JP2007173104A - 水素分離膜型燃料電池セルおよびその製造方法 - Google Patents

水素分離膜型燃料電池セルおよびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】アノードと固体電解質膜の薄膜化により、コストの低廉化を図り、プロトンの移動距離を短くして、プロトン伝導の抵抗を下げる。
【解決手段】水素分離膜型燃料電池セル1は、カソード2と、このカソードの一方の面に成膜して形成される固体電解質膜3と、固体電解質膜3の上に成膜して形成されるアノード4とを備える。カソード2は、電子伝導性を有するペロブスカイト型酸化物の焼結体で形成され、固体電解質膜3は、プロトン伝導性を有するペロブスカイト型酸化物で形成され、アノード4は、水素透過金属膜41から形成される。カソード2は、固体電解質膜が形成されない側に開口する多数の凹部が形成されている。水素透過金属膜41は、厚みが0.01μm〜40μmである。
【選択図】図1

Description

本発明は、カソードと、このカソードの一方の面に形成される電解質膜と、電解質膜の上に形成されるアノードとを備える水素分離膜型燃料電池セルに関する。
近年、水素と酸素の電気化学反応によって発電を行う燃料電池がクリーンエネルギー源として注目されている。このような燃料電池は、燃料の持つ化学エネルギーを直接電気エネルギーへ変換するため、エネルギー変換ロスが小さく、高効率な発電が可能となり、しかも、環境負荷が小さい。
燃料電池のセルは、一般に、カソード、アノード、カソードとアノードの間に設ける電解質を備える。
この燃料電池セルのうち、固体電解質を備える燃料電池は、発電効率が非常に高いことから、大型発電所や分散型電源あるいは高効率コージェネレーション機器として、実用化が期待されている。さらに、固体電解質として固体酸化物型の電解質を用いたものは、運転温度が高いので電池内部で水素濃度を高めることができる。その結果、水素などのガス燃料を直接導入でき、電池内部で水素濃度を高める改質器が不要となりシステムの簡易化が可能となって小型・軽量化が図れることから、電気自動車や一般家庭への普及が期待されている。
固体酸化物型の電解質としては、プロトン伝導性酸化物を用いた技術が一般に知られている(例えば特許文献1および特許文献2を参照)。特許文献1、および特許文献2に開示されているプロトン伝導性酸化物は、ペロブスカイト型金属酸化物を用いている。
また、カソードとアノードの間に固体酸化物型電解質を備える水素分離膜型燃料電池セルとして、例えば、特許文献3に開示されたものが提案されている。
特許文献3に開示されている電池セルは、アノードを、多孔性基板上に水素透過金属膜を接着して焼結することにより形成する。アノードの水素透過金属膜は、PdあるいはPd-Ag合金を用い、PdあるいはPd-Ag合金の箔をPdペーストを用いて多孔性基板上に接着したり、Pdペーストを多孔性基板上に塗布した後に焼成したりすることにより得られる。
そして、アノードの水素透過金属膜上にプロトン伝導性酸化物膜からなる固体電解質層を形成する。この固体電解質層を焼結した後、この固体電解質層に接触するようにカソードを形成する。カソードは、例えば、Agの網をAgペーストを用いて固体電解質層に接着して形成する。
特公昭62-47054号公報 特開2004-146337号公報 特開2005-19041号公報
ところで、特許文献1および特許文献2に示すように、特許文献3の燃料電池セルは、固体電解質として、プロトン伝導性酸化物を用い、アノードに水素透過金属を用いている。従って、特許文献3の電池セル構造では、アノードと固体電解質層に水素イオンを通過させてカソード側で、H、O2、e-を反応させる。
このような反応を行うためには、固体電解質層とカソードの界面において、三相界面を確保する必要がある。この三相界面を確保するためには、固体電解質層の界面を平滑にして、固体電解質層の密度を上げる必要がある。そこで、特許文献3の電池セル構造では、固体電解質層の表面を平滑にするため、貫通孔の無い水素透過金属膜上に固体電解質膜(層)を成膜している。
さらに、O2をカソードと固体電解質層との界面まで到達させるためには、カソード内をO2が通り易い構造とする必要があり、特許文献3のカソードは、Agの網をAgペーストを用いて固定電解質層に接着させた構造になっている。
