以下、本発明の実施形態を図1〜図15に基づき説明する。
図1は洗濯機1の全体構成を示す垂直断面図である。洗濯機1は全自動型のものであり、外箱10を備える。外箱10は直方体形状で、金属又は合成樹脂により成形され、その上面と底面は開口部となっている。外箱10の上面開口部には合成樹脂製の上面板11を重ね、外箱10にネジで固定する。図1において左側が洗濯機1の正面、右側が背面であり、背面側に位置する上面板11の上面に同じく合成樹脂製のバックパネル12を重ね、外箱10又は上面板11にネジで固定する。外箱10の底面開口部には合成樹脂製のベース13を重ね、外箱10にネジで固定する。これまでに述べてきたネジはいずれも図示しない。
ベース13の四隅には外箱10を床の上に支えるための脚部14a、14bが設けられている。背面側の脚部14bはベース13に一体成型した固定脚である。正面側の脚部14aは高さ可変のネジ脚であり、これを回して洗濯機1のレベル出しを行う。
上面板11には後述する洗濯槽に洗濯物を投入するための洗濯物投入口15が形設される。洗濯物投入口15を蓋16が上から覆う。蓋16は上面板11にヒンジ部17で結合され、垂直面内で回動する。
外箱10の内部には水槽20と、脱水槽を兼ねる洗濯槽30を配置する。水槽20も洗濯槽30も上面が開口した円筒形のカップの形状を呈しており、各々軸線を垂直にし、水槽20を外側、洗濯槽30を内側とする形で同心的に配置される。水槽20をサスペンション部材21が吊り下げる。サスペンション部材21は水槽20の外面下部と外箱10の内面コーナー部とを連結する形で計4箇所に配備され、水槽20を水平面内で揺動できるように支持する。
洗濯槽30は上方に向かい緩やかなテーパで広がる周壁を有する。この周壁には、その最上部に環状に配置した複数個の脱水孔31を除き、液体を通すための開口部はない。すなわち洗濯槽30はいわゆる「穴なし」タイプである。洗濯槽30の上部開口部の縁には、洗濯物の脱水のため洗濯槽30を高速回転させたときに振動を抑制する働きをする環状のバランサ32を装着する。洗濯槽30の内部底面には槽内で洗濯水あるいはすすぎ水の流動を生じさせるためのパルセータ33を配置する。
水槽20の下面には駆動ユニット40が装着される。駆動ユニット40はモータ41、クラッチ機構42、及びブレーキ機構43を含み、その中心部から脱水軸44とパルセータ軸45を上向きに突出させている。脱水軸44とパルセータ軸45は脱水軸44を外側、パルセータ軸45を内側とする二重軸構造となっており、水槽20の中に入り込んだ後、脱水軸44は洗濯槽30に連結されてこれを支える。パルセータ軸45はさらに洗濯槽30の中に入り込み、パルセータ33に連結してこれを支える。脱水軸44と水槽20の間、及び脱水軸44とパルセータ軸45の間には各々水もれを防ぐためのシール部材を配置する。
バックパネル12の下の空間には電磁的に開閉する給水弁50が配置される。給水弁50はバックパネル12を貫通して上方に突き出す接続管51を有する。接続管51には水道水などの上水を供給する給水ホース(図示せず)が接続される。給水弁50からは給水管52が延び出す。給水管52の先端は容器状の給水口53に接続する。給水口53は洗濯槽30の内部に臨む位置にあり、図2に示す構造を有する。
図2は給水口53の模型的垂直断面図で、正面側から見た形になっている。給水口53は上面が開口しており、内部は左右に区画されている。左側の区画は洗剤室54で、洗剤を入れておく準備空間となる。右側の区画は仕上剤室55で、洗濯用の仕上剤を入れておく準備空間となる。洗剤室54の底部正面側には洗濯槽30に注水する横長の注水口56が設けられている。仕上剤室55にはサイホン部57が設けられている。
サイホン部57は仕上剤室55の底面から垂直に立ち上がる内管57aと、内管57aにかぶせられるキャップ状の外管57bとからなる。内管57aと外管57bの間には水の通る隙間が形成されている。内管57aの底部は洗濯槽30の内部に向かって開口する。外管57bの下端は仕上剤室55の底面と所定の隙間を保ち、ここが水の入口になる。内管57aの上端を超えるレベルまで仕上剤室55に水が注ぎ込まれるとサイホンの作用が起こり、水はサイホン部57を通って仕上剤室55から吸い出され、洗濯槽30へと落下する。
