JPH11343278A - チオグリコール酸又はその塩の製造法 - Google Patents

チオグリコール酸又はその塩の製造法

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JPH11343278A
JPH11343278A JP16617998A JP16617998A JPH11343278A JP H11343278 A JPH11343278 A JP H11343278A JP 16617998 A JP16617998 A JP 16617998A JP 16617998 A JP16617998 A JP 16617998A JP H11343278 A JPH11343278 A JP H11343278A
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(57)【要約】 【課題】 チオグリコール酸の自己縮合物を工業的に有
効に利用する。 【解決手段】 チオグリコール酸又はその塩の製造法
は、水酸化ナトリウムなどのアルカリ、又は硫酸などの
酸の存在下、チオグリコール酸縮合物を加水分解する。
前記アルカリの使用量は、チオグリコール酸縮合物に対
して、1〜3当量倍程度である。また、酸を用いる場合
の酸の使用量は、チオグリコール酸縮合物に対して、
0.01〜1当量倍程度である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、チオグリコール酸
縮合物を加水分解してチオグリコール酸又はその塩を製
造する方法に関する。チオグリコール酸は、化粧品工業
においてパーマネント溶剤用として広く用いられてい
る。また、多くの有機化合物の原料の一つとしても有用
であり、さらに、塩化ビニル樹脂などの安定化剤として
も利用されている。
【0002】
【従来の技術】チオグリコール酸の製造方法として、こ
れまで種々の方法が提案されてきた。例えば、カリウス
はモノクロロ酢酸と硫化水素カリウムとを反応させるこ
とによりチオグリコール酸を製造している[Ann. (186
2), 124, 43]。この方法は、チオグリコール酸の工業
的製造法の基本となるものである。その後、反応での選
択性および収率の向上を図るために、応用研究がなされ
ている。例えば、ツエンゲルらは、原料水溶液中の原料
濃度が高くても、高収率でチオグリコール酸が得られる
ことを見出した(特開昭50−71622号公報)。こ
のように、反応における検討はこれまで比較的多く実施
されてきたものの、チオグリコール酸の精製法について
は、さほど多くの検討はなされていない。
【0003】チオグリコール酸の一般的な精製方法とし
て、反応で生成したチオグリコール酸の塩を硫酸により
遊離化し、次いでジイソプロピルエーテルなどの溶剤で
抽出し、最後にその溶剤を蒸発させ、残渣としてチオグ
リコール酸を得る方法が知られている。木村らは、上記
抽出溶媒によりチオグリコール酸を抽出した後、その溶
剤を蒸発除去する際の操作方法に関して検討を行い、抽
出溶剤を蒸発させる際に水分を共存させることにより、
チオグリコール酸縮合物の生成が抑制されることを見出
している(特開平2−72155号公報)。しかし、チ
オグリコール酸は、化粧品分野およびポリマー添加剤と
して使用されており、高純度の品質が要求される。した
がって、上記方法で得られる溶剤蒸発後の残渣にはター
ル分などの高沸分が含まれているため、そのまま製品と
して使用することはできない。
【0004】そこで、チオグリコール酸自身を何らかの
方法により蒸発させ、この高沸分を除去する必要があ
る。ここで問題となるのが、チオグリコール酸の熱不安
定性である。すなわち、チオグリコール酸は、分子内に
−SHおよび−COOHの両方の官能基を有しており、
そのため、下記式(1)及び(2)
【化1】 (式中、nは2以上の整数を示す)
【化2】 に示されるように、分子間自己縮合を起こしやすい。例
えば、特公平7−59489号公報には、一般にチオグ
リコール酸を蒸留する方法では、チオグリコール酸の脱
水縮合物が蒸留残分として多量に残ることが記載されて
いる。
【0005】この自己縮合反応は、温度が高温であれば
あるほど顕著となるが、室温であっても徐々に進行す
る。このように、チオグリコール酸の自己縮合には温度
依存性があることから、真空度を上げ、少しでも低温で
蒸発が可能なようにすることはもちろんのこと、熱履歴
を低減できる蒸発器(例えば、薄膜式蒸発器等)を選定
することも重要である。しかし、抽出溶剤留去後のチオ
