JP2004292773A - α−オレフィン重合用固体触媒成分前駆体の製造方法、α−オレフィン重合用固体触媒成分、α−オレフィン重合用触媒およびα−オレフィン重合体の製造方法 - Google Patents
α−オレフィン重合用固体触媒成分前駆体の製造方法、α−オレフィン重合用固体触媒成分、α−オレフィン重合用触媒およびα−オレフィン重合体の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】重合体製造時の微粉発生の少ないα−オレフィン重合用固体触媒成分前駆体の製造方法、α−オレフィン重合用固体触媒成分、α−オレフィン重合用触媒およびα−オレフィン重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】Si−O結合を有する有機ケイ素化合物(a1)および下記一般式[I]で表されるチタン化合物(a2)を含有する溶液中に、有機マグネシウム化合物(a3)を投入して固体触媒成分前駆体を製造するに際して、1時間あたりのa3の投入量がa2の0.5倍モル量以上2.5倍モル量以下となるように、a3投入速度を調整するα−オレフィン重合用固体触媒成分前駆体の製造方法。ほか
(式中、aは1〜20の数を表し、R2は炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。X2はハロゲン原子または炭素原子数1〜20の炭化水素オキシ基を表し、全てのX2は同一であっても異なっていてもよい。)
【選択図】 なし
【解決手段】Si−O結合を有する有機ケイ素化合物(a1)および下記一般式[I]で表されるチタン化合物(a2)を含有する溶液中に、有機マグネシウム化合物(a3)を投入して固体触媒成分前駆体を製造するに際して、1時間あたりのa3の投入量がa2の0.5倍モル量以上2.5倍モル量以下となるように、a3投入速度を調整するα−オレフィン重合用固体触媒成分前駆体の製造方法。ほか
(式中、aは1〜20の数を表し、R2は炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。X2はハロゲン原子または炭素原子数1〜20の炭化水素オキシ基を表し、全てのX2は同一であっても異なっていてもよい。)
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、α−オレフィン重合用固体触媒成分前駆体の製造方法、α−オレフィン重合用固体触媒成分、α−オレフィン重合用触媒およびα−オレフィン重合体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリプロピレン等のα−オレフィン重合体は、その優れた物理的性質により近年著しい需要の伸びを示している。
ポリプロピレン等のα−オレフィン重合体の製造においては、周期律表の第4〜6族の遷移金属化合物を用いて得られる固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物とを接触させて得られる、いわゆるチーグラー−ナッタ触媒が広く用いられる。従来の三塩化チタン型触媒に対し、マグネシウム化合物とチタン化合物とを組み合わせてなる高活性触媒も開発され、高効率に高立体規則性の結晶性ポリプロピレンの製造を可能とした。
例えば、ハロゲン化マグネシウムに4価のハロゲン化チタンを担持することにより得られる担持型固体触媒成分、助触媒の有機アルミニウム化合物、重合第三成分の有機ケイ素化合物を組み合わせて用いることによりα−オレフィンの高立体規則性重合が実現できることが知られている(特許文献1〜3)。
【0003】
【特許文献1】
特開昭57−63310号公報
【特許文献2】
特開昭58−83006号公報
【特許文献3】
特開昭61−78803号公報
【0004】
また、有機ケイ素化合物およびエステル化合物の存在下、チタン化合物を有機マグネシウム化合物で還元して得られる固体生成物をエステル化合物で処理したのち、ハロゲン化化合物(例えば四塩化チタン)および電子供与体(例えば、エーテル化合物、エーテル化合物とエステル化合物の混合物)と接触処理することにより得られる三価のチタン化合物含有固体触媒成分と、助触媒の有機アルミニウム化合物と、重合第三成分の電子供与性化合物との組み合わせにおいてもα−オレフィンの高立体規則性重合が実現できることが知られている(特許文献4)。
【0005】
【特許文献4】
特開平7−216017号公報
【0006】
さらに、有機ケイ素化合物およびエステル化合物の存在下、チタン化合物を有機マグネシウム化合物で還元して得られる固体生成物に、ハロゲン化化合物(例えば四塩化チタン)、電子供与体(例えば、エーテル化合物、エーテル化合物とエステル化合物の混合物)、および有機酸ハライドと接触処理することにより得られる三価のチタン化合物含有固体触媒成分と、助触媒の有機アルミニウム化合物と、重合第三成分の電子供与性化合物との組み合わせにおいてもα−オレフィンの高立体規則性重合が実現できることが知られている(特許文献5)。
【0007】
【特許文献5】
特開平10−212319号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、オレフィン重合体の製造にはスラリー法、バルク法、気相法等が用いられるが、反応系で著しく粒子径の小さな重合体(微粉)が生成すると塊化物の発生原因となり、反応器への固着、重合体の抜き出し不良を生じ、安定で効率的な重合体製造を妨げる。
本発明の目的は、重合体製造時の微粉発生の少ないα−オレフィン重合用固体触媒成分前駆体の製造方法、α−オレフィン重合用固体触媒成分、α−オレフィン重合用触媒およびα−オレフィン重合体の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、Si−O結合を有する有機ケイ素化合物(a1)および下記一般式[I]で表されるチタン化合物(a2)を含有する溶液中に、有機マグネシウム化合物(a3)を投入して固体触媒成分前駆体を製造するに際して、1時間あたりの前記有機マグネシウム化合物(a3)の投入量が前記チタン化合物(a2)の0.5倍モル量以上2.5倍モル量以下となるように、前記有機マグネシウム化合物(a3)投入速度を調整するα−オレフィン重合用固体触媒成分前駆体の製造方法にかかるものである。
(式中、aは1〜20の数を表し、R2は炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。X2はハロゲン原子または炭素原子数1〜20の炭化水素オキシ基を表し、全てのX2は同一であっても異なっていてもよい。)
また本発明は、以下の(a)、(b)および(c)を接触させて得られるα−オレフィン重合用固体触媒成分、並びに、以下の(a)、(b)、(c)および(d)を接触させて得られるα−オレフィン重合用固体触媒成分にかかるものである。
(a)該α−オレフィン重合用固体触媒成分前駆体
(b)ハロゲン化化合物
(c)電子供与体
(d)有機酸ハライド
さらに本発明は、該α−オレフィン重合用固体触媒成分(A)、有機アルミニウム化合物(B)、ならびに電子供与性化合物(C)を接触させて得られるα−オレフィン重合用触媒にかかるものであり、また、該α−オレフィン重合用触媒を用いてα−オレフィンを単独重合または共重合するα−オレフィン重合体の製造方法にかかるものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
(a)固体触媒成分前駆体
固体触媒成分前駆体(a)は、Si−O結合を有する有機ケイ素化合物(a1)および上記一般式[I]で表されるチタン化合物(a2)を含有する溶液中に、有機マグネシウム化合物(a3)を投入することにより得られる。このとき任意成分としてエステル化合物(a4)を共存させると、重合活性や立体規則性重合能がさらに向上するため好ましい。
【0011】
Si−O結合を有する有機ケイ素化合物(a1)としては、下記の一般式で表わされるものが挙げられる。
Si(OR10)tR11 4−t
R12(R13 2SiO)uSiR14 3、または、
(R15 2SiO)v
ここにR10は炭素原子数1〜20の炭化水素基を表し、R11、R12、R13、R14およびR15はそれぞれ独立に、炭素原子数1〜20の炭化水素基または水素原子を表す。tは0<t≦4を満足する整数を表し、uは1〜1000の整数を表し、vは2〜1000の整数を表す。
【0012】
かかる有機ケイ素化合物の具体例としては、テトラメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリエトキシエチルシラン、ジエトキシジエチルシラン、エトキシトリエチルシラン、テトライソプロポキシシラン、ジイソプロポキシ−ジイソプロピルシラン、テトラプロポキシシラン、ジプロポキシジプロピルシラン、テトラブトキシシラン、ジブトキシジブチルシラン、ジシクロペントキシジエチルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、シクロヘキシロキシトリメチルシラン、フェノキシトリメチルシラン、テトラフェノキシシラン、トリエトキシフェニルシラン、ヘキサメチルジシロヘキサン、ヘキサエチルジシロヘキサン、ヘキサプロピルジシロキサン、オクタエチルトリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、メチルヒドロポリシロキサン、フェニルヒドロポリシロキサン等を例示することができる。
【0013】
これらの有機ケイ素化合物のうち好ましいものは一般式Si(OR10)tR11 4−tで表わされるアルコキシシラン化合物であり、その場合tは好ましくは1≦t≦4を満足する数であり、特にt=4のテトラアルコキシシランが好ましく、最も好ましくはテトラエトキシシランである。
【0014】
チタン化合物(a2)は下記一般式[I]で表されるチタン化合物である。
(式中、aは1〜20の数を表し、R2は炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。X2はハロゲン原子または炭素原子数1〜20の炭化水素オキシ基を表し、全てのX2は同一であっても異なっていてもよい。)
【0015】
R2の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等のアルキル基、フェニル基、クレジル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等のシクロアルキル基、プロペニル基等のアリル基、ベンジル基等のアラルキル基等が例示される。
これらの基のうち炭素原子数2〜18のアルキル基または炭素原子数6〜18のアリール基が好ましい。特に炭素原子数2〜18の直鎖状アルキル基が好ましい。
【0016】
X2 におけるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示できる。特に塩素原子が好ましい。X2 における炭素原子数1〜20の炭化水素オキシ基は、R2 と同様の炭素原子数1〜20の炭化水素基を有する炭化水素オキシ基である。X2 として特に好ましくは、炭素原子数2〜18の直鎖状アルキル基を有するアルコキシ基が好ましい。
【0017】
上記一般式[I]で表されるチタン化合物におけるaは1〜20の数を表し、好ましくは1≦a≦5を満足する数である。
【0018】
かかるチタン化合物の具体例を挙げると、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラ−iso−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−iso−ブトキシチタン、n−ブトキシチタントリクロライド、ジ−n−ブトキシチタンジクロライド、トリ−n−ブトキシチタンクロライド、ジ−n−テトライソプロピルポリチタネート(a=2〜10の範囲の混合物)、テトラ−n−ブチルポリチタネート(a=2〜10の範囲の混合物)、テトラ−n−ヘキシルポリチタネート(a=2〜10の範囲の混合物)、テトラ−n−オクチルポリチタネート(a=2〜10の範囲の混合物)が挙げられる。また、テトラアルコキシチタンに少量の水を反応して得られるテトラアルコキシチタンの縮合物を挙げることもできる。
【0019】
チタン化合物(a2)として好ましくは、上記一般式[I]で表されるチタン化合物におけるaが1、2または4であるチタン化合物である。
特に好ましくは、テトラアルコキシチタン化合物であり、さらに好ましくは、テトラエトキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラ−iso−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−iso−ブトキシチタンである。
なお、チタン化合物(a2)は複数種を混合した状態で用いることも可能である。
【0020】
有機マグネシウム化合物(a3)は、マグネシウム−炭素の結合を有する任意の型の有機マグネシウム化合物である。特に一般式R16MgX5(式中、Mgはマグネシウム原子を、R16は炭素原子数1〜20の炭化水素基を、X5はハロゲン原子を表わす。)で表わされるグリニャール化合物または一般式R17R18Mg(式中、Mgはマグネシウム原子を、R17およびR18はそれぞれ炭素原子数1〜20の炭化水素基を表わす。)で表わされるジハイドロカルビルマグネシウムが好適に使用される。ここでR17とR18は同一でも異なっていてもよい。 R16〜 R18の具体例としてはそれぞれ、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソアミル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、フェニル基、ベンジル基等の炭素原子数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基が挙げられる。特にR16MgX5で表されるグリニャール化合物をエーテル溶液で使用することが触媒性能の点から好ましい。
【0021】
上記の有機マグネシウム化合物と、炭化水素に該有機マグネシウム化合物を可溶化する有機金属との炭化水素可溶性錯体を使用することもできる。有機金属化合物の例としては、Li、Be、B、AlまたはZnの化合物が挙げられる。
【0022】
エステル化合物(a4)としては、モノまたは多価のカルボン酸エステルが用いられ、それらの例として飽和脂肪族カルボン酸エステル、不飽和脂肪族カルボン酸エステル、脂環式カルボン酸エステル、芳香族カルボン酸エステルを挙げることができる。具体例としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸フェニル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸エチル、吉草酸エチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、トルイル酸メチル、トルイル酸エチル、アニス酸エチル、コハク酸ジエチル、コハク酸ジブチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル、フタル酸モノエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸メチルエチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−プロピル、フタル酸ジイソプロピル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジペンチル、フタル酸ジ−n−ヘキシル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ジフェニル等を挙げることができる。
【0023】
これらのエステル化合物のうち、メタクリル酸エステル、マレイン酸エステル等の不飽和脂肪族カルボン酸エステルまたはフタル酸エステル等の芳香族カルボン酸エステルが好ましく、特にフタル酸のジアルキルエステルが好ましく用いられる。
【0024】
固体触媒成分前駆体(a)は、有機ケイ素化合物(a1)およびチタン化合物(a2)を含有する溶液(好ましくは、有機ケイ素化合物(a1)、チタン化合物(a2)およびエステル化合物(a4)を含有する溶液)中に、有機マグネシウム化合物(a3)を投入して得られる。
【0025】
有機ケイ素化合物(a1)およびチタン化合物(a2)を含有する溶液における溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン等の脂環式炭化水素、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル化合物が挙げられる。
【0026】
