JP2007244570A - 眼内挿入用レンズの挿入器具 - Google Patents

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Abstract

【課題】押出し軸の後方への抜けを確実に回避しつつ、組み立てを容易に行えるようにした眼内挿入用レンズの挿入器具を提供する。
【解決手段】挿入器具は、眼内挿入用レンズ10を収容する本体5,6と、該本体内に挿入され、該本体の先端から前記眼内挿入用レンズを眼内に押し出す押出し軸4とを有する。本体の内側には、押出し軸の後方への移動を阻止する移動阻止部5dが設けられている。本体における移動阻止部および後端開口を含む部分5hを、該本体の軸回り方向において分割可能な複数の部分によって構成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、白内障で水晶体を摘出した後に水晶体の代わりに挿入されたり、屈折異常を矯正する等の目的で眼内に挿入されたりする眼内挿入用レンズを眼内に挿入するための挿入器具に関するものである。
白内障の手術においては、人工の眼内挿入用レンズをその可撓性を利用して小さく折畳むように変形させ、該レンズを眼球に形成した切開創から眼内へ挿入する術法が主流となっている。そして、このような手術においては、器具本体に装填されたレンズを押出し軸によって該器具本体内を移動させながら小さく変形させ、切開創に差し込まれた挿入筒の先端開口からレンズを眼内に押し出す挿入器具(例えば、特許文献1参照)が多く用いられている。
このような挿入器具は、白内障の手術だけではなく、視力補正治療等での眼内挿入用レンズの挿入手術においても用いられる。
従来の眼内挿入用レンズの挿入器具の例を図15に示す。図15(a)は従来の挿入器具の上面図であり、図15(b)は従来の挿入器具の側面図である。
この図において、2は筒状の本体であり、その先端側の部分には、不図示のレンズ設置部が設けられている。このレンズ設置部には、不図示の眼内挿入用レンズが設置される。なお、本体2の先端には、眼球に形成された切開創に挿入され、レンズを眼内に送り出す挿入筒が設けられるが、図15では図示を省略している。
1は本体2内に挿入され、レンズ設置部に設置されたレンズを挿入筒を通して眼内に押し出す押出し軸である。押出し軸1の先端は、レンズに接触して該レンズとともに細い挿入筒の内部を通過するための押し軸部1cが形成されている。また、押出し軸1の後部には、押出し軸1を操作するための操作部材としてのプランジャ3が装着されている。
図15(b)において、2aは本体2の後端部内側に形成された抜け止め部である。押出し軸1は、その中間部から後端部にかけて、該押出し軸1の軸方向視においてD形状断面を有するように形成されている。このため、押出し軸1の中間部には、該D形状断面を有した後端側の部分1aと円形断面を有した先端側の部分との段差部1bが形成される。そして、該段差部1bが抜け止め部2aに先端側から当接することで、押出し軸1の本体2に対する後方への抜けが阻止される。この抜け止め構造は、手術中に押出し軸1が本体2から抜け出てしまう不都合を回避するために設けられている。
図15に示した従来の挿入器具を組み立てる際には、まず図16(図16(a)は上面図、図16(b)は側面図)に示すように、プランジャ3を取り付ける前の押出し軸1を本体2に対して、該本体2の先端開口から挿入する。これは、本体2における抜け止め部2aが形成されている位置の内径が段差部1bの径よりも小さいため、押出し軸1を本体2の後端側から本体2内に挿入することができないためである。
そして、図17(図17(a)は上面図、図17(b)は側面図)に示すように、本体2の後端開口から突出した押出し軸1の後部に、プランジャ3を組み付ける。
特開2001−104347号公報
しかしながら、上述した従来の挿入器具の組み立て方法では、押出し軸1を本体2内に挿入した後、該押出し軸1のうち本体2の後端開口から突出した部分にプランジャ3を装着するという複雑な作業が必要であり、組み立てに時間と手間がかかるという問題がある。上記組み立て方法では、プランジャ3を押出し軸1とを別部材として構成せざるを得ないため、これが部品点数の増加と組み立て作業の複雑化を招いていた。
また、押出し軸1を本体2内にその先端開口から挿入する際において、押出し軸1のうちある程度の長さ部分が本体2の後端開口から突出するまでは、細い押し軸部1cを持って本体2内に押し込む必要がある。このとき、押出し軸1と本体2との間に引っ掛かり等があると、押し軸部1cが折れ曲がる等、変形してしまうおそれがある。
さらに、このように挿入器具において、一旦押出し軸を先端方向に押し始めてレンズを変形させた後、押出し軸が後方に引き戻されると、再び押出し軸を先端方向に移動させても押出し軸の先端が適正にレンズを押すことができなくなるという不具合が発生する場合がある。このため、押出し軸を一旦押し始めた後は、後方に引き戻せなくするための対策が必要である。
本発明は、押出し軸の後方への抜け等を確実に回避しつつ、組み立てを容易に行えるようにした眼内挿入用レンズの挿入器具を提供することを目的の1つとしている。
本発明の一側面としての挿入器具は、眼内挿入用レンズを収容する本体と、該本体内に挿入され、該本体の先端から前記眼内挿入用レンズを眼内に押し出す押出し軸とを有する。本体の内側には、押出し軸の後方への移動を阻止する移動阻止部が設けられている。そして、本体における移動阻止部および後端開口を含む部分が、該本体の軸回り方向(周方向)において分割可能な複数の部分により構成されていることを特徴とする。
なお、上記挿入器具と、該挿入器具の本体内に収容された眼内挿入用レンズとを含む眼内挿入用レンズの挿入システムも本発明の一側面を構成する。
本発明によれば、本体に押出し軸の後方への抜けを阻止する移動阻止部が形成されている場合でも、該移動阻止部および後端開口を含む分割可能な部分(分割構造部)を開いておくことで、本体の後端側から押出し軸を挿入することができる。これにより、押出し軸の先端側の細い部分を持つことなく押出し軸を本体に挿入することができ、組み立てを容易に行うことができる。そして、挿入後に分割構造部を閉じることにより、押出し軸の後方への抜けを阻止できる。
しかも、この構成によれば、押出し軸にその軸部よりも軸直交方向寸法が大きい操作部を一体形成しておくことが可能となる。したがって、部品点数を削減できるとともに、組み立て作業を簡単化することができる。
