JP2007217712A - ポリプロピレン系樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】透明性、剛性および寸法安定性に優れたフィルムを得ることができるポリプロピレン系樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】Si−O結合を有する有機ケイ素化合物(1)および一次粒子径が0.1nm〜300nmの無機固体(5)の存在下に、チタン化合物(2)を、有機マグネシウム化合物(3)で還元して得られる固体生成物と、ハロゲン化能を有するハロゲン化合物(b)および電子供与性化合物(c)とを接触させて得られるオレフィン重合用固体触媒成分(A)、有機アルミニウム化合物(B)、並びに電子供与性化合物(C)を接触させて得られるオレフィン重合用触媒を用いて製造される、オレフィン重合体組成物であって、
前記無機固体の凝集度θが0<θ≦10を満足する状態で、無機固体がオレフィン重合体組成物中に分散している、前記オレフィン重合体組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、無機固体が均一微分散したオレフィン重合体組成物に関する。
オレフィン重合体をはじめとする重合体は自動車部材・家電・雑貨用品、包装材料、光学材料、建築材料等、幅広い分野で使用されている。このような種々の用途によっては、さらに高度な機能性の付与が求められており、例えばプロピレン重合体に対して種々の無機固体を含有させたプロピレン重合体組成物が知られている。
しかしながら、無機固体の表面エネルギーはオレフィン重合体のそれよりも大きく、本来無機固体とオレフィン重合体の相互作用は小さいため、重合体の可塑化・混練時に無機固体を添加して含有させる方法では、無機固体の分散は十分ではない。
該方法によっては、無機固体を微細に分散させることによって発現する効果、例えば制振性などが十分に現れない。本発明の目的は、無機固体を微細に分散させることによる優れた性能(中でも優れた制振性)を有するオレフィン重合体組成物を提供することにある。
本発明は、無機固体を含有するオレフィン重合体組成物であって、前記無機固体の凝集度θが0<θ≦10(式中、θはd÷Dで求められる値である。ここでdは前記オレフィン重合体組成物内での無機固体分散粒径を表し、Dはオレフィン重合体に含有させるために使用した無機固体の一次粒子径を表す。)を満足する状態で分散しているオレフィン重合体組成物にかかるものである。
本発明によれば、良好に均一微分散した無機固体により透明性を損なうこと無くオレフィン重合体組成物に優れた性能(特に制振性)が付与される。
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明のオレフィン重合体組成物は、無機固体を含有し、該無機固体が微細に分散したオレフィン重合体組成物である。
前記無機固体は、金属、セラミックス、合金、サーメットおよび非晶質合金のような公知の無機物であってよい。より具体的な前記無機固体として、Mg、V、Sr、Pb、Ag、Au、Al、Ga、Ti、W、Fe、Co、Ni、Zn、Cd、P、As、Sb、Bi、Ptおよび希土類金属のような金属の単体;該金属のフッ化物、塩化物、臭化物およびヨウ化物のようなハロゲン化物;該金属の酸化物;該金属の硫化物のようなカルコゲン化物;該金属の窒化物;該金属のリン化物;該金属のヒ化物;該金属の炭化物;該金属のケイ化物;該金属のホウ化物;該金属の水酸化物;該金属の炭酸塩;該金属の硫酸塩;該金属の硝酸塩;該金属の珪酸塩;該金属のリン酸塩;該金属の亜塩素酸塩;該金属の塩素酸塩;ならびに該金属の過塩素酸塩を例示することができる。また、2種以上の金属元素
を含む化合物でもよい。詳細は、「第4版 実験化学講座16 無機化合物」(1993年 丸善株式会社刊)に記載されている。
これらのうち、前記無機固体としては層状無機物が好ましく用いられる。該化合物として具体的には、グラファイト、黒リン、ヒ素、アンチモン、及び、ビスマスのような単体;MgBr2、CdI2,AsI3、VI3、SrFCl、PbFI、および、Ag2Fのようなハロゲン化金属;Mg(OH)2 、Ca(OH)2 、Al(OH)3 、AlOOH、Mn(OH)2 、及び、Fe(OH)2 のような金属水酸化物;HfS2 、MoS2 ,NiTe2 、PtSe2 、及び、ZrS2のような遷移金属カルコゲナイド;GaS、GaSe、GaTe、及び、InSeのような13−16族化合物;PbO、Ge2 Te3 、SnO、SnS2 、及び、SnSe2 のような14−16族化合物;Mg6Al2(OH)16CO3・nH2O(ハイドロタルサイト)、Zn6Al2(OH)16CO3・nH2Oのような層状複水酸化物;層状珪酸塩化合物;銅酸化物からなる高温超伝導体;電荷移動錯体からなる有機導体;有機超伝導体;チッ化ホウ素(BN);層状チタン酸塩;並びに、リン酸ジルコニウムのような金属リン酸塩を例示することができる。中でも、層状の金属酸化物または層状の金属水酸化物が好ましく用いられ、制振性の改良という点で特に層状の金属水酸化物が(中でも特に水酸化アルミニウムが)好ましく用いられる。
本発明のオレフィン重合体組成物に含有される無機固体は、オレフィン重合体組成物内での凝集度θが0<θ≦10を満足する状態で分散している。上式中、θはd÷Dで求められる値である。ここでdは前記オレフィン重合体組成物内での無機固体分散粒径を表し、Dはオレフィン重合体に含有させるために使用した無機固体の一次粒子径を表す。
前記無機固体分散粒径dは以下の方法で算出した値である。オレフィン重合体組成物の厚さ1000オングストローム未満の超薄切片を透過電子顕微鏡で撮影し、その2次元像中の無機固体分散粒子iの面積を画像解析によって検出する。その面積を与える円の直径をRiとし、Riを下式に代入して、得られた値が無機固体分散粒径dである。
Figure 2007217712
(i=1からnまで;n=粒子数)
前記Dは、本発明のオレフィン重合体組成物を得るのに使用した無機固体の一次粒子径である。ここでいう一次粒子径は、BET比表面積から計算されるBET比表面積相当径とし、下式で求められるDである。
D=6÷(比重×BET比表面積)
本発明のオレフィン重合体組成物を得るのに用いられる無機固体としては、一次粒子径が0.1nm〜300nmの無機固体が好適であり、一次粒子径が0.1nm〜100nmの無機固体がより好適であり、一次粒子径が0.1nm〜50nmの無機固体がさらに好適である。
本発明において、前記凝集度θとして好ましくは0より大きく8以下、さらに好ましくは0より大きく6以下である。
本発明のオレフィン重合体組成物に含有される無機固体の含有量としては0.001重量%以上50重量%以下が無機固体の機能性を発現させるためには好ましい。より好ましくは0.01重量%以上30重量%以下であり、さらに好ましくは0.01重量%以上10重量%以下である。
無機固体はより小さい分散粒径でオレフィン重合体組成物に含有されていることが好ましく、具体的にはオレフィン重合体組成物内における70重量%以上(より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは85重量%以上)の無機固体の分散粒径dが0.1nm以上100nm以下であることが好適である。
無機固体がこのように微細な状態でオレフィン重合体組成物中に分散していれば、オレフィン重合体を構成する高分子鎖の絡み合い点間長さ以下の大きさの粒径で無機固体が分散し、外部応力に対するオレフィン重合体の変形過程において無機固体はオレフィン重合体を構成する高分子鎖の動きを妨げにくくなって、その重合体の各種物性、例えば衝撃強度などは損なわれないと考えられる。また無機固体とオレフィン重合体の界面積は大きくなり、それに伴う界面での摩擦による熱エネルギー散逸量が増大し、例えばオレフィン重合体へ制振性などが付与されると考えられる。
