JP2007201335A - 気密端子 - Google Patents

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Abstract

【課題】量産に適するとともに、ピン同士の沿面距離を保ちながら、ピン同士をより狭い間隔で複数本配置できる気密信頼性の高い気密端子を提供すること。
【解決手段】気密端子は、隣接して複数個の貫通孔3aが形成されたセラミック板3と、セラミック板3の上側主面の貫通孔3aの開口周囲にそれぞれ独立して形成されたメタライズ層3bと、貫通孔3aそれぞれに挿通され、メタライズ層3bにロウ付けされたピン1とから成り、隣接するメタライズ層3b同士の間に段差3dが設けられている。ピン1を伝送する電気信号が高電圧となっても、段差3dによって沿面距離を確保でき、ピン1を介して電気信号を正常に伝送できる。また、ピン1を狭い間隔で密に複数本配置することが可能となり、小型集積化された気密端子とすることができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、半導体製造装置,電子機器,半導体装置等の電気装置に使用される気密端子に関する。
従来、半導体製造装置等の内部雰囲気を外部雰囲気から遮蔽して使用する電気装置には、装置内外で電気信号を導通させるために気密端子が取着されている。
このような気密端子の一例を図4(a),(b)に示す。図4(a)は従来の気密端子の一例を示す断面図、図4(b)は従来の気密端子の他の例を示す断面図である。11はピン、12はロウ材、13はセラミック板であり、主にこれらにより気密端子が構成される。
図4(a)の気密端子は、円柱状の金属製のピン11と、ピン11を挿通させるための貫通孔13aが設けられ、かつ貫通孔13aの内面の全面にメタライズ層13bが設けられるとともに外周部に側部メタライズ層13cが形成されたセラミック板13とから成り、ピン11がロウ材12によってメタライズ層13bにロウ付けされている。
ピン11は鉄(Fe)−ニッケル(Ni)−コバルト(Co)合金等の金属から成る円柱状であり、セラミック板13の貫通孔13a内に挿通されてロウ付けされ、電気装置内外を電気的に接続するための端子として機能する。ピン11は必要に応じて複数本設けられ、セラミック板13内に適当な配置や間隔でもって配設される。
セラミック板13の貫通孔13a内にピン11をロウ付けするには、例えばセラミック板13の貫通孔13aの内面にタングステン(W)やモリブデン(Mo),マンガン(Mn)等の高融点金属から成るメタライズ層13bを被着させておくとともに、このメタライズ層13bとピン11とが銀(Ag)ロウ等のロウ材12によってロウ付け接合される(例えば、特許文献1参照)。
この構成により、ピン11をセラミック板13に、より気密かつ強固にロウ付け接合することができる。
また、図4(b)の気密端子は、円柱状の金属製のピン11と、ピン11を挿通させるための貫通孔13aが設けられ、かつ貫通孔13aの一方の開口部周囲にメタライズ層13bが設けられるとともに外周部に側部メタライズ層13cが形成されたセラミック板13と、メタライズ層13b上面に載置されるとともに内側にピン11が挿通されロウ材12によってピン11とメタライズ層13bにロウ付けされる金属製の環状部材14とから構成されている。ピン11とセラミック板13は図4(a)と同じ材質から成り、環状部材14はFe−Ni−Co合金等の金属から成る。(下記の特許文献2参照)。
この構成により、ピン11とセラミック板13とを接合するためのロウ材12のメニスカスを良好に形成することができ、ピン11をセラミック板13に、より気密かつ強固にロウ付け接合することができる。また、図4(a)に示すように、ピン11とセラミック板13とが直接接合されることがないので、セラミック板13に作用するピン11との熱膨張差による応力を低減させることが可能となる。
