JP2007214189A - レーザチャンバのウィンドウ劣化判定装置および方法 - Google Patents

レーザチャンバのウィンドウ劣化判定装置および方法 Download PDF

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Abstract

【課題】
レーザチャンバから出力されるレーザ光の偏光状態の変化をモニタし、レーザチャンバに取り付けられたウィンドウの劣化を早期に把握できる装置および方法を提供する。
【解決手段】
レーザ発振器から出力されたレーザ光は偏光モニタに入射する。偏光モニタではレーザ光の偏光状態がモニタされる。偏光モニタの検出結果は比較演算部に出力される。比較演算部では偏光モニタで検出された偏光状態を示す値、例えば偏光純度や偏光方位角、が算出され、この算出値と許容範囲設定部に予め設定された許容範囲の閾値とが比較される。算出値が許容範囲の閾値を超えた場合に、信号出力部からウィンドウ劣化信号が出力される。このウィンドウ劣化信号の発生をもってウィンドウが劣化したものと判定することができる。
【選択図】 図4

Description

本発明は半導体ウエハの露光用光源として使用されるレーザ装置に搭載されるレーザチャンバのウィンドウ劣化判定装置および方法に関し、特に、レーザ光の偏光状態が許容範囲外になったことをもってウィンドウが劣化したと判定するものである。
(露光用光源)
半導体集積回路の微細化、高集積化につれて、半導体露光装置(以下、「露光装置」という)においては解像力の向上が要請されている。このため露光用光源から放出される光の短波長化が進められている。露光用光源には、従来の水銀ランプに代わってガスレーザ装置が用いられている。現在、露光用のガスレーザ装置としては、波長248nmの紫外線を放出するKrFエキシマレーザならびに、波長193nmの紫外線を放出するArFエキシマレーザが用いられている。
次世代の露光技術としては、露光装置側の露光用レンズとウエハ間を液体で満たして、屈折率を変えることによって、露光用光源の見かけの波長を短波長化する液浸露光が研究されている。ArFエキシマレーザを露光用光源として液侵露光が行われた場合は、ウエハには波長134nmの紫外光が照射される。この技術をArF液浸露光(又はArF液浸リソグラフィー)という。
次々世代の露光用光源としては、波長157nmの紫外線を放出するF2レーザが有力である。さらにF2レーザを露光用光源として液浸技術が行われる可能性もある。この場合は、ウエハには波長115nmの紫外光が照射されるといわれている。
(露光用光学素子と色収差)
多くの露光装置の光学系には、投影光学系が採用されている。投影光学系では異なる屈折率を有するレンズ等の光学素子が組み合わされて色収差補正が行なわれる。現在、前述した露光用光源によって得られる波長帯域248nm〜115nmの紫外光に対して、投影光学系のレンズ材料として使用に適する光学材料は合成石英とCaF2以外にない。このため露光用光源としてKrFエキシマレーザを使用する露光装置の投影レンズとしては、合成石英のみで構成された全屈折タイプの単色レンズが採用されている。また露光用光源にArFエキシマレーザを使用する露光装置の投影レンズとしては、合成石英とCaF2で構成された全屈折タイプの部分色消しレンズが採用されている。
ところがKrF、ArFエキシマレーザの自然発振幅は約350〜400pmと広いため、これらの投影レンズが使用されると色収差が発生して解像力が低下する。そこで色収差が無視できる程度となるまでガスレーザ装置から放出されるレーザ光のスペクトル線幅を狭帯域化する必要がある。このためガスレーザ装置のレーザ共振器内には狭帯域化素子(エタロンやグレーティング等)を有する狭帯域化モジュール(Line Narrow Module、以下「LNM」という)が設けられ、スペクトル線幅の狭帯域化が実現されている。
(液浸露光と偏光照明)
電場のみに着目して考えると、光は互いに直交する二つの直線偏波状態の波の線形結合として表される。通常、この二つの波はP偏光成分とS偏光成分という二つの成分として考えられる。P偏光成分及びS偏光成分の方位は絶対的なものではなく、光を出射する光学素子の設置角度に応じて定められる相対的なものである。光学素子へ入射する光の電場ベクトル方向と光学素子の設置角度によって光学素子表面におけるP偏光成分の方位とS偏光成分の方位が決まる。また二つの波の位相速度と振幅の大きさで、偏光状態(直線偏光、楕円偏光、円偏光)や偏光方位が決まる。二つの波の位相が同じであると直線偏光であり、二つの波の位相が異なると楕円偏光、円偏光となる。
前述したArF液浸露光の場合に、媒体がH2Oであると屈折率が1.44になるため、屈折率に比例するレンズ開口数NAは通常のArF露光の1.44倍に増える。NAが高くなるにつれ、光源から出射されるレーザ光の偏光状態の影響が大きくなる。
ところで、下記非特許文献1には露光装置側の事柄として次のような記載がある。互いに直交する二つの直線偏波状態の波のうち、方位がマスクパターンの方向に平行である偏光成分をS偏光と定義し、方位がマスクパターンの方向に垂直である偏光成分をP偏光と定義すると、S偏光は像のコントラストに影響を及ぼさないが、P偏光は像のコントラストを低くする。非特許文献1に記載されるような現象が発生する原因は次のように考えられる。
P偏光の場合は、ウエハ上の焦点における電界のベクトルが異なる方向である。このためウエハへの入射角が大きくなるに従い、電界のベクトルが同一であるS偏光に比べ、強度が弱くなるのである。この現象の影響は、NAが1.0に近づくか超える場合に強くなり、ArF液浸はこの場合に該当する。以上のことから、レーザ光にS偏光とP偏光の2つの偏光が混ざり合っているとコントラストが低くなるといえる。このため光源であるレーザ光は直線偏光であって、且つその方向性すなわち偏光方位が安定していることが要求される。
本明細書では、直線偏光の度合を偏光純度Pと呼ぶことにする。回転する直線偏光子を通してレーザ光を観察し、測定される光強度のうち最大値をImaxとし、最小値をIminとすると、偏光純度Pは下記(1)式にて求められる。