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
図1(a)および図1(b)にはそれぞれ、本発明の実施例1である眼内挿入用レンズの挿入器具の上面図および側面図を示す。
ここで、以下の説明において、眼内挿入用レンズを押し出す方向を先端側といい、その反対側を後方又は後端側という。また、この先端側と後端側に延びる方向を軸方向という。さらに、該軸方向に対して直交する方向を径方向といい、軸回りの方向(軸方向視における外周又は内周に沿う方向)を周方向という。
なお、図1(a)および図1(b)における右側の図は、該挿入器具の本体を軸方向後方から見たときの形状を示している。
これらの図において、5は筒部材であり、概ね中空円筒形状を有する。6は筒部材5の先端に取り付けられた挿入筒である。これら筒部材5と挿入筒6とにより本体が構成される。
筒部材5の後部外周には、径方向外方に延びるつば部5eが形成されている。このつば部5eは、後述する押出し軸4を先端方向に押し込む際に、操作者が指をかけるための部分である。また、筒部材5におけるつば部5eよりも後方の部分(後端開口までの部分)は、周方向において2分割された分割構造部5hを有する。該分割構造部5hの構成については後述する。
挿入筒6の軸方向中間部の上面には、眼内挿入用レンズ(以下、単にレンズという)10を挿入筒6内に設置するための開口部6aが形成されている。該開口部6aを通じて挿入筒6内に配置されたレンズ10は、該挿入筒6内に形成されたレンズ保持部(レンズ設置部)6cと、開口部6aを塞ぐカバー部材7に形成されたレンズ保持部7aとによって、その光学部(レンズとしての光学作用を有する部分)の辺縁部分が上下から挟まれて保持される。このとき、該レンズ10は、光学部に実質的に応力が作用しない状態で保持される。
ここにいうレンズ10の光学部に実質的に応力が作用しない状態とは、光学部に全く応力が作用しない状態だけでなく、保持状態でレンズ1が長期間保管されたとしても、眼内挿入後の光学部の光学作用に影響を与えるような変形が残らない程度に微小な応力が作用する状態も含む意味である。
挿入筒6の先端部6bは、眼球に形成された切開創に差し込まれてレンズ10を眼内に送り出す部分であり、先端ほど内径が小さくなる形状を有する。該先端部6bは、この内部を通過するレンズ10を小さく折り畳むように変形させ、先端開口から該レンズ10を眼内に送り出す。
筒部材5内に挿入される押出し軸4の軸方向中間部よりも先端側の部分には、挿入筒6の先端部6b内を通過できるような細い径を有する押し軸部4eが形成されている。押し軸部4eの先端には、レンズ保持部6c,7aに保持されたレンズ10の光学部を上下から挟んで確実に挿入筒6を介して眼内に押し出すための二股形状のレンズ挟持部4gが形成されている。
また、押出し軸4の中間部には、該押出し軸4の軸方向視において円形断面を有し、筒部材5の内径よりも若干小さな外径を有する円筒部4fが形成されている。この円筒部4fの外周には、不図示のOリングが取り付けられ、該Oリングは筒部材5の内周面に対して密着してシール構造を形成する。このシール構造は、レンズ10を眼内に押し出す際に、挿入筒6および筒部材5内にヒアルロン酸水溶液等の粘弾性物質が潤滑剤がとして注入されるため、これが筒部材5の後端開口から漏れ出ないようにするためのものである。
また、押出し軸4の円筒部4fから後端側の部分は、該押出し軸4の軸方向視において上面が平面であるD形状断面を有するように形成されている。図中の4aは、このD形状断面を有するDカット軸部を示している。
さらに、押出し軸4の後端には、Dカット軸部4aや円筒部4fよりも径方向外方に延出したつば部4cが形成されている。このつば部4cは、レンズ10を眼内に挿入するために押出し軸4を先端方向に押し込む操作を行う際に、操作者が指で押す部分である。
次に、筒部材5におけるつば部5eよりも後端側の分割構造部5hの構成について説明する。分割構造部5hは、該筒部材5の周方向に2分割された開閉部5aと固定部5bとを有する。言い換えれば、分割構造部5hは、軸方向視において2分割されている。
固定部5bは、筒部材5におけるつば部5eより先端側の部分からそのまま後方に延びるように形成された半円筒状の部分である。固定部5bの径方向一端には、ヒンジ部5cを介して開閉部5aの径方向一端が連結されている。該開閉部5aおよびヒンジ部5cは、固定部5b(つまりは筒部材5)に一体形成されている。開閉部5aは、ヒンジ部5cを中心として固定部5bに対して開閉が可能である。
開閉部5aの外周面は、半円筒面形状を有する。一方、開閉部5aの内周面は、周方向中央部が平面により形成され、それ以外の部分は円筒面の一部を構成する曲面で形成されている。これにより、後述するように開閉部5aを固定部5bに対して組み合わせた(閉じた)場合には、該分割構造部5h内にはD形状断面を有する空間が形成されることになる。該空間は、押出し軸4のDカット軸部4aを通すための空間であり、筒部材5の後端開口である。
図1(a),(b)に示すように、開閉部5aにおけるヒンジ部5cとは反対側には、ロック爪5iが形成されている。一方、固定部5bにおけるヒンジ部5cとは反対側には、該ロック爪5iが係合可能なロック受け部5jが形成されている。開閉部5aを固定部5bに対して閉じてロック爪5iをロック受け部5jに対して係合させることで、開閉部5aが固定部5bに組み合わされた(結合された)状態でロックされる。
前述したように、閉じた状態の分割構造部5hの内周面はD形状断面を有し、この断面形状が押出し軸4のDカット軸部4aのD形状断面にほぼ一致することで、押出し軸4の筒部材5に対する回転が阻止される。押出し軸4の先端に設けられたレンズ挟持部4gは、レンズ10の光学部の上下面を正しく挟むことができるように方向が決まっている。このため、上述したように押出し軸4の回転を阻止することで、レンズ10の押出しミスを回避することができる。
ここで、図4に拡大して示すように、押出し軸4の円筒部4fとDカット軸部4aとの境界には、Dカット軸部4aと円筒部4fとの径方向寸法差によって段差部4bが形成されている。
一方、筒部材5の開閉部5aにおいて、前述したように内周面が平面とされた部分は、移動阻止部としての抜け止め部5dとして機能する。すなわち、段差部4bが、抜け止め部5dの先端面5gに先端側から当接することで、押出し軸4の筒部材5に対する後方への抜けが阻止される。この抜け止め構造は、手術中に押出し軸4が筒部材5から抜け出てしまう不都合を回避するために設けられている。
