JP3963793B2 - イオン溶出ユニット及びこれを搭載した洗濯機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は洗濯物を金属イオンで抗菌処理することのできる洗濯機に関する。
【0002】
【従来の技術】
洗濯機で洗濯を行う際、水、特にすすぎ水に仕上物質を加えることが良く行われる。仕上物質として一般的なのは柔軟剤やのり剤である。これに加え、最近では洗濯物に抗菌性を持たせる仕上処理のニーズが高まっている。
【0003】
洗濯物は、衛生上の観点からは天日干しをすることが望ましい。しかしながら近年では、女性就労率の向上や核家族化の進行により、日中は家に誰もいないという家庭が増えている。このような家庭では室内干しにたよらざるを得ない。日中誰かが在宅している家庭にあっても、雨天の折りは室内干しをすることになる。
【0004】
室内干しの場合、天日干しに比べ洗濯物に細菌やカビが繁殖しやすくなる。梅雨時のような高湿時や低温時など、洗濯物の乾燥に時間がかかる場合にこの傾向は顕著である。繁殖状況によっては洗濯物が異臭を放つときもある。このため、日常的に室内干しを余儀なくされる家庭では、細菌やカビの繁殖を抑制するため、布類に抗菌処理を施したいという要請が強い。
【0005】
最近では繊維に抗菌防臭加工や制菌加工を施した衣類も多くなっている。しかしながら家庭内の繊維製品をすべて抗菌防臭加工済みのもので揃えるのは困難である。また抗菌防臭加工の効果は洗濯を重ねるにつれ落ちて行く。
【0006】
そこで、洗濯の都度洗濯物を抗菌処理しようという考えが生まれた。例えば実開平5−74487号公報には、銀イオン、銅イオンなど殺菌力を有する金属イオンを発生するイオン発生機器を装備した電気洗濯機が記載されている。特開2000−93691号公報には電界の発生によって洗浄液を殺菌するようにした洗濯機が記載されている。特開2001−276484号公報には洗浄水に銀イオンを添加する銀イオン添加ユニットを具備した洗濯機が記載されている。
【0007】
また洗濯機に用途限定したものではないが、イオンにより水を浄化する殺菌浄化装置が実開昭63−126099号公報に記載されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
洗濯工程で抗菌処理を行う手法の中では、金属イオンを用いるものが効果も大きく、実用的である。洗濯機で使用する水に金属イオン、例えば銀イオンを添加する場合、水中に銀製の電極を入れて電圧を印加すると、陽極側の電極においてAg→Ag++e-の反応が起こり、水中に銀イオンAg+が溶出する。上記特開2001−276484号公報記載の洗濯機では電力制御により銀溶出量を一定に保っているが、水の導電率は水質や水温の影響を受けやすいため、電力制御では一定の銀イオン濃度を安定して得るのは難しいという問題があった。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、洗濯物の抗菌処理のため水に金属イオンを溶出するイオン溶出ユニットにおいて、一定濃度の金属イオンが安定して得られ、溶出効率も高いイオン溶出ユニットを提供することを第1の目的とする。また、このようなイオン溶出ユニットを組み込んで洗濯物に抗菌処理を施すとともに、イオン溶出ユニットの能力を十分に引き出すことのできる洗濯機を提供することを第2の目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明ではイオン溶出ユニットを次のように構成した。
【0011】
電極間に電圧を印加してこの電極より金属イオンを溶出させるイオン溶出ユニットにおいて、前記電極間を流れる電流が値一定となるよう電圧を制御することとした。
【0012】
この構成によれば、単位時間あたりの金属イオン溶出量が一定になる。
【0013】
電極間を流れる電流が値一定となるよう電圧を制御するイオン溶出ユニットにおいて、前記電流を直流とした。
【0014】
この構成によれば、一旦溶出した金属イオンが電極に逆戻りすることがない。
【0015】
電極間に電圧を印加してこの電極より金属イオンを溶出させるイオン溶出ユニットにおいて、前記電極間を流れる電流を直流とするとともに、イオン溶出工程の開始から終了に至るまで、印加する電圧の極性を一定に保つこととした。
【0016】
この構成によれば、イオン溶出工程中一定時間毎に極性を反転する仕組みは不要である。また、極性が反転しないので、金属イオンの溶出効率が高くなる。
【0017】
電極間を流れる電流を直流とするとともに、イオン溶出工程の開始から終了に至るまで、印加する電圧の極性を一定に保つイオン溶出ユニットにおいて、電圧印加開始時の電圧の極性がランダムに決定されることとした。
【0018】
この構成によれば、一方の電極のみが陽極として使われ、金属イオンの溶出により減耗して行き、他方の電極は陰極として使われ続け、スケールが堆積して行くという事態を防ぐことができる。また、イオン溶出工程の各回毎に極性を反転する構成と異なり、前回使用時の極性を記憶しておく必要がない。
【0019】
電極間を流れる電流を直流とするとともに、イオン溶出工程の開始から終了に至るまで、印加する電圧の極性を一定に保つイオン溶出ユニットにおいて、電圧印加開始時の電圧の極性が事実上ランダムと見なせる関数により決定されることとした。
【0020】
この構成によれば、一方の電極のみが陽極として使われ、金属イオンの溶出により減耗して行き、他方の電極は陰極として使われ続け、スケールが堆積して行くという事態を防ぐことができる。また、イオン溶出工程の各回毎に極性を反転する構成と異なり、前回使用時の極性を記憶しておく必要がない。さらに、ランダム処理を行うのに高価な乱数発生回路を用いる必要がない。
【0023】
電極間を流れる電流を直流とするとともに、イオン溶出工程の開始から終了に至るまで、印加する電圧の極性を一定に保つイオン発生ユニットにおいて、電圧印加開始時の電圧の極性が事実上周期的反転と見なせる数列により決定されることとした。
【0024】
この構成によれば、一方の電極のみが陽極として使われ、金属イオンの溶出により減耗して行き、他方の電極は陰極として使われ続け、スケールが堆積して行くという事態を防ぐことができる。また、イオン溶出工程の各回毎に極性を反転する構成と異なり、前回使用時の極性を記憶しておく必要がない。周期的反転の仕組みづくりも容易である。
【0025】
上記のようなイオン溶出ユニットにおいて、強制的電極洗浄モードが設定されていることとした。
【0026】
この構成によれば、同じ極性での運転がたまたま何回か続き、電極表面にスケールが付着してイオン溶出量が減少したとしても、強制的電極洗浄モードで運転することによりスケールを除去してイオン溶出量を回復することができる。
【0027】
また本発明では、洗濯機を次のように構成した。
【0028】