給水弁50はメイン給水弁50aとサブ給水弁50bからなる。接続管51はメイン給水弁50a及びサブ給水弁50bの両方に共通である。給水管52もメイン給水弁50aに接続されたメイン給水管52aとサブ給水弁50bに接続されたサブ給水管52bからなる。
メイン給水管52aは洗剤室54に接続され、サブ給水管52bは仕上剤室55に接続される。すなわちメイン給水管52aから洗剤室54を通って洗濯槽30に注ぐ経路と、サブ給水管52bから仕上剤室55を通って洗濯槽30に注ぐ経路とは別系統になっている。
図1に戻って説明を続ける。水槽20の底部には水槽20及び洗濯槽30の中の水を外箱10の外に排水する排水ホース60が取り付けられる。排水ホース60には排水管61及び排水管62から水が流れ込む。排水管61は水槽20の底面の外周寄りの箇所に接続されている。排水管62は水槽20の底面の中心寄りの箇所に接続されている。
水槽20の内部底面には排水管62の接続箇所を内側に囲い込むように環状の隔壁63が固定されている。隔壁63の上部には環状のシール部材64が取り付けられる。このシール部材64が洗濯槽30の底部外面に固定したディスク65の外周面に接触することにより、水槽20と洗濯槽30との間に独立した排水空間66が形成される。排水空間66は洗濯槽30の底部に形設した排水口67を介して洗濯槽30の内部に連通する。
排水管62には電磁的に開閉する排水弁68が設けられる。排水管62の排水弁68の上流側にあたる箇所にはエアトラップ69が設けられる。エアトラップ69からは導圧管70が延び出す。導圧管70の上端には水位スイッチ71が接続される。
外箱10の正面側には制御部80を配置する。制御部80は上面板11の下に置かれており、上面板11の上面に設けられた操作/表示部81を通じて使用者からの操作指令を受け、駆動ユニット40、給水弁50、及び排水弁68に動作指令を発する。また制御部80は操作/表示部81に表示指令を発する。制御部80は後述するイオン溶出ユニットの駆動回路を含む。
洗濯機1の動作につき説明する。蓋16を開け、洗濯物投入口15から洗濯槽30の中へ洗濯物を投入する。給水口53の洗剤室54には洗剤を入れる。必要なら給水口53の仕上剤室55に仕上剤を入れる。仕上剤は洗濯工程の途中で入れてもよい。
洗剤の投入準備を整えた後、蓋16を閉じ、操作/表示部81の操作ボタン群を操作して洗濯条件を選ぶ。最後にスタートボタンを押せば、図3〜図6のフローチャートに従い洗濯工程が遂行される。
図3は洗濯の全体工程を示すフローチャートである。ステップS201では、設定した時刻に洗濯を開始する、予約運転の選択がなされているかどうかを確認する。予約運転が選択されていればステップS206に進む。選択されていなければステップS202に進む。
ステップS206に進んだ場合は運転開始時刻になったかどうかの確認が行われる。運転開始時刻になったらステップS202に進む。
ステップS202では洗い工程の選択がなされているかどうかを確認する。選択がなされていればステップS300に進む。ステップS300の洗い工程の内容は別途図4のフローチャートで説明する。洗い工程終了後、ステップS203に進む。洗い工程の選択がなされていなければステップS202から直ちにステップS203に進む。
ステップS203ではすすぎ工程の選択がなされているかどうかを確認する。選択されていればステップS400に進む。ステップS400のすすぎ工程の内容は別途図5のフローチャートで説明する。すすぎ工程終了後、ステップS204に進む。すすぎ工程の選択がなされていなければステップS203から直ちにステップS204に進む。
ステップS204では脱水工程の選択がなされているかどうかを確認する。選択されていればステップS500に進む。ステップS500の脱水工程の内容は別途図6のフローチャートで説明する。脱水工程終了後、ステップS205に進む。脱水工程の選択がなされていなければステップS204から直ちにステップS205に進む。
ステップS205では制御部80、特にその中に含まれる演算装置(マイクロコンピュータ)の終了処理が手順に従って自動的に進められる。また洗濯工程が完了したことを終了音で報知する。すべてが終了した後、洗濯機1は次の洗濯工程に備えて待機状態に戻る。
続いて図4〜図6に基づき洗い、すすぎ、脱水の各個別工程の内容を説明する。
