JP2007231125A - 熱硬化性樹脂組成物およびその利用 - Google Patents
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Abstract
【課題】接着性、低温加工性、耐熱性に加え、さらに、加工時の流動性および半硬化状態における可撓性に優れた熱硬化性樹脂組成物、並びに該熱硬化性樹脂組成物を用いてなる樹脂溶液、プリプレグ、積層体および回路基板を提供する。
【解決手段】本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも1種のポリイミド樹脂を含むポリイミド樹脂成分(A)と、少なくとも1種のエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂成分(B)と、少なくとも1種のエポキシ硬化剤を含むエポキシ硬化剤成分(C)とを必須成分としてなるものであり、エポキシ樹脂成分(B)およびエポキシ硬化剤成分(C)の少なくとも一方は、液状成分を含有し、当該液状成分の合計含有量が、上記ポリイミド樹脂成分(A)と、エポキシ樹脂成分(B)と、エポキシ硬化剤成分(C)との合計重量に対して40重量%以上80重量%以下である。
【選択図】なし
【解決手段】本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも1種のポリイミド樹脂を含むポリイミド樹脂成分(A)と、少なくとも1種のエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂成分(B)と、少なくとも1種のエポキシ硬化剤を含むエポキシ硬化剤成分(C)とを必須成分としてなるものであり、エポキシ樹脂成分(B)およびエポキシ硬化剤成分(C)の少なくとも一方は、液状成分を含有し、当該液状成分の合計含有量が、上記ポリイミド樹脂成分(A)と、エポキシ樹脂成分(B)と、エポキシ硬化剤成分(C)との合計重量に対して40重量%以上80重量%以下である。
【選択図】なし
Description
本発明は、フレキシブルプリント配線板やビルドアップ回路基板等の回路基板の製造等に用いられる熱硬化性樹脂組成物並びに該熱硬化性樹脂組成物を用いてなる樹脂溶液、プリプレグ、積層体および回路基板に関するものである。
電子機器における情報処理能力の向上を図るために、近年、電子機器に用いられる配線基板上の回路を伝達する電気信号の高周波化が進められている。そのため、電気信号が高周波化された場合にも、配線(回路)基板の電気的信頼性を保ち、回路での電気信号の伝達速度の低下や電気信号の損失を抑制することが望まれている。
かかる上記回路基板上には、通常、該配線基板や回路を保護するための保護膜や、多層構造の配線基板における各層間の絶縁性を確保するための層間絶縁膜等の絶縁層が形成される。上記保護膜や層間絶縁膜等の絶縁層は、配線基板上に設けられるため、絶縁性に加えて、配線基板に接着するための接着性も求められている。
特に、ビルドアップ回路基板等の様に、積層により多層構造の配線基板を製造する場合には、上記層間絶縁層によって各層同士が接着されて固定されると同時に、層間絶縁層の材料が回路配線の線間を埋めて配線が固定される。そのため、層間絶縁膜には、基板等に対する優れた接着力とともに回路配線の線間を埋めることができる程度の積層加工時の流動性が求められることになる。従って、上記保護膜や層間絶縁膜等の絶縁層は、接着性、積層加工時の流動性を有する接着材料を用いて形成される。
また、電気信号の高周波化によって電子機器の情報処理能力を向上するためには、接着材料を用いて絶縁層を形成した場合にも、GHz(ギガヘルツ)帯域にて、配線基板の高い信頼性を得ることができ、さらに、電気信号の伝達に悪影響を及ぼさない保護膜や層間絶縁膜等の絶縁層が望まれている。
従来、配線基板に用いられる接着材料としては、例えば、エポキシ系接着材料や熱可塑性ポリイミド系接着材料が用いられている。上記エポキシ系接着材料は、被着体同士の低温、低圧条件下での貼り合わせや回路配線の線間埋め込みが可能である等の加工性に優れ、被着体との接着性にも優れている。また、上記熱可塑性ポリイミド系接着材料は、誘電率や誘電正接がエポキシ樹脂に比べ低く高周波化に対応でき、また、体積抵抗率が低い等の絶縁性や、熱膨張が小さい、熱分解温度が高い等の耐熱性等にも優れている。
しかしながら、上記エポキシ系接着材料が硬化してなるエポキシ系樹脂は、GHz帯域における誘電率が4以上であり、誘電正接が0.02以上であるため、良好な誘電特性が得られないという問題がある。
また、上記熱可塑性ポリイミド系接着材料が硬化してなるポリイミド系樹脂は、耐熱性、絶縁性に優れているが、その一方で、熱可塑性ポリイミド系接着材料を用いて被着体同士を接着させるためには、高温・高圧条件下にて被着体同士を貼り合せる必要があり、加工性に問題がある。
さらに、エポキシ系接着材料や熱可塑性ポリイミド系接着材料の上記問題を解決する方法として、エポキシ系樹脂とポリイミド系樹脂とを混合した材料についてもいくつかの報告がある。例えば、所定の範囲内のガラス転移温度を有するポリイミド樹脂と、エポキシ化合物と、該エポキシ化合物と反応可能な活性水素基を有する化合物とを混合してなるフィルム接着剤を用いることにより、低温短時間での被着体同士の接着を可能とするとともに、高温時の耐熱性が得られることが報告されている(例えば、特許文献1等参照。)。また、ポリイミドとエポキシ樹脂とからなる樹脂組成物が開示され、かかる樹脂組成物は、比較的低温で接着硬化でき、溶媒に可溶で耐熱性および接着性に優れた接着剤として有用であることが報告されている(例えば、特許文献2等参照。)。また、融点または分解温度が235℃以上であるイミダゾール化合物、エポキシ化合物およびポリイミド樹脂を含有する樹脂組成物を用いることにより、室温での保存安定性が向上するとともに、耐熱性に優れたフィルム状接着剤が得られることが報告されている(例えば、特許文献3等参照。)。さらに、ポリイミド樹脂成分とフェノール樹脂成分およびエポキシ樹脂成分とを所定の割合で含む熱硬化性樹脂組成物が開示され、かかる熱硬化性樹脂組成物は、接着性、加工性、耐熱性およびGHz帯域での誘電特性に優れていることが記載されている(例えば、特許文献4等参照。)。
特開平8−27430号公報(公開日:平成8(1996)年1月30日)
特開2000−109645号公報(公開日:平成12(2000)年4月18日)
特開2004−285284号公報(公開日:平成16(2004)年10月14日)
特開2004−315754号公報(公開日:平成16(2004)年11月11日)
しかしながら、従来のエポキシ系樹脂とポリイミド系樹脂とを混合した材料は、接着性、低温加工性および硬化後の耐熱性を有してはいるが、貼り合わせ、積層加工時等の加工時における流動性および半硬化状態(Bステージ状態)における樹脂の可撓性が十分ではないという問題を有している。
例えば、上記特許文献1ないし3に記載の材料では、加工時の流動性も、半硬化状態における樹脂の可撓性もともに十分ではない。また、上記特許文献4に記載の材料は、半硬化状態における樹脂の可撓性が十分ではなく、また、充填材を配合すると加工時の流動性が十分とはいえないという問題を有している。
加工時の流動性が低い場合、すなわち、熱硬化性樹脂組成物の加工時の温度における溶融粘度が高い場合は、回路を十分に埋め込むことができない。それゆえ、回路基板の配線が十分に固定されないため電気的信頼性を良好に保つ点で問題となる場合がある。また、熱硬化性樹脂組成物は、半硬化状態で可撓性が十分でない場合には、脆く折れやすくなり、曲げたときの柔軟性に劣る。かかる性質は、熱硬化性樹脂組成物を半硬化状態で回路基板の保護膜や層間絶縁膜等に用いる樹脂シートとする場合には不都合な場合がある。
本発明は、上記従来の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、フレキシブルプリント配線板やビルドアップ回路基板等の回路基板の製造等に好適に用いることができる、接着性、低温加工性、耐熱性に加え、さらに、加工時の流動性および半硬化状態における可撓性に優れた熱硬化性樹脂組成物、並びに該熱硬化性樹脂組成物を用いてなる樹脂溶液、プリプレグ、積層体および回路基板を提供することにある。
本発明者等は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、ポリイミド樹脂とエポキシ樹脂とエポキシ硬化剤とを含む熱硬化性樹脂組成物において、該エポキシ樹脂および該エポキシ硬化剤の少なくとも1方を液状成分とし、ポリイミド樹脂とエポキシ樹脂とエポキシ硬化剤との合計重量に対する液状成分の割合を特定の範囲にしたところ、回路基板等の被着体に対する接着性、熱膨張や熱分解に関する耐熱性、低温での加工性が優れていることに加えて、回路を埋め込むために必要な加工時の流動性が飛躍的に向上することを見出した。そして、さらに、かかる熱硬化性樹脂組成物は半硬化状態における可撓性にも優れるものであることを見出し、本発明を完成させるに至った。
上記特許文献3および4に記載されている実施例からもわかるように、従来のエポキシ系接着材料またはエポキシ系樹脂とポリイミド系樹脂とを混合した材料において、エポキシ系樹脂は多くの場合固体成分を用いるものであった。また、上記特許文献1および2に記載の材料では液状のエポキシ樹脂組成物は用いられているが、かかる液状成分のポリイミド樹脂と、エポキシ樹脂と、エポキシ硬化剤との合計重量に対する割合は低く、特許文献1では30重量%に達しておらず、また、特許文献2では20重量%程度である。本発明者らは、エポキシ樹脂やエポキシ硬化剤として液状成分を用いることに着目し、さらに、液状成分の割合を特定の範囲としたところ、これまで達成することができなかった、加工時の高い流動性と半硬化状態における可撓性とを併せ持つ熱硬化性樹脂組成物を提供することができることを初めて見出した。
すなわち、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物は、上記課題を解決するために、少なくとも1種のポリイミド樹脂を含むポリイミド樹脂成分(A)と、少なくとも1種のエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂成分(B)と、少なくとも1種のエポキシ硬化剤を含むエポキシ硬化剤成分(C)とを含んでなる熱硬化性樹脂組成物であって、上記エポキシ樹脂成分(B)およびエポキシ硬化剤成分(C)の少なくとも一方が液状成分を含有しており、上記エポキシ樹脂成分(B)に含有される上記液状成分は液状エポキシ樹脂であり、上記エポキシ硬化剤成分(C)に含有される上記液状成分は液状エポキシ硬化剤であり、上記液状成分の合計含有量が、上記ポリイミド樹脂成分(A)と、エポキシ樹脂成分(B)と、エポキシ硬化剤成分(C)との合計重量に対して40重量%以上80重量%以下であることを特徴としている。
本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物は、上記エポキシ樹脂成分(B)が液状エポキシ樹脂を含有し、且つ、上記エポキシ硬化剤成分(C)が液状エポキシ硬化剤を含有している熱硬化性樹脂組成物であってもよい。
本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物では、60℃以上150℃以下の温度範囲において、最低溶融粘度が10Pa・S以上10000Pa・S以下であることが好ましい。
また、上記ポリイミド樹脂成分(A)に含まれる少なくとも1種のポリイミド樹脂は、以下の一般式(1)
(一般式(1)中、Vは、−O−、−C(=O)−、−O−T−O−、−C(=O)O−T−OC(=O)−、−C(CH3)2−、および−C(CF3)2−からなる群より選択される2価基または直接結合であり、Tは2価の有機基を示す。)
で表される構造を有する酸二無水物を少なくとも1種含んでなる酸二無水物成分と、少なくとも1種のジアミンを含んでなるジアミン成分とを反応させて得られるものであることが好ましい。
で表される構造を有する酸二無水物を少なくとも1種含んでなる酸二無水物成分と、少なくとも1種のジアミンを含んでなるジアミン成分とを反応させて得られるものであることが好ましい。
また、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物は、さらに、少なくとも一種の充填材を含む充填材成分(D)を含有していてもよい。
本発明にかかる樹脂溶液は、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物を有機溶媒に溶解させてなることを特徴としている。また、本発明にかかるプリプレグは、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物を繊維状充填材に含浸してなることを特徴としている。
本発明にかかる積層体は、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物によって形成された樹脂層を少なくとも1層含んでなることを特徴としている。また、本発明にかかる回路基板は、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物を有していることを特徴としている。
本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物は、以上のように、少なくとも1種のポリイミド樹脂を含むポリイミド樹脂成分(A)と、少なくとも1種のエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂成分(B)と、少なくとも1種のエポキシ硬化剤を含むエポキシ硬化剤成分(C)とを必須成分としてなるものであり、エポキシ樹脂成分(B)およびエポキシ硬化剤成分(C)の少なくとも一方は、液状成分を含有し、かかる液状成分の合計含有量が、上記ポリイミド樹脂成分(A)と、エポキシ樹脂成分(B)と、エポキシ硬化剤成分(C)との合計重量に対して40重量%以上80重量%以下である。これにより、回路基板等の被着体に対する接着性、低温での接着を可能とする加工性や取り扱い性、熱膨張や熱分解に関する耐熱性に加え、回路を埋め込むために必要な加工時の流動性と、半硬化状態における可撓性とに優れた熱硬化性樹脂組成物を提供することができる。
加工時の流動性に優れること、すなわち、加工時の温度における溶融粘度が低いことにより、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物場合は回路を十分に埋め込むことができる。それゆえ、回路基板の配線が十分に固定され、電気的信頼性を良好に保つことができる。また、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、半硬化状態で可撓性に優れるので、脆く折れやすいという問題がなく、曲げたときの柔軟性に優れる。それゆえ、熱硬化性樹脂組成物を半硬化状態で回路基板の保護膜や層間絶縁膜等に用いる樹脂シートとして利用する場合に非常に有利である。
また、熱硬化性樹脂組成物が硬化して得られる硬化樹脂のGHz帯域における誘電率および誘電正接が、従来のポリイミド樹脂とエポキシ樹脂とからなる樹脂組成物よりも遥かに低く、誘電特性にも優れた熱硬化性樹脂組成物を提供することができる。