P={(Imax−Imin)/(Imax+Imin)}×100 (%) … (1)
偏光純度Pが100%に近づくほど偏光状態が直線偏光に近いといえる。
(2ステージレーザシステム)
液浸露光においては、高NA化によってレンズの透過率が低下する。よって一定露光量を得るためには、露光用光源であるガスレーザ装置の高出力化が必要である。また露光装置の高スループット化のためにも、ガスレーザ装置の高出力化が必要である。スペクトル線幅を狭帯域化した上で高出力を得るための装置として、2ステージレーザシステムがある。2ステージレーザシステム(以下、2ステージレーザという)は、シード光を生成する発振段(Oscillator:略してOSC)とシード光を増幅する増幅段(Amplifier:略してAMP)とからなる。
図1はレーザ発振器の一例である2ステージレーザの構成を簡略化して示す図である。 2ステージレーザの方式として、増幅の手段が異なるMOPO方式とMOPA方式の2種類が知られている。MOPOは、Master Oscillator, Power Oscillatorの略であり、インジェクションロック方式とも呼ばれる。この方式では増幅用チャンバを間に挟んで共振器が設けられ、レーザ光が増幅用チャンバを複数回通過して増幅される。MOPAは、Master Oscillator, Power Amplifierの略である。この方式では増幅用チャンバを間に挟んで共振器が設けられず、レーザ光が増幅用チャンバを1回又は2回通過して増幅される。図1で示される2ステージレーザ100はMOPO方式の装置である。本明細書では2ステージレーザの増幅手段の具体例としてMOPOを説明する。
2ステージレーザ100は、OSC(レーザ)10と、OSC10の出力光軸上に設けられたAMP(レーザ)20とからなる。
OSC10では、OSCチャンバ11と、LNM12と、OSCフロントミラー15と、がレーザ光軸上に設けられる。OSCチャンバ11は、CaF2を材料として作成されたウィンドウ11a、11bを有する。LNM12は一以上のプリズム、例えば二つのプリズム13a、13bと、グレーティング14と、で構成される。以後、プリズムはプリズムビームエキスパンダ又は分散プリズムを意味するものとする。プリズム13a、13bは、OSCチャンバ11側から伝搬する光のビーム幅を拡大し、またグレーティング14側から伝搬する光のビーム幅を縮小する。グレーティング14は、プリズム13bから伝搬する光のうち、所定帯域の光のみをプリズム13b側に反射する。OSCフロントミラー15にはPR(Partial-Reflection)膜がコーティングされる。OSCフロントミラー15では、OSCチャンバ11側から伝搬する光の一部が透過し、残りが反射する。LNM12とOSCフロントミラー15とで共振器が構成される。
AMP20では、AMPチャンバ21と、AMPリアミラー22と、AMPフロントミラー23と、がレーザ光軸上に設けられる。AMPチャンバ21は、CaF2を材料として作成されたウィンドウ21a、21bを有する。AMPリアミラー22には90%程度の高反射率を有する反射膜がコーティングされる。AMPフロントミラー23には30〜50%の反射率を有するPR膜がコーティングされる。AMPフロントミラー23では、AMPチャンバ21側から伝搬する光の一部が透過し、残りが反射する。AMPリアミラー22とAMPフロントミラー23とで共振器が構成される。
OSCチャンバ11では、放電によって内部のレーザガス分子が励起される。分子はエネルギーを与えられ上準位に遷移した後に下準位に遷移する。こうした誘導放出の際に光が発生する。光はウィンドウ11a、11bから外部に出射される。この光はOSCチャンバ11を介してLMN12とOSCフロントミラー15の間を往復して狭帯域化される。狭帯域化されたレーザ光はOSCフロントミラー15から出射される。レーザ光(シード光という)は、場合によっては一以上の伝搬ミラー31で伝搬方向を変更され、AMPリアミラー22を透過してAMPチャンバ21に注入される。AMPチャンバ21では、OSCチャンバ11と同様の誘導放出によって注入されたレーザ光が増幅される。レーザ光はAMPチャンバ21を介してAMPリアミラー22とAMPフロントミラー23の間を往復して徐々に増幅される。増幅されたレーザ光はAMPフロントミラー23から出射される。AMP20から出射されたレーザ光は露光装置30に取り込まれ、露光対象(例えばウエハ)の露光に用いられる。
図1で示されているのは2ステージレーザすなわち2段増幅型レーザシステムであるが、3段増幅型レーザシステムであればさらなる出力向上が可能である。3段増幅型レーザシステムの場合は、AMP20の出力光軸上にさらに別のAMPが設けられる。つまり多段増幅型レーザシステムは、OSC10の後段に一以上のAMPが直列に設けられた形態になる。
2ステージレーザには、特願2003−116924号、特願2003−298286号に記載されているような別のシード光注入方式や、他の不安定共振器などが適用される場合もある。
(ブリュースタ角と偏光)
チャンバを有するレーザ装置においては、P偏光とS偏光の方向はウィンドウの姿勢によって定義される。
一般にガスレーザ装置の共振器内に設けられるチャンバのウィンドウ(図1のウィンドウ11a、11b、21a、21b)は、光軸に対してブリュースタ角だけ傾斜して設置されることが多い。ウィンドウの入射面がレーザ光軸に対して幾らかでも傾斜して設置された場合にウィンドウは所謂偏光子として機能する。ウィンドウに入射する光のP偏光成分は、ウィンドウ表面におけるフレネル反射が零になり、ほぼ100%透過する。よってレーザ光のP偏光成分はウィンドウを通過する際に減衰が少なく、出力エネルギがほとんど減少しなくなる。ウィンドウに入射する光のS偏光成分は、ウィンドウ表面におけるフレネル反射を受ける。よってレーザ光のS偏光成分はウィンドウを通過する際に減衰し、出力エネルギが減少する。
