JP2007233219A - プライマー組成物、およびプラスチックレンズ - Google Patents

プライマー組成物、およびプラスチックレンズ Download PDF

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Abstract

【課題】外観が良好となり、プラスチックレンズ基材との密着性も良好となるプラスチックレンズを提供する。
【解決手段】プラスチックレンズ基材と、このプラスチックレンズ基材上に形成されたプライマー層と、このプライマー層上に形成されたハードコート層とを有するプラスチックレンズにおける前記プライマー層を形成するためのプライマー層組成物であって、金属酸化物ゾルと、ポリビニルアルコールとを含むことを特徴とするプライマー組成物、および係るプライマー層を有するプラスチックレンズ。
【選択図】なし

Description

本発明は、プラスチックレンズに関し、特にプラスチックレンズの基板上に形成されたプライマー層を形成するプライマー組成物に関する。
従来、メガネレンズなどに用いられるプラスチックレンズの耐衝撃性、耐水性、耐光性を良好にするため、プラスチックレンズの表面にプライマー層を形成する構成が知られている(例えば、特許文献1)。
この特許文献1に記載のものは、プラスチックレンズの基板上にプライマー層を形成し、このプライマー層上にハードコート層を形成する。このプライマー層は、水性化アクリル−ウレタン樹脂と酸化物微粒子とを主成分として組成されている。
特開2004−13127号公報(第3頁ないし第10頁参照)
ところで、上記特許文献1に記載のような従来のプラスチックレンズのプライマー層では、水性化アクリル−ウレタン樹脂と酸化物微粒子とを主成分としている。しかしながら、このような水性化アクリル−ウレタン樹脂に代表されるポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂などを用いてプライマー層を形成する場合、酸化物微粒子と上記のようなポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂との相性が悪く、成膜時に白濁してしまうおそれがあり、外観が悪くなるという問題が挙げられる。また、プラスチックレンズの基材として特にチオウレタン系、チオエポキシケイ素材を用いた場合プライマー層とプラスチックレンズ基材との相溶が悪く、密着性が悪化するため、プラスチックレンズ基材の選定が困難となるという問題も挙げられる。
本発明は上記のような問題に鑑み、外観が良好となり、プラスチックレンズ基材との密着性も良好となるプライマー組成物、およびプラスチックレンズを提供することを目的とする。
本発明に係るプライマー組成物は、プラスチックレンズ基材と、このプラスチックレンズ基材上に形成されたプライマー層と、このプライマー層上に形成されたハードコート層とを有するプラスチックレンズにおける前記プライマー層を形成するためのプライマー組成物であって、金属酸化物ゾルと、ポリビニルアルコールとを含むことを特徴とする。
この発明によれば、プライマー層はポリビニルアルコールと金属酸化物ゾルとを含有している。これにより、ポリビニルアルコールが高い親水性を有するため、金属酸化物ゾルとの相溶性が良好となり、白濁の発生を防止できる。また、ポリビニルアルコールが高い凝集力を有するため、プラスチックレンズ基材およびハードコート層との密着性を良好にすることができる。
また、本発明では、前記金属酸化物ゾルの固形分と前記ポリビニルアルコールとの総重量を100とした時、前記ポリビニルアルコールの含有量が、30〜70であることが好ましい。
この発明によれば、ポリビニルアルコールの含有量を上記範囲とすることで、金属酸化物ゾルとポリビニルアルコールとの相溶性を良好にすることができる。換言すれば、ポリビニルアルコールが30未満であると、成膜されず、70を超えると耐水性が悪くなる。
そして、本発明では、プライマー組成物は、更に尿素を含有することが好ましい。
この発明によれば、プライマー組成物に尿素が含有されている。これにより、この尿素がポリビニルアルコールのヒドロキシル基と縮合反応を起こして尿素結合を生成する。この尿素結合は、ポリビニルアルコールの親水性を阻害することなく、ポリビニルアルコールと金属酸化物ゾルとを架橋するので、この架橋によりポリビニルアルコールの凝集力、ポリビニルアルコールおよび金属酸化物ゾルの相溶性、プライマー層とプラスチックレンズ基材との密着性を阻害することなく、良好にプライマー層の膜を生成することができる。
また、本発明では、上記尿素の含有量は、前記金属酸化物ゾル固形分および前記ポリビニルアルコールの総含有量に対して0.01〜0.5倍量であることが好ましい。
この発明によれば、プライマー組成物に含有する尿素は、金属酸化物ゾルの固形分およびポリビニルアルコールの含有量に対して0.01〜0.5倍量であるため、ポリビニルアルコールおよび金属酸化物ゾルを、尿素樹脂の生成による白濁などを防止でき、良好にポリビニルアルコールと金属酸化物ゾルとを架橋できる。換言すれば、尿素の含有量を0.5倍を超えて混合すると、尿素樹脂が生成されることになり、この尿素樹脂は結晶性があるため、膜内で白濁として認識されるから、好ましくない。
そして、本発明に係るプラスチックレンズは、プラスチックレンズ基材と、このプラスチックレンズ基材上に形成されたプライマー層と、このプライマー層上に形成されたハードコード層とを有するプラスチックレンズであって、前記プライマー層は、金属酸化物ゾルとポリビニルアルコールとを含む組成物から形成されたことを特徴とする。
この発明によれば、上記したように、プライマー層の白濁を防止することができ、プラスチックレンズの外観を良好にすることができる。
