従来、電子機器,半導体装置,移動体通信基地局等の内部雰囲気を外部雰囲気と遮断させて使用する電気装置には、装置の内外で電気信号を接続するためにコネクタが用いられる。特に電気信号が高周波信号である場合、コネクタとして高周波同軸コネクタが用いられる。
このような高周波同軸コネクタの一例を図2(a),(b)に示す。図2(a)は従来の高周波同軸コネクタの一例を示す断面図、図2(b)は従来の高周波同軸コネクタの他の例を示す断面図である。これら図において、11は中心導体、12はロウ材、13はセラミック板、14は外周導体であり、主にこれらにより高周波同軸コネクタが構成される。
図2(a)の高周波同軸コネクタは、円柱状の金属製の中心導体11と、中心導体11を挿通させるための貫通孔13aが設けられ、かつ貫通孔13aの内面の全面にメタライズ層13bが設けられるとともに外周部に側部メタライズ層13cが形成されたセラミック板13と、円筒状の金属製の外周導体14とから成る。そして、中心導体11が第一のロウ材12bによってメタライズ層13bにロウ付けされ、外周導体14が第二のロウ材12cによって側部メタライズ層13cにロウ付けされている。
中心導体11は鉄(Fe)−ニッケル(Ni)−コバルト(Co)合金等の金属から成る円柱状であり、中心導体11のセラミック板13に挿通保持された部位が細径部11cとなっているとともに、中心導体11の細径部11cの根元の周囲に段差部11eが形成され、セラミック板13の上下両主面を挟むように段差部11eが当接されている。そして、細径部11cがセラミック板13の貫通孔13a内に挿通されてロウ付けされ、中心導体11が電気装置内外を電気的に接続するための導体として機能する。
セラミック板13は酸化アルミニウム(Al2O3)質セラミックス等のセラミックスから成る円環状のものである。セラミック板13の貫通孔13a内に中心導体11をロウ付けするには、例えばセラミック板13の貫通孔13aの内面にタングステン(W)やモリブデン(Mo),マンガン(Mn)等の高融点金属から成るメタライズ層13bを被着させておくとともに、このメタライズ層13bと中心導体11とが銀(Ag)ロウ等の第一のロウ材12bによってロウ付け接合される。またセラミック板13の外周部にWやMo,Mn等の高融点金属から成る側部メタライズ層13cが形成され、この側部メタライズ層13cと外周導体14とがAgロウ等の第二のロウ材12cによってロウ付け接合される。外周導体14はFe−Ni−Co合金等の金属製の円筒状である(下記の特許文献1参照)。
中心導体11がセラミック板13に挿通保持された中央部が細径部11cとなっていることによって、中心導体11がセラミック板13を介して配設されている細径部11cの特性インピーダンスと、セラミック板13を介さずに配設されている中心導体11の端部における特性インピーダンスとを整合または実質的に一致させることができ、特性インピーダンスのミスマッチングがなく高周波信号の伝送特性に優れた高周波同軸コネクタとなるとされている。
また、図2(b)の高周波同軸コネクタは、円柱状の金属製の中心導体11と、中心導体11を挿通させるための貫通孔13aが設けられ、かつ貫通孔13aの内面の全面にメタライズ層13bが設けられるとともに外周部に側部メタライズ層13cが形成されたセラミック板13と、円筒状の金属製の外周導体14とから成り、中心導体11は、セラミック板13に挿通保持された部位が細径部11cとなっており、中心導体11の細径部11cの根元の周囲に形成された段差部11eをセラミック板13の上側主面または下側主面と当接させないように、間に空間を設けた状態で、細径部11cが第一のロウ材12bによってメタライズ層13bにロウ付けされ、外周導体14が第二のロウ材12cによって側部メタライズ層13cにロウ付けされている(下記の特許文献1参照)。
