JP2007238552A - 2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸の製造方法および製造装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリルを、水和槽2にて水和し、加水分解槽4にて加水分解後、反応液中の低沸点成分を蒸留塔7にて除去し、その後、中和・分液槽8にて、中和して、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸を含む有機相と、水を含む水相とに相分離させ、相分離した有機相を、水相から分離し、濃縮槽9にて濃縮する。濃縮槽9にて有機相から留去された水は、還流ライン5を介して加水分解槽4に供給される。
【選択図】図1
Description
このような2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸の製造方法として、例えば、以下の(A)〜(E)の工程を含む方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
(A):2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリルおよび/または2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドを硫酸存在下に加水分解反応させ、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸を含む反応液を得る工程、(B):(A)で得られた反応液と塩基性アルカリ金属化合物とを混合する工程、(C):(B)で得られた混合液を2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸を含む油層と水層とに分離する工程、(D):(C)で得られた油層を濃縮する工程、(E):(D)で得られた濃縮液から不溶物を除去する工程。
しかし、留去される水分には、ジメチルスルフィドなどの悪臭成分や蟻酸などの腐食成分が、副生成物として含まれている。そのため、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸を工業的に製造する場合には、環境上の観点から、留去される水分をそのまま廃棄することはできず、適切な処理が必要となる。そのような処理としては、焼却処理などが例示されるが、工業的に製造する場合には、廃棄量が多くなり、処理コストが過大となる。
また、本発明の2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸の製造装置は、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリルを、酸触媒下、水と反応させて、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドを生成させる水和槽と、前記水和槽において得られた2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドを含む反応液に、水を加えて2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸を生成させる加水分解槽と、前記加水分解槽において得られた2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸を含む反応液に、アルカリを加えて中和することにより、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸を含む有機相と、水を含む水相とに相分離させ、相分離した有機相を、水相から分離する分液手段と、前記分液手段において分離された有機相から、前記有機相中に残存する水を除去して、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸を濃縮する濃縮手段と、前記濃縮手段において除去された水を、前記加水分解槽に供給するための水供給手段とを備えていることを特徴としている。
低沸点成分除去手段によって、加水分解槽において得られた2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸を含む反応液中の低沸点成分を除去すれば、水のリサイクルにより系中に蓄積される副生成物の低減を図ることができる。そのため、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸を効率的に製造することができる。
この方法では、まず、水和槽2に、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリル(以下、HMTBNと省略する。)、水および硫酸を供給して、HMTBNを水和反応させることにより、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドを生成させる(水和工程)。
水和槽2は、上記した水和反応ができればよく、公知の反応槽などから構成される。
そして、水和槽2では、HMTBN、水および硫酸が混合される。また、水和槽2では、HMTBN100重量部に対して、水が、例えば、20〜70重量部、好ましくは、25〜50重量部の割合となり、硫酸が、例えば、上記混合物1モルに対して、硫酸全量として、例えば、0.5〜1モル、好ましくは0.6〜0.8モルの割合となるように、HMTBN、水および硫酸が供給される。
そして、水和槽2では、硫酸の存在下、HMTBNが水と水和反応して、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミド(以下、HMTBAAと省略する。)が生成する。水和反応は、例えば、40〜70℃、1〜3時間の範囲で実施され、反応後熟成される。
加水分解槽4は、水和槽2と接続ライン3を介して接続されており、公知の反応槽などから構成される。そして、水和槽2において得られたHMTBAAを含む反応液は、水和槽2から接続ライン3を介して加水分解槽4に供給される。
