JP2012212541A - 電解質・電極接合体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】アノード側電極に供給された燃料ガスの濃度損失を回避することが可能であるとともに十分な強度を示すアノード支持型の電解質・電極接合体を、容易に得る。
【解決手段】
電解質・電極接合体は、厚みが150〜250μm、気孔率が8〜25%の範囲内であるアノード側電極を具備する。この電解質・電極接合体は、例えば、シート状成形体としてのアノード側電極、固体電解質を積層して焼成処理を施し、さらにカソード側電極を焼き付けることで得られる。必要に応じて、アノード側電極と固体電解質との間、固体電解質とカソード側電極との間に、それぞれ、平坦化層、中間層を介装するようにしてもよい。このようにして構成された電解質・電極接合体を含む燃料電池は、特に、高電流密度での放電時に優れた定格電位及び出力密度を示す。
【選択図】図5
【解決手段】
電解質・電極接合体は、厚みが150〜250μm、気孔率が8〜25%の範囲内であるアノード側電極を具備する。この電解質・電極接合体は、例えば、シート状成形体としてのアノード側電極、固体電解質を積層して焼成処理を施し、さらにカソード側電極を焼き付けることで得られる。必要に応じて、アノード側電極と固体電解質との間、固体電解質とカソード側電極との間に、それぞれ、平坦化層、中間層を介装するようにしてもよい。このようにして構成された電解質・電極接合体を含む燃料電池は、特に、高電流密度での放電時に優れた定格電位及び出力密度を示す。
【選択図】図5
Description
本発明は、アノード側電極とカソード側電極とで電解質を挟んで構成される電解質・電極接合体及びその製造方法に関する。
燃料電池の単位セルは、1組のセパレータの間に、アノード側電極とカソード側電極とで電解質を挟んだ電解質・電極接合体が挟持されることで構成される。この種の電解質・電極接合体として、アノード支持型のものが知られている。
アノード支持型の電解質・電極接合体は、アノード側電極を先ず作製し、このアノード側電極の一端面上に、電解質、必要であれば中間層、カソード側電極等を積層することで得られる。このことから諒解されるように、アノード側電極は、支持基板としての役割を担う。
アノード側電極には、電極反応を生起するための燃料ガスが供給される。この燃料ガスを流通させる必要があるため、アノード側電極は、気孔を含む多孔質体として形成される。すなわち、燃料ガスは、気孔を介してアノード側電極の内部を流通する。
気孔が多く存在するほど、換言すれば、気孔率が高いほど、多量の燃料ガスが流通することが容易となる。このように燃料ガスが流通し易いアノード側電極では、燃料ガスの濃度損失が抑制される。従って、急激な負荷変動に対応するときや、単位セルの発電効率を高めるとき等の高電流密度運転であっても、高電圧を得ることが可能である。
しかしながら、気孔率が過度に高いアノード側電極では強度が小さくなる。アノード側電極(支持基板)の強度が十分でない場合、電解質・電極接合体に破壊が生じ易くなる懸念がある。また、電極反応に関与して生成した水蒸気や、未反応の燃料ガス及び酸化剤ガス(排ガス)が、気孔を介してアノード側電極の内部に到達する懸念もある。このような事態が生じると、排ガスによってアノード側電極が酸化され、その結果、発電特性が低下するとともに、耐酸化性や耐久性が低下してしまう。
これとは逆に、アノード側電極の強度を向上させるべく気孔率を過度に小さくすると、燃料ガスが流通することが困難となる。このようなアノード側電極では、燃料ガスの濃度損失が大きくなるため、高電流密度運転時には高電圧を得ることが容易でなくなる。
以上のような不具合が惹起されることを回避するべく、アノード側電極の厚みを大きくすることが一般的に行われている。この場合、アノード側電極の強度が確保されるからである。アノード側電極の典型的な厚みは500〜800μmであり、最小でも400μm程度である。
しかしながら、アノード側電極の厚みを大きくすると、電解質・電極接合体、ひいては単位セルの非IR損が大きくなる。すなわち、高電流密度運転時には、燃料電池の電圧が低くなってしまう。