中心導体11がセラミック板13に挿通保持された中央部が細径部11cとなっており、かつ段差部11eとセラミック板13の上側主面または下側主面との間に空間を設けた状態で中心導体11がロウ付けされていることによって、中心導体11がセラミック板13を介して配設されている細径部11cの特性インピーダンスと、セラミック板13を介さずに配設されている中心導体11の端部における特性インピーダンスとを整合させるとともに、細径部11cのセラミック板13を介さずに配設されている領域で特性インピーダンスを段階的に整合させ、実質的に一致させることができるので、特性インピーダンスのミスマッチングがなく高周波信号の伝送特性により優れた高周波同軸コネクタとなるとされている。
これら高周波同軸コネクタは、外周導体を電気装置の取付用の貫通穴に嵌め込むとともに外周導体を電気装置に気密にロウ付けまたは溶接することによって電気装置に装着される。
特開2002−290114号公報
本発明の高周波同軸コネクタについて以下に詳細に説明する。図1は本発明の高周波同軸コネクタの実施の形態の一例を示す断面図である。同図において、1は中心導体、2はロウ材、3はセラミック板、4は外周導体であり、主にこれらにより高周波同軸コネクタが構成される。
本発明の高周波同軸コネクタは、中央部の上下主面を貫通する貫通孔3aが形成されるとともに貫通孔3aの内面にメタライズ層3bが環状に被着されたセラミック板3と、貫通孔3aに挿通されメタライズ層3bにロウ材2b(以下第二のロウ材という)を介してロウ付けされた中心導体1と、セラミック板3の外周を取り囲むように設けられた筒状の外周導体4とから成るもので、中心導体1は下部中心導体1aと上部中心導体1bとから成り、下部中心導体1aは上端が細径部1cとされるとともに細径部1cと残部との間が段差部1eとされており、細径部1cが貫通孔3aの下側から挿通されてセラミック板3の上側主面から突出するとともに段差部1eがセラミック板3の下側主面に当接された状態で細径部1cがメタライズ層3bに第二のロウ材2bを介してロウ付けされており、上部中心導体1bは下端面の中央部に細径部1cの上端を嵌合させる凹部1dおよび凹部1dの底面に細径部1cよりも小径のロウ溜め穴1hが設けられており、凹部1dが下部中心導体1aの細径部1cに嵌着されるとともに上部中心導体1bの下端1fとセラミック板3の上側主面との間に隙間を設けて上部中心導体1bが下部中心導体1aにロウ材2a(以下、第一のロウ材という)を介してロウ付けされたものである。
なお、上下左右という場合、図面上の位置関係を説明するものであり、また、製造時にはこの位置関係に配置されるが、完成時における位置関係と関係するものではない。
本発明の高周波同軸コネクタは、半導体製造装置,電子機器,半導体装置等の電気装置の気密容器部分を構成する壁部に貫通穴を設けておき、この貫通穴の内周面または貫通穴の開口の周囲に高周波同軸コネクタの外周導体4が気密にロウ付けまたは溶接されることにより、電気装置を密閉することができる。
本発明の高周波同軸コネクタによれば、上部中心導体の下端とセラミック板の上側主面との間に隙間を設けて上部中心導体が下部中心導体にロウ付けされていることから、ロウ付け接合後に中心導体1に熱収縮が生じても、セラミック板3が下部中心導体1aの段差部1eと上部中心導体1bの下端1fとに挟まれてセラミック板3に圧縮応力が作用することがない。また、上部中心導体1bの下端1fとセラミック板3の上側主面との間に第二のロウ材2bおよび第一のロウ材2aが連結して溜まってしまうことによって、第一および第二のロウ材2a,2bとの熱膨張差によってセラミック板3に破損を生じさせてしまうこともない。
また、セラミック板3と下部中心導体1aとは、細径部1cでメタライズ層3bにロウ付けされていることにより、セラミック板3と下部中心導体1aとの接合部において、下部中心導体1aとの熱膨張差によってセラミック板3に加わる応力を小さく抑えることができ、セラミック板3にクラック等の破損を生じにくくすることができる。その結果、セラミック板3の上下両主面間、すなわち電気装置の外部雰囲気側と内部雰囲気側との間を気密に遮断できる高周波同軸コネクタとなる。