かかる溶液に有機マグネシウム化合物(a3)を投入するときの温度は、通常−50〜70℃、好ましくは−30〜50℃、特に好ましくは−25〜35℃の温度範囲である。
【0027】
本発明においては、かかる溶液中に有機マグネシウム化合物(a3)を投入して固体触媒成分前駆体を製造するに際して、1時間あたりの前記有機マグネシウム化合物(a3)の投入量が前記チタン化合物(a2)の0.5倍モル量以上2.5倍モル量以下となるように、前記有機マグネシウム化合物(a3)投入速度を調整する。このような範囲内に投入速度を制御すれば、得られる固体の固体触媒成分前駆体が、突起部の少ない、より球に近い形状となり、その後の過程で突起部が崩れてできるような微粉が少なくなると考えられる。
この投入速度が速すぎると、オレフィン重合体製造時の微粉生成量が多くなり、遅すぎると、製造に要する時間が長くなりすぎて効率が悪くなる。
該投入量の下限として好ましくは0.6倍モル量であり、さらに好ましくは0.8倍モル量である。また、該投入量の上限として好ましくは2.2倍モル量であり、さらに好ましくは2.0倍モル量である。
【0028】
大きな粒子の固体触媒成分前駆体を製造しようとすると、突起部の多い、崩れやすそうな形状となりやすいことから、本発明の固体触媒成分前駆体の製造方法は大きな粒子の固体触媒成分前駆体の製造に好適である。本発明においては、製造される固体触媒成分前駆体としては、平均粒子径が30μm以上であることが好ましい。ここでいう平均粒子径とは、光透過法から得られる体積基準の累積分布曲線におけるメジアン径(累積分布の50%に相当する粒子径)をいう。
かかる固体触媒成分前駆体の平均粒子径は、上記投入時の攪拌効率を選択することにより調整される。一般に攪拌効率の低い方が平均粒子径が大きい。
攪拌効率を、式(1)で表される単位体積攪拌動力因子(P/V)で表すと、本発明において好ましくはP/V=0.05〜100m2/s3、さらに好ましくは0.1〜50m2/s3、より好ましくは0.2〜30m2/s3である。
P/V=Np×(n3)×(d5)÷V (1)
ここで、Np:動力数[−]、n:回転数[rps]、d:攪拌翼径[m]、V:反応液容積[m3]、P/V:単位体積攪拌動力因子[m2/s3]である。
このような攪拌効率において、反応温度は、通常−5℃〜50℃、好ましくは0℃〜25℃、より好ましくは5℃〜10℃である。
このような攪拌効率において、溶媒量は、通常(a1+a2)/(a1+a2+溶媒)=20〜60ml/ml、より好ましくは30〜50ml/mlである。
このような攪拌効率において、反応成分比は、a1とa3の比率が、含まれるSi原子とMg原子の原子比として通常Si/Mg=0.4〜5mol/mol、好ましくは0.6〜2mol/mol、より好ましくは0.8〜1mol/molである。また、a2とa3の比率が、含まれるTi原子とMg原子の原子比として通常Ti/Mg=0.01〜0.15mol/mol、好ましくは0.03〜0.1mol/mol、より好ましくは0.05〜0.07mol/molである。さらに任意成分であるa4を用いる場合、a4とa3の比率が、含まれるエステル基とMg原子の比として通常エステル基/Mg=0.003〜0.08mol/mol、好ましくは0.006〜0.06mol/molである。
【0029】
このようにして得られた固体触媒成分前駆体は通常、固液分離し、ヘキサン、ヘプタン、トルエン等の不活性炭化水素溶媒で数回洗浄を行う。
【0030】
また、本発明で用いられる固体触媒成分前駆体は、重合活性、立体規則性の観点から、固体触媒成分の調製に際し、あらかじめ加熱処理を行っておくことが好ましい。加熱処理は不活性炭化水素溶媒中スラリー状態で行われることが好ましい。処理温度は、通常40〜120℃、好ましくは60℃〜100℃である。処理時間は、通常30分間〜10時間の範囲である。
【0031】
このようにして得られた固体触媒成分前駆体は三価のチタン原子、マグネシウム原子および炭化水素オキシ基を含有し、一般に非晶性もしくは極めて弱い結晶性を示す。触媒性能の点から、特に非晶性の構造が好ましい。
【0032】
本発明のα−オレフィン重合用固体触媒成分(A)は、以下の(a)、(b)および(c)を接触させて得られる。また、さらに有機酸ハライドをも接触させる成分として用いれば、より立体規則性重合能に優れ、好ましい。即ち本発明のα−オレフィン重合用固体触媒成分(A)は好ましくは、以下の(a)、(b)、(c)および(d)を接触させて得られるα−オレフィン重合用固体触媒成分である。
(a)前述の製造方法により調製したα−オレフィン重合用固体触媒成分前駆体
(b)ハロゲン化化合物
(c)電子供与体
(d)有機酸ハライド
【0033】
(b)ハロゲン化化合物
ハロゲン化化合物としては、固体触媒成分前駆体(a)中の炭化水素オキシ基をハロゲン原子に置換し得る化合物が好ましい。中でも、第4族元素のハロゲン化合物、第13族元素のハロゲン化合物、または第14族元素のハロゲン化合物が好ましい。
【0034】
第4族元素のハロゲン化合物としては、一般式M(OR9)bX4 4−b(式中、Mは第4族元素を表し、R9は炭素原子数1〜20の炭化水素基を表し、X4はハロゲン原子を表し、bは0≦b<4を満足する数を表す。)で表されるハロゲン化合物が好ましい。Mの具体例としては、チタン、ジルコニウム、ハフニウムが挙げられ、なかでもチタンが好ましい。R9の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、アミル基、イソアミル基、tert−アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等のアルキル基、フェニル基、クレジル基、キシレル基、ナフチル基等のアリール基、プロペニル基等のアリル基、ベンジル基等のアラルキル基等が例示される。これらの中で炭素原子数2〜18のアルキル基または炭素原子数6〜18のアリール基が好ましい。特に炭素原子数2〜18の直鎖状アルキル基が好ましい。また、2種以上の異なるOR9基を有する第4族元素のハロゲン化合物を用いることも可能である。
【0035】
X4で表されるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示できる。この中で、特に塩素原子が好ましい結果を与える。
【0036】
一般式M(OR9)bX4 4−bで表される第4族元素のハロゲン化合物のbは、0≦b<4を満足する数であり、好ましくは0≦b≦2を満足する数であり、特に好ましくは、b=0である。
【0037】
具体的には、一般式M(OR9)bX4−bで表されるチタン化合物としては、四塩化チタン、四臭化チタン、四沃化チタン等のテトラハロゲン化チタン、メトキシチタントリクロライド、エトキシチタントリクロライド、ブトキシチタントリクロライド、フェノキシチタントリクロライド、エトキシチタントリブロマイド等のトリハロゲン化アルコキシチタン、ジメトキシチタンジクロライド、ジエトキシチタンジクロライド、ジブトキシチタンジクロライド、ジフェノキシチタンジクロライド、ジエトキシチタンジブロマイド等のジハロゲン化ジアルコキシチタン、それぞれに対応したジルコニウム化合物、ハフニウム化合物を挙げることができる。最も好ましくは四塩化チタンである
【0038】
第13族元素または第14族元素のハロゲン化合物としては、一般式MRm−aXa(式中、Mは第13族または第14族原子を、Rは炭素原子数が1〜20の炭化水素基を、Xはハロゲン原子を、mはMの原子価を表す。aは0<a≦mを満足する数を表す)で表される化合物が好ましい。
ここでいう第13族の原子としてはB、Al、Ga、In、Tlが挙げられ、BまたはAlが好ましく、Alがより好ましい。また、第14族の原子としてはC、Si、Ge、Sn、Pbが挙げられ、Si、GeまたはSnが好ましく、SiまたはSnがより好ましい。
【0039】
mはMの原子価であり、例えばMがSiのときm=4である。
aは0<a≦mを満足する数を表し、MがSiのときaは好ましくは3または4である。
Xで表されるハロゲン原子としてF、Cl、Br、Iが挙げられ、Clが好ましい。
【0040】
Rの具体例としては、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、クレジル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等のシクロアルキル基、プロペニル基等のアルケニル基、ベンジル基等のアラルキル基等が挙げられる。好ましいRはアルキル基またはアリール基であり、特に好ましいRはメチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、フェニル基またはパラトリル基である。
【0041】
第13族元素のハロゲン化合物として具体的には、トリクロロボロン、メチルジクロロボロン、エチルジクロロボロン、フェニルジクロロボロン、シクロヘキシルジクロロボロン、ジメチルクロロボロン、メチルエチルクロロボロン、トリクロロアルミニウム、メチルジクロロアルミニウム、エチルジクロロアルミニウム、フェニルジクロロアルミニウム、シクロヘキシルジクロロアルミニウム、ジメチルクロロアルミニウム、ジエチルクロロアルミニウム、メチルエチルクロロアルミニウム、エチルアルミニウムセスキクロライド、ガリウムクロライド、ガリウムジクロライド、トリクロロガリウム、メチルジクロロガリウム、エチルジクロロガリウム、フェニルジクロロガリウム、シクロヘキシルジクロロガリウム、ジメチルクロロガリウム、メチルエチルクロロガリウム、インジウムクロライド、インジウムトリクロライド、メチルインジウムジクロライド、フェニルインジウムジクロライド、ジメチルインジウムクロライド、タリウムクロライド、タリウムトリクロライド、メチルタリウムジクロライド、フェニルタリウムジクロライド、ジメチルタリウムクロライド等が挙げられ、これら化合物名のクロロをフルオロ、ブロモ、またはヨードに変更した化合物も挙げられる。
【0042】
第14族元素のハロゲン化合物として具体的には、テトラクロロメタン、トリクロロメタン、ジクロロメタン、モノクロロメタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、テトラクロロシラン、トリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、ノルマルプロピルトリクロロシラン、ノルマルブチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ベンジルトリクロロシラン、パラトリルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、ジクロロシラン、メチルジクロロシラン、エチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、メチルエチルジクロロシラン、モノクロロシラン、トリメチルクロロシラン、トリフェニルクロロシラン、テトラクロロゲルマン、トリクロロゲルマン、メチルトリクロロゲルマン、エチルトリクロロゲルマン、フェニルトリクロロゲルマン、ジクロロゲルマン、ジメチルジクロロゲルマン、ジエチルジクロロゲルマン、ジフェニルジクロロゲルマン、モノクロロゲルマン、トリメチルクロロゲルマン、トリエチルクロロゲルマン、トリノルマルブチルクロロゲルマン、テトラクロロ錫、メチルトリクロロ錫、ノルマルブチルトリクロロ錫、ジメチルジクロロ錫、ジノルマルブチルジクロロ錫、ジイソブチルジクロロ錫、ジフェニルジクロロ錫、ジビニルジクロロ錫、メチルトリクロロ錫、フェニルトリクロロ錫、ジクロロ鉛、メチルクロロ鉛、フェニルクロロ鉛等が挙げられ、これら化合物名のクロロをフルオロ、ブロモ、またはヨードに変更した化合物も挙げられる。
【0043】
ハロゲン化化合物(b)として、テトラクロロチタン、メチルジクロロアルミニウム、エチルジクロロアルミニウム、テトラクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、ノルマルプロピルトリクロロシランまたはテトラクロロ錫が、重合活性の観点から、特に好ましく用いられる。
ハロゲン化化合物(b)として、上記化合物の中の1種類のみを用いてもよいし、複数種を用いてもよい。
【0044】
(c)電子供与体
電子供与体(c)としては、エーテル類、ケトン類、アルデヒド類、カルボン酸類、有機酸または無機酸のエステル類、有機酸または無機酸の酸アミド類、酸無水物類等の含酸素電子供与性化合物、アンモニア類、アミン類、ニトリル類、イソシアネート類等の含窒素電子供与性化合物を挙げることができる。これらの電子供与体のうち好ましくは有機酸のエステル類および/またはエーテル類であり、より好ましくはカルボン酸エステル類(c1)および/またはエーテル類(c2)である。
【0045】
カルボン酸エステル類(c1)の例としては、モノおよび多価のカルボン酸エステルが挙げられ、それらの例として飽和脂肪族カルボン酸エステル、不飽和脂肪族カルボン酸エステル、脂環式カルボン酸エステル、芳香族カルボン酸エステルを挙げることができる。具体例としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸フェニル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸エチル、吉草酸エチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、トルイル酸メチル、トルイル酸エチル、アニス酸エチル、コハク酸ジエチル、コハク酸ジブチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル、フタル酸モノエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸メチルエチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−プロピル、フタル酸ジイソプロピル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジペンチル、フタル酸ジ−n−ヘキシル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ジフェニル等を挙げることができる。
【0046】
これらのカルボン酸エステル類のうち、メタクリル酸エステル、マレイン酸エステル等の不飽和脂肪族カルボン酸エステルまたは安息香酸エステル、フタル酸エステル等の芳香族カルボン酸エステルが好ましく用いられる。特に好ましくは、芳香族多価カルボン酸エステルであり、最も好ましくはフタル酸ジアルキルエステルである。
【0047】
エーテル類(c2)の例としては、ジアルキルエーテルおよび一般式
(但し、R5 〜R8 はそれぞれ独立に炭素原子数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは脂環式のアルキル基、アリール基またはアラルキル基であり、R6 およびR7 はそれぞれ独立に水素原子であってもよい。)で表されるジエーテル化合物を挙げることができ、これらのうちの1種または2種以上が好適に用いられる。
【0048】
具体例としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチル−n−ブチルエーテル、メチルシクロヘキシルエーテル、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(シクロヘキシルメチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−3,7−ジメチルオクチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−シクロヘキシルメチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−シクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−シクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−ヘプチル−2−ペンチル−1,3−ジメトキシプロパン等を挙げることができ、これらのうちの1種または2種以上が好適に用いられる。
エーテル類(c2)として特に好ましくはジアルキルエーテルであり、最も好ましくはジ−n−ブチルエーテルである。なお、ジ−n−ブチルエーテルは単にジブチルエーテルもしくはブチルエーテルと記載することもある。
【0049】
(d)有機酸ハライド
