従来、半導体製造装置等の内部雰囲気を外部雰囲気と遮断させて使用する電気装置には、装置内外で電気信号を導通させるために気密端子が取着されている。このような気密端子においては、気密端子を構成する部材間での絶縁を保ちつつ部材同士を気密に接合することが要求される。
このような気密端子の一例を図3に示す。図3は従来の気密端子の一例を示す断面図である。11はセラミック筒状体、12は金属線材、13はスリーブ、17はフランジであり、主にこれらにより気密端子が構成される。
図3の気密端子は、セラミック筒状体11中に両端を上下に突出させた状態で金属線材12を挿通させ、セラミック筒状体11から突出した金属線材12の一端側に環状の固定金具15を取り付け、固定金具15と金属線材12との間および固定金具15とセラミック筒状体11の外表面との間をロウ付け接合し、かつセラミック筒状体11の外周面を筒状のスリーブ13の内周面にロウ付け接合し、スリーブ13の外周面をフランジ17の貫通孔17aの内周面にロウ付け接合または溶接することによって構成されている。
セラミック筒状体11はアルミナ(Al2O3)質セラミックス等のセラミックスから成り断面の形状が円形や四角形,六角形等の種々の形状とされた部材であり、セラミック筒状体11をスリーブ13にロウ付けするには、例えばセラミック筒状体11の外周面にタングステン(W)やモリブデン(Mo),マンガン(Mn)等から成る側部メタライズ層16を被着させておくとともに銀(Ag)ロウ等のロウ材によってロウ付けする方法が採用される。また側部メタライズ層16にニッケル(Ni)めっきを施し、このNiめっきが施された側部メタライズ層16とスリーブ13とをロウ付けするという方法も採用される。この方法により、セラミック筒状体11とスリーブ13との接合をより強固なものとすることができる。
セラミック筒状体11の貫通孔11a内に金属線材12を挿通させ固定するには、セラミック筒状体11の例えば上端面にW,Mo,Mn等から成る上部メタライズ層14を被着形成しておき、この上部メタライズ層14に、金属線材12をセラミック筒状体11に取り付けるための環状の固定金具15を当接し、固定金具15と金属線材12との間および固定金具15とセラミック筒状体11の上部メタライズ層14との間をAgロウ等のロウ材を介してロウ付け接合する。
金属線材12は鉄(Fe)−Ni−コバルト(Co)合金等の金属から成る円柱状であり、セラミック筒状体11の貫通孔11a内に挿通されて一端側で固定金具15にロウ付けされ、電気装置内外を電気的に接続するための端子として作用する。
スリーブ13は、Fe−Ni−Co合金等の金属から成る、その内径をセラミック筒状体11の外径に合わせ、その外形をフランジ17の貫通孔17aの内径に合わせた外径の円形や四角形,六角形等の種々の形状とした筒状の部材であり、その内周面の一部が側部メタライズ層16にAgロウ等のロウ材を介して気密にロウ付けされている。
このスリーブ13は、セラミック筒状体11によって絶縁された金属線材12をフランジ17の貫通孔17a内に固定するための固定部材として機能するとともに、セラミック筒状体11にフランジ17との熱膨張差による応力が直接作用したり、フランジ17に加わる外力がセラミック筒状体11に直接作用したりするのを防止する応力緩衝部材として機能し、フランジ17の貫通孔17aにロウ付けや溶接等によって気密に接合される。
環状の固定金具15は、Fe−Ni−Co合金等の金属から成るリング状の部材であり、その中心孔の内径を金属線材12の外径に合わせて、リングの直径がセラミック筒状体11の上端面に合うように絞り込まれた部材である。そして、その内側には金属線材12がその一端側を突出させて挿通され、Agロウ等のロウ材を介してロウ付けされている。
この固定金具15は、セラミック筒状体11に金属線材12を気密に嵌挿固定するとともに、セラミック筒状体11に金属線材12を取り付ける際等にセラミック筒状体11と金属線材12との間に両者の熱膨張係数の差に起因して発生する応力を吸収緩和する作用をなす。
