JP2007200690A - 多層構造を有するプロトン伝導体およびそれを用いた構造体 - Google Patents

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Abstract

【課題】 水素透過性の金属層とプロトン伝導性の固体電解酸化物層が形成されたプロトン伝導体の高い伝導性を維持しつつ金属層と酸化物層の密着性を高めた多層構造のプロトン伝導体、これを基本単位とした水素デバイスに有用な構造体およびこれを用いた燃料電池を提供する。
【解決手段】 水素透過性金属層の一方の面上に複数のプロトン伝導性酸化物層が積層され、この金属層と酸化物層との間に、その結晶格子定数が金属層構成材料のそれの0.86倍以上1倍未満のプロトン伝導性中間層が配置されたプロトン伝導体。特に中間層の厚みが1ないし20nmのもの、さらには中間層と酸化物層が同じ化学成分系のもの、中でも両層が特定の厚みで特定の化学組成の陽イオン置換型ペロブスカイト構造の酸化物からなるものが望ましい。本発明のプロトン伝導体ならびにそれを組み込んだ構造体では、例えば燃料電池の場合、従来に無い高い出力とその安定性が容易に得られる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、水素透過性金属層とプロトン伝導性酸化物層により構成されるプロトン伝導体とそれを用いた構造体に関する。
水素透過性金属層(以下単に金属層とも言う)の上にプロトン伝導性の酸化物などの固体電解質層(以下単に酸化物層とも言う)を形成した水素透過性の構造体(以下単に構造体とも言う)は、水素を選択的に検出分離したり、それをプロトンイオンとして輸送する機能を有しており、燃料電池、水素センサ、水素ポンプ、廃棄ガス中のNOを除去する装置への利用など、いわゆる水素デバイスとしての広範な用途が考えられる。特に、その一方の面に水素を、他方の面に酸素を接触させることにより清浄な状態で電気エネルギーに転換させる車用、家庭用、携帯用などの水素燃料電池(以下単に燃料電池とも言う)が、脚光を浴びている。燃料電池の場合のプロトン伝導性の固体電解質層には、400℃までの低温実用域(以下単に低温域とも言う)では主にポリマーが、同温度を越え700℃までの中温実用域(以下単に中温域とも言う)から700℃を越える高温実用域(以下単に高温域とも言う)では主に酸化物などの耐熱性の材料が、それぞれ その有望な候補として考えられて来た。
例えば、SOLID STATE IONICS、162−163(2003)、291−296頁(非特許文献1)にこれらの構造体の例が開示されている。同文献には、この水素透過性金属層の材料としてPd又はPdを含む金属が、また固体電解質層の材料としてアルカリ土類金属元素及びCeなどの元素を含むプロトン伝導性の複合酸化物が紹介されている。
また特公昭62−47054号公報(特許文献1)には、プロトン伝導体の候補材としてABO(ペロブスカイト)型酸化物が紹介されている。特開2004―146337号公報(特許文献2)には、金属層とポリマーやABOなどの酸化物層からなるプロトン伝導体の層との間に、Pdなどの緻密な水素透過性金属層が形成された構造体からなり、中温域でも動作可能な燃料電池が紹介されている。特開2005−19041号公報(特許文献3)には、多孔質層の上に貫通孔の無い水素透過性金属層を介して厚さ50μm以下のABOなどの酸化物層が形成された構造体を用いた中温域用の燃料電池が紹介されている。特開平11−267477号公報(特許文献4)には、ステンレス鋼や窒化珪素セラミックスなどの多孔質層(支持体)上にイオンプレーティング法でピンホールの無い金属層が形成された構造体が紹介されている。
