JP2002212320A - プリプレグおよび極低温タンク - Google Patents

プリプレグおよび極低温タンク

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JP2002212320A
JP2002212320A JP2001014221A JP2001014221A JP2002212320A JP 2002212320 A JP2002212320 A JP 2002212320A JP 2001014221 A JP2001014221 A JP 2001014221A JP 2001014221 A JP2001014221 A JP 2001014221A JP 2002212320 A JP2002212320 A JP 2002212320A
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肇 岸
Hiroaki Ninomiya
宏明 二宮
Ryuji Sawaoka
竜治 澤岡
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Abstract

(57)【要約】 【課題】極低温環境下においても、クラックの生じ難
い、かつ、圧縮強度等の強度特性にも優れた極低温用タ
ンクの製造に好適に用いられるプリプレグ、及びそのよ
うな高品質な極低温用タンクを提供すること。 【解決手段】次の構成要素[A]、構成要素[B]、及
び硬化剤を含んでなるエポキシ樹脂組成物が炭素繊維に
含浸されてなるプリプレグであって、前記樹脂組成物
が、全エポキシ樹脂100重量部に対し、前記構成要素
[A]を5〜40重量部、前記構成要素[B]を60〜
95重量含み、180℃で2時間加熱せしめて得られる
硬化物のガラス転移温度が150℃以上である極低温タ
ンク用プリプレグ。 [A]3官能エポキシ樹脂又は4官能エポキシ樹脂の少
なくとも一方 [B]2官能エポキシ樹脂

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液体ヘリウム、液
体酸素、液体窒素、液体水素等の極低温液体ガスの貯留
に用いる極低温タンク用プリプレグ及び極低温での強度
特性に優れた極低温用タンクに関する。
【0002】
【従来の技術】液体窒素を用いた極低温環境下における
超伝導等の研究開発が近年活発化するに伴い、かかる研
究用材料についても、ステンレス鋼、チタン合金、アル
ミニウム合金等金属材料や、繊維強化複合材料等の非金
属材料の検討が進められている。
【0003】繊維強化複合材料は、強化繊維とマトリッ
クス樹脂を構成要素とする材料であり、軽量、高強度、
高剛性といった特徴を有する。
【0004】しかし、繊維強化複合材料は、繊維軸方向
の物性とそれ以外の方向の物性に大きな差がある異方性
材料でもあり、繊維軸の配向や積層構成を選択すること
により、材料全体としては疑似等方性とし得るが、強化
繊維自体が異方性材料であり、かつ、マトリックス樹脂
という別の構成要素が混在するため、不均質な材料でも
あり、材料内に線膨張係数の不均一が生じたり、材料全
体としても面方向と厚み方向で強度、剛性、線膨張係数
等の物性が異なる等の不都合が生じる。
【0005】宇宙航空分野やリニアモーターカー等の高
速輸送分野では、軽量性が特に重要視され、繊維強化複
合材料の適用範囲が拡大しつつあるが、使用温度範囲
が、高温・室温から極低温環境にまで拡がると、繊維強
化複合材料のこのような特性により、熱収縮応力による
材料材内部が生じ易くなる。
【0006】さらに、、かかる内部歪みに加え、液体ガ
ス充填圧力による負荷(主として引張負荷)歪みが加わ
り、材料内部にクラックが多数生じることがあり、液体
水素タンク等の極低温用タンクとしては、貯留されたガ
スのリークの危険性が高いものであった。
【0007】特開平11−106478号公報には、極
低温下において耐クラック性の良好な硬化物を与えるエ
ポキシ樹脂組成物として、エポキシ当量が200〜20
00の可とう性エポキシ樹脂50〜90重量%と、エポ
キシ当量100〜500の反応性希釈剤10〜50重量
%を配合する技術が開示されているが、かかる技術で
は、極低温用タンクに用いた場合、硬化樹脂の剛性が不
足し、タンクに必要とされる圧縮強度が著しく低くなる
欠点があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、極低
温環境下においても、クラックの生じ難い、かつ、圧縮
強度等の強度特性にも優れた極低温用タンクの製造に好
適に用いられるプリプレグ、及びそのような高品質な極
低温用タンクを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、前記課題を解
決するため、次の構成を有する。即ち、次の構成要素
[A]、構成要素[B]、及び硬化剤を含んでなるエポ
キシ樹脂組成物が炭素繊維に含浸されてなるプリプレグ
であって、前記樹脂組成物が、全エポキシ樹脂100重
量部に対し、前記構成要素[A]を5〜40重量部、前
記構成要素[B]を60〜95重量含み、180℃で2
時間加熱せしめて得られる硬化物のガラス転移温度が1
50℃以上である極低温タンク用プリプレグである。 [A]3官能エポキシ樹脂又は4官能エポキシ樹脂の少
なくとも一方 [B]2官能エポキシ樹脂 また、本発明は、前記課題を解決するため、次の構成を
有する。即ち、炭素繊維を補強材とする複合材料が複数
積層されてなる構造部材が用いられてなり、前記積層層
間に平均厚さ10〜70μmの、補強材を有さない樹脂
層を備える極低温タンクである。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明によるプリプレグには、強
化繊維として炭素繊維を用いる。得られる繊維強化複合
材料の極低温下、即ち−10℃以下、好ましくは−20
℃以下、より好ましくは−30℃以下での物性を高める
ため、炭素繊維は、0゜引張強度4.4GPa以上、好
ましくは4.6GPa以上、また、引張伸度1.6%以
上、好ましくは1.8%以上である高強度、高伸度炭素
繊維を用いるのが良い。
【0011】具体的には、アクリル系、ピッチ系、レー
ヨン系等の炭素繊維が使用でき、引張強度の高いアクリ
ル系が好ましく使用できる。炭素繊維には、いわゆる有
撚糸、解撚糸、無撚糸のいずれも使用できるが、無撚糸
又は解撚糸が、複合材料の成形性と強度特性の両立の観
点から、好ましい。
【0012】また、炭素繊維は、少量で材料に充分な剛
性を発現させるように、引張弾性率の高いものを用いる
のが良い。具体的には、炭素繊維の引張弾性率は200
〜800GPa、好ましくは210〜800GPaであ
るのが良い。
【0013】炭素繊維の形態としては、繊維方向がほぼ
同方向に引き揃えられたものや、織物が使用できる。
【0014】織物は、平織り、朱子織り等いずれでも良
い。、高度の比強度、比弾性率を要求される場合は、繊
維が単一方向に引き揃えられたものを用いるのが良く、
また、プリプレグの取り扱い性や曲面賦型性は要求され
る場合は織物状のものを用いるのが良い。
【0015】炭素繊維とマトリックス樹脂との接着性
(以下、単に接着性という)を高めることで、得られる
繊維強化複合材料(以下、複合材料という)の耐クラッ
ク性、耐剥離性は高くなる。
【0016】接着性を高める方法には、炭素繊維の表面
を改質する方法、マトリックス樹脂の組成を改良する方
法がある。
【0017】かかる表面が改質された、本発明における
炭素繊維は、X線光電子分光法により測定される表面比
酸素濃度O/C(以下、単にO/Cという)が、0.0
2以上、好ましくは0.04以上、より好ましくは0.
