JP2006023099A - 音響整合層およびそれを用いた超音波送受信器並びにこの超音波送受信器を有する超音波流れ計測装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】音響整合層の強度を高めて割れの発生を抑制することで性能を高め、超音波送受信器およびこの超音波送受信器を流体の流れ計測装置に用いた場合に高精度な特性を発揮するようにした。
【解決手段】多孔体3に微小構造体2を混合するようにして音響整合層1を構成したものである。これにより、微小構造体2が混合された多孔体3は、多孔体単独の強度よりも高めることができ、かつ、微小構造体2と多孔体3の原材料との混合割合により、音響整合層1の音速を調整することができる。
【選択図】図1
【解決手段】多孔体3に微小構造体2を混合するようにして音響整合層1を構成したものである。これにより、微小構造体2が混合された多孔体3は、多孔体単独の強度よりも高めることができ、かつ、微小構造体2と多孔体3の原材料との混合割合により、音響整合層1の音速を調整することができる。
【選択図】図1
Description
本発明は超音波送受信器の超音波を気体中へ放射するための音響整合層と、それを用いた超音波送受信器、並びにこの超音波送受信器を有する超音波流れ計測装置に関するものである。
音響整合層は超音波送信器から気体中へ効率よく超音波を送信するために用いられる部材であり、その役割は特許文献1にも記載されている。また、気体中を伝播してきた超音波を超音波受信器で受信する場合にも、音響整合層は効率よく受信できるように作用する。
従来の音響整合層の製造方法は、先の特許文献1、および特許文献2,3に記載されている。これらはいずれも無機物であり、多孔体構造とすることで、音響整合層に必要とされる低密度・低音速を実現するものである。
無機物で構成することで温度による特性変化が小さいことや、耐ガス性が向上する特徴がある。また、多孔体の孔の大きさは超音波が音響整合層中を伝播する際に障害にならないような大きさにされている。
特許文献2きさいのものは、中空球体のマトリクスを組み隣接する中空球体のマトリクスの接点で相互に結合しているが、中空球体間には空隙が存在する構成である。この構造体の音速は約900m/s、音響インピーダンスは約4.5×105kg/m2sと記載されている。
音響インピーダンスは密度と音速の掛け算で定義されるので、この中空球体のマトリクスは密度が約0.5g/cm3であると考えられる。
一方、特開特許文献4には無機酸化物の乾燥ゲルからなる音響整合層が記載されている。これも多孔体構造であり、孔の大きさがナノメータの単位で形成されることが記載されている。特許文献3では、このような無機酸化物の乾燥ゲルを用いることが記載されており、これによれば無機酸化物の乾燥ゲルは、密度が0.5g/cm3以下、音速が500m/s以下のものが得られると記載されている。この音響インピーダンスは、0.25×105kg/m2sで特許文献2に記載の音響インピーダンスよりも小さく性能がよいと考えられる。
特許文献4に記載の音響整合層(同特許文献4では「音響整合部材」と記載されている)は、第1層と第2層を有する複合構造で、第1層の音響インピーダンスZ1と第2層の音響インピーダンスZ2とは、Z1>Z2の関係になるようにしており、第2層に無機酸化物の乾燥ゲルを用いている。
第1層には同特許文献4の「実施例1」の「(1)多孔質体の形成」に記載されているように、アクリル製微小球とSiO2粉とガラスフリットを混合した粉体をプレスした後に、400℃の熱処理でアクリル製微小球を除去して空隙を形成し、さらに900℃の熱処理で焼結させる製造方法で得られた多孔質体を、適切な大きさ(直径12mm、厚さ0.85mm)に研磨して用いることが記載されている。
さらに、先の特許文献3には、音響整合層を音響インピーダンスの異なる複数の部材、特に異なる部材によって構成することに有用性があることが記載されている。これを実現するために、前記第1層の音響整合層(多孔質体)にゲル化して乾燥する前の流動性を有する無機酸化物材料を充填してから固形化して前記第2層の音響整合層を形成することが記載されている。
この製造方法によれば前記第1層と前記第2層とは一部分の連続性により一体化しているため、物理的形状効果(アンカー効果)があり層間での剥離が起こりにくいと記載されている。
図8は前記第1層51と前記第2層52との複合構造の音響整合層53の断面構造を示したもので、第1層51の音響整合層(多孔質体)の空隙部分54にも第2整合層52を形成する乾燥ゲルが侵入している。前記第2層52は乾燥ゲルのみで形成されている。
