JP2007246493A - タモキシフェン類縁体を有効成分として含有する血管新生抑制剤 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、タモキシフェン類縁体を有効成分として含有する血管新生抑制剤、タモキシフェン類縁体の製造方法、及び新規タモキシフェン類縁体に関する。
タモキシフェンは、以下の構造を有する化合物であり、ホルモン依存性乳ガンの治療薬として用いられてきた。
タモキシフェンは、組織特異的にエストロゲン性、あるいは抗エストロゲン性作用を有し、乳房細胞においては、抗エストロゲン作用を有することが知られている。
エストロゲンは、特に乳ガン細胞のエストロゲン受容体に結合し、ガン細胞の増殖を促進するが、タモキシフェンは、エストロゲンと競合的にエストロゲン受容体と結合することにより、エストロゲンとエストロゲン受容体の結合を阻止し、ガン細胞の増殖を抑制する。
このような作用を有するタモキシフェンにおいては、現在まで様々な類縁体が合成されており、これら類縁体を例示すると、4−ヒドロキシタモキシフェン、4−ブロモタモキシフェン、3−ヨードタモキシフェン、イドキシフェン等が挙げられる。
また、これらタモキシフェン類縁体を合成するための製法についても、様々なものが提案され、本発明者等も、オレフィン部位を有するタモキシフェン類縁体の前駆体を、異性化触媒として酸性物質あるいはアルカリ性物質を使用して転移させることにより、安価かつ効率的にタモキシフェン類縁体を合成する方法を開発している(特許文献1)。
しかし、これら従来のタモキシフェン類縁体においては、幾何異性体としてZ体、E体が存在し、Z体のみが抗ガン作用を有するので、Z体を分離する等の手段が必要であり、また、これらタモキシフェン誘導体は、もっぱらホルモン依存性乳ガンの治療剤として用いられており、他のガンについても有効であるとの実証はまったくなされていない。
一方、腫瘍は血管と結ばれていない状態では、1〜2mm3以上に成長することができない。しかし、腫瘍はこうした状況を打破するために、自ら血管新生促進因子を産生し、血管新生を誘導する。そして、一度、腫瘍と血管が結ばれると、新生血管網を介して、癌細胞の増殖・浸潤に必要な酸素・栄養源が調達される。さらに癌細胞の遠隔転移の際にも新生血管網は『路』として利用される。したがって、血管新生を標的とした療法、いわゆる抗血管新生療法は、癌の増殖・浸潤・転移を効果的に抑制する新しい癌治療法の確立に繋がると期待されている。
しかし、これら従来のタモキシフェン類縁体においては、幾何異性体としてZ体、E体が存在し、Z体のみが抗ガン作用を有するので、Z体を分離する等の手段が必要であり、また、これらタモキシフェン誘導体は、もっぱらホルモン依存性乳ガンの治療剤として用いられており、他のガンについても有効であるとの実証はまったくなされていない。
一方、腫瘍は血管と結ばれていない状態では、1〜2mm3以上に成長することができない。しかし、腫瘍はこうした状況を打破するために、自ら血管新生促進因子を産生し、血管新生を誘導する。そして、一度、腫瘍と血管が結ばれると、新生血管網を介して、癌細胞の増殖・浸潤に必要な酸素・栄養源が調達される。さらに癌細胞の遠隔転移の際にも新生血管網は『路』として利用される。したがって、血管新生を標的とした療法、いわゆる抗血管新生療法は、癌の増殖・浸潤・転移を効果的に抑制する新しい癌治療法の確立に繋がると期待されている。
本発明の課題は、タモキシフェン類縁体の中から、ガン治療等において有用な血管新生抑制作用を有する化合物であって、しかも、細胞毒性がなく、また効率的な生産も可能である化合物を見出し、これを有用な薬剤として提供することにある。
本発明者らは、鋭意研究の結果、以下の式(I)で表わされるタモキシフェン類縁体を見いだし、該タモキシフェン類縁体が血管新生抑制作用を有する一方、細胞障害性がないという、全く予想できない作用を有する点で、ガン治療等において極めて有用であるという知見を得るとともに、該タモキシフェン類縁体が、その構造上の特徴によって、Z体の分離等の手段が不要であり、きわめて効率的に製造可能であることを確認し、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は、以下の(a)〜(d)に示されるとおりである。
すなわち、本発明は、以下の(a)〜(d)に示されるとおりである。
(a):以下の式(I)で表わされる化合物を有効成分として含有することを特徴とする、血管新生抑制剤。
(但し、式中、R3はハロゲン原子、アルキル硫酸エステル残基又はトリフルオロメタン硫酸エステル残基を表わし、nは0を含む整数を表わす。)
(d):上記式(7)で表わされる化合物が、下記式(1)、(2)及び(3)で表わされる化合物を酸触媒の存在下反応させて、下記式(4)の化合物を生成させ、以下順に加水分解反応、2重結合のマイグレーション反応及びアルコキシル基の脱アルキル反応を行うことにより製造されたものであることを特徴とする、上記(c)に記載の製造方法。
本発明の式(I)で表わされるタモキシフェン類縁体は、血管新生抑制作用を有するが、細胞毒性を示さない。このことは、ホルモン依存性乳ガン治療剤として知られていた、タモキシフェン類縁体の作用効果としては、全く予想外のものである。
血管新生は、ガン、糖尿病性網膜症、あるいは慢性関節リュウマチ等数多くの疾患の発生あるいは悪化に必要不可欠であることが明らかにされており、特にガンによる血管新生は、ガン細胞の増殖、湿潤、転位の原因でもある。また、本発明のタモキシフェン誘導体は、細胞毒性を有しない点でも特徴的であり、このことは本発明のタモキシフェン誘導体が、副作用を示すことなく、血管新生を抑制し得ることを示す。したがって、これらの点で、本発明のタモキシフェン類縁体は、これら疾患、特にガンの新規な治療法の開発等において大いに寄与するものである。
一方、本発明のタモキシフェン類縁体は対称型の置換アミノエチルオキシフェニル基を有し、したがって幾何異性体が存在しないため、幾何異性体の分割あるいは立体特異的な合成工程が不要で、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニル−1−ブテン(式(5)の化合物)から1工程で、極めて効率的に製造できるという利点がある。
血管新生は、ガン、糖尿病性網膜症、あるいは慢性関節リュウマチ等数多くの疾患の発生あるいは悪化に必要不可欠であることが明らかにされており、特にガンによる血管新生は、ガン細胞の増殖、湿潤、転位の原因でもある。また、本発明のタモキシフェン誘導体は、細胞毒性を有しない点でも特徴的であり、このことは本発明のタモキシフェン誘導体が、副作用を示すことなく、血管新生を抑制し得ることを示す。したがって、これらの点で、本発明のタモキシフェン類縁体は、これら疾患、特にガンの新規な治療法の開発等において大いに寄与するものである。