レーザ光は共振器内を数〜十数回往復して出力される。レーザ光がウィンドウを数回通過する間に、S偏光成分はフレネル反射(14.86%)を繰り返し受け減衰する。一方、P偏光成分はほとんど減衰することなく透過し、レーザ媒質内を通過することによって増幅されていく。共振器内を往復することによって、レーザ光は概ねP偏光方向の直線偏光で出力される。ArFレーザ(波長193.368nm)では、20℃においてフッ化カルシウムの屈折率が1.501958となるため、ブリュースタ角度は56.336度になる。また、F2レーザ(波長157.63 nm)では、20℃においてフッ化カルシウムの屈折率が1.559261となるため、ブリュースタ角度は57.318度になる。
狭帯域化レーザでは、スペクトル線幅を狭帯域化するために、ビームがプリズムで拡大され波長分散素子であるグレーティングに入射される。プリズムは複数個使用される場合が多い。各プリズムの入射面には、フレネル反射による出力減少を防止するために、光の入射角に対してP偏光成分をほぼ100%透過させるためのP偏光AR(Anti-Reflection)膜がコーティングされている。このP偏光AR膜ではS偏光成分の光は大きく反射される。結果として、狭帯域化レーザから出力されるレーザ光は、LNMを備えないフリーランニングのレーザと比較してP偏光成分の純度が高くなる。
Feasibility of immersion lithography, S.Owa, et al. ,Procceding of SPIE Vol. 5377
(2ステージレーザにおける偏光純度と偏光方位の変化)
2ステージレーザにおいて、OSCから出射されるレーザ光のエネルギー密度は数mJ/cm2であるが、AMPから出射されるレーザ光のエネルギー密度は数十mJ/cm2である。AMPチャンバのウィンドウには高エネルギー密度のビームが透過するため、ウィンドウは表面及び内部で多くの光を吸収し発熱する。するとウィンドウに熱応力が発生し、光吸収率が増加してウィンドウの複屈折が多くなる。本明細書では、このような現象をウィンドウの劣化と考える。一般に、偏光した光が複屈折物質内を透過すると、位相が変化する。例えば直線偏光の光が複屈折物質内を通過すると、位相がずれる。結果として、直線偏光は楕円偏光になる場合が多い。
シード光となるOSCの出射光は直線偏光である。その偏光純度Pは約99%である。直線偏光であるシード光はAMPに注入され増幅されるが、シード光はAMPチャンバのウィンドウを通過する際に複屈折の影響を受け、直線偏光から楕円偏光に変化する。また複屈折に起因して、偏光方位が変化する場合もある。このように偏光純度と偏光方位は安定していない。
AMPチャンバのウィンドウほどではないが、OSCチャンバのウィンドウでもウィンドウが劣化する場合がある。すなわち、ウィンドウで光の吸収が多くなり、複屈折量が大きくなることがあり、AMPからの出射光の偏光純度及び偏光方位が変化する場合がある。この場合はシード光自体の偏光純度及び偏光方向が変化するため、結果としてAMPの出射光の偏光純度及び方向が変化することになる。
(複屈折による偏光の変化)
前述した複屈折の影響について、図2を用いて更に説明する。
図2(a)、(b)は複屈折物質を境にした偏光状態を示す図である。
結晶1は複屈折物質であると想定する。結晶1内に複屈折が発生すると、結晶1内を伝播する光の位相速度が自身の偏波方向に依存して変化する。直線偏光である光が複屈折物質を通過すると、互いに直交する二つの波すなわちP偏光成分、S偏光成分の位相がずれる。よって複屈折物質を通過した光は直線偏光でなく、概ね楕円偏光になる。このため結晶1内に複屈折が発生すると偏光純度Pが低下する。また入射する直線偏光がP偏光であった場合は、P偏光成分の光強度が減少し、S偏光成分の光強度が増加して、偏光方位が変化する。
前述したように、レーザ装置では、ウィンドウをほぼ100%透過する偏光方向の直線偏光すなわちP偏光成分が増幅されていくはずである。しかしウィンドウが複屈折物質であって複屈折量が増加すると、S偏光成分が発生し、さらにP偏光とS偏光の位相がずれる。よって直線偏光は楕円偏光に変化する。なおレーザ強度によって複屈折の原因となる熱応力の発生量が変わるため、S偏光成分の発生量は安定していない。
P偏光とS偏光の方位は、ウィンドウ面の方位と入射光の電界ベクトルの方位によって定められる。結晶1がウィンドウである場合に、図2(a)、(b)で示されるような配置、すなわち結晶(ウィンドウ)1の光入射面の法線(図中の破線)と入射レーザ光軸とを含む平面が直線偏光した入射レーザ光の電界ベクトル方向と平行となる配置では、紙面の上下方向がP偏光成分の方位であり、紙面に対して垂直方向がS偏光成分の方位となる。図2(b)では、P偏光を示す記号とS偏光を示す記号がほぼ同一位置に記載されているが、P偏光とS偏光が同位相であることを意味するのではない。現実には両者には複屈折の程度に応じた楕円偏光を生ずる分だけ位相が相違する場合もある。他の図面においても同じ記号が用いられる場合は、同様のことがいえる。
(S偏光成分の増幅過程)
図3は偏光の増幅過程を説明するための図である。図3は、AMP内を往復するシード光を一方向(図面右方向)に伝搬する光と仮定し、光の伝搬位置と(図面下段)P偏光及びS偏光の強度(図面上段)とを対応させて偏光の増幅過程の概念を示すものである。
図3を用いて、AMPにおけるP偏光、S偏光の増幅過程を説明する。
2ステージレーザのAMP内に、OSCからの直線偏光(AMPチャンバのブリュースターウィンドウに対してP偏光方向)のシード光が注入されたとする。シード光は、AMPチャンバ21のリア側のウィンドウ21bを透過する際に、ウィンドウ21bの複屈折の影響を受け、入射したP偏光の一部がS偏光に変わる(期間t1)。光がAMPチャンバ内の放電領域を通過すると、光の強度が増幅される。このときP偏光成分のみならず、S偏光成分も増幅される(期間t2)。光がAMPチャンバ21のフロント側のウィンドウ21aを通過すると、ブリュースター角でのフレネル反射でS偏光の14.86%は反射損失を受け減少する。しかしウィンドウ21a、21bの複屈折によって、P偏光成分の一部がS偏光成分に変化する。このためP偏光は減少し、S偏光は増加するため、S偏光のこうした増減の差分だけS偏光の量が変化する(期間t3)。