このように、燃料ガスが流通することが容易であり、且つ強度が大きく、さらに、導電性も良好なアノード側電極を具備する電解質・電極接合体を得ることは困難である。この観点から、特許文献1には、径が互いに相違する複数種の造孔材を用いることによって、気孔径ないし気孔率が互いに相違するシート状成形体を作製し、これらのシート状成形体を積層してアノード側電極(支持基板)とすることが提案されている。この場合、気孔径ないし気孔率が小さいシート状成形体からなる層が強度を担い、気孔径ないし気孔率が大きいシート状成形体からなる層が燃料ガスの流通を担う。
特許文献1記載の技術では、アノード側電極を得るために、気孔径ないし気孔率が互いに相違するシート状成形体を複数個作製する必要がある。このため、アノード側電極を得るための工程数が多く煩雑であるとともに、長時間を要する。
また、気孔径ないし気孔率が小さいシート状成形体からなる層においては、燃料ガスが流通することが容易ではない。従って、負荷変動時等の高電流密度運転時、燃料ガスの濃度損失が大きくなる懸念がある。
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、容易に作製し得、しかも、燃料ガスの濃度損失を回避することが可能であり、さらに、十分な強度を示すアノード側電極を具備する電解質・電極接合体及びその製造方法を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するために、本発明は、アノード側電極とカソード側電極との間に電解質が介在されて構成されるとともに、前記アノード側電極の厚みが前記カソード側電極及び前記電解質に比して大きいアノード支持型の電解質・電極接合体において、
前記アノード側電極は、燃料ガスが流通する気孔を含む多孔質体からなるとともに、初回の運転前の気孔率が8〜25%であり、且つ厚みが150〜250μmであることを特徴とする。
前記アノード側電極は、燃料ガスが流通する気孔を含む多孔質体からなるとともに、初回の運転前の気孔率が8〜25%であり、且つ厚みが150〜250μmであることを特徴とする。
本発明に係る電解質・電極接合体を構成するアノード側電極は、支持基板として機能するものでありながら、厚みが小さい。しかしながら、気孔率が8〜25%と小さいので、十分な強度を示す。従って、電解質・電極接合体が破損する懸念を払拭し得る。
また、アノード側電極の厚みが小さいので、該アノード側電極に供給された燃料ガスが流通することが容易である。従って、気孔率が小さくとも、電極反応が円滑に進行する。このため、この電解質・電極接合体を具備する燃料電池を高電流密度で放電する場合においても、電圧降下が小さい。すなわち、高い定格電位が得られる等、優れた発電特性を示す。
アノード側電極の材質としては、燃料電池のアノード側電極として一般的に採用されている物質を採用すればよいが、その好適な具体例としては、酸化ニッケルとジルコニアとを含むサーメットを挙げることができる。
アノード側電極と電解質との間には、その表面粗さがアノード側電極の電解質に臨む側の端面の表面粗さに比して小さく、且つアノード側電極に比して気孔率及び厚みが小さい平坦化層を設けることが好ましい。
多孔質体からなるアノード側電極には、電解質に臨む側の端面に開気孔が不可避的に存在する。この開気孔によって陥没が形成されるが、平坦化層を設けることにより、該陥没が充填される。
このため、該平坦化層上に厚みの小さい固体電解質を設ける場合であっても、該固体電解質に陥没や隆起が形成されることが回避される。従って、該固体電解質に応力が集中する部位が著しく少なくなるので、クラックが発生することを可及的に回避することができる。すなわち、固体電解質の厚みを小さくすることができるので、イオンが固体電解質内を速やかに移動することができる。これにより固体電解質の内部抵抗が小さくなるので、高電流密度放電時における電圧降下を一層小さくすることができる。
なお、アノード側電極の材質と平坦化層の材質を同一とすることもできる。この場合、アノード側電極と平坦化層との間の熱膨張係数が近似し、密着性が良好となるので好適である。
また、本発明は、アノード側電極とカソード側電極との間に電解質が介在されて構成されるとともに、前記アノード側電極の厚みが前記カソード側電極及び前記電解質に比して大きいアノード支持型の電解質・電極接合体の製造方法において、
造孔材を添加した出発原料からシート状成形体としてのアノード側電極を得る工程と、
