JP3953381B2 - イオン溶出ユニット及びこれを搭載した洗濯機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は洗濯物を金属イオンで抗菌処理することのできる洗濯機に関する。
【0002】
【従来の技術】
洗濯機で洗濯を行う際、水、特にすすぎ水に仕上物質を加えることが良く行われる。仕上物質として一般的なのは柔軟剤やのり剤である。これに加え、最近では洗濯物に抗菌性を持たせる仕上処理のニーズが高まっている。
【0003】
洗濯物は、衛生上の観点からは天日干しをすることが望ましい。しかしながら近年では、女性就労率の向上や核家族化の進行により、日中は家に誰もいないという家庭が増えている。このような家庭では室内干しにたよらざるを得ない。日中誰かが在宅している家庭にあっても、雨天の折りは室内干しをすることになる。
【0004】
室内干しの場合、天日干しに比べ洗濯物に細菌やカビが繁殖しやすくなる。梅雨時のような高湿時や低温時など、洗濯物の乾燥に時間がかかる場合にこの傾向は顕著である。繁殖状況によっては洗濯物が異臭を放つときもある。
【0005】
また最近では節約意識が高まり、入浴後の風呂水を洗濯に再利用する家庭が多くなっている。ところが一晩置いた風呂水は細菌が増加しており、この細菌が洗濯物に付着してさらに繁殖し、異臭の原因となるという問題も発生している。
【0006】
このため、日常的に室内干しを余儀なくされる家庭、あるいは風呂水を洗濯に再利用する家庭では、細菌やカビの繁殖を抑制するため、布類に抗菌処理を施したいという要請が強い。
【0007】
最近では繊維に抗菌防臭加工や制菌加工を施した衣類も多くなっている。しかしながら家庭内の繊維製品をすべて抗菌防臭加工済みのもので揃えるのは困難である。また抗菌防臭加工の効果は洗濯を重ねるにつれ落ちて行く。
【0008】
そこで、洗濯の都度洗濯物を抗菌処理しようという考えが生まれた。例えば実開平5−74487号公報には、銀イオン、銅イオンなど殺菌力を有する金属イオンを発生するイオン発生機器を装備した電気洗濯機が記載されている。特開2000−93691号公報には電界の発生によって洗浄液を殺菌するようにした洗濯機が記載されている。特開2001−276484号公報には洗浄水に銀イオンを添加する銀イオン添加ユニットを具備した洗濯機が記載されている。
【0009】
また洗濯機に用途限定したものではないが、イオンにより水を浄化する殺菌浄化装置が実開昭63−126099号公報に記載されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
洗濯工程において抗菌処理を行う手法の中では、金属イオンを用いるものが効果も大きく、実用的である。脱水後、洗濯物が乾くまでの間は金属、例えば銀はイオンとして存在し、殺菌作用を発揮する。洗濯物が乾いた後は銀はイオンでなく銀塩として存在するが、再度水に濡らすと再びイオン化し、殺菌力を回復する。この金属イオンは、1対の電極を水に浸し、この電極間に電圧を印加することにより、電極から溶出する。従って使用を続けるうちに次第に電極が減耗し、金属イオンの溶出量が減少する。使用が長期にわたれば金属イオンの溶出量が不安定になったり、所定の溶出量を確保できなくなったりする。
【0011】
減耗が甚だしくなった電極は折れることさえある。電極が折れた後に残された端子は、水圧によってイオン溶出ユニットのケースから抜けるおそれがある。イオン溶出ユニットのケースから端子が抜ければ残された穴から水が噴出し、洗濯機や床を濡らして、感電や階下への漏水につながる大問題となる。
【0012】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、洗濯物の抗菌処理のため水に金属イオンを溶出するイオン溶出ユニットにおいて、電極の減耗が報知され、使用者が事態を認識できるようにしたイオン溶出ユニットを提供することを第1の目的とする。また、このようなイオン溶出ユニットを搭載して洗濯物に抗菌処理を施すとともに、イオン溶出ユニットの電極減耗が進行したときはそれに応じた運転モードで運転される洗濯機を提供することを第2の目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明ではイオン溶出ユニットを次のように構成した。
【0014】
電極間に電圧を印加して金属イオンを生成するイオン溶出ユニットにおいて、電極に電流を供給する定電流回路と、電流が規定値になったことを検出する電流検知回路と、電極の減耗を報知する手段と、を付属させた。そして、このイオン溶出ユニットでは、定電流回路の出力電圧が上限まで達した後に、電流検知回路が規定値を下回ったことを検知することで、電極の減耗が把握される。
【0015】
この構成によれば、使用者はイオン溶出ユニットの電極が減耗した旨の報知を受け、必要な措置をとることができる。その上、電極間を流れる電流を監視することにより電極の減耗が把握される。
【0016】
また、電極間に電圧を印加して金属イオンを生成するイオン溶出ユニットにおいて、電極の減耗を報知する手段を付属させ、電極の減耗が、光学式センサにより検出されるようになっていてもよい。
【0017】
この構成によれば、電極の形状変化を光学式センサにより検出し、これに基づき電極の減耗が把握される。
【0018】
また、上記のようなイオン溶出ユニットを洗濯機に搭載し、水に金属イオンを添加して用いることができるようにした。
【0019】
この構成によれば、洗濯機で用いる水に金属イオンを添加して洗濯物に抗菌処理を施すことができる。
【0020】
なお、洗濯機では、イオン溶出ユニットの電極の減耗量が所定値に達したときに洗濯機運転モードが自動的に変更されると望ましい。
【0021】
この構成によれば、電極減耗により所期の抗菌効果を期待できなくなったときは、洗濯機運転モードが自動的に変更されてこの事態への対処が図られる。
【0022】
また、洗濯機は、電極間に電圧を印加して金属イオンを生成するイオン溶出ユニットを搭載することで、水に金属イオンを添加して用いることができるようにし、そのイオン溶出ユニットに電極の減耗を報知する手段を付属させ、さらに、電極の減耗量が所定値に達したときに洗濯機運転モードが自動的に変更されるようになっていてもよい。
【0023】
この構成であっても、電極減耗により所期の抗菌効果を期待できなくなったときは、洗濯機運転モードが自動的に変更されてこの事態への対処が図られる。
【0024】
なお、自動的に変更された運転モードは再変更操作が可能であると望ましい。
【0025】
この構成によれば、自動変更された洗濯機運転モードを使用者の意思により再変更することができる。
【0026】
なお、イオン溶出ユニットは、以下のようになっていてもよい。例えば、イオン溶出ユニットでは、電極の減耗量が所定値に達したときに報知が行われてもよい。
【0027】
この構成によれば、電極が減耗して所期のイオン溶出量を確保できなくなったときに報知が行われる。
【0028】
また、イオン溶出ユニットでは、電極の減耗量が所定値に達したときにこの電極への電圧印加が停止されてもよい。
【0029】