かかる本発明のオレフィン重合体組成物は、Si−O結合を有する有機ケイ素化合物(1)および一次粒子径が0.1nm〜300nmの無機固体(5)の存在下に、下記一般式[I]で表されるチタン化合物(2)を、有機マグネシウム化合物(3)で還元して得られる固体生成物、あるいは、Si−O結合を有する有機ケイ素化合物(1)、エステル化合物(4)および一次粒子径が0.1nm〜300nmの無機固体(5)の存在下に、下記一般式[I]で表されるチタン化合物(2)を、有機マグネシウム化合物(3)で還元して得られる固体生成物と、ハロゲン化能を有するハロゲン化合物(b)および電子供与性化合物(c)とを接触させて得られるオレフィン重合用固体触媒成分(A)、有機アルミニウム化合物(B)、並びに電子供与性化合物(C)を接触させて得られるオレフィン重合用触媒を用いて、オレフィンを重合することにより得られる。
Figure 2007217712
(式中、aは1〜20の数を表し、R2は炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。X2はハロゲン原子または炭素原子数1〜20の炭化水素オキシ基を表し、全てのX2は同一であっても異なっていてもよい。)
以下、該製造方法について説明する。
(a)固体生成物
前記オレフィン重合用固体触媒成分の調製に用いられる固体生成物(a)は、Si−O結合を有する有機ケイ素化合物(1)および一次粒子径が0.1nm〜300nmの無機固体(5)の存在下に、下記一般式[I]で表されるチタン化合物(2)を、有機マグネシウム化合物(3)で還元して得られる固体生成物、あるいは、Si−O結合を有する有機ケイ素化合物(1)、エステル化合物(4)および一次粒子径が0.1nm〜300nmの無機固体(5)の存在下に、下記一般式[I]で表されるチタン化合物(2)を、有機マグネシウム化合物(3)で還元して得られる固体生成物である。
Figure 2007217712
(式中、aは1〜20の数を表し、R2は炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。X2はハロゲン原子または炭素原子数1〜20の炭化水素オキシ基を表し、全てのX2は同一であっても異なっていてもよい。)
特に、還元して得られた該固体生成物中に含まれる無機固体が、用いた無機固体(5)の一次粒子径Dの100倍以下(より好ましくは50倍以下、更に好ましくは10倍以下)の大きさになっていることが好ましい。前記オレフィン重合用固体触媒成分の調製に用いられる無機固体(5)としては、既に述べたものが挙げられる。
Si−O結合を有する有機ケイ素化合物(1)として好ましくは、下記の一般式で表わされるものが挙げられる。
Si(OR10)t11 4-t
12(R13 2SiO)uSiR14 3、または、
(R15 2SiO)v
ここにR10は炭素原子数1〜20の炭化水素基を表し、R11、R12、R13、R14およびR15はそれぞれ独立に、炭素原子数1〜20の炭化水素基または水素原子を表す。tは0<t≦4を満足する数を表し、uは1〜1000の整数を表し、vは2〜1000の整数を表す。
かかる有機ケイ素化合物の具体例としては、テトラメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリエトキシエチルシラン、ジエトキシジエチルシラン、エトキシトリエチルシラン、テトライソプロポキシシラン、ジイソプロポキシ−ジイソプロピルシラン、テトラプロポキシシラン、ジプロポキシジプロピルシラン、テトラブトキシシラン、ジブトキシジブチルシラン、ジシクロペントキシジエチルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、シクロヘキシロキシトリメチルシラン、フェノキシトリメチルシラン、テトラフェノキシシラン、トリエトキシフェニルシラン、ヘキサメチルジシロヘキサン、ヘキサエチルジシロヘキサン、ヘキサプロピルジシロキサン、オクタエチルトリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、メチルヒドロポリシロキサン、フェニルヒドロポリシロキサン等を例示することができる。
これらの有機ケイ素化合物のうち好ましいものは一般式Si(OR10t11 4-tで表わされるアルコキシシラン化合物であり、その場合tは好ましくは1≦t≦4を満足する数であり、特にt=4のテトラアルコキシシランが好ましく、最も好ましくはテトラエトキシシランである。
チタン化合物(2)は下記一般式[I]で表されるチタン化合物である。
Figure 2007217712
(式中、aは1〜20の数を表し、R2は炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。X2はハロゲン原子または炭素原子数1〜20の炭化水素オキシ基を表し、全てのX2は同一であっても異なっていてもよい。)
2の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等のアルキル基、フェニル基、クレジル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等のシクロアルキル基、プロペニル基等のアリル基、ベンジル基等のアラルキル基等が例示される。
これらの基のうち炭素原子数2〜18のアルキル基または炭素原子数6〜18のアリール基が好ましい。特に炭素原子数2〜18の直鎖状アルキル基が好ましい。
2におけるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示できる。特に塩素原子が好ましい。X2 における炭素原子数1〜20の炭化水素オキシ基は、R2 と同様の炭素原子数1〜20の炭化水素基を有する炭化水素オキシ基である。X2 として特に好ましくは、炭素原子数2〜18の直鎖状アルキル基を有するアルコキシ基が好ましい。
上記一般式[I]で表されるチタン化合物におけるaは、1〜20の数を表し、好ましくは1≦a≦5を満足する数である。
aが2以上であるチタン化合物の具体例を挙げると、テトライソプロピルポリチタネート(a=2〜10の範囲の混合物)、テトラ−n−ブチルポリチタネート(a=2〜10の範囲の混合物)、テトラ−n−ヘキシルポリチタネート(a=2〜10の範囲の混合物)、テトラ−n−オクチルポリチタネート(a=2〜10の範囲の混合物)が挙げられる。また、テトラアルコキシチタンに少量の水を反応させて得られるテトラアルコキシチタンの縮合物を挙げることもできる。
チタン化合物(2)としてより好ましくは、一般式Ti(OR2q3 4-q(式中、R2は炭素原子数1〜20の炭化水素基を、X3はハロゲン原子を、qは0<q≦4を満足する数を表わす。)で表わされるチタン化合物である。
一般式Ti(OR2q3 4-qで表わされるチタン化合物のqの値としては0<q≦4を満足する数であり、好ましくは2≦q≦4を満足する数であり、特に好ましくはq=4である。
一般式Ti(OR2q3 4-qで表わされるチタン化合物の合成方法としては公知の方法が使用できる。例えばTi(OR24とTiX3 4とを所定の割合で反応させる方法、あるいはTiX3 4と対応するアルコール類(例えばR2OH)等を所定量反応させる方法が使用できる。
かかるチタン化合物の具体例を挙げると、メトキシチタントリクロライド、エトキシチタントリクロライド、ブトキシチタントリクロライド、フェノキシチタントリクロライド、エトキシチタントリブロマイド等のトリハロゲン化アルコキシチタン化合物、ジメトキシチタンジクロライド、ジエトキシチタンジクロライド、ジブトキシチタンジクロライド、ジフェノキシチタンジクロライド、ジエトキシシランジブロマイド等のジハロゲン化ジアルコキシチタン、トリメトキシチタンクロライド、トリエトキシチタンクロライド、トリブトキシチタンクロライド、トリフェノキシチタンクロライド、トリエトキシチタンブロマイド等のモノハロゲン化トリアルコキシチタン化合物、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラフェノキシチタン等のテトラアルコキシチタン化合物などを挙げることができる。