図4は洗い工程のフローチャートである。ステップS301では水位スイッチ71の検知している洗濯槽30内の水位データのとり込みが行われる。ステップS302では容量センシングの選択がなされているかどうかを確認する。選択されていればステップS308に進む。選択されていなければステップS302から直ちにステップS303に進む。
ステップS308ではパルセータ33の回転負荷により洗濯物の量を測定する。容量センシング後、ステップS303に進む。
ステップ303ではメイン給水弁50aが開き、メイン給水管52a及び給水口53を通じて洗濯槽30に水が注がれる。給水口53の洗剤室54に入れられた洗剤も水に混じって洗濯槽30に投入される。排水弁68は閉じている。水位スイッチ71が設定水位を検知したらメイン給水弁50aは閉じる。そしてステップS304に進む。
ステップS304ではなじませ運転を行う。パルセータ33が反転回転し、洗濯物と水を攪拌して、洗濯物を水になじませる。これにより、洗濯物に水を十分に吸収させる。また洗濯物の各所にとらわれていた空気を逃がす。なじませ運転の結果、水位スイッチ71の検知する水位が当初より下がったときは、ステップS305でメイン給水弁50aを開いて水を補給し、設定水位を回復させる。
「布質センシング」を行う洗濯コースを選んでいれば、なじませ運転と共に布質センシングが実施される。なじませ運転を行った後、設定水位からの水位変化を検出し、水位が規定値以上に低下していれば吸水性の高い布質であると判断する。
ステップS305で安定した設定水位が得られた後、ステップS306に移る。使用者の設定に従い、モータ41がパルセータ33を所定のパターンで回転させ、洗濯槽30の中に洗濯のための主水流を形成する。この主水流により洗濯物の洗濯が行われる。脱水軸44にはブレーキ装置43によりブレーキがかかっており、洗濯水及び洗濯物が動いても洗濯槽30は回転しない。
主水流の期間が経過した後、ステップS307に進む。ステップS307ではパルセータ33が小刻みに反転して洗濯物をほぐし、洗濯槽30の中に洗濯物がバランス良く配分されるようにする。これは洗濯槽30の脱水回転に備えるためである。
続いて図5のフローチャートに基づきすすぎ工程の内容を説明する。最初にステップS500の脱水工程が入るが、これについては図6のフローチャートで説明する。脱水後、ステップS401に進む。ステップS401ではメイン給水弁50aが開き、設定水位まで給水が行われる。
給水後、ステップS402に進む。ステップS402ではなじませ運転が行われる。ステップS402のなじませ運転では、ステップS500(脱水工程)で洗濯槽30に貼り付いた洗濯物を剥離し、水になじませ、洗濯物に水を十分に吸収させる。
なじませ運転の後、ステップS403に進む。なじませ運転の結果、水位スイッチ71の検知する水位が当初より下がっていたときはメイン給水弁50aを開いて水を補給し、設定水位を回復させる。
ステップS403で設定水位を回復した後、ステップS404に進む。使用者の設定に従い、モータ41がパルセータ33を所定のパターンで回転させ、洗濯槽30の中にすすぎのための主水流を形成する。この主水流により洗濯物のすすぎが行われる。脱水軸44にはブレーキ装置43によりブレーキがかかっており、すすぎ水及び洗濯物が動いても洗濯槽30は回転しない。
主水流の期間が経過した後、ステップS405に移る。ステップS405ではパルセータ33が小刻みに反転して洗濯物をほぐす。これにより洗濯槽30の中に洗濯物がバランス良く配分されるようにし、脱水回転に備える。
上記説明では洗濯槽30の中にすすぎ水をためておいてすすぎを行う「ためすすぎ」を実行するものとしたが、常に新しい水を補給する「注水すすぎ」、あるいは洗濯槽30を低速回転させながら給水口53より洗濯物に水を注ぎかける「シャワーすすぎ」を行うこととしてもよい。
続いて図6のフローチャートに基づき脱水工程の内容を説明する。まずステップS501で排水弁68が開く。洗濯槽30の中の洗濯水は排水空間66を通じて排水される。排水弁68は脱水工程中は開いたままである。
洗濯物から大部分の洗濯水が抜けたところでクラッチ装置42及びブレーキ装置43が切り替わる。クラッチ装置42及びブレーキ装置43の切り替えタイミングは排水開始前、又は排水と同時でもよい。モータ41が今度は脱水軸44を回転させる。これにより洗濯槽30が脱水回転を行う。パルセータ33も洗濯槽30とともに回転する。
