JP2007257937A - 酸化物イオン伝導率を抑えた多層構造のプロトン伝導体およびそれを用いた構造体 - Google Patents

酸化物イオン伝導率を抑えた多層構造のプロトン伝導体およびそれを用いた構造体 Download PDF

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Abstract

【課題】 高い伝導性を維持しつつ酸化物層の酸素イオン伝導性を抑制することによって、陽極基材と酸化物層の密着性を高めた多層構造のプロトン伝導体を提供することである。
【解決手段】 水素透過性の陽極基材の一方の面上に、プロトン伝導性酸化物層が配置され、該酸化物層の上にさらに酸素イオン欠損量の少ない酸化物からなる介在層が配置されたプロトン伝導体である。特に該介在層の厚みが、10ないし50nmのもの、さらに
該介在層の化学成分系が酸化物層と同じものが望ましい。本発明のプロトン伝導体は、陽極基材と酸化物層との間の密着性に優れ、かつプロトン伝導性に優れており、各種の水素デバイスへの適用が可能である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、酸化物イオン伝導率を抑えた多層構造のプロトン伝導体とそれを用いた構造体に関する。
水素透過性の陽極基材(以下単に陽極基材とも言う)の上にプロトン伝導性の酸化物などの固体電解質層(以下単に酸化物層とも言う)を形成した水素透過性の構造体(以下単に構造体とも言う)は、水素を選択的に検出分離したり、それをプロトンイオンとして輸送する機能を有しており、燃料電池、水素センサ、水素ポンプ、廃棄ガス中のNOを除去する装置への利用など、いわゆる水素デバイスとしての広範な用途が考えられる。特に、その一方の面に水素を、他方の面に酸素を接触させることにより清浄な状態で電気エネルギーに転換させる車用、家庭用、携帯用などの水素燃料電池(以下単に燃料電池とも言う)が、脚光を浴びている。燃料電池の場合のプロトン伝導性の固体電解質層には、400℃までの低温実用域(以下単に低温域とも言う)では主にポリマーが、同温度を越え700℃までの中温実用域(以下単に中温域とも言う)から700℃を越える高温実用域(以下単に高温域とも言う)では主に酸化物などの耐熱性の材料が、それぞれその有望な候補として考えられて来た。
例えば、SOLID STATE IONICS、162−163(2003)、291−296頁(非特許文献1)にこれらの構造体の例が開示されている。同文献には、この陽極基材の材料としてPd又はPdを含む金属が、また固体電解質層の材料としてアルカリ土類金属元素及びCeなどの元素を含むプロトン伝導性の複合酸化物が紹介されている。
また特公昭62−47054号公報(特許文献1)には、プロトン伝導性の酸化物層の候補材としてABO(ペロブスカイト)型酸化物が紹介されている。特開2004―146337号公報(特許文献2)には、陽極基材とポリマーやABOなどの酸化物層からなるプロトン伝導体の層との間に、Pdなどの緻密な陽極基材の層が形成された構造体からなり、中温域でも動作可能な燃料電池が紹介されている。特開2005−19041号公報(特許文献3)には、多孔質層の上に貫通孔の無い陽極基材の層を介して厚さ50μm以下のABOなどの酸化物層が形成された構造体を用いた中温域用の燃料電池が紹介されている。特開平11−267477号公報(特許文献4)には、ステンレス鋼や窒化珪素セラミックスなどの多孔質の陽極基材の層(支持体)上にイオンプレーティング法でピンホールの無い金属層が形成された構造体が紹介されている。
燃料電池にはより高い出力をより長時間安定して出せるものが望まれており、その構造体にも同じことが期待されている。酸化物層を使った中温域から高温域で使われるものでは、作動時と停止時の温度差が大きいため、その構造体の陽極基材と酸化物層との間の熱膨張係数の差に応じ両者の界面に繰り返し両層を引き離そうとする熱応力が発生する。さらに実用時の水素透過による陽極基材の膨張がこれに加わると、それが助長される。