燃料電池にはより高い出力をより長時間安定して出せるものが望まれており、その構造体にも同じことが期待されている。酸化物層を使った中温域から高温域で使われるものでは、作動時と停止時の温度差が大きいため、その構造体の金属層と酸化物層との間の熱膨張係数の差に応じ両者の界面に繰り返し両層を引き離そうとする熱応力が発生する。さらに実用時の水素透過による金属層の膨張がこれに加わると、それが助長される。また両者の接合界面の構造や形態によっては、使用中の変質などで接合強度や耐熱性などが低下することもあり得る。このような場合、接合界面でのプロトン伝導性の低下や剥離が生じ易くなり、出力が低下したり、不安定になると言う問題がある。特開2005−327586号公報(特許文献5)には、金属層とABOなどの酸化物層との間に厚み0.1ないし1μmのPd、Ni、W、Moなどの金属やそれらの酸化物からなる中間層(酸化防止膜)を設けた両層が剥離し難い構造体が紹介されている。
SOLID STATE IONICS、162−163(2003)、291−296頁 特公昭62−47054号公報 特開2004−146337号公報 特開2005−19041号公報 特開平11−267477号公報 特開2005−327586号公報
水素イオン固体電解質としての酸化物層と水素透過性の金属層との界面剥離は、上記特許文献5にも採り上げられているように、構造体の重要な課題の一つである。上記特許文献5の手段を採ったとしても、金属層と酸化物層の間の材料の特性や微細構造の差は依然として残るため、構造体全体の高い伝導性を維持した状態での根本的な解決は困難であると考えられる。本発明の課題は、実用時の高い伝導性を維持しつつ金属層と酸化物層の密着性を高めた多層構造のプロトン伝導体を提供することである。
本発明者は、両者の間の微細構造の差を小さくする、すなわち両者の結晶格子の整合性を高めることに着目し、酸化物層と金属層との界面に、その格子定数が金属層のそれに近い特定の中間層を配置することによって、両層の間の伝導性を損なうことなく接合強度を上げる見通しを得た。特に酸化物層と同じ化学成分系で、その組成および層の厚みが制御された中間層および酸化物層を形成することによって、より良い結果の得られることを見出し本発明に至った。
すなわち本発明は、水素透過性金属層の一方の面上に 複数のプロトン伝導性酸化物層が積層されたプロトン伝導体であって、該金属層と該酸化物層との間に、結晶格子定数が、該金属層を構成する材料の結晶格子定数の0.86倍以上1倍未満の範囲にあるプロトン導電性の中間層が配置されたプロトン伝導体である。望ましくは、中間層の厚みを1ないし20nmとする。さらに望ましくは、同層の化学成分系を酸化物層のそれと同じにする。
このような構成とすることによって、金属層と酸化物層の界面のプロトン伝導性を損ねることなく実用時での接合強度が確実に向上し、プロトン伝導体およびそれを用いた構造体の伝導機能が安定し、特に燃料電池では、その出力が向上し安定する。
なお本発明には、上記プロトン伝導体の一例として、特に以下の構成のものも含まれる。前記プロトン伝導性酸化物層および前記中間層が、いずれも一般式AB1−X3α(ただしAはアルカリ土類金属元素、BはCeまたは周期律表の4a族元素群から選ばれた少なくとも1種の元素、MはNd、Ga、Al、Y、In、Yb、Sc、Gd、SmまたはPrの群から選ばれた3価の電荷を持つ少なくとも1種の元素、Xは1以下の数値、αは0.67ないし0.95の数値)で表される化学組成のペロブスカイト型の複合酸化物からなり、該中間層が、0≦X<0.2であり、該酸化物層の前記金属層に接しない側の表面層が、厚み1nm以上かつ該一般式で0.2≦X<0.8である請求項1ないし3のいずれかに記載のプロトン伝導体。