また、図4(a),(b)の構成において、セラミック板13を電気装置にロウ付けするには、例えばセラミック板13の外周面にWやMo,Mn等の高融点金属から成る側部メタライズ層13cを被着させておくとともにこれにNiめっきを施し、このNiめっきが施された側部メタライズ層13cと電気装置とをAgロウ等のロウ材を介してロウ付けする方法が採用される。または、側部メタライズ層13cに予め筒状の金属スリーブ(図示せず)がAgロウ等のロウ材によってロウ付けされ、この金属スリーブと電気装置とを溶接する方法が採用される。
特開昭53−92489号公報 特開平10−189091号公報
しかしながら、図4(a)に示した上記従来の気密端子において、ピン11がセラミック板13にロウ材12によって直接接合され、しかもセラミック板13の厚み寸法と同じ長さでピン11とセラミック板13とがロウ材12を介して接合されることから、セラミック板13にはピン11との熱膨張差による応力が大きく加わり易いという欠点があった。
従って、ピン11の直径を大きくしたり、セラミック板13を厚いものとしたりすると、セラミック板13の厚み方向に大きな応力が加わり、セラミック板13にクラック等の破損を生じさせてしまう場合があった。ピン11が複数本狭い間隔でロウ付けされたりする場合には、さらに破損を生じさせてしまう。その結果、気密端子の気密性を損なってしまうという問題点が発生していた。
また、図4(a)に示した上記従来の気密端子において、メタライズ層13bにNi等から成る金属層をめっき法によって施す場合、貫通孔13aにめっき液が溜まり、メタライズ層13bに必要以上の厚さの金属層が施されてしまい易く、ピン11を貫通孔13aに挿通させることができなくなったり、ロウ材12の厚みを管理できなくなったりする場合があった。その結果、気密端子を精度よく製造することができないという問題点が発生していた。
また、図4(b)に示した上記従来の気密端子においては、図4(a)に示した気密端子の問題点は解決可能であるが、ピン11を狭い間隔でセラミック板13に複数本配置する場合、隣接するメタライズ層13b同士の距離が非常に近接したものとなって、メタライズ層13b同士の電気的絶縁を保つための沿面距離を確保できなくなることがあり、その結果、それぞれのピン11に伝送される電気信号がそれぞれのメタライズ層13bの間で電気的短絡を起こしてしまい、ピン11を介して電気信号を正常に伝送できなくなるという虞があり、ピン11を狭い間隔で複数本配置することができないという問題点があった。特にこの問題点は、ピン11を伝送する電気信号が高電圧である場合に顕著になる。
従って、本発明は上記問題点に鑑み完成されたものであり、その目的は、ピン同士の沿面距離を保ちながら、ピン同士をより狭い間隔で複数本配置できる気密端子を提供することにある。
本発明の気密端子は、隣接して複数個の貫通孔が形成されたセラミック板と、前記セラミック板の上側主面の前記貫通孔の開口周囲にそれぞれ独立して形成されたメタライズ層と、前記貫通孔それぞれに挿通され、前記メタライズ層にロウ付けされたピンとから成り、隣接する前記メタライズ層同士の間に段差が設けられていることを特徴とする。
本発明の気密端子は、上記構成において好ましくは、前記貫通孔は、前記開口に向けて内径が大きくなる傾斜部を有し、前記メタライズ層が前記傾斜部の内面に被着されていることを特徴とする。
本発明の気密端子は、上記構成において好ましくは、前記傾斜部と前記上側主面との間に前記傾斜部の上端と同じ径の大径部が設けられていることを特徴とする。
本発明の気密端子は、上記構成において好ましくは、前記ピンは、その側面に前記傾斜部と対応する傾斜面を有する突出部が設けられていることを特徴とする。
本発明の気密端子は、隣接して複数個の貫通孔が形成されたセラミック板と、セラミック板の上側主面の貫通孔の開口周囲にそれぞれ独立して形成されたメタライズ層と、貫通孔それぞれに挿通され、メタライズ層にロウ付けされたピンとから成り、隣接するメタライズ層同士の間に段差が設けられていることから、平面視においてメタライズ層を接する位置に設けても、段差によりメタライズ層同士を確実に隔離でき、電気的絶縁を保つための沿面距離を確保できるようになる。また、段差との間に角が設けられ、この角によってメタライズ層を印刷したときに、メタライズ層の周囲が滲んで広がってしまうことがない。