本発明に係るプラスチックレンズでは、前記プライマー層は、前記金属酸化物ゾルとポリビニルアルコールとを含む組成物中に、更に尿素を含有する組成物から形成されることが好ましい。
この発明によれば、上記した尿素結合が生じ、この尿素結合とプラスチックレンズ基材との親和性が良好であるため、プライマー層とプラスチックレンズ基材との密着性をより向上させることができる。
本発明のプライマー組成物は、上述したように、プラスチックレンズ基材と、このプラスチックレンズ基材上に形成されたプライマー層と、このプライマー層上に形成されたハードコート層とを有するプラスチックレンズにおける前記プライマー層を形成するためのプライマー層組成物であって、金属酸化物ゾルと、ポリビニルアルコールとを含むことを特徴とするものである。
ここで、プラスチックレンズ基材としては、特に限定されないが、(メタ)アクリル樹脂をはじめとして、スチレン樹脂、カーボネート樹脂、アリル樹脂、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂(CR−39)などのアリルカーボネート樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、イソシアネート化合物とジエチレングリコールなどのヒドロキシ化合物との反応で得られたウレタン樹脂、イソシアネート化合物とポリチオール化合物とを反応させたチオウレタン樹脂、分子内に1つ以上のジスルフィド結合を有する(チオ)エポキシ化合物を含有する重合性組成物を硬化して得られる透明樹脂等を例示することができる。これらのプラスチックレンズ基材のうち、イソシアネート化合物とポリチオール化合物とを反応させたチオウレタン樹脂、分子内に1つ以上のジスルフィド結合を有する(チオ)エポキシ化合物を含有する重合性組成物を硬化して得られる透明樹脂が高屈折率のプラスチックレンズ基材として好ましい。イソシアネート化合物とポリチオール化合物とを反応させたチオウレタン樹脂の具体例として、例えばセイコースーパーソブリン(セイコーエプソン株式会社製、商品名、屈折率1.67)に用いられているプラスチックレンズ基材、セイコースーパールーシャス(セイコーエプソン株式会社製、商品名、屈折率1.60)に用いられているプラスチックレンズ基材を例示することができる。また分子内に1つ以上のジスルフィド結合を有する(チオ)エポキシ化合物を含有する重合性組成物を硬化して得られる透明樹脂の具体例として、例えばセイコープレステージ(セイコーエプソン株式会社製、商品名、屈折率1.74)用のプラスチックレンズ基材を例示することができる。
本発明のプライマー組成物を構成するポリビニルアルコールは、プライマー組成物の構成主要樹脂であり、凝集力が高く、プラスチックレンズ基材に対して良好な密着性を有する透明皮膜を形成する。このポリビニルアルコールの膜は、耐水性に乏しく、容易に水に溶解するが、金属酸化物ゾルの表面に存在するヒドロキシル基と脱水縮合させることで、耐水性を向上させることが可能となり、上層にハードコート層を処理する場合にも溶解するなどの不都合を防止することができる。また、ポリビニルアルコールは、金属酸化物ゾルとの相溶性が良好であるため、白濁などが生じず、プラスチックレンズ基材の表面に良好な外観のプライマー層を形成することが可能となる。
このポリビニルアルコールの膜は、ケン化度、重合度を選択することで、たとえばメガネ用プラスチックレンズに形成されるプライマー層に必要な柔軟性、強度を付与することが可能となる。すなわち、このケン化度が高い(ヒドロキシ基比率が高い)と、金属酸化物ゾルとの架橋密度が向上し、また重合度が高いと膜密度が高くなるため、プライマー層の膜を高硬度にすることが可能となる。一方、ケン化度が低いと金属酸化物ゾルとの架橋密度が低下し、重合度が低いと膜密度も低下するため、柔軟なプライマー層を形成することが可能となる。
ここで、メガネレンズとして使用するプラスチックレンズとしては、ポリビニルアルコールのケン化度が70%以上、重合度が500ないし3500のものを用いることが好ましく、より好ましくはケン化度が96%以上、重合度が900ないし2000のものである。ケン化度が70%より低い場合や重合度が500よりも小さい場合、架橋密度および膜密度が低下し、プライマー層が柔らかくなりすぎて耐衝撃性が低下してしまう。また、プライマー層の耐水性も低下し、ハードコート層を成膜する際、溶解するなどの不都合が生じる。さらに、耐水性が悪いことにより、耐久性も低下するなどの傾向がある。一方、重合度が3500よりも大きい場合は、プライマー層の柔軟性が低下するため、耐衝撃性が低下する。また、成膜時には、粘度が増大して平滑な塗膜が得られにくい傾向がある。
本発明のプライマー組成物を構成する金属酸化物ゾルは、プラスチックレンズ基材とプライマー層の屈折率を合わせるために主として用いられている。すなわち、近年のプラスチックレンズ基材の高屈折率化により、屈折率が1.75〜1.59のプラスチックレンズ基材では干渉縞が発生してしまうが、金属酸化物ゾルをこのプライマー層に配合することで、屈折率が調整され、干渉縞が低減される。この金属酸化物ゾルとしては、例えばSi,Al,Sn,Sb,Ta,Ce,La,Fe,Zn,W,Zr,In,Tiから選ばれる金属の1種又は2種以上の金属酸化物ゾル又は複合金属酸化物ゾルを例示することができる。具体的には、SiO,SnO,Sb,CeO,ZrO,TiOの酸化物微粒子を、分散媒たとえば水、アルコール系もしくはその他の有機溶媒にコロイド状に分散させたもの、または、Si,A1,Sn,Sb,Ta,Ce,La,Fe,Zn,W,Zr,In,Tiから選ばれる金属の酸化物の2種以上によって構成される複合微粒子を水、アルコール系もしくはその他の有機溶媒にコロイド状に分散したものを例示することができる。これらの中でも、特に、高い屈折率を有し、光活性の少ないルチル型結晶構造を有するTiOの酸化物微粒子を含む金属酸化物ゾルを用いることが好ましい。いずれも粒子径は約1〜300ミリミクロンが好適である。