以上のように構成された挿入器具を組み立てる際には、まず図2に示すように、押出し軸4をその先端側から、筒部材5において開状態の分割構造部5hを通して筒部材5の内部に挿入する。なお、図2(a)および図2(b)にはそれぞれ、挿入器具の上面図および側面図を示している。
分割構造部5hが開いていることにより、分割構造部5hを閉じた状態では押出し軸4の円筒部4fよりも後端開口(D形状空間)の一部の径方向寸法が小さくても、該円筒部4f(段差部4b)が分割構造部5h(開閉部5aを閉じたときの抜け止め部5d)よりも先端側の位置に達するまで、押出し軸4をその先端側から筒部材5内に挿入することができる。
また、このように押出し軸4をその先端側から筒部材5に挿入できるため、押出し軸4につば部4cが形成されていても何ら支障がない。
さらに、本実施例においては、押出し軸4を筒部材5に挿入する前に、筒部材5の先端に挿入筒6を取り付けておいてもよいし、押出し軸4を筒部材5に挿入した後に、筒部材5の先端に挿入筒6を取り付けてもよい。
こうして押出し軸4を、その円筒部4f(段差部4b)が分割構造部5hよりも先端側に位置するまで筒部材5に挿入した後、図1および図3に示すように、開閉部5aを固定部5bに対して閉じ、ロック爪5iをロック受け部5jに係合させる。これにより、挿入器具の組み立てが完了し、段差部4bと抜け止め部5dの先端面5gとの当接によって押出し軸4の後方への抜けが防止される。
なお、図3(a)および図3(b)にはそれぞれ、挿入器具の上面図および側面図を示す。また、図3(a)および図3(b)における左右の図はそれぞれ、本体5を軸方向先端側および後端側から見たときの形状を示している。
以上説明したように、本実施例によれば、筒部材5の後端側の部分に、抜け止め部5dを含み、周方向において開閉可能な分割構造部5hを設けたので、円筒部4f(段差部4b)を有する押出し軸4をその先端側から筒部材5内に挿入することができる。したがって、従来のように細い押し軸部を持つ等して押出し軸を筒部材の先端側から挿入する場合に比べて、容易に組み立てを行うことができる。
しかも、つば部4cを押出し軸4に一体形成しておくことができるので、つば部等の操作部を押出し軸とは別部品とする場合に比べて、部品点数を少なくすることができ、組み立てもより簡単に行うことができる。
また、分割構造部5hを構成する開閉部5aと固定部5bとヒンジ部5cとを筒部材5に一体形成したことにより、分割構造部5hを設けたことによる部品点数の増加を回避することができる。
そして、押出し軸4を段差部4bが分割構造部5hの先端位置を若干超えた位置まで筒部材5に挿入された後は、分割構造部5hを閉じてロックする。これにより、その後の押出し軸4の筒部材5からの後方への抜けが確実に阻止できる。
さらに、本実施例では、図1、図3および図4に示すように、押出し軸4のDカット軸部4aにおける平面上に、半球形状の突起4hが形成されている。また、図3および図4に示すように、開閉部5aにおける抜け止め部5dの内面には、該抜け止め部5dの先端から後端近傍まで延びる溝5kが形成されている。溝5kの後端と抜け止め部5dの後端との間には、壁部5mが形成されている。溝5kの深さは、上記突起4hの高さに比べて若干深い。
突起4hは、上記のように組み立てられた挿入器具において、壁部5m(つまりは抜け止め部5d)の後端面に当接又は近接する位置に設けられている。突起4hが壁部5mに当接することで、所定値以上の力が加わらない限り押出し軸4の先端方向への移動が阻止される。そして、レンズ挿入時に該所定値以上の力を押出し軸4に加えると、突起4hは壁部5mと押出し軸4(Dカット軸部4a)との間の狭い隙間を通って溝5k内に入り込む。なお、図4にはこの隙間を示していないが、実際には若干の隙間が存在する。そして、この後は、押出し軸4をスムーズに先端方向に移動させることができる。
このような構造を設けることで、押出し軸4によるレンズ10の押出しを妨げることなく、不用意に押出し軸4が筒部材5に対して先端方向に押し込まれることを防止できる。特に、本実施例の挿入器具は、レンズ10の光学部に実質的に応力をかけずにレンズ10とともに保管が可能であるため、保管中や運搬時に予期しない外力によって押出し軸が押し込まれ、レンズ10が挿入筒6内で変形したり、挿入筒6から飛び出てしまったりすることを防止できる。
図5には、本発明の実施例2である眼内挿入用レンズの挿入器具を示している。図5(a)は上面図、図5(b)は側面断面図である。
本実施例において、実施例1と共通又は一部のみ異なる構成要素には実施例1と同じ符号を付す。
本実施例の挿入器具は、筒部材5の一部構成と押出し軸14の構成が実施例1と異なる。筒部材5は、押出し軸14の構成の違いに応じて、分割構造部hのうち開閉部5a′の構成が異なる。挿入筒6およびカバー部材7は実施例1と同じであり、筒部材5における開閉部5a′以外の構成は実施例1と同じである。以下、押出し軸14と開閉部5a′の構成を中心に説明する。
まず、図10を用いて押出し軸14の構成について説明する。図10(a)および図10(b)はそれぞれ、押出し軸14の上面図および側面断面図である。
押出し軸14の軸方向中間部よりも先端側の部分には、挿入筒6の先端部6b内を通過できるような細い径を有する押し軸部14eが形成されている。押し軸部14eの先端には、実施例1で説明したレンズ保持部に保持されたレンズ10の光学部を上下から挟んで確実に挿入筒6を介して眼内に押し出すための二股形状のレンズ挟持部14gが形成されている。
また、押出し軸14の中間部には、該押出し軸14の軸方向視において円形断面を有し、筒部材5の内径よりも若干小さな外径を有する円筒部14fが形成されている。この円筒部14fの外周には、実施例1でも説明したように、不図示のOリングが取り付けられ、該Oリングは筒部材5の内周面に対して密着してシール構造を形成する。
また、押出し軸14の円筒部14fから後端側の部分は、該押出し軸14の軸方向視において上面が平面であるD形状断面を有するように形成されている。図中の14aは、このD形状断面を有するDカット軸部を示している。なお、Dカット軸部14aの上面(平面)以外の部分の外径は、円筒部14fの外径に等しい。