前記アノード側電極の一端面の上方に、前記アノード側電極に比して厚みが小さい電解質を設ける工程と、
前記電解質の一端面の上方に、前記アノード側電極に比して厚みが小さいカソード側電極を設ける工程と、
を有し、
前記造孔材は、前記シート状成形体に8〜25%の気孔が形成される量で添加され、
且つ前記シート状成形体は、焼成処理が施された後の厚みが150〜250μmとなる厚みで形成されることを特徴とする。
造孔材を添加した出発原料からシート状成形体としてのアノード側電極を得る工程と、
前記アノード側電極の一端面の上方に、前記アノード側電極に比して厚みが小さい電解質を設ける工程と、
前記電解質の一端面の上方に、前記アノード側電極に比して厚みが小さいカソード側電極を設ける工程と、
を有し、
前記造孔材は、前記シート状成形体に8〜25%の気孔が形成される量で添加され、
且つ前記シート状成形体は、焼成処理が施された後の厚みが150〜250μmとなる厚みで形成されることを特徴とする。
このように、本発明においては、アノード側電極を得るために複数個のシート状成形体を作製する必要がない。すなわち、製造工程数が少ない。換言すれば、簡素な工程を経て電解質・電極接合体を得ることができる。
しかも、得られた電解質・電極接合体を具備する燃料電池は、上記したように優れた発電特性を示す。
造孔材の好適な例としては、平均直径が3〜10μmであるカーボンが挙げられる。この場合、該造孔材(カーボン)を、アノード側電極の出発原料に対して9〜16体積%添加すればよい。
なお、アノード側電極として酸化ニッケルとジルコニアとを含むサーメットからなるものを形成する場合、出発原料としては、酸化ニッケルとジルコニアとを含む混合物を用いればよい。
電解質・電極接合体を作製する過程で、アノード側電極と電解質との間に、その表面粗さがアノード側電極の電解質に臨む側の端面の表面粗さに比して小さく、且つアノード側電極に比して気孔率及び厚みが小さい平坦化層を設ける工程を行うことが好ましい。これにより、上記したように固体電解質にクラックが発生することを抑制して、内部抵抗が小さい電解質・電極接合体を得ることができるからである。
本発明によれば、アノード側電極の厚みを小さく設定するとともに、気孔率を小さく設定するようにしているので、該アノード側電極が、十分な強度を示すとともに、燃料ガスが容易に流通し得る支持基板となる。従って、破損が生じ難く耐久性に優れ、しかも、特に高電流密度での放電時における発電特性が優れる電解質・電極接合体を構成することができる。
なお、アノード側電極を得るには厚み及び気孔率を制御すればよく、アノード側電極を得るために複数個のシート状成形体を作製する必要は特にない。このため、製造過程が簡素となる。結局、電解質・電極接合体を容易に得ることができる。
以下、本発明に係る電解質・電極接合体及びその製造方法につき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係る電解質・電極接合体10の概略全体縦断面図である。この電解質・電極接合体10は、固体酸化物型燃料電池(SOFC)の単位セルを構成するためのものであり、アノード側電極12、平坦化層14、電解質層としての固体電解質16、中間層18、カソード側電極20がこの順序で積層されることで構成される。
なお、電解質・電極接合体10は、アノード側電極12を支持基板とする、いわゆるアノード支持型のものであり、このため、アノード側電極12の厚みが残余の平坦化層14、固体電解質16、中間層18及びカソード側電極20に比して大きく設定される。換言すれば、アノード側電極12の厚みは、電解質・電極接合体10を構成する層の中で最大である。アノード側電極12の厚みは、150〜250μmの範囲内に設定される。
アノード側電極12は、後述するように、造孔材及びバインダが添加された出発原料から得られたシート成形体に対して焼成処理が行われることで形成されるが、この際(又は脱脂処理時)に前記造孔材が消失する。また、出発原料の一部が初回の発電時に還元されることに伴って体積収縮を起こす。以上のような理由から、アノード側電極12は、図2に拡大して示すように、その内部に小径気孔22と大径気孔24が存在する多孔質体として形成され、その還元前(燃料電池の初回運転前)の気孔率は8〜25%の範囲内である。小径気孔22は、前記体積収縮に伴って形成され、一方、大径気孔24は、前記造孔材が消失することによって生じる。
