JP2007198160A - エンジンの補機取付構造 - Google Patents

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卓司 笹田
Osamu Tsuroo
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Abstract

【課題】 燃料ポンプをエンジン本体の膨出部に取り付け、エンジン本体の前部に固定したウォータポンプハウジングを利用して、膨出部とウォータポンプハウジングの支持剛性を高め、膨出部の前後方向の振動を抑制し、膨出部とウォータポンプハウジングとの組み付け性を保持することができる、エンジンの補機取付構造を提供する。
【解決手段】 エンジン本体2の前部のタイミングケース12に一側方へ膨出する膨出部12bが設けられ、膨出部12bに燃料ポンプ4が取り付けられ、燃料ポンプ4よりも上側のエンジン本体2の部位にウォータポンプハウジング45が固定され、膨出部12bとウォータポンプハウジング45とに互いに連結可能な1対の第1,第2支持部50,51が形成され、拘束手段55により、第1,第2支持部50,51が左右方向以外の前後方向を含む方向へ相対移動不能に拘束されている。
【選択図】 図2

Description

本発明は、エンジンの補機取付構造に関し、特に、エンジン本体の前部に一側方へ膨出する膨出部を設け、この膨出部に燃料ポンプを取り付けるようにしたものである。
従来、燃焼室に燃料を直接噴射するエンジンに採用されている高圧の燃料ポンプは、比較的大型で高圧対応のため重量も大きく、エンジン本体の前部の一側面に専用のブラケットを介して取り付けられ、エンジンの回転を動力源としてタイミングベルト等を介して駆動される(例えば、特許文献1、2参照)。
また、本願出願人は、エンジン本体の前部にチェーンケースを設け、このチェーンケースに燃料ポンプ等をチェーン駆動する駆動系を収容して設けたエンジンの補機取付構造において、このチェーンケースに一側方へ膨出する膨出部を一体的に設け、この膨出部の後側の取付面に燃料ポンプを取り付けた構造を実用化しつつある。
特開平11−324698号公報 特開平8−86222号公報
エンジン本体の前部の側面には、燃料ポンプの他に種々の補機類が取り付けられるため、特許文献1,2のように、燃料ポンプをエンジン本体の一側面に専用のブラケットを介して取り付けるものでは、これら補機類のレイアウトの自由度が低くなり、それがエンジン開発のネックにもなる。そこで、本願出願人が実用化しつつある前記補機取付構造では、燃料ポンプをチェーンケースの膨出部に取り付けるので、前記課題を軽減できる。
しかし、この補機取付構造では、燃料ポンプが膨出部を介してエンジン本体に片持ち状に支持された状態になるため、そして、燃料ポンプは高圧に駆動され、しかも重量も大きいため、この燃料ポンプを取り付けた膨出部が前後方向に振動し易いという問題があり、これにより、膨出部の振動音が大きくなり、膨出部が劣化し易くなり、更に、チェーンケースの膨出部の近傍に取り付けた補機類が正常に動作しないという虞も生じる。
本発明の目的は、専用のブラケット等を用いることなく、燃料ポンプをエンジン本体の膨出部に取り付け、エンジン本体の前部に固定したウォータポンプハウジングを利用して、膨出部とウォータポンプハウジングを連結してこれらの支持剛性を高め、膨出部の前後方向の振動を抑制し、膨出部とウォータポンプハウジングとの組み付け性を保持することができる、エンジンの補機取付構造を提供することである。
請求項1のエンジンの補機取付構造は、エンジン本体の前部に一側方へ膨出する膨出部を設け、この膨出部を含むエンジン本体の前面側をチェーンカバーで覆い、エンジンクランク軸によりチェーン駆動される燃料ポンプを膨出部の後側の取付面に取り付けたエンジンの補機取付構造において、前記エンジン本体の前部のうち燃料ポンプよりも上側の部位に、ウォータポンプのウォータポンプハウジングが固定され、前記膨出部とウォータポンプハウジングとに、前記膨出部の近傍において互いに連結可能な1対の支持部が形成され、前記1対の支持部を少なくとも前後方向へ相対移動不能に拘束する拘束手段を備えたことを特徴とする。