従って、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、接着性、低温での加工性や取り扱い性、硬化後の耐熱性に加えて、加工時の高い流動性と、半硬化状態における優れた可撓性とを合わせ持ち、さらに、GHz帯域における誘電特性にも優れているため、諸特性のバランスを備えてなる熱硬化性樹脂組成物を提供することができるという効果を奏する。
それゆえ、GHz帯域での低誘電率や低誘電正接が要求されるフレキシブルプリント配線板やビルドアップ回路基板、積層体等の製造に好適に用いることができるという効果を奏する。
本発明の実施の一形態について説明すれば、以下の通りである。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物は、例えば、フレキシブルプリント配線板やビルドアップ回路基板等の回路基板に使用され、該回路基板や回路基板上のパターン化された回路を保護する保護材料、あるいは、多層の回路基板にて各層間の絶縁性を確保するための層間絶縁材料として好適に用いられる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも1種のポリイミド樹脂を含むポリイミド樹脂成分(A)と、少なくとも1種のエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂成分(B)と、少なくとも1種のエポキシ硬化剤を含むエポキシ硬化剤成分(C)とを含んでなる熱硬化性樹脂組成物であって、上記エポキシ樹脂成分(B)およびエポキシ硬化剤成分(C)の少なくとも一方が液状成分を含有している。ここで、液状成分とは、液状の成分をいい、60℃における粘度が100Pa・S以下の成分をいう。なお、上記エポキシ樹脂成分(B)に含有される上記液状成分は、液状エポキシ樹脂であり、上記エポキシ硬化剤成分(C)に含有される上記液状成分は、液状エポキシ硬化剤である。
本発明の熱硬化性樹脂組成物では、上記エポキシ樹脂成分(B)およびエポキシ硬化剤成分(C)の少なくとも一方が上記液状成分を含有していればよい。いいかえれば、本発明の熱硬化性樹脂組成物では、上記エポキシ樹脂成分(B)のみが液状成分すなわち液状エポキシ樹脂を含有していてもよいし、上記エポキシ硬化剤成分(C)のみが液状成分すなわち液状エポキシ硬化剤を含有していてもよいし、上記エポキシ樹脂成分(B)およびエポキシ硬化剤成分(C)の両方が上記液状成分すなわちそれぞれ液状エポキシ樹脂および液状エポキシ硬化剤を含有していてもよい。
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物に含まれる上記液状成分の合計含有量は、上記ポリイミド樹脂成分(A)と、エポキシ樹脂成分(B)と、エポキシ硬化剤成分(C)との合計重量に対して40重量%以上80重量%以下である。すなわち、上記液状成分の合計含有量は、〔液状成分の合計重量/((A)+(B)+(C)の合計重量)〕×100(重量%)で与えられ、下限値が40重量%であり、上限値は80重量%である。また、本発明の熱硬化性樹脂組成物に含まれる上記液状成分の合計含有量は、50重量%以上70重量%以下であることがより好ましい。これにより、熱硬化性樹脂組成物の半硬化状態(Bステージ状態)におけるより優れた可撓性および加工時のより高い流動性と、硬化後における硬化樹脂のGHz帯域でのより優れた誘電特性および耐熱性とを実現することができる。
上記液状成分の合計含有量が40重量%未満であると、本発明の熱硬化性樹脂組成物の加工時の流動性が低下(溶融粘度が上昇)する場合や、半硬化状態における本発明の熱硬化性樹脂組成物がもろく割れやすくなってしまい取り扱いが困難となる場合がある。
一方、上記液状成分の合計含有量が、80重量%を超えると、ポリイミド樹脂成分(A)の含有割合が少なくなってしまい、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物の硬化後における硬化樹脂のGHz帯域での誘電特性が低下する場合や、熱分解やガラス転移温度以下の領域における熱膨張などに対する耐熱性が低下する場合がある。
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、硬化前において、60℃以上150℃以下の温度範囲での最低溶融粘度の下限値が10Pa・Sであることが好ましく、100Pa・Sであることがより好ましい。また、上記最低溶融粘度の上限値は、10000Pa・Sであることが好ましく、8000Pa・Sであることがより好ましく、5000Pa・Sであることがさらに好ましい。
60℃以上150℃以下の温度範囲において、最低溶融粘度が10Pa・Sより小さいと、貼り合わせ、積層加工時に、樹脂のはみ出し量が大きくなり、本発明の熱硬化性樹脂組成物を含む層の層厚みのコントロールが困難になる場合がある。また、60℃以上150℃以下の温度範囲において、最低溶融粘度が10000Pa・Sを超えると加工時の流動性が低下し配線回路の線間の埋め込み性が不十分となる場合がある。
なお、本発明において、60℃以上150℃以下の温度範囲における最低溶融粘度とは、後述する実施例に示す流動性の測定方法を用いて測定した60℃以上150℃以下の温度範囲における最も小さい溶融粘度の値をいう。
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物では、該熱硬化性樹脂組成物が硬化してなる硬化樹脂は、GHz帯域においても優れた誘電特性を示す。すなわち、上記熱硬化性樹脂組成物を150℃〜250℃の温度条件下で1時間〜5時間加熱することによって得られる硬化樹脂の誘電特性は、周波数1GHz〜10GHzにて、誘電率が3.3以下であり、また誘電正接が0.020以下となる。誘電率および誘電正接が上記の範囲内であれば、本発明の熱硬化性樹脂組成物を、回路基板の保護材料や層間絶縁材料として用いた場合にも、回路基板の電気的絶縁性を確保し、回路基板上の回路の信号伝達速度の低下や信号の損失を抑制することができるので、信頼性の高い回路基板を提供することが可能となる。
上記のように、熱硬化性樹脂組成物中のエポキシ樹脂成分(B)およびエポキシ硬化剤成分(C)の少なくとも一方に上記液状成分を、上記合計含有量の範囲で含有させることにより、回路基板や導体等の被着体に対する接着性、低温での接着を可能とする加工性や取り扱い性、熱膨張や熱分解等に関する耐熱性、回路を埋め込むために必要な加工時の流動性、半硬化状態における可撓性、プレッシャークッカーによる耐湿性テスト(PCT)耐性、半田耐熱性、絶縁性、熱硬化性樹脂組成物が硬化してなる硬化樹脂の誘電特性等に優れるとともにこれらの諸特性のバランスがとれた高性能の熱硬化性樹脂組成物を得ることができる。
本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物は、さらに、少なくとも一種の充填材を含む充填材成分(D)を含有していてもよい。
以下、本発明の熱硬化性樹脂組成物に含まれる、ポリイミド樹脂成分(A)、エポキシ樹脂成分(B)、エポキシ硬化剤成分(C)、充填材成分(D)、その他の成分(E)、および本発明の熱硬化性樹脂組成物の利用について詳細に説明する。
(1)ポリイミド樹脂成分(A)
本発明で用いられるポリイミド樹脂成分(A)は少なくとも1種のポリイミド樹脂を含んでいればよい。本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物は、ポリイミド樹脂成分(A)を含有することにより、耐熱性が付与される。さらに、ポリイミド樹脂成分(A)を含有することにより、該熱硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化樹脂に対して、耐屈曲性、優れた機械特性、耐薬品性、並びに、GHz帯域における誘電率および誘電正接が低いという優れた誘電特性が付与される。
本発明で用いられるポリイミド樹脂成分(A)は少なくとも1種のポリイミド樹脂を含んでいればよい。本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物は、ポリイミド樹脂成分(A)を含有することにより、耐熱性が付与される。さらに、ポリイミド樹脂成分(A)を含有することにより、該熱硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化樹脂に対して、耐屈曲性、優れた機械特性、耐薬品性、並びに、GHz帯域における誘電率および誘電正接が低いという優れた誘電特性が付与される。
上記ポリイミド樹脂は、特に限定されるものではないが、有機溶媒に溶解する可溶性ポリイミド樹脂であることが好ましい。ここで、可溶性ポリイミド樹脂とは、15℃〜100℃の温度範囲にて、有機溶媒に1重量%以上溶解するポリイミド樹脂をいう。
なお、上記有機溶媒としては、例えば、ジオキサン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等のアセトアミド系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド等のホルムアミド系溶媒;N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン等のピロリドン系溶媒等から選ばれる少なくとも1種の溶媒を挙げることができる。
上記可溶性ポリイミド樹脂を用いれば、本発明の熱硬化性樹脂組成物の熱硬化に際して、高温・長時間での処理を必要としない。従って、上記ポリイミド樹脂として可溶性ポリイミド樹脂を用いることは、加工性の点から好ましい。
上記ポリイミド樹脂の製造方法も特に限定されるものではなく、従来公知の製造方法を好適に用いることができるが、例えば、ポリイミド樹脂の前駆体物質であるポリアミド酸を、化学的あるいは熱的にイミド化することによって得ることができる。
以下、一例として、上記ポリイミド樹脂の製造方法について、ポリアミド酸の合成方法、ポリアミド酸の合成に用いる酸二無水物成分、ポリアミド酸の合成に用いるジアミン成分、ポリアミド酸を脱水閉環してイミド化を行うことによりポリイミド樹脂を得る方法の順に説明する。
<ポリアミド酸の製造方法>
上記ポリアミド酸は、少なくとも1種の酸二無水物を含んでなる酸二無水物成分と、少なくとも1種のジアミンを含んでなるジアミン成分とを有機溶媒中で、上記酸二無水物とジアミンとが、実質的に等モルとなるようにして、反応させれば得ることができる。あるいは、2種以上の酸二無水物成分および2種以上のジアミン成分を用いる場合、複数のジアミン成分全量のモル数と複数の酸二無水物成分全量のモル数とを、実質的に等モルとなるように調整しておけば、ポリアミド酸共重合体を任意に得ることもできる。
上記ポリアミド酸は、少なくとも1種の酸二無水物を含んでなる酸二無水物成分と、少なくとも1種のジアミンを含んでなるジアミン成分とを有機溶媒中で、上記酸二無水物とジアミンとが、実質的に等モルとなるようにして、反応させれば得ることができる。あるいは、2種以上の酸二無水物成分および2種以上のジアミン成分を用いる場合、複数のジアミン成分全量のモル数と複数の酸二無水物成分全量のモル数とを、実質的に等モルとなるように調整しておけば、ポリアミド酸共重合体を任意に得ることもできる。
上記反応の代表的な手法としては、上記ジアミン成分を有機溶媒に溶解し、その後、上記酸二無水物成分を添加して、ポリアミド酸が溶解してなる溶液(以下、本明細書においてポリアミド酸溶液と称する。)を得る方法が挙げられる。なお、ここで「溶解」とは、溶媒が溶質を完全に溶解した状態、および、溶質が溶媒中に均一に分散または拡散して、実質的に溶解している状態と同じ状態となる場合を含むものとする。
なお、上記ジアミン成分および酸二無水物成分の添加順序は上述した順序に限定されるものではなく、当業者であれば、その添加方法を適宜変更・修正・改変することができる。すなわち、上記添加方法は、例えば、酸二無水物成分を有機溶媒に溶解または拡散させ、その後、ジアミン成分を加えて、ポリアミド酸溶液とする方法であってもよい。あるいは、まず、有機溶媒中に適量のジアミン成分を加え、続いて、ジアミン成分中のジアミンに対して過剰となる酸二無水物を含む酸二無水物成分を加え、該酸二無水物の過剰量に相当する量のジアミンを含むジアミン成分を添加して、ポリアミド酸溶液とする方法であってもよい。
上記酸二無水物とジアミンとの反応(ポリアミド酸の合成反応)の温度条件は、該酸二無水物とジアミンとを重合させることができれば特に限定されるものではないが、80℃以下であることが好ましく、0〜50℃の範囲内であることがより好ましい。また、反応時間は、酸二無水物とジアミンとの重合反応を完了させることができれば特に限定されるものではないが、30分〜50時間の範囲内で適宜設定すればよい。
さらに、上記ポリアミド酸の合成反応に使用する上記有機溶媒としては、有機極性溶媒であれば特に限定されるものではない。中でも、上記ポリアミド酸重合時の粘度の増加を抑制して攪拌を容易にする観点、ポリイミド樹脂を製造する際に該ポリイミド樹脂の乾燥を容易にする観点等から、上記有機溶媒は、ポリアミド酸に対して良溶媒であることがより好ましく、また、沸点の低い有機溶媒であることがより好ましい。
ポリアミド酸の合成反応に使用する上記有機溶媒としては、具体的には、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド等のホルムアミド系溶媒;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等のアセトアミド系溶媒;N−メチル−2−ピロリドンやN−ビニル−2−ピロリドン等のピロリドン系溶媒;フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコール等のフェノール系溶媒;ヘキサメチルホスホルアミド;γ−ブチロラクトン等を挙げることができる。なお、上記有機溶媒は単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。さらに、必要に応じて、上記有機溶媒と、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素とを組み合わせて用いてもよい。
<ポリアミド酸の製造に用いる酸二無水物成分>
上記ポリアミド酸を合成するために用いられる酸二無水物成分に含まれる酸二無水物は、各種の有機溶媒に対する溶解性、耐熱性、および、エポキシ樹脂成分(B)やエポキシ硬化剤成分(C)との相溶性を有するポリイミド樹脂が得られるものであれば特に限定されるものではないが、芳香族テトラカルボン酸二無水物であることが好ましい。上記酸二無水物は、具体的には、例えば、以下の一般式(1)
上記ポリアミド酸を合成するために用いられる酸二無水物成分に含まれる酸二無水物は、各種の有機溶媒に対する溶解性、耐熱性、および、エポキシ樹脂成分(B)やエポキシ硬化剤成分(C)との相溶性を有するポリイミド樹脂が得られるものであれば特に限定されるものではないが、芳香族テトラカルボン酸二無水物であることが好ましい。上記酸二無水物は、具体的には、例えば、以下の一般式(1)
で表される構造を有するものが好ましい。一般式(1)中、Vは、−O−、−C(=O)−、−O−T−O−、および、−C(=O)O−T−OC(=O)−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−からなる群より選択される2価基または直接結合であり、Tは2価の有機基である。ここで、直接結合とは、2つのベンゼン環のそれぞれに含まれる炭素が直接結合することによって、2つのベンゼン環が結合していることをいう。
ここで、上記Tは、下記式
からなる群より選択される2価基、または、一般式(2)