本発明の固体触媒成分の調製に使用される有機酸ハライド(d)として好ましくは、モノまたは多価のカルボン酸ハライドが用いられ、それらの例として脂肪族カルボン酸ハライド、脂環式カルボン酸ハライド、芳香族カルボン酸ハライドを挙げることができる。具体例としては、アセチルクロライド、プロピオン酸クロライド、酪酸クロライド、吉草酸クロライド、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド、安息香酸クロライド、トルイル酸クロライド、アニス酸クロライド、コハク酸クロライド、マロン酸クロライド、マレイン酸クロライド、イタコン酸クロライド、フタル酸クロライド等を挙げることができる。
【0050】
これらの有機酸ハライドのうち、安息香酸クロライド、トルイル酸クロライド、フタル酸クロライド等の芳香族カルボン酸クロライドが好ましく、さらに好ましくは芳香族ジカルボン酸ジクロライドであり、特にフタル酸クロライドが好ましく用いられる。
【0051】
(A)固体触媒成分の調製
本発明の固体触媒成分(A)は、前記固体触媒成分前駆体(a)、ハロゲン化化合物(b)、および電子供与体(c)を接触させることにより、また、前記固体触媒成分前駆体(a)、ハロゲン化化合物(b)、電子供与体(c)、および有機酸ハライド(d)を接触させることにより得られる。これらの接触処理は通常、全て窒素、アルゴン等の不活性気体雰囲気下で行われる。
【0052】
固体触媒成分を得る接触処理の具体的な方法としては、
・(a)に(b)、(c)(投入順序任意)を投入し、接触処理する方法、
・(a)に(b)、(d)(投入順序任意)を投入し、接触処理する方法、
・(a)に(b)と(c)と(d)の混合物を投入し、接触処理する方法、
・(a)に(b)と(c)の混合物、(d)(投入順序任意)を投入し、接触処理する方法、
・(a)に(c)を投入し、接触処理した後、(b)を投入し、接触処理する方法、
・(a)に(c)を投入し、接触処理した後、(b)、(c)(投入順序任意)を投入し、接触処理する方法、
・(a)に(c)を投入し、接触処理した後、(b)と(c)の混合物を投入し、接触処理する方法、
・(b)に(a)、(c)(投入順序任意)を投入し、接触処理する方法、
・(b)に(a)、(d)(投入順序任意)を投入し、接触処理する方法、
・(b)に(a)、(c)、(d)(投入順序任意)を投入し、接触処理する方法、
等が挙げられ、また、これら接触処理の後、さらに(b)で1回以上接触処理する方法、(b)と(c)の混合物で1回以上接触処理する方法が挙げられる。
【0053】
これらのうち(a)に(b)、(d)(投入順序任意)を投入し、接触処理する方法、(a)に(b)と(c)の混合物、(d)(投入順序任意)を投入する方法、(a)に(b)と(c)の混合物、(d)(投入順序任意)を投入し、接触処理した後、(b)と(c)の混合物を投入し、1回以上接触処理する方法、(a)に(c)を投入し、接触処理した後、(b)と(c)の混合物で1回以上接触処理する方法が好ましく、
(a)に(b)と(c)の混合物、(d)の順序でそれぞれを投入し、接触処理する方法、(a)に(b)と(c)の混合物、(d)の順序でそれぞれを投入し、接触処理した後、(b)と(c)の混合物を投入し、1回以上接触処理する方法、もしくは(a)に(c)を投入し、接触処理した後、(b)と(c)の混合物で1回以上接触処理する方法がより好ましい。特に好ましくは、(a)に(b)と(c2)の混合物、(d)の順序でそれぞれを投入し、接触処理した後、(b)と(c1)と(c2)の混合物を投入し、接触処理を行い、さらに(b)と(c2)の混合物で1回以上接触処理する方法、もしくは(a)に(c1)を投入し、接触処理した後、(b)と(c1)と(c2)の混合物を投入し、接触処理を行い、さらに(b)と(c2)の混合物で1回以上接触処理する方法である。
【0054】
接触処理は、微粉の発生を抑制する観点から、希釈剤の存在下で行うのが好ましい。
また、接触処理後は、そのまま次の操作を行うことができるが、余剰物を除去するため、希釈剤により洗浄処理を行うのが好ましい。
【0055】
希釈剤としては、処理対象成分に対して不活性であることが好ましく、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、シクロヘキサン、シクロペンタンなどの脂環式炭化水素、1,2−ジクロルエタン、モノクロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素が使用できる。
接触処理における希釈剤の使用量は、一段階の接触処理につき、固体触媒成分前駆体(a)1g当たり通常0.1ml〜1000mlである。好ましくは1g当たり1ml〜100mlである。また、一回の洗浄操作における希釈剤の使用量も同程度である。洗浄処理における洗浄操作の回数は、一段階の接触処理につき通常1〜5回である。
【0056】
接触処理および/または洗浄処理温度はそれぞれ通常−50〜150℃であるが、好ましくは0〜140℃であり、さらに好ましくは60〜135℃である。
接触処理時間は特に制限はないが、好ましくは0.5〜8時間であり、さらに好ましくは1〜6時間である。洗浄操作時間は特に限定されないが、好ましくは1〜120分であり、さらに好ましくは2〜60分である。
【0057】
ハロゲン化化合物(b)の使用量は、固体触媒成分前駆体(a)1gに対し、通常0.5〜1000ミリモル、好ましくは1〜200ミリモル、さらに好ましくは2〜100ミリモルである。
また、ハロゲン化化合物(b)の使用に際しては、電子供与体(c)を共に用いることが好ましい。その場合の(b)1モルに対する(c)の使用量は、通常1〜100モル、好ましくは1.5〜75モル、さらに好ましくは2〜50モルである。
【0058】
電子供与体(c)の使用量は、固体触媒成分前駆体(a)1gに対し、通常0.01〜100ミリモル、好ましくは0.05〜50ミリモル、さらに好ましくは0.1〜20ミリモルである。
【0059】
有機酸ハライド(d)の使用量は、固体触媒成分前駆体(a)1gに対し、通常0.1〜100ミリモル、好ましくは0.3〜50ミリモル、さらに好ましくは0.5〜20ミリモルである。また、固体触媒成分前駆体(a)中のマグネシウム原子1モル当たりの有機酸ハライド(d)の使用量は、通常0.01〜1.0モル、好ましくは0.03〜0.5モルである。
(c)や(d)の使用量が過度に多い場合には粒子の崩壊が起こることがある。
【0060】
なお、それぞれの化合物を複数の回数にわたって使用して接触処理をする場合には、以上に述べた各化合物の使用量はそれぞれ一回ごとかつ一種類の化合物ごとの使用量を表す。
【0061】
得られた固体触媒成分は、不活性な希釈剤と組合せてスラリー状態で重合に使用してもよいし、乾燥して得られる流動性の粉末として重合に使用してもよい。乾燥方法としては、減圧条件下揮発成分を除去する方法、窒素、アルゴン等不活性ガスの流通下揮発成分を除去する方法が挙げられる。乾燥時の温度は0〜200℃であることが好ましく、50〜100℃であることがより好ましい。乾燥時間は、0.01〜20時間であることが好ましく、0.5〜10時間であることがより好ましい。
【0062】
本発明のα−オレフィン重合用触媒は、前記本発明の固体触媒成分(A)、有機アルミニウム化合物(B)、ならびに電子供与性化合物(C)を接触させて得られる。
【0063】
(B)有機アルミニウム化合物
前記有機アルミニウム化合物(B)は、少なくとも分子内に一個のAl−炭素結合を有するものである。代表的なものを一般式で下記に示す。
R19 wAlY3−w
R20R21Al−O−AlR22R23
(式中、R19〜R23は炭素原子数1〜20の炭化水素基を、Yはハロゲン原子、水素原子またはアルコキシ基を表し、wは2≦w≦3を満足する数である。)
かかる有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド等のジアルキルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムクロライド等のジアルキルアルミニウムハライド、トリエチルアルミニウムとジエチルアルミニウムクロライドとの混合物のようなトリアルキルアルミニウムとジアルキルアルミニウムハライドとの混合物、テトラエチルジアルモキサン、テトラブチルジアルモキサン等のアルキルアルモキサンが例示できる。
【0064】
これらの有機アルミニウム化合物のうち、トリアルキルアルミニウム、トリアルキルアルミニウムとジアルキルアルミニウムハライドとの混合物、または、アルキルアルモキサンが好ましく、とりわけトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムとジエチルアルミニウムクロライドとの混合物またはテトラエチルジアルモキサンが好ましい。
【0065】
(C)電子供与性化合物
前記電子供与性化合物(C)としては、酸素含有化合物、窒素含有化合物、リン含有化合物、硫黄含有化合物が挙げられ、なかでも酸素含有化合物または窒素含有化合物が好ましく、特に酸素含有化合物が好ましい。
酸素含有化合物としては、アルコキシケイ素類、エーテル類、エステル類、ケトン類などが挙げられ、少なくともアルコキシケイ素類を含有することが好ましい。
【0066】
アルコキシケイ素類としては、一般式 R3 rSi(OR4)4−r (式中、R3は炭素原子数1〜20の炭化水素基、水素原子またはヘテロ原子含有置換基を表し、R4は炭素原子数1〜20の炭化水素基を表し、rは0≦r<4を満足する数を表す。全てのR3および全てのR4はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)で表されるアルコキシケイ素化合物が好ましく用いられる。
R3が炭化水素基の場合、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等の直鎖状アルキル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、等の分岐鎖状アルキル基、シクロペンンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、シクロペンテニル基等のシクロアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基等が挙げられる。なかでもアルコキシケイ素化合物のケイ素原子と直接結合した炭素原子が2級もしくは3級炭素であるR3を少なくとも1つ持つことが好ましい。
R3がヘテロ原子含有置換基の場合、ヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子が挙げられる。具体的にはジメチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルn−プロピルアミノ基、ジn−プロピルアミノ基、ピロリル基、ピリジル基、ピロリジニル基、ピペリジル基、パーヒドロインドリル基、パーヒドロイソインドリル基、パーヒドロキノリル基、パーヒドロイソキノリル基、パーヒドロカルバゾリル基、パーヒドロアクリジニル基、フリル基、ピラニル基、パーヒドロフリル基、チエニル基等が挙げられ、なかでもヘテロ原子がアルコキシケイ素化合物のケイ素原子と直接化学結合できる置換基が好ましい。
【0067】
前記アルコキシケイ素化合物の具体例としては、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジ−tert−ブチルジメトキシシラン、tert−ブチルメチルジメトキシシラン、tert−ブチルエチルジメトキシシラン、tert−ブチル−n−プロピルジメトキシシラン、tert−ブチル−n−ブチルジメトキシシラン、tert−アミルメチルジメトキシシラン、tert−アミルエチルジメトキシシラン、tert−アミルnプロピルジメトキシシラン、tert−アミル−n−ブチルジメトキシシラン、イソブチルイソプロピルジメトキシシラン、tert−ブチルイソプロピルジメトキシシラン、ジシクロブチルジメトキシシラン、シクロブチルイソプロピルジメトキシシラン、シクロブチルイソブチルジメトキシシラン、シクロブチル−tert−ブチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロペンチルイソプロピルジメトキシシラン、シクロペンチルイソブチルジメトキシシラン、シクロペンチル−tert−ブチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシルイソプロピルジメトキシシラン、シクロヘキシルイソブチルジメトキシシラン、シクロヘキシル−tert−ブチルジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルイソプロピルジメトキシシラン、フェニルイソブチルジメトキシシラン、フェニル−tert−ブチルジメトキシシラン、フェニルシクロペンチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、ジイソブチルジエトキシシラン、ジ−tert−ブチルジエトキシシラン、tert−ブチルメチルジエトキシシラン、tert−ブチルエチルジエトキシシラン、tert−ブチル−n−プロピルジエトキシシラン、tert−ブチル−n−ブチルジエトキシシラン、tert−アミルメチルジエトキシシラン、tert−アミルエチルジエトキシシラン、tert−アミル−n−プロピルジエトキシシラン、tert−アミル−n−ブチルジエトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルエチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、2−ノルボルナンメチルジメトキシシラン、ビス(パーヒドロキノリノ)ジメトキシシラン、ビス(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、(パーヒドロキノリノ)(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、(パーヒドロキノリノ)メチルジメトキシシラン、(パーヒドロイソキノリノ)メチルジメトキシシラン、(パーヒドロキノリノ)エチルジメトキシシラン、(パーヒドロイソキノリノ)エチルジメトキシシラン、(パーヒドロキノリノ)(n−プロピル)ジメトキシシラン、(パーヒドロイソキノリノ)(n−プロピル)ジメトキシシラン、((パーヒドロキノリノ)(tert−ブチル)ジメトキシシラン、(パーヒドロイソキノリノ)(tert−ブチル)ジメトキシシランが挙げられる。
【0068】
エーテル類の例としては、ジアルキルエーテルおよび一般式
(但し、R5 〜R8 はそれぞれ独立に炭素原子数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは脂環式のアルキル基、アリール基またはアラルキル基であり、R6 およびR7 はそれぞれ独立に水素原子であってもよい。)で表されるジエーテル化合物を挙げることができ、これらのうちの1種または2種以上が好適に用いられる。
【0069】
具体例としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチル−n−ブチルエーテル、メチルシクロヘキシルエーテル、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(シクロヘキシルメチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−3,7−ジメチルオクチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−シクロヘキシルメチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−シクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−シクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−ヘプチル−2−ペンチル−1,3−ジメトキシプロパン等を挙げることができ、これらのうちの1種または2種以上が好適に用いられる。
エーテル類(e2)として特に好ましくはジアルキルエーテルであり、最も好ましくはジ−n−ブチルエーテルである。なお、ジ−n−ブチルエーテルは単にジブチルエーテルもしくはブチルエーテルと記載することもある。
【0070】
窒素含有化合物としては、2,6−ジメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどの2,6−置換ピペリジン類、2,5−置換ピペリジン類、N,N,N’,N’−テトラメチルメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチルメチレンジアミンなどの置換メチレンジアミン類、1,3−ジベンジルイミダゾリジンなどの置換イミダゾリジン類などが挙げられる。なかでも2,6−置換ピペリジン類が好ましい。
【0071】
[オレフィンの重合]