上記のようなイオン溶出ユニットを洗濯機に搭載し、水に金属イオンを添加して用いることができるようにした。
【0029】
この構成によれば、洗濯機で用いる水に金属イオンを安定して、且つ効率良く添加することができる。
【0030】
洗濯工程中に複数回存在するイオン溶出工程の各回毎に電圧印加開始時の電圧の極性を反転することとした。
【0031】
この構成によれば、一方の電極のみが陽極として使われ、金属イオンの溶出により減耗して行き、他方の電極は陰極として使われ続け、スケールが堆積して行くという事態を防ぐことができる。
【0032】
上記のような洗濯機において、前記イオン溶出ユニットの電極間を流れる電気量が、設定水量に比例することとした。
【0033】
この構成によれば、設定水位や給水流量にかかわらず、洗濯機で使用する水の中の金属イオン濃度を一定にすることができる。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図1〜図15に基づき説明する。
【0035】
図1は洗濯機1の全体構成を示す垂直断面図である。洗濯機1は全自動型のものであり、外箱10を備える。外箱10は直方体形状で、金属又は合成樹脂により成形され、その上面と底面は開口部となっている。外箱10の上面開口部には合成樹脂製の上面板11を重ね、外箱10にネジで固定する。図1において左側が洗濯機1の正面、右側が背面であり、背面側に位置する上面板11の上面に同じく合成樹脂製のバックパネル12を重ね、上面板11にネジで固定する。外箱10の底面開口部には合成樹脂製のベース13を重ね、外箱10にネジで固定する。これまでに述べてきたネジはいずれも図示しない。
【0036】
ベース13の四隅には外箱10を床の上に支えるための脚部14a、14bが設けられている。背面側の脚部14bはベース13に一体成型した固定脚である。正面側の脚部14aは高さ可変のネジ脚であり、これを回して洗濯機1のレベル出しを行う。
【0037】
上面板11には後述する洗濯槽に洗濯物を投入するための洗濯物投入口15が形設される。洗濯物投入口15を蓋16が上から覆う。蓋16は上面板11にヒンジ部17で結合され、垂直面内で回動する。
【0038】
外箱10の内部には水槽20と、脱水槽を兼ねる洗濯槽30を配置する。水槽20も洗濯槽30も上面が開口した円筒形のカップの形状を呈しており、各々軸線を垂直にし、水槽20を外側、洗濯槽30を内側とする形で同心的に配置される。水槽20をサスペンション部材21が吊り下げる。サスペンション部材21は水槽20の外面下部と外箱10の内面コーナー部とを連結する形で計4箇所に配備され、水槽20を水平面内で揺動できるように支持する。
【0039】
洗濯槽30は上方に向かい緩やかなテーパで広がる周壁を有する。この周壁には、その最上部に環状に配置した複数個の脱水孔31を除き、液体を通すための開口部はない。すなわち洗濯槽30はいわゆる「穴なし」タイプである。洗濯槽30の上部開口部の縁には、洗濯物の脱水のため洗濯槽30を高速回転させたときに振動を抑制する働きをする環状のバランサ32を装着する。洗濯槽30の内部底面には槽内で洗濯水あるいはすすぎ水の流動を生じさせるためのパルセータ33を配置する。
【0040】
水槽20の下面には駆動ユニット40が装着される。駆動ユニット40はモータ41、クラッチ機構42、及びブレーキ機構43を含み、その中心部から脱水軸44とパルセータ軸45を上向きに突出させている。脱水軸44とパルセータ軸45は脱水軸44を外側、パルセータ軸45を内側とする二重軸構造となっており、水槽20の中に入り込んだ後、脱水軸44は洗濯槽30に連結されてこれを支える。パルセータ軸45はさらに洗濯槽30の中に入り込み、パルセータ33に連結してこれを支える。脱水軸44と水槽20の間、及びパルセータ軸45と洗濯槽30の間には各々水もれを防ぐためのシール部材を配置する。
【0041】
バックパネル12の下の空間には電磁的に開閉する給水弁50が配置される。給水弁50はバックパネル12を貫通して上方に突き出す接続管51を有する。接続管51には水道水などの上水を供給する給水ホース(図示せず)が接続される。給水弁50からは給水管52が延び出す。給水管52の先端は容器状の給水口53に接続する。給水口53は洗濯槽30の内部に臨む位置にあり、図2に示す構造を有する。
【0042】
図2は給水口53の模型的垂直断面図で、正面側から見た形になっている。給水口53は上面が開口しており、内部は左右に区画されている。左側の区画は洗剤室54で、洗剤を入れておく準備空間となる。右側の区画は仕上剤室55で、洗濯用の仕上剤を入れておく準備空間となる。洗剤室54の底部正面側には洗濯槽30に注水する横長の注水口56が設けられている。仕上剤室55にはサイホン部57が設けられている。
【0043】
サイホン部57は仕上剤室55の底面から垂直に立ち上がる内管57aと、内管57aにかぶせられるキャップ状の外管57bとからなる。内管57aと外管57bの間には水の通る隙間が形成されている。内管57aの底部は洗濯槽30の内部に向かって開口する。外管57bの下端は仕上剤室55の底面と所定の隙間を保ち、ここが水の入口になる。内管57aの上端を超えるレベルまで仕上剤室55に水が注ぎ込まれるとサイホンの作用が起こり、水はサイホン部57を通って仕上剤室55から吸い出され、洗濯槽30へと落下する。
【0044】
給水弁50はメイン給水弁50aとサブ給水弁50bからなる。接続管51はメイン給水弁50a及びサブ給水弁50bの両方に共通である。給水管52もメイン給水弁50aに接続されたメイン給水管52aとサブ給水弁50bに接続されたサブ給水管52bからなる。
【0045】
メイン給水管52aは洗剤室54に接続され、サブ給水管52bは仕上剤室55に接続される。すなわちメイン給水管52aから洗剤室54を通って洗濯槽30に注ぐ経路と、サブ給水管52bから仕上剤室55を通って洗濯槽30に注ぐ経路とは別系統になっている。
【0046】
洗剤室54の上面開口と仕上剤室55の上面開口には各々図示しない蓋が設けられる。使用者は必要に応じ蓋を開け、洗剤室54に洗剤を、仕上剤室55に仕上剤を、それぞれ投入する。
【0047】
図1に戻って説明を続ける。水槽20の底部には水槽20及び洗濯槽30の中の水を外箱10の外に排水する排水ホース60が取り付けられる。排水ホース60には排水管61及び排水管62から水が流れ込む。排水管61は水槽20の底面の外周寄りの箇所に接続されている。排水管62は水槽20の底面の中心寄りの箇所に接続されている。
【0048】
水槽20の内部底面には排水管62の接続箇所を内側に囲い込むように環状の隔壁63が固定されている。隔壁63の上部には環状のシール部材64が取り付けられる。このシール部材64が洗濯槽30の底部外面に固定したディスク65の外周面に接触することにより、水槽20と洗濯槽30との間に独立した排水空間66が形成される。排水空間66は洗濯槽30の底部に形設した排水口67を介して洗濯槽30の内部に連通する。