図9は複合構造の音響整合層53を用いた超音波送受信器を示したものである。送信の場合は、端子55,56間に信号が印加されると、振動子57が励振され複合構造の音響整合層53を伝播して、気体58中に超音波が放射される。受信の場合は、これとは反対に気体58中から進入した超音波は、複合構造の音響整合層53を伝播して振動子57が励振されることで、端子55,56間に電圧が発生する。
このように音響整合層の第1層には無機材料からなる多孔質体を用いているが、この多孔質体の製造にはさまざまな方法がある。
音響整合層としてではないが、特許文献5に記載されている方法もセラミックス多孔体の製造方法の一つである。これは難焼結性のセラミックス粉末を有する含気泡セラミックススラリーをゲル化して得たゲル状多孔質成型体を乾燥、脱脂、焼成してセラミックス多孔体を得る製造方法で、開気孔率60%以上のものを得られることが記載されている。
特開2002−51398号公報
特開平2−177799号公報
特開2002−140687号公報
特開2002−262394号公報
特開2001−261463号公報
しかしながら、前記従来の無機酸化物の乾燥ゲルを用いた音響整合層は、密度が低く、かつ、音速も遅いので低音響インピーダンスを実現できるが、強度に劣るという課題がある。このような従来の音響整合層を用いた超音波送受信器は、効率よく気体中に超音波を伝播させることができるが、高出力化のためにさらに音響整合層の振幅を大きくしようとすると、音響整合層の強度を高めておく必要がある。
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、多孔体の強度を高め、その割れを防止する目的とする。
前記従来の課題を解決するために、本発明の音響整合層は多孔体に微小構造体を混合するようにしたものである。
これにより、微小構造体が混合された多孔体は、多孔体単独の強度よりも高めることができ、かつ、微小構造体と多孔体の原材料との混合割合により、音響整合層の音速を調整することができる。
本発明の音響整合層は、無機酸化物の乾燥ゲルからなる多孔体に、微小構造体を混合することにより、多孔体強度を高められる効果がある。これにより本発明の音響整合層を用いた超音波送受信器、並びに同超音波送受信器を搭載した流れ計測装置は高出力化のものが得られる。
第1の発明は、音響整合層を多孔体に微小構造体を混合した構造にすることにより、多孔体だけの音響整合層に比べて強度が高められるので、この音響整合層を用いた超音波センサは高出力化することができるとともに、温度変化による他のセンサ部材の伸縮・変形に対しても、耐えうるものにすることができる。
第2の発明は、多孔体からなる第1音響整合層と、前記第1音響整合層の音響インピーダンスと異なる音響インピーダンスの第2音響整合層とからなる複合構造の音響整合層において、第1多孔体は微小構造体を有することにより、第1音響整合層と第2音響整合層とをそれぞれ異なる材料で形成しても、両者の温度変化による変形や伸縮の違いに対して多孔体を耐えられる強度のものとすることができる。
第3の発明は、微小構造体間隙に存在する多孔体を無機酸化物の乾燥ゲルとすることにより、微小構造体と無機酸化物の乾燥ゲルからなる多孔体は低密度のものとすることができる。
第4の発明は、第1音響整合層の多孔体である無機酸化物乾燥ゲルに微小構造体を混合することで、強度が高められ、かつ、無機酸化物の乾燥ゲルの形成段階での収縮を緩和することができるので、第1整合層とは材料と音響インピーダンスの異なる第2音響整合層に、微小構造体を混合した無機酸化物材料のゲル化前の流動性のある状態で、第2音響整合層に充填して多孔体(第1音響整合層)を形成する方法で製造できるようになる。
第5の発明は、無機酸化物乾燥ゲル材料のゲル化前の流動性のある状態で、微小構造体を混合・撹拌し、無機酸化物乾燥ゲル材料の流動性がさがり、前記微小構造体が束縛されて前記無機酸化物乾燥ゲルの材料中を移動できなくなった状態で撹拌を停止しゲル化を行うようにすることで、微小構造体は無機酸化物乾燥ゲル材料のゲル化前の比重に比べ、軽いものでも、重いものでも無機酸化物乾燥ゲル中に一様に分布させることができる。
第6の発明は、第2音響整合層を第2多孔体で構成し、前記第2多孔体の空隙部分は、第1多孔体または前記第1多孔体と微小構造体とが存在するようにすることで、第2音響整合層と第1音響整合層(第1整合層は第1多孔体と微小構造体からなる)とを接合することができる。