この水は、後述する還流ライン5のみから供給されるか、あるいは、還流ライン5から供給されるとともに、別途接続された給水ライン6から供給される。
そして、加水分解槽4では、HMTBAAが、水および硫酸と加水分解反応して、HMTBAが生成するとともに、重硫酸アンモニウム(NH4HSO4)および硫酸アンモニウム((NH4)2SO4)が副生する。加水分解反応は、例えば、水を仕込んだ後、昇温して、90〜130℃、2〜6時間の範囲で実施される。
蒸留塔7は、加水分解槽4と接続ライン3を介して接続されており、反応液中の低沸点成分を除去できればよく、公知の蒸発器や蒸留器などから構成される。そして、加水分解槽4において加水分解により生成したHMTBAを含む反応液は、加水分解槽4から接続ライン3を介して蒸留塔7に供給される。
例えば、2重量%の低沸点成分の除去を実施して、後述するように、濃縮排水をリサイクル使用した際の濃縮排水中の蟻酸濃度の変化は、図2に示される。
また、加水分解後の反応液900gを、大気圧下加熱して、その2重量%を蒸発させたときのジメチルスルフィド(DMS)およびジメチルジスルフィド(DMDS)の含有量は、それぞれ表1に示される。
そして、蒸留塔7において低沸点成分が除去された反応液は、蒸留塔7から接続ライン3を介して中和・分液槽8に供給される。
なお、反応液中に含有される重硫酸アンモニウムの量は、分析により求めてもよいが、硫酸が、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリル1モルに対して、0.5モルを超過し1モル未満であり、かつ、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリルが反応ですべて消費される場合には、下記式により算出することができる。
また、アルカリの添加割合は、アルカリが添加された反応液の水素イオン濃度(pH)によって管理することもできる。具体的には、重硫酸アンモニウム1モルに対して0.6〜0.8モルの水酸化ナトリウムが用いられる場合には、水酸化ナトリウムが添加された反応液のpHは、25℃において約1.4〜約1.9となり、60℃において約1.9〜約2.2となる。
分離槽8bにおいて、水相には、無機塩が析出している場合があるが、その場合でも、そのまま分離してもよく、あるいは、加温して析出無機塩を溶解させた後、分離することもできる。さらに、濾過やデカンテーションにより析出無機塩を除去した後、分離することもできる。分離時の温度は、例えば、30〜110℃の範囲である。
また、中和・分液槽8の分離槽8bには、水相を排出するための水相排出ライン15が接続されている。分離槽8bにおいて、有機相から分離された水相は、分離槽8bから水相排出ライン15に排出される。水相排出ライン15は、分液槽14に接続されている。水相排出ライン15に排出された水相は、後述するように、固液分離器12から固体排出ライン16を介して排出される無機塩を含む固体成分(ウエットケーキからなる残渣)とともに、分液槽14に供給される。
分液槽14には、廃棄ライン17および回収有機相供給ライン10が接続されている。そして、分液槽14において、有機相から分離された水相は、廃棄ライン17から廃棄される。また、分液槽14において、水相から分離された有機相は、回収有機相として、回収有機相供給ライン10に回収される。
濃縮槽9は、中和・分液槽8と接続ライン3を介して接続されており、上記した濃縮ができればよく、公知の濃縮器などから構成される。そして、中和・分液槽8において分離された有機相は、中和・分液槽8の分離槽8bから接続ライン3を介して濃縮槽9に供給される。
濃縮槽9では、上記有機相(回収有機相を含む。)が供給され、例えば、50〜150℃で、1〜20kPaの範囲で濃縮される。これによって、有機相中の水が、例えば、5重量%以下、好ましくは、2重量%以下、さらに好ましくは、1重量%以下になるように濃縮される。このように濃縮すれば、後述する製品中の硫酸イオン濃度の低減、製品の動粘度の低減を図ることができる。有機相は、この濃縮により、無機塩が析出して、スラリーとなる。
この方法では、次いで、冷却塔11にて、スラリーを冷却し、固液分離器12により、スラリーを、有機相を含む液体成分と、析出する無機塩を含む固体成分とに分離し、さらに、調整槽13にて、水分調整した後、HMTBAの製品として取り出される。
冷却塔11では、上記スラリーが供給され、例えば、60〜120℃に冷却される。この冷却によって、スラリーから無機塩を十分に析出させる。
固液分離器12では、上記スラリーが供給され、有機相を含む液体成分と、無機塩を含む固体成分(ウエットケーキからなる残渣)とに分離される。具体的には、固液分離器12では、上記スラリーが、例えば、60〜120℃、遠心力10〜4000Gで遠心分離される。なお、分離された固体成分には、HMTBAが20〜60重量%含まれている。
調整槽13では、有機相に、水が供給されて水分調整がなされる。
上記したHMTBAの製造装置を用いて、HMTBAを製造すれば、濃縮槽9において、有機相から留去された水が、そのまま廃棄されるのではなく、還流ライン5を介して加水分解槽4に供給される。そのため、濃縮槽9から留去された水を廃棄するために必要な処理を不要とすることができる。その結果、操作性よく、効率的にHMTBAを精製することができながら、製造に供する水を効率的に用いて、製造コストの低減を図ることができる。
例えば、還流ライン5の途中に、吸着塔18を介装する。吸着塔18には、活性炭を固定床または流動床にて設けておき、加水分解槽4に供給される以前の水から、再度、低沸点成分を除去する。
また、上記したHMTBAの製造方法では、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸を生成させるための生成工程として、水和工程と加水分解工程とを順次(2段で)実施したが、例えば、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリルおよび/または2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドに、水および硫酸を加えて、水和反応および加水分解反応を1つの工程で(1段で)実施することもできる。
