JP2007214136A - スパークプラグ - Google Patents

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Abstract

【課題】 中心電極の熱引きが良好で電極消耗に対する耐久性が良好であり、さらには、耐汚損性に優れてしかもチャンネリングが生じにくいスパークプラグを提供する。
【解決手段】 電極母材2nがNiを主成分とし、電気抵抗率の温度係数が負となる酸化物半導体を形成可能な合金成分(例えばCr)を含有したNi合金にて構成された中心電極2を用いることにより、絶縁体3の先端部表面に電極母材成分に由来した侵食抑制層が形成されやすくなり、沿面火花放電に伴う絶縁体3の先端部表面の侵食(チャンネリング)を効果的に抑制することができる。さらに、電極母材2nの構成金属として熱伝導率が17〜30W/m・Kのものを採用することにより、電極の熱引き性能が良好となり、電極消耗に対する耐久性を大幅に改善することが可能となる。
【選択図】 図2

Description

この発明は、内燃機関用のスパークプラグに関するものである。
近年、エンジン性能の改良に伴い、スパークプラグには更なる長寿命化や耐汚損性能向上等が求められている。例えば、耐汚損性を改善した内燃機関用のスパークプラグとして沿面放電型スパークプラグと呼ばれるものが知られている。これは、火花放電ギャップにて発生する火花が、常時あるいは条件により、絶縁体表面を経由した沿面放電形態にて伝播するように構成したものである。このうち、セミ沿面放電型スパークプラグと称されるものは、中心電極と、その周りを覆う絶縁体と、中心電極の側面と対向するように先端の発火面が配置された接地電極とを備える。そして、絶縁体の先端部は中心電極と接地電極の発火面との間(すなわち、火花放電ギャップ)に入り込む位置関係で配置されている。この種のスパークプラグは、絶縁体先端面の表面に沿う形態にて飛火する際には、接地電極の先端の発火面と絶縁体の表面との間が気中放電となる。
スパークプラグは、例えばプレデリバリ時のように電極温度が450℃以下の低温環境で長時間使用されると、いわゆる「燻り」や「かぶり」の状態となり、絶縁体表面がカーボンなどの導電性汚損物質で覆われて作動不良が生じやすくなる。しかしながら、上記沿面放電型のスパークプラグによれば、絶縁体表面を這う形で火花放電が生ずるため、汚損物質が絶えず焼き切られる形となり、平行電極型のスパークプラグと比べて耐汚損性が向上する。
ところで、沿面放電型のスパークプラグでは、絶縁体の表面を這う火花が頻繁に発生するため、絶縁体の表面が溝状に削られる、いわゆるチャンネリングが生じやすくなることが知られている。チャンネリングが進行すると、スパークプラグの耐熱性が損なわれたり、あるいは信頼性が低下するなどの不具合が生じたりしやすくなる。このようなチャンネリングは、高速あるいは高負荷運転時に特に生じやすい。近年はエンジンの高出力化に伴い、さらに耐久性に優れたスパークプラグが求められており、チャンネリングの防止ないし抑制に対する要求も厳しくなってきている。
また、スパークプラグの中心電極の材質としては、耐熱性を向上させる観点からNi基耐熱合金が使用されることがある。しかしながら、Ni基耐熱合金は、CrやFe等の副成分を比較的多量に含有するため、組成によっては熱伝導率が相当低くなる。その結果、電極の熱引き性能が低下して、電極消耗あるいは電極に形成された貴金属発火部の消耗が加速される。そして、高速高負荷運転時など電極温度の上がりやすい使用環境下では、早期に寿命が尽きてしまいやすい問題がある。
本発明の課題は、中心電極の熱引きが良好で電極消耗に対する耐久性が良好であり、さらには、耐汚損性に優れてしかもチャンネリングが生じにくいスパークプラグを提供することにある。
課題を解決するための手段及び発明の効果
上記の課題を解決するために、本発明に係るスパークプラグの第一の構成は、
中心電極と、
該中心電極の外側に配置される絶縁体と、
中心電極の先端部との間に火花放電ギャップを形成するとともに、当該火花放電ギャップにて絶縁体の先端部表面に沿う沿面火花放電が可能となるように、絶縁体の先端部及び中心電極先端部との間の位置関係が定められた接地電極とを備え、
中心電極の少なくとも表層部を形成する電極母材が、電気抵抗率の温度係数が負となる酸化物半導体(negative temperature coefficient type oxide semiconductor:以下、NTC酸化物半導体ともいう)を形成しうる元素(以下、NTC系元素という)を副成分として含有し、かつ熱伝導率が17〜30W/m・KであるNiを主成分としたNi合金にて構成したことを特徴とする。
上記NTC系元素を副成分として含有する熱伝導率が上記範囲内のNi合金よりなる中心電極を用いることにより、絶縁体先端部表面に、侵食抑制層となるNTC酸化物半導体を含有した層が形成されやすくなり、沿面火花放電に伴う絶縁体先端部表面の侵食を効果的に抑制することができるとともに、電極の熱引き性能が良好となり、電極消耗に対する耐久性を大幅に改善することが可能となる。
なお、上記のような侵食抑制層は、火花放電ギャップにおける放電電圧の低下の効果を奏することがあり、これを利用すれば、結果として電極(あるいは電極に形成された貴金属耐消耗部)の消耗抑制と、さらなるチャンネリング軽減とを達成することが可能となる。また、沿面火花放電が可能となるためには、中心電極と接地電極との最短距離よりも絶縁体と接地電極との最短距離を短くするとよい。
上記本発明の第一の構成においては、中心電極を取り囲む形態で、接地電極が2つ以上配置することができる。これにより、絶縁体の周囲において火花発生位置を分散させることができるため、深いチャンネリングの発生を抑制する観点においてより有利となる。
また、上記本発明のスパークプラグの第一の構成は、以下のような態様を有するものとすることができる。すなわち、接地電極が中心電極の周囲に複数配置され、かつ、それら複数の接地電極のうちの1以上は、その端面と中心電極の側面とが絶縁体の先端部の少なくとも一部を間に挟んで対向して配置されることにより、該中心電極の側面との間にセミ沿面放電ギャップを形成するセミ沿面接地電極とされる。この構成においては、接地電極の端面と中心電極の側面とが絶縁体の先端部の少なくとも一部を間に挟んで対向して配置されることから、絶縁体表面での沿面火花放電頻度が高くなり、耐汚損性に特に優れたものとなる。また、このことは、従来のスパークプラグの構成においては、絶縁体のチャンネリング防止の観点からは必ずしも望ましいことではなかったが、本発明では前記した通り、上記NTC系元素を副成分として含有するNi合金よりなる中心電極を用いているから、沿面火花放電頻度が高いにも拘わらず耐チャンネリング性に優れたスパークプラグを実現できる。また、絶縁体の先端面から接地電極の端面の、後方側の縁までの距離E、つまり、中心電極の軸線方向における、接地電極(セミ沿面接地電極)の先端面と、絶縁体の先端部側面との重なり寸法Eを、0.2mm以上確保することが望ましい。これにより、絶縁体3による放電路のブロック効果ひいてはチャンネリング抑制効果が一層顕著となる。
上記態様においては、複数の接地電極のうちの1つが、その先端部側面を中心電極の先端面と平行に対向させて平行気中放電ギャップを形成する平行接地電極とすることもできる。この態様では、いわゆる平行電極型スパークプラグと同様の平行気中放電ギャップが平行接地電極の側面と中心電極の先端面との間に形成され、他方、セミ沿面放電ギャップが、セミ沿面接地電極の先端面と中心電極の側面との間に形成される。平行気中放電ギャップの大きさをセミ沿面放電ギャップよりも大きくしておくと、通常は平行気中放電ギャップにて飛火しやすく、絶縁体の先端面が汚損した場合にはセミ沿面放電ギャップで飛火しやすくなる。平行気中放電ギャップは火花の集中度が高く、突出した位置での飛火頻度が高いため着火性をより高めることができる。