また両者の接合界面の構造や形態によっては、使用中の変質などで接合強度や耐熱性などが低下することもあり得る。中でも酸化物層の酸化物イオン伝導によって、同界面に生成する水の影響は、上述の現象以上に剥離強度に大きく影響する重要な課題である。プロトン伝導性の酸化物層は、優れた酸化物イオン伝導体でもあるため、両者の接合界面でプロトンと酸素イオンが反応して水が生じる。その際、接合界面に空孔があると、そこに水が溜まり界面剥離を助長する。また界面周辺の変質も進み易くなる。このため、出力が低下し易く不安定になり易い。これは、燃料電池のみならず同じ基本構造のプロトン伝導体を使った水素デバイスの課題でもある。
界面での剥離や酸化を抑える手段の一例が、特開2005−327586号公報(特許文献5)に開示されている。それによると、金属層とABOなどの酸化物層との間に厚み0.1ないし1μmのPd、Ni、W、Moなどの金属やそれらの酸化物からなる中間層(酸化防止膜)を設けた両層が剥離し難い構造体が紹介されている。
SOLID STATE IONICS、162−163(2003)、291−296頁 特公昭62−47054号公報 特開2004−146337号公報 特開2005−19041号公報 特開平11−267477号公報 特開2005−327586号公報
水素イオン固体電解質としての酸化物層と陽極基材との界面剥離は、上記特許文献5にも採り上げられているように、構造体の重要な課題の一つである。しかしながら、上記特許文献5の手段を採ったとしても、陽極基材と酸化物層の界面の空孔を皆無にすることは困難である。例えば、燃料電池では、発電時の両者界面で水の発生は避け難い現象であると考えられる。本発明の課題は、実用時の高い伝導性を維持しつつ酸化物層の酸化物イオン伝導率を抑制することによって、陽極基材と酸化物層の密着性を高めた多層構造のプロトン伝導体を提供することである。
本発明者は、外部から陰極層に採り込まれた酸素の陽極基材に到達する量を抑えるため、陰極層と酸化物層との界面に酸化物イオンの透過障壁(以下介在層と言う)を設ける、すなわち酸素イオン欠損量の少ない酸化物の介在層を配置することによって、両層の間の伝導性を損なうことなく陽極基材と酸化物層の間の接合強度を上げる見通しを得た。特に酸化物層と同じ化学成分系で、その組成および層の厚みが制御された介在層を形成することによって、より良い結果の得られることを見出し本発明に至った。
すなわち本発明は、水素透過性の陽極基材の一方の面上に、プロトン伝導性酸化物層が配置され、この酸化物層の上にさらに酸素イオン欠損量の少ない酸化物の介在層が配置されたプロトン伝導体である。なおこの介在層の厚みは、10ないし50nmとするのが望ましく、さらにこの介在層が、隣接配置される酸化物層と同じ化学成分系であるのが、より望ましい。
このような構成によって、酸化物層のプロトン伝導性を損ねることなく適正に維持しながら実用時での陽極基材と酸化物層との界面剥離強度の低下が確実に抑えられる。その結果、プロトン伝導体とそれを用いた構造体の伝導機能が安定し、特にこの構造体を用いた燃料電池では、その出力が向上し安定する。
なお本発明には、上記プロトン伝導体の一例として、特に以下の構成のものが含まれる。プロトン伝導性の酸化物層および介在層が、いずれも一般式AB1−X3α(ただしAはアルカリ土類金属元素、BはCeまたは周期律表の4a族元素群から選ばれた少なくとも1種の元素、MはNd、Ga、Al、Y、In、Yb、Sc、Gd、SmまたはPrの群から選ばれた3価の電荷を持つ少なくとも1種の元素、Xは1以下の数値、αは0.67ないし0.95の数値)で表される化学組成のペロブスカイト型の複合酸化物からなり、介在層のXの値が、0を越えて0.2未満であるプロトン伝導体。