第7の発明は、微小構造体を中空球体とすることで、微小構造体の密度は第1多孔体の密度と同等、またはそれ以下とすることができる。
第8の発明は、中空球体をガラスまたはセラミックスとすることで、第1多孔体の材料である無機酸化物の乾燥ゲルとの結合が得られるようになる。
第9の発明は、音響整合層を多孔体に微小構造体を混合した構造とし、微小構造体と多孔体の原材料との混合体積比率(微小構造体体積/多孔体原料体積)を15%から150%とすることにより、多孔体だけの音響整合層に比べて強度が高められるので、この音響整合層を用いた超音波センサは高出力化することができるとともに、温度変化による他のセンサ部材の伸縮・変形に対しても、耐えうるものにすることができる。
第10の発明は、多孔体と、前記多孔体に混在する微小構造体からなり、多孔体と、前記微小構造体との混合体積比を調整することで、音速と密度とを調整することができる。
第11の発明は、上記した音響整合層を超音波送受信器に用いたものであり、第12の発明は、この超音波送受信器で流体の流速を計測するようにした超音波流れ計測装置であって、共に性能の向上を図ったものである。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、この実施の形態において本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1示す音響整合層1は、形状が直径10.8mm、厚さ200μmから750μmの円盤型で微小構造体2と多孔体3からなる。
図1示す音響整合層1は、形状が直径10.8mm、厚さ200μmから750μmの円盤型で微小構造体2と多孔体3からなる。
多孔体3には、例えば、無機酸化物の乾燥ゲルが用いられる。無機酸化物の乾燥ゲルはナノ・サイズ(ナノは10−9m)の空隙を有した多孔材で、そのものの密度は0.2g/cm3から0.5g/cm3程度である。無機乾燥ゲルは密度が小さいので強度が弱く、また、形成過程で収縮が起こるので、歪が生じて密度分布が発生する要因となる。
ところが、微小構造体2を混合すると、無機酸化物の乾燥ゲルの絶対量が減ることと、微小構造体2との結合により収縮が抑制され歪が軽減されるようになる。微小構造体にはガラスの中空球体を用いている。
これは、住友スリーエム株式会社の商標「スコッチライト」グラスバブルズフィラーとして入手できる。これはガラス厚さ1μm程度、直径約30μm、かさ密度が0.2g/cm3以下の中空球体であるが、非常に強固なものである。このようなものを混合することにより、音響整合層1の強度が高められる。このガラスの中空球体は無機酸化物の乾燥ゲルと同等、もしくはそれ以下の密度である。このため、微小構造体と無機酸化物の乾燥ゲルの混合体の密度は、無機酸化物の乾燥ゲルだけのときの密度よりも軽くすることも可能である。
このような無機酸化物の乾燥ゲルとガラスの中空球体からなる構造の音響整合層1は、密度0.15から0.5g/cm3程度、音速は400m/sから1500m/s程度のものが得られる。
(実施の形態2)
図2に示す音響整合層4は、第1多孔体5と微小構造体6とからなる第1音響整合層4aと、第2音響整合層4bの2つの音響整合層を有する複合構造である。
図2に示す音響整合層4は、第1多孔体5と微小構造体6とからなる第1音響整合層4aと、第2音響整合層4bの2つの音響整合層を有する複合構造である。
形状は直径約10.8mm、厚さ約1000μm、第1音響整合層4aの厚さは約200μmである。また、第2音響整合層4bは第2の多孔体7を用いている。第1多孔体5は無機酸化物の乾燥ゲルで、ナノ・サイズ(ナノは10−9m)の空隙を有した多孔材である。これに対して第2多孔体7はセラミックスの多孔材で、空隙の大きさは約10μmから300μm程度のものが用いられる。微小構造体6はガラス中空球体で、直径約10μmから100μm程度のものが用いられる。
無機酸化物の乾燥ゲルは図3に示す工程で製造される。同図の工程の分類の原料の準備21は、原料となるテトラエトキシシランに水、エタノール、塩酸を加えて加水分解する工程である。
ゲル化22は、前工程の溶液にアンモニアを加えてゲル化を行う工程である。微小構造体であるガラス中空球体は、ゲル化する前の溶液に混合する。ガラス中空球体は軽いので溶液中で浮いてしまい均一に混じらないので、ガラス中空球体を混合した溶液は攪拌を行う。攪拌を行っていると、ゲル化が始まることで溶液の流動性が下がり、ガラス中空球体が溶液に束縛され、攪拌を止めても浮上できず、溶液中に均一に分布した状態を作ることができる。この時点で、音響整合層を作るための型に流し込み、完全にゲル化するまで待つ。
