第1の発明は、密度勾配を有する乾燥ゲルを含む多孔体からなる音響整合層であって、音波の進行方向に対して垂直方向に密度勾配を設定し、かつ音波の進行方向に垂直な平面内で平面の周辺部分の密度を中心部分の密度より低く設定したものである。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
以下乾燥ゲルを含む多孔体を中心に具体的な説明を行う。図1の多孔体11は、一例として正方形の板状に成型されたものを示してあり、その底面の辺の長さは2L、厚さは2hである。また、板の上面の中央に原点を置いて、z軸が下方に、x軸が右方向にとってある。
図1を使って具体的な密度勾配の説明をする前に、図2により乾燥ゲルを含む多孔体11の密度勾配以外の構成に関して説明する。
本実施の形態の多孔体11は、乾燥ゲル以外のものが含まれていても良い。例えば、乾燥ゲル中に分散される種々の添加材や、乾燥ゲルをその空孔中に形成する連通孔体等があり、これらを図2に示してある。
図2の(a)は、添加材13が乾燥ゲル12に分散された乾燥ゲルを含む多孔体11を、(c)、(d)では、(b)に示した連通孔体14の空孔15を含む空間に乾燥ゲル12が形成された多孔体11を示している。
さらに述べると、(c)では連通孔体14の内部のみに乾燥ゲル12が形成されているが、(d)では、連通孔体14の外にも乾燥ゲル12が形成され、2層構造を有する多孔体11となっている。また、上記の組み合わせで3層以上の構成もとることができる。
本実施の形態での乾燥ゲルを含む多孔体11は、上記のように乾燥ゲル以外のものを含むが、密度勾配は、音響インピーダンス、熱伝導率、表面積、誘電率への影響の大きい乾燥ゲルの密度勾配を指すものとする。ただし、他の構成材料により生じる密度勾配の形成を構成として除外するものではない。
次に図3を用いて図1に対応する多孔体11の密度勾配に関して説明する。図3(a)は、図1の多孔体11の密度勾配のうち、z軸方向の密度勾配を示したものである。
また、(b)は同様にx軸方向の密度勾配を示したものである。z軸方向では、乾燥ゲルの中心部の密度が低下し、両方の表面の密度が上昇している。このことにより、全体の密度を上昇させることなく、取り扱い時に重要な表面の強度が上昇し、取り扱いが容易となる効果がある。特に、表面近傍で急に密度が上昇する構成が好ましい。
ところで、上記で示した密度勾配の連続性に関して図4を用いて説明する。図4の(a)は、図3で説明したように密度および密度勾配が連続的に変化する形態を示している。これに対し、(b)では、密度勾配が0で、密度が階段状に変化し、密度が不連続に変化する形態である。
音響整合層として音波を透過させる目的には、密度が不連続に変化すると界面での反射により透過効率が低下するため、(a)の構成が好ましい。もちろん、乾燥ゲルを含む多孔体11では、(b)の構成を除外するものではない。
次に図5にて実施の形態の異なる乾燥ゲルを含む多孔体11に関して説明する。図5は、球状の多孔体11を示し、球の中心から鉛直上方にz軸が設定されている。球の半径はrである。図6は、図5の乾燥ゲルを含む多孔体の密度勾配を示した図である。
図6のように、球の内部から表面に向けて密度が上昇する密度勾配を形成し、特に表面付近で密度が上昇している。このように、表面の密度が選択的に高くなることで、全体の密度を上昇させることなく、表面の強度を高められ、取り扱いが容易となる効果が得られる。
(実施の形態2)
図7において、多孔体11は円盤状の形状を有している。そして円盤の上面の中心から鉛直下方にz軸が設定され、上面の平面内の右方にx軸が設定されていることがわかる。また、円柱の直径は2L、厚さは2hである。
一方、図8は、図7の多孔体11の密度勾配を示し、円盤の中心から外側に向けて密度が上昇する密度勾配を形成し、z軸方向すなわち下方へ密度が上昇する密度勾配を有していることがわかる。
このように、表面の密度が選択的に高くなることで、全体の密度を上昇させることなく、表面の強度を高められ、取り扱いが容易となる効果が得られる。さらに、下方、すなわちz軸方向へ密度が上昇する密度勾配を有することから、多孔体11を音響整合層として−z軸方向に音波が進行するように超音波送受波器を構成すれば、整合層中で、圧電体から気体への音響インピーダンスの変化をスムーズに行え、音波の発生効率、受信効率が高くなる効果が得られる。同様に、上記超音波送受波器を用いて超音波流量計を構成すれば、検出する超音波の強度が上昇することで高感度の流量検出が可能となる。
図9は、多孔体11において異なる密度勾配を表したものである。図9より、円盤の中心から外側に向けて密度が減少する密度勾配を形成し、z軸方向すなわち下方へ密度が減少する密度勾配を有している。
