JP2007243640A - 超音波振動子 - Google Patents

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Abstract

【課題】使用環境の温度変化によってケース53が伸縮し、音響整合部材52は伸縮しないため、超音波振動子の動作が安定しないという課題を有する。
【解決手段】本発明の超音波振動子1は、音響整合部材2に用いる材料の工夫により柔軟性をもたせる。柔軟性は、シリカ乾燥ゲルの原料であるオルガノシラン化合物14を、加水分解性有機基17と、非加水分解性有機基15が同一のケイ素16に直接結合したものを含有するようにすることで得られる。
【選択図】図1

Description

本発明は、気体中に超音波を送信、または、気体中を伝搬する超音波を受信する超音波振動子に関するものである。
従来の超音波振動子50は図11に示すような構成である。同図において、圧電体51は、ケース53と接合手段55を介して接合されている。ケースはステンレス等の金属材料が用いられている。ケース53には、さらに、音響整合部材52が接合手段54を介して接合されている。
圧電体51は、電気信号を機械振動に変換する。この機械振動は、音響整合部材52を介して、気体中に超音波として伝達される。圧電体51で発生した振動が気体へ効率よく伝達されるには、音響インピーダンスを考慮する必要がある。
物体の音響インピーダンスZは音速Cと、密度ρとで、式(10)のように定義される。
Z=ρ×C (10)
振動発生手段である圧電体51の音響インピーダンスZは、30×106kg/(ms)であり、超音波の放射媒体である気体、例えば空気の音響インピーダンスZは400kg/(ms)程度であり大きく異なる。
このような音響インピーダンスの異なる境界面上では超音波は反射し、透過する超音波の強さが弱くなり、効率よく伝達されない。
これを、解決するために用いるのが音響整合部材であり、圧電体と放射媒体との間に形成する。音響整合部材の音響インピーダンスZは、次式(11)の関係満たすことで、超音波が放射媒体へ効率よく伝達する。
=(Z×Z(1/2) (11)
この最適な値は、11×104kg/(ms)程度となる。式(11)からわかるように、音響整合部材は、固体で密度が小さく音速の遅いものが要求される。従来、この種の材料として、乾燥ゲルが用いられる。この乾燥ゲルの製造方法は特許文献1に示されている。また、シリカ乾燥ゲルを用いた超音波振動子に関しては、特許文献2に示されている。
特開2005−8424号公報 特開2002−262394号公報
しかしながら、前記従来の構成では、ケース53はステンレスなどの金属材料で構成されているため、熱膨張係数は17.8ppm/℃と大きい。逆に、音響整合部材52として用いるシリカ乾燥ゲルは、数ppm/℃以下である。このため、ケース53にシリカ乾燥ゲルを接合すると、使用環境の温度変化によってケース53が伸縮するが、シリカ乾燥ゲルは伸縮しにくいためシリカ乾燥ゲルに割れが生じることがある。このため、超音波振動子の動作が安定しないという課題を有していた。また、圧電体の熱膨張係数は、7.5ppm/℃であるため、シリカ乾燥ゲルを接合した場合においても同様の課題を有する。
本発明は、前記従来の課題を解決して、使用環境の温度変化に対しても安定して動作するシリカ乾燥ゲルからなる音響整合部材を有する超音波振動子を提供することを目的とする。
前記従来の課題を解決するために、本発明の超音波振動子は、音響整合部材に用いるシリカ乾燥ゲル材料の工夫により柔軟性をもたせる。
柔軟性は、シリカ乾燥ゲル材料であるオルガノシラン化合物を、加水分解性有機基と、非加水分解性有機基が同一のケイ素に直接結合したものを含有するようにすることで得られる。
本発明の超音波振動子は、音響整合部材に用いるシリカ乾燥ゲルに柔軟性を付与することができる。そのため、使用環境の温度変化によってケースが伸縮しても、シリカ乾燥ゲルがその伸縮に追随するので、自らの破損を防止する効果があり、超音波振動子は広い温度範囲において安定して動作をすることができる。