また、セラミック板3の自重によって、セラミック板3の下側主面を下部中心導体1aの段差部1eの上面に当接させてロウ付けすればよく、ロウ付け時に治具を用いる必要がなく、セラミック板3と中心導体1との接合位置精度の管理を容易にすることができる。
また、上部中心導体1bの凹部1dの底面にロウ溜め穴1hが形成されていることによって、ロウ溜め穴1h開口周囲の凹部1d底面と下部中心導体1aの細径部1cの上端面および凹部1dの内面と細径部1cの上端外周面とが当接されて、上部中心導体1bと下部中心導体1aとが位置ずれすることなくロウ付けされるで、中心導体1を伝送する高周波信号の伝送特性が安定する。また、上部中心導体1bの下端面1fとセラミック板3の上側主面との間に隙間が設けて第一のロウ材2aおよび第二のロウ材2bが接してしまうのを防止するとともに、ロウ溜め穴1hによって第一のロウ材2a量をコントロールできるので、上部中心導体1bの下端面1fとセラミック板3の上側主面との隙間を必要以上に大きくしなくても、第一のロウ材2aおよび第二のロウ材2bが接して、上部中心導体1bとセラミック板3の上側主面とがロウ付けされてしまわないようにできる。従って、セラミック板3に上部中心導体1bとの熱膨張差による応力およびロウ材との熱膨張差による応力が作用してしまうのを防止することができる。その結果、クラック等の破損が生じにくいセラミック板3となる。
即ち、高周波同軸コネクタを精度よく容易に製造することができ、セラミック板3が破損しにくく、その結果、中心導体1を伝送する高周波信号の伝送特性を損なわずに量産性にも優れた高周波同軸コネクタを提供できる。
本発明の高周波同軸コネクタにおいて、中心導体1はFe−Ni−Co合金,Fe−Ni合金,Fe,銅(Cu),Cu合金,ステンレス鋼(SUS)等の金属から成る円柱状であり、電気装置内外を電気的に接続するための導体として機能する。中心導体1は角柱状であってもよいが、中心導体1が円柱状であることにより、中心導体1を伝送する高周波信号を同軸線路と同じモードで伝送させることができるとともに、セラミック板3にクラック等の破損が発生しにくいものとできる。従って、中心導体1は円柱状とするのがよい。
中心導体1は下部中心導体1aおよび上部中心導体1bに二分して作製され、下部中心導体1aは、上端が細径部1cとされるとともに細径部1cとそれ以外の残部との間が段差部1eとなるように形成される。上部中心導体1bは、下端面1fの中央部に細径部1cの上端が嵌合される凹部1dが形成され、さらに凹部1dの底面に細径部1cよりも小径のロウ溜め穴1hが形成される。なお、上部中心導体1bの下端面1fと凹部1dとの間に傾斜面1gを設けておくとよい。
そして、下部中心導体1aは、細径部1cがセラミック板3の貫通孔3aの下側から挿通されて先端部がセラミック板3の上側主面から突出し、段差部1eの上面がセラミック板3の下側主面に当接された状態でセラミック板3のメタライズ層3bに第二のロウ材2bを介してロウ付けされる。上部中心導体1bは、凹部1dに下部中心導体1aの細径部1cが嵌入されるとともに下端1fがセラミック板3の上側主面との間に隙間をもった状態で下部中心導体1aの細径部1c上端部と凹部1dの内面とが第一のロウ材2aを介してロウ付けされる。
なお、細径部1cを有する下部中心導体1aは、下部中心導体1aとなる棒材に旋盤を用いた切削加工や金型を用いたプレス加工等の従来周知の金属加工を施すことによって形成される。また、凹部1dを有する上部中心導体1bも、上記と同様に、上部中心導体1bとなる棒材に旋盤を用いた切削加工や金型を用いたプレス加工等の従来周知の金属加工を施すことによって形成される。
また、下部中心導体1aと上部中心導体1bとの材質を変えても良い。例えば、下部中心導体1aはFe−Ni−Co合金製とし、上部中心導体1bはCu製等としてもよい。