円盤の中心から外側に向かって減少する密度勾配を有して入ることから、本実施の形態の多孔体11を音響整合層として用いて+z軸あるいは−z軸方向に音波が進行するように超音波送受波器を構成すれば、整合層中心で音響インピーダンスが低く、外側で高いことから、光の場合の凹レンズと同様の作用により、圧電体から気体への発信、受信される超音波の角度を広げることが可能となり、広い範囲へ超音波を発信、あるいは広い領域からの超音波の受信が可能となる。
また、z軸方向すなわち下方へ密度が減少する密度勾配を有しているために、図8の場合と同様の理由で、多孔体11を音響整合層として用いて−z軸方向に音波が進行するように超音波送受波器を構成すれば、音波の発生効率、受信効率が高くなる効果が得られる。さらに、上記超音波送受波器を用いて超音波流量計を構成すれば、検出する超音波の強度が上昇し高感度の流量検出が可能となる。
(実施の形態3)
本実施の形態の乾燥ゲルを含む多孔体は、乾燥ゲルの固体骨格と細孔において、前記細孔は細孔径が2nm以上40nm以下の範囲の第1細孔を含み、前記第1細孔の容積が1cm3/g以下である構成をとる。
本実施の形態において、特に断らない限り、細孔容積は、窒素吸着法によりBJH法を用いて算出されたものであり、比表面積は、窒素吸着法によりBET法を用いて算出された比表面積とする。
そして、先の特許文献1に開示されて入る通常のゾルゲル方により得られる細孔に相当する2〜40nmの細孔を第1細孔と呼ぶ。
この第1細孔は微細であるため、有機溶媒に接触、乾燥する際に強い毛管力が働き、ゲルの収縮や割れを生じていた。
これに対し、本実施の形態による乾燥ゲルを含む多孔体は、主として10nm程度から100nm程度の粒子から構成される第2固体骨格4aから形成される。このとき、2nm以上40nm以下の細孔の容積は1cm3/g以下である。このようにして、有機溶媒の浸入・乾燥時に収縮の原因となる微細な第1細孔が大幅に減少するために、有機溶媒に接触した際の、収縮、割れを抑制することが可能になる。
本実施の形態では、さらに好ましくは、第1細孔の細孔容積を0.5cm3/g以下である。この際、比表面積も300m2/g以下となる。この場合には、有機溶媒との接触により収縮が起こらないことに加え、割れの発生も回避することが可能となる。
また、密度勾配に関しては、実施の形態1〜3と同じ構成であり同様の効果が得られる。
(実施の形態4)
図10は多孔体の製造方法を示し、その特徴は、多孔体のゲル化工程に相当する第1ゲル化工程に加えて、再構築工程(第2ゲル化工程ともいう)を有することである。再構築工程は、第1ゲル化工程で得た第1湿潤ゲルを再構築原料溶液に浸すことで行い、この工程により密度が上昇する。この密度上昇は、再構築原料溶液の供給量で決まるため再構築原料溶液に近い湿潤ゲル表面の密度が高くなり、乾燥ゲル中に密度勾配が形成できる。
図11は再構築工程時に操作を示したものである。第1湿潤ゲルを含む多孔体16の側面に再構築原料溶液遮蔽具17が設置された状態で、再構築原料溶液18中に浸漬される。この場合、再構築原料溶液遮蔽具17は、第1湿潤ゲルを含む多孔体16を固定支持する役割も果たす。また、第1湿潤ゲルの中心を原点に、右方向にx軸が、上方にz軸が設定されている。
側面が再構築原料溶液遮蔽具17により塞がれているため、再構築原料溶液18の供給方向Fは第1湿潤ゲルからなる多孔体16の側面に限られる。このため、再構築工程は、側面で速く進行して密度が上昇する。
図12は、図11の製造方法に従って得られた乾燥ゲルの密度勾配を示し、z軸方向に密度勾配が生じており、上下表面で密度が高くなっていることがわかる。
このように、表面で密度が高くなることにより、全体の密度を上昇させることなく、表面の強度を高められ、取り扱いが容易となる効果が得られる。
図13に示す製造方法においては、第1湿潤ゲルを含む多孔体16の下面および側面に再構築原料溶液遮蔽具17が設置された状態で、再構築原料溶液18中に浸漬されている。また、第1湿潤ゲル含む多孔体16の中心を原点に、右方向にx軸が、上方にz軸が設定されている。再構築原料溶液遮蔽具17のために、再構築原料溶液の供給が制限されるため、上面に比べて下面、側面での再構築工程の進行は遅れ密度の上昇は低くなる。
図14は、図13の製造方法に従って得られた乾燥ゲルの密度勾配を示し、z軸方向に上昇する密度勾配が生じていることがわかる。
このような乾燥ゲルを含む多孔体を音響整合層として−z軸方向に音波が進行するように超音波送受波器を構成すれば、整合層中で、圧電体から気体への音響インピーダンスの変化をスムーズに行え、音波の発生効率、受信効率が高くなる効果が得られる。同様に、上記超音波送受波器を用いて超音波流量計を構成すれば、音波の発生効率、受信効率が高くなることにより、検出する超音波の強度が上昇することで、高感度の流量検出が可能となる。