一方、本発明のタモキシフェン類縁体は対称型の置換アミノエチルオキシフェニル基を有し、したがって幾何異性体が存在しないため、幾何異性体の分割あるいは立体特異的な合成工程が不要で、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニル−1−ブテン(式(5)の化合物)から1工程で、極めて効率的に製造できるという利点がある。
本発明のタモキシフェン誘導体は、以下の式(I)で表わされ、
その化学構造上の特徴は、ブテンの末端2重結合の炭素原子に2つの同一置換基を有するフェニル基が置換されている点にあり、これにより幾何異性体が存在しない。
これに対して、上記式(a)で表わされるタモキシフェンは、ブテンの末端2重結合の炭素原子に、互いに置換基の異なるフェニル基が置換しているため、幾何異性体が存在する。タモキシフェンの活性はそのうちのZ体にあるので、このZ体を得るための工程を必要としていた。この点は、以下に示される従来のタモキシフェン類縁体も幾何異性体が存在する点で同様である。
上記式(I)中、nは、例えば1〜30、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5である。
本発明の式(I)で表わされるタモキシフェン類縁体は、その化学構造に由来する上記製法上の利点に加えて、血管新生抑制作用を有し、かつ細胞毒性を示さない。
これに対して従来のタモキシフェンあるいはその類縁体は、このような血管新生抑制作用は示さず、この点で本発明のタモキシフェン類縁体は特異的である。
特に、ガンについていえば、腫瘍は血管と結ばれていない状態では、1〜2mm3以上に成長することができないが、腫瘍は自ら血管新生促進因子を産生して血管新生を誘導し、ガン細胞の増殖、湿潤に必要な、酸素、栄養素を補給するための新生血管網を構築する。そして、ガン細胞は、この新生血管網を通じて転位する。したがって、細胞毒性を示すことなく血管新生を抑制する本発明のタモキシフェンフェン類縁体は、副作用を示すことなく、このようなガンの増殖、湿潤、転位を抑制するものであって、それ自体有用なものであるばかりでなく、例えば、他のガン治療法との組み合わせること等により、より効果的なガン治療法の確立を可能にするものである。
血管新生のメカニズムの概略は、図2に示される。
血管新生は、血管を構成する主要な細胞である血管内皮細胞がその中心的な役割を果たしており、まず、基底膜・細胞外マトリクスの分解に始まり(A)、血管内皮細胞の遊走(B)、増殖(C)、管孔形成(D)の各ステップを経て血管が新生される。本発明の式(1)の化合物の作用は、少なくとも上記血管内皮細胞の遊走を阻害して、血管新生を抑制する。
これに対して従来のタモキシフェンあるいはその類縁体は、このような血管新生抑制作用は示さず、この点で本発明のタモキシフェン類縁体は特異的である。
特に、ガンについていえば、腫瘍は血管と結ばれていない状態では、1〜2mm3以上に成長することができないが、腫瘍は自ら血管新生促進因子を産生して血管新生を誘導し、ガン細胞の増殖、湿潤に必要な、酸素、栄養素を補給するための新生血管網を構築する。そして、ガン細胞は、この新生血管網を通じて転位する。したがって、細胞毒性を示すことなく血管新生を抑制する本発明のタモキシフェンフェン類縁体は、副作用を示すことなく、このようなガンの増殖、湿潤、転位を抑制するものであって、それ自体有用なものであるばかりでなく、例えば、他のガン治療法との組み合わせること等により、より効果的なガン治療法の確立を可能にするものである。
血管新生のメカニズムの概略は、図2に示される。
血管新生は、血管を構成する主要な細胞である血管内皮細胞がその中心的な役割を果たしており、まず、基底膜・細胞外マトリクスの分解に始まり(A)、血管内皮細胞の遊走(B)、増殖(C)、管孔形成(D)の各ステップを経て血管が新生される。本発明の式(1)の化合物の作用は、少なくとも上記血管内皮細胞の遊走を阻害して、血管新生を抑制する。
本発明の式(I)で表わされるタモキシフェン誘導体は、新規化合物である。
この式(I)で表わされるタモキシフェン化合物の製法について、図1を参照して以下に説明する。本発明の式(I)で表わされる化合物は、直接的には、式(7)の化合物(1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニル−1−ブテンと、一般式(8)の化合物をそれぞれN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の極性溶媒からなる反応溶媒中において、触媒として、例えば、水素化ナトリウム等の塩基性化合物の存在下反応せしめることにより得られる(図1中、工程5)。
この工程の触媒としては、上記水素化ナトリウムに限らず、例えば、アルカリ金属、アルカリ金属塩等の塩基性化合物、遷移金属塩等の遷移金属触媒などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
反応溶媒としてはDMSO(ジメチルスルホキシド)、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)、DME(1,2−ジメトキシエタン)等の極性溶媒の他、さらにヘキサン、ベンゼン、石油エーテル等の非極性溶媒等も使用でき、これら溶媒は1種単独で使用してもよく、2種以上を併用しても良い。
この式(I)で表わされるタモキシフェン化合物の製法について、図1を参照して以下に説明する。本発明の式(I)で表わされる化合物は、直接的には、式(7)の化合物(1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニル−1−ブテンと、一般式(8)の化合物をそれぞれN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の極性溶媒からなる反応溶媒中において、触媒として、例えば、水素化ナトリウム等の塩基性化合物の存在下反応せしめることにより得られる(図1中、工程5)。
この工程の触媒としては、上記水素化ナトリウムに限らず、例えば、アルカリ金属、アルカリ金属塩等の塩基性化合物、遷移金属塩等の遷移金属触媒などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