第1の発明の超音波振動子は、オルガノシラン化合物を、加水分解性有機基と、非加水分解性有機基が同一のケイ素に直接結合したシリカ乾燥ゲルのよりなる音響整合部材と圧電体とを備える。これにより、シリカ乾燥ゲルに柔軟性を付与することができ、これを用いた音響整合部材は、使用環境の温度変化によって被接合部材が伸縮しても、シリカ乾燥ゲルがその伸縮に追随するので、自らの破損を防止する効果があり、超音波振動子は広い温度範囲において安定して動作をすることができるという効果がある。
第2の発明の超音波振動子は、オルガノシラン化合物を、式(1)で表される化合物または、式(1)で表される化合物の部分加水分解重合物を重合させると共に乾燥してなるシリカ乾燥ゲルを含有する音響整合部材と圧電体とを備える。
これにより、強度と柔軟性を合わせ持ったシリカ乾燥ゲルが得られ、これを用いた音響整合部材は、使用環境の温度変化によって被接合部材が伸縮しても、シリカ乾燥ゲルがその伸縮に追随するので、自らの破損を防止する効果があり、超音波振動子は広い温度範囲において安定して動作をすることができるという効果がある。
第3の発明の超音波振動子は、オルガノシラン化合物を、式(1)で表される化合物または式(1)で表される化合物の部分加水分解重合物を、重合させてなる湿潤ゲルの存在下、上記加水分解性有機基と、非加水分解性有機基とが同一のケイ素に直接結合したオルガノシラン化合物を重合させると共に乾燥してなるシリカ乾燥ゲルを含有する音響整合部材と圧電体とを備える。
これにより、強度と柔軟性を合わせ持ったシリカ乾燥ゲルが得られ、これを用いた音響整合部材は、使用環境の温度変化によって被接合部材が伸縮しても、シリカ乾燥ゲルがその伸縮に追随するので、自らの破損を防止する効果があり、超音波振動子は広い温度範囲において安定して動作をすることができるという効果がある。
第4の発明の超音波振動子は、加水分解性有機基と、非加水分解性有機基が同一のケイ素に直接結合したオルガノシラン化合物を、式(1)で表される化合物とその加水分解縮重合物の合計に対し、0.1重量%〜10重量%としたシリカ乾燥ゲルを含有する音響整
合部材と圧電体とを備える。これにより、シリカ乾燥ゲルに柔軟性を効果的に付与することができ、これを用いた音響整合部材は、使用環境の温度変化によって被接合部材が伸縮しても、シリカ乾燥ゲルがその伸縮に追随するので、自らの破損を防止する効果があり、超音波振動子は広い温度範囲において安定して動作をすることができるという効果がある。
第5の発明の超音波振動子は、オルガノシラン化合物を、式(2)または式(3)で表される少なくとも一つを含む化合物を重合させ、分子量200以上としたシリカ乾燥ゲルを含有する音響整合部材と圧電体とを備える。これにより、シリカ乾燥ゲルに確実に柔軟性を付与することができ、これを用いた音響整合部材は、使用環境の温度変化によって被接合部材が伸縮しても、シリカ乾燥ゲルがその伸縮に追随するので、自らの破損を防止する効果があり、超音波振動子は広い温度範囲において安定して動作をすることができるという効果がある。
第6の発明の超音波振動子は、オルガノシラン化合物を、式(4)で表される直鎖状ポリシロキサンジオールであるシリカ乾燥ゲルを含有する音響整合部材と圧電体とを備える。これにより、シリカ乾燥ゲルに柔軟性を付与することができ、これを用いた音響整合部材は、使用環境の温度変化によって被接合部材が伸縮しても、シリカ乾燥ゲルがその伸縮に追随するので、自らの破損を防止する効果があり、超音波振動子は広い温度範囲において安定して動作をすることができるという効果がある。
第7の発明の超音波振動子は、オルガノシラン化合物を、式(5)と、式(6)との少なくとも一方と、式(7)で表される化合物との共重合体を含んだシリカ乾燥ゲルを含有する音響整合部材と圧電体とを備える。これにより、より大きい柔軟性を付与することができ、これを用いた音響整合部材は、使用環境の温度変化によって被接合部材が伸縮しても、シリカ乾燥ゲルがその伸縮に追随するので、自らの破損を防止する効果があり、超音波振動子は広い温度範囲において安定して動作をすることができる。あるいは、乾燥ゲルを基材に接着させて用いる場合に被接着層との密着性を向上させることができ、これを用いた音響整合部材は、被接合部材より剥離しにくく、安定した動作をすることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明の実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は第1の実施の形態における超音波振動子1の断面図を示している。
