しかしながら、図4に示した上記従来の気密端子においては、棒状部材11の外周面をセラミック板13の貫通孔13aに気密にロウ付け接合するために、棒状部材11の外径寸法に合わせてセラミック板13に設ける貫通孔13aの直径寸法を小さくしなければならず、貫通孔13aの加工が困難になる。さらに、棒状部材11の外径寸法を小さくすると、セラミック板13に貫通孔13aを加工することが可能な最小限界寸法を下回ってしまい、セラミック板13に棒状部材11の外径に合わせた小さな直径の貫通孔13aを設けることができない場合があった。その結果、貫通孔13aの直径寸法を最小限界寸法としても、貫通孔13aの直径寸法が棒状部材11の外径寸法に比べて大きすぎるものとなってしまい、棒状部材11をセラミック板13に気密にロウ付け接合することができないという問題点が発生していた。
また、棒状部材11の外径寸法を大きくし、内径寸法を小さくすると、棒状部材11の肉厚が厚くなり、セラミック板に大きな熱応力が生じて、セラミック板にクラックが入り易いという問題点があった。
また、上記従来の気密端子では、棒状部材11の外周面をロウ材14が上側に這い上がり易く、ロウ材14のメニスカス形状を良好なものとできず棒状部材11をセラミック板13に強固に接合できないとともに、上部にコネクターソケット等を接続させる際にロウ材14が這い上がってしまって接続の障害になるという問題点があった。
また、上記従来の気密端子では、棒状部材11をセラミック板13の貫通孔13aに気密にロウ付けできたとしても、棒状部材11の一端を溶接や半田付け等によって塞いで電気装置等の内部を気密封止する際に、溶接や半田付けの際の熱応力がセラミック板13の棒状部材11が接合される部位に作用し易く、セラミック板13がクラック等によって破損してしまうという問題点が発生していた。
以上の結果、この構造を気密端子に採用した場合、気密端子の気密性を損ねてしまい、気密端子として機能できなくなるという問題点が発生していた。
従って、本発明は上記問題点に鑑み完成されたものであり、その目的は、一端を溶接や半田付け等によって塞いで内部を気密封止可能な小さな内径寸法を有する金属製のパイプをセラミック板に気密に接合し得る気密端子を提供することにある。
本発明の気密端子は、貫通孔が形成されたセラミック板と、前記貫通孔に挿通されるとともに外周面が前記セラミック板にロウ付けされ、一端側に嵌挿孔を有するピン状の大径端子と、この大径端子の前記嵌挿孔に端部が嵌挿されるとともに外周面が前記大径端子にロウ付けされたピン状の小径端子とから成ることを特徴とする。
また、本発明の気密端子は、好ましくは、上記本発明の気密端子において、前記大径端子の前記嵌挿孔内周面に座繰り部が形成され、この座繰り部に前記小径端子の一端が当接されるとともに、前記小径端子の外周面が前記大径端子にロウ付けされていることを特徴とする。
また、本発明の気密端子は、好ましくは、上記本発明の気密端子において、前記大径端子は鉄−ニッケル−コバルト合金または鉄−ニッケル合金から成り、前記小径端子はステンレス鋼から成ることを特徴とする。
また、本発明の気密端子は、好ましくは、前記貫通孔は、その開口に向けて内径が大きくなる傾斜部を有するとともに、前記大径端子の外周面が前記傾斜部の内面にロウ付けされていることを特徴とする。
本発明の気密端子は、貫通孔が形成されたセラミック板と、貫通孔に挿通されるとともに外周面がセラミック板にロウ付けされ、一端側に嵌挿孔を有するピン状の大径端子と、この大径端子の嵌挿孔に端部が嵌挿されるとともに外周面が大径端子にロウ付けされたピン状の小径端子とから成ることから、大径端子は外径寸法をセラミック板の貫通孔の加工可能な最小限界寸法よりも大きくするとともに、セラミック板に気密にロウ付け接合可能な寸法とすることができる。即ち、本発明の気密端子によって、小さな外径寸法を有する金属製の小径端子をセラミック板に気密にロウ付け接合することが可能となる。