さらに、押出し軸14の後端には、Dカット軸部14aや円筒部14fよりも径方向外方に延出したつば部14cが形成されている。このつば部14cは、レンズ10を眼内に挿入するために押出し軸14を先端方向に押し込む操作を行う際に、操作者が指で押す部分である。
Dカット軸部14aの上部のうち、挿入器具の組み立て完了状態にて筒部材5(分割構造部5h)の後端面より後方に位置する部分には、先端側から後端側に順に、第2可動板部14nと、2つの第1可動板部14k,14mが形成されている。これらの可動板部14n,14k,14mはそれぞれ、ヒンジ部11pによってDカット軸部14aに連結されている。また、可動板部14n,14k,14mとヒンジ部14pは、Dカット軸部114a(つまりは押出し軸14)に一体形成されている。
第2可動板部14nは、その後端側に設けられたヒンジ部14pが有する弾性によって径方向上方に付勢されている。このため、第2可動板部14nに上方からの力が加わらない状態では、第2可動板部14nはDカット軸部14aに対してその先端側が斜めに起き上がった、すなわち突出した状態となる(突出位置:第3の位置)。
一方、第1可動板部14k,14mは、それらの先端側に設けられたヒンジ部14pが有する弾性によって径方向上方に付勢されている。このため、第1可動板部14k,14mに上方からの力が加わらない状態では、第1可動板部14k,14mはDカット軸部14aに対してその後端側が斜めに起き上がった突出状態となる(突出位置:第1の位置)。
また、Dカット軸部14aのうち3つの可動板部14n,14k,14mおよびヒンジ部14pの下面に面した部分には、各可動板部の厚さとほぼ同じ深さを有する格納溝部14qが形成されている。このため、各可動板部に上方からの力が加わって該可動板部がヒンジ部14pを中心として下動すると、該可動板部およびヒンジ部14pは格納溝部14q内に格納される。この格納位置では、各可動板部およびヒンジ部14pの上面は、Dカット軸部14aの上面とほぼ同じ高さとなる。
各可動板部におけるヒンジ部14pとは反対側の部分は、図10(a)に示す上面視および図10(b)に示す側面視においてそれぞれ曲線形状(U形状)を有する。さらに、各可動板部のうち該U形状部分よりもヒンジ部14p側の部分は、各可動板部を格納位置に押し下げた状態でDカット軸部14aの上部外面に連続する外面形状、すなわちDカット軸部14aの上部の外面形状と同じ外面形状を有するように形成されている。ここで、「Dカット軸部14aの上部外面に連続する外面形状」とは、少なくとも軸方向視においてDカット軸部14aの上部外面に一致する外面形状であればよく、「一致する」とは、押出し軸14の筒部材5に対する回転を阻止するために支障がない程度のずれがある場合も含む意味である。
次に、図9を用いて筒部材5の開閉部5a′の構成について説明する。図9(a)、図9(b)および図9(c)はそれぞれ、筒部材5の上面図、後端側からの軸方向視図および側面図である。
筒部材5の固定部5bの径方向一端に、ヒンジ部5cを介して開閉部5a′の径方向一端が連結されている。開閉部5a′およびヒンジ部5cは、固定部5b(つまりは筒部材5)に一体形成されている。開閉部5a′は、ヒンジ部5cを中心として固定部5bに対して開閉が可能である。
開閉部5a′の外周面は、半円筒面形状を有する。一方、開閉部5a′の内周のうち周方向中央部は、先端側から後端側に順に、平面部5rと、斜面部5qと、移動阻止部としての戻し阻止部5d′とを有するように形成されている。
平面部5rは、軸方向に平行な平面により構成され、筒部材5の中心軸に対して、該筒部材5における分割構造部5hよりも先端側の部分の内半径と同じ寸法だけ離れた位置に形成されている。
斜面部5qは、その後端側ほど筒部材5の中心軸5oから離れるように傾いた平面によって構成されている。
戻し阻止部5d′は、平面部5rよりも筒部材5の中心軸5oに近い位置に形成された内端面(平面)を有し、斜面部5qに面するくさび形状の傾斜空間5pの後端を塞ぐ壁部として構成されている。
開閉部5a′の内周のうち周方向中央部以外の部分は、円筒面の一部を構成する曲面で形成されている。
そして、開閉部5a′におけるヒンジ部5cとは反対側には、ロック爪5iが形成されている。開閉部5a′をヒンジ部5cを中心に固定部5bに対して閉じ、ロック爪5iを固定部5bにおけるヒンジ部5cとは反対側に形成されたロック受け部5jに係合させることで、開閉部5a′が固定部5bに組み合わされた(結合された)状態でロックすることができる。
開閉部5a′を固定部5bに対して閉じた状態において、分割構造部5hを後端側から見た場合、該分割構造部5hの後端部内側には、戻し阻止部5d′と固定部5bの内周面とによりD形状断面を有する後端開口が形成される。また、後端開口よりも先端側における中心軸5oよりも下側の領域では、固定部5bによって形成される半円筒空間が先端方向に延び、さらに中心軸5oよりも上側の領域には、斜面部5qに面した傾斜空間5pと平面部5rに面した空間とが先端側に向かって順に形成される。
後端開口のD断面形状は、押出し軸14のDカット軸部14aのD形状断面にほぼ一致する。これにより、押出し軸14を筒部材5内に挿入した後は、押出し軸14の筒部材5に対する回転が阻止される。押出し軸14の先端に設けられたレンズ挟持部14gは、レンズ10の光学部の上下面を正しく挟むことができるように方向が決まっている。このため、上述したように押出し軸14の回転を阻止することで、レンズ10の押出しミスを回避することができる。
以上のように構成された挿入器具を組み立てる際には、押出し軸14をその先端側から、筒部材5において開状態の分割構造部5hを通して筒部材5の内部に挿入する。戻し阻止部5d′を含む分割構造部5hを開いておくことにより、分割構造部5hを閉じた状態では押出し軸14の円筒部14fよりも後端開口(D形状空間)の一部の径方向寸法が小さくても、該円筒部14fが分割構造部5hよりも先端側の位置に達するまで、押出し軸14をその先端側から筒部材5内に挿入することができる。また、このように押出し軸14をその先端側から筒部材5に挿入できるため、押出し軸14につば部14cが形成されていても何ら支障がない。
なお、本実施例においても、押出し軸14を筒部材5に挿入する前に、筒部材5の先端に挿入筒6を取り付けておいてもよいし、押出し軸14を筒部材5に挿入した後に、筒部材5の先端に挿入筒6を取り付けてもよい。
こうして押出し軸14を、その円筒部14fが分割構造部5hよりも先端側に位置するまで筒部材5に挿入した後、開閉部5a′を固定部5bに対して閉じ、ロック爪5iをロック受け部5jに係合させる。これにより、図5に示すように、挿入器具の組み立てが完了する。
