JP2007238522A - 炭酸エステルの製造法 - Google Patents

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【課題】 本発明は、炭酸ジアルキルと脂肪族アルコールを液相でエステル交換反応させて炭酸エステルを製造する方法において、従来技術にある改善すべき点が解決された工業的に有利な炭酸エステルの製造法を提供することを課題とする。即ち、本発明は、反応後に触媒の中和や触媒の除去などの煩雑な操作をすることなく目的物を蒸留分離することができ、また、高反応速度で目的物を生成させることができる、簡便かつ工業的に好適な炭酸エステルの製造法を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明の課題は、炭酸ジアルキルと脂肪族アルコールを4級アンモニウム塩の添加下にエステル交換反応させることを特徴とする、炭酸エステルの製造法により解決される。
【選択図】 図1

Description

本発明は、炭酸ジアルキルと脂肪族アルコールを液相でエステル交換反応させて炭酸エステルを製造する方法に関する。更に詳しくは、対称炭酸ジアルキルと脂肪族アルコールを液相でエステル交換反応させて非対称炭酸ジアルキルを生成させる炭酸エステルの製造方法、及び、非対称炭酸ジアルキルと脂肪族アルコールを液相でエステル交換反応させて対称炭酸ジアルキルを生成させる炭酸エステルの製造法に関する。
従来、炭酸エステルを製造する方法として、炭酸ジアルキルと脂肪族アルコールを触媒存在下に液相でエステル交換反応させて炭酸エステル(非対称炭酸ジアルキル、対称炭酸ジアルキル)を生成させる方法が知られており、例えば、金属アルコラート、アルカリ金属水酸化物等の強塩基(特許文献1)、アルカリ金属炭酸塩(特許文献2)、IIIB族元素の酸化物(特許文献3)などを触媒として用いる方法が提案されている。
しかし、強塩基を用いる方法では、反応後に触媒を完全に失活させなければ、生成物の蒸留分離等の後工程で逆反応が起ったり副生物も生成してくるという問題があった。このため、中和処理のような煩雑な工程が余分に必要となり、それに伴って不要な塩が併産されるなどの問題も生じていた。また、アルカリ金属炭酸塩を用いる方法では、大部分の触媒は濾過により分離できることから反応後に中和処理等をする必要はないものの、触媒やアルコールの種類によっては微量のアルカリ金属炭酸塩が溶解することがあり、その場合はこれを吸着剤等によって除去しなければ強塩基を用いる場合と同様の問題が起っていた。更に、IIIB族元素の酸化物を用いる方法でも、触媒やアルコールの種類によってはアルカリ金属炭酸塩を用いる場合と同様の問題があった。このように、従来の方法は満足できるものではなく、工業的に改善すべき点が残されていた。
特開平7−10811号公報 特開平6−166660号公報 特開平9−118652号公報
本発明は、炭酸ジアルキルと脂肪族アルコールを液相でエステル交換反応させて炭酸エステルを製造する方法において、前記のような従来技術にある改善すべき点が解決された工業的に有利な炭酸エステルの製造法を提供することを課題とする。即ち、本発明は、反応後に触媒の中和や触媒の除去などの煩雑な操作をすることなく目的物を蒸留分離することができ、また、高反応速度で目的物を生成させることができる、簡便かつ工業的に好適な炭酸エステルの製造法を提供することを課題とする。
本発明の課題は、以下の発明により解決される。
1)炭酸ジアルキルと脂肪族アルコールを4級アンモニウム塩の添加下にエステル交換反応させることを特徴とする、炭酸エステルの製造法。
2)対称炭酸ジアルキルとそのアルキル基とは異なるアルキル基を有する脂肪族アルコールを反応させて非対称炭酸ジアルキルを生成させる、前記1)の炭酸エステルの製造法。
3)非対称炭酸ジアルキルとそのアルキル基の一方と同一のアルキル基を有する脂肪族アルコールを反応させて対称炭酸ジアルキルを生成させる、前記1)の炭酸エステルの製造法。