【0049】
排水管62には電磁的に開閉する排水弁68が設けられる。排水管62の排水弁68の上流側にあたる箇所にはエアトラップ69が設けられる。エアトラップ69からは導圧管70が延び出す。導圧管70の上端には水位スイッチ71が接続される。
【0050】
外箱10の正面側には制御部80を配置する。制御部80は上面板11の下に置かれており、上面板11の上面に設けられた操作/表示部81を通じて使用者からの操作指令を受け、駆動ユニット40、給水弁50、及び排水弁68に動作指令を発する。また制御部80は操作/表示部81に表示指令を発する。制御部80は後述するイオン溶出ユニットの駆動回路を含む。
【0051】
洗濯機1の動作につき説明する。蓋16を開け、洗濯物投入口15から洗濯槽30の中へ洗濯物を投入する。給水口53の洗剤室54には洗剤を入れる。必要なら給水口53の仕上剤室55に仕上剤を入れる。仕上剤は洗濯工程の途中で入れてもよい。
【0052】
洗剤の投入準備を整えた後、蓋16を閉じ、操作/表示部81の操作ボタン群を操作して洗濯条件を選ぶ。最後にスタートボタンを押せば、図3〜図6のフローチャートに従い洗濯工程が遂行される。
【0053】
図3は洗濯の全体工程を示すフローチャートである。ステップS201では、設定した時刻に洗濯を開始する、予約運転の選択がなされているかどうかを確認する。予約運転が選択されていればステップS206に進む。選択されていなければステップS202に進む。
【0054】
ステップS206に進んだ場合は運転開始時刻になったかどうかの確認が行われる。運転開始時刻になったらステップS202に進む。
【0055】
ステップS202では洗い工程の選択がなされているかどうかを確認する。選択がなされていればステップS300に進む。ステップS300の洗い工程の内容は別途図4のフローチャートで説明する。洗い工程終了後、ステップS203に進む。洗い工程の選択がなされていなければステップS202から直ちにステップS203に進む。
【0056】
ステップS203ではすすぎ工程の選択がなされているかどうかを確認する。選択されていればステップS400に進む。ステップS400のすすぎ工程の内容は別途図5のフローチャートで説明する。すすぎ工程終了後、ステップS204に進む。すすぎ工程の選択がなされていなければステップS203から直ちにステップS204に進む。
【0057】
ステップS204では脱水工程の選択がなされているかどうかを確認する。選択されていればステップS500に進む。ステップS500の脱水工程の内容は別途図6のフローチャートで説明する。脱水工程終了後、ステップS205に進む。脱水工程の選択がなされていなければステップS204から直ちにステップS205に進む。
【0058】
ステップS205では制御部80、特にその中に含まれる演算装置(マイクロコンピュータ)の終了処理が手順に従って自動的に進められる。また洗濯工程が完了したことを終了音で報知する。すべてが終了した後、洗濯機1は次の洗濯工程に備えて待機状態に戻る。
【0059】
続いて図4〜図6に基づき洗い、すすぎ、脱水の各個別工程につき説明する。
【0060】
図4は洗い工程のフローチャートである。ステップS301では水位スイッチ71の検知している洗濯槽30内の水位データのとり込みが行われる。ステップS302では容量センシングの選択がなされているかどうかを確認する。選択されていればステップS308に進む。選択されていなければステップS302から直ちにステップS303に進む。
【0061】
ステップS308ではパルセータ33の回転負荷により洗濯物の量を測定する。容量センシング後、ステップS303に進む。
【0062】
ステップ303ではメイン給水弁50aが開き、メイン給水管52a及び給水口53を通じて洗濯槽30に水が注がれる。給水口53の洗剤室54に入れられた洗剤も水に混じって洗濯槽30に投入される。排水弁68は閉じている。水位スイッチ71が設定水位を検知したらメイン給水弁50aは閉じる。そしてステップS304に進む。
【0063】
ステップS304ではなじませ運転を行う。パルセータ33が反転回転し、洗濯物を水の中で揺り動かして、洗濯物を水になじませる。これにより、洗濯物に水を十分に吸収させる。また洗濯物の各所にとらわれていた空気を逃がす。なじませ運転の結果、水位スイッチ71の検知する水位が当初より下がったときは、ステップS305でメイン給水弁50aを開いて水を補給し、設定水位を回復させる。
【0064】
「布質センシング」を行う洗濯コースを選んでいれば、なじませ運転と共に布質センシングが実施される。なじませ運転を行った後、設定水位からの水位変化を検出し、水位が規定値以上に低下していれば吸水性の高い布質であると判断する。
【0065】
ステップS305で安定した設定水位が得られた後、ステップS306に移る。使用者の設定に従い、モータ41がパルセータ33を所定のパターンで回転させ、洗濯槽30の中に洗濯のための主水流を形成する。この主水流により洗濯物の洗濯が行われる。脱水軸44にはブレーキ装置43によりブレーキがかかっており、洗濯水及び洗濯物が動いても洗濯槽30は回転しない。
【0066】
主水流の期間が経過した後、ステップS307に進む。ステップS307ではパルセータ33が小刻みに反転して洗濯物をほぐし、洗濯槽30の中に洗濯物がバランス良く配分されるようにする。これは洗濯槽30の脱水回転に備えるためである。
【0067】
続いて図5のフローチャートに基づきすすぎ工程を説明する。最初にステップS500の脱水工程が入るが、これについては図6のフローチャートで説明する。脱水後、ステップS401に進む。ステップS401ではメイン給水弁50aが開き、設定水位まで給水が行われる。
【0068】
給水後、ステップS402に進む。ステップS402では1回目のなじませ運転が行われる。なじませ運転は洗い工程のステップS304で行ったのと同様のものである。
【0069】
1回目のなじませ運転の後、ステップS403に進む。なじませ運転の結果、水位スイッチ71の検知する水位が当初より下がっていたときはメイン給水弁50aを開いて水を補給し、設定水位を回復させる。
【0070】
ステップS403で設定水位を回復した後、ステップS404で2回目のなじませ運転を行う。そしてステップS405に進む。使用者の設定に従い、モータ41がパルセータ33を所定のパターンで回転させ、洗濯槽30の中にすすぎのための主水流を形成する。この主水流により洗濯物のすすぎが行われる。脱水軸44にはブレーキ装置43によりブレーキがかかっており、すすぎ水及び洗濯物が動いても洗濯槽30は回転しない。
【0071】
主水流の期間が経過した後、ステップS406に移る。ステップS406ではパルセータ33が小刻みに反転して洗濯物をほぐす。これにより洗濯槽30の中に洗濯物がバランス良く配分されるようにし、脱水回転に備える。