本発明により得られる固体触媒成分を用いたα−オレフィンの製造において、α−オレフィンは、炭素原子数3以上のα−オレフィンであり、かかるα−オレフィンの具体例としてはプロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、デセン−1、などの直鎖状モノオレフィン、3−メチルブテン−1、3−メチルペンテン−1、4−メチルペンテン−1、などの分岐鎖状モノオレフィン、ビニルシクロヘキサンなどが挙げられる。これらのα−オレフィンは1種類を用いてもよいし、あるいは、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらのα−オレフィンのうちでは、プロピレンまたはブテン−1を用いて単独重合を行うこと、あるいはプロピレンまたはブテン−1を主成分とする混合オレフィンを用いて共重合を行うことが好ましく、プロピレンを用いて単独重合を行うこと、あるいはプロピレンを主成分とする混合オレフィンを用いて共重合を行うことが特に好ましい。また、本発明における共重合に際しては、エチレンおよび上記のα−オレフィンから選ばれる2種類または、それ以上の種類のオレフィンを混合して用いることができる。さらに、共役ジエンや非共役ジエンのような多不飽和結合を有する化合物を共重合に用いることも可能である。そして、重合を2段以上にして行うヘテロブロック共重合も容易に行うことができる。
【0072】
本発明により得られる固体触媒成分を用いた触媒は、前記の固体触媒成分(A)、有機アルミニウム化合物(B)、および電子供与性化合物(C)を接触させて得られるα−オレフィン重合用触媒である。ここでいう接触とは、触媒成分(A)〜(C)が接触し、触媒が形成されるならどのような手段によってもよく、あらかじめ溶媒で希釈してもしくは希釈せずに成分(A)〜(C)を混合して接触させる方法や、別々に重合槽に供給して重合槽の中で接触させる方法等を採用できる。
各触媒成分を重合槽に供給する方法としては、窒素、アルゴン等の不活性ガス中で水分のない状態で供給することが好ましい。各触媒成分は、いずれか2者を予め接触させて供給しても良い。
【0073】
本発明において、前記本発明のα−オレフィン重合用触媒をそのままα−オレフィン重合体の製造方法に用いてもよいし(このときの重合を以下、「本重合」という)、該触媒に予備重合処理を施すことによって得られる予備重合触媒を予め得たのちにそれを本重合に用いてもよい。
予備重合触媒は通常、上記の固体触媒成分(A)および有機アルミニウム化合物(B)の存在下、少量のオレフィンを重合させる(予備重合させる)ことによって製造される。予備重合法として、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼンおよびトルエンのような不活性炭化水素を溶媒とするスラリー重合法が好ましい。該溶媒の一部または全部を、液状のオレフィンに変えてもよい。
予備重合における有機アルミニウム化合物(B)の使用量は、固体触媒成分(A)中のチタン原子1モル当たり、通常0.5〜700モル、好ましくは0.8〜500モル、特に好ましくは1〜200モルである。
予備重合されるオレフィンの量は、固体触媒成分(A)1g当たり通常0.01〜1000g、好ましくは0.05〜500g、特に好ましくは0.1〜200gである。
【0074】
上記スラリー重合法におけるスラリー濃度は、好ましくは1〜500g−固体触媒成分/リットル−溶媒、特に好ましくは3〜300g−固体触媒成分/リットル−溶媒である。予備重合温度は、好ましくは−20〜100℃、特に好ましくは0〜80℃である。予備重合における気相部のオレフィンの分圧は、好ましくは0.01〜20kg/cm2、特に好ましくは0.1〜10kg/cm2であるが、予備重合の圧力や温度において液状であるオレフィンについては、この限りではない。予備重合時間は特に制限されず、好ましくは通常、2分間から15時間である
【0075】
予備重合において、固体触媒成分、有機アルミニウム化合物およびオレフィンを重合槽へ供給する方法として、(1)固体触媒成分と有機アルミニウム化合物とを供給した後、オレフィンを供給する方法、および、(2)固体触媒成分とオレフィンとを供給した後、有機アルミニウム化合物を供給する方法、を例示することができる。オレフィンを重合槽へ供給する方法として、(1)重合槽内の圧力を所定の圧力に維持するようにオレフィンを順次供給する方法、および、(2)オレフィンの所定量の全量を一括して供給する方法、を例示することができる。予備重合で得られるオレフィン重合体の分子量を調節するために、水素のような連鎖移動剤を用いてもよい。
【0076】
予備重合においては、必要に応じて、本重合で用いられる電子供与性化合物(C)の一部または全部を用いてもよい。予備重合で用いられる電子供与性化合物の量は、固体触媒成分中に含まれるチタン原子1モルに対して、通常0.01〜400モル、好ましくは0.02〜200モル、特に好ましくは、0.03〜100モルであり、有機アルミニウム化合物1モルに対して、通常0.003〜5モル、好ましくは0.005〜3モル、特に好ましくは0.01〜2モルである。
予備重合において、電子供与性化合物を重合槽へ供給する方法は特に制限されない。該方法として、(1)電子供与性化合物のみを供給する方法、および、(2)電子供与性化合物と有機アルミニウム化合物との接触物を供給する方法、を例示することができる。予備重合で使用されるオレフィンは、本重合で使用されるオレフィンと同一であっても異なっていてもよい。
【0077】
本重合の方法として、(1)固体触媒成分、有機アルミニウム化合物および電子供与性化合物を接触させて得られる触媒の存在下にα−オレフィンを重合させる方法、(2)予備重合触媒の存在下にα−オレフィンを重合させる方法、および(3)該予備重合触媒と、有機アルミニウム化合物と、電子供与性化合物との接触物の存在下にα−オレフィンを重合させる方法、を例示することができる。
本重合における有機アルミニウム化合物の使用量は、固体触媒成分中のチタン原子1モル当たり、通常1〜1000モル、好ましくは5〜600モルである。
【0078】
本重合における電子供与性化合物の使用量は、固体触媒成分中に含まれるチタン原子1モルに対し、通常0.1〜2000モル、好ましくは0.3〜1000モル、特に好ましくは、0.5〜800モルであり、有機アルミニウム化合物1モルに対し、通常0.001〜5モル、好ましくは0.005〜3モル、特に好ましくは0.01〜1モルである。
【0079】
本重合における重合温度は、通常−30〜300℃、好ましくは20〜180℃、より好ましくは50〜95℃である。重合圧力は特に制限されず、工業的かつ経済的であるという観点から、一般に常圧〜100kg/cm2、好ましくは2〜50kg/cm2程度である。重合形式はバッチ式でも連続式でもよい。重合方法として、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンおよびオクタンのような不活性炭化水素溶媒を用いるスラリー重合法、該溶媒を用いる溶液重合法、重合温度において液状であるα−オレフィンを媒体とするバルク重合法、および、気相重合法を例示することができるが、特に前記の工程2は良好な粉体性状を得る観点から気相重合法であることが好ましい。
【0080】
本重合においては、得られるα−オレフィン重合体の分子量を調節するために、水素のような連鎖移動剤を用いてもよい。
【0081】
【実施例】
以下、実施例および比較例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例によって特に限定をうけるものではない。なお実施例中、触媒成分、重合体の各種物性の評価方法は、次のとおりである。
【0082】
(1)平均粒子径および粒度分布:固体触媒成分前駆体の平均粒子径は、超遠心式自動粒度分布測定装置(堀場製作所製CAPA−700)を用いて測定した。分散媒体としてはデカヒドロナフタリンを用いた。
【0083】
(2)組成分析:Ti含有量は、固体成分を希硫酸で分解後、過剰の過酸化水素水を加え、410nmの特性吸収を日立製ダブルビーム分光光度計U−2001型を用いて測定し、検量線により求めた。アルコキシ基含有量は、固体成分を水で分解後、ガスクロマトグラフィー内部標準法を用いて対応するアルコール量を測定することで求めた。フタル酸エステル含有量は、固体サンプルをN,N−ジメチルアセトアミドに溶解後、溶液中のフタル酸エステル量をガスクロマトグラフィー内部標準法で求めた。
【0084】
(3)重合体粒子の微粉割合は、重合体粒子10gを振動篩にかけ目開き250μmの篩を通過した粒子の重量分率で表した。
【0085】
(4)極限粘度([η]):テトラリンを溶媒とし、温度135℃でウベローデ型粘度計を用いて測定した。
【0086】
(5)CXS:20℃の冷キシレンに可溶な分量を百分率(重量%)で表した。通常、CXSは値が小さいほど、無定形重合体が少なく、高立体規則性であることを示す。
【0087】
(6)嵩密度:JIS K−6721(1966)に従って測定した。
【0088】
[実施例1]
(1)固体触媒成分前駆体の合成
図2に示す500ミリリットルの円筒型反応器(直径0.055mの攪拌羽根を3対持つ撹拌機および幅0.007mの邪魔板4枚を備えた直径0.07mのもの)を窒素置換し、ヘキサン 210ミリリットル、ジイソブチルフタレート2.6ミリリットル、テトラエトキシシラン 84ミリリットル及びテトラブトキシチタン 8.5ミリリットルを投入、撹拌した。次に、前記攪拌混合物に、ブチルマグネシウムクロリドのジブチルエーテル溶液(濃度2.1モル/リットル)195.3ミリリットルを反応器内の温度を5℃に保ちながら10.8時間かけて一定速度で滴下した。よって、このときの1時間あたりのブチルマグネシウムクロリドの投入量は、テトラブトキシチタンの1.5倍モル量である。この時の攪拌回転数は300rpmであった。滴下終了後、20℃で1時間撹拌したあと濾過し、得られた固体について室温下トルエン 270ミリリットルでの洗浄を3回行い、トルエン 215ミリリットルを加え、固体触媒成分前駆体スラリーを得た。
該固体触媒成分前駆体は、Ti:2.1重量%、OEt(エトキシ基):36.3重量%、OBu(ブトキシ基):3.0重量%を含有していた。その平均粒子径は45μmであった。
【0089】
(2)固体触媒成分の合成
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた100ミリリットルのフラスコを窒素で置換したのち、上記(1)で得られたスラリーから固体成分8gを含むスラリーを取り出して前記フラスコ中に投入し、スラリーの全体積が26.5ミリリットルとなるように上澄み液を抜き取り、そこへ四塩化チタン 16.0ミリリットル、ジブチルエーテル 0.8ミリリットルの混合物を投入し、さらにフタル酸クロライド(以下、OPCと略すことがある。)1.6ミリリットルとトルエン1.6ミリリットルの混合物を5分間で滴下した。滴下終了後、反応混合物を115℃で3時間攪拌した。その後、同温度で固液分離し、115℃でトルエン40ミリリットルで3回洗浄を行った。
洗浄後、スラリーの体積が26.5ミリリットルとなるようにトルエンを加えた。そこへジブチルエーテル 0.8ミリリットル、フタル酸ジイソブチル 0.45ミリリットルと、四塩化チタン 6.4ミリリットルの混合物を投入し、105℃で1時間攪拌した。その後、同温度で固液分離し、105℃でトルエン40ミリリットルで2回洗浄を行った。
次に、スラリーの体積が26.5ミリリットルとなるようにトルエンを加え、105℃とした。そこへジブチルエーテル 0.8ミリリットル、四塩化チタン6.4ミリリットルの混合物を投入し、105℃で1時間攪拌した。その後、同温度で固液分離し、105℃でトルエン 40ミリリットルで2回洗浄を行った。
さらに、スラリーの体積が26.5ミリリットルとなるようにトルエンを加え、105℃とした。そこへジブチルエーテル 0.8ミリリットル、四塩化チタン 6.4ミリリットルの混合物を投入し、105℃で1時間攪拌した。その後、同温度で固液分離し、105℃でトルエン 40ミリリットルで3回、室温でヘキサン 40ミリリットルで3回洗浄を行った。これを減圧乾燥して固体触媒成分を得た。
固体触媒成分中には、チタン原子が2.0重量%、フタル酸エステルが10.5重量%含まれていた。
【0090】
(3)プロピレンの重合
3リットルの内容積を持つステンレス製オートクレーブをアルゴン置換し、(B)成分としてトリエチルアルミニウム 2.6ミリモル、(C)成分としてシクロヘキシルエチルジメトキシシラン 0.26ミリモル、及び(A)成分として上記(2)で合成した固体触媒成分 5.9ミリグラムを仕込み、0.033MPaの分圧に相当する水素を加えた。次いで780グラムの液化プロピレンを仕込み、オートクレーブの温度を80℃に昇温し、80℃で1時間重合を行った。重合終了後未反応モノマーをパージした。生成した重合体を減圧乾燥し、273グラムのポリプロピレンパウダーを得た。
固体触媒成分1g当たりのポリプロピレンの収量(以下、PP/catと略す)は、PP/cat=46300(g/g)であった。また、微粉割合は10.5(wt%)、全重合体収量に占める20℃キシレンに可溶な成分の割合はCXS=0.40(wt%)、重合体の極限粘度は[η]=2.02(dl/g)、嵩密度は0.45(g/ml)であった。
【0091】
[比較例1]
(1)固体触媒成分前駆体の合成
ブチルマグネシウムクロリドのジブチルエーテル溶液の投入時間を1.1時間に変更した以外は実施例1(1)と同様に合成を行い、固体触媒成分前駆体を得た。このときの1時間当たりのブチルマグネシウムクロリドの投入量は14.9倍モル量である。
該固体触媒成分前駆体は、Ti:2.1重量%、OEt(エトキシ基):36.5重量%、OBu(ブトキシ基):3.4重量%を含有していた。その平均粒子径は43μmであった。
【0092】
(2)固体触媒成分の合成
上記(1)の固体触媒成分前駆体を用いた他は実施例1(2)と同様に合成を行い、固体触媒成分を得た。
固体触媒成分中には、チタン原子が2.2重量%、フタル酸エステルが9.8重量%含まれていた。
【0093】
(3)プロピレンの重合
固体触媒成分を上記(2)で得られた固体触媒成分 6.34ミリグラムに変更した以外は実施例1(3)に従って重合し、313グラムのポリプロピレンパウダーを得た。
PP/cat=49400(g/g)であった。また、微粉割合は32.3(wt%)、全重合体収量に占める20℃キシレンに可溶な成分の割合はCXS=0.52(wt%)、重合体の極限粘度は[η]=1.90(dl/g)、嵩密度は0.45(g/ml)であった。
【0094】
[比較例2]
(1)固体触媒成分前駆体の合成
ブチルマグネシウムクロリドのジブチルエーテル溶液の投入時間を5.0時間に変更した以外は実施例1(1)と同様に合成を行い、固体触媒成分前駆体を得た。このときの1時間当たりのブチルマグネシウムクロリドの投入量は3.3倍モル量である。
該固体触媒成分前駆体は、Ti:2.0重量%、OEt(エトキシ基):35.5重量%、OBu(ブトキシ基):3.5重量%を含有していた。その平均粒子径は39μmであった。
【0095】
(2)固体触媒成分の合成
上記(1)の固体触媒成分前駆体を用いた他は実施例1(2)と同様に合成を行い、固体触媒成分を得た。
固体触媒成分中には、チタン原子が2.0重量%、フタル酸エステルが10.7重量%含まれていた。
【0096】
(3)プロピレンの重合
固体触媒成分を上記(2)で得られた固体触媒成分 4.97ミリグラムに変更した以外は実施例1(3)に従って重合し、270グラムのポリプロピレンパウダーを得た。
PP/cat=54300(g/g)であった。また、微粉割合は19.8(wt%)、全重合体収量に占める20℃キシレンに可溶な成分の割合はCXS=0.42(wt%)、重合体の極限粘度は[η]=1.95(dl/g)、嵩密度は0.45(g/ml)であった。
【0097】
【発明の効果】
以上に述べたとおり、本発明によれば、微粉発生量が少なく、安定で効率的なα−オレフィン重合体製造に好適なα−オレフィン重合用固体触媒成分前駆体の製造方法、α−オレフィン重合用触媒固体成分、α−オレフィン重合用触媒およびα−オレフィン重合体の製造方法が提供される。さらに本発明のα−オレフィン重合用触媒は、高い重合活性で、高立体規則性の重合体製造を実現し得ることから、その産業上の利用価値はすこぶる大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の理解を助けるためのフローチャート図である。本フローチャート図は、本発明の実施態様の代表例であり、本発明は、何らこれに限定されるものではない。