反応溶媒としてはDMSO(ジメチルスルホキシド)、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)、DME(1,2−ジメトキシエタン)等の極性溶媒の他、さらにヘキサン、ベンゼン、石油エーテル等の非極性溶媒等も使用でき、これら溶媒は1種単独で使用してもよく、2種以上を併用しても良い。
この製法によれば、例えば、リダイフェンD(図3中、式(9)の化合物)の収率は80%以上であり、式(7’)の化合物(1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニル−1−ブテンを原料化合物として用いることにより、きわめて高収率で、効率よく本発明のタモキシフェン化合物を製造することができる。
この式(7’)の化合物は、例えば、図1に示される方法(工程1〜4)で合成可能であり、この図1の方法について以下に説明する。ただし、本発明においては、この図1の方法のみに限定されない。
この式(7’)の化合物は、例えば、図1に示される方法(工程1〜4)で合成可能であり、この図1の方法について以下に説明する。ただし、本発明においては、この図1の方法のみに限定されない。
〔工程1〕
4−ピバロイルオキシベンズアルデヒド等の4位の水酸基がアルカノイル基等で保護された式(1)の化合物、アニソール等の式(3)の化合物、及び1−フェニル−3−トリメチルシリル−1−プロペン(式(2)の化合物)を、例えば、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルフォネート(TMSOTf)等を触媒としてHfCl4等のルイス酸あるいはプロトン酸等の存在下、反応させ、式(4)の化合物を生成させる。この工程においては、触媒として上記TMSOTfの他トリメチルシリルクロリド等も使用でき、ルイス酸としては上記の他、Hf(OTf)4,TiCl4,TiCl2(OTf)2等の第4属金属塩、AlCl3,BCl3,Sc(OTf)3等の第3属金属塩、SnCl2,Sn(OTf)2等の第2属金属塩等が使用できる。またプロトン酸としては塩酸、硫酸、硝酸、臭化水素酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸等も使用可能である。これらは一種単独で使用してもよく、また2種以上併用してもよい。
4−ピバロイルオキシベンズアルデヒド等の4位の水酸基がアルカノイル基等で保護された式(1)の化合物、アニソール等の式(3)の化合物、及び1−フェニル−3−トリメチルシリル−1−プロペン(式(2)の化合物)を、例えば、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルフォネート(TMSOTf)等を触媒としてHfCl4等のルイス酸あるいはプロトン酸等の存在下、反応させ、式(4)の化合物を生成させる。この工程においては、触媒として上記TMSOTfの他トリメチルシリルクロリド等も使用でき、ルイス酸としては上記の他、Hf(OTf)4,TiCl4,TiCl2(OTf)2等の第4属金属塩、AlCl3,BCl3,Sc(OTf)3等の第3属金属塩、SnCl2,Sn(OTf)2等の第2属金属塩等が使用できる。またプロトン酸としては塩酸、硫酸、硝酸、臭化水素酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸等も使用可能である。これらは一種単独で使用してもよく、また2種以上併用してもよい。
〔工程2〕
ついで、式(4)の化合物を、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)等の溶媒の存在下、触媒として、例えば、カリウム第3級ブトキシド等の塩基性化合物を使用して加水分解し、一般式(5)の化合物を得る。
この加水分解工程において使用する触媒としては、塩基性化合物に限らず、酸性化合物及び遷移金属触媒も使用できる。
触媒として使用する塩基性化合物としては、例えば、アルカリ金属あるいはアルカリ金属塩等が挙げられ、酸性化合物としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、臭化水素酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、あるいは上記の各種ルイス酸が挙げられる。また、遷移金属触媒としては各種遷移金属塩等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用しても良い。
また、使用する溶媒としては、上記DMSOの他、N,N−ジメチルホルムアミド、1,2−ジメトキシエタン等の極性溶媒であってもよく、また、ヘキサン、ベンゼン、ジクロロメタン等の非極性溶媒も用いることができる。これらは一種単独で使用してもよく、また2種以上併用してもよい。
ついで、式(4)の化合物を、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)等の溶媒の存在下、触媒として、例えば、カリウム第3級ブトキシド等の塩基性化合物を使用して加水分解し、一般式(5)の化合物を得る。
この加水分解工程において使用する触媒としては、塩基性化合物に限らず、酸性化合物及び遷移金属触媒も使用できる。
触媒として使用する塩基性化合物としては、例えば、アルカリ金属あるいはアルカリ金属塩等が挙げられ、酸性化合物としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、臭化水素酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、あるいは上記の各種ルイス酸が挙げられる。また、遷移金属触媒としては各種遷移金属塩等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用しても良い。
また、使用する溶媒としては、上記DMSOの他、N,N−ジメチルホルムアミド、1,2−ジメトキシエタン等の極性溶媒であってもよく、また、ヘキサン、ベンゼン、ジクロロメタン等の非極性溶媒も用いることができる。これらは一種単独で使用してもよく、また2種以上併用してもよい。
〔工程3〕
式(5)の化合物に対して、溶媒として、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)の存在下、触媒としてより多量のカリウム第3級ブトキシド等を使用して、2重結合の転移反応(マイグレーション)を行ない、一般式(6)の化合物を得る。