【0072】
上記説明では洗濯槽30の中にすすぎ水をためておいてすすぎを行う「ためすすぎ」を行うものとしたが、洗濯槽30を低速回転させながら給水口53より水を注ぐ「シャワー注水」を行うこともある。どちらを採用するか、あるいは両方とも採用するかは使用者の選択により決定される。
【0073】
続いて図6のフローチャートに基づき脱水工程を説明する。まずステップS501で排水弁68が開く。洗濯槽30の中の洗濯水は排水空間66から排水管62を通じて排水される。排水弁68は脱水工程中は開いたままである。
【0074】
所定時間が経過し、洗濯物から大部分の洗濯水が抜けたところでクラッチ装置42が切り替わり、モータ41が今度は脱水軸44を回転させる。これにより洗濯槽30が脱水回転を行う。パルセータ33も洗濯槽30とともに回転する。
【0075】
洗濯槽30が高速で回転すると、洗濯物は遠心力で洗濯槽30の内周壁に押しつけられる。洗濯物に含まれていた洗濯水も洗濯槽30の周壁内面に集まってくるが、前述の通り、洗濯槽30はテーパ状に上方に広がっているので、遠心力を受けた洗濯水は洗濯槽30の内面を上昇する。洗濯水は洗濯槽30の上端にたどりついたところで脱水孔31から放出される。脱水孔31を離れた洗濯水は水槽20の内面にたたきつけられ、水槽20の内面を伝って水槽20の底部に流れ落ちる。そして排水管61と、それに続く排水ホース60を通って外箱10の外に排出される。
【0076】
図6のフローでは、ステップS502とステップS503で比較的低速の脱水運転を行った後、ステップS504とステップS505で高速の脱水運転を行う構成となっている。ステップS505の後、ステップS506に移行する。ステップS506ではモータ41への通電を断つとともにブレーキ機構43を作動させることなく洗濯槽30を慣性で回転させ、自然停止に至らせる。
【0077】
さて、洗濯機1はイオン溶出ユニット100を備える。イオン溶出ユニット100はメイン給水管52aの途中、すなわちメイン給水弁50aと洗剤室54の間に配置されている。以下図7〜図15に基づきイオン溶出ユニット100の構造と機能、及び洗濯機1に搭載されて果たす役割につき説明する。
【0078】
図7及び図8はイオン溶出ユニット100の模型的断面図で、図7は水平断面図、図8は垂直断面図である。イオン溶出ユニット100は合成樹脂など絶縁材料からなるケース110を有する。ケース110は一方の端に水の流入口111、他方の端に水の流出口112を備える。ケース110の内部には2枚の板状電極113、114が互いに平行する形で、且つ所定間隔を置いて配置されている。電極113、114は抗菌性を有する金属イオンのもとになる金属、すなわち銀、銅、亜鉛などからなる。
【0079】
電極113、114には各々一端に端子115、116が設けられる。電極113と端子115、電極114と端子116をそれぞれ一体化できればよいが、一体化できない場合は、電極と端子の間の接合部及びケース110内の端子部分を合成樹脂でコーティングして水との接触を断ち、電食が生じないようにしておく。端子115、116はケース110の外に突出し、制御部80の中の駆動回路に接続される。
【0080】
ケース110の内部には電極113、114の長手方向と平行に水が流れる。ケース110の中に水が存在する状態で電極113、114に所定の電圧を印加すると、電極113、114の陽極側から電極構成金属の金属イオンが溶出する。電極113、114は例えば2cm×5cm、厚さ1mm程度の銀プレートとし、5mmの距離を隔てて配置する。
【0081】
図9に示すのはイオン溶出ユニット100の駆動回路120である。商用電源121にトランス122が接続され、100Vを所定の電圧に降圧する。トランス122の出力電圧は全波整流回路123によって整流された後、定電圧回路124で定電圧とされる。定電圧回路124には定電流回路125が接続されている。定電流回路125は後述する電極駆動回路150に対し、電極駆動回路150内の抵抗値の変化にかかわらず一定の電流を供給するように動作する。
【0082】
商用電源121にはトランス122と並列に整流ダイオード126が接続される。整流ダイオード126の出力電圧はコンデンサ127によって平滑化された後、定電圧回路128によって定電圧とされ、マイクロコンピュータ130に供給される。マイクロコンピュータ130はトランス122の一次側コイルの一端と商用電源121との間に接続されたトライアック129を起動制御する。
【0083】
電極駆動回路150はNPN型トランジスタQ1〜Q4とダイオードD1、D2、抵抗R1〜R7を図のように接続して構成されている。トランジスタQ1とダイオードD1はフォトカプラ151を構成し、トランジスタQ2とダイオードD2はフォトカプラ152を構成する。すなわちダイオードD1、D2はフォトダイオードであり、トランジスタQ1、Q2はフォトトランジスタである。
【0084】
今、マイクロコンピュータ130からラインL1にハイレベル、ラインL2にローレベルの電圧が与えられると、ダイオードD2がONになり、それに付随してトランジスタQ2もONになる。トランジスタQ2がONになると抵抗R3、R4、R7に電流が流れ、トランジスタQ3のベースにバイアスがかかり、トランジスタQ3はONになる。
【0085】
一方、ダイオードD1はOFFなのでトランジスタQ1はOFF、トランジスタQ4もOFFとなる。この状態では、陽極側の電極113から陰極側の電極114に向かって電流が流れる。これによってイオン溶出ユニット100内で、陽極から金属イオンが溶出する。
【0086】
イオン溶出ユニット100に長時間一方向に電流を流すと、図9で陽極側となっている電極113が減耗するとともに、陰極側となっている電極114には水中の不純物がスケールとして固着する。これはイオン溶出ユニット100の性能低下をもたらすので、強制的電極洗浄モードで電極駆動回路150を運転できるようになっている。
【0087】
強制的電極洗浄モードでは、ラインL1、L2の電圧を逆にして、電極113、114を逆方向に電流が流れるようにマイクロコンピュータ130が制御を切り替える。この場合、トランジスタQ1、Q4がON、トランジスタQ2、Q3がOFFとなる。マイクロコンピュータ130はカウンタ機能を有していて、所定カウント数に達する度に上述の切り替えを行う。
【0088】
電極駆動回路150内の抵抗の変化、特に電極113、114の抵抗変化によって、電極間を流れる電流値が減少するなどの事態が生じた場合は、定電流回路125がその出力電圧を上げ、電流の減少を防止する。しかしながら、累積使用時間が長くなるとイオン溶出ユニット100が寿命を迎え、強制的電極洗浄モードへの切り替えや、定電流回路125の出力電圧上昇を実施しても電流減少を防げなくなる。
【0089】
