JP2007245938A - 自動二輪車用ラジアルタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】旋回安定性に優れる自動二輪車用ラジアルタイヤ2の提供。
【解決手段】本発明に係るタイヤ2は、コア24及びエイペックス26を備えた一対のビード8と、両側のビード8に架け渡されたカーカス10と、このカーカス10の半径方向外側に位置するベルト12と、軸方向において離間しておりこのベルト12の半径方向外側に位置する一対の補強層14とを備えている。この補強層14の厚みは、0.5mm以上3mm以下である。この補強層14の軸方向幅の、トレッド4の軸方向幅に対する比は0.3以上0.45以下である。この補強層14は、周方向に対して傾いている短繊維を含んでいる。この短繊維の周方向に対してなす配向角度の絶対値は、30°以上90°以下である。このベルト12は、ベルトプライ30からなる。このベルトプライ30は、螺旋状に巻かれて実質的に周方向に延びるベルトコードを備えている。
【選択図】図1

Description

本発明は、自動二輪車用ラジアルタイヤに関する。
自動二輪車に装着される空気入りタイヤには、ベルトコード及びトッピングゴムからなる帯体が赤道面に対して5°以下の角度で螺旋状に周巻きされることにより、ベルトが形成されるタイヤがある。このベルトの構造は、「ジョイントレス構造」と称されている。このようなタイヤは、高速走行時の操縦安定性及び耐久性に優れている。
自動二輪車の旋回時には、この自動二輪車に遠心力が働く。旋回には、この遠心力につり合うコーナリングフォースが必要である。旋回時にライダーは、自動二輪車を内側へ傾斜させる。この傾斜によって生じるキャンバースラストにより、旋回が達成される。旋回の容易の目的で、自動二輪車用のタイヤは曲率半径の小さなトレッドを備えている。直進時には、トレッドのセンター領域が接地する。一方旋回時には、センター領域よりも外側の領域が接地する。
高速安定性と旋回性能とを両立させうる自動二輪車用ラジアルタイヤが、特許第3296616号公報に開示されている。このタイヤは、ベルトとカーカスとの間に、短繊維を含むゴム層を備えている。
特許第3296616号公報
その構造がジョイントレス構造とされたベルトを備えたタイヤでは、周方向に延びるベルトコードは軸方向に並んでいる。このタイヤを装着した自動二輪車が内側に傾けられて旋回するとき、このタイヤに生じる軸方向の力により、このベルトコードの間隔は押し広げられる。ベルトコードの間隔が拡がるとトレッドの剛性が下がるので、旋回時においてトラクション性能が充分に発揮されない。このようなタイヤは、旋回安定性に劣る。
本発明の目的は、旋回安定性に優れる自動二輪車用ラジアルタイヤの提供にある。
本発明に係る自動二輪車用ラジアルタイヤは、一対のビードと、両側のビードに架け渡されたカーカスと、このカーカスの半径方向外側に位置するベルトと、軸方向において離間しておりこのベルトの半径方向外側に位置する一対の補強層とを備えている。この補強層の厚みは、0.5mm以上3mm以下である。この補強層の軸方向幅の、トレッドの軸方向幅に対する比は0.3以上0.45以下である。この補強層は、短繊維を含んでいる。この短繊維は、周方向に対して傾いている。この短繊維の周方向に対してなす配向角度の絶対値は、30°以上90°以下である。このベルトは、ベルトプライからなる。このベルトプライは、螺旋状に巻かれて実質的に周方向に延びるベルトコードを備えている。
好ましくは、このタイヤでは、一方の補強層における短繊維の配向角度の絶対値は、他方の補強層における短繊維の配向角度の絶対値と実質的に同じである。一方の補強層における短繊維の配向方向は、他方の補強層における短繊維の配向方向とは逆である。好ましくは、このタイヤでは、上記短繊維は、紙繊維である。