また、この気密端子によって、大径端子と小径端子との接合部の外周面には段差が形成されるようになり、この段差により、セラミック板と大径端子とをロウ付けするためのロウ材が段差より上側に這い上がるのを有効に防止し、セラミック板と大径端子とをロウ付けするためのロウ材のメニスカス形状を良好なものとできるとともに、小径端子にコネクターソケット等を接続させる際にロウ材が這い上がってしまって接続の障害となるのを防止できる。
また、大径端子と大径端子の一端側の嵌挿孔に端部が嵌挿されるとともに外周面がロウ付けされた小径端子とから成ることにより、小径端子のロウ付けされた一端と反対側の他端を溶接や半田付け等によって塞ぐ際に、小径端子の他端に溶接や半田付けの際の熱が加わっても、大径端子と小径端子とのロウ付け部で熱流が遮断され、大径端子とセラミック板との接合部に熱が加わり難くなる。そのために、セラミック板に大径端子との熱膨張差による応力が作用し難くなる。さらに、小径端子の他端を溶接や半田付け等に線材を接続する際に小径端子の他端が変形するような、変位が加わった場合においても、小径端子と大径端子とを接合するロウ材がこの変位を吸収緩和する作用を成し、セラミック板の大径端子との接合部に小径端子からの応力が作用し難くなる。従って、小径端子の他端に外力が加わっても、セラミック板にクラック等の破損が生じるのを防止し、気密が破れるのを有効に防止することができる。
これらの結果、小径端子の内径寸法および外径寸法が小さくなってもセラミック板に気密にロウ付け接合し得る気密端子を提供することができる。
本発明の気密端子は、好ましくは、上記構成の気密端子において、大径端子の一端側の嵌挿孔内周面に座繰り部が形成され、座繰り部に小径端子の一端が当接されるとともに、小径端子の外周面が大径端子にロウ付け接合されていることから、小径端子が座繰り部で位置決めされ、小径端子の落下等による位置ずれを防止できる。
本発明の気密端子は、好ましくは、上記構成の気密端子において、大径端子は鉄−ニッケル−コバルト合金または鉄−ニッケル合金から成り、小径端子はステンレス鋼から成ることから、大径端子をセラミック板と熱膨張係数がほぼ同じ材料とすることができ、セラミック板に大径端子との熱膨張差による応力が作用するのを防止し、セラミック板がクラック等によって破損するのを防止することができるとともに、小径端子を溶接性に優れたものとし、小径端子の他端を溶接によって塞いで気密封止し易くすることができる。
また、本発明の気密端子は、好ましくは、上記構成の気密端子において、貫通孔は、その開口に向けて内径が大きくなる傾斜部を有するとともに、大径端子の外周面が傾斜部の内面にロウ付けされていることから、貫通孔の傾斜部の内面に大径端子からセラミック板の傾斜部にかけてなだらかな形状にロウ材の良好なメニスカスを形成することができ、大径端子をセラミック板に強固にロウ付けできるとともに、セラミック板にロウ材との熱膨張差による大きな熱応力が作用するのを抑制できる。
さらに、大径端子がセラミック板の傾斜部にロウ付けされるので、セラミック板と大径端子との接合長さを短くできるとともに傾斜部の内面に形成されたなだらかな形状のロウ材のメニスカスを形成できるので、ロウ材のメニスカスでセラミック板とピンとの熱膨張差を吸収でき、セラミック板に加わる大径端子との熱膨張差による応力を小さくして、セラミック板にクラック等の破損を生じ難くすることができる。
これらの結果、大径端子をセラミック板に強固かつ気密に接合することが可能となる。
またセラミック板と大径端子との間にロウ材の良好なメニスカスを形成することができることから、セラミック板のロウ付け面積を小さくすることが可能となり、ピンを狭い間隔でセラミック板に複数本配置しても、メタライズ層の端とこれに隣接する傾斜部のメタライズ層の端との沿面距離を確保できるようになる。その結果、それぞれのピン同士を狭い間隔で複数本配置できる気密端子とできる。