この構成によれば、電極が減耗して所期のイオン溶出量を確保できなくなったときにはそれ以上のイオン溶出は停止される。
【0030】
また、イオン溶出ユニットでは、電極の減耗が、金属イオン溶出の累積時間に基づき把握されてもよい。
【0031】
この構成によれば、電極への電圧印加時間を管理することにより電極の減耗が把握される。
【0032】
また、イオン溶出ユニットでは、電極の減耗が、この電極に印加される電圧に基づき把握されてもよい。
【0033】
この構成によれば、電極に印加される電圧を監視することにより電極の減耗が把握される。
【0034】
なお、洗濯機は、以下のようになっていてもよい。例えば、洗濯機では、イオン溶出ユニットの電極の減耗を、金属イオン溶出工程が含まれる洗濯工程の回数又は時間に基づき把握してもよい。
【0035】
この構成によれば、洗濯機の運転履歴の管理によりイオン溶出ユニットの電極の減耗が把握される。
【0036】
また、洗濯機では、イオン溶出ユニットの電極の減耗量又は単位時間あたりの金属イオン溶出量に応じ、金属イオン溶出工程毎の電圧印加時間を変化させてもよい。
【0037】
この構成によれば、電極減耗による単位時間あたりのイオン溶出量減少が電圧印加時間の調整により補償される。
【0039】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図に基づき説明する。
【0040】
図1は洗濯機1の全体構成を示す垂直断面図である。洗濯機1は全自動型のものであり、外箱10を備える。外箱10は直方体形状で、金属又は合成樹脂により成形され、その上面と底面は開口部となっている。外箱10の上面開口部には合成樹脂製の上面板11を重ね、外箱10にネジで固定する。図1において左側が洗濯機1の正面、右側が背面であり、背面側に位置する上面板11の上面に同じく合成樹脂製のバックパネル12を重ね、上面板11にネジで固定する。外箱10の底面開口部には合成樹脂製のベース13を重ね、外箱10にネジで固定する。これまでに述べてきたネジはいずれも図示しない。
【0041】
ベース13の四隅には外箱10を床の上に支えるための脚部14a、14bが設けられている。背面側の脚部14bはベース13に一体成型した固定脚である。正面側の脚部14aは高さ可変のネジ脚であり、これを回して洗濯機1のレベル出しを行う。
【0042】
上面板11には後述する洗濯槽に洗濯物を投入するための洗濯物投入口15が形設される。洗濯物投入口15を蓋16が上から覆う。蓋16は上面板11にヒンジ部17で結合され、垂直面内で回動する。
【0043】
外箱10の内部には水槽20と、脱水槽を兼ねる洗濯槽30を配置する。水槽20も洗濯槽30も上面が開口した円筒形のカップの形状を呈しており、各々軸線を垂直にし、水槽20を外側、洗濯槽30を内側とする形で同心的に配置される。水槽20をサスペンション部材21が吊り下げる。サスペンション部材21は水槽20の外面下部と外箱10の内面コーナー部とを連結する形で計4箇所に配備され、水槽20を水平面内で揺動できるように支持する。
【0044】
洗濯槽30は上方に向かい緩やかなテーパで広がる周壁を有する。この周壁には、その最上部に環状に配置した複数個の脱水孔31を除き、液体を通すための開口部はない。すなわち洗濯槽30はいわゆる「穴なし」タイプである。洗濯槽30の上部開口部の縁には、洗濯物の脱水のため洗濯槽30を高速回転させたときに振動を抑制する働きをする環状のバランサ32を装着する。洗濯槽30の内部底面には槽内で洗濯水あるいはすすぎ水の流動を生じさせるためのパルセータ33を配置する。
【0045】
水槽20の下面には駆動ユニット40が装着される。駆動ユニット40はモータ41、クラッチ機構42、及びブレーキ機構43を含み、その中心部から脱水軸44とパルセータ軸45を上向きに突出させている。脱水軸44とパルセータ軸45は脱水軸44を外側、パルセータ軸45を内側とする二重軸構造となっており、水槽20の中に入り込んだ後、脱水軸44は洗濯槽30に連結されてこれを支える。パルセータ軸45はさらに洗濯槽30の中に入り込み、パルセータ33に連結してこれを支える。脱水軸44と水槽20の間、及び脱水軸44とパルセータ軸45の間には各々水もれを防ぐためのシール部材を配置する。
【0046】
バックパネル12の下の空間には電磁的に開閉する給水弁50が配置される。給水弁50はバックパネル12を貫通して上方に突きだす接続管51を有する。接続管51には水道水などの上水を供給する給水ホース(図示せず)が接続される。給水弁50からは給水管52が延び出す。給水管52の先端は容器状の給水口53に接続する。給水口53は洗濯槽30の内部に臨む位置にあり、図2に示す構造を有する。
【0047】
図2は給水口53の模型的垂直断面図で、正面側から見た形になっている。給水口53は上面が開口しており、内部は左右に区画されている。左側の区画は洗剤室54で、洗剤を入れておく準備空間となる。右側の区画は仕上剤室55で、洗濯用の仕上剤を入れておく準備空間となる。洗剤室54の底部正面側には洗濯槽30に注水する横長の注水口56が設けられている。仕上剤室55にはサイホン部57が設けられている。
【0048】
サイホン部57は仕上剤室55の底面から垂直に立ち上がる内管57aと、内管57aにかぶせられるキャップ状の外管57bとからなる。内管57aと外管57bの間には水の通る隙間が形成されている。内管57aの底部は洗濯槽30の内部に向かって開口する。外管57bの下端は仕上剤室55の底面と所定の隙間を保ち、ここが水の入口になる。内管57aの上端を超えるレベルまで仕上剤室55に水が注ぎ込まれるとサイホンの作用が起こり、水はサイホン部57を通って仕上剤室55から吸い出され、洗濯槽30へと落下する。
【0049】
給水弁50はメイン給水弁50aとサブ給水弁50bからなる。接続管51はメイン給水弁50a及びサブ給水弁50bの両方に共通である。給水管52もメイン給水弁50aに接続されたメイン給水管52aとサブ給水弁50bに接続されたサブ給水管52bからなる。
【0050】
メイン給水管52aは洗剤室54に接続され、サブ給水管52bは仕上剤室55に接続される。すなわちメイン給水管52aから洗剤室54を通って洗濯槽30に注ぐ経路と、サブ給水管52bから仕上剤室55を通って洗濯槽30に注ぐ経路とは別系統になっている。
【0051】
図1に戻って説明を続ける。水槽20の底部には水槽20及び洗濯槽30の中の水を外箱10の外に排水する排水ホース60が取り付けられる。排水ホース60には排水管61及び排水管62から水が流れ込む。排水管61は水槽20の底面の外周寄りの箇所に接続されている。排水管62は水槽20の底面の中心寄りの箇所に接続されている。
【0052】
水槽20の内部底面には排水管62の接続箇所を内側に囲い込むように環状の隔壁63が固定されている。隔壁63の上部には環状のシール部材64が取り付けられる。このシール部材64が洗濯槽30の底部外面に固定したディスク65の外周面に接触することにより、水槽20と洗濯槽30との間に独立した排水空間66が形成される。排水空間66は洗濯槽30の底部に形設した排水口67を介して洗濯槽30の内部に連通する。
【0053】