従来技術に係るアノード支持型の電解質・電極接合体におけるアノード側電極では、その厚みは500〜800μm、最小でも400μm程度であり、その気孔率は20〜45%程度である。このことから諒解される通り、本実施の形態に係る電解質・電極接合体10が具備するアノード側電極12の厚み及び気孔率は、従来技術に係る電解質・電極接合体におけるアノード側電極の厚み及び気孔率に比して小さい。
このように構成されるアノード側電極12は、気孔率が小さいために多孔質体であっても十分な強度を示す。また、厚みが小さいために燃料ガスが流通することが容易である。
アノード側電極12の材質としては、固体酸化物型燃料電池において一般的に採用されているものを選定すればよい。その代表的なものとしては、Niとイットリア安定化ジルコニア(YSZ)とのサーメット、Niとスカンジア安定化ジルコニア(SSZ)とのサーメット、Niとイットリウムドープセリア(YDC)とのサーメット、Niとサマリウムドープセリア(SDC)とのサーメット、Niとガドリニウムドープセリア(GDC)とのサーメット等が挙げられるが、以下においては、Ni−YSZサーメットを例示して説明する。なお、Niの出発原料はNiOであり、このNiOが、初回の発電時に還元されてNiに変化する。
上記したようにアノード側電極12が多孔質体であるため、該アノード側電極12における固体電解質16に臨む側の端面(上端面)には、図2に示すように、小径気孔22又は大径気孔24が開気孔として存在する。この開気孔によりアノード側電極12の上端面に陥没や隆起が形成される。すなわち、アノード側電極12の上端面は平坦ではなく、その面粗度は大きい。
アノード側電極12に隣接して設けられた平坦化層14は、上記した陥没を充填するとともに隆起を埋没して平坦化するための層である。勿論、該平坦化層14の上端面には、大きな陥没や隆起等が存在しない。すなわち、上端面は、粗さが極めて小さい面として設けられている。このため、該平坦化層14に隣接する固体電解質16の上端面に陥没や隆起が転写されることが回避される。すなわち、固体電解質16における中間層18に臨む側の端面が、略平坦となる。
平坦化層14の厚みは、3〜20μmの範囲で、且つ開気孔となった大径気孔24の開口径に応じて設定される。例えば、大径気孔24の開口径が概ね4〜6μmである場合にはおよそ5μm、概ね12〜14μmである場合にはおよそ13μmに設定される。
このように、大径気孔24の開口径に応じて平坦化層14の厚みを設定することにより、電解質・電極接合体10の厚みが大きくなることを回避することができる。換言すれば、平坦化層14を設けることに伴って電解質・電極接合体10、ひいてはSOFCが大型化することはない。
なお、平坦化層14の厚みは、アノード側電極12の端面における平坦な部位から、固体電解質16に臨む側の端面までの距離Dとして定義される。
この場合、平坦化層14は、アノード側電極12と同様にNi−YSZからなり、その還元後の気孔率は5〜10%程度である。すなわち、アノード側電極12と平坦化層14は同一の材質で構成されているものの、気孔率はアノード側電極12の方が大きい。
平坦化層14上の固体電解質16は、カソード側電極20で生成した酸化物イオン(O2-)をアノード側電極12に伝導する役割を担う。従って、固体電解質16の材質としては、酸化物イオンを伝導させることが可能であるものが選定される。具体的には、YSZやSSZ等が例示される。
固体電解質16の厚みは3〜15μm程度、例えば、約5μmで十分である。上記したように平坦化層14の上端面が略平坦であるので、該固体電解質16の上端面も略平坦となる。このため、固体電解質16の厚みをこのように小さくしても、クラックが発生し難い。
固体電解質16上にカソード側電極20を直接積層してもよいが、固体電解質16とカソード側電極20との間で相互拡散が生じると、高抵抗の反応生成物層が形成されてしまう。このような不具合を回避するべく、本実施の形態においては、拡散防止層として機能する中間層18を形成している。