グリコール酸残渣を蒸発させてチオグリコール酸を留出
させる際、前記自己縮合物の副生を完全に抑えることは
不可能であり、副生した縮合物はチオグリコール酸蒸発
後の残渣として、産業廃棄物等として廃棄せざるを得な
かった。
【0006】前記特公平7−59489号公報には、チ
オグリコール酸若しくはその水溶液又はチオグリコール
酸塩の水溶液を減圧下で水蒸気蒸留して、脱臭チオグリ
コール酸若しくはその塩を含有するパーマネントウェー
ブ剤を得る方法が開示されている。この方法によれば、
温度を低くできるので、精製時におけるチオグリコール
酸の自己縮合をある程度抑制できる。しかし、この方法
では、得られるチオグリコール酸に水分が含まれてお
り、用途がパーマネントウェーブ剤に限定される。ま
た、水蒸気蒸留であることから、製造能力の低下は避け
られない。さらに、前記のように、チオグリコール酸の
自己縮合物の副生を完全に抑制することは困難である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明の
目的は、チオグリコール酸の自己縮合物を工業的に有効
に利用できる方法を提供することにある。本発明の他の
目的は、チオグリコール酸の製造プロセス全体における
チオグリコール酸の収率を向上し、チオグリコール酸の
製造コストを低減できる方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記目的
を達成するため鋭意検討した結果、チオグリコール酸の
自己縮合物を特定成分の存在下で加水分解すると、チオ
グリコール酸が良好な収率で生成することを見いだし、
本発明を完成した。
【0009】すなわち、本発明のチオグリコール酸又は
その塩の製造法では、アルカリ又は酸の存在下、チオグ
リコール酸縮合物を加水分解する。
【0010】
【発明の実施の形態】前記チオグリコール酸縮合物に
は、下記式(3)
【化3】 (式中、nは2以上の整数を示す)で表される鎖状縮合
物又はその塩、及び式(4)
【化4】 で表される環状縮合物(シクロマー)が含まれる。
【0011】前記nは、2以上の整数であればよいが、
通常2〜10、特に2〜4程度である。前記鎖状縮合物
の塩としては、特に限定されず、例えば、アルカリ金属
塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、有機塩基と
の塩などが挙げられる。チオグリコール酸縮合物は、単
一化合物であってもよく、2種以上の混合物であっても
よい。
【0012】チオグリコール酸縮合物は、例えば、チオ
グリコール酸又はその塩の製造プロセスにおいて得られ
る。特に、チオグリコール酸精製工程の蒸留残渣として
得られる場合が多い。
【0013】本発明では、アルカリ又は酸を加水分解促
進剤として使用する。前記アルカリとしては、水溶液中
でアルカリ性を示す物質であればよく、例えば、水酸化
リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのア
ルカリ金属水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、
炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素ナト
リウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属炭酸水素
塩、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バ
リウムなどのアルカリ土類金属水酸化物、炭酸マグネシ
ウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムなどのアルカリ土
類金属炭酸塩、及びアンモニアなどの無機塩基;トリエ
チルアミンなどの有機塩基などが挙げられる。好ましい
アルカリには、無機塩基、特に水溶性の無機塩基、例え
ばアルカリ金属水酸化物などが含まれる。なかでも水酸
化ナトリウムなどが好ましい。アルカリは、単独で又は
2種以上混合して使用できる。
【0014】前記酸としては、塩酸、塩化水素、硫酸、
硝酸、リン酸などの無機酸;メタンスルホン酸、トリフ
ルオロメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼン
スルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスル
ホン酸などのスルホン酸類;酢酸などのカルボン酸;陽
イオン交換樹脂などが挙げられる。好ましい酸には、強
酸、特に、塩酸、塩化水素、硫酸などの無機酸、p−ト
ルエンスルホン酸などのスルホン酸類、強酸性陽イオン
交換樹脂などが含まれる。酸は、1種又は2種以上混合
して使用できる。
【0015】加水分解反応は、前記チオグリコール酸縮
合物を、水の存在下で前記アルカリ又は酸と接触させる
ことにより行われる。水は、チオグリコール酸縮合物に
対して1当量倍以上あればよいが、通常過剰量(例え
ば、2当量倍以上、好ましくは5当量倍以上)使用す
る。水を溶媒として用いてもよい。なお、本明細書にお
いて、当量とは、チオグリコール酸1モルに対応する量
を意味する。
【0016】また、溶媒として、反応に不活性な溶媒、
例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール類;
テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエー
テルなどのエーテル類;ヘキサン、オクタンなどの脂肪
族炭化水素類;シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素
類;ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素類;塩化
メチレン、クロロホルム、クロロベンゼンなどのハロゲ
ン化炭化水素類などを用いることもできる。好ましい溶
媒は水溶性溶媒である。なお、反応を2層系で行うこと
もできる。
【0017】加水分解促進剤としてアルカリを用いる場
合のアルカリの使用量は、チオグリコール酸縮合物に対
して、例えば1〜3当量倍、好ましくは1.3〜2.5
当量倍、さらに好ましくは1.8〜2.2当量倍程度で
ある。なお、チオグリコール酸縮合物が、式(3)で表
される化合物と前記アルカリとの塩を含む場合には、こ
のような塩に対応するアルカリの量も前記アルカリ使用
量に加算するものとする。また、加水分解に付す被処理
物中に、遊離のチオグリコール酸が含まれている場合に
は、該チオグリコール酸を対応する塩に変換するための
アルカリが別に必要となる。
【0018】加水分解促進剤として酸を用いる場合の酸
の使用量は、触媒量であればよく、例えば、チオグリコ
ール酸縮合物に対して0.01〜1当量倍、好ましくは
0.05〜0.5当量倍程度である。なお、チオグリコ
ール酸縮合物が、式(3)で表される化合物とアルカリ
との塩を含む場合には、このような塩を遊離化するのに
必要な量の酸が別に必要である。また、加水分解に付す
被処理物中に、チオグリコール酸とアルカリとの塩が含
まれている場合にも、該チオグリコール酸の塩を遊離化
するための酸を別途必要とする。
【0019】加水分解反応の反応温度は、例えば10〜
150℃、好ましくは20〜100℃、さらに好ましく
は40〜90℃程度である。反応は、通常常圧で行われ
るが、加圧下で行ってもよい。前記加水分解促進剤の量
が少ない場合や反応温度が低い場合には、加水分解速度
が低下して、反応に長時間を要するか、又は分解率が低
下しやすい。
【0020】反応は、回分式、半回分式、連続式の何れ
の方式で行ってもよい。なお、加水分解促進剤を連続的
に反応系に供給する場合、加水分解促進剤の供給量を、
反応系のpHを監視することにより制御することができ
る。
【0021】本発明の方法では、アルカリ又は酸の作用
によりチオグリコール酸縮合物の加水分解が著しく促進
され、チオグリコール酸(酸を加水分解促進剤として用
いた場合)又はその塩(アルカリを加水分解促進剤とし
て用いた場合)が効率よく生成する。生成したチオグリ
コール酸又はその塩は、必要に応じて、塩形成又は遊離
化した後、周知乃至公知の分離精製手段、例えば、濾
過、pH調整(塩の形成又は遊離化)、濃縮、蒸留、抽
出、晶析、再結晶などに付すことにより、高純度品とし
て又は溶液として得ることができる。また、反応混合液
を、そのまま、又は必要に応じて、適当に希釈又は濃縮
したり、塩形成又は遊離化処理した後、通常のチオグリ
コール酸製造工程にリサイクルすることにより、製品化
することもできる。上記塩形成により得られるチオグリ
コール酸の塩には、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ
土類金属塩、アンモニウム塩、アミン(例えば、エタノ
ールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミ
ンなど)との塩などが含まれる。また、生成したチオグ
リコール酸又はその塩をリサイクルするチオグリコール
酸製造工程としては、特に限定されず、例えば、モノク
ロロ酢酸又はその塩と硫化水素カリウムなどの硫化水素
アルカリ金属塩(若しくはアルカリ土類金属塩)又は多
硫化ナトリウムなどの多硫化アルカリ金属塩(若しくは
アルカリ土類金属塩)とからチオグリコール酸又はその
塩を製造する工程(そのうち、特に精製工程)などが挙
げられる。
【0022】
【発明の効果】本発明の方法によれば、チオグリコール
酸精製工程などで生じたチオグリコール酸縮合物を、効
率よくチオグリコール酸又はその塩に変換できるので、
資源を有効利用できるだけでなく、環境汚染を低減でき
る。また、チオグリコール酸又はその塩の製造プロセス
全体におけるチオグリコール酸又はその塩の収率が増大
し、チオグリコール酸又なその塩の製造における原単位
(原料利用率)が向上するため、製造コストを大きく低
減できる。
【0023】
【実施例】以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細
に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定
されるものではない。
【0024】実施例1 加水分解槽として、撹拌装置を装備した1リットルのジ
ャケット付きガラス容器を使用した。この加水分解槽に
予め26重量%苛性ソーダ水溶液1リットルを仕込み、
ジャケットに温水を流入して60℃とした。そこに、チ
オグリコール酸製造プロセスのうち精製工程で得られた
チオグリコール酸蒸発残渣(チオグリコール酸縮合物を
含有)と26重量%苛性ソーダ水溶液とを、それぞれ9
20g/時、3040g/時の速度で連続的に滴下し
[NaOH/チオグリコール酸縮合物(チオグリコール
酸換算でのモル比=当量比)=2.0]、オーバーフロ
ーした液(滞留時間:70分)を受け槽に受けた。加水
分解温度が89℃になるように、ジャケットに流入する
温水の温度を調節した。加水分解槽の液組成が平衡に達
するまでこの操作を続け、その後、受け槽に流出してく
る液をサンプリングし、組成分析を行った。その結果、
チオグリコール酸縮合物は完全に加水分解され、100
%がチオグリコール酸ナトリウムに変換されていた。な
お、使用した前記チオグリコール酸蒸発残渣の組成は、
チオグリコール酸:44.5重量%、前記式(4)で表
されるシクロマー:5.9重量%、前記式(3)で表さ
れる鎖状縮合物のうちn=2の化合物:27.5重量
%、n=3の化合物:10.4重量%、n=4の化合
物:7.1重量%、その他:4.6重量%であった。
【0025】実施例2 チオグリコール酸蒸発残渣と26重量%苛性ソーダ水溶
液とを、それぞれ1130g/時、2830g/時の速
度で連続的に滴下した[NaOH/チオグリコール酸縮
合物(チオグリコール酸換算でのモル比=当量比)=
1.5]以外は、実施例1と同様の操作を行った。その
結果、チオグリコール酸縮合物の分解率は65%であ
り、分解生成物はすべてチオグリコール酸ナトリウムで
あった。
【0026】実施例3 加水分解温度を50℃とした以外は、実施例2と同様の
操作を行った。その結果、チオグリコール酸縮合物の分
解率は43%であり、分解生成物はすべてチオグリコー
ル酸ナトリウムであった。
【0027】実施例4 実施例1で用いたのと同様のチオグリコール酸蒸発残渣
と30重量%硫酸水溶液とを1:1(重量比)の割合で
混ぜ、80℃で20時間放置したところ、チオグリコー
ル酸縮合物の80%が分解し、チオグリコール酸に変換
されていた。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルカリ又は酸の存在下、チオグリコー
    ル酸縮合物を加水分解することを特徴とするチオグリコ
    ール酸又はその塩の製造法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2001064251A (ja) * 1999-08-23 2001-03-13 Sakai Chem Ind Co Ltd メルカプトカルボン酸類の製造方法
JP2004091417A (ja) * 2002-09-02 2004-03-25 Japan Science & Technology Corp チオエステル化合物の加水分解反応方法とチオアセタール化反応方法

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