排水管62には電磁的に開閉する排水弁68が設けられる。排水管62の排水弁68の上流側にあたる箇所にはエアトラップ69が設けられる。エアトラップ69からは導圧管70が延び出す。導圧管70の上端には水位スイッチ71が接続される。
【0054】
外箱10の正面側には制御部80を配置する。制御部80は上面板11の下に置かれており、上面板11の上面に設けられた操作/表示部81を通じて使用者からの操作指令を受け、駆動ユニット40、給水弁50、及び排水弁68に動作指令を発する。また制御部80は操作/表示部81に表示指令を発する。制御部80は後述するイオン溶出ユニットの駆動回路を含む。
【0055】
洗濯機1の動作につき説明する。蓋16を開け、洗濯物投入口15から洗濯槽30の中へ洗濯物を投入する。給水口53の洗剤室54には洗剤を入れる。必要なら給水口53の仕上剤室55に仕上剤を入れる。仕上剤は洗濯工程の途中で入れてもよい。
【0056】
洗剤の投入準備を整えた後、蓋16を閉じ、操作/表示部81の操作ボタン群を操作して洗濯条件を選ぶ。最後にスタートボタンを押せば、図3〜図6のフローチャートに従い洗濯工程が遂行される。
【0057】
図3は洗濯の全体工程を示すフローチャートである。ステップS201では、設定した時刻に洗濯を開始する、予約運転の選択がなされているかどうかを確認する。予約運転が選択されていればステップS206に進む。選択されていなければステップS202に進む。
【0058】
ステップS206に進んだ場合は運転開始時刻になったかどうかの確認が行われる。運転開始時刻になったらステップS202に進む。
【0059】
ステップS202では洗い工程の選択がなされているかどうかを確認する。選択がなされていればステップS300に進む。ステップS300の洗い工程の内容は別途図4のフローチャートで説明する。洗い工程終了後、ステップS203に進む。洗い工程の選択がなされていなければステップS202から直ちにステップS203に進む。
【0060】
ステップS203ではすすぎ工程の選択がなされているかどうかを確認する。選択されていればステップS400に進む。ステップS400のすすぎ工程の内容は別途図5のフローチャートで説明する。すすぎ工程終了後、ステップS204に進む。すすぎ工程の選択がなされていなければステップS203から直ちにステップS204に進む。
【0061】
ステップS204では脱水工程の選択がなされているかどうかを確認する。選択されていればステップS500に進む。ステップS500の脱水工程の内容は別途図6のフローチャートで説明する。脱水工程終了後、ステップS205に進む。脱水工程の選択がなされていなければステップS204から直ちにステップS205に進む。
【0062】
ステップS205では制御部80、特にその中に含まれる演算装置(マイクロコンピュータ)の終了処理が手順に従って自動的に進められる。また洗濯工程が完了したことを終了音で報知する。すべてが終了した後、洗濯機1は次の洗濯工程に備えて電源OFF状態で待機する。
【0063】
続いて図4〜図6に基づき洗い、すすぎ、脱水の各個別工程につき説明する。
【0064】
図4は洗い工程のフローチャートである。ステップS301では水位スイッチ71の検知している洗濯槽30内の水位データのとり込みが行われる。ステップS302では容量センシングの選択がなされているかどうかを確認する。選択されていればステップS308に進む。選択されていなければステップS302から直ちにステップS303に進む。
【0065】
ステップS308ではパルセータ33の回転負荷により洗濯物の量を測定する。容量センシング後、ステップS303に進む。
【0066】
ステップ303ではメイン給水弁50aが開き、メイン給水管52a及び給水口53を通じて洗濯槽30に水が注がれる。給水口53の洗剤室54に入れられた洗剤も水に混じって洗濯槽30に投入される。排水弁68は閉じている。水位スイッチ71が設定水位を検知したらメイン給水弁50aは閉じる。そしてステップS304に進む。
【0067】
ステップS304ではなじませ運転を行う。パルセータ33が反転回転し、洗濯物を水の中で揺り動かして、洗濯物を水になじませる。これにより、洗濯物に水を十分に吸収させる。また洗濯物の各所にとらわれていた空気を逃がす。なじませ運転の結果、水位スイッチ71の検知する水位が当初より下がったときは、ステップS305でメイン給水弁50aを開いて水を補給し、設定水位を回復させる。
【0068】
「布質センシング」を行う洗濯コースを選んでいれば、なじませ運転と共に布質センシングが実施される。なじませ運転を行った後、設定水位からの水位変化を検出し、水位が規定値以上に低下していれば吸水性の高い布質であると判断する。
【0069】
ステップS305で安定した設定水位が得られた後、ステップS306に移る。使用者の設定に従い、モータ41がパルセータ33を所定のパターンで回転させ、洗濯槽30の中に洗濯のための主水流を形成する。この主水流により洗濯物の洗濯が行われる。脱水軸44にはブレーキ装置43によりブレーキがかかっており、洗濯水及び洗濯物が動いても洗濯槽30は回転しない。
【0070】
主水流の期間が経過した後、ステップS307に進む。ステップS307ではパルセータ33が小刻みに反転して洗濯物をほぐし、洗濯槽30の中に洗濯物がバランス良く配分されるようにする。これは洗濯槽30の脱水回転に備えるためである。
【0071】
続いて図5のフローチャートに基づきすすぎ工程を説明する。最初にステップS500の脱水工程が入るが、これについては図6のフローチャートで説明する。脱水後、ステップS401に進む。ステップS401ではメイン給水弁50aが開き、設定水位まで給水が行われる。
【0072】
給水後、ステップS402に進む。ステップS402ではなじませ運転が行われる。なじませ運転は洗い工程のステップS304で行ったのと同様のものである。
【0073】
なじませ運転の後、ステップS403に進む。なじませ運転の結果、水位スイッチ71の検知する水位が当初より下がっていたときはメイン給水弁50aを開いて水を補給し、設定水位を回復させる。
【0074】
ステップS403で設定水位を回復した後、ステップS404に進む。使用者の設定に従い、モータ41がパルセータ33を所定のパターンで回転させ、洗濯槽30の中にすすぎのための主水流を形成する。この主水流により洗濯物のすすぎが行われる。脱水軸44にはブレーキ装置43によりブレーキがかかっており、すすぎ水及び洗濯物が動いても洗濯槽30は回転しない。
【0075】
主水流の期間が経過した後、ステップS405に移る。ステップS405ではパルセータ33が小刻みに反転して洗濯物をほぐす。これにより洗濯槽30の中に洗濯物がバランス良く配分されるようにし、脱水回転に備える。
【0076】
上記説明では洗濯槽30の中にすすぎ水をためておいてすすぎを行う「ためすすぎ」を行うものとしたが、洗濯槽30を低速回転させながら給水口53より水を注ぐ「シャワー注水」を行うこともある。どちらを採用するか、あるいは両方とも採用するかは使用者の選択により決定される。
【0077】
続いて図6のフローチャートに基づき脱水工程を説明する。まずステップS501で排水弁68が開く。洗濯槽30の中の洗濯水は排水空間66を通じて排水される。排水弁68は脱水工程中は開いたままである。