このような機能を営む中間層18の材質の好適な例としては、セリア系酸化物が挙げられる。一層具体的には、Sm2O3ドープCeO2(SDC)、Y2O3ドープCeO2(YDC)、Gd2O3ドープCeO2(GDC)、La2O3ドープCeO2(LDC)等が例示される。
また、中間層18を拡散防止層として機能させるには、0.5〜1μm程度の厚みで十分である。
この中間層18上には、カソード側電極20が積層される。該カソード側電極20の好適な材質としては、La−Co−O系ペロブスカイト型酸化物、La−Sr−Co−O(LSC)系ペロブスカイト型酸化物、La−Sr−Co−Fe−O(LSCF)系ペロブスカイト型酸化物、La−Sr−Mn−O(LSM)系ペロブスカイト型酸化物、Ba−Sr−Co−O(BSC)系ペロブスカイト型酸化物、Ba−Sr−Co−Fe−O系ペロブスカイト(BSCF)型酸化物、Sm−Sr−Co−O(SSC)系ペロブスカイト型酸化物の群中から選択されるいずれか1種や、これらのペロブスカイト型酸化物中の1種に対してSDC、YDC、GDC、LDC等の酸化物イオン伝導体を混合した混合物が挙げられる。該カソード側電極20の厚みは、好ましくは10μm以上、例えば、約30μmに設定される。
次に、上記した電解質・電極接合体10の製造方法につき説明する。
図3は、本実施の形態に係る電解質・電極接合体10の製造方法の概略フロー図である。この製造方法は、アノード側電極12、平坦化層14及び固体電解質16の各々をシート状成形体として個別に成形する第1工程S1と、アノード側電極12上に平坦化層14及び固体電解質16を積層・圧着して図4に示す積層体30とする第2工程S2と、該積層体30に対して焼成処理を施す第3工程S3と、焼成された前記積層体30に中間層18を設ける第4工程S4と、前記中間層18上にカソード側電極20を設ける第5工程S5とを有する。
はじめに、第1工程S1に先んじて、アノード側電極12、平坦化層14、固体電解質16の各出発材料を含有するスラリーを調製する。
アノード側電極12の出発材料は、例えば、NiO粒子とYSZ粒子とが体積比で1:1の割合で混合された混合粒子であり、これを溶媒に分散する。さらに該溶媒に対し、ポリビニルブチラール系やアクリル系等のバインダと、PMMA樹脂やカーボン等の造孔材とを添加してスラリーを調製する。
造孔材としては、アノード側電極12に設ける大径気孔24の開口径が所望の範囲内となるような平均粒径のものを選定する。例えば、大径気孔24の開口径を概ね4〜6μmとする場合には平均粒径が8μmのものを、大径気孔24の開口径を概ね12〜14μmとする場合には平均粒径が20μmのものを、それぞれ選定するようにすればよい。
また、造孔材の添加割合は、アノード側電極12の気孔率が8〜25%の範囲内となるように設定される。例えば、造孔材としてカーボンを用いる場合、造孔材の添加割合を9〜16%とすればよい。
一方、平坦化層14を得るためのスラリーは、例えば、溶媒に対し、NiO粒子とYSZ粒子とが体積比で1:1の割合で混合された混合粒子(出発原料)と、上記したようなバインダとを添加することで調製することができる。また、固体電解質16を得るためのスラリーは、例えば、溶媒に対し、YSZ粒子(出発原料)と、ポリビニルブチラール系やアクリル系等のバインダとを添加することで調製することができる。
そして、第1工程S1において、上記したように調製したアノード側電極12のスラリーを用い、ドクターブレード法によってシート状成形体として形成する。なお、ドクターブレード法に代え、押出し成形法やロール塗工法等を行うようにしてもよい。
シート状成形体の厚みは、ホットプレス等による圧着、及び焼成処理を経た後のアノード側電極12の厚みが150〜250μmとなるように設定される。焼成処理後の厚みが150μmよりも小さいと、支持基板としての強度が十分でなくなる。一方、250μmよりも大きいと、燃料ガスの流通距離が大きくなるので、負荷変動時等の高電流密度運転時に、燃料ガスの濃度損失が大きくなる懸念がある。また、電解質・電極接合体10、ひいてはSOFCの厚み方向寸法が大きくなる。
その後、必要に応じ、アノード側電極12に対して脱脂処理を行う。この脱脂処理によって造孔材が消失し、その消失跡に、造孔材の平均粒径に応じた大径気孔24が形成される。なお、脱脂処理を行わない場合には、焼成処理時に造孔材が消失する。