チタン化合物(2)として、上記一般式[I]で表されるチタン化合物におけるaが2または4であるチタン化合物を用いることが、重合活性の観点からより好ましい。
重合活性の観点からさらに好ましくはテトラ−n−ブチルポリチタネートであり、特にテトラ−n−ブチルチタニウムダイマーまたはテトラ−n−ブチルチタニウムテトラマーが好ましく用いられる。
有機マグネシウム化合物(3)としては、マグネシウム−炭素の結合を有する任意の型の有機マグネシウム化合物を使用することができる。特に一般式R16MgX5(式中、Mgはマグネシウム原子を、R16は炭素原子数1〜20の炭化水素基を、X5はハロゲン原子を表わす。)で表わされるグリニャール化合物または一般式R1718Mg(式中、Mgはマグネシウム原子を、R17およびR18はそれぞれ炭素原子数1〜20の炭化水素基を表わす。)で表わされるジハイドロカルビルマグネシウムが好適に使用される。ここでR17とR18は同一でも異なっていてもよい。R16〜R18の具体例としてはそれぞれ、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソアミル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、フェニル基、ベンジル基等の炭素原子数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基が挙げられる。特にR16MgX5で表されるグリニャール化合物をエーテル溶液で使用することが触媒性能の点から好ましい。
上記の有機マグネシウム化合物と、炭化水素に該有機マグネシウム化合物を可溶化する有機金属との炭化水素可溶性錯体を使用することもできる。有機金属化合物の例としては、Li、Be、B、AlまたはZnの化合物が挙げられる。
エステル化合物(4)としては、モノまたは多価のカルボン酸エステルが用いられ、それらの例として飽和脂肪族カルボン酸エステル、不飽和脂肪族カルボン酸エステル、脂環式カルボン酸エステル、芳香族カルボン酸エステルを挙げることができる。具体例としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸フェニル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸エチル、吉草酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、トルイル酸メチル、トルイル酸エチル、アニス酸エチル、コハク酸ジエチル、コハク酸ジブチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル、フタル酸モノエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸メチルエチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−プロピル、フタル酸ジイソプロピル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジフェニル等を挙げることができる。
これらのエステル化合物のうち、メタクリル酸エステル、マレイン酸エステル等の不飽和脂肪族カルボン酸エステルまたはフタル酸エステル等の芳香族カルボン酸エステルが好ましく、特にフタル酸のジアルキルエステルが好ましく用いられる。
チタン化合物(2)、有機ケイ素化合物(1)、無機固体(5)およびエステル化合物(4)は適当な溶媒に溶解、希釈もしくは膨潤させて使用するのが好ましい。
かかる溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン等の脂環式炭化水素、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル化合物が挙げられる。なかでも無機固体(5)が均一に分散する溶媒を使用することが好ましい。特に好ましいのはトルエンである。
還元反応温度は、通常−50〜70℃、好ましくは−30〜50℃、特に好ましくは−25〜35℃の温度範囲である。
反応時間は特に制限はないが、通常30分〜6時間程度である。その後、さらに20〜120℃の温度で後反応を行ってもよい。
有機ケイ素化合物(1)の使用量は、チタン化合物(2)中のチタン原子に対するケイ素原子の原子比で、通常Si/Ti=1〜500、好ましくは、1〜300、特に好ましくは3〜100の範囲である。
また、有機マグネシウム化合物(3)の使用量は、チタン原子とケイ素原子の和とマグネシウム原子の原子比で通常(Ti+Si)/Mg=0.1〜10、好ましくは0.2〜5.0、特に好ましくは0.5〜2.0の範囲である。
固体触媒成分(A)においてMg/Tiのモル比の値が1〜51、好ましくは2〜31、特に好ましくは4〜26の範囲になるようにチタン化合物(2)、有機ケイ素化合物(1)、有機マグネシウム化合物(3)の使用量を決定してもよい。
無機固体(5)の使用量は、チタン化合物(2)中のチタン原子のモル数に対する重量として、通常(無機固体(g))/(チタン化合物中のチタン原子(mmol))=0.05〜10000g/mmolであり、好ましくは0.1〜5000g/mmol、さらに好ましくは0.5〜2000g/mmolの範囲である。
また、任意成分のエステル化合物(4)の使用量は、チタン化合物(2)のチタン原子に対するエステル化合物のモル比で、通常エステル化合物/Ti=0.5〜100、好ましくは1〜60、特に好ましくは2〜30の範囲である。
還元反応で得られた固体生成物は通常、固液分離し、ヘキサン、ヘプタン等の不活性炭化水素溶媒またはトルエン等の不活性芳香族炭化水素で数回洗浄を行う。
上記の固体生成物(a)は、無機固体をオレフィン重合体中に微細に分散させるオレフィン重合用固体触媒成分の調製に用いられる。かかるオレフィン重合用固体触媒成分としては、上記の固体生成物(a)と、ハロゲン化能を有するハロゲン化合物(b)および電子供与性化合物(c)とを接触させて得られるオレフィン重合用触媒成分が挙げられる。
(b)ハロゲン化能を有するハロゲン化合物
ハロゲン化能を有するハロゲン化合物(b)としては、上記の固体生成物(a)をハロゲン化し得る化合物であれば特に制限はないが、好ましくは有機酸ハライド(b1)、第4族元素のハロゲン化合物(b2)、あるいは、第13族または第14族元素のハロゲン化合物(b3)である。
有機酸ハライド(b1)として好ましくは、モノまたは多価のカルボン酸ハライドが用いられ、それらの例として脂肪族カルボン酸ハライド、脂環式カルボン酸ハライド、芳香族カルボン酸ハライドを挙げることができる。具体例としては、アセチルクロライド、プロピオン酸クロライド、酪酸クロライド、吉草酸クロライド、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド、安息香酸クロライド、トルイル酸クロライド、アニス酸クロライド、コハク酸クロライド、マロン酸クロライド、マレイン酸クロライド、イタコン酸クロライド、フタル酸クロライド等を挙げることができる。
これらの有機酸ハライドのうち、安息香酸クロライド、トルイル酸クロライド、フタル酸クロライド等の芳香族カルボン酸クロライドが好ましく、さらに好ましくは芳香族ジカルボン酸ジクロライドであり、特にフタル酸クロライドが好ましく用いられる。