また、特許文献3の電池セル構造では、固体電解質層とカソードとをアノードの基板で支持する構成となっている。このアノードの基板は、厚みが厚くなると水素の透過性が低下するため、基板は、多孔性を有する構造となっている。
さらに、固体電解質層は、層の厚みを薄くする方が、プロトンの移動距離を短くできる上で好ましい。そのため、特許文献3の電池セル構造では、固体電解質層は、蒸着等によって電極に成膜して薄膜に形成されている。
ところで、アノードを基板として用いる場合、基板は、水素の透過を良くするために多孔構造とする必要がある。しかし、この多孔性基板上に固体電解質層を成膜して薄膜を形成しようとすると、密な固体電解質層の形成が困難となり、固体電解質層の表面を平滑な状態に成膜できない。このように平滑な表面にできないと、プロトン化の効率が悪く、発電評価の開回路電圧(OCV)値や電流密度の値が低下してしまう。さらに、固体電解質層の密度を上げるために膜厚を厚くすると、プロトン伝導の抵抗が増大してしまう。
そこで、特許文献3の電池セル構造は、前記したように、固体電解質層の表面を平滑な状態に成膜するために、多孔性基板上に水素透過金属膜を接着してアノードを形成し、平滑な水素透過金属膜上に固体電解質層を成膜して形成するようにしている。
しかし、特許文献3の電池セルでは、アノードの水素透過金属としてPdあるいはPd-Ag合金を用いており、水素透過金属膜は、Pd箔をPdペーストで接着したり、Pdペーストを塗布したりして形成されるため、膜厚が厚くなる。特に、Pd箔は、圧延製造により、40μm程度まで薄くすることはできるが、Pdは希少金属であるため、コスト面での負担が大きく、このような膜厚の厚いPd膜を有する電池セルを実用化するのは難しい。また、Pd箔で形成したPd膜上に固体電解質層を蒸着により成膜したとき、Pd膜と固体電解質層との密着性が悪くなったり、剥離しやすくなったりする傾向がある。
そこで、本発明は、アノードを薄膜化することでコストの低廉化を図るとともに、アノードと固体電解質膜の薄膜化により、プロトンの移動距離を短くして、プロトン伝導の抵抗を下げられる水素分離膜型燃料電池セルを提供することを目的とする。
本発明の水素分離膜型燃料電池セルは、カソードと、このカソードの一方の面に成膜して形成される固体電解質膜と、固体電解質膜の上に成膜して形成されるアノードとを備える。
カソードは、電子伝導性を有するペロブスカイト型酸化物で形成される。固体電解質膜は、プロトン伝導性を有するペロブスカイト型酸化物で形成される。アノードは、水素透過金属膜から形成される。
そして、本発明の水素分離膜型燃料電池セルは、カソードが、焼結体で形成され、かつ、固体電解質膜が形成されない側に開口する多数の凹部が形成された構造となっていることを特徴とするとともに、水素透過金属膜は、厚みが0.01μm〜40μmであることを特徴とする。
カソードは、焼結体によって形成することにより、固体電解質膜とアノードの支持体となる。カソードは、焼結体により形成されているので、固体電解質膜が形成される側の面を平滑にできる。その結果、この平滑な面に固体電解質膜を形成することにより、固体電解質膜を高密度で成膜することができ、カソードと電解質膜と気相との三相界面を確保できる。
さらに、カソードは、固体電解質膜が形成されない側に開口する多数の凹部が形成された構造であるため、この凹部内に、カソードの外部(周囲)の酸素が流入する。
本発明では、焼結体の全体厚みが厚くても、凹部を形成しているので、この凹部内に酸素を通過させて、三相界面まで酸素を到達させることができ、三相界面まで酸素が到達し易くなるし、カソードは固体電解質膜とアノードの支持体として十分な強度が得られる。
また、前記カソードの凹部は、焼結体に底部を有するように、即ち焼結体に薄肉部分が形成されるように形成してもよいし、固体電解質膜に到達する貫通孔としてもよい。貫通孔とする場合には、凹部内を通過する酸素は、固体電解質膜に到達し、固体電解質膜とカソードとの接触部分(界面)に直ぐに酸素が入っていくため、薄肉部分が形成される場合よりも三相界面へ酸素を容易に到達させることができる。
さらに、カソードの凹部は、平面視におけるカソード全体面積に対する凹部の面積の割合が30%〜80%となるようにすることが好ましい。30%未満であると十分な量の酸素を透過させることができ難くなる。また、80%を超えると固体電解質膜とアノードの支持体として十分な強度が得られなくなっていく。