4)150℃以上の高温液相又は超臨界相状態でエステル交換反応させる、前記1)〜3)のいずれかの炭酸エステルの製造法。
5)反応温度が生成物を蒸留分離する蒸留操作の温度範囲より高温の領域にある、前記1)〜3)のいずれかの炭酸エステルの製造法。
6)反応終了後に反応液を蒸留装置に供給し、前記エステル交換反応の反応温度範囲より低温の領域で蒸留操作を行って生成物を蒸留分離する、前記1)〜3)のいずれかの炭酸エステルの製造法。
本発明により、炭酸ジアルキルと脂肪族アルコールを液相でエステル交換反応させる炭酸エステルの製造方法において、従来技術にある改善すべき点が解決された工業的に有利な炭酸エステルの製造方法を提供することができる。即ち、本発明によれば、4級アンモニウム塩を触媒として用いて、特に高温領域で炭酸ジアルキルと脂肪族アルコールを液相又は超臨界相状態でエステル交換反応させることによりエステル交換反応を効率よく進行させることができるので、高反応速度で目的物を生成させることが可能になる。また、低温領域(エステル交換反応の反応温度より低い温度範囲)で蒸留操作を行うことにより、触媒を存在させたままでエステル交換反応を実質的に進行させることなく目的物を蒸留分離できるので、反応後に触媒の中和又は除去などの煩雑な操作をすることなく非対称炭酸ジアルキル等の炭酸エステルを容易に得ることができる。本発明は、このように炭酸エステルを簡便かつ工業的に好適な方法で製造できるものである。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明において、炭酸ジアルキルと脂肪族アルコールとのエステル交換反応は、以下の反応式で表すことができる。即ち、反応式(1)のように、対称炭酸ジアルキル[I]と脂肪族アルコールをエステル交換反応させて、炭酸エステルとして非対称炭酸ジアルキル[II]を生成させる反応と、反応式(2)のように、非対称炭酸エステル[II]と脂肪族アルコールをエステル交換反応させて、炭酸エステルとして対称炭酸ジアルキル[III]を生成させる反応で表される。
Figure 2007238522
反応式(1)において、炭酸ジアルキル[I]は、同一のアルキル基(R)を有する対称炭酸ジアルキルであることが好ましく、該炭酸ジアルキルと反応する脂肪族アルコールは、対称炭酸ジアルキルが有するアルキル基とは異なるアルキル基(R)を有する脂肪族一価アルコールであることが好ましい。生成する非対称炭酸ジアルキル[II]は異種のアルキル基(R、R)を有する。また、反応式(2)において、炭酸ジアルキル[II]はこの非対称炭酸ジアルキルであり、該炭酸ジアルキルと反応する脂肪族アルコールは、非対称炭酸ジアルキルのアルキル基の一方と同一のアルキル基(R)を有する反応式(1)におけると同一のものであることが好ましい。生成する対称炭酸ジアルキル[III]は同一のアルキル基(R)を有する。
前記反応式において、アルキル基(R、R)としては、直鎖状、分岐状、環状の各種アルキル基が挙げられ、炭素数は特に制限されるものではない。具体的には、例えば、直鎖状アルキル基として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ドデシル基など、分岐状アルキル基として、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソアミル基、sec−アミル基、tert−アミル基、ネオペンチル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基など、環状アルキル基として、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロドデシル基などをそれぞれ挙げることができる。本発明では、例えば、炭酸ジアルキル[I]として炭酸ジメチル、該炭酸ジアルキルと反応する脂肪族アルコールとしてエタノールが好ましく挙げられ、非対称炭酸ジアルキル[II]として炭酸メチルエチル、該炭酸ジアルキルと反応する脂肪族アルコールとしてエタノールが好ましく挙げられる。
