JP2005269133A - 音響整合層とそれを用いた超音波送受信器並びにこの超音波送受信器を装備した流体の流れ計測装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】無機酸化物の乾燥ゲルからなる多孔体の音響整合層の歪・ソリを緩和し、平面度向上をさせ、さらにその音響整合層を用いた超音波送受信器並びに流れ計測装置の精度を向上させることを目的とする。
【解決手段】音響整合層1は、形状が直径10.8mm、厚さ200μmから500μmの円盤型で微小構造体2と多孔体3からなる。多孔体3には、例えば、無機酸化物の乾燥ゲルが用いられる。無機酸化物の乾燥ゲルはナノ・サイズ(ナノは10−9m)の空隙を有した多孔材で、そのものの密度は0.2から0.5g/cm程度で構成されている。無機乾燥ゲルは密度が小さいので強度が弱く、また、形成過程で収縮が起こるので、歪が生じて密度分布が発生する要因となる。ところが、微小構造体を混合すると、無機酸化物の乾燥ゲルの絶対量が減ることと、微小構造体との強固な結合により収縮が抑制され歪が軽減されるようになる。
【選択図】図1

Description

本発明は、音響整合層とそれを用いた超音波送受信器並びに超音波の伝播時間で気体などの流体の流れを計測するようにした流れ計測装置に関するものである。
音響整合層は超音波送信器から気体中へ効率よく超音波を送信するために用いられる部材で、その役割は、例えば特許文献1にも記載されている。また、気体中を伝播してきた超音波を超音波受信器で受信する場合にも、音響整合層は効率よく受信できるように作用する。
従来の音響整合層の製造方法は、先の特許文献1の他、特許文献2,3にも記載されているように、いずれも無機物であり、多孔体構造とすることで低密度とし、音響整合層に必要とされる低密度・低音速を実現するものである。
無機物で構成することで温度による特性変化が小さいことや、耐ガス性が向上する特徴がある。また、多孔体の孔の大きさは超音波が音響整合層中を伝播する際に障害にならないような大きさにされている。
特許文献2に記載されているものは、中空球体のマトリクスを組み隣接する中空球体のマトリクスの接点で相互に結合しているが、中空球体間には空隙が存在する構成である。この構造体の音速は約900m/sec、音響インピーダンスは約4.5×10kg/msと記載されている。音響インピーダンスは密度と音速の掛け算で定義されるので、この中空球体のマトリクスは密度が約0.5g/cmであると考えられる。
一方、特許文献4には、無機酸化物の乾燥ゲルからなる音響整合層が記載されている。これも多孔体構造であり、孔の大きさがナノメータの単位で形成されることが記載されている。
特許文献3では、このような無機酸化物の乾燥ゲルを用いることが記載されており、これによれば無機酸化物の乾燥ゲルは、密度が0.5g/cm以下、音速が500m/sec以下のものが得られると記載されている。この音響インピーダンスは、0.25×10kg/msで特許文献2の音響インピーダンスよりも小さく性能がよいと考えられる。
特許文献4の音響整合層(同特許文献4では「音響整合部材」と記載されている)は、第1層と第2層を有する複合構造で、第1層の音響インピーダンスZ1と第2層の音響インピーダンスZ2とは、Z1>Z2の関係になるようにしており、第2層に無機酸化物の乾燥ゲルを用いている。
第1層には同特許文献4の「実施例1」の「(1)多孔質体の形成」に記載されているように、アクリル製微小球とSiO粉とガラスフリットを混合した粉体をプレスした後に、400℃の熱処理でアクリル製微小球除去して空隙を形成し、さらに900℃の熱処理で焼結させる製造方法で得られた多孔質体を、適切な大きさ(同公報では直径12mm、厚さ0.85mm)に研磨して用いることが記載されている。
さらに、特許文献3には、音響整合層を音響インピーダンスの異なる複数の部材、特に異なる部材によって構成することに有用性があることが記載されている。これを実現するために、前記第1層の音響整合層(多孔質体)にゲル化して乾燥する前の流動性を有する無機酸化物材料を充填してから固形化して第2層の音響整合層を形成することが記載されている。この製造方法によれば前記第1層と前記第2層とは一部分の連続性により一体化しているため、物理的形状効果(アンカー効果)があり層間での剥離が起こりにくいと記載されている。