第4族元素のハロゲン化合物(b2)として好ましくはチタンのハロゲン化合物であり、より好ましくは、一般式Ti(OR9b4 4-b(式中、R9は炭素原子数1〜20の炭化水素基を表し、X4はハロゲン原子を表し、bは0≦b<4を満足する数を表す。)で表されるチタン化合物である。
9の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、アミル基、イソアミル基、tert−アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等のアルキル基、フェニル基、クレジル基、キシレル基、ナフチル基等のアリール基、プロペニル基等のアリル基、ベンジル基等のアラルキル基等が例示される。これらの中で炭素原子数2〜18のアルキル基または炭素原子数6〜18のアリール基が好ましい。特に炭素原子数2〜18の直鎖状アルキル基が好ましい。また、2種以上の異なるOR9基を有するチタン化合物を用いることも可能である。
4で表されるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示できる。この中で、特に塩素原子が好ましい結果を与える。
一般式Ti(OR9b4 4-bで表されるチタン化合物のbは、0≦b<4を満足する数であり、好ましくは0≦b≦2を満足する数であり、特に好ましくは、b=0である。
具体的には、一般式Ti(OR9b4-bで表されるチタン化合物としては、四塩化チタン、四臭化チタン、四沃化チタン等のテトラハロゲン化チタン、メトキシチタントリクロライド、エトキシチタントリクロライド、ブトキシチタントリクロライド、フェノキシチタントリクロライド、エトキシチタントリブロマイド等のトリハロゲン化アルコキシチタン、ジメトキシチタンジクロライド、ジエトキシチタンジクロライド、ジブトキシチタンジクロライド、ジフェノキシチタンジクロライド、ジエトキシチタンジブロマイド等のジハロゲン化ジアルコキシチタンを挙げることができ、最も好ましくは四塩化チタンである。
第13族または第14族のハロゲン化合物(b3)とは、少なくとも1つの13族元素−ハロゲン結合を有する化合物、または少なくとも1つの14族元素−ハロゲン結合を有する化合物であり、一般式MR27 m-n6 n(式中、Mは第13族または第14族原子を、R27は炭素原子数1〜20の炭化水素基を、X6はハロゲン原子を、mはMの原子価を表わす。nは0<n≦mを満足する数を表わす)で表わされる化合物が好ましい。
ここでいう第13族の原子としてはB、Al、Ga、In、Tl、が挙げられ、BまたはAlが好ましく、Alがより好ましい。また第14族の原子としてはC、Si、Ge、Sn、Pbが挙げられ、Si、GeまたはSnが好ましい。Mとして特に好ましくは第14族の原子であり、最も好ましくはSiである。
mはMの原子価であり、例えばMがSiのときm=4である。nは0<n≦mを満足する数を表わし、MがSiのときnは好ましくは3または4である。
6で表わされるハロゲン原子としてF、Cl、Br、Iが挙げられ、Clが好ましい。
27の具体例としては、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、クレジル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等のシクロアルキル基、プロペニル基等のアリル基、ベンジル基等のアラルキル基等が挙げられる。好ましいR27はアルキル基またはアリール基であり、特に好ましいR27はメチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、フェニル基またはパラトリル基である。
第13族元素のハロゲン化合物として具体的には、トリクロロボロン、メチルジクロロボロン、エチルジクロロボロン、フェニルジクロロボロン、シクロヘキシルジクロロボロン、ジメチルクロロボロン、メチルエチルクロロボロン、トリクロロアルミニウム、メチルジクロロアルミニウム、エチルジクロロアルミニウム、フェニルジクロロアルミニウム、シクロヘキシルジクロロアルミニウム、ジメチルクロロアルミニウム、ジエチルクロロアルミニウム、メチルエチルクロロアルミニウム、エチルアルミニウムセスキクロライド、ガリウムクロライド、ガリウムジクロライド、トリクロロガリウム、メチルジクロロガリウム、エチルジクロロガリウム、フェニルジクロロガリウム、シクロヘキシルジクロロガリウム、ジメチルクロロガリウム、メチルエチルクロロガリウム、インジウムクロライド、インジウムトリクロライド、メチルインジウムジクロライド、フェニルインジウムジクロライド、ジメチルインジウムクロライド、タリウムクロライド、タリウムトリクロライド、メチルタリウムジクロライド、フェニルタリウムジクロライド、ジメチルタリウムクロライド等が挙げられ、これら化合物名のクロロをフルオロ、ブロモ、またはヨードに変更した化合物も挙げられる。
14族元素のハロゲン化合物として具体的には、テトラクロロメタン、トリクロロメタン、ジクロロメタン、モノクロロメタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、テトラクロロシラン、トリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、ノルマルプロピルトリクロロシラン、ノルマルブチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ベンジルトリクロロシラン、パラトリルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、ジクロロシラン、メチルジクロロシラン、エチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、メチルエチルジクロロシラン、モノクロロシラン、トリメチルクロロシラン、トリフェニルクロロシラン、テトラクロロゲルマン、トリクロロゲルマン、メチルトリクロロゲルマン、エチルトリクロロゲルマン、フェニルトリクロロゲルマン、ジクロロゲルマン、ジメチルジクロロゲルマン、ジエチルジクロロゲルマン、ジフェニルジクロロゲルマン、モノクロロゲルマン、トリメチルクロロゲルマン、トリエチルクロロゲルマン、トリノルマルブチルクロロゲルマン、テトラクロロ錫、メチルトリクロロ錫、ノルマルブチルトリクロロ錫、ジメチルジクロロ錫、ジノルマルブチルジクロロ錫、ジイソブチルジクロロ錫、ジフェニルジクロロ錫、ジビニルジクロロ錫、メチルトリクロロ錫、フェニルトリクロロ錫、ジクロロ鉛、メチルクロロ鉛、フェニルクロロ鉛等が挙げられ、これら化合物名のクロロをフルオロ、ブロモ、またはヨードに変更した化合物も挙げられる。
第13族または第14族元素のハロゲン化合物としては、特にテトラクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、ノルマルプロピルトリクロロシラン、またはパラトリルトリクロロシランが重合活性の点から好ましい。
(c)電子供与性化合物
前記固体触媒成分の調製に使用される電子供与性化合物としては、エーテル類(ジエーテル類)、ケトン類、アルデヒド類、カルボン酸類、有機酸または無機酸のエステル類、有機酸または無機酸の酸アミド類、酸無水物類等の含酸素電子供与性化合物、アンモニア類、アミン類、ニトリル類、イソシアネート類等の含窒素電子供与性化合物を挙げることができる。これらの電子供与性化合物のうち好ましくは有機酸のエステル類またはエーテル類であり、より好ましくはカルボン酸エステル類またはジエーテル類であり、さらに好ましくはカルボン酸エステル類である。