光は図示しないAMPフロントミラーに達する。光の70〜50%はフロントミラーを透過して外部へ出射され、30〜50%は反射してリア側に伝搬する。この時点では、すでにP偏光とS偏光が混ざり合った状態である。そのフロントミラーで反射して光がウィンドウ21aを透過する際には、フレネル反射でS偏光は減少するものの、ウィンドウ21aの複屈折によって、P偏光成分の一部がS偏光成分に変化する。このためP偏光は減少し、P偏光の減少分だけS偏光は増加する(期間t4)。また光が放電領域を通過する際には、S偏光成分も増幅される(期間t5)。さらに光がウィンドウ21bを透過する際には、フレネル反射でS偏光は減少するものの、ウィンドウ21bの複屈折によって、P偏光成分の一部がS偏光成分に変化する。このためP偏光は減少し、S偏光は増加する(期間t6)光は図示しないAMPリアミラーに達し、さらにt1〜t6と同じ様な工程を経て外部に出射される(t7〜t9)。
図3では、説明を簡単にするため、光が共振器内を1.5往復して外部に出射されるような形態が示されている。しかし実際には、光は共振器内を1.5往復以上往復して出射される。観測されるレーザパルスは、1.5往復、2.5往復、3.5往復と数回共振器内を往復して出射される光の積分である。
以上のように、2ステージレーザでは狭帯域化されたレーザ光がAMPで増幅されるが故に、AMPチャンバのウィンドウの複屈折量が増加するため、レーザ光の偏光状態及び偏光方位が不安定である。半導体ウエハの露光においては、特定の偏光方位である直線偏光が要求されるため、レーザ光の偏光状態及び偏光方位が不安定であることは望ましくない。
本発明はこうした実状に鑑みてなされたものであり、レーザチャンバから出力されるレーザ光の偏光状態の変化をモニタし、レーザチャンバに取り付けられたウィンドウの劣化を早期に把握できる装置および方法を提供することを目的とするものである。
第1発明に係るレーザチャンバのウィンドウ劣化判定装置は、
レーザチャンバに設けられたウィンドウからレーザ光を出力するレーザ発振器と、
前記レーザチャンバから出力されるレーザ光の偏光状態を検出する偏光モニタと、
レーザ光の偏光状態を示す値のうち許容できる範囲を設定する許容範囲設定部と、
前記偏光モニタで検出された偏光状態に基づいて偏光状態を示す値を算出し、その算出値と前記許容範囲設定部で設定された範囲の閾値とを比較する比較演算部と、
前記比較演算部で算出された偏光状態を示す値が前記許容範囲設定部で設定された範囲外である場合に、前記レーザチャンバから出力されるレーザ光の偏光状態が許容範囲外になったことを示す信号を出力する信号出力部と、
を有する。
第2発明は第1発明において、
前記偏光状態を示す値は、偏光純度または偏光方位角の少なくとも一方であり、前記閾値は、偏光純度の下限値または偏光方位角の範囲の境界値の少なくとも一方である。
第1、第2発明を説明する。
レーザ発振器には1以上のレーザチャンバが直列に設けられており、最前段のレーザチャンバでレーザ光が生成され、後段のレーザチャンバに進むにつれてレーザ光が増幅されていく。レーザ発振器から出力されたレーザ光は偏光モニタに入射する。偏光モニタではレーザ光の偏光状態がモニタされる。偏光モニタの検出結果は比較演算部に出力される。比較演算部では偏光モニタで検出された偏光状態を示す値、例えば偏光純度や偏光方位角、が算出され、この算出値と許容範囲設定部に予め設定された許容範囲の閾値とが比較される。算出値が許容範囲の閾値を超えた場合に、信号出力部からウィンドウ劣化信号が出力される。このウィンドウ劣化信号の発生をもってウィンドウが劣化したものと判定することができる。
第3発明に係るレーザチャンバのウィンドウ劣化判定方法は、
レーザ光の偏光状態を示す値のうち許容できる範囲を設定する許容範囲設定工程と、
レーザチャンバに設けられたウィンドウからレーザ光を出力するレーザ出力工程と、
前記レーザチャンバから出力されるレーザ光の偏光状態を検出する偏光モニタ工程と、
前記偏光モニタ工程で検出された偏光状態に基づいて偏光状態を示す値を算出し、その算出値と前記許容範囲設定工程で設定された範囲の閾値とを比較する比較演算工程と、
前記比較演算工程で算出された偏光状態を示す値が前記許容範囲設定工程で設定された範囲外である場合に、前記レーザチャンバのウィンドウが劣化したものと判定するウィンドウ劣化判定工程と、
を有する。
第3発明を説明する。
先ず、偏光状態の許容範囲を設定する。次に、レーザ発振器からレーザ光を出力し、出力されたレーザ光の偏光状態を検出する。この検出結果に基づいてレーザ光の偏光状態を示す値、例えば偏光純度や偏光方位角、を算出し、この算出値と予め設定した許容範囲の閾値とを比較する。算出値が許容範囲の閾値を超えた場合に、ウィンドウが劣化したものと判定する。
本発明によれば、レーザ光の偏光状態の変化を検出し、その偏光状態が許容範囲内か否かを判断できるため、ウィンドウの劣化を早期に把握することができる。また、高い偏光純度を要求される半導体ウエハ露光等において劣化したウィンドウの早期交換が可能になるため、ウィンドウ劣化に起因する偏光純度低下を事前に防止することができる。
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
なお、以下の説明では、2チャンバのレーザをレーザ発振器としているが、通常の1チャンバのレーザをレーザ発振器とすることも可能であるし、3チャンバ以上のレーザをレーザ発振器とすることも可能である。
図4は本発明に係るレーザチャンバのウィンドウ劣化判定装置の構成を示す図である。 本実施形態は、図1で示される2ステージレーザ100の構成に加えて、ビームサンプリング素子43と偏光モニタ44と演算部91と信号出力部92と許容範囲設定部93と報知部94とを備えたものである。OSC10とAMP20は従来と同じ構成であるため、以下ではその説明を省略する。
ビームサンプリング素子43は、レーザ光を分岐する光学素子であって、AMP20以降の光軸上に設けられる。偏光モニタ44は、ビームサンプリング素子43で分岐された光の一方を取り込める位置に設けられる。ビームサンプリング素子43および偏光モニタ44の詳細については後述する。
演算部91は、ビームサンプリング素子43で検出されたレーザ光の偏光状態を数値化する。具体的には、レーザ光の偏光純度Pや偏光方位角Φを算出する。そして、その算出値P、Φと許容範囲設定部93から出力される閾値Pth、Φth1、Φth2とを比較する。