酸化物層が、一般式ABOのペロブスカイト型であり、Bサイトイオン置換型の化学組成の場合、上記のような構成とし、陰極層から採り込まれ酸化物層に流れる酸素イオンの量を抑えることによって、酸化物層のプロトン伝導性を維持しつつ陽極基材の層と酸化物層の接合強度を高めることができる。特に燃料電池では、その出力が向上し安定する。
さらに本発明は、上記構成で上記有利な効果の得られるプロトン伝導体を用いた構造体および同構造体を用いた燃料電池も含む。
本発明のプロトン伝導体は、陽極基材と酸化物層との間の密着性に優れ、かつプロトン伝導性ならびにその安定性に優れており、各種の水素デバイスへの適用が可能である。例えば、その一例である燃料電池に用いた場合、従来以上の高出力が得られるとともに、それを安定に持続させることができる。
以下本発明の実施の形態を説明する。本発明は、前述のように、水素透過性の陽極基材の一方の面上に、プロトン伝導性の酸化物層が配置され、この酸化物層の上にさらに酸素イオン欠損量の少ない酸化物の介在層が配置されたプロトン伝導体である。酸化物の酸素イオン欠損量の制御は、通常その結晶格子の陽イオンサイトの一部をより小さい電荷の陽イオンで置き換えることによって行う。このような酸化物には、例えば、後述の単純ペロブスカイト型の酸化物以外にSr(ScNb)Oのような混合ペロブスカイト型、SrTiOのような層状ペロブスカイト型およびLaZrのようなパイロクロア型などの酸化物が挙げられる。本発明の構造体には、これらの伝導体を基本単位とし、これらの複数単位を二次元または三次元方向に様々な形態と配置パターンで積層・配列したものも含まれ、またそれらを利用した水素デバイス、特に燃料電池に供するものも含まれる。介在層を設けないと、陽極基材と酸化物層の界面の接合強度が安定せず、剥離が生じ易くなる。その結果、実用時の構造体の水素分離機能やプロトン導電性が損なわれ易くなる。例えば、燃料電池に用いると、その出力低下や出力の不安定状態が早期に起こり易くなる。
なお介在層の厚みは、10ないし50nmの範囲が望ましい。下限未満では酸化物イオン電導の障壁効果が低下し易く、上限を超えると酸化物イオン伝導性が低下し過ぎて、水素デバイスの出力(燃料電池では電流密度)が低下し易いからである。厚みをこの範囲内にすることによって、陽極基材と酸化物層との間の密着性とプロトン伝導性により一層優れたプロトン伝導体が得られ、水素デバイス、特に燃料電池に用いた場合、高い出力を安定して持続させることができる。またこれらに加え、同層の化学成分系を酸化物層のそれと同じにすることによって、以上の効果をより高めることができる。
陽極基材の素材は、水素透過性の金属もしくは多孔質の材料またはそれらの複合材料であれば良い。金属としてはPd、V、Ta、Nbなどが挙げられる。中でもPdおよびその合金またはそれらを含む複合材が望ましい。Pd合金では、合金成分としては、例えば、Ag、PtおよびCuを含むものがある。複合材では、例えば、V、Ta若しくはNbを含む金属材料の両面に、電気伝導性のステンレス鋼(SUS)などの金属材料やセラミックスからなる水素透過孔を有する多孔質材料(支持体)の表面に、PdやPd合金の層を被覆したものがある。なおV、TaおよびNbを含む金属材料としては、例えばNi、Ti、Co、Crなどとの合金があり、セラミックスとしては窒化珪素、アルミナ、炭化珪素などがある。さらにこれら一連の材料を積層したものや水素デバイスとしての実用途に応じて適正な二次元・三次元のパターンや形態で単一種もしくは複数種の金属を組み合わせたものなどが挙げられる。