図5は前記第1層31と前記第2層32との複合構造の音響整合層33の断面構造を示したもので、第1層31の(多孔質体)の空隙部分34にも第2整合層32を形成する乾燥ゲルが侵入している。前記第2層32は乾燥ゲルのみで形成されている。
図6は複合構造の音響整合層33を用いた超音波送受信器を示したものである。送信の場合は、端子35,36間に信号が印加されると、振動子37が励振されて音響整合層33を伝播して、気体38中に超音波が放射される。
受信の場合は、これとは反対に気体38中から進入した超音波が音響整合層33を伝播して振動子37を励振されることで、端子35,36間に電圧が発生する。
このように音響整合層には無機材料からなる多孔質体を用いているが、この多孔質体の製造にはさまざまな方法がある。
音響整合層としてではないが、特許文献5に記載されている方法もセラミックス多孔体の製造方法の一つである。これは難焼結性のセラミックス粉末を有する含気泡セラミックススラリーをゲル化して得たゲル状多孔質成型体を乾燥、脱脂、焼成してセラミックス多孔体を得る製造方法で、開気孔率60%以上のものを得ることができることが記載されている。
特開2002−51398号公報 特開平2−177799号公報 特開2002−140687号公報 特開2002−262394号公報 特開2001−261463号公報
しかしながら、前記従来の無機酸化物の乾燥ゲルからなる多孔体の音響整合層は、多孔体形成時に収縮により歪が生じるため、多孔体内での密度・温度分布の不均一性があり、かつ、歪・ソリを取り、平面度を得るために研磨することが必要がある。
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、無機酸化物の乾燥ゲルからなる多孔体の音響整合層の歪・ソリを緩和し、平面度向上をさせ、さらにその音響整合層を用いた超音波送受信器並びに流れ計測装置の精度を向上させることを目的とする。
前記従来の課題を解決するために、本発明の音響整合層は、多孔体内に微小構造体を混合するようにしたことによって、多孔体が伸縮しても音響整合層全体に占める多孔体の絶対量を低減することができ、収縮量を極めて小さなものにすることができる。
本発明の音響整合層は、収縮による歪を緩和することができるので、多孔体内での密度・温度分布の均一性を高めることができ、かつ、平面度を向上することができるという効果がある。
また、その音響整合層を用いた超音波送受信器並びに超音波流れ計測装置は、それぞれの超音波送受信器から発せられる送受信波形の相似性が高められ、測定精度が向上できるという効果がある。
第1の発明は、音響整合層を、微小構造体と、前記微小構造体間隙に存在する多孔体から構成することにより、伸縮する多孔体の絶対量を低減することができるので、歪や反りの少ない音響整合層とすることができる。
第2の発明は、前記多孔体を無機酸化物乾燥ゲルとしたものである。これにより、多孔体をナノサイズの極めて微小な空隙を擁した密度が軽く、かつ、音速の遅いものとすることができるとともに、無機酸化物の乾燥ゲルは液体原料を開始原料とするので、微小構造体を混合することが容易となる。
第3の発明は、多孔体の形成過程で微小構造体を混合するようにしたものである。こうすることにより、無機酸化物の乾燥ゲルの開始原料である液体原料の状態で微小構造体を混合撹拌することで一様な分布状態を作り、液体原料がゲル化する過程で流動性がなくなるので微小構造体の均一な分布を保持することができる。
第4の発明は、微小構造体を中空球体としたものである。したがって、微小構造体は無機酸化物の乾燥ゲルよりも密度を低くることができ、微小構造体と無機酸化物の乾燥ゲルの混合体は、無機酸化物の乾燥ゲル単体よりも密度の低いものとすることができる。
第5の発明は、中空球体をガラスまたはセラミックスとしたもので、無機酸化物の乾燥ゲルとの結合を強いものとすることができる。
