JP2007242483A - 水素分離膜−電解質接合体、それを備える燃料電池およびそれらの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 界面剥離を抑制することができる水素分離膜−電解質接合体を提供する。
【解決手段】 水素分離膜−電解質接合体(100)は、水素分離膜(1)と、プロトン伝導性酸化物から構成される電解質層(3)と、水素分離膜と電解質層との界面に形成され水素分離膜を構成する金属を構成元素に含むセラミックスからなる中間層(2)とを備えることを特徴とする。水素分離膜と中間層との間の結合力が大きくなり、中間層と電解質層との間の結合力が大きくなる。そのため、水素分離膜と電解質層との剥離強度が増大する。
【選択図】 図1
【解決手段】 水素分離膜−電解質接合体(100)は、水素分離膜(1)と、プロトン伝導性酸化物から構成される電解質層(3)と、水素分離膜と電解質層との界面に形成され水素分離膜を構成する金属を構成元素に含むセラミックスからなる中間層(2)とを備えることを特徴とする。水素分離膜と中間層との間の結合力が大きくなり、中間層と電解質層との間の結合力が大きくなる。そのため、水素分離膜と電解質層との剥離強度が増大する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、水素分離膜−電解質接合体、それを備える燃料電池およびそれらの製造方法に関する。
燃料電池は、一般的には水素及び酸素を燃料として電気エネルギーを得る装置である。この燃料電池は、環境面において優れかつ高いエネルギー効率が実現できることから、今後のエネルギー供給システムとして広く開発が進められてきている。
燃料電池のうち固体の電解質を用いたものには、固体高分子型燃料電池、固体酸化物型燃料電池、水素分離膜電池等がある。ここで、水素分離膜電池とは、緻密な水素分離膜を備えた燃料電池である。緻密な水素分離膜は水素透過性を有する金属によって形成される層であり、アノードとしても機能する。水素分離膜電池は、この水素分離膜上にプロトン導電性を有する電解質が積層された構造をとっている(例えば、特許文献1参照)。水素分離膜に供給された水素はプロトンに変換され、プロトン導電性の電解質中を移動し、カソードにおいて酸素と結合して発電が行われる。
しかしながら、水素分離膜は金属からなり電解質はセラミックスからなることから、水素分離膜と電解質との界面に十分な接合強度が得られない場合がある。したがって、界面剥離が生じるおそれがある。
本発明は、界面剥離を抑制することができる水素分離膜−電解質接合体を提供することを目的とする。
本発明に係る水素分離膜−電解質接合体は、水素分離膜と、プロトン伝導性セラミックスから構成される電解質層と、水素分離膜と電解質層との界面に形成され水素分離膜を構成する金属を構成元素に含むセラミックスからなる中間層とを備えることを特徴とするものである。
本発明に係る水素分離膜−電解質接合体においては、中間層の構成元素に水素分離膜の構成金属が含まれることから、中間層と水素分離膜との間における界面エネルギーが低下するとともに、結合力が増大する。また、中間層および電解質層のいずれもセラミックスからなることから、中間層と電解質層との間の界面エネルギーが低下するとともに、結合力が増大する。以上のことから、水素分離膜と電解質層との間の剥離強度が向上する。
中間層は、水素分離膜を構成する金属を構成元素に含むペロブスカイト型のセラミックスからなるものでもよい。また、電解質層は、ペロブスカイト型のセラミックスからなるものでもよい。この場合、電解質層および中間層を構成するセラミックスが共通の構造を有する。それにより、中間層と電解質層との間の結合力がより増大する。
水素分離膜の少なくとも中間層との界面部分はパラジウム含有層であり、中間層はパラジウムを構成元素に含んでいてもよい。この場合、高価であるパラジウムの量を減らすことができる。したがって、製造コストを低減させることができる。なお、中間層は、LaFe0.57Co0.38Pd0.05O3であってもよい。
本発明に係る燃料電池は、請求項1〜5のいずれかの水素分離膜−電解質接合体と、電解質層の水素分離膜と反対側の面に形成されたカソードとを備えることを特徴とするものである。本発明に係る燃料電池においては、水素分離膜と電解質層との間の剥離強度が向上する。したがって、発電効率の低下または発電不能を防止することができる。