この金属酸化物ゾルは、表面にヒドロキシ基が改質されているものが好ましく、これによりポリビニルアルコールとの相溶性が良好になり、脱水縮合によりポリビニルアルコールの耐水性が改善される。これには、金属酸化物の表面を有機ケイ素化合物またはアミン系化合物で処理したものであることが好ましい。この際用いられる有機ケイ素化合物としては具体的には、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランなどが挙げられる。γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランであることが相溶性の観点から、より好ましい。
金属酸化物ゾルの表面改質は、たとえば上記有機ケイ素化合物のアルコール溶液中に金属酸化物微粒子を一定時間浸漬させた後に溶媒を除去するか、あるいは有機ケイ素化合物のアルコール溶液と金属酸化物ゾルとを混合し、一定時間の後に限外ろ過などの方法で混合溶液中の水を分離、濃縮する等の方法で行われる。用いられる有機ケイ素化合物の量は、金属酸化物微粒子の表面に存在する水酸基の量などに応じて適宜設定される。これら有機ケイ素化合物の添加量は無機酸化物微粒子の重量に対して1〜25%程度の範囲内で加えることが好ましい。
また、プライマー組成物における上記ポリビニルアルコールおよび金属酸化物ゾルの固形分との組成比率は、上記したようにポリビニルアルコール/金属酸化物ゾルの固形分が30〜70重量%/70〜30重量%であることが好ましい。ポリビニルアルコールの組成比が30重量%以下となると、プライマー層の膜を形成することが困難となり、ポリビニルアルコールの組成比が70%以上となると、プライマー層の耐水性が悪化する。
そして、プライマー組成物として、上記したように尿素が含有されていることが好ましい。この尿素は、ポリビニルアルコールおよび金属酸化物ゾルのヒドロキシル基との間で縮合反応を起こし、これらのポリビニルアルコールおよび金属酸化物ゾルを架橋する。この縮合反応で生じる尿素結合は、親水性が良好であり、架橋によりポリビニルアルコールの凝集力が低減しない。よって、プライマー組成物の密着性、相溶性を阻害せずに膜強度を調整することが可能となる。特に、プラスチックレンズ基材としてチオウレタン樹脂を用いた場合、尿素結合とこのチオウレタン樹脂との結合状態が似ているため、親和性がより良好になり、プライマー層とプラスチックレンズとの密着性をより向上させることができる。この尿素の混合量としては、上記したように、ポリビニルアルコールおよび金属酸化物ゾルの固形分の総量に対して、0.01ないし0.5倍量であることが好ましく、より好ましくは、0.01ないし0.05倍量である。尿素の混合量が、ポロビニルアルコールおよび金属酸化物ゾルの固形分の総量の0.5倍以上になると、結晶性を有する尿素樹脂が生成されるため、プライマー層の膜内が白濁してしまう。
そして、プライマー層を形成するためのプライマー組成物の溶媒は、ポリビニルアルコールを溶解するための水が含有されていることが好ましい。ただし、溶媒が水のみである場合、揮発性が悪化し、表面張力が高くなるためにプライマー層の外観も悪化する。したがって、この溶媒としては、水にポリビニルアルコールが析出しない程度の親水性有機溶媒を混合することが好ましい。この親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類、グリセリン、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類、アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類などである。親水性有機溶媒は、1種のみでもよく、2種以上を混合させた混合溶媒であってもよい。また、親水性有機溶媒として、好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類である。
また、ポリビニルアルコールと金属酸化物ゾルのヒドロキシル基との縮合反応を促進するため、必要に応じて縮合触媒を混同することも可能である。この触媒としては、ポリビニルアルコールの縮合触媒として用いられるものであれば特に限定されないが、酸、または有機金属化合物が好ましい。具体的には、塩酸、硫酸、硝酸などの酸、過塩素酸、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸マグネシウムなどの過塩素酸類、Cu(II)、Zn(II)、Co(II)、Ni(II)、Be(II)、Ce(III)、Ta(III)、Ti(III)、Mn(III)、La(III)、Cr(III)、V(III)、Co(III)、Fe(III)、Al(III)、Ce(IV)、Zr(IV)、V(IV)などを中心金属原子とするアセチルアセトネート、アミン、グリシンなどのアミノ酸、ルイス酸、有機酸金属塩などが挙げられる。これらの触媒の中でも最も好ましくは、塩酸、Al(III)アセチルアセトネートが挙げられる。
この他、プライマー組成物に必要に応じて、少量の界面活性剤、帯電防止剤、分散染料・油溶染料・傾向染料・顔料、フォトクロミック化合物などを添加し、塗布性を改善することが可能である。調製したプライマー組成物はスピンコート、ディッピングなどの方法でプラスチックレンズ基材に塗布し、乾燥後、加熱硬化させる方法によりプラスチックレンズ基材上にプライマー層を形成することができる。プライマー層の膜厚は0.01〜50μmが好ましい。さらに好ましくは0.1〜5μmが好ましい。プライマー層が薄すぎると耐衝撃性の改善効果は少なく、逆に厚すぎると、面精度が低下する。また本発明のプライマー組成物には、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの従来公知の各種添加剤を含むことが可能である。