【0078】
洗濯物から大部分の洗濯水が抜けたところでクラッチ装置42及びブレーキ装置43が切り替わる。クラッチ装置42及びブレーキ装置43の切り替えタイミングは排水開始前、又は排水と同時でもよい。するとモータ41が今度は脱水軸44を回転させる。これにより洗濯槽30が脱水回転を行う。パルセータ33も洗濯槽30とともに回転する。
【0079】
洗濯槽30が高速で回転すると、洗濯物は遠心力で洗濯槽30の内周壁に押しつけられる。洗濯物に含まれていた洗濯水も洗濯槽30の周壁内面に集まってくるが、前述の通り、洗濯槽30はテーパ状に上方に広がっているので、遠心力を受けた洗濯水は洗濯槽30の内面を上昇する。洗濯水は洗濯槽30の上端にたどりついたところで脱水孔31から放出される。脱水孔31を離れた洗濯水は水槽20の内面にたたきつけられ、水槽20の内面を伝って水槽20の底部に流れ落ちる。そして排水管61と、それに続く排水ホース60を通って外箱10の外に排出される。
【0080】
図6のフローでは、ステップS502で比較的低速の脱水運転を行った後、ステップS503で高速の脱水運転を行う構成となっている。ステップS503の後、ステップS504に移行する。ステップS504ではモータ41への通電を断ち、停止処理を行う。
【0081】
さて、洗濯機1はイオン溶出ユニット100を備える。イオン溶出ユニット100はメイン給水管52aの途中、すなわちメイン給水弁50aと洗剤室54の間に配置されている。商品の仕様によっては、サブ給水管52bの途中、すなわちメイン給水弁50bと仕上剤室55の間に配置することとしてもよい。以下図7〜図15に基づきイオン溶出ユニット100の構造と機能、及び洗濯機1に搭載されて果たす役割につき説明する。
【0082】
図7及び図8はイオン溶出ユニット100の第1実施形態を示す模型的断面図で、図7は水平断面図、図8は垂直断面図である。イオン溶出ユニット100は合成樹脂、シリコン、ゴムなど絶縁材料からなるケース110を有する。ケース110は一方の端に水の流入口111、他方の端に水の流出口112を備える。ケース110の内部には2枚の板状電極113、114が互いに平行する形で、且つ所定間隔を置いて配置されている。電極113、114は抗菌性を有する金属イオンのもとになる金属、すなわち銀、銅、亜鉛などからなる。
【0083】
電極113、114には各々一端に端子115、116が設けられる。電極113と端子115、電極114と端子116をそれぞれ一体化できればよいが、一体化できない場合は、電極と端子の間の接合部及びケース110内の端子部分を合成樹脂でコーティングして水との接触を断ち、電食が生じないようにしておく。端子115、116はケース110の外に突出し、制御部80の中の駆動回路に接続される。
【0084】
ケース110の内部には電極113、114の長手方向と平行に水が流れる。ケース110の中に水が存在する状態で電極113、114に所定の電圧を印加すると、電極113、114の陽極側から電極構成金属の金属イオンが溶出する。電極113、114は例えば2cm×5cm、厚さ1mm程度の銀プレートとし、5mmの距離を隔てて配置する。
【0085】
なお、金属イオン供給の工程が終了した後、ケース110の中に水がたまらないようにするため、ケース110の底面は下流側が低くなるように傾斜をつけておくとよい。
【0086】
図9に示すのはイオン溶出ユニット100の駆動回路120である。商用電源121にトランス122が接続され、100Vを所定の電圧に降圧する。トランス122の出力電圧は全波整流回路123によって整流された後、定電圧回路124で定電圧とされる。定電圧回路124には定電流回路125が接続されている。定電流回路125は後述する電極駆動回路150に対し、電極駆動回路150内の抵抗値の変化にかかわらず一定の電流を供給するように動作する。
【0087】
商用電源121にはトランス122と並列に整流ダイオード126が接続される。整流ダイオード126の出力電圧はコンデンサ127によって平滑化された後、定電圧回路128によって定電圧とされ、マイクロコンピュータ130に供給される。マイクロコンピュータ130はトランス122の一次側コイルの一端と商用電源121との間に接続されたトライアック129を起動制御する。
【0088】
電極駆動回路150はNPN型トランジスタQ1〜Q4とダイオードD1、D2、抵抗R1〜R7を図のように接続して構成されている。トランジスタQ1とダイオードD1はフォトカプラ151を構成し、トランジスタQ2とダイオードD2はフォトカプラ152を構成する。すなわちダイオードD1、D2はフォトダイオードであり、トランジスタQ1、Q2はフォトトランジスタである。
【0089】
今、マイクロコンピュータ130からラインL1にハイレベルの電圧、ラインL2にローレベルの電圧又はOFF(ゼロ電圧)が与えられると、ダイオードD2がONになり、それに付随してトランジスタQ2もONになる。トランジスタQ2がONになると抵抗R3、R4、R7に電流が流れ、トランジスタQ3のベースにバイアスがかかり、トランジスタQ3はONになる。
【0090】
一方、ダイオードD1はOFFなのでトランジスタQ1はOFF、トランジスタQ4もOFFとなる。この状態では、陽極側の電極113から陰極側の電極114に向かって電流が流れる。これによってイオン溶出ユニット100には陽イオンの金属イオンと陰イオンとが発生する。
【0091】
イオン溶出ユニット100に長時間一方向に電流を流すと、図9で陽極側となっている電極113が減耗するとともに、陰極側となっている電極114には水中の不純物がスケールとして固着する。これはイオン溶出ユニット100の性能低下をもたらすので、強制的電極洗浄モードで電極駆動回路150を運転できるように構成されている。
【0092】
強制的電極洗浄モードでは、ラインL1、L2の電圧を逆にして、電極113、114を逆方向に電流が流れるようにマイクロコンピュータ130が制御を切り替える。この場合、トランジスタQ1、Q4がON、トランジスタQ2、Q3がOFFとなる。マイクロコンピュータ130はカウンタ機能を有していて、所定カウント数に達する度に上述の切り替えを行う。
【0093】
電極駆動回路150内の抵抗の変化、特に電極113、114の抵抗変化によって、電極間を流れる電流値が減少するなどの事態が生じた場合は、定電流回路125がその出力電圧を上げ、電流の減少を防止する。しかしながら、累積使用時間が長くなるとイオン溶出ユニット100が寿命を迎え、強制的電極洗浄モードへの切り替えや、定電流回路125の出力電圧上昇を実施しても電流減少を防げなくなる。
【0094】
そこで本回路では、イオン溶出ユニット100の電極113、114間を流れる電流を抵抗R7に生じる電圧によって監視し、その電流が所定の最小電流値に至ると、それを電流検知回路160が検出するようにしている。最小電流値を検出したという情報はフォトカプラ163を構成するフォトダイオードD3からフォトトランジスタQ5を介してマイクロコンピュータ130に伝達される。マイクロコンピュータ130は線路L3を介して警告報知手段131を駆動し、所定の警告報知を行わせる。警告報知手段131は操作/表示部81又は制御部80に配置されている。