その一方で、上記したように調製した平坦化層14、固体電解質16の各スラリーを用い、ドクターブレード法や押出し成形法、ロール塗工法等によってシート状成形体を各々成形する。
次に、第2工程S2において、これらのシート状成形体、すなわち、アノード側電極12、平坦化層14及び固体電解質16をこの順序で積層する。その後、ホットプレス等によって各層を圧着することにより、図4に示す積層体30が得られる。すなわち、アノード側電極12の一端面の上方に、平坦化層14を介して固体電解質16が設けられる。
次に、第3工程S3において、積層体30に対して焼成処理を施す。この際の温度は、例えば、1100〜1450℃に設定すればよい。このように、積層体30に対して焼成処理を行うことにより、アノード側電極12、平坦化層14及び固体電解質16をシート状成形体の状態から同時に焼結させることができる。また、製造工程数が低減するので、電解質・電極接合体10の生産効率を著しく向上させることもできる。
この焼成処理に伴ってアノード側電極12、平坦化層14及び固体電解質16が熱収縮を起こすが、本実施の形態では、シート状成形体を積層した後、各層に対して温度や圧力を付与して予め圧着させている。従って、隣接する層同士が堅牢に密着し合っているので、焼成処理時に層同士の間に剥離が生じ難い。
次に、第4工程S4において、このようにして得られた積層体30の固体電解質16上に、中間層18となるペーストをスクリーン印刷法等によって塗布する。このペーストに対し、前記積層体30ごと焼成処理を行うことにより、固体電解質16上に焼き付けられた中間層18が形成される。
次に、第5工程S5において、中間層18上に、カソード側電極20となるペーストをスクリーン印刷法等によって塗布する。このペーストに対し、中間層18が焼き付けられた積層体30ごと焼成処理を行うことにより、中間層18上にカソード側電極20を焼き付ける。すなわち、固体電解質16の一端面の上方に、中間層18を介してカソード側電極20が設けられ、その結果、アノード側電極12とカソード側電極20との間に平坦化層14、固体電解質16及び中間層18が介装された電解質・電極接合体10が得られるに至る。
単位セルを構成するには、さらに、電解質・電極接合体10を1組のセパレータで挟持すればよい。SOFCをスタックとして構成する場合には、前記単位セルを複数個積層する。
このように単位セル又はスタックとして構成されたSOFCは、500〜1000℃程度に昇温される。その後、カソード側電極20に隣接するセパレータのガス流路に酸素を含有する酸素含有ガスが流通され、その一方で、アノード側電極12に隣接するセパレータに設けられたガス流路に水素を含有する燃料ガスが流通される。
酸素含有ガス中の酸素は、カソード側電極20において電子と結合し、酸化物イオン(O2-)を生成する。生成した酸化物イオンは、カソード側電極20を起点とし、中間層18を経由して固体電解質16へと伝導する。
ここで、上記したように、中間層18におけるカソード側電極20に臨む側の端面、及び固体電解質16における中間層18に臨む側の端面は、平坦に設けられている。しかも、カソード側電極20と中間層18、中間層18と固体電解質16との間に層間剥離が起こることが回避されている。このため、カソード側電極20と中間層18との接触面積、及び中間層18と固体電解質16との接触面積が大きくなる。
酸化物イオンは、次に、固体電解質16から平坦化層14を経由し、アノード側電極12へと移動する。勿論、上記と同様に、固体電解質16と平坦化層14、平坦化層14とアノード側電極12との間に層間剥離が起こることも回避されている。このため、固体電解質16と平坦化層14との接触面積、及び平坦化層14とアノード側電極12との接触面積が大きくなる。
以上のように隣接する各層同士の接触面積が大きくなることに伴い、各層間の界面抵抗が小さくなる。従って、電解質・電極接合体10の電圧降下が小さくなる。
しかも、上記したように、固体電解質16の厚みが小さい上、該固体電解質16には、酸化物イオンの移動を妨げるクラックが殆ど存在しない。このため、酸化物イオンは、固体電解質16の内部を容易に移動することができる。換言すれば、固体電解質16の内部抵抗が小さい。
その上、アノード側電極12の厚みが小さいので、該アノード側電極12の気孔率が小さいながらも燃料ガスが該アノード側電極12内を流通することが容易である。従って、アノード側電極12において、燃料ガス中の水素と、酸化物イオンと、電子との電極反応が円滑に進行する。