この工程の触媒としては、上記カリウム第3級ブトキシドの他、例えば、アルカリ金属あるいはアルカリ金属塩等の塩基性化合物、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、臭化水素酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、あるいは上記の各種ルイス酸等の酸性化合物、および各種遷移金属塩等の遷移金属触媒が用いられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用しても良い。
また、使用する溶媒としては、上記DMSOの他、N,N−ジメチルホルムアミド、1,2−ジメトキシエタン等の極性溶媒であってもよく、また、ヘキサン、ベンゼン、ジクロロメタン等の非極性溶媒も用いることができる。これらは一種単独で使用してもよくまた2種以上併用してもよい。
この工程3の反応系は触媒の使用量及び反応温度をのぞいて、工程2の反応系と同様であり、工程2において、あらかじめ触媒量を多くし、反応温度を高めに設定(例えば50℃)すれば、工程2と工程3を同時に行なうことができる。
なお、式(6)の化合物においては、幾何異性体として、Z体、E体が存在するが、本発明においてはこれらを分離することなく、次工程の原料化合物としてそのまま使用できる。
式(5)の化合物に対して、溶媒として、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)の存在下、触媒としてより多量のカリウム第3級ブトキシド等を使用して、2重結合の転移反応(マイグレーション)を行ない、一般式(6)の化合物を得る。
この工程の触媒としては、上記カリウム第3級ブトキシドの他、例えば、アルカリ金属あるいはアルカリ金属塩等の塩基性化合物、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、臭化水素酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、あるいは上記の各種ルイス酸等の酸性化合物、および各種遷移金属塩等の遷移金属触媒が用いられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用しても良い。
また、使用する溶媒としては、上記DMSOの他、N,N−ジメチルホルムアミド、1,2−ジメトキシエタン等の極性溶媒であってもよく、また、ヘキサン、ベンゼン、ジクロロメタン等の非極性溶媒も用いることができる。これらは一種単独で使用してもよくまた2種以上併用してもよい。
この工程3の反応系は触媒の使用量及び反応温度をのぞいて、工程2の反応系と同様であり、工程2において、あらかじめ触媒量を多くし、反応温度を高めに設定(例えば50℃)すれば、工程2と工程3を同時に行なうことができる。
なお、式(6)の化合物においては、幾何異性体として、Z体、E体が存在するが、本発明においてはこれらを分離することなく、次工程の原料化合物としてそのまま使用できる。
〔工程4〕
図1中、一般式(6)の化合物を例えば、ジクロロメタン等からなる溶媒中で、触媒として臭素化硼素等のルイス酸の存在下、アルコキシ基のアルキル基を脱離させ、式(7)の化合物を得る。
工程4における、触媒としては、上記臭素化硼素の他、上記各種ルイス酸等が使用できるが、さらに、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、臭化水素酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の酸性化合物、あるいはアルカリ金属、アルカリ金属塩等の塩基性化合物、遷移金属塩等の遷移金属触媒も用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、反応溶媒としては、上記ジクロロメタンの他の非極性溶媒の他、DMSO(ジメチルスルホキシド)、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)、DME(1,2−ジメトキシエタン)等の極性溶媒が用いられる。また、他の非極性溶媒としては、ヘキサン、ベンゼン等が挙げられる。これら溶媒は1種単独で使用してもよく、2種以上を併用しても良い。
図1中、一般式(6)の化合物を例えば、ジクロロメタン等からなる溶媒中で、触媒として臭素化硼素等のルイス酸の存在下、アルコキシ基のアルキル基を脱離させ、式(7)の化合物を得る。
工程4における、触媒としては、上記臭素化硼素の他、上記各種ルイス酸等が使用できるが、さらに、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、臭化水素酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の酸性化合物、あるいはアルカリ金属、アルカリ金属塩等の塩基性化合物、遷移金属塩等の遷移金属触媒も用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、反応溶媒としては、上記ジクロロメタンの他の非極性溶媒の他、DMSO(ジメチルスルホキシド)、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)、DME(1,2−ジメトキシエタン)等の極性溶媒が用いられる。また、他の非極性溶媒としては、ヘキサン、ベンゼン等が挙げられる。これら溶媒は1種単独で使用してもよく、2種以上を併用しても良い。
以下に本発明の実施例を、図3を参照しつつ示すが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
〔実施例1〕
<中間体1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニル−1−ブテン(図3中、式(7’)の化合物)の製造>
(1):反応容器に、酸触媒としてHfCl4を80.1mg(1当量)を加えて0℃に維持しながら、アニソール0.5ml、アニソール1mlにトリメチルシリルトリフルオロメタンスルフォネート(TMSOTf)27.8mg(0.5当量)を溶解した溶液、4−ピバロイルオキシベンズアルデヒド(図3中、式(1)の化合物)51.6mg(0.25mM)、及びアニソール1mlに1−フェニル−3−トリメチルシリル−1−プロペン(図3中、式(2)の化合物)57.1mg(1.2当量)を溶解した溶液を順次加えた。なお、アニソールの合計使用量は2.5mlである。ついで、室温で反応を行い2時間経過後、反応生成物の一部に対し、薄層クロマトグラフィー(TLC)(展開溶媒;n−ヘキサン/酢酸エチル=10/1)を行って原料化合物が検出されなくなったことを確認した後、反応系を0℃に冷却するとともに、NaHCO3水溶液を加えて反応を終了させた。