本発明の陽極基材の層は、上記のような形成される形態(例えば、箔状や板状、厚膜状ならびに薄膜状などの物理的な形態やそれらの二次元・三次元の機能配置)に応じて様々な手段で形成される。なお薄膜状の場合には、例えば、スパッタリング、電子ビーム蒸着、レーザーアブレーションによる積層手段が挙げられ、厚膜状の場合には、例えば、ゾルゲル法やメッキ法などの湿式手段が挙げられる。
本発明の酸化物層や介在層の素材は、いずれもプロトン伝導性酸化物であれば良い。このような酸化物としては、例えば、前述のペロブスカイト型やパイロクロア型の他にもスピネル型などの陽イオン置換型の複合酸化物、水素浸入型などの複合酸化物、βアルミナやジルコニアなどの単一酸化物およびそれらの複合材料が挙げられる。中温域以上での耐熱性と水素分離機能やプロトン伝導性に優れているものは、現状ではペロブスカイト型、パイロクロア型、スピネル型の陽イオン置換型の複合酸化物である。中でも特に高温でのプロトン伝導性に優れたペロブスカイト型のものが、最近有力視されている。これらの酸化物は、結晶の格子欠陥を介して水素イオンが移動する。基本となる酸化物系の結晶に格子欠陥を誘発する成分を入れて適当なイオン伝導性を付与することができるため、種々の化学組成のものが開発されてきた。前述のように基本式のABOのAおよびBの二つの陽イオンサイトを別の陽イオンで置き換える方法が試みられて来た。
本発明では、その一例として、これらの中でも特にプロトン伝導性に優れているものとして、一般式AB1−X3α(ただしAはアルカリ土類金属元素、BはCeまたは周期律表の4a族元素群から選ばれた少なくとも1種の元素、MはNd、Ga、Al、Y、In、Yb、Sc、Gd、SmまたはPrの群から選ばれた3価の電荷を持つ少なくとも1種の元素、Xは1以下の数値、αは0.67ないし0.95の数値)で表される化学組成のペロブスカイト型の複合酸化物を取り上げる。なおAの好ましい元素は、Sr、Ba及びCaである。
なおこの例では、上記の特定化学組成を選んだが、以下に述べるような特定の置換イオンとその量および特定の層の厚みや配置形態などを組みあわせた本発明の思想にかなう構成であり、同様な効果の得られるものであれば、いかなるものであっても良い。例えば、Bサイト置換型の素材のみの積層体だけでなく、Aサイト置換型素材やA、B両サイト置換型素材の層で構成されたものやこれらの置換型素材の層が混成されたものであっても良い。また例えば、介在層から酸化物層に渡り順次傾斜機能的に化学組成や厚みを変化させたものであっても良い。さらに例えば、各層の二次元、三次元的な配置が工夫されたものであっても良い。
以下この一般式AB1−X3αの酸化物積層体を利用した最良の実施形態を例に採って本発明を詳述する。本発明のこの例では、酸化物層は、いずれも上記一般式の組成物が積層されたプロトン伝導体からなる。酸化物層の上に特定の化学組成と厚みのプロトン伝導性の酸化物からなり、酸化物層に比べXが小さく酸化物イオン伝導性の低い介在層が配置されたプロトン伝導体である。なお介在層以外の(陽極基材と介在層との間に)積層された個々の酸化物層は、同じ化学組成や厚みであっても良いし、異なる化学組成や厚みであっても良い。また各層の形態は、本発明伝導体が実用に供される場合の目的とする機能に応じ、二次元または三次元方向に変形させても良い。また例えば、酸化物層内で傾斜機能的に順次陽イオンの置換量や種類および層の厚みなどを変えても良い。さらに前述のように、本発明の構造体には、これらのプロトン伝導体を基本単位とし、これらの複数単位を二次元または三次元方向に様々な形態と配置パターンで積層・配列したものも含まれ、またそれらを利用した燃料電池に供するものも含まれる。
より具体的には、この例での介在層は、その厚みが10nmないし50nmであり、なおかつ上記一般式の陽イオン置換量Xが、0を越えて0.2未満の化学組成を有するプロトン伝導体である。なおXは、0.05ないし0.15が、より望ましい。介在層のXの範囲をこのようにするのは、下限未満ではプロトン伝導性が低くなり易く、上限を超えると酸素イオン伝導性が優勢になるため、その障壁機能が低くなり易いからである。したがって、この範囲を外れると、例えば燃料電池に用いた場合には、初期の電流密度レベルが低下し易く、その持続時間が短くなり易くなる。