本発明のプラスチックレンズは、上記プライマー層の上にハードコート層が形成され、耐擦傷性が付与されている。プライマー層表面に設けるハードコート膜としては、特に限定はないが、下記酸化物微粒子および有機ケイ素化合物を主成分とする組成物を塗布、加熱硬化して得ることができる。
ハードコート膜に用いる酸化物微粒子としては、Si,Al,Sn,Sb,Ta,Ce,La,Fe,Zn,W,Zr,In,Tiから選ばれる金属の1種又は2種以上の酸化物微粒子又は複合微粒子を例示することができる。具体的には、SiO,SnO,Sb,CeO,ZrO,TiOの酸化物微粒子を、分散媒たとえば水、アルコール系もしくはその他の有機溶媒にコロイド状に分散させたもの、または、Si,A1,Sn,Sb,Ta,Ce,La,Fe,Zn,W,Zr,In,Tiから選ばれる金属の酸化物の2種以上によって構成される複合微粒子を水、アルコール系もしくはその他の有機溶媒にコロイド状に分散したものを例示することができる。いずれも粒子径は約1〜300ミリミクロンが好適である。
さらにコーティング液中での分散安定性を高めるためにこれらの微粒子表面を有機ケイ素化合物またはアミン系化合物で処理したものを使用することも可能である。この際用いられる有機ケイ素化合物としては、単官能性シラン、あるいは二官能性シラン、三官能性シラン、四官能性シラン等がある。処理に際しては加水分解性基を未処理で行ってもあるいは加水分解して行ってもよい。また処理後は、加水分解性基が微粒子の−OH基と反応した状態が好ましいが、一部残存した状態でも安定性には何ら問題がない。
またアミン系化合物としてはアンモニウムまたはエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、n−プロピルアミン等のアルキルアミン、ベンジルアミン等のアラルキルアミン、ピペリジン等の脂環式アミン、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンがある。
これら有機ケイ素化合物とアミン化合物の添加量は無機酸化物微粒子の重量に対して1〜25%程度の範囲内で加えることが好ましい。
ハードコート膜に用いる有機ケイ素化合物としては、下記一般式で表される有機ケイ素化合物があげられる。
一般式
Figure 2007233219
上記式中、Xは加水分解性基であり、nは0または1である。これら有機ケイ素化合物はシランカップリング剤とも呼ばれ、ハードコート層のマトリックスを形成する為の成分である。またその種類、量により耐擦傷性を調節することが可能である。また表面処理層全体の密着性を向上させることが可能である。Rは重合可能な反応基を有する有機基であり、ビニル基,アリル基,アクリル基,メタクリル基,エポキシ基,メルカプト基,シアノ基,イソシアノ基,アミノ基等の重合可能な反応基である。Rは炭素数1〜6の炭化水素基であるが、その具体的例としては、メチル基,エチル基,ブチル基,ビニル基,フェニル基等が挙げられる。またX は加水分解可能な官能基でありその具体的なものとして、メトキシ基,エトキシ基,メトキシエトキシ基等のアルコキシ基、クロロ基,ブロモ基等のハロゲン基、アシルオキシ基等が挙げられる。
この有機ケイ素化合物の具体例として、ビニルトリアルコキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、アリルトリアルコキシシラン、アクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、メタクリルオキシプロピルジアルコキシメチルシラン、γ−グリシドオキシプロピルトリアルコキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリアルコキシシラン、メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、γ−アミノプロピルトリアルコキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジアルコキシシラン等があげられる。これらは単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。この有機ケイ素化合物の使用量は、ハードコート組成物の15〜80重量%であることが望ましい。すなわち、15重量%未満であると、無機蒸着膜との密着性が不充分となりやすい。また80重量%を越えると、硬化被膜にクラックを生じさせる原因となり好ましくない。
また同様にハードコート層のマトリックスを形成する為の成分として下記一般式で表される有機ケイ素化合物があげられる。
一般式
Figure 2007233219
具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラアリロキシシラン、テトラキス(2−メトキシエトキシ)シラン、テトラキス(2−エチルブトキシ)シラン、テトラキス(2−エチルヘキシロキシ)シラン等があげられる。これらは単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。また、これら有機ケイ素化合物は無溶媒下または水、アルコール等の溶媒中で、触媒として酸を添加し加水分解して使用する方が好ましい。
またハードコートの成分として下記一般式で表されるジシラン化合物を添加することも有用である。
一般式
Figure 2007233219