カルボン酸エステル類の例としては、モノおよび多価のカルボン酸エステルが挙げられ、それらの例として飽和脂肪族カルボン酸エステル、不飽和脂肪族カルボン酸エステル、脂環式カルボン酸エステル、芳香族カルボン酸エステルを挙げることができる。具体例としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸フェニル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸エチル、吉草酸エチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、トルイル酸メチル、トルイル酸エチル、アニス酸エチル、コハク酸ジエチル、コハク酸ジブチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル、フタル酸モノエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸メチルエチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−プロピル、フタル酸ジイソプロピル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジフェニル等を挙げることができる。
これらのカルボン酸エステル類のうち、メタクリル酸エステル、マレイン酸エステル等の不飽和脂肪族カルボン酸エステルまたは安息香酸エステル、フタル酸エステル等の芳香族カルボン酸エステルが好ましく用いられる。特に好ましくは、芳香族多価カルボン酸エステルであり、最も好ましくはフタル酸ジアルキルエステルである。
ジエーテル類の例として好ましくは、一般式
Figure 2007217712
(但し、R5 〜R8 はそれぞれ独立に炭素原子数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは脂環式のアルキル基、アリール基またはアラルキル基であり、R6 およびR7 はそれぞれ独立に水素原子であってもよい。)で表されるジエーテル化合物を挙げることができる。
具体例としては、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(シクロヘキシルメチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−3,7−ジメチルオクチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−シクロヘキシルメチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−シクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−シクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−ヘプチル−2−ペンチル−1,3−ジメトキシプロパン等を挙げることができる。
好ましくは、R5 〜R8 はそれぞれ独立にアルキル基であり、さらに好ましくは、R6およびR7がそれぞれ独立に分岐状または脂環式のアルキル基であり、R5およびR8がそれぞれ独立に直鎖状アルキル基である上記一般式で表されるジエーテルである。
(A)固体触媒成分
前記オレフィン重合用固体触媒成分(A)は、上記の固体生成物(a)と、ハロゲン化能を有するハロゲン化合物(b)および電子供与性化合物(c)とを接触させて得られる。
接触処理は、スラリー法やボールミルなどによる機械的粉砕手段など各成分を接触させうる公知のいかなる方法によっても行なうことができるが、機械的粉砕を行なうと固体触媒成分に微粉が多量に発生し、粒度分布が広くなる場合があり、工業的観点から好ましくない。よって、希釈剤の存在下で両者を接触させるのが好ましい。
また、処理後、そのまま次の処理を行うことができるが、余剰物を除去するため、洗浄剤により洗浄操作を行うのが好ましい。洗浄剤による洗浄操作はその都度、任意の回数が実施され、通常2〜3回である。
洗浄剤は、処理対象成分に対して不活性であることが好ましく、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、シクロヘキサン、シクロペンタンなどの脂環式炭化水素、1,2−ジクロルエタン、モノクロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素が使用できる。
洗浄剤の使用量は、一段階の接触処理につき、固体生成物(a)1g当たり通常0.1ml〜1000mlである。好ましくは1g当たり1ml〜100mlである。
処理および/または洗浄温度は通常−50〜150℃であるが、好ましくは0〜140℃であり、さらに好ましくは60〜135℃である。
処理時間は特に制限はないが、好ましくは0.5〜8時間であり、さらに好ましくは1〜6時間である。洗浄時間は特に限定されないが、好ましくは1〜120分であり、さらに好ましくは2〜60分である。
接触処理は複数繰り返しても良い。
ハロゲン化能を有するハロゲン化合物(b)の使用量は、固体生成物(a)中のチタン原子1モル当たり通常1〜2000モル、好ましくは5〜1000モル、さらに好ましくは10〜800モルである。
電子供与性化合物(c)の使用量は固体生成物(a)中のチタン原子1モル当たり通常0.1〜50モル、好ましくは0.3〜30モル、さらに好ましくは0.5〜20モルである。
なお、それぞれの化合物を複数の回数にわたって使用して接触処理をする場合や、それぞれの化合物として複数の種類の化合物を使用する場合には、以上に述べた各化合物(b)および(c)の使用量は一回ごと、一種類ごとの使用量を表す。
上記方法で得られた固体触媒成分は通常、固液分離したのち、ヘキサン、ヘプタン等の不活性炭化水素溶媒で数回洗浄したのち重合に用いる。固液分離後、多量のモノクロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶媒またはトルエン等の芳香族炭化水素溶媒で、50〜120℃の温度で1回以上洗浄し更にヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒で数回洗浄を繰り返したのち、重合に用いるのが触媒活性、立体規則性重合能の点で好ましい。
得られた固体触媒成分を用いて、無機固体が均一に微分散した本発明のオレフィン重合体組成物の製造に使用されるオレフィン重合用触媒が調製される。かかるオレフィン重合用触媒は、上記の固体触媒成分(A)、有機アルミニウム化合物(B)および電子供与性化合物(C)を接触させて得られるオレフィン重合用触媒である。
(B)有機アルミニウム化合物
前記触媒の調製に用いられる有機アルミニウム化合物(B)は、少なくとも分子内に一個のAl−炭素結合を有するものである。代表的なものを一般式で下記に示す。
19 wAlY3-w
2021Al−O−AlR2223
(式中、R19〜R23は炭素原子数1〜20の炭化水素基を、Yはハロゲン原子、水素原子またはアルコキシ基を表し、wは2≦w≦3を満足する数である。)
かかる有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド等のジアルキルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムクロライド等のジアルキルアルミニウムハライド、トリエチルアルミニウムとジエチルアルミニウムクロライドとの混合物のようなトリアルキルアルミニウムとジアルキルアルミニウムハライドとの混合物、テトラエチルジアルモキサン、テトラブチルジアルモキサン等のアルキルアルモキサンが例示できる。
これらの有機アルミニウム化合物のうち、トリアルキルアルミニウム、トリアルキルアルミニウムとジアルキルアルミニウムハライドとの混合物、アルキルアルモキサンが好ましく、とりわけトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムとジエチルアルミニウムクロライドのと混合物およびテトラエチルジアルモキサンが好ましい。