そこで本回路では、イオン溶出ユニット100の電極113、114間を流れる電流を抵抗R7に生じる電圧によって監視し、その電流が所定の最小電流値に至ると、それを電流検知回路160が検出するようにしている。最小電流値を検出したという情報はフォトカプラ163を構成するフォトダイオードD3からフォトトランジスタQ5を介してマイクロコンピュータ130に伝達される。マイクロコンピュータ130は線路L3を介して警告表示手段131を駆動し、所定の警告表示を行わせる。警告表示手段131は操作/表示部81に配置されている。
【0090】
また、電極駆動回路150内でのショートなどの事故については、電流が所定の最大電流値以上になったことを検出する電流検知回路161が用意されており、この電流検知回路161の出力に基づいてマイクロコンピュータ130は警告表示手段131を駆動する。さらに、定電流回路125の出力電圧が予め定めた最小値以下になると、電圧検知回路162がこれを検知し、同様にマイクロコンピュータ130が警告表示手段131を駆動する。
【0091】
駆動回路120は、洗濯機1に搭載されたイオン溶出ユニット100を次のように駆動する。
【0092】
図10は金属イオン投入のシーケンスを示すフローチャートである。図10のシーケンスは、図5のフローの中で、ステップS405(主水流)における最終すすぎの段階に生じる。すなわち最終すすぎが開始されるとステップS411で金属イオンの投入が選択されているかどうかを確認する。操作/表示部81による選択動作で「金属イオンの投入」が選択されていればステップS412に進む。選択されていなければステップS414に進む。
【0093】
ステップS412ではメイン給水弁50aが開き、イオン溶出ユニット100に所定流量の水を流す。同時に駆動回路120が電極113、114の間に電圧を印加し、電極構成金属のイオンを水中に溶出させる。電極間を流れる電流は直流である。金属イオン含有水は給水口53から洗濯槽30に投入される。
【0094】
所定量の金属イオン含有水が投入され、すすぎ水の金属イオン濃度が所定値に達したと判断されたところでメイン給水弁50aは閉じ、電極113、114への電圧印加も停止される。
【0095】
続いてステップS413ですすぎ水が攪拌され、洗濯物と金属イオンとの接触が促進される。所定時間の間攪拌を行う。
【0096】
続いてステップS414で仕上剤の投入が選択されているかどうかを確認する。この確認ステップはもっと前に置いてもよい。ステップS411で金属イオンの投入設定の確認と同時に確認してもよい。操作/表示部81を通じての選択動作で「仕上剤の投入」が選択されていればステップS415に進む。選択されていなければステップS406に進む。ステップS406ではパルセータ33が小刻みに反転して洗濯物をほぐし、洗濯槽30の中に洗濯物がバランス良く配分されるようにして脱水回転に備える。
【0097】
ステップS415ではサブ給水弁50bが開き、給水口53の仕上剤室55に水を流す。仕上剤室55に仕上剤が入れられていれば、その仕上剤はサイホン部57から水と共に洗濯槽30に投入される。仕上剤室55の中の水位が所定高さに達してはじめてサイホン効果が生じるので、時期が来て水が仕上剤室55に注入されるまで、液体の仕上剤を仕上剤室55に保持しておくことができる。
【0098】
所定量(サイホン部57にサイホン作用を起こさせるに足る量か、それ以上)の水を仕上剤室55に注入したところでサブ給水弁50bは閉じる。なおこの水の注入工程すなわち仕上剤投入動作は、仕上剤が仕上剤室55に入れられているかどうかに関わりなく、仕上剤の投入工程が選択されていれば自動的に実行される。
【0099】
続いてステップS416ですすぎ水が攪拌され、洗濯物と仕上剤との接触が促進される。所定時間の間攪拌を行った後、ステップS406に進む。
【0100】
上記シーケンスによれば、すすぎ水に対する金属イオンの投入実行後、所定時間の経過を待ってすすぎ水に対する仕上剤の投入が実行される。そのため、金属イオンと仕上剤(柔軟剤)を同時にすすぎ水に投入すれば金属イオンが柔軟剤成分と反応して抗菌性が減殺されるところ、金属イオンが洗濯物に十分に付着した後に仕上剤が投入されるものであり、金属イオンと仕上剤成分との反応が防がれ、金属イオンの抗菌効果を洗濯物に残すことができる。
【0101】
電極113、114を構成する金属は銀、銅、もしくは銀と銅の合金であることが好ましい。銀電極から溶出する銀イオンは殺菌効果に優れ、銅電極から溶出する銅イオンは防カビ効果に優れる。銀と銅の合金からは銀イオンと銅イオンを同時に溶出させることができる。
【0102】
銀イオンは陽イオンである。洗濯物は水中では負に帯電しており、このため銀イオンは洗濯物に電気的に吸着される。洗濯物に吸着された状態では銀イオンは電気的に中和される。そのため仕上剤(柔軟剤)の成分である塩化物イオン(陰イオン)とは反応しにくくなる。ただし銀イオンは時間をかけて洗濯物に吸着されて行くので、仕上剤投入までにある程度時間を置かねばならない。そこで、銀イオン投入後の攪拌時間は10分を確保する。仕上剤投入後の攪拌時間は3分ほどで十分である。
【0103】
金属イオンはメイン給水管52aから洗剤室54を通って洗濯槽30に投入される。仕上剤は仕上剤室55から洗濯槽30に投入される。このように金属イオンをすすぎ水に投入するための経路と、仕上剤をすすぎ水に投入するための経路とが別系統のため、仕上剤をすすぎ水に投入するための経路を金属イオンが通り、この経路に残留していた仕上剤に金属イオンが接触して化合物となり、抗菌力を失うということがない。
【0104】
また上記シーケンスによれば、金属イオン及び仕上剤のそれぞれの投入に伴ってすすぎ水の攪拌が実行される。これにより、金属イオン及び仕上剤を洗濯物全体に確実に付着させることができる。
【0105】
イオン溶出ユニット100を駆動するにあたり、駆動回路120の定電流回路125は電極113、114間を流れる電流が値一定となるよう電圧を制御する。これにより、単位時間あたりの金属イオン溶出量が一定になる。単位時間あたりの金属イオン溶出量が一定であれば、イオン溶出ユニット100に流す水量とイオン溶出時間を制御することにより洗濯槽30内の金属イオン濃度を制御することができることになり、所望の金属イオン濃度を得るのが容易になる。
【0106】
この時電極113、114間を流れる電流は前述のように直流である。もしこれが交流であると、次の現象が起きる。すなわち、金属イオンが例えば銀イオンの場合、一旦溶出した銀イオンが、電極の極性が反転したときに、Ag++e-→Agという逆反応によって電極に戻ってしまう。直流であればそのようなことはない。
【0107】
電極113、114にはイオン溶出工程の開始から終了に至るまで、一定の極性の電圧が印加される。すなわちイオン溶出工程の間、陽極は陽極、陰極は陰極と役割が固定される。そのため、イオン溶出工程中一定時間毎に極性を反転する仕組みは不要である。また極性が反転しないので、金属イオンの溶出効率が高くなる。