このエンジンの補機取付構造では、エンジン本体の前部に一側方へ膨出する膨出部が設けられ、この膨出部の後側の取付面に燃料ポンプが取り付けられて、燃料ポンプがエンジンクランク軸によりチェーン駆動され、この燃料ポンプにより燃焼室に燃料を直接噴射することが可能になる。ここで、膨出部を含むエンジン本体の前面側に、燃料ポンプを含む所定の補機類(カムシャフト等)をチェーン駆動するチェーン駆動系を配設し、このチェーン駆動系の少なくとも一部をチェーンカバーにより覆うことができる。
また、エンジン本体の前部のうち燃料ポンプよりも上側の部位に、ウォータポンプのウォータポンプハウジングが固定され、ウォータポンプをエンジンクランク軸により駆動し、このウォータポンプによりラジエータ等に冷却水を循環供給させることが可能になる。ここで、チェーンカバーの前面側に、ウォータポンプを含む所定の補機類(オルタネータ、エアコンコンプレッサ等)をベルト駆動するベルト駆動系を配設することができる。
膨出部とウォータポンプハウジングに1対の支持部が形成され、1対の連結部を膨出部の近傍において互いに連結して、膨出部とウォータポンプハウジングの支持剛性を高くし、燃料ポンプとウォータポンプハウジングの取付強度を向上させることができる。そして、燃料ポンプが高圧に駆動され、しかも重量も大きいということに対して、拘束手段により、1対の支持部が少なくとも前後方向へ相対移動不能に拘束されるため、燃料ポンプを取り付けた膨出部の少なくとも前後方向への振動が抑制される。
ここで、請求項1の発明に次の構成を採用可能である。
前記膨出部が、前記エンジン本体のシリンダブロックと別体に形成されシリンダブロックに固定されたタイミングケースに設けられ、このタイミングケースと前記チェーンカバーが、軽金属合金からなるダイキャスト成形品で構成される(請求項2)。
前記1対の支持部がエンジン幅方向又は上下方向に接近対向するように突出状に形成され、前記拘束手段が、前記1対の支持部の一方にエンジン幅方向又は上下方向へ軸線を向けて固定されたボルト部材と、前記1対の支持部の他方に形成されて前記ボルト部材が軸線直交方向へ相対移動不能に且つ軸線方向へ所定量だけ相対移動可能に挿通される規制孔とを有する(請求項3)。
前記拘束手段が、前記1対の支持部に両端部が連結される連結部材と、この連結部材の一端部を前記1対の支持部の一方に固定する第1ボルト部材と、前記1対の支持部の他方に固定された第2ボルト部材と、前記連結部材の他端部に形成されて前記第2ボルト部材が上下方向又はエンジン幅方向へ所定量だけ相対移動可能に挿通される長孔とを有する(請求項4)。
前記取付面が膨出部のうちの後方へ突出した環状部分に形成され、この取付面の上側に膨出部側の支持部が設けられる(請求項5)。前記チェーンカバーのうち膨出部に対応する部分に、補機駆動用のベルトに張力を付与するテンショナが設けられる(請求項6)。
請求項1のエンジンの補機取付構造によれば、エンジン本体の前部に一側方へ膨出する膨出部を設け、この膨出部の後側の取付面に燃料ポンプを取り付けたので、専用のブラケット等を用いることなく、燃料ポンプをエンジン本体の一側面側に取り付けることができ、しかも、エンジン本体の前部のうち燃料ポンプよりも上側の部位に、ウォータポンプのウォータポンプハウジングを固定し、このウォータポンプハウジングを利用して、膨出部とウォータポンプハウジングとに、膨出部の近傍において互いに連結可能な1対の支持部を形成したので、これら支持部を連結して、膨出部とウォータポンプハウジングの支持剛性を高くして、燃料ポンプとウォータポンプハウジングの取付強度を向上させ、特に、1対の支持部を少なくとも前後方向へ相対移動不能に拘束する拘束手段を設けたので、燃料ポンプは高圧に駆動され、しかも重量も大きいということに対して、この燃料ポンプを取り付けた膨出部が少なくとも前後方向に振動することを抑制することができる。
請求項2のエンジンの補機取付構造によれば、膨出部を、エンジン本体のシリンダブロックと別体に形成されシリンダブロックに固定されたタイミングケースに設け、このタイミングケースとチェーンカバーを、軽金属合金からなるダイキャスト成形品で構成したので、膨出部を有するタイミングケースとチェーンカバーとを簡単に成形して、エンジンの製造負荷を軽減して軽量化を図ることができ、タイミングケースには、所定の補機類を駆動する駆動系を収容して配設することができる。
