JP4057897B2 - 光半導体装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光通信等の分野に用いられる光半導体素子を収納した光半導体装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の光通信等の分野において高い周波数で作動する半導体レーザ(LD),フォトダイオード(PD)等の光半導体素子を気密封止して収納した光半導体装置の例を図9に示す。同図において、21は基体、22は光半導体素子、23は金属製の蓋体、24は透光性部材、26は光ファイバである。
【0003】
基体21は鉄(Fe)−ニッケル(Ni)−コバルト(Co)合金や銅(Cu)−タングステン(W)合金等の金属から成り、その上側主面の略中央部には、光半導体素子22が、アルミナ(Al2O3)質セラミックス等のセラミックスから成る略直方体の基台28を介して基体21の上側主面に搭載固定される。また、基体21には、Fe−Ni合金やFe−Ni−Co合金等の金属からなる外部接続用ピン25を挿通させるために上下主面間を貫通する貫通孔21aが形成されており、貫通孔21aに光半導体装置内外を導通する端子としての外部接続用ピン25を挿通させるとともに、外部接続用ピン25と貫通孔21aとの隙間にガラス等の誘電体から成る接合材を充填し、基体21と外部接続用ピン25とを気密に接合する。これにより、外部接続用ピン25が光半導体装置内外を導通する端子として機能する。
【0004】
なお、基台28に搭載された光半導体素子22は、その電極が外部接続用ピン25の光半導体素子22側の先端とボンディングワイヤ29等を介して電気的に接続されている。
【0005】
また、基体21の上側主面の外周部に接合され、上端が閉じられ下端23cが開かれた筒状であり上端面23aの略中央部に貫通孔23bが形成されており、Fe−Ni−Co合金等の金属から成る蓋体23が設けられる。蓋体23の下端23cは、例えば図9のような鍔状となっており、これにより基体21と蓋体23との接合面積が大きくなり、基体21と蓋体23とで構成される容器内部の気密信頼性が向上する。
【0006】
さらに、貫通孔23bを塞ぐように、貫通孔23bの上端面23a側開口の周囲に透光性部材24が接合される。透光性部材24はガラスやサファイア等から成る円板状,レンズ状,球状または半球状等のものであり、ガラスによる接合や半田付け等により蓋体23に気密に接合される。
【0007】
このような基体21、蓋体23および透光性部材24から主に構成される容器内部に光半導体素子22を収容し気密に封止する。
【0008】
最後に、光ファイバ26固定用の筒状の金属製固定部材27が、蓋体23の外周面に溶接され、光ファイバ26が金属製固定部材27の上面の貫通孔に外部から挿通固定されて透光性部材24の上方に固定され、外部接続用ピン25の外側の先端部が外部電気回路(図示せず)に電気的に接続されることによって、光半導体装置となる(例えば、下記の特許文献1参照)。
【0009】
この光半導体装置は、外部電気回路から供給される電気信号によって光半導体素子22にレーザ光等の光を励起させ、この光を透光性部材24、光ファイバ26の順に透過させ、光ファイバ26を介して外部に伝送させることによって、高速光通信等に使用される光半導体装置として機能する。この場合、光半導体素子22から光信号が正常に発光しているか確認するためのモニタ用PD(図示せず)が搭載されていてもよい。または、外部から光ファイバ26を介して伝送してくる光信号を、透光性部材24を透過させ光半導体素子22に受光させて、光信号を電気信号に変換することによって、高速光通信等に使用される光半導体装置として機能する。
【0010】
【特許文献1】
特開2000−183369号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の光半導体装置において、外部接続用ピン25が基体21の貫通孔21aに挿通されガラス等を介して気密に接合される構成であるため、外部接続用ピン25の直径寸法の最小加工限界、貫通孔21aの孔寸法、隣接する貫通孔21a間の間隔の最小加工限界等の制約があり、そのため、外部接続用ピン25を挿入する位置が制約され、光半導体素子22と外部接続用ピン25とを接続するためのボンディングワイヤ29が長くなる場合があり、ボンディングワイヤ29部ではインピーダンスを整合できないことから高周波信号の伝送損失が大きくなるという問題点があった。その結果、ボンディングワイヤ29で高周波信号を効率よく伝送できない場合あった。
【0012】