フランジ17はSUS等から成る平板状で電気装置への取付用部材として機能するものであり、例えばフランジ17の一主面を電気装置の取付孔を塞ぐように取り付け、フランジ17の外周部を溶接することによって、気密端子を電気装置に気密かつ強固に取り付けることが可能となる(下記の特許文献1参照)。
このような気密端子は、金属線材12がセラミック筒状体11に支持される構造となるので、金属線材12とフランジ17との沿面距離を大きくとることができ、金属線材12に高電圧の電気信号を導通させることが可能なものとなる。
特開平11−162540号公報
しかしながら、図3に示した上記従来の気密端子において、スリーブ13をフランジ17の貫通孔17aにロウ付けや溶接等によって接合固定する際、ロウ材や溶融した金属がフランジ17の表面に濡れ広がってしまい、フランジ17を平坦な電気装置の表面に気密に取り付けることができなくなるという問題点や、溶接時にセラミック筒状体11がクラック等によって破損し、気密端子として機能できなくなってしまうという問題点が発生していた。
即ち、スリーブ13をフランジ17にロウ付けによって接合する場合、スリーブ13をロウ付けするためのロウ材が、フランジ17の上下両主面に流れ出るとともに濡れ広がって、例えば、フランジ17の一主面を電気装置の取付孔を塞ぐように取り付け、フランジ17の外周部を溶接しようとしても、フランジ17の一主面が濡れ広がったロウ材によって取付孔の周囲の部材に密着されず、フランジ17の一主面で電気装置の取付孔を気密に塞ぐのが困難となり、その結果、フランジ17を電気装置に気密に取り付けることができなくなっていた。
また、ロウ付けによって接合する場合、スリーブ13を所定の位置に固定するためのロウ付け用治具が必要であり、接合の作業において、ロウ付け用治具を準備するための手間が掛かるという問題点もあった。
スリーブ13をフランジ17に溶接接合する場合は、スリーブ13とフランジ17の溶接部周辺のみに熱が加えられるため、スリーブ13とフランジ17だけが熱膨張することとなる。そのため、セラミック筒状体11のスリーブ13との接合部において溶接時の熱応力が大きく作用し易く、セラミック筒状体11がクラック等によって破損し易くなっていた。その結果、必要とされる気密信頼性を満足することができず、気密端子として機能できなくなってしまっていた。
特に、近時においては、気密端子は小型化傾向にあり、セラミック筒状体11やスリーブ13等が小型化してきており、セラミック筒状体11の機械的強度が低下するとともに、スリーブ13の長さが短くなってセラミック筒状体11との接合部に溶接時の熱応力が作用するとクラックを生じ易くなってきている。そのため、スリーブ13をフランジ17に溶接接合する場合、セラミック筒状体11のクラック等の破損による気密信頼性低下の問題が顕著になってきた。
従って、本発明は上記問題点に鑑み完成されたものであり、その目的は、ロウ材が必要以上に濡れ広がるのを防止可能で効率よく接合可能なロウ付け構造を提供するとともに、高い気密信頼性を有し効率よく製造可能な気密端子を提供することにある。
本発明のロウ付け構造は、金属板の上下主面間に大径部および小径部から成る貫通孔が設けられ、該貫通孔に挿通される筒状部材または棒状部材の突出部が前記大径部と前記小径部との間の段差部に係止されるとともに前記大径部の内周面にロウ付けされて成り、前記段差部に段差面溝部が形成され、前記小径部の内周面に内周面溝部が形成されていることを特徴とする。
また、本発明のロウ付け構造は、上記構成において好ましくは、前記筒状部材が、金属線材が両端面間に挿通されたセラミック筒状体であり、前記突出部が、前記セラミック筒状体の外周面にロウ付けされた筒状の金属スリーブであることを特徴とする。
また、本発明の気密端子は、上記本発明のロウ付け構造を用いて、前記金属板と前記筒状部材または棒状部材とをロウ付けして成ることを特徴とする。