06以上のものが良く、O/Cの上限値としては0.
3、好ましくは0.25であるのが良い。0.02未満
であると、マトリックス樹脂との親和性が低下し、得ら
れる複合材料において、負荷下での界面剥離が生じるこ
とがあり、0.3を超えると、接着性は高まるが、得ら
れる複合材料の引張強度特性が損なわれることがある。
【0018】また、本発明における炭素繊維は、X線光
電子分光法により測定される表面比窒素濃度N/C(以
下、単にN/Cという)が、0.01以上、好ましくは
0.05以上であるのが良い。0.01未満であると、
マトリックス樹脂との親和性が低下し、得られる複合材
料において、負荷下での界面剥離が生じることがある。
0.1を超えると、接着性は高まるが、得られる複合材
料の引張強度特性が損なわれることがある。
【0019】さらに、本発明における炭素繊維は、化学
修飾X線光電子分光法により測定される表面カルボキシ
ル基濃度COOH/C(以下、単にCOOH/Cという)が、
0.2%以上、好ましくは0.5%以上のものが良く、
COOH/Cの上限値としては3.0%、好ましくは2.0
%であるのが良い。0.2%未満であると、炭素繊維と
マトリックス樹脂との親和性が低下し、得られる複合材
料において、面内剪断強度の向上が望めない場合があ
る。3.0%を超えると、炭素繊維とマトリックス樹脂
との親和性は高まるが、得られる複合材料の引張強度特
性が損なわれることがある。
【0020】以下、本発明における炭素繊維の製造方法
の一例について、詳細に説明する。
【0021】ポリマー成分には、95モル%以上、好ま
しくは98モル%以上のアクリロニトリル(AN)と、
5モル%以下、好ましくは2モル%以下の耐炎化を促進
し、アクリロニトリル(AN)と共重合性のある、いわ
ゆる耐炎化促進成分を共重合したものが好適に用られ
る。
【0022】ビニル基含有化合物(以下、ビニル系モノ
マーという)からなる共重合体が好適に使用できる。ビ
ニル系モノマーの具体例としては、アクリル酸、メタク
リル酸、イタコン酸などが挙げられる。
【0023】また、耐炎化促進成分としては、一部又は
全量を、アンモニアで中和したアクリル酸、メタクリル
酸、又はイタコン酸のアンモニウム塩からなる共重合体
がより好適に使用できる。
【0024】さらに、これら成分の共重合の方法には、
いわゆる溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等が適用
できる。
【0025】さらにまた、このようにして調整された紡
糸原液の紡糸方法としては、湿式紡糸法、乾湿式紡糸
法、乾式紡糸法、又は溶融紡糸法が採用できるが、中で
も湿式紡糸法又は乾湿式紡糸法が好ましい。
【0026】紡糸原液には、有機、無機の従来公知の溶
媒が使用できるが、ジメチルスルホキシド、ジメチルホ
ルムアミド、ジメチルアセトアミド等の有機溶媒を使用
するのが好ましい。
【0027】硝酸、ロダンソーダ水溶液、塩化亜鉛水溶
液等の無機塩の濃厚水溶液を使用すると、炭素繊維の表
面粗さが不適切になることがある。紡糸後に得られる凝
固糸から、水洗、延伸、乾燥及び油剤付与等の工程を経
て、アクリル系プリカーサーが製造される。
【0028】アクリル系プリカーサーは、生産性の観点
から、その単糸繊度が3〜11μm、好ましくは3〜9
μm、より好ましくは、3〜7μmのものが良い。また、
1糸条当たりの単繊維本数が10000〜60000
本、好ましくは12000〜48000本のものが良
い。
【0029】このアクリル系プリカーサーを耐炎化、炭
化することによって、炭素繊維を得る。
【0030】耐炎化は、延伸比を0.85〜1.0とす
るのが良い。また、延伸比は、糸束としての焼けムラを
抑制するために、より好ましくは0.87〜0.94と
するのが良い延伸比が0.85未満であると、耐炎糸の
工程通過性が低下し、1.0を超えると糸束への酸素の
拡散が妨げられ、糸束中心部に焼けムラが生じることが
ある。
【0031】耐炎化の温度は、コスト削減及び炭素繊維
の性能を高める観点から、200〜300℃の温度範囲
が好ましく、それぞれの耐炎化進行度に応じ、反応熱の
蓄熱によって糸切れが生じる温度より10〜20℃低い
温度で、耐炎化するのが良い。ここに耐炎化進行度は、
得られる耐炎化糸について後述する方法によって測定さ
れる炎収縮保持率によって観測できる。
【0032】また、耐炎化は、かかる炎収縮保持率が、
70〜90%、好ましくは74〜86%、より好ましく
は76〜84%となるようにするのが良い。
【0033】耐炎化の時間、即ち、プリカーサーが耐炎
化炉内に滞留する時間は、生産性及び炭素繊維の性能を
高める観点から、10〜100分間、好ましくは30〜
60分間とするのが良い。10分未満であると、繊維の
焼けムラが顕著となり、得られる炭素繊維の性能が低下
することがある。 このようにして、プリカーサーを耐
炎化後、続く炭化工程で炭化して炭素繊維とする。
【0034】炭化は、不活性雰囲気中、300〜800
℃で予備炭化し、さらに不活性雰囲気中、800〜16
00℃、好ましくは1100〜1600℃、より好まし
くは1200〜1600℃で処理するのが良い。110
0℃未満では、得られる炭素繊維の含水率が高くなるこ
とがあり、炭化温度の上限値は、1600℃、好ましく
は1500℃とするのが良い。1600℃を超えると、
繊維内における結晶が過度に成長し、得られる炭素繊維
の圧縮強度や接着性が低下することがある。
【0035】予備炭化は、延伸比を1.0〜1.5、好
ましくは1.02〜1.3、より好ましくは1.04〜
1.15とするのが良い。この延伸比は高い程、得られ
る炭素繊維に引張弾性率を発現させる観点から有利であ
るが、1.5を超えるとプロセス性の低下が顕著となる
ことがある。
【0036】本炭化は、昇温速度及び処理時間を、所望
する炭素繊維の性能と所要コストを勘案し、適宜選択す
ることができる。昇温速度は300〜500℃/分で
は、1000℃/分以下とし、1000〜1200℃/
分では、500℃/分とするのが良い。
【0037】さらに、本発明における炭素繊維は、不活
性雰囲気中、2000〜3300℃、好ましくは200
0〜3000℃、より好ましくは2000〜2800℃
で黒鉛化することにより、強度特性が飛躍的に優れる炭
素繊維、即ち、黒鉛繊維を得ることができる。
【0038】本発明では、得られる複合材料において、
耐クラック性、耐剥離性を高めるには、炭素繊維と樹脂
との接着性を高めるが良い。接着性を高めるために、炭
素繊維に、結晶構造が小さく、活性点が多いものを使用