好ましくは、下部中心導体1aは、その熱膨張係数がセラミック板3の熱膨張係数と近似した材質、例えばFe−Ni−Co合金とするのがよく、この構成によって、下部中心導体1aとセラミック板3とがロウ付けされる際の両者の熱膨張差を最小限に抑えることができ、下部中心導体1aをセラミック板3に気密性よく強固に接合することができるようになる。
従って、セラミック板3がAl2O3質セラミックスから成る場合、下部中心導体1aをFe−Ni−Co合金で形成しかつ下部中心導体1aを電気装置の外部雰囲気側に位置させた状態で、高周波同軸コネクタとするのがよい。外部雰囲気側に位置する中心導体1を構成する金属として硬度がビッカース硬度でHv=200以上のものであると、比較的固く容易に曲がりにくいことから中心導体1の外部雰囲気側にコネクターソケットを嵌合する際等に中心導体1に曲がりを発生させにくいので好ましい。
また、上部中心導体1bは、その電気抵抗値が低い材質、例えばCuとするのがよく、この構成によって、上部中心導体1bを伝送する高周波信号の電気抵抗による伝送損失を低減することができる。
また、図1に示すように、下部中心導体1aには第一のスリット1iが設けられ、上部中心導体1bには第二のスリット1jが設けられてもよい。この構成により、第一のスリット1iおよび第二のスリット1jに相手方の端子を挿入させることが可能となり、電気装置の内部または外部との接続が容易で確実なものとなる。この場合、第一のスリット1iおよび第二のスリット1jは、相手方の端子が挿入されていない状態ではスリットが閉じたような状態としておき、この状態で第一のスリット1iおよび第二のスリット1jにスリット1i,1jが開くように相手方の端子を挿入させることで、中心導体と端子との間の接続が確実になる。
細径部1cと細径部1cを除く下部中心導体1aとの間には段差部1eが形成されていることにより、第二のロウ材2bが段差部1eより下側に流れるのを防止し、第二のロウ材2bのメニスカス形状を良好なものとできるとともに、残部に同軸ケーブル等を接続させる際に第二のロウ材2bが流れてしまって接続の障害となるのを防止できる。
また、上部中心導体1bの下端面1fによって、第二のロウ材2bが下端面1fを超えて上部中心導体1bの上側に這い上がるのを防止し、第二のロウ材2bのメニスカス形状を良好なものとできるとともに、残部に同軸ケーブル等を接続させる際に第二のロウ材2bが流れてしまって接続の障害となるのを防止できる。
また図1に示すように、上部中心導体1bの下端面1fと凹部1dとの間が傾斜面1gとされる構成によって、第二のロウ材2bが下端面1fを超えて上部中心導体1bの上側に這い上がらないようにすることができるとともに、上部中心導体1bの傾斜面1gと下部中心導体1aの上端部との間に第一のロウ材2aの良好なメニスカスを形成させることができ、下部中心導体1aと上部中心導体1bとを強固にロウ付けさせることが可能となる。また、上記のように、第二のロウ材2bが下端面1fを超えて上部中心導体1bの上側に這い上がらないことから上部中心導体1bの上側に同軸ケーブル等を接続させる際に這い上がった第二のロウ材2bが接続の障害となるのをより確実に防止できる。
傾斜面1gの垂直面断面形状は、図1に示すような直線状または円弧状であり、好ましくは直線状としておくとよい。これにより、傾斜面1gの全面にわたって傾斜角度が一定となって、傾斜面1gの広範囲に第一のロウ材2aを流し広げることができる。好ましくは、傾斜面1gの大きさは幅および深さとも0.2mm〜0.8mmであるのがよい。傾斜面1gと下部中心導体1aの細径部1cの側面との間に第一のロウ材2aのメニスカスを非常に良好な形状で形成することができ、下部中心導体1aと上部中心導体1bとを互いにより強固に接合させることができる。傾斜面1gの大きさが0.2mm未満であると、第一のロウ材2aのメニスカスを良好な形状で形成するのが困難となり、傾斜面1gの大きさが0.8mmを超えると傾斜面1gの大きさが必要以上に大きくなり、上部中心導体1bが長大化してしまう。
