JP2005065746A - 洗濯機 - Google Patents

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Abstract

【課題】抗菌作用のある金属イオンを、水質や水温によらず、目標とする濃度で水に添加し得る洗濯機を提供する。
【解決手段】1対の金属製の電極に断続的に電圧を印加して、一方の電極(A)と他方の電極(B)から交互に金属イオンを溶出させる。所定の電流を流すために必要な印加電圧から水質および水温を検知し、検知結果に応じて、電極間に流す電流、金属イオンの溶出時間(T4)、電圧印加時間(T2)、または電圧印加休止時間(T3)を変更して、金属イオンの溶出量を調節する。
【選択図】 図10

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、使用する水に抗菌性のある金属イオンを添加する機能を有する洗濯機に関する。
【0002】
【従来の技術】
洗濯機で洗濯を行う際、水、特にすすぎ水に、仕上物質を加えることがよく行われる。仕上物質として一般的なのは柔軟剤やのり剤である。これに加え、最近では洗濯物に抗菌性を持たせる仕上処理のニーズが高まっている。
【0003】
洗濯物は、衛生上の観点からは天日干しをすることが望ましい。しかしながら近年では、女性就労率の向上や核家族化の進行により、日中は家に誰もいないという家庭が増えており、このような家庭では室内干しにたよらざるを得ない。また、日中誰かが在宅している家庭であっても、雨天の折りは室内干しをすることになる。
【0004】
室内干しの場合、天日干しに比べて洗濯物に細菌やカビが繁殖しやすくなる。梅雨時のような高湿時や低温時など、洗濯物の乾燥に時間がかかる場合には、この傾向は顕著である。また、繁殖状況によっては、洗濯物が異臭を放つときもある。このため、日常的に室内干しを余儀なくされる家庭では、細菌やカビの繁殖を抑制するため、布類に抗菌処理を施したいという要請が強い。
【0005】
最近では、繊維に抗菌防臭加工や制菌加工を施した衣類も多くなっている。しかしながら、家庭内の繊維製品をすべて抗菌防臭加工済みのもので揃えるのは困難である。また、抗菌防臭加工の効果は、洗濯を重ねるにつれ落ちて行く。
【0006】
そこで、洗濯の都度、洗濯物を抗菌処理しようという考えが生まれた。例えば、特許文献1には、銀イオン、銅イオンなど殺菌力を有する金属イオンを発生するイオン発生機器を装備した電気洗濯機が記載されている。特許文献2には、電界の発生によって洗浄液を殺菌するようにした洗濯機が記載されている。特許文献3には、洗浄水に銀イオンを添加する銀イオン添加ユニットを具備した洗濯機が記載されている。
【0007】
【特許文献1】実開平5−74487号公報
【特許文献2】特開2000−93691号公報
【特許文献3】特開2001−276484号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
抗菌性のある金属イオンを利用する洗濯機にあっては、電極間に電圧を印加することにより電極から金属イオンを溶出させるイオン溶出ユニットを用いるのが通常の構成である。例えば銀イオンを添加する場合、陽極側の電極を銀製とし、これを水中に入れて電圧を印加すると、陽極においてAg→Ag+eの反応が起こり、理論的にはファラデーの法則に従い、流した電流量に比例して、水中に銀イオンAgが溶出し陽極は減耗する。
【0009】
しかしながら、金属イオンの溶出効率(ファラデーの法則から求まる理論的な溶出量に対する実際の溶出量の割合、換言すれば、流した電流に対する実際に溶出した金属の割合:(金属溶出量)÷(電流量))は、地域による水質の違いや季節による水温の違いにより異なる。このため、所望の金属イオン量を得ることができない場合があり、目標とする金属イオン濃度を安定して供給できず、被洗濯物に所望する抗菌処理を行うことが困難となることがある。
【0010】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、抗菌作用のある金属イオンを、水質や水温によらず、目標とする濃度で水に添加し得る洗濯機を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明では、金属製の1対の電極を備え、使用する水に電極を浸した状態で電極間に電圧を印加して電極間に電流を流し、電極より溶出する金属イオンを使用する水に添加する洗濯機において、電極間に流す電流を水質および水温の少なくとも一方に応じて変更するものとする。
【0012】
水質や水温によって金属イオンの溶出効率は変化するが、この洗濯機では、電極間に流す電流を水質および水温の一方または双方に応じて変更することで、単位時間当たりに溶出する金属イオンの量を調整する。通常、一度に使用する水の量はわかっているため、単位時間当たりの溶出量の調節により、その水に目標とする濃度の金属イオンを添加することができる。金属イオンの溶出時間は一定とすることが可能である。なお、電極は少なくとも2枚あって対を成していればよく、電極を3枚以上備えて、対を成す電極を切り換える構成とすることも可能である。
【0013】
本発明ではまた、金属製の1対の電極を備え、使用する水に電極を浸した状態で電極間に電圧を印加して電極間に電流を流し、電極より溶出する金属イオンを使用する水に添加する洗濯機において、一度に使用する水に添加するための金属イオンの溶出時間を、水質および水温の少なくとも一方に応じて変更するものとする。
【0014】
この洗濯機は、溶出時間を変更することで溶出する金属イオンの総量を調節する。溶出時間を水質や水温に応じて変更することで、溶出効率にかかわらず、一度に使用する水に目標とする濃度の金属イオンを添加することができる。単位時間当たりの金属イオンの溶出量は、水質や水温によって変化した溶出効率で定まる値とすることが可能である。
【0015】
本発明ではさらに、金属製の1対の電極を備え、使用する水に電極を浸した状態で電極間に電圧を印加して電極間に電流を流し、電極より溶出する金属イオンを使用する水に添加する洗濯機において、電極間に流す電流を一定とし、電極間に印加する電圧を水質および水温の少なくとも一方に応じて変更するものとする。
【0016】
この洗濯機では、電極間に流す電流を一定としながら、印加する電圧を変更することで、単位時間当たりの金属イオンの溶出量を調節する。印加電圧を水質や水温に応じて変更することで、溶出効率にかかわらず、一度に使用する水に目標とする濃度の金属イオンを添加することができる。金属イオン溶出の反応は、例えばAg→Ag+eのように、一定であるため、電流を一定にすることで、溶出量は印加電圧から容易に算出することができる。
【0017】
本発明ではさらにまた、金属製の1対の電極を備え、使用する水に電極を浸した状態で電極間に電圧を印加して電極間に電流を流し、電極より溶出する金属イオンを使用する水に添加する洗濯機において、電極間に電圧を断続的に印加して、電圧を印加する印加時間と電圧を印加しない休止時間を設け、電極間に印加する電圧の極性を周期的に反転させるとともに、印加時間および休止時間の少なくとも一方を、水質および水温の少なくとも一方に応じて変更するものとする。
【0018】
この洗濯機では、電極に電圧を印加する時間と電圧印加を休止する時間との比を変えることによって、溶出量を調整する。印加時間や休止時間を水質や水温に応じて変更することで、溶出効率にかかわらず、一度に使用する水に目標とする濃度の金属イオンを添加することができる。印加時間と休止時間の総和は一定とすることが可能である。また、印加電圧の極性を印加時間ごとに反転させることで、一方の電極のみが減耗して寿命が短くなったり、電極の表面に不純物が固着して機能が損なわれたりするのを防止することができる。
【0019】
ここで、印加時間と休止時間の双方の長さを変更して、印加時間と休止時間の和を一定とするようにするとよい。印加電圧の極性反転周期が一定になり、両方の電極から金属イオンを均等に溶出させることができる。また、印加時間と休止時間の総和を一定にして、一度に使用する水に目標とする濃度の金属イオンを添加することも容易になる。さらに、洗濯機の給水が完了するまでに、確実に金属イオンの溶出を完了することができる。
【0020】
印加時間および休止時間の少なくとも一方を電極間に流す電流に応じて定めるようにしてもよい。金属イオンの溶出量は、電極間に流す電流と電流を流す時間の双方に依存するから、このようにすることで、溶出量を的確に設定することができる。
【0021】
上記の各洗濯機は、電極間に所定の電流を流すために必要な電圧を測定することにより、水質および水温の少なくとも一方を検知するものとすることができる。電極間に一定の電流を流すために必要な電圧は、水の導電率によって異なり、導電率は水質や水温によって変わる。一定の電流を流すために必要な電圧を測定することで、金属イオンの溶出量を調節するために必要な情報を得ることができる。