するのが良い。具体的には、広角X線により求めた炭素
網面の結晶サイズLCが5〜40オンク゛ストローム、好ましくは
10〜30オンク゛ストローム、より好ましくは15〜25オンク゛ス
トロームのものが良い。
【0039】電解酸化処理の電解液としては酸性及びア
ルカリ性の水溶液が使用でき、酸性水溶液の電解質に
は、硫酸、硝酸、塩酸等が使用でき、アルカリ水溶液の
電解質には、アンモニウムイオンを含む化合物、具体的
には、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、水酸
化テトラアルキルアンモニウム塩など、又はそれらの混
合物等が使用でき、中でも、炭酸水素アンモニウム、炭
酸アンモニウムが好ましく使用できる。
【0040】電解処理に要する電気量は、炭素繊維の炭
化度に合わせて最適化するのが好ましい。具体的には、
炭素繊維基質の引張強度の低下を抑止し、かつ炭素繊維
の表層の結晶性を低くする観点から、処理を複数回に分
けて電解処理するのが好ましい。具体的には電解槽1槽
当たりの電気量は1〜40クーロン/g・槽(炭素繊維
1g、1槽当たりのクーロン数)とするのが好ましい。
【0041】通電方法には、炭素繊維を電極ローラに直
接接触させて通電させる直接通電、又は炭素繊維と電極
の間に電解液を介して通電させる間接通電のいずれも採
用できるが、炭素繊維の基質を強化するために、電解処
理時の繊維束の毛羽立ちや電気スパークが押さえられる
ことから、間接通電が好ましい。
【0042】また、電解処理後は、水洗、乾燥するのが
良い。この場合、後述する樹脂組成物との親和性や接着
性を向上させるため、炭素繊維の表層面に存在する官能
基が熱分解しないように、なるべく低い温度で乾燥する
のが望ましく、具体的には、180〜250℃、好まし
くは180〜210℃で乾燥するのが良い。
【0043】本発明によるプリプレグにおいて、構成要
素[A]は、3官能エポキシ樹脂又は4官能エポキシ樹
脂の少なくとも一方である。ここに「官能」とはエポキ
シ基のことをいい、例えば、3官能エポキシ樹脂とは分
子内にエポキシ基が2個存在するエポキシ樹脂をいう。
【0044】また、構成要素[A]は、樹脂組成物中、
全エポキシ樹脂100重量部に対して5〜40重量部で
あることが必要であり、好ましくは8〜30重量部であ
るのが良い。得られる複合材料において、5重量部未満
であると湿熱環境下での耐久性が低下することがあり、
40重量部を越えると引張強度や層間剥離強度が低下す
ることがある。
【0045】構成要素[A]の具体例としては、フェノ
ールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック
型エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニル
メタン、トリグリシジルアミノフェノール、トリグリシ
ジルアミノクレゾールのようなグリシジルアミン型エポ
キシ樹脂、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エ
タンやトリス(グリシジルオキシ)メタンのようなグリ
シジルエーテル型エポキシ樹脂等、又はこれらの組み合
わせが挙げられる。
【0046】特にグリシジルアミン型エポキシ樹脂の使
用は樹脂と炭素繊維との接着性を向上させ、また、樹脂
弾性率向上によるコンポジット圧縮強度やせん断強度の
向上をもたらすため好ましい。
【0047】本発明によるプリプレグにおいて、構成要
素[B]は、2官能エポキシ樹脂である。構成要素
[B]は、樹脂組成物中、全エポキシ樹脂100重量部
に対して60〜95重量部であることが必要であり、好
ましくは70〜90重量部であるのが良い。得られる複
合材料において、60重量部未満であると引張強度や層
間剥離強度が低下することがあり、95重量部を越える
と湿熱環境下での耐久性が低下することがある。
【0048】構成要素[B]は、ビフェニル骨格、ナフ
タレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、及びオキサゾ
リドン環を有する2官能エポキシ樹脂からなる群から選
ばれる少なくとも1種のエポキシ樹脂を含んでなるもの
が良く、具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹
脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノー
ル化合物、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エ
ポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ジ
フェニルフルオレン型エポキシ樹脂、イソシアネート変
性エポキシ樹脂、又はこれらの組み合わせ等が挙げられ
る。
【0049】特に、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタ
レン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ
樹脂、イソシアネート変性エポキシ樹脂の使用は樹脂剛
性向上、吸水率低下効果を付与し、コンポジットの圧縮
強度向上、耐久性向上をもたらすため好ましい。
【0050】本発明においては、エポキシ樹脂組成物に
硬化剤を配合することが必要であり、さらに、いわゆる
硬化触媒を配合するのが好ましい。
【0051】硬化剤としては、エポキシ基と反応し得る
活性基を有する化合物を用いることができる。具体的に
は、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルス
ルホンのような芳香族アミン、脂肪族アミン、イミダゾ
ール誘導体、ジシアンジアミド、テトラメチルグアニジ
ン、チオ尿素付加アミン、メチルヘキサヒドロフタル酸
無水物のようなカルボン酸無水物、カルボン酸ヒドラジ
ド、カルボン酸アミド、ポリフェノール化合物、ノボラ
ック樹脂、ポリメルカプタン又はこれらの混合物が挙げ
られる。
【0052】特に、ジアミノジフェニルスルホンの使用
は、マトリックス樹脂を耐熱性や剛性に優れたものとす
るため好ましい。また、ジシアンジアミドの使用は、マ
トリックス樹脂を剛性に優れたものとするのに加え、い
わゆる長ライフのプリプレグを与えるため好ましい。ま
た、硬化触媒として、三フッ化ホウ素エチルアミン錯体
のようなルイス酸錯体を使用すると硬化温度を下げる効