で表される構造を有する2価基であることが好ましい。なお、一般式(2)中、Zは、−(CH2)Q−、−C(=O)−、−SO2−、−O−、および、−S−からなる群より選択される2価基であり、Qは1以上5以下の整数である。
上記一般式(1)にて表される酸二無水物のうち、特に、GHz帯域における誘電率や誘電正接が低く、耐熱性に優れた硬化樹脂を得る観点から、上記酸二無水物は、上記一般式(1)におけるVが、−O−T−O−、または、−C(=O)O−T−OC(=O)−であることが好ましい。
さらに、各種の有機溶媒に対する溶解性、耐熱性、エポキシ樹脂成分(B)およびエポキシ硬化剤成分(C)との相溶性、誘電特性等の諸特性をバランスよく備えたポリイミド樹脂が得られる点、および、入手しやすさ等の点から、上記酸二無水物として、下記式
で表される4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビスフタル酸二無水物を用いることが特に好ましい。
ポリアミド酸の合成には、上記一般式(1)にて表される構造を有する上記酸二無水物を好適に用いることができるが、かかる場合は、上記一般式(1)にて表される構造を有する上記酸二無水物のうちの少なくとも1種の酸二無水物を含んでなる酸二無水物成分を用いればよい。すなわち、酸二無水物成分には、上記にて説明した酸二無水物のうち、1種のみが含まれていてもよく、あるいは、2種以上が任意の割合で組み合わせて含まれていてもよく、さらに、上記一般式(1)で表される構造以外の構造を有する酸二無水物(以下、本明細書において、その他の酸二無水物と称する。)が含まれていてもよい。
上記一般式(1)にて表される構造を有する酸二無水物の、酸二無水物成分中における含有量は、酸二無水物成分中の全酸二無水物のうちの50モル%以上であることが好ましい。含有量が50モル%以上であれば、各種の有機溶媒に対する溶解性、エポキシ樹脂成分(B)およびエポキシ硬化剤成分(C)との相溶性、誘電特性等に優れたポリイミド樹脂を得ることができる。
上記酸二無水物成分に含まれる酸二無水物のうち、上記一般式(1)で表される構造以外の構造を有する、その他の酸二無水物は、特に限定されるものではないが、上記一般式(1)で表される構造以外の構造を有する芳香族テトラカルボン酸二無水物であることが好ましい。
上記その他の酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロペンタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、3,3',4,4'−ビシクロヘキシルテトラカルボン酸、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−コハク酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン、3,3',4,4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、2,3,3'4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、3,4,9,10−テトラカルボキシペリレン酸、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン酸、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン酸、3,3',4,4'−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸、4,4'−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン酸、4,4'−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸、p−フェニレンジフタル酸等の無水物またはその低級アルキルエステル等を挙げることができるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
上記その他の酸二無水物は、1種のみを用いてもよく、あるいは、2種以上を任意の割合で組み合わせて用いてもよい。
<ポリアミド酸の製造に用いるジアミン成分>
また、上記ポリアミド酸を合成するために用いられるジアミン成分に含まれるジアミンは、各種の有機溶媒に対する溶解性、耐熱性、半田耐熱性、PCT耐性、低吸水性、熱可塑性等に優れたポリイミド樹脂が得られるものであることが好ましく、芳香族系ジアミンであることが好ましい。具体的には、上記ジアミンとしては、例えば、下記一般式(3)
また、上記ポリアミド酸を合成するために用いられるジアミン成分に含まれるジアミンは、各種の有機溶媒に対する溶解性、耐熱性、半田耐熱性、PCT耐性、低吸水性、熱可塑性等に優れたポリイミド樹脂が得られるものであることが好ましく、芳香族系ジアミンであることが好ましい。具体的には、上記ジアミンとしては、例えば、下記一般式(3)
で表される構造を有するものが好ましい。一般式(3)中、Yは、それぞれ独立して、−C(=O)−、−SO2−、−O−、−S−、−(CH2)u−、−NHCO−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−、および、−C(=O)O−からなる群より選択される2価基、または、直接結合を表す。また、R1は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン原子、または炭素数1〜4のアルキル基を表し、t および u は、それぞれ独立して1以上5以下の整数である。
上記一般式(3)にて表される構造を有するジアミンとしては、例えば、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(4−アミノフェニキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン等のビス[(アミノフェノキシ)フェニル]アルカン類;2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等のビス[(アミノフェノキシ)フェニル]フルオロアルカン類;1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル等のビス(アミノフェノキシ)ベンゼン系化合物類;ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン等のビス(アミノフェノキシ)ケトン系化合物類;ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド等のビス[(アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド系化合物類;ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン等のビス[(アミノフェノキシ)フェニル]スルホン系化合物;ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル等のビス[(アミノフェノキシ)フェニル]エーテル系化合物類;1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン等のビス[(アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン系化合物類;4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル等のビス[(アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル系化合物類;4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物類;4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン等の(フェノキシ)フェニルスルホン系化合物類;1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン等のビス[(アミノフェノキシ)ジメチルベンジル]ベンゼン系化合物類等が挙げられる。
上記一般式(3)にて表される構造を有するジアミンのうち、メタ位にアミノ基を有するジアミンがより好ましい。メタ位にアミノ基を有するジアミンを用いれば、パラ位にアミノ基を有するジアミンを用いた場合よりも、さらに各種の有機溶媒に対する溶解性に優れたポリイミド樹脂を得ることができる。メタ位にアミノ基を有するジアミンは、下記一般式(4)
で表される構造を有する。一般式(4)中、Yは、それぞれ独立して、−C(=O)−、−SO2−、−O−、−S−、−(CH2)u−、−NHCO−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−、および、−C(=O)O−からなる群より選択される2価基、または、直接結合を表し、R1は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン原子、または、炭素数1〜4のアルキル基を表し、t および u は、それぞれ独立して1以上5以下の整数である。
上記一般式(4)にて表される構造を有するジアミンとしては、上記したジアミンのうち、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル等を挙げることができる。このうち、特に、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンを用いることが好ましい。該1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンを用いれば、各種の有機溶媒に対する溶解性、半田耐熱性、PCT耐性により優れた熱硬化性樹脂組成物を提供することが可能になる。
また、ジアミン成分に含まれるジアミンは、水酸基および/またはカルボキシル基を有するジアミンであってもよい。水酸基および/またはカルボキシル基を有するジアミンを用いてポリアミド酸を製造して、ポリイミド樹脂を得れば、水酸基および/またはカルボキシル基を有するポリイミド樹脂を得ることができる。
ポリイミド樹脂に水酸基および/またはカルボキシル基が導入されていることにより、上記エポキシ樹脂成分(B)の硬化を促進することができる。それゆえ、上記エポキシ樹脂成分(B)の熱硬化を低温または短時間で行うことが可能となる。さらに、エポキシ樹脂成分(B)は、水酸基および/またはカルボキシル基と反応するので、ポリイミド樹脂同士がエポキシ樹脂成分(B)に含まれるエポキシ樹脂を介して架橋される。従って、水酸基および/またはカルボキシル基を有するポリイミド樹脂を得るために、上記ジアミンとして、水酸基および/またはカルボキシル基を有するジアミンを用いれば、耐熱性、半田耐熱性、PCT耐性等にさらに優れた熱硬化性樹脂組成物を得ることができる。
水酸基および/またはカルボキシル基を有するジアミンとしては、水酸基および/またはカルボキシル基を有していれば特に限定されるものではない。例えば、2,4−ジアミノフェノール等のジアミノフェノール系化合物;3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル等のジアミノビフェニル系化合物;3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラヒドロキシビフェニル等のヒドロキシビフェニル系化合物;3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジヒドロキシジフェニルメタン、2,2−ビス[3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルメタン等のヒドロキシジフェニルアルカン類;3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルエーテル等のヒドロキシジフェニルエーテル系化合物;3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルスルホン等のジフェニルスルホン系化合物;2,2−ビス[4−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]プロパン等のビス[(ヒドロキシフェノキシ)フェニル]アルカン類;4,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドキシフェノキシ)ビフェニル等のビス(ヒドキシフェノキシ)ビフェニル系化合物;2,2−ビス[4−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]スルホン等のビス[(ヒドロキシフェノキシ)フェニル]スルホン系化合物;3,5−ジアミノ安息香酸等のジアミノ安息香酸類;3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジカルボキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラカルボキシビフェニル等のカルボキシビフェニル系化合物;3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジヒドロキシジフェニルメタン、2,2−ビス[4−アミノ−3−カルボキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−カルボキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラカルボキシジフェニルメタン等のカルボキシジフェニルメタンをはじめとするカルボキシジフェニルアルカン類;3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラカルボキシジフェニルエーテル等のカルボキシジフェニルエーテル系化合物;3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジカルボキシジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラカルボキシジフェニルスルホン等のジフェニルスルホン系化合物;2,2−ビス[4−(4−アミノ−3−カルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン等のビス[(カルボキシフェノキシ)フェニル]アルカン類;4,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドキシフェノキシ)ビフェニル等のビス(ヒドロキシフェノキシ)ビフェニル系化合物;2,2−ビス[4−(4−アミノ−3−カルボキシフェノキシ)フェニル]スルホン等のビス[(カルボキシフェノキシ)フェニル]スルホン系化合物等を挙げることができる。
上記のうち、良好な半田耐熱性やPCT耐性を得るためには、上記水酸基および/またはカルボキシル基を有するジアミンとして、下記式
で表される3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニルを用いることが特に好ましい。