上述のごとく、本発明の気密端子は、気密信頼性の高い、気密端子として良好に機能し得るものとなる。
本発明の気密端子について以下に詳細に説明する。図1は本発明の気密端子の実施の形態の一例を示す断面図であり、図2は本発明の気密端子の実施の形態の他の例を示す断面図、図3は本発明の気密端子の実施の形態の他の例を示す断面図である。同図において、1は大径端子、2は小径端子、3はセラミック板、4は第1のロウ材、5は第2のロウ材であり、これらにより本発明の気密端子が構成される。
本発明の気密端子は、図1の実施の形態例に示すように、貫通孔3aが形成されたセラミック板3と、貫通孔3aに挿通されるとともに外周面がセラミック板に第1のロウ材4を介してロウ付けされ、一端側に嵌挿孔を有するピン形状の金属製の大径端子1と、大径端子1の嵌挿孔に端部が嵌挿されるとともに外周面が大径端子1に第2のロウ材5を介してロウ付け接合されたピン形状の金属製の小径端子2とから成る構成である。
また、本発明の気密端子は、好ましくは、図2の他の実施の形態例に示すように、上記構成の気密端子において、大径端子1の一端側の嵌挿孔内周面に座繰り部1aが形成され、座繰り部1aに小径端子2の一端が当接されるとともに、小径端子2の外周面が大径端子1に第2のロウ材5を介してロウ付け接合されている構成である。
また、本発明の気密端子は、好ましくは、図1の実施の形態例または図2の他の実施の形態例に示す気密端子において、大径端子1は鉄(Fe)−ニッケル(Ni)−コバルト(Co)合金または鉄(Fe)−ニッケル(Ni)合金から成り、小径端子2はステンレス鋼(SUS)から成る構成である。
また、本発明の気密端子は、好ましくは、図3の他の実施の形態例に示すように、上記構成の気密端子において、貫通孔3aは、その開口に向けて内径が大きくなる傾斜部3dを有し、貫通孔3aの開口からセラミック板3の厚み方向に向けて貫通孔3aの開口部がテーパ状とされているとともに、大径端子1の外周面が貫通孔3aの傾斜部の内面にロウ付けされている構成である。
大径端子1および小径端子2はパイプ状に嵌挿孔が形成されており、大径端子1の一端側に小径端子2の端部が嵌挿されてロウ付けされる。なお、大径端子1および小径端子2は必ずしも一端側から他端側にかけて嵌挿孔を有するパイプ状である必要はなく、大径端子1の一端側のみが小径端子2の端部を挿入可能なように筒状の嵌挿孔が形成されておればよい。以下、大径端子1および小径端子2はパイプ状に形成されているものとして説明する。
また、上記構成の気密端子の例として、図1,図2,図3において、気密端子を電気装置へ取り付けるための取付部としてセラミック板3の外周面に側部メタライズ層3cが形成された構成を示す。そして、半導体製造装置,電子機器,半導体装置等の電気装置の気密容器部分を構成する壁部に貫通穴が開けられており、この内周面または貫通穴の開口の周囲に形成された金属部材に気密端子の側部メタライズ層3cがロウ材により接合されることにより、電気装置を密閉することができる。
以下、図1,図2,図3を用いて本発明の気密端子を詳細に説明する。
本発明の気密端子において、大径端子1および小径端子2はCu,Fe−Ni−Co合金,Fe−Ni合金,Fe,SUS等の金属から成る円筒状であり、大径端子1の一端側の内周面に小径端子2の一端部が挿入されるとともに外周面がAgロウやAg−Cuロウ等から成る第2のロウ材5を介して大径端子1の端面にロウ付け接合されている。
大径端子1および小径端子2が筒状であることによって、大径端子1および小径端子2を介して電気装置内部の真空引きした後、小径端子2の上端を溶接や半田付け等で封止することによって電気装置内部を真空保持するための気密端子として機能する。