【図2】図2は、実施例1(1)他で使用した円筒型反応器を上面から見た図(a)および側面から見た図(b)である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、α−オレフィン重合用固体触媒成分前駆体の製造方法、α−オレフィン重合用固体触媒成分、α−オレフィン重合用触媒およびα−オレフィン重合体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリプロピレン等のα−オレフィン重合体は、その優れた物理的性質により近年著しい需要の伸びを示している。
ポリプロピレン等のα−オレフィン重合体の製造においては、周期律表の第4〜6族の遷移金属化合物を用いて得られる固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物とを接触させて得られる、いわゆるチーグラー−ナッタ触媒が広く用いられる。従来の三塩化チタン型触媒に対し、マグネシウム化合物とチタン化合物とを組み合わせてなる高活性触媒も開発され、高効率に高立体規則性の結晶性ポリプロピレンの製造を可能とした。
例えば、ハロゲン化マグネシウムに4価のハロゲン化チタンを担持することにより得られる担持型固体触媒成分、助触媒の有機アルミニウム化合物、重合第三成分の有機ケイ素化合物を組み合わせて用いることによりα−オレフィンの高立体規則性重合が実現できることが知られている(特許文献1〜3)。
【0003】
【特許文献1】
特開昭57−63310号公報
【特許文献2】
特開昭58−83006号公報
【特許文献3】
特開昭61−78803号公報
【0004】
また、有機ケイ素化合物およびエステル化合物の存在下、チタン化合物を有機マグネシウム化合物で還元して得られる固体生成物をエステル化合物で処理したのち、ハロゲン化化合物(例えば四塩化チタン)および電子供与体(例えば、エーテル化合物、エーテル化合物とエステル化合物の混合物)と接触処理することにより得られる三価のチタン化合物含有固体触媒成分と、助触媒の有機アルミニウム化合物と、重合第三成分の電子供与性化合物との組み合わせにおいてもα−オレフィンの高立体規則性重合が実現できることが知られている(特許文献4)。
【0005】
【特許文献4】
特開平7−216017号公報
【0006】
さらに、有機ケイ素化合物およびエステル化合物の存在下、チタン化合物を有機マグネシウム化合物で還元して得られる固体生成物に、ハロゲン化化合物(例えば四塩化チタン)、電子供与体(例えば、エーテル化合物、エーテル化合物とエステル化合物の混合物)、および有機酸ハライドと接触処理することにより得られる三価のチタン化合物含有固体触媒成分と、助触媒の有機アルミニウム化合物と、重合第三成分の電子供与性化合物との組み合わせにおいてもα−オレフィンの高立体規則性重合が実現できることが知られている(特許文献5)。
【0007】
【特許文献5】
特開平10−212319号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、オレフィン重合体の製造にはスラリー法、バルク法、気相法等が用いられるが、反応系で著しく粒子径の小さな重合体(微粉)が生成すると塊化物の発生原因となり、反応器への固着、重合体の抜き出し不良を生じ、安定で効率的な重合体製造を妨げる。
本発明の目的は、重合体製造時の微粉発生の少ないα−オレフィン重合用固体触媒成分前駆体の製造方法、α−オレフィン重合用固体触媒成分、α−オレフィン重合用触媒およびα−オレフィン重合体の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、Si−O結合を有する有機ケイ素化合物(a1)および下記一般式[I]で表されるチタン化合物(a2)を含有する溶液中に、有機マグネシウム化合物(a3)を投入して固体触媒成分前駆体を製造するに際して、1時間あたりの前記有機マグネシウム化合物(a3)の投入量が前記チタン化合物(a2)の0.5倍モル量以上2.5倍モル量以下となるように、前記有機マグネシウム化合物(a3)投入速度を調整するα−オレフィン重合用固体触媒成分前駆体の製造方法にかかるものである。
(式中、aは1〜20の数を表し、R2は炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。X2はハロゲン原子または炭素原子数1〜20の炭化水素オキシ基を表し、全てのX2は同一であっても異なっていてもよい。)
また本発明は、以下の(a)、(b)および(c)を接触させて得られるα−オレフィン重合用固体触媒成分、並びに、以下の(a)、(b)、(c)および(d)を接触させて得られるα−オレフィン重合用固体触媒成分にかかるものである。
(a)該α−オレフィン重合用固体触媒成分前駆体
(b)ハロゲン化化合物
(c)電子供与体
(d)有機酸ハライド
さらに本発明は、該α−オレフィン重合用固体触媒成分(A)、有機アルミニウム化合物(B)、ならびに電子供与性化合物(C)を接触させて得られるα−オレフィン重合用触媒にかかるものであり、また、該α−オレフィン重合用触媒を用いてα−オレフィンを単独重合または共重合するα−オレフィン重合体の製造方法にかかるものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
(a)固体触媒成分前駆体
固体触媒成分前駆体(a)は、Si−O結合を有する有機ケイ素化合物(a1)および上記一般式[I]で表されるチタン化合物(a2)を含有する溶液中に、有機マグネシウム化合物(a3)を投入することにより得られる。このとき任意成分としてエステル化合物(a4)を共存させると、重合活性や立体規則性重合能がさらに向上するため好ましい。
【0011】
Si−O結合を有する有機ケイ素化合物(a1)としては、下記の一般式で表わされるものが挙げられる。
Si(OR10)tR11 4−t
R12(R13 2SiO)uSiR14 3、または、
(R15 2SiO)v
ここにR10は炭素原子数1〜20の炭化水素基を表し、R11、R12、R13、R14およびR15はそれぞれ独立に、炭素原子数1〜20の炭化水素基または水素原子を表す。tは0<t≦4を満足する整数を表し、uは1〜1000の整数を表し、vは2〜1000の整数を表す。
【0012】
かかる有機ケイ素化合物の具体例としては、テトラメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリエトキシエチルシラン、ジエトキシジエチルシラン、エトキシトリエチルシラン、テトライソプロポキシシラン、ジイソプロポキシ−ジイソプロピルシラン、テトラプロポキシシラン、ジプロポキシジプロピルシラン、テトラブトキシシラン、ジブトキシジブチルシラン、ジシクロペントキシジエチルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、シクロヘキシロキシトリメチルシラン、フェノキシトリメチルシラン、テトラフェノキシシラン、トリエトキシフェニルシラン、ヘキサメチルジシロヘキサン、ヘキサエチルジシロヘキサン、ヘキサプロピルジシロキサン、オクタエチルトリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、メチルヒドロポリシロキサン、フェニルヒドロポリシロキサン等を例示することができる。
【0013】
これらの有機ケイ素化合物のうち好ましいものは一般式Si(OR10)tR11 4−tで表わされるアルコキシシラン化合物であり、その場合tは好ましくは1≦t≦4を満足する数であり、特にt=4のテトラアルコキシシランが好ましく、最も好ましくはテトラエトキシシランである。
【0014】
チタン化合物(a2)は下記一般式[I]で表されるチタン化合物である。
(式中、aは1〜20の数を表し、R2は炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。X2はハロゲン原子または炭素原子数1〜20の炭化水素オキシ基を表し、全てのX2は同一であっても異なっていてもよい。)
【0015】
R2の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等のアルキル基、フェニル基、クレジル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等のシクロアルキル基、プロペニル基等のアリル基、ベンジル基等のアラルキル基等が例示される。
これらの基のうち炭素原子数2〜18のアルキル基または炭素原子数6〜18のアリール基が好ましい。特に炭素原子数2〜18の直鎖状アルキル基が好ましい。
【0016】
X2 におけるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示できる。特に塩素原子が好ましい。X2 における炭素原子数1〜20の炭化水素オキシ基は、R2 と同様の炭素原子数1〜20の炭化水素基を有する炭化水素オキシ基である。X2 として特に好ましくは、炭素原子数2〜18の直鎖状アルキル基を有するアルコキシ基が好ましい。
【0017】
上記一般式[I]で表されるチタン化合物におけるaは1〜20の数を表し、好ましくは1≦a≦5を満足する数である。
【0018】
かかるチタン化合物の具体例を挙げると、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラ−iso−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−iso−ブトキシチタン、n−ブトキシチタントリクロライド、ジ−n−ブトキシチタンジクロライド、トリ−n−ブトキシチタンクロライド、ジ−n−テトライソプロピルポリチタネート(a=2〜10の範囲の混合物)、テトラ−n−ブチルポリチタネート(a=2〜10の範囲の混合物)、テトラ−n−ヘキシルポリチタネート(a=2〜10の範囲の混合物)、テトラ−n−オクチルポリチタネート(a=2〜10の範囲の混合物)が挙げられる。また、テトラアルコキシチタンに少量の水を反応して得られるテトラアルコキシチタンの縮合物を挙げることもできる。
【0019】
チタン化合物(a2)として好ましくは、上記一般式[I]で表されるチタン化合物におけるaが1、2または4であるチタン化合物である。
特に好ましくは、テトラアルコキシチタン化合物であり、さらに好ましくは、テトラエトキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラ−iso−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−iso−ブトキシチタンである。
なお、チタン化合物(a2)は複数種を混合した状態で用いることも可能である。
【0020】
有機マグネシウム化合物(a3)は、マグネシウム−炭素の結合を有する任意の型の有機マグネシウム化合物である。特に一般式R16MgX5(式中、Mgはマグネシウム原子を、R16は炭素原子数1〜20の炭化水素基を、X5はハロゲン原子を表わす。)で表わされるグリニャール化合物または一般式R17R18Mg(式中、Mgはマグネシウム原子を、R17およびR18はそれぞれ炭素原子数1〜20の炭化水素基を表わす。)で表わされるジハイドロカルビルマグネシウムが好適に使用される。ここでR17とR18は同一でも異なっていてもよい。 R16〜 R18の具体例としてはそれぞれ、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソアミル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、フェニル基、ベンジル基等の炭素原子数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基が挙げられる。特にR16MgX5で表されるグリニャール化合物をエーテル溶液で使用することが触媒性能の点から好ましい。
【0021】
上記の有機マグネシウム化合物と、炭化水素に該有機マグネシウム化合物を可溶化する有機金属との炭化水素可溶性錯体を使用することもできる。有機金属化合物の例としては、Li、Be、B、AlまたはZnの化合物が挙げられる。
【0022】
エステル化合物(a4)としては、モノまたは多価のカルボン酸エステルが用いられ、それらの例として飽和脂肪族カルボン酸エステル、不飽和脂肪族カルボン酸エステル、脂環式カルボン酸エステル、芳香族カルボン酸エステルを挙げることができる。具体例としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸フェニル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸エチル、吉草酸エチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、トルイル酸メチル、トルイル酸エチル、アニス酸エチル、コハク酸ジエチル、コハク酸ジブチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル、フタル酸モノエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸メチルエチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−プロピル、フタル酸ジイソプロピル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジペンチル、フタル酸ジ−n−ヘキシル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ジフェニル等を挙げることができる。
【0023】
これらのエステル化合物のうち、メタクリル酸エステル、マレイン酸エステル等の不飽和脂肪族カルボン酸エステルまたはフタル酸エステル等の芳香族カルボン酸エステルが好ましく、特にフタル酸のジアルキルエステルが好ましく用いられる。
【0024】
固体触媒成分前駆体(a)は、有機ケイ素化合物(a1)およびチタン化合物(a2)を含有する溶液(好ましくは、有機ケイ素化合物(a1)、チタン化合物(a2)およびエステル化合物(a4)を含有する溶液)中に、有機マグネシウム化合物(a3)を投入して得られる。
【0025】
有機ケイ素化合物(a1)およびチタン化合物(a2)を含有する溶液における溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン等の脂環式炭化水素、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル化合物が挙げられる。
【0026】
かかる溶液に有機マグネシウム化合物(a3)を投入するときの温度は、通常−50〜70℃、好ましくは−30〜50℃、特に好ましくは−25〜35℃の温度範囲である。
【0027】
本発明においては、かかる溶液中に有機マグネシウム化合物(a3)を投入して固体触媒成分前駆体を製造するに際して、1時間あたりの前記有機マグネシウム化合物(a3)の投入量が前記チタン化合物(a2)の0.5倍モル量以上2.5倍モル量以下となるように、前記有機マグネシウム化合物(a3)投入速度を調整する。このような範囲内に投入速度を制御すれば、得られる固体の固体触媒成分前駆体が、突起部の少ない、より球に近い形状となり、その後の過程で突起部が崩れてできるような微粉が少なくなると考えられる。
この投入速度が速すぎると、オレフィン重合体製造時の微粉生成量が多くなり、遅すぎると、製造に要する時間が長くなりすぎて効率が悪くなる。
該投入量の下限として好ましくは0.6倍モル量であり、さらに好ましくは0.8倍モル量である。また、該投入量の上限として好ましくは2.2倍モル量であり、さらに好ましくは2.0倍モル量である。
【0028】
大きな粒子の固体触媒成分前駆体を製造しようとすると、突起部の多い、崩れやすそうな形状となりやすいことから、本発明の固体触媒成分前駆体の製造方法は大きな粒子の固体触媒成分前駆体の製造に好適である。本発明においては、製造される固体触媒成分前駆体としては、平均粒子径が30μm以上であることが好ましい。ここでいう平均粒子径とは、光透過法から得られる体積基準の累積分布曲線におけるメジアン径(累積分布の50%に相当する粒子径)をいう。
かかる固体触媒成分前駆体の平均粒子径は、上記投入時の攪拌効率を選択することにより調整される。一般に攪拌効率の低い方が平均粒子径が大きい。
攪拌効率を、式(1)で表される単位体積攪拌動力因子(P/V)で表すと、本発明において好ましくはP/V=0.05〜100m2/s3、さらに好ましくは0.1〜50m2/s3、より好ましくは0.2〜30m2/s3である。
P/V=Np×(n3)×(d5)÷V (1)
ここで、Np:動力数[−]、n:回転数[rps]、d:攪拌翼径[m]、V:反応液容積[m3]、P/V:単位体積攪拌動力因子[m2/s3]である。
このような攪拌効率において、反応温度は、通常−5℃〜50℃、好ましくは0℃〜25℃、より好ましくは5℃〜10℃である。