本発明に係る水素分離膜−電解質接合体の製造方法は、水素分離膜を準備する工程と、水素分離膜上にセラミックスからなる中間層を形成する工程と、水素分離膜および中間層に熱処理を施すことによって水素分離膜を構成する金属を中間層に拡散させる工程と、中間層上にプロトン伝導性セラミックスからなる電解質層を形成する工程とを備えることを特徴とするものである。
本発明に係る水素分離膜−電解質接合体の製造方法においては、水素分離膜を構成する金属を拡散によって中間層に含有させることから、水素分離膜と中間層との間の界面エネルギーが低下する。それにより、水素分離膜と中間層との間の剥離強度を増大させることができる。また、中間層および電解質層のいずれもセラミックスからなることから、中間層と電解質層との間の界面エネルギーが低下するとともに、結合力が増大する。以上のことから、本発明に係る製造方法を用いれば、水素分離膜と電解質層との間の剥離強度を向上させることができる。
中間層および電解質層は、ペロブスカイト型セラミックスからなるものであってもよい。また、水素分離膜の少なくとも中間層との界面部分は、パラジウム含有層であり、中間層は、LaFe0.62Co0.38O3またはLaFe0.57Co0.43O3であってもよい。
本発明に係る燃料電池の製造方法は、水素分離膜を準備する工程と、水素分離膜上にセラミックスからなる中間層を形成する工程と、水素分離膜および中間層に熱処理を施すことによって水素分離膜を構成する金属を中間層に拡散させる工程と、中間層上にプロトン伝導性セラミックスからなる電解質層を形成する工程と、電解質層上にカソードを形成する工程とを備えることを特徴とするものである。
本発明によれば、水素分離膜と電解質層との間の剥離強度を増大させることができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1は、本発明の第1実施例に係る水素分離膜−電解質接合体100の模式的断面図である。図1に示すように、水素分離膜−電解質接合体100は、水素分離膜1上に中間層2および電解質層3が順に形成された構造を有する。水素分離膜1は、水素透過性金属からなる。水素分離膜1を構成する金属は、例えば、パラジウム、バナジウム、チタン、タンタル等である。水素分離膜1は、燃料ガスが供給されるアノードとして機能するとともに、電解質層3を支持および補強する支持体として機能する。本実施例においては、水素分離膜1は、パラジウムからなる。水素分離膜1の膜厚は、例えば、20μm程度である。
中間層2は、水素分離膜1を構成する金属を構成元素に含むセラミックスからなる。中間層2を構成するセラミックスは、どのようなセラミックスであってもよいが、ペロブスカイト型セラミックスであることが好ましい。本実施例においては、中間層2は、ペロブスカイトセラミックスからなる。ペロブスカイトセラミックとしては、LaFexCo1−xO3のBサイトの一部がパラジウムで置換されたLaFe0.57Co0.38Pd0.05O3等を用いることができる。このように、中間層2は、ペロブスカイトセラミックスの一部が水素分離膜1を構成する金属で置換された構造を有する。なお、置換されるサイトは、AサイトおよびBサイトのいずれであってもよい。
なお、中間層2は、プロトン伝導性を有していなくてもよく、水素透過性を有していなくてもよい。この場合、中間層2の層厚を例えば数十nm〜数百nm程度の小さい値に設定することにより、水素分離膜1と電解質層3との間においてプロトン伝導または水素透過が支障なく行われる。
電解質層3は、プロトン伝導性セラミックスからなる電解質である。プロトン伝導性セラミックスとしては、例えば、ペロブスカイト型プロトン伝導体(BaCeO3等)、固体酸型プロトン伝導体(CsHSO4)等を用いることができる。本実施例においては、電解質層3は、ペロブスカイト型プロトン伝導体であるSrZr0.8In0.2O3からなる。電解質層3の層厚は、例えば、1μm程度である。