ポリアミド酸を合成する場合には、少なくとも1種の上記一般式(3)にて表される構造を有するジアミン、および/または、少なくとも1種の水酸基および/またはカルボキシル基を有するジアミンを含んでなるジアミン成分を用いることが好ましい。
ジアミン成分に上記一般式(3)にて表される構造を有するジアミンが含まれる場合には、該ジアミン(一般式(3))が、ジアミン成分中の全ジアミンのうちの60モル%以上99モル%以下となるように含まれることが好ましい。また、ジアミン成分に水酸基および/またはカルボキシル基を有するジアミンが含まれる場合には、該ジアミン(水酸基および/またはカルボキシル基を有するジアミン)が、ジアミン成分中の全ジアミンのうちの1モル%以上40モル%以下となるように含まれることが好ましい。
上記ジアミン成分は、少なくとも1種の上記一般式(3)にて表される構造を有するジアミンと、少なくとも1種の水酸基および/またはカルボキシル基を有するジアミンとを含んでいることがより好ましい。特に、水酸基および/またはカルボキシル基を有するジアミンとして、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニルを用いることが最も好ましい。これにより、より優れた半田耐熱性やPCT耐性を得ることができる。
上記ジアミン成分が、少なくとも1種の上記一般式(3)にて表される構造を有するジアミンと、少なくとも1種の水酸基および/またはカルボキシル基を有するジアミンとを含んでいる場合、ジアミン成分に含まれる各ジアミンは、それぞれ任意の割合で組み合わせればよいが、一般式(3)にて表される構造を有するジアミンのジアミン成分中における含有量が、全ジアミンのうちの60モル%以上99モル%以上であって、かつ、少なくとも1種の水酸基および/またはカルボキシル基を有するジアミンのジアミン成分中における含有量が、全ジアミンのうちの1モル%以上40モル%以下であることが好ましい。上記一般式(3)にて表される構造を有するジアミンと、水酸基および/またはカルボキシル基を有するジアミンとの含有量が、上記範囲であることにより、該ジアミンを用いて、各種の有機溶媒に対する溶解性、半田耐熱性、および、PCT耐性に優れたポリイミド樹脂を得ることができる。
また、ジアミン成分には、上記したジアミン(一般式(3)で表される構造を有するジアミン、および水酸基および/またはカルボキシル基を有するジアミン)以外のジアミン(以下、本明細書において、その他のジアミンと称する。)が含まれていてもよい。上記ジアミン成分に含まれるその他のジアミンは、特に限定されるものではないが、芳香族系ジアミンが好ましい。
上記芳香族系ジアミンとしては、例えば、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノフェニル)スルホキシド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホキシド、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド等を挙げることができる。
上記その他のジアミンは、1種または2種以上を組み合わせて用いればよく、ジアミン成分中における含有量が、全ジアミンのうちの10モル%未満であることが好ましい。
<ポリアミド酸のイミド化>
上記ポリアミド酸を含んでなるポリアミド酸溶液を用いて、ポリイミド樹脂(好ましくは可溶性ポリイミド樹脂)を得るために、上記ポリアミド酸をイミド化する方法の一例について説明する。イミド化は、例えば、熱的手法または化学的手法により、上記ポリアミド酸溶液中のポリアミド酸を脱水閉環することによって行われる。上記熱的手法とは、ポリアミド酸溶液を熱処理して脱水する方法であり、上記化学的手法とは、脱水剤を用いて脱水する方法である。これらの手法の他、減圧下で加熱処理を行って、ポリアミド酸をイミド化する方法もある。以下、上記各手法について説明する。
上記ポリアミド酸を含んでなるポリアミド酸溶液を用いて、ポリイミド樹脂(好ましくは可溶性ポリイミド樹脂)を得るために、上記ポリアミド酸をイミド化する方法の一例について説明する。イミド化は、例えば、熱的手法または化学的手法により、上記ポリアミド酸溶液中のポリアミド酸を脱水閉環することによって行われる。上記熱的手法とは、ポリアミド酸溶液を熱処理して脱水する方法であり、上記化学的手法とは、脱水剤を用いて脱水する方法である。これらの手法の他、減圧下で加熱処理を行って、ポリアミド酸をイミド化する方法もある。以下、上記各手法について説明する。
熱的手法による脱水閉環としては、例えば、上記ポリアミド酸溶液の加熱処理によって、イミド化反応を進行させ、同時に溶媒を蒸発させる等の方法を挙げることができる。この熱的手法により、固形のポリイミド樹脂を得ることができる。なお、上記加熱処理の条件は特に限定されないが、300℃以下の温度で、約5分〜20分間加熱を行うことが好ましい。
一方、化学的手法による脱水閉環としては、例えば、上記ポリアミド酸溶液に、化学量論量以上の脱水剤と触媒とを加えることによって、脱水反応および有機溶媒の蒸発を行う方法を挙げることができる。この化学的手法により、固形のポリイミド樹脂を得ることができる。
上記脱水剤としては、無水酢酸等の脂肪族酸無水物;無水安息香酸等の芳香族酸無水物;N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド等のカルボジイミド類等を挙げることができる。また、上記触媒としては、トリエチルアミン等の脂肪族第3級アミン類;ジメチルアニリン等の芳香族第3級アミン類;ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、イソキノリン等の複素環式第3級アミン類等を挙げることができる。なお、化学的手法による脱水閉環を行う際の温度条件は、100℃以下であることが好ましく、反応時間は、約1分〜50時間の範囲内で行うことが好ましい。また、有機溶媒の蒸発は、200℃以下の温度で、約5分〜120分間の範囲の時間で行うことが好ましい。
なお、上記の熱的手法および化学的手法では、溶媒を蒸発させる方法について説明したが、溶媒を蒸発させないで固形のポリイミド樹脂方法を得る方法もある。具体的には、上記熱的手法または化学的手法によって得られるポリイミド樹脂溶液を、貧溶媒中に加え、ポリイミド樹脂を析出させるとともに、未反応のモノマー(酸二無水物および/またはジアミン)を除去して精製・乾燥することにより、固形のポリイミド樹脂を得る方法である。上記貧溶媒としては、ポリイミド樹脂溶液の溶媒とは良好に混合するが、ポリイミド樹脂は溶解しにくい性質の溶媒であれば特に限定されるものではなく、例えば、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ベンゼン、メチルセロソルブ(登録商標)、メチルエチルケトン等を挙げることができる。
さらに、減圧下で加熱処理を行って、ポリアミド酸をイミド化する方法では、加熱条件を80℃〜400℃とすればよいが、効率よくイミド化および脱水を行うためには、100℃以上とすることがより好ましく、120℃以上とすることがさらに好ましい。なお、加熱処理における最高温度は、ポリイミド樹脂の熱分解温度以下とすることが好ましく、通常、イミド化の完結温度である約250℃から350℃の温度範囲内に設定される。また、圧力条件は、低圧であることが好ましく、具体的には、0.001気圧(1.013×102Pa)〜0.9気圧(9.119×104Pa)の範囲内であることが好ましく、0.001気圧(1.013×102Pa)〜0.8気圧(8.016×104Pa)であることがより好ましく、0.001気圧(1.013×102Pa)〜0.7気圧(7.092×104Pa)であることがさらに好ましい。
上記減圧下で加熱処理を行ってポリアミド酸をイミド化する方法によれば、イミド化によって生成する水を積極的に系外に除去することができるので、ポリアミド酸の加水分解を抑制することができる。その結果、高分子量のポリイミド樹脂を得ることができる。さらに、該方法を用いれば、ポリアミド酸の原料である酸二無水物中に不純物として存在する、片側開環物または両側開環物を閉環させることができるので、ポリイミド樹脂の分子量をより一層向上することができる。
(2)エポキシ樹脂成分(B)
次に、本発明の熱硬化性樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂成分について説明する。本発明の熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも1種のエポキシ樹脂を含んでなるエポキシ樹脂成分(B)を含有している。これにより、熱硬化性樹脂組成物に加工時の流動性を付与するとともに、熱硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化樹脂に対して、耐熱性や絶縁性を付与することができ、さらに、金属箔等の導体や回路基板に対する接着性を付与することができる。
次に、本発明の熱硬化性樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂成分について説明する。本発明の熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも1種のエポキシ樹脂を含んでなるエポキシ樹脂成分(B)を含有している。これにより、熱硬化性樹脂組成物に加工時の流動性を付与するとともに、熱硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化樹脂に対して、耐熱性や絶縁性を付与することができ、さらに、金属箔等の導体や回路基板に対する接着性を付与することができる。
また、本エポキシ樹脂成分(B)は、少なくとも1種の液状成分、すなわち、液状エポキシ樹脂を含有している。これにより、本発明の熱硬化性樹脂組成物の加工時の流動性を更に向上させることができ、また、該熱硬化性樹脂組成物をシート状とした場合、シートが割れにくくなり、スリットもしやすくなる等、取り扱い性を向上させることができる。
本発明において、液状エポキシ樹脂とは、液状のエポキシ樹脂、すなわち、60℃における粘度が100Pa・S以下のエポキシ樹脂をいう。なお、本発明においては、60℃における粘度が50Pa・S以下の液状エポキシ樹脂を用いることがより好ましい。
上記液状エポキシ樹脂は、液状であれば特に限定されるものではなく、多官能タイプであっても、単官能タイプであってもよい。多官能タイプの液状エポキシ樹脂としては、具体的には、例えば、エピコートE152(商品名、ジャパンエポキシレジン(株)製)、エピクロンN730−S(商品名、大日本インキ工業(株)製)等の液状フェノールノボラック型エポキシ樹脂;エピコートE827、エピコートE828(共に商品名、ジャパンエポキシレジン(株)製)等の液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂;エピコートE806、エピコートE807(共に商品名、ジャパンエポキシレジン(株)製)等の液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂;エピコートE630(商品名、ジャパンエポキシレジン(株)製)、GOT、GAN(共に商品名、日本化薬(株)製)等の液状グリシジルアミン型エポキシ樹脂;EPU−73(商品名、旭電化工業(株))等の液状ウレタン変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂等を挙げることができる。また、単官能タイプの液状エポキシ樹脂としては、具体的には、例えば、YED122、YED111N(共に商品名、ジャパンエポキシレジン(株)製)等を挙げることができる。なお、上記液状エポキシ樹脂は単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、上記液状エポキシ樹脂は、液状フェノールノボラック型エポキシ樹脂、液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂、またはこれらの1種以上の組合せを少なくとも含んでいることがより好ましい。これらのエポキシ樹脂は、入手しやすく、ポリイミド樹脂成分(A)、エポキシ硬化剤成分(C)、および、後述するその他成分(E)との相溶性、得られる熱硬化性樹脂組成物の加工時の流動性が優れているのでより好ましい。また、これらのエポキシ樹脂を用いることにより、熱硬化性樹脂組成物の半硬化状態における取り扱い性を向上させ、熱硬化性樹脂組成物が硬化して得られる硬化樹脂に対して優れた耐熱性や絶縁性を付与することができる。
エポキシ樹脂成分に含まれる、上記液状エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ポリグリコール型エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、エポキシ変性ポリシロキサン等のエポキシ樹脂類、これらのハロゲン化エポキシ樹脂、融点を有する結晶性エポキシ樹脂を挙げることができる。これらの上記液状エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂は、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、上記液状エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂は、分子鎖中に少なくとも1つの芳香環および/または脂肪族環を有するエポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するナフタレン型エポキシ樹脂、融点を有する結晶性エポキシ樹脂、またはこれらの1種以上の組合せを少なくとも含んでいることが好ましい。これらのエポキシ樹脂は、入手しやすく、ポリイミド樹脂成分(A)、エポキシ硬化剤成分(C)、および、後述するその他成分(E)との相溶性、熱硬化性樹脂組成物の加工時の流動性が優れているのでより好ましい。また、これらのエポキシ樹脂を用いることにより、熱硬化性樹脂組成物が硬化して得られる硬化樹脂に対して優れた耐熱性や絶縁性を付与することができる。
なお、本エポキシ樹脂成分に含まれる、上記液状エポキシ樹脂および液状エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂としては、信頼性の高い電気絶縁性を得るために、高純度のエポキシ樹脂を用いることが好ましい。すなわち、エポキシ樹脂中に含まれるハロゲン原子やアルカリ金属の含有濃度は、120℃、2気圧(2.026×105Pa)の条件下で抽出した場合に、25ppm以下であることが好ましく、15ppm以下であることがより好ましい。ハロゲンやアルカリ金属の含有濃度が25ppmよりも高くなると、熱硬化性樹脂組成物が硬化してなる硬化樹脂の電気絶縁性の信頼性が損なわれてしまう場合がある。
上記エポキシ樹脂は、エポキシ価(エポキシ当量ともいう)の下限値が150であることが好ましく、170であることがより好ましく、190であることが最も好ましい。また、上記エポキシ樹脂のエポキシ価の上限値は、700であることが好ましく、500であることがより好ましく、300であることが最も好ましい。
上記エポキシ樹脂のエポキシ価が150未満であると、熱硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化樹脂中の極性基が多くなるため、誘電特性が損なわれる場合がある。すなわち、硬化樹脂の誘電率や誘電正接が高くなってしまう場合がある。一方、エポキシ価が700を超えると、硬化樹脂中の架橋密度が低下するので、耐熱性が損なわれてしまう場合がある。