洗濯槽30が高速で回転すると、洗濯物は遠心力で洗濯槽30の内周壁に押しつけられる。洗濯物に含まれていた洗濯水も洗濯槽30の周壁内面に集まってくるが、前述の通り、洗濯槽30はテーパ状に上方に広がっているので、遠心力を受けた洗濯水は洗濯槽30の内面を上昇する。洗濯水は洗濯槽30の上端にたどりついたところで脱水孔31から放出される。脱水孔31を離れた洗濯水は水槽20の内面にたたきつけられ、水槽20の内面を伝って水槽20の底部に流れ落ちる。そして排水管61と、それに続く排水ホース60を通って外箱10の外に排出される。
図6のフローでは、ステップS502で比較的低速の脱水運転を行った後、ステップS503で高速の脱水運転を行う構成となっている。ステップS503の後、ステップS504に移行する。ステップS504ではモータ41への通電を断ち、停止処理を行う。
さて、洗濯機1はイオン溶出ユニット100を備える。イオン溶出ユニット100はメイン給水管52aの途中、すなわちメイン給水弁50aと洗剤室54の間に配置されている。商品の仕様によっては、サブ給水管52bの途中、すなわちメイン給水弁50bと仕上剤室55の間に配置することとしてもよい。以下図7〜図15に基づきイオン溶出ユニット100の構造と機能、及び洗濯機1に搭載されて果たす役割につき説明する。
図7及び図8はイオン溶出ユニット100の第1実施形態を示す模型的断面図で、図7は水平断面図、図8は垂直断面図である。イオン溶出ユニット100は合成樹脂、シリコン、ゴムなど絶縁材料からなるケース110を有する。ケース110は一方の端に水の流入口111、他方の端に水の流出口112を備える。ケース110の内部には2枚の板状電極113、114が互いに平行する形で、且つ所定間隔を置いて配置されている。電極113、114は抗菌性を有する金属イオンのもとになる金属、すなわち銀、銅、亜鉛などからなる。
電極113、114には各々一端に端子115、116が設けられる。電極113と端子115、電極114と端子116をそれぞれ一体化できればよいが、一体化できない場合は、電極と端子の間の接合部及びケース110内の端子部分を合成樹脂でコーティングして水との接触を断ち、電食が生じないようにしておく。端子115、116はケース110の外に突出し、制御部80の中の駆動回路に接続される。
ケース110の内部には電極113、114の長手方向と平行に水が流れる。ケース110の中に水が存在する状態で電極113、114に所定の電圧を印加すると、電極113、114の陽極側から電極構成金属の金属イオンが溶出する。電極113、114は例えば2cm×5cm、厚さ1mm程度の銀プレートとし、5mmの距離を隔てて配置する。銀電極の場合、陽極側の電極においてAg→Ag++e-の反応が起こり、水中に銀イオンAg+が溶出する。
なお、金属イオン供給の工程が終了した後、ケース110の中に水がたまらないようにするため、ケース110の底面は下流側が低くなるように傾斜をつけておくとよい。
図9に示すのはイオン溶出ユニット100の駆動回路120である。商用電源121にトランス122が接続され、100Vを所定の電圧に降圧する。トランス122の出力電圧は全波整流回路123によって整流された後、定電圧回路124で定電圧とされる。定電圧回路124には定電流回路125が接続されている。定電流回路125は後述する電極駆動回路150に対し、電極駆動回路150内の抵抗値の変化にかかわらず一定の電流を供給するように動作する。
商用電源121にはトランス122と並列に整流ダイオード126が接続される。整流ダイオード126の出力電圧はコンデンサ127によって平滑化された後、定電圧回路128によって定電圧とされ、マイクロコンピュータ130に供給される。マイクロコンピュータ130はトランス122の一次側コイルの一端と商用電源121との間に接続されたトライアック129を起動制御する。
電極駆動回路150はNPN型トランジスタQ1〜Q4とダイオードD1、D2、抵抗R1〜R7を図のように接続して構成されている。トランジスタQ1とダイオードD1はフォトカプラ151を構成し、トランジスタQ2とダイオードD2はフォトカプラ152を構成する。すなわちダイオードD1、D2はフォトダイオードであり、トランジスタQ1、Q2はフォトトランジスタである。