本発明のロウ付け構造は、金属板の上下主面間に大径部および小径部から成る貫通孔が設けられ、貫通孔に挿通される筒状部材または棒状部材の突出部が大径部と小径部との間の段差部に係止されるとともに、大径部の内周面にロウ付けされて成り、段差部に段差面溝部が形成され、小径部の内周面に内周面溝部が形成されていることから、突出部を大径部の内周面にロウ付けするためのロウ材が、段差部,段差面溝部,内周面溝部に遮られて、金属板の下側主面に流れ出にくくなり、金属板の下側主面にロウ材が濡れ広がるのを防止することができる。
その結果、金属板の下側主面を、例えば、電気装置の取付孔を塞ぐように当接させ、金属板の外周部を溶接固定すれば、金属板の外周部が良好な状態で溶けて、金属板の下側主面で電気装置の取付孔を気密に塞いで取り付けることが可能となる。
また、突出部の下端が段差部で係止されるので、従来のように突出部が貫通孔内の所定位置になるようにロウ付け用治具で筒状部材または棒状部材を所定位置に固定する必要が無くなり、突出部の接合の作業を作業効率に優れたものとすることが可能となる。
以上により、ロウ材が必要以上に濡れ広がるのを防止可能で効率よく接合可能なロウ付け構造を提供することができる。
また、本発明のロウ付け構造は、上記構成において好ましくは、筒状部材が、金属線材が両端面間に挿通されたセラミック筒状体であり、突出部が、セラミック筒状体の外周面にロウ付けされた筒状の金属スリーブであることから、気密端子が小型化し、セラミック筒状体等が小型化して、セラミック筒状体の機械的強度が低下しても、スリーブと金属板とがロウ付け接合によって接合されることから、溶接接合される場合のようにセラミック筒状体へクラック等の破損が生ずることがなく、気密信頼性が低下するのを防止できる。
また、本発明の気密端子は、本発明のロウ付け構造を用いて、金属板と筒状部材または棒状部材とをロウ付けして成ることから、接合構造に、上記本発明のロウ付け構造を用いた、ロウ材が必要以上に濡れ広がるのを防止可能で効率よく接合可能な気密信頼性の高い気密端子を提供することができる。
本発明のロウ付け構造および気密端子について以下に詳細に説明する。図1は本発明の気密端子の実施の形態の一例を示す断面図であり、図2(a)は図1の気密端子におけるロウ付け構造の要部拡大断面図である。また、図2(b)は本発明のロウ付け構造の実施の形態の他の例を示す要部拡大断面図、図2(c)(d)はそれぞれ本発明の気密端子の実施の形態のさらに他の例を示し、段差面溝部および内周面溝部の要部拡大断面図である。
同図において、1は筒状部材または棒状部材、2は金属線材、3は突出部(スリーブ)、7は金属板であり、主にこれらにより気密端子が構成される。
本発明のロウ付け構造は、金属板7の上下主面間に上方の大径部7a−1および下方の小径部7a−2から成る貫通孔7aが設けられ、貫通孔7aに挿通される筒状部材または棒状部材1の外周側面に突出する突出部3の下端が大径部7a−1と小径部7a−2との間の段差部7bに係止されるとともに大径部7a−1の内周面にロウ付けされて成り、段差部7bの、突出部3の係止部と小径部7a−2の上端との間の段差部7bに段差面溝部7cが形成され、小径部7a−2の内周面には内周面溝部7dが形成されているものである。
また、本発明のロウ付け構造は、筒状部材1が、金属線材2が両端面間に挿通されたセラミック筒状体1であり、突出部が、セラミック筒状体1の外周面にロウ付けされた筒状の金属スリーブ3であってもよい。
また、本発明の気密端子は、上記ロウ付け構造を用いて、金属板7と筒状部材または棒状部材1とをロウ付けして成るもので、金属板の下側主面で半導体製造装置,電子機器,半導体装置等の電気装置の気密容器部分を構成する壁部に開けられた取付孔を塞ぐようにして取り付け、金属板の外周部を壁部に溶接固定することによって、電気装置の取付孔を気密に塞いで取り付けられるものである。
図1において、筒状部材または棒状部材1は、筒状部材1の両端面に金属線材2が挿通された構成を示したが、筒状部材1と金属線材2とが一体の金属から成る棒状部材1とし、この棒状部材1の外周側面に、例えばセラミックスから成る筒状の絶縁部材をロウ付けした突出部3を形成した構成であってもよい。この場合、筒状のセラミックスから成る絶縁部材の内周面および外周面の少なくとも一部にはロウ付けのためのメタライズ層が形成される。