(3)エポキシ硬化剤成分(C)
次に、本発明の熱硬化性樹脂組成物に含まれるエポキシ硬化剤成分(C)について説明する。エポキシ硬化剤成分(C)は少なくとも1種のエポキシ硬化剤を含んでいる。ここで、エポキシ硬化剤とは、エポキシ樹脂に含まれるエポキシ基と反応し開環することができる基を含む化合物であればよく、たとえば、フェノール樹脂系硬化剤、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤等を挙げることができる。本発明の熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも1種のエポキシ硬化剤を含んでなるエポキシ硬化剤成分(C)を含有することにより、熱硬化性樹脂組成物に加工時の流動性を付与するとともに、熱硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化樹脂に対して、耐熱性や絶縁性を付与することができ、さらに、金属箔等の導体や回路基板に対する接着性を付与することができる。
次に、本発明の熱硬化性樹脂組成物に含まれるエポキシ硬化剤成分(C)について説明する。エポキシ硬化剤成分(C)は少なくとも1種のエポキシ硬化剤を含んでいる。ここで、エポキシ硬化剤とは、エポキシ樹脂に含まれるエポキシ基と反応し開環することができる基を含む化合物であればよく、たとえば、フェノール樹脂系硬化剤、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤等を挙げることができる。本発明の熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも1種のエポキシ硬化剤を含んでなるエポキシ硬化剤成分(C)を含有することにより、熱硬化性樹脂組成物に加工時の流動性を付与するとともに、熱硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化樹脂に対して、耐熱性や絶縁性を付与することができ、さらに、金属箔等の導体や回路基板に対する接着性を付与することができる。
また、本エポキシ硬化剤成分(C)は、少なくとも1種の液状エポキシ硬化剤を含んでいる。これにより、加工時の流動性を更に向上させることができ、また、熱硬化性樹脂組成物をシート状とした場合、シートが割れにくくなり、スリットもしやすくなる等、取り扱い性を向上させることができる。
本発明において、液状エポキシ硬化剤とは、液状のエポキシ硬化剤、すなわち、60℃における粘度が100Pa・S(1000ポイズ)以下のエポキシ硬化剤をいう。なお、本発明においては、60℃における粘度が50Pa・S以下の液状エポキシ硬化剤を用いることがより好ましい。
上記液状エポキシ硬化剤は、液状であれば特に限定されるものではないが、例えば、キシリレンジアミン、ビス(4−アミノ−3−エチルフェノキシ)メタン、アニリン、ベンジルアミン、アミノヘキサン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタアミン、ペンタエチレンヘキサアミン、A−A(カヤハードA−A:商品名、日本化薬(株))等のアミン系硬化剤;変性液状ノボラック型フェノール樹脂、変性液状クレゾールノボラック型フェノール樹脂等のフェノール樹脂系硬化剤;メチルヘキサテトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物等の酸無水物系硬化剤等を挙げることができる。なお、上記液状エポキシ硬化剤は単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
上記液状エポキシ硬化剤の中でも、ビス(4−アミノ−3−エチルフェノキシ)メタン、変性液状ノボラック型フェノール樹脂、変性液状クレゾールノボラック型フェノール樹脂、またはこれらの1種以上の組合せを少なくとも含んでいることがより好ましい。変性液状ノボラック型フェノール樹脂としては、例えば、MEH−8005(商品名、明和化成(株))、MEH−8000H(商品名、明和化成(株))、MEH−8015H(商品名、明和化成(株))、PL8208(商品名、群栄化学工業(株))等を挙げることができる。また、変性液状クレゾールノボラック型フェノール樹脂としては、例えば、PL−4826(商品名、群栄化学工業(株))、5010(商品名、大日本インキ工業(株))等の変性液状レゾール型フェノール樹脂等を挙げることができる。これらのエポキシ硬化剤は、ポリイミド樹脂成分(A)やエポキシ樹脂成分(B)、および後述するその他成分(E)との相溶性、得られる熱硬化性樹脂組成物の加工時の流動性が優れているのでより好ましい。また、これらのエポキシ硬化剤を用いることにより、熱硬化性樹脂組成物の半硬化状態における取り扱い性を向上させ、熱硬化性樹脂組成物が硬化して得られる硬化樹脂に対して優れた耐熱性や絶縁性を付与することができる。
エポキシ硬化剤成分(C)に含まれる、上記液状エポキシ硬化剤以外のエポキシ硬化剤は、特に限定されるものではなく、種々のフェノール樹脂系硬化剤、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤等を、単独で、あるいは複数を任意に組み合わせて用いればよい。
エポキシ硬化剤成分(C)に含まれる液状エポキシ硬化剤以外のフェノール樹脂系硬化剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、フェノールノボラック型フェノール樹脂(固形)、クレゾールノボラック型フェノール樹脂(固形)、ビスフェノールAノボラック型フェノール樹脂、ビフェノールクレゾールノボラック型フェノール樹脂、クレゾールメラミン共重合型フェノール樹脂、ナフトール/クレゾール共重合型フェノール樹脂、ナフタレン型フェノール樹脂等を挙げることができる。上記各フェノール樹脂の中でも、分子鎖中に少なくとも芳香環または/および脂肪族環を1つ以上有するフェノール樹脂を用いることが好ましい。これにより、ポリイミド樹脂成分(A)やエポキシ樹脂成分(B)との相溶性が向上し、また、熱硬化性樹脂組成物が硬化してなる硬化樹脂に優れた耐熱性を付与することができる。上記フェノール樹脂は、1種または2種以上を任意の割合で組み合わせて用いてもよい。
また、エポキシ硬化剤成分(C)に含まれる、液状エポキシ硬化剤以外のアミン系硬化剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、p−アミノアセトフェノン、p−アミノアセトアニリド、1−アミノアントラセン等のモノアミン類;上記(1)で説明したポリアミド酸の製造に用いられるジアミン成分として例示した各種ジアミン類;2,4,6−トリアミノピリジン、トリアムテレン等のポリアミン類等を挙げることができる。
ポリアミド酸の製造に用いられるジアミン成分として例示した各種ジアミン類としては、例示したジアミン類の中でも、芳香族ジアミンが含有されていることがより好ましく、分子量が300以上の芳香族ジアミンが含有されていることがさらに好ましく、分子量が300以上600以下の範囲内の芳香族ジアミンが含有されていることが特に好ましい。これにより、熱硬化性樹脂組成物を硬化した後の硬化樹脂に対して良好な耐熱性や誘電特性を与えることができる。上記芳香族ジアミンの分子量が300未満であると、硬化後の硬化樹脂において、構造中に含まれる極性基が多くなるため誘電特性が損なわれる場合がある。すなわち、硬化樹脂の誘電率や誘電正接が高くなってしまう場合がある。一方、分子量が600を超えると、硬化樹脂中の架橋密度が低下するので、耐熱性が損なわれてしまう場合がある。
液状エポキシ硬化剤以外のアミン系硬化剤として好適に用いられる上記芳香族ジアミンとしては、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン等のビス[(アミノフェノキシ)フェニル]アルカン類;2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等のビス[(アミノフェノキシ)フェニル]フルオロアルカン類;4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル等のビス(アミノフェノキシ)ベンゼン系化合物類;ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン等のビス(アミノフェノキシ)ケトン系化合物類;ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド等のビス[(アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド系化合物類;ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン等のビス[(アミノフェノキシ)フェニル]スルホン系化合物;ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル等のビス[(アミノフェノキシ)フェニル]エーテル系化合物類;1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン等のビス[(アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン系化合物類;4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル等のビス[(アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル系化合物類;4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物類;4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン等の(フェノキシ)フェニルスルホン系化合物類;1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン等のビス[(アミノフェノキシ)ジメチルベンジル]ベンゼン系化合物;等を挙げることができる。上記ジアミンは、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の割合で組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、上記ジアミンとしては、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテルをより好適に用いることができる。これらの化合物は、溶媒に溶解しやすく、取り扱い性に優れることに加え、入手の容易さからも好ましい。さらに、これらの化合物をエポキシ硬化剤成分(C)に含有させることにより、熱硬化性樹脂組成物を硬化させた後の硬化樹脂に対して耐熱性(ガラス転移温度が高い等)、誘電特性等の諸特性を優れたものにできる。
液状エポキシ硬化剤以外のエポキシ硬化剤として好適に用いられる酸無水物系硬化剤としては、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、ドデシル無水コハク酸、ポリアジピン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物等の脂肪族酸無水物;ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸等の脂環式酸無水物;無水フタル酸、無水トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、グリセロールトリストリメリテート等の芳香族酸無水物等を挙げることができる。上記酸無水物系硬化剤は、1種または2種以上を任意の割合で組み合わせて用いてもよい。
また、エポキシ硬化剤成分(C)に含まれる、液状エポキシ硬化剤以外のエポキシ硬化剤としては、フェノール樹脂系硬化剤、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤以外にも、例えば、アミノ樹脂類、ユリア樹脂類、メラミン樹脂類、ジシアンジアミド、ジヒドラジン化合物類、ルイス酸、およびブレンステッド酸塩類、ポリメルカプタン化合物類、イソシアネートおよびブロックイソシアネート化合物類を用いることができる。
また、本エポキシ硬化剤成分(C)に、上記液状エポキシ硬化剤および液状エポキシ硬化剤以外のエポキシ硬化剤として、上記フェノール樹脂が含有される場合には、上記フェノール樹脂は、水酸基価(水酸基当量ともいう。)の下限値が90であることが好ましく、95であることがより好ましく、100であることがさらに好ましい。また、上記フェノール樹脂の水酸基価の上限値は、300であることが好ましく、200であることがより好ましく、150であることがさらに好ましい。
上記フェノール樹脂の水酸基価が90未満であると、熱硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化樹脂中の極性基が多くなるため、誘電特性が損なわれる場合がある。すなわち、硬化樹脂の誘電率や誘電正接が高くなってしまう場合がある。一方、水酸基価が300を超えると、硬化樹脂中の架橋密度が低下するので、耐熱性が損なわれてしまう場合がある。
また、エポキシ硬化剤成分(C)に含まれる全エポキシ硬化剤(上記液状エポキシ硬化剤および液状エポキシ硬化剤以外のエポキシ硬化剤の合計)は、上記エポキシ樹脂成分(B)に含まれる全エポキシ樹脂(上記液状エポキシ樹脂および液状エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂の合計)100重量部に対して、1重量部〜100重量部の範囲内で用いることが好ましい。
(4)充填材成分(D)
本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物は、上記ポリイミド樹脂成分(A)と、上記エポキシ樹脂成分(B)と、上記エポキシ硬化剤成分(C)とに加えてさらに少なくとも一種の充填材(フィラー)を含む充填材成分(D)を含有していてもよい。充填材成分(D)を含有させることにより、熱膨張係数を更に低下させることが可能となり、それゆえ、硬化樹脂の特性を改善することができる。
本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物は、上記ポリイミド樹脂成分(A)と、上記エポキシ樹脂成分(B)と、上記エポキシ硬化剤成分(C)とに加えてさらに少なくとも一種の充填材(フィラー)を含む充填材成分(D)を含有していてもよい。充填材成分(D)を含有させることにより、熱膨張係数を更に低下させることが可能となり、それゆえ、硬化樹脂の特性を改善することができる。
上記充填材成分(D)に含まれる充填材としては、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、酸化チタン、炭酸カルシウム、アルミナ、シリカ等の無機充填材(無機フィラー);アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂等の有機充填材(有機フィラー)等を挙げることができる。