次に、本発明の第一の構成に係るスパークプラグは、以下のような態様を有するものとすることもできる。すなわち、中心電極の先端部が、絶縁体から突出して配置されるとともに、その絶縁体の外側を覆う筒状の主体金具が設けられる。接地電極は、基端側が主体金具の端部に接合され、先端側は中心電極側に曲げ返されて、その端面が、突出する中心電極の先端部側面と対向するように配置されて第一ギャップを形成する一方、接地電極の先端部内側面が、絶縁体の先端面と対向して第一ギャップよりも小さい第二ギャップを形成する。この態様は間欠沿面放電型とも称され、汚損がそれほど進行しない場合には、着火性の観点においてより有利な第一ギャップで火花放電する一方、汚損が進行すると絶縁体表面の抵抗率が低下し、第二ギャップで火花放電するようになる。つまり、絶縁体の表面における汚損の進行がいわば自動検出され、第二ギャップでの間欠的な飛火が生じて汚損堆積物が焼き切られる。これにより、通常飛火時の着火性を損なうことなく、耐汚損性にも優れた沿面火花放電型スパークプラグが実現される。また、火花が常時沿面放電形態となるわけではないので、チャンネリング抑制の観点において有利である。
該態様においては、中心電極の軸線方向において該中心電極の先端面側を前方側、これと反対側を後方側として、軸線方向において、接地電極の端面の、後方側の縁と絶縁体の先端面との間の距離hが0.3mm以上に調整されていることが望ましい。該hは、沿面放電形態となる第二ギャップg2の大きさを意味するが、これをある程度大きく設定することで、耐チャンネリング性をより良好なものとすることができる。ただし、hが0.7mmを超えると、第二ギャップにおける放電電圧が高くなり過ぎて、間欠沿面放電型スパークプラグとしての機能が不十分となる場合があるので、hは0.7mm以下とするのがよい。なお、該hは、より望ましくは0.4mm以上の範囲で調整するのがよい。
上記第一の構成のような沿面放電型のスパークプラグにおいては、中心電極の外径Dと、該中心電極が挿通される貫通孔の内径dとの差d−Dが、絶縁体の先端位置から軸線方向に5mm離間した位置において0.07mm以上確保されていることが望ましい。以下にその理由を説明する。
侵食抑制層の形成の要因については、本発明者らは以下のように推測している。すなわち、火花放電の発生により火花放電ギャップ近傍の気体分子がイオン化されるとともに、そのイオンがギャップ間の電界勾配により加速されて電極の発火面に衝突し、その金属成分をスパッタリングする。スパッタリングされた金属成分は直ちに酸化物となって絶縁体の表面に堆積し、侵食抑制層となるものと考えられる。
ここで、スパッタリングされた金属成分の酸化により生ずる反応生成物は、必ずしも全てが侵食抑制層形成に寄与するのではなく、一部はダストとなって、これが中心電極と絶縁体貫通孔との隙間に堆積することがある。また、削られた侵食抑制層のダストが上記の隙間に入り込んで堆積することは、同様に生じうる。いずれにしろ、隙間量が小さいと、発生したダストが堆積して隙間に高密度に詰まりやすい。この状態で、例えば冷熱サイクルが繰り返されると、金属製の中心電極とセラミック製の絶縁体との膨張差によって、絶縁体に割れが生じる等の不具合を生じることもありうる。
しかしながら、本発明者等が鋭意検討した結果、中心電極の外径と絶縁体貫通孔の内径との径差にて表した隙間量を0.07mm以上に確保することで、隙間にダストが高密度に詰まることが抑制されることが判明したのである。つまり、侵食抑制層形成に伴い発生するダストが、中心電極と絶縁体との隙間に入ったとしても冷熱サイクルが繰り返された場合における絶縁体の割れを防止できる。なお、絶縁体の先端位置から軸線方向に5mm離間した位置にて隙間量を規定している理由は、以下の通りである。すなわち、スパークプラグは通常、火花放電ギャップ、すなわち絶縁体の先端が下向きとなるようにシリンダヘッドに取り付けられる。侵食抑制層形成に伴い発生するダストは、燃焼圧力を受けて隙間内を下側から上向きに押し込まれる形で侵入する。一方、沿面放電火花は絶縁体の内部にまで回り込んでくる。このため、火花の回りこんできた範囲で中心電極が消耗する。その結果、中心電極の消耗が起こりにくい位置であって、加熱冷却の影響も受けやすい位置、すなわち絶縁体の先端からの距離にして5mm程度の位置におけるダストが、冷熱サイクルの影響を受けやすくなるのである。一方、侵食抑制層が沿面放電火花により部分的に削られて、チャンネリングと同様の現象が生ずることもある。なお、上記本発明のスパークプラグでは、削られた侵食抑制層は、スパッタリングされた金属成分の酸化により生ずる反応生成物が新たに堆積して回復するので、絶縁体部分にまでチャンネリングが進行することは生じにくい。
なお、絶縁体への沿面放電火花のアタックの強さ、ひいてはチャンネリングの生じやすさの傾向は、電極への火花放電の電圧印加極性の相違によっても影響を受ける。特に、中心電極側が正となるように火花放電の電圧を印加する方が、負となるように電圧印加する場合よりもチャンネリングをより生じにくいので有利である。中心電極側が負となる極性にて電圧印加する場合は、絶縁体の先端から軸線方向に5mm離間した位置における中心電極の外径Dと、該中心電極が挿通される貫通孔の内径dとの差d−Dは、上記の通り0.07mm以上とすることが望ましい。逆に、正となる極性にて電圧印加する場合は、そのチャンネリング抑制効果により発生するダスト量も少ないので、径差d−Dを0.03mm以上(望ましくは0.04mm以上)とすることも可能である。
次に、中心電極の電極母材をなすNi合金は、上記NTC系元素として、例えば、Cr、Fe、Cu、Zn、Ti、Ru、V、Co、Nb及びTaを本発明に好適に採用することができる。これら成分は、前記NTC酸化物半導体を形成したときのイオン半径が比較的小さく、アルミナ製の絶縁体表面への拡散浸透性に優れ、ひいては形成される侵食抑制層の密着力を向上させ、絶縁体に対する侵食抑制効果さらにはチャンネリング防止効果を安定的に持続させる上で効果がある。
NTC系元素としては、特にCr、Fe及びCuの少なくともいずれかを採用したとき、上記の効果が顕著である。この場合、電極母材の構成金属(Ni合金)中に特にCrが含有されていること、具体的にはNi合金中のCrの含有量を1.5〜9質量%の範囲で調整することが望ましい。Cr含有量が1.5質量%未満では放電電圧低下の効果を達成できなくなる場合がある。また、沿面放電型スパークプラグに適用する場合は、絶縁体表面に形成される層の侵食抑制機能が不十分となり、チャンネリング防止効果が不十分となる。また、Cr含有量が9質量%を超えると、熱伝導率を17W/m・K以上にすることが困難となる場合がある。なお、CrとFeとは、Ni合金の高温強度を向上させる効果も有し、電極の高温耐久性確保と絶縁体のチャンネリング防止とを同時に図ることが出来る点で、他のNTC系元素よりも有利であるといえる。
次に、電極の熱引き性能の改善効果は、チャンネリングが問題となる沿面放電型のスパークプラグとともに、正常時には絶縁体表面での沿面放電を生じない形態のスパークプラグ、例えば接地電極の側面が中心電極の先端面に対向した、いわゆる平行電極型スパークプラグにおいても発揮されうる。
すなわち、本発明に係るスパークプラグの第二の構成は、貴金属又は該貴金属を主体とする複合材料で構成された消耗部を先端部に有する中心電極と、
該中心電極の外側に配置される絶縁体と、
自身の先端部側面を中心電極の先端面と平行に対向させて平行気中放電ギャップを形成する接地電極と、
中心電極の少なくとも表層部を形成する電極母材が、Niを主成分として副成分としてのCrを1.5〜9質量%含有し、かつ熱伝導率が17〜30W/m・KであるNi合金にて構成したことを特徴とする。この構成においては、絶縁体表面に形成される層は、必ずしもチャンネリング等の侵食の抑制には関与しない(本明細書ではこの場合も該層を便宜的に侵食抑制層と称する場合がある)。