【0108】
電極113、114の内、陰極として使用される側にはスケールが析出する。極性を反転しないまま直流を流し続け、スケールの堆積量が多くなると、電流が流れにくくなる。この問題を解決するため、本発明では次の手法で自動的に極性を反転するものとした。
【0109】
〈第1の手法〉
第1の手法では、電極113、114に電圧印加を開始するときの電圧の極性がランダムに決定される。ランダムに決定するにあたっては乱数発生回路を使用する。
【0110】
この手法によれば、陽極と陰極の役割がランダムに割り当てられるので、一方の電極のみが陽極として使われ、金属イオンの溶出により減耗して行き、他方の電極は陰極として使われ続け、スケールが堆積して行くという事態を防ぐことができる。また、イオン溶出工程の各回毎に極性を反転するのと異なり、前回使用時の極性を記憶しておく必要がない。
【0111】
電極113、114に電圧印加を開始するときの電圧の極性をランダムに決定するには乱数発生回路を用いればよいが、乱数発生回路は高価であるし、この場合真の乱数である必要もない。そこで、乱数発生回路に代え、事実上ランダムと見なせる関数を使用することができる。疑似乱数関数と呼ばれるものがそれである。疑似乱数関数で求めた数値は、本質的には周期性を持つが、実用上は乱数として扱い得る。
【0112】
例えば乗算合同法の場合、
X(n)={A×X(n−1)}modM ・・・・(a)
とし、A、X(1)、Mを適当に決めることにより、X(1)、X(2)、X(3)、…、X(n)というn個の疑似乱数列を得ることができる。同じA、X(1)、Mであれば、毎回同じ順番の疑似乱数列が得られる。
【0113】
本発明の場合、数列を得る必要はなく、X=X0modMとし、X0に毎回異なる値を入れて、ランダムと見なせる数値Xを得ればよい。X0としては「電源が投入されてからスタートボタンが押されるまでの時間」や「日付」といったものが利用可能である。
【0114】
図11の表には「電源が投入されてからスタートボタンが押されるまでの時間」をX0として疑似乱数を求めた結果を示す。時間計測はマイクロコンピュータ130で管理する。秒数の小数第1位までを有効桁とする。前述(a)式において、秒数を100倍した値をX0に代入し、M=23として計算すると、「疑似乱数」の欄に示す数値が得られた。
【0115】
「極性」欄の「正」は例えば電極113が陽極で電極114が陰極、「負」はその逆に電極113が陰極で電極114が陽極になった状態を表す。疑似乱数が奇数の場合が「正」、疑似乱数が偶数の場合を「負」とした。このようにすることにより、「正」「負」が一見ランダムに決定されたようになる。実際は23個周期の数列である。
【0116】
図12の表には「日付」をX0として疑似乱数を求めた結果を示す。日付はマイクロコンピュータ130に付属するクロック部から読み出す。前述(a)式において、日付を10倍した値をX0に代入し、M=23として計算している。この場合も「正」「負」が一見ランダムに決定されたようになる。実際は23個周期の数列である。
【0117】
また、「電源が投入されてからスタートボタンが押されるまでの時間」は、それ自身が毎回変化する不確定量である。そこで、これを乱数扱いとして極性の「正」「負」を決定することができる。
【0118】
図13の表には「電源が投入されてからスタートボタンが押されるまでの時間」の秒数により「正」「負」を決定することとした例を示す。秒数の有効桁は小数第1位とし、これを10倍した数値が奇数の場合を「負」、偶数の場合を「正」とした。時間のばらつきにより、事実上の「ランダム決定」が行われる。
【0119】
なお「ランダム決定」を行うにあたっては、物理現象(例えば放射性同位体の放射線崩壊など)による乱数を利用することもできる。物理現象によって得られる乱数をそのまま極性の「正」「負」に充ててもよいし、疑似乱数関数の代入値としてもよい。
【0120】
〈第2の手法〉
第2の手法では、電極113、114に電圧印加を開始するときの電圧の極性が周期的に反転される。
【0121】
この手法によれば、陽極と陰極の役割が周期的に入れ替わるので、一方の電極のみが陽極として使われ、金属イオンの溶出により減耗して行き、他方の電極は陰極として使われ続け、スケールが堆積して行くという事態を防ぐことができる。また、イオン溶出工程の各回毎に極性を反転するのと異なり、前回使用時の極性を記憶しておく必要がない。
【0122】
電極113、114に電圧印加を開始するときの電圧の極性を周期的に反転するにあたり、事実上周期的反転と見なせる数列を使用することができる。数列としては、例えば「日付」が利用可能である。
【0123】
図14の表には「日付」を数列として用いた例を示す。日付の数値が奇数の場合を「負」、偶数の場合を「正」とした。
【0124】
〈第3の手法〉
第3の手法では、洗濯工程中に存在するイオン溶出工程の各回毎に、電極113、114に電圧印加を開始するときの電圧の極性が反転される。
【0125】
この手法によれば、イオン溶出工程の各回毎に陽極と陰極の役割が入れ替わるので、一方の電極のみが陽極として使われ、金属イオンの溶出により減耗して行き、他方の電極は陰極として使われ続け、スケールが堆積して行くという事態を防ぐことができる。
【0126】
この手法を具体化したシーケンスの例を図15のフローチャートに示す。ここではイオン溶出工程が全3回存在する。
【0127】
最終すすぎが開始されるとステップS411で金属イオンの投入が選択されているかどうかを確認する。操作/表示部81を通じての選択動作で「金属イオンの投入」が選択されていればステップS412aに進む。選択されていなければステップS414に進む。
【0128】
ステップS412aではメイン給水弁50aが開き、イオン溶出ユニット100に所定流量の水を流す。同時に駆動回路120が電極113、114の間に電圧を印加し、電極構成金属のイオンを水中に溶出させる。電極間を流れる電流は直流である。金属イオン含有水は給水口53から洗濯槽30に投入される。
【0129】
所定量の金属イオン含有水が投入されたところでメイン給水弁50aは閉じ、電極113、114への電圧印加も停止される。
【0130】
続いてステップS413aですすぎ水が攪拌され、洗濯物と金属イオンとの接触が促進される。所定時間の間攪拌を行う。
【0131】
続いてステップS412bで2度目の金属イオン含有水投入が行われる。この時、イオン溶出ユニット100の電極113、114の極性は反転している。
【0132】
それからステップS413bで再度すすぎ水を攪拌する。
【0133】
その後、ステップS412cで3度目の金属イオン含有水投入が行われる。イオン溶出ユニット100の電極113、114の極性は再反転している。
【0134】
3度目の金属イオン含有水投入を行い、すすぎ水の金属イオン濃度が所定値に達したところで、ステップS413cに進み、3度目のすすぎ水攪拌を行う。それからステップS414に進む。これ以後のフローは図10と同じである。