また、後述するように本実施の形態の乾燥ゲルを含む多孔体の製造方法を用い、再構築工程を経ることで、2〜40nmの小さな細孔の容積を1cm3/g以下にすることができる。このため、小さな細孔が減少して、対応する毛管力が低減されるため、溶媒に接触、乾燥する際の収縮や割れが低減される効果がある。以下、多孔体の製造方法を、再構築工程を中心に説明する。
また、以下では、効果が顕著である、密度が500kg/m3以下の乾燥ゲルを製造する方法を例示するが、本製造方法を用いて500kg/m3超の密度の乾燥ゲルを製造することもできる。
本発明の実施形態の乾燥ゲルを含む多孔体の製造方法における乾燥ゲルを製造する工程は、第1固体骨格と第1細孔とを有する第1湿潤ゲルを用意する第1ゲル化工程と、第1固体骨格の少なくとも一部を分解するとともに第1固体骨格よりも太い第2固体骨格を形成する再構築工程(第2ゲル化工程ということもある。)とを包含する。第1ゲルは公知の方法で製造したものを用いることができる。
再構築工程は、粒径が10nm以上100nm以下の粒子を生成する再構築原料溶液(「第2ゲル原料溶液」ということもある。)に第1ゲルを接触させることによって実行される。
第1ゲルを用意する工程は、公知の方法で実行することができ、例えば、第1ゲル原料と、第1触媒(ゲル化触媒)と、第1溶媒とを含む第1ゲル原料溶液からゾルゲル法によって第1湿潤ゲルを作製する工程を包含する。この工程を第1ゲル化工程と呼ぶ。なお、ここでは、乾燥後の密度が500kg/m3以下となる湿潤ゲルを作製する。
再構築工程において、第1ゲルを接触させる上記再構築原料溶液(第2ゲル原料溶液)は、例えば、再構築原料(第2ゲル原料)と、再構築触媒(第2触媒)と、水と、再構築溶媒(第2溶媒)とを含む。再構築原料は第1ゲル原料と同じであってもよいし、再構築触媒は第1触媒と同じであってもよい。再構築原料溶液は、水を含むことが必要であり、再構築原料溶液中で粒径が10nm以上100nm以下の粒子が生成される溶液を用いることが好ましい。
再構築原料溶液に接触させる第1ゲルは、湿潤ゲル(第1湿潤ゲル)であることが好ましい。ここで例示するように乾燥後の密度が500kg/m3以下となる湿潤ゲルを乾燥すると、その過程でゲルに割れが生じることがあるが、湿潤ゲルのままで再構築原料溶液に接触させると、第1ゲルが低密度のゲルであっても、密度上昇や固体骨格の崩壊による割れの発生が防止される。
なお、最終的な乾燥ゲルを粉末(顆粒状を含む)の形態で利用する場合には、湿潤ゲルを乾燥した後で再構築工程に供しても良い。この場合には、第1ゲルの固体骨格の表面を疎水化しておくことが好ましい。この疎水化工程は公知の方法で実行することができる。
この再構築工程は、1回に限らず、段階的に複数回実行してもよい。この場合さらに複雑な密度勾配を形成することができる。
また、得られた第2固体骨格の表面を疎水化する工程をさらに包含してもよく、疎水化工程は、再構築工程の後に行ってもよいし、再構築工程と同じ工程で実行してもよい。勿論、再構築工程によって得られた第2固体骨格を有する第2湿潤ゲルを乾燥した後で、疎水化工程を実行してもよい。
本乾燥ゲルの製造方法によって、有機溶媒等との接触による収縮および/または割れが発生し難い乾燥ゲルが得られるメカニズムの概要を説明する。
まず、第1ゲル化工程では、相対的に密度の小さい湿潤ゲルの固体骨格(例えば、乾燥後の密度が500kg/m3以下)を形成し、再構築工程(第2ゲル化工程)では、第1ゲル化工程で構成された第1固体骨格上に、再構築原料(第2ゲル原料)となるモノマーあるいはオリゴマーを重合させて形成される微粒子を、主として重合させることで、第1固体骨格の細い部分を補強して、第1固体骨格よりも太い第2固体骨格を形成しつつ、密度の上昇が進行する。
このように、一度ゲルの固体骨格を形成した後に、再度ゲル化工程を有するため、湿潤ゲルの状態での密度向上も可能となり、従来得られなかった高い密度の乾燥ゲルを得ることも可能となる。
また、再構築工程では、上述の重合による密度上昇と並行して、第1固体骨格の分解(溶解)も進行する。すなわち、再構築原料溶液中の水と再構築触媒(第2触媒)との存在によって、第1固体骨格の加水分解が並行して起こる。そのため、第1ゲルの微細な細孔構造が消失し、第1固体骨格よりも太い第2固体骨格と粗い細孔とを有するゲル構造の再構築が促進される。
また、本製造方法によれば、ゲル化時に進行する湿潤ゲルの収縮が抑制されるので、基体上などに乾燥ゲルを形成する場合に、割れや基体からの脱落等が低減される効果が得られる。これは以下のように説明できる。