また、基体21に外部接続用ピン25を1本挿入するために大きな面積が必要とされ、基体21に取り付けられる外部接続用ピン25の本数が数本に限られるという問題点があった。
【0013】
さらに、光半導体装置内にはLD,PD等の光半導体素子22とモニタ用PDのみが収容され、光半導体素子22を駆動するためのドライバICは別の半導体素子収納用パッケージ内に収納され、外部電気回路を介してドライバICと光半導体装置とを電気的に接続する必要があり、光半導体素子22を駆動させるための装置全体が大型化するという問題点もあった。
【0014】
また、外部接続用ピン25をガラス等の接合材を介して基体21に接合しただけの端子構造であるため、外部接続用ピン25に外部から応力が加わった場合に接合材にクラック等の破損が生じ、光半導体装置内部の気密が損なわれるという問題点があった。
【0015】
さらに、外部接続用ピン25の貫通孔21aに挿入されていない部位を特性インピーダンスに整合させた信号線路とするのが困難であり、外部接続用ピン25を伝送する高周波信号が外部接続用ピン25で反射等して伝送損失が生じ、高周波信号を効率よく伝送できなくなるという問題点もあった。特に、2GHz以上の高周波になると伝送効率が著しく劣化する場合があった。
【0016】
従って、本発明は上記問題点に鑑み完成されたものであり、その目的は、光半導体素子と外部接続用ピンとを接続するためのボンディングワイヤを短線化して高周波信号の伝送特性を向上させるとともに、光半導体装置に取り付けられる端子数を増やして内部に収容する集積回路素子(IC)等の部品を増加させて光半導体装置を集積化および多機能化させることである。また、内部の気密信頼性を向上させるとともに、外部接続用ピンで高周波信号が反射等するのを防いで高周波信号の伝送効率を向上させて、光半導体素子を長期にわたり正常かつ安定に作動させ得る高信頼性のものとすることにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明の光半導体装置は、上下主面間を貫通する貫通穴が形成された平板状の金属製の基体と、上端面の略中央部に貫通孔が形成されているとともに下端が開かれた筒状であり、前記基体の上側主面の外周部に下端が接合された金属製の蓋体と、前記貫通孔の開口の周囲に接合された透光性部材と、前記貫通穴を覆って前記基体の上側主面に接合された配線基板と、該配線基板の上面に載置された光半導体素子とを具備しており、前記配線基板は、複数の絶縁層が積層されて成る絶縁基板の上面に形成された複数の第1の電極パッドと前記絶縁基板の下面に2列に配設された複数の第2の電極パッドとを有するとともに、前記第1の電極パッドとそれに対応する前記第2の電極パッドとが前記絶縁基板の内部の内層導体層を介して貫通導体により電気的に接続され、前記複数の第2の電極パッドのそれぞれに外部接続用ピンが接合されていることを特徴とする。
【0018】
本発明は、上記の構成により、配線基板の上下面および内部に微細な間隔をもって電極パッド,内層導体層および貫通導体を多数形成することができ、その結果、光半導体素子,モニタ用PDだけでなく、光半導体素子を駆動するためのドライバIC等の信号入出力をこの配線基板で行なうことができ、光半導体装置内にドライバIC等も実装することができる。従って、外部電気回路を介して光半導体装置に電気的に接続する必要があったドライバIC等を光半導体装置内に実装し集積化することができることから、光半導体素子を駆動させるための装置全体を小型化できる。
【0019】
また、配線基板上面の第1の電極パッドを光半導体素子の近傍に形成できることから、第1の電極パッドと光半導体素子とをきわめて短線化されたボンディングワイヤにより電気的に接続でき、ボンディングワイヤでの高周波信号の伝送損失を最小限に抑えることができる。
【0020】
また、光半導体装置内外を導通する端子(外部接続用ピン)をロウ材等で接合した配線基板を用いるため、外部接続用ピンに外部から応力が加わった場合、従来のガラス接合された端子に比較して、端子の接合部にクラック等の破損が生じて光半導体装置内部の気密が破れるのを有効に防止できる。従って、外部接続用ピンをガラス等の接合材を介して基体の貫通孔に接合した従来の端子構造に比べ気密信頼性が大幅に向上する。
【0021】