カソードを形成する電子伝導性を有するペロブスカイト型酸化物としては、(La,Sr)MnO3、La(Ni,Fe)O3、(La,Sr)CoO3などが挙げられる。
また、固体電解質膜を形成するプロトン伝導性を有するペロブスカイト型酸化物としては、SrZrInO3、BaZrYb03、BaCeYO3などが挙げられる。固体電解質膜の膜厚は、0.1μm〜5μmとすることが好ましい。膜厚を、このような厚みとすることにより、効率良くプロトン化できて、発電評価の開回路電圧(OCV)値や電流密度の値を良好にできる。さらに、適度な膜厚なので、プロトン伝導の抵抗も小さくできる。
アノードを形成する水素透過金属膜は、Pd、Nb、Ta、Vから選択される少なくとも1種の元素を含有する金属とすることが、水素透過性を良好にする上で好ましい。そして、水素透過金属膜は、コストを低廉化し、プロトン伝導の抵抗を抑制し、開回路電圧(OCV)値や電流密度の値を良好にする上で、膜厚を0.01μm〜40μmとすることが好ましい。
さらに、前記したカソードと、このカソードの一方の面に形成される固体電解質膜と、固体電解質膜の上に形成されるアノードとを備える本発明の水素分離膜型燃料電池セルは、次の工程により製造できる。
1) 電子伝導性を有するペロブスカイト型酸化物を、所定の板状に成形した後に焼結する工程、
2) 焼結体の一方の面を研磨する工程、
3) 前記焼結体の研磨された面上に、プロトン伝導性を有するペロブスカイト型酸化物を成膜して固体電解質膜を形成する工程、
4) 前記固体電解質膜の面上に、膜厚が0.01μm〜40μmとなるように水素透過金属を成膜して水素透過金属膜からなるアノードを形成する工程、
5) 前記焼結体の前記水素透過金属膜が形成されていない面から焼結体の一部を除去する加工を施して、固体電解質膜が形成されない側に開口する多数の凹部を有するカソードを形成する工程。
カソードとなる焼結体は、固体電解質膜を成膜する前に、成膜する面を研磨することにより、固体電解質膜との密着性を良くする。
固体電解質膜とアノードの水素透過金属膜の成膜は、例えば、パルスレーザーデポジション(PLD)法、イオンプレーティング(IP)法、スパッタリング法などを用いて成膜することができる。
そして、固体電解質膜とアノードの水素透過金属膜を形成した後、焼結体の一部を固体電解質膜および水素透過金属膜が形成されていない面から除去して凹部を形成する加工を行う。この凹部は、酸素を三相界面近くに到達させる通路となる。カソードは、凹部を形成することにより、固体電解質膜とアノードの支持体とするために厚みが厚くなっても、凹部内を酸素が通過して凹部の底面に酸素が直ぐに到達するので、酸素は三相界面まで到達し易くなる。
凹部を形成する加工は、フォトリソグラフィーとAr+ミリングを用いた微細加工により行うこともできるし、マスクとAr+ミリングを用いた微細加工により行うこともできる。例えば、フォトリソグラフィーとAr+ミリングを用いる場合には、フォトリソグラフィーで、まず、多孔形状にパターン化し、Ar+ミリングにより多数の穴を形成して凹部を形成する。また、集束イオンビーム(FIB)を用いた微細加工を行うこともできる。
凹部の形状は、多孔構造とすることが好ましい。多孔構造は、例えば、焼結体における固体電解質膜が形成されていない面に開口するように、底面を有する凹部、または、貫通孔からなる凹部を多数形成して構成する。この多孔構造は、方形の穴が開口する網目状に形成することもできるし、六角形の穴が開口する網目状(ハニカム形状)や円形の穴が開口する網目状に形成することもできる。ハニカム形状にする場合には、多孔構造の部分の強度を上げることができるので、カソードは、凹部の底面部分の厚みが薄くても、または、凹部が貫通孔であっても、支持体としての強度を十分維持できる。また、凹部の形状は、長尺な穴や溝としてもよい。
本発明の水素分離膜型燃料電池セルは、従来のように、アノードを支持体とするのではなく、カソードを支持体として、カソードに固体電解質膜とアノードの水素透過金属膜を成膜して形成される。その結果、アノードとなる水素透過金属膜の厚みを従来に比べて薄くできるので、使用する水素透過金属の量を大幅に削減でき、コストの低廉化が可能になる。