密度調整23は前工程で得られたゲルの密度調整を行う工程である。ます、ゲル骨格の表面加水分解を行うため、水、エタノールが加えられ、その後、ゲル骨格増強のために、テトラエトキシシラン、水、エタノール、アンモニアが加えられる。数時間の後、溶液をイソプロピルアルコールに置換して密度調整の工程を終了する。この工程において調整できる密度範囲は0.2g/cm3から0.6g/cm3程度である。密度調整と同時に音速も変わり、密度が大なほど音速は速くなり、その範囲は、300m/sから600m/s程度となる。従って、音響インピーダンスも変化する。
疎水化処理24は撥水性を持たすための工程である。乾燥25は、乾燥工程である。これで無機酸化物の乾燥ゲルとガラス中空球体の微小構造体が混合された第1多孔体が完成する。
ゲル化22の工程で、ガラス中空球体が束縛された溶液を型に流し込む際に、型に第2多孔体である、セラミックス多孔体を入れておく。このようにすると、溶液がセラミックス多孔体の空隙にも浸透していくので、セラミックス多孔体の空隙にも無機酸化物の乾燥ゲルを形成することができる。これにより、無機酸化物の乾燥ゲルと、ガラス中空球体の微小構造体からなる第1多孔体と、セラミックス多孔体の第2多孔体との接合が、アンカー効果を利用してしっかりと行うことができる。アンカー効果による接合は、無機酸化物乾燥ゲルの収縮を微小構造体を混合することで、第1多孔体と第2多孔体との境界面での割れが低減されるので、より効果が高められる。
上記した図2はこのようにして製造した音響整合層4であって、微小構造体6に直径100μm程度のガラス中空球体を、第2多孔体7には空隙の大きさが30μm程度のセラミックス多孔体を用いた場合を示している。微小構造体6は第2多孔体7の空隙よりも大きいので、その空隙には存在していない。
しかしながら、セラミックス多孔体の空隙を300μm程度のものを選ぶか、または、ガラス中空球体を10μm程度のものを選べば、セラミックス多孔体の空隙にもガラス中空球体を存在させることができる。特に、第1多孔体2と第2多孔体4との境界面近傍の第2多孔体部分には、多くのガラス中空球体を存在させることができる。このようにすると、境界面近傍の第2多孔体7の空隙にある無機酸化物の乾燥ゲルの収縮がより緩和されるので、第1多孔体5と第2多孔体7との接合をより強固なものにすることができる。
微小構造体6にガラスを用いることにより、無機酸化物の乾燥ゲルと微小構造体6の化学的な結合が得られるようになる。また、ガラスの変わりにセラミックス中空球体を用いてもよい。樹脂の中空球体は無機酸化物乾燥ゲル材料により劣化して、その形状を保持することが困難であるので好ましくない。
(実施の形態3)
図4は、上記した実施の形態2における音響整合層4を用いた超音波送受信器30を示す。圧電振動子31は金属製のケース32a、32bに収められている。金属ケース32aと圧電振動子31の一方の電極面とは接着剤で接合されている。圧電振動子31の他方の電極は導電性ゴム33を介して電極34に接触している。電極34と金属ケース32a、32bとは電気的に絶縁されている。電極35と金属ケース32a、32bとは導電している。金属ケース32aの上面には、音響整合層4が接着剤で接合されている。
図4は、上記した実施の形態2における音響整合層4を用いた超音波送受信器30を示す。圧電振動子31は金属製のケース32a、32bに収められている。金属ケース32aと圧電振動子31の一方の電極面とは接着剤で接合されている。圧電振動子31の他方の電極は導電性ゴム33を介して電極34に接触している。電極34と金属ケース32a、32bとは電気的に絶縁されている。電極35と金属ケース32a、32bとは導電している。金属ケース32aの上面には、音響整合層4が接着剤で接合されている。
電極34,35間に500kHz程度の交流信号が入力されると圧電振動子31が振動し、その振動は音響整合層4に伝達される。音響整合層4は、空気などの気体と圧電振動子31、あるいは金属ケース32aと気体との音響インピーダンスの整合をとり、圧電振動子31の振動を効率よく気体に伝達する。
反対に、気体中から音響整合層4に伝達した振動は、空気などの気体と圧電振動子31、あるいは金属ケース32aと気体との音響インピーダンスの整合をとる音響整合層4により効率よく圧電振動子31に伝達される。振動を受けた圧電振動子31は振動の大きさに応じて電気信号を電極34、35間に出力する。