このタイヤは、ベルトコードが螺旋状に巻かれて実質的に周方向に延びているベルトを備えているので、直進安定性に優れる。軸方向に離間して配置されており短繊維を含む補強層が、トレッドのショルダーの近傍における剛性を高めつつ、軸方向に並ぶベルトコードの動きを拘束する。このタイヤでは、この補強層の厚み及び短繊維の配向角度が適切に調節されている。このため、旋回時にこのタイヤに生じる軸方向の力で、このベルトコードの間隔が押し広げられることはない。このタイヤでは、旋回時においてもトラクション性能が充分に発揮されうる。このようなタイヤは、旋回安定性に優れる。この補強層はトレッドのセンター付近に配置されないので、良好な直進安定性が維持されうる。このタイヤは、直進安定性を維持しつつ旋回安定性に優れる。
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
図1は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤ2の一部が示された断面図である。この図1において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。このタイヤ2は、図1中の一点鎖線CLを中心としたほぼ左右対称の形状を呈する。この一点鎖線CLは、タイヤ2の赤道面を表す。このタイヤ2は、トレッド4、サイドウォール6、ビード8、カーカス10、ベルト12、補強層14、インナーライナー16及びチェーファー18を備えている。このタイヤ2は、チューブレスタイプの空気入りタイヤである。
トレッド4は架橋ゴムからなり、半径方向外向きに凸な形状を呈している。このトレッド4の外面は、路面と接地するトレッド面20を形成する。なお、このトレッド面20に溝が刻まれることにより、トレッドパターンが形成されてもよい。
サイドウォール6は、トレッド4の端22から半径方向略内向きに延びている。このサイドウォール6は、架橋ゴムからなる。サイドウォール6は、撓みによって路面からの衝撃を吸収する。さらにサイドウォール6は、カーカス10の外傷を防止する。
ビード8は、サイドウォール6から半径方向略内向きに延びている。ビード8は、コア24と、このコア24から半径方向外向きに延びるエイペックス26とを備えている。コア24はリング状であり、複数本の非伸縮性ワイヤー(典型的にはスチール製ワイヤー)を含む。エイペックス26は、半径方向外向きに先細りであり、高硬度な架橋ゴムからなる。
カーカス10は、両側のビード8の間に架け渡されており、トレッド4及びサイドウォール6の内側に沿っている。このカーカス10は、カーカスプライ28からなる。カーカスプライ28は、コア24の周りを、軸方向内側から外側に向かって巻かれている。図示されていないが、カーカスプライ28は、カーカスコードとトッピングゴムとからなる。カーカスコードの周方向に対してなす角度の絶対値は、通常は75°から90°である。換言すれば、このタイヤ2はラジアルタイヤである。カーカスコードは、通常は有機繊維からなる。好ましい有機繊維としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。このカーカス10に、2枚以上のカーカスプライ28が用いられてもよい。
ベルト12は、カーカス10の半径方向外側に位置している。ベルト12は、カーカス10を補強する。このベルト12は、ベルトプライ30からなる。このベルトプライ30は、長尺の帯体が螺旋状に周巻されることにより得られる。図示されていないが、この帯体は、長手方向に延びる一本又は複数本のベルトコードとトッピングゴムとからなる。換言すれば、このベルトプライ30は、螺旋状に巻かれて実質的に周方向に延びるベルトコードを備えている。このベルトコードの周方向に対してなす角度は5°以下、特には2°以下である。このベルトコードは、いわゆるジョイントレス構造である。このベルトコードは、直進走行時の駆動性能に寄与する。このベルトコードはさらに、直進走行時の安定性能及び制動性能にも寄与する。このベルトコードの好ましい材質としては、ナイロン繊維、アラミド繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ガラス繊維、炭素繊維及びスチールが挙げられる。なお、このベルト12に、2枚以上のベルトプライ30が用いられてもよい。