または、大径端子1および小径端子2が筒状であることによって、大径端子1および小径端子2の内周面に熱電対のリード線等を挿通させ、小径端子2の上端を溶接や半田付け等で封止することによって電気装置内外を電気的に接続するための気密端子として機能する。そして、リード線等を銅や銀等の電気伝導性に優れる金属とし、大径端子1をセラミック板3の熱膨張係数と近似した金属とすることによって、セラミック板3にクラックが入りにくく、電気信号の伝導特性にも優れる気密端子とすることができる。
また、大径端子1は、パイプ状であり、大径端子1の外周面と内周面との間の肉厚が薄くなっているので、セラミック板3との間に生じる熱膨張差による応力がセラミック板3に大きく作用せず、セラミック板3にクラックが入りにくい。
また、小径端子2の内径や長さ、その他の形状は任意に設計できるので、セラミック板3に大径端子1をロウ付けしたものを標準品として提供し、生産性を向上させて低価格の気密端子を提供するとともに、小径端子2の設計を所用の形状にして多様な需要に応じることもできるようになる。
大径端子1および小径端子2は断面が多角形状であってもよいが、大径端子1の第1のロウ材4が接合される部分は断面が円形状であることにより、セラミック板3にクラック等の破損が発生するのをより有効に防止できる。従って、少なくとも大径端子1の第1のロウ材4が接合される部分は断面が円形状、即ち円筒状とするのがよい。
大径端子1および小径端子2は、必要に応じてセラミック板3内に適当な配置や間隔でもって複数本配設され、これにより、電気装置内部の真空引きを作業効率よく行なったり、1つの気密端子で複数の電気信号を入出力できたりするようになる。
大径端子1は、好ましくは、図2に示すように、大径端子1の一端側の内周面に座繰り部1aが形成され、座繰り部1aの底面に小径端子2の一端が当接されるとともに、小径端子2の外周面が大径端子1の端面にロウ付け接合されている。この構成により、小径端子2が座繰り部1aで位置決めされ、小径端子2の落下等による位置ずれを防止できる。なお、座繰り部1aを有する大径端子1は、大径端子1となる棒材に旋盤を用いた切削加工や金型を用いたプレス加工等の従来周知の金属加工を施すことによって形成される。
また好ましくは、大径端子1は、その熱膨張係数がセラミック板3の熱膨張係数と近似した材質とするのがよく、この構成によって、大径端子1とセラミック板3とがロウ付けされる際の両者の熱膨張差を最小限に抑えることができ、大径端子1をセラミック板3に気密性よく強固に接合することができるようになる。さらに、大径端子1を構成する金属として硬度がビッカース硬度でHv=200以上のものであると、比較的固く容易に曲がりにくいことから大径端子1の外部雰囲気側にコネクターソケットを嵌合する際等に大径端子1に曲がりを発生させにくいので好ましい。従って、セラミック板3がAl2O3質セラミックスから成る場合、大径端子1としては、熱膨張係数がAl2O3質セラミックスと近似するとともに硬度の高いFe−Ni−Co合金またはFe−Ni合金から成るのがよい。
小径端子2は、好ましくは、溶接性に優れた材料とするのがよく、この構成によって、小径端子2の上端を溶接することによって作業効率よく上端を封止することができる。さらに、小径端子2を構成する金属として硬度がビッカース硬度でHv=200以上のものであると、比較的固く容易に曲がりにくいことから小径端子2にコネクターソケットを嵌合する際等に小径端子2に曲がりを発生させにくいので好ましい。従って、小径端子2は、溶接性に優れるとともに硬度の高いSUSから成るのがよい。
このように、大径端子1をFe−Ni−Co合金またはFe−Ni合金で形成し、小径端子2をSUSで形成することにより、セラミック板3がクラック等によって破損するのを確実に防止することができるとともに、小径端子2を溶接性に優れたものとし、小径端子2の一端を溶接によって塞いで気密封止し易くすることができる。