中でも上記充填材は上記無機充填材であることがより好ましい。無機充填材を含有させることにより、無機充填材は高濃度に充填できるので、熱硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化樹脂の熱膨張係数を低下させることができ、半硬化状態(Bステージ状態)から硬化する過程で熱硬化性樹脂組成物の流動性を妨げることがなく、溶融粘度の上昇を回避することができる。また、上記硬化樹脂に対しても、優れた誘電特性を付与することができる。
上記充填材は、無機充填材であることがより好ましいが、中でもシリカであることがさらに好ましい。また、充填材として用いるシリカは、破砕状溶融シリカであってもよいし、球状溶融シリカであってもよいが、球状溶融シリカであることが特に好ましい。
球状溶融シリカは、形状がほぼ球形であり、主たる材質がシリカ(SiO2)であれば特に限定されるものではない。ここで、球状溶融シリカの真円度は0.5以上であればよく、0.6以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましい。
上記球状溶融シリカの材質は、上述したように、シリカすなわち二酸化ケイ素であれば特に限定されるものではないが、珪石を高温で溶融して得られるガラス状(非晶質)のシリカであることが好ましい。球状溶融シリカは熱膨張率があらゆる工業材料中最も小さい等、熱特性に優れていることに加え、優れた電気特性(絶縁性等)および科学特性(安定性等)を備えている。かかる球状溶融シリカを用いることで、充填材を含有する熱硬化性樹脂組成物が溶融した状態でも、その流動性(溶融粘度)への悪影響を小さくすることができ、かつ、硬化後の硬化樹脂の熱膨張係数を小さくすることができる。
上記球状溶融シリカの平均粒径は、3μm以下であればよいが、2μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることがさらに好ましい。また、上記球状溶融シリカの粒度分布も特に限定されるものではないが、粒径10μm以上の粒子が、球状溶融シリカ全量の10重量%以下となっていることが好ましく、5重量%以下となっていることがより好ましく、1重量%以下となっていることがさらに好ましい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物を微細配線が形成された基板上に積層する場合に、上記球状溶融シリカの平均粒径が3μmより大きいと、配線間に球状溶融シリカが詰まり易くなり、回路埋め込み性を低下させる傾向がある。また、粒径10μm以上の粒子が、球状溶融シリカ全量の10重量%より大きい場合も、配線間に球状溶融シリカが詰まり易くなり、回路埋め込み性を低下させる傾向がある。
なお、球状溶融シリカの平均粒径はより小さい方が高密度回路形成には適していると思われるが、粒径が小さくなるほどフィラーの表面積が大きくなり、熱硬化性樹脂組成物全体の流動性が低下することになる。そのため、高密度回路形成と流動性という双方の物性を両立させるためには、球状溶融シリカの粒径は小さくなりすぎても好ましくない。それゆえ、球状溶融シリカの粒径は、0.1μm以上であってかつ上記範囲であることが好ましい。
本発明では、上記球状溶融シリカをはじめとする充填材は、そのまま用いることもできるが、ポリイミド樹脂成分(A)との親和性を高めるように表面処理されたものであることがより好ましい。このような表面処理の方法は特に限定されるものではなく、公知の表面処理剤を適宜用いて公知の条件で処理すればよい。
上記表面処理剤として用いることができる化合物としては、具体的には、例えば、シランカップリング剤やチタネート系カップリング剤等の各種カップリング剤、ステアリン酸等の脂肪酸、各種界面活性剤、各種樹脂酸、各種リン酸エステル等を用いることができる。これらの中でも、得られる表面処理済の球状溶融シリカまたは充填材を熱硬化性樹脂組成物中で良好に分散させる分散性や、充填材を含有する熱硬化性樹脂組成物の溶融粘度の低下を回避・抑制できる点から、カップリング剤を用いることがより好ましい。
本発明では、カップリング剤として、上述したように、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤等を好適に用いることができるが、本発明で用いることができるカップリング剤は、これらに限定されるものではない。また、かかるカップリング剤は、一般に、充填材の表面処理剤として市販されているものを好適に用いることができる。
上記シランカップリング剤は、一般に、ケイ素(Si)を含み、一分子中に有機材料と親和性の高い置換基を持つ有機官能性基、および、無機材料と親和性の高い極性基を有している。このようなシランカップリング剤としては、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等を挙げることができる。これら以外にも、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等のシランモノマーも好適に用いることができる。これら各化合物は、単独で用いてもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
上記チタネート系カップリング剤は、チタンを含み、シランカップリング剤と同様に、一分子中に有機材料と親和性の高い置換基を持つ有機官能性基、および、無機材料と親和性の高い極性基を有している。かかるチタネート系カップリング剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、トリーn−ブトキシチタンモノステアレート、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、ブチルチタネートダイマー、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンオクチレングリコレート、ジヒドロキシビス(アンモニウムラクテート)チタニウム、ジヒドロキシチタンビスラクテート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、イソプロピルトリスステアロイイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミドエチル・アミノエチル)チタネート等を挙げることができる。これらの各化合物は、単独で用いてもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。また、上記シランカップリング剤およびチタネート系カップリング剤を組み合わせて用いてもよいし、これら以外の公知のカップリング剤を、単独または2種類以上を組み合わせて併用して用いてもよい。
球状溶融シリカをはじめとする上記充填材の表面処理方法は、上述したカップリング剤等の表面処理剤を用いて公知の条件で処理すればよいが、より具体的には、特に、カップリング剤を用いる場合には、撹拌法や湿式法等を用いることができる。
上記撹拌法は、予めカップリング剤と球状溶融シリカ等の充填材とを撹拌装置に仕込み、適切な条件で撹拌する方法である、上記撹拌装置としては、ヘンシェルミキサー等の高速回転で撹拌・混合が可能なミキサーを用いることができるが、特に限定されるものではない。撹拌の条件も特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、球状溶融シリカ等の充填材をヘンシェルミキサーに仕込み、1000rpmで3分間予備混合した後、カップリング剤を滴下し、さらに1000rpmで5分間本混合する条件を挙げることができる。なお、上記予備混合および本混合の回転速度や混合時間は、用いるカップリング剤の種類や、球状溶融シリカ等の充填材およびカップリング剤の配合内容や配合量により適切な条件を選択すればよい。
上記湿式法は、表面処理しようとする球状溶融シリカ等の充填材の表面積に対して十分な量のカップリング剤を、水または有機溶剤に溶解してカップリング剤分子を加水分解させることにより、表面処理溶液とする。この表面処理溶液の濃度は特に限定されるものではないが、例えば、約3重量%を挙げることができる。得られた表面処理溶液に対して球状溶融シリカ等の充填材を添加し、スラリー状となるように撹拌する。撹拌によってカップリング剤と球状溶融シリカ等の充填材とを十分反応させた後、濾過や遠心分離等の方法により球状溶融シリカ等の充填材を表面処理溶液から分離し、加熱乾燥する。
なお、上記撹拌法や湿式法以外にも、例えば、球状溶融シリカ等の充填材を溶媒中に分散させてなる充填材分散液に直接上記カップリング剤を添加し、球状溶融シリカ等の充填材の表面を改質するインテグラルブレンド法も好適に用いることができる。
本発明では、上記のようなカップリング剤を用いて球状溶融シリカ等の充填材の表面処理を行うことで、特に、ポリイミド樹脂成分(A)、エポキシ樹脂成分(B)等の樹脂成分、および、エポキシ硬化剤成分(C)と、充填材成分(D)としての球状溶融シリカ等の充填材との密着性を向上させ、ポリイミド樹脂成分(A)、エポキシ樹脂成分(B)、および、エポキシ硬化剤成分(C)中における、充填材成分(D)の分散性を向上させることができる。それゆえ、本発明にかかる充填材を含有する熱硬化樹脂組成物において、硬化後の硬化樹脂の機械的強度、耐熱性、耐湿性等の特性を向上させることができる。
なお、球状溶融シリカ等の充填材の表面を表面処理する段階については特に限定されるものではなく、本発明にかかる充填材を含有する熱硬化性樹脂組成物を調製する段階で配合してもよいし、予め表面処理が完了した球状溶融シリカ等の充填材を用いてもよい。
(5)その他の成分(E)
本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物は、上記ポリイミド樹脂成分(A)と、上記エポキシ樹脂成分(B)と、上記エポキシ硬化剤成分(C)と、必要に応じて上記充填材成分(D)とを含有していればよいが、必要に応じて、さらにその他の成分(E)を含んでいてもよい。かかる他の成分としては、例えば、エポキシ樹脂成分(B)とエポキシ硬化剤成分(C)との反応を促進するための硬化促進剤、エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂成分等を挙げることができる。
本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物は、上記ポリイミド樹脂成分(A)と、上記エポキシ樹脂成分(B)と、上記エポキシ硬化剤成分(C)と、必要に応じて上記充填材成分(D)とを含有していればよいが、必要に応じて、さらにその他の成分(E)を含んでいてもよい。かかる他の成分としては、例えば、エポキシ樹脂成分(B)とエポキシ硬化剤成分(C)との反応を促進するための硬化促進剤、エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂成分等を挙げることができる。
上記硬化促進剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、トリフェニルホスフィン等のホスフィン系化合物;3級アミン系、トリメタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラエタノールアミン等のアミン系化合物;1,8−ジアザ−ビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムテトラフェニルボレート等のボレート系化合物等、イミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;2−メチルイミダゾリン、2−エチルイミダゾリン、2−イソプロピルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2−ウンデシルイミダゾリン、2,4−ジメチルイミダゾリン、2−フェニル−4−メチルイミダゾリン等のイミダゾリン類;2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン等のアジン系イミダゾール類等が挙げられる。エポキシ硬化剤にアミノ基が含まれる場合、熱硬化性樹脂組成物の溶融粘度をさらに低下させることができる点で、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン等のイミダゾール類を用いることが好ましい。
上記硬化促進剤は、1種または2種以上を組み合わせて用いればよく、全熱硬化性樹脂組組成物100重量部に対して、0.01重量部〜10重量部の範囲内で用いることが好ましい。
さらに、上記エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂成分としては、例えば、ビスマレイミド樹脂、ビスアリルナジイミド樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ヒドロシリル硬化樹脂、アリル硬化樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂;熱硬化性高分子の高分子鎖の側鎖または末端にアリル基、ビニル基、アルコキシシリル基、ヒドロシリル基、等の反応性基を有する側鎖反応性基型熱硬化性高分子等を挙げることができる。エポキシ樹脂以外のこれらの熱硬化性樹脂成分を用いることにより、本発明の熱硬化性樹脂組成物または該熱硬化性樹脂組成物を硬化させた硬化樹脂の、接着性や耐熱性、加工性等の諸特性を改善することができる。上記熱硬化性成分は、1種または2種以上を適宜組み合わせて用いればよい。
なお、上記硬化促進剤やエポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂成分は、上記熱硬化性樹脂組成物が硬化してなる硬化樹脂の誘電特性を損なわない範囲で、上記熱硬化性樹脂組成物に含有させることが好ましい。
(6)本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物の利用
次に、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物の利用について説明するが、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物の利用の態様は以下の説明に限定されるものではない。
次に、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物の利用について説明するが、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物の利用の態様は以下の説明に限定されるものではない。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、例えば、適当な溶媒に添加して攪拌することによって、樹脂溶液として用いることができる。あるいは、かかる樹脂溶液は、熱硬化性樹脂組成物の各成分を適当な溶媒に溶解してなる各成分毎の溶液を混合することによっても得ることができる。
かかる樹脂溶液に用いることができる溶媒は、熱硬化性樹脂組成物または該熱硬化性樹脂組成物の各成分を溶解し得る溶媒であれば特に限定されるものではないが、沸点が150℃以下であることが好ましい。かかる溶媒としては、具体的には、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン等の環状エーテル;エチレングリコールジメチルエーテル、トリグライム、ジエチレングリコール、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ等の鎖状エーテル等のエーテル類を好適に用いることができる。上記溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記エーテル類に、トルエン、キシレン類、グリコール類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、環状シロキサン、鎖状シロキサン等、またはこれらの2種以上の混合物を混合した混合溶媒も好適に用いることができる。