【0022】
実験により、金属イオンの溶出効率は、印加する電圧が低いと低下する傾向にあることが判明した。したがって、電圧値を測定することは、溶出量を精度よく調節するためにきわめて有用である。例えば溶出量を多くするために、電極間に流す電流を増す、溶出時間を長くする、印加時間を長くする、あるいは、休止時間を短くする等の処理を行うときに、増大させたり減少させたりする率を測定した電圧に応じて細かく設定することができる。
【0023】
上記の各洗濯機は、また、水質および水温の少なくとも一方に応じた変更を、使用者からの指示に応じて行うようにすることができる。通常、洗濯に利用される水は上水であるが、上水でも水質は地域によって相違し、金属イオンの溶出効率も異なる。溶出効率が低い地域では、電流、溶出時間、印加時間、あるいは休止時間を、水質や水温に応じて変更することが好ましい。一方、標準的な溶出効率の地域では、変更を常に行う必要はない。しかし、節水のために、風呂の残り水を利用することもあり、その場合は、水質や水温が変化して溶出効率も変化するから、変更を行うべきである。使用者からの指示に応じて変更を行うようにすることで、同一機種の洗濯機で、地域や利用する水にかかわらず、目標とする濃度の金属イオンを水に添加することができるようになる。
【0024】
変更後の値を記憶しておくようにしてもよい。洗濯機を使用するたびに電流、溶出時間、印加時間、あるいは休止時間を設定するための操作を行う必要がなくなって、使用者の負担を軽減することができる。例えば、洗濯機の設置初期に、設置場所の上水の水質に基づいた変更を行い、そのときの値を記憶させておけば、以後の通常の使用では、再設定の必要がなくなる。また、風呂の残り水を使用するときに変更を行い、そのときの値を記憶させておけば、その後、風呂の残り水を使用するときに、再設定をする必要がなくなる。
【0025】
被洗濯物を入れる洗濯槽の水の水質および水温の少なくとも一方を検知して、変更を行うようにしてもよい。洗濯槽内の水の水質、つまりは被洗濯物が含んでいる水質により、金属イオンによる抗菌処理の効果に差が生じる。特に仕上剤が投入された場合など、仕上剤の成分により、抗菌処理の効果が低減することがある。洗濯槽内の水自体の水質や水温に基づいて電流、溶出時間、印加時間、あるいは休止時間を変更することで、所望の抗菌効果を得るために適切な濃度の金属イオンを添加することができる。
【0026】
ここで、洗濯槽内の水の水質として、光の透過率を検知する構成とすることができる。簡単な制御でかつ短時間で水質を知ることが可能になる。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態の洗濯機1の全体構成を示す垂直断面図である。洗濯機1は、全自動型であり、上下方向に長い概ね直方体状の外箱10を備えている。外箱10は、金属又は合成樹脂により成形され、その上面および底面は開口部となっている。外箱10の上面開口部には、合成樹脂製の上面板11が重ねられ、この上面板11が外箱10にネジで固定されている。
【0028】
図1において、左側が洗濯機1の正面(前面)、右側が背面である。洗濯機1の背面側に位置する上面板11の上面には、同じく合成樹脂製のバックパネル12が重ねられ、このバックパネル12が外箱10又は上面板11にネジで固定されている。外箱10の底面開口部には、合成樹脂製のベース13が重ねられ、このベースが外箱10にネジで固定されている。なお、図1では、これまでに述べたいずれのネジも図示を省略している。
【0029】
ベース13の四隅には、外箱10を床の上に支えるための脚部14a・14bが設けられている。正面側の脚部14aは、高さ可変のネジ脚であり、これを回して洗濯機1のレベル出しを行う。背面側の脚部14bは、ベース13に一体成型した固定脚である。
【0030】
上面板11には、後述する洗濯槽30に洗濯物を投入するための洗濯物投入口15が形設されている。蓋16は、上面板11にヒンジ部17で結合され、垂直面内で回動するとともに、洗濯物投入口15を上から覆う。
【0031】
外箱10の内部には、水槽20と、脱水槽を兼ねる洗濯槽30とが配置されている。水槽20および洗濯槽30は、両者ともに、上面が開口した円筒形のカップの形状を呈しており、各々の軸線が鉛直方向となり、かつ、水槽20が外側、洗濯槽30が内側となるように同心状に配置されている。
【0032】
水槽20は、サスペンション部材21によって吊り下げられている。サスペンション部材21は、水槽20の外面下部と外箱10の内面コーナー部とを連結する形で計4箇所に配備され、水槽20を水平面内で揺動できるように支持している。
【0033】
洗濯槽30は、上方に向かうにつれて緩やかに広がるテーパー形状の周壁を有している。この周壁には、その最上部に環状に配置した複数個の脱水孔31を除き、液体を通すための開口部はない。すなわち、洗濯槽30は、いわゆる「穴なし」タイプである。洗濯槽30の上部開口部の縁には、環状のバランサ32が装着されている。バランサ32は、洗濯物の脱水のため、洗濯槽30を高速回転させたときに、その振動を抑制する働きを有している。洗濯槽30の内部底面には、槽内で洗濯水あるいはすすぎ水の流動を生じさせるためのパルセータ33が配置されている。
【0034】
水槽20の下面には、駆動ユニット40が装着されている。駆動ユニット40は、モータ41、クラッチ機構42、及びブレーキ機構43を含んでおり、その中心部から、脱水軸44とパルセータ軸45とが上向きに突出している。脱水軸44とパルセータ軸45は、脱水軸44を外側、パルセータ軸45を内側とする二重軸構造となっている。脱水軸44は、下方から上方に向かって水槽20の中に入り込んだ後、洗濯槽30に連結し、これを支えている。パルセータ軸45は、下方から上方に向かって水槽20を貫いてさらに洗濯槽30の中に入り込み、パルセータ33に連結し、これを支えている。脱水軸44と水槽20との間、及び脱水軸44とパルセータ軸45の間には、各々、水もれを防ぐためのシール部材が配置されている。
【0035】
バックパネル12の下の空間には、電磁的に開閉する給水弁50が配置されている。給水弁50は、バックパネル12を貫通して上方に突きだす接続管51を有している。接続管51には、水道水などの上水を供給する給水ホース(図示せず)が接続されている。給水弁50は、洗濯槽30の内部に臨む位置に設けた容器状の吸水口53に対して給水を行う。給水口53は、図2に示す構造を有している。
【0036】
図2は、給水口53の模式的な垂直断面図である。給水口53は、正面側が開口しており、その開口部から引き出し53a(投入ケース)が挿入される。引き出し53aの内部は、複数区画(本実施形態では左右2個)に仕切られている。左側の区画は、洗剤を入れておく準備空間となる洗剤室54である。右側の区画は、仕上剤を入れておく準備空間となる仕上剤室55である。洗剤室54の底部には、給水口53の内部に向かって開口する注水口54aが設けられている。仕上剤室55には、サイホン部57が設けられている。給水口53は、引き出し53aの下の箇所が洗濯槽30に注水する注水口56となっている。
【0037】
サイホン部57は、仕上剤室55の底面から垂直に立ち上がる内管57aと、内管57aにかぶせられるキャップ状の外管57bとからなっている。内管57aと外管57bとの間には、水の通る隙間が形成されている。内管57aの底部は、給水口53の底部に向かって開口している。外管57bの下端は、仕上剤室55の底面と所定の隙間を保ち、ここが水の入口になる。内管57aの上端を超えるレベルまで仕上剤室55に水が注ぎ込まれると、サイホンの作用が起こり、水はサイホン部57を通って仕上剤室55から吸い出され、給水口53の底部に向かい、そこから注水口56を通じて洗濯槽30へと落下する。
【0038】
給水弁50は、メイン給水弁50aとサブ給水弁50bとからなっている。メイン給水弁50aは、相対的に流量大に設定されている。一方、サブ給水弁50bは、相対的に流量小に設定されている。流量の大小設定は、メイン給水弁50a及びサブ給水弁50bの内部構造を互いに異ならせることにより実現可能であるが、弁の構造そのものは同じとし、これに絞り率の異なる流量制限部材を組み合わせることにより実現してもよい。接続管51は、メイン給水弁50a及びサブ給水弁50bの両方に共通である。
【0039】
メイン給水弁50aは、メイン給水経路52aを通じて給水口53の天井部の開口に接続される。この開口は、洗剤室54に向かって開いている。従って、メイン給水弁50aから流れ出した流量大の水流は、メイン給水経路52aから洗剤室54に注ぎ込まれる。一方、サブ給水弁50bは、サブ給水経路52bを通じて給水口53の天井部の開口に接続される。この開口は、仕上剤室55に向かって開いている。従って、サブ給水弁50bから流れ出した流量小の水流は、サブ給水経路52bから仕上剤室55に注ぎ込まれる。すなわち、メイン給水弁50aから洗剤室54を通って洗濯槽30に注ぐ経路と、サブ給水弁50bから仕上剤室55を通って洗濯槽30に注ぐ経路とは別系統である。