上記の構成において、電極母材をなすNi合金中のCrの含有量が1.5質量%未満になると、電極母材の耐酸化性が不足して、中心電極の先端部に形成された貴金属からなる耐消耗部と電極母材との接合界面(例えば溶接界面)で、電極母材の酸化に起因したクラックが発生しやすくなり、耐消耗部の剥離が生じやすくなる。他方、Crの含有量が9質量%を超えると、絶縁体表面に対しNTC半導体酸化物を含有した層の堆積量が多くなりすぎ、絶縁体表面の抵抗率が低下して正規の火花放電ギャップ以外の場所での飛火、例えば絶縁体側面と主体金具内周面との間での飛火(いわゆる横飛火)が生じやすくなる。
上記の2つのスパークプラグの構成において、電極母材の構成金属(Ni合金)の熱伝導率を17W/m・K以上に限定している理由は、熱伝導率が17W/m・K未満では電極の熱引き性能が悪化するので電極消耗に対する耐久性を確保できないためである。また、熱伝導率を30W/m・K以下に限定している理由は、熱伝導率を30W/m・Kを超えて大きくしようとすると、Ni合金中のNi含有量を増やさざるを得ず、結果として絶縁体表面に形成される電極母材に由来した層の、放電電圧低下効果あるいは絶縁体侵食抑制効果が不足することにつながるためである。このような観点から、Ni合金中のCrの含有量は上記の範囲にて設定することが望ましく、該Crの含有量は、2〜5質量%の範囲で設定することがより望ましい。
電極母材の材質としては、Feを1〜5質量%含有するものを、より好ましく使用できる。このような材質を使用することにより、形成される侵食抑制層の絶縁体侵食抑制効果あるいは放電電圧低下効果を一層向上させることができる。形成される侵食抑制層はFeとCrとの両方を含有したものとなる。Ni合金中のFeの含有量が5質量%を超えると、熱伝導率が前記の範囲外のものとなりやすくなり、1質量%未満ではFeを添加する効果が十分に発揮されなくなる。なお、FeとCrとの合計含有量は、2〜9質量%とするのがよい。
なお、電極母材を構成するNi合金は、Crを必須としてFeとCuとの少なくとも一方をさらに含有するものを用いることが望ましい。この場合、侵食抑制層も、Crを必須としてFeとCuとの少なくとも一方をさらに含有するものとなる。Crは電極母材の耐酸化性確保と侵食抑制層の安定化のために必要な元素であり、Fe及びCuは放電電圧の低下に有効に作用する。この場合、副成分としてのFeを1質量%以上、同じくCr1.5質量%以上含有することがより望ましい。Feの含有量が1質量%未満では放電電圧の低下効果が乏しくなることから、容量放電電圧が上昇しチャンネリング抑制効果を十分に期待できなくなる場合がある。また、Crの含有量が1.5質量%未満では電極母材の耐酸化性と侵食抑制層の安定化効果とを十分に確保できなくなる場合がある。この場合、FeとCrとは合計で2.5〜9質量%含有されていることが望ましい。
なお、電極母材を構成するNi合金の酸化抑制の観点においては、Crの含有量をFeの含有量よりも高くしておくことが望ましい(Feの含有量は0質量%を含むが、前記した通り、放電電圧の低下を図る観点からは含有されていることが望ましい)。この場合、より望ましくは、Crの含有量をWCr(質量%)、Feの含有量をWFe(質量%)として、WCr/WFeが2以上であるのがよい。
次に、中心電極の電極母材を構成するNi合金は、副成分としてRu、Zn、V、Co、Nb、Ta及びTiの1種以上の元素を含有するものを使用した場合においても、絶縁体表面への侵食抑制層の形成により、チャンネリング抑制効果を同様に達成することができる。また、本発明のスパークプラグの第三の構成は、
中心電極と、
該中心電極の外側に配置される絶縁体と、
中心電極の先端部との間に火花放電ギャップを形成するとともに、当該火花放電ギャップにて絶縁体の先端部表面に沿う沿面火花放電が可能となるように、絶縁体の先端部及び中心電極先端部との間の位置関係が定められた接地電極とを備え、
中心電極の少なくとも表層部を形成する電極母材が、Niを主成分とし、副成分としてRu、Zn、V、Co、Nb、Ta及びTiの1種以上の元素を含有するNi合金にて構成したことを特徴とする。
上記本発明の第一、第二及び第三の各構成のスパークプラグにおいては、電極母材の熱伝導率を17W/m・K以上となすために、電極母材を構成するNi合金中のNi含有量を80質量%以上とするとよい。また、侵食抑制層形成によるチャンネリング抑制効果を顕著なものとするために(第一および第三の構成)、あるいは電極の熱引き性能の改善効果を顕著なものとするために(第二の構成)、電極母材を構成するNi合金中の副成分の合計含有量は1.5質量%以上に設定することが望ましい。他方、該副成分の合計含有量は、中心電極の耐火花消耗性を十分に確保する観点から、10質量%以下に留めることが望ましい。
以下、本発明の第一〜第三の各構成のスパークプラグに共通に付加可能な要件について説明する。まず、中心電極は、電極母材中に、該電極母材よりも熱伝導率の高い材質にて構成された放熱促進用金属部が軸線方向に埋設された構造を有するもとして構成できる。これにより、温度上昇しやすい中心電極の先端部の熱引きを効果的に促進でき、ひいては電極消耗の抑制によりスパークプラグの長寿命化を図ることができる。この場合、軸線方向において、中心電極の先端面の位置する側を前方側、これと反対側を後方側とし、絶縁体の先端面を基準位置としてそれよりも前方側を+、後方側を−としたとき、放熱促進用金属部の先端が、軸線方向において該絶縁体の先端面に対し±1.0mmの範囲内に位置するように設定することが望ましい。放熱促進用金属部の先端位置が、基準位置から−1.0mmを超えて絶縁体内部に引っ込んだときは、放熱促進用金属部による中心電極の先端部の熱引き改善効果が不十分となり、電極消耗を早めることにつながる場合がある。他方、放熱促進用金属部の先端位置が、基準位置から+1.0mmを超えて絶縁体先端面より突出した場合、電極母材の消耗が進行したとき、電極先端部の耐熱性が低下して、急速に寿命に至る不具合につながる場合がある。
また、上記構成においては、絶縁体の先端面から軸線方向において後方側に0.5mm離間した位置において、電極母材の軸線に関する半径方向の肉厚が、その位置での中心電極の外径の30%以上確保されていることが望ましい。このようにすることで、温度上昇しやすい中心電極の先端部の熱引きを放熱促進用金属部により効果的に促進しつつ、該位置でのセミ沿面ギャップでの飛火に伴う電極消耗に対する耐久性も十分に確保することができる。
また、接地電極に関しても、その表層部をNi又はNi合金からなる電極母材とし、かつ、その内部に該電極母材よりも熱伝導率の高い材質にて構成された放熱促進用金属部を、電極長手方向に埋設することも可能である。これにより、接地電極の熱引きも促進することができ、消耗に対する耐久性を高めることができる。この場合、接地電極において、放熱促進用金属部の先端が、該接地電極の先端面から0.5mm以上1.0mm以下の範囲に位置するように設定することが望ましい。なお、中心電極あるいは接地電極に内蔵する放熱促進用金属部は、Cu又はCu合金にて構成することが、優れた放熱特性を安価に実現する上で有効である。
次に、接地電極及び/又は中心電極の、火花放電ギャップを形成する部分は、貴金属又は該貴金属を主体とする複合材料で構成された耐消耗部とすることができる。これにより、電極消耗による火花放電ギャップの拡大を効果的に抑制することができ、スパークプラグの長寿命化を図ることができる。耐消耗部に使用する貴金属としては、Ir、Pt及びRuの少なくともいずれかを主成分とするものが、好適に使用可能である。このような耐消耗部は、接地電極及び/又は中心電極に対し、レーザービーム溶接、電子ビーム溶接及び抵抗溶接のいずれかにより接合することにより、容易に形成可能である。
以下、本発明の、いくつかの実施の形態を図面に示す実施例により説明する。