【0095】
また、電極駆動回路150内でのショートなどの事故については、電流が所定の最大電流値以上になったことを検出する電流検知回路161が用意されており、この電流検知回路161の出力に基づいてマイクロコンピュータ130は警告報知手段131を駆動する。さらに、定電流回路125の出力電圧が予め定めた最小値以下になると、電圧検知回路162がこれを検知し、同様にマイクロコンピュータ130が警告報知手段131を駆動する。
【0096】
駆動回路120は、洗濯機1に搭載されたイオン溶出ユニット100を次のように駆動する。
【0097】
図10は金属イオンの溶出と投入のシーケンスを示すフローチャートである。図10のシーケンスは、図5のフロー中、ステップS401(給水)又はステップS403(補給水)の段階で遂行される。すなわちすすぎが開始されるとステップS411で金属イオンの投入が選択されているかどうかを確認する。この確認ステップはもっと前に置いてもよい。操作/表示部81による選択動作で「金属イオンの投入」が選択されていればステップS412に進む。選択されていなければステップS414に進む。
【0098】
ステップS412は金属イオン溶出工程であり、メイン給水弁50aが開き、イオン溶出ユニット100に所定流量の水を流す。同時に駆動回路120が電極113、114の間に電圧を印加し、電極構成金属のイオンを水中に溶出させる。電極構成金属が銀の場合、陽極側の電極においてAg→Ag++e-の反応が生じ、水中に銀イオンAg+が溶出する。電極間を流れる電流は直流である。金属イオン含有水は給水口53から洗濯槽30に投入される。
【0099】
所定量の金属イオン含有水が投入され、すすぎ水の金属イオン濃度が所定値に達したと判断されたところで電極113、114への電圧印加を停止し、設定水位まで給水したところでメイン給水弁50aを閉じる。
【0100】
続いてステップS413ですすぎ水が攪拌され、洗濯物と金属イオンとの接触が促進される。所定時間の間攪拌を行う。
【0101】
続いてステップS414で仕上剤の投入が選択されているかどうかを確認する。この確認ステップはもっと前に置いてもよい。ステップS411で金属イオンの投入設定の確認と同時に確認してもよい。操作/表示部81を通じての選択動作で「仕上剤の投入」が選択されていればステップS415に進む。選択されていなければステップS405に進む。ステップS405ではパルセータ33が小刻みに反転して洗濯物をほぐし、洗濯槽30の中に洗濯物がバランス良く配分されるようにして脱水回転に備える。
【0102】
ステップS415ではサブ給水弁50bが開き、給水口53の仕上剤室55に水を流す。仕上剤室55に仕上剤が入れられていれば、その仕上剤はサイホン部57から水と共に洗濯槽30に投入される。仕上剤室55の中の水位が所定高さに達してはじめてサイホン効果が生じるので、時期が来て水が仕上剤室55に注入されるまで、液体の仕上剤を仕上剤室55に保持しておくことができる。
【0103】
所定量(サイホン部57にサイホン作用を起こさせるに足る量か、それ以上)の水を仕上剤室55に注入したところでサブ給水弁50bは閉じる。なおこの水の注入工程すなわち仕上剤投入動作は、仕上剤が仕上剤室55に入れられているかどうかに関わりなく、仕上剤の投入工程が選択されていれば自動的に実行される。
【0104】
続いてステップS416ですすぎ水が攪拌され、洗濯物と仕上剤との接触が促進される。所定時間の間攪拌を行った後、ステップS405に進む。
【0105】
上記シーケンスによれば、すすぎ水に対する金属イオンの投入実行後、所定時間の経過を待ってすすぎ水に対する仕上剤の投入が実行される。そのため、金属イオンと仕上剤(柔軟剤)を同時にすすぎ水に投入すれば金属イオンが柔軟剤成分と反応して抗菌性が減殺されるところ、金属イオンが洗濯物に十分に付着した後に仕上剤が投入されるものであり、金属イオンと仕上剤成分との反応が防がれ、金属イオンの抗菌効果を洗濯物に残すことができる。
【0106】
電極113、114を構成する金属は銀、銅、もしくは銀と銅の合金であることが好ましい。銀電極から溶出する銀イオンは殺菌効果に優れ、銅電極から溶出する銅イオンは防カビ効果に優れる。銀と銅の合金からは銀イオンと銅イオンを同時に溶出させることができる。なお電極113、114の一方のみが減耗することのないよう、陽極と陰極の役割を適宜入れ替える。
【0107】
銀イオンは陽イオンである。洗濯物は水中では負に帯電しており、このため銀イオンは洗濯物に電気的に吸着される。洗濯物に吸着された状態では銀イオンは電気的に中和される。そのため仕上剤(柔軟剤)の成分である塩化物イオン(陰イオン)とは反応しにくくなる。ただし銀イオンは時間をかけて洗濯物に吸着されて行くので、仕上剤投入までにある程度時間を置かねばならない。そこで、銀イオン投入後の攪拌時間は10分を確保する。仕上剤投入後の攪拌時間は3分ほどで十分である。
【0108】
金属イオンはメイン給水管52aから洗剤室54を通って洗濯槽30に投入される。仕上剤は仕上剤室55から洗濯槽30に投入される。このように金属イオンをすすぎ水に投入するための経路と、仕上剤をすすぎ水に投入するための経路とが別系統のため、仕上剤をすすぎ水に投入するための経路を金属イオンが通り、この経路に残留していた仕上剤に金属イオンが接触して化合物となり、抗菌力を失うということがない。
【0109】
また上記シーケンスによれば、金属イオン及び仕上剤のそれぞれの投入に伴ってすすぎ水の攪拌が実行される。これにより、金属イオン及び仕上剤を洗濯物全体に確実に付着させることができる。
【0110】
電極113、114は金属イオンの溶出を続けるうちに次第に減耗し、金属イオンの溶出量が減少する。使用が長期にわたれば金属イオンの溶出量が不安定になったり、所定の溶出量を確保できなくなったりする。そのため、イオン溶出ユニット100は交換可能とされ、電極113、114の寿命が来れば新しいユニットに交換できるようになっている。さらに、電極113、114が耐用限界に達したことを使用者に報知し、イオン溶出ユニット100の交換などのメンテナンスを促すようになっている。
【0111】
電極113、114が耐用限界に達したことは以下に述べるような各種手法で知ることができる。以下、個々の手法につき説明する。
【0112】
(手法1)
電極113、114の減耗を、金属イオン溶出の累積時間により把握する。イオン溶出時間と電極減耗の相関関係を予め実験で調べておけば、イオン溶出の累積時間を求めることにより、電極113、114が耐用限界まで減耗したかどうかを知ることができる。マイクロコンピュータ130にタイマーを組み合わせることにより、これは簡単に実現できる。金属イオン溶出の累積時間が所定値に達したら電極113、114の減耗量が所定値、すなわち耐用限界に達したものと判定し、警告報知手段131を駆動してその旨を報知する。
【0113】
(手法2)