図1において、音響整合部材2と被接合部材3である圧電体とは接合体4である接着剤で接合されている。圧電体には、対向する電極5、6が形成されている。電極は銀、金などの導電性ペーストを加熱し、焼き付けて形成する。電極5、6と電極リード7、8とははんだあるいは銀ロウなどによって電気的に接合されている。音響整合部材2には柔軟性を有するシリカ乾燥ゲルを用いた。
以下図2を使ってシリカ乾燥ゲルの製造方法に関して説明する。
図2は第1の実施の形態におけるシリカ乾燥ゲルの製造工程フローを示すものである。
図2において、シリカ乾燥ゲルの製造工程は、I原料準備工程9、IIゲル化工程10、III再構築工程11、IV疎水化工程12、V乾燥工程13によって形成する。以下各工程9〜13に関して詳細に説明する。
I原料準備工程9
この工程では、シリカ乾燥ゲルの主原料となるオルガノシラン化合物と、これを加水分解するための水、反応溶媒、触媒を加えて出発原材料である混合溶液を作る工程である。オルガノシラン化合物は、例えば図3に示す分子配置概念図のような構造を有する。同図は非加水分解性有機基15がケイ素16に直接結合しており、他のオルガノシラン化合物とは加水分解が行われない。加水分解性有機基17も、直接ケイ素16に結合しており、加水分解によって他のオルガノシラン化合物と加水分解し重合する。このような構造として以下のようなものが例示できる。
式(2)は、非加水分解性有機基10を1つ備え、式(3)は、非加水分解性有機基10を2つ備えた化合物の加水分解重合物からなり、分子量200以上のオルガノシロキサンである。式(4)は、非加水分解性有機基10を2つ備えた直鎖状ポリシロキサンジオールを示している。
式(1)中のRとしては、特に限定はされないが、たとえば、炭素数1〜4のアルキル基を主原料とするものが用いられる。
式(2)、式(3)、式(4)中のRとしては、特に限定はされないが、たとえば、炭素数1〜8の置換または非置換の1価の炭化水素基が挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基等のアラルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ビニル基、アリル基のようなアルケニル基;クロロメチル基、γ−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基のようなハロゲン置換炭化水素基;γ−メタクリロキシプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基、γ−メルカプトプロピル基等の置換炭化水素基等を例示することができる。これらの中でも、合成の容易さ、入手の容易さ、硬度が過度に低下しすぎないという点から、炭素数1〜4のアルキル基およびフェニル基が好ましい。
従って、式(2)のオルガノトリアルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシランなどが例示できる。
また、式(3)のジオルガノジアルコキシシランとしては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシランなどが例示できる。
これらのオルガノシラン化合物は式(5)、(6)、(7)で表される化合物を含んでいてもよい。
式(5)中のRは置換、もしくは非置換の炭素数1〜9の炭化水素基である。
式(6)中のR はエポキシ基、グリシジル基およびこれらのうちの少なくとも一方を含む炭化水素基(たとえば、γ−グリシドキシプロピル基等)からなる群の中から選ばれる少なくとも1種の基であるものの内の少なくとも1種である。