さらに、絶縁基板の下面に2列に配設された複数の第2の電極パッドを有するとともに、複数の第2の電極パッドのそれぞれに外部接続用ピンが接合されていることにより、外部接続用ピンの列の間に外部電気回路基板を挟み込むことができ、例えば外部接続用ピンと外部電気回路基板の配線導体とをそれらの位置を一致させて接続することができる。その結果、光半導体装置の外部電気回路基板への実装の作業がきわめて容易になるとともに、外部接続用ピンと外部電気回路基板の配線導体との接続を外部接続用ピンの配線基板に近い部分で行なうことができ、高周波信号が外部接続用ピンを伝送する長さを最小限に抑えて、外部接続用ピンでの反射等の伝送損失が生じるのを最小限に抑えることができる。
【0022】
本発明の光半導体装置において、好ましくは、前記配線基板の厚さをA、前記基体の厚さをBとしたとき、1.5≦A/B≦10であることを特徴とする。
【0023】
本発明の光半導体装置は、上記の構成により、絶縁基体から成る配線基板と金属製の基体とを接合しても、配線基板と基体との熱膨張差により配線基板にクラック等の破損が生ずるのを有効に抑制することができる。また、蓋体を基体に接合する際に発生する応力によって配線基板にクラック等の破損が生ずるのを有効に抑制することもできる。その結果、光半導体装置内部の気密性を損なうことなく、光半導体素子を長期にわたり正常かつ安定に作動させ得る高信頼性のものとすることができる。
【0024】
本発明の光半導体装置において、好ましくは、前記基体は、前記配線基板の下面の外周縁の下方に開口が位置するように前記貫通穴の周囲に全周にわたって溝が形成されていることを特徴とする。
【0025】
本発明の光半導体装置は、好ましくは基体は配線基板の下面の外周縁の下方に開口が位置するように貫通穴の周囲に全周にわたって溝が形成されていることから、基体と配線基板とをろう材を用いて接合した際に基体と配線基板との熱膨張差によって配線基板に熱応力が加わっても、配線基板の外周縁には熱応力が加わりにくくなり、配線基板にクラック等の破損が生ずるのを有効に防止できる。また、溝より外周側にろう材が流れ出るのを防止して、配線基板の外周縁と基体との間に良好なろう材のメニスカスを形成し、配線基板を基体に強固かつ気密に接合することができる。さらに、蓋体を基体に溶接する際に、配線基板に基体との熱膨張差による熱応力が加わっても、配線基板の外周縁には熱応力が加わりにくくなり、配線基板にクラック等の破損が生ずるのを有効に防止できる。また、溝より外周側にろう材が流れ出るのを防止して、基体の蓋体との接合部にろう材が流れ込むことがなく、蓋体と基体とを気密に接合することができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明の光半導体装置について以下に詳細に説明する。図1は本発明の光半導体装置について実施の形態の一例を示す断面図であり、1は基体、2は光半導体素子、4は透光性部材、5は配線基板、12は光ファイバ、3は金属製の蓋体である。これら基体1および配線基板5で光半導体素子収納用パッケージが基本的に構成される。また、光半導体素子収納用パッケージに光半導体素子2を搭載し、透光性部材4が接合された蓋体3を接合することにより光半導体装置となる。
【0027】
本発明の光半導体装置は、平板状の金属製の基体1と、上端面3aの略中央部に貫通孔3bが形成されているとともに下端3cが開かれた筒状であり、基体1の上側主面の外周部に下端3cが接合された金属製の蓋体3と、貫通孔3bの開口の周囲に接合された透光性部材4と、基体1の上下主面間を貫通するように形成された貫通穴1aを覆うようにして基体1の上側主面に接合された配線基板5と、配線基板5の上面に載置された光半導体素子2とを具備しており、配線基板5は、複数の絶縁層が積層されて成る絶縁基板の上面に形成された複数の第1の電極パッド6aと絶縁基板の下面に2列に配設された複数の第2の電極パッド7aとを有するとともに、第1の電極パッド6aとそれに対応する第2の電極パッド7aとが絶縁基板の内部の内層導体層8bを介して貫通導体8aにより電気的に接続され、複数の第2の電極パッド7aのそれぞれに外部接続用ピン10が接合されている構成である。
【0028】
本発明の基体1は、略円板状、略長方形等の平板状であり、Fe−Ni−Co合金やFe−Ni合金、Cu−W合金等の金属から成り、そのインゴットに圧延加工や打ち抜き加工等の従来周知の金属加工法を施すことによって所定形状に製作される。この基体1には、外部接続用ピン10を挿通するために、基体1の上下主面間を貫通する貫通穴1aが設けられている。この貫通穴1aには、配線基板5がその下面の外周部に設けられた第2の同一面導体層7bを介して、貫通穴1aを覆うようにして配線基板5が銀(Ag)ろう等のろう材によって気密に接合される。
【0029】