今、マイクロコンピュータ130からラインL1にハイレベルの電圧、ラインL2にローレベルの電圧又はOFF(ゼロ電圧)が与えられると、ダイオードD2がONになり、それに付随してトランジスタQ2もONになる。トランジスタQ2がONになると抵抗R3、R4、R7に電流が流れ、トランジスタQ3のベースにバイアスがかかり、トランジスタQ3はONになる。
一方、ダイオードD1はOFFなのでトランジスタQ1はOFF、トランジスタQ4もOFFとなる。この状態では、陽極側の電極113から陰極側の電極114に向かって電流が流れる。これによってイオン溶出ユニット100には陽イオンの金属イオンと陰イオンとが発生する。
イオン溶出ユニット100に長時間一方向に電流を流すと、図9で陽極側となっている電極113が減耗するとともに、陰極側となっている電極114には水中のカルシウムなどの不純物がスケールとして固着する。また電極の成分金属の塩化物及び硫化物が電極表面に発生する。これはイオン溶出ユニット100の性能低下をもたらすので、電極の極性を反転して電極駆動回路150を運転できるように構成されている。
電極の極性を反転するにあたっては、ラインL1、L2の電圧を逆にして、電極113、114を逆方向に電流が流れるようにマイクロコンピュータ130が制御を切り替える。この場合、トランジスタQ1、Q4がON、トランジスタQ2、Q3がOFFとなる。マイクロコンピュータ130はカウンタ機能を有していて、所定カウント数に達する度に上述の切り替えを行う。
電極駆動回路150内の抵抗の変化、特に電極113、114の抵抗変化によって、電極間を流れる電流値が減少するなどの事態が生じた場合は、定電流回路125がその出力電圧を上げ、電流の減少を防止する。しかしながら、累積使用時間が長くなるとイオン溶出ユニット100が寿命を迎え、電極の極性反転や、特定電極である時間を平時よりも長くして電極に付着した不純物を強制的に取り除く電極洗浄モードへの切り替えや、定電流回路125の出力電圧上昇を実施しても、電流減少を防げなくなる。
そこで本回路では、イオン溶出ユニット100の電極113、114間を流れる電流を抵抗R7に生じる電圧によって監視し、その電流が所定の最小電流値に至ると、それを電流検知手段が検知するようにしている。電流検知回路160がその電流検知手段である。最小電流値を検出したという情報はフォトカプラ163を構成するフォトダイオードD3からフォトトランジスタQ5を介してマイクロコンピュータ130に伝達される。マイクロコンピュータ130は線路L3を介して報知手段を駆動し、所定の警告報知を行わせる。警告報知手段131がその報知手段である。警告報知手段131は操作/表示部81又は制御部80に配置されている。
また、電極駆動回路150内でのショートなどの事故については、電流が所定の最大電流値以上になったことを検出する電流検知手段が用意されており、この電流検知手段の出力に基づいて、マイクロコンピュータ130は警告報知手段131を駆動する。電流検知回路161がその電流検知手段である。さらに、定電流回路125の出力電圧が予め定めた最小値以下になると、電圧検知回路162がこれを検知し、同様にマイクロコンピュータ130が警告報知手段131を駆動する。
駆動回路120は、洗濯機1に搭載されたイオン溶出ユニット100を次のように駆動する。
図10は金属イオンの溶出と投入のシーケンスを示すフローチャートである。図10のシーケンスは、図5のフロー中、ステップS401(給水)又はステップS403(補給水)の段階で遂行される。すなわちすすぎが開始されるとステップS411で金属イオンの投入が選択されているかどうかを確認する。この確認ステップはもっと前に置いてもよい。操作/表示部81による選択動作で「金属イオンの投入」が選択されていればステップS412に進む。選択されていなければステップS414に進む。
ステップS412ではメイン給水弁50aが開き、イオン溶出ユニット100に所定流量の水を流す。同時に駆動回路120が電極113、114の間に電圧を印加し、電極構成金属のイオンを水中に溶出させる。電極間を流れる電流は直流である。金属イオン添加水は給水口53から洗濯槽30に投入される。
所定量の金属イオン添加水が投入され、すすぎ水の金属イオン濃度が所定値に達したと判断されたところで電極113、114への電圧印加を停止し、設定水位まで給水したところでメイン給水弁50aを閉じる。
続いてステップS413ですすぎ水が攪拌され、洗濯物と金属イオンとの接触が促進される。所定時間の間攪拌を行う。