式(7)中のR はアルコキシシリル基および/またはハロゲン化シリル基を含む炭化水素基、たとえば、トリメトキシシリルプロピル基、ジメトキシメチルシリルプロピル基、モノメトキシジメチルシリルプロピル基、トリエトキシシリルプロピル基、ジエトキシメチルシリルプロピル基、エトキシジメチルシリルプロピル基、トリクロロシリルプロ
ピル基、ジクロロメチルシリルプロピル基、クロロジメチルシリルプロピル基、クロロジメトキシシリルプロピル基、ジクロロメトキシシリルプロピル基等であるものの内の少なくとも1種である。
また、本発明に関わる乾燥ゲルを得るための出発物質は、図4に示す分子配置概念図のように、加水分解性有機基17のみによって構成された、式(1)で表される例えばテトラアルコキシシランを含有してもよい。これらの例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどが挙げられる。
以上に例示した、式(2)から式(7)で表される化合物または重合物或いは共重合物はいずれも乾燥ゲルを柔軟化させ、破損を生じさせにくくする成分である。式(2),(3)で表される化合物を分子量200以上となるように重合することで、得られるゲルに対する柔軟化の効果が大きくなる。例えば、式(2)、(3)で表される化合物を用いた場合においても、分子量が小さいモノマー等を用いた場合には、乾燥ゲルを柔軟化する効果が小さい。式(4)で表される化合物も柔軟化の効果が大きく、特に式(1)で示されるテトラアルコキシシランと同時に用いる場合には、これと共重合(架橋)し易いために、反応速度の制御が容易である。式(5)、(6)、(7)で表される化合物の共重合体は、ゲルの柔軟化に大きな効果がある。式(5)で表される構造部は、共重合体に大きな柔軟性を持たせる効果がある。式(6)で表される構造部は、乾燥ゲルを基材に接着させて用いる場合に被接着層との密着性が向上させる。なお、式(5)、あるいは式(6)で表される構造部とその他のオルガノシランとを架橋させるためには、式(7)で表される構造部が必須の成分である。
なお、式(2)から式(7)で表される化合物または重合物或いは共重合物の乾燥ゲル中に含まれる濃度は特に規定はされないが、0.01重量%〜20重量%であることが好ましい。この成分の濃度が低すぎると乾燥ゲルの割れや基材を用いる場合の剥がれが防げなくなる。逆に高すぎると強度が低下して湿潤ゲルの乾燥の際に収縮を生じる。これらの理由から、この化合物の濃度は0.1重量%〜10重量%であることがさらに好ましい。
触媒としては、一般的な有機酸、無機酸、有機塩基、無機塩基が用いられる。有機酸として、酢酸、クエン酸など、無機酸として、硫酸、塩酸、硝酸など、有機塩基として、ピペリジンなど、無機塩基として、アンモニアなどがある。また、ピペリジン等のイミン系のものを用いれば細孔径が大きくなる効果があるため毛管力低減の観点からより好ましい。
溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等の低級アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールのモノあるいはジエーテル、アセトン等の低級ケトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン等の低級エーテルのような水溶性有機溶媒が用いられる。また、第1ゲル原料の加水分解、縮重合でゲルが形成される場合には、加水分解に必要な水も添加される。
以上に示した化合物を、攪拌混合して、原料準備を行う。図5は、このときのオルガノシラン化合物の概念図である。図5において、三角(△)は、非加水分解性有機基15を備えるオルガノシラン化合物14、四角(□)は加水分解性有機基17のみを備えるオルガノシラン化合物18を示しており、(a)は、これらのオルガノシラン化合物と、触媒、溶剤が分散したゲル原料溶液19の状態を示している。これらのオルガノシラン化合物が触媒によって加水分解され、重合される。図5(b)は、重合されたオルガノシラン化合物の重合概念図を示している。この図のようにゲル原料溶液19は、重合が進行して湿潤ゲル20を経て、乾燥されシリカ乾燥ゲルが形成される。