図1に示す本発明の一例たるスパークプラグ1は、いわゆるセミ沿面放電型スパークプラグとして構成され、筒状の主体金具5、先端部が突出するようにその主体金具5に嵌め込まれた絶縁体3、その絶縁体3の内側に設けられた中心電極2、及び主体金具5に基端側が結合され、絶縁体3の先端部を間に挟んで中心電極2の側面と先端側が対向するように配置された接地電極4等を備えている。絶縁体3は、例えばアルミナあるいは窒化アルミニウム等のセラミック焼結体により構成され、図2に示すように、その内部には自身の軸方向に沿って中心電極2を嵌め込むための孔部(貫通孔)3dを有している。また、主体金具5は、低炭素鋼等の金属により円筒状に形成されており、スパークプラグ1のハウジングを構成するとともに、その外周面には、図1に示すように、スパークプラグ1を図示しないシリンダヘッドに取り付けるためのねじ部6が形成されている。なお、接地電極4は中心電極2の両側に各1ずつの計2つ設けられており、図2に示すようにそれぞれ端面(以下、発火面ともいう)4aが、中心電極2の先端部2aの側面2b(発火面)とほぼ平行に対向するように曲げて形成される一方、他端側は主体金具5に対して溶接等により固着・一体化されている。
絶縁体3は先端部3aが中心電極2の側面2bと接地電極4の発火面4aとの間に入り込む位置関係で配置されている。中心電極2の軸線O方向において該中心電極2の先端面側を前方側、これと反対側を後方側として、絶縁体3の先端面3eは、接地電極4の端面4aの、後方側の縁4fよりも前方側に位置している。一方、中心電極2の先端面は、絶縁体3の先端面3eよりも所定高さだけ突出して配置されている。
図1に戻り、絶縁体3の孔部3dには、その一方の端部側に端子金具13が挿入・固定され、同じく他方の端部側に中心電極2が挿入・固定されている。また、該貫通孔3d内において端子金具13と中心電極2との間に抵抗体15が配置されている。この抵抗体15の両端部は、導電性ガラスシール層16,17を介して中心電極2と端子金具13とにそれぞれ電気的に接続されている。また、端子金具13は低炭素鋼等で構成され、表面には防食のためのNiメッキ層(層厚:例えば5μm)が形成されている。抵抗体15は、ガラス粉末、セラミック粉末、金属粉末(例えば、Zn、Sb、Sn、Ag及びNiの1種又は2種以上を主体とするもの)、非金属導電物質粉末(例えば無定形カーボンないしグラファイト)及び有機バインダ等を所定量配合し、ホットプレス等の公知の手法により焼結されるものである。
次に、中心電極2は、電極の表層部分を構成する電極母材2n(この実施例では熱引き改善のために電極中心部に挿入され、CuあるいはCu合金にて構成された、放熱促進用金属部2mを除いた部分)が、Niを主成分としてCrを含有し、かつ熱伝導率が17〜30W/m・Kである金属にて構成されている。電極母材2nの構成金属は、Niを例えば80質量%以上含有し、Crを1.5〜9質量%(望ましくは2〜5質量%)含有するもの、あるいはFeを1〜5質量%含有し、FeとCrとを合計で2〜9質量%含有するものを使用することができる。他方、接地電極4も中心電極2と同様の材質により構成することができるが、これに限られるものではなく、例えばNiを主成分とするものであれば上記の範囲外の組成を有するNi基金属を使用することもできる。
以下、スパークプラグ1の作動について説明する。
スパークプラグ1はそのねじ部6(図1)においてガソリンエンジン等の内燃機関に取り付けられ、燃焼室に供給される混合気への着火源として使用される。該スパークプラグ1は、例えば、中心電極2側が負、接地電極4側が正となるように放電用高電圧が印加される。これにより、図2において、接地電極4の発火面4aと中心電極2の先端部2aの側面(発火面)2bとの間で放電により火花が発生し、混合気に着火を行なう。なお、このスパークプラグは、火花が絶縁体3の先端部表面に沿う経路で伝播するセミ沿面放電型スパークプラグとして機能する。接地電極4は中心電極2の周囲に複数配置され、それら複数の接地電極4の1以上のもの(ここでは全て)が、端面が絶縁体3の先端部を間に挟んで中心電極2の側面と対向する形で配置されている(つまり、これら接地電極4は、中心電極2の側面との間にセミ沿面放電ギャップを形成するセミ沿面接地電極として構成されている)。
図2に示すように、本実施例のスパークプラグ1では、中心電極2の先端部2aが絶縁体3の先端面3aから突出していることで、その側面2bと接地電極4の発火面4aとの間には第一ギャップg1が、また、絶縁体3の外周面と発火面4aとの間には第二ギャップg2が形成されている。
そして、本実施例のスパークプラグ1においては、中心電極2及び接地電極4の、少なくとも発火面(2b,4a)を構成する電極母材が、Fe、Cr及びCuの少なくとも1以上が絶縁体侵食抑制成分として含有されている。このようなスパークプラグを内燃機関に取り付け、一定以上の高速あるいは高負荷の条件にて運転すると、図2に示すように、火花放電に伴い絶縁体3の先端部表面に、中心電極2の電極母材2nの構成成分(具体的にはCr及びFeを含有する)に由来した侵食抑制層30が形成される。その結果、例えば第二ギャップg2で飛火する沿面放電時においても、侵食抑制層30により絶縁体3の表面が保護され、チャンネリングの進行が効果的に防止ないし抑制される。
火花放電に伴い形成される侵食抑制層30は、Fe、CrあるいはCuをカチオン成分として含有する酸化物系化合物、具体的には前記したNTC酸化物半導体(例えばFeやCrなど)を含有するものとすることができる。これにより、チャンネリング防止効果は一層顕著なものとなる。これらのいずれかの元素を含有した酸化物系化合物を主体とする侵食抑制層30は、電気的には半導体性のものとなりやすく、電流分散効果によりチャンネリング防止性能が高められるものと推測される。また、火花放電ギャップにおいて放電電圧の低下が起こると、火花放電時の容量放電電流が低下するために、火花によるアタックが弱くなる。このため、電極の消耗抑制やチャンネリングの軽減にも寄与するものと推測される。
上記のような侵食抑制層30が形成される理由については、本発明者らは以下のように推測している。すなわち、火花放電Sの発生により、火花放電ギャップg1,g2近傍の気体分子がイオン化され、電極2,4間に形成される電界勾配によりそのイオンが発火面に衝突して、これを形成している金属成分をはじきとばす。火花放電ギャップg1,g2が配置される燃焼室内は通常、燃焼ガスにより高温の酸化雰囲気になっているので、はじきとばされた金属成分は直ちに酸化物となって絶縁体3の表面に堆積し、侵食抑制層30となる。これは、発火面を形成する金属材料をターゲットとした、反応性スパッタリングと類似の機構であるといえる。なお、この実施例では、中心電極側を負としており、正イオンの発生時には中心電極2側の発火面が主に侵食抑制層30の成分源として機能すると考えられる。しかしながら、電極2,4が高温となる高速あるいは高負荷運転時においては、発火面の金属材料の部分的な溶融・飛散が起こることも考えられ、これが酸化されて絶縁体表面に堆積する、という可能性もありうる。この場合は、図2において接地電極4側の発火面4aも、侵食抑制層30の成分源として機能しうる。なお、はじきとばされた金属成分の一部が、酸化されずに金属状態のまま侵食抑制層30に取り込まれることもありうる。これは、侵食抑制層30の電気抵抗率を下げ、電流拡散によるチャンネリング防止効果を図る上で、より有利となる場合がある。
なお、上記のような侵食抑制層30が顕著に形成されるか否かはスパークプラグの使用条件、具体的には、発火面4a,2bの温度(例えば中心電極2の先端部2aあるいはその付近の温度)等によって定まる。いずれにしろ、高速あるいは高負荷運転時のように、発火面4a、2bの温度が上昇しやすい環境下では、例えば発火面2bのスパッタリング的な蒸発が起こりやすくなり、侵食抑制層30の形成も促進される。つまり、チャンネリングの起こりやすい条件となるほど、それを防止ないし抑制する侵食抑制層30の形成も進むので、結果として非常に優れたチャンネリング防止効果が達成されるわけである。なお、侵食抑制層30の形成が促進される発火面の温度条件は、燃焼ガスの組成や空燃比等の影響も受けるので一概にはいえないが、概ね500℃以上と考えられる。