図5はこのような超音波送受信器を1対用いた超音波流れ計測装置40を示し、気体の通路である流路41に、1対の超音波送受信器30a,30bが気体の流れ方向に対して角度をもって相対するように配置され、気体に向かって一方の超音波送受信器から送信される振動(音)を他方の超音波送受信器で受信する構成としている。
1対の超音波送受信器30a,30bは電池42で駆動される計測回路43に接続されており、送信信号は計測回路43から供給され、また、受信信号は同じく計測回路43で増幅して計測のための処理がなされる。
今、気体の流れ方向が同図の流路上に示される矢印の向きである場合、上流側の超音波送受信器30aから気体中へ出力された振動(音)が、下流側の超音波送受信器30bで受信されるまでの時間(伝播時間)をT1とし、反対に下流側の超音波送受信器30bから気体中へ出力された振動(音)が、上流側の超音波送受信器30aで受信されるまでの時間(伝播時間)をT2とすると、気体の流速Sは、(1/T1−1/T2)に比例するので、計測回路43は伝播時間T1、T2を計測して演算により流速Sを算定して、表示するように機能する。もちろん、必用に応じてこの流速に通路の断面積などを乗ずることで流量が演算できる。
超音波送受信器30a,30bで得られる受信信号は微弱であるので、計測回路43で処理する場合は増幅する必要がある。受信信号には計測に必要な主信号の他に、不要な外乱信号(ノイズ)が重畳する。外乱信号は増幅回路での発生や、超音波送受信器30a,30bと計測回路43とを接続するリード線に外部電磁波が重畳するなどが考えられるが、いずれにしても超音波送受信器30a,30bの受信信号(主信号)が大きいほど、外乱信号の影響が小さくなり計測精度が向上する。
(実施の形態4)
図6は、ガラス中空球体と無機酸化物乾燥ゲルの多孔体の原材料との混合体積比率(微小構造体体積/多孔体の原料体積)と、音速・密度の関係を表した特性図である。また、無機酸化物乾燥ゲルの多孔体の原材料とは、図3に示されるゲル化22の工程までに使用されるトラエトキシシラン、水、エタノール、塩酸、アンモニアである。
図6は、ガラス中空球体と無機酸化物乾燥ゲルの多孔体の原材料との混合体積比率(微小構造体体積/多孔体の原料体積)と、音速・密度の関係を表した特性図である。また、無機酸化物乾燥ゲルの多孔体の原材料とは、図3に示されるゲル化22の工程までに使用されるトラエトキシシラン、水、エタノール、塩酸、アンモニアである。
無機酸化物乾燥ゲルの多孔体密度は、図3に示される密度調整23において、0.3g/cm3から0.35g/cm3程度になるような条件で行っている。ガラス中空球体は密度が0.2g/cm3以下なので、混合比率が増えるほど密度が減少している。ガラス中空球体は直径が100μm程度で無機酸化物乾燥ゲルの多孔体のナノサイズの空隙に比べ非常に大きい。このような構造の違いから、ガラス中空球体の混合比率が増えるほど音速が速くなる傾向がある。
ガラス中空球体の混合比率と、密度・音速との関係から、それら積である音響インピーダンスは、図7に示すようにおよそ2.5×105kg/m2sから3.25×105kg/m2s程度の間にあり大きな変化はないので、音響整合層としての特性に大きな変化はないが、ガラス中空球体の混合比率が大きくなるとガラス中空球体間を結合する無機酸化物乾燥ゲル量が少なくなるので結合が悪くもろくなる傾向がある。
このため、ガラス中空球体の混合比率は150%を上限値としている。また、ガラス中空球体の混合比率が小さくなると、強度を高める効果が弱くなる。これは、試験サンプルであるガラス中空球体を混合した無機酸化物乾燥ゲルの乾燥ゲルを、容積230mm×110mm×40mmの水を入れた容器に入れ、高周波出力120W、周波数38kHzの超音波振動を加えることで試験サンプルの破壊の有無で強度の確認をすることができる。これによればガラス中空球体の混合比率15%では変化がなく、5%では破壊が生じている。そこで、ガラス中空球体の混合比率は15%を下限値としている。
図7に示されるように、音響インピーダンスは、およそ2.5×105kg/m2sから3.25×105kg/m2s程度の間にあり大きな変化はないので、言い換えれば、音響整合層としての特性を変えずに、音速をガラス中空球体と無機酸化物乾燥ゲルの多孔体の原材料との混合体積比で調整することができることになる。
周波数500kHz用超音波送受信器の音響整合層として使用する場合、音響整合層の最適厚さは波長λの1/4である。波長λは音速Cと周波数fとの間にλ=C/fの関係がある。例えば、音速600m/sの場合、音響整合層の最適厚さは300μm、音速1200m/sの場合、音響整合層の最適厚さは700μmとなる。音響整合層は厚いほど加工しやすいので、ガラス中空球体の混合比率は大きいほうが有利である。