IIゲル化工程10
原料準備工程9に引き続きこの工程では、準備された混合溶液に触媒を加えて加水分解重合を促進させることによってゲルの固体骨格が形成させ、ゲルに溶剤を含んだ状態である湿潤ゲルをつくる工程である。ゲル化を促進するため、必要に応じて触媒の添加、溶液温度上昇を行う。触媒は、原料準備工程において例示してあるため省略する。なお、原料準備工程9とゲル化工程10とで触媒を特に分割して添加しなくてもよく、原料準備工程9とゲル化工程10とを1度に行っても良い。
III再構築工程11
ゲル化工程10に引き続きこの工程では、ゲル化工程10で形成された湿潤ゲルの固体骨格の一部を分解しながら、新たな固体骨格を形成する。具体的には、まず再構築工程のための再構築原料と、再構築触媒および水と、必要に応じて溶媒を添加混合することによって再構築原料溶液を調製し、これにゲル化工程で得られた湿潤ゲルを浸漬させる。この工程の処理時間、処理温度によって、シリカ乾燥ゲルの密度を調整することができる。再構築工程で用いられる再構築触媒、あるいはオルガノシラン化合物は、ゲル化工程10で例示したものを使用することができるが、特に、ゲル化工程時と同一のものである必要はない。ゲル骨格増強後、反応停止を行う目的で、再構築原料溶液を例えばイソプロピルアルコールに置換すること反応を停止させる。
IV疎水化工程12
再構築工程11に引き続きこの工程では、再構築工程11までに得られた湿潤ゲルの表面に、溶媒中に疎水化剤を溶解した疎水化溶液を反応させることで、疎水基を導入する。
本発明に用いられる疎水化剤としては、反応性が高い点からシリル化剤が好ましく、例えばシラザン化合物、クロロシラン化合物、アルキルシラノール化合物およびアルキルアルコキシシラン化合物等がある。
これらのシリル化剤は、シラザン化合物、クロロシラン化合物、アルキルアルコキシシラン化合物の場合は、直接あるいは加水分解を受けて、対応するアルキルシラノールになってからゲル表面のシラノール基と反応する。また、アルキルシラノールをシリル化剤として用いれば、そのまま表面のシラノール基と反応する。
これらの中でも、疎水化時の反応性が高いことと入手の容易性から、クロロシラン化合物、シラザン化合物が特に好ましく、入手の容易性及び疎水化時に塩化水素、アンモニア等のガスを発生しないことからはアルキルアルコキシシランが特に好適に用いられる。
具体的には、トリメチルクロロシラン、メチルトリクロロシランおよびジメチルジクロロシランなどのクロロシラン化合物、ヘキサメチルジシラザンなどのシラザン化合物、メトキシトリメチルシラン、エトキシトリメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジメトキシジエチルシランおよびジエトキシジメチルシランなどのアルキルアルコキシシラン化合物、トリメチルシラノールおよびトリエチルシラノールなどのシラノール化合物に代表されるシリル化剤がある。これらを用いれば、湿潤ゲル表面にトリメチルシリル基などのアルキルシリル基を導入することで疎水化を進行させることができる。
また、疎水化剤として、フッ素化されたシリル化剤を用いれば、疎水性が強くなり非常に効果的である。
また、疎水化剤としては、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、エチレングリコールおよびグリセロールなどのアルコール類
の他、蟻酸、酢酸、プロピオン酸およびコハク酸などのカルボン酸なども用いることができる。これらは、ゲル表面の水酸基と反応してエーテルまたはエステルを形成することで疎水化を進めるが、反応が比較的遅いため高温の条件が必要である。
疎水化工程は最終的に得られる乾燥ゲルが、吸湿しないようにするための処理で、ゲルをシランカップリング処理液に投入したのち、溶液を例えばイソプロピルアルコールに置換することでシラン処理反応を停止させる。
V乾燥工程8
この工程では、疎水化工程までに得られた湿潤ゲルから溶媒を除きシリカ乾燥ゲル1を得る。
湿潤ゲルから溶媒を除く乾燥方法としては、(1)自然乾燥法、(2)特殊乾燥法がある。