この後、反応生成物をエーテルで抽出した後、有機層を水および飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。有機層を濃縮後、分取薄層クロマトグラフィー(展開溶媒;ヘキサン/酢酸エチル=10/1)による精製を行ない、4−(4−ピバロイルオキシフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)−3−フェニル−1−ブテン(図3中、式(4’)の化合物)を64.7mg得た。収率は62%であった。
〔実施例1〕
<中間体1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニル−1−ブテン(図3中、式(7’)の化合物)の製造>
(1):反応容器に、酸触媒としてHfCl4を80.1mg(1当量)を加えて0℃に維持しながら、アニソール0.5ml、アニソール1mlにトリメチルシリルトリフルオロメタンスルフォネート(TMSOTf)27.8mg(0.5当量)を溶解した溶液、4−ピバロイルオキシベンズアルデヒド(図3中、式(1)の化合物)51.6mg(0.25mM)、及びアニソール1mlに1−フェニル−3−トリメチルシリル−1−プロペン(図3中、式(2)の化合物)57.1mg(1.2当量)を溶解した溶液を順次加えた。なお、アニソールの合計使用量は2.5mlである。ついで、室温で反応を行い2時間経過後、反応生成物の一部に対し、薄層クロマトグラフィー(TLC)(展開溶媒;n−ヘキサン/酢酸エチル=10/1)を行って原料化合物が検出されなくなったことを確認した後、反応系を0℃に冷却するとともに、NaHCO3水溶液を加えて反応を終了させた。
この後、反応生成物をエーテルで抽出した後、有機層を水および飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。有機層を濃縮後、分取薄層クロマトグラフィー(展開溶媒;ヘキサン/酢酸エチル=10/1)による精製を行ない、4−(4−ピバロイルオキシフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)−3−フェニル−1−ブテン(図3中、式(4’)の化合物)を64.7mg得た。収率は62%であった。
(2):反応容器に上記工程(1)において得られた、4−(4−ピバロイルオキシフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)−3−フェニル−1−ブテン(図3中、式(4’)の化合物)57.2mg(0.138mM)、カリウム第3級ブトキシド(tBuOK)15.5mg、及びジメチルスルホキシド(DMSO)0.69ml(0.2M)を加えて、室温で15分反応させ、ピバロイル基を加水分解した。次いで、反応系を0℃に冷却するとともに塩化アンモニウム水溶液を加え反応を終了させた。
反応生成物を酢酸エチルで抽出した後、有機層を水および飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。有機層を濃縮後、分取薄層クロマトグラフィー(展開溶媒;ヘキサン/酢酸エチル=3/1)による精製を行ない、4−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)−3−フェニル−1−ブテン(図3中、式(5’)の化合物)を46.7mg得た。収率は定量的であった。
反応生成物を酢酸エチルで抽出した後、有機層を水および飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。有機層を濃縮後、分取薄層クロマトグラフィー(展開溶媒;ヘキサン/酢酸エチル=3/1)による精製を行ない、4−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)−3−フェニル−1−ブテン(図3中、式(5’)の化合物)を46.7mg得た。収率は定量的であった。
(3):反応容器に上記工程(2)において得られた、4−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)−3−フェニル−1−ブテン(図3中、式(5)の化合物)45.7mg、ジメチルスルホキシド(DMSO)1ml(0.138M)を加え反応系の温度を50℃に加温し、さらに、カリウム第3級ブトキシド283.9mg(18当量)を加えて、2重結合転移反応を行った。50℃で30分維持した後、反応生成物の一部に対し薄層クロマトグラフィー(展開溶媒;n−ヘキサン/酢酸エチル=3/1)を行って、上記式(5’)の化合物に対応するスポットが検出されなくなったことを確認した後、反応系を0℃に冷却するとともに塩化アンモニウム水溶液を加え反応を終了させた。
ついで、反応生成物を酢酸エチルで抽出した後、有機層を水および飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。有機層を濃縮後、分取薄層クロマトグラフィー(展開溶媒;ヘキサン/酢酸エチル=3/1)による精製を行ない、1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−(4−メトキシフェニル)−2−フェニル−1−ブテン(図3中、式(6’)の化合物)、を37.2mg得た。収率は81%であった。
ついで、反応生成物を酢酸エチルで抽出した後、有機層を水および飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。有機層を濃縮後、分取薄層クロマトグラフィー(展開溶媒;ヘキサン/酢酸エチル=3/1)による精製を行ない、1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−(4−メトキシフェニル)−2−フェニル−1−ブテン(図3中、式(6’)の化合物)、を37.2mg得た。収率は81%であった。
(4):反応容器に上記工程(3)で得られた、1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−(4−メトキシフェニル)−2−フェニル−1−ブテン(図3中、式(6’)の化合物)145.2mg(0.439mM)とジクロロメタン2.2mlを加え、反応系を−78℃に冷却した。次いで臭素化硼素(BBr3)10当量を含むヘプタン1M溶液4.39mlを加え、1時間維持した。次いで反応温度を0℃に上昇させた。さらに3時間経過後、反応生成物の一部に対し、薄層クロマトグラフィー(展開溶媒;n−ヘキサン/酢酸エチル=3/1)を行って、上記式(6’)の化合物に対応するスポットが検出されなくなったことを確認した後、NaHCO3水溶液を加え、反応を終了させた。