一般的にゲル化時には、架橋の進行に伴い、初期密度の高いゲルほど、収縮により寸法減少が生じる。ところが、本乾燥ゲルの製造方法は、第1ゲル化と再構築工程とを有するので、一定の密度のゲルを得るために必要な、第1ゲル化工程でのゲル密度を低くすることが可能となり、その結果、第1ゲル化工程における収縮を抑制することができる。
なお、第1湿潤ゲルを作製した第1ゲル原料溶液にゲル原料を追加することなく、第1湿潤ゲルをその溶液中に一定温度で放置する従来エージング処理によっても、ゲル強度が向上することが知られている。この従来のエージング処理では、第1固体骨格の細い部分にある水酸基間で脱水縮合が進行して結合が強くなるためゲル強度が上昇すると考えられている。しかしながら、この場合、ゲル原料の補給がないため骨格を太くする効果が小さく、十分な強度の向上を得ることができない。
これは、最初に形成されたゲルの固体骨格(第1固体骨格)を分解することが無いので、微細な細孔がそのまま残存し、その細孔で発生する毛管力が低減されないためと考えられる。
以下に、さらに詳しく製造方法に関する実施の形態について説明する。
なお、以下の説明において、特に断らない限り、「細孔容積」は、窒素吸着法によりBJH法を用いて算出された細孔容積であり、「比表面積」は窒素吸着法によりBET法を用いて算出された比表面積とする。
以下で各工程を順に説明して行く。
(第1ゲル化工程)
本実施形態では、まず、いわゆるゾルゲル法により第1湿潤ゲル1を作製する。その際、第1ゲル原料に第1触媒(ゲル化触媒)を加えてゲル化を進行させる。
図1、5,7のように一定の形状の乾燥ゲルを含む多孔体11を得たい場合には、一定の型の中で第1湿潤ゲルを作製し、再構築時には型から外して再構築処理を進める。
本実施形態の製造方法で用いられるゲル原料としては、ゾルゲル法に用いられる一般的な原料が用いられる。例えば、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタン等の酸化物微粒子や対応するアルコキシド等がある。この中でも金属としてケイ素を含有する化合物が、入手の容易性から好ましい。また、金属アルコキシドの場合、既に述べたように、反応制御の容易性の観点からもケイ素が好ましい。例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシランおよびトリアルコキシシラン、ジアルコキシシラン等のケイ素アルコキシドが用いられる。
ここで、ジアルコキシシランは単独では、ゲルを形成し難いため、他のゲル原料と混合して用いられる。さらに、これらのオリゴマーをゲル原料として用いれば、ゲル原料の沸点が下がるために、製造時の安全性が高くなる効果を奏する。その他、コロイダルシリカ、水ガラス、水ガラスから電気透析により得られるケイ酸水溶液等は価格が低いために好適に用いられる。
ゲル化触媒としては、一般的な有機酸、無機酸、有機塩基、無機塩基が用いられる。有機酸として、酢酸、クエン酸など、無機酸として、硫酸、塩酸、硝酸など、有機塩基として、ピペリジンなど、無機塩基として、アンモニアなどがある。また、ピペリジン等のイミン系のものを用いれば細孔径が大きくなる効果があるため毛管力低減の観点からより好ましい。
第1溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等の低級アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールのモノあるいはジエーテル、アセトン等の低級ケトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン等の低級エーテルのような水溶性有機溶媒が用いられる。また、第1ゲル原料の加水分解、縮重合でゲルが形成される場合には、加水分解に必要な水も添加される。
(再構築工程)
第1ゲル化工程に引き続き、再構築工程が実施される。
なお、第1ゲル化工程時に、型の中で第1湿潤ゲルが形成された場合は、型の少なくとも一部を開放あるいは、型から取り出して再構築処理を行う。
再構築工程では、第1ゲル化工程で形成された第1湿潤ゲルの固体骨格の一部を分解しながら、新たな固体骨格(第2固体骨格)を形成する。具体的には、まず再構築工程のための再構築原料と、再構築触媒および水と、必要に応じて溶媒を添加混合することによって再構築原料溶液を調製し、これに第1ゲル化工程で得られた第1湿潤ゲルを浸漬させる。