また、大径端子1および小径端子2は、その表面にNiから成るめっき金属層を1〜10μmの厚みに被着させておくと大径端子1および小径端子2が酸化腐食することを有効に防止することができる。従って、大径端子1および小径端子2の表面にはNiから成るめっき金属層を1〜10μmの厚みに被着させておくことが好ましい。
セラミック板3は、例えばAl2O3質セラミックス等から成る絶縁性のものであり、電気装置との電気的絶縁を保って大径端子1を保持する作用をなし、例えばAl2O3質セラミックスから成る場合、酸化珪素(SiO2)、酸化マグネシウム(MgO)および酸化カルシウム(CaO)等のAl2O3質セラミック原料粉末にポリビニルアルコール等のバインダを添加混合するとともに、これを所定形状のプレス型内に充填し、所定の圧力でプレスすることにより貫通孔3aが設けられた平板状のプレス成形体を得、しかる後、このプレス成形体を約1600℃の温度で焼成する。焼成後、セラミック板3の一主面の貫通孔3aの開口部周辺にメタライズ層3bとなるWやMo,Mn等の金属粉末を主成分とする金属ペーストを塗布し、約1300℃の温度で焼成することによって製作される。
または、Al2O3,SiO2,MgO,CaO等の原料粉末に適当な有機バインダ,溶剤等を添加混合してスラリーと成す。このスラリーをドクターブレード法やカレンダーロール法によってセラミックグリーンシートと成し、所要の大きさに切断する。次に、複数のセラミックグリーンシートにおいて貫通孔3a等を形成するために適当な打ち抜き加工を施す。次いでセラミックグリーンシートを積層し、積層後、セラミック板3の一主面の貫通孔3aの開口部周辺にメタライズ層3bとなるWやMo,Mn等の金属粉末を主成分とする金属ペーストを塗布し、約1600℃の温度で焼成することによって製作される。
なお、セラミック板3を電気装置にロウ付けするには、例えばセラミック板3の外周面にWやMo,Mn等の高融点金属から成る側部メタライズ層3cを被着させておくとともにこれにNiめっきを施し、このNiめっきが施された側部メタライズ層3cと電気装置とをAgロウ等のロウ材を介してロウ付けする方法が採用される。
また、メタライズ層3bの形成は、セラミック板3の一主面の貫通孔3aの開口部周囲に全周にわたってメタライズ層3bの幅が少なくとも0.1mm以上となるように、WやMo,Mn等の高融点金属等を主成分とする金属ペーストを塗布し、焼成することによって行なわれる。しかる後、その表面にNiめっきを施し、このNiめっきが施されたメタライズ層3bと大径端子1とを、Agロウ等の第1のロウ材4によってロウ付けすることによって、セラミック板3と大径端子1とが接合される。なお、ロウ材4に活性金属ロウ材を用いる場合は、メタライズ層3bを省略することもできる。
この構成により、セラミック板3の一主面の貫通孔3aの開口部周囲にのみ被着されたメタライズ層3bと大径端子1との間に、第1のロウ材4の適度なメニスカスを形成することができる。そして、セラミック板3に加わる大径端子1との熱膨張差による応力は、大径端子1の周方向の応力のみであり、大径端子1の軸方向の応力が作用することがない。即ち、第1のロウ材4の適度なメニスカスでセラミック板3と大径端子1との間の熱膨張差を吸収できるとともに、セラミック板3に加わる大径端子1との熱膨張差による応力を小さく抑えることができ、セラミック板3にクラック等の破損が生ずるのを有効に防止することができる。以上の結果、大径端子1をセラミック板3に強固かつ気密に接合することが可能となる。
また、図3の他の実施の形態例に示すように、貫通孔3aは、開口に向けて内径が大きくなる傾斜部3dを有するとともに、大径端子1の外周面が貫通孔3aの傾斜部の内面にロウ付けされていてもよい。