ここで、図2に示すように、中心電極2の外径Dと、該中心電極2が挿通される貫通孔3dの内径dとの差d−Dは、絶縁体の先端位置から軸線方向に測定した距離Qが5mmの位置において0.07mm以上確保されていることが望ましい。なお、中心電極2の先端部2aが基端部2cよりも小径となるように縮径されている場合、その基端部2cの外径D1と貫通孔3dの内径dとの差d−D1が、0.07mm以上確保されていればよい。
図2に示すように、蒸発した電極金属成分の酸化により生ずる反応生成物は、必ずしも全てが侵食抑制層形成に寄与するのではなく、一部はダストとなって、これが中心電極2と貫通孔3dとの隙間Kに堆積することがある。他方、既に形成されている侵食抑制層30が沿面放電火花により部分的に削られて同様のダストJを生ずることもありうる。この場合、隙間量が小さいと、発生したダストが堆積して隙間Kに高密度に詰まり、例えば冷熱サイクルが繰り返されたときに、中心電極2と絶縁体3との膨張差によって絶縁体3に割れが生じたりする不具合を生じることもありうる。しかしながら、d−D1が0.07mm以上に確保されていることで、隙間KにダストJが高密度に詰まることが抑制され、冷熱サイクルが繰り返された場合でも絶縁体3に割れ等が生じにくくなる。ただし、d−D1が0.3mmよりも大きくなると、耐熱性が低下したり、中心電極2の偏心組付けが発生しやすくなったりすることがあるので、d−D1は0.3mm以下とするのがよい。なお、d−D1は、より望ましくは0.07〜0.15mmとなっているのがよい。
なお、中心電極2側が正となる極性にて電圧印加する場合は、発生するダスト量が少ないためd−D1を狭くすることも可能となる。例えば、0.03mm以上(望ましくは0.04mm以上)とすることができる。
なお、スパークプラグの耐チャンネリング特性を高めるためには、絶縁体3に対する沿面放電火花のアタックが過剰とならない作動環境を形成すること、例えば電極に瞬間的に過剰な放電電圧が作用したり、あるいは1ケ所に放電が集中したりする傾向をなるべく抑制し、これを分散させることが有効である。前者に属する方策としては、例えば、図1の抵抗体15の電気抵抗値を、端子金具13と中心電極2との間で測定した電気抵抗値が2kΩ以上(望ましくは5kΩ以上)となるように調整するのがよい。抵抗体15の電気抵抗値は、例えばその組成や寸法の変更により調整が可能である。
他方、後者に属する方式としては、接地電極4の数を1つとするのではなく、接地電極4を2以上設けることが有効である。特に、接地電極4の数を3以上とすることで、耐チャンネリング性能の向上が顕著となる。
また、図2において、中心電極2の先端部の軸断面径D2は、これを大きくする方が、放電路が分散しやすいので有利といえる。この場合、D2は2.0mm以上確保されていることが望ましい。一方、中心電極2の先端部の軸断面径D2は、これを小さくするほど中心電極2の先端部2aの体積が減少して、着火により生じた炎の熱を奪いにくくなり、スパークプラグの着火性が向上する場合がある。また、火花発生により清浄化すべき中心電極2の先端部2aあるいは絶縁体3の先端部の表面積も減少することから、スパークプラグの耐汚損性を向上させることができる。そして、両者のバランスを考慮すれば、上記中心電極の先端部の軸断面径を0.6〜2.2mmの範囲で調整するのがよい。軸断面径が0.6mm未満になると、チャンネリング抑制効果が不十分となる場合がある。一方、先端部の軸断面径が2.2mmを超えると、耐汚損性が十分に確保できなくなる場合がある。
また、上記のスパークプラグ1は、絶縁体3の先端面が、接地電極4の端面(発火面)4aの後方側の縁4fよりも前方側に位置するように構成されている。これにより、スパークプラグの耐チャンネリング性がさらに向上する。理由としては、図2において接地電極4の端面の、後方側の縁4fを端とする放電路は、絶縁体3によってブロックされる形となるので、気中型放電が主体となる前方側の縁4eからの放電が起こりやすくなることが考えられる。
例えば、図2に示すように、中心電極2の軸線方向Oにおいて、絶縁体3の先端面3eから接地電極4の端面4aの、後方側の縁4fまでの距離E、つまり、中心電極2の軸線(O)方向における、接地電極(セミ沿面接地電極)4の先端面と、絶縁体2の先端部側面との重なり寸法Eを0.2mm以上確保することが望ましい。他方、上記Eの値は、1.2mm以下とすることにより、接地電極の端面の後方側縁が放電路の端となっても、火花は絶縁体の表面を強くアタックしにくくなるので、スパークプラグの耐チャンネリング性を向上させる上で同様に有効となる。
また、軸線O方向において、中心電極2の先端面2aの位置する側を前方側、これと反対側を後方側とし、絶縁体3の先端面3eを基準位置としてそれよりも前方側を+、後方側を−としたとき、放熱促進用金属部2mの先端が、軸線方向において該絶縁体の先端面に対し±1.0mmの範囲内に位置するように設定されていることが望ましい。
他方、図2に示すように、中心電極2は、電極母材2n中に、該電極母材2nよりも熱伝導率の高い材質にて構成された放熱促進用金属部2mが軸線O方向に埋設された構造を有してなる。この場合、絶縁体3の先端面2aから軸線O方向において後方側に0.5mm離間した位置Pにおいて、電極母材2nの軸線Oに関する半径方向の肉厚λが、前記位置Pにおける中心電極2の外径の30%以上(例えば、位置Pでの中心電極2の外径が約2mmであれば0.6mm以上)確保されていることが望ましい。このようにすることで、温度上昇しやすい中心電極2の先端部の熱引きを放熱促進用金属部2mにより効果的に促進しつつ、該位置でのセミ沿面ギャップでの飛火に伴う電極消耗に対する耐久性も十分に確保することができる。なお、放熱促進用金属部2mはなるべく外径を大きく設定することが、熱引き効果を促進する上で有効であるが、この場合、放熱促進用金属部2mを全長にわたって太くすると、上記位置Pでの電極母材2nの厚さλを中心電極2の外径の30%以上確保できなくなる場合がある、そこで、該厚さλを上記の範囲に確保するために、放熱促進用金属部2mの先端部を縮径することが有効である。
他方、図2に一点鎖線で示すように、接地電極4についても、表層部をNi又はNi合金からなる電極母材4nとし、かつ、その内部に該電極母材4nよりも熱伝導率の高い材質にて構成された放熱促進用金属部4mを、電極長手方向に埋設することが可能である。これにより、接地電極4の熱引きも促進することができ、消耗に対する耐久性を高めることができる。この場合、接地電極4において、放熱促進用金属部4mの先端が、該接地電極4の先端面から0.5mm以上1.0mm以下の範囲に位置するように設定することが望ましい。放熱促進用金属部4mの先端が、該接地電極4の先端面から1.0mmを超えて離間すると、放熱促進用金属部4mによる接地電極4先端部の熱引き改善効果が不十分となる。他方、放熱促進用金属部4mの先端の、該接地電極4先端面からの距離が0.5mm未満に縮まると、電極母材4nの消耗が進行したとき、電極先端部の耐熱性が低下して、急速に寿命に至る不具合につながる。
なお、上記の放熱促進用金属部2mないし4mの材質は、Cu、Ag、あるいはそれらを主成分とする合金にて構成でき、特にCu又はCu合金は、熱伝導率がAgよりも多少劣る程度であって、Agよりもはるかに安価であり、耐熱性も比較的良好で加工性にも優れていることから、本発明に好適に使用できる。
次に、スパークプラグ1においては、図3に示すように、接地電極4及び/又は中心電極2の、発火面4a,2bの一部を含む部分を、貴金属又は該貴金属を主体とする複合材料で構成された耐消耗部とすることができる。これにより、電極消耗による火花放電ギャップの拡大を抑制でき、ひいてはより過酷な条件にてスパークプラグを使用した場合においても、着火性能を長期間良好に保つことができる。貴金属は、Ir、Pt及びRuの少なくともいずれかを主成分とするものを、特に好適に採用できる。例えば図3に示す例では、スパークプラグ1は、中心電極2の先端部2aにおいて、外周面(発火面)2bの軸線方向の中間位置に、帯状の耐消耗部40が形成されている。耐消耗部40の具体的な材質としては、Pt−Ni合金、例えばPtを主体としてNiを6質量%以上含有する合金を使用することができる。