果を有し、好ましく用いられる。
【0053】また、これら硬化剤や硬化触媒をマイクロ
カプセル化したものは、プリプレグの保存安定性を高め
る効果があるため好ましく用いられる。
【0054】さらに、これら硬化剤等には、熱硬化性樹
脂の硬化活性を高めるために適当な硬化促進剤を組み合
わせることができる。例えば、ジシアンジアミドに、3
-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素(D
CMU)、1−メチルフェニル−2,4−ジ(3,3−
ジメチル尿素)等の尿素誘導体又はイミダゾール誘導体
を組み合わせる例、カルボン酸無水物やノボラック樹脂
に第三アミンを組み合わせる例が挙げられる。
【0055】本発明では、前記したようなエポキシ樹脂
とこれら硬化剤、又はそれらを部分的に予備反応させた
化合物を樹脂組成物中に配合すると、樹脂組成物の粘度
調節や保存安定性をより高めるのに効果的である。
【0056】本発明によるプリプレグでは、前記した構
成要素[A]、構成要素[B]、及び硬化剤を含む樹脂
組成物が180℃で2時間加熱せしめて得られる硬化物
のガラス転移温度が150℃以上、好ましくは170℃
以上であるのが良い。150℃未満であると、耐熱性が
不足し、高温環境での圧縮強度等の力学特性が不足する
ことがある。
【0057】また、上記ガラス転移温度以上の温度領域
におけるゴム状平坦部剛性率G’Rが10MPa以下、
好ましくは8MPa以下であるのが良い。10MPaを
越えると、硬化成形後の複合材料の極低温における引張
強度特性が低下することがある。
【0058】本発明において、構成要素[C]は、平均
粒径が10〜70μmの範囲にある有機物又は無機物の
微粒子であり、その平均粒径は、好ましくは25〜60
μm、より好ましくは35〜60μmの範囲内であるの
が良い。10μm未満であると、マトリックス樹脂が有
する剛性を繊維強化複合材料の圧縮強度の発現に反映さ
せながら、同時に繊維強化複合材料における層間を高靭
性化せしめる効果が不足することがあり、70μmを越
えると、炭素繊維の配列が乱れ、得られる複合材料の物
性が低下することがある。
【0059】構成要素[C]の形態は、球状体であるの
が好ましく、樹脂塊を粉砕した微粉状の不定形状や、ス
プレードライ法、再沈殿法で得られるような複雑な形態
のものでも良い。また、多孔質のものでも良いし、フィ
ラー形状のものでも良い。
【0060】また、構成要素[C]は、複合材料を成型
する過程で、構成要素[A]及び[B]等樹脂組成物中
のエポキシ樹脂に実質的に不溶であることが必要であ
る。ここで、「実質的に不溶」とは、室温25℃からエ
ポキシ樹脂が硬化する温度の範囲で、前記構成要素
[A]及び[B]を含む、樹脂組成物中のエポキシ樹脂
が均一に混合されてなる流動性を有する樹脂組成物中に
溶出する成分が、構成要素[C]の全量100重量%に
対して10重量%未満、好ましくは5重量%未満、より
好ましくは2重量%未満であることを意味する。
【0061】構成要素[C]は、樹脂組成物に配合する
以前の状態で平均粒径が10〜70μmの範囲内のもの
が好適に使用できるが、複合材料を成型する過程で膨潤
したり、その表面の極少量がバルクの樹脂に溶解するこ
とにより、その平均粒径が10〜70μmの範囲内で維
持されるものであれば良い。
【0062】構成要素[C]は、樹脂組成物中のエポキ
シ樹脂に実質的に不溶である限り、有機物からなる有機
微粒子であっても、金属や無機物からなる無機微粒子で
も良いが、バルクの樹脂(未硬化のマトリックス樹脂)
との親和性の観点から、有機微粒子が好ましい。
【0063】有機微粒子としては、樹脂微粒子が用いら
れる。樹脂微粒子は熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂の少
なくとも一方からなるものである。
【0064】熱可塑性樹脂としては、主鎖に、炭素炭素
結合、アミド結合、イミド結合、シロキサン結合、エス
テル結合、エーテル結合、シロキサン結合、カーボネー
ト結合、ウレタン結合、尿素結合、チオエーテル結合、
スルフォン結合、イミダゾール結合、カルボニル結合か
ら選ばれる結合を有する熱可塑性樹脂からなるものが好
ましく、具体的には、ポリアミド、ポリカーボナート、
ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニ
レンスルフィド、ポリアリレート、ポリエステル、ポリ
アミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリシロキサン、
ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテ
ルエーテルケトン、ポリアラミド、ポリベンズイミダゾ
ール、ポリアクリレート、ポリスチレン等が挙げられ
る。
【0065】熱可塑性樹脂からなる微粒子は、少なくと
もその一部分に結晶構造又は架橋構造を有するものが好
ましい。これによりバルクの樹脂への溶解性が著しく低
められ、その形態が複合材料におけるマトリックス樹脂
中で保持され易くなる。
【0066】また、熱硬化性樹脂からなる微粒子の具体
例としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン
樹脂、ポリイミド樹脂、マレイミド樹脂、シアネート樹
脂、フラン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種
の微粒子が挙げられる。中でも、エポキシ樹脂微粒子
は、バルクの樹脂との親和性に優れることから、フェノ
ール樹脂微粒子は、耐熱性が高いことから、それぞれ好
ましい。
【0067】一方、無機微粒子としては、微粉末状シリ
カが挙げられる。微粉末状シリカは、得られる複合材料
の靭性や引張伸度を損なわない範囲で樹脂組成物に配合
するのが良い。
【0068】本発明において、構成要素[C]は、前記
構成要素[A]及び[B]の合計量100重量%に対し
て、1〜15重量%、好ましくは3〜12重量%の範囲
で樹脂組成物中に配合するのが良い。かかる範囲から外
れると、得られる複合材料において、引張強度、層間剥
離強度の向上効果が不足することがあり、樹脂組成物
中、微粒子の分散性が低下したり、プリプレグを経る場
合は、そのタック性、ドレープ性等の取り扱い性が低下
することがある。
【0069】構成要素[C]の配合量は、プリプレグか
ら直接定量でき、微粒子が実質的に不溶で、エポキシ樹
脂が充分に溶解する適当な溶媒、例えば、塩化メチレン