続いてステップS414で仕上剤の投入が選択されているかどうかを確認する。この確認ステップはもっと前に置いてもよい。ステップS411で金属イオンの投入設定の確認と同時に確認してもよい。操作/表示部81を通じての選択動作で「仕上剤の投入」が選択されていればステップS415に進む。選択されていなければステップS405に進む。ステップS405ではパルセータ33が小刻みに反転して洗濯物をほぐし、洗濯槽30の中に洗濯物がバランス良く配分されるようにして脱水回転に備える。
ステップS415ではサブ給水弁50bが開き、給水口53の仕上剤室55に水を流す。仕上剤室55に仕上剤が入れられていれば、その仕上剤はサイホン部57から水と共に洗濯槽30に投入される。仕上剤室55の中の水位が所定高さに達してはじめてサイホン効果が生じるので、時期が来て水が仕上剤室55に注入されるまで、液体の仕上剤を仕上剤室55に保持しておくことができる。
所定量(サイホン部57にサイホン作用を起こさせるに足る量か、それ以上)の水を仕上剤室55に注入したところでサブ給水弁50bは閉じる。なおこの水の注入工程すなわち仕上剤投入動作は、仕上剤が仕上剤室55に入れられているかどうかに関わりなく、仕上剤の投入工程が選択されていれば自動的に実行される。
続いてステップS416ですすぎ水が攪拌され、洗濯物と仕上剤との接触が促進される。所定時間の間攪拌を行った後、ステップS405に進む。
上記シーケンスによれば、すすぎ水に対する金属イオンの投入実行後、所定時間の経過を待ってすすぎ水に対する仕上剤の投入が実行される。そのため、金属イオンと仕上剤(柔軟剤)を同時にすすぎ水に投入すれば金属イオンが柔軟剤成分と反応して抗菌性が減殺されるところ、金属イオンが洗濯物に十分に付着した後に仕上剤が投入されるものであり、金属イオンと仕上剤成分との反応が防がれ、金属イオンの抗菌効果を洗濯物に残すことができる。
電極113、114を構成する金属としては、銀の他、銅、銀と銅の合金、亜鉛などが選択可能である。銀電極から溶出する銀イオン、銅電極から溶出する銅イオン、及び亜鉛電極から溶出する亜鉛イオンは優れた殺菌効果や防カビ効果を発揮する。銀と銅の合金からは銀イオンと銅イオンを同時に溶出させることができる。
銀イオンは陽イオンである。洗濯物は水中では負に帯電しており、このため銀イオンは洗濯物に電気的に吸着される。洗濯物に吸着された状態では銀イオンは電気的に中和される。そのため仕上剤(柔軟剤)の成分である塩化物イオン(陰イオン)とは反応しにくくなる。ただし銀イオンは時間をかけて洗濯物に吸着されて行くので、仕上剤投入までにある程度時間を置かねばならない。そこで、銀イオン投入後の攪拌時間は5分以上を確保する。仕上剤投入後の攪拌時間は3分ほどで十分である。
金属イオンはメイン給水管52aから洗剤室54を通って洗濯槽30に投入される。仕上剤は仕上剤室55から洗濯槽30に投入される。このように金属イオンをすすぎ水に投入するための経路と、仕上剤をすすぎ水に投入するための経路とが別系統のため、仕上剤をすすぎ水に投入するための経路を金属イオンが通り、この経路に残留していた仕上剤に金属イオンが接触して化合物となり、抗菌力を失うということがない。
また上記シーケンスによれば、金属イオン及び仕上剤のそれぞれの投入に伴ってすすぎ水の攪拌が実行される。これにより、金属イオン及び仕上剤を洗濯物全体に確実に付着させることができる。
さて本発明では、金属イオンによる洗濯物の抗菌処理を実効性のあるものとするため、洗濯機1の運転に次のような条件を課す。
〈条件1〉
1番目の条件は金属イオンの量である。金属イオンの量を洗濯物の量に見合った量にする。図4の洗い工程のフローチャートにおいて、ステップS308で容量センシングが行われる。容量センシングにより把握された洗濯物の量に基づき洗い工程とすすぎ工程で洗濯槽30に注水される水量が設定される。その設定水量に比例した金属イオンを溶出する。
図11の表に示すのは上記条件1を満たすように銀イオンの溶出を行った実験例である。すすぎ水の設定水量は23L、35L、46Lの3段階になっている。この設定水量と、電極113、114間を流れる電気量(電流×電圧印加時間)を比例させた。その結果、銀イオンの濃度はいずれの設定水量においても90ppbとなった。これは設定水量に比例した量の銀イオンが溶出したということである。設定水量は洗濯物の量に基づき定められているので、結局洗濯物量見合いの銀イオン量ということになる。このように洗濯物の量が多い場合には金属イオンの量も多くすることにより、洗濯物の量が少ないときと同様の抗菌効果を得ることができる。