耐消耗部40は、接地電極4及び/又は中心電極2に対し、レーザービーム溶接、電子ビーム溶接及び抵抗溶接のいずれかにより接合されたものとして構成できる。具体的には、例えば上記貴金属ないし複合材料で構成されたチップを溶接により固着して形成することができる。耐消耗部40を構成する上記材料は耐熱性と耐腐食性とに優れ、ひいては耐消耗部40の消耗を抑制してスパークプラグ1の耐久性を向上させることができる。また、放電に伴い溶融した飛沫等の再付着現象(発汗と称されることもある)も生じにくく、このような付着物による火花放電ギャップの短絡現象(いわゆるブリッジング)も生じにくい利点がある。なお、耐消耗部40は、中心電極2の先端面の縁部を含むように形成してもよい。
耐消耗部40は、例えば次のようにして形成することができる。すなわち、中心電極2となるべきNi製の電極素材の先端部に、溝(例えば台形状断面を有するもの)を周方向に沿って形成し、その溝に環状のPt部材(例えばPt線を環状に丸めたもの)を嵌め込んでかしめる。そして、電極素材を所定速度で回転させながら、レーザービームをPt部材に照射する。これにより、Pt部材と電極素材とが溶融してPt−Ni合金部(これが耐消耗部40となる)が形成される。なお、レーザービームの照射条件及びPt部材の寸法は、形成される上記Pt−Ni合金部中のNi含有量が15質量%以上となるように調整する。なお、耐消耗部40が中心電極2の先端面の縁部を含むように形成する場合は、先端面の周縁に上記Pt−Ni合金部に基づく発火面が露出するように、電極素材の先端部を切断、研磨あるいは切削等により除去するようにする。
なお、図3に示すように、耐消耗部40を中心電極2の外周面に形成する場合、該中心電極2の軸線方向Oにおいて、絶縁体3の先端位置に関してその両側に位置する領域にまたがらないように耐消耗部40を形成すること、すなわち、絶縁体3の先端面に対し、侵食抑制層形成成分であるFe及びCrを含有した、中心電極2の電極母材2nの金属材料面が臨む形となるように、耐消耗部40を形成することが望ましい。これにより、図3(c)に示すように、沿面放電火花が発生したときに、これが上記金属材料面に当たり、侵食抑制層の形成成分の供給、ひいては侵食抑制層30の形成が促進され、耐チャンネリング防止効果が向上する。
なお、図9(a)に示すように、中心電極3の先端面に円柱状の貴金属チップを重ね、その重なり面に沿って電極母材2nと貴金属チップとにまたがる全周レーザー溶接部106を形成することにより、該貴金属チップを耐消耗部105となすこともできる。ここで、全周レーザー溶接部106は、その少なくとも一部が絶縁体3の端面よりも軸線方向内側に引っ込んで位置していてもよい。
一方、図2のスパークプラグ1は、接地電極4の、先端部の端面4aの少なくとも一部を耐消耗部とすることもできる。上記耐消耗部の具体的な材質としては、前記した耐消耗部40と同様に、Pt−Ni合金、例えばPtを主体としてNiを15質量%以上含有する合金を使用することができる。耐消耗部を構成する上記材料は耐熱性と耐腐蝕性とに優れるため、接地電極4の先端部の、端面4aの消耗を抑制してスパークプラグ1の耐久性を向上させることができる。耐消耗部は、例えば上記金属ないし複合材料で構成されたチップを、端面にレーザー溶接又は抵抗溶接により固着して形成することができる。例えば、端面4aに凹部を作り、ここにチップを嵌め込んで境界部分に溶接部Wを形成することにより、耐消耗部を設けることができる。
なお、中心電極2側の耐消耗部40(図3)と、接地電極4側の耐消耗部4gとは、これらを双方ともに形成してもよいが、接地電極4側の消耗がそれほど問題にならない場合には、該接地電極4側の耐消耗部4gは特に設けず、中心電極2側の耐消耗部40のみを形成するようにしてもよい。なお、上記のスパークプラグ1は、上記と逆極性、すなわち中心電極2側が正となるように電圧印加を行ってもよい。
次に、上記スパークプラグ1では、図2に示すように、スパークプラグ1の使用時において、発火面2bあるいは4aを形成する金属材料に由来した侵食抑制層30を絶縁体表面に形成するようになっていた。他方、図3(b)に示すように、侵食抑制層31を、予め絶縁体3の表面に形成したスパークプラグ100の構成によっても、上記したスパークプラグ1と実質的に同じ効果が達成できる。この場合、侵食抑制層31は、カチオン成分がFe、Cr、Cu及びSnの少なくとも1種を含有する酸化物系半導体化合物を主体に構成することができる。上記のような酸化物系半導体化合物からなる侵食抑制層31は、例えば高周波スパッタリング、反応性スパッタリング、イオンプレーティング等の各種気相成膜法の他、金属アルコキシドの加水分解等により酸化物ゾルを調製し、これと絶縁体3に塗布・乾燥して焼成することにより酸化物被膜を得るゾル−ゲル法の適用も可能である。
この場合、中心電極2及び/又は接地電極4の材質は特に限定されないが、例えば上記と同様に、Fe、Cr及びCuの少なくとも1以上からなる成分を絶縁体侵食抑制成分として含有する金属材料にて構成することができる。火花放電に伴い、絶縁体3の先端部表面には、中心電極2の電極母材成分に由来するCrないしFeを含有する反応生成物32が、既に形成されている侵食抑制層31上に堆積する。これにより、侵食抑制層31の沿面放電による目減りが補われ、チャンネリング防止効果の持続性が高められる。
以上、本発明の実施の形態を、セミ沿面放電型スパークプラグを例にとって説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。以下に、いくつかの別の例を示す(スパークプラグ1との構成要件上の共通部分には同一の符号を付与して、詳細な説明は省略している)。例えば、図4は、絶縁体3の表面に接地電極104の内面側を接触させることにより、中心電極2との間の放電経路のほぼ全長にわたって沿面放電を生じさせるようにした、フル沿面放電型スパークプラグ200として構成した例である。
また、図5のスパークプラグ300では、絶縁体3の先端部が、中心電極2の先端部2aの側面2bと、接地電極4の先端面4aとの間(第一ギャップg1)に入り込まない形となっている。そして、中心電極2の先端部2aの外周面2bと接地電極4の先端面4aとの距離に対し、絶縁体3の先端面3eと、接地電極4の先端面4aの、後方側の縁4fとの距離が小さく設定されている(第二ギャップg2)。すなわち、中心電極2の先端部2aが、絶縁体3から突出して配置されるとともに、その絶縁体3の外側を覆う形で筒状の主体金具7が設けられている。接地電極4は、基端側が主体金具1の端部に接合される一方、先端側は中心電極3側に曲げ返され、その先端面4aが、突出する中心電極2の先端部2aの側面2bと対向するように配置されて第一ギャップg1を形成する一方、接地電極4の先端部の内側面が、絶縁体3の先端面3eと対向して第一ギャップg1よりも小さい第二ギャップg2を形成している。これは、絶縁体3の汚損が進行した場合に限って第二ギャップg2で火花放電するようにした、いわゆる間欠沿面放電型スパークプラグとよばれるタイプのものである。
この場合も、図6に示すように、前記した耐消耗部40と同様に、中心電極2に耐消耗部41あるいは42を設けることができる。図6(a)では、耐消耗部41は、中心電極2の先端縁を含む形で形成されている。他方、図6(b)では、耐消耗部42が、絶縁体3の貫通孔3d内に収まるように(すなわち、該中心電極2の軸線方向Oにおいて、絶縁体3の先端位置に関してその両側に位置する領域にまたがらないように)形成されている。