電極113、114の減耗を、これらに印加される電圧により把握する。電極113、114を流れる電流は定電流回路125から供給される。電極113、114が減耗すると電極間の抵抗値が上昇するので、定電流を維持するため定電流回路125は出力電圧を上げる。この出力電圧を電圧検知回路162で監視し、電圧が所定値に達したら電極113、114が耐用限界まで減耗したものと判定する。そして警告報知手段131を駆動し、その旨を報知する。
【0114】
図11は上記手法2を図解したグラフである。電極減耗は重量の減少という形で表示されている。電圧値が規定値(V1)を超えた時点で警告報知手段131が駆動されることになる。
【0115】
(手法3)
電極113、114の減耗を、電極間を流れる電流により把握する。電極113、114を流れる電流は定電流回路125から供給される。電極113、114が減耗すると電極間の抵抗値が上昇するので、定電流を維持するため定電流回路125は出力電圧を上げる。定電流回路125の出力電圧が上限まで達した後、さらに電極113、114が減耗すると、もはや定電流は維持できず、電流値は減少して行く。この電流値減少を電流検知回路160が検出したら電極113、114が耐用限界まで減耗したものと判定する。そして警告報知手段131を駆動し、その旨を報知する。
【0116】
図12は上記手法3を図解したグラフである。電極減耗は重量の減少という形で表示されている。定電流回路125の出力電圧が最大電圧値(Vmax)に達した後、電流値は減少を始める。電流値が規定値(A1)を下回った時点で警告報知手段131が駆動されることになる。
【0117】
(手法4)
電極113、114の減耗を、金属イオン溶出工程が含まれる洗濯工程の回数又は時間に基づき把握する。金属イオン溶出工程を含む洗濯工程を1回実行した場合、電極113、114の減耗はいかほどになるかを予め実験で確かめておけば、そのような洗濯工程の回数又は時間をカウントすることにより、電極113、114の減耗量を算出できる。マイクロコンピュータ130にカウンタを組み合わせることにより、これは簡単に実現できる。カウント数が所定値に達したら電極113、114の減耗量が所定値、すなわち耐用限界に達したものと判定し、警告報知手段131を駆動してその旨を報知する。
【0118】
(手法5)
電極113、114の減耗を光学式センサにより検出する。これを可能にするため、イオン溶出ユニット100に仕掛けを施す。そのような仕掛けを施したイオン溶出ユニット100を図13及び図14に示す。
【0119】
図13及び図14はイオン溶出ユニット100の第2実施形態を示す模型的断面図で、図7は水平断面図、図8は垂直断面図である。第1実施形態と共通する構成要素には第1実施形態で用いたのと同じ符号を付し、説明は省略する。
【0120】
電極113、114の端子115、116のある側の端を「根元」、その反対側の端を「先端」と呼ぶことにする。電極113、114は並列ではあるものの平行ではなく、図13に見られるように、先端ほど間隔が狭くなるようテーパ形に配置されている。このように配置すると、電極113、114は間隔の狭い部分から金属イオンとして溶出するので、電極113、114は先端から溶けて行くことになる。従って根元から先端までの長さに着目すれば、電極113、114の体積がどの程度減少したかを把握することができる。
【0121】
ケース110は電極114の配置されている側が正面、電極113の配置されている側が背面である。ケース110は全体が透明な合成樹脂で成形され、電極113、114を外部から視認できるようになっている。ケース110の外側に光学式センサを置く。ここでは発光部173a及び受光部173bからなる透過型光センサ173が用いられている。発光部173a及び受光部173bは間に電極113、114を挟む形でケース110の背面側及び正面側に配置される。
【0122】
透過型光センサ173は、電極113、114がそれ以上減耗すると所期のイオン溶出量を確保できなくなるという位置に配置されている。すなわち電極113、114が減耗し、発光部173aの放つ光が受光部173bに届くようになれば、電極113、114は耐用限界を迎えたということである。
【0123】
駆動回路120に付属する形で光センサ駆動回路が設けられている。光センサ駆動回路は電極113、114間に電圧が印加されている間中常に、あるいは所定のサンプリングレートで、透過型光センサ173を駆動し、電極113、114のセンシングを行わせる。発光部173aの放つ光を受光部173bが検出したら電極113、114が耐用限界まで減耗したものと判定する。そして警告報知手段131を駆動し、その旨を報知する。
【0124】
この方式によれば、電圧検知や電流検知の手法のように電源電圧の変動の影響を受けることなく、また電圧値や電流値の測定誤差に左右されることなく、電極113、114の減耗を正確に把握することができる。
【0125】
ケース110は必ずしも全体を透明にする必要はない。発光部173aと受光部173bに対向する箇所だけ透明な窓とし、他の部分は不透明な合成樹脂で成形することとしても構わない。
【0126】
また透過型光センサに代え、反射型光センサを使用することも可能である。
【0127】
手法5を除き、手法1〜4では時間、電圧、電流、回数などのパラメータより電極113、114が耐用限界に至る前にその減耗量を把握することが可能である。このような減耗量把握に基づき、電極113、114の減耗に伴う単位時間あたりのイオン溶出量減少を補償する措置をとることができる。
【0128】
すなわち電極113、114の減耗量又は単位時間あたりの金属イオン溶出量に応じて金属イオン溶出工程毎の電圧印加時間を変化させる。具体的には電極113、114が減耗するに従い金属イオン溶出工程毎の電圧印加時間を長くする。単位時間あたりの金属イオン溶出量が減少するのを時間を長くすることによって補償し、金属イオン溶出工程で生成されるべき金属イオンの総量を安定して確保するのがねらいである。減耗により単位時間あたりの金属イオン溶出量がどのように変化するかを実験で確かめておけば精度の高い時間制御を行うことができる。
【0129】
上記手法1〜5のいずれかにより、電極113、114が耐用限界まで減耗したと判定されたときは、駆動回路120は電極113、114への電圧印加を停止する。電圧を印加し続けると電極113、114はますます減耗し、端子115、116との接続部から折れることがある。電極113、114から切り離されるた端子115、116は水圧でケース110から抜けるおそれがある。端子115、116が抜ければ残った穴からの漏水が避けられない。このような事態に発展するのを防ぐため、電極113、114への通電を断つ。
【0130】
また上記手法1〜5のいずれかにより、電極113、114が耐用限界まで減耗したと判定されたときは、制御部80は洗濯機1の運転モードそのものを自動的に変更する。具体的には、洗濯機1の運転を止めてしまう。これは、イオン溶出ユニット100が十分に機能を果たし得ない状態のまま洗濯機1の運転を続け、それにもかかわらず使用者が、洗濯物に適正な抗菌処理がなされたものと思い込んでしまうという事態を避けるためである。洗濯機1の運転停止は以下の態様1〜3のいずれかにより実行される。
【0131】
(態様1)