このような攪拌効率において、溶媒量は、通常(a1+a2)/(a1+a2+溶媒)=20〜60ml/ml、より好ましくは30〜50ml/mlである。
このような攪拌効率において、反応成分比は、a1とa3の比率が、含まれるSi原子とMg原子の原子比として通常Si/Mg=0.4〜5mol/mol、好ましくは0.6〜2mol/mol、より好ましくは0.8〜1mol/molである。また、a2とa3の比率が、含まれるTi原子とMg原子の原子比として通常Ti/Mg=0.01〜0.15mol/mol、好ましくは0.03〜0.1mol/mol、より好ましくは0.05〜0.07mol/molである。さらに任意成分であるa4を用いる場合、a4とa3の比率が、含まれるエステル基とMg原子の比として通常エステル基/Mg=0.003〜0.08mol/mol、好ましくは0.006〜0.06mol/molである。
【0029】
このようにして得られた固体触媒成分前駆体は通常、固液分離し、ヘキサン、ヘプタン、トルエン等の不活性炭化水素溶媒で数回洗浄を行う。
【0030】
また、本発明で用いられる固体触媒成分前駆体は、重合活性、立体規則性の観点から、固体触媒成分の調製に際し、あらかじめ加熱処理を行っておくことが好ましい。加熱処理は不活性炭化水素溶媒中スラリー状態で行われることが好ましい。処理温度は、通常40〜120℃、好ましくは60℃〜100℃である。処理時間は、通常30分間〜10時間の範囲である。
【0031】
このようにして得られた固体触媒成分前駆体は三価のチタン原子、マグネシウム原子および炭化水素オキシ基を含有し、一般に非晶性もしくは極めて弱い結晶性を示す。触媒性能の点から、特に非晶性の構造が好ましい。
【0032】
本発明のα−オレフィン重合用固体触媒成分(A)は、以下の(a)、(b)および(c)を接触させて得られる。また、さらに有機酸ハライドをも接触させる成分として用いれば、より立体規則性重合能に優れ、好ましい。即ち本発明のα−オレフィン重合用固体触媒成分(A)は好ましくは、以下の(a)、(b)、(c)および(d)を接触させて得られるα−オレフィン重合用固体触媒成分である。
(a)前述の製造方法により調製したα−オレフィン重合用固体触媒成分前駆体
(b)ハロゲン化化合物
(c)電子供与体
(d)有機酸ハライド
【0033】
(b)ハロゲン化化合物
ハロゲン化化合物としては、固体触媒成分前駆体(a)中の炭化水素オキシ基をハロゲン原子に置換し得る化合物が好ましい。中でも、第4族元素のハロゲン化合物、第13族元素のハロゲン化合物、または第14族元素のハロゲン化合物が好ましい。
【0034】
第4族元素のハロゲン化合物としては、一般式M(OR9)bX4 4−b(式中、Mは第4族元素を表し、R9は炭素原子数1〜20の炭化水素基を表し、X4はハロゲン原子を表し、bは0≦b<4を満足する数を表す。)で表されるハロゲン化合物が好ましい。Mの具体例としては、チタン、ジルコニウム、ハフニウムが挙げられ、なかでもチタンが好ましい。R9の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、アミル基、イソアミル基、tert−アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等のアルキル基、フェニル基、クレジル基、キシレル基、ナフチル基等のアリール基、プロペニル基等のアリル基、ベンジル基等のアラルキル基等が例示される。これらの中で炭素原子数2〜18のアルキル基または炭素原子数6〜18のアリール基が好ましい。特に炭素原子数2〜18の直鎖状アルキル基が好ましい。また、2種以上の異なるOR9基を有する第4族元素のハロゲン化合物を用いることも可能である。
【0035】
X4で表されるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示できる。この中で、特に塩素原子が好ましい結果を与える。
【0036】
一般式M(OR9)bX4 4−bで表される第4族元素のハロゲン化合物のbは、0≦b<4を満足する数であり、好ましくは0≦b≦2を満足する数であり、特に好ましくは、b=0である。
【0037】
具体的には、一般式M(OR9)bX4−bで表されるチタン化合物としては、四塩化チタン、四臭化チタン、四沃化チタン等のテトラハロゲン化チタン、メトキシチタントリクロライド、エトキシチタントリクロライド、ブトキシチタントリクロライド、フェノキシチタントリクロライド、エトキシチタントリブロマイド等のトリハロゲン化アルコキシチタン、ジメトキシチタンジクロライド、ジエトキシチタンジクロライド、ジブトキシチタンジクロライド、ジフェノキシチタンジクロライド、ジエトキシチタンジブロマイド等のジハロゲン化ジアルコキシチタン、それぞれに対応したジルコニウム化合物、ハフニウム化合物を挙げることができる。最も好ましくは四塩化チタンである
【0038】
第13族元素または第14族元素のハロゲン化合物としては、一般式MRm−aXa(式中、Mは第13族または第14族原子を、Rは炭素原子数が1〜20の炭化水素基を、Xはハロゲン原子を、mはMの原子価を表す。aは0<a≦mを満足する数を表す)で表される化合物が好ましい。
ここでいう第13族の原子としてはB、Al、Ga、In、Tlが挙げられ、BまたはAlが好ましく、Alがより好ましい。また、第14族の原子としてはC、Si、Ge、Sn、Pbが挙げられ、Si、GeまたはSnが好ましく、SiまたはSnがより好ましい。
【0039】
mはMの原子価であり、例えばMがSiのときm=4である。
aは0<a≦mを満足する数を表し、MがSiのときaは好ましくは3または4である。
Xで表されるハロゲン原子としてF、Cl、Br、Iが挙げられ、Clが好ましい。
【0040】
Rの具体例としては、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、クレジル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等のシクロアルキル基、プロペニル基等のアルケニル基、ベンジル基等のアラルキル基等が挙げられる。好ましいRはアルキル基またはアリール基であり、特に好ましいRはメチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、フェニル基またはパラトリル基である。
【0041】
第13族元素のハロゲン化合物として具体的には、トリクロロボロン、メチルジクロロボロン、エチルジクロロボロン、フェニルジクロロボロン、シクロヘキシルジクロロボロン、ジメチルクロロボロン、メチルエチルクロロボロン、トリクロロアルミニウム、メチルジクロロアルミニウム、エチルジクロロアルミニウム、フェニルジクロロアルミニウム、シクロヘキシルジクロロアルミニウム、ジメチルクロロアルミニウム、ジエチルクロロアルミニウム、メチルエチルクロロアルミニウム、エチルアルミニウムセスキクロライド、ガリウムクロライド、ガリウムジクロライド、トリクロロガリウム、メチルジクロロガリウム、エチルジクロロガリウム、フェニルジクロロガリウム、シクロヘキシルジクロロガリウム、ジメチルクロロガリウム、メチルエチルクロロガリウム、インジウムクロライド、インジウムトリクロライド、メチルインジウムジクロライド、フェニルインジウムジクロライド、ジメチルインジウムクロライド、タリウムクロライド、タリウムトリクロライド、メチルタリウムジクロライド、フェニルタリウムジクロライド、ジメチルタリウムクロライド等が挙げられ、これら化合物名のクロロをフルオロ、ブロモ、またはヨードに変更した化合物も挙げられる。
【0042】
第14族元素のハロゲン化合物として具体的には、テトラクロロメタン、トリクロロメタン、ジクロロメタン、モノクロロメタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、テトラクロロシラン、トリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、ノルマルプロピルトリクロロシラン、ノルマルブチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ベンジルトリクロロシラン、パラトリルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、ジクロロシラン、メチルジクロロシラン、エチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、メチルエチルジクロロシラン、モノクロロシラン、トリメチルクロロシラン、トリフェニルクロロシラン、テトラクロロゲルマン、トリクロロゲルマン、メチルトリクロロゲルマン、エチルトリクロロゲルマン、フェニルトリクロロゲルマン、ジクロロゲルマン、ジメチルジクロロゲルマン、ジエチルジクロロゲルマン、ジフェニルジクロロゲルマン、モノクロロゲルマン、トリメチルクロロゲルマン、トリエチルクロロゲルマン、トリノルマルブチルクロロゲルマン、テトラクロロ錫、メチルトリクロロ錫、ノルマルブチルトリクロロ錫、ジメチルジクロロ錫、ジノルマルブチルジクロロ錫、ジイソブチルジクロロ錫、ジフェニルジクロロ錫、ジビニルジクロロ錫、メチルトリクロロ錫、フェニルトリクロロ錫、ジクロロ鉛、メチルクロロ鉛、フェニルクロロ鉛等が挙げられ、これら化合物名のクロロをフルオロ、ブロモ、またはヨードに変更した化合物も挙げられる。
【0043】
ハロゲン化化合物(b)として、テトラクロロチタン、メチルジクロロアルミニウム、エチルジクロロアルミニウム、テトラクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、ノルマルプロピルトリクロロシランまたはテトラクロロ錫が、重合活性の観点から、特に好ましく用いられる。
ハロゲン化化合物(b)として、上記化合物の中の1種類のみを用いてもよいし、複数種を用いてもよい。
【0044】
(c)電子供与体
電子供与体(c)としては、エーテル類、ケトン類、アルデヒド類、カルボン酸類、有機酸または無機酸のエステル類、有機酸または無機酸の酸アミド類、酸無水物類等の含酸素電子供与性化合物、アンモニア類、アミン類、ニトリル類、イソシアネート類等の含窒素電子供与性化合物を挙げることができる。これらの電子供与体のうち好ましくは有機酸のエステル類および/またはエーテル類であり、より好ましくはカルボン酸エステル類(c1)および/またはエーテル類(c2)である。
【0045】
カルボン酸エステル類(c1)の例としては、モノおよび多価のカルボン酸エステルが挙げられ、それらの例として飽和脂肪族カルボン酸エステル、不飽和脂肪族カルボン酸エステル、脂環式カルボン酸エステル、芳香族カルボン酸エステルを挙げることができる。具体例としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸フェニル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸エチル、吉草酸エチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、トルイル酸メチル、トルイル酸エチル、アニス酸エチル、コハク酸ジエチル、コハク酸ジブチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル、フタル酸モノエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸メチルエチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−プロピル、フタル酸ジイソプロピル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジペンチル、フタル酸ジ−n−ヘキシル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ジフェニル等を挙げることができる。
【0046】
これらのカルボン酸エステル類のうち、メタクリル酸エステル、マレイン酸エステル等の不飽和脂肪族カルボン酸エステルまたは安息香酸エステル、フタル酸エステル等の芳香族カルボン酸エステルが好ましく用いられる。特に好ましくは、芳香族多価カルボン酸エステルであり、最も好ましくはフタル酸ジアルキルエステルである。
【0047】
エーテル類(c2)の例としては、ジアルキルエーテルおよび一般式
(但し、R5 〜R8 はそれぞれ独立に炭素原子数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは脂環式のアルキル基、アリール基またはアラルキル基であり、R6 およびR7 はそれぞれ独立に水素原子であってもよい。)で表されるジエーテル化合物を挙げることができ、これらのうちの1種または2種以上が好適に用いられる。
【0048】
具体例としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチル−n−ブチルエーテル、メチルシクロヘキシルエーテル、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(シクロヘキシルメチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−3,7−ジメチルオクチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−シクロヘキシルメチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−シクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−シクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−ヘプチル−2−ペンチル−1,3−ジメトキシプロパン等を挙げることができ、これらのうちの1種または2種以上が好適に用いられる。
エーテル類(c2)として特に好ましくはジアルキルエーテルであり、最も好ましくはジ−n−ブチルエーテルである。なお、ジ−n−ブチルエーテルは単にジブチルエーテルもしくはブチルエーテルと記載することもある。
【0049】
(d)有機酸ハライド
本発明の固体触媒成分の調製に使用される有機酸ハライド(d)として好ましくは、モノまたは多価のカルボン酸ハライドが用いられ、それらの例として脂肪族カルボン酸ハライド、脂環式カルボン酸ハライド、芳香族カルボン酸ハライドを挙げることができる。具体例としては、アセチルクロライド、プロピオン酸クロライド、酪酸クロライド、吉草酸クロライド、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド、安息香酸クロライド、トルイル酸クロライド、アニス酸クロライド、コハク酸クロライド、マロン酸クロライド、マレイン酸クロライド、イタコン酸クロライド、フタル酸クロライド等を挙げることができる。
【0050】
これらの有機酸ハライドのうち、安息香酸クロライド、トルイル酸クロライド、フタル酸クロライド等の芳香族カルボン酸クロライドが好ましく、さらに好ましくは芳香族ジカルボン酸ジクロライドであり、特にフタル酸クロライドが好ましく用いられる。
【0051】
(A)固体触媒成分の調製
本発明の固体触媒成分(A)は、前記固体触媒成分前駆体(a)、ハロゲン化化合物(b)、および電子供与体(c)を接触させることにより、また、前記固体触媒成分前駆体(a)、ハロゲン化化合物(b)、電子供与体(c)、および有機酸ハライド(d)を接触させることにより得られる。これらの接触処理は通常、全て窒素、アルゴン等の不活性気体雰囲気下で行われる。
【0052】
固体触媒成分を得る接触処理の具体的な方法としては、
・(a)に(b)、(c)(投入順序任意)を投入し、接触処理する方法、
・(a)に(b)、(d)(投入順序任意)を投入し、接触処理する方法、
・(a)に(b)と(c)と(d)の混合物を投入し、接触処理する方法、
・(a)に(b)と(c)の混合物、(d)(投入順序任意)を投入し、接触処理する方法、
・(a)に(c)を投入し、接触処理した後、(b)を投入し、接触処理する方法、
・(a)に(c)を投入し、接触処理した後、(b)、(c)(投入順序任意)を投入し、接触処理する方法、
・(a)に(c)を投入し、接触処理した後、(b)と(c)の混合物を投入し、接触処理する方法、
・(b)に(a)、(c)(投入順序任意)を投入し、接触処理する方法、
・(b)に(a)、(d)(投入順序任意)を投入し、接触処理する方法、
・(b)に(a)、(c)、(d)(投入順序任意)を投入し、接触処理する方法、
等が挙げられ、また、これら接触処理の後、さらに(b)で1回以上接触処理する方法、(b)と(c)の混合物で1回以上接触処理する方法が挙げられる。
【0053】