インナーライナー16は、カーカス10の内周面に接合されている。インナーライナー16は、架橋ゴムからなる。インナーライナー16には、空気透過性の少ないゴムが用いられている。インナーライナー16は、タイヤ2の内圧を保持する役割を果たす。
チェーファー18は、ビード8の近傍に位置している。タイヤ2がリムに組み込まれると、このチェーファー18がリムと当接する。この当接により、ビード8の近傍が保護される。チェーファー18は、通常は布とこの布に含浸したゴムとからなる。ゴム単体からなるチェーファー18が用いられてもよい。
補強層14は、ベルト12の半径方向外側に位置している。この補強層14は、ベルト12に積層している。両側の補強層14は、軸方向において離間している。この補強層14の外端32は、ショルダー34の近傍に位置している。
補強層14は、ゴム組成物が架橋されることにより得られる。このゴム組成物は、短繊維を含んでいる。換言すれば、この補強層14は短繊維を含んでいる。この短繊維は、この補強層14の質量増加を抑えつつ、この補強層14の剛性を効果的に高める。この短繊維は、周方向に対して傾いている。この補強層14の、軸方向における剛性は高い。このような補強層14を備えたタイヤ2では、タイヤ質量の増加も抑えられる。
このタイヤ2では、補強層14がショルダー34の近傍の剛性を高めつつ、軸方向に並ぶベルトコードの動きを効果的に拘束する。このため、旋回時にこのタイヤ2に生じる軸方向の力で、このベルトコードの間隔が押し広げられることはない。このタイヤ2では、旋回時においてもトラクション性能が充分に発揮されうる。このタイヤ2は、旋回安定性に優れる。
このタイヤ2では、補強層14は、トレッド4のセンター36の付近に配置されない。このタイヤ2は、良好な直進安定性を維持しうる。このタイヤ2は、直進安定性を維持しつつ旋回安定性に優れる。
図1において、両矢印線WTは赤道面からトレッド4の端22までの軸方向距離を表している。この明細書では、この軸方向距離WTがトレッド4の軸方向幅である。両矢印線WRは、補強層14の軸方向幅を表している。両矢印線TAは、補強層14の厚みを表している。両矢印線WAは、ベルト12の外端38からこの補強層14の外端32までの軸方向距離を表している。なお、この軸方向距離WAは、ベルト12の外端38が基準とされて軸方向外側に向かって計測される。従って、補強層14の外端32がこのベルト12の外端38よりも軸方向内側にある場合、この軸方向距離WAは負で示される。
このタイヤ2では、補強層14の軸方向幅WRのトレッド4の軸方向幅WTに対する比(WR/WT)は0.3以上0.45以下である。この比(WR/WT)が0.3以上に設定されることにより、補強層14がショルダー34の近傍の剛性を高めつつ、旋回時におけるベルトコード間隔の拡大を効果的に抑制する。このタイヤ2は、旋回安定性に優れる。この観点から、この比(WR/WT)は0.32以上がより好ましく、0.35以上が特に好ましい。この比(WR/WT)が0.45以下に設定されることにより、軸方向において両側の補強層14の離間距離が適切に維持されうる。このタイヤ2では、直進安定性が維持されうる。この観点から、この比(WR/WT)は0.43以下がより好ましく、0.41以下が特に好ましい。
このタイヤ2では、厚みTAは0.5mm以上3mm以下である。この厚みTAが0.5mm以上に設定されることにより、補強層14の剛性が高められる。この補強層14は、ショルダー34の近傍の剛性を高めつつ、旋回時におけるベルトコード間隔の拡大を効果的に抑制する。このタイヤ2は、旋回安定性に優れる。この観点から、この厚みTAは0.7mm以上がより好ましく、0.9mm以上が特に好ましい。この厚みTAが3mm以下に設定されることにより、ショルダー34の近傍の補強層14による剛性過大が抑えられる。グリップ力が維持されるので、このタイヤ2は良好な旋回安定性を維持しうる。この観点から、この厚みTAは2.5mm以下がより好ましく、2.0mm以下が特に好ましい。