洗濯工程(具体的には洗濯工程の中のすすぎ工程)の途中であっても洗濯機1を止めてしまう。イオン溶出ユニット100全体、又は電極113、114を新しいものに交換しないかぎり、洗濯機1を再スタートさせ、洗濯工程を完了することができない。
【0132】
(態様2)
現在の洗濯工程は最後まで進める。次回の洗濯時は、イオン溶出ユニット100全体、又は電極113、114を新しいものに交換しないかぎり、洗濯工程をスタートさせることができない。
【0133】
(態様3)
洗濯工程の途中で洗濯機1を止め、警告報知手段131に所定の報知を行わせる。使用者が事態を認識したうえで「継続使用」を選択すれば、洗濯機1を再スタートさせ、金属イオン添加機能を有しない普通の洗濯機として使い続けることができる。すなわち通常の運転モードが「停止」の運転モードに自動変更されたところ、これを使用者の意思により再変更することができる訳である。イオン溶出ユニット100全体、又は電極113、114を新しいものに交換すれば、元の金属イオン添加機能付き洗濯機に戻る。
【0134】
言うまでもないが、洗濯機1を通常の洗濯機として使用するかぎりにおいては電極113、114に電圧が印加されることはない。従って電極113、114あるいは端子115、116の減耗がそれ以上進行することはない。
【0135】
上記の各態様は、デフォルト設定で実行されることとしてもよく、使用者が態様を選択できることとしておいてもよい。
【0136】
使用者は操作/表示部81を通じて各種操作を行い、また洗濯機1の運転状況についての情報を得る。操作/表示部81のパネル面の構成例を図15に示す。各種操作ボタンや表示ランプの中に金属イオン関係の操作ボタンや表示ランプが配置されている。ここでは金属イオンとして銀イオンを用いることとしており、操作ボタンや表示ランプには「銀イオン」の表示が付されている。
【0137】
金属イオンに関係するものは銀イオン選択ボタン190、銀イオンエラー解除ボタン191、銀イオン表示ランプ192、及び銀イオンメータ193である。銀イオンメータ193は多数のLEDを縦に並べ、どの高さまで点灯するかにより量の把握を行う形式になっている。銀イオンメータ193の右隣は同様構成の水量メータ194が配置されている。
【0138】
銀イオン添加の選択は銀イオン選択ボタン190により行う。銀イオンメータ193は電極113、114の残り量を表示する。銀イオン表示ランプ192はイオン溶出ユニット100が非稼働か稼働中か、さらには電極113、114が耐用限界に達したかどうかなどを消灯及び点灯、連続点灯か点滅か、点灯色の違い、順次点灯などにより報知する。銀イオン表示ランプ192の表示と銀イオンメータ193の表示を連携させてもよい。すなわち銀イオン表示ランプ192及び/又は銀イオンメータ193は警告報知手段131の報知インターフェースとしての役割を果たす。
【0139】
銀イオン添加が選択された状態で洗濯工程が進行しているときにイオン溶出ユニットになんらかの不具合が発生した場合は、所定の処理を行う。まず、不具合が発生した旨の報知が行われる。不具合報知には銀イオン表示ランプ192を用いるが、洗い時間などを表示する7セグメント表示を利用してもよい。
【0140】
不具合内容が、電極113、114が耐用限界まで減耗したというものであれば、洗濯機1の運転モードは自動的に「停止」に切り替わる。ここで使用者が銀イオンエラー解除ボタン191を押せば、その不具合の解消が図られる。電極113、114が耐用限界まで減耗したことにより洗濯機1が止まったのであれば、銀イオン添加を行わない通常の洗濯機として以後の使用を続けることができる。
【0141】
洗濯の完了を優先事項としてもよい。すなわち洗濯工程の途中で不具合が生じた場合、最後まで洗濯工程を遂行した後に不具合を報知してもよい。あるいは、不具合が生じたことをメモリに記憶させておき、次回の洗濯時にメモリの記憶内容を表示したり、あるいは正常な動作を行えなくなっていることを報知してもよい。
【0142】
使用者に対する報知を行うのに、銀イオン表示ランプ192に加え、音声を用いることとしてもよい。またランプに代え液晶パネル等の文字表示手段を用いることとしてもよい。
【0143】
電極減耗報知手段を付加したイオン溶出ユニット100は、洗濯機1から切り離し、独立した商品として販売することもできる。
【0144】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【0145】
例えば、イオン溶出ユニット100の配置個所は給水弁50から給水口53までの間に限られる訳ではない。接続管51から給水口53までの間であればどこでもよい。すなわち給水弁50の上流側に置くこともできる。イオン溶出ユニット100を給水弁50より上流に置くこととすれば、イオン溶出ユニット100は常に水に漬かっていることになり、シール部材が乾燥して変質し、水もれを生じるといったことがなくなる。
【0146】
また、イオン溶出ユニット100を外箱10の外に置いてもよい。例えばイオン溶出ユニット100を交換可能なカートリッジの形状にし、接続管51にネジ込みなどの手段で取り付け、このカートリッジに給水ホースを接続するといった構成が考えられる。
【0147】
カートリッジ形状にするかどうかは別として、イオン溶出ユニット1を外箱10の外に置くこととすれば、洗濯機1の一部に設けた扉を開けたり、パネルを外したりすることなくイオン溶出ユニット100を交換でき、メンテナンスが楽である。しかも洗濯機1の内部の充電部に触れることがないので安全である。
【0148】
上記のように外箱10の外に置いたイオン溶出ユニット100には、駆動回路120から延ばしたケーブルを防水コネクタを介して接続し、電流を供給すればよいが、駆動回路120からの給電に頼らず、電池を電源として駆動することとしてもよいし、給水の水流に接するように水車を備えた水力発電装置を電源として駆動することとしてもよい。
【0149】
また本発明は、上記実施形態でとり上げたような形式の全自動洗濯機に適用対象が限定されるものではない。横型ドラム(タンブラー方式)、斜めドラム、乾燥機兼用のもの、又は二槽式など、あらゆる形式の洗濯機に本発明は適用可能である。
【0150】
【発明の効果】
本発明は以下に掲げるような効果を奏するものである。
【0151】
(1)電極間に電圧を印加して金属イオンを生成するイオン溶出ユニットにおいて、前記電極の減耗を報知する手段を付属させたから、使用者はイオン溶出ユニットの電極が減耗したことを報知手段から教えられ、必要な措置をとることができる。従ってイオン溶出ユニットを機能低下状態まま使い続け、しかも金属イオンによる抗菌性付与が適正に行われているという誤った認識を持つことがない。
【0152】
(2)上記のようなイオン溶出ユニットにおいて、前記電極の減耗量が所定値に達したときに前記報知が行われることとしたから、電極が減耗して所期のイオン溶出量を確保できなくなったときに報知を受けることにより、電極あるいはイオン溶出ユニットそのものを適時に交換することができる。これにより、電極が減耗状態のままなおも使い続けられ、減耗の程度がひどくなった電極が折れ、後に残された端子が水圧によってイオン溶出ユニットのケースから抜け、漏水を生じるといった問題を回避することができる。