上記の再構築触媒の添加は重合を進め、新たな固体骨格の成長を加速する。また、水および再構築触媒の添加は、加水分解により第1湿潤ゲルの固体骨格を構成する微粒子の分解(溶解)を進め、第1湿潤ゲルの微細な細孔構造を崩すように作用する。さらに、この加水分解は上記の再構築触媒によっても加速される。このように、古い固体骨格(第1固体骨格)を崩す速度と、新たな固体骨格(第2固体骨格)を形成する速度が共に非常に大きいために、大幅な細孔構造の変化を伴う固体骨格の再構築が初めて可能になると考えられる。
この様子を図15(a)および(b)を参照しながら説明する。図15(a)は第1湿潤ゲル1の第1固体骨格22を模式的に示す図であり、図15(b)は本実施形態によって得られる第2湿潤ゲルの第2固体骨格26を模式的に示している。これらの図15は、後述する実施例によって得られた乾燥ゲルのSEM観察結果に基づいている。
図15(a)に示す第1固体骨格22は、ネック部20を有する数nmの粒子19から構成されており、2nm以上40nm以下の細孔21の容積は3cm3/g〜5cm3/g程度である。従来の乾燥ゲルの製造方法では、この湿潤ゲルを疎水化した後乾燥するわけであるが、微細な細孔が多いため上述したように、ゲルの収縮や割れを生じていた。すなわち、図15(a)に示した構造を有する乾燥ゲルを得ることは難しかった。
これに対し、本実施形態による第2湿潤ゲルが有する第2固体骨格26は、第1固体骨格22の一部が分解し、且つ、再構築原料のゲル化によって生成された微細な粒子が結合することによって、主として10nm程度から100nm程度の粒子23から構成される第2固体骨格26が形成される。このとき、2nm以上40nm以下の細孔25の容積は1cm3/g以下にまで大幅に減少する。従って、再構築工程の後で、第2湿潤ゲル4を乾燥しても、ゲルの収縮や割れの発生が抑制される。また、このようにして、有機溶媒の浸入・乾燥時に収縮の原因となる微細な細孔が大幅に減少するために、有機溶媒に接触した際の、収縮、割れを抑制することが可能になる。具体的な実験結果を示してこの現象を説明する。
再構築原料溶液(後述する実施例2と同一組成)に生成される粒子の粒度分布を測定した結果30nm〜100nm程度の粒子が形成されていることがわかった。粒度分布の測定は、動的散乱を用いて粒子のブラウン運動によるドップラーシフトを測定することによって行った。この測定は、日機装株式会社製の粒度分布計(MICROTRAC UPA150)を用いて行った。
このような溶液に第1湿潤ゲルを浸漬すると、再構築原料溶液中に存在する30nm〜100nmの粒子のうち、反応性の高い(比表面積が大きい)比較的小さい粒子が優先的に、第1湿潤ゲルの固体骨格に縮重合する。また、これと並行して、第1固体骨格からモノマーあるいはオリゴマーが溶解する(加水分解される)ことで、固体骨格の再構成が進行する。
種々検討した結果によると、縮重合に寄与する粒子の径は、その処理液の粒度分布に依存し、10nm〜50nm粒子が同数程度分布している場合には、再構成されたゲルは反応性の高い10nm〜20nm程度の小さい粒子でほぼ形成され、40nm〜100nmの粒子が同数程度分布している場合には、40nm〜60nm程度の相対的に小さい粒子が主に縮重合に寄与すると考えられる。従って、効率的な再構築を行うためには、再構築原料溶液として、粒径が10nm以上100nm以下の粒子を生成するゲル原料溶液を用いることが好ましいと考えられる。
また、通常粒子が大きくなると重合等の反応性が低下し、粒子同士の結合も弱くなるが、本実施形態の製造方法によれば、10nm〜100nmの粒子は、再構築ゲル化溶液中で形成されて、直ちに第1固体骨格上に重合する(第1固体骨格の表面に結合する)。すなわち、生成された粒子の表面が反応性(活性)に富んだ状態で第1固体骨格と反応するので、反応が速く進行する。さらに、図15に示したように、第1固体骨格を構成する粒子間のネック部20は、活性で変形の自由度が高いため、再構築工程により第2固体骨格のネック部24が特に厚くなりやすく、粒子間の結合を強化でき、ゲル強度が高くるという効果もある。
さらに、再構築工程の処理時間を長くするか、触媒および/または水の濃度を高くすること等で、上記細孔容積を0.5cm3/g以下にまで低減することが可能である。この際、比表面積も300m2/g以下に減少する。
これは、本発明の好ましい乾燥ゲルを含む多孔体の構成である。この場合には、有機溶媒との接触により収縮が起こらないことに加え、割れの発生も回避することが可能となる。また、再構築後の湿潤ゲルを乾燥する時に、超臨界乾燥に依らなくても、通常の加熱乾燥により、割れ、収縮のないブロック状の乾燥ゲルからなる多孔体が得られる効果がある。
また、本実施形態による乾燥ゲルをSEM観察すると、固体骨格の表面に10nm程度から数十nmの粒子の存在が確認できる。