さらに、本発明の水素分離膜型燃料電池セルの製造方法によれば、焼結体の平滑な面に固体電解質膜を形成するので、固体電解質膜を高密度で成膜することができる。その結果、固体電解質膜が薄膜であっても、プロトン化の効率が良く、発電評価のOCV値や電流密度の値も良好な値にできる。さらに、固体電解質膜が薄膜なので、プロトンの移動距離を短くでき、プロトン伝導の抵抗を下げられる。
しかも、焼結体の前記水素透過金属膜が形成されていない面から焼結体の一部を除去する加工を施して、凹部を形成しているので、この凹部内に酸素が流入して、凹部の底面、または、凹部が貫通孔の場合には固体電解質膜に酸素を到達させることができる。その結果、焼結体の厚みが厚くても、酸素を三相界面に到達させ易く、しかも、焼結体の凹部形成部分により、固体電解質膜とアノードの支持体として十分な強度が得られる。
さらに、本発明の水素分離膜型燃料電池セルの製造方法よれば、成膜された固体電解質膜の表面に水素透過金属膜を成膜しているので、固体電解質膜とアノードとの密着性を向上できる。
また、本発明では、水素透過金属膜の厚みは、0.01μm〜40μmとして膜の厚みを薄くしているので、材料費のコストの低廉化が図れるだけでなく、プロトン移動距離が短くなり、プロトン伝導の抵抗を下げられる。
なお、水素透過金属膜の厚みが0.01μmより薄いと、均一な膜厚が得られず、プロトン化の効率が悪く、発電評価のOCV値や電流密度の値が低下する傾向が強くなっていく。また、厚みが40μmより厚いと、コスト的に実用化するのは厳しく、プロトン伝導の抵抗も増大していく。
本発明の水素分離膜型燃料電池セルおよびその製造方法の実施形態を、図面に基づいて説明する。
本発明の製造方法で得られる水素分離膜型燃料電池セル1は、図1に示すように、焼結体21で形成されるカソード2と、このカソード2の一方の面に成膜して形成される固体電解質膜3と、固体電解質膜3の上に成膜して形成されるアノード4とを備える。
カソードは、電子伝導性を有するペロブスカイト型酸化物で形成されており、具体的には、La酸化物、Sr酸化物、Mn酸化物のそれぞれの化学量論比がLa0.6Sr0.4Mn03となる焼結体21により形成している。
また、固体電解質膜3は、プロトン伝導性を有するペロブスカイト型酸化物で形成されており、例えば、SrZr0.8In0.2O3の組成の酸化物や、BaZr0.8Yb0.203組成の酸化物で形成している。
アノード4は、水素透過金属からなる薄膜で形成されており、具体的には、Pdで形成している。
そして、カソード2は、図1に示すように、フォトリソグラフィーとAr+ミリングにより、固体電解質膜3が成膜されない面に開口するように多数の凹部22が形成された構造に微細加工されて、図2の平面図に示すように、格子状に形成されている。
以上のような構成の水素分離膜型燃料電池セル1の製造方法について、図3の製造工程図に基づいて説明する。
図3(a)に示すように、所定の大きさ、例えば、30mm×30mm×厚さ120μmのLa0.6Sr0.4Mn03の焼結体21を形成する。次に、焼結体21の下面を、図3(a)の仮想線(二点破線)で示す位置まで研磨して、図3(b)に示すように、焼結体21の厚みを約100μmにする。
焼結体21を研磨した後、図3(c)に示すように、この焼結体21の下面(研磨面)にイオンプレーティング(IP)法やスパッタリング法などの蒸着法によって、厚みが0.1μm〜5μmとなるように固体電解質膜3を成膜する。
次に、固体電解質膜3の上に、図3(d)に示すように、イオンプレーティング(IP)法やスパッタリング法などの蒸着法によって、厚みが0.01μm〜40μmとなるように水素透過金属膜41を成膜する。
例えば、IP法で成膜する場合は、O2プラズマ雰囲気下で、酸素分圧0.0133Pa(0.1mTorr)〜13.33Pa(100mTorr)、成膜温度100℃〜1000℃で成膜を行う。
なお、固体電解質膜3および水素透過金属膜41をスパッタリング法で成膜する場合には、高周波マグネトロンスパッタリング方式を用いることが、さらに好ましい。
固体電解質膜3と水素透過金属膜41の成膜が完了したら、焼結体21の膜が形成されていない面を、研磨、Ar+ミリング、または集束イオンビームを用いて、図3(d)の仮想線(二点破線)で示す位置まで削りとり、焼結体21の厚みを約50μmにする。その後、図3(f)に示すように、カソード2に対して、多孔構造となるように微細加工を施す。