(式中、R,Rは炭素数1〜6の炭化水素基である。X,Xは加水分解性基である。Yは、カーボネート基またはエポキシ基を含有する有機基であり、m,nは0または1である。)これらのジシラン化合物は、従来公知の種々の方法で合成することができる。例えば、ジアリルカーボネートとトリクロロシラン等を付加反応させ、その後アルコキシ化させれば得ることができる。または、両末端に付加可能な置換基を持ち、更にその内部にエポキシ基あるいはエポキシ化可能な官能基を含む化合物に、トリクロロシラン等を付加反応させ、その後アルコキシ化させれば得ることができる。これらジシラン化合物は、無溶媒下または水、アルコール等の溶媒中で、触媒として酸を添加し加水分解して使用する方が好ましい。もしくは硬化した後の被膜に酸処理を行なうか、どちらかの方法を取った方がより有効である。
またハードコートの成分として多官能性エポキシ化合物を添加することも有用である。多官能性エポキシ化合物とは、塗料、接着剤、注型用などに広く実用されているもので、例えば過酸化法で合成されるポリオレフィン系エポキシ樹脂、シクロペンタジエンオキシドやシクロヘキセンオキシドあるいはヘキサヒドロフタル酸とエピクロルヒドリンから得られるポリグリシジルエステルなどの脂環式エポキシ樹脂、ビスフェノールAやカテコール、レゾシノールなどの多官能フェノールあるいは(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセロール、ソルビトールなどの多官能アルコールとエピクロルヒドリンから得られるポリグリシジルエーテル、エポキシ化植物油、ノボラック型フェノール樹脂とエピクロルヒドリンから得られるエポキシノボラック、フェノールフタレインとエピクロルヒドリンから得られるエポキシ樹脂、グリシジルメタクリレートとメチルメタクリレートアクリル系モノマーあるいはスチレンなどの共重合体、さらには上記エポキシ化合物とモノカルボン酸含有(メタ)アクリル酸とのグリシジル基開環反応により得られるエポキシアクリレートなどが挙げられる。多官能性エポキシ化合物の具体例としては、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ノナエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ノナプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールヒドロキシヒバリン酸エステルのジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールジグリシジルエーテル、ジグリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールテトラグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールテトラグリシジルエーテル、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジグリシジルエーテル、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリグリシジルエーテル、等の脂肪族エポキシ化合物、イソホロンジオールジグリシジルエーテル、ビス−2,2−ヒドロキシシクロヘキシルプロパンジグリシジルエーテル等の脂環族エポキシ化合物、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、オルトフタル酸ジグリシジルエステル、フェノールノボラックポリグリシジルエーテル、クレゾールノボラックポリグリシジルエーテル等の芳香族エポキシ化合物等が挙げられる。上記した中でも、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリグリシジルエーテル等の脂肪族エポキシ化合物が特に好ましい。
またハードコートを硬化させるための触媒として、過塩素酸,過塩素酸アンモニウム,過塩素酸マグネシウム等の過塩素酸類、Cu(II),Zn(II),Co(II),Ni(II),Be(II),Ce(III),Ta(III),Ti(III),Mn(III),La(III),Cr(III),V(III),Co(III),Fe(III),Al(III),Ce(IV),Zr(IV),V(IV)等を中心金属原子とするアセチルアセトネート、アミン,グリシン等のアミノ酸、ルイス酸、有機酸金属塩等が挙げられる。この中でも最も好ましい硬化触媒としては、過塩素酸マグネシウム、Al(III),Fe(III)のアセチルアセトネートが挙げられる。
このようにして得られるハードコート用組成物は、必要に応じ、溶剤に希釈して用いることができる。溶剤としては、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、芳香族類等の溶剤が用いられる。
ハードコート用組成物は、プライマー層上に、スピンコート、ディッピングなどの方法で塗布し、乾燥後、加熱硬化させる方法によりプライマー層上にハードコート層を形成することができる。
ハードコート層の膜厚は0.01〜50μmが好ましい。さらに好ましくは0.1〜5μmが好ましい。ハードコート層が薄すぎると耐擦傷性の改善効果は少なく、逆に厚すぎると、面精度が低下する。またハードコート層には、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの従来公知の各種添加剤を含むことが可能である。