その結果、ピンを伝送する電気信号が高電圧となっても、メタライズ層の間で電気的短絡を起こすことなく、ピンを介して電気信号を正常に伝送できる。また、ピンを狭い間隔で密に複数本配置することが可能となり、小型集積化された気密端子とすることができる。
好ましくは、本発明の気密端子は、貫通孔は、開口に向けて内径が大きくなる傾斜部を有し、メタライズ層が傾斜部の内面に被着されていることから、傾斜部の内面に被着されたメタライズ層とピンとの間にロウ材の良好なメニスカスを形成することができる。
さらに、セラミック板とピンとの接合長さを短くできるとともに、傾斜部の内面に形成されたロウ材のメニスカスでセラミック板とピンとの熱膨張差を吸収でき、セラミック板に加わるピンとの熱膨張差による応力を最小限に抑え、セラミック板にクラック等の破損が生じにくくすることができる。
これらの結果、ピンをセラミック板に強固かつ気密に接合することが可能となる。
またメタライズ層とピンとの間にロウ材の良好なメニスカスを形成することができることから、円環状のメタライズ層の大きさを小さくすることが可能となり、それぞれのピン同士をさらに狭い間隔で複数本配置できる気密端子とできる。
また好ましくは、本発明の気密端子は、傾斜部と上側主面との間に傾斜部の上端と同じ径の大径部が設けられていることから、上記の構成と同様に、ピンをセラミック板に狭い間隔で強固かつ気密に接合することが可能となるとともに、大径部によって、隣接するメタライズ層同士の沿面距離をさらに大きく確保でき、ピンを伝送する電気信号を高電圧のものとすることが可能となる。また、ロウ材を大径部の内側に収容することができ、セラミック板の上側主面にロウ材のメニスカスが突出しない構造とできる。
また、傾斜部は、セラミック板を所定の先端角を有するドリルの先端部刃先で切削加工することによって容易に設けられるのであるが、傾斜部の上方に大径部が設けられるので、セラミック板の厚さ寸法に焼成時の収縮バラツキによる寸法バラツキが生じたとしても、確実に傾斜部を形成することが可能となる。すなわち、傾斜部を形成するための加工機の加工条件を所定の条件に設定して、複数のセラミック板に対し連続的に傾斜部を形成する場合においても、大径部を設けることにより、傾斜部がドリルの刃先で切削加工されることとなり、セラミック板の厚さ寸法に寸法バラツキが生じたとしても、所定の大きさの傾斜部を確実に形成することが可能となる。
その結果、所定の大きさの円環状のメタライズ層を形成することができ、ピンを強固かつ気密にメタライズ層に接合できるようになる。また、傾斜部を形成する際、加工機の加工条件を所定の条件に設定して、複数のセラミック板に対し連続的に傾斜部を形成できるので、量産に適したものとすることができる。
好ましくは本発明の気密端子は、ピンは、その側面に傾斜部と対応する傾斜面を有する突出部が設けられていることから、ピンの中心と貫通孔の中心とが一致するようにピンが貫通孔内に配置され、ピンの周囲を均一にロウ付けすることができるので、ピンをセラミック板に強固かつ気密に接合することが可能となる。
本発明の気密端子について以下に詳細に説明する。図1は本発明の気密端子の実施の形態の一例を示す断面図であり、図2および図3は本発明の気密端子の実施の形態の他の例を示す断面図である。同図において、1はピン、2はロウ材、3はセラミック板、3bはセラミック板3に形成されたメタライズ層であり、これらにより気密端子が構成される。
本発明の気密端子は、図1の実施の形態例に示すように、隣接して複数個の貫通孔3aが形成されたセラミック板3と、セラミック板3の上側主面の貫通孔3aの開口周囲にそれぞれ独立して形成されたメタライズ層3bと、貫通孔3aそれぞれに挿通され、メタライズ層3bにロウ付けされたピン1とから成り、隣接するメタライズ層3b同士の間に段差3dが設けられている構成を有する。
好ましくは、本発明の気密端子は、図2(a),(b),(c)の実施の形態例に示すように、貫通孔3aは開口に向けて内径が大きくなる傾斜部3eを有し、メタライズ層3bが傾斜部3eの内面にのみ環状に被着されている構成を有する。