請求項3のエンジンの補機取付構造によれば、1対の支持部をエンジン幅方向又は上下方向に接近対向させるように突出状に形成したので、1対の支持部を簡単に確実に連結することができ、拘束手段が、1対の支持部の一方にエンジン幅方向又は上下方向へ軸線を向けて固定されたボルト部材と、1対の支持部の他方に形成されてボルト部材が軸線直交方向へ相対移動不能に且つ軸線方向へ所定量だけ相対移動可能に挿通される規制孔とを有するので、膨出部が前後方向に振動することを確実に抑制すると共に、膨出部とウォータポンプハウジングとの前記軸線方向(エンジン幅方向又は上下方向)への組み付け位置のバラツキを吸収して、これらの組み付け性を保持することができる。
請求項4のエンジンの補機取付構造によれば、拘束手段が、1対の支持部に両端部が連結される連結部材と、この連結部材の一端部を1対の支持部の一方に固定する第1ボルト部材と、1対の支持部の他方に固定された第2ボルト部材と、連結部材の他端部に形成されて第2ボルト部材が上下方向又はエンジン幅方向へ所定量だけ相対移動可能に挿通される長孔とを有するので、膨出部とウォータポンプハウジングに、1対の支持部を大きく突出させた形状とすることなく余裕のあるスペースに設けて形状を簡単化して、1対の支持部を連結部材を介して連結でき、膨出部が少なくとも前後方向に振動することを確実に抑制すると共に、膨出部とウォータポンプハウジングとの上下方向又はエンジン幅方向への組み付け位置のバラツキを吸収して、これらの組み付け性を保持することができる。
請求項5のエンジンの補機取付構造によれば、取付面を膨出部のうちの後方へ突出した環状部分に形成したので、燃料ポンプを取り付ける部分の膨出部の強度・剛性を確実に高めることができ、この取付面の上側に膨出部側の支持部を設けたので、この支持部を環状部分を利用して簡単に且つ高強度に形成し、燃料ポンプの振動源付近において1対の支持部を連結して、膨出部の振動を確実に抑制することができる。
請求項6のエンジンの補機取付構造によれば、チェーンカバーのうち膨出部に対応する部分に、補機駆動用のベルトに張力を付与するテンショナを設けたので、前記のように、膨出部の振動を抑制できることから、テンショナを含む補機駆動系を正常に作動させることが可能になる。
本発明のエンジンの補機取付構造は、エンジン本体の前部に一側方へ膨出する膨出部を設け、この膨出部を含むエンジン本体の前面側をチェーンカバーで覆い、エンジンクランク軸によりチェーン駆動される燃料ポンプを膨出部の後側の取付面に取り付け、エンジン本体の前部のうち燃料ポンプよりも上側の部位に、ウォータポンプのウォータポンプハウジングを固定し、膨出部とウォータポンプハウジングとに、膨出部の近傍において互いに連結可能な1対の支持部が形成し、1対の支持部を少なくとも前後方向へ相対移動不能に拘束する拘束手段を備えたものである。
図1〜図6に示すように、エンジン1は、エンジン本体2と、エンジン本体2の前面側を覆うチェーンカバー3と、複数の補機類とを備え、複数の気筒(例えば、4気筒)の燃焼室に、複数(例えば、4つ)のインジェクタ(図示略)により燃料を夫々直接噴射する直噴ディーゼルエンジンである。尚、図1〜図4の矢印で示す上方と前方と左方を、上方と前方と左右として説明する。
前記複数の補機類として、燃料ポンプ4、ウォータポンプ5、オルタネータ6、1対のカムシャフト(図示略)、エンジンバランサ(図示略)、A/Cコンプレッサ(図示略)等が設けられ、エンジン1のクランク軸1aの回転により、燃料ポンプ4と1対のカムシャフトとエンジンバランサを駆動するチェーン駆動系7と、ウォータポンプ5とオルタネータ6とA/Cコンプレッサをベルト駆動するベルト駆動系8が設けられている。
エンジン本体2は、シリンダブロック10と、シリンダブロック10に載置固定されたシリンダヘッド11と、シリンダブロック10と別体に形成されシリンダブロック10の前面に固定されたタイミングケース12とを備え、シリンダブロック10の下側にアッパオイルパン12が固定され、アッパオイルパン12の下側にロアオイルパン13が固定され、少なくともタイミングケース12とチェーンカバー3は軽金属合金(例えば、アルミニウム合金、マグネシウム合金等)からなるダイキャスト成形品で構成されている。