AMPチャンバ21から出力されるレーザ光の偏光状態には半導体露光用として許容できる範囲がある。閾値Pth、Φth1、Φth2というのは、この許容範囲の限界値のことである。なお、偏光純度Pの許容範囲は、上限値100%と任意の下限値Pthとで表される。偏光純度Pの算出値が上限値100%を超えることはあり得ないため、偏光純度Pの閾値は下限値Pthのみとしている。ウィンドウが劣化すると、偏光純度Pは閾値Pthを超え(P≦Pth)、または偏光方位角Φは閾値Φth1、Φth2を超え(Φ≦Φth1、Φ≧Φth2)、許容範囲外になる。
信号出力部92は、演算部91の比較結果において算出値P、Φが閾値Pth、Φth1、Φth2を超えている場合に、報知部94にウィンドウ劣化信号を出力する。
許容範囲設定部93は、図示しない入力手段を介して設定された偏光純度Pや偏光方位角Φの許容範囲の閾値Pth、Φth1、Φth2を演算部91に出力する。許容範囲設定部93は、入力された閾値Pth、Φth1、Φth2を記憶しておき、必要なときに記憶した閾値Pth、Φth1、Φth2を出力するものであってもよいし、オペレータによって入力された閾値Pth、Φth1、Φth2をそのまま出力するものであってもよい。本明細書では閾値Pth、Φth1、Φth2は予め設定され記憶されているものとする。
報知部94は、信号出力部92から出力されたウィンドウ劣化信号を入力した場合に、ウィンドウが劣化したことを外部に報知する。例えば、ブザーやランプなどオペレータの感覚に働きかけるものであればよい。具体的な数値やインジケータ等を表示してオペレータに判断させるものであってもよい。
ここで、ビームサンプリング素子43と偏光モニタ44の説明をする。
(ビームサンプリング)
図5はビームサンプリングの一形態を示す図である。
図4で示されるビームサンプリング素子43としては、CaF2を材料とするウエッジ基板43−1が使用される。ウエッジ基板43−1は、入射面のSa面とSa面に対して任意角だけ傾いて対向するSb面を有し、Sa面に対してメインビーム46がほぼ垂直(≠垂直)に入射するようにして設けられる。メインビーム46の入射角度がある程度大きくなると、Sa面での反射光47のP偏光とS偏光の強度比が変化するため、好ましくない。Sa面がメインビーム46の光軸とほぼ直交するならば、メインビーム46の入射角度がそれほど大きくならないため、反射光47のP偏光とS偏光の強度比は、メインビーム46のP偏光とS偏光の強度比と比較してほぼ等しくなる。
反射光47の光軸上には偏光モニタ44が設けられる。偏光モニタ44では後述する測定が行われる。
ウエッジ基板43−1ではメインビーム46の反射がSa面の他にSb面でも生ずる。ウエッジ基板43−1はウエッジ形状であるため、Sb面での反射光48は偏光モニタ44に取り込まれない。ウエッジ基板43−1の代わりに平行基板が使用される場合は、Sb面に減反射コートが施されることが望ましい。減反射コートはモニタ44へ入射する反射光48の量を少なくするために設けられる。
図6はビームサンプリングの別の一形態を示す図である。
図4で示されるビームサンプリング素子43としては、CaF2を材料とする二つのウエッジ基板43−2、43−3が使用される。ウエッジ基板43−2は、入射面のSa2面とこのSa2面に対して任意角だけ傾いて対向するSb2面を有し、メインビーム46が約45度の入射角でSa2面に入射するように設けられる。ウエッジ基板43−3は、入射面のSa3面とこのSa3面に対して任意角だけ傾いて対向するSb3面を有し、Sa2面での反射光47が約45度の入射角でSa3面に入射するように設けられる。メインビーム46は、Sa2面で反射して反射光47となり、Sa3面で反射して反射光50となる。メインビーム46の偏光成分のうち、Sa2面でP偏光として反射する成分はSa3面でS偏光として反射する。同様に、メインビーム46の偏光成分のうち、Sa2面でS偏光として反射する成分はSa3面でP偏光として反射する。つまりSa2面及びSa3面での反射の結果、P偏光とS偏光の強度比の変化は相殺される。よってメインビーム46と反射光50のP偏光とS偏光の強度比はほぼ等しくなる。例えば入射角度45度の場合に、P偏光成分の反射率は0.0086であるのに対し、S偏光成分の反射率は0.093である。図6で示されるような配置であれば、メインビーム46の偏光成分のうちの一方は、Sa2面でP偏光として反射し、Sa3面でS偏光として反射するので、トータルの反射率は0.0086×0.093=0.0008となる。またメインビーム46の偏光成分のうちの他方は、Sa2面でS偏光として反射、Sa3面でP偏光として反射するので、トータルの反射率は0.093×0.0086=0.0008となる。このように二つのウエッジ基板43−2、43−3によってP偏光とS偏光の最終的な反射率がほぼ等しくなる。
反射光50の光軸上には偏光モニタ44が設けられる。偏光モニタ44では後述する測定が行われる。
図5のウエッジ基板43−1と同様に、ウエッジ基板43−2、43−3はウエッジ形状であるため、Sb2面及びSb3面での反射光は偏光モニタ44に取り込まれない。ウエッジ基板43−2、43−3の代わりに平行基板が使用される場合は、Sb2面及びSb3面に減反射コートが施されることが望ましい。減反射コートは反射光48の影響を少なくするために設けられる。
なお、図4に示すビームサンプリング素子43の更なる他の形態としては、P偏光とS偏光を均等に反射する膜をコーティングしたビームスプリッタがある。各偏光の反射率が等しいためメインビームとビームスプリッタでの反射光のP偏光およびS偏光の強度比はほぼ等しくなる。
また、ビームサンプリング素子43として、P偏光とS偏光を均等に反射する膜を持たないビームスプリッタを用いる構成であっても、P偏光反射率とS偏光反射率の各数値を用いた補正計算によってメインビームのP偏光とS偏光の強度比を正確に反映した計測をすることができる。
(偏光モニタ)