また、上部中心導体1bの下端1fとセラミック板3との間に空隙をもった状態としていることから、細径部1cと凹部1dとを接合するための第一のロウ材2aが、セラミック板3の貫通孔3aと下部中心導体1aの細径部1cとの接合部に流れてしまうのを防止できる。その結果、細径部1cと凹部1dとを接合するための第一のロウ材2aが下に流れてしまうことがなく、上部中心導体1bと下部中心導体1aとを第一のロウ材2aによって強固に接合固定することができる。また、第一のロウ材2aがセラミック板3の貫通孔3aと下部中心導体1aの細径部1cとの接合部に流れこんで不要なロウ材の溜まりを形成することがなくなり、貫通孔3a周辺部でのセラミック板3がクラック等によって破損するのを防止することができる。
ここで、上部中心導体1bの下端面1fとセラミック板3の上側主面との間の寸法Hは、0.1mm〜1mm程度であるのがよい。Hが0.1mm未満であると、上部中心導体1bの下端面1fとセラミック板3の上側主面との間が近接して第一のロウ材2aおよび第二のロウ材2bがつながってしまい、セラミック板3の上側主面に溜まる可能性がある。そして、セラミック板3にロウ材溜まりとの熱膨張差による応力が大きく作用してしまい、セラミック板3がクラック等によって破損してしまう場合がある。Hが1mmを超えて大きくなると、その分だけ上部中心導体1cを長くしなければならず、高周波同軸コネクタが大型化してしまう傾向にあるとともに、細径部1cが露出した部位の長さが長くなって、中心導体1を伝送する高周波信号に生ずる反射損失等の伝送損失が大きくなる傾向にあり、高周波信号を効率よく伝送させることができない場合がある。
また、中心導体1は、その表面にNiから成るめっき金属層を1μm〜10μmの厚みに被着させておくと中心導体1が酸化腐食することを有効に防止することができる。従って、中心導体1の表面にはNiから成るめっき金属層を1μm〜10μmの厚みに被着させておくことが好ましい。
セラミック板3は、例えばAl2O3質セラミックス等から成る絶縁性のものであり、電気装置との電気的絶縁を保って中心導体1を保持する機能を有し、例えばAl2O3質セラミックスから成る場合、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化珪素(SiO2)、酸化マグネシウム(MgO)および酸化カルシウム(CaO)等のAl2O3質セラミック原料粉末にポリビニルアルコール等のバインダを添加混合するとともに、これを所定形状のプレス型内に充填し、所定の圧力でプレスすることにより貫通孔3aが設けられた平板状のプレス成形体を得、しかる後、このプレス成形体を約1600℃の温度で焼成する。
好ましくは、セラミック板3の上側主面と貫通孔3aとの間に面取り状のテーパ部3dを形成しておくのが良く、テーパ部3dの形成方法としては、プレス型内に予めテーパ部3dとなる突起を形成しておき、焼成前にこのプレス型を用いてプレス成形体を得る、または焼成後、ドリル加工によってテーパ部3dを形成する。さらに、貫通孔3aの内面にメタライズ層3bとなるWやMo,Mn等の金属粉末を主成分とする金属ペーストを吸引印刷法,筆塗り法等によって塗布し、約1300℃の温度で焼成することによって製作される。テーパ部3dが形成されている場合は、テーパ部3dにも延出するようにメタライズ層3bが形成される。
また、セラミック板3の外周面にも側部メタライズ層3cを形成しておくとよく、セラミック板3と外周導体4とを第三のロウ材2cで強固に接続することが可能となる。