以上のことが相俟って、SOFCを高電流密度で放電する場合においても、開回路電圧からの電圧降下の範囲が比較的小さくなる。すなわち、比較的大きな定格電位を得ることができる。
図5に、本実施の形態に係る電解質・電極接合体10を具備するSOFCと、従来技術に係る電解質・電極接合体を具備するSOFCの、アノード側電極の気孔率と出力密度との関係をグラフにして示す。ここで、本実施の形態に係る電解質・電極接合体10のアノード側電極12の気孔率は8%、13%、25%のいずれかであり、その厚みは、気孔率が8%であるときに150μm、13%であるときに200μm、25%であるときに250μmである。また、従来技術に係る電解質・電極接合体のアノード側電極では気孔率を8%〜42%の間で変化させており、その厚みは、気孔率に関わらず550μmで一定である。いずれにおいても単位セルからなるSOFCを構成し、電流密度を0.3A/cm2、0.6A/cm2、又は0.9A/cm2として放電を行っている。
●、▲、■のプロットが本実施の形態に係る電解質・電極接合体10を具備するSOFCで得られた結果であり、○、△、□のプロットが従来技術に係る電解質・電極接合体を具備するSOFCで得られた結果である。曲線は、○、△、□(従来技術)のプロットに基づいて引いたものである。
この図5から、本実施の形態に係る電解質・電極接合体10を具備するSOFCが、従来技術に係る電解質・電極接合体を具備するSOFCに比して同等以上の高い出力密度を示すことが分かる。特に、0.9A/cm2という高電流密度での放電時に、優れた出力密度が得られる。このことは、発電特性を示した図6からも諒解されるように、高い定格電位が得られることを意味する。なお、図6には、気孔率が8%であるアノード側電極を具備する各SOFCの0.9A/cm2での定格電位も併せて示しているが、図5ではグラフの範囲外となるため示していない。
このように、本実施の形態によれば、高電流密度での放電時に高い定格電位が得られる。従って、負荷変動時や、単位セルの発電効率を高める必要があるときなどに有利である。
また、所定時間の長時間連続運転後に定格電位を測定すると、本実施の形態に係る電解質・電極接合体10を具備するSOFCでは、気孔率が25%のアノード側電極12を備えるものであっても運転開始直後と同等であり、電圧低下が殆ど認められない。これに対し、従来技術に係る電解質・電極接合体を具備するSOFCでは、気孔率が25%のアノード側電極12を備えるものである場合、最大で5%程度の電圧低下が認められた。
すなわち、本実施の形態によれば、優れた耐久性を示す電解質・電極接合体10を得ることもできる。
さらに、アノード側電極12は、厚みが小さいながらも気孔率が8〜25%と比較的小さい。このため、支持基板として十分な強度を示す。従って、電解質・電極接合体10を作製する過程やSOFCを運転する過程で、アノード側電極12の強度不足に起因して破損が生じる懸念が払拭される。
しかも、気孔率が小さいために、電極反応に関与して生成した水蒸気や、排ガスが気孔を介してアノード側電極12の内部に到達することが防止される。従って、SOFCの発電特性が低下したり、耐酸化性や耐久性が低下したりすることを回避することができる。
以上のようにしてSOFCの運転が行われる最中に、アノード側電極12中のNiOが還元されてNiに変化し、Ni−YSZのサーメットからなるアノード側電極12となる。
なお、上記した実施の形態では、アノード側電極12、平坦化層14及び固体電解質16の各シート状成形体を積層・圧着した後に焼成処理を施し、さらに、固体電解質16に対してスクリーン印刷を行うことで中間層18を設けるようにしているが、図7に示すように、中間層18をシート状成形体から形成するようにしてもよい。
この場合、工程S10において、アノード側電極12、平坦化層14、固体電解質16及び中間層18となる各シート状成形体を得る。次に、工程S20において、上記と同様にして、これらのシート状成形体を積層・圧着することで積層体を得る。次に、工程S30において、該積層体に対して焼成処理を施す。さらに、工程S40において、この積層体に対してスクリーン印刷を行うことでカソード側電極20を設け、焼き付けを行うことにより、電解質・電極接合体10が得られるに至る。