酸化物層が、ABO型のペロブスカイト型であり、Bサイトイオン置換型の化学組成の場合、上記のような構成とすることによって、金属層と酸化物層の界面のプロトン伝導性の低下を補いつつ、上記のように格子定数を近づけ両層界面の接合強度を高めるとともに、伝導性をより高いレベルに上げることができる。特に燃料電池では、その出力が向上し安定する。
さらに本発明は、上記構成で上記有利な効果の得られるプロトン伝導体を用いた構造体および同構造体を用いた燃料電池も含む。
本発明のプロトン伝導体は、水素透過性の金属層と酸化物層との間の密着性に優れ、かつプロトン伝導性に優れており、各種の水素デバイスへの適用が可能である。例えば、その一例である燃料電池に用いた場合、従来以上の高出力が得られるとともに、それを安定に持続させることができる。
以下本発明の実施の形態を説明する。本発明は、前述のように、金属層の一方の面上に複数のプロトン伝導性酸化物層が積層されたプロトン伝導体であり、その金属層と酸化物層との間に中間層を設け、その結晶格子定数が、金属層を構成する材料のそれの0.86倍以上1倍未満の範囲にあるプロトン伝導体である。本発明の構造体には、これらの伝導体構造を基本単位とし、これらの複数単位を二次元または三次元方向に様々な形態と配置パターンで積層・配列したものも含まれ、またそれらを利用した燃料電池に供するものも含まれる。中間層と金属層の格子定数の比が、上記の範囲を外れると、格子間の整合性が取れず、両層界面の接合強度が、安定せず、剥離が生じ易くなる。その結果、実用時の構造体の水素分離機能やプロトン導電性が損なわれ易くなる。例えば、燃料電池に用いると、その出力低下や出力の不安定状態が早期に起こり易くなる。なおこの場合、中間層の厚みを1ないし20nmの範囲に薄くすることによって、両層界面の接合強度を維持しつつ、伝導体のプロトン伝導性をより一層高めることができる。またこれらに加え、同層の化学成分系を酸化物層のそれと同じにすることによって以上の効果をより高めることができる。
金属層の素材は、水素透過性能を有する金属を含む材料であれば良い。このような金属としてはPd、V、Ta、Nbなどが挙げられる。中でもPdおよびその合金またはそれらを含む複合材が望ましい。Pd合金では、合金成分としては、例えば、Ag、PtおよびCuを含むものがある。複合材では、例えば、V、Ta若しくはNbを含む金属材料の両面に、または電気伝導性のSUSなどの金属材料からなる水素透過孔を有する多孔質材料の表面に、それぞれPdやPd合金の層を被覆したものがある。なおV、TaおよびNbを含む金属材料としては、例えばNi、Ti、Co、Crなどとの合金がある。さらにこれら一連の金属材料を積層したものや水素デバイスとしての実用途に応じて適正な二次元・三次元のパターンや形態で単一種もしくは複数種の金属を組み合わせたものなどが挙げられる。
本発明の金属層は、上記のような形成される形態(例えば、箔状や板状、厚膜状ならびに薄膜状などの物理的な形態やそれらの二次元・三次元の機能配置)に応じて様々な手段で形成される。なお薄膜状の場合には、例えば、スパッタリング、電子ビーム蒸着、レーザーアブレーションによる積層手段が挙げられ、厚膜状の場合には、例えば、ゾルゲル法やメッキ法などの湿式手段が挙げられる。
本発明の積層された複数の酸化物層の素材は、いずれもプロトン伝導性酸化物であれば良い。このような酸化物としては、例えば、ペロブスカイト型、パイロクロア型、スピネル型の陽イオン置換型の複合酸化物、水素浸入型などの複合酸化物、βアルミナやジルコニアなどの単一酸化物および以上の材料の複合材料が挙げられる。中温域以上での耐熱性と水素分離機能やプロトン伝導性に優れているものは、現状ではペロブスカイト型、パイロクロア型、スピネル型の陽イオン置換型の複合酸化物である。中でも特にペロブスカイト型のものが、最近有力視されている。これらの酸化物は、結晶の格子欠陥を介して水素イオンが移動する。基本となる酸化物系の結晶に格子欠陥を誘発する成分を入れて適当な伝導性を付与することができるため、種々の化学組成のものが開発されて来た。例えば、基本式のABOのAおよびBの二つの陽イオンサイトを別の陽イオンで置き換える方法が試みられて来た。