組み立て完了状態において、第2可動板部14nは突出位置に起き上がり、その先端は、筒部材5(分割構造部5hのうち開閉部5a′の戻し阻止部5d′)の後端面に当接又は近接する。第2可動板部14nの先端が筒部材5の後端面に当接することにより、押出し軸14の先端方向への移動が阻止される。このため、不用意な押出し軸14の先端方向への移動を確実に防止することができる。
図6に示すように、第2可動板部14nを格納位置に押し下げると、該第2可動板部14nの先端と筒部材5の後端面との当接が解除される。このため、手術時等において第2可動板部14nを格納位置に操作することで、押出し軸14の先端方向への移動、つまりはレンズ10の眼内への挿入が許容される。なお、第2可動板部14nの先端が上面視および側面視においてU形状を有することで、第2可動板部14nを突出位置から格納位置にスムーズに操作することができる。
さらに、第2可動板部14nの格納位置への操作は、指1本で行える単純な押し下げ操作であるため、手術において手術者にほとんど負担を生じさせることはない。
こうして、押出し軸14を先端方向に押していくと、図7に示すように、第1可動板部14kが戻し阻止部5d′によって突出位置から下方に押され、格納位置に格納される。図示しないが、さらに押出し軸14を先端方向に押していくと、第2可動板部14mが戻し阻止部5d′によって突出位置から下方に押され、格納位置に格納される。これにより、使用者がいちいち突出位置にある第1可動板部14k,14mを格納位置に押し下げる操作を行わなくても、押出し軸14の押し操作(レンズ10の眼内への挿入)を行うことができる。
ここで、前述したように、格納位置にある各可動板部の外面形状はDカット軸部14aの外面形状に連続するので、分割構造部5hの内側を各可動板部が通過する際でも、押出し軸14の筒部材5に対する回転は阻止される。したがって、押出し軸14によって適正にレンズ10を押し出すこができる。
例えば、図8に示すように、押出し軸14を、第1可動板部14kが戻し阻止部5d′を通過した位置まで押すと、それまで格納位置に格納されていた第1可動部14kはヒンジ部14pの付勢力によって、分割構造部5h内の傾斜空間5p内で再び突出位置に起き上がる。そして、第1可動板部14kは、戻し阻止部5d′の先端側の面に対して当接又は近接する。第1可動板部14kが戻し阻止部5d′の先端側の面に当接することにより、その後の押出し軸14の後方への移動が阻止される。
図8に示す位置まで操作された押出し軸14は、その先端のレンズ挟持部14gによってレンズ10を挿入筒6の途中まで押した状態であり、レンズ10はある程度挿入筒6内で変形している。この状態から仮に押出し軸14を後方に引き戻すと、再度押出し軸14を先端方向に押してもレンズ挟持部14gによってレンズ10を適正に挟んだり押したりすることができない。
このため、本実施例では、一旦、押出し軸14を図8に示す位置まで押し込んだ後は、第1可動板部14kが戻し阻止部5d′に当接することによって、押出し軸14を引き戻せないようにしている。
さらに、図示はしないが、レンズ10が挿入筒6の先端から出る直前の位置まで押出し軸14を押し込んだときには、戻し阻止部5d′によって一旦格納位置に押し下げられていたもう1つの第1可動板部14mがヒンジ部14pの付勢力によって傾斜空間5p内で突出位置に起き上がり、戻し阻止部5d′の先端側の面に対して当接又は近接する。該第1可動板部14mが戻し阻止部5d′の先端側の面に当接することにより、その後の押出し軸14の後方への引き戻しが阻止される。
以上説明したように、本実施例によれば、筒部材5の後端側の部分に、戻し阻止部5d′を含み、周方向において開閉可能な分割構造部5hを設けたので、円筒部14fを有する押出し軸14をその先端側から筒部材5内に挿入することができる。したがって、従来のように細い押し軸部を持つ等して押出し軸を筒部材の先端側から挿入する場合に比べて、容易に組み立てを行うことができる。
しかも、つば部14cを押出し軸14に一体形成しておくことができるので、つば部等の操作部を押出し軸とは別部品とする場合に比べて、部品点数を少なくすることができ、組み立てもより簡単に行うことができる。
また、分割構造部5hを構成する開閉部5a′と固定部5bとヒンジ部5cとを筒部材5に一体形成したことにより、分割構造部5hを設けたことによる部品点数の増加を回避することができる。
さらに、本実施例では、第2可動板部14nを押出し軸14の先端方向への移動を阻止する突出位置と該移動を許容する格納位置との間で移動可能とし、さらにヒンジ部14pの付勢力によって第2可動板部14nを突出位置に付勢している。このため、製造誤差等の寸法のばらつきがあっても、不用意な押出し軸14の先端方向への移動を確実に防止することができる。しかも、第2可動板部14nを格納位置に押し下げる操作(指1本でできる操作)を行うだけで、手術時等における必要な場合の押出し軸14の先端方向への移動操作をスムーズかつ適正に行うことができる。
また、本実施例では、第1可動板部14k,14mを設けて押出し軸14の後方への引き戻しを阻止し、さらにヒンジ部14pの付勢力によって第1可動板部14k,14mを突出位置に付勢している。このため、製造誤差等の寸法のばらつきがあっても、押出し軸14の引き戻しを確実に防止することができる。しかも、第2可動板部14k,14mは、押出し軸14の先端方向への移動に伴い、筒部材5に設けられた戻し阻止部5d′によって自動的に格納位置に押し下げられるため、押出し軸14の先端方向への移動操作を、第2可動板部14k,14mの押し下げ操を行うことなく、簡単に行うことができる。
また、開閉部5a′に空間5pの上方を閉じる斜面部5qを設けておくことで、押出し軸14に引き戻し力が加わった場合に第1可動板部14k,14mが戻し阻止部5d′を乗り越えるように上方に変形し、破損することを防止できる。
なお、第1および第2可動板部14k,14m,14nおよびヒンジ部14pを押出し軸14に一体形成することで、部品点数の増加を回避することができる。但し、可動板部とヒンジ部とを有するストッパ部材を押出し軸とは別部材として構成し、該ストッパ部材を押出し軸に取り付けるようにしてもよい。
図11には、本発明の実施例3である眼内挿入用レンズの挿入器具を示している。図11(a)は上面図、図11(b)は側面断面図である。