(C)電子供与性化合物
前記触媒の調製に用いられる電子供与性化合物(C)としては、エーテル類(ジエーテル類)、ケトン類、アルデヒド類、カルボン酸類、有機酸または無機酸のエステル類、有機酸または無機酸の酸アミド類、酸無水物類等の含酸素電子供与性化合物、アンモニア類、アミン類、ニトリル類、イソシアネート類等の含窒素電子供与性化合物を挙げることができる。これらの電子供与性化合物のうち、好ましくは無機酸のエステル類またはジエーテル類であり、より好ましくは一般
式 R3 rSi(OR44-r (式中、R3は炭素原子数1〜20の炭化水素基または水素原子を表し、R4は炭素原子数1〜20の炭化水素基を表し、rは0≦r<4を満足する数を表す。全てのR3および全てのR4はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)で表されるアルコキシケイ素化合物が用いられ、特に好ましくは一般式 R2425Si(OR262 で表されるアルコキシケイ素化合物が用いられる。ここで式中、R24はSiに隣接する炭素原子が2級もしくは3級である炭素原子数3〜20の炭化水素基であり、具体的には、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基等の分岐鎖状アルキル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、シクロペンテニル基等のシクロアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基等が挙げられる。また式中、R25は炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等の直鎖状アルキル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、等の分岐鎖状アルキル基、シクロペンンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、シクロペンテニル基等のシクロアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基等が挙げられる。さらに式中、R26は炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、好ましくは炭素原子数1〜5の炭化水素基である。
このような電子供与性化合物(C)として用いられるアルコキシケイ素化合物の具体例としては、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジ−tert−ブチルジメトキシシラン、tert−ブチルメチルジメトキシシラン、tert−ブチルエチルジメトキシシラン、tert−ブチル−n−プロピルジメトキシシラン、tert−ブチル−n−ブチルジメトキシシラン、tert−アミルメチルジメトキシシラン、tert−アミルエチルジメトキシシラン、tert−アミル−n−プロピルジメトキシシラン、tert−アミル−n−ブチルジメトキシシラン、イソブチルイソプロピルジメトキシシラン、tert−ブチルイソプロピルジメトキシシラン、ジシクロブチルジメトキシシラン、シクロブチルイソプロピルジメトキシシラン、シクロブチルイソブチルジメトキシシラン、シクロブチル−tert−ブチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロペンチルイソプロピルジメトキシシラン、シクロペンチルイソブチルジメトキシシラン、シクロペンチル−tert−ブチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシルイソプロピルジメトキシシラン、シクロヘキシルイソブチルジメトキシシラン、シクロヘキシル−tert−ブチルジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルイソプロピルジメトキシシラン、フェニルイソブチルジメトキシシラン、フェニル−tert−ブチルジメトキシシラン、フェニルシクロペンチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、ジイソブチルジエトキシシラン、ジ−tert−ブチルジエトキシシラン、tert−ブチルメチルジエトキシシラン、tert−ブチルエチルジエトキシシラン、tert−ブチル−n−プロピルジエトキシシラン、tert−ブチル−n−ブチルジエトキシシラン、tert−アミルメチルジエトキシシラン、tert−アミルエチルジエトキシシラン、tert−アミル−n−プロピルジエトキシシラン、tert−アミル−n−ブチルジエトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルエチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、2
−ノルボルナンメチルジメトキシシラン等を挙げることができる。
[オレフィン重合体の製造]
本発明のオレフィン重合体の製造に用いられるオレフィンは、炭素原子数2以上のオレフィンであり、かかるオレフィンの具体例としてはエチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、デセン−1、などの直鎖状モノオレフィン類、3−メチルブテン−1、3−メチルペンテン−1、4−メチルペンテン−1、などの分岐モノオレフィン類、ビニルシクロヘキサンなどが挙げられる。これらのオレフィンは1種類を用いてもよいし、あるいは、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらのオレフィンのうちでは、エチレン、プロピレンまたはブテン−1を用いて単独重合を行うこと、あるいはエチレン、プロピレンまたはブテン−1を主成分とする混合オレフィンを用いて共重合を行うことが好ましく、プロピレンを用いて単独重合を行うこと、あるいはプロピレンを主成分とする混合オレフィンを用いて共重合を行うことが特に好ましい。また、本発明における共重合に際しては、エチレンおよび上記のα−オレフィンから選ばれる2種類または、それ以上の種類のオレフィンを混合して用いることができる。さらに、共役ジエンや非共役ジエンのような多不飽和結合を有する化合物を共重合に用いることも可能である。そして、重合を2段以上にして行うヘテロブロック共重合も行うことができる。
触媒は、前記の固体触媒成分(A)、有機アルミニウム(B)、および電子供与性化合物(C)を接触させて得られるオレフィン重合用触媒である。ここでいう接触とは、触媒成分(A)〜(C)が接触し、触媒が形成されるならどのような手段によってもよく、あらかじめ溶媒で希釈してもしくは希釈せずに成分(A)〜(C)を混合して接触させる方法や、別々に重合槽に供給して重合槽の中で接触させる方法等を採用できる。
各触媒成分または触媒を重合槽に供給する方法としては、窒素、アルゴン等の不活性ガス中で水分のない状態で供給することが好ましい。
前記の触媒存在下にオレフィンの重合を行うが、このような重合(本重合)の実施前に以下に述べる予備重合を行ってもかまわない。
予備重合は通常、固体触媒成分(A)および有機アルミニウム化合物(B)の存在下、少量のオレフィンを供給して実施され、スラリー状態で行うのが好ましい。スラリー化するのに用いる溶媒としては、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエンのような不活性炭化水素を挙げることができる。また、スラリー化するに際し、不活性炭化水素溶媒の一部または全部に変えて液状のオレフィンを用いることができる。
予備重合時の有機アルミニウム化合物の使用量は、固体触媒成分中のチタン原子1モル当たり、通常0.5〜700モルのごとく広範囲に選ぶことができるが、0.8〜500モルが好ましく、1〜200モルが特に好ましい。