【0040】
図1に戻って説明を続ける。水槽20の底部には、水槽20及び洗濯槽30の中の水を外箱10の外に排水する排水ホース60が取り付けられている。排水ホース60には、排水管61及び排水管62から水が流れ込む。排水管61は、水槽20の底面の外周寄りの箇所に接続されている。一方、排水管62は、水槽20の底面の中心寄りの箇所に接続されている。
【0041】
水槽20の内部底面には、排水管62の接続箇所を内側に囲い込むように環状の隔壁63が固定されている。隔壁63の上部には、環状のシール部材64が取り付けられている。このシール部材64が洗濯槽30の底部外面に固定したディスク65の外周面に接触することにより、水槽20と洗濯槽30との間に独立した排水空間66が形成されている。排水空間66は、洗濯槽30の底部に形設した排水口67を介して洗濯槽30の内部に連通している。
【0042】
排水管62には、電磁的に開閉する排水弁68が設けられている。排水管62の排水弁68の上流側にあたる箇所には、エアトラップ69が設けられており、エアトラップ69からは導圧管70が延び出している。導圧管70の上端には、洗濯槽30又は水槽20の水量を検知する水位スイッチ71が接続されている。
【0043】
外箱10の正面側には、制御部80が配置されている。制御部80は、上面板11の下に置かれており、上面板11の上面に設けられた操作/表示部81を通じて使用者からの操作指令を受け、駆動ユニット40、給水弁50、及び排水弁68に動作指令を発する。また、制御部80は、操作/表示部81に表示指令を発する。制御部80は、後述するイオン溶出ユニット100の駆動回路120(図9参照)を含んでいる。
【0044】
メイン給水弁50aからメイン給水経路52aに至る給水経路には、流量検知器185が配置されている。流量検知器185は、周知の流量計により構成することができる。流量検知器185は、図1では、給水弁50に付属しているように描いているが、配置場所はここに限定されず、後述するイオン溶出ユニット100のところに設けられてもよいし、給水口53のところに設けられてもよい。また、流量検知は、水位スイッチ71の検知した単位時間当たりの水量変化や、所定の水量変化に要する時間などから演算して求めるという手法で行うこともできる。
【0045】
洗濯機1が有するイオン溶出ユニット100は、メイン給水管52aの下流側に接続されている。以下、図3ないし図10に基づき、イオン溶出ユニット100の構造と機能、及び洗濯機1に搭載されて果たす役割につき説明する。
【0046】
図3は、給水弁50、イオン溶出ユニット100、及び給水口53の配置関係を示す部分上面図である。イオン溶出ユニット100の両端は、メイン給水弁50aと給水口53とに直接接続されている。すなわち、イオン溶出ユニット100は、単独でメイン給水経路52aの全体を構成している。サブ給水経路52bは、給水口53から突出したパイプとサブ給水弁50bとをホースで連結して構成されている。
【0047】
なお、図1の模式図では、判りやすいように、給水弁50、イオン溶出ユニット100、及び給水口53を洗濯機1の前後方向に並べて描いているが、実際の洗濯機1では、これらは前後方向にではなく左右方向に沿って並ぶ形で配置されている。
【0048】
図4ないし図8は、イオン溶出ユニット100の構造を示している。図4は、イオン溶出ユニット100の上面図である。図5は、イオン溶出ユニット100の垂直断面図で、図4の線A−Aに沿って切断したものである。図6も、イオン溶出ユニット100の垂直断面図で、図4の線B−Bに沿って切断したものである。図7は、イオン溶出ユニット100の水平断面図である。図8は、イオン溶出ユニット100の電極の斜視図である。
【0049】
イオン溶出ユニット100は、透明又は半透明の合成樹脂(無色又は着色)、あるいは不透明の合成樹脂からなるケース110を有している。ケース110は、上面の開口したケース本体110aと、その上面開口を閉ざす蓋110bとで構成されている(図5参照)。ケース本体110aは、細長い形状を有しており、長手方向の一方の端に水の流入口111を、他方の端に水の流出口112を備えている。流入口111及び流出口112は、いずれもパイプ形状をなしている。流出口112の断面積は、流入口111の断面積より小さくなっている。
【0050】
ケース110は、長手方向を水平方向として配置されるものであるが、このように水平に配置されたケース本体110aの底面は、流出口112に向かい次第に下がる傾斜面となっている(図5参照)。すなわち、流出口112は、ケース110の内部空間において最も低位に設けられている。
【0051】
蓋110bは、4本のネジ170によりケース本体110aに固定されている(図4参照)。ケース本体110aと蓋110bとの間には、シールリング171が挟み込まれている(図5参照)。
【0052】
ケース110の内部には、流入口111から流出口112へと向かう水流に沿う形で、2枚の板状電極113・114が向かい合わせに配置されている(図6、図7参照)。ケース110の中に水が存在する状態で、電極113・114に所定の電圧を印加すると、電極113・114の陽極側から電極構成金属の金属イオンが溶出する。電極113・114は、一例として、2cm×5cm、厚さ1mm程度の銀プレートを約5mmの距離を隔てて配置する構成とすることができる。
【0053】
電極113・114の材料は、上記の銀に限られず、抗菌性を有する金属イオンのもとになる金属であればよい。例えば、銀の他、銅、銀と銅との合金、亜鉛などが選択可能である。銀電極から溶出する銀イオン、銅電極から溶出する銅イオン、及び亜鉛電極から溶出する亜鉛イオンは、優れた殺菌効果や防カビ効果を発揮する。また、銀と銅との合金電極からは、銀イオンと銅イオンとを同時に溶出させることができ、同様に殺菌効果や防カビ効果を得ることができる。さらに、金属イオンの溶出を阻害するスケールとして電極表面に生成する金属塩化物のうち、塩化銀は難溶性であるが、塩化銅や塩化亜鉛は金属のイオン化傾向が高く溶解し易いため、電極を銀と銅の合金あるいは銀と亜鉛の合金とすると、均一な塩化物被膜を形成し難くなり、溶出が阻害されるのを防ぐことができる。
【0054】
イオン溶出ユニット100では、電圧の印加の有無で金属イオンの溶出/非溶出を選択することができる。また、電流や電圧印加時間を制御することにより、金属イオンの溶出量を制御または調整することができる。イオン溶出ユニット100では、ゼオライトなどの金属イオン担持体から金属イオンを溶出させる方式と比較した場合、金属イオンを投入するかどうかの選択や金属イオンの濃度の調節をすべて電気的に行えるので、使い勝手がよい。
【0055】
電極113・114は、完全に平行に配置されている訳ではない。上方から見ると、電極113・114は、ケース110内を流れる水流に関し、上流側から下流側に向かって、言い換えれば、流入口111から流出口112の方向に向かって、電極間の間隔が狭くなるように、テーパー状に配置されている(図7参照)。
【0056】
ケース本体110aの平面形状も、流入口111の存在する端から流出口112の存在する端に向けて絞り込まれている。すなわち、ケース110の内部空間の断面積は、上流側から下流側に向かって漸減する。
【0057】
電極113・114は、正面形状で長方形であり、各々に端子115・116が設けられている。端子115・116は、それぞれ電極113・114の下縁から垂下する形で、上流側となる電極端より内側に入り込んだ箇所に形設されている。
【0058】
電極113と端子115、及び電極114と端子116とは、それぞれ同一の金属素材により一体成形されている。電極115・116は、ケース本体110aの底壁に設けた貫通孔を通じて、ケース本体110aの下面に導出される。端子115・116がケース本体110aを突き抜ける箇所には、図6の図中拡大図に見られるように、水密シール172の処理が施されている。水密シール172は、後述する第2のスリーブ175とともに二重のシール構造を形成し、ここからの水もれを防いでいる。
【0059】
ケース本体110aの下面には、端子115・116を隔てる絶縁壁173が一体成形されている(図6参照)。端子115・116は、図示しないケーブルを介して制御部80に付属する駆動回路120に接続されている。
【0060】