以上のように、本発明にかかる音響整合層とそれを用いた超音波流量計並びに超音波流れ計測装置は、気体と振動子との音響インピーダンスの整合をとり、超音波送受信器からの超音波出力を増大させ、また、気体を伝播する超音波を受信する超音波送受信器の受信出力を増大させることができるので、天然ガスや液化石油ガスの流量を測定する業務用や家庭用の超音波式ガス流量測定装置(ガスメータ)や、水素のように音速が早く、振動子との音響インピーダンスの整合をとりにくいガスの流量を測定する超音波式の流量測定装置の用途に展開できる。
1 音響整合層
2 微小構造体
3 多孔体
4 音響整合層
4a 第1音響整合層
4b 第2音響整合層
5 第1の多孔体
6 微小構造体
7 第2の多孔体
30 超音波送受信器
30a 超音波送受信器
30b 超音波送受信器
40 超音波流れ計測装置
2 微小構造体
3 多孔体
4 音響整合層
4a 第1音響整合層
4b 第2音響整合層
5 第1の多孔体
6 微小構造体
7 第2の多孔体
30 超音波送受信器
30a 超音波送受信器
30b 超音波送受信器
40 超音波流れ計測装置
Claims (12)
- 微小構造体と、前記微小構造体間隙に存在する多孔体から構成した音響整合層。
- 多孔体と微小構造体からなる第1音響整合層と、前記第1音響整合層の音響インピーダンスと異なる音響インピーダンスの第2音響整合層とからなる音響整合層。
- 微小構造体間隙に存在する多孔体は無機酸化物の乾燥ゲルである請求項1または2記載の音響整合層。
- 多孔体は無機酸化物乾燥ゲルであり、前記無機酸化物乾燥ゲルの材料のゲル化前の流動性のある状態で微小構造体が混合され、第2音響整合層に充填してゲル化および乾燥を行った請求項2記載の音響整合層。
- 無機酸化物乾燥ゲル材料のゲル化前の流動性のある状態で、微小構造体を混合・撹拌し、前記無機酸化物乾燥ゲル材料の流動性がさがり、前記微小構造体が束縛されて前記無機酸化物乾燥ゲルの材料中を移動できなくなった状態で撹拌を停止しゲル化を行うようにした請求項3または4記載の音響整合層。
- 第2音響整合層は第2多孔体からなり、前記第2多孔体の空隙部分は、第1多孔体または前記第1多孔体と微小構造体とが存在する請求項4記載の音響整合層。
- 微小構造体は中空球体である請求項1〜6いずれか1項記載の音響整合層。
- 中空球体はガラスまたはセラミックスである請求項7記載の音響整合層。
- ガラス中空球体と無機酸化物乾燥ゲルの多孔体の原材料との混合体積比率(微小構造体体積/多孔体の原料体積)を15%から150%とした請求項8記載の音響整合層。
- 音速と密度が、ガラス中空球体と無機酸化物乾燥ゲルの多孔体の原材料との混合体積比率(微小構造体体積/多孔体の原料体積)で調整された請求項8記載の音響整合層。
- 請求項1〜10いずれか1項記載の音響整合層を備えた超音波送受信器。
- 請求項11記載の超音波送受信器で流体の流速を計測するようにした超音波流れ計測装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2004199133A JP2006023099A (ja) | 2004-07-06 | 2004-07-06 | 音響整合層およびそれを用いた超音波送受信器並びにこの超音波送受信器を有する超音波流れ計測装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2004199133A JP2006023099A (ja) | 2004-07-06 | 2004-07-06 | 音響整合層およびそれを用いた超音波送受信器並びにこの超音波送受信器を有する超音波流れ計測装置 |
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---|---|---|---|---|
WO2007102424A1 (ja) * | 2006-03-09 | 2007-09-13 | Matsushita Electric Industrial Co., Ltd. | 音響整合体、超音波振動子、および超音波流量計 |
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2004
- 2004-07-06 JP JP2004199133A patent/JP2006023099A/ja active Pending
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