容量センシングの精度を上げ、設定水量の刻みを3段階よりも多くした場合には、電極113、114間を流れる電気量もそれに応じて多段階に変化させる。電流と電圧印加時間の一方又は双方を調節することにより、電気量の調節は容易に行うことができる。
水に添加する金属イオンの量を洗濯物に見合ったものにする手法としては、上記のように洗濯物の容量センシングに基づき金属イオンの溶出量を調節する手法(第1の手法)の他、次のようなものがある。
第2の手法は、容量センシングによらず、使用者が実測又は目分量による計測で洗濯物の量を確定し、それに基づき電極113、114間を流れる電気量を決定するというものである。数段階に区分された重量の選択肢の中から適当なものを選ぶことにより、電気量が決定されるようにしておくとよい。
第3の手法は、洗濯機1の最大容量(洗濯可能な洗濯物量の上限)によって電極113、114間を流れる電気量を決め、いかなる場合にもそれを適用するというものである。最大容量は洗濯機の機種毎に固有のものである。その最大容量に見合った量の金属イオンを溶出させるというのは、最大容量をパラメータとして、金属イオンの量を洗濯物量見合いのものとするということに他ならない。
この手法によれば、常に最大容量に見合った量の金属イオンが供給されるので、容量センシングの誤差や、実測あるいは目分量による計測の誤りで洗濯物の量を実際よりも過小に評価してしまい、その結果、金属イオンの量が過小になるといった事態を招くことがない。
〈条件2〉
2番目の条件は金属の種類と金属イオンの濃度である。金属としては銀を選択し、すすぎには銀イオン濃度が50ppb以上の水を用いる。
図12の表に示すのは銀イオン濃度が抗菌効果に及ぼす影響を調べた実験例である。実験には実際の洗濯機を使用し、乾燥後の布の抗菌防臭性の評価はJISL1902(繊維製品の抗菌性試験)に則り行った。標準布に初期菌数が1.2×105個/mlとなるように黄色ぶどう球菌を塗布し、18時間培養した後に菌数を調べたところ、1.9×107個/mlであった。洗濯物8kgを銀イオン濃度50ppbの水で10分間すすぎ、脱水乾燥した後に同様の実験を行ったところ、残った菌数は2.4×106個/mlであった。静菌活性値(標準布との菌数のlog増減値差)は0.9であった。この値が2.0以上で抗菌防臭性が認められるので、8kgの洗濯物を銀イオン濃度50ppbの水ですすいだ場合は抗菌防臭性が明確とは言えない。
今度は初期菌数が同じく1.2×105個/mlとなるよう黄色ぶどう球菌を塗布した洗濯物8kgを銀イオン濃度90ppbの水で10分間すすぎ、脱水乾燥した後に同様の実験を行ったところ、残った菌数は2.5×104個/mlであった。静菌活性値は2.9であり、抗菌防臭性が与えられたことが確認された。すなわち銀イオン濃度が50〜100ppbである場合、必要且つ十分な抗菌性を洗濯物に付与することができる。
銀イオン濃度をさらに高めて行けば、抗菌性も一層高まる。しかしながら水の銀イオン濃度があまりに高くなると、洗濯物が乾いたとき、洗濯物の表面に銀が目に見える形で析出する。析出した銀は酸化や硫化によって黒く変色し、洗濯物にしみをつくる。従って、洗濯物の抗菌処理に用いる水の銀イオン濃度には実用上の上限が存在する。
銀イオン濃度900ppbの水ですすぎを繰り返したところ、すすぎ回数3回のときは洗濯物に外見上の変化は認められなかったが、すすぎ回数が5回になると、天日乾燥の後の反射率がすすぎ前に比べ3%低下した。この程度の反射率の低下は目視での識別は難しい。しかしながら、白色の洗濯物で反射率の低下(黒化)が目立ちやすいもの、あるいは白色でなくても洗濯を繰り返して反射率の低下が累積したものなどでは問題になる可能性がある。従って、銀イオン濃度の実用上の上限は900ppb程度と考えられる。
なお銀イオン濃度を50ppb以上に制御するにあたっては、50ppbという数値を制御目標の下限としてもよいが、測定誤差を考慮し、もう少し目標値に幅を持たせてもよい。51〜55ppb程度を制御目標の下限とするのが実用的で、好ましい。
〈条件3〉