このタイヤ2では、補強層14がショルダー34の近傍においてベルトコードの動きを効果的に拘束するために、補強層14の外端32は軸方向においてベルト12の外端38の近傍に位置するのが好ましい。この観点から、軸方向距離WAの絶対値は、3mm以下が好ましく2mm以下がより好ましい。特に、好ましくは1mm以下である。
このタイヤ2では、補強層14に含まれる短繊維の周方向に対してなす配向角度の絶対値は、30°以上90°以下である。この配向角度の絶対値が30°以上に設定されることにより、補強層14の軸方向の剛性が高められる。この補強層14は、ショルダー34の近傍の剛性を高めつつ、旋回時におけるベルトコード間隔の拡大を効果的に抑制する。このタイヤ2は、旋回安定性に優れる。この観点から、この配向角度の絶対値は35°以上がより好ましく、40°以上が特に好ましい。後述するように、この配向角度の絶対値の上限値は90°である。この配向角度の絶対値が90°であるとき、この補強層14の軸方向における剛性は最大となる。この補強層14は、ベルトコード間隔の拡大を最も効果的に抑制する。
本発明では、短繊維の配向角度は以下の方法で計測される。まず、補強層14を含んだ観察試料が、タイヤ2の周方向に沿って切り出されることによりタイヤ2からサンプリングされる。この観察試料には、この補強層14の断面が含まれる。次に、この補強層14の断面が、実体顕微鏡で観察される。この断面観察において、短繊維の長手の周方向に対してなす角度が計測される。周方向が基準(0°)とされて、−90°から+90°の範囲で、この角度は計測される。この明細書では、短繊維の両端が結ばれることにより得られる直線が短繊維の長手として用いられる。無作為に抽出された100本の短繊維について、この角度が計測される。次に、角度の計測データから、角度と頻度との関係(度数分布)が求められる。この関係において、最大頻度を示す角度が、この短繊維の周方向に対してなす配向角度として示される。具体的には、この角度と頻度との関係を表す度数分布関数において、最大ピークを示す角度が配向角度とされる。(短繊維がランダムに配置されている補強層14では、ピークは観測されない。)このようにして求められた配向角度の絶対値の下限は0°であり、上限は90°である。なお、この明細書では、図1において、紙面の奥から手前に向かう方向が基準周方向とされたとき、この基準周方向において紙面の左側から右側に向かって斜めに延びている短繊維の配向角度は正で示される。この基準周方向において紙面の右側から左側に向かって斜めに延びている短繊維の配向角度は負で示される。
前述した度数分布関数において、最大ピークの半値幅は短繊維の配向性を表す。短繊維の配向性が高まると、この半値幅は狭くなる。短繊維の配向性が高められることにより、補強層14の軸方向の剛性は効果的に調節されうる。このような補強層14を備えたタイヤ2は、タイヤ2の仕様に応じて補強層14の剛性を適切に設定しうる。この観点から、この半値幅は小さいことが好ましい。このタイヤ2では、この半値幅は30°以下が好ましい。この半値幅は20°以下であるのがより好ましく、10°以下が特に好ましい。
このタイヤ2では、補強層14は次のようにして形成される。まず、短繊維を含んだゴム組成物が、予備シートに成形される。この予備シートにおいて、短繊維は略成形方向に並んでいる。次に、この予備シートを打ち抜くことにより、帯状シートが成形される。この打ち抜きにおいて、帯状シートの長手は成型方向に対して斜めに傾けられる。従って、短繊維はこの帯シートの長手に対して傾いている。次に、この長手がタイヤ2の周方向に一致するように、この帯シートが加硫成形前のタイヤ2であるグリーンタイヤ2に組み合わされる。加硫工程において、このグリーンタイヤ2が加圧及び加熱されることにより、図1に示されるタイヤ2が得られる。このようにして得られたタイヤ2では、補強層14の短繊維は周方向に対して傾いている。
このタイヤ2では、一方の補強層14における配向角度の絶対値は他方の補強層14における配向角度の絶対値と実質的に同じである。具体的には、両者の差は5°以下、特には3°以下である。このタイヤ2では、軸方向における剛性の均衡が保持されている。このようなタイヤ2は、操縦安定性に優れる。