なお、ペロブスカイト型酸化物の薄い層(薄膜)を形成する方法としては、スパッタリング法、電子ビーム蒸着法、レーザーアブレーション法、MO−CVD法などの気相法が挙げられ、又ゾルゲル法、電気泳動法、泳動電着法等のウェットプロセス(湿式法)なども採用可能である。その場合、450℃以上の温度下、酸化性雰囲気で行うことが好ましい。なお低温で層を形成した後、450℃以上の温度下非酸化性雰囲気で焼成して、ペロブスカイト構造の積層体を得ることもできる。
このようにして得られた本発明のプロトン伝導体は、水素分離および水素検出の機能や特に中温域以上の温度でのプロトンイオンの輸送機能などに優れており、このプロトン伝導体に電極などの機能部材を組み合わせることによって、各種水素デバイスに活かせる優れた構造体(水素デバイス用の中間アセンブリやユニット)が提供できる。
中でも地球環境に優しいクリーンなエネルギー供給源として期待されている水素燃料電池に有用な構造体である。本発明の構造体は、既に述べてきたプロトン伝導体を含むものであるが、燃料電池に有用な構造体の一例を図1に模式的に示す。陽極基材の層4の上に酸化物層3と介在層2が順次積層されたプロトン伝導体の介在層2の上に、さらに陰極層1が積層されたものである。なお説明を簡略にするため、図にはそれぞれの層が単一層で描かれているが、それぞれの層は、複数の層で形成されていても良い。またその場合、層毎に材料種が異なっていても良く、同じ材料であっても良い。また例えば、厚み方向にその化学組成を傾斜機能的に変化させたものでも良いし、例えば、積層された二次元・三次元方向に複数の材料のマクロな配置パターンを組み合わせても良い。
陰極(以下酸素極とも言う)は、Pd、Pt、Ni、Ruやそれらの合金からなる薄膜状のもの、貴金属や酸化物の伝導体からなる厚膜状のもの、およびそれらの材料を含む多孔質状のものを用いるのが望ましい。薄膜状の酸素電極は、Pd、Pt、Ni、Ruやそれらの合金を、本発明のプロトン導伝体の酸化物層の上に、スパッタ法、電子ビーム蒸着法、レーザーアブレーション法などにより成膜して得る。通常その厚みは、0.01〜10μm程度であり、好ましくは0.03〜0.3μm程度である。
厚膜状の酸素電極は、例えばPtペースト、Pdペーストや酸化物伝導体ペーストを酸化物プロトン伝導性膜の最上層(本発明では介在層)の上に塗布し、焼付けることにより形成することができる。このようにして形成された電極は一般的には多孔質の電極となる。酸化物伝導体としては、例えば、La−Sr−Co系、La−Sr―Fe系およびSr−Pr−Co系の複合酸化物などが挙げられる。塗布される層の厚みは、通常5〜500μm程度である。
本発明のプロトン伝導体は、その酸化物層の陽極基材とは反対側の外気酸素との接触界面に、また構造体では陰極と酸化物層との間に酸素イオン欠損量の小さい酸化物からなる介在層を設けている。このため、この介在層が、陽極側への酸化物イオンの移動量を制御する障壁の役割をする。その結果、陽極と酸化物層との界面での水の生成量を適正に抑え、それによる同界面の剥離現象を抑えることができる。したがって、例えば、水素デバイスの一つである燃料電池に用いた場合、高い電池出力が得られるとともに、水素透過性の陽極基材とプロトン伝導性の酸化物層の界面での電池機能に優れ、安定して使うことができる。このプロトン伝導体および構造体は、本発明の製造方法により容易に得ることができ、本発明の構造体を用いた燃料電池は、従来以上の高い電池出力を生じるとともに、それを安定持続させることができる。また燃料電池のみならず各種の水素デバイスに適用できる。