また、再構築触媒と水の添加濃度により、室温以下でも再構築を十分に進行させることができるので、昇温を嫌う材料や部品等使う必要がある場合に、本実施形態の製造方法は特に好ましい。
また、再構築工程では、第1ゲル化で形成された湿潤ゲルの外部ではなく、湿潤ゲルの固体骨格上で選択的に進行することが重要である。そのためには、再構築ゲル原料が、第1湿潤ゲル内に十分に入って行くために、ゲル化に要する時間を長くすることが好ましい。あるいは、再構築ゲル原料が、短い時間で湿潤ゲル中に入って行くように、湿潤ゲルを小さな片あるいは粒子とするか、薄膜とすることが好ましい。
再構築工程で用いられる再構築触媒としては、第1ゲル化工程で用いられるゲル化触媒群の中のものを使用することができるが、特に、第1ゲル化工程時のゲル化触媒と同一のものである必要はない。
また、再構築工程で用いられる再構築ゲル原料としては、第1ゲル化工程で用いられるゲル原料が用いられ、第1ゲル原料と再構築ゲル原料との関係は、特に制限を受けない。例えば、第1ゲル化工程で、ゲル原料としてアルコキシシランであるテトラエトキシシランが用いられた場合には、再構築工程では、再構築ゲル原料としてテトラエトキシシランを用いることができる他、ゲル原料が溶解する溶媒を選べば、他の金属アルコキシドや、ケイ酸水溶液等も用いることも可能である。
この工程で用いられる溶媒は、上で述べたように再構築ゲル原料、再構築触媒が溶解すれば特に制限を受けない。
(疎水化工程)
再構築工程に続き、疎水化工程を実施する。この工程では、再構築工程までに得られた湿潤ゲルの表面に、溶媒中に溶解した疎水化剤を反応させることで、疎水基を導入する。疎水化剤は、後述するクロロシラン等の場合は、水と反応して湿潤ゲル表面との反応性が低下するため、疎水化の前に、水溶性の溶媒により洗浄することで、あるいは水と共沸する溶媒を用いて留去することで水を除くことが好ましい。
本発明に用いられる疎水化剤としては、反応性が高い点からシリル化剤が好ましく、例えばシラザン化合物、クロロシラン化合物、アルキルシラノール化合物およびアルキルアルコキシシラン化合物等がある。
これらのシリル化剤は、シラザン化合物、クロロシラン化合物、アルキルアルコキシシラン化合物の場合は、直接あるいは加水分解を受けて、対応するアルキルシラノールになってからゲル表面のシラノール基と反応する。また、アルキルシラノールをシリル化剤として用いれば、そのまま表面のシラノール基と反応する。
これらの中でも、疎水化時の反応性が高いことと入手の容易性から、クロロシラン化合物、シラザン化合物が特に好ましく、入手の容易性及び疎水化時に塩化水素、アンモニア等のガスを発生しないことからはアルキルアルコキシシランが特に好適に用いられる。
具体的には、トリメチルクロロシラン、メチルトリクロロシランおよびジメチルジクロロシランなどのクロロシラン化合物、ヘキサメチルジシラザンなどのシラザン化合物、メトキシトリメチルシラン、エトキシトリメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジメトキシジエチルシランおよびジエトキシジメチルシランなどのアルキルアルコキシシラン化合物、トリメチルシラノールおよびトリエチルシラノールなどのシラノール化合物に代表されるシリル化剤がある。これらを用いれば、湿潤ゲル表面にトリメチルシリル基などのアルキルシリル基を導入することで疎水化を進行させることができる。
また、疎水化剤として、フッ素化されたシリル化剤を用いれば、疎水性が強くなり非常に効果的である。
また、疎水化剤としては、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、エチレングリコールおよびグリセロールなどのアルコール類の他、蟻酸、酢酸、プロピオン酸およびコハク酸などのカルボン酸なども用いることができる。これらは、ゲル表面の水酸基と反応してエーテルまたはエステルを形成することで疎水化を進めるが、反応が比較的遅いため高温の条件が必要である。
(乾燥工程)
疎水化工程に続き、乾燥工程を実施する。この工程では、疎水化工程までに得られた湿潤ゲルから溶媒を除くことにより、乾燥ゲルを得る。
湿潤ゲルから溶媒を除く乾燥方法としては、(1)加熱乾燥法(2)超臨界乾燥法(3)凍結乾燥法の3つの方法がある。加熱乾燥法は、最も一般的簡便な乾燥法であり、溶媒を含む湿潤ゲルを加熱することで、液体状態の溶媒を気化させて除去するものであり、この乾燥によることが最も好ましい。なお、ここでいう「加熱乾燥」は、上記の加熱の程度が極端に低い場合として、加熱を行わずに放置して乾燥する自然乾燥も含むものとする。