本発明のプラスチックレンズは、かかるプライマー層の上にハードコート層が形成され、さらに表面反射を防止するための反射防止膜が形成される場合がある。この反射防止膜としては、特に限定はないが、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等で形成することができる。真空蒸着法においては、蒸着中にイオンビームを同時に照射するイオンビームアシスト法を用いてもよい。また、膜構成としては、単層反射防止膜もしくは多層反射防止膜のどちらを用いてもかまわない。使用できる蒸着物質としては、例えば、SiO、SiO、ZrO、TiO、TiO、Ti、Ti、Al、Ta、CeO、MgO、Y、SnO、MgF、WOなどを例示することができ、これらの無機物を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。特に、プラスチックレンズ用としては、蒸着温度を低くすることができるZrO、SiO、TiOが好ましく使用できる。
本発明のプラスチックレンズは、かかるプライマー層の上にハードコート層、反射防止膜が形成され、さらに反射防止膜上に水やけの防止、および汚れの付着の防止を目的とした撥水膜が形成される場合がある。この撥水膜としては、特に限定はないが、ハロゲン化シラン化合物、フッ素基含有炭化水素系化合物、および疎水性の高い官能基(フェニル基、長鎖アルキル基等)をもつ有機シラン化合物等が用いられる。これらの物質は、溶媒を用いてスピンコート、ディッピングなどの方法で塗布し乾燥する方法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等で形成することができる。
このように、プラスチックレンズ基材上に、上記プライマー層、ハードコート層、反射防止膜、撥水膜を形成したプラスチックレンズは、ハードコート層によって耐擦傷性が付与され、反射防止膜によって光透過率の向上やゴースト等の除去が行われ、撥水膜によって水やけの防止および汚れの付着が防止され、さらにプライマー層によって、ハードコート層や反射防止膜のプラスチックレンズ基材への密着性が良好であると共に、ハードコート層と反射防止膜を設けたことにより本来低下する耐衝撃性が著しく改善され、干渉縞等の外観も良く、耐候性、耐水性が良好である高品質なプラスチックレンズである。
また、プライマー層が水性化アクリル−ウレタン樹脂を成分としているため、プライマー層形成工程では有機溶剤の不要化が可能であり、作業環境を良好にすることができる。
本発明のプラスチックレンズは、プラスチックレンズ基材上に形成されたプライマー層において、ポリビニルアルコール、および金属酸化物ゾルを含有しているため、透明性、密着性に優れる。また、プライマー層は架橋剤として尿素を含有してもよく、これによりさらに膜強度を高めることができる。
以下、本発明のプライマー組成物及びプラスチックレンズの実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
(1)プライマー組成物の形成
平均重合度1000の完全ケン化型ポリビニルアルコール(和光純薬株式会社製)100gを純粋900gに混合し、90℃で3時間保持して完全に溶解させ、10%ポリビニルアルコール溶液(溶液A)を得た。
メタノール62.5gに水62.5gを加えた溶液に、上記溶液Aを250g混合して溶解させた。さらに、メタノール分散金属酸化物ゾル(Zr−Ti−Si複合酸化物微粒子、触媒化成株式会社製、商品名「1120Z(U−25・A8)」、固形分濃度20%)125gを加えて攪拌した。さらに、0.1N塩酸水溶液を6.8gと、シリコン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名「L−7604」)0.2gを添加し、30分攪拌してプライマー組成物を得た。
このプライマー組成物をセイコースーパーソブリン(商品名)用プラスチックレンズ基材(セイコーエプソン株式会社製、屈折率1.67)上に浸漬法(引き上げ速度25cm/min)にて塗布した。塗布したプラスチックレンズ基材は、80℃で20分間加熱硬化処理して、このプラスチックレンズ基材上に膜厚1.0μm、屈折率1.67のプライマー層を形成させた。
(2)ハードコート層の形成
ブチルセロソルブ101g、γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン155gの混合液に、0.1N塩酸水溶液43gを加え、5時間攪拌した。さらに、メタノール分散金属酸化物ゾル(Zr−Ti−Si複合酸化物微粒子、触媒化成株式会社製、商品名「1120Z(U−25・A8)」、固形分濃度20%)700g、シリコン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名「L−7001」)0.3g、およびFe(Cを0.2g添加し、3時間攪拌してハードコート組成物を得た。このハードコート組成物を上記(1)にて得られたプライマー層を形成したプラスチックレンズ基材上に浸漬法(引き上げ速度25cm/min)にて塗布した。ハードコード組成物を塗布したプラスチックレンズ基材は、125℃で90分間加熱硬化処理して、プラスチックレンズ基材のプライマー層上に、膜厚2.5μm、屈折率1.67のハードコート層を形成させた。
(3)反射防止膜の形成
上記(2)のハードコート層の形成によりハードコート層が形成されたプラスチックレンズ基板に、酸素ガスによるイオンビーム照射処理(加速電圧500V、60秒)を実施した。この後、プラスチックレンズ基板に形成されたハードコート層から外方に向かって順に、SiO、ZrO、SiO、TiO、SiOの5層からなる反射防止多層膜を真空蒸着法(真空器械工業(株)製、BMC−1000)にて形成した。この際、4層目のTiOをイオンビームアシスト蒸着により成膜した。ここで、蒸着各層の光学的膜厚は、SiOおよびZrOの等価膜層がλ/4、TiOがλ/2となるように形成した。なお、設計波長λは520nmとした。得られた多層膜の反射干渉色は、緑色を呈し、全光線透過率は99%であった。
(実施例2)