偏光モニタ44はレーザ光の偏光の純度及び方位を測定するモジュールであり、所謂一般的なポラリメータと同等の機能を有する。ここで説明する三形態の偏光モニタ44にはそれぞれ偏光子が含まれる。そこで、偏光モニタ44の説明に入る前に、図7〜図11を用いて具体的な五種類の偏光子を説明する。
偏光子は、自身に入射した光を、自身の設置角度に応じた互いに直交する二方向の偏光成分に分離し、一方の偏光成分をその伝搬方向をほぼ変化させずに出射し、他方の偏光成分をその伝搬方向を変化させて出射する。偏光子にとって、伝搬方向が変化しない偏光成分がP偏光成分であり、伝搬方向が変化する偏光成分がS偏光成分である。P偏光成分の方位は入射光軸を中心とする偏光子の回転と共に変化する。
図7は第一の形態の偏光子を示す図である。
第一の形態の偏光子は偏光ビームスプリッタである。偏光子51は、CaF2の平行平面基板52と、平行平面基板52の表面Sa面にコーティングされた偏光分離膜53と、から構成される。偏光分離膜53はP偏光を透過しS偏光を反射する。図7で示されるように、偏光分離膜53に対するレーザ光の入射角度がブリュースター角に近いほど、平行平面基板52の裏面Sb面でのP偏光透過率が更に向上し、効率が良くなる。またSb面にP偏光に対する減反射膜をコーティングしても、同様に効率が良くなる。またSb面にSa面と同じ偏光分離膜をコーティングして、偏光子としての消光比を改善してもよい。
図8は第二の形態の偏光子を示す図である。
第二の形態の偏光子はRochonプリズムである。偏光子55は、複屈折性の結晶からなる第一のプリズム56及び第二のプリズム57で構成される。第一のプリズム56及び第二のプリズム57は斜面同士が接触している。第一のプリズム56の光学主軸の方位は、入射光と垂直であり且つ自身の斜面と平行である。第二のプリズム57の光学主軸の方位は、入射光と平行である。偏光子55は入射したレーザ光のP偏光、S偏光を分離する。レーザ光は、第一のプリズム56の入射面Sa面に入射し、第一のプリズム56を直進し、第二のプリズム57の斜面でP偏光とS偏光に分離される。P偏光はそのまま第二のプリズム57を直進し、第二のプリズム57の出射面Sb面から出射される。S偏光は、第二のプリズム57の斜面で進行方向を若干変えられ、第二のプリズム57を直進し、第二のプリズム57の出射面Sb面から出射される。第二のプリズム57の出射側にS偏光を遮光するアパーチャ58を設けると、純度の高い直線偏光が得られる。第一、第二のプリズム56、57の材料としては、フッ化マグネシウム結晶などが適している。またSa面、Sb面のように垂直に光が入射する面に減反射膜をコーティングすることによって、より少ない損失で偏光を分離できる。図示はしないが、第一のプリズム56と第二のプリズム57の間に空隙が設けられたRochonプリズムも同様の機能を有し、これを用いることも可能である。
図9は第三の形態の偏光子を示す図である。
第三の形態の偏光子は第一の偏光子を二つ組み合わせたタイプである。偏光子61は、CaF2の基板62と、基板62の表面Sa面にコーティングされた偏光分離膜63と、基板62の表面Sb面にコーティングされた偏光分離膜64と、から構成される。偏光子61では、偏光分離膜63、64が共通の基板61にコーティングされているが、別々の基板にコーティングされてもよい。偏光子61のような構成によって、光軸がずれることなくP偏光のみを通過させることができる。
図10は第四の形態の偏光子を示す図である。
第四の形態の偏光子は偏光ビームスプリッタの一例である。偏光子66は、等方性の第一のプリズム67及び第二のプリズム68と偏光分離膜69で構成される。偏光分離膜69を介して第一のプリズム67及び第二のプリズム68の斜面同士が対向する。Sa面、Sb面のように垂直に光が入射する面に減反射膜をコーティングすることによって、より少ない損失で偏光を分離できる。
図11は第五の形態の偏光子を示す図である。
第五の形態の偏光子はGlan Laserプリズムである。偏光子71は、複屈折性の結晶からなる第一のプリズム72及び第二のプリズム73で構成される。第一のプリズム72及び第二のプリズム73は斜面同士が所定間隔だけ離間して対向している。第一のプリズム72及び第二のプリズム73の光学主軸の方位は、入射光と垂直であり、且つ入射面Sa面に垂直入射する光軸と第一及び第二のプリズムの斜面の法線とを含む平面と平行である。レーザ光は、第一のプリズム72の入射面Saに入射し、第一のプリズム72を直進し、第二のプリズム73の斜面でP偏光とS偏光に分離される。P偏光はそのまま第二のプリズム73を直進し、第二のプリズム73の出射面Sb面から出射される。S偏光は、第二のプリズム73の斜面で反射され、第一のプリズム72を直進し、第一のプリズム72の出射面Sc面から出射される。第一、第二のプリズム72、73の材料としては、α−BBO結晶などが適している。またSa面、Sb面のように垂直に光が入射する面に減反射膜をコーティングすることによって、より少ない損失で偏光を分離できる。
以上、具体的な偏光子を説明したが、P偏光、S偏光を分離できる偏光子であればどのような形態のものでも用いることは可能である。次に、こうした偏光子を利用した偏光モニタ44を説明する。
〔1.偏光モニタの第一の形態〕
図12は第一の形態の偏光モニタの構成を示す図である。
本形態はストークスのパラメータS0、S1、S2を測定することによって、偏光方位角Φと直線偏光純度Pを求める偏光モニタ44−1である。偏光モニタ44−1は、図8で示される偏光子55と、第一、第二の光センサ75、76とで構成される。偏光子55は、図示しない回転ステージに取り付けられており、入射光軸を中心にして回転自在である。第一の光センサ75は偏光子55から出射されるS偏光の光軸上に設けられ、第二の光センサ76は偏光子55から出射されるP偏光の光軸上に設けられる。本形態では偏光子55の回転と共にS偏光の光軸も移動するため、偏光子55の移動に追従して第一の光センサ75の位置を変化させる駆動機構が設けられる。光センサ75、76は、単一の受光素子でもよいし、1次元あるいは2次元に受光素子が並ぶものでもよい。例えば、CCDラインセンサやMOSエリアセンサなどを使用することができる。この場合は、レーザビームの場所毎、つまりレーザビームの光軸に直交する断面内での偏光の分布の状態が測定できる。