乾燥時に、ゲルの密度が低い場合にはゲル中の溶媒の表面張力に比例する毛管力のために、ゲルが一時的に収縮し割れを生じることがある。このため、乾燥時の溶媒は沸点での表面張力が小さい炭化水素系の溶媒が好ましく、特に安価なヘキサン、ペンタンあるいはその混合物が好ましい。一方、安全性の観点からは、イソプロパノール、エタノール、ブタノール等のアルコール類、さらに水あるいは水と有機溶媒との混合溶媒からの乾燥が好ましい。本実施の形態では湿潤ゲルが、後述の超臨界乾燥法により細孔容積が0.5cm3/g以下、比表面積が300m2/g以下の乾燥ゲルを与える湿潤ゲルであれば、アルコール類、水をはじめとする多くの溶媒からの乾燥によっても割れ、収縮が抑制される。
超臨界乾燥法は、溶媒除去時の溶媒の表面張力を下げるために、表面張力が0である超臨界流体を用いるものである。乾燥時に、溶媒は液体状態を経ずに取り除かれる。乾燥に用いられる超臨界流体として、水、アルコール、二酸化炭素等の超臨界状態があるが、最も低温で超臨界状態が得られ、しかも無害である二酸化炭素が好適に用いられる。
具体的には、まず耐圧容器中に液化二酸化炭素を導入することで、耐圧容器中の湿潤ゲル中の溶媒を液化二酸化炭素に置換する。次に、圧力と温度を臨界点以上に上げることで超臨界状態とし、温度を保ったまま徐々に二酸化炭素を放出して乾燥を完了させる。
凍結乾燥法は、湿潤ゲル中の溶媒を凍結させた後に、昇華により溶媒を除く乾燥方法である。液体状態を経ず、ゲル中に気液界面を生じず毛管力が働かないために乾燥時のゲルの収縮を抑制することができる。
凍結乾燥法に用いられる溶媒は、凝固点での蒸気圧が高いものが好ましく、第3ブタノール、グリセリン、シクロヘキサン、シクロヘキサノール、パラ−キシレン、ベンゼン、フェノールなどが挙げられる。これらのなかでも、融点における蒸気圧が高いという点から、特に第3ブタノール、シクロヘキサンが好ましい。
凍結乾燥時には、湿潤ゲル中の溶媒を、上記の凝固点での蒸気圧が高い溶媒に置換しておくことが効果的である。また、ゲル化時に用いる溶媒を、凝固点での蒸気圧が高い溶媒にしておけば、溶媒置換を省略して効率的な製造が可能となるためより好ましい。
乾燥は、疎水化工程の後に行ってもよいし、疎水化工程の前に行ってもよい。乾燥工程を経た後で疎水化する場合は、乾燥ゲルを溶液中ではなく、疎水化剤の蒸気にさらすことで乾燥ゲル表面に疎水基を導入する。従って、使用する溶媒量が減少するという効果を奏する。
この時使用する、疎水化剤としては、上述の疎水化剤を用いることができるが、反応性の高さからトリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン等のクロロシラン化合物が最も好ましい。また、クロロシラン化合物以外の疎水化剤を用いる場合は、アンモニアや塩化水素等の気体状態で導入可能な触媒を用いることも有効である。
また、気相で疎水化を行う場合は、溶媒や疎水化剤の沸点に制限を受けずに疎水化時の温度を高めることができる。従って、気相での疎水化は、反応を早めるために有効である。また、湿潤ゲルが薄膜や粉体であれば、疎水化剤蒸気の浸入が容易であり、薄膜の場合は溶媒量削減の効果も大きいためより好ましい。
また、再構築工程と疎水化工程とを同時に行うことも可能である。この場合二つの工程を同時に進めるために、短時間で乾燥ゲルからなる多孔体が得られるという効果が得られる。
再構築工程兼疎水化工程は、具体的には、第1ゲル化工程で得られた湿潤ゲルを、再構築工程で用いる再構築ゲル原料溶液と疎水化剤とを混合した処理液に浸漬することで実施する。こうすることで、ゲルの再構築と疎水化が同時に進行する。再構築原料、疎水化時の疎水化剤は、上述のものと同じものを用いることが可能である。例えば、水ガラスから電気透析により得られるケイ酸水溶液から第1ゲル化を行った後、得られた湿潤ゲルを、水溶性溶媒を用いること等により、ゲル原料であるアルコキシシランと、疎水化剤であるシラザン化合物等とを溶解させた溶液中で、再構築と疎水化とが同時に行われる。
上記のように再構築工程と疎水化工程とを同時に行う場合、溶解性等を満たせば特にこれらのゲル原料や疎水化剤の組み合わせに制限されるものではない。また、疎水化剤として、アルキル基を有する、多官能のアルキルアルコキシシラン、クロロシラン、アルキルシラノールを用いると、アルキル基がゲル骨格の中に導入されるため、ゲルに柔軟性が付与され、脆さが改善されるという効果も奏する。このとき、ゲル骨格の中心部は堅く、周辺部は柔軟性を有した特徴的な構造を有することになる。
(実施の形態5)
本発明の第5の実施の形態は、本発明の乾燥ゲル表面に水平方向に密度勾配を有する乾燥ゲルからなる多孔体の製造方法である。
本発明の第5の実施の形態の乾燥ゲルからなる多孔体の製造方法は、再構築時の治具操作により、第1湿潤ゲル表面に水平方向の再構築原料溶液の供給量を変えることを除いては第4の実施の形態と同じである。以下で図面を用いて具体的に説明する。