また、予備重合されるオレフィンの量は、固体触媒成分1g当たり通常0.01〜1000g、好ましくは0.05〜500g、特に好ましくは0.1〜200gである。
予備重合を行う際のスラリー濃度は、1〜500g−固体触媒成分/リットル−溶媒が好ましく、特に3〜300g−固体触媒成分/リットル−溶媒が好ましい。予備重合温度は、−20〜100℃が好ましく、特に0〜80℃が好ましい。また、予備重合中の気相部でのオレフィンの分圧は、0.01〜20kg/cm2が好ましく、特に0.1〜10kg/cm2が好ましいが、予備重合の圧力、温度において液状であるオレフィンについては、この限りではない。さらに、予備重合時間に特に制限はないが、通常2分から15時間が好適である。
予備重合を実施する際、固体触媒成分(A)、有機アルミニウム化合物(B)、オレフィンを供給する方法としては、固体触媒成分(A)と有機アルミニウム化合物(B)を接触させておいた後オレフィンを供給する方法、固体触媒成分(A)とオレフィンを接触させておいた後有機アルミニウム化合物(B)を供給する方法などのいずれの方法を用いても良い。また、オレフィンの供給方法としては、重合槽内が所定の圧力になるように保持しながら順次オレフィンを供給する方法、或いは所定のオレフィン量を最初にすべて供給する方法のいずれの方法を用いても良い。また、得られる重合体の分子量を調節するために水素等の連鎖移動剤を添加することも可能である。
さらに、有機アルミニウム化合物(B)の存在下、固体触媒成分(A)を少量のオレフィンで予備重合するに際し、必要に応じて電子供与性化合物(C)を共存させても良い。使用される電子供与性化合物は、上記の電子供与性化合物(C)の一部または、全部である。その使用量は、固体触媒成分(A)中に含まれるチタン原子1モルに対し、通常0.01〜400モル、好ましくは0.02〜200モル、特に好ましくは、0.03〜100モルであり、有機アルミニウム化合物(B)に対し、通常0.003〜5モル、好ましくは0.005〜3モル、特に好ましくは0.01〜2モルである。
予備重合の際の電子供与性化合物(C)の供給方法に特に制限なく、有機アルミニウム化合物(A)と別個に供給しても良いし、予め接触させて供給しても良い。また、予備重合で使用されるオレフィンは、本重合で使用されるオレフィンと同一であっても異なっていても良い。
上記のように予備重合を行った後、あるいは、予備重合を行うことなく、前述の固体触媒成分(A)、有機アルミニウム化合物(B)および電子供与性化合物(C)を接触させて得られるオレフィン重合用触媒の存在下に、オレフィンの本重合を行うことができる。
本重合時の有機アルミニウム化合物の使用量は通常、固体触媒成分(A)中のチタン原子1モル当たり、1〜1000モルのごとく広範囲に選ぶことができるが、特に5〜600モルの範囲が好ましい。
また、本重合時に使用される電子供与性化合物(C)は、固体触媒成分(A)中に含まれるチタン原子1モルに対し、通常0.1〜2000モル、好ましくは0.3〜1000モル、特に好ましくは、0.5〜800モルであり、有機アルミニウム化合物に対し、通常0.001〜5モル、好ましくは0.005〜3モル、特に好ましくは0.01〜1モルである。
本重合は、通常−30〜300℃までにわたって実施することができるが、20〜180℃が好ましい。重合圧力に関しては特に制限は無いが、工業的かつ経済的であるという点で、一般に、常圧〜100kg/cm2、好ましくは2〜50kg/cm2程度の圧力が採用される。重合形式としては、バッチ式、連続式いずれでも可能である。また、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンの如き不活性炭化水素溶媒によるスラリー重合もしくは溶液重合、重合温度において液状のオレフィンを媒体としたバルク重合または気相重合も可能である。
本重合時には重合体の分子量を調節するために水素等の連鎖移動剤を添加することも可能である。
本発明における重合体組成物において、上記の基本成分以外に酸化防止剤、顔料、帯電防止剤、銅害防止剤、発泡剤、可塑剤、架橋剤などの添加剤などを配合することができる。
以下、実施例および比較例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例によって特に限定をうけるものではない。なお実施例および比較例中、重合体の各種物性の評価方法は、次のとおりである。
(1)極限粘度([η]):
テトラリンを溶媒とし、温度135℃でウベローデ型粘度計を用いて測定した。
(2)曇度(ヘイズ):
JIS K7105に規定された方法による。試験片は、190℃で重合体組成物をプレス成形して作成した、厚さ30〜80ミクロンのフィルムである。
(3)重合体組成物中の無機固体分散粒径:
<実施例1の場合>
得られたパウダー粒子をエポキシ重合体に包埋し、次いでこの試片を−80℃に冷却したミクロトームで切削して厚さ1000オングストローム以下の超薄切片を作成した。この超薄切片中の無機固体の分散状態を透過型電子顕微鏡(日立製作所製H−8000型透過型電子顕微鏡)にて観察し、2次元像を旭エンジニアリング社製高精度画像解析ソフト「IP−1000」にて以下に示す画像解析処理を行い、無機固体体積平均分散粒径(重合体組成物中での無機固体分散粒径)を求めた。
2次元像中の無機固体分散粒子iの面積を検出した。その面積を与える円の直径をRiとし、Riを下式に代入した。
Figure 2007217712
(i=1からnまで;n=粒子数)
<比較例2の場合>
混練により得られた成形片を−80℃に冷却したミクロトームで切削して厚さ1000オングストローム以下の超薄切片を作成し、成形片中の無機固体の分散状態を上記と同様に観察した。両場合とも、観察倍率は60,000倍である。
(4)BET比表面積:
窒素吸着法により測定した。即ち試料粉体の表面に吸着占有面積が既知である分子を吸着させ、その吸着量から試料の比表面積を求めた。
(5)比重:
カンタクローム社製ピクノメーター PPY−6を用いて、4℃の水に対する比重を測定した。
(6)制振性評価:
組成物を230℃にて厚さ0.3mmのプレスシートを作成、3mm×20mmの大きさに切削してテストピースとする。粘弾性測定はセイコーインスツルメンツ(株)EXSTER6000にて、測定温度−150〜150℃、周波数5Hzにてtanδを測定した。tanδピーク値が大きいほど制振性能が良い事を示す。
[実施例1]
(1)固体生成物(a)の合成
撹拌機、滴下ロートを備えた200mlのフラスコを窒素で置換した後、予めヘキサン120mlにてスラリー化させた水酸化アルミニウムを10g、n−ブチルマグネシウムクロライドのジ−n−ブチルエーテル溶液(有機合成薬品社製、n−ブチルマグネシウムクロライド濃度2.1mmol/ml)25mlを混合し室温で1時間攪拌した。攪拌終了後、固液分離し、ヘキサン17mlでの洗浄を2回繰り返した後、減圧乾燥して前処理した水酸化アルミニウムを得た。用いた水酸化アルミニウムはアルミニウムアルコキシドを加水分解し、得られた生成物を乾燥して得られた、BET比表面積153m2/g、比重3.00g/c
3、一次粒子径(BET比表面積相当径)は13nmの水酸化アルミニウムである。
次に撹拌機、滴下ロートを備えた100mlのフラスコを窒素で置換した後、前処理した水酸化アルミニウムを7.5g、ヘキサン37.4ml、テトラブトキシチタン0.17ml(0.5ミリモル)、およびテトラエトキシシラン1.9ml(8.5ミリモル)を投入し、スラリー液とした。次に、n−ブチルマグネシウムクロライドのジ−n−ブチルエーテル溶液(有機合成薬品社製、n−ブチルマグネシウムクロライド濃度2.1mmol/ml)4.3mlを、フラスコ内の温度を5℃に保ちながら、滴下ロートから徐々に滴下した。滴下終了後、5℃でさらに45分間撹拌した後、室温でさらに45分間攪拌した。その後固液分離し、ヘキサン37.4mlでの洗浄を2回繰り返した後、トルエン30.1mlを加え、固体生成物スラリーを得た。
