に必要としなくなるレベルまで低いことを意味している。
(2)分散不安定化され、アラミドパルプに沈着したフッ素樹脂粉末が、大きなフロックを形成せずアラミドパルプに均一に沈着していること。
(3)フッ素樹脂粉末をアラミドパルプに沈着させた後の分散液が適度の濾水性を有していること。これは公知の分散液の濾水度を測定する方法によって評価することができる。
【0035】
また、フッ素樹脂粉末の分散液は、ノニオン性の界面活性剤で安定化したものよりもイオン性の界面活性剤で安定化したものの方が不安定化しやすいので、フッ素樹脂粉末の沈着に要する凝集剤の量が少なくて済む傾向にある。しかし、一方で、大きなフロックを形成しやすくなり、均一なシートが得られにくくなる傾向にある。
【0036】
また、フッ素樹脂粉末の分散液は、ノニオン性の界面活性剤で安定化したものは不安定化しにくい傾向にあるが、細かいフッ素樹脂粉末がアラミドパルプ表面に均一に沈着し、均一なシートが得られるので、本発明においてはノニオン性の界面活性剤を用いる方が好ましい。
【0037】
フッ素樹脂粉末の分散を不安定化させる方法としては、ポリヒドロキシ芳香族カルボン酸とグルコース類との縮合物および多価の金属塩を併用する。特にタンニン酸と硫酸アルミニウムを併用する方法が有効である。この組み合わせは、ノニオン性の界面活性剤を用いた分散液にも有効であり、イオン性の界面活性剤についても他の凝集剤を用いるよりも少ない添加量で有効であるので好ましい。
【0038】
次に、このような凝集剤によってフッ素樹脂粉末の分散が不安定化されたアラミドパルプおよびフッ素樹脂の分散液を、常法に従って抄造した後、必要に応じて脱水し、ついで乾燥してシート状物を得る。ここで抄造とは、パルプを分散した液から紙(シート状物)を抄く公知の工程を広くいう。本発明の方法においては、抄造は一般的に利用されている長網式や丸網式の抄造機をそのまま適用して行うことができる。
【0039】
かくして得られたシート状物は、その複数枚が積層された後、加圧及び焼成して成型体とされるが、本発明においては、複数枚のシート状物を積層する際、その層間にフッ素樹脂粉末を付着させた繊維及び/又はその集合体を配置して加圧及び焼成することにより、該成型体を補強することが肝要である。
【0040】
ここで、補強に用いる繊維としては、熱分解温度が400℃以上の繊維、例えばポリパラフェニレンテレフタルアミド、コポリパラフェニレン−3,4’オキシジフェニレン−テレフタルアミド、ポリメタフェニレンイソフタルアミド、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリパラフェニレンベンゾビスチアゾール、全芳香族ポリエステルなどの有機繊維や、炭素繊維、ガラス繊維、スチール繊維などの無機繊維が挙げられ、その形状は単繊維や、マルチフィラメント、紡績糸、またこれらを用いてなる織物、編物、不織布などの集合体が挙げられるが、中でも網目状織物、つまり織密度が小さい織物が好ましい。
【0041】
つまり、織密度が小さい織物であれば、織物の反対側に存在するフッ素樹脂同士が織物の網目を通して結合し、織物が強固に固定されるとともに、フッ素樹脂粉末を含浸した繊維/フッ素樹脂界面の接着性が大幅に向上するからである。
【0042】
なお、ここでいう繊維とは、前述のパルプのようにフィブリル化はされておらず、BET比表面積が概ね0.5m/g以下のものを指す。
【0043】
本発明に用いられる繊維及は、上述の如く、熱分解温度が400℃以上の繊維であることが必要であるが、その理由は、シート状物の成型、特に焼成に際しては、325〜450℃という高い温度が採用されるからである。該熱分解温度が400℃未満の場合は、焼成工程において、繊維及び/又はその集合体の分解が起こり、フッ素樹脂系成型体を得ることが困難となる場合がある。