また好ましくは、本発明の気密端子は、図2(b)の実施の形態例に示すように、傾斜部3eとセラミック板3の上側主面との間に傾斜部3eの上端と同じ径の大径部3fが設けられている構成を有する。
なお、図1〜図3において、電気装置へ取り付けるための取付部としてセラミック板3の外周側面に側部メタライズ層3cが形成された構成を示す。側部メタライズ層3は、セラミック板3の主面外周部に形成してもよい。そして、半導体製造装置,電子機器,半導体装置等の電気装置の気密容器部分を構成する壁部に貫通穴が開けられており、この内周面または貫通穴の開口の周囲に形成された金属部材に気密端子の側部メタライズ層3cがロウ材を介して接合されることにより、電気装置を密閉することができる。
また、セラミック板3の電気装置への取着構造としては、図3に示すように、側部メタライズ層3cに予めFe−Ni−Co合金,Fe−Ni合金,ステンレス鋼(SUS)等から成る筒状の金属スリーブ5をAgロウ等のロウ材によってロウ付けし、この金属スリーブ5と電気装置とを溶接してもよい。
本発明の気密端子において、ピン1はFe−Ni−Co合金,Fe−Ni合金,SUS等の金属から成る円柱状,円筒状または角柱状であり、電気装置内外を電気的に接続するための端子として機能する。ピン1は角柱状であってもよいが、ピン1が円柱状であることにより、セラミック板3にクラック等の破損が発生するのをより有効に防止できる。従って、少なくともピン1のロウ材2が接合される部分は円柱状、または円筒状とするのがよい。
ピン1が円筒状である場合、円筒の内周面にリード線等を挿通させ、必要であればピン1の上端を半田等で封止することによって端子として機能する。そして、リード線等を銅(Cu)やAg等の電気伝導性に優れる金属とし、円筒部をセラミック板3の熱膨張係数と近似した金属とすることによって、セラミック板3にクラックが入りにくく、電気信号の伝導特性にも優れる気密端子とすることができる。
ピン1は、セラミック板3内に適当な配置や間隔でもって複数本配設され、これにより、1つの気密端子で複数の電気信号を入出力できるようになる。
このピン1は、好ましくは、その熱膨張係数がセラミック板3の熱膨張係数と近似した材質とするのがよく、この構成によって、ピン1とセラミック板3とがロウ付けされる際の両者の熱膨張差を最小限に抑えることができ、ピン1をセラミック板3に気密性高く強固に接合することができるようになる。さらに、ピン1を構成する金属として硬度がビッカース硬度でHv=200以上のものであると、比較的固く容易に曲がりにくいことからピン1の外部雰囲気側にコネクターソケットを嵌合する際等にピン1に曲がりを発生させにくいので好ましい。従って、セラミック板3がAl質セラミックスから成る場合、ピン1としては、熱膨張係数がAl質セラミックスと近似するとともに硬度の高いFe−Ni−Co合金から成るのがよい。
また、ピン1は、その表面にNiから成るめっき金属層を1〜10μmの厚みに被着させておくとピン1が酸化腐食することを有効に防止することができる。従って、ピン1の表面にはNiから成るめっき金属層を1〜10μmの厚みに被着させておくことが好ましい。
セラミック板3は、例えばAl質セラミックス等から成る絶縁性のものであり、電気装置との電気的絶縁を保ってピン1を保持する作用をなし、例えばAl質セラミックスから成る場合、酸化珪素(SiO)、酸化マグネシウム(MgO)および酸化カルシウム(CaO)等のAl質セラミック原料粉末にポリビニルアルコール等のバインダを添加混合するとともに、これを所定形状のプレス型内に充填し、所定の圧力でプレスすることにより貫通孔3aが設けられた平板状のプレス成形体を得、しかる後、このプレス成形体を約1600℃の温度で焼成する。プレス型には傾斜部3eや大径部3fを有する貫通孔3aおよび段差3dに対応する型が設けられているのがよく、これにより、セラミック板3のプレス成形時に貫通孔3aおよび段差3dが形成でき、セラミック板3を効率良く製造することが可能となる。