端子115・116のうち、ケース110の中に残っている部分は、絶縁物質製のスリーブで保護されている。このとき、第1のスリーブ174と第2のスリーブ175との2種類のスリーブが使用されている。第1のスリーブ174は、合成樹脂製であって、端子115・116の付け根部分に嵌合されている。第1のスリーブ174は、その一部が電極113・114の一方の側面に張り出す形になっており、この部分の側面に突起を形設し、この突起を電極113・114に設けた透孔に係合させている(図6・図7参照)。これにより、第1のスリーブ174からの電極113・114の脱落が防がれている。第2のスリーブ175は、軟質ゴム製で、第1のスリーブ174とケース本体110aの底壁との隙間を埋めるとともに、自身とケース本体110aとの隙間、及び自身と電極113・114との隙間からの水もれを防いでいる。
【0061】
前述のように端子115・116は、電極113・114において上流側の箇所にあり、端子115・116に嵌合される第1のスリーブ174により電極113・114の上流側の部分の支えが構成される。蓋110bの内面には、第1のスリーブ174の位置に合わせてフォーク形状の支持部176が形設されている(図6参照)。この支持部176が第1のスリーブ174の上縁を挟み、第2のスリーブ175が第1のスリーブ174とケース本体110aとの隙間を埋めていることと相まって、しっかりとした支えを構成する。なお、フォーク形状の支持部176は、長短の突出部で電極113・114を挟み、これにより蓋110bの側でも電極113・114の間隔が適切に保たれるようになっている。
【0062】
電極113・114の下流側の部分も、ケース110の内面に設けた支持部により支えられる。ケース本体110aの底壁からは、フォーク形状の支持部177が立ち上がり、蓋110bの天井面からは同じくフォーク形状の支持部178が、支持部177と向かい合う形で垂下している(図5・図8参照)。電極113・114は、それぞれ下流側部分の下縁と上縁とを支持部177・178で挟まれ、動かないように保持されている。
【0063】
図7に見られるように、電極113・114は、互いに対向する面と反対側の面が、ケース110の内面との間に空間を生じる形で配置されている。また、図5に見られるように、電極113・114は、その上縁及び下縁とケース110の内面との間にも空間が生じるように配置されている(支持部176・177・178との接触部分を除く)。さらに、図5、図7に見られるように、電極113・114の上流側及び下流側の縁とケース110の内面との間にも空間が設けられている。
【0064】
なお、ケース110の幅をもっと狭くせざるを得ない場合は、電極113・114の、互いに対向する側の面と反対側の面をケース110の内壁に密着させるような構成も可能である。
【0065】
電極113・114に異物が接触しないようにするため、電極113・114の上流側には、金網製のストレーナーが配置される。本実施形態の場合、図2に示すように、接続管51の中にストレーナー180が設けられている。ストレーナー180は、給水弁50の中に異物が入り込まないようにするためのものであるが、イオン溶出ユニット100の上流側ストレーナーも兼ねている。
【0066】
電極113・114の下流側にも、金網製のストレーナー181が配置されている。ストレーナー181は、長期間の使用により電極113・114がやせ細ったとき、それが折れて破片が流失するのを防ぐ。ストレーナー181の配置場所としては、例えば流出口112を選択することができる。
【0067】
ストレーナー180・181の配置場所は、上記の場所に限定されない。「電極の上流側」、「電極の下流側」という条件を満たしさえすれば、ストレーナー180・181は、給水経路中のどこに配置されてもよい。なお、ストレーナー180・181は取り外し可能とし、捕捉した異物を除去したり、目詰まりの原因物質を清掃したりすることができるようにする。
【0068】
次に、イオン溶出ユニット100の駆動回路120について説明する。図9は、駆動回路120の構成例である。商用電源121にトランス122が接続されており、このトランス122が100Vを所定の電圧に降圧する。トランス122の出力電圧は、全波整流回路123によって整流された後、定電圧回路124で定電圧とされる。定電圧回路124には、定電流回路125が接続されている。定電流回路125は、後述する電極駆動回路150に対し、電極駆動回路150内の抵抗値の変化にかかわらず一定の電流を供給するように動作する。
【0069】
商用電源121には、トランス122と並列に整流ダイオード126が接続されている。整流ダイオード126の出力電圧は、コンデンサ127によって平滑化された後、定電圧回路128によって定電圧とされ、マイクロコンピュータ130に供給される。マイクロコンピュータ130は、トランス122の一次側コイルの一端と商用電源121との間に接続されたトライアック129を起動制御する。
【0070】
電極駆動回路150は、NPN型トランジスタQ1〜Q4と、ダイオードD1・D2、抵抗R1〜R7を図のように接続して構成されている。トランジスタQ1とダイオードD1とは、フォトカプラ151を構成し、トランジスタQ2とダイオードD2とは、フォトカプラ152を構成している。すなわち、ダイオードD1・D2は、発光ダイオードであり、トランジスタQ1、Q2は、フォトトランジスタである。
【0071】
マイクロコンピュータ130からラインL1にハイレベルの電圧、ラインL2にローレベルの電圧又はOFF(ゼロ電圧)が与えられると、ダイオードD2がONになり、それに付随してトランジスタQ2もONになる。トランジスタQ2がONになると、抵抗R3・R4・R7に電流が流れ、トランジスタQ3のベースにバイアスがかかり、トランジスタQ3はONになる。
【0072】
一方、ダイオードD1はOFFなので、トランジスタQ1はOFF、トランジスタQ4もOFFとなる。この状態では、陽極側の電極113から陰極側の電極114に向かって電流が流れる。これによって、イオン溶出ユニット100では、陽イオンの金属イオンと陰イオンとが発生する。
【0073】
イオン溶出ユニット100に長時間一方向に電流を流すと、図9で陽極側となっている電極113が減耗するとともに、陰極側となっている電極114には、水中のカルシウムなどの不純物がスケールとして固着する。また、電極の成分金属の塩化物及び硫化物が電極表面に発生する。このことはイオン溶出ユニット100の性能低下をもたらすので、本実施形態では、電極の極性を反転して電極駆動回路150を運転できるように構成されている。
【0074】
電極の極性を反転するにあたっては、ラインL1・L2の電圧を逆にして、電極113・114を逆方向に電流が流れるようにマイクロコンピュータ130が制御を切り替える。この場合、トランジスタQ1・Q4がON、トランジスタQ2・Q3がOFFとなる。マイクロコンピュータ130は、カウンタ機能を有していて、所定カウント数に達する度に上述の切り替えを行う。
【0075】
電極駆動回路150内の抵抗の変化、特に電極113・114の抵抗変化によって、電極間を流れる電流値が減少するなどの事態が生じた場合は、定電流回路125がその出力電圧を上げ、電流の減少を防止する。しかしながら、累積使用時間が長くなると、イオン溶出ユニット100が寿命を迎える。この場合、電極の極性反転や、特定極性である時間を平時よりも長くして電極に付着した不純物を強制的に取り除く電極洗浄モードへの切り替えや、定電流回路125の出力電圧上昇を実施しても、電流減少を防げなくなる。
【0076】
そこで、本回路では、イオン溶出ユニット100の電極113・114間を流れる電流を抵抗R7に生じる電圧によって監視し、その電流が所定の最小電流値に至ると、それを電流検知回路160が検知するようにしている。最小電流値を検知したという情報は、フォトカプラ163を構成する発光ダイオードD3からフォトトランジスタQ5を介してマイクロコンピュータ130に伝達される。マイクロコンピュータ130は、ラインL3を介して警告報知器131を駆動し、所定の警告報知を行わせる。警告報知器131は、操作/表示部81又は制御部80に配置されている。
【0077】
また、電極駆動回路150内でのショートなどの事故については、電流が所定の最大電流値以上になったことを検出する電流検知回路161が用意されており、この電流検知回路161の出力に基づいて、マイクロコンピュータ130は警告報知器131を駆動する。さらに、定電流回路125の出力電圧が予め定めた最小値以下になると、電圧検知回路162がこれを検知し、同様にマイクロコンピュータ130が警告報知器131を駆動する。
【0078】
イオン溶出ユニット100の生成した金属イオンは、被洗濯物に抗菌処理を行うために、次のようにして洗濯槽30に投入される。
【0079】
メイン給水弁50aが開くと、メイン給水経路52aに水が流れる。より多くの水を給水したい場合は、サブ給水弁50bも開き、サブ給水経路52bにも水を流してもよい。