やN-メチルピロリドン等を使用し、室温25℃から熱
硬化性樹脂が硬化する温度の範囲で、一定量のプリプレ
グから樹脂組成物を溶出させた溶液を、微粒子の大きさ
に応じた目開きのガラスフィルター等で濾過すること
で、微粒子を分別して定量することができる。
【0070】本発明によるプリプレグでは、構成要素
[C]に富む層、即ち、その断面を観察したときに、微
粒子が偏在する状態が明瞭に確認しうる層(以下、微粒
子層と略記)がプリプレグの表面付近に形成されている
のが好ましい。これにより、プリプレグを積層して樹脂
を硬化せしめて複合材料とした場合は、複合材料層、例
えばプリプレグに由来する層間に補強材を有さない樹脂
層が形成され、それにより、隣接した複合材料単層の間
に生じる応力歪みを効果的に緩和することができ、得ら
れる複合材料に高度の引張強度が発現されるようにな
る。また、これにより、クラックの進展が抑制されし、
貯留されたガスのリークを防止する効果をもたらす。
【0071】かかる観点から、前記微粒子層は、プリプ
レグの厚さ100%に対して、プリプレグの表面から、
表面を起点として20%、好ましくは10%の深さの表
面層の範囲内に偏在しているのが良い。また、かかる微
粒子層は、複合材料製造時の利便性向上の観点から、プ
リプレグの表裏の両面に偏在しているのがより好まし
い。 ここで、表面層内に存在する構成要素[C]の割
合は、プリプレグ中、構成要素[C]の全量100重量
%に対して90〜100重量%、好ましくは95〜10
0重量%であるのが良い。
【0072】このような、微粒子層を表面に偏在させた
プリプレグは、特開平1−26651号公報、特開昭6
3−170427号公報、特開昭63−170428号
公報に開示されているような、炭素繊維とマトリックス
樹脂からなるプリプレグの表面に構成要素[C]を微粒
子の形態のまま塗布する方法、マトリックス樹脂中に微
粒子を均一に混合して樹脂組成物を調整し、炭素繊維に
含浸させる過程で炭素繊維で侵入を遮断せしめてプリプ
レグの表面に偏在させる方法、又は、予め樹脂組成物を
炭素繊維に含浸させてプリプレグを作製しておき、プリ
プレグ表面に、微粒子を高濃度で包含する樹脂フィルム
を貼付する方法等で安定に製造できる。
【0073】本発明による極低温タンクは、炭素繊維を
補強材とする複合材料が複数積層されてなる構造部材が
用いられてなり、前記積層層間に平均厚さ10〜70μ
m、好ましくは15〜50μmの、補強材を有さない樹
脂層を備えるものである。10μm未満であると、マト
リックス樹脂が有する剛性を繊維強化複合材料の圧縮強
度の発現に寄与させつつ繊維強化複合材料の層間におい
て発生する応力を緩和させる効果や、極低温下での引張
応力負荷状態でのクラックの発生や進展を抑制する効果
が低下し、貯留されたガスのリークが生じることがあ
る。70μmを越えると、繊維含有率の低下により、得
られる複合材料において比強度や比弾性率が低下するこ
とがある。
【0074】本発明においては、得られる複合材料の物
性をさらに高めるため、ビスフェノール化合物を、全エ
ポキシ樹脂100重量部に対して1〜20重量部、好ま
しくは2〜10重量部を樹脂組成物に配合するのが良
い。得られる複合材料において、1重量部未満である
と、引張強度や層間剥離強度を高める効果が小さくなる
ことがあり、20重量部を越えると、耐熱性や圧縮強度
が不足することもある。さらに、中間基材としてプリプ
レグを経由する場合は、そのタック性や取り扱い性が悪
化することがある。
【0075】ビスフェノール化合物の具体例としては、
ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノール
S、ビスフェノールAD、ビスフェノールZ、ビスフェ
ノールフルオレン、ジヒドロキシビフェニル等が挙げら
れ、またそれらのアルキル置換体やハロゲン化物も好適
に使用できる。また、ジヒドロキシナフタレンやジヒド
ロキシアントラセン等も使用できる。中でもビスフェノ
ールSは、樹脂組成物の硬化物(以下、樹脂硬化物とい
う)、即ち、複合材料中のマトリックス樹脂に、より高
い伸度、耐熱性を発現させる観点から好ましく用いられ
る。
【0076】本発明においては、分子内にエポキシ基を
1個有する単官能エポキシを、上記構成要素[A]や構
成要素[B]の他、得られる複合材料の耐熱性を損なわ
ない範囲で樹脂組成物に配合することもできる。
【0077】本発明においては、ポリマレイミド樹脂、
シアン酸エステル末端を有する樹脂等の熱硬化性樹脂
を、耐熱性の向上等のため、マトリックス樹脂の靭性を
損なわない範囲で樹脂組成物に混合して使用することが
できる。
【0078】ポリマレイミド樹脂は、分子の末端にマレ
イミド基を平均2個以上有する化合物であり、ジアミン
を不飽和ジカルボン酸無水物との反応による従来公知の
方法により製造されるものであり、また、シアン酸エス
テル末端を有する樹脂としては、ビスフェノールAに代
表される多価フェノールのシアン酸エステル化合物が挙
げられる。
【0079】本発明では、樹脂組成物やプリプレグの取
り扱い性向上のため、熱可塑性樹脂やエラストマー、い
わゆる反応性希釈剤等の改質剤を、マトリックス樹脂の
耐熱性を損なわない範囲で樹脂組成物に配合することも
できる。これにより、マトリックス樹脂に靭性が効果的
に付与され、より高度な性質を有する複合材料が得られ
ると共に、オートクレーブ等の比較的低圧条件によって
も安定に成形できるようになる。
【0080】熱可塑性樹脂としては、主鎖に炭素炭素結
合、アミド結合、イミド結合、エステル結合、エーテル
結合、シロキサン結合、カーボネート結合、ウレタン結
合、尿素結合、チオエーテル結合、スルフォン結合、イ
ミダゾール結合、及びカルボニル結合からなる群から選
ばれる少なくとも1種の化学結合を有するものが挙げら
れ、具体的には、ポリアミド、ポリカーボナート、ポリ
アセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレン
スルフィド、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミ
ドイミド、ポリエーテルイミド、ポリシロキサン、ポリ
スルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルエ
ーテルケトン、ポリアラミド、ポリベンズイミダゾー
ル、ポリアクリレート、ポリスチレン等が挙げられる。
中でも、得られる複合材料にさらに高度の耐熱性、耐衝