以下本発明を実施するための形態を、実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲はこの実施例により限定されるものではない。
1.プロトン伝導体の作製
陽極基材として、幅17mm、長さ17mmで厚み100μmのPd金属製の箔、これと幅、長さが同じで、その表面にPd膜が形成された厚み1mmの窒化珪素系セラミックスおよびステンレス鋼の板状の多孔質支持体を用意した。これらの基材をレーザー透過用の合成石英ガラス窓を備えた真空チャンバー内部のホルダーにセットし、ホルダー部の温度を550℃に加熱した。酸素を、マスフローメータを通して導入し、酸素分圧1×10−2Torrにチャンバー内圧力を調整した。その状態で、レーザー照射用の窓を通して周波数20HzのKrFエキシマレーザーを照射し、この陽極基材の一方の面に幅17mm、長さ17mmのパターンで、表1に示す各種の酸化物層および介在層を順次形成し、プロトン伝導体試料を作製した。厚みは照射時間を変えて制御した。
Figure 2007257937
*印は比較例。
備考欄は、本実施例の点線で区切った試料群で変動させた要因を示す。
表1記事は、以下の通りである。「プロトン伝導体」の「陽極」欄は、基材となる材質を示す。「Pd」は、上記したサイズのPd金属箔である。「多1」および「多2」は、それぞれ上記したサイズの窒化珪素系セラミックスおよびステンレス鋼の多孔質支持体の表面にPdが成膜されたものである。なおいずれの支持体も空孔率は60%である。「酸化物層」と「介在層」の欄の「材質」の表示符号は以下の通りである。「SZ(1n)」、「BC(Yb)」、「S(Ca)Z」および「S(La)T」は、順にそれぞれ一般式SrZr1−x3αの成分系でMが1nの場合、一般式BaCe1−x3αの成分系でMがYbの場合、Sr1−xZrO3αの成分系でMがCaの場合、および一般式Sr2−xTiO4αの成分系でMがLaの場合をそれぞれ示す。なお符合の末尾の数字は、同じ一般式のものでX値(置換されるMの量)の異なるものを区別するための通し番号である。なおαの値は、表には示さないが、前述の範囲内の数値である。Xは、それぞれの層の陽イオン置換量である。その右の「構造体」の欄は、燃料電池向けの電極など試料に付加されたアセンブリ要素を示す。本実施例の場合、ここには酸素電極の材料を載せた。Pt、Ni、RuおよびPdは、それぞれ白金、ニッケル、ルテニウムおよびパラジウムである。
2.燃料電池用構造体の作成
このようにして得られたプロトン伝導体試料の介在層の面上に、ステンレス鋼製のマスクを通して、2mm角、0.1μmの厚みのPt薄膜を電子ビーム蒸着で形成し、陰極(酸素電極)とした。この構造体は、図1の断面模式図に示されるようなサンドイッチ構造を有する。
3.プロトン伝導体の評価
本実施例では、これらの構造体の試料を用い、燃料電池評価用の試料を作製して、表2に記載のように、その初期の電流密度、初期ならびに100時間通電後の陽極基材−酸化物層界面での剥離強度(下記手順で計量された)、ならびに容量が10%低下するまでの持続時間を確認した。
4.燃料電池試料の評価
得られた構造体の試料を、500℃の容器内に置き、全体がその温度になった時点で容器内の陽極基材側に、同じ温度の水素を流量0.41/分(毎分0.4リットル)で流し、他方酸素極側に空気を流量0.41/分(毎分0.4リットル)で流しつつ、両極に直流0.5Vの電位差をかけた状態で電池出力を継続して測定した。
また、金属層と中間層の界面での初期および100時間通電後の剥離強度は、構造体中のプロトン伝導体の酸素電極側の面に、スタッド(接着面の直径が2.7mmで長さが15mmの純アルミニウム製の棒)を接着剤で取付けた後、引張り試験器を使って、そのスタッドを膜面に対し垂直方向に引張り、スタッドが酸化物層と陽極基材との界面から剥がれる最大荷重を求め、それを膜の剥離面積で割って剥離応力(MPa)を求めた。これらの結果を表2に示す。いずれも30個の試料を用意し、その内の10個ずつを初期および100時間後の剥離強度確認のために使った。