このタイヤ2では、一方の補強層14における短繊維の配向方向は他方の補強層14における短繊維の配向方向とは逆である。このタイヤ2では、軸方向における剛性の均衡が高精度で保持されている。このようなタイヤ2では、操縦安定性がさらに高められる。
このタイヤ2では、補強層14が構成されるゴム組成物への短繊維の配合量は、基材ゴム100質量部に対して0.5質量部以上10.0質量部以下であるのが好ましい。この短繊維の配合量が0.5質量部以上に設定されることにより、短繊維が補強層14を効果的に補強する。この補強層14は、ショルダー34の近傍の剛性を効果的に高めつつ、旋回時におけるベルトコード間隔の拡大を効果的に抑制する。このタイヤ2は、旋回安定性に優れる。この観点から、この短繊維の配合量は1.0質量部以上がより好ましく、2.0質量部以上が特に好ましい。この短繊維の配合量が10.0質量部以下に設定されることにより、補強層14の剛性が適切に維持されうる。ショルダー34の近傍の剛性過大が抑えられるので、グリップ力が維持されうる。このタイヤ2は、良好な旋回安定性を維持しうる。この観点から、この紙繊維の配合量は8.0質量部以下がより好ましく、5.0質量部以下が特に好ましい。
このタイヤ2では、短繊維の平均長さ(L)は10μm以上3000μm以下であるのが好ましい。この平均長さ(L)が10μm以上に設定されることにより、短繊維が補強層14を効果的に補強する。この補強層14は、ショルダー34の近傍の剛性を効果的に高めつつ、旋回時におけるベルトコード間隔の拡大を効果的に抑制する。このタイヤ2は、旋回安定性に優れる。この観点から、この平均長さ(L)は50μm以上がより好ましく、100μm以上が特に好ましい。この平均長さ(L)が3000μm以下に設定されることにより、短繊維がこの補強層14に均一に分散する。この補強層14は、均一な物性を有する。この補強層14を備えるタイヤ2の性能は、安定である。この観点から、この平均長さ(L)は1000μm以下がより好ましく、800μm以下が特に好ましい。なお、この平均長さ(L)は、短繊維の長手の長さが実体顕微鏡で計測されることにより得られる。無作為に抽出された100本の短繊維から得られる長さの平均値が、平均長さ(L)として表されている。
このタイヤ2では、短繊維の平均直径(D)は、1μm以上100μm以下であるのが好ましい。この平均直径(D)が10μm以上に設定されることにより、短繊維が補強層14を効果的に補強する。この補強層14は、ショルダー34の近傍の剛性を効果的に高めつつ、旋回時におけるベルトコード間隔の拡大を効果的に抑制する。このタイヤ2は、旋回安定性に優れる。この観点から、この平均直径は2μm以上がより好ましく、5μm以上が特に好ましい。この平均直径(D)が100μm以下に設定されることにより、短繊維がこの補強層14に均一に分散する。この補強層14は、均一な物性を有する。この補強層14を備えるタイヤ2の性能は、安定である。この観点から、この平均直径(D)は80μm以下がより好ましく、50μm以下が特に好ましい。なお、この平均直径(D)は、短繊維の直径が実体顕微鏡で計測されることにより得られる。無作為に抽出された100本の短繊維から得られる直径の平均値が、平均直径(D)として表されている。
このタイヤ2では、短繊維の平均直径(D)に対する平均長さ(L)の比率(L/D)は、10以上2000以下であるのが好ましい。この比率(L/D)が10以上に設定されることにより、基材ゴムと短繊維との接触面積が大きくなるので、短繊維が補強層14を効果的に補強する。この補強層14は、ショルダー34の近傍の剛性を効果的に高めつつ、旋回時におけるベルトコード間隔の拡大を効果的に抑制する。このタイヤ2は、旋回安定性に優れる。この観点から、この比率(L/D)は20以上がより好ましく、40以上が特に好ましい。この比率(L/D)が2000以下に設定されることにより、短繊維がこの補強層14に均一に分散する。この補強層14は、均一な物性を有する。この補強層14を備えるタイヤ2の性能は、安定である。この観点から、この比率(L/D)は1500以下がより好ましく、1000以下が特に好ましい。