好ましくは、図1に示されるように、セラミックス等の筒状部材1の両端面に金属線材2が挿通された構成がよく、これにより、小径部7a−2の内周面と金属線材2との間に絶縁性部材が配置されることから、金属線材2に、より高電圧の電気信号を導通させることができる。以下、筒状部材1にセラミック筒状体1を用いた場合を例に説明する。
本発明のロウ付け構造において、セラミック筒状体1はAl2O3質セラミックス等のセラミックスから成る断面の形状が円形や四角形,六角形等の種々の形状とされた筒状の部材である。セラミック筒状体1を金属から成るスリーブ3にロウ付けするには、例えばセラミック筒状体1の外周面にWやMo,Mn等から成る側部メタライズ層6を被着させておくとともにAgロウ等のロウ材によってロウ付けする方法が採用される。また側部メタライズ層6にNiめっきを施し、このNiめっきが施された側部メタライズ層6とスリーブ3とをロウ付けするという方法も採用される。この方法により、セラミック筒状体1とスリーブ3との接合をより強固なものとすることができる。
セラミック筒状体1の両端面間に形成された貫通孔1a内に、金属線材2を挿通させ固定するには、例えば、セラミック筒状体1の例えば上端面にW,Mo,Mn等から成る上部メタライズ層4を被着形成しておき、この上部メタライズ層4に、金属線材2をセラミック筒状体1に取り付けるための環状の固定金具5を、固定金具5と金属線材2との間および固定金具5とセラミック筒状体1の上部メタライズ層4との間をAgロウ等のロウ材を介してロウ付け接合すればよい。
固定金具5を用いることによって、セラミック筒状体1に金属線材2を気密に嵌挿固定できるとともに、セラミック筒状体1に金属線材2を取り付ける際等に、金属線材2は固定金具5にのみ固定され、セラミック筒状体1には接合されていないため、セラミック筒状体1と金属線材2との間に両者の熱膨張係数の差に起因して発生する応力を吸収緩和できるという利点があるが、セラミック筒状体1と金属線材2との固定方法は、特にこの方法に限定されるものではなく、例えば、上部メタライズ層4と金属線材2とを直接ロウ材を介してロウ付けしてもよい。
セラミック筒状体1は、例えばAl2O3質セラミックス等から成る絶縁性のものであり、電気装置との電気的絶縁を保って金属線材2を保持する作用をなし、例えばAl2O3質セラミックスから成る場合、酸化珪素(SiO2)、酸化マグネシウム(MgO)および酸化カルシウム(CaO)等のAl2O3質セラミック原料粉末にポリビニルアルコール等のバインダを添加混合するとともに、これを所定形状のプレス型内に充填し、所定の圧力でプレスすることによりプレス成形体を得、しかる後、このプレス成形体を約1600℃の温度で焼成することによって製作される。なお、セラミック筒状体1の上面に固定金具5をロウ付けするための上部メタライズ層4を、および外周面にセラミック筒状体1にスリーブ3をロウ付けするための側部メタライズ層6を形成するために、プレス成形体の所定の位置にWやMo,Mn等の高融点金属を主成分とする金属ペーストを印刷塗布した状態で焼成する。
または、Al2O3,SiO2,MgO,CaO等の原料粉末に適当な有機バインダ,溶剤等を添加混合してスラリーと成す。このスラリーをドクターブレード法やカレンダーロール法によってセラミックグリーンシートと成し、所要の大きさに切断する。次に、複数のセラミックグリーンシートにおいて貫通孔1a等を形成するために適当な打ち抜き加工を施す。そして、これらのセラミックグリーンシートにW等の金属粉末を主成分とする金属ペーストを印刷塗布して上部メタライズ層4,側部メタライズ層6等の導体層となる印刷パターンを形成し、次いでこれらの印刷パターンを形成したセラミックグリーンシートを積層し、約1600℃の温度で焼成することによって製作される。