配線基板5は以下のようにして作製される。例えば、Al2O3質セラミックスから成る場合、先ず酸化アルミニウム、酸化珪素(SiO2)、酸化マグネシウム(MgO)および酸化カルシウム(CaO)等の原料粉末に適当な有機バインダー、可塑剤、溶剤等を添加混合して泥漿状と成す。これを従来周知のドクターブレード法やカレンダーロール法等のテープ成形技術により複数のセラミックグリーンシートを得る。次に、このセラミックグリーンシートに、Wやモリブデン(Mo)等の高融点金属粉末に適当な有機バインダー、可塑剤、溶剤等を添加混合して得た金属ペーストを、スクリーン印刷法等の厚膜形成技術により印刷塗布して、第1の電極パッド6a,第2の電極パッド7a,第2の同一面導体層7b,内層導体層8bとなるメタライズ層を所定パターンに形成する。また、金型等によって打ち抜き加工することによって、各セラミックグリーンシートの所望の位置に貫通導体8aとなる貫通孔を形成し、この貫通孔にWやMo等の高融点金属粉末に適当な有機バインダー、可塑剤、溶剤等を添加混合して得た金属ペーストを充填する。その後、セラミックグリーンシートを複数枚積層し、これを還元雰囲気中、約1600℃の温度で焼成することにより製作される。
【0030】
また、配線基板5の厚さをA、基体1の厚さをBとしたとき、1.5≦A/B≦10とすることが好ましい。これにより、絶縁基体から成る配線基板5に金属製の基体1を接合しても、配線基板5と基体1との熱膨張差により配線基板5にクラック等の破損が生ずるのを有効に抑制することができる。また、蓋体3を基体1に接合する際の応力によって配線基板5にクラック等の破損が生ずるのを有効に抑制することもできる。その結果、光半導体装置内部の気密性を損なうことなく、光半導体素子2を長期にわたり正常かつ安定に作動させることができる。
【0031】
A/B<1.5の場合、基体1に対して配線基板5が薄くなりすぎて強度が弱くなり、基体1との熱膨張差で配線基板5にクラック等の破損が生じ易くなる。また、A/B>10の場合、配線基板5が厚くなり、基体1,蓋体3,透光性部材4,配線基板5から構成される容器内部の容積を確保するために蓋体3を高くしなければならず、その結果、半導体装置が大型化し近時の光半導体装置の小型化への要求に適さなくなる。また、配線基板5が厚くなると、外部接続用ピン10から光半導体素子2までの線路として機能する貫通導体8aが長くなって、貫通導体8aを伝送する高周波信号に発生する反射損失や透過損失が大きくなり光半導体素子2の作動性が劣化し易くなる。
【0032】
また、基体1,蓋体3の厚さを0.3mm以上とするのがよい。これにより、基体1および蓋体3の曲げ強度を大きくし、基体1および蓋体3がたわむことにより基体1と蓋体3との接合部に応力が加わるのを抑制することができ、その結果、基体1,蓋体3,透光性部材4,配線基板5から構成される容器内部を気密に保持することができる。
【0033】
さらに、基体1と配線基板5との接合部の幅を0.3mm以上とするのがよい。これにより、基体1と配線基板5との接合強度を大きくして、基体1,蓋体3,透光性部材4,配線基板5から構成される容器内部を気密に保持することができる。
【0034】
本発明において、図10に示すように、基体1は配線基板5の下面の外周縁の下方に開口が位置するように貫通穴1aの周囲に全周にわたって溝1bが形成されていることが好ましい。これにより、基体1と配線基板5とをろう材で接合した際に基体1と配線基板5との熱膨張差によって配線基板5に熱応力が加わっても、配線基板5の外周縁には熱応力が加わりにくくなり、配線基板5にクラック等の破損が生ずるのを有効に防止できる。また、溝1bより外周側にろう材が流れ出るのを防止して、配線基板5の外周縁と基体1との間に良好なろう材のメニスカスを形成し、配線基板5を基体1に強固かつ気密に接合できる。さらに、蓋体3を基体1に溶接する際に、配線基板5に基体1との熱膨張差による熱応力が加わっても、配線基板5の外周縁には熱応力が加わりにくくなり、配線基板5にクラック等の破損が生ずるのを有効に防止できる。また、溝1bより外周側にろう材が流れ出るのを防止して、基体1の蓋体3との接合部にろう材が流れ込まず、蓋体3と基体1とを気密に接合することができる。
【0035】
溝部1bは、幅が0.3〜2mm、深さが0.2〜1mmであるのがよく、この場合基体1と配線基板5との熱膨張差によって配線基板5に熱応力が加わっても、配線基板5の外周縁に熱応力が加わるのをより有効に抑制し、配線基板5にクラック等の破損が生ずるのを有効に防止できる。また、溝1bより外周側にろう材が流れ出るのを有効に防止でき、配線基板5の外周縁と基体1との間に良好なろう材のメニスカスを形成するとともに基体1の蓋体3との接合部にろう材が流れ込むのを防止できる。