第6の発明は、前記音響整合層を超音波送受信器に配置したものであり、第7の発明は、この超音波送受信器を流体の上下流に間隔をおいて少なくとも一対配置して、超音波の伝搬時間をもとに流体の流速およびまたは流量を計測するようにしたものである。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、この実施の形態において本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1に示す音響整合層1は、形状が直径10.8mm、厚さ200μmから500μmの円盤型で微小構造体2と多孔体3からなる。
多孔体3には、例えば、無機酸化物の乾燥ゲルが用いられる。無機酸化物の乾燥ゲルはナノ・サイズ(ナノは10−9m)の空隙を有した多孔体で、そのものの密度は0.2から0.5g/cm程度で構成されている。無機乾燥ゲルは密度が小さいので強度が弱く、また、形成過程で収縮が起こるので、歪が生じて密度分布が発生する要因となる。
ところが、微小構造体を混合すると、無機酸化物の乾燥ゲルの絶対量が減ることと、微小構造体との強固な結合により収縮が抑制され歪が軽減されるようになる。このような構造の音響整合層1は、密度0.15から0.5g/cm程度、音速は400m/sから1500m/s程度のものが得られる。
図2は前記音響整合層1を用いた超音波送受信器4を示す。すなわち、圧電振動子5がは金属製のケース6a,6bに収められている。金属ケース6aと圧電振動子5の一方の電極面とは接着剤で接合されており、また、圧電振動子5の他方の電極は導電性ゴム7を介して電極8に接触している。
この電極8と金属ケース6a,6bとは電気的に絶縁され、他方の電極9と金属ケース6a,6bとは導電している。金属ケース6aの上面には、音響整合層4が接着剤で接合されている。
電極8,9間に500kHz程度の交流信号が入力されると圧電振動子5が振動し、その振動は音響整合層1に伝達される。音響整合層1は、空気などの気体と圧電振動子5、あるいは金属ケース6aと気体との音響インピーダンスの整合をとり、圧電振動子5の振動を効率よく気体に伝達する。
反対に、気体中から音響整合層1に伝達した振動は、空気などの気体と圧電振動子5、あるいは金属ケース6aと気体との音響インピーダンスの整合をとる音響整合層1により効率よく圧電振動子5に伝達される。振動を受けた圧電振動子5は振動の大きさに応じて、電気信号を電極8,9間に出力する。
図3はこのような超音波送受信器4を一対用いた流れ測定装置10を示し、気体の通路である流路11に一対の超音波送受信器4a,4bが気体の流れ方向に対して角度を持って相対するように配置されており、気体に向かって一方の超音波送受信器から送信される超音波を他方の超音波送受信器で受信する構成としている。
一対の超音波送受信器4a,4bは電池12で駆動される計測回路13に接続されており、送信信号は計測回路14から供給され、また、受信信号は同じく計測回路14で増幅して計測のための処理がなされる。
今、気体の流れ方向が同図の流路上に示される矢印の向きである場合、一方の超音波送受信器4aから気体中へ出力された超音波が、他方の超音波送受信器4bで受信されるまでの時間(伝搬時間)をT1とし、反対に、超音波送受信器4bから気体中へ出力された超音波が超音波送受信器4aで受信されるまでの時間(伝搬播時間)をT2とすると、気体の流速および流量は(1/T1−1/T2)に比例するので、計測回路13は伝播時間T1、T2を計測して演算により流速およびまたは流量を算定して、表示するように機能する。
超音波送受信器4a,4bで得られる受信信号は微弱であるので、計測回路13で処理する場合は増幅する必要がある。受信信号には計測に必要な主信号の他に、不要な外乱信号(ノイズ)が重畳する。
外乱信号は増幅回路での発生や、超音波送受信器4a,4bと計測回路13とを接続するリード線に外部電磁波が重畳するなどが考えられるが、いずれにしても超音波送受信器の受信信号(主信号)が大きいほど、外乱信号の影響が小さくなり計測精度が向上する。
(実施の形態2)
図4は、音響整合層の第2の多孔体(乾燥ゲル)の製造工程を示したものである。
工程の分類A原料準備21は主原料であるテトラエトキシシラン(TEOS)と、これを加水分解するための水、エタノール、塩酸を加えて混合溶液を作る工程である。
工程の分類Bゲル化22は準備された混合溶液にアンモニアを加えてゲルをつくる工程である。