微細加工は、具体的には、フォトリソグラフィーとAr+ミリングを用いたり、マスクとAr+ミリングを用いたり、集束イオンビームを用いたりして、前記焼結体21の固体電解質膜3が形成されていない面を、多孔を有するように凹部22を形成する加工を施す。
この微細加工により、図2に示すように、表面に多数の凹部22が形成されたカソード2が形成される。本実施形態では、カソード2における凹部22の底面部分は薄肉の厚みを有している。カソード2は、固体電解質膜3とアノード4とを支持するために所定の支持強度が得られながら、良好な酸素透過性が得られるように、凹部22の深さ、および、カソード2の全面積に対する凹部22の全面積の割合を設定する必要がある。具体的には、凹部22の深さは、焼結体21の厚みの80%〜100%となり、凹部22の全面積は、カソード2の全面積に対して30%〜80%となるように、微細加工を行うことが好ましい。
このように、微細加工が完了すると、図1および図2に示すような、水素分離膜型燃料電池セル1が完成する。
30mm×30mm×厚さ約50μmで、一方の面に多数の凹部が格子状に形成されたLa0.6Sr0.4Mn03の焼結体からなるカソードに、固体電解質膜が成膜され、固体電解質膜の上に、アノードとなるPd膜が膜厚を変えて成膜された種々の水素分離膜型燃料電池セルを作製した。これら燃料電池セルに対して、開回路電圧(OCV)と、0.5Vでの電流密度と、1000Hr後の固体電解質膜とアノードとの剥離の有無とを調べてみた。
本例では、カソードとなる焼結体を形成するため、まず、La酸化物、Sr酸化物、Mn酸化物をそれぞれの化学量論比がLa0.6Sr0.4Mn03になるように秤量した後、混合してペレット状に形成して、1000℃で2時間仮焼成した。仮焼成したペレット状のものを粉砕して、30mm×30mm×厚さ120μmの大きさのペレットを多数形成した後、1300℃で3時間本焼成を行って焼結体にした。そして、この焼結体の一方の面を、厚みが約100μmとなるまで研磨した。
次に、酸素分圧が1.333Pa(10mTorr)、成膜温度が600℃のO2プラズマ雰囲気下で、IP法により、焼結体の研磨面に、SrZr0.8In0.2O3の組成のペロブスカイト型酸化物の固体電解質膜を形成したものと、BaZr0.8Yb0.203組成のペロブスカイト型酸化物の固体電解質膜を形成したものを複数作製した。何れの固体電解質膜も、膜厚が2μmとなるようにした。
さらに、固体電解質膜の成膜条件と同じ条件でIP法を用いて、アノードとなるPd膜を各固体電解質膜上に成膜した。
Pd膜の膜厚は、0.005μm(試料1、試料2)、0.01μm(試料3、試料4)、0.2μm(試料5、試料6)、1.0μm(試料7、試料8)、10.0μm(試料9、試料10)、40.0μm(試料11、試料12)となるように成膜した。
Pd膜を成膜した後、厚み約100μmの焼結体を厚みが約50μmとなるまで、焼結体の固体電解質膜が形成されていない面を研磨して削り取った。その後、焼結体の固体電解質膜が形成されていない面に、フォトリソグラフィーを用いて格子状にパターン化した後、Ar+ミリングを用いてエッチングし、カソードを微細加工により多孔化した。微細加工による凹部の形成は、格子の幅が1μm、格子間隔が3μm、凹部の深さが40μmとなるように加工した。この時の凹部の面積はカソードの全面積に対して約56%の割合であった。
これら試料1〜12とは別に、Pd膜の膜厚が100.0μmとなるように、特許文献3の製造方法により、多孔性基板上に膜厚が100.0μmのPd膜が接着されたアノードを2つ形成した。そして、一方のアノードのPd膜上にSrZr0.8In0.2O3の組成のペロブスカイト型酸化物の固体電解質膜を形成し、他方のアノードのPd膜上にBaZr0.8Yb0.203組成のペロブスカイト型酸化物の固体電解質膜を形成した。これら固体電解質膜にAgの網をAgペーストを用いて接着してカソードを形成し、2つの水素分離膜型燃料電池セルを形成した(試料13、試料14)。
以上の試料1〜14を以下の条件で発電評価試験を行った。発電評価試験は、カソード側に加湿大気、アノード側に水素ガスを流して、400℃×1000Hr発電を行い、開回路電圧(OCV)測定、0.5Vでの電流密度(Jv=0.5)の測定、1000Hr後の固体電解質膜とアノード電極との剥離の有無を調べた。また、試料13、試料14のアノードの膜厚が100.0μmのときのPdのコストを1とした場合のPdコストの比率も調べた。その結果を以下の表1に示す。