なお、図6は、間欠沿面放電型スパークプラグの中心電極2に耐消耗部42aを形成した例であるが、図2に一点鎖線で示すように、セミ沿面放電型スパークプラグ1においても、耐消耗部42を全く同様に形成できる。また、耐消耗部42とともに又は耐消耗部42に代えて、円盤状のチップを中心電極2の先端面に固着することにより、耐消耗部42fを形成することもできる。この溶接は、接合面外周縁に沿ったレーザー溶接あるいは電子ビーム溶接により形成できる。また、チップの主体となる金属がPtやRuである場合は抵抗溶接の採用も可能である。
また、以上の実施例のスパークプラグは、全ての接地電極がセミ沿面接地電極4とされていたが、本発明は、複数ある接地電極の一部が、必ずしも中心電極の側面に先端面が対向していない態様も包含する。その一例を図7(a)(正面図)及び(b)(側面図)に示している。このスパークプラグ400では、図6のスパークプラグ300等と同様に、絶縁体2の外側を覆う形で筒状の主体金具5が設けられる。また、基端側が主体金具5の端部に接合される一方、先端側は中心電極2側に曲げ返される形態の接地電極4,104が複数設けられる。そして、それら接地電極の1つ、すなわち接地電極104は、側面が中心電極2の先端面と略平行に対向するように配置される。一方、残余の接地電極4の少なくとも1つ(ここでは2つ)のものが、端面が中心電極2の側面と対向するように配置される。 つまり、複数の接地電極4,104の1つのものが、その先端部側面が中心電極2の先端面2aと平行に対向して平行気中放電ギャップgαを形成する平行接地電極104とされている。
上記の構成では、いわゆる平行電極型スパークプラグと同様の平行気中放電ギャップgαが接地電極104の側面と中心電極2の先端面との間に形成され、多極スパークプラグと同様のセミ沿面放電ギャップgβが、接地電極4の先端面と中心電極2の側面との間に形成される。ギャップgαの大きさをギャップgβよりも大きくしておくと、通常はギャップgαにて飛火しやすく、絶縁体3の先端面が汚損した場合にはギャップgβで飛火しやすくなる。平行電極型スパークプラグに形態の近いギャップgαは火花の集中度が高く(特に中心電極2側を負として電圧印加する場合)、着火性を高めることができる。この場合も、中心電極の外径Dと、該中心電極が挿通される貫通孔の内径dとの差d−Dが、絶縁体の先端位置から軸線方向に5mm離間した位置において0.07mm以上確保されていることが望ましい。なお、この実施例では、側面が中心電極2の先端面と対向するように配置される接地電極4は、その端面が絶縁体3の先端部を間に挟んで中心電極の側面と対向するように配置されている。すなわち、ギャップgβでの飛火形態は、図2等のスパークプラグ1と同様のセミ沿面飛火形態となる。
なお、ギャップgβでは、通常時でも全く飛火を起こさないというわけではなく、特に汚損を生じていない状況下でも少なからぬ飛火を生ずることがある。この場合、ギャップgβでの飛火は、絶縁体3の先端面におけるセミ沿面放電形態となるから、中心電極2は、絶縁体先端面に対応する位置における先端部側面での消耗を考慮しなければならない。そこで、該先端面に対応する位置における中心電極2の軸断面径D2’は、2.0mm以上確保されていることが望ましい。当該位置における軸断面径D2’は、これを大きくする方が、放電路が分散しやすいので、消耗抑制上有利だからである。
なお、中心電極2の先端部には、Ir、Pt及びRuの少なくともいずれかを主成分とする金属又は該金属を主体とする複合材料で構成された耐消耗部105が、環状の溶接部106にて接合されている。この溶接部106は、例えばレーザー溶接により形成されるものである。また、中心電極2の外周面には、図6(b)に示すのと同様の耐消耗部42が形成されている。さらに、中心電極2の内部には、CuあるいはCu合金にて構成された放熱促進用金属部2mが形成されている。溶接部106は、図9(b)に示すように、その少なくとも一部が絶縁体3の端面よりも軸線方向内側に引っ込んで位置していてもよい。
また、本発明は、上記のような沿面放電型のスパークプラグに限らず、平行電極型のスパークプラグにも適用可能である。図8のスパークプラグ450はその一例を示すもので、図7のスパークプラグ400から側面対向型の接地電極4を廃止した構成に相当する(スパークプラグ400と共通の部分には同一の符号を付与している)。また、中心電極2の外周面は発火面として機能しないから、スパークプラグ400における耐消耗部42は存在しない。中心電極2の電極母材2nは前述のCr及びFeを含有する材質にて構成されているので、このスパークプラグ450においても絶縁体2の先端面には、先の侵食抑制層と同様の成分からなる層が形成される。平行電極型スパークプラグでは絶縁体のチャンネリングは、それほど問題とはならないが、上記のような層形成に寄与する成分を、電極母材に含有させることで、電極の耐消耗性と貴金属チップの耐剥離性とを両立させることができる。つまり、上記成分を含有した電極母材は熱伝導が良好なため電極の熱引きが改善され、電極自身の温度が低下するので耐消耗性が良好となる。他方、熱伝導率が過剰に高くなると、貴金属チップの溶接性が悪化する問題がある。特に、チップの外径が大きくなると、チップと母材部との間の溶け不良や剥離あるいは異常消耗などの問題が生じやすくなる。しかしながら、本発明にて採用する材質ではこのような不具合を回避でき、上記両特性を両立させることができるので、耐消耗部105の消耗を抑制することができ、ひいては寿命を延ばすことができる。
なお、平行電極型スパークプラグにおいて、接地電極104の消耗が過度に進行した場合、火花放電ギャップgが広くなり、前記した横飛火を生ずる場合がある。特に、中心電極2の電極母材2nのスパッタリングによりNTC型半導体酸化物を含有した反応生成物が絶縁体3の表面に多量に堆積すると、絶縁体3の表面の抵抗率が低下して横飛火を生じやすくなる。この場合、反応生成物の抵抗率が過度に高くならないよう、これに含有されるNTC型半導体酸化物の量も適当な値に調整されていることが望ましい。この観点において、電極母材2nを構成するNi合金は、副成分としてのNTC系元素の合計含有量が10質量%以下に設定されることが望ましい。
なお、図7のスパークプラグ400及び図8のスパークプラグ450において耐消耗部105は、具体的には、中心電極2の先端面に円板状のチップを重ね合わせ、さらにその接合面外縁部に沿ってレーザー溶接により全周レーザー溶接部(以下、単に溶接部ともいう)106を形成してこれを固着することにより形成される。ここで、中心電極2の電極母材2nを構成する金属の材質として、Niを例えば80質量%以上含有し、FeとCrとを合計で2〜9質量%含有するものを使用した場合に、Pt、IrあるいはRuを主成分とするチップの溶接性が若干悪くなる傾向にあり、場合によっては耐消耗部105が剥離しやすくなったりする問題を生じることがある。この場合、溶接するチップの直径δを0.8mm以下とすることにより、溶接不良等が軽減され、耐消耗部105の剥離等を生じにくくすることができる。ただし、チップの直径δが0.3mm未満では、溶接による耐消耗部105の形成そのものが困難になるので、チップは直径δが0.3mm以上のものを使用することが望ましい。
なお、チップがIr系金属の場合は高融点であるため、上記のようなレーザー溶接による接合が望ましいが、Pt系金属やRu系金属の場合は、Ir系金属よりは低融点であるため、抵抗溶接や電子ビーム溶接による接合も可能である。
(実施例1)
図1及び図2に示すスパークプラグについて、本発明の効果を確認するために以下の実験を行った。図2において、第一ギャップg1の大きさを1.6mm、ギャップg2の大きさを0.6mmに設定した。また、図2において、Eを0.5mm、tを1.2mmとした。中心電極2の先端部2aの外径D2は2.0mmであり、基端部2cの外径D1は2.1mmとした。絶縁体3の先端面3eを基準位置として、放熱促進用金属部2mの先端位置は、燃焼ガスにより受ける熱による電極母材2nと放熱促進用金属部2mとの膨張差を考慮して−0.5mmに設定した。さらに、d−D1の値は0.08mmとした。そして、中心電極2と接地電極4の電極母材の材質として、表1に示す種々の組成の合金を採用した。なお、各組成の金属の熱伝導率をレーザーフラッシュ法により測定した。また、絶縁体3はアルミナ焼結体である。