工程の分類C密度調整23は得られたゲルの骨格を増強し、任意の密度になるようにする工程で、再び加水分解を行いテトラエトキシシラン、水、エタノール、アンモニアを加えることで骨格が増強される。この工程では反応時間、温度の管理によってゲルが任意の密度になるように制御される。溶液をイソプロピルアルコールに置換することで、ゲルの骨格増強のための反応が停止する。
工程の分類D疎水化処理24は最終的に得られる乾燥ゲルが、吸湿しないようにするための処理で、ゲルをシランカップリング処理液に投入したのち、溶液をイソプロピルアルコールに置換することでシラン処理反応を停止させる。
工程の分類E乾燥25はイソプロピルアルコールを蒸発させて、乾燥ゲルを作る最終工程である。
微小構造体は工程の分類Bゲル化22で原料の混合溶液にアンモニアを混合した後、投入し攪拌を行う。攪拌を行うことで、微小構造体の比重が混合溶液よりも軽い場合でも、重たい場合でも、混合溶液中での微小構造体の分布の均一性が得られる。攪拌を継続して行っている間に、ゲル化の反応が進行し、徐々に混合溶液の粘性が高まり流動性が悪くなってくる。適当な粘性になった時点で攪拌を停止すると微小構造体は粘性の高まった混合溶液に束縛されるので、沈殿または、浮上することなく混合溶液中に均一に分布するようになる。
このような製造方法によって、微小構造体は混合溶液よりも比重の重いものでも、軽いものでも選択することができる。
(実施の形態3)
前述した製造方法により、混合溶液よりも比重の軽い微小構造体を用いることができるので、軽い構造体を用いて音響整合層の密度を小さくすることができる。これに適した微小構造体の一例としてガラスの中空球体があげられ、これには住友スリーエム株式会社の商標「スコッチライト」グラスバブルズフィラーが該当する。このガラスの中空球体は真比重0.13g/cmで、無機酸化物の乾燥ゲルの密度よりも軽いものである。従って、このガラスの中空球体と無機酸化物の乾燥ゲルの混合体でつくられた音響整合層は、無機酸化物の乾燥ゲルだけで作られた音響整合層よりも密度を小さくすることができる。
また、中空球体がガラスであるので、無機酸化物の乾燥ゲルとの結合がよく、頑丈な音響整合層とすることができる。さらに、中空球体はセラミックであっても無機酸化物の乾燥ゲルとの結合はよい。
以上のように、本発明によれば、気体と振動子との音響インピーダンスの整合をとり、超音波送受信器からの超音波出力を増大させ、また、気体を伝播する超音波を受信する超音波送受信器の受信出力を増大させることができるので、天然ガスや液化石油ガスの流量を測定する業務用や家庭用の超音波式ガス流量測定装置(ガスメータ)や、水素のように音速が早く、振動子との音響インピーダンスの整合をとりにくいガスの流量を測定する超音波式の流量測定装置の用途に展開できる。
(a)は本発明の第1の実施の形態における音響整合層の構造を示す上面図(b)は(a)のA−A断面図 超音波送受信器の断面図 流体の流れ計測装置の概観斜視図 音響整合層の製造工程を示した工程図 従来の音響整合層の構造を示した断面図 従来の音響整合層を用いた超音波送受信器の断面構造図
符号の説明
1 音響整合層
2 微小構造体
3 多孔体
4 超音波送受信器

Claims (7)

  1. 微小構造体と、前記微小構造体間隙に存在する多孔体とからなる音響整合層。
  2. 多孔体が無機酸化物乾燥ゲルである請求項1記載の音響整合層。
  3. 多孔体の形成過程で微小構造体を混合した請求項1記載の音響整合層。
  4. 微小構造体が中空球体である請求項1記載の音響整合層。
  5. 中空球体がガラスまたはセラミックスである請求項3記載の音響整合層。
  6. 請求項1〜4いずれか1項記載の音響整合層を配置した超音波送受信器。
  7. 請求項5記載の超音波送受信装置を流体通路の上下流に間隔をおいて少なくとも一対配置した流体の流れ計測装置。
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JP2008193539A (ja) * 2007-02-07 2008-08-21 Matsushita Electric Ind Co Ltd 音響整合部材とそれを用いた超音波送受波器と超音波流速流量計

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