このように、中間層2の構成元素に水素分離膜1の構成金属が含まれることから、中間層2と水素分離膜1との間における界面エネルギーが低下するとともに、結合力が増大する。また、中間層2および電解質層3のいずれもセラミックスからなることから、中間層2と電解質層3との間の界面エネルギーが低下するとともに、結合力が増大する。特に、中間層2および電解質層3を構成するセラミックスが共通の構造(例えば、ペロブスカイト構造)を有することにより、中間層2と電解質層3との間の結合力は顕著に増大する。以上のことから、水素分離膜1と電解質層3との間の剥離強度が向上する。
なお、中間層2が水素分離膜1の構成元素を含む量は特に限定されないが、中間層2および電解質層3が共通の構造を有していることが好ましい。例えば、中間層2として上記のLaFexCo1−xO3を用いた場合、中間層2は、ペロブスカイト構造を維持する範囲でパラジウムを含んでいることが好ましい。
また、水素分離膜1は、中間層2との界面近傍に選択的にパラジウムを含有し、その他の範囲においては他の水素透過性金属を含有していてもよい。この場合、高価であるパラジウムの量を低減させることができる。したがって、水素分離膜−電解質接合体の製造コストを低減させることができる。なお、この場合においても、水素分離膜1と中間層2との間の結合力を増大させることができる。
さらに、水素分離膜1を構成する金属は、合金であってもよい。例えば、水素分離膜1として、パラジウムおよび銀の合金を用いてもよい。この場合、中間層2の構成元素として、パラジウムおよび銀の少なくともいずれか一方が含まれていれば水素分離膜1と中間層2との間の結合力を増大させることができる。
続いて、水素分離膜−電解質接合体100の製造方法について説明する。図2は、水素分離膜−電解質接合体100の製造フロー図である。まず、図2(a)に示すように、水素分離膜1を準備する。次に、図2(b)に示すように、水素分離膜1上にLaFe0.57Co0.43O3またはLaFe0.62Co0.38O3からなるセラミックス層をスパッタリング等によってコートする。
次いで、図2(c)に示すように、水素分離膜1およびセラミックス層に対して熱処理を施す。それにより、水素分離膜1を構成するパラジウムをセラミックス層に拡散させることができる。その結果、図2(d)に示すように、中間層2を形成することができる。次に、図2(e)に示すように、中間層2上に電解質層3をスパッタリング等により形成する。以上の工程により、水素分離膜−電解質接合体が完成する。
このように、水素分離膜1を構成する金属を拡散によって中間層2に含有させることから、水素分離膜1と中間層2との間の界面エネルギーが低下する。それにより、水素分離膜1と中間層2との間の剥離強度を増大させることができる。なお、図2(b)に示すスパッタリング工程において水素分離膜1を十分に加熱しておけば、あらためて熱処理を施さなくてもパラジウムをセラミックス層に拡散させることができる。したがって、図2(c)の熱処理工程は不要になる。この場合、製造コストを低減させることができる。また、セラミックス層として他のセラミックスを用いた場合であっても、図2(c)のように水素分離膜1を構成する金属を拡散させることができる。
図3は、本発明の第2実施例に係る燃料電池200の模式的断面図である。図3に示すように、燃料電池200は、図1の水素分離膜−電解質接合体100の電解質層3上にカソード4およびセパレータ5が順に形成され、水素分離膜1下にセパレータ6が形成された構造を有する。セパレータ5,6は、導電性を有し、ガスが流動するための流路を備える。
続いて、燃料電池200の動作について説明する。まず、水素を含有する燃料ガスがセパレータ6の流路から水素分離膜1に供給される。燃料ガス中の水素は、水素分離膜1および中間層2を透過して電解質層3に到達する。電解質層3に到達した水素は、プロトンと電子とに解離する。プロトンは、電解質層3を伝導し、カソード4に到達する。
一方、酸素を含有する酸化剤ガスがセパレータ5の流路からカソード4に供給される。カソード4においては、酸化剤ガス中の酸素とカソード4に到達したプロトンとから水が発生するとともに電力が発生する。発生した電力は、セパレータ5,6を介して回収される。以上の動作により、燃料電池200による発電が行われる。
燃料電池200においては図1の水素分離膜−電解質接合体100を用いていることから、水素分離膜1と電解質層3との剥離が防止される。したがって、燃料電池200の発電効率低下または発電不能を抑制することができる。