反応生成物をジクロロメタンで抽出した後、有機層を水および飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。有機層を濃縮後、生じた固体を塩化メチレンに溶解し、再結晶させ、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニル−1−ブテン(図3中、式(7’)の化合物)中の結晶61.4mgを得た。一方、液相を濃縮後、分取薄層クロマトグラフィー(展開溶媒;ヘキサン/酢酸エチル=3/1)による精製を行ない、中間体1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニル−1−ブテンを58.4mg得た。前者の結晶との合計は119.6mgであり、収率は86%であった。
反応生成物をジクロロメタンで抽出した後、有機層を水および飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。有機層を濃縮後、生じた固体を塩化メチレンに溶解し、再結晶させ、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニル−1−ブテン(図3中、式(7’)の化合物)中の結晶61.4mgを得た。一方、液相を濃縮後、分取薄層クロマトグラフィー(展開溶媒;ヘキサン/酢酸エチル=3/1)による精製を行ない、中間体1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニル−1−ブテンを58.4mg得た。前者の結晶との合計は119.6mgであり、収率は86%であった。
上記各工程で得られた化合物のNMR測定結果を以下に示す。
式(4’)の化合物
1H NMR(CDCl3)σ= 7.32-6.75(m, 11H, Ph), 6.57(d, J=8.6Hz, 2H, Ph), 5.94-5.84(m, 1H, 3-H), 4.90-4.80(m, 1H, 4-H), 4.25(d, J=11.6 HZ, 1H, 1-H), 4.06(dd, J=7.1, 9.6 Hz, 1H, 2-H), 3.66(s, 3H, MeO), 1.31(s, 9H, PivO)
式(4’)の化合物
1H NMR(CDCl3)σ= 7.32-6.75(m, 11H, Ph), 6.57(d, J=8.6Hz, 2H, Ph), 5.94-5.84(m, 1H, 3-H), 4.90-4.80(m, 1H, 4-H), 4.25(d, J=11.6 HZ, 1H, 1-H), 4.06(dd, J=7.1, 9.6 Hz, 1H, 2-H), 3.66(s, 3H, MeO), 1.31(s, 9H, PivO)
式(6’)の化合物(Z体とE体の等量混合物)
1H NMR(CDCl3) σ=7.27-6.45(m, 13H, Ph),3.82 and 3.67(s, 3H, MeO), 2.48(q, J=7.3Hz, 2H, 3-H), 0.93 and 0.92(t, J=7.3Hz, 3H, 4-H)
1H NMR(CDCl3) σ=7.27-6.45(m, 13H, Ph),3.82 and 3.67(s, 3H, MeO), 2.48(q, J=7.3Hz, 2H, 3-H), 0.93 and 0.92(t, J=7.3Hz, 3H, 4-H)
式(7’)の化合物(1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニル−1−ブテン)
1H NMR(CDCl3)σ=7.29-6.45(m, 13H, Ph), 2.48(q, J=7.6Hz, 2H, 3-H), 0.92(t, J=7.6 Hz, 3H, 4-H)
1H NMR(CDCl3)σ=7.29-6.45(m, 13H, Ph), 2.48(q, J=7.6Hz, 2H, 3-H), 0.92(t, J=7.6 Hz, 3H, 4-H)
〔実施例2〕
<リダイフェンDの製造>
反応容器に、60重量%水素化ナトリウム(NaH)含有オイル50.4mg(水素化ナトリウム20当量)を加え、これを石油エーテルで洗浄した後乾燥させた。次に、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)0.6ml(0.1M)を投入し、0℃に保った。実施例1で得られた、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニル−1−ブテン(図3中、式(7’)の化合物)20mg(0.0632mM)を反応容器に加え、室温で15分維持した後、0℃に冷却し、1−(2−クロロエチル)−モルホリン塩酸塩(図3中、式(8’)の化合物)117mg(10当量)を加え、50℃で6時間反応させた後、反応系を0℃に冷却するとともに、塩化アンモニウム水溶液を加え、反応を終了させた。反応生成物をジクロロメタンで抽出し、有機層を水および飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。有機層を濃縮後、薄層クロマトグラフィー(展開溶媒;クロロホルム/メタノール=9/1)を行いリダイフェンD(図3中、式(9)の化合物:1,1−ビス[4−(2−モルホリン−1−イル−エトキシ)フェニル]−2−フェニル−1−ブテン)29mgを得た。収率は84%であった。
得られた化合物のNMR測定結果は以下の通りである。
1HNMR(CDCl3)σ=7.20-7.06(m, 13H, Ph), 4.14 and 3.98(t, J=5.7 Hz, 4H, OCH2), 3.77-3.69(m, 8H, O(CH2)2), 2.83 and 2.73(t, J=5.7 Hz, 4H, NCH2), 2.63-2.52(m, 8H, N(CH2)2), 2.49(q, J=7.6 Hz, 2H, 3-H), 0.92(t, J=7.6 Hz, 3H, 4-H)
<リダイフェンDの製造>