図16は、本実施の形態の乾燥ゲルを含む多孔体の製造方法の、再構築工程時の操作を示したものである。第1湿潤ゲルを含む多孔体16の上下面に再構築原料溶液遮蔽具17が設置された状態で、再構築原料溶液18中に浸漬される。この場合、再構築原料溶液遮蔽具17は、第1湿潤ゲルからなる多孔体16を固定支持する役割も果たす。また、第1湿潤ゲルを含む多孔体16の中心を原点に、右方向にx軸が、上方にz軸が設定されている。
上下面が再構築原料溶液遮蔽具17により塞がれているため、再構築原料溶液18の供給方向Fは第1湿潤ゲルからなる多孔体16の側面に限られる。このため、再構築工程は、側面で速く進行して密度が上昇する。
図17は、図16で説明した再構築工程を有する乾燥ゲルを含む多孔体の製造方法に従って得られた乾燥ゲルの密度勾配を示した図である。x軸方向に密度勾配が生じており、水平方向の両端で密度が高くなっていることがわかる。
このように、水平方向の両端で密度の上昇に伴い、水平方向両端の音響インピーダンスも上昇する。
このような多孔体を音波が−z軸方向に進行するような音響整合層として用いて超音波送受波器を構成すると、レンズ効果により超音波を送受信する領域を絞ることが可能となる。さらに上記超音波送受波器を用いて超音波流量計を構成すれば、超音波の広がりを抑えることで超音波の受信強度を高め、優れたSNで高感度な流量測定が可能になる効果がある。
図18は、本実施の形態の乾燥ゲルを含む多孔体の製造方法の、再構築工程時の別の操作を示したものである。第1湿潤ゲルを含む多孔体16の上下側面に再構築原料溶液遮蔽具17が設置された状態で、再構築原料溶液18中に浸漬される。このとき、上面の一部に、再構築原料溶液遮蔽具17を設置しない部分を設ける。また、第1湿潤ゲルを含む多孔体16の中心を原点に、右方向にx軸が、上方にz軸が設定されている。
再構築原料溶液遮蔽具17により塞がれているため、再構築原料溶液18の供給方向Fは第1湿潤ゲルからなる多孔体16の上面の一部に限られる。このため、再構築工程は、上面の一部で速く進行して密度が上昇する。
図19は、図18で説明した再構築工程を有する乾燥ゲルを含む多孔体の製造方法に従って得られた乾燥ゲルの密度勾配を示した図である。x軸方向に増加する密度勾配が生じており、x軸方向にも中心が高く周辺が低い密度勾配が形成されていることがわかる。
このように、密度勾配の形成に伴い、z軸(厚み)方向、x軸(水平方向)中央部の音響インピーダンスも上昇する。
このような多孔体を音波が−z軸方向に進行するような音響整合層として用いて超音波送受波器を構成すると、整合層中で、圧電体から気体への音響インピーダンスの変化をスムーズに行え、音波の発生効率、受信効率が高くなる効果が得られる。また凹レンズ効果により超音波を送受信する領域を広げることが可能となり広い領域への超音波の発信、広い領域からの超音波の受信が可能となる効果がある。
図20は、本実施の形態の乾燥ゲルを含む多孔体の製造方法の、再構築工程時の別の操作を示したものである。第1湿潤ゲルを含む多孔体16の下側面に再構築原料溶液遮蔽具17が設置され、上面に再構築原料溶液拡散量調整具27を設置した状態で、再構築原料溶液18中に浸漬される。また、第1湿潤ゲルを含む多孔体16の中心を原点に、右方向にx軸が、上方にz軸が設定されている。
再構築原料溶液遮蔽具17は、再構築原料溶液を全く通さないが、再構築原料溶液拡散量調整具27は一定の速度をもって再構築原料溶液18を透過させるため、再構築原料溶液拡散量調整具27の薄い中央部でゲルの密度上昇が速く、再構築原料溶液拡散量調整具27が厚い周辺部ではゲルの密度上昇が遅れる。
再構築原料溶液拡散量調整具27を利用することで、再構築原料溶液18の第1湿潤ゲル表面各部への供給量の制御がより容易になる効果がある。
図21は、図20で説明した再構築工程を有する乾燥ゲルを含む多孔体の製造方法に従って得られた乾燥ゲルの密度勾配を示した図である。上記で説明した理由で、x軸方向に増加する密度勾配が生じており、x軸方向にも中心が高く周辺が低い密度勾配が形成されている。
この密度勾配の形成に伴い、z軸(厚み)方向に音響インピーダンスが増加し、x軸(水平方向)中央部の音響インピーダンスも上昇する。
このような多孔体を音波が−z軸方向に進行するような音響整合層として用いて超音波送受波器を構成すると、整合層中で、圧電体から気体への音響インピーダンスの変化をスムーズに行え、音波の発生効率、受信効率が高くなる効果が得られる。また凹レンズ効果により超音波を送受信する領域を広げることが可能となり広い領域への超音波の発信、広い領域からの超音波の受信が可能となる効果がある。