ストークスのパラメータS0、S1、S2を次のように定義する。なお、以下の説明は一般論である。半導体露光の分野を例にすれば、本発明のAMP出射光の電界の直線偏光方位が重力方向に対して直交することが望ましい状態である。
S0:全強度(P偏光、S偏光の強度の和)
S1:x成分とy成分の強度差(偏光子55の回転角度が0度である場合のP偏光、S偏光の強度の差)
S2:+45度成分と−45度成分の強度差(偏光子55の回転角度が+45度である場合のP偏光、S偏光の強度の差)
偏光方位角Φと直線偏光純度Pは、パラメータS0、S1、S2を用いた下記(2)、(3)式で演算される。
Φ=1/2・tan-1(S2/S1) … (2)
P=〔√{(S1-2+S2-2)/S0-2}〕×100 … (3)
ここで方位角Φと直線偏光純度Pを求める工程を図13を用いて説明する。
図13は方位角Φと直線偏光純度Pを求め、ウィンドウ劣化を判断する工程を示すフローチャートである。
同図13に示す一連の処理は任意のタイミングで行うことが可能である。
最初に偏光純度Pの下限値Pthと偏光方位角Φth1〜Φth2(Φth1<Φth2)とが設定され、閾値設定部に記憶される(ステップS10)。
次に偏光子55の回転角度は0度にされる。この0度とは、所望の偏光方位に対する偏光子55の基準方向のずれが0度であることを意味する。例えば、前述した半導体露光の分野では重力方向に直交方向、すなわち水平方向が0度である。レーザ光のS偏光は第一の光センサ75に取り込まれ、P偏光は第二の光センサ76に取り込まれる。第一の光センサ75では光強度Sout1が測定され、第二の光センサ76では光強度Sout2が測定される。そして、
S0=Sout1+Sout2 … (4)
S1=Sout1−Sout2 … (5)
という演算によってS0、S1が求められる(ステップS11)。
次に偏光子55の回転角度が+45度にされる。ステップS11と同様に、レーザ光のS偏光は第一の光センサ75に取り込まれ、P偏光は第二の光センサ76に取り込まれる。第一の光センサ75では光強度Sout1が測定され、第二の光センサ76では光強度Sout2が測定される。そして、
S2=Sout1−Sout2 … (6)
という演算によってS2が求められる(ステップS12)。
求められたパラメータS0、S1、S2は上記(2)、(3)式に代入され、方位角Φと直線偏光純度Pが求められる(ステップS13)。
計算で求められた偏光方位角Φおよび直線偏光純度Pは、記憶された閾値とそれぞれ比較される(ステップS14)。Φth1≧ΦもしくはΦ≧Φth2、又はP≦Pthの少なくとも一方の関係が成立した場合はウィンドウが劣化したものと判断され(ステップS14の判断Yes)、ウィンドウ劣化信号が出力される(ステップS15)。
ウィンドウ劣化信号の発生とともにブザー音が発するかランプが点灯するようにすれば、オペレータはウィンドウが劣化したことを把握することができる。ウィンドウ劣化信号が発生したときにウィンドウを交換すれば望ましい偏光状態のレーザ出力光を得ることができる。
なお偏光モニタ44−1に図8で示される偏光子55が使用される場合を説明したが、図7及び図9〜図11で示される各偏光子が使用されてもよい。各場合においては、第一の光センサ75と第二の光センサ76の配置がかわる。
〔2.偏光モニタの第二の形態〕
図14は第二の形態の偏光モニタの構成を示す図である。
偏光モニタ44−1と同様に、本形態もストークスのパラメータS0、S1、S2を測定することによって、偏光方位角Φと直線偏光純度Pを求める偏光モニタ44−2である。偏光モニタ44−2の構造、原理は、文献K.Kawano and A.Nagashima,Rev.Sci. Instrum.68,4035(1997)に詳しく記載されているため、ここでは詳細な説明を省略する。
偏光モニタ44−2は、0度及び45度の方位に配置された二つのPEM(Photo Elastic Modulators)78、79と、22.5度の方位に配置された偏光子51と、光センサ80と、から構成される。レーザ光は、PEM78、79と偏光子51を通過して、光センサ80に取り込まれる。二つのPEM78、79を異なる周波数f1、f2で変調し、また二つのロックインアンプ81、82の周波数を2f1、2f2に合わせて、光センサ80から得られる信号を増幅する。すると光強度Sout1に相当するV2f1及び光強度Sout2に相当するV2f2の信号が得られる。よって上記(4)、(5)、(6)式にてパラメータS0、S1、S2を求め、上記(2)式、(3)式にて方位角Φと直線偏光純度Pを求める。
偏光モニタ44−1では、偏光子55の機械的駆動によってパラメータS0、S1、S2が求められるが、偏光モニタ44−2では、周波数の制御によってパラメータS0、S1、S2が求められる。偏光モニタ44−2は機械的な動作部分がないため、偏光モニタ44−1よりも高速な測定が可能である。
なお偏光モニタ44−2に図7で示される偏光子51が使用される場合を説明したが、図8〜図11で示される各偏光子が使用されてもよい。また光センサ80は、単一の受光素子でもよいし、1次元あるいは2次元に受光素子が並ぶものでもよい。
ちなみに本形態で使用されるPEM78、79としては、HINDS社(米国)などから提供されている商用製品が使用可能である。
〔3.偏光モニタの第三の形態〕
図15は第三の形態の偏光モニタの構成を示す図である。
本形態は、偏光子を回転させて消光比が最大となる方位(偏光方位角Φ)を探し、さらに直線偏光純度Pを求める偏光モニタ44−3である。偏光モニタ44−3は、図7で示される偏光子51と、光センサ84とで構成される。偏光子51は、図示しない回転ステージに取り付けられており、入射光軸を中心にして回転自在である。光センサ84は偏光子51から出射されるP偏光の光軸上に設けられる。光センサ84の代わりに、光センサ85が設けられていてもよい。光センサ85は偏光子51から出射されるS偏光の光軸上に設けられる。本形態では偏光子51の回転と共にS偏光の光軸も移動するため、偏光子51の回転に追従して光センサ85の位置を変化させる駆動機構が設けられる。光センサ84、85は、単一の受光素子でもよいし、1次元あるいは2次元に受光素子が並ぶものでもよい。例えば、CCDラインセンサやMOSエリアセンサなどを使用することができる。