Figure 2007173104
表1の結果から、Pdを薄膜化(0.01μm〜40μm)することにより、従来の膜厚を100μmとしていた場合に比較して、大幅にPd量を削減でき、コストの低廉化が図れた。さらに、薄膜化により、プロトン移動距離が短くなるので、プロトン伝導の抵抗を下げることができた。しかも、固体電解質膜とアノードとの密着性も良好であった。
これに対し、Pd膜の膜厚が0.01μmより小さいと、OCV値と電流密度が低下してしまった。また、Pd膜の膜厚が100μmだと、電流密度が低下し、しかも、固体電解質膜とアノードとが剥離してしまった。
また、表2に示すように、電解質の種類、Pd膜の膜厚を試料3と同じ条件で、カソードの全面積に対する凹部の全面積の割合を変えて、試料3と同じ製造工程により電池セルを形成した。電池セルは、カソードの凹部の面積が、焼結体の平面視の全体面積に対して、56%のもの(試料3)、10%のもの(試料15)、90%のもの(試料16)を作製した。
Figure 2007173104
表2の結果から、凹部の面積がカソード全面積の30%より小さい試料15(面積の割合10%)は、固体電解質膜とアノードとの剥離は起こらなかったが、十分な量の酸素を透過させることができず、十分な電流密度が得られなかった。凹部の面積がカソード全面積の80%より大きい試料16(面積の割合90%)は、固体電解質膜とアノードの支持体として十分な強度が得られず、破損してしまった。
本発明の水素分離膜型燃料電池セルは、電気自動車や一般家庭に用いられる燃料電池として用いる場合に好適である。
本発明の水素分離膜型燃料電池セルの部分断面図である。 図1に示す水素分離膜型燃料電池セルの部分平面図である。 本発明の水素分離膜型燃料電池セルの製造方法における製造工程を示す説明図である。
符号の説明
1 水素分離膜型燃料電池セル
2 カソード
21 焼結体 22 凹部
3 固体電解質膜
4 アノード
41 水素透過金属膜

Claims (5)

  1. 電子伝導性を有するペロブスカイト型酸化物の焼結体で形成されるカソードと、
    このカソードの一方の面に成膜して形成され、プロトン伝導性を有するペロブスカイト型酸化物の固体電解質膜と、
    固体電解質膜の上に成膜して形成され、水素透過金属膜からなるアノードとを備え、
    カソードは、固体電解質膜が形成されない側に開口する多数の凹部が形成されており、
    水素透過金属膜は、厚みが0.01μm〜40μmであることを特徴とする水素分離膜型燃料電池セル。
  2. 前記カソードの凹部が貫通孔であることを特徴とする請求項1に記載の水素分離膜型燃料電池セル。
  3. 前記カソードは、平面視におけるカソード全体面積に対する凹部の面積の割合が30%〜80%であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の水素分離膜型燃料電池セル。
  4. 前記水素透過金属膜は、Pd、Nb、Ta、Vから選択される少なくとも1種の元素を含有することを特徴とする請求項1から請求項3に何れかに記載の水素分離膜型燃料電池セル。
  5. カソードの一方の面に固体電解質膜を形成し、さらに固体電解質膜の上にアノードを形成して製造される水素分離膜型燃料電池セルの製造方法であって、
    1) 電子伝導性を有するペロブスカイト型酸化物を、所定の板状に成形した後に焼結する工程、
    2) 前記焼結体の一方の面を研磨する工程、
    3) 前記焼結体の研磨された面上に、プロトン伝導性を有するペロブスカイト型酸化物を成膜して固体電解質膜を形成する工程、
    4) 前記固体電解質膜の面上に、膜厚が0.01μm〜40μmとなるように水素透過金属を成膜して水素透過金属膜からなるアノードを形成する工程、
    5) 前記焼結体の前記水素透過金属膜が形成されていない面から焼結体の一部を除去する加工を施して、固体電解質膜が形成されない側に開口する多数の凹部を有するカソードを形成する工程、
    を有することを特徴とする水素分離膜型燃料電池セルの製造方法。
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