本発明では、その一例として、これらの中でも特にプロトン伝導性に優れているものとして、いずれも一般式AB1−X3α(ただしAはアルカリ土類金属元素、BはCeまたは周期律表の4a族元素群から選ばれた少なくとも1種の元素、MはNd、Ga、Al、Y、In、Yb、Sc、Gd、SmまたはPrの群から選ばれた3価の電荷を持つ少なくとも1種の元素、Xは1以下の数値、αは0.67ないし0.95の数値)で表される化学組成のペロブスカイト型の複合酸化物を採り挙げる。なおこの例では、上記の特定化学組成を選んだが、以下に述べるような特定の置換イオンとその量および特定の層の厚みや配置形態などを組みあわせた本発明の思想にかなう構成であり、同様な効果の得られるものであれば、いかなるものであっても良い。例えば、Bサイト置換型の素材のみの積層体だけでなく、Aサイト置換型素材やA、B両サイト置換型素材の層で構成されたものやこれらの置換型素材の層が混成されたものであっても良い。また例えば、表面層から順次傾斜機能的に化学組成や厚みを変化させたものであっても良い。さらに例えば、各層の二次元、三次元的な配置が工夫されたものであっても良い。
以下前記の一般式AB1−X3αの酸化物積層体を利用した最良の実施形態を例に採って本発明を詳述する。本発明のこの例では、酸化物層は、いずれも上記一般式の組成物が積層されたプロトン伝導体からなる。金属層側とは反対側の上層に特定の化学組成および特定の厚みのプロトン伝導性のより高い伝導性の表面層が配置され、金属層側にはPdなどの金属層と符合した格子定数を有し、特定の組成および特定の厚みのプロトン伝導性の中間層が配置されたプロトン伝導体である。なお積層された中間層以外の個々の酸化物層は、表面層と同じ化学組成や厚みであってもよいし、異なる化学組成や厚みであっても良い。また各層の形態は、本発明実用時の目的とする機能に応じて二次元、三次元に変形させても良い。また例えば、表面層から中間層まで傾斜機能的に順次陽イオンの置換量や種類および層の厚みなどを変えてもよい。さらに前述のように、本発明の構造体には、これらの伝導体構造を基本単位とし、これらの複数単位を二次元または三次元方向に様々な形態と配置パターンで積層・配列したものも含まれ、またそれらを利用した燃料電池に供するものも含まれる。
より具体的には、表面層が、厚み1nm以上で、なおかつ上記一般式で0.2≦X<0.8の範囲の化学組成を有するものであり、中間層が、前述のように厚み1ないし20nmであることに加え、上記一般式で0≦X<0.2の範囲の化学組成としたプロトン伝導体である。
上記一般式で0≦X<0.2の範囲の化学組成とするのは、0.2以上になると、金属層との格子定数の整合性が得られ難く、場合によっては金属層との接合強度が実用上不十分になることも考えられるからである。またその結果、実用時の水素分離機能やプロトン伝導の劣化が早まり易い。例えば、これを構造体として組み込み、燃料電池に使う場合には、安定した出力が得られ難くなるからである。
金属層と接しない側の表面層の厚みは、1nm以上とする。1nm未満では、水素分離機能やプロトン伝導性が十分とはなり難い。その結果、例えば、燃料電池に用いた場合には、十分な電流密度が得難くなるからである。また上記一般式で0.2≦X<0.8の範囲の化学組成とするのは、0.2未満になると、十分なプロトン伝導性が得難い。他方0.8以上になると、ペロブスカイト構造が維持でき難く、十分なプロトン伝導性が得られ難い。またその結果、水素分離機能が低下し、例えば、燃料電池に使った場合には、安定した出力が得られず、その劣化が早くなる可能性もあるからである。