この場合、傾斜部3dの形成は、例えば図3に示すように、セラミック板3に形成された大径端子1の直径よりも直径寸法が大きな貫通孔3aの一方の開口部に貫通孔3aの直径よりも直径寸法の大きなドリルの先端部で切削加工することによってすり鉢状に形成される。
また、メタライズ層3bの形成は、傾斜部3dの内面に全周にわたって傾斜部3dの少なくとも大径端子1と近接する側の一部(メタライズ層3dの幅が少なくとも0.1mm以上)に、WやMo,Mn等の高融点金属等を主成分とする金属ペーストを塗布し、約1300℃で焼成することによって行なわれる。しかる後、その表面にNiめっきを施し、このNiめっきが施されたメタライズ層3bと大径端子1とを、Agロウ等のロウ材4によってロウ付けすることによって、セラミック板3と大径端子1とが接合される。なお、傾斜部3dの下端の下方に設けられる貫通孔3aの残部にはメタライズ層3bは被着されない。また、ロウ材4に活性金属ロウ材を用いる場合は、メタライズ層3bを省略することもできる。
この構成により、貫通孔3aの傾斜部3bの内面にのみ被着されたメタライズ層3bと大径端子1との間に、傾斜部3bがその傾斜角度によって大径端子1と対向することとなるので、なだらかな形状のロウ材4の適度なメニスカスを形成することができる。そして、大径端子1とロウ材4との接合長さを傾斜角度によってコントロールすることができる。
すなわち、大径端子1の長さ方向と傾斜部3bとが貫通孔3bの開口部において成す角度を小さくすると、大径端子1とロウ材との接合長さが長くなり、大径端子1と傾斜部3bとを高い気密信頼性でロウ付けさせることができる。一方、角度を大きくすると、大径端子1とロウ材との接合長さが短くなり、大径端子1とセラミック板3との熱膨張差が大きい場合に、セラミック板3に作用する大径端子1との熱膨張差による熱応力を小さく抑え、セラミック板3がクラック等によって破損し難くすることができる。
さらに、傾斜角度によってセラミック板3と大径端子1との間のロウ材のメニスカスの大きさをコントロールすることによって、ロウ材4と大径端子1との接合長さを適度に調節できる。
また、傾斜部3dの内面に形成された縦弾性係数の大きいロウ材4でセラミック板3と大径端子1との間の熱膨張差を吸収でき、セラミック板3に加わる大径端子1との熱膨張差による応力を最小限に抑え、セラミック板3にクラック等の破損が生ずるのを有効に防止することができる。
これらの結果、大径端子1をセラミック板3に強固かつ気密に接合することが可能となる。
またメタライズ層3bと大径端子1との間にロウ材4の良好なメニスカスを形成して接合することができ、必要なロウ材4の量を少なくすることができるので、円環状のメタライズ層3bの直径の大きさを従来に比べ小さくすることができる。従って、大径端子1を狭い間隔でセラミック板3に複数本配置することができる。または、メタライズ層3bの端とこれに隣接する傾斜部3bのメタライズ層3bの端との沿面距離を確保できるようになる。その結果、それぞれの大径端子1同士を狭い間隔で複数本配置できる気密端子とできたり、隣接する大径端子1間に高電圧信号を流せる気密端子とできたりする。
好ましくは、図3に示すように、傾斜部3dとセラミック板3の主面との間に傾斜部3dの上端と同じ径の大径部3eを有した貫通孔3aが形成されているのがよい。この構成により、大径部3eによって、隣接するメタライズ層3b同士の沿面距離をさらに長く確保でき、大径端子1を伝送する電気信号を高電圧のものとすることが可能となる。