本実施例において、実施例1,2と共通又は一部のみ異なる構成要素には実施例1,2と同じ符号を付す。
本実施例の挿入器具は、筒部材5の一部構成と押出し軸24の構成が実施例1,2と異なる。筒部材5は、分割構造部hのうち開閉部5a″の構成が実施例1,2と異なる。挿入筒6およびカバー部材7は実施例1,2と同じであり、筒部材5における開閉部5a″以外の構成は実施例1,2と同じである。以下、押出し軸24と開閉部5a″の構成を中心に説明する。
まず、図14を用いて押出し軸24の構成について説明する。図24(a)および図24(b)はそれぞれ、押出し軸24の上面図および側面断面図である。
押出し軸24の軸方向中間部よりも先端側の部分には、挿入筒6の先端部6b内を通過できるような細い径を有する押し軸部24eが形成されている。押し軸部24eの先端には、実施例1で説明したレンズ保持部に保持されたレンズ10の光学部を上下から挟んで確実に挿入筒6を介して眼内に押し出すための二股形状のレンズ挟持部24gが形成されている。
また、押出し軸24の中間部には、該押出し軸24の軸方向視において円形断面を有し、筒部材5の内径よりも若干小さな外径を有する円筒部24fが形成されている。この円筒部24fの外周には、実施例1でも説明したように、不図示のOリングが取り付けられ、該Oリングは筒部材5の内周面に対して密着してシール構造を形成する。
また、押出し軸24の円筒部24fから後端側の部分は、該押出し軸24の軸方向視において上面が平面であるD形状断面を有するように形成されている。図中の24aは、このD形状断面を有するDカット軸部を示している。なお、Dカット軸部24aの上面(平面)以外の部分の外径は、円筒部24fの外径に等しい。
さらに、押出し軸24の後端には、Dカット軸部24aや円筒部24fよりも径方向外方に延出したつば部24cが形成されている。このつば部24cは、レンズ10を眼内に挿入するために押出し軸24を先端方向に押し込む操作を行う際に、操作者が指で押す部分である。
Dカット軸部24aの上部のうち、挿入器具の組み立て完了状態にて筒部材5(分割構造部5h)の後端面より後方に位置する部分には、可動板部24kが形成されている。この可動板部24kは、その根元部分にてDカット軸部24aに連結されている。可動板部24aは、Dカット軸部24a(つまりは押出し軸24)に一体形成されている。
可動板部24kは、その根元部分からDカット軸部24aに対して所定の起き上がり角度を有するように形成されている。このため、可動板部24kに上方からの力が加わらない状態では、可動板部24kはDカット軸部24aに対してその後端側が斜めに起き上がった突出状態となる(突出位置:第1の位置)。
また、Dカット軸部24aのうち可動板部24kの下面に面した部分には、可動板部24kの厚さとほぼ同じ深さを有する格納溝部24qが形成されている。このため、可動板部24kに上方からの力が加わって該可動板部24kが根元部分を中心として下動すると、該可動板部24kは格納溝部24q内に格納される。この格納位置では、可動板部24kの上面は、Dカット軸部24aの上面とほぼ同じ高さとなる。
可動板部24kにおける根元部分とは反対側の部分は、図14(a)に示す上面視および図14(b)に示す側面視においてそれぞれ曲線形状(U形状)を有する。さらに、可動板部24kのうち該U形状部分よりも根元側の部分は、可動板部24kを格納位置に押し下げた状態でDカット軸部24aの上部外面に連続する外面形状、すなわちDカット軸部24aの上部の外面形状と同じ外面形状を有するように形成されている。ここで、「Dカット軸部24aの上部外面に連続する外面形状」とは、実施例2と同じ意味である。
次に、図13を用いて筒部材5の開閉部5a″の構成について説明する。図13(a)、図13(b)および図13(c)はそれぞれ、筒部材5の上面図、後端側からの軸方向視図および側面図である。
筒部材5の固定部5bの径方向一端に、ヒンジ部5cを介して開閉部5a″の径方向一端が連結されている。開閉部5a″およびヒンジ部5cは、固定部5b(つまりは筒部材5)に一体形成されている。開閉部5a″は、ヒンジ部5cを中心として固定部5bに対して開閉が可能である。
開閉部5a″の外周面は、半円筒面形状を有する。一方、開閉部5a″の内周のうち周方向中央部は、先端側から後端側に順に、斜面部5q″と、移動阻止部としての戻し阻止部5d″とを有するように形成されている。
斜面部5q″は、その先端が、筒部材5の中心軸に対して、該筒部材5における分割構造部5hよりも先端側の部分の内半径と同じ寸法だけ離れた位置に形成され、後端側ほど筒部材5の中心軸5oから離れるように傾いた平面によって構成されている。
戻し阻止部5d″は、斜面部5q″の先端よりも筒部材5の中心軸5oに近い位置に形成された内端面(平面)を有し、斜面部5q″に面するくさび形状の傾斜空間5pの後端を塞ぐ壁部として構成されている。
開閉部5a″の内周のうち周方向中央部以外の部分は、円筒面の一部を構成する曲面で形成されている。
そして、開閉部5a″におけるヒンジ部5cとは反対側には、ロック爪5iが形成されている。開閉部5a″をヒンジ部5cを中心に固定部5bに対して閉じ、ロック爪5iを固定部5bにおけるヒンジ部5cとは反対側に形成されたロック受け部5jに係合させることで、開閉部5a″が固定部5bに組み合わされた(結合された)状態でロックすることができる。
開閉部5a″を固定部5bに対して閉じた状態において、分割構造部5hを後端側から見た場合、該分割構造部5hの後端部内側には、戻し阻止部5d″と固定部5bの内周面とによりD形状断面を有する後端開口が形成される。また、後端開口よりも先端側における中心軸5oよりも下側の領域では、固定部5bによって形成される半円筒空間が先端方向に延び、さらに中心軸5oよりも上側の領域には、斜面部5q″に面した傾斜空間5pが形成される。
後端開口のD断面形状は、押出し軸24のDカット軸部24aのD形状断面にほぼ一致する。これにより、押出し軸24を筒部材5内に挿入した後は、押出し軸24の筒部材5に対する回転が阻止される。押出し軸24の先端に設けられたレンズ挟持部24gは、レンズ10の光学部の上下面を正しく挟むことができるように方向が決まっている。このため、上述したように押出し軸24の回転を阻止することで、レンズ10の押出しミスを回避することができる。