反応容器に、60重量%水素化ナトリウム(NaH)含有オイル50.4mg(水素化ナトリウム20当量)を加え、これを石油エーテルで洗浄した後乾燥させた。次に、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)0.6ml(0.1M)を投入し、0℃に保った。実施例1で得られた、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニル−1−ブテン(図3中、式(7’)の化合物)20mg(0.0632mM)を反応容器に加え、室温で15分維持した後、0℃に冷却し、1−(2−クロロエチル)−モルホリン塩酸塩(図3中、式(8’)の化合物)117mg(10当量)を加え、50℃で6時間反応させた後、反応系を0℃に冷却するとともに、塩化アンモニウム水溶液を加え、反応を終了させた。反応生成物をジクロロメタンで抽出し、有機層を水および飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。有機層を濃縮後、薄層クロマトグラフィー(展開溶媒;クロロホルム/メタノール=9/1)を行いリダイフェンD(図3中、式(9)の化合物:1,1−ビス[4−(2−モルホリン−1−イル−エトキシ)フェニル]−2−フェニル−1−ブテン)29mgを得た。収率は84%であった。
得られた化合物のNMR測定結果は以下の通りである。
1HNMR(CDCl3)σ=7.20-7.06(m, 13H, Ph), 4.14 and 3.98(t, J=5.7 Hz, 4H, OCH2), 3.77-3.69(m, 8H, O(CH2)2), 2.83 and 2.73(t, J=5.7 Hz, 4H, NCH2), 2.63-2.52(m, 8H, N(CH2)2), 2.49(q, J=7.6 Hz, 2H, 3-H), 0.92(t, J=7.6 Hz, 3H, 4-H)
〔実施例3〕
<リダイフェンD、及び他のリダイフェン類縁体による血管新生抑制>
1.CAM(鶏胚漿尿膜法)による血管新生抑制活性の検定
(1)リダイフェンAの活性検定
a.サンプルの調製
5%EV(ethylene-vinyl acetate copolymer 40)にリダイフェンAを溶かし、10μlをガラスシャーレに滴下し、風乾させ、次に、スパーテルを用いて、風乾したフィルム状のEVを球形のペレットにして、一晩以上、冷凍庫保存した。
b.実験
鶏卵を37℃で培養し、培養4日後に、気室上部及び鶏卵側部の卵殻の2ヶ所に錐で穴を開け、側部の穴より約4mlの卵白を注射器で吸引除去した。また、上部の穴より駒込ピペット用シリコンスポイトをあてて吸引し、気室上部に仮気室を作り、仮気室上の卵殻膜を除去し、窓を作り、これらの穴をオートクレーブしたアルミ箔でキャップした。
培養5日後に、上記aで作成したEVペレットを漿尿膜上にのせ、再びアルミ箔でキャップした。
培養7日後に、観察しやすいように卵殻を取り除き、窓を広げ、さらに、血管網を見やすくするために漿尿膜内に脂肪乳剤を適当量注入し、漿尿膜上の血管網を実体顕微鏡下で観察した。この観察において3mm以上の無血管領域がある場合を血管新生を抑制するものと判定した。
結果を図4(A)に示す。この結果により、リダイフェンAは、血管新生抑制作用を示すことが明らかである。
<リダイフェンD、及び他のリダイフェン類縁体による血管新生抑制>
1.CAM(鶏胚漿尿膜法)による血管新生抑制活性の検定
(1)リダイフェンAの活性検定
a.サンプルの調製
5%EV(ethylene-vinyl acetate copolymer 40)にリダイフェンAを溶かし、10μlをガラスシャーレに滴下し、風乾させ、次に、スパーテルを用いて、風乾したフィルム状のEVを球形のペレットにして、一晩以上、冷凍庫保存した。
b.実験
鶏卵を37℃で培養し、培養4日後に、気室上部及び鶏卵側部の卵殻の2ヶ所に錐で穴を開け、側部の穴より約4mlの卵白を注射器で吸引除去した。また、上部の穴より駒込ピペット用シリコンスポイトをあてて吸引し、気室上部に仮気室を作り、仮気室上の卵殻膜を除去し、窓を作り、これらの穴をオートクレーブしたアルミ箔でキャップした。
培養5日後に、上記aで作成したEVペレットを漿尿膜上にのせ、再びアルミ箔でキャップした。
培養7日後に、観察しやすいように卵殻を取り除き、窓を広げ、さらに、血管網を見やすくするために漿尿膜内に脂肪乳剤を適当量注入し、漿尿膜上の血管網を実体顕微鏡下で観察した。この観察において3mm以上の無血管領域がある場合を血管新生を抑制するものと判定した。
結果を図4(A)に示す。この結果により、リダイフェンAは、血管新生抑制作用を示すことが明らかである。
(2)リダイフェンB、C、Dの活性検定
上記リダイフェンAについての活性検定と同様にして、リダイフェンB、CおよびDの活性検定を行った。
結果を図4(B)に示す。この結果によれば、リダイフェンD(RDD)の血管新生抑制効果が、他のタモキシフェン類縁体比べて高いことが明らかである。
なお、上記実験に使用したリダイフェンA、B、C(特願2005−274471号)の各化学構造は以下に示されるとおりである。
上記リダイフェンAについての活性検定と同様にして、リダイフェンB、CおよびDの活性検定を行った。
結果を図4(B)に示す。この結果によれば、リダイフェンD(RDD)の血管新生抑制効果が、他のタモキシフェン類縁体比べて高いことが明らかである。
なお、上記実験に使用したリダイフェンA、B、C(特願2005−274471号)の各化学構造は以下に示されるとおりである。
〔実施例4〕
〈リダイフェンD、及びその他リダイフェン類縁体による血管内皮細胞の遊走の抑制〉
35mmdishにBAEC(1×106cells/2ml)をまき、24h培養し接着させた。
次いで、カミソリで上記dish上の細胞を剥ぎ取り、MEM(−)培地で3回washした。各リダイフェン類縁体を含んだ培地(MEM培地FBS5%)に替え、18hの培養後、ギムザ染色を行った。その後上記剥ぎ取った領域(無細胞領域)に周囲から遊走した細胞数を測定した。結果を図5に示す。
なお、図中縦軸は、(各濃度のリダイフェン類縁体添加時の遊走細胞数)/(無添加の場合の遊走細胞数)を表す。また、遊走細胞数は、上記剥ぎ取った領域中の任意の10カ所を顕微鏡で選び、1視野当たりの遊走細胞数を数え、10カ所の平均値として算出したものである。
特に図5(A)によれば、リダイフェンDは、濃度依存的に血管内皮細胞の遊走を抑制していることが分かる。
〈リダイフェンD、及びその他リダイフェン類縁体による血管内皮細胞の遊走の抑制〉
35mmdishにBAEC(1×106cells/2ml)をまき、24h培養し接着させた。
次いで、カミソリで上記dish上の細胞を剥ぎ取り、MEM(−)培地で3回washした。各リダイフェン類縁体を含んだ培地(MEM培地FBS5%)に替え、18hの培養後、ギムザ染色を行った。その後上記剥ぎ取った領域(無細胞領域)に周囲から遊走した細胞数を測定した。結果を図5に示す。