金属線材2はFe−Ni−Co合金,Fe−Ni合金,銅(Cu),鉄(Fe)等の金属から成る棒状であり、セラミック筒状体1の貫通孔1a内に両端がセラミック筒状体1の両端面から突出するように挿通されてロウ付け等により固定され、電気装置内外を電気的に接続するための端子として機能する。
この金属線材2は、好ましくはその熱膨張係数がセラミック筒状体1の熱膨張係数と近似した材質とするのがよく、この構成によって、金属線材2とセラミック筒状体1とがロウ付けされる際の両者の熱膨張差を最小限に抑えることができ、金属線材2をセラミック筒状体1に気密性高く強固に接合することができるようになる。さらに、金属線材2を構成する金属として硬度がビッカース硬度でHv=200以上のものであると、比較的固く容易に曲がりにくいことから電気装置の外部雰囲気側の金属線材2にコネクターソケット等を嵌合する際等に金属線材2に曲がりを発生させにくいので好ましい。従って、セラミック筒状体1がAl2O3質セラミックスから成る場合、金属線材2としては、熱膨張係数がAl2O3質セラミックスと近似するとともに硬度の高いFe−Ni−Co合金から成るのがよい。
また、金属線材2は、その表面にNiから成るめっき金属層を1〜10μmの厚みに被着させておくと金属線材2が酸化腐食することを有効に防止することができる。従って、金属線材2の表面にはNiから成るめっき金属層を1〜10μmの厚みに被着させておくことが好ましい。
スリーブ3は、Fe−Ni−Co合金,Fe−Ni合金等の金属から成る、その内径をセラミック筒状体1の外径に合わせ、その外径を金属板7の貫通孔7aの内周面に合わせた円形や四角形,六角形等の種々の形状とした筒状の部材であり、好ましくは、内径をセラミック筒状体1の外径に合わせた小径の筒状部と、その外径を金属板7の貫通孔7aの内周面に合わせた大径の筒状部とが隣り合うように組合せ、大径の筒状部と小径の筒状部とがリング状部材で接続された図1のような形状や、大径の筒状部の内側に小径の筒状部を組合せ、それらの一端側がリング状部材で接続された、断面U字状の金属を筒状に形成したような形状の筒状とされる。このような形状とすることにより、ロウ付けされた大径の筒状部と小径の筒状部との間の弾力性で金属板7とセラミック筒状体1との間の熱膨張差を緩和することができる。
そして、小径の筒状部の内周面の少なくとも一部が側部メタライズ層6にAgロウ等のロウ材を介して気密にロウ付けされ、大径の筒状部の外周面の少なくとも一部が貫通孔7aの大径部7a−1の内周面にロウ付けされて金属板7とセラミック筒状体1との間を気密に封止する。このスリーブ3はプレス加工や絞り加工等の従来周知の金属加工法によって所定の形状に製作される。
このスリーブ3は、セラミック筒状体1によって絶縁された金属線材2を金属板7の貫通孔7aに固定するための固定部材として機能するとともに、セラミック筒状体1に金属板7との熱膨張差による応力が直接作用したり、金属板7に加わる外力がセラミック筒状体1に直接作用したりするのを防止する応力緩衝部材として機能する。
環状の固定金具5は、Fe−Ni−Co合金等の金属から成り、その内径を金属線材2の外径に合わせて、その外径がセラミック筒状体1の上端面に合わせて形成されたリング状の部材であり、例えば、図1のスリーブ3と同形状に絞り込まれたリング状の部材である。そして、その内側には金属線材2がその一端側を突出させて挿通され、Agロウ等のロウ材を介してロウ付けされている。この固定金具5はプレス加工や絞り加工等の従来周知の金属加工法によって所定の形状で製作される。
この固定金具5は、セラミック筒状体1に金属線材2を気密に嵌挿固定するとともに、セラミック筒状体1に金属線材2を取り付ける際等にセラミック筒状体1と金属線材2との間に両者の熱膨張係数の差に起因して発生する応力を吸収緩和する作用をなす。これにより、セラミック筒状体1の貫通孔1a内に銅や銀等の電気伝導性のよい金属線材2を用いることも可能となる。
金属板7はステンレス鋼(SUS),Fe,Cu等から成る平板状で電気装置への取付用部材として機能するものであり、例えば金属板7の一主面を電気装置の取付孔を塞ぐように取り付け、金属板7の外周部を溶接することによって、気密端子を電気装置に気密かつ強固に取り付けることが可能となる。