【0044】
また、上記繊維の集合体形状として、最も好ましいものは織物である。該織物の大きさは、均一に補強できるよう、シート状物と同じ大きさであることが望ましい。
【0045】
上記繊維及び/又はその集合体には、フッ素樹脂粉末が付着されている訳であるが、その理由は、ただ単に繊維及び/又はその集合体を層間に配置しただけでは、繊維及び/又はその集合体と、シート状物の構成成分であるフッ素樹脂との接着性が非常に悪く、その界面で容易に界面剥離が生じ、十分な補強効果および圧縮クリープ特性が得られないからである。そこで、本願においては、繊維及び/又はその集合体にフッ素樹脂粉末を付着させることにより、シート状物との界面接着性を著しく向上させるのである。
【0046】
繊維及び/又はその集合体へのフッ素樹脂粉末の付着は、フッ素樹脂粉末が水中に分散した分散液を調製し、該フッ素樹脂粉末の水系分散液に繊維及び/又はその集合体を浸すことにより行う。このとき用いるフッ素樹脂粉末の水系分散液は、前述の、1種類以上の界面活性剤の存在下でフッ素樹脂の原料のモノマーを水系でラジカル重合させることによって、容易に調整することができるが、市販されているフッ素樹脂粉末の分散液をそのまま用いることもできる。
【0047】
ついで、フッ素樹脂粉末の水系分散液を多量に含んだ繊維及び/又はその集合体から水を絞る。この際には、従来から用いられているマングルをそのまま適用することができる。これにより、余分の水分を脱水すると共に、含浸させるフッ素樹脂粉末の量を繊維及び/又はその集合体中でほぼ均一にすることができる。
【0048】
ついで、フッ素樹脂粉末を含浸した繊維及び/又はその集合体を乾燥する。乾燥温度は、100〜200℃が好ましい。乾燥温度が低すぎると、十分に水分を除去することができず、シート状物の層間に配置して加圧、焼成を行った際、水分が蒸発しフッ素樹脂系成型体が破裂する恐れがある。逆に高すぎると、繊維及び/又はその集合体が劣化する可能性がある。
【0049】
本発明のフッ素樹脂系成型体を製造するためには、上記のシート状物を予め所定形状に切断し、これを複数枚、例えば10〜300枚積層したものの層間5〜10枚置きに、一方向または複数方向に等間隔で配列させた、フッ素樹脂粉末を付着させた長繊維や紡績糸などの繊維、及び/又はフッ素樹脂粉末を付着させた織物や編物、不織布などの繊維集合体を配置して、これを加圧、焼成することにより成型体を得る。
【0050】
加圧はプレス機を用い、フッ素樹脂の融点以下の温度で行う。加圧時の圧力は、好ましくは29×10〜98×10Pa(300〜1000kgf/cm)であり、シート間に空気が残ってボイドが形成することを防ぐため、常圧から所定圧まで2〜30分かけて徐々に昇圧することが望ましい。
【0051】
焼成は、フッ素樹脂の融点以上の温度で、窒素雰囲気下で行うことが望ましい。例えば、フッ素樹脂として融点が325℃のPTFEを用いる場合は、325〜450℃、好ましくは350〜400℃で焼成して目的の成型体を得る。
【0052】
かくして得られたフッ素樹脂系成型体は、芳香族ポリアミドパルプとフッ素樹脂粉末とを主成分としてなるシート状物の積層体の層間が、繊維及び/又はその集合体により強固に補強されているので、優れた摩擦摩耗特性と、格段に優れた機械的特性、特に高度の圧縮クリープ特性を有しており、免震構造体用の支承材等にも使用可能である。
【0053】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づきさらに具体的に説明する。なお本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、実施例における各物性は、以下に述べる測定方法に従って測定した。