または、Al2O3,SiO2,MgO,CaO等の原料粉末に適当な有機バインダ,溶剤等を添加混合してスラリーと成す。このスラリーをドクターブレード法やカレンダーロール法によってセラミックグリーンシートと成し、所要の大きさに切断する。次に、複数のセラミックグリーンシートにおいて貫通孔3a等を形成するために適当な打抜き加工を施す。次いでセラミックグリーンシートを積層し、約1600℃の温度で焼成する。焼成後、ドリル加工によってテーパ部3dを形成する。さらに、貫通孔3aの内面にメタライズ層3bとなるWやMo,Mn等の金属粉末を主成分とする金属ペーストを吸引印刷法等によって塗布し、約1600℃の温度で焼成することによって製作される。テーパ部3dを形成する場合は、ドリル加工によってセラミック板3に形成された中心導体1の直径よりも直径寸法が大きな貫通孔3aの一方の開口部に貫通孔3aの直径よりも直径寸法の大きなドリルの先端部で切削加工することによって形成される。
なお、テーパ部3dを形成する場合は、貫通孔3aのテーパ部3dの内面のみにメタライズ層3bが被着形成される形態であってもよい。貫通孔3aにテーパ部3dが設けられることで、テーパ部3dのメタライズ層3bと下部中心導体1aの細径部1cの側面との間に第二のロウ材2bのメニスカスを良好に形成することができ、かつテーパ部3dの内面のみにメタライズ層3bが被着形成されることで、セラミック板3と下部中心導体1aとの接合面積を最小限に抑え、セラミック板3に下部中心導体1aとの熱膨張差による応力が作用してしまうのを極力抑えることが可能となる。その結果、下部中心導体1aをメタライズ層3bに強固に接合固定できるとともに、セラミック板3がクラック等の破損によって上下主面間の気密を保持できなくなるのを防止できる。
ここで、好ましくは、テーパ部3dの大きさは幅および深さとも0.5mm〜1mmであるのがよい。テーパ部3dのメタライズ層3bと下部中心導体1aの細径部1cの側面との間に第二のロウ材2bのメニスカスを非常に良好な形状で形成することができ、また、テーパ部3dに第二のロウ材2bのプリフォームを設置した状態でロウ付け炉に投入することで、第二のロウ材2bのプリフォームが溶融した際にセラミック板3の貫通孔3aの内面に流れ易くすることができるので、下部中心導体1aとセラミック板3とを互いにより強固に接合させることができる。テーパ部3dの大きさが0.5mm未満であると、第二のロウ材2bのメニスカスを良好な形状で形成するのが困難となり、テーパ部3dの大きさが1mmを超えるとテーパ部3dの大きさが大きくなり、テーパ部3dにおいて欠けやクラック等の破損が発生し易くなってしまう。
また、貫通孔3aのテーパ部3bの内面に被着されたメタライズ層3bと中心導体との間に、テーパ部3bがそのテーパ角度によって下部中心導体1aの細径部1cと対向することとなるので、第二のロウ材2bの適度なメニスカスを形成することができる。そして、中心導体1との第二のロウ材2bとの接合長さをテーパ角度によってコントロールすることができる。
さらに、テーパ角度によってセラミック板3と下部中心導体1aとの間のロウ材のメニスカスをコントロールし、第二のロウ材2bと下部中心導体1aとの接合長さを適度にできるとともに、テーパ部3dの内面に形成された縦弾性係数の大きい第二のロウ材2bでセラミック板3と下部中心導体1aとの間の熱膨張差を吸収でき、セラミック板3に加わる下部中心導体1aとの熱膨張差による応力を最小限に抑え、セラミック板3にクラック等の破損が生ずるのを有効に防止することができる。
テーパ部3dの垂直面断面形状は、図1に示すような直線状または円弧状であり、好ましくは直線状とされるのがよく、これによりメタライズ層3bの全面に均一にロウ材2を流すことができる。そしてテーパ部3dは、底面がセラミック板3の主面と平行な貫通孔3aとなる、断面が四角形状の座繰り形状ではないので、テーパ部3dの内面に全周にわたって円環状のメタライズ層3bが形成され、下部中心導体1aの側面との間にロウ材2の良好なメニスカスを形成することができ、下部中心導体1aをメタライズ層3bに強固かつ気密にロウ付けすることができる。断面が四角形状となる座繰り形状であると、底面に形成されるメタライズ層3bと下部中心導体1aの側面との間に第二のロウ材2bの良好なメニスカスを形成することができないので不適である。