【0135】
金属イオン含有水投入及び攪拌は3回と限定される訳ではなく、任意の回数とすることができる。また金属イオン含有水投入毎に攪拌するのでなく、金属イオン含有水の最終回の投入後にまとめて攪拌を行うこととしてもよい。
【0136】
上記のように、第3の手法によれば洗濯工程中に存在するイオン溶出工程の各回毎に電極113、114の極性が反転する。洗濯工程中の第1回目のイオン溶出工程の極性をどうするかについては第1の手法や第2の手法を適用できる。
【0137】
第1から第3のいずれかの手法を用い、電極113、114の極性が自動的に反転するようにしていたとしても、同じ極性での運転が偶然何回か続くことがあり得る。その結果、陰極側の電極にスケールが付着すると電極間を流れる電流値が減少する。定電流回路125が電流値の減少を防止するが、それでは追いつかなくなったときは、電流検知回路160からの信号により、マイクロコンピュータ130が警告表示手段131を駆動し、所定の警告表示を行わせる。
【0138】
上記警告表示を見た使用者は操作/表示部81を通じ強制的電極洗浄モードを選択することができる。強制的電極洗浄モードにすると、電極113、114を逆方向に電流が流れ、付着したスケールが剥がれる。この時の電流値は通常運転時より大きくしておくと効果的である。
【0139】
前述のようにマイクロコンピュータ130はカウンタ機能を有している。このカウンタ機能により、イオン溶出工程の実施回数をカウントしていて、所定カウント数に達する度に強制的電極洗浄モードに切り替える。従って、使用者が上記警告表示に気付かないか、気付いても無視したとしても、ある時点に至ればスケールは自動除去される。
【0140】
また本発明では、イオン溶出ユニット100の電極113、114間を流れる電気量が、設定水量に比例することとした。この構成によれば、設定水量や給水流量にかかわらず、洗濯機1で使用する水の中の金属イオン濃度を一定にすることができる。これは以下の実施例により明らかにされる。
【0141】
本発明の実施例を図16及び図17に示す。図16、17はいずれも実験結果の表である。
【0142】
【実施例】
図2及び図3に示すイオン溶出ユニット100において、電極113、114の構成金属を銀、電極寸法は長手方向の長さが50mm、長手方向と直角の幅が16mm、厚さ1mmとした。電極113、114間の距離は5.5mmとした。水は水道水、流量は20L/分とした。電極113、114間に直流29mAの電流が流れるよう、定電流回路125より電流を供給した。
【0143】
水質及び水温を変えて銀イオン溶出の実験を行った結果を図16の表に示す。水質は導電率で代表させた。導電率の調整は、NaClを添加したり、イオン交換水で希釈することにより行った。なお図16において導電率は水温25゜Cにおける導電率に換算して示してある。
【0144】
図16の表から明らかなように、水質、水温が変化しても、電流値が一定であるかぎり、水中の銀イオン濃度は90ppbで安定している。電流値を一定にするため、電圧は7Vから20Vまで変動している。
【0145】
次に、上記イオン溶出ユニット100を洗濯機に取り付け、洗濯工程のうちのすすぎ工程を実施した。すすぎ条件は、布負荷量1kg、設定水量は23L、35L、46Lの3段階、給水流量は20L/分、運転時間10分とした。電流値は29mA又は45mAとした。
【0146】
上記すすぎ実験の結果を図17の表に示す。給水流量は20L/分で一定であるが、設定水量は23L、35L、46Lと3段階に変化させた。ここで、電極113、114間を流れる電気量(電流×時間)を、設定水量に比例させた。このようにすることにより、いずれの場合でもすすぎ水中の銀イオン濃度を90ppbとすることができた。給水流量を10L/分としても結果は同じであった。
【0147】
銀イオン濃度90ppbの水ですすいだ布は、乾燥中の臭いの発生を防止することができた。またJIS−L−1902に基づき抗菌効果を調べたところ、乾燥後の布に抗菌効果が生じていることが確認された。
【0148】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【0149】
例えば、イオン溶出ユニット100の配置個所は給水弁50から給水口53までの間に限られる訳ではない。接続管51から給水口53までの間であればどこでもよい。すなわち給水弁50の上流側に置くこともできる。イオン溶出ユニット100を給水弁50より上流に置くこととすれば、イオン溶出ユニット100は常に水に漬かっていることになり、シール部材が乾燥して変質し、水もれを生じるといったことがなくなる。
【0150】
また、イオン溶出ユニット100を外箱10の外に置いてもよい。例えばイオン溶出ユニット100を交換可能なカートリッジの形状にし、接続管51にネジ込みなどの手段で取り付け、このカートリッジに給水ホースを接続するといった構成が考えられる。
【0151】
カートリッジ形状にするかどうかは別として、イオン溶出ユニット1を外箱10の外に置くこととすれば、洗濯機1の一部に設けた扉を開けたり、パネルを外したりすることなくイオン溶出ユニット100を交換でき、メンテナンスが楽である。しかも洗濯機1の内部の充電部に触れることがないので安全である。
【0152】
上記のように外箱10の外に置いたイオン溶出ユニット100には、駆動回路120から延ばしたケーブルを防水コネクタを介して接続し、電流を供給すればよいが、駆動回路120からの給電に頼らず、電池を電源として駆動することとしてもよいし、給水の水流に接するように水車を備えた水力発電装置を電源として駆動することとしてもよい。
【0153】
イオン溶出ユニット100を独立した商品として販売し、洗濯機以外の機器への搭載を促進してもよい。
【0154】
また本発明は、上記実施形態でとり上げたような形式の全自動洗濯機に適用対象が限定されるものではない。横型ドラム(タンブラー方式)、斜めドラム、乾燥機兼用のもの、又は二槽式など、あらゆる形式の洗濯機に本発明は適用可能である。
【0155】
【発明の効果】
本発明は以下に掲げるような効果を奏するものである。
【0156】
電極間に電圧を印加してこの電極より金属イオンを溶出させるイオン溶出ユニットにおいて、前記電極間を流れる電流が値一定となるよう電圧を制御することとしたから、単位時間あたりの金属イオン溶出量が一定になる。従って、このイオン溶出ユニットを例えば洗濯機に搭載して用いる場合、給水水量と電圧印加時間だけを管理すれば洗濯槽中の水の金属イオン濃度を所定値に調整することができる。
【0157】
電極間を流れる電流が値一定となるよう電圧を制御するイオン溶出ユニットにおいて、前記電流を直流としたから、一旦溶出した金属イオンが電極に逆戻りすることがない。従って、金属イオン生成のために費やした電力が無駄にならない。