(1)プライマー組成物の形成
メタノール66.7gに水500.3gを加えた溶液に、上記実施例1にて生成した溶液Aを210g混合して溶解させた。さらに、メタノール分散金属酸化物ゾル(Zr−Ti−Si複合酸化物微粒子、触媒化成株式会社製、商品名「1120Z(U−25・A8)」、固形分濃度20%)105gを加えて攪拌し、さらに尿素18gを混合して完全に溶解させた。さらに、0.1N塩酸水溶液を6.8gと、シリコン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名「L−7604」)0.2gを添加し30分攪拌してプライマー組成物を得た。
このプライマー組成物をセイコースーパーソブリン(商品名)用プラスチックレンズ基材(セイコーエプソン株式会社製、屈折率1.67)上に浸漬法(引き上げ速度25cm/min)にて塗布した。塗布したプラスチックレンズ基材は、80℃で20分間加熱硬化処理して、このプラスチックレンズ基材上に膜厚1.0μm、屈折率1.67のプライマー層を形成させた。
(2)ハードコート層の形成
上記実施例1と同様の方法でハードコート層を形成した。
(3)反射防止膜の形成
上記実施例1と同様の方法で反射防止膜を形成した。
(実施例3)
(1)プライマー組成物の形成
メタノール66.4gに水597.5gを加えた溶液に、上記実施例1にて生成した溶液Aを276g混合して溶解させた。さらに、メタノール分散金属酸化物ゾル(Zr−Ti−Si複合酸化物微粒子、触媒化成株式会社製、商品名「1120Z(U−25・A8)」、固形分濃度20%)59.67gを加えて攪拌し、さらに尿素0.47gを混合して完全に溶解させた。さらに、0.1N塩酸水溶液を6.8gと、シリコン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名「L−7604」)0.2gを添加し30分攪拌してプライマー組成物を得た。
このプライマー組成物をセイコースーパーソブリン(商品名)用プラスチックレンズ基材(セイコーエプソン株式会社製、屈折率1.67)上に浸漬法(引き上げ速度25cm/min)にて塗布した。塗布したプラスチックレンズ基材は、80℃で20分間加熱硬化処理して、このプラスチックレンズ基材上に膜厚1.0μm、屈折率1.67のプライマー層を形成させた。
(2)ハードコート層の形成
上記実施例1と同様の方法でハードコート層を形成した。
(3)反射防止膜の形成
上記実施例1と同様の方法で反射防止膜を形成した。
(比較例1)
(1)プライマー組成物の形成
メタノール50gに水450gを加えた溶液に、上記実施例1にて生成した溶液Aを200g混合して溶解させた。さらに、メタノール分散金属酸化物ゾル(Zr−Ti−Si複合酸化物微粒子、触媒化成株式会社製、商品名「1120Z(U−25・A8)」、固形分濃度20%)300gを加えて攪拌し、さらに、0.1N塩酸水溶液を6.8gと、シリコン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名「L−7604」)0.2gを添加し30分攪拌してプライマー組成物を得た。
このプライマー組成物をセイコースーパーソブリン(商品名)用プラスチックレンズ基材(セイコーエプソン株式会社製、屈折率1.67)上に浸漬法(引き上げ速度25cm/min)にて塗布した。塗布したプラスチックレンズ基材は、80℃で20分間加熱硬化処理して、このプラスチックレンズ基材上に膜厚1.0μm、屈折率1.67のプライマー層を形成させた。
(2)ハードコート層の形成
上記実施例1と同様の方法でハードコート層を形成した。
(3)反射防止膜の形成
上記実施例1と同様の方法で反射防止膜を形成した。
(比較例2)
(1)プライマー組成物の形成
メタノール65gに水585gを加えた溶液に、上記実施例1にて生成した溶液Aを300g混合して溶解させた。さらに、メタノール分散金属酸化物ゾル(Zr−Ti−Si複合酸化物微粒子、触媒化成株式会社製、商品名「1120Z(U−25・A8)」、固形分濃度20%)50gを加えて攪拌し、さらに、0.1N塩酸水溶液を6.8gと、シリコン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名「L−7604」)0.2gを添加し30分攪拌してプライマー組成物を得た。
このプライマー組成物をセイコースーパーソブリン(商品名)用プラスチックレンズ基材(セイコーエプソン株式会社製、屈折率1.67)上に浸漬法(引き上げ速度25cm/min)にて塗布した。塗布したプラスチックレンズ基材は、80℃で20分間加熱硬化処理して、このプラスチックレンズ基材上に膜厚1.0μm、屈折率1.67のプライマー層を形成させた。
(2)ハードコート層の形成
上記実施例1と同様の方法でハードコート層を形成した。
(3)反射防止膜の形成
上記実施例1と同様の方法で反射防止膜を形成した。
(比較例3)
(1)プライマー組成物の形成
メタノール70.6gに水635.4gを加えた溶液に、上記実施例1にて生成した溶液Aを180g混合して溶解させた。さらに、メタノール分散金属酸化物ゾル(Zr−Ti−Si複合酸化物微粒子、触媒化成株式会社製、商品名「1120Z(U−25・A8)」、固形分濃度20%)240gを加えて攪拌し、さらに尿素0.47gを混合して完全に溶解させた。さらに、0.1N塩酸水溶液を6.8gと、シリコン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名「L−7604」)0.2gを添加し30分攪拌してプライマー組成物を得た。
このプライマー組成物をセイコースーパーソブリン(商品名)用プラスチックレンズ基材(セイコーエプソン株式会社製、屈折率1.67)上に浸漬法(引き上げ速度25cm/min)にて塗布した。塗布したプラスチックレンズ基材は、80℃で20分間加熱硬化処理して、このプラスチックレンズ基材上に膜厚1.0μm、屈折率1.67のプライマー層を形成させた。