撃強度、及び炭素繊維との接着性が発現されることか
ら、スルフォン結合を有する熱可塑性樹脂、例えばポリ
エーテルスルホンを用いるのが好ましい。
【0081】また、熱可塑性樹脂は、比較的低分子量
の、いわゆるオリゴマーでも良いが、オリゴマーは、そ
の数平均分子量が3、000〜10、000、好ましく
は3、000〜7、000のものが良い。3、000未
満であると、得られる複合材料において、耐衝撃強度の
向上効果が不足することがあり、10、000を越える
と、複合材料を製造する際に樹脂組成物の粘度が過大と
なって複合材料の成形性が低下することがある。かかる
オリゴマーは、得られる複合材料の物性をより高める観
点から、熱硬化性樹脂と反応し得る官能基を分子の末端
又は分子鎖中に有しているのが好ましい。
【0082】エラストマーとしては、ブタジエンアクリ
ロニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルアク
リレート等が挙げられる。
【0083】本発明によるプリプレグを上記したような
方法により積層し、更に加圧、加熱して樹脂を硬化せし
めることにより、極低温用タンクに用いられる構造部材
を製造することができる。
【0084】尚、本発明において、プリプレグや複合材
料のマトリックス樹脂となる樹脂の硬化物は、その引張
破壊歪みが8%以上、好ましくは10%以上、より好ま
しくは12%以上であるのが良い。引張破壊歪みが8%
未満であると、得られる複合材料において、引張強度の
向上効果が不足することがある。
【0085】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに具体的に
説明する。各実施例、比較例においては、炭素繊維の表
面特性、樹脂、プリプレグ、複合材料の物性の測定は次
に示すとおりとした。 <炭素繊維表面の官能基量測定> A.表面比酸素濃度O/C 表面比酸素濃度O/Cは、次の手順に従ってX線光電子
分光法(ESCA)により求めた。先ず、測定する炭素繊維
束から、溶媒でサイジング剤などを除去後、適当な長さ
にカットしてステンレス製の試料支持台上に拡げて並べ
た後、下記条件にて測定した。
【0086】・光電子脱出角度:90度 ・X線源:MgKα1,2 ・試料チャンバー内真空度:1×10-8Torr 次に、測定時の帯電に伴うピークの補正のため、C1S
主ピークの結合エネルギー値B.E.を284.6eV
に合わせた。
【0087】次いで、C1sピーク面積[C1s]は、28
2〜296eVの範囲で直線のベースラインを引いて求
め、O1sピーク面積[O1s]は、528〜540eVの
範囲で直線のベースラインを引いて求めた。
【0088】表面比酸素濃度O/Cは、上記O1sピーク
面積[O1s]、C1sピーク面積[C 1s]の比、及び装置
固有の感度補正値より、次式により求めた。
【0089】 O/C=([O1s]/[C1s])/(感度補正値) なお、ここでは、測定装置として島津製作所(株)製、
ESCA−750を用い、前記装置固有の感度補正値を
2.85とした。 B.表面比窒素濃度N/C 表面比酸素濃度O/Cは、次の手順に従ってX線光電子
分光法(ESCA)により求めた。先ず、測定する炭素繊維
束から、溶媒でサイジング剤などを除去後、適当な長さ
にカットしてステンレス製の試料支持台上に拡げて並べ
た後、下記条件にて測定した。
【0090】・光電子脱出角度:90度 ・X線源:MgKα1,2 ・試料チャンバー内真空度:1×10-8Torr 次に、測定時の帯電に伴うピークの補正のため、C1S
主ピークの結合エネルギー値B.E.を284.6eV
に合わせた。
【0091】次いで、C1sピーク面積[C1s]は、28
2〜296eVの範囲で直線のベースラインを引いて求
め、N1sピーク面積[N1s]は、398〜410eVの
範囲で直線のベースラインを引いて求めた。
【0092】表面比窒素濃度N/Cは、上記N1sピーク
面積[N1s]、C1sピーク面積[C 1s]の比、及び装置
固有の感度補正値より、次式により求めた。
【0093】 N/C=([N1s]/[C1s])/(感度補正値) なお、ここでは、測定装置として島津製作所(株)製、
ESCA−750を用い、前記装置固有の感度補正値を
1.7とした。 C.表面カルボキシル基濃度COOH/C 表面カルボキシル基濃度COOH/Cは、次の手順に従って
化学修飾X線光電子分光法(ESCA)により求めた。
【0094】先ず、測定する炭素繊維束から、溶媒でサ
イジング剤などを除去後、適当な長さにカットして白金
製の試料支持台上に拡げて並べた後、0.02モル/L
のジシクロヘキシルカルボジイミド気体及び0.04モ
ル/Lのピリジン気体を含む空気中に60℃で8時間曝
露して化学修飾処理した後、下記条件にて測定した。
【0095】・光電子脱出角度:35度 ・X線源:AlKα1,2 ・試料チャンバー内真空度:1×10-8Torr 次に、測定時の帯電に伴うピークの補正のため、C1S
主ピークの結合エネルギー値B.E.を284.6eV
に合わせた。
【0096】次いで、C1sピーク面積[C1s]は、28
2〜296eVの範囲で直線のベースラインを引いて求
め、F1sピーク面積[F1s]は、682〜695eVの
範囲で直線のベースラインを引いて求めた。
【0097】さらに、比較サンプルとして、化学修飾処
理したポリアクリル酸のC1sピーク分割から反応率r
を、O1sピーク分割からジシクロヘキシルカルボジイミ
ド誘導体の残存率mを求めた。次に、表面カルボキシル
基濃度COOH/Cを、次式により求めた。
【0098】COOH/C=〔[F1s]/[(3k[C1s]-(2+13m)[F
1s])r]〕×100(%) ここで、米国SSI社製モデルSSX-100-206を用いた。
本装置固有のC1sピーク面積に対するF1sピーク面積の
感度補正値kは3.919であった。 <プリプレグの作製>エポキシ樹脂組成物を離型紙上に
コーティングし、所定の樹脂目付の樹脂フィルムを作製
する。この樹脂フィルムを、炭素繊維の両面から重ね、
加熱加圧しながら樹脂組成物を含浸させ、繊維目付14
5g/m2、樹脂含有率が40重量%のプリプレグを作
製した。
【0099】用いた炭素繊維は繊維数12000本で繊
維束となっている次の2種である。すなわち、引張強度
5.5GPa、引張弾性率294GPa、引張伸度1.
9%、ESCAによるO/C=0.05、N/C=0.0
1、COOH/C=0.005のもの、または引張強度
5.9GPa、引張弾性率295GPa、引張伸度2.