テーパ部3dは、断面形状が三角形状とされたC面カット状の直線である場合、セラミック板3の主面とテーパ部3dの内面との間の傾斜角の大きさは30°〜60°程度であるのが好ましく、この構成により、テーパ部3dに形成されるロウ材のメニスカス形状を良好なものとすることができる。
また、テーパ部3dはセラミック板3を先端が尖ったドリルの先端部で切削加工することによってすり鉢状に設けられる。これにより、テーパ部3dを容易かつ効率よく形成することができる。
これらの結果、下部中心導体1aをセラミック板3に強固かつ気密に接合することが可能となる。
外周導体4はFe−Ni−Co合金,Fe−Ni合金,Fe,SUS等の金属から成る円筒状であり、セラミック板3を外周導体4にロウ付けするには、セラミック板3の外周面のWやMo,Mn等の高融点金属から成る側部メタライズ層3cと外周導体4の内面とをAgロウ等のロウ材を介してロウ付けする方法が採用される。
また外周導体4の電気装置への取着は、半導体製造装置,電子機器,半導体装置等の電気装置の気密容器部分を構成する壁部に貫通穴を開けておき、この貫通穴の内周面または貫通穴の開口の周囲に高周波同軸コネクタの外周導体4が気密にAgロウ等のロウ材や半田を介してのロウ付けまたは溶接されることにより、電気装置を密閉するように接合される。
次に、本発明の高周波同軸コネクタの製造方法について説明する。本発明の高周波同軸コネクタの製造方法は、下部中心導体1aの細径部1cをセラミック板3の貫通孔3aに挿通し、さらに細径部1cの先端を、ロウ溜め部に第一のロウ材2aとなるロウ材のプリフォームを挿入した上部中心導体1bの凹部1dに嵌入する。そして、下部中心導体1aが下方に、上部中心導体1bが上方になるように配置して、セラミック板3の上側主面の細径部1cの周囲に第二のロウ材のプリフォーム2bを設置し、これらを外周導体4の内側に挿入してセラミック板3の上側主面の外周部にロウ材2cとなるプリフォームを設置した状態でロウ付け炉に投入してロウ付け接合すればよい。
この高周波同軸コネクタの製造方法は、各ロウ付け部に適度な量のロウ材が被着され、中心導体1の段差部1cとセラミック板3の下側主面との間のロウ材の溜まりが発生するのを防止することができる。その結果、セラミック板3に第二のロウ材2bとの熱膨張差による応力が作用することがなく、セラミック板3をクラック等によって破損させてしまうのを防止できる。以上により、気密信頼性を保持でき、高周波信号の伝送特性を良好かつ安定させた状態で保持できる高周波同軸コネクタを製造することができる。
貫通孔3aの内面の上部に下方に向けてテーパ状とされたテーパ部3dが形成される場合、テーパ部3dの位置に第二のロウ材2bのプリフォームを設置することができ、第二のロウ材2bのプリフォームの設置位置がずれるのを防止することができるとともに、テーパ部3dに第二のロウ材2bのプリフォームを設置した状態でロウ付け炉に投入することで、第二のロウ材2bのプリフォームが溶融した際にセラミック板3の貫通孔3aの内面に流れ易くさせることができるので、下部中心導体1aとセラミック板3とを互いにより強固に接合させることができるという作用効果がある。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を施すことは何等差し支えない。例えば、上記実施の形態においては、貫通孔3aの内面の上部に下方に向けてテーパ状とされたテーパ部3dが形成された構成について説明したが、貫通孔3aの内面にテーパ部3dが形成されない形態であってもよい。
また、例えば、凹部1dを上方に向けて先細りとなる円錐形状とし、これに嵌着される細径部1cも先細りのテーパ面とし、細径部1cの先端より奥の凹部1dをロウ溜め穴として使用する形態であってもよい。