この例の場合のペロブスカイト構造を有する酸化物は、化学式A(B1−x)O3αで表わされ、X=0のBサイトの置換陽イオンの無い場合も含まれる。式中、Aは、アルカリ土類金属を表わし、中でもSr、Ba及びCaがより好ましい。Bは、Ce又は周期律表の4a属元素群から選ばれた少なくとも1種の元素である。またMは、Nd、Ga、Al、Y、In、Yb、Sc、Gd、Sm又はPrの元素群から選ばれた3価のイオン価を有する少なくとも1種の元素である。
なお、ペロブスカイト構造酸化物の膜を形成する方法としては、スパッタリング法、電子ビーム蒸着法、レーザーアブレーション法、MO−CVD法などの気相法が挙げられ、又ゾルゲル法、電気泳動法、泳動電着法等のウェットプロセス(湿式法)なども採用可能である。ペロブスカイト構造の酸化物プロトン伝導性膜を得るためには、成膜を450℃以上の温度で、酸化性雰囲気で行うことが好ましい。又は、低温での成膜後、450℃以上の温度、非酸化性雰囲気での焼成を行うことによりペロブスカイト構造の積層体を得ることができる。
このようにして得られた本発明のプロトン伝導体は、水素分離および水素検出の機能や特に中温域以上の温度でのプロトンイオンの輸送機能などに優れており、このプロトン伝導体に電極などの機能部材を組み合わせることによって、各種水素デバイスに活かせる優れた構造体(水素デバイス用の中間アッセンブリやユニット)が提供できる。
中でも地球環境に優しいクリーンなエネルギー供給源として期待されている水素燃料電池に有用な構造体である。本発明の構造体は、既に述べてきたプロトン伝導体を含むものであるが、燃料電池として用いる場合には、通常その酸化物層の最上部の層上に酸素電極が設けられる。その状況を図1に模式的に示す。酸化物層2ないし4が、酸素電極1と金属層(水素透過性金属層すなわち水素電極)5とに挟まれた構造である。なお同図で中間層は4である。なお酸素電極の素材は、例えば、Pd、Pt、Ni、Ruやそれらの合金からなる薄膜電極や、貴金属や酸化物伝導体からなる塗布電極およびそれらの多孔質電極が好ましい。
薄膜状の酸素電極は、Pd、Pt、Ni、Ruやそれらの合金を、本発明のプロトン導伝体の酸化物層の上に、スパッタ法、電子ビーム蒸着法、レーザーアブレーション法などにより成膜して得る。通常その厚みは、0.01〜10μm程度であり、好ましくは0.03〜0.3μm程度である。
厚膜状の酸素電極は、例えばPtペースト、Pdペーストや酸化物伝導体ペーストを酸化物プロトン伝導性膜の最上層の上に塗布し、焼付けることにより形成することができる。このようにして形成された電極は一般的に多孔質の電極となる。酸化物伝導体としては、例えば、La−Sr−Co系、La−Sr−Fe系およびSr−Pr−Co系の複合酸化物などが挙げられる。塗布厚は通常5〜500μm程度である。
本発明のプロトン伝導体ならびにそれを組み込んだ構造体は、例えば、水素デバイスの一つである燃料電池に用いた場合、高い電池出力を達成できるとともに、水素透過性金属とペロブスカイト構造酸化物間の密着性に優れ、両層界面での剥離が生じにくい。この構造体は、本発明の製造方法により容易に得ることができ、燃料電池のみならず各種の水素デバイスに適用できる。前記のような優れた特徴を有する水素透過構造体を用いた本発明の燃料電池は、従来以上の高い電池出力を生じるとともに、それを安定持続させることができる。
以下本発明を実施するための形態を、実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲はこの実施例により限定されるものではない。