0%、ESCAによるO/C=0.10、N/C=0.0
7、COOH/C=0.012のものである。 <硬化物のガラス転移温度Tg>示差走査熱量測定法
(DSC)によって測定する。樹脂組成物を180℃で
2時間加熱して得られた硬化物を測定サンプルとし、速
度10℃/分で昇温してDSCカーブを得る。
【0100】次に、このDSCカーブについて、図1に
示すようにベースラインの接線と吸熱中のラインの接線
との交点の温度と吸熱の終点温度を求め、その2点の中
点をTgとする。
【0101】ここでは、測定装置として、TAインスツ
ルメンツ社製、DSC2910(型番)を用いた。 <硬化物のゴム状平坦部剛性率G’R>動的粘弾性解析
(DMA)によって測定する。樹脂組成物を180℃で
2時間加熱して得られた板状の硬化物(厚さ2mm、幅
10mm)を用い、スパン長40mm、昇温速度を5℃
/分、ねじり振動周波数0.5Hz、歪み量0.1%の
条件下、昇温してDMAにより評価する。この評価法に
おいて、図2に示すようにTgからゴム状平坦領域部に
至る領域で樹脂のねじり剛性Gを測定し、ガラス転移に
よりねじり剛性Gが緩和された後に現れる、ゴム状平坦
部のねじり剛性GをG’Rとする。
【0102】ここでは、測定装置として、Rheometric S
cientific社製 粘弾性測定システム拡張型“ARE
S”(型番)を用いた。 <樹脂硬化物(マトリックス樹脂)の引張破壊歪み>1
80℃で2時間加熱して樹脂組成物を硬化させ、その樹
脂硬化物から、厚さ2mmの樹脂硬化物板を作製し、こ
れよりJIS K7113記載の方法に従ってダンベル
型試験片加工機で試験片を作製する。次に、試験片に歪
みゲージを付着し、速度1mm/分で引張試験を行い、
引張破壊歪み(%)を求める。 <プリプレグの厚さ>プリプレグを2枚の表面の平滑な
テフロン(登録商標)板間に挟持して密着させ、7日間
かけて徐々に150℃迄温度を上昇させてゲル化、硬化
させて板状の硬化物を作製する。
【0103】硬化後、密着面と垂直な方向から切断し、
その断面を研磨後、光学顕微鏡で200倍以上に拡大し
プリプレグの上下面が視野内に納まるようにして写真撮
影する。
【0104】同様な操作により、断面写真の横方向の5
ヵ所でテフロン板間の間隔を測定し、その平均値(n=
5)をプリプレグの厚さとする。 <微粒子の平均粒径>プリプレグを、室温25℃下、N
−メチルピロリドン溶媒に24時間浸漬し、樹脂を溶出
させる。次に、溶出液を適当な目開きのフィルターで濾
過して、微粒子を分別する。さらに、N−メチルピロリ
ドンを充分量注入して微粒子を洗浄する。その後、走査
型電子顕微鏡にて微粒子を1000倍以上に拡大し写真
撮影し、無作為に微粒子を選び、その粒径の平均値(n
=50)を微粒子の平均粒径とする。 <微粒子の存在率>プリプレグの両面について、プリプ
レグの表面から、厚さの20%深さ位置にプリプレグの
表面と平行な線を2本引く。
【0105】次に、プリプレグの表面と上記線との間に
存在する微粒子の合計面積と、プリプレグの厚みに渡っ
て存在する微粒子の合計面積を求め、プリプレグの厚さ
100%に対して、プリプレグの表面から20%の深さ
の範囲に偏在する微粒子の存在率を計算する。
【0106】ここで、微粒子の合計面積は、断面写真か
ら微粒子部分を刳り抜き、その重量から換算して求め
る。
【0107】マトリックス樹脂中に分散する微粒子の写
真撮影後の判別が困難な場合は、微粒子を染色する手段
も採用できる。 <複合材料層(単層)の厚さ>上記積層体について、積
層面と垂直に積層体を切断し、その断面を研磨後、光学
顕微鏡で200倍以上に拡大して、3層以上の複合材料
層が視野内に納まるようにして断面写真を撮影する。
【0108】この断面写真について、図3に示すように
繊維軸が横方向にある1つの複合材料層を選び、基準0
゜層とする。基準0゜層の上下の複合材料層間に、繊維
軸と平行に中心線を引き、この2本の中心線の間隔を測
定する。本操作を少なくとも積層体の5ヶ所について行
い、その平均値(n=5)を複合材料層(単層)の厚さ
とする。 <層間の厚さ>上記断面写真において、基準0゜層の上
下の層間において、0°繊維軸と垂直に19本等間隔に
線を引く(設定範囲内)。これら複数の線について、基
準0°層の上下の層における炭素繊維と基準0゜層の炭
素繊維との間に生じる線分の長さの平均値(n=38)
を層間部の厚さとする(図3の断面模式図参照)。 <層間の状態>プリプレグを(+45°/0°/−45°/90°)
2s構成で、擬似等方的に16枚積層した後、オートクレ
ーブにて、180℃で2時間、0.59MPaの圧力
下、昇温速度1.5℃/分で成型して積層体を作製す
る。その断面を光学顕微鏡で観察することにより、積層
体の層間での微粒子の状態を確認する。 <積層体(複合材料)の引張強度>プリプレグを(+45
°/0°/−45°/90°)2sの16層構成で擬次等方的に積
層し、オートクレーブにて180℃で2時間、0.59
MPaの圧力下、昇温速度1.5℃/分で成型して積層
体を作製する。
【0109】この積層体について、JIS K7073
に従い引張強度(MPa)を求めた。試験時の環境温度
として25℃の場合および液体窒素を強度試験装置付属
の恒温槽に吹き込むことによって−190℃としたの場
合の2条件を設定した。
【0110】また、最終引張破断強度だけでなく、前段
階としての板端が剥離する強度についても評価した。 (実施例1〜6、比較例1〜2)次の原料樹脂を表1に
示す組成によりニーダーで混練して樹脂組成物を調整し
た。この樹脂組成物を離型紙上に一定量コーティングし
た後、引き揃えた炭素繊維に含浸せしめてテープ状プリ
プレグを得た。微粒子を含む樹脂組成物を用いる場合、
含浸過程で炭素繊維が微粒子の繊維間への侵入を遮断せ
しめるため、プリプレグの表面にある量の微粒子が偏在
したプリプレグとなった。 [原料樹脂] ・テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、MY7
20(チバガイギー社製、 型番) ・液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エピコート8
25(油化シェルエポキシ(株)製、登録商標) ・液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エピクロン8
30(大日本インキ化学工業(株)製、登録商標) ・ビフェニル型エポキシ樹脂、エピコートYX4000H(油
化シェルエホ゜キシ(株)製、登録 商標) ・イソシアネート変性(オキサゾリドン環含有)エポキ
シ樹脂、XAC4151(旭化成エポキシ(株)製、登
録商標) ・ポリエーテルスルホン、Victrex100P(住友化学
工業(株)製、登録商標) ・ポリエーテルイミド、ウルテム1000(GEフ゜ラスチッ
クスシ゛ャハ゜ン社製、登録商標) ・ビスフェノールS(小西化学(株)製) ・3,3'−ジアミノジフェニルスルフォン(和歌山精化工