なお、上記の説明では、加水分解槽4にて、HMTBAAを加水分解した後、蒸留塔7において、反応液を蒸留することにより、反応液中の低沸点成分を除去したが、本発明の低沸点成分除去工程として、例えば、加水分解槽4において蒸留により反応液中の低沸点成分を除去するようにすることもできる。その場合には、蒸留塔7は、任意的に設備される。
4 加水分解槽
5 還流ライン
7 蒸留塔
8 中和・分離槽
9 濃縮槽
Claims (6)
- 2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリルおよび/または2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドに、水および酸を加えて2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸を生成させる生成工程と、
前記生成工程において得られた2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸を含む反応液に、アルカリを加えて中和することにより、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸を含む有機相と、水を含む水相とに相分離させ、相分離した有機相を、水相から分離する分液工程と、
前記分液工程において分離された有機相から、前記有機相中に残存する水を除去して、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸を濃縮する濃縮工程とを備え、
前記濃縮工程において除去された水を、前記生成工程において、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリルおよび/または2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドに加えることを特徴とする、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸の製造方法。 - 前記濃縮工程において除去された水を、前記生成工程において、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリルおよび/または2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドに加える以前に、前記水中の低沸点成分を除去することを特徴とする、請求項1に記載の2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸の製造方法。
- 前記生成工程と前記分液工程との間に、前記生成工程において得られた2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸を含む反応液中の低沸点成分を除去する低沸点成分除去工程をさらに備えていることを特徴とする、請求項2に記載の2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸の製造方法。
- 前記生成工程は、
2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリルを、酸触媒下、水と反応させて、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドを生成させる水和工程と、
前記水和工程において得られた2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドを含む反応液に、水を加えて2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸を生成させる加水分解工程とを備え、
前記濃縮工程において除去された水を、前記加水分解工程において、前記反応液に加えることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸の製造方法。 - 2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリルを、酸触媒下、水と反応させて、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドを生成させる水和槽と、
前記水和槽において得られた2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドを含む反応液に、水を加えて2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸を生成させる加水分解槽と、
前記加水分解槽において得られた2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸を含む反応液に、アルカリを加えて中和することにより、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸を含む有機相と、水を含む水相とに相分離させ、相分離した有機相を、水相から分離する分液手段と、
前記分液手段において分離された有機相から、前記有機相中に残存する水を除去して、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸を濃縮する濃縮手段と、
前記濃縮手段において除去された水を、前記加水分解槽に供給するための水供給手段と
を備えていることを特徴とする、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸の製造装置。 - 前記加水分解槽において得られた2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸を含む反応液中の低沸点成分を除去する低沸点成分除去手段をさらに備えていることを特徴とする、請求項5に記載の2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸の製造装置。
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