【0036】
溝1bの幅が0.3mm未満の場合、溝1bの幅が狭すぎるため、基体1と配線基板5との熱膨張差が生じた際に配線基板5に熱応力が加わりやすく、配線基板5にクラック等の破損が生じ易くなる。幅が2mmを超える場合、溝1bに溜まるろう材の量が多くなり、それに伴い配線基板5にろう材との熱膨張差により加わる熱応力が大きくなって配線基板5にクラック等の破損が生じる恐れがある。また、溝1bの幅を大きくするに伴って基体1を大きくする必要があり、近時の光半導体装置の小型化傾向に適さなくなる。
【0037】
また、溝1bの幅の深さが0.2mm未満の場合、溝1bが浅くなりすぎるため溝1bからろう材が流れ出て、配線基板5の外周縁と基体1との間に良好なろう材のメニスカスを形成しにくくなるとともに、基体1の蓋体3との接合部にろう材が流れ込みやすくなる。深さが1mmを超える場合、溝1bが深くなりすぎるため溝1bに溜まるろう材の量が多くなり、それに伴い配線基板5にろう材との熱膨張差により加わる熱応力が大きくなって配線基板5にクラック等の破損が生じる恐れがある。また、溝1bの深さを深くするに伴って基体1を厚くする必要があり、近時の光半導体装置の小型化傾向に適さなくなる。
【0038】
なお、溝1bの断面形状は図10に示すような四角形の他、半円形、U字形、V字形等の種々の形状とし得る。
【0039】
配線基板5の下面には、図2に示すように、複数個の第2の電極パッド7aが2列に配設されており、それぞれの第2の電極パッド7aに外部接続用ピン10が、Agろう等のろう材によって接続される。好ましくは、外部接続用ピン10は、図3に示すように第2の電極パッド7aとの接合部(上端)に鍔部10aが設けられているのがよく、外部接続用ピン10を電極パッド7aに強固に接合できる。
【0040】
このようにして、配線基板5の下面に外部接続用ピン10を2列に配列して、外部接続用ピン10の列の間に外部電気回路基板を挟み込むことができ、例えば外部接続用ピン10と外部電気回路基板の配線導体との位置を一致させることができる。その結果、光半導体装置の外部電気回路基板への実装作業が容易になるとともに、外部接続用ピン10と外部電気回路基板の配線導体との接続を外部接続用ピン10の配線基板5に近い部分で行なうことができ、高周波信号が外部接続用ピン10を伝送する長さを最小限に抑えて、外部接続用ピン10での反射等の伝送損失が生じるのを最小限に抑えることができる。
【0041】
好ましくは、図4に示すように、第1の電極パッド6aの周囲に略一定間隔をもって配線基板5の上面の略全面に第1の同一面導体層6bを形成し、また第2の電極パッド7aの周囲に略一定間隔をもって配線基板5の下面の略全面に第2の同一面導体層7bを形成するのがよい。この構成により、配線基板5の上下面においてシールド効果(電磁遮蔽効果)が得られ、高周波信号が第1の電極パッド6aと第2の電極パッド7aを介して配線基板5を入出力する際、高周波信号がノイズ等の影響により正常に入出力できなくなるのを防止するとともに、配線基板5の上下面での高周波信号の放射による損失を防止する。
【0042】
さらに好ましくは、図5に示すように、第2の電極パッド7aを第1の電極パッド6aと対向する位置に設け、第1の電極パッド6aと第2の電極パッド7aとを電気的に接続する貫通導体8aの周りに、貫通導体8aを中心とする円周上に略一定間隔で複数の接地貫通導体9aを設けるのがよい。この場合、図6(a)に図5のA−A’線断面図を示すように、セラミックグリーンシートの層間には貫通導体8aの周りに貫通導体8aの中心C1を中心とする略円形の内層導体層8bを設けるとともに、中心C1を中心とする直径Dの円周上に接地貫通導体9aの中心C2が載るようにして、略一定間隔で複数の接地貫通導体9aを設ける。接地貫通導体9aの周りには中心C2を中心とする略円形の内層接地導体層9bを設ける。
【0043】
なお、内層導体層8bと内層接地導体層9bは、それぞれ上下のセラミックグリーンシートにおける貫通導体8a、接地貫通導体9a同士を確実に電気的に接続させるためのものである。
【0044】
上記の構成により、貫通導体8aを伝送する高周波信号を略同軸線路のモードで伝送させることができ、反射等の伝送損失を抑えて無駄なく伝送できる。さらに、図6(b)に示すように、内層接地導体層9bを内層導体層8bの周囲に、略一定間隔をもって貫通導体8aを中心とする円周より外側の全体に設けてもよく、貫通導体8aを伝送する高周波信号をより同軸線路のモードに近似させることができ、より伝送損失を抑えることが可能となる。