業(株)製) ・4,4'−ジアミノジフェニルスルフォン、スミキュアS
(住友化学工業(株)製、 登録商標) [微粒子] ・架橋PMMA微粒子、テクポリマMBXシリース゛(積水化成
品工業(株)製、商品名) ここで、ビスフェノールSを配合する場合は、ニーダー
中でビスフェノールSをエポキシ樹脂組成物に均一に溶
解させた後、150℃で2時間混練し予備反応させ、7
0℃まで冷却後、樹脂組成物中で3,3'-ジアミノジフェ
ニルスルフォンを分散させた。
【0111】樹脂硬化物板は、上記樹脂組成物を、適当
な離型処理を施した型枠に注入し、180℃で2時間、
オーブン中で硬化させて作製し、積層体は、測定する物
性に対応して、前述の方法に従って作製した。
【0112】また、各実施例、比較例の内容は、表1に
纏めて示した。
【0113】これにより、実施例では、各比較例と比較
して、特に低温での引張剥離強度が改善されていること
が判る。
【0114】また、実施例間の比較によって、層間樹脂
領域の形成により低温引張剥離強度が向上すること、ビ
スフェノールの添加により低温引張剥離強度が向上する
こと、表面酸素濃度、窒素濃度の高い炭素繊維の使用に
より低温引張剥離強度が向上することが判る。
【0115】
【表1】
【0116】
【発明の効果】本発明によれば、特に極低温環境下でも
補強材として用いる炭素繊維の強度特性が存分に引き出
され、引張強度、耐剥離強度に優れる極低温タンク用プ
リプレグ、及び、極低温下においても、引張応力下にお
いて微視的クラックや剥離が生じ難く、貯留されたガス
のリークが生じ難い繊維強化複合材料製のプリプレグが
提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】DSCによるTg測定の概念図
【図2】DMAによるG’R測定の概念図
【図3】積層体の断面模式図(部分)
【符号の説明】
1:吸熱方向 2:発熱方向 3:ガラス転移温度Tg 4:温度 5:剛性率G 6:ガラス状領域 7:ガラス転移領域 8:ゴム状領域 9:ゴム状平坦部剛性率G’R 10:温度 11:線分 12:層間 13:複合材料層の厚さ 14:基準0゜層 15:設定範囲
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 3E073 BB01 4F072 AB10 AD04 AD05 AD23 AD26 AD27 AD28 AD30 AD41 AD42 AD44 AD45 AD46 AE01 AE23 AG03 AL07 4J002 BC034 BG044 CB004 CC043 CD021 CD041 CD051 CD062 CD131 CD132 CF004 CF164 CG004 CH074 CH094 CL004 CM024 CM044 CN014 CN034 CP034 DA017 EL136 EN076 EP016 EQ026 ET006 EU116 EV026 EV126 EV216 FA047 FD143 FD146 GG01

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】次の構成要素[A]、構成要素[B]、及
    び硬化剤を含んでなるエポキシ樹脂組成物が炭素繊維に
    含浸されてなるプリプレグであって、前記樹脂組成物
    が、全エポキシ樹脂100重量部に対し、前記構成要素
    [A]を5〜40重量部、前記構成要素[B]を60〜
    95重量含み、180℃で2時間加熱せしめて得られる
    硬化物のガラス転移温度が150℃以上である極低温タ
    ンク用プリプレグ。 [A]3官能エポキシ樹脂又は4官能エポキシ樹脂の少
    なくとも一方 [B]2官能エポキシ樹脂
  2. 【請求項2】前記硬化物のガラス転移温度以上の温度領
    域におけるゴム状平坦部剛性率G’Rが10MPa以下
    である請求項1記載の極低温タンク用プリプレグ。
  3. 【請求項3】前記構成要素[B]がビフェニル骨格、ナ
    フタレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、及びオキサ
    ゾリドン環を有する2官能エポキシ樹脂からなる群から
    選ばれる少なくとも1種のエポキシ樹脂を含んでなるも
    のである請求項1又は2記載の極低温タンク用プリプレ
    グ。
  4. 【請求項4】前記エポキシ樹脂組成物が、次の構成要素
    [C]を含む請求項1〜3のいずれかに記載の極低温タ
    ンク用プリプレグ。 [C]平均粒径が10〜70μmであり、前記樹脂組成
    物中のエポキシ樹脂に実質的に不溶な微粒子
  5. 【請求項5】前記構成要素[C]中の微粒子が、熱可塑
    性樹脂からなるものである請求項4記載の極低温タンク
    用プリプレグ。
  6. 【請求項6】前記構成要素[C]中の微粒子が、熱硬化
    性樹脂からなるものである請求項4又は5記載の極低温
    タンク用プリプレグ。
  7. 【請求項7】前記構成要素[C]が、結晶構造又は架橋
    構造の少なくとも一方を有する請求項4〜6のいずれか
    に記載の極低温タンク用プリプレグ。
  8. 【請求項8】前記構成要素[C]に富む層が、プリプレ
    グの厚さ100%に対して、プリプレグ表面から20%
    の深さの表面層の範囲内に偏在しており、かつ前記表面
    層に含まれる構成要素[C]の比率が、構成要素[C]
    の全量100重量%に対して90〜100重量%である
    請求項4〜7のいずれかに記載の極低温タンク用プリプ
    レグ。
  9. 【請求項9】前記エポキシ樹脂組成物が、全エポキシ樹
    脂全量100重量部に対し、1〜20重量部のビスフェ
    ノール化合物を含む請求項1〜8のいずれかに記載の極
    低温タンク用プリプレグ。
  10. 【請求項10】炭素繊維を補強材とする複合材料が複数
    積層されてなる構造部材が用いられてなり、前記積層層
    間に平均厚さ10〜70μmの、補強材を有さない樹脂
    層を備える極低温タンク。
  11. 【請求項11】炭素繊維を補強材とする複合材料が複数
    積層されてなる構造部材が用いられてなり、前記積層層
    間に平均厚さ10〜70μmの、補強材を有さない樹脂
    層を備える極低温タンクであって、前記複合材料が請求
    項1〜9のいずれかに記載のプリプレグが硬化されてな
    るものである極低温タンク。
  12. 【請求項12】前記積層層間における樹脂層中に、熱可
    塑性樹脂又は熱硬化性樹脂の少なくとも一方の樹脂から
    なる微粒子層が存在する請求項10又は11記載の極低
    温タンク。
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