【0054】
(1)摩擦摩耗特性
高千穂精機社製、リングオンディスク縦型摩擦摩耗試験機を用い、下記の条件でフッ素樹脂成型体の動摩擦係数及び摩耗係数を測定した。
試験片:縦×横×厚みが30×30×3.1mmのディスク状
相手材:S55C、リング状
圧力:4.91×10Pa(50kgf/cm
速度:24m/分
試験時間:24時間
【0055】
(2)圧縮クリープ
島津製作所製、クリープ試験機 PSS−6型を用い、下記の条件でフッ素樹脂成型体の瞬間歪、圧縮クリープ、永久変形を測定した。尚、測定は面方向(MD)、厚み方向(TD)のそれぞれについて実施した。
試験片:縦×横×厚みが1.4×1.4×3.1mmのディスク状物を3〜4枚積層して、厚みを約10mmとする。
温度:室温及び100℃
圧力:13.7×10Pa(140kgf/cm
時間:24時間
【0056】
(3)90°T−ピール剥離試験
INSTRON社製、INSTRON 5565型を用い、下記の条件でフッ素樹脂成型体の90°T−ピール剥離強度を測定した。
試験片:縦×横×厚みが30×125×3.1mmの短冊状
温度:室温
剥離速度:50mm/分
【0057】
(4)引張せん断強度
INSTRON社製、INSTRON 5565型を用い、下記の条件でフッ素樹脂成型体の引張せん断強度を測定した。
試験片:縦×横×厚みが1.7×1.7×3.1mmにカットし、その両面を金属板に接着した。
温度:室温
せん断速度:10mm/分
【0058】
[実施例1]
パラ系芳香族ポリアミドパルプである、「トワロン」1094(帝人トワロン(株)製、BET比表面積:13.5m/g、濾水度:100ml)を2.34g(絶乾重量)、「トワロン」1097(帝人トワロン(株)製、BET比表面積:6.5m/g、濾水度:600ml)を3.91g(絶乾重量)それぞれ混合したパルプと、PTFEのノニオン性水系分散液、フルオンディスパージョンXAD911(旭硝子(株)製、PTFEの平均粒径:0.25μm、固形分濃度:60重量%)15.6g(固形分:9.38g)とを秤量し、イオン交換水に分散させて600gの分散液とした。
【0059】
該分散液にアルミン酸ナトリウム水溶液を加えて3分間撹拌し、そのpHを3.5〜4.5に調製した。この分散液に、凝集剤としてタンニン酸と硫酸アルミニウムが重量比で3/2となるように混合された、グレージンCF(松本油脂(株)製)を1000ppmの濃度になるように加えた後、10分間撹拌して、フッ素樹脂粉末をアラミドパルプに定着させた。
【0060】
ついで、上記分散液を角型シートマシン(熊谷理機(株)製)を用いて250mm角の金網上に抄造し、その後脱水乾燥してシート状物を得た。このシート状物は、アラミドパルプへのフッ素樹脂粉末の定着率が100%であり、アラミドパルプ/フッ素樹脂粉末の組成比が40/60で、目付けが250g/mであった。
【0061】
補強用の繊維集合体として、「テクノーラ」(帝人(株)製、パラ系芳香族ポリアミド繊維)から成る、網目状の織物であるGTN321(帝人(株)製、目付け:80g/m、厚み:0.46mm、織密度:経糸:15本/inch;緯糸:15本/inch)を用いた。これを125×125mmに切断し、その後フルオンディスパージョンXAD911(固形分:300g)中に浸漬した。ついで、これをマングルで絞った後、120℃の乾燥室中で20分間乾燥し、フッ素樹脂粉末が付着された織物を得た。この織物には、織物重量に対し約100%のフッ素樹脂粉末が付着されていた。
【0062】