【0080】
金属イオン溶出工程では、メイン給水弁50aからの水が、イオン溶出ユニット100の内部空間を満たしつつ流れる。それと同時に、駆動回路120が電極113・114の間に電圧を印加し、電極構成金属のイオンを水中に溶出させる。電極構成金属が銀の場合、陽極側の電極においてAg→Ag+eの反応が生じ、水中に銀イオンAgが溶出する。電極間を流れる電流は、直流である。金属イオンを添加された水は、洗剤室54に入り、注水口54aから注水口56を経て洗濯槽30に注ぎ込まれる。
【0081】
例えば、洗濯槽30に所定量の金属イオン添加水を給水する場合、洗濯槽30に所定量の金属イオン添加水が投入され、以後金属イオン非添加水を設定水位まで注げば、洗濯槽30内の水の金属イオン濃度が所定値に達すると判断されたところで、所定動作により給水停止の処理を受けた制御部80からの信号により、電極113・114への電圧印加を停止する。
【0082】
なお、流す水の量が検知できる場合は、金属イオンの生成を先に行ってしまい、イオン溶出ユニット100が金属イオンを生成しなくなった後もメイン給水弁50aから給水を続け、所定量給水できたところで給水を止めるようにしても、所望濃度の金属イオンを添加した水を得ることができる。
【0083】
電極113・114は、金属イオンの溶出を続けるうちに次第に減耗し、金属イオンの溶出量が減少する。使用が長期にわたれば、金属イオンの溶出量が不安定になったり、所定の溶出量を確保できなくなったりする。そのため、イオン溶出ユニット100は交換可能とされ、電極113・114の寿命が来れば新しいユニットに交換できるようになっている。さらに、電極113・114が耐用限界に達したことを操作/表示部81を通じて使用者に報知し、イオン溶出ユニット100の交換などのメンテナンスを促す。
【0084】
イオン溶出ユニット100を駆動するにあたり、駆動回路120の定電流回路125は、電極113・114間を流れる電流値が一定となるよう電圧を制御する。これにより、単位時間あたりの金属イオン溶出量が一定になる。単位時間あたりの金属イオン溶出量が一定であれば、イオン溶出ユニット100に流す水量とイオン溶出時間とを制御することにより、洗濯槽30内の金属イオン濃度を制御することができることになり、所望の金属イオン濃度を得るのが容易になる。なお、定電流回路125が電極113・114間に流す電流は、水質や水温に応じて変更することができる。この制御については、後に詳述する。
【0085】
電極113・114のうち、陰極として使用される側にはスケールが析出する。極性を反転しないまま直流を流し続け、スケールの堆積量が多くなると、電流が流れにくくなり、金属イオンを所定レートで溶出することが難しくなる。また、陽極として使用される電極だけ減耗が早まる「片減り」の問題も発生する。そこで、電極113・114の極性を周期的に反転する。
【0086】
電極113・114への電圧印加の制御方法について、図10に基づき説明する。図10は、イオン溶出工程時における各構成要素の動作と電極の極性反転動作とを関連づけて示すシーケンス図である。例えば、洗い工程、すすぎ工程、脱水工程のうち、最終すすぎ工程で「金属イオンの投入」が選択されていれば、最終すすぎ工程がイオン溶出工程ということになる。
【0087】
図10においては、最初、メイン給水弁50aとサブ給水弁50bとがONになる(開く)とともに、駆動回路120のトランス122もONになる。電極A(電極113・114の一方)と電極B(電極113・114の他方)には、まだ電圧が印加されていない。
【0088】
ここで、まず、電流検知回路160・161の動作確認が行われる。これにより、電流検知回路160・161が誤検知を行う可能性を排除し、正しくない濃度で金属イオンが溶出されるのを未然に防ぐことができる。
【0089】
電流検知回路動作確認時間T1の間に電流検知回路160・161の動作を確認した後、電極A・Bへの通電を開始する。最初は、電極Aに電圧を印加し、電極Bは接地電圧のままとする。この時点では、電極Aが陽極、電極Bが陰極ということになる。
【0090】
電圧印加時間T2が経過した後、電極Aへの電圧印加が中止される。電圧印加休止時間T3を挟んで電極Bへの電圧印加が開始される。電極Aは接地電圧のままである。今度は、電極Bが陽極、電極Aが陰極となる。すなわち、電極の極性が反転される。
【0091】
再び電圧印加時間T2が経過した後、電極Bへの電圧印加が中止される。電圧印加休止時間T3を挟んで、再び電極の極性が反転される。
【0092】
このようにして、電圧印加時間T2と電圧印加休止時間T3とを交互に繰り返しつつ、電極113・114の極性を周期的に反転する。所期の量の金属イオンが溶出されるまで、極性の反転は続く。電圧印加時間T2と電圧印加休止時間T3との総和を、ここでは「イオン溶出時間」T4と定義する。
【0093】
効果的なイオン溶出の制御を得るために、発明者が検討を重ねた結果、イオン溶出の効率及び電極の均一な減耗を実現するのに最適な数値は、電圧印加時間T2が19.9秒、電圧印加休止時間T3が0.1秒であることが判明した。また、電圧が10V程度、電流が29mA程度であるのが好ましいことも明らかになった。さらに、JIS L 1902に定められる抗菌性を満足する抗菌処理を行うには、90ppb程度の銀イオンが必要であることも判った。
【0094】
JIS C 9606(電気洗濯機)に定める模擬洗濯物8kgを定格洗濯容量8kgの洗濯機に入れ、上記最適数値で制御したイオン溶出ユニットを洗濯機に搭載し、JIS L 1902(繊維製品の抗菌性試験方法・抗菌効果)に定める菌液吸収法(抗菌防臭加工にあっては、静菌活性値が2.0以上であること)により抗菌性の試験を行った結果、静菌活性値として2.4の値を得た。また、1日1回8kgの洗濯物を洗濯し抗菌処理を施した(1回の抗菌処理時使用水量は40L)場合、一対の銀電極15gで銀電極の寿命は10年間使用可能であることを、連続して銀イオンを溶出させ続ける、加速溶出試験の結果から確認できた。これらのことから、必要最低量の銀電極で洗濯機の耐用年数に十二分に使用できるとともに、十分な抗菌効果を洗濯物に与えられることができる。
【0095】
電極113・114への電圧印加は、イオン溶出ユニット100への給水開始後に開始される。このため、電極への電圧印加開始時から確実に金属イオンを溶出でき、所期の総量の金属イオンを確実に洗濯物に供給することができる。
【0096】
電流検知回路160・161は、電極113・114への電圧印加が開始されてから所定時間経過後に検知動作を開始する。検知動作イオン溶出時間T4の終了まで、電極113・114に流れる電流の監視が続く。電流検知回路160・161の検知結果に基づき駆動回路120の制御が行われる。このように電流検知回路160・161は、電極113・114への電圧印加開始直後の電流が安定していない時には検知動作を行わず、電流が安定してから検知動作を行うので、より正しい検知を行うことができる。
【0097】
電極に流れる電流が所定値の範囲を超え、異常値となったことを電流検知回路160・161が検知したときは、警告報知器131がその旨を報知する。これにより、使用者は、電流値が異常であるためイオン溶出ユニット100が所期の金属イオン溶出量を確保できず、洗濯物に所望の抗菌処理を行うことができないこと、また、イオン溶出ユニット100の調整又は修理が必要であることを知ることができる。
【0098】
電流検知回路160・161が電流値の異常を検知したときは、洗濯機1の運転を一時停止することとしてもよい。このようにすれば、イオン溶出ユニット100に期待されている洗濯物の抗菌処理という機能を欠きながら、それに気付かずに使用者が洗濯機1の使用を続けるという事態を回避することができる。
【0099】
また、次のような動作を行わせることも可能である。すなわち、電流検知回路160・161が電流値の異常を検知しても、イオン溶出工程中に少なくとも一度正常値の電流が検知されていれば、警告報知器131は異常報知を行わないようにするのである。このようにすれば、ノイズなどによる誤検知で一時的に異常が検知された場合でも、洗濯機1の運転を続行し、洗濯工程を完了することができる。
【0100】
また、イオン溶出ユニット100の駆動を次のように行うことも可能である。まず、洗濯機1の使用する水量、言い換えれば、洗濯槽30の中の水位に応じて、イオン溶出時間T4を調節する。このようにすれば、使用する水量に応じてイオン溶出時間T4が調節されるので、金属イオン濃度の安定した水を洗濯物に供給することができる。このため、金属イオン濃度の高すぎる水が却って洗濯物に汚れをもたらしたり、逆に金属イオン濃度が低すぎるため洗濯物を十分に抗菌処理できないといった事態を回避できる。
【0101】