また、傾斜部3dの上方に大径部3eをドリルで形成する際に、ドリルを深く入れることによって容易に形成することが可能となり、セラミック板3の厚さ寸法に焼成時の収縮バラツキによる寸法バラツキが生じたとしても、確実に所定の傾斜部3dを形成することが可能となる。すなわち、傾斜部3dを形成するための加工機の加工条件を所定の条件に設定して、複数のセラミック板3に対し連続的に傾斜部3dを形成する場合においても、大径部3eを設けることにより、傾斜部3dがドリルの先端部の刃先で切削加工されるとともに、傾斜部3d上端の大径部3eの内径はドリルの直径で容易に管理することができることとなる。これによって、セラミック板3の厚さ寸法に寸法バラツキが生じたとしても、所定の大きさの傾斜部3dを確実に形成することが可能となり、傾斜部3dが小さく形成されてしまうのを防止することができる。
その結果、所定の大きさの環状のメタライズ層3bを所定の大きさの傾斜部3dの内面に形成することができ、ピン1を強固かつ気密にメタライズ層3bに安定して接合できるようになる。また、加工条件を所定の条件に設定して、複数のセラミック板3に対し連続的に傾斜部3dを形成できるので、量産に適したものとすることができる。
なお、傾斜部3dが小さくなると、メタライズ層3bを大きく形成することができず、ピン1とメタライズ層3bとを強固かつ気密に接合するのが困難となる。
また図1および図2,図3に示すように、大径端子1と小径端子2との接合部の外周面には段差が形成されるようになり、この段差により、比較的量の多い第1のロウ材4が濡れ広がって段差より上側に這い上がるのを有効に防止し、第1のロウ材4のメニスカス形状を良好なものとできるとともに、残部にコネクターソケット等を接続させる際に第1のロウ材4が這い上がってしまって接続の障害となるのを防止できる。
また、大径端子1と大径端子1の一端側に外周面がロウ付け接合された小径端子2とから成ることにより、小径端子2の一端を溶接や半田付け等によって塞ぐ際に、小径端子2の一端に溶接や半田付けの際の熱が加わっても、大径端子1と小径端子2との接合部で熱が遮断され、大径端子1とセラミック板3との接合部に熱が加わり難くなり、セラミック板3に大径端子1との熱膨張差による応力が作用し難くなる。さらに、小径端子2の上端を溶接や半田付け等によって塞ぐ際に小径端子2の上端が変形するような変位が加わった場合においても、小径端子2と大径端子1とを接合する第2のロウ材5がこの変位による応力を吸収緩和する作用を成し、セラミック板3の大径端子1との接合部に小径端子2の変形による応力が作用し難くなる。従って、小径端子2の一端を溶接や半田付け等によって塞いでも、セラミック板3にクラック等の破損が生じるのを防止し、気密が破れるのを有効に防止することができる。
これらの結果、小径端子2の内径寸法および外径寸法が小さくなってもセラミック板3に気密にロウ付け接合し得る気密端子を提供することができる。その結果、セラミック板3の両主面間、すなわち電気装置の外部雰囲気側と内部雰囲気側との間を気密に遮断でき、気密端子として良好に機能し得るものとなる。
また、セラミック板3の電気装置への取着構造としては、側部メタライズ層3cに予めFe−Ni−Co合金等から成る筒状の金属スリーブをAgロウ等のロウ材によってロウ付けし、この金属スリーブと電気装置とを溶接してもよく、また、側部メタライズ層3cがセラミック板3の主面の外周部に形成され、セラミック板3の主面と電気装置とがロウ付け接合されていてもよい。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を施すことは何等差し支えない。例えば、大径端子1のメタライズ層3bとの接合部に鍔部が形成されて、鍔部とメタライズ層3bとがロウ付けされてもよく、この構成により、第1のロウ材4のメニスカス形状をより良好なものとすることができるとともに、鍔部により大径端子1がセラミック板3に係止され、セラミック板3に対し大径端子1を正確に位置決めできる構成となる。また、小径端子2から伝熱される熱量が多い場合には、大径端子1の一端に鍔部を設けてもよく、径が太くなった鍔状の突出部が一つ以上設けられることにより、熱が鍔部で放散され、メタライズ層3bとのロウ付け部に伝熱される熱が少なくなる。