【0158】
電極間に電圧を印加してこの電極より金属イオンを溶出させるイオン溶出ユニットにおいて、前記電極間を流れる電流を直流とするとともに、イオン溶出工程の開始から終了に至るまで、印加する電圧の極性を一定に保つこととしたから、イオン溶出工程中一定時間毎に極性を反転する仕組みは不要である。また、極性が反転しないので、金属イオンの溶出効率が高くなる。
【0159】
電極間を流れる電流を直流とするとともに、イオン溶出工程の開始から終了に至るまで、印加する電圧の極性を一定に保つイオン溶出ユニットにおいて、電圧印加開始時の電圧の極性がランダムに決定されることとしたから、一方の電極のみが陽極として使われ、金属イオンの溶出により減耗して行き、他方の電極は陰極として使われ続け、スケールが堆積して行くという事態を防ぐことができる。また、イオン溶出工程の各回毎に極性を反転する構成と異なり、前回使用時の極性を記憶しておく必要がない。
【0160】
電極間を流れる電流を直流とするとともに、イオン溶出工程の開始から終了に至るまで、印加する電圧の極性を一定に保つイオン溶出ユニットにおいて、電圧印加開始時の電圧の極性が事実上ランダムと見なせる関数により決定されることとしたから、一方の電極のみが陽極として使われ、金属イオンの溶出により減耗して行き、他方の電極は陰極として使われ続け、スケールが堆積して行くという事態を防ぐことができる。また、イオン溶出工程の各回毎に極性を反転する構成と異なり、前回使用時の極性を記憶しておく必要がない。さらに、ランダム処理を行うのに高価な乱数発生回路を用いる必要がなく、コストを低減できる。
【0162】
電極間を流れる電流を直流とするとともに、イオン溶出工程の開始から終了に至るまで、印加する電圧の極性を一定に保つイオン発生ユニットにおいて、電圧印加開始時の電圧の極性が事実上周期的反転と見なせる数列により決定されることとしたから、一方の電極のみが陽極として使われ、金属イオンの溶出により減耗して行き、他方の電極は陰極として使われ続け、スケールが堆積して行くという事態を防ぐことができる。また、イオン溶出工程の各回毎に極性を反転する構成と異なり、前回使用時の極性を記憶しておく必要がない。周期的反転の仕組みづくりも容易である。
【0163】
上記のようなイオン溶出ユニットにおいて、強制的電極洗浄モードが設定されていることとしたから、同じ極性での運転がたまたま何回か続き、電極表面にスケールが付着してイオン溶出量が減少したとしても、強制的電極洗浄モードで運転することによりスケールを除去してイオン溶出量を回復することができる。
【0164】
上記のようなイオン溶出ユニットを洗濯機に搭載し、水に金属イオンを添加して用いることができるようにしたから、洗濯機で用いる水に金属イオンを安定して、且つ効率良く添加することができる。
【0165】
上記のような洗濯機において、洗濯工程中に複数回存在するイオン溶出工程の各回毎に電圧印加開始時の電圧の極性を反転することとしたから、一方の電極のみが陽極として使われ、金属イオンの溶出により減耗して行き、他方の電極は陰極として使われ続け、スケールが堆積して行くという事態を防ぐことができる。
【0166】
上記のような洗濯機において、前記イオン溶出ユニットの電極間を流れる電気量が、設定水量に比例することとしたから、設定水量や給水流量などにかかわらず、洗濯機で使用する水の中の金属イオン濃度を一定にすることができる。従って、洗濯物の量などによって設定水量が変化したとしても、洗濯機の中の水は所定の金属イオン濃度とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る洗濯機の実施形態を示す垂直断面図
【図2】 給水口の模型的垂直断面図
【図3】 洗濯工程全体のフローチャート
【図4】 洗い工程のフローチャート
【図5】 すすぎ工程のフローチャート
【図6】 脱水工程のフローチャート
【図7】 イオン溶出ユニットの模型的水平断面図
【図8】 イオン溶出ユニットの模型的垂直断面図
【図9】 イオン溶出ユニットの駆動回路図
【図10】 金属イオン投入シーケンスを示す第1のフローチャート
【図11】 疑似乱数を得る手法を示す第1の表
【図12】 疑似乱数を得る手法を示す第2の表
【図13】 特定数値群を用いてランダム決定を行う例を示す表
【図14】 周期反転数列を得る手法を示す表
【図15】 金属イオン投入シーケンスを示す第2のフローチャート
【図16】 水中の銀イオン濃度を調べる第1の実験の結果を示す表
【図17】 水中の銀イオン濃度を調べる第2の実験の結果を示す表
【符号の説明】
1 洗濯機
10 外箱
20 水槽
30 洗濯槽
33 パルセータ
40 駆動ユニット
50 給水弁
50a メイン給水弁
50b サブ給水弁
53 給水口
54 洗剤室
55 仕上剤室
68 排水弁
80 制御部
81 操作/表示部
100 イオン溶出ユニット
113、114 電極
120 駆動回路
125 定電流回路
150 電極駆動回路
Claims (7)
- 電極間に電圧を印加してこの電極より金属イオンを溶出させるイオン溶出ユニットにおいて、
前記電極間を流れる電流を直流とするとともに、イオン溶出工程の開始から終了に至るまで、印加する電圧の極性を一定に保ち、
電圧印加開始時の電圧の極性がランダムに決定されることを特徴とするイオン溶出ユニット。 - 電極間に電圧を印加してこの電極より金属イオンを溶出させるイオン溶出ユニットにおいて、
前記電極間を流れる電流を直流とするとともに、イオン溶出工程の開始から終了に至るまで、印加する電圧の極性を一定に保ち、
電圧印加開始時の電圧の極性が事実上ランダムと見なせる関数により決定されることを特徴とするイオン溶出ユニット。 - 電極間に電圧を印加してこの電極より金属イオンを溶出させるイオン溶出ユニットにおいて、
前記電極間を流れる電流を直流とするとともに、イオン溶出工程の開始から終了に至るまで、印加する電圧の極性を一定に保ち、
電圧印加開始時の電圧の極性が事実上周期的反転と見なせる数列により決定されることを特徴とするイオン溶出ユニット。 - 強制的電極洗浄モードが設定されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のイオン溶出ユニット。
- 請求項1〜請求項4のいずれかに記載のイオン溶出ユニットを搭載し、水に金属イオンを添加して用いることができるようにしたことを特徴とする洗濯機。
- 洗濯工程中に複数回存在するイオン溶出工程の各回毎に電圧印加開始時の電圧の極性を反転することを特徴とする請求項5に記載の洗濯機。
- 前記イオン溶出ユニットの電極間を流れる電気量が、設定水量に比例することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の洗濯機。
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