また、プレス型に貫通孔3aおよび段差3dに対応する型が設けられていない場合には、セラミック板3の焼成前または焼成後に、ドリル加工によって貫通孔3aを形成するとともに、エンドミル加工や平面研削盤加工によって段差3dを形成する。さらに、貫通孔3aの開口部の周囲または傾斜部3eにメタライズ層3bとなるWやMo,Mn等の金属粉末を主成分とする金属ペーストを塗布し、約1300℃の温度で焼成することによって製作される。
または、Al,SiO,MgO,CaO等の原料粉末に適当な有機バインダ,溶剤等を添加混合してスラリーと成す。このスラリーをドクターブレード法やカレンダーロール法によってセラミックグリーンシートと成し、所要の大きさに切断する。次に、複数のセラミックグリーンシートにおいて貫通孔3a,段差3d等を形成するために適当な打抜き加工を施す。次いでセラミックグリーンシートを積層し、貫通孔3aの開口部の周囲にメタライズ層3bとなるWやMo,Mn等の金属粉末を主成分とする金属ペーストを塗布し、約1600℃の温度で焼成する。
なお、セラミック板3を電気装置にロウ付けするには、例えばセラミック板3の外周面にWやMo,Mn等の高融点金属から成る側部メタライズ層3cを被着させておくとともにこれにNiめっきを施し、このNiめっきが施された側部メタライズ層3cと電気装置とをAgロウ等のロウ材を介してロウ付けする方法が採用される。
ここで、隣接するメタライズ層3b同士の間のセラミック板3に段差3dが設けられている。この構成により、メタライズ層3bを平面視において接する位置に設けても、段差3dによりメタライズ層同士を確実に隔離でき、メタライズ層3b同士の電気的絶縁を保つための沿面距離を確保できるようになる。
その結果、ピン1を伝送する電気信号が高電圧となっても、メタライズ層3bの間で電気的短絡を起こすことなく、ピン1を介して電気信号を正常に伝送できる。また、ピン1を最も狭い間隔で密に複数本配置することが可能となり、小型集積化された気密端子とすることができる。
段差3dの段差寸法はピン1を伝送する電気信号の電圧によって適宜決定する。メタライズ層3bはピン1と導通しており、隣接するピン1を伝送する電気信号の電圧によって、隣接するメタライズ層3b間で必要な沿面距離が決まる。そして、段差3dの段差寸法を適宜決定することによって、隣接するメタライズ層3b間の沿面距離が決定し、メタライズ層3b間での電気的短絡を防止できる。
なお、ピン1を伝送する電気信号の電圧が高い場合は、段差3dの段差寸法を大きくする必要があり、ピン1を伝送する電気信号の電圧が低い場合は、段差3dの段差寸法は小さくてもよい。
また、メタライズ層3bはメタライズ層3bとなる金属ペーストを塗布する際に滲みが発生する場合があり、滲みによって隣接するメタライズ層3bが導通してしまうことがある。セラミック板3には段差3dが設けられているので、段差3dとの間の角によって滲みが堰き止められるが、好ましくは、滲みによる隣接するメタライズ層3bの導通を防止するために、隣接するメタライズ層3bを平面視において接する位置に設けた場合には、段差3dの段差寸法を0.3mm以上とするのがよい。
なお段差3dは、図1(a)に示すようなセラミック板3のメタライズ層3b形成部からセラミック板3の端まで形成された段差3dでもよいし、図1(b)や図1(c)に示すようなセラミック板3のメタライズ層3b形成部のみに形成された穴状の段差3dでもよい。
好ましくは、セラミック板3の端に設けられるメタライズ層3bは、図1(b)に示すように、穴状の段差3dに設けられるのがよく、この構成により、メタライズ層3bから側部メタライズ層3cまでの距離を大きくとることが可能となる。その結果、メタライズ層3bをセラミック板3の端に近い部位に形成してもメタライズ層3bと側部メタライズ層3cとの沿面距離を確保し、メタライズ層3bと側部メタライズ層3dとの間を確実に絶縁することができる。
また、セラミック板3にピン1が3本以上設けられる場合は、図1(c)に示すように、隣接するメタライズ層3bが同一面にならないように段差3dを形成する。