次に、上記のシート状物を、125×125mmに切断して10枚積層し、その中央の層間に上記のフッ素樹脂粉末が付着されたGTN321織物を挿入した。そして、この積層体を、プレス機を用いて100℃で加圧(面圧:50×10Pa(=500kgf/cm)、プレス時間:10分)を行い、プレフォームとした後、このプレフォームを窒素雰囲気下、380℃で1時間焼成を行って、縦×横×厚みが125×125×3.1mmのフッ素樹脂成型体を得た。
【0063】
[比較例1]
実施例1において、GTN321織物にフッ素樹脂粉末を付着させなかった以外は実施例1と同様に実施し、縦×横×厚みが125×125×3.1mmのフッ素樹脂成型体を得た。
【0064】
[比較例2]
実施例1において、GTN321織物を挿入しなかった以外は実施例1と同様に実施し、縦×横×厚みが125×125×3.0mmのフッ素樹脂成型体を得た。
【0065】
[比較例3]
実施例1において、アラミドパルプからなるシート状物に代えて、市販のガラス繊維入りPTFEであるニトフロン900F(日東電工(株)製)を用いた以外は実施例1と同様に実施し、縦×横×厚みが125×125×3.1mmのフッ素樹脂成型体を得た。
得られたフッ素樹脂成型体の物性を表1に示す。
【0066】
【表1】
Figure 2004306544
【0067】
【発明の効果】
本発明によれば、優れた摩擦摩耗特性と、格段に優れた機械的特性、特に高度の圧縮クリープ特性を有するフッ素樹脂成型体が提供されるので、免震構造体用の支承材等にも使用することができる。

Claims (11)

  1. 芳香族ポリアミドパルプとフッ素樹脂粉末とを主成分としてなるシート状物を複数枚積層してなる成型体であって、該成型体がフッ素樹脂粉末を付着された繊維及び/又はその集合体により補強されていることを特徴とするフッ素樹脂成型体。
  2. フッ素樹脂粉末を付着された繊維及び/又はその集合体が、シート状物の層間に配置されている請求項1記載のフッ素樹脂成型体。
  3. シート状物が、芳香族ポリアミドパルプとフッ素樹脂粉末とを分散させた水系分散液から抄造して得られたシート状物である請求項1又は2記載のフッ素樹脂成型体。
  4. フッ素樹脂粉末を付着された繊維の熱分解温度が400℃以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載のフッ素樹脂成型体。
  5. 芳香族ポリアミドパルプのBET比表面積が3〜25m/gである請求項1〜4のいずれか1項に記載のフッ素樹脂成型体。
  6. フッ素樹脂粉末の平均粒径が0.01〜10μmである請求項1〜5のいずれか1項に記載のフッ素樹脂成型体。
  7. 下記(イ)〜(ハ)の工程を逐次的に有することを特徴とするフッ素樹脂成型体の製造方法。
    (イ)芳香族ポリアミドパルプとフッ素樹脂粉末とを同時に分散させた水系分散液から抄造してシート状物を得る工程、
    (ロ)繊維及び/又はその集合体をフッ素樹脂粉末の水分散液に浸漬し、該繊維及び/又はその集合体にフッ素樹脂粉末を付着させる工程、及び
    (ハ)複数枚のシート状物を積層し、その層間にフッ素樹脂粉末を付着させた繊維及び/又はその集合体を配置し、加圧及び焼成する工程
  8. フッ素樹脂粉末を付着させる繊維の熱分解温度が400℃以上である請求項7記載のフッ素樹脂成型体の製造方法。
  9. 芳香族ポリアミドパルプのBET比表面積が3〜25m/gである請求項7又は8記載のフッ素樹脂成型体の製造方法。
  10. フッ素樹脂粉末の平均粒径が0.01〜10μmである請求項7〜9のいずれか1項に記載のフッ素樹脂成型体の製造方法。
  11. 加圧をフッ素樹脂粉末の融点未満の温度で実施し、且つ焼成をフッ素樹脂粉末の熱分解温度未満の温度で実施する請求項7〜10のいずれか1項に記載のフッ素樹脂成型体の製造方法。
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