なお、図中縦軸は、(各濃度のリダイフェン類縁体添加時の遊走細胞数)/(無添加の場合の遊走細胞数)を表す。また、遊走細胞数は、上記剥ぎ取った領域中の任意の10カ所を顕微鏡で選び、1視野当たりの遊走細胞数を数え、10カ所の平均値として算出したものである。
特に図5(A)によれば、リダイフェンDは、濃度依存的に血管内皮細胞の遊走を抑制していることが分かる。
〔実施例5〕
〈MTTアッセイによる血管内皮細胞生存率の測定〉
BAEC(ウシ冠動脈血管内皮細胞)を1×105cell/mlになるように調製し、96穴プレートに100μl/wellづつ播き、37℃、5%CO2下で24時間培養した後、培養上清を除去し、リダイフェンD、リダイフェンA〜C、及びタモキシフェンを、それぞれ各濃度で含有するMEM培地に交換し、さらに24時間培養した後、MTT(3−(4,5−ジメチル−チアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウム ブロマイド)保存液(MTT 5mg/mlin PBS(-) )を11μl/wellづつ添加した。1時間培養後、上澄みを除去しDMSOを100μl/Wellずつ加え、マイクロプレートリーダー(575nm)で吸光度を測定し、細胞の生残率を求めた。結果を図6に示す。
なお、上記MTTアッセイは、細胞数の測定を、ミトコンドリアの脱水素酵素活性を測定することにより行うものであって、該酵素活性の測定は、コハク酸デヒドロゲナーゼによるMTTのテトラゾリウム環の開裂に伴う不溶性の暗青色ホルマザン色素の生成量を、上記培養後、遠心して上澄みを除き、沈殿として残った上記色素をDMSOで溶解し、マイクロプレートリーダーで測定するものである。
図6の結果によればリダイフェンA,B、Cはいずれも、ほぼ5μMでウシ冠動脈血管内皮細胞の生残数を0にしているのに対し、本発明のリダイフェンD、及びタモキシフェン添加の場合は、冠動脈血管内皮細胞がほとんど生残していることが分かる。すなわち、本発明のリダイフェンDは血管内皮細胞の細胞傷害性がなく、血管新生抑制作用を有することが明らかである。
〈MTTアッセイによる血管内皮細胞生存率の測定〉
BAEC(ウシ冠動脈血管内皮細胞)を1×105cell/mlになるように調製し、96穴プレートに100μl/wellづつ播き、37℃、5%CO2下で24時間培養した後、培養上清を除去し、リダイフェンD、リダイフェンA〜C、及びタモキシフェンを、それぞれ各濃度で含有するMEM培地に交換し、さらに24時間培養した後、MTT(3−(4,5−ジメチル−チアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウム ブロマイド)保存液(MTT 5mg/mlin PBS(-) )を11μl/wellづつ添加した。1時間培養後、上澄みを除去しDMSOを100μl/Wellずつ加え、マイクロプレートリーダー(575nm)で吸光度を測定し、細胞の生残率を求めた。結果を図6に示す。
なお、上記MTTアッセイは、細胞数の測定を、ミトコンドリアの脱水素酵素活性を測定することにより行うものであって、該酵素活性の測定は、コハク酸デヒドロゲナーゼによるMTTのテトラゾリウム環の開裂に伴う不溶性の暗青色ホルマザン色素の生成量を、上記培養後、遠心して上澄みを除き、沈殿として残った上記色素をDMSOで溶解し、マイクロプレートリーダーで測定するものである。
図6の結果によればリダイフェンA,B、Cはいずれも、ほぼ5μMでウシ冠動脈血管内皮細胞の生残数を0にしているのに対し、本発明のリダイフェンD、及びタモキシフェン添加の場合は、冠動脈血管内皮細胞がほとんど生残していることが分かる。すなわち、本発明のリダイフェンDは血管内皮細胞の細胞傷害性がなく、血管新生抑制作用を有することが明らかである。
〔実施例6〕
<白血病T細胞であるJurkat細胞に対するリダイフェンD、及び他のリダイフェン類縁体の作用>
(1)細胞傷害性の計測
Jurkat細胞を、10%FCS(牛胎児血清)を含有するRPMI1640培地で、37℃、5%CO2の条件下で培養し、2×105cells/ml濃度になるように調製した。
この2×105cells/ml濃度に調製したJurkat細胞試料溶液を96穴プレートの各ウエルに90μlずつ分注し、さらに、該細胞試料を含有する各ウエルに、リダイフェンD、リダイフェンA〜Cをそれぞれ10μM添加した。
これら全てを入れ終わった後24時間インキュベートした、24時間後インキュベーターから取り出し、各ウエルに、上記実施例5と同様のMTT保存液を加え、実施例5と同様の操作を行い、細胞の生残率を求めた。結果を図7に示す。
図7の結果によれば、リダイフェンA〜Cは、Jurkat細胞に対して顕著な細胞傷害を引き起こしているのに対し、リダイフェンDは、殆ど細胞傷害性有していないことが分かる。
以上の実験結果から明らかなように、本発明のリダイフェンDは、同様の対称型の置換アミノエチルオキシフェニル基を有するリダイフェンA、B、Cとは細胞傷害性の点で全く異なる作用を有し、この点で極めて特異的である。
<白血病T細胞であるJurkat細胞に対するリダイフェンD、及び他のリダイフェン類縁体の作用>
(1)細胞傷害性の計測
Jurkat細胞を、10%FCS(牛胎児血清)を含有するRPMI1640培地で、37℃、5%CO2の条件下で培養し、2×105cells/ml濃度になるように調製した。
この2×105cells/ml濃度に調製したJurkat細胞試料溶液を96穴プレートの各ウエルに90μlずつ分注し、さらに、該細胞試料を含有する各ウエルに、リダイフェンD、リダイフェンA〜Cをそれぞれ10μM添加した。
これら全てを入れ終わった後24時間インキュベートした、24時間後インキュベーターから取り出し、各ウエルに、上記実施例5と同様のMTT保存液を加え、実施例5と同様の操作を行い、細胞の生残率を求めた。結果を図7に示す。
図7の結果によれば、リダイフェンA〜Cは、Jurkat細胞に対して顕著な細胞傷害を引き起こしているのに対し、リダイフェンDは、殆ど細胞傷害性有していないことが分かる。
以上の実験結果から明らかなように、本発明のリダイフェンDは、同様の対称型の置換アミノエチルオキシフェニル基を有するリダイフェンA、B、Cとは細胞傷害性の点で全く異なる作用を有し、この点で極めて特異的である。
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JPWO2009035020A1 (ja) * | 2007-09-11 | 2010-12-24 | 学校法人東京理科大学 | 新規ジヒドロナフタレン化合物及びその用途 |
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