図1,図3においては、環状部材4が設けられた構成を示している。環状部材4はFe−Ni−Co合金、SUS等の金属から成る。この構成により、ピン1とセラミック板3とを接合するためのロウ材2のメニスカスを良好に形成することができ、ピン1をセラミック板3に、気密かつ強固にロウ付け接合することができる。また、ピン1とセラミック板3とが直接接合されることがないので、セラミック板3に作用するピン1との熱膨張差による応力を低減させることが可能となる。
また、環状部材4はピン1と一体に形成されていてもよく、即ち、環状部材4がピン1に鍔状に形成されていてもよい。この構成により、環状部材4をメタライズ層3bに当接させることによって、ピン1を所定の位置に位置決めすることができ、ピン1をセラミック板3に対し所定の位置に容易に接合させることができる。その結果、セラミック板3に対するピン1の位置精度に優れるとともにピン1のセラミック板3への接合の作業性に優れた気密端子とすることができる。
なお、環状部材4は設けられずにピン1が直接メタライズ層3bに接合されていても構わない。
ピン1が直接メタライズ層3bに接合される場合、好ましくは、図2に示すように、貫通孔3aは内面の上部に下方に向けてテーパ状に面取りが施された傾斜部3eを有し、メタライズ層3bが貫通孔3aの傾斜部3eに環状に被着されているのがよい。
傾斜部3eの形成は、例えば図2に示すように、セラミック板3に形成されたピン1の直径よりも直径寸法が大きな貫通孔3aの一方の開口部に貫通孔3aの直径よりも直径寸法の大きなドリルの先端部刃先で切削加工することによって形成される。また、金型成形によって形成することもできる。
メタライズ層3dの形成は、傾斜部3eの内面に全周にわたって傾斜部3bの少なくともピンと近接する側の一部(メタライズ層3dの幅が少なくとも0.1mm以上)に、WやMo,Mn等の高融点金属等を主成分とする金属ペーストを塗布し、約1300℃で焼成することによって行なわれる。しかる後、その表面にNiめっきを施し、このNiめっきが施されたメタライズ層3bとピン1とを、Agロウ等のロウ材2によってロウ付けすることによって、セラミック板3とピン1とが接合される。なお、傾斜部3eの下端の下方に設けられる貫通孔3aの残部にはメタライズ層3bは被着されない。
この構成により、貫通孔3aの傾斜部3bの内面にのみ被着されたメタライズ層3bとピンとの間に、傾斜部3bがその傾斜角度によってピン1と対向することとなるので、ロウ材2の適度なメニスカスを形成することができる。そして、ピン1とロウ材2との接合長さを傾斜角度によってコントロールすることができる。
さらに、傾斜角度によってセラミック板3とピン1との間のロウ材のメニスカスをコントロールし、ロウ材2とピン1との接合長さを適度にできるとともに、傾斜部3eの内面に形成された縦弾性係数の大きいロウ材2でセラミック板3とピン1との間の熱膨張差を吸収でき、セラミック板3に加わるピン1との熱膨張差による応力を最小限に抑え、セラミック板3にクラック等の破損が生ずるのを有効に防止することができる。
これらの結果、ピン1をセラミック板3に強固かつ気密に接合することが可能となる。
またメタライズ層3bとピン1との間にロウ材2の良好なメニスカスを形成して接合することができ、図1に示した構成のように環状部材4を設けるという必要がなくなることから、円環状のメタライズ層3bの大きさを環状部材4の直径に合わせて大きくする必要がなくなる。従って、メタライズ層3bの直径を小さくすることが可能となり、ピン1をより狭い間隔でセラミック板3に複数本配置できる気密端子とできる。
なお、上記したように、貫通孔3aの傾斜部3eを除く残部にはメタライズ層3bは被着されていない。その理由としては、貫通孔3aの傾斜部3eを除く残部にもメタライズ層3bを被着させた場合、ピン1とセラミック板3との接合長さが必要以上に長くなり、セラミック板3に加わるピン1との熱膨張差による応力が大きくなるためである。そして、セラミック板3に加わるピン1との熱膨張差による応力が大きくなると、セラミック板3がクラック等によって破損し易くなり、気密端子としての気密信頼性が低下してしまうためである。