1.プロトン伝導体の作製
幅17mm、長さ17mmで厚み100μmのPd板基材(水素透過性基材すなわち金属層)を、レーザー透過用の合成石英ガラス窓を備えた真空チャンバー内部のホルダーにセットし、ホルダー部の温度を550℃に加熱した。酸素を、マスフローメータを通して導入し、酸素分圧1×10−2Torrにチャンバー内圧力を調整した。その状態で、この金属層の一方の面に幅17mm、長さ17mmのパターンで、表1に示す各種の中間層と酸化物層を形成し、プロトン伝導体試料を作製した。本実施例では、これに酸素電極を付与した構造体を作製した後、燃料電池評価用の試料を作製して、その電流密度および金属層と中間層間の剥離の程度を通電可能時間も確認の上比較した。
Figure 2007200690
表の「プロトン伝導体」欄の記事は、左から順に中間層の「材質(化学組成)」、その材質の格子定数と金属層材料Pdのそれとの比率すなわち「格子定数比率」、「陽イオン置換量X」およびその「厚み」である。表の「酸化物層(中間層の上に積層された酸化物の層)」欄および「表面層(酸化物層の上に積層された層)」欄は、それぞれの層の「材質(化学組成)」、「陽イオン置換量X」およびその「厚み」である。その右の「構造体」の欄は、燃料電池向けの電極など試料に付加されたアッセンブリ要素を示す。本実施例の場合、ここには主に酸素電極の材料を載せた。その右の欄は、本実施例で作製された「燃料電池」試料の評価データである。「0.5V時の電流密度」欄は、試料の両極に0.5Vの直流電圧を付加した際の電流密度を、「初期の剥離力」欄は、この通電前に後述する3項に記載された手段で計量された金属層と中間層との剥離に至る応力を、それぞれ示す。また「10%劣化時間」欄は、電流密度が初期値から10%低下した時点までの持続時間を示す。それが1時間未満の場合は×で、1ないし50時間の場合は△で、50ないし100時間の場合には○で、100時間を越える場合には◎で表示した。
表の「材質」欄の符号「SZ(1n)」、「BC(Yb)」および「S(Ca)Z」は、一般式SrZr1−x3αの成分系でMが1nの場合、一般式BaCe1−x3αの成分系でMがYbの場合およびSr1−xZrO3αの成分系でMがCaの場合をそれぞれ示す。なお化学式の末尾の数字は、同じ一般式のものでX値(置換されるMの量)の異なるものを区別するための通し番号である。なおαの値は、表には示さないが、前述の範囲内の数値である。
この実施例のプロトン伝導体試料は、以下の手順で調製した。上記Pd金属層を準備し、その一方の面上に表1の材質、X量の化学組成物の層を中間層、酸化物層および表面層のb体を用意し、これにレーザー照射用の窓を通して周波数20HzのKrFエキシマレーザーを照射し、中間層および表面層を含む酸化物層を形成した。厚みは照射時間を変えて制御した。
2.燃料電池用構造体の作成
このようにして得られたプロトン伝導体試料の金属層とは反対側の面に、ステンレスマスクを通して、2mm角、0.1μmの厚みのPt薄膜を、電子ビーム蒸着で設け、酸素電極とした。この燃料電池用の構造体(以下単に構造体とも言う)は、図1の断面模式図に示されるようなサンドイッチ構造を有する。
3.プロトン伝導体の評価
得られた構造体を構成する水素透過性金属と多層構造を有するプロトン伝導体の格子定数は、断面TEM(透過電子顕微鏡)観察によって求めた。
また、金属層と中間層の界面での初期の剥離強度は、得られた構造体中のプロトン伝導体の表面層側のプロトン伝導性膜面上に、スタッド(接着面の直径が2.7mmで長さが15mmのアルミニウム製の棒)を接着剤で取付けた後、引張り試験器を使って、そのスタッドを膜面に対し垂直方向に引張り、スタッドが酸化物層とともに金属層との界面から剥がれる最大荷重を求め、それを膜の剥離面積で割って剥離応力(MPa/mm)を求めた。