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、あらかじめシート状に成形加工しておくことによって、樹脂シートとして用いることができる。具体的には、熱硬化性樹脂組成物のみからなる単層シート、フィルム基材の片面あるいは両面に上記熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂層を設けてなる2層シートまたは3層シート、フィルム基材と熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂層を交互に積層した多層シート等の積層体を挙げることができる。
上記樹脂シートは、上記樹脂溶液を支持体表面に流延または塗布し、該流延または塗布した樹脂溶液を乾燥させることによって、フィルム状に成形することができる。このフィルム状の熱硬化性樹脂組成物は、半硬化状態(Bステージ状態)にある。従って、半硬化状態のフィルム状の熱硬化性樹脂組成物を、上記支持体から剥離すれば、上記単層シートを得ることができる。また、上記積層体は、上記フィルム基材の表面に、上記樹脂溶液を流延または塗布し、該樹脂溶液を乾燥させる操作を繰り返すことによって、製造することができる。
なお、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物が半硬化状態にある場合の溶融粘度は、60℃以上150℃以下の範囲のいずれかの温度における最低溶融粘度が、10Pa・S以上10000Pa・S以下であることが好ましい。
溶融粘度が10000Pa・Sを超えると回路埋め込み性が低下し、10Pa・S未満であると、加工時に樹脂が基板の外側へ大量にはみだし基板上に残る樹脂量が減少する結果、回路を埋め込むことが出来なくなる。
上記フィルム基材として、銅やアルミニウム等の金属を用いれば、金属付き積層体を得ることもできる。すなわち、金属付き積層体は、少なくとも1つの熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂層と、少なくとも1つの金属層とを含む積層体である。なお、樹脂層は、金属層の片面にのみ設けてもよく、あるいは、金属層と樹脂層とを交互に積層させてもよい。
上記金属付き積層体は、上述したように、上記樹脂溶液を金属層表面に流延または塗布して、該樹脂溶液を乾燥することによって製造することもできるが、上記した樹脂シートに、金属箔と樹脂シートとを張り合わせる、あるいは、化学めっきやスパッタリング等により、金属層を形成することによって製造することもできる。
さらに、上記金属層が、回路基板の導体として用いることができる金属であれば、上記金属付き積層体の金属層に、ドライフィルムレジストや液状のレジスト等を用いて金属エッチング等を行って、所望のパターンの回路(以下、パターン回路)を形成することもできる。従って、上記金属付き積層体の金属層にパターン回路を形成し、本発明の熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂層を設ければ、フレキシブルプリント配線基板やビルドアップ回路基板等の回路基板として用いることが可能になる。
パターン回路が形成された金属層に対しては、樹脂層として、上記した半硬化状態の樹脂シートを用いてもよい。本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いてなる半硬化状態の樹脂シートは、温度上昇時に適度な流動性を有しているため、熱プレス処理、ラミネート処理(熱ラミネート処理)、熱ロールラミネート処理等の熱圧着処理を行う場合にパターン回路の埋め込みを好適に行うことができる。これにより、金属層と樹脂層とが貼り合わせられる。
上記熱圧着処理における処理温度は、50℃以上200℃以下であることが好ましく、60℃以上180℃以下であることがより好ましく、特に80℃以上130℃以下であることが好ましい。上記処理温度が200℃を超えると、熱圧着処理時に、樹脂層が硬化してしまう可能性がある。一方、上記処理温度が50℃未満であると、樹脂層の流動性が低く、パターン回路を埋め込むことが困難となる。
上記パターン回路上に設けられる樹脂層は、パターン回路を保護する保護材料あるいは、多層の回路基板での層間絶縁材料となる。そのため、パターン回路を埋め込んだ後、露光処理、加熱キュア等を行うことによって、完全に硬化させることが好ましい。
なお、本発明の熱硬化性樹脂組成物を硬化させる場合には、エポキシ樹脂成分(B)の硬化反応を十分に進行させるために、金属層と樹脂層とを貼り合せた後に、ポスト加熱処理を実施することが好ましい。ポスト加熱処理の条件は特に限定されないが、150℃以上200℃以下の範囲内の温度条件下、10分以上、3時間以下の加熱処理を行うことが好ましい。
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物を繊維からなるシート状補強基材にホットメルト法またはソルベント法により塗工、含浸させ、加熱、半硬化させることによりプリプレグを得ることが出来る。すなわち、本発明のプリプレグは、本発明の熱硬化性樹脂組成物に繊維状充填材を含有させた繊維強化型樹脂シートである。上記繊維からなるシート状補強基材としては、特に限定されるものではないが、例えばガラス布、ガラスマット、芳香族ポリアミド繊維布、芳香族ポリアミド繊維マットやフッソ系樹脂繊維など、公知慣用のプリプレグ用繊維を好適に使用することができる。上記繊維からなるシート状補強基材に樹脂を塗布、含浸させる方法としては、特に限定されるものではないが、上述したように、ホットメルト法やソルベント法等を好適に用いることができる。ホットメルト法では、熱硬化性樹脂組成物が室温で固形または半固形の場合は、溶媒に溶解していない本発明の熱硬化性樹脂組成物を使用し、樹脂と剥離性の良い塗工紙に一旦コーティングしそれをラミネートしたり、ダイコーターにより直接塗工する方法によりプリプレグを製造したりすることが出来る。ソルベント法では、有機溶剤に該熱硬化性樹脂組成物を溶媒に溶解した樹脂溶液にシート状補強基材を浸漬、含浸させ、その後乾燥させてプリプレグを製造することが出来る。
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。当業者であれば、本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更や修正および改変を行うことが可能である。
なお、本発明の熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂シートのBステージ可撓性、流動性、積層性、揮発成分量の算出、および、該樹脂シートを加熱硬化してなる硬化樹脂シートの誘電特性およびガラス転移温度、熱分解温度、熱膨張係数、破断強度は、以下のように測定し、評価した。
〔Bステージ可撓性〕
PETフィルム基材付の樹脂シートを、内径3インチ、肉厚10mmの円筒に、熱硬化性樹脂組成物の層を外側にして1周以上巻きつけて、該熱硬化性樹脂組成物の層に割れが発生しなかった場合を○(合格)、発生した場合を×(不合格)とした。
PETフィルム基材付の樹脂シートを、内径3インチ、肉厚10mmの円筒に、熱硬化性樹脂組成物の層を外側にして1周以上巻きつけて、該熱硬化性樹脂組成物の層に割れが発生しなかった場合を○(合格)、発生した場合を×(不合格)とした。
〔流動性〕
剪断モードの動的粘弾性測定装置(CVO、Bohling社製)を用い、加熱硬化前の樹脂シートについて、下記の条件で溶融粘度(Pa・S)を測定した。各樹脂シートの溶融粘度の評価には、60℃以上150℃以下の温度範囲における最も小さい溶融粘度(最低溶融粘度)を用いた。
剪断モードの動的粘弾性測定装置(CVO、Bohling社製)を用い、加熱硬化前の樹脂シートについて、下記の条件で溶融粘度(Pa・S)を測定した。各樹脂シートの溶融粘度の評価には、60℃以上150℃以下の温度範囲における最も小さい溶融粘度(最低溶融粘度)を用いた。
測定周波数:1Hz
昇温速度 :12℃/分
測定試料 :直径3mmの円形状の樹脂シート
〔積層性〕
高さが18μm、回路幅が50μm、回路間距離が50μmにて形成された回路を有するガラスエポキシ基板FR−4(MCL−E−67、日立化成工業(株)社製;銅箔の厚さ50μm、全体の厚さ1.2mm)の回路形成面と、PETフィルム基材付の樹脂シート(50μmの厚み)の熱硬化性樹脂組成物の層の表面が接するように重ねて、温度150℃、圧力1MPaの条件下で5分の加熱加圧を行って積層体を得た。積層体からPETフィルムをはがし熱硬化性樹脂組成物の表面からを、光学顕微鏡(倍率50倍)を用いて目視によって観察し、回路間の泡のかみ込みの有無を確認した。
昇温速度 :12℃/分
測定試料 :直径3mmの円形状の樹脂シート
〔積層性〕
高さが18μm、回路幅が50μm、回路間距離が50μmにて形成された回路を有するガラスエポキシ基板FR−4(MCL−E−67、日立化成工業(株)社製;銅箔の厚さ50μm、全体の厚さ1.2mm)の回路形成面と、PETフィルム基材付の樹脂シート(50μmの厚み)の熱硬化性樹脂組成物の層の表面が接するように重ねて、温度150℃、圧力1MPaの条件下で5分の加熱加圧を行って積層体を得た。積層体からPETフィルムをはがし熱硬化性樹脂組成物の表面からを、光学顕微鏡(倍率50倍)を用いて目視によって観察し、回路間の泡のかみ込みの有無を確認した。
回路間の泡のかみ込み(回路間に樹脂が入り込んでいない部分)が確認されなかった場合の積層性を合格(○)とし、泡のかみ込み確認がされた場合の積層性を不合格(×)として評価を行った。
〔樹脂シート中の揮発成分量の算出〕
質量分析装置(TGA50、島津製作所社製)を用い、樹脂シートを試料容器に入れて、下記条件にて重量変化を測定し、100℃〜300℃の範囲で減少した重量を、重量変化前の樹脂シートの重量に対する割合で算出し、揮発成分量とした。
質量分析装置(TGA50、島津製作所社製)を用い、樹脂シートを試料容器に入れて、下記条件にて重量変化を測定し、100℃〜300℃の範囲で減少した重量を、重量変化前の樹脂シートの重量に対する割合で算出し、揮発成分量とした。
測定温度範囲:15℃〜350℃
昇温速度 :20℃/分
測定雰囲気 :窒素、流量50mL/分
試料容器 :アルミニウム製
〔誘電特性〕
空洞共振器摂動法複素誘電率評価装置(商品名、関東電子応用開発社製)を用い、下記条件にて、硬化樹脂シートの誘電率および誘電正接を測定した。
昇温速度 :20℃/分
測定雰囲気 :窒素、流量50mL/分
試料容器 :アルミニウム製
〔誘電特性〕
空洞共振器摂動法複素誘電率評価装置(商品名、関東電子応用開発社製)を用い、下記条件にて、硬化樹脂シートの誘電率および誘電正接を測定した。
測定周波数:3GHz、5GHz、10GHz、
測定温度 :22℃〜24℃
測定湿度 :45%〜55%
測定試料 :上記測定温度・測定湿度条件下で、24時間放置した樹脂シート
〔ガラス転移温度〕
DMS−200(セイコー電子工業社製)を用い、測定長(測定治具間隔)を20mmとして、下記の条件下で、硬化樹脂シートの貯蔵弾性率(ε’)の測定を行い、該貯蔵弾性率(ε’)の変曲点をガラス転移温度(℃)とした。
測定温度 :22℃〜24℃
測定湿度 :45%〜55%
測定試料 :上記測定温度・測定湿度条件下で、24時間放置した樹脂シート
〔ガラス転移温度〕
DMS−200(セイコー電子工業社製)を用い、測定長(測定治具間隔)を20mmとして、下記の条件下で、硬化樹脂シートの貯蔵弾性率(ε’)の測定を行い、該貯蔵弾性率(ε’)の変曲点をガラス転移温度(℃)とした。
測定雰囲気:乾燥空気雰囲気下、
測定温度 :20℃〜400℃
測定試料 :幅9mm,長さ40mmにスリットした硬化樹脂シート
〔熱分解温度〕
質量分析装置(TGA50、島津製作所社製)を用い、硬化樹脂シートを試料容器に入れて、下記条件にて重量変化を測定し、JIS K 7120で定義される開始温度を熱分解温度とした。
測定温度 :20℃〜400℃
測定試料 :幅9mm,長さ40mmにスリットした硬化樹脂シート
〔熱分解温度〕
質量分析装置(TGA50、島津製作所社製)を用い、硬化樹脂シートを試料容器に入れて、下記条件にて重量変化を測定し、JIS K 7120で定義される開始温度を熱分解温度とした。
測定温度範囲:30℃〜950℃
昇温速度 :20℃/分
測定雰囲気 :空気、流量50mL/分
試料容器 :白金製のマクロセル
試料量:5〜10mg
〔熱膨張係数〕
硬化樹脂シートの熱膨張係数は、セイコーインスツルメント社製・商品名:TMA120Cを用い測定した。下記所定の測定条件にて室温から200℃まで昇温させながら温度に対する寸法変化を測定した後、一旦冷却した。この操作により、測定サンプル中の残留応力を開放し、再度下記測定条件の測定温度範囲にて寸法変化を測定した。この2回目の測定において、温度−寸法変化の曲線における変曲点の温度をガラス転移温度(Tg)とし、−55℃〜125℃の温度範囲における平均熱膨張係数をサンプルの熱膨張係数として算出した。
昇温速度 :20℃/分
測定雰囲気 :空気、流量50mL/分
試料容器 :白金製のマクロセル
試料量:5〜10mg
〔熱膨張係数〕
硬化樹脂シートの熱膨張係数は、セイコーインスツルメント社製・商品名:TMA120Cを用い測定した。下記所定の測定条件にて室温から200℃まで昇温させながら温度に対する寸法変化を測定した後、一旦冷却した。この操作により、測定サンプル中の残留応力を開放し、再度下記測定条件の測定温度範囲にて寸法変化を測定した。この2回目の測定において、温度−寸法変化の曲線における変曲点の温度をガラス転移温度(Tg)とし、−55℃〜125℃の温度範囲における平均熱膨張係数をサンプルの熱膨張係数として算出した。
測定試料サイズ:長さ 約20mm×幅5mm(チャック間15mm)
測定温度範囲:(1回目)室温、(2回目)−60℃〜300℃
昇温速度:10℃/min
荷重:1g
〔破断強度〕
硬化樹脂シートの破断強度は、ストログラフVES1D(商品名、(株)東洋精機製作所製)を使用し、ビルドアップ配線板技術標準ver2に従って下記条件にて測定し、硬化樹脂シート破断時の荷重より算出した。
測定温度範囲:(1回目)室温、(2回目)−60℃〜300℃
昇温速度:10℃/min
荷重:1g
〔破断強度〕
硬化樹脂シートの破断強度は、ストログラフVES1D(商品名、(株)東洋精機製作所製)を使用し、ビルドアップ配線板技術標準ver2に従って下記条件にて測定し、硬化樹脂シート破断時の荷重より算出した。
測定試料サイズ:長さ 約80mm×幅 15mm(チャック間60mm)
引張速度:5mm/min
〔ポリイミド樹脂の合成例〕