(1)自然乾燥法は、最も一般的で簡便な乾燥法であり、溶媒を含む湿潤ゲルを放置することで、液体状態の溶媒を気化させて除去するものであり、この乾燥法がコストの観点から最も好ましい。生産性の観点から湿潤ゲルを加熱する加熱乾燥、あるいは湿潤ゲルを大気圧以下に減圧する減圧乾燥も自然乾燥法に含むものとする。
加熱する温度は、溶媒が蒸発する温度であれば特に限定されない。
乾燥時に、ゲルの密度が低い場合にはゲル中の溶媒の表面張力に比例する毛管力のために、ゲルが一時的に収縮し割れを生じることがある。このため、乾燥時の溶媒は沸点での表面張力が小さい炭化水素系の溶媒が好ましく、特に安価なヘキサン、ペンタンあるいはその混合物が好ましい。一方、安全性の観点からは、イソプロパノール、エタノール、ブタノール等のアルコール類、さらには水と有機溶媒との混合溶媒からの乾燥が好ましい。そのため、目的に応じて上に示した溶剤と、湿潤ゲル形成時に使用した溶剤とを置換することで乾燥時の応力を低減することができ、湿潤ゲルが乾燥時に割れにくくなる。
(2)特殊乾燥法は、超臨界乾燥や凍結乾燥の2つの方法がある。
超臨界乾燥は、溶媒を超臨界状態として液体状態を経ずに取り除くことができるので、気液界面の形成される毛管力の発生がない。このため湿潤ゲルが乾燥時に割れにくくなる。乾燥に用いられる超臨界流体として、水、アルコール、二酸化炭素等がある。最も低温で超臨界状態が得られ、しかも無害である二酸化炭素が多く用いられる。
具体的には、まず耐圧容器中に液化二酸化炭素を導入し、耐圧容器中の湿潤ゲル溶媒を液化二酸化炭素に置換する。次に、圧力と温度を臨界点以上に上げ超臨界状態とし、温度を保ったまま徐々に二酸化炭素を放出して乾燥を完了させる。
凍結乾燥は、湿潤ゲル中の溶媒を凍結させた後に、昇華により溶媒を除く乾燥方法である。液体状態を経ず、ゲル中に気液界面を生じないので毛管力が働かない。このため、乾燥時のゲルの収縮を抑制することができる。
凍結乾燥法に用いられる溶媒は、凝固点での蒸気圧が高いものが好ましく、第3ブタノール、グリセリン、シクロヘキサン、シクロヘキサノール、パラ−キシレン、ベンゼン、フェノールなどが挙げられる。これらのなかでも、融点における蒸気圧が高いという点から、特に第3ブタノール、シクロヘキサンが好ましい。
凍結乾燥時には、湿潤ゲル中の溶媒を、上記の凝固点での蒸気圧が高い溶媒に置換しておくことが効果的である。また、ゲル化時に用いる溶媒を、凝固点での蒸気圧が高い溶媒にしておけば、溶媒置換を省略して効率的な製造が可能となるためより好ましい。
乾燥は、疎水化工程の後に行ってもよいし、疎水化工程の前に行ってもよい。乾燥工程を経た後で疎水化する場合は、乾燥ゲルを溶液中ではなく、疎水化剤の蒸気にさらすことで乾燥ゲル表面に疎水基を導入する。従って、使用する溶媒量を削減することができる。
この時使用する、疎水化剤としては、上述の疎水化剤を用いることができるが、反応性の高さからトリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン等のクロロシラン化合物が最も好ましい。また、クロロシラン化合物以外の疎水化剤を用いる場合は、アンモニアや塩化水素等の気体状態で導入可能な触媒を用いることも有効である。
また、気相で疎水化を行う場合は、溶媒や疎水化剤の沸点に制限を受けずに疎水化時の温度を高めることができる。従って、気相での疎水化は、反応を早めるために有効である。また、湿潤ゲルが薄膜や粉体であれば、疎水化剤蒸気の浸入が容易であり、薄膜の場合は溶媒量削減の効果も大きいためより好ましい。
以上のようにして形成したシリカ乾燥ゲルを含む音響整合部材は柔軟性が付与されるため、温度変化による被接合部材3である圧電体が伸縮したとしても、柔軟性のある音響整合部材が、この伸縮に追随して伸縮することで、自らの破壊を防止することが可能となる。これによって、本発明超音波振動子1は広い温度範囲において安定して動作することができる。
(実施の形態2)