(2)ハードコート層の形成
上記実施例1と同様の方法でハードコート層を形成した。
(3)反射防止膜の形成
上記実施例1と同様の方法で反射防止膜を形成した。
(比較例4)
(1)プライマー組成物の形成
メタノール453gに水159gを加えた溶液に、メタノール分散金属酸化物ゾル(Zr−Ti−Si複合酸化物微粒子の表面グリシド処理品、触媒化成株式会社製、商品名「S−7,G」、固形分濃度30%)196gを加え攪拌した。さらに、水性化ポリエステル樹脂「ペスレジンA−160P」(高松油脂株式会社製、固形分濃度27%)196gとシリコン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名「L−7604」)0.2gを添加し3時間攪拌しプライマー組成物を得た。
このプライマー組成物をセイコースーパーソブリン(商品名)用プラスチックレンズ基材(セイコーエプソン株式会社製、屈折率1.67)上に浸漬法(引き上げ速度25cm/min)にて塗布した。塗布したプラスチックレンズ基材は、80℃で20分間加熱硬化処理して、このプラスチックレンズ基材上に膜厚1.0μm、屈折率1.67のプライマー層を形成させた。
(2)ハードコート層の形成
上記実施例1と同様の方法でハードコート層を形成した。
(3)反射防止膜の形成
上記実施例1と同様の方法で反射防止膜を形成した。
上記のような実施例(1)ないし(3)、および比較例(1)ないし(3)のプライマー組成物の各含有物の量、プライマー組成物におけるポリビニルアルコール、金属酸化物ゾルの固形分、および尿素の割合、プライマー組成物のポリビニルアルコールおよび金属酸化物ゾルの固形分の組成比を以下の表1に示す。
Figure 2007233219
(評価)
上記のような実施例(1)ないし(3)、および比較例(2)および(4)にて得られたプラスチックレンズについて、次の評価方法を行った。
(a)外観評価:暗箱中で黒色の背景を用い、蛍光灯を用いて、透過光、反射光で白濁と干渉縞と色調(色ムラ)について観察した。
(b)耐擦傷性:ボンスター#0000スチールウール(日本スチールウール(株)製)で1kgの加重をかけ、10往復表面を摩擦し、傷ついた程度を目視により観察した。
(c)表面処置層の密着性:プラスチックレンズ基材を60℃×90%雰囲気に3日間保持した後、表面処理層(ハードコート層および反射防止膜)の密着性試験をJISD−0202に準じてクロスカットテープ試験によって実施した。すなわち、ナイフを用いプラスチックレンズ基板表面に1mm間隔に切れ目を入れ、1平方mmのマス目を100個形成させる。次に、その上へセロハン粘着テープ(ニチバン(株)製、商品名「セロテープ(登録商標)」を強く押し付けた後、表面から90度方向へ急に引っ張り剥離した後、コート被層の残っているマス目を密着性指標として、目視により観察した。
上記の評価結果を表2に示す。
Figure 2007233219
実施例1ないし実施例3のプラスチックレンズは、ポリビニルアルコールと金属酸化物ゾルとを用いたプライマー組成物により形成されたプライマー層を有するため、外観、耐擦傷性、表面処理層の密着性が良好である。
これに対して、比較例1は、ポリビニルアルコールが全体の25重量%であり、30重量%より小さくなるため、プライマー層の膜が生成できなかった。また、比較例2は、ポリビニルアルコールが全体の75%であり、70重量%より大きくなるため、プライマー層の外観は良好であるが、実施例に比べて、耐水性に乏しく、表面処理層の密着性、および耐擦傷性が悪化した。比較例3では、尿素の含有量が多いため、実施例に比べて尿素樹脂による白濁が見られ、外観が悪化し、表面処理層の剥離も見られた。比較例4は、比較例3と同様に、プライマー層に白濁が見られ、外観が悪化し、表面処理層の剥離も見られた。

Claims (6)

  1. プラスチックレンズ基材と、このプラスチックレンズ基材上に形成されたプライマー層と、このプライマー層上に形成されたハードコート層とを有するプラスチックレンズにおける前記プライマー層を形成するためのプライマー組成物であって、
    金属酸化物ゾルと、ポリビニルアルコールとを含む
    ことを特徴とするプライマー組成物。
  2. 請求項1に記載のプライマー組成物であって、
    前記金属酸化物ゾルの固形分と前記ポリビニルアルコールとの総重量を100とした時、前記ポリビニルアルコールの含有量が30〜70である
    ことを特徴とするプライマー組成物。
  3. 請求項1または請求項2に記載のプライマー組成物であって、
    更に尿素を含有することを特徴とするプライマー組成物。
  4. 請求項3に記載のプライマー組成物であって、
    前記尿素の含有量は、前記金属酸化物ゾル固形分および前記ポリビニルアルコールの総含有量に対して0.01〜0.5倍量である
    ことを特徴とするプライマー組成物。
  5. プラスチックレンズ基材と、このプラスチックレンズ基材上に形成されたプライマー層と、このプライマー層上に形成されたハードコード層とを有するプラスチックレンズであって、
    前記プライマー層は、金属酸化物ゾルとポリビニルアルコールとを含む組成物から形成された
    ことを特徴とするプラスチックレンズ。
  6. 請求項5に記載のプラスチックレンズであって、
    前記プライマー層は、前記金属酸化物ゾルとポリビニルアルコールとを含む組成物中に、更に尿素を含有する組成物から形成された
    ことを特徴とするプラスチックレンズ。
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