【0045】
また、この光半導体装置は光半導体素子2の誤作動等を防止するため、内部を気密にするのがよい。内部を気密にすると、蓋体3の外面に内外の気圧差による圧力が加わり、蓋体3が変形を起こす可能性がある。従って、気圧差により光半導体装置の外面に加わる圧力を略均一に分布させ、圧力集中を防止するため、蓋体3は断面形状(横断面形状)を円筒形とするのがよい。
【0046】
また、基体1と配線基板5とは互いに位置合わせを行なえるのがよく、図7に基体1と配線基板5の平面図を示すように、基体1および配線基板5の外周の対向する2箇所にそれぞれ直線部1bおよび直線部5bを設けるのがよい。このような直線部5bを有することによって、配線基板5は図8に示すように、セラミックグリーンシート5aで斜線部を打ち抜き加工し、多層積層し焼成した後に、点線部をスライス加工することで形成できる。配線基板5が円形である場合、焼成体を切削加工して円形にすることが困難であるため、セラミックグリーンシート5aを打ち抜き加工して円形の個片にした後に焼成することになるが、その場合円形の各個片を焼成炉内に設置しなければならないため、焼成時の作業効率が低下する。一方、配線基板5が直線部5bを有する場合、配線基板5領域を多数有する母基板の状態で焼成でき、作業効率が著しく向上する。
【0047】
また、基体1に直線部1bを設ける場合、蓋体3を基体1に取り付けるための下端3cにも上記のように2箇所の直線部を形成するのがよい。この場合、基体1と下端3cの外周同士を一致させ、蓋体3を基体1の上側主面に位置ずれすることなく接合し、内部を確実に気密に保持できるとともに、シーム溶接し易くできるという利点がある。
【0048】
蓋体3は、Fe−Ni−Co合金等の金属のインゴットに圧延加工や打ち抜き加工、絞り加工等の従来周知の金属加工法を施すことによって所定形状に製作される。この蓋体3は、筒状部と上端面3aが個々に製作され、それらをろう付け、半田付け、溶接等によって接合したものであってもよい。
【0049】
蓋体3には、貫通孔3bを塞ぐように貫通孔3bの上端面3a側開口の周囲に、透光性部材4がガラス接合や半田付け等により気密に接合される。透光性部材4は、ガラスやサファイア等から成る円板状,レンズ状,球状または半球状等のものであり、球状の場合周縁部で、円板状やレンズ状の場合一主面の外周部で、半球状の場合平面部の外周部で蓋体3に接合される。
【0050】
また、光ファイバ12は、Fe−Ni−Co合金等の金属から成る略円筒状の金属製固定部材13の上端面に固定されており、金属製固定部材13の下端面が蓋体3の外周面にレーザ溶接法等の溶接によって接合される。光ファイバ12が金属製固定部材13を介して透光性部材4の上方に固定されることによって、製品としての光半導体装置となる。これにより、光ファイバ12を介して内部に収容する光半導体素子2と外部との光信号の授受が可能となる。
【0051】
本発明において、透光性部材4は貫通孔3bの上端面3a側開口の周囲に接合されるのが好ましく、この場合以下の点で有利である。即ち、蓋体3の外周部に金属製固定部材13を溶接する際の熱が蓋体3に局所的に加わり、蓋体3の透光性部材4との接合面に熱膨張による引っ張り応力が加わると、透光性部材4が蓋体3から剥がれ易くなるが、光半導体装置は内部を気密にするため外側から内側に気圧が加わるため、気圧によって透光性部材4が蓋体3に押し付けられて剥がれにくくなる。一方、透光性部材4が貫通孔3bの上端面3aの裏面側開口の周囲に接合されていると、熱膨張による応力によって透光性部材4を剥がそうとする引っ張り応力と気圧による圧力とが、透光性部材4が蓋体3から容易に外れてしまうこととなる。
【0052】
本発明の光半導体装置は、光半導体素子2の電極を外部電気回路に電気的に接続し、製品としての光半導体装置となる。この光半導体装置は、例えば外部電気回路から供給される電気信号によって光半導体素子2にレーザ光等の光を励起させ、この光を透光性部材4、光ファイバ12の順に透過させ、光ファイバ12を介して外部に伝送することによって、高速光通信等に使用される光半導体装置として機能する。
【0053】
【実施例】
本発明の光半導体装置の実施例を以下に説明する。
【0054】