本発明では、4級アンモニウム塩を触媒として(4級アンモニウム塩の添加下で)エステル交換反応が行われる。4級アンモニウム塩としては、下式で表される有機4級アンモニウム塩が好ましく、式中、R、R、R、Rは互いに同一又は異なる炭化水素基を表し、Xはカウンターアニオン(OHを除く)を表す。この炭化水素基には、アルキル基(好ましくは炭素数1〜18)、アラルキル基(好ましくは炭素数7〜11)、アリール基(好ましくは炭素数6〜10)が挙げられ、それぞれ、反応に関与しない置換基を有していてもよく、炭素鎖に環構造や反応に関与しないヘテロ原子を有していてもよい。また、カウンターアニオンには、Cl、Br等のハロゲンイオン、硝酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、チオアセテートイオン等が挙げられる。この中でも、炭化水素基にはアルキル基が好ましく、カウンターアニオンにはハロゲンイオンが好ましい。
Figure 2007238522
4級アンモニウム塩として、具体的には、例えば、テトラメチルアンモニウム塩、テトラペンチルアンモニウム塩、テトラヘキシルアンモニウム塩、テトラヘプチルアンモニウム塩、テトラオクチルアンモニウム塩、テトラデシルアンモニウム塩、テトラドデシルアンモニウム塩、テトラヘキサデシルアンモニウム塩や、
トリメチルオクタデシルアンモニウム塩、トリエチルメチルアンモニウム塩、トリエチルヘキシルアンモニウム塩、トリブチルメチルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩、トリドデシルメチルアンモニウム塩、トリメチルフェニルアンモニウム塩等が挙げられ、これら4級アンモニウム塩のカウンターアニオンには前記ハロゲンイオンが好ましく挙げられる。
本発明のエステル交換反応において、脂肪族アルコールの使用量は、目的の炭酸エステルが効率よく得られる範囲であれば特に制限されないが、炭酸ジアルキル1モルに対して、0.1〜100モル、更には0.5〜20モルの範囲であることが好ましい。また、触媒の使用量は、炭酸ジアルキル1モルに対して、0.00001〜0.1モル、更には0.0001〜0.01モルの範囲であることが好ましい。
本発明では、高温液相又は超臨界相状態でエステル交換反応させることが好ましく、その際の反応温度は150℃以上であることが好ましい。反応温度は、更に好ましくは150〜400℃、特に好ましくは170〜400℃、最も好ましくは190〜320℃の範囲とされる。また、反応温度は、エステル交換反応が実質的に進行しない温度で生成物を蒸留分離できるように、生成物を蒸留分離する蒸留操作の温度範囲より高温の領域にあることが好ましい。
また、反応圧力は、反応器内を高温液相又は超臨界相状態に維持して反応させることができる範囲であることが好ましく、100MPaG以下、更には1〜50MPaG、特に1〜30MPaGの範囲であることが好ましい。この反応圧力は、熱力学的状態図(例えば、AspenTech社製AspenPlusによる)を基に反応温度に応じて適宜定めることができる。反応時間は特に長時間を要する必要はなく、通常は10分以内であればよく、触媒濃度又は反応温度を上げれば更に短時間であってもよい。
反応器は高温下に液相又は超臨界相状態で反応を行うことができるものであれば特に制限されず、例えば、管型反応器(プラグフロー型反応器)、連続槽型反応器等の連続式反応器やバッチ式反応器が挙げられる。その中でも短時間に連続的に反応を行うことができるプラグフロー型反応器が特に好ましい。即ち、本発明では、前記原料及び触媒の混合液をプラグフロー型の反応器に連続的に供給して前記温度及び圧力下で液相又は超臨界相状態でエステル交換反応を行うことが好ましい。
なお、反応溶媒は、後処理の容易さ及び製造コストの観点からすれば特に用いる必要はないが、必要に応じて用いることもできる。溶媒を用いる場合、溶媒は反応に影響を与えないものであればよく、例えば、脂肪族炭化水素(ヘキサン、へプタン、オクタン、シクロヘキサン等)が挙げられる。