さらに、使用する水量やイオン溶出時間T4に応じて電極113・114への電圧印加時間T2や電圧印加休止時間T3を調節する。このようにすれば、使用する水量、又はイオン溶出時間T4によって電極113・114からの溶出量が異なってくるのを、電圧印加時間T2と電圧印加休止時間T3の少なくとも一方を調節することにより、補償することができる。従って、電極113・114の減耗を均一にするとともに、電極113・114が片方の極性に偏り、陰極過多側(陰極として用いられる時間が長かった側)にスケールが大量に堆積し、次に陽極に反転したときに金属イオンの溶出が阻害されることを防ぐことができ、洗濯物の抗菌処理を長期にわたり安定して続けることができる。
【0102】
また、流量検知器185の流量検知結果に基づき、電極113・114への電圧印加時間T2、電圧印加休止時間T3、又はイオン溶出時間T4を調節する。洗濯機1を水道などの蛇口に接続して水を使用する場合、各家庭において水圧や菅路抵抗などの条件が異なり、洗濯機1側で給水弁50の開度を一定にしたとしても、イオン溶出ユニット100を流れる水の流量は一定にならない。流量検知器185の流量検知結果に基づいて上記調節を行うこととすれば、水の流量に応じて金属イオン溶出量を調節できるから、金属イオン濃度のばらつきの少ない水を供給でき、洗濯物を均一に抗菌処理できる。このため、金属イオンを洗濯物全体に行き渡らせるための攪拌工程を最小限にすることができる。
【0103】
電極113・114を流れる電流値が所定値以下であることを電流検知回路160が検知したときは、イオン溶出ユニット100への給水流量を減少させ、イオン溶出時間を延長する。このようにすれば、電流値が所期の金属イオン溶出量を確保するに満たない場合、すなわち、金属イオンが溶出しにくくなった場合においても、給水流量の減少による給水時間の延長と、イオン溶出時間の延長により、給水完了までに所定量の金属イオンを溶出させることが可能となる。従って、洗濯物に対し、常に安定した抗菌処理を行うことができる。
【0104】
次に、本発明の最も特徴的な部分である水質や水温に応じて金属イオンの溶出制御を変更することについて説明する。
【0105】
一般に、洗濯機に使用する水は上水道のものであり、飲用に供給される水と同じである。そのため、水質は地域によって極端に違う。金属イオンの溶出効率は、ファラデーの法則によると、例えば銀は一価のイオンになるので、例えば、2分間29mAの電流を流し、40Lの水を洗濯槽30に供給したとすると、(濃度)=(銀の原子量:107.868)×(電極に流れる電流値:29mA)×(溶出時間:120秒)÷(ファラデー定数:96485C/mol)÷(水量:40L)=97.3ppbとなる。
【0106】
しかし、全国的に溶出効率の調査測定を行った結果、例えば大阪や京都や東京では80%〜90%程度あったが、沖縄の一部には30%程度と大きく溶出効率が低下する地域もあることがわかり、水質の違いにより大きく溶出効率が変化することがわかった。また、水温が違うと、水質の違いによるときほどの大きな差ではないものの、溶出効率に差が生じる。安定して被洗濯物に抗菌処理を行うためには、所定の濃度の金属イオンを含んだ水を安定して洗濯槽30に供給する必要がある。
【0107】
本実施形態の洗濯機1では、水質や水温に応じて、定電流回路125の設定電流値を変更して電極113・114流れる電流を変え、単位時間当たりの溶出量を変更することにより、または、電極113・114に電流を流す時間(図10のイオン溶出時間T4)を変更することにより、溶出効率の変化による金属イオンの溶出変化を補い、所定濃度の金属イオンを含んだ水が洗濯槽30に供給されるようにする。
【0108】
電流値の変更とイオン溶出時間の変更は同時に行うこともできる。電流値変更とイオン溶出時間変更の両方を行うようにすると、変更自由度が大きくなるとともに、溶出効率が極端に変化した場合などでも、おのおのの変更量が少なくすむので、電流値の増加量を少なくし回路部品の定格に対する余裕が確保できるなど、安全面でも一層好ましい。
【0109】
また、洗濯機1は流量検知器185を備えており、流す水の量が検知できるので、その流量情報を活用して、目標電流値やイオン溶出時間をどのように変更するかを決定することで、給水が完了するまでに確実に金属イオンの溶出を完了するように制御することができる。なお、初期の給水完了後にも金属イオンを調整して溶出させる工程を追加するようにしてもよい。
【0110】
前述のように、洗濯機1では、定電流回路125により、一定値の電流が電極113・114に流れるように印加する電圧を変動させる。確かに水質により溶出効率は変化するが、洗濯槽30への水の供給中に極端に水質が変化し、溶出効率が変化するわけではないし、金属イオン溶出の反応は、Ag→Ag+eのように一定の反応であるので、電流値の一定化により、金属イオンの溶出量を算出することが容易となり、目標電流値や電圧印加時間を算出しやすい。
【0111】
電極への電圧印加は、図10に示したシーケンスに従って行う。このように電圧印加時間T2と電圧印加休止時間T3を設けることにより、例えば、イオン溶出時間T4を変えることをしなくとも、金属イオンを溶出させる時間を変更することができるので、水質の変化に応じて金属イオンの溶出制御を行うことが出来る。
【0112】
洗い時などは洗剤や洗濯物についていた汚れなどを多量に含むことになる洗濯槽30内の水に電極113・114を直接浸すの避けるために、イオン溶出ユニット100を給水経路に設けた構成なので、所定量の金属イオンを給水完了までに添加するために、給水流量を調整することによりイオン溶出時間T4を調整する前述の方法もある。しかし、使用性の面から考えると、給水流量を調整して時間をかけてでも給水するよりも、本制御方法のように、イオン溶出時間のうちの電圧印加時間T2および電圧印加休止時間T3の一方または双方を変更して金属イオンの溶出量を調整する方が、時間の調整の仕方により簡単に給水完了までに所定量の金属イオンを投入することができ、使用者の所望する抗菌処理を確実に行うことができる。また、流量調整装置を備える必要もなく、そのためコストも抑えられる。
【0113】
ここで、極性の反転周期の時間(電圧印加時間T2と電圧印加休止時間T3の和)が変わらないように、電圧印加時間T2と電圧印加休止時間T3を変更するのが好ましい。このようにすると、設計時と同じ周期で金属イオンの溶出を行えるので、電圧印加時間T2を変更したことにより、一方の電極だけが極端に減少して、溶出不足が発生し早期に寿命が終了してしまったり、溶出が不安定になったりすることがない。
【0114】
例えば、所定量の金属イオンの溶出を2分で完了したい場合、電圧印加時間T2を10秒、電圧印加休止時間T3を10秒の初期設定とすると、水質により溶出量が目標の2/3になったときは、電圧印加時間T2を15秒、電圧印加休止時間T3を5秒とする。これにより、電圧印加の周期時間である20秒を変更することなく、金属イオンの溶出量を3/2として、目標とする溶出量の金属イオンを得ることができて、使用者が所望する抗菌処理を行うことができる。
【0115】
目標電流値に応じて電圧印加時間T2および電圧印加休止時間T3の一方または双方を変更するようにしてもよい。このようにすると、目標電流値に応じた金属イオンの溶出時間を設定できるので、例えば目標電流値を高く変更した場合などに、金属イオンが溶出し過ぎたりして、電極113・114の減耗が早くなり、早期に寿命が終了したり、被洗濯物が金属イオンで汚れたりするといった弊害の発生を防ぐことが出来る。
【0116】
水質や水温は、電極113・114に印加する電圧を電圧検知回路162で検出することにより、検知することができる。というのも、水質の変化、つまりは硬度、透明度などの変化により、水の導電率は変化し、水温によっても導電率は多少変化するのからである。目標電流値と印加している電圧より導電率を計算することにより、水質や水温を検知することができる。
【0117】
ちなみに、水質の違いを導電率で定義した場合、導電率が高くなるほど溶出効率が低くなることが確認できた。言い換えると導電率が高くなるほど電圧は低下する傾向にあり、導電率は通常100〜300μS/cmであるので、基準伝導率を例えば300μS/cmに設けて、この基準伝導率を超える場合には、後述する金属イオンの溶出効率を上げるための制御を行うのが好ましい。
【0118】
加えて、水温が高くなると導電率が高くなる傾向にあり、水温が高くなるほど溶出効率が低下し、水温の温度上昇を考慮した上記制御が必要となるといえる。言い換えると水温が高いほど電極間の電圧は低下し、水温が低いほど電極間の電圧は上昇傾向にあるので基準温度を設けて、この基準温度を超える場合には、後述する金属イオンの溶出効率を上げるための制御を行うのが好ましい。
【0119】