傾斜部3eの垂直面断面形状は、直線状や円弧状であり、好ましくは直線状とされるのがよく、これによりメタライズ層3bの全面に均一にロウ材2を流すことができる。そして傾斜部3eは、底面がセラミック板3の主面と平行となる、断面が四角形状の座繰り形状ではないので、傾斜部3eの内面に全周にわたって円環状のメタライズ層3bが形成され、ピン1の側面との間にロウ材2の良好なメニスカスを形成することができ、ピン1をメタライズ層3bに強固かつ気密にロウ付けすることができる。断面が四角形状となる座繰り形状であると、底面に形成されるメタライズ層3bとピン1の側面との間にロウ材2の良好なメニスカスを形成することができないので不適である。
傾斜部3eは、断面形状が三角形状とされたC面カット状の直線である場合、セラミック板3の主面と傾斜部3eの内面との間の傾斜角の大きさは30〜60°程度であるのが好ましく、この構成により、傾斜部3eに形成されるロウ材のメニスカス形状を良好なものとすることができる。
また、傾斜部3eはセラミック板3を先端が尖ったドリルの先端部刃先で切削加工することによって、または金型成形によってすり鉢状に設けられる。これにより、傾斜部3eを容易かつ効率よく形成することができる。
好ましくは、図2(b)に示すように、傾斜部3eとセラミック板3の主面との間に傾斜部3eの上端と同じ径の大径部3fを有した貫通孔3aが形成されているのがよい。この構成により、大径部3fによって、隣接するメタライズ層3b同士の沿面距離をさらに長くすることができ、ピン1を伝送する電気信号を高電圧のものとすることが可能となる。
また、傾斜部3eの上方に大径部3fをドリルで形成する際に、ドリルを深く入れることによって容易に形成することが可能となり、セラミック板3の厚さ寸法に焼成時の収縮バラツキによる寸法バラツキが生じたとしても、確実に所定の傾斜部3eを形成することが可能となる。すなわち、傾斜部3eを形成するための加工機の加工条件を所定の条件に設定して、複数のセラミック板3に対し連続的に傾斜部3eを形成する場合においても、大径部3fを設けることにより、傾斜部3eがドリルの先端部刃先で切削加工されるとともに、傾斜部3eの上端の内径はドリルの直径で容易に管理することができることとなり、セラミック板3の厚さ寸法に寸法バラツキが生じたとしても、所定の大きさの傾斜部3eを確実に形成することが可能となり、傾斜部3eが小さく形成されてしまうのを防止することができる。
その結果、所定の大きさの環状のメタライズ層3bを形成することができ、ピン1を強固かつ気密にメタライズ層3bに接合できるようになる。また、加工条件を所定の条件に設定して、複数のセラミック板3に対し連続的に傾斜部3eを形成できるので、量産に適したものとすることができる。
なお、傾斜部3eが小さくなると、メタライズ層3bを大きく形成することができず、ピン1とメタライズ層3bとを強固かつ気密に接合するのが困難となる。
また、好ましくは、図2(c)に示すように、ピン1は、その側面のメタライズ層3bとの接合される箇所に外側に突出する突出部1aが設けられ、かつ突出部1aは、傾斜部3eの傾斜に対応するように下方に向けてテーパ状とされた傾斜面が設けられているのがよい。この構成により、突出部1aのテーパ面が傾斜部3eのテーパ面に嵌合するようになり、ピン1を貫通孔内に落とし込むように挿通することによって、貫通孔3aの中心線に対してのピン1の中心線を容易に一致させることができる。その結果、貫通孔3aの横断面をピン1の横断面とほぼ同じ寸法に精度良く加工する必要がなくなり、貫通孔3aの加工を単純化できるとともに貫通孔3aに対してのピン1の位置精度を良好にすることができる。
さらに、貫通孔3aの傾斜部3eが設けられている開口と反対側の開口部の内側寸法を、ピン1の横断面寸法より大きくして、ピン1の側面と貫通孔3aの内面との間に間隙を設けることができる。この間隙によって、セラミック板3の下側主面側においても隣接するピン1同士の間の沿面距離を長いものとすることができ、ピン1同士を狭い間隔で複数本配置できる気密端子とすることができる。