図6は、本発明第2の実施の形態におけるシリカ乾燥ゲル製造工程のオルガノシラン化合物概念図である。同図に(a)は、まず1)原料調整工程9において加水分解性有機基17のみによって構成されたオルガノシラン化合物18で原料調整し分散させたゲル原料溶液21を示しており、IIゲル化工程10にてゲル化を行う。次に、同図(b)において、I原料調整工程9およびIIゲル化工程10で形成された湿潤ゲル22に、非加水分解性有機基15を備えたオルガノシラン化合物14と、加水分解性有機基17のみを備えたオルガノシラン化合物18とを混合して分散させた再構築溶液23加え加水分解を行う。このようにして、同図(c)に示したように加水分解して重合(架橋)して生成した湿潤ゲル24が得られる。I原料準備工程9および、III再構築工程11で用いたオルガノシラン化合物、触媒、溶媒は実施の形態1と同様のため省略する。
以上のようにして強度と柔軟性を合わせ持ったシリカ乾燥ゲルが得られ、これを用いた音響整合部材は、使用環境の温度変化によって被接合部材が伸縮しても、シリカ乾燥ゲルがその伸縮に追随するので、自らの破損を防止する効果があり、超音波振動子は広い温度範囲において安定して動作をすることができる。
(実施の形態3)
図7は、シリカ乾燥ゲルの抗折強度測定治具25の断面図を示している。同図において、実施の形態1と同様の方法で作製した円筒形のシリカ乾燥ゲル26を抗折強度測定治具25の測定台27に載置し、押圧棒28を一定の速度で垂直に移動し、そのときの抗折強度の測定を行った。図8はシリカ乾燥ゲルの抗折強度測定結果を示している。
同図の横軸はシリカ乾燥ゲル26サンプルの密度、縦軸はシリカ乾燥ゲル26サンプル抗折強度から算出した弾性係数を示している。同図において、点線29は従来例に記載されている式(1)に記載したオルガノシラン化合物のみで作製したシリカ乾燥ゲルサンプ
ル、実線30は本発明のシリカ乾燥ゲルに柔軟性を付与したシリカ乾燥ゲルサンプルを示している。従来例に比べ、本発明の乾燥ゲルは、弾性係数が小さく、柔軟性が得られている。この柔軟性は温度変化などによって、被接合部材が伸縮しても、シリカ乾燥ゲルがその伸縮に追随するので、自らの破損を防止する効果があり、超音波振動子は広い温度範囲において安定して動作をすることができる。
(実施の形態4)
図9は、本発明第4の実施の形態における超音波振動子31の断面図を示しており、図10は超音波振動子31の工程図である。以下超音波振動子31の製造工程に関して説明する。工程(a)は音響整合部材2を形成する工程であり、実施の形態1と同様のため省略する。工程(b)は、圧電体32の焼き付け銀で形成した電極33表面と、被接合部材3である有天筒状金属ケースの天部外壁面とに接合部材4である接着剤を印刷する工程である。印刷は、スクリーン印刷、グラビア印刷、転写など接着剤を所定の厚さに印刷できれば限定されるものではない。前記有天筒状ケースは金属ケースであり、鉄、真鍮、銅、アルミ、ステンレスあるいは、これらの合金、あるいはこれらの金属の表面にめっきを施した金属など何でも良い。
接合部材4である接着剤を印刷した圧電体32を、被接合部材3である有天筒状金属ケース天部内壁面に、天部外壁面に音響整合部材2を圧電体32と対向するように貼り付ける。このような状態で、加圧しながら、接着剤を硬化する。接着剤は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアノアクリレート樹脂など特に限定されない。
工程(c)は、接着剤によって接合した有天筒状金属ケースと、導電手段35を挿入した端子板36とを溶接によって接合する。端子板36は電極端子37と電極端子38とを備え、端子板絶縁部39によって電気的に絶縁されている。導電手段35は、シリコンゴム、ブタジエンゴム、エラストマーなどの弾性体と、導電体とで構成され、電極34と電極端子38とを電気的に接続する。電極33と被接合部材3である有天筒状ケースと電極端子37とは電気的に接続されている。
有天筒状金属ケースと端子板36との溶接時に、有天筒状金属ケースと端子板36とで形成した密閉空間40内部に不活性ガスを注入し超音波送受信器31を製造した。不活性ガスは、ヘリウムガスおよび窒素ガスなど銀電極と反応しない気体であれば限定されるものではない。溶接時に有天筒状ケース内に不活性ガスを挿入することによって銀電極を備えた圧電体32は外部環境から隔離され、長期にわたって電気的接続は安定化し、長期信頼性が確保される。