Figure 2007257937
注1)*印は比較例。
注2)備考欄は、本実施例の点線で区切った試料群で変動させた要因を示す。
表2の記事は、以下の通りである。「0.5V印加時の電流密度」は、試料の両極に上記手順で0.5Vの直流電圧を付加した際の初期の電流密度を、「初期の剥離強度」と「100時間通電後の剥離強度」は、上述の手段で確認された剥離強度を、それぞれ示す。また「10%劣化時間」の欄は、電流密度が初期値から10%低下した時点までの持続時間帯をランクで分けて表示したものである。持続時間が、1時間未満のものは×で、1ないし50時間のものは△で、50ないし100時間のものは○で、100時間を超えるものは◎で、それぞれ表示した。
以上の結果より、以下のことが言える。
1)酸化物層と陰極層との間に酸素イオン欠損量の少ない(陽イオン置換量Xの小さい)酸化物の層(介在層)を配置することによって、配置しない場合に比べ、特に100時間通電後の剥離強度と10%劣化時間が共に大幅に改善される。すなわち優れた出力で、そのレベルを長時間持続できる水素燃料電池の提供ができる。すなわち、本発明により、優れた水素の分離・輸送機能を有し、長時間そのレベルの維持できるプロトン伝導体が提供でき、優れた出力でそれが長期持続可能な水素デバイスが提供できる。
2)上記介在層の厚みを10ないし50nmの範囲に制御することによって、より高出力でより長時間持続性のプロトン伝導体が提供できる。
3)さらに介在層の化学成分系を酸化物層のそれと合致させることによって、特に酸化物層と介在層を一般式AB1−X3αのペロブスカイト型の酸化物で形成し、介在層のX値を0を越え0.2未満のレベルに制御することによって、さらに高出力でそれが安定に持続するプロトン伝導体の提供が可能になる。
本発明のプロトン伝導体は、陽極基材と酸化物層との間の密着性に優れ、かつプロトン伝導性ならびにその安定性に優れており、各種の水素デバイスへの適用が可能である。例えば、その一例である燃料電池に用いた場合、従来以上の高出力が得られるとともに、それを安定に持続させることができる。
本発明の構造体の一例を模式的に示す断面図である。
符号の説明
1…陽極基材
2…介在層
3…酸化物層
4…陽極基材



Claims (7)

  1. 水素透過性の陽極基材の一方の面上に、プロトン伝導性酸化物層が配置され、該酸化物層の上にさらに酸素イオン欠損量の少ない酸化物からなる介在層が配置されたプロトン伝導体。
  2. 前記介在層の厚みが、10ないし50nmである請求項1に記載のプロトン伝導体。
  3. 前記介在層が、前記酸化物層と同じ化学成分系である請求項1または2に記載のプロトン伝導体。
  4. 前記介在層と酸化物層が、いずれも一般式AB1−X3α(ただしAはアルカリ土類金属元素、BはCeまたは周期律表の4a族元素群から選ばれた少なくとも1種の元素、MはNd、Ga、Al、Y、In、Yb、Sc、Gd、SmまたはPrの群から選ばれた3価の電荷を持つ少なくとも1種の元素、Xは1以下の数値、αは0.67ないし0.95の数値)で表される化学組成のペロブスカイト型の複合酸化物からなり、該介在層のXが、0を越えて0.2未満である請求項1ないし3のいずれかに記載のプロトン伝導体。
  5. 前記陽極基材が、多孔質体または水素透過性の金属およびそれらの複合材料である請求項1ないし4のいずれかに記載のプロトン伝導体。
  6. 請求項1ないし5のいずれかに記載のプロトン伝導体を用いた構造体。
  7. 請求項6の構造体を用いた燃料電池。
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