図1の光半導体装置を以下のようにして製作した。まず、直径6.7mmの円板状で、略中央に直径4.2mmの円形の貫通穴1aが設けられたFe−Ni−Co合金から成る基体1の上面に、外形寸法が直径5mmの円板状で、Al2O3質焼結体から成る配線基板5を、貫通穴1aの周囲にAgロウ材を介して接合した。次に、基体1の上面に、円筒部の内径が5.7mm,下端3cの外径が6.7mm,下端3cから上端面3aまでの高さが3mm,厚さが0.3mmであり、上端面3aに設けられた直径2.4mmの円形の貫通孔3bの周囲に直径3.2mm×厚さ0.3mmの円板状のサファイアからなる透光性部材4がAgロウを介してロウ付けされたFe−Ni−Co合金から成る蓋体3をシーム溶接法によって接合した。ここで、基体1の厚さを0.3mmまたは0.5mmとし、配線基板5の厚さを表1に示す種々の値となるようにして、光半導体装置の試料を各20個作製した。
【0055】
各試料について気密性の評価を以下の手順で行なった。まず、各試料をフロリナート系の揮発性の高い液体中に浸漬してグロスリーク試験を行ない、液体中への気泡の発生の有無を評価し、気泡の生じない試料を良品とし、気泡の生じた試料を不良品とした。さらに、グロスリーク試験で良品であった試料について、4900Pa(パスカル)で2時間He加圧を行なった後にHeリーク試験、即ち光半導体装置の内部にHeを加圧侵入させ、その後光半導体装置の外部へ漏れ出てくるHeを検出する試験を実施し、Heの検出量が5.0×10-9Pa・m3/sec以下の試料を良品とし、検出量が5.0×10-9Pa・m3/secを超える試料を不良品とした。その評価結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
表1より、配線基板5の厚さが基体1の厚さの1.5倍未満では気密性不良が発生した。
【0058】
以上より、配線基板5の厚さが基体1の厚さの1.5倍以上である場合、光半導体装置内部の気密を良好に保持できることが判った。ただし、配線基板5の厚さが基体1の厚さの10倍よりも厚くなると、光半導体装置が大型化するので実用に適さないものとなる。
【0059】
なお、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を施すことは何等差し支えない。
【0060】
【発明の効果】
本発明は、上下主面間を貫通する貫通穴が形成された平板状の金属製の基体と、上端面の略中央部に貫通孔が形成されているとともに下端が開かれた筒状であり、基体の上側主面の外周部に下端が接合された金属製の蓋体と、貫通孔の開口の周囲に接合された透光性部材と、貫通穴を覆って基体の上側主面に接合された配線基板と、配線基板の上面に載置された光半導体素子とを具備しており、配線基板は、複数の絶縁層が積層されて成る絶縁基板の上面に形成された複数の第1の電極パッドと絶縁基板の下面に2列に配設された複数の第2の電極パッドとを有するとともに、第1の電極パッドとそれに対応する第2の電極パッドとが絶縁基板の内部の内層導体層を介して貫通導体により電気的に接続され、複数の第2の電極パッドのそれぞれに外部接続用ピンが接合されていることにより、配線基板の上下面および内部に微細な間隔をもって電極パッド,内層導体層および貫通導体を多数形成することができ、従来外部電気回路を介して光半導体装置に電気的に接続する必要があったドライバIC等を光半導体装置内に実装し、光半導体素子を駆動させるための装置全体を小型化できる。
【0061】
また、配線基板上面の第1の電極パッドを光半導体素子の近傍に形成できることから、第1の電極パッドと光半導体素子とをきわめて短線化されたボンディングワイヤにより電気的に接続でき、ボンディングワイヤでの高周波信号の伝送損失を最小限に抑えることができる。
【0062】
また、光半導体装置内外を導通する端子(外部接続用ピン)をロウ材等で接合した配線基板を用いるため、外部接続用ピンに外部から応力が加わった場合、従来のガラス接合された端子に比較して、端子の接合部にクラック等の破損が生じて光半導体装置内部の気密が破れるのを有効に防止できる。従って、外部接続用ピンをガラス等の接合材を介して基体の貫通孔に接合した従来の端子構造に比べ気密信頼性が大幅に向上する。
【0063】
さらに、絶縁基板の下面に2列に配設された複数の第2の電極パッドを有するとともに、複数の第2の電極パッドのそれぞれに外部接続用ピンが接合されていることにより、外部接続用ピンの列の間に外部電気回路基板を挟み込むことができ、例えば外部接続用ピンと外部電気回路基板の配線導体とをそれらの位置を一致させて接続することができる。その結果、光半導体装置の外部電気回路基板への実装の作業がきわめて容易になるとともに、外部接続用ピンと外部電気回路基板の配線導体との接続を外部接続用ピンの配線基板に近い部分で行なうことができ、高周波信号が外部接続用ピンを伝送する長さを最小限に抑えて、外部接続用ピンでの反射等の伝送損失が生じるのを最小限に抑えることができる。