以上のように構成された挿入器具を組み立てる際には、押出し軸24をその先端側から、筒部材5において開状態の分割構造部5hを通して筒部材5の内部に挿入する。戻し阻止部5d″を含む分割構造部5hを開いておくことにより、分割構造部5hを閉じた状態では押出し軸24の円筒部24fよりも後端開口(D形状空間)の一部の径方向寸法が小さくても、該円筒部24fが分割構造部5hよりも先端側の位置に達するまで、押出し軸24をその先端側から筒部材5内に挿入することができる。また、このように押出し軸24をその先端側から筒部材5に挿入できるため、押出し軸24につば部24cが形成されていても何ら支障がない。
なお、本実施例においても、押出し軸24を筒部材5に挿入する前に、筒部材5の先端に挿入筒6を取り付けておいてもよいし、押出し軸24を筒部材5に挿入した後に、筒部材5の先端に挿入筒6を取り付けてもよい。
こうして押出し軸24を、その円筒部24fが分割構造部5hよりも先端側に位置するまで筒部材5に挿入した後、開閉部5a″を固定部5bに対して閉じ、ロック爪5iをロック受け部5jに係合させる。これにより、図11に示すように、挿入器具の組み立てが完了する。
本実施例では、可動板部24kの根元部分を実施例2のようなヒンジ部とはせず、ある程度の変形に対する強度を有する形状に形成している。このため、押出し軸24に先端方向への外力が作用しても、該外力がある程度以上大きくない限り、突出位置にある可動板部24kが戻し阻止部5d″の後端面に当接して、押出し軸24の先端方向への移動が阻止される。
手術等において、押出し軸24を図11の位置からある程度以上の大きさの操作力で先端方向に押すと、可動板部24kに戻し阻止部5d″からの押し下げ力が作用し、その根元部分が弾性変形することで、該可動板部24kは格納位置に格納される。これにより、使用者がいちいち突出位置にある可動板部24kを格納位置に押し下げる操作を行わなくても、押出し軸24の押し操作(レンズ10の眼内への挿入)を行うことができる。
ここで、前述したように、格納位置にある可動板部24kの外面形状はDカット軸部24aの外面形状に連続するので、分割構造部5hの内側を各可動板部が通過する際でも、押出し軸24の筒部材5に対する回転は阻止される。したがって、押出し軸24によって適正にレンズ10を押し出すこができる。
図12に示すように、押出し軸24を、可動板部24kが戻し阻止部5d″を通過した位置まで押すと、それまで格納位置に格納されていた可動部24kはその根元部分の付勢力によって、分割構造部5h内の傾斜空間5p内で再び突出位置に起き上がる。そして、可動板部24kは、戻し阻止部5d″の先端側の面に対して当接又は近接する。可動板部24kが戻し阻止部5d″の先端側の面に当接することにより、その後の押出し軸24の後方への移動が阻止される。
図12に示す位置まで操作された押出し軸24は、その先端のレンズ挟持部24gによってレンズ10を挿入筒6の途中まで押した状態であり、レンズ10はある程度挿入筒6内で変形している。この状態から仮に押出し軸24を後方に引き戻すと、再度押出し軸24を先端方向に押してもレンズ挟持部24gによってレンズ10を適正に挟んだり押したりすることができない。
このため、本実施例では、一旦、押出し軸24を図12に示す位置まで押し込んだ後は、可動板部24kが戻し阻止部5d″に当接することによって、押出し軸24を引き戻せないようにしている。
以上説明したように、本実施例によれば、筒部材5の後端側の部分に、戻し阻止部5d″を含み、周方向において開閉可能な分割構造部5hを設けたので、円筒部24fを有する押出し軸24をその先端側から筒部材5内に挿入することができる。したがって、従来のように細い押し軸部を持つ等して押出し軸を筒部材の先端側から挿入する場合に比べて、容易に組み立てを行うことができる。
しかも、つば部24cを押出し軸24に一体形成しておくことができるので、つば部等の操作部を押出し軸とは別部品とする場合に比べて、部品点数を少なくすることができ、組み立てもより簡単に行うことができる。
また、分割構造部5hを構成する開閉部5a″と固定部5bとヒンジ部5cとを筒部材5に一体形成したことにより、分割構造部5hを設けたことによる部品点数の増加を回避することができる。
また、本実施例では、押出し軸24に設けた可動板部24kによって、組み立て完了状態(保管状態)等において押出し軸24に外力が作用したときの該押出し軸24の先端方向への移動を制限する。しかも、同じ可動板部24kによって、レンズ押出しのための押出し軸24の操作を開始した後の後方への引き戻しを阻止する。このため、簡単な構成によって、押出し軸24の不用意な先端方向への移動および引き戻しを防止することができる。また、可動板部24kは、ある程度以上の押し下げ力が加わらない限り突出位置に保持されるので、製造誤差等の寸法のばらつきがあっても、押出し軸24の不用意な先端方向への移動および引き戻しを防止することができる。
この一方、可動板部24kは、押出し軸24をある程度以上の操作力によって先端方向に押せば、戻し阻止部5d″によって自動的に格納位置に押し下げられるため、押出し軸24の先端方向への移動操作を、可動板部24kの押し下げ操を行うことなく、簡単に行うことができる。
また、開閉部5a″に空間5pの上方を閉じる斜面部5q″を設けておくことで、押出し軸24に引き戻し力が加わった場合に可動板部24kが戻し阻止部5d″を乗り越えるように上方に変形し、破損することを防止できる。
なお、可動板部24kを押出し軸24に一体形成することで、部品点数の増加を回避することができる。但し、可動板部を有するストッパ部材を押出し軸とは別部材として構成し、該ストッパ部材を押出し軸に取り付けるようにしてもよい。
上記各実施例では、開閉部5a,5a′,5″と固定部5bとをそれらの径方向端部に設けたヒンジ部5cで連結し、周方向の動作によって開閉可能な分割構造部5hを有する場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、開閉部5a,5a′,5″と固定部5bとを周方向に分割した上で、それらの軸方向一端(先端)にヒンジ部を設け、軸方向に直交する方向の動作によって開閉可能としてもよい。
また、分割構造部を、開閉部5a,5a′,5″に対応する部分と固定部5bに対応する部分とを完全に分離できるように構成してもよい。この場合、部品点数は増加するが、円筒部4f,14f,24fやつば部4c,14c,24cを有する押出し軸4,14,24をその先端側から筒部材5に挿入できる点で、各実施例と同様に、従来に比べて組み立てを容易化することができる。