4.燃料電池試料の評価
上記2項で得られた構造体試料を、500℃の容器内に置き、全体がその温度になった時点で容器内のPd板基材(水素極すなわち金属層)側に、同じ温度の水素を流量0.4l/分(毎分0.4リットル)で流し、Pd薄膜電極(酸素極)側に空気を流量0.4l/分(毎分0.4リットル)で流しつつ、両極に直流0.5Vの電位差をかけた状態で電池出力を継続して測定した。なお各試料とも出力が、初期に比べ10%低下した時点で測定を終了した。
以上の結果より、以下のことが言える。
(1)中間層材料の格子定数と金属層材料のそれとの比率が、0.8以上1未満の範囲内のものであれば、範囲外のものに比べ、伝導体のプロトン伝導性(電池では電流密度)は高いレベルにあり、初期剥離力も大きく、剥離開始時間(持続時間)も延びる。また試料8ないし10の結果より、この比率の範囲内であれば、他の材質や混在材質の中間層や酸化物層であっても、同様に高いプロトン伝導性で高い剥離強度とその持続時間のプロトン伝導体が得られる。
(2)一般式AB1−X3αのペロブスカイト型の酸化物で中間層を形成する場合、X値を0以上0.2未満、厚みを1ないし20nmの範囲内に制御されたものは、その範囲外のものに比べ、伝導体のプロトン伝導性(電池では電流密度)、初期剥離力は増加する。また燃料電池に組み込んだ場合、その出力がより長い時間持続させることができる。さらに、これに加え酸化物層の表面層のXを0.2以上0.8未満、厚みを1nm以上にしたものは、伝導体のプロトン伝導性(電池では電流密度)、初期剥離力はより一層増加する。また、燃料電池に組み込んだ場合、その出力が更に一層長い時間持続させることができる。
本発明の構造体の一例を模式的に示す断面図である。
符号の説明
1…酸素電極
2…酸化物層(表面層)
3…酸化物層
4…中間層
5…金属層



Claims (7)

  1. 水素透過性の金属層の一方の面上に 複数のプロトン伝導性酸化物層が積層されたプロトン伝導体であって、該金属層と該酸化物層との間に、結晶格子定数が、該金属層を構成する材料の結晶格子定数の0.86倍以上1倍未満の範囲にあるプロトン伝導性の中間層が配置されたプロトン伝導体。
  2. 前記中間層の厚みが、1ないし20nmである請求項1に記載のプロトン伝導体。
  3. 前記中間層が、前記酸化物層と同じ化学成分系である請求項1または2に記載のプロトン伝導体。
  4. 前記中間層と酸化物層が、いずれも一般式AB1−X3α(ただしAはアルカリ土類金属元素、BはCeまたは周期律表の4a族元素群から選ばれた少なくとも1種の元素、MはNd、Ga、Al、Y、In、Yb、Sc、Gd、SmまたはPrの群から選ばれた3価の電荷を持つ少なくとも1種の元素、Xは1以下の数値、αは0.67ないし0.95の数値)で表される化学組成のペロブスカイト型の複合酸化物からなり、該中間層が、0≦X<0.2であり、該酸化物層の前記金属層に接しない側の表面層が、厚み1nm以上かつ該一般式で0.2≦X<0.8である請求項1ないし3のいずれかに記載のプロトン伝導体。
  5. 前記金属層が、Pa,Paの合金またはそれらを含む複合材料である請求項1ないし4のいずれかに記載のプロトン伝導体。
  6. 請求項1ないし5のいずれかに記載のプロトン伝導体を用いた構造体。
  7. 請求項6の構造体を用いた燃料電池。

JP2006017304A 2006-01-26 2006-01-26 多層構造を有するプロトン伝導体およびそれを用いた構造体 Withdrawn JP2007200690A (ja)

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