図4は、燃料電池200の製造フロー図である。まず、図4(a)に示すように、水素分離膜−電解質接合体100を準備する。次に、図4(b)に示すように、カソード4をスパッタリング等によってコートする。次いで、図4(c)に示すように、カソード4上にセパレータ5を積層して水素分離膜1下にセパレータ6を積層することによって、燃料電池200が完成する。
1 水素分離膜
2 中間層
3 電解質層
4 カソード
5,6 セパレータ
100 水素分離膜−電解質接合体
200 燃料電池
2 中間層
3 電解質層
4 カソード
5,6 セパレータ
100 水素分離膜−電解質接合体
200 燃料電池
Claims (10)
- 水素分離膜と、
プロトン伝導性セラミックスから構成される電解質層と、
前記水素分離膜と前記電解質層との界面に形成され、前記水素分離膜を構成する金属を構成元素に含むセラミックスからなる中間層とを備えることを特徴とする水素分離膜−電解質接合体。 - 前記中間層は、前記水素分離膜を構成する金属を構成元素に含むペロブスカイト型のセラミックスからなることを特徴とする請求項1記載の水素分離膜−電解質接合体。
- 前記電解質層は、ペロブスカイト型のセラミックスからなることを特徴とする請求項1または2記載の水素分離膜−電解質接合体。
- 前記水素分離膜の少なくとも前記中間層との界面部分は、パラジウム含有層であり、
前記中間層は、パラジウムを構成元素に含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水素分離膜−電解質接合体。 - 前記中間層は、LaFe0.57Co0.38Pd0.05O3であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の水素分離膜−電解質接合体。
- 請求項1〜5のいずれかの水素分離膜−電解質接合体と、
前記電解質層の前記水素分離膜と反対側の面に形成されたカソードとを備えることを特徴とする燃料電池。 - 水素分離膜を準備する工程と、
前記水素分離膜上にセラミックスからなる中間層を形成する工程と、
前記水素分離膜および前記中間層に熱処理を施すことによって前記水素分離膜を構成する金属を前記中間層に拡散させる工程と、
前記中間層上にプロトン伝導性セラミックスからなる電解質層を形成する工程とを備えることを特徴とする水素分離膜−電解質接合体の製造方法。 - 前記中間層および前記電解質層は、ペロブスカイト型セラミックスからなることを特徴とする請求項7記載の水素分離膜−電解質接合体の製造方法。
- 前記水素分離膜の少なくとも前記中間層との界面部分は、パラジウム含有層であり、
前記中間層は、LaFe0.62Co0.38O3またはLaFe0.57Co0.43O3であることを特徴とする請求項7または8記載の水素分離膜−電解質接合体の製造方法。 - 水素分離膜を準備する工程と、
前記水素分離膜上にセラミックスからなる中間層を形成する工程と、
前記水素分離膜および前記中間層に熱処理を施すことによって前記水素分離膜を構成する金属を前記中間層に拡散させる工程と、
前記中間層上にプロトン伝導性セラミックスからなる電解質層を形成する工程と、
前記電解質層上にカソードを形成する工程とを備えることを特徴とする燃料電池の製造方法。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2006064905A JP2007242483A (ja) | 2006-03-09 | 2006-03-09 | 水素分離膜−電解質接合体、それを備える燃料電池およびそれらの製造方法 |
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JP2006064905A Pending JP2007242483A (ja) | 2006-03-09 | 2006-03-09 | 水素分離膜−電解質接合体、それを備える燃料電池およびそれらの製造方法 |
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2006
- 2006-03-09 JP JP2006064905A patent/JP2007242483A/ja active Pending
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