また、伝導率や温度に代えて所定の電流値の電流を電極に流し、電圧が基準電圧より低い場合には、後述する金属イオンの溶出効率を上げるための制御を行うのが好ましい。なお、上述した基準導電率や基準温度を極端に下回ったり、基準電圧を極端に上回る場合には、金属イオンの溶出効率が上がりすぎるため、溶出効率を下げる制御を行うのが好ましい。
【0120】
電圧と溶出効率の関係は後述する図11に示す通りで、金属イオンの溶出効率を70%〜100%の範囲内で維持できる電極への印加電圧を制御するのが好ましい。より好ましくは、上述したJIS L 1902による抗菌性の試験結果として静菌活性値が2.0を超え、かつ上述した銀電極の耐用年数の両方を実現するために、金属イオンの溶出効率を70%〜90%の範囲内で維持するように、印加電圧を7〜17V程度の範囲内で制御するのがよい。
【0121】
前述のように、全国の水についての調査結果では、沖縄の一部地域での金属イオンの溶出効率が特に低いことが判ったが、さらに検討したところ、電極113・114に印加している電圧が極端に低いことが判明した。例えば、電極113・114に電流29mA流すのに、大阪では約10V程度であるのに対して、その地域では約4V程度であり、ファラデーの法則からの理論溶出量に対し、大阪では約80%程度であるのに対し、その地域では約30%程度であった。
【0122】
そこで、大阪の水を使ってさらに検討を重ねた結果、印加する電圧と溶出効率との間に、例えば29mAの電流を銀製の電極113・114に流す場合、図11に示す関係が得られた。図11から明らかなように、電圧と溶出効率の関係は一様ではなく、電圧が低くなるほど溶出効率が低下し、特に7Vより低くなると極端に溶出効率が低下する。また、溶出効率がほぼゼロとなる電圧も0Vより少し高い電圧となっており、ある程度以上の電圧を印加しないと金属イオンを溶出できないことがわかる。また、この関係は、溶出効率の特に低かった沖縄の一部の水において、電流29mAのときに電圧約4Vにて溶出効率約30%溶出であった結果とよく相関しており、水質の変化を電圧により検知できることがわかる。
【0123】
なお、本実施形態では、金属イオン溶出用の電極113・114を用いて電圧の検出を実施しているため、構成部品を追加する必要がない。水質検知のための電極を別途備えるようにしても構わず、そのようにすると、検知できる位置の選択位置が増えて好ましい。例えば、洗濯槽30の水が入る排水空間66や、水槽20や洗濯槽30の近傍に、検知のための電極や端子を配置することができる。
【0124】
検知された電圧により、目標電流値や電圧印加時間T2、電圧印加休止時間T3、イオン溶出時間T4などを変更することで、水質により変化した溶出効率を補うように金属イオンを溶出するように制御することができる。
【0125】
検知電圧が所定の電圧値より低い場合、金属イオンの溶出を増加するように電極113・114の制御を変更する。つまり、目標電流値を増加したり、電圧印加時間T2やイオン溶出時間T4を増加したり、電圧印加休止時間T3を減少させることにより、金属イオンの溶出を増加させる。また、例えば、電圧が所定値、例えば7V、より大きい場合は、目標電流値を、例えば29mAとし、電圧を印加する時間を変更することによって、金属イオンの溶出量を調整し、所定値より低くなった場合は、目標電流値を変更すること、例えば42mAとすることも併せて行って、金属イオンの溶出量を調整してもよい。なお、制御方法としては、逆に、所定の電圧値より高い場合に、金属イオンの溶出を減少させるようにしてもよい。
【0126】
サーミスタ等の水温検知器を設けて、温度を直接測定するようにしてもよい。水温検知器を設ける位置は、イオン溶出ユニット100の内部であってもよいし、その上流側や下流側であってもよいし、さらには、水槽20や洗濯槽30の中や周辺であってもよい。また、基本的に気温と水温は密接な関係があり、水温検知器で検出した水温より、その時の環境状況も推測できるので、水温つまりは気温が低く洗濯物が乾きにくい時期などは、金属イオンの濃度を増加するようにしてもよい。
【0127】
水質や水温に応じて目標電流値、イオン溶出時間T4、電圧印加時間T2、あるいは電圧印加休止時間T3を変更するか否かを、使用者が選択できるようにしておくのが好ましい。沖縄の一部のように上水の溶出効率が低い地域では、目標電流値、イオン溶出時間、電圧印加時間、または電圧印加休止時間を常に標準値から変更することが望ましいが、上水の溶出効率が標準的な地域では変更を常に行う必要はない。しかし、標準的な溶出効率の地域であっても、節水のために、使用者が風呂の残り水を利用することもあり、その場合は、水質や水温が変化して溶出効率も変化するから、所望の抗菌効果を得るためには変更を行う必要がある。また、季節によって水温は大きく異なるから、例えば、春や秋の水温に基づいて目標電流値等の標準値を設定する場合は、夏と冬では変更すべきである。
【0128】
変更を行うか否かを使用者が指示するようにすれば、地域によらず、また、使用する水や季節によらず、所望の抗菌効果を得ることができる。これを実現するためには、操作/表示部81に、変更を指示する変更スイッチを備えるだけでよい。
【0129】
目標電流値等の変更を指示されたときに、洗濯機1自体が、水質や水温を検知して、検知結果に応じて目標電流値等を設定するようにすることもできる。これは、変更スイッチの操作に応じて、制御部80が前述の電圧検知回路162や水温検知器を動作させて、水質や水温を検知し、目標電流値、イオン溶出時間T4、電圧印加時間T2、および電圧印加休止時間T3の適切な値を算出するようにすることで実現される。
【0130】
使用者が、目標電流値、イオン溶出時間T4、電圧印加時間T2、および電圧印加休止時間T3の少なくとも一つを、設定するようにしてもよい。例えば、操作/表示部81に目標電流値等の値を選択するための選択スイッチを設けておき、使用者が洗濯開始時に選択スイッチを操作するようにする。また、操作/表示部81や制御部80や駆動回路120に選択スイッチ、選択コネクタ、選択ジャンパ線を設けることにより、設定変更できるようにしてもよい。
【0131】
また、使用者が目標電流値等を設定する場合、例えばEEP−ROMを制御部80に備えて、目標電流値等の変更後の値をはじめ、変更後の制御シーケンスを記憶するようにするとよい。このようにすると、洗濯機を使用するたびに設定のための操作を行う必要がなくなる。また、操作/表示部81の所定のスイッチを操作して設定変更モードにし、選択スイッチを操作することにより、制御シーケンスを変更して記憶させるといった、電子的な簡単な操作により、容易に設定を変更することが可能になる。
【0132】
なお、目標電流値等を直接設定することに代えて、洗濯機の設置位置情報や、設置水域情報などの環境条件を、製造者、設置者、あるいは使用者が入力して、洗濯機1が制御シーケンスを変更するようにしてもよい。さらには、洗濯機1自体が、GPS情報やネットワーク情報の活用により環境条件を取得して、制御パターンを変更するようにしてもよい。また、上水を使用するか風呂の残り水を使用するかを使用者が指示するようにして、風呂の残り水を使用するときには、記憶している変更後の値やシーケンスによって、制御を行うようにしてもよい。
【0133】
本実施形態の洗濯機1では、電極113・114間の電圧を電圧検知回路162で検出することにより水質を検知する構成であり、検知される水質は、イオン溶出ユニット100内の水のものであって、洗濯槽30の水のものではない。抗菌処理を行う工程では仕上剤が加えられることも多く、仕上剤によっては大きく水質が変化することもある。したがって、仕上剤が加えられたときには、電圧に基づいて検知された水質と洗濯槽30の水の水質とに差異が生じて、十分な抗菌効果が得られないという事態が生じる可能性がある。
【0134】
この不都合は、電極113・114および電圧検知回路162とは別の水質検知器187を、洗濯槽30内または洗濯槽30と連通している排水空間66に備えることにより、防止することができる。この水質検知器187は、仕上剤の有無を判別するのが主たる目的であるから、その目的を達成し得るだけの簡素なものでよい。例えば、仕上剤が加えられると光に対する水の透過率が変化することを利用して、透過率を測定するセンサとすることができる。仕上剤が加えられたことが認められたときには、金属イオンの溶出量を調節したり、金属イオンを添加した初期の給水完了後に、適当量の金属イオンを溶出した水を追加したりすることで、所望の抗菌効果を確実に得ることができる。なお、水質検知器を仕上剤室55に配置するようにしてもよい。
【0135】
洗濯槽30内の水の水質を検出する水質検知器187は、イオン溶出ユニット100を経由せずに洗濯槽30に給水された水(例えば、ポンプによって注入された風呂の残り水)の水質に応じて、目標電流値等を変更する場合には、必須である。この場合も、水質検知器187としては、透過率を測定する簡素なものを用いることができる。