これらのうち(a)に(b)、(d)(投入順序任意)を投入し、接触処理する方法、(a)に(b)と(c)の混合物、(d)(投入順序任意)を投入する方法、(a)に(b)と(c)の混合物、(d)(投入順序任意)を投入し、接触処理した後、(b)と(c)の混合物を投入し、1回以上接触処理する方法、(a)に(c)を投入し、接触処理した後、(b)と(c)の混合物で1回以上接触処理する方法が好ましく、
(a)に(b)と(c)の混合物、(d)の順序でそれぞれを投入し、接触処理する方法、(a)に(b)と(c)の混合物、(d)の順序でそれぞれを投入し、接触処理した後、(b)と(c)の混合物を投入し、1回以上接触処理する方法、もしくは(a)に(c)を投入し、接触処理した後、(b)と(c)の混合物で1回以上接触処理する方法がより好ましい。特に好ましくは、(a)に(b)と(c2)の混合物、(d)の順序でそれぞれを投入し、接触処理した後、(b)と(c1)と(c2)の混合物を投入し、接触処理を行い、さらに(b)と(c2)の混合物で1回以上接触処理する方法、もしくは(a)に(c1)を投入し、接触処理した後、(b)と(c1)と(c2)の混合物を投入し、接触処理を行い、さらに(b)と(c2)の混合物で1回以上接触処理する方法である。
【0054】
接触処理は、微粉の発生を抑制する観点から、希釈剤の存在下で行うのが好ましい。
また、接触処理後は、そのまま次の操作を行うことができるが、余剰物を除去するため、希釈剤により洗浄処理を行うのが好ましい。
【0055】
希釈剤としては、処理対象成分に対して不活性であることが好ましく、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、シクロヘキサン、シクロペンタンなどの脂環式炭化水素、1,2−ジクロルエタン、モノクロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素が使用できる。
接触処理における希釈剤の使用量は、一段階の接触処理につき、固体触媒成分前駆体(a)1g当たり通常0.1ml〜1000mlである。好ましくは1g当たり1ml〜100mlである。また、一回の洗浄操作における希釈剤の使用量も同程度である。洗浄処理における洗浄操作の回数は、一段階の接触処理につき通常1〜5回である。
【0056】
接触処理および/または洗浄処理温度はそれぞれ通常−50〜150℃であるが、好ましくは0〜140℃であり、さらに好ましくは60〜135℃である。
接触処理時間は特に制限はないが、好ましくは0.5〜8時間であり、さらに好ましくは1〜6時間である。洗浄操作時間は特に限定されないが、好ましくは1〜120分であり、さらに好ましくは2〜60分である。
【0057】
ハロゲン化化合物(b)の使用量は、固体触媒成分前駆体(a)1gに対し、通常0.5〜1000ミリモル、好ましくは1〜200ミリモル、さらに好ましくは2〜100ミリモルである。
また、ハロゲン化化合物(b)の使用に際しては、電子供与体(c)を共に用いることが好ましい。その場合の(b)1モルに対する(c)の使用量は、通常1〜100モル、好ましくは1.5〜75モル、さらに好ましくは2〜50モルである。
【0058】
電子供与体(c)の使用量は、固体触媒成分前駆体(a)1gに対し、通常0.01〜100ミリモル、好ましくは0.05〜50ミリモル、さらに好ましくは0.1〜20ミリモルである。
【0059】
有機酸ハライド(d)の使用量は、固体触媒成分前駆体(a)1gに対し、通常0.1〜100ミリモル、好ましくは0.3〜50ミリモル、さらに好ましくは0.5〜20ミリモルである。また、固体触媒成分前駆体(a)中のマグネシウム原子1モル当たりの有機酸ハライド(d)の使用量は、通常0.01〜1.0モル、好ましくは0.03〜0.5モルである。
(c)や(d)の使用量が過度に多い場合には粒子の崩壊が起こることがある。
【0060】
なお、それぞれの化合物を複数の回数にわたって使用して接触処理をする場合には、以上に述べた各化合物の使用量はそれぞれ一回ごとかつ一種類の化合物ごとの使用量を表す。
【0061】
得られた固体触媒成分は、不活性な希釈剤と組合せてスラリー状態で重合に使用してもよいし、乾燥して得られる流動性の粉末として重合に使用してもよい。乾燥方法としては、減圧条件下揮発成分を除去する方法、窒素、アルゴン等不活性ガスの流通下揮発成分を除去する方法が挙げられる。乾燥時の温度は0〜200℃であることが好ましく、50〜100℃であることがより好ましい。乾燥時間は、0.01〜20時間であることが好ましく、0.5〜10時間であることがより好ましい。
【0062】
本発明のα−オレフィン重合用触媒は、前記本発明の固体触媒成分(A)、有機アルミニウム化合物(B)、ならびに電子供与性化合物(C)を接触させて得られる。
【0063】
(B)有機アルミニウム化合物
前記有機アルミニウム化合物(B)は、少なくとも分子内に一個のAl−炭素結合を有するものである。代表的なものを一般式で下記に示す。
R19 wAlY3−w
R20R21Al−O−AlR22R23
(式中、R19〜R23は炭素原子数1〜20の炭化水素基を、Yはハロゲン原子、水素原子またはアルコキシ基を表し、wは2≦w≦3を満足する数である。)
かかる有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド等のジアルキルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムクロライド等のジアルキルアルミニウムハライド、トリエチルアルミニウムとジエチルアルミニウムクロライドとの混合物のようなトリアルキルアルミニウムとジアルキルアルミニウムハライドとの混合物、テトラエチルジアルモキサン、テトラブチルジアルモキサン等のアルキルアルモキサンが例示できる。
【0064】
これらの有機アルミニウム化合物のうち、トリアルキルアルミニウム、トリアルキルアルミニウムとジアルキルアルミニウムハライドとの混合物、または、アルキルアルモキサンが好ましく、とりわけトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムとジエチルアルミニウムクロライドとの混合物またはテトラエチルジアルモキサンが好ましい。
【0065】
(C)電子供与性化合物
前記電子供与性化合物(C)としては、酸素含有化合物、窒素含有化合物、リン含有化合物、硫黄含有化合物が挙げられ、なかでも酸素含有化合物または窒素含有化合物が好ましく、特に酸素含有化合物が好ましい。
酸素含有化合物としては、アルコキシケイ素類、エーテル類、エステル類、ケトン類などが挙げられ、少なくともアルコキシケイ素類を含有することが好ましい。
【0066】
アルコキシケイ素類としては、一般式 R3 rSi(OR4)4−r (式中、R3は炭素原子数1〜20の炭化水素基、水素原子またはヘテロ原子含有置換基を表し、R4は炭素原子数1〜20の炭化水素基を表し、rは0≦r<4を満足する数を表す。全てのR3および全てのR4はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)で表されるアルコキシケイ素化合物が好ましく用いられる。
R3が炭化水素基の場合、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等の直鎖状アルキル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、等の分岐鎖状アルキル基、シクロペンンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、シクロペンテニル基等のシクロアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基等が挙げられる。なかでもアルコキシケイ素化合物のケイ素原子と直接結合した炭素原子が2級もしくは3級炭素であるR3を少なくとも1つ持つことが好ましい。
R3がヘテロ原子含有置換基の場合、ヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子が挙げられる。具体的にはジメチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルn−プロピルアミノ基、ジn−プロピルアミノ基、ピロリル基、ピリジル基、ピロリジニル基、ピペリジル基、パーヒドロインドリル基、パーヒドロイソインドリル基、パーヒドロキノリル基、パーヒドロイソキノリル基、パーヒドロカルバゾリル基、パーヒドロアクリジニル基、フリル基、ピラニル基、パーヒドロフリル基、チエニル基等が挙げられ、なかでもヘテロ原子がアルコキシケイ素化合物のケイ素原子と直接化学結合できる置換基が好ましい。
【0067】
前記アルコキシケイ素化合物の具体例としては、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジ−tert−ブチルジメトキシシラン、tert−ブチルメチルジメトキシシラン、tert−ブチルエチルジメトキシシラン、tert−ブチル−n−プロピルジメトキシシラン、tert−ブチル−n−ブチルジメトキシシラン、tert−アミルメチルジメトキシシラン、tert−アミルエチルジメトキシシラン、tert−アミルnプロピルジメトキシシラン、tert−アミル−n−ブチルジメトキシシラン、イソブチルイソプロピルジメトキシシラン、tert−ブチルイソプロピルジメトキシシラン、ジシクロブチルジメトキシシラン、シクロブチルイソプロピルジメトキシシラン、シクロブチルイソブチルジメトキシシラン、シクロブチル−tert−ブチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロペンチルイソプロピルジメトキシシラン、シクロペンチルイソブチルジメトキシシラン、シクロペンチル−tert−ブチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシルイソプロピルジメトキシシラン、シクロヘキシルイソブチルジメトキシシラン、シクロヘキシル−tert−ブチルジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルイソプロピルジメトキシシラン、フェニルイソブチルジメトキシシラン、フェニル−tert−ブチルジメトキシシラン、フェニルシクロペンチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、ジイソブチルジエトキシシラン、ジ−tert−ブチルジエトキシシラン、tert−ブチルメチルジエトキシシラン、tert−ブチルエチルジエトキシシラン、tert−ブチル−n−プロピルジエトキシシラン、tert−ブチル−n−ブチルジエトキシシラン、tert−アミルメチルジエトキシシラン、tert−アミルエチルジエトキシシラン、tert−アミル−n−プロピルジエトキシシラン、tert−アミル−n−ブチルジエトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルエチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、2−ノルボルナンメチルジメトキシシラン、ビス(パーヒドロキノリノ)ジメトキシシラン、ビス(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、(パーヒドロキノリノ)(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、(パーヒドロキノリノ)メチルジメトキシシラン、(パーヒドロイソキノリノ)メチルジメトキシシラン、(パーヒドロキノリノ)エチルジメトキシシラン、(パーヒドロイソキノリノ)エチルジメトキシシラン、(パーヒドロキノリノ)(n−プロピル)ジメトキシシラン、(パーヒドロイソキノリノ)(n−プロピル)ジメトキシシラン、((パーヒドロキノリノ)(tert−ブチル)ジメトキシシラン、(パーヒドロイソキノリノ)(tert−ブチル)ジメトキシシランが挙げられる。
【0068】
エーテル類の例としては、ジアルキルエーテルおよび一般式
(但し、R5 〜R8 はそれぞれ独立に炭素原子数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは脂環式のアルキル基、アリール基またはアラルキル基であり、R6 およびR7 はそれぞれ独立に水素原子であってもよい。)で表されるジエーテル化合物を挙げることができ、これらのうちの1種または2種以上が好適に用いられる。
【0069】
具体例としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチル−n−ブチルエーテル、メチルシクロヘキシルエーテル、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(シクロヘキシルメチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−3,7−ジメチルオクチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−シクロヘキシルメチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−シクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−シクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−ヘプチル−2−ペンチル−1,3−ジメトキシプロパン等を挙げることができ、これらのうちの1種または2種以上が好適に用いられる。
エーテル類(e2)として特に好ましくはジアルキルエーテルであり、最も好ましくはジ−n−ブチルエーテルである。なお、ジ−n−ブチルエーテルは単にジブチルエーテルもしくはブチルエーテルと記載することもある。
【0070】
窒素含有化合物としては、2,6−ジメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどの2,6−置換ピペリジン類、2,5−置換ピペリジン類、N,N,N’,N’−テトラメチルメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチルメチレンジアミンなどの置換メチレンジアミン類、1,3−ジベンジルイミダゾリジンなどの置換イミダゾリジン類などが挙げられる。なかでも2,6−置換ピペリジン類が好ましい。
【0071】
[オレフィンの重合]
本発明により得られる固体触媒成分を用いたα−オレフィンの製造において、α−オレフィンは、炭素原子数3以上のα−オレフィンであり、かかるα−オレフィンの具体例としてはプロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、デセン−1、などの直鎖状モノオレフィン、3−メチルブテン−1、3−メチルペンテン−1、4−メチルペンテン−1、などの分岐鎖状モノオレフィン、ビニルシクロヘキサンなどが挙げられる。これらのα−オレフィンは1種類を用いてもよいし、あるいは、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらのα−オレフィンのうちでは、プロピレンまたはブテン−1を用いて単独重合を行うこと、あるいはプロピレンまたはブテン−1を主成分とする混合オレフィンを用いて共重合を行うことが好ましく、プロピレンを用いて単独重合を行うこと、あるいはプロピレンを主成分とする混合オレフィンを用いて共重合を行うことが特に好ましい。また、本発明における共重合に際しては、エチレンおよび上記のα−オレフィンから選ばれる2種類または、それ以上の種類のオレフィンを混合して用いることができる。さらに、共役ジエンや非共役ジエンのような多不飽和結合を有する化合物を共重合に用いることも可能である。そして、重合を2段以上にして行うヘテロブロック共重合も容易に行うことができる。
【0072】
本発明により得られる固体触媒成分を用いた触媒は、前記の固体触媒成分(A)、有機アルミニウム化合物(B)、および電子供与性化合物(C)を接触させて得られるα−オレフィン重合用触媒である。ここでいう接触とは、触媒成分(A)〜(C)が接触し、触媒が形成されるならどのような手段によってもよく、あらかじめ溶媒で希釈してもしくは希釈せずに成分(A)〜(C)を混合して接触させる方法や、別々に重合槽に供給して重合槽の中で接触させる方法等を採用できる。
各触媒成分を重合槽に供給する方法としては、窒素、アルゴン等の不活性ガス中で水分のない状態で供給することが好ましい。各触媒成分は、いずれか2者を予め接触させて供給しても良い。
【0073】
本発明において、前記本発明のα−オレフィン重合用触媒をそのままα−オレフィン重合体の製造方法に用いてもよいし(このときの重合を以下、「本重合」という)、該触媒に予備重合処理を施すことによって得られる予備重合触媒を予め得たのちにそれを本重合に用いてもよい。