なお、セラミック板3に段差3dが形成されている本発明の気密端子においては、気密端子に取着される外部端子にも、セラミック板3の段差3dに係合するように段差が形成されているのがよく、これにより、外部端子の段差を気密端子の段差3dに係合させ、外部端子を気密端子から外れにくい状態で強固に接続させることが可能となる。また、外部端子の段差と気密端子の段差3dとを一致させないと、外部端子が正常に取着できなくなるので、外部端子の極性と気密端子の複数のピン1の極性とを間違えて外部端子を取着してしまう事故を避けることができる。
さらに、図3に示すように、側部メタライズ層3cに筒状の金属スリーブ5がロウ付けされている場合、セラミック板3のメタライズ層3bが形成されている主面と反対の主面側に外周部が全周にわたって突出するように鍔部3eが形成され、この鍔部3eの外周側面に側部メタライズ層3cが形成され、鍔部3eに金属スリーブ5が嵌合されるのがよい。この構成により、メタライズ層3bから金属スリーブ5までの沿面距離を長くすることが可能となり、メタライズ層3bをセラミック板3の端に近い部位に形成しても、ピン1と金属スリーブ5とを確実に絶縁することができる。
また、この構成により、鍔部3eの外周側面に形成された側部メタライズ層3cは、セラミック板3本体の厚さと関係なくセラミック板3の接合に要する長さとすればよいので、セラミック板3の側部メタライズ層3cと金属スリーブ5との接合長さを短くすることが可能となり、セラミック板3に作用する金属スリーブ5との熱膨張差による応力を最小限に抑え、セラミック板3にクラック等の破損が生ずるのを有効に防止できる。
以上の結果、セラミック板3の鍔部3eに金属スリーブ5が接合されている構成により、セラミック板3の端に近い部位に設けられたピン1と金属スリーブ5とを確実に絶縁して、ピン1に正常に電気信号を伝送させることができるとともに、セラミック板3をクラック等によって破損させることがなく、セラミック板3の両主面間、すなわち電気装置の外部雰囲気側と内部雰囲気側との間を確実に気密に遮断でき、気密性に優れた気密端子とすることができる。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を施すことは何等差し支えない。例えば、ピン1はCu,Ag等の電気抵抗値の小さい金属で形成してもよく、この構成により、ピン1を伝送する電気信号がピン1で損なわれるのを有効に防止できる。特にピン1に大電流が流れる場合において、ピン1で発熱するのを防止できる構成となる。
(a)は本発明の気密端子の実施の形態の一例を示す断面図、(b)は本発明の気密端子の実施の形態の他の例を示す断面図、(c)は本発明の気密端子の実施の形態の他の例を示す断面図である。 (a)、(b)、(c)はそれぞれ本発明の気密端子の実施の形態の他の例を示す断面図である。 (a)、(b)はそれぞれ本発明の気密端子の実施の形態の他の例を示す断面図である。 (a)は従来の気密端子の一例を示す断面図であり、(b)は従来の気密端子の他の例を示す断面図である。
符号の説明
1:ピン
2:ロウ材
3:セラミック板
3a:貫通孔
3b:メタライズ層
3d:段差
3e:傾斜部
3f:大径部

Claims (4)

  1. 隣接して複数個の貫通孔が形成されたセラミック板と、前記セラミック板の上側主面の前記貫通孔の開口周囲にそれぞれ独立して形成されたメタライズ層と、前記貫通孔それぞれに挿通され、前記メタライズ層にロウ付けされたピンとから成り、隣接する前記メタライズ層同士の間に段差が設けられていることを特徴とする気密端子。
  2. 前記貫通孔は、前記開口に向けて内径が大きくなる傾斜部を有し、前記メタライズ層が前記傾斜部の内面に被着されていることを特徴とする請求項1記載の気密端子。
  3. 前記傾斜部と前記上側主面との間に前記傾斜部の上端と同じ径の大径部が設けられていることを特徴とする請求項2記載の気密端子。
  4. 前記ピンは、その側面に前記傾斜部と対応する傾斜面を有する突出部が設けられていることを特徴とする請求項2または請求項3記載の気密端子。
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