金属板7において貫通孔7aの下側には貫通孔7aの内周面が突出するようにして小径部7a−2が形成されており、大径部7a−1との間の段差部7bの外周部にスリーブ3の下端が係止され、段差部7bのスリーブ3との係止部よりも内周側に段差面溝部7cが形成され、かつ小径部7a−2の内周面には内周面溝部7dが形成されている。
この構成により、スリーブ3をロウ付けするためのロウ材8が、段差部7b,段差面溝部7c,内周面溝部7dで金属板7の下側主面側に流れるのを阻止することができ、金属板7の下側主面にロウ材8が濡れ広がるのを防止することができる。
その結果、金属板7の下側主面はロウ材8の濡れ広がりがないことから、例えば、金属板7の下側主面を電気装置の取付孔を塞ぐように取り付け、金属板7の外周部を溶接固定すれば、金属板7の外周部が良好な状態で溶けて、金属板7で電気装置の取付孔を気密に塞いで取り付けることが可能となる。
また、スリーブ3の下端が段差部7bの外周部で係止されるので、スリーブ3を従来のようにロウ付け用治具で所定位置に固定する必要が無くなり、スリーブ3の接合作業を作業効率に優れたものとすることが可能となる。
以上により、ロウ材8が必要以上に濡れ広がるのを防止可能で効率よく接合可能なロウ付け構造となる。
また、スリーブ3と金属板7とがロウ付け接合によって接合されることから、気密端子が小型化し、セラミック筒状体1等が小型化して、セラミック筒状体1の機械的強度が低下しても、溶接接合される場合のようにセラミック筒状体1へクラック等の破損が生ずるということがなく、気密信頼性が低下するのを防止できる。
ここで、段差面溝部7cおよび内周面溝部7dの断面形状は、四角形状,V字状,半円形状等種々の形状とし得るが、好ましくは、断面形状は四角形状とするのがよく、溝の底面の角部にロウ材を溜まり易くし、ロウ材8が溝から外に流れ出るのを有効に防止することができる。
小型の気密端子である場合、大径部7a−1に対する小径部7a−2の貫通孔7a内側への突出寸法および高さは1mm〜3mm程度で、また段差面溝部7cおよび内周面溝部7dの幅および深さ寸法は0.5mm〜1mm程度であればよく、金属板7の下側主面にロウ材8が流れるのを確実に防止することができる。
また、好ましくは、図2(b)に示すように、金属板7の貫通孔7aの上面側の大径部7a−1の開口部には面取り部7eが形成されているのがよく、この構成により、スリーブ3を金属板7に接合させるためのロウ材8を面取り部7eの内面に溜めることができ、スリーブ3と金属板7との間に形成されるロウ材8のメニスカスを良好なものとして、スリーブ3を金属板7に、より強固に接合できるとともに、ロウ材8が面取り部7eから流れ出難くなり金属板7の上面においてもロウ材8の濡れ広がりを防止することができる。なお、面取り部7eの断面形状は図2(b)に示すような三角形状,四角形状等の矩形状の他、円弧状等の曲面状であってもよく、種々の形状とし得る。
また、好ましくは、図2(c)(d)に示すように、段差面溝部7cおよび内周面溝部7dの断面形状は溝の底面に凸形の突出部が形成された形状や凹形の溝部が形成された形状であるのがよく、この構成により、溝の底面にさらにロウ材を溜まり易くし、ロウ材が溝から外に流れ出るのを極めて有効に防止することができるようになる。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を施すことは何等差し支えない。上記実施の形態においては、本発明のロウ付け構造について気密端子を例にとって説明したが、本発明のロウ付け構造は気密端子以外にも適用可能である。例えば、外周部にスリーブ3の付いたサファイア窓を金属板7に取り付けるロウ付け部等に適用しても構わない。また、図1では金属板7にはスリーブ3が1個だけしか取り付けられていない形態を示したが、1枚の金属板7に複数個の貫通孔7aが設けられ、それぞれの貫通孔7aにスリーブ3が取り付けられている形態であってもよく、何等問題ない。