また、このような完全分離型の分割構造部を設ける場合において、軸方向に直交する方向において分離および結合可能としてもよいし、開閉部5a,5a′,5a″に相当する部分を固定部5bに相当する部分に対して軸方向にスライドさせて分離および結合可能としてもよい。
さらに、実施例1では、分割構造部5hの先端から後端までのすべての範囲に抜け止め部5dを形成した場合について説明したが、該範囲の一部にのみ抜け止め部を形成してもよい。
また、実施例2,3では、分割構造部5hの後端部に戻し阻止部5d′,5″を設けた場合について説明したが、該戻し阻止部5d′,5d″を分割構造部5hのうち他の軸方向位置に設けてもよい。
また、実施例2,3では、分割構造部5hに一旦押出し軸14の先端方向への押し込みが行われた後の引き戻しを阻止するための戻し阻止部5d′,5″を設けた場合について説明したが、この戻し阻止部5d′,5″に加えて、実施例1で説明したのと同様な、組み立て完了状態からの押出し軸14,24の後方への抜けを阻止するための抜け止め部を設けてもよい。
また、上記各実施例では、分割構造部5hを2分割した場合について説明したが、本発明では、分割構造部をより多くの数に分割してもよい。
また、各実施例では、押出し軸4,14,24につば部4c,14c,24cを一体形成した場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、つば部や従来のプランジャに相当する操作部を押出し軸とは別部材として構成し、押出し軸に取り付けるようにしてもよい。
さらに、各実施例では、分割構造部5hを有する筒部材5の形状が、基本的に円筒形状(Dカット形状を含む)である場合について説明したが、本発明は本体の形状が、円筒形状ではない多角形断面を有する場合にも適用することができる。
また、実施例2では、ヒンジ部14pを中心として可動板部14k,14m,14nが回動する場合について説明したが、本発明はこれに限らず、単純に上下方向に移動する可動部を設けてもよい。また、可動板部の突出方向は上方に限らず、軸方向に直交する方向であればいずれの方向でもよい。さらに、実施例2では、ヒンジ部14pによって可動板部14k,14m,14nを突出位置に向けて付勢する場合について説明したが、本発明はこれに限らず、バネやゴム等の弾性部材を用いて付勢するようにしてもよい。
本発明の実施例1である挿入器具の上面図および側面図。 実施例1の挿入器具の組み立て方法を示す上面図および側面図。 実施例1の挿入器具において分割構造部を結合させた状態を示す上面断面図および側面断面図。 図3の一部を拡大した断面図。 本発明の実施例2である挿入器具の上面図および側面断面図。 実施例2の挿入器具の側面断面図。 実施例2の挿入器具の側面断面図。 実施例2の挿入器具の上面図および側面断面図。 実施例2の挿入器具を構成する筒部材の上面図、軸方向視図および側面図。 実施例2の挿入器具を構成する押出し軸の上面図および側面断面図。 本発明の実施例3である挿入器具の上面図および側面断面図。 実施例3の挿入器具の上面図および側面断面図。 実施例3の挿入器具を構成する筒部材の上面図、軸方向視図および側面図。 実施例3の挿入器具を構成する押出し軸の上面図および側面断面図。 従来の挿入器具の上面図および側面図。 従来の挿入器具の組み立て方法を説明する上面図および側面図。 従来の挿入器具の組み立て方法を説明する上面図および側面図。
符号の説明
4,14,24 押出し軸
4a,14a,24a Dカット軸部
4b 段差部
4c,14c,24c つば部
4e,14e,24e 押し軸部
4f,14f,24f 円筒部
4h 突起
5 筒部材
5a,5a′,5″ 開閉部
5b 固定部
5c ヒンジ部
5d 抜け止め部
5d′,5d″戻し阻止部
5i ロック爪
5j ロック受け部
5k 溝
5m 壁部
6 挿入筒
10 眼内挿入用レンズ
14k,14m,14n,24k 可動板部
14p ヒンジ部

Claims (7)

  1. 眼内挿入用レンズを収容する本体と、
    該本体内に挿入され、該本体の先端から前記眼内挿入用レンズを眼内に押し出す押出し軸とを有し、
    前記本体の内側には、前記押出し軸の後方への移動を阻止する移動阻止部が設けられており、
    該本体における前記移動阻止部および後端開口を含む部分が、該本体の軸回り方向において分割可能な複数の部分により構成されていることを特徴とする眼内挿入用レンズの挿入器具。
  2. 前記複数の部位がヒンジ部により連結されていることを特徴とする請求項1に記載の挿入器具。
  3. 前記押出し軸は、該押出し軸の軸部よりも、該軸部の軸方向に対して直交する方向での寸法が大きい操作部を有し、
    該操作部は、前記押出し軸に一体形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の挿入器具。
  4. 前記押出し軸は、該押出し軸の軸方向に対して直交する方向における第1の位置と第2の位置とに移動可能な第1の可動部を有し、
    前記第1の可動部が前記第1の位置で前記移動阻止部に当接することで前記押出し軸の後方への移動が阻止され、前記可動部が前記第2の位置に移動することにより前記押出し軸の軸方向への移動が許容されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の挿入器具。
  5. 前記第1の可動部が、前記押出し軸における軸方向複数箇所に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の挿入器具。
  6. 前記押出し軸は、該押出し軸の軸方向に対して直交する方向における第3の位置と第4の位置とに移動可能な第2の可動部を有し、
    前記第2の可動部が前記第3の位置で前記本体に当接することで前記押出し軸の先端方向への移動が阻止され、前記可動部が前記第4の位置に移動することにより前記押出し軸の先端方向への移動が許容されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の挿入器具。
  7. 請求項1から6のいずれか1つに記載の挿入器具と、
    前記本体内に収容された眼内挿入用レンズとを有することを特徴とする眼内挿入レンズの挿入システム。
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