【0064】
本発明は、上記の光半導体装置において、配線基板の厚さをA、基体の厚さをBとしたとき、1.5≦A/B≦10としたことにより、絶縁基体から成る配線基板と金属製の基体とを接合しても、配線基板と基体との熱膨張差により配線基板にクラック等の破損が生ずるのを有効に防止できる。また、蓋体を基体に接合する際に発生する応力によって配線基板にクラック等の破損が生ずるのを有効に防止することもできる。その結果、光半導体装置内部の気密性を損なうことなく、光半導体素子を長期にわたり正常かつ安定に作動させ得る高信頼性のものとすることができる。
【0065】
本発明の光半導体装置は、好ましくは基体は配線基板の下面の外周縁の下方に開口が位置するように貫通穴の周囲に全周にわたって溝が形成されていることにより、基体と配線基板とをろう材を用いて接合した際に基体と配線基板との熱膨張差によって配線基板に熱応力が加わっても、配線基板の外周縁には熱応力が加わりにくくなり、配線基板にクラック等の破損が生ずるのを有効に防止できる。また、溝より外周側にろう材が流れ出るのを防止して、配線基板の外周縁と基体との間に良好なろう材のメニスカスを形成し、配線基板を基体に強固かつ気密に接合できる。さらに、蓋体を基体に溶接する際に、配線基板に基体との熱膨張差による熱応力が加わっても、配線基板の外周縁には熱応力が加わりにくくなり、配線基板にクラック等の破損が生ずるのを有効に防止できる。また、溝より外周側にろう材が流れ出るのを防止して、基体の蓋体との接合部にろう材が流れ込むことがなく、蓋体と基体とを気密に接合できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光半導体装置について実施の形態の例を示す断面図である。
【図2】本発明の光半導体装置における配線基板の第2の電極パッドの拡大平面図である。
【図3】本発明の光半導体装置における外部接続用ピンの実施の形態の他の例を示す拡大断面図である。
【図4】(a)は本発明の光半導体装置における配線基板の第1の電極パッドの実施の形態の他の例を示す拡大平面図、(b)は本発明の光半導体装置における配線基板の第2の電極パッドの実施の形態の他の例を示す拡大平面図である。
【図5】本発明の光半導体装置における配線基板の実施の形態の他の例を示す拡大断面図である。
【図6】(a),(b)は、本発明の光半導体装置における配線基板の実施の形態の他の例をそれぞれ示し、図5のA−A’面における拡大断面図である。
【図7】本発明の光半導体装置における基体と配線基板について実施の形態の他の例を示す平面図である。
【図8】本発明の光半導体装置における配線基板について実施の形態の他の例を示す平面図である。
【図9】従来の光半導体装置の断面図である。
【図10】本発明の光半導体装置について実施の形態の他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
1:基体
1a:貫通穴
2:光半導体素子
3:蓋体
3a:上端面
3b:貫通孔
4:透光性部材
5:配線基板
6a:第1の電極パッド
7a:第2の電極パッド
8a:貫通導体
8b:内層導体層
10:外部接続用ピン
Claims (3)
- 上下主面間を貫通する貫通穴が形成された平板状の金属製の基体と、上端面の略中央部に貫通孔が形成されているとともに下端が開かれた筒状であり、前記基体の上側主面の外周部に下端が接合された金属製の蓋体と、該蓋体の前記貫通孔の開口の周囲に接合された透光性部材と、前記貫通穴を覆って前記基体の上側主面に接合された配線基板と、該配線基板の上面に載置された光半導体素子とを具備しており、前記配線基板は、複数の絶縁層が積層されて成る絶縁基板の上面に形成された複数の第1の電極パッドと前記絶縁基板の下面に2列に配設された複数の第2の電極パッドとを有するとともに、前記第1の電極パッドとそれに対応する前記第2の電極パッドとが前記絶縁基板の内部の内層導体層を介して貫通導体により電気的に接続され、前記複数の第2の電極パッドのそれぞれに外部接続用ピンが接合されていることを特徴とする光半導体装置。
- 前記配線基板の厚さをA、前記基体の厚さをBとしたとき、1.5≦A/B≦10であることを特徴とする請求項1記載の光半導体装置。
- 前記基体は、前記配線基板の下面の外周縁の下方に開口が位置するように前記貫通穴の周囲に全周にわたって溝が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の光半導体装置。
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