【0153】
(3)上記のようなイオン溶出ユニットにおいて、前記電極の減耗量が所定値に達したときにこの電極への電圧印加が停止されることとしたから、電極が減耗して所期のイオン溶出量を確保できなくなったときにはそれ以上のイオン溶出は停止される。これにより、電極がさらに減耗して折れ、後に残された端子が水圧によってイオン溶出ユニットのケースから抜け、漏水を生じるといった問題を回避することができる。
【0154】
(4)上記のようなイオン溶出ユニットにおいて、前記電極の減耗が、金属イオン溶出の累積時間に基づき把握されることとしたから、電極への電圧印加時間を管理することにより電極の減耗が把握される。タイマーを用いることにより電極の減耗を監視することができるとともに、電極が耐用限界まで減耗する時期を予測して使用者の注意を喚起することも可能となる。
【0155】
(5)上記のようなイオン溶出ユニットにおいて、前記電極の減耗が、この電極に印加される電圧に基づき把握されることとしたから、電極に印加される電圧を監視することにより電極の減耗が把握される。電圧検知回路を用いることにより電極の減耗を監視することができるとともに、電極が耐用限界まで減耗する時期を予測して使用者の注意を喚起することも可能となる。
【0156】
(6)上記のようなイオン溶出ユニットにおいて、前記電極の減耗が、この電極の入力電流に基づき把握されることとしたから、電極間を流れる電流を監視することにより電極の減耗が把握される。電流検知回路を用いることにより電極の減耗を監視することができるとともに、電極が耐用限界まで減耗する時期を予測して使用者の注意を喚起することも可能となる。
【0157】
(7)上記のようなイオン溶出ユニットにおいて、前記電極の減耗が、光学式センサにより検出されることとしたから、電極の形状変化を光学式センサにより検出し、これに基づき電極の減耗が把握される。電圧検知や電流検知の手法のように電源電圧の変動の影響を受けることなく、また電圧値や電流値の測定誤差に左右されることなく、電極の減耗を正確に把握することができる。
【0158】
(8)上記のようなイオン溶出ユニットを洗濯機に搭載し、水に金属イオンを添加して用いることができるようにしたから、洗濯機で用いる水に金属イオンを添加して洗濯物に抗菌処理を施すことができる。
【0159】
(9)上記のような洗濯機において、前記イオン溶出ユニットの電極の減耗を、金属イオン溶出工程が含まれる洗濯工程の回数又は時間に基づき把握することとしたから、洗濯機の運転履歴の管理によりイオン溶出ユニットの電極の減耗が把握される。カウンタを用いることにより電極の減耗を監視することができるとともに、電極が耐用限界まで減耗する時期を予測して使用者の注意を喚起することも可能となる。
【0160】
(10)上記のような洗濯機において、前記イオン溶出ユニットの電極の減耗量又は単位時間あたりの金属イオン溶出量に応じ、金属イオン溶出工程毎の電圧印加時間を変化させることとしたから、電極減耗による単位時間あたりのイオン溶出量減少が電圧印加時間の調整により補償される。金属イオン溶出工程で生成されるべき金属イオンの総量を安定して確保することができる。
【0161】
(11)上記のような洗濯機において、前記イオン溶出ユニットの電極の減耗量が所定値に達したときに洗濯機運転モードが自動的に変更されることとしたから、電極減耗により所期の抗菌効果を期待できなくなったときは、洗濯機運転モードが自動的に変更されてこの事態への対処が図られる。これにより、イオン溶出ユニットが十分に機能を果たし得ない状態のまま洗濯機の運転を続け、それにもかかわらず使用者が、洗濯物に適正な抗菌処理がなされたものと思い込んでしまうという事態を避けることができる。
【0162】
(12)上記のような洗濯機において、前記自動的に変更された運転モードは再変更操作が可能であることとしたから、自動変更された洗濯機運転モードを使用者の意思により再変更することができる。従って、使用者がそれを望めば、洗濯機を別の運転モードで運転することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態を示す洗濯機の垂直断面図
【図2】 給水口の模型的垂直断面図
【図3】 洗濯工程全体のフローチャート
【図4】 洗い工程のフローチャート
【図5】 すすぎ工程のフローチャート
【図6】 脱水工程のフローチャート
【図7】 イオン溶出ユニットの第1実施形態を示す模型的水平断面図
【図8】 イオン溶出ユニットの第1実施形態を示す模型的垂直断面図
【図9】 イオン溶出ユニットの駆動回路図
【図10】 金属イオン及び仕上剤の投入シーケンスを説明するフローチャート
【図11】 イオン溶出ユニットの電極減耗を把握する手法を図解する第1のグラフ
【図12】 イオン溶出ユニットの電極減耗を把握する手法を図解する第2のグラフ
【図13】 イオン溶出ユニットの第2実施形態を示す模型的水平断面図
【図14】 イオン溶出ユニットの第2実施形態を示す模型的垂直断面図
【図15】 洗濯機の操作/表示部の構成例を示す図
【符号の説明】
1 洗濯機
10 外箱
20 水槽
30 洗濯槽
33 パルセータ
40 駆動ユニット
50 給水弁
50a メイン給水弁
50b サブ給水弁
53 給水口
54 洗剤室
55 仕上剤室
68 排水弁
80 制御部
81 操作/表示部
100 イオン溶出ユニット
110 ケース
113、114 電極
120 駆動回路
131 警告報知手段
173 透過型光センサ
173a 発光部
173b 受光部
Claims (6)
- 電極間に電圧を印加して金属イオンを生成するイオン溶出ユニットにおいて、
前記電極に電流を供給する定電流回路と、
前記電流が規定値になったことを検出する電流検知回路と、
前記電極の減耗を報知する手段と、
を付属させ、
前記定電流回路の出力電圧が上限まで達した後に、前記電流検知回路が前記規定値を下回ったことを検知することで、前記電極の減耗が把握されることを特徴とするイオン溶出ユニット。 - 電極間に電圧を印加して金属イオンを生成するイオン溶出ユニットにおいて、
前記電極の減耗を報知する手段を付属させ、
前記電極の減耗が、光学式センサにより検出されることを特徴とするイオン溶出ユニット。 - 請求項1または2に記載のイオン溶出ユニットを搭載し、水に金属イオンを添加して用いることができるようにしたことを特徴とする洗濯機。
- 前記イオン溶出ユニットの電極の減耗量が所定値に達したときに洗濯機運転モードが自動的に変更されることを特徴とする請求項3に記載の洗濯機。
- 電極間に電圧を印加して金属イオンを生成するイオン溶出ユニットを搭載することで、水に金属イオンを添加して用いることができるようにし、
前記イオン溶出ユニットに前記電極の減耗を報知する手段を付属させ、
さらに、前記電極の減耗量が所定値に達したときに洗濯機運転モードが自動的に変更されることを特徴とする洗濯機。 - 前記自動的に変更された運転モードは再変更操作が可能であることを特徴とする請求項5に記載の洗濯機。
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