シリンダヘッド11の上部はシリンダヘッドカバー15により外部に対して油密に保持され、シリンダヘッドカバー15の内部に1対のカムシャフトが前後方向向きに配設され回転自在に支持されている。シリンダヘッド11には複数の気筒に対応する部位に複数のインジェクタが貫通状に直立配置され、燃料ポンプ4により加圧された燃料が燃料供給通路4aを介して複数のインジェクタに供給される。
タイミングケース12は、シリンダブロック10と略同じ正面視形状をなすケース本体部12aを有し、ケース本体部12aの上下方向中央部分に膨出部12bが一体形成されてケース本体部12aから右方へ膨出している。チェーンカバー3は、タイミングケース12よりも上下に長い形状をなし、シリンダヘッド11とシリンダブロック10とオイルパン13,14のバランサ取付部の前面と共にタイミングケース12の前面を覆い、タイミングケース12とチェーンカバー3との間にチェーン駆動系7が配設され、チェーンカバー3の前側にベルト駆動系8が配設されている。
図4、図5に示すように、チェーン駆動系7には、クランク軸1aに連動連結された駆動2段スプロケット20、バランサ用のバランサ駆動スプロケット21、中間2段スプロケット22、燃料ポンプ4用の燃料ポンプ駆動スプロケット23、1対のカムシャフト用のカムシャフト駆動スプロケット25,26が、図示のように配設されて、スプロケット20,21に無端チェーン27が掛装され、スプロケット20,22,23に無端チェーン28が掛装され、スプロケット22,25,26に無端チェーン29が掛装され、クランク軸1aの回転と同期してチェーン駆動系7が駆動される。
図1、図5に示すように、ベルト駆動系8には、クランク軸1aに連動連結された駆動プーリ30、A/Cコンプレッサ用のA/Cコンプレッサ駆動プーリ31、ウォータポンプ5用のウォータポンプ駆動プーリ32、オルタネータ6用のオルタネータ駆動プーリ33、アイドルプーリ34,35、テンショナプーリ36が、図示のように配設されて、プーリ30〜36に無端ベルト38が掛装され、クランク軸1aの回転と同期してベルト駆動系8が駆動される。
図1、図4、図5に示すように、燃料ポンプ駆動スプロケット23は、膨出部12bに配設され、オルタネータ駆動プーリ33とウォータポンプ駆動プーリ32は、エンジン本体2の右側において膨出部12bの上側に上下に配設され、A/Cコンプレッサ駆動プーリ31は、エンジン本体2の右側において膨出部12bの下側に配設され、テンショナプーリ36は膨出部12bの前側に配設されている。
図1に示すように、テンショナプーリ36、アジャスタアーム41、ダンパ42等で、無端ベルト37に張力を付与するテンショナ40が構成され、チェーンカバー3のうち膨出部12bに対応する部分の右端部分に、アジャスタアーム41の中間部が回動自在に支持されると共に、ダンパ42の基端部が回動自在に支持され、アジャスタアーム41の先端部にテンショナプーリ36が回転自在に支持され、アジャスタアーム41の基端部とダンパ42の先端部が回動自在に連結されている。こうして、テンショナ40はチェーンカバー3のうち膨出部12bに対応する部分に設けられている。
次に、エンジン1のエンジン本体2に、燃料ポンプ4とウォータポンプ5を取り付ける構造について説明する。図2、図6、図7に示すように、タイミングケース12の膨出部12bには、環状部分12cが他の膨出部12bの部分よりも後方へ突出するように形成されて、この環状部分12cの周囲に複数のリブ12dが形成され、燃料ポンプ4は、環状部分12cに後側からボルト締結されて、環状部分12cの後端の環状の取付面12eに当接状に取り付けられている。
燃料ポンプ4の駆動入力軸4aが環状部分12cを含む膨出部12bを挿通して前方へ延び、駆動入力軸4aの前端部に燃料ポンプ駆動スプロケット23が取り付けられ、チェーン駆動系7が駆動されると、燃料ポンプ駆動スプロケット23が回転して燃料ポンプ4が駆動され、燃料ポンプ4から高圧の燃料が複数のインジェクタに供給される。
図2、図3、図6に示すように、ウォータポンプ5はウォータポンプハウジング45に設けられ、ウォータポンプハウジング45は、側面視台形状のブラケット部45aを有し、ブラケット部45aがエンジン本体2(シリンダブロック10)の前部のうち燃料ポンプ4よりも上側の部位にボルト締結され取り付けられている。