【0136】
上記の実施形態では、全自動式の洗濯機を例として掲げたが、本発明はこのほか、横型ドラム式(タンブラー方式)、斜めドラム式、乾燥機兼用、あるいは二層式など、あらゆる形式の洗濯機に適用することができる。また、水質や水温に応じて金属イオンの溶出量を調節するという本発明の思想は、金属電極から金属イオンを溶出させる構成のみならず、金属を含有した部材から金属イオンを溶出させる構成においても、有用である。
【0137】
【発明の効果】
金属製の1対の電極を備え、使用する水に電極を浸した状態で電極間に電圧を印加して電極間に電流を流し、電極より溶出する金属イオンを使用する水に添加する洗濯機において、本発明のように、電極間に流す電流を水質および水温の少なくとも一方に応じて変更するようにすると、単位時間当たりに溶出する金属イオンの量を調整することができて、溶出効率かかわらず、使用する水に目標とする濃度の金属イオンを添加することができる。したがって、使用者は確実に所望の抗菌効果を得ることができる。
【0138】
金属製の1対の電極を備え、使用する水に電極を浸した状態で電極間に電圧を印加して電極間に電流を流し、電極より溶出する金属イオンを使用する水に添加する洗濯機において、本発明のように、一度に使用する水に添加するための金属イオンの溶出時間を、水質および水温の少なくとも一方に応じて変更するようにすると、溶出する金属イオンの総量を調節することができて、溶出効率かかわらず、使用する水に目標とする濃度の金属イオンを添加することができる。
【0139】
金属製の1対の電極を備え、使用する水に電極を浸した状態で電極間に電圧を印加して電極間に電流を流し、電極より溶出する金属イオンを使用する水に添加する洗濯機において、本発明のように、電極間に流す電流を一定とし、電極間に印加する電圧を水質および水温の少なくとも一方に応じて変更するようにしても、単位時間当たりの金属イオンの溶出量を調節することができて、溶出効率かかわらず、使用する水に目標とする濃度の金属イオンを添加することができる。また、目標濃度を実現するために必要な溶出時間の算出も容易である。
【0140】
金属製の1対の電極を備え、使用する水に電極を浸した状態で電極間に電圧を印加して電極間に電流を流し、電極より溶出する金属イオンを使用する水に添加する洗濯機において、本発明のように、電極間に電圧を断続的に印加して、電圧を印加する印加時間と電圧を印加しない休止時間を設け、電極間に印加する電圧の極性を周期的に反転させるとともに、印加時間および休止時間の少なくとも一方を、水質および水温の少なくとも一方に応じて変更するようにすると、溶出量を調整することができて、溶出効率にかかわらず、使用する水に目標とする濃度の金属イオンを添加することができる。また、一方の電極のみが減耗して寿命が短くなったり、電極の表面に不純物が固着して機能が損なわれたりするのを防止することができる。
【0141】
ここで、印加時間と休止時間の双方の長さを変更して、印加時間と休止時間の和を一定とするようにすると、極性反転の周期が一定になり、両方の電極から金属イオンを均等に溶出させることができる。また、印加時間と休止時間の総和を一定にしながら、使用する水に目標とする濃度の金属イオンを添加することも容易になる。
【0142】
印加時間および休止時間の少なくとも一方を電極間に流す電流に応じて定めるようにすると、溶出量を的確に設定することができる。
【0143】
各洗濯機において、電極間に所定の電流を流すために必要な電圧を測定することにより、水質および水温の少なくとも一方を検知するようにすると、金属イオンの溶出量を精度よく調節することが可能になる。
【0144】
また、水質および水温の少なくとも一方に応じた変更を、使用者からの指示に応じて行うようにすると、地域や使用者が利用する水にかかわらず、目標とする濃度の金属イオンを水に添加することを、同一機種の洗濯機で実現することができる。
【0145】
変更後の値を記憶しておくようにすると、洗濯機を使用するたびに操作を行う必要がなくなって、使用者の負担を軽減することができる。
【0146】
被洗濯物を入れる洗濯槽の水の水質および水温の少なくとも一方を検知して、変更を行うようにすると、所望の抗菌効果を発揮するのに適切な濃度の金属イオンを添加することができる。
【0147】
洗濯槽内の水の水質として、光の透過率を検知する構成とすると、簡単な制御でかつ短時間で水質を知ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の洗濯機の概略の構成を示す垂直断面図。
【図2】上記洗濯機の給水口を模式的に示す垂直断面図。
【図3】上記洗濯機のイオン溶出ユニット周辺を示す上面図。
【図4】上記イオン溶出ユニットの上面図。
【図5】上記イオン溶出ユニットの図4の線A−Aでの垂直断面図。
【図6】上記イオン溶出ユニットの図4の線B−Bでの垂直断面図。
【図7】上記イオン溶出ユニットの水平断面図。
【図8】上記イオン溶出ユニットが有する電極の斜視図。
【図9】上記イオン溶出ユニットの駆動回路を示すブロック図。
【図10】上記イオン溶出ユニットの制御シーケンスを模式的に示す図。
【図11】上記イオン溶出ユニットに29mAの電流を流したときの電圧と銀イオン溶出効率の関係を示す図。
【符号の説明】
1 洗濯機
10 外箱
20 水槽
30 洗濯槽
33 パルセータ
40 駆動ユニット
50 給水弁
50a メイン給水弁
50b サブ給水弁
53 給水口
54 洗剤室
55 仕上剤室
68 排水弁
80 制御部
81 操作/表示部
100 イオン溶出ユニット
113、114 電極
120 駆動回路
125 定電流回路
131 警告報知器
150 電極駆動回路
160、161 電流検知回路
162 電圧検知回路
180、181 ストレーナー
185 流量検知器
187 水質検知器

Claims (11)

  1. 金属製の1対の電極を備え、使用する水に電極を浸した状態で電極間に電圧を印加して電極間に電流を流し、電極より溶出する金属イオンを使用する水に添加する洗濯機において、
    電極間に流す電流を水質および水温の少なくとも一方に応じて変更することを特徴とする洗濯機。
  2. 金属製の1対の電極を備え、使用する水に電極を浸した状態で電極間に電圧を印加して電極間に電流を流し、電極より溶出する金属イオンを使用する水に添加する洗濯機において、
    一度に使用する水に添加するための金属イオンの溶出時間を、水質および水温の少なくとも一方に応じて変更することを特徴とする洗濯機。
  3. 金属製の1対の電極を備え、使用する水に電極を浸した状態で電極間に電圧を印加して電極間に電流を流し、電極より溶出する金属イオンを使用する水に添加する洗濯機において、
    電極間に流す電流を一定とし、電極間に印加する電圧を水質および水温の少なくとも一方に応じて変更することを特徴とする洗濯機。
  4. 金属製の1対の電極を備え、使用する水に電極を浸した状態で電極間に電圧を印加して電極間に電流を流し、電極より溶出する金属イオンを使用する水に添加する洗濯機において、
    電極間に電圧を断続的に印加して、電圧を印加する印加時間と電圧を印加しない休止時間を設け、電極間に印加する電圧の極性を周期的に反転させるとともに、印加時間および休止時間の少なくとも一方を水質および水温の少なくとも一方に応じて変更することを特徴とする洗濯機。
  5. 印加時間と休止時間の双方の長さを変更して、印加時間と休止時間の和を一定とすることを特徴とする請求項4に記載の洗濯機。
  6. 印加時間および休止時間の少なくとも一方を電極間に流す電流に応じて定めることを特徴とする請求項4に記載の洗濯機。
  7. 電極間に所定の電流を流すために必要な電圧を測定することにより、水質および水温の少なくとも一方を検知することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の洗濯機。
  8. 水質および水温の少なくとも一方に応じた変更を、使用者からの指示に応じて行うことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の洗濯機。
  9. 変更後の値を記憶しておくことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の洗濯機。
  10. 被洗濯物を入れる洗濯槽の水の水質および水温の少なくとも一方を検知して、変更を行うことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の洗濯機。
  11. 洗濯槽内の水の水質として、光の透過率を検知することを特徴とする請求項10に記載の洗濯機。
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