(2)固体触媒成分の合成
上記(1)で得られた固体生成物スラリーを95℃に昇温した後、フタル酸ジイソブチル 1.1ml(4.1ミリモル)を加え、1時間接触処理を行った。その後、同温度で固液分離し、室温でトルエン30.0mlでの洗浄を2回行った。
洗浄後、トルエン30.0mlを加え、ジ−n−ブチルエーテル0.9ml(5.3ミリモル)、および四塩化チタン16.2ml(147.7ミリモル)の混合物を加え、95℃で3時間接触処理を行った。その終了後、同温度で固液分離した後、同温度でトルエン30.0mlでの洗浄を2回行った。
次いで、トルエン30.0ml、ジ−n−ブチルエーテル0.9ml(5.3ミリモル)、および四塩化チタン16.2ml(147.7ミリモル)の混合物を加え、95℃で1時間接触処理を行った。その終了後、同温度で固液分離し、同温度でトルエン30.0mlでの洗浄を3回行ったのち、室温でヘキサン30.0mlでの洗浄を3回行い、さらに減圧乾燥して固体触媒成分10.1gを得た。
(3)プロピレンの重合
3リットルのかき混ぜ式ステンレス製オートクレーブをアルゴン置換し、ヘプタン1000mlを仕込み、(B)成分としてトリエチルアルミニウム 2.6ミリモル、(C)成分としてtert―ブチル−n−プロピル−ジメトキシシラン 0.26ミリモル及び(A)成分として上記(2)で合成した固体触媒成分 1.495gを仕込み、350mmHgの分圧に相当する水素を加えた。次いで94gの液化プロピレンを仕込み、オートクレーブの温度を60℃に昇温し、60℃で10分間重合を行った。重合終了後未反応モノマーをパージした。生成した重合体を70℃で2時間減圧乾燥し、85gのポリプロピレンパウダーを得た。
従って、固体触媒成分1g当たりのポリプロピレンの収量は57gであった。得られたポリマー中の水酸化アルミニウム含量は、14600重量ppm(仕込んだ触媒中の水酸化アルミニウムの量と得られたポリマーの重量比から計算)であり、その分散状況を透過型電子顕微鏡で観察した結果、水酸化アルミニウムの分散粒径は65.4nmであった。θは5、ポリプロピレン組成物内における88.9重量%の水酸化アルミニウムの分散粒径dが0.1nm以上100nm以下であった。また、ポリプロピレン組成物の極限粘度は[η]=0.84(dl/g)、tanδピーク強度は0.042、該組成物のフィルムのヘイズは74.7%であった。
[比較例1]
(1)固体生成物(a)の合成
撹拌機、滴下ロートを備えた500mlのフラスコを窒素で置換した後、ヘキサン290ml、テトラブトキシチタン8.9ml(8.9g、26.1ミリモル)、フタル酸ジイソブチル3.1ml(3.3g、11.8ミリモル)およびテトラエトキシシラン87.4ml(81.6g、392ミリモル)を投入し、均一溶液とした。次に、n−ブチルマグネシウムクロライドのジ−n−ブチルエーテル溶液(有機合成薬品社製、n−ブチルマグネシウムクロライド濃度2.1mmol/ml)199mlを、フラスコ内の温度を6℃に保ちながら、滴下ロートから徐々に滴下した。滴下終了後、6℃でさらに1時間撹拌した後、室温でさらに1時間攪拌した。その後、固液分離し、トルエン260mlで3回洗浄を繰り返した後、トルエンを適量加え、固体生成物スラリー(0.4g/ml)を得た。
(2)固体触媒成分の合成
上記(a)で得られた固体生成物を含むスラリーを52ml投入し、上澄み液を25.5ml抜き出しブチルエーテル0.80ml(6.45ミリモル)と四塩化チタン16.0ml(0.146モル)の混合物を加え、ついで、フタル酸クロライド1.6ml(11.1ミリモル:0.20ml/1g固体生成物)を加え、115℃まで昇温しそのまま3時間攪拌した。反応終了後、同温度で固液分離した後、同温度でトルエン40mlで2回洗浄を行った。
次いで、トルエン10.0ml、フタル酸ジイソブチル0.45ml(1.68ミリモル)、ブチルエーテル0.80ml(6.45ミリモル)、及び四塩化チタン8.0ml(0.073モル)の混合物を加え、115℃で1時間処理を行った。反応終了後、同温度で固液分離し、同温度でトルエン40mlで3回洗浄を行ったのち、ヘキサン40mlで3回洗浄し、さらに減圧乾燥して固体触媒成分7.36gを得た。
(3)プロピレンの重合
3リットルのかき混ぜ式ステンレス製オートクレーブをアルゴン置換し、ヘプタン1000mlを仕込み、(B)成分としてトリエチルアルミニウム 2.6ミリモル、(C)成分としてtert―ブチル−n−プロピル−ジメトキシシラン 0.26ミリモル及び(A)成分として上記(2)で合成した固体触媒成分 0.0273gを仕込み、1500mmHgの分圧に相当する水素を加えた。次いで80gの液化プロピレンを仕込み、オートクレーブの温度を70℃に昇温し、70℃で60分間重合を行った。重合終了後未反応モノマーをパージした。生成した重合体を70℃で2時間減圧乾燥し、138gのポリプロピレンパウダーを得た。
従って、固体触媒成分1g当たりのポリプロピレンの収量は5062gであった。得られたポリプロピレンの極限粘度は[η]=0.86(dl/g)、tanδピーク強度は0.029であった。またポリプロピレンのフィルムのヘイズは74.3%であった。
[比較例2]
ロール混練機を用いて、水酸化アルミニウムをその濃度が14000重量ppmとなるように比較例1のポリプロピレンに添加し混練した。用いた水酸化アルミニウムは実施例1と同種である。混練温度は190℃、混練時間は3分間である。重合体組成物中の水酸化アルミニウムの分散状況を透過型電子顕微鏡で観察した結果、水酸化アルミニウムの分散粒径は1258nmと、多数の一次粒子が凝集した状態であることが確認できた。θは97、ポリプロピレン組成物内における0.065重量%の水酸化アルミニウムの分散粒径dが0.1nm以上100nm以下であった。ポリプロピレン組成物の極限粘度は[η]=0.86(dl/g)、tanδピーク強度は0.029、該組成物のフィルムのヘイズは74.4%であった。
Figure 2007217712

Claims (5)

  1. Si−O結合を有する有機ケイ素化合物(1)および一次粒子径が0.1nm〜300nmの無機固体(5)の存在下に、チタン化合物(2)を、有機マグネシウム化合物(3)で還元して得られる固体生成物と、ハロゲン化能を有するハロゲン化合物(b)および電子供与性化合物(c)とを接触させて得られるオレフィン重合用固体触媒成分(A)、有機アルミニウム化合物(B)、並びに電子供与性化合物(C)を接触させて得られるオレフィン重合用触媒を用いて製造される、オレフィン重合体組成物であって、
    前記無機固体の凝集度θが0<θ≦10(式中、θはd÷Dで求められる値である。ここでdは前記オレフィン重合体組成物内での無機固体分散粒径を表し、Dはオレフィン重合体に含有させるために使用した無機固体の一次粒子径を表す。)を満足する状態で、無機固体がオレフィン重合体組成物中に分散している、前記オレフィン重合体組成物。
  2. オレフィン重合体組成物に含有される無機固体の含有量が、0.001重量%以上50重量%以下である請求項1記載のオレフィン重合体組成物。
  3. 一次粒子径Dが0.1nm以上300nm以下である請求項1または2記載のオレフィン重合体組成物。
  4. オレフィン重合体組成物内における70%以上の無機固体の分散粒径dが0.1nm以上100nm以下である請求項1〜3のいずれかに記載のオレフィン重合体組成物。
  5. オレフィン重合体が、エチレンもしくはα−オレフィンの重合体である請求項1〜4のいずれかに記載のオレフィン重合体組成物。
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