以上のように構成した超音波振動子は、以上のようにして形成したシリカ乾燥ゲルを含む音響整合部材は柔軟性が付与されるため、温度変化による被接合部材3である圧電体が伸縮したとしても、柔軟性のある音響整合部材が、この伸縮に追随して伸縮することで、自らの破壊を防止することが可能となる。これによって、本発明超音波振動子1は広い温度範囲において安定して動作することができるため、長期にわたって使用することがでる。
以上のように、本発明にかかる超音波振動子は、音響整合部材に用いるシリカ乾燥ゲルに柔軟性を付与することができる。そのため、使用環境の温度変化によってケースが伸縮しても、シリカ乾燥ゲルがその伸縮に追随するので、自らの破損を防止する効果があり、超音波振動子は広い温度範囲において安定して動作をすることができるので、ガス、水道等の流量計に適用できる。
本発明の実施の形態1における超音波振動子の断面図 本発明の実施の形態1におけるシリカ乾燥ゲルの製造工程図 本発明の実施の形態1におけるオルガノシラン化合物の分子配置概念図 本発明の実施の形態1におけるオルガノシラン化合物の分子配置概念図 本発明の実施の形態1におけるシリカ乾燥ゲル製造工程のオルガノシラン化合物概念図 本発明の実施の形態2におけるシリカ乾燥ゲル製造工程のオルガノシラン化合物概念図 本発明の実施の形態3における乾燥ゲルの抗折強度測定治具断面図 本発明の実施の形態3における乾燥ゲルの抗折強度測定結果を示す特性図 本発明の実施の形態4における超音波振動子の断面図 本発明の実施の形態4における超音波振動子の製造方法を示す工程図 従来の超音波振動子の断面図
符号の説明
1 超音波振動子
2 音響整合部材
15 非加水分解性有機基
16 ケイ素
17 加水分解性有機基

Claims (7)

  1. 加水分解性有機基と、非加水分解性有機基が同一のケイ素に直接結合したオルガノシラン化合物を、重合させると共に乾燥してなるシリカ乾燥ゲルよりなる音響整合部材と圧電体とを備えた超音波振動子。
  2. 式(1)で表される化合物または式(1)で表される化合物の部分加水分解重合物を、重合させると共に乾燥してなるゲルをも含有する請求項1に記載の超音波振動子。
    式(1) Si(OR
  3. 式(1)で表される化合物または式(1)で表される化合物の部分加水分解重合物を、重合させてなる湿潤ゲルの存在下、上記加水分解性有機基と、非加水分解性有機基とが同一のケイ素に直接結合したオルガノシラン化合物を重合させると共に乾燥してなる請求項1または2記載の超音波振動子。
  4. 加水分解性有機基と、非加水分解性有機基が同一のケイ素に直接結合したオルガノシラン化合物は、式(1)で表される化合物とその加水分解縮重合物の合計に対し、0.1重量%〜10重量%とした請求項2または3記載の超音波振動子。
  5. オルガノシラン化合物は、式(2)または式(3)で表される少なくとも一つを含む化合物を重合させ、分子量200以上とした請求項1から4のいずれか記載の超音波振動子。
    式(2) RSi(OR
    式(3) (RSi(OR
  6. オルガノシラン化合物は、式(4)で表される直鎖状ポリシロキサンジオールである請求項1から4のいずれか記載の超音波振動子。
    式(4) HO((RSiO)
  7. オルガノシラン化合物は、式(5)と、式(6)との少なくとも一方と、式(7)で表される化合物との共重合体を含んだ請求項1から4のいずれか記載の超音波振動子。
    式(5) CH=CR(COOR
    式(6) CH=CR(COOR
    式(7) CH=CR(COOR
    ただし、Rは水素原子及び/またはメチル基、Rは置換もしくは非置換の炭素数1〜9の1価炭化水素基、Rはエポキシ基、グリシジル基及びこれらのうち少なくとも一方を含む炭化水素基からなる群の中から選ばれる少なくとも1種の基、Rはアルコキシシリル基及び/またはハロゲン化シリル基を含む炭化水素基である。
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