このタイヤ2では、短繊維の材質としては、有機繊維が好ましい。有機繊維としては、ナイロン繊維、レーヨン繊維、アラミド繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びポリエステル繊維のような合成繊維と、紙繊維とが例示される。タイヤ2質量の軽量化及びタイヤ2の低コスト化の観点から、この短繊維の材質としては、紙繊維が好ましい。
紙繊維の製作では、まず原料紙が裁断又は粉砕される。この原料紙が、さらに叩解によって解繊される。こうして得られた紙繊維は、短繊維である。叩解されているので、この紙繊維の表面積は大きい。
原料紙は、クラフトパルプ、セミケミカルパルプ、機械パルプ、非木材パルプ、古紙パルプ等から得られる。クラフトパルプには、針葉樹クラフトパルプ及び広葉樹クラフトパルプが含まれる。非木材パルプの原料としては、ケナフ、バガス、竹、コットン、海藻等が挙げられる。古紙パルプは、使用済みコピー用紙、新聞古紙、段ボール紙等が脱墨されることで得られる。強度の観点から、クラフトパルプから得られる紙が好ましく、特に針葉樹クラフトパルプから得られる紙が好ましい。クラフトパルプから得られる紙には、未晒クラフト紙及び晒クラフト紙が含まれる。地球環境及び低コストの観点からは、新聞古紙から得られる原料紙が好ましい。
このタイヤ2では、補強層14を構成するゴム組成物に配合される基材ゴムとしては、天然ゴム、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、ポリクロロプレン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体及びイソブチレン−イソプレン共重合体が例示される。2種以上のゴムが併用されてもよい。
このタイヤ2では、補強層14を構成するゴム組成物は、基材ゴム及び短繊維以外に、充填剤、架橋剤、加硫促進剤、軟化剤、可塑剤、有機補強剤、老化防止剤等の薬品も含んでいる。タイヤ2の加工性及び性能が考慮されて、最適な薬品が最適な量でこのゴム組成物に配合されている。
タイヤ2の寸法及び角度は、タイヤ2が正規リムに組み込まれ、正規内圧となるようにタイヤ2に空気が充填された状態で測定される。測定時には、タイヤ2には荷重がかけられない。本明細書において正規リムとは、タイヤ2が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。本明細書において正規内圧とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
[実施例1]
図1に示された基本構成を備え、下記表2に示された仕様を備えた実施例1の自動二輪車用のラジアルタイヤを得た。このタイヤサイズは、185/55ZR17 M/C 73Vである。カーカスには、1枚のカーカスプライを用いた。このカーカスプライに用いられているカーカスコードの材質は、レーヨン繊維である。このカーカスコードの繊度は、1650/2dtexである。このカーカスコードの周方向に対してなす角度は90°である。ベルトには、1枚のベルトプライを用いた。このベルトプライに用いられているベルトコードの材質は、アラミド繊維である。このベルトコードの繊度は、1650/2dtexである。このベルトコードの周方向に対してなす角度は0°である。補強層の軸方向幅WRの、トレッドの軸方向幅WTに対する比(WR/WT)は0.40である。この補強層の厚みTAは、1.0mmである。この補強層は、基材ゴム100質量部に対して5質量部の短繊維を配合するゴム組成物からなる。この短繊維の材質は、アラミド繊維である。このタイヤは、一方の補強層における短繊維の配向角度の絶対値は他方の補強層における短繊維の配向角度の絶対値と同じであり、一方の補強層における短繊維の配向角度は他方の補強層における短繊維の配向角度とは逆となるように構成されている。なお、このタイヤでは、この短繊維の配向角度の絶対値は60°である。