また、平坦化層14及び固体電解質16は、ペーストを用いてのスクリーン印刷によって形成するようにしてもよい。
さらに、平坦化層14は、アノード側電極12と同一組成のものに特に限定されるものではない。例えば、アノード側電極12におけるNi−YSZの重量比が1:1である場合、平坦化層14におけるNi−YSZの重量比を3:7又は7:3に設定することができる。又は、平坦化層14を、Ni−SDCサーメットで構成するようにしてもよい。
いずれにおいても、アノード側電極12と固体電解質16との間の平坦化層14、固体電解質16とカソード側電極20との間の中間層18は必須の構成ではなく、平坦化層14又は中間層18のいずれか一方、又は双方を割愛して電解質・電極接合体10を構成するようにしてもよい。
10…電解質・電極接合体 12…アノード側電極
14…平坦化層 16…固体電解質
18…中間層 20…カソード側電極
22…小径気孔 24…大径気孔
30…積層体
14…平坦化層 16…固体電解質
18…中間層 20…カソード側電極
22…小径気孔 24…大径気孔
30…積層体
Claims (7)
- アノード側電極とカソード側電極との間に電解質が介在されて構成されるとともに、前記アノード側電極の厚みが前記カソード側電極及び前記電解質に比して大きいアノード支持型の電解質・電極接合体において、
前記アノード側電極は、燃料ガスが流通する気孔を含む多孔質体からなるとともに、初回の運転前の気孔率が8〜25%であり、且つ厚みが150〜250μmであることを特徴とする電解質・電極接合体。 - 請求項1記載の電解質・電極接合体において、前記アノード側電極は、酸化ニッケルとジルコニアとを含むサーメットからなることを特徴とする電解質・電極接合体。
- 請求項1又は2記載の電解質・電極接合体において、前記アノード側電極と前記電解質との間に、前記アノード側電極の陥没を充填する平坦化層を有し、
前記平坦化層は、前記電解質に臨む側の端面の表面粗さが、前記アノード側電極の前記平坦化層に臨む側の端面の表面粗さに比して小さく、且つ前記アノード側電極に比して気孔率及び厚みが小さいことを特徴とする電解質・電極接合体。 - アノード側電極とカソード側電極との間に電解質が介在されて構成されるとともに、前記アノード側電極の厚みが前記カソード側電極及び前記電解質に比して大きいアノード支持型の電解質・電極接合体の製造方法において、
造孔材を添加した出発原料からシート状成形体としてのアノード側電極を得る工程と、
前記アノード側電極の一端面の上方に、前記アノード側電極に比して厚みが小さい電解質を設ける工程と、
前記電解質の一端面の上方に、前記アノード側電極に比して厚みが小さいカソード側電極を設ける工程と、
を有し、
前記造孔材は、前記シート状成形体に8〜25%の気孔が形成される量で添加され、
且つ前記シート状成形体は、焼成処理が施された後の厚みが150〜250μmとなる厚みで形成されることを特徴とする電解質・電極接合体の製造方法。 - 請求項4記載の製造方法において、前記造孔材として平均直径が3〜10μmであるカーボンを用いるとともに、該造孔材を、前記アノード側電極の前記出発原料に対して9〜16体積%添加することを特徴とする電解質・電極接合体の製造方法。
- 請求項4又は5記載の製造方法において、前記出発原料は、酸化ニッケルとジルコニアの混合物であることを特徴とする電解質・電極接合体の製造方法。
- 請求項4〜6のいずれか1項に記載の製造方法において、前記電解質を形成する前に、前記アノード側電極の一端面上に、前記アノード側電極の陥没を充填するとともに、その上端面の表面粗さが前記アノード側電極の上端面の表面粗さに比して小さく、且つ前記アノード側電極に比して気孔率及び厚みが小さい平坦化層を形成することを特徴とする電解質・電極接合体の製造方法。
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- 2011-03-31 JP JP2011077015A patent/JP2012212541A/ja not_active Withdrawn
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