これらのスパークプラグの耐チャンネリング性と電極消耗度を調べるために、4気筒ガソリンエンジン(排気量1800cc)に取り付け、スロットル全開状態、エンジン回転数6000rpmにて200時間運転を行ない、絶縁体3の表面に生じたチャンネリング溝の深さを走査型電子顕微鏡観察により測定した(なお、電圧印加は、中心電極側が負となる極性にて、周波数60Hzにて間欠的に行っている)。判定条件は、溝深さが0.2mm未満を軽度(○)、0.2〜0.4mmを中度(△)、0.4mmを超えるものを重度(×)とした。また、電極消耗度は、電極径の初期からの減少率が10%未満のものを軽度(○)、10%以上30%未満を中度(△)、30%以上を重度(×)とした。以上の結果を表1に示す。
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この結果から明らかなように、電極母材の熱伝導率が17〜30W/m・Kの範囲となるように金属組成を調整したものは、耐チャンネリング性と電極消耗度、さらには貴金属製耐消耗部の、剥離に対する耐久度及び耐消耗性のすべてにおいて良好な結果が得られていることがわかる。
本発明の一実施例を示すスパークプラグの全体図。 図1の要部を表す拡大断面図。 絶縁体表面に侵食抑制層を予め形成する例を示す要部縦断面図。 本発明をフル沿面放電型スパークプラグに適用した例を示す要部縦断面図。 本発明を間欠沿面放電型スパークプラグに適用した例を示す要部縦断面図。 図5において、中心電極の外周面に耐消耗部を形成する例をいくつか示す要部縦断面図。 中心電極先端面に対向する接地電極と、同じく側面に対向する接地電極とを両方設けたスパークプラグの例を示す要部正面断面図及び要部側面断面図。 本発明を平行電極型スパークプラグに適用した例を示す要部縦断面図。 中心電極の先端部に貴金属製耐消耗部を形成したスパークプラグにおいて、貴金属製耐消耗部を接合する全周レーザー溶接部の少なくとも一部を絶縁体の内側に位置させたいくつかの例を示す断面図。
符号の説明
1,100,200,300,400,450 スパークプラグ
2 中心電極
2a 先端部
2b 外周面(発火面)
2c 基端部
3 絶縁体
3d 貫通孔
4,104 接地電極
4a 端面(発火面)
13 端子金具
15 抵抗体
30,31 侵食抑制層
40〜42,105 耐消耗部

Claims (19)

  1. 中心電極と、
    該中心電極の外側に配置される絶縁体と、
    前記中心電極の先端部との間に火花放電ギャップを形成するとともに、当該火花放電ギャップにて前記絶縁体の先端部表面に沿う沿面火花放電が可能となるように、前記絶縁体の先端部及び中心電極の先端部との間の位置関係が定められた接地電極とを備え、
    前記中心電極の少なくとも表層部を形成する電極母材が、電気抵抗率の温度係数が負となる酸化物半導体を形成しうる元素を副成分として含有し、かつ熱伝導率が17〜30W/m・KであるNiを主成分としたNi合金にて構成したことを特徴とするスパークプラグ。
  2. 前記中心電極を取り囲む形態で、前記接地電極が2つ以上配置されている請求項1記載のスパークプラグ。
  3. 前記接地電極が前記中心電極の周囲に複数配置され、かつ、それら複数の接地電極のうちの1以上は、その端面と前記中心電極の側面とが前記絶縁体の先端部の少なくとも一部を間に挟んで対向して配置されることにより、該中心電極の側面との間にセミ沿面放電ギャップを形成するセミ沿面接地電極である請求項1または2に記載のスパークプラグ。
  4. 前記中心電極の軸線方向における、前記セミ沿面接地電極の先端面と、前記絶縁体の先端部側面との重なり寸法Eが0.2mm以上である請求項3記載のスパークプラグ。
  5. 前記複数の接地電極のうちの1つが、その先端部側面を前記中心電極の先端面と平行に対向させて平行気中放電ギャップを形成する平行接地電極である請求項3又は4に記載のスパークプラグ。
  6. 前記中心電極の先端部が、前記絶縁体から突出して配置されるとともに、その絶縁体の外側を覆う筒状の主体金具が設けられ、
    前記接地電極は、基端側が前記主体金具の端部に接合され、先端側は前記中心電極側に曲げ返されて、その端面が、突出する前記中心電極の先端部側面と対向するように配置されて第一ギャップを形成する一方、前記接地電極の先端部内側面が、前記絶縁体の先端面と対向して前記第一ギャップよりも小さい第二ギャップを形成している請求項1又は2に記載のスパークプラグ。
  7. 前記電極母材を構成するNi合金は、前記副成分としてのCr、Fe及びCuの少なくともいずれかを含有する請求項1ないし6のいずれか1項に記載のスパークプラグ。
  8. 前記電極母材を構成するNi合金は、前記副成分としてのCrを1.5〜9質量%含有するものが使用される請求項7記載のスパークプラグ。
  9. 貴金属又は該貴金属を主体とする複合材料で構成された消耗部を先端部に有する中心電極と、
    該中心電極の外側に配置される絶縁体と、
    自身の先端部側面を前記中心電極の先端面と平行に対向させて平行気中放電ギャップを形成する接地電極と、
    前記中心電極の少なくとも表層部を形成する電極母材が、副成分としてのCrを1.5〜9質量%含有し、かつ熱伝導率が17〜30W/m・KであるNiを主成分としたNi合金にて構成したことを特徴とするスパークプラグ。
  10. 前記電極母材を構成するNi合金は、前記副成分としてのFeを1〜5質量%含有するものが使用される請求項1ないし9のいずれか1項に記載のスパークプラグ。
  11. 前記電極母材を構成するNi合金は、前記副成分としてのCrを2〜5質量%含有するものが使用される請求項1ないし10のいずれか1項に記載のスパークプラグ。
  12. 前記電極母材を構成するNi合金は、前記副成分としてのFeを1質量%以上、同じくCr1.5質量%以上含有し、かつFeとCrとを合計で2.5〜9質量%含有するものが使用される請求項9ないし11のいずれか1項に記載のスパークプラグ。
  13. 前記Ni合金は、Cr含有量がFe含有量よりも多い請求項9ないし12のいずれか1項に記載のスパークプラグ。
  14. 前記Ni合金は、前記副成分としてRu、Zn、V、Co、Nb、Ta及びTiの1種以上を含有するものである請求項1ないし13のいずれかに記載のスパークプラグ。
  15. 中心電極と、
    該中心電極の外側に配置される絶縁体と、
    前記中心電極の先端部との間に火花放電ギャップを形成するとともに、当該火花放電ギャップにて前記絶縁体の先端部表面に沿う沿面火花放電が可能となるように、前記絶縁体の先端部及び中心電極先端部との間の位置関係が定められた接地電極とを備え、
    前記中心電極の少なくとも表層部を形成する電極母材が、Niを主成分とし、副成分としてRu、Zn、V、Co、Nb、Ta及びTiの1種以上の元素を含有するNi合金にて構成したことを特徴とするスパークプラグ。
  16. 前記電極母材を構成するNi合金は、Ni含有量が80質量%以上のものが使用される請求項1ないし15のいずれか1項に記載のスパークプラグ。
  17. 前記電極母材を構成するNi合金は、前記副成分の含有量が合計にて1.5質量%〜10質量%とされている請求項16に記載のスパークプラグ。
  18. 前記接地電極の表層部がNi又はNi合金からなる電極母材とされ、かつ、その内部に該電極母材よりも熱伝導率の高い材質にて構成された放熱促進用金属部が、電極長手方向に埋設された構造を有してなる請求項1ないし17のいずれか1項に記載のスパークプラグ。
  19. 前記放熱促進用金属部は、Cu又はCu合金からなる請求項18に記載のスパークプラグ。
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