反応終了後、非対称炭酸ジアルキル等の目的の炭酸エステル(生成物)は、得られた反応液から触媒を分離することなくそのまま蒸留によって分離することができる。即ち、本発明では、中和、水洗、通気等の触媒の除去操作を特に行うことなく、反応液をエステル交換反応の反応温度範囲より低い温度(工業的には好ましくは蒸留操作の温度範囲)に冷却して蒸留装置に供給し、該反応温度範囲より低温の領域(エステル交換反応が実質的に進行しない温度範囲)で蒸留操作を行って、低沸留分を留去した後に目的物を蒸留分離すればよい。蒸留操作は、例えば、蒸留塔の塔底温度を130℃以下(好ましくは100℃以下、更に好ましくは80℃以下)として行うことができる。なお、蒸留は、常圧蒸留、減圧蒸留、加圧蒸留など、公知の手段及び装置で行うことができる。
次に実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、DMCは炭酸ジメチル、MECは炭酸メチルエチル、DECは炭酸ジエチル、EtOHはエタノールを表す。
〔実施例1〕
内径2mm、長さ64cmのSUS製チューブ状反応管(容積2.0mL)を恒温槽内に設置し、反応管に備えた熱電対でモニターしながら、反応温度が200℃になるように恒温槽の温度を制御した。次いで、恒温槽外の反応管出口に接続した圧力調整弁で反応圧力を20MPaGに制御して反応管内を液相状態に維持し、DMCとEtOHとトリオクチルメチルアンモニウムクロライドの原料混合液(DMC:EtOH:(C17CHNCl(モル比)=1:1:0.004)を0.23mL/minの速度でポンプにより反応管に送液した。このとき、200℃の一定温度領域における反応液の滞留時間は約5分であり、図1に示した熱力学状態図より反応管内は液相状態であった。
圧力調整弁より排出された反応液を捕集してガスクロマトグラフィーにより分析したところ、生成した炭酸エステルの組成は、DMC45.2モル%、MEC48.1モル%、DEC6.7モル%であった。
〔実施例2〜7〕
反応温度を表1記載の温度にそれぞれ変えて反応管内を液相又は超臨界相状態に維持した以外は、実施例1と同様に反応を行った。生成した炭酸エステルの組成を表1に示す。
Figure 2007238522
炭酸メチルエチル等の非対称炭酸ジアルキルは、リチウムイオン二次電池用電解液、溶剤、ファインケミカルズ製造原料として有用な化合物である。
AspenTech社製AspenPlusによる、DMC(27.0重量%)−MEC(38.4重量%)−DEC(8.6重量%)−MeOH(12.2重量%)−EtOH(13.2重量%)系の熱力学状態図(P−T曲線)を表す。この場合の炭酸エステルの組成は、DMC40.4モル%、MEC49.8モル%、DEC9.8モル%である。

Claims (6)

  1. 炭酸ジアルキルと脂肪族アルコールを4級アンモニウム塩の添加下にエステル交換反応させることを特徴とする、炭酸エステルの製造法。
  2. 対称炭酸ジアルキルとそのアルキル基とは異なるアルキル基を有する脂肪族アルコールを反応させて非対称炭酸ジアルキルを生成させる、請求項1記載の炭酸エステルの製造法。
  3. 非対称炭酸ジアルキルとそのアルキル基の一方と同一のアルキル基を有する脂肪族アルコールを反応させて対称炭酸ジアルキルを生成させる、請求項1記載の炭酸エステルの製造法。
  4. 150℃以上の高温液相又は超臨界相状態でエステル交換反応させる、請求項1〜3のいずれか記載の炭酸エステルの製造法。
  5. 反応温度が生成物を蒸留分離する蒸留操作の温度範囲より高温の領域にある、請求項1〜3のいずれか記載の炭酸エステルの製造法。
  6. 反応終了後に反応液を蒸留装置に供給し、前記エステル交換反応の反応温度範囲より低温の領域で蒸留操作を行って生成物を蒸留分離する、請求項1〜3のいずれか記載の炭酸エステルの製造法。
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