予備重合触媒は通常、上記の固体触媒成分(A)および有機アルミニウム化合物(B)の存在下、少量のオレフィンを重合させる(予備重合させる)ことによって製造される。予備重合法として、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼンおよびトルエンのような不活性炭化水素を溶媒とするスラリー重合法が好ましい。該溶媒の一部または全部を、液状のオレフィンに変えてもよい。
予備重合における有機アルミニウム化合物(B)の使用量は、固体触媒成分(A)中のチタン原子1モル当たり、通常0.5〜700モル、好ましくは0.8〜500モル、特に好ましくは1〜200モルである。
予備重合されるオレフィンの量は、固体触媒成分(A)1g当たり通常0.01〜1000g、好ましくは0.05〜500g、特に好ましくは0.1〜200gである。
【0074】
上記スラリー重合法におけるスラリー濃度は、好ましくは1〜500g−固体触媒成分/リットル−溶媒、特に好ましくは3〜300g−固体触媒成分/リットル−溶媒である。予備重合温度は、好ましくは−20〜100℃、特に好ましくは0〜80℃である。予備重合における気相部のオレフィンの分圧は、好ましくは0.01〜20kg/cm2、特に好ましくは0.1〜10kg/cm2であるが、予備重合の圧力や温度において液状であるオレフィンについては、この限りではない。予備重合時間は特に制限されず、好ましくは通常、2分間から15時間である
【0075】
予備重合において、固体触媒成分、有機アルミニウム化合物およびオレフィンを重合槽へ供給する方法として、(1)固体触媒成分と有機アルミニウム化合物とを供給した後、オレフィンを供給する方法、および、(2)固体触媒成分とオレフィンとを供給した後、有機アルミニウム化合物を供給する方法、を例示することができる。オレフィンを重合槽へ供給する方法として、(1)重合槽内の圧力を所定の圧力に維持するようにオレフィンを順次供給する方法、および、(2)オレフィンの所定量の全量を一括して供給する方法、を例示することができる。予備重合で得られるオレフィン重合体の分子量を調節するために、水素のような連鎖移動剤を用いてもよい。
【0076】
予備重合においては、必要に応じて、本重合で用いられる電子供与性化合物(C)の一部または全部を用いてもよい。予備重合で用いられる電子供与性化合物の量は、固体触媒成分中に含まれるチタン原子1モルに対して、通常0.01〜400モル、好ましくは0.02〜200モル、特に好ましくは、0.03〜100モルであり、有機アルミニウム化合物1モルに対して、通常0.003〜5モル、好ましくは0.005〜3モル、特に好ましくは0.01〜2モルである。
予備重合において、電子供与性化合物を重合槽へ供給する方法は特に制限されない。該方法として、(1)電子供与性化合物のみを供給する方法、および、(2)電子供与性化合物と有機アルミニウム化合物との接触物を供給する方法、を例示することができる。予備重合で使用されるオレフィンは、本重合で使用されるオレフィンと同一であっても異なっていてもよい。
【0077】
本重合の方法として、(1)固体触媒成分、有機アルミニウム化合物および電子供与性化合物を接触させて得られる触媒の存在下にα−オレフィンを重合させる方法、(2)予備重合触媒の存在下にα−オレフィンを重合させる方法、および(3)該予備重合触媒と、有機アルミニウム化合物と、電子供与性化合物との接触物の存在下にα−オレフィンを重合させる方法、を例示することができる。
本重合における有機アルミニウム化合物の使用量は、固体触媒成分中のチタン原子1モル当たり、通常1〜1000モル、好ましくは5〜600モルである。
【0078】
本重合における電子供与性化合物の使用量は、固体触媒成分中に含まれるチタン原子1モルに対し、通常0.1〜2000モル、好ましくは0.3〜1000モル、特に好ましくは、0.5〜800モルであり、有機アルミニウム化合物1モルに対し、通常0.001〜5モル、好ましくは0.005〜3モル、特に好ましくは0.01〜1モルである。
【0079】
本重合における重合温度は、通常−30〜300℃、好ましくは20〜180℃、より好ましくは50〜95℃である。重合圧力は特に制限されず、工業的かつ経済的であるという観点から、一般に常圧〜100kg/cm2、好ましくは2〜50kg/cm2程度である。重合形式はバッチ式でも連続式でもよい。重合方法として、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンおよびオクタンのような不活性炭化水素溶媒を用いるスラリー重合法、該溶媒を用いる溶液重合法、重合温度において液状であるα−オレフィンを媒体とするバルク重合法、および、気相重合法を例示することができるが、特に前記の工程2は良好な粉体性状を得る観点から気相重合法であることが好ましい。
【0080】
本重合においては、得られるα−オレフィン重合体の分子量を調節するために、水素のような連鎖移動剤を用いてもよい。
【0081】
【実施例】
以下、実施例および比較例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例によって特に限定をうけるものではない。なお実施例中、触媒成分、重合体の各種物性の評価方法は、次のとおりである。
【0082】
(1)平均粒子径および粒度分布:固体触媒成分前駆体の平均粒子径は、超遠心式自動粒度分布測定装置(堀場製作所製CAPA−700)を用いて測定した。分散媒体としてはデカヒドロナフタリンを用いた。
【0083】
(2)組成分析:Ti含有量は、固体成分を希硫酸で分解後、過剰の過酸化水素水を加え、410nmの特性吸収を日立製ダブルビーム分光光度計U−2001型を用いて測定し、検量線により求めた。アルコキシ基含有量は、固体成分を水で分解後、ガスクロマトグラフィー内部標準法を用いて対応するアルコール量を測定することで求めた。フタル酸エステル含有量は、固体サンプルをN,N−ジメチルアセトアミドに溶解後、溶液中のフタル酸エステル量をガスクロマトグラフィー内部標準法で求めた。
【0084】
(3)重合体粒子の微粉割合は、重合体粒子10gを振動篩にかけ目開き250μmの篩を通過した粒子の重量分率で表した。
【0085】
(4)極限粘度([η]):テトラリンを溶媒とし、温度135℃でウベローデ型粘度計を用いて測定した。
【0086】
(5)CXS:20℃の冷キシレンに可溶な分量を百分率(重量%)で表した。通常、CXSは値が小さいほど、無定形重合体が少なく、高立体規則性であることを示す。
【0087】
(6)嵩密度:JIS K−6721(1966)に従って測定した。
【0088】
[実施例1]
(1)固体触媒成分前駆体の合成
図2に示す500ミリリットルの円筒型反応器(直径0.055mの攪拌羽根を3対持つ撹拌機および幅0.007mの邪魔板4枚を備えた直径0.07mのもの)を窒素置換し、ヘキサン 210ミリリットル、ジイソブチルフタレート2.6ミリリットル、テトラエトキシシラン 84ミリリットル及びテトラブトキシチタン 8.5ミリリットルを投入、撹拌した。次に、前記攪拌混合物に、ブチルマグネシウムクロリドのジブチルエーテル溶液(濃度2.1モル/リットル)195.3ミリリットルを反応器内の温度を5℃に保ちながら10.8時間かけて一定速度で滴下した。よって、このときの1時間あたりのブチルマグネシウムクロリドの投入量は、テトラブトキシチタンの1.5倍モル量である。この時の攪拌回転数は300rpmであった。滴下終了後、20℃で1時間撹拌したあと濾過し、得られた固体について室温下トルエン 270ミリリットルでの洗浄を3回行い、トルエン 215ミリリットルを加え、固体触媒成分前駆体スラリーを得た。
該固体触媒成分前駆体は、Ti:2.1重量%、OEt(エトキシ基):36.3重量%、OBu(ブトキシ基):3.0重量%を含有していた。その平均粒子径は45μmであった。
【0089】
(2)固体触媒成分の合成
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた100ミリリットルのフラスコを窒素で置換したのち、上記(1)で得られたスラリーから固体成分8gを含むスラリーを取り出して前記フラスコ中に投入し、スラリーの全体積が26.5ミリリットルとなるように上澄み液を抜き取り、そこへ四塩化チタン 16.0ミリリットル、ジブチルエーテル 0.8ミリリットルの混合物を投入し、さらにフタル酸クロライド(以下、OPCと略すことがある。)1.6ミリリットルとトルエン1.6ミリリットルの混合物を5分間で滴下した。滴下終了後、反応混合物を115℃で3時間攪拌した。その後、同温度で固液分離し、115℃でトルエン40ミリリットルで3回洗浄を行った。
洗浄後、スラリーの体積が26.5ミリリットルとなるようにトルエンを加えた。そこへジブチルエーテル 0.8ミリリットル、フタル酸ジイソブチル 0.45ミリリットルと、四塩化チタン 6.4ミリリットルの混合物を投入し、105℃で1時間攪拌した。その後、同温度で固液分離し、105℃でトルエン40ミリリットルで2回洗浄を行った。
次に、スラリーの体積が26.5ミリリットルとなるようにトルエンを加え、105℃とした。そこへジブチルエーテル 0.8ミリリットル、四塩化チタン6.4ミリリットルの混合物を投入し、105℃で1時間攪拌した。その後、同温度で固液分離し、105℃でトルエン 40ミリリットルで2回洗浄を行った。
さらに、スラリーの体積が26.5ミリリットルとなるようにトルエンを加え、105℃とした。そこへジブチルエーテル 0.8ミリリットル、四塩化チタン 6.4ミリリットルの混合物を投入し、105℃で1時間攪拌した。その後、同温度で固液分離し、105℃でトルエン 40ミリリットルで3回、室温でヘキサン 40ミリリットルで3回洗浄を行った。これを減圧乾燥して固体触媒成分を得た。
固体触媒成分中には、チタン原子が2.0重量%、フタル酸エステルが10.5重量%含まれていた。
【0090】
(3)プロピレンの重合
3リットルの内容積を持つステンレス製オートクレーブをアルゴン置換し、(B)成分としてトリエチルアルミニウム 2.6ミリモル、(C)成分としてシクロヘキシルエチルジメトキシシラン 0.26ミリモル、及び(A)成分として上記(2)で合成した固体触媒成分 5.9ミリグラムを仕込み、0.033MPaの分圧に相当する水素を加えた。次いで780グラムの液化プロピレンを仕込み、オートクレーブの温度を80℃に昇温し、80℃で1時間重合を行った。重合終了後未反応モノマーをパージした。生成した重合体を減圧乾燥し、273グラムのポリプロピレンパウダーを得た。
固体触媒成分1g当たりのポリプロピレンの収量(以下、PP/catと略す)は、PP/cat=46300(g/g)であった。また、微粉割合は10.5(wt%)、全重合体収量に占める20℃キシレンに可溶な成分の割合はCXS=0.40(wt%)、重合体の極限粘度は[η]=2.02(dl/g)、嵩密度は0.45(g/ml)であった。
【0091】
[比較例1]
(1)固体触媒成分前駆体の合成
ブチルマグネシウムクロリドのジブチルエーテル溶液の投入時間を1.1時間に変更した以外は実施例1(1)と同様に合成を行い、固体触媒成分前駆体を得た。このときの1時間当たりのブチルマグネシウムクロリドの投入量は14.9倍モル量である。
該固体触媒成分前駆体は、Ti:2.1重量%、OEt(エトキシ基):36.5重量%、OBu(ブトキシ基):3.4重量%を含有していた。その平均粒子径は43μmであった。
【0092】
(2)固体触媒成分の合成
上記(1)の固体触媒成分前駆体を用いた他は実施例1(2)と同様に合成を行い、固体触媒成分を得た。
固体触媒成分中には、チタン原子が2.2重量%、フタル酸エステルが9.8重量%含まれていた。
【0093】
(3)プロピレンの重合
固体触媒成分を上記(2)で得られた固体触媒成分 6.34ミリグラムに変更した以外は実施例1(3)に従って重合し、313グラムのポリプロピレンパウダーを得た。
PP/cat=49400(g/g)であった。また、微粉割合は32.3(wt%)、全重合体収量に占める20℃キシレンに可溶な成分の割合はCXS=0.52(wt%)、重合体の極限粘度は[η]=1.90(dl/g)、嵩密度は0.45(g/ml)であった。
【0094】
[比較例2]
(1)固体触媒成分前駆体の合成
ブチルマグネシウムクロリドのジブチルエーテル溶液の投入時間を5.0時間に変更した以外は実施例1(1)と同様に合成を行い、固体触媒成分前駆体を得た。このときの1時間当たりのブチルマグネシウムクロリドの投入量は3.3倍モル量である。
該固体触媒成分前駆体は、Ti:2.0重量%、OEt(エトキシ基):35.5重量%、OBu(ブトキシ基):3.5重量%を含有していた。その平均粒子径は39μmであった。
【0095】
(2)固体触媒成分の合成
上記(1)の固体触媒成分前駆体を用いた他は実施例1(2)と同様に合成を行い、固体触媒成分を得た。
固体触媒成分中には、チタン原子が2.0重量%、フタル酸エステルが10.7重量%含まれていた。
【0096】
(3)プロピレンの重合
固体触媒成分を上記(2)で得られた固体触媒成分 4.97ミリグラムに変更した以外は実施例1(3)に従って重合し、270グラムのポリプロピレンパウダーを得た。
PP/cat=54300(g/g)であった。また、微粉割合は19.8(wt%)、全重合体収量に占める20℃キシレンに可溶な成分の割合はCXS=0.42(wt%)、重合体の極限粘度は[η]=1.95(dl/g)、嵩密度は0.45(g/ml)であった。
【0097】
【発明の効果】
以上に述べたとおり、本発明によれば、微粉発生量が少なく、安定で効率的なα−オレフィン重合体製造に好適なα−オレフィン重合用固体触媒成分前駆体の製造方法、α−オレフィン重合用触媒固体成分、α−オレフィン重合用触媒およびα−オレフィン重合体の製造方法が提供される。さらに本発明のα−オレフィン重合用触媒は、高い重合活性で、高立体規則性の重合体製造を実現し得ることから、その産業上の利用価値はすこぶる大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の理解を助けるためのフローチャート図である。本フローチャート図は、本発明の実施態様の代表例であり、本発明は、何らこれに限定されるものではない。
【図2】図2は、実施例1(1)他で使用した円筒型反応器を上面から見た図(a)および側面から見た図(b)である。
Claims (7)
- Si−O結合を有する有機ケイ素化合物(a1)および下記一般式[I]で表されるチタン化合物(a2)を含有する溶液中に、有機マグネシウム化合物(a3)を投入して固体触媒成分前駆体を製造するに際して、1時間あたりの前記有機マグネシウム化合物(a3)の投入量が前記チタン化合物(a2)の0.5倍モル量以上2.5倍モル量以下となるように、前記有機マグネシウム化合物(a3)投入速度を調整するα−オレフィン重合用固体触媒成分前駆体の製造方法。
(式中、aは1〜20の数を表し、R2は炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。X2はハロゲン原子または炭素原子数1〜20の炭化水素オキシ基を表し、全てのX2は同一であっても異なっていてもよい。) - 有機ケイ素化合物(a1)がテトラアルコキシシラン化合物であり、チタン化合物(a2)がテトラアルコキシチタン化合物であり、有機マグネシウム化合物(a3)がグリニャール化合物である請求項1記載のα−オレフィン重合用固体触媒成分前駆体の製造方法。
- α−オレフィン重合用固体触媒成分前駆体が、平均粒子径が30μm以上のα−オレフィン重合用固体触媒成分前駆体である請求項1または2記載のα−オレフィン重合用固体触媒成分前駆体の製造方法。
- 以下の(a)、(b)および(c)を接触させて得られるα−オレフィン重合用固体触媒成分。
(a)請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法により製造したα−オレフィン重合用固体触媒成分前駆体
(b)ハロゲン化化合物
(c)電子供与体 - 以下の(a)、(b)、(c)および(d)を接触させて得られるα−オレフィン重合用固体触媒成分。
(a)請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法により製造したα−オレフィン重合用固体触媒成分前駆体
(b)ハロゲン化化合物
(c)電子供与体
(d)有機酸ハライド - 請求項4または5記載のα−オレフィン重合用固体触媒成分(A)、有機アルミニウム化合物(B)、ならびに電子供与性化合物(C)を接触させて得られるα−オレフィン重合用触媒。
- 請求項6記載のα−オレフィン重合用触媒を用いてα−オレフィンを単独重合または共重合するα−オレフィン重合体の製造方法。
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