ここで方位角Φと直線偏光純度Pを求める工程を図16を用いて説明する。
図16は方位角Φと直線偏光純度Pを求め、ウィンドウ劣化を判断する工程を示すフローチャートである。
同図16に示す一連の処理は任意のタイミングで行うことが可能である。
最初に偏光純度Pの下限値Pthと偏光方位角Φth1〜Φth2(Φth1<Φth2)とが設定され、閾値設定部に記憶される(ステップS20)。
次に偏光子51の回転角度が0度にされる。この0度とは、所望の偏光方位に対する偏光子55の基準方向のずれが0度であることを意味する。レーザ光のP偏光は光センサ84に取り込まれる。光センサ84では光強度Soutが測定される。偏光子51は回転角度が±90度の範囲で回転され、±90度の範囲内の複数の回転位置で、光強度Soutの測定が行われる。各回転位置で測定された光強度Soutは記憶される(ステップS21)。
図17は偏光子の回転角度と光センサの出力との関係を示す図である。
横軸に偏光子51の回転角度をとり縦軸に光強度Soutをとると、ステップS21によって図17で示されるような曲線cが得られる。この曲線cは余弦関数Acos2(θ+Φ)+Bで表される(ステップS22)。Aは曲線cの振幅であり、Bは曲線cの最小光強度である。方位角Φは、曲線cの最大光強度が得られたときの回転角度であり、余弦関数の位相から求められる。直線偏光純度Pは、
P={A/(A+2B)}×100 … (7)
によって求められる(ステップS23)。
計算で求められた偏光方位角Φおよび直線偏光純度Pは、記憶された閾値とそれぞれ比較される(ステップS24)。Φth1≧ΦもしくはΦ≧Φth2、又はP≦Pthの少なくとも一方の関係が成立した場合はウィンドウが劣化したものと判断され(ステップS24の判断Yes)、ウィンドウ劣化信号が出力される(ステップS25)。
ウィンドウ劣化信号の発生とともにブザー音が発するかランプが点灯するようにすれば、オペレータはウィンドウが劣化したことを把握することができる。ウィンドウ劣化信号が発生したときにウィンドウを交換すれば望ましい偏光状態のレーザ出力光を得ることができる。
なお図16で示される処理を光センサ84を使用するのではなく、光センサ85を使用して行ってもよい。また偏光モニタ44−3に図7で示される偏光子51が使用される場合を説明したが、図8〜図11で示される各偏光子が使用されてもよい。
以上、ビームサンプリング素子43と偏光モニタ44の説明をした。ところで偏光モニタ44はキャリブレーションがなされる必要がある。具体的には、2ステージレーザ100の外部に偏光の絶対方位を測定する原器となる偏光測定器を設置しておき、この偏光測定器及び偏光モニタ44でレーザ光の偏光方位を測定し、偏光測定器及び偏光モニタ44で得られた偏光方位の測定値同士を比較し、その差をコントローラ45で補正し、記憶しておく。
図1はレーザ発振器の一例である2ステージレーザの構成を簡略化して示す図である。 図2(a)、(b)は複屈折物質を境にした偏光状態を示す図である。 図3は偏光の増幅過程を説明するための図である。 図4は本発明に係るレーザチャンバのウィンドウ劣化判定装置の構成を示す図である。 図5はビームサンプリングの一形態を示す図である。 図6はビームサンプリングの別の一形態を示す図である。 図7は第一の形態の偏光子を示す図である。 図8は第二の形態の偏光子を示す図である。 図9は第三の形態の偏光子を示す図である。 図10は第四の形態の偏光子を示す図である。 図11は第五の形態の偏光子を示す図である。 図12は第一の形態の偏光モニタの構成を示す図である。 図13は方位角Φと直線偏光純度Pを求める工程を示すフローチャートである。 図14は第二の形態の偏光モニタの構成を示す図である。 図15は第三の形態の偏光モニタの構成を示す図である。 図16は方位角Φと直線偏光純度Pを求める工程を示すフローチャートである。 図17は偏光子の回転角度と光センサの出力との関係を示す図である。
符号の説明
10…OSC 20…AMP 43…ビームサンプリング素子 44…偏光モニタ
91…演算部 92…信号出力部 93…許容範囲設定部 94…報知部

Claims (3)

  1. レーザチャンバに設けられたウィンドウからレーザ光を出力するレーザ発振器と、
    前記レーザチャンバから出力されるレーザ光の偏光状態を検出する偏光モニタと、
    レーザ光の偏光状態を示す値のうち許容できる範囲を設定する許容範囲設定部と、
    前記偏光モニタで検出された偏光状態に基づいて偏光状態を示す値を算出し、その算出値と前記許容範囲設定部で設定された範囲の閾値とを比較する比較演算部と、
    前記比較演算部で算出された偏光状態を示す値が前記許容範囲設定部で設定された範囲外である場合に、前記レーザチャンバから出力されるレーザ光の偏光状態が許容範囲外になったことを示す信号を出力する信号出力部と、
    を有するレーザチャンバのウィンドウ劣化判定装置。
  2. 前記偏光状態を示す値は、偏光純度または偏光方位角の少なくとも一方であり、前記閾値は、偏光純度の下限値または偏光方位角の範囲の境界値の少なくとも一方である請求項1記載のレーザシステムの劣化判定装置。
  3. レーザ光の偏光状態を示す値のうち許容できる範囲を設定する許容範囲設定工程と、
    レーザチャンバに設けられたウィンドウからレーザ光を出力するレーザ出力工程と、
    前記レーザチャンバから出力されるレーザ光の偏光状態を検出する偏光モニタ工程と、
    前記偏光モニタ工程で検出された偏光状態に基づいて偏光状態を示す値を算出し、その算出値と前記許容範囲設定工程で設定された範囲の閾値とを比較する比較演算工程と、
    前記比較演算工程で算出された偏光状態を示す値が前記許容範囲設定工程で設定された範囲外である場合に、前記レーザチャンバのウィンドウが劣化したものと判定するウィンドウ劣化判定工程と、
    を有するレーザチャンバのウィンドウ劣化判定方法。
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