3番目の条件は銀イオン濃度50ppb以上の水と洗濯物との接触時間である。銀イオン濃度50ppb以上の水に洗濯物が5分以上漬かることになるよう、運転プログラムを設定する。
図13の表及び図14のグラフに示すのはすすぎ水と洗濯物との接触時間が抗菌効果に及ぼす影響を調べた実験例である。銀イオン濃度90ppbのすすぎ水に洗濯物をつけおき、静菌活性値を調べた。5分以上つけおいたときに、抗菌効果を認め得る静菌活性値を得ることができた。つけおき時間が4分のときは静菌活性値が1.7で、抗菌防臭性を認めることができなかった。
〈条件4〉
4番目の条件は銀イオン濃度50ppb以上の水を洗濯物に接触させるときの接触のさせ方である。接触初期に所定時間の攪拌工程を置き、その後所定時間の静止工程を置く。
図15は図10の金属イオン投入シーケンスに上記静止工程を付加したものを示すフローチャートである。ステップS413の攪拌工程の後にステップS430の静止工程を置いた。すすぎ水を攪拌し、洗濯物の隅々にまで銀イオン濃度50ppb以上(この場合は50〜100ppb)のすすぎ水が接触する状態にしたうえで、そのまましばらく静止状態で放置するものである。なお、完全な静止状態とするのでなく、時々パルセータ33をゆっくり動かして洗濯途中であることが使用者にわかるようにしておいてもよい。
銀イオンは、それを含んだ水が動いていると否とにかかわらず、時間をかけて洗濯物に吸着されて行く。そのため、最初水を攪拌して銀イオンが洗濯物の隅々まで行き渡るようにしておけば、後は水を静止させても銀イオンは洗濯物に付着して行くものである。このように静止状態で銀イオンの付着を待つようにすることにより、洗濯物の布傷みを少なくすることができる。なおステップS413とステップS430を合わせて、銀イオン濃度50ppb以上(この場合は50〜100ppb)の水に洗濯物が5分以上接触するようにする。
〈条件5〉
5番目の条件は攪拌力である。銀イオン濃度50ppb以上の水に洗濯物を浸漬させて攪拌を行うにあたり、洗濯物の量に応じて攪拌力を調節することとする。
洗濯物の量が多いときはパルセータ33の回転数を上げ、回転させる時間も長くする。洗濯物の量が少ないときはパルセータ33の回転数を落とし、回転させる時間も短くする。このようにすれば、洗濯物の量が多くても少なくても洗濯物とすすぎ水とに一定以上の強さを持った流動が生じ、洗濯物の隅々にまで銀イオンが確実に行き渡る。
上記条件1〜条件5は、それぞれ単独で実現されるようにしてもよいが、多くの条件が同時に実現されればなおよい。
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
例えば、イオン溶出ユニット100の配置個所は給水弁50から給水口53までの間に限られる訳ではない。接続管51から給水口53までの間であればどこでもよい。すなわち給水弁50の上流側に置くこともできる。イオン溶出ユニット100を給水弁50より上流に置くこととすれば、イオン溶出ユニット100は常に水に漬かっていることになり、シール部材が乾燥して変質し、水もれを生じるといったことがなくなる。
また、イオン溶出ユニット100を外箱10の外に置いてもよい。例えばイオン溶出ユニット100を交換可能なカートリッジの形状にし、接続管51にネジ込みなどの手段で取り付け、このカートリッジに給水ホースを接続するといった構成が考えられる。
カートリッジ形状にするかどうかは別として、イオン溶出ユニット1を外箱10の外に置くこととすれば、洗濯機1の一部に設けた扉を開けたり、パネルを外したりすることなくイオン溶出ユニット100を交換でき、メンテナンスが楽である。しかも洗濯機1の内部の充電部に触れることがないので安全である。
上記のように外箱10の外に置いたイオン溶出ユニット100には、駆動回路120から延ばしたケーブルを防水コネクタを介して接続し、電流を供給すればよいが、駆動回路120からの給電に頼らず、電池を電源として駆動することとしてもよいし、給水の水流に接するように水車を備えた水力発電装置を電源として駆動することとしてもよい。
イオン溶出ユニット100を独立した商品として販売し、洗濯機以外の機器への搭載を促進してもよい。
また本発明は、上記実施形態でとり上げたような形式の全自動洗濯機に適用対象が限定されるものではない。横型ドラム(タンブラー方式)、斜めドラム、乾燥機兼用のもの、又は二槽式など、あらゆる形式の洗濯機に本発明は適用可能である。