容量2000mlのガラス製フラスコに、1480gのジメチルホルムアミド(以下、DMF)を投入し、続けて292g(1mol)の1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(三井化学(株)社製、以下、APB)および8.64g(0.04mol)の3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル(和歌山精化工業(株)社製)を入れ、窒素雰囲気下で撹拌して溶解させて、DMF溶液とした。続いて、フラスコ内を窒素雰囲気下で、DMF溶液を氷水で冷却しながら撹拌し、541.3g(1.04mol)の4、4’−(4、4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビスフタル酸無水物(GE社製、以下、IPBP)を添加し、更に3時間攪拌し、ポリアミド酸溶液を得た。上記ポリアミド酸溶液300gをフッ素樹脂でコートしたバットに移し、真空オーブンにて、200℃、5mmHg(約0.007気圧、約5.65hPa)の圧力の条件下で、3時間減圧加熱することによって、ポリイミド樹脂(PI)を得た。
引張速度:5mm/min
〔ポリイミド樹脂の合成例〕
容量2000mlのガラス製フラスコに、1480gのジメチルホルムアミド(以下、DMF)を投入し、続けて292g(1mol)の1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(三井化学(株)社製、以下、APB)および8.64g(0.04mol)の3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル(和歌山精化工業(株)社製)を入れ、窒素雰囲気下で撹拌して溶解させて、DMF溶液とした。続いて、フラスコ内を窒素雰囲気下で、DMF溶液を氷水で冷却しながら撹拌し、541.3g(1.04mol)の4、4’−(4、4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビスフタル酸無水物(GE社製、以下、IPBP)を添加し、更に3時間攪拌し、ポリアミド酸溶液を得た。上記ポリアミド酸溶液300gをフッ素樹脂でコートしたバットに移し、真空オーブンにて、200℃、5mmHg(約0.007気圧、約5.65hPa)の圧力の条件下で、3時間減圧加熱することによって、ポリイミド樹脂(PI)を得た。
〔実施例1〕
上記にて得たポリイミド樹脂と、エポキシ樹脂である液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂(E152、粘度1.6Pa・S(52℃)、エポキシ価=174g/eq、ジャパンエポキシレジン(株)社製)と、液状ノボラック樹脂(MEH−8005、粘度7.0Pa・S(25℃)、水酸基価=135、明和化成(株))と、球状溶融シリカ〔SFP−130MC(商品名、電気化学工業(株)製、平均粒径0.5μm)、表面処理剤:KBM573〕と、C11z−A(キュアゾールC11Z−A、四国化成工業(株)社製)とを、表1に示す配合でジオキソランに溶解し樹脂溶液を得た。
上記にて得たポリイミド樹脂と、エポキシ樹脂である液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂(E152、粘度1.6Pa・S(52℃)、エポキシ価=174g/eq、ジャパンエポキシレジン(株)社製)と、液状ノボラック樹脂(MEH−8005、粘度7.0Pa・S(25℃)、水酸基価=135、明和化成(株))と、球状溶融シリカ〔SFP−130MC(商品名、電気化学工業(株)製、平均粒径0.5μm)、表面処理剤:KBM573〕と、C11z−A(キュアゾールC11Z−A、四国化成工業(株)社製)とを、表1に示す配合でジオキソランに溶解し樹脂溶液を得た。
得られた樹脂溶液を、支持体である38μm厚のPETフィルム(商品名セラピールHP、東洋メタライジング社製)の表面上に流延した。その後、熱風オーブンにて60℃、80℃、100℃、120℃の温度で各1分ずつ加熱乾燥させて、PETフィルムをフィルム基材とする2層シートを得た。尚、熱硬化性樹脂組成物を含む樹脂シート(加熱硬化前)層の厚みは50μmであった。2層シートを熱硬化性樹脂組成物からなる層同士が互いに接触するように折り曲げて、熱ロールラミネーターを用い80℃で貼り合せ加工し、熱硬化性樹脂組成物を含む樹脂シートの両面にPETフィルムが設けられているシートを得た。得られたシートから両側のPETフィルムを引き剥がし100μmの熱硬化性樹脂組成物を含む樹脂シートを得た。得られた半硬化状態の樹脂シート(加熱硬化前)のBステージ可撓性、積層性、揮発成分量を、上記の評価法で評価した。また、流動性の評価では、前記100μmの樹脂シートを5枚重ね合わせた後、熱ロールラミネーターで一体化した厚みが約500μmの樹脂シートを用いた。評価結果を表3に示す。
更に、18μmの圧延銅箔(BHY−22B−T、ジャパンエナジー(株)社製)を用いて、該圧延銅箔の銅箔シャイン面に上記2層シートの熱硬化性樹脂組成物を含む層の表面が接するように重ねて、熱ロールラミネーターを用い80℃で貼り合せ加工し、更にPETフィルムを剥がすことにより、銅箔に熱硬化性樹脂組成物含む樹脂シートが積層された積層体を得た。得られた積層体を、熱風オーブンにて60℃から180℃まで1時間かけて昇温加熱し、更に180℃で1時間加熱硬化させた。得られた銅箔積層体の銅箔をエッチングにより除去し硬化樹脂シートを得た。得られた硬化樹脂シートの硬化樹脂シートの誘電特性およびガラス転移温度、熱分解温度、熱膨張係数、破断強度を測定した。その結果を表4に示す。
〔実施例2〜7〕
ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ硬化剤、充填材、硬化促進剤を、表1に示す比率で混合した以外は、実施例1と同様の手法で、半硬化状態の樹脂シート(加熱硬化前)、該樹脂シートを硬化させてなる硬化樹脂シートを得た。なお、表1中、U1000(ウルテム1000、日本GEプラスチック(株))は、ポリイミド樹脂を示す。E152(粘度1.6Pa・S(52℃)、エポキシ価=174g/eq、ジャパンエポキシレジン(株)社製)は液状フェノールノボラック型エポキシ樹脂、E827(エポキシ価=184g/eq、ジャパンエポキシレジン(株)社製)は液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂、YX4000H(60℃以下で固形、エポキシ価=197g/eq、ジャパンエポキシレジン(株)社製)は、固形のビフェニル型エポキシ樹脂である。MEH−8005(粘度7.0Pa・S(25℃)、水酸基価=135、明和化成(株))は、液状ノボラック樹脂、PSM4270(60℃以下で固形、水酸基価=104、群栄化学工業(株)社製)は、固形のフェノールノボラック型フェノール樹脂である。A−A(カヤハードA−A:商品名、アミン価=63、2.0Pa.S、日本化薬(株))は、液状ジアミン、DDS(4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、アミン価=62、和歌山精化工業(株))は固形のジアミンである。C11z−Aは、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン(キュアゾールC11Z−A、四国化成工業(株)社製)、E1は、球状溶融シリカ〔SFP−130MC(商品名、電気化学工業(株)製、平均粒径0.5μm)、表面処理剤:KBM573〕を示す。得られた樹脂シートについて、Bステージ可撓性、流動性、積層性、揮発成分量を評価し、硬化樹脂シートについて、硬化樹脂シートの誘電特性およびガラス転移温度、熱分解温度、熱膨張係数、破断強度を評価した。その結果を表3および表4に示す。
ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ硬化剤、充填材、硬化促進剤を、表1に示す比率で混合した以外は、実施例1と同様の手法で、半硬化状態の樹脂シート(加熱硬化前)、該樹脂シートを硬化させてなる硬化樹脂シートを得た。なお、表1中、U1000(ウルテム1000、日本GEプラスチック(株))は、ポリイミド樹脂を示す。E152(粘度1.6Pa・S(52℃)、エポキシ価=174g/eq、ジャパンエポキシレジン(株)社製)は液状フェノールノボラック型エポキシ樹脂、E827(エポキシ価=184g/eq、ジャパンエポキシレジン(株)社製)は液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂、YX4000H(60℃以下で固形、エポキシ価=197g/eq、ジャパンエポキシレジン(株)社製)は、固形のビフェニル型エポキシ樹脂である。MEH−8005(粘度7.0Pa・S(25℃)、水酸基価=135、明和化成(株))は、液状ノボラック樹脂、PSM4270(60℃以下で固形、水酸基価=104、群栄化学工業(株)社製)は、固形のフェノールノボラック型フェノール樹脂である。A−A(カヤハードA−A:商品名、アミン価=63、2.0Pa.S、日本化薬(株))は、液状ジアミン、DDS(4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、アミン価=62、和歌山精化工業(株))は固形のジアミンである。C11z−Aは、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン(キュアゾールC11Z−A、四国化成工業(株)社製)、E1は、球状溶融シリカ〔SFP−130MC(商品名、電気化学工業(株)製、平均粒径0.5μm)、表面処理剤:KBM573〕を示す。得られた樹脂シートについて、Bステージ可撓性、流動性、積層性、揮発成分量を評価し、硬化樹脂シートについて、硬化樹脂シートの誘電特性およびガラス転移温度、熱分解温度、熱膨張係数、破断強度を評価した。その結果を表3および表4に示す。
〔比較例1〜2〕
ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ硬化剤、充填材、硬化促進剤を、表2に示す比率で混合した以外は、実施例1と同様の手法で、半硬化状態の樹脂シート(加熱硬化前)、該樹脂シートを硬化させてなる硬化樹脂シートを得た。樹脂シートについて、Bステージ可撓性、流動性、積層性、揮発成分量を評価し、硬化樹脂シートについて、硬化樹脂シートの誘電特性およびガラス転移温度、熱分解温度、熱膨張係数、破断強度を評価した。その結果を表3および表4に示す。
ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ硬化剤、充填材、硬化促進剤を、表2に示す比率で混合した以外は、実施例1と同様の手法で、半硬化状態の樹脂シート(加熱硬化前)、該樹脂シートを硬化させてなる硬化樹脂シートを得た。樹脂シートについて、Bステージ可撓性、流動性、積層性、揮発成分量を評価し、硬化樹脂シートについて、硬化樹脂シートの誘電特性およびガラス転移温度、熱分解温度、熱膨張係数、破断強度を評価した。その結果を表3および表4に示す。
上記の結果から、ポリイミド樹脂成分(A)、エポキシ樹脂成分(B)、および、エポキシ硬化剤成分(C)を必須成分とした熱硬化性樹脂組成物においてエポキシ樹脂成分(B)、エポキシ硬化剤成分(C)の少なくとも一方に液状成分を含有し、当該液状成分の合計含有量が、上記ポリイミド樹脂成分(A)と、エポキシ樹脂成分(B)と、エポキシ硬化剤成分(C)との合計重量に対して40重量%以上80重量%以下である熱硬化性樹脂組成物を用いて樹脂シートを得ることにより半硬化状態における可撓性および加工時の流動性を得ることができることが判る。またかかる熱硬化性樹脂を硬化させてなる硬化樹脂は誘電特性に優れ、耐熱性、強度が良好なものとなることが判る。
以上のように、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも1種のポリイミド樹脂を含むポリイミド樹脂成分(A)と、少なくとも1種のエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂成分(B)と、少なくとも1種のエポキシ硬化剤を含むエポキシ硬化剤成分(C)とを必須成分としてなるものであり、エポキシ樹脂成分(B)およびエポキシ硬化剤成分(C)の少なくとも一方は、液状成分を含有し、当該液状成分の合計含有量が、上記ポリイミド樹脂成分(A)と、エポキシ樹脂成分(B)と、エポキシ硬化剤成分(C)との合計重量に対して40重量%以上80重量%以下である。そのため従来のものと比べて、低温での接着が可能であり、低温での加工性や取り扱い性に優れるのみならず、半硬化状態における可撓性および加工時の流動性に優れ、さらに、硬化後の硬化樹脂は耐熱性や誘電特性にも優れている。それゆえ、本発明にかかる感光性樹脂組成物は、樹脂溶液や樹脂シートをはじめとして、熱硬化性樹脂を含む、GHz帯域での低誘電率や低誘電正接が要求されるフレキシブルプリント配線板やビルドアップ回路基板、積層体フィルムや積層体を製造する分野に利用することができる。さらには、このようなフィルムや積層体を用いた電子部品の製造に関わる分野にも広く応用することが可能である。
Claims (9)
- 少なくとも1種のポリイミド樹脂を含むポリイミド樹脂成分(A)と、少なくとも1種のエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂成分(B)と、少なくとも1種のエポキシ硬化剤を含むエポキシ硬化剤成分(C)とを含んでなる熱硬化性樹脂組成物であって、
上記エポキシ樹脂成分(B)およびエポキシ硬化剤成分(C)の少なくとも一方が液状成分を含有しており、
上記エポキシ樹脂成分(B)に含有される上記液状成分は、液状エポキシ樹脂であり、 上記エポキシ硬化剤成分(C)に含有される上記液状成分は、液状エポキシ硬化剤であり、
上記液状成分の合計含有量が、上記ポリイミド樹脂成分(A)と、エポキシ樹脂成分(B)と、エポキシ硬化剤成分(C)との合計重量に対して40重量%以上80重量%以下であることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。 - 上記エポキシ樹脂成分(B)が液状エポキシ樹脂を含有し、且つ、上記エポキシ硬化剤成分(C)が液状エポキシ硬化剤を含有していることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
- 60℃以上150℃以下の温度範囲において、最低溶融粘度が10Pa・S以上10000Pa・S以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
- さらに、少なくとも一種の充填材を含む充填材成分(D)を含有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
- 請求項1ないし5のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物を有機溶媒に溶解させてなる樹脂溶液。
- 請求項1ないし5のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物を繊維状充填材に含浸してなるプリプレグ。
- 請求項1ないし5のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物によって形成された樹脂層を少なくとも1層含んでなることを特徴とする積層体。
- 請求項1ないし5のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物を有していることを特徴とする回路基板。
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