[比較例4及び5並びに実施例4及び5]
比(WR/WT)を下記表1及び表2の通りとした他は実施例1と同様にして、タイヤを得た。
[比較例3及び6並びに実施例3及び6]
厚みTAを下記表1及び表2の通りとした他は実施例1と同様にして、タイヤを得た。
[比較例1及び2並びに実施例2及び7]
短繊維の配向角度の絶対値を下記表1及び表3の通りとした他は実施例1と同様にして、タイヤを得た。
[実施例8、9及び10]
短繊維の材質を下記表3の通りとした他は実施例1と同様にして、タイヤを得た。
[比較例7]
補強層を設けなかった他は実施例1と同様にして、タイヤを得た。このタイヤは、従来のタイヤである。
[実車評価]
排気量が600cmである市販の自動二輪車(4サイクル)の後輪に、試作タイヤが装着された。リムはMT5.50×17、タイヤの空気内圧は290kPaである。なお、この前輪には、従来のタイヤが装着されている。この前輪のタイヤサイズは、120/70ZR17である。リムは、MT3.50×17であり、タイヤの空気内圧は250kPaである。ドライアスファルト路で構成されたサーキットコースで、時速100km/hから時速150km/hにおける旋回走行と時速250km/hから車両最高速(約280km/h程度)における直進走行とが実施されて、ライダーよる旋回安定性、直進安定性及びグリップ力についての官能評価が行われた。ラップタイムも併せて計測された。これらの評価結果が、下記の表1、表2及び表3に指数値で表されている。直進安定性、旋回安定性及びグリップ力は、この数値が大きいほど良好であることを表している。ラップタイムは、この指数値が小さいほど良好である(ラップタイムが速い。)ことを表している。
Figure 2007245938
Figure 2007245938
Figure 2007245938
表1、表2及び表3に示されるように、実施例のタイヤは直進安定性を維持しつつ旋回安定性に優れる。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
本発明に係るラジアルタイヤは、種々の自動二輪車に装着されうる。
図1は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤの一部が示された断面図である。
符号の説明
2・・・タイヤ
4・・・トレッド
6・・・サイドウォール
8・・・ビード
10・・・カーカス
12・・・ベルト
14・・・補強層
16・・・インナーライナー
18・・・チェーファー
20・・・トレッド面
22・・・端
24・・・コア
26・・・エイペックス
28・・・カーカスプライ
30・・・ベルトプライ
32、38・・・外端
34・・・ショルダー
36・・・センター

Claims (3)

  1. 一対のビードと、両側のビードに架け渡されたカーカスと、このカーカスの半径方向外側に位置するベルトと、軸方向において離間しておりこのベルトの半径方向外側に位置する一対の補強層とを備えており、
    この補強層の厚みが、0.5mm以上3mm以下であり、
    この補強層の軸方向幅の、トレッドの軸方向幅に対する比が0.3以上0.45以下であり、
    この補強層が、短繊維を含んでおり、
    この短繊維が、周方向に対して傾いており、
    この短繊維の周方向に対してなす配向角度の絶対値が、30°以上90°以下であり、
    このベルトが、ベルトプライからなり、
    このベルトプライが、螺旋状に巻かれて実質的に周方向に延びるベルトコードを備えている自動二輪車用ラジアルタイヤ。
  2. 一方の補強層における短繊維の配向角度の絶対値が、他方の補強層における短繊維の配向角度の絶対値と実質的に同じであり、
    一方の補強層における短繊維の配向方向が、他方の補強層における短繊維の配向方向とは逆である請求項1に記載のタイヤ。
  3. 上記短繊維が、紙繊維である請求項1又は2に記載のタイヤ。
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