ウォータポンプハウジング45は前後方向と直交する鉛直方向に張り出すフランジ部45bを有し、ウォータポンプ5の駆動入力軸5aがフランジ部45bよりも前方へ突出し、駆動入力軸5aの前端部にウォータポンプ駆動プーリ32が取り付けられ、ベルト駆動系8が駆動されると、ウォータポンププーリ32が回転してウォータポンプ5が駆動され、ウォータポンプ5から冷却水がラジエータ(図示略)等に循環供給される。
ところで、図2、図3、図6〜図8に示すように、タイミングケース12の膨出部12bとウォータポンプハウジング45には、膨出部12bの近傍において互いに連結可能な1対の第1,第2支持部50,51が形成され、第1,第2支持部50,51を少なくとも前後方向へ相対移動不能に拘束する拘束手段55を備えている。
第1,第2支持部50,51はエンジン幅方向(左右方向)に接近対向するように突出状に形成され、詳細には、第1支持部50は、膨出部12bの取付面12eを形成する環状部分12cの上部に上方突出状に一体的に形成され、例えば、ウォータポンプハウジング45のフランジ部45bと膨出部12bは上下に並設されるので、第2支持部51は、ウォータポンプハウジング45のフランジ部45bの下部に下方突出状に一体的に形成されて、第1支持部50に右側から対向する。
拘束手段55は、第1支持部50に左右方向へ軸線を向けて先端部分が右側から螺合され固定されたボルト部材56と、第2支持部51に形成されてボルト部材56が軸線直交方向(左右方向以外の方向)へ相対移動不能に且つ軸線方向へ所定量だけ相対移動可能に筒状の合成樹脂製のカラー部材57を介して挿通される規制孔58とを有する。
カラー部材57は、挿通孔58よりも長い(例えば、挿通孔58の1.5倍の)長さを有し、挿通孔58に左右方向に摺動自在に内嵌され、ボルト部材56はカラー部材57に内嵌されている。ボルト部材56の頭部56aはカラー部材57及び挿通孔58よりも大径に形成され、ボルト部材56の先端部分が第2支持部51に螺合されて、ボルト部材56の頭部56aと第2支持部51とでカラー部材57が挟持されて、ボルト部材56とカラー部材57と第2支持部51が一体化され、第1支持部50に対して軸線方向へ所定量だけ相対移動可能になる。
以上説明したエンジン1の補機取付構造によれば次の効果を奏する。
エンジン本体2の前部に右方へ膨出する膨出部12bを設け、膨出部12bの後側の取付面12eに燃料ポンプ4を取り付けたので、専用のブラケット等を用いることなく、燃料ポンプ4をエンジン本体2の右側に取り付けることができ、しかも、エンジン本体2の前部のうち燃料ポンプ4よりも上側の部位に、ウォータポンプ5のウォータポンプハウジング45を固定し、このウォータポンプハウジング45を利用して、膨出部12bとウォータポンプハウジング45とに、膨出部12bの近傍において互いに連結可能な1対の第1,第2支持部50,51を形成した。
従って、第1,第2支持部50,51を連結して、膨出部12bとウォータポンプハウジング45の支持剛性を高くして、燃料ポンプ4とウォータポンプハウジング45の取付強度を向上させ、特に、第1,第2支持部50,51を少なくとも前後方向へ相対移動不能に拘束する拘束手段55を設けたので、燃料ポンプ4は高圧に駆動され、しかも重量も大きいということに対して、燃料ポンプ4を取り付けた膨出部12bが少なくとも前後方向に振動することを抑制することができ、その結果、燃料ポンプ4が作動することによる膨出部12bの振動音を軽減し、膨出部12bの劣化を抑えることが可能になる。
膨出部12bを、エンジン本体2のシリンダブロック10と別体に形成されシリンダブロック10に固定されたタイミングケース12に設け、タイミングケース12とチェーンカバー3を、軽金属合金からなるダイキャスト成形品で構成したので、膨出部12bを有するタイミングケース12とチェーンカバー3とを簡単に成形して、エンジン1の製造負荷を軽減して軽量化を図ることができ、タイミングケース12には、所定の補機類を駆動するチェーン駆動系7を収容して配設することができる。
第1,第2支持部50,51を左右方向に接近対向させるように突出状に形成したので、第1,第2支持部50,51を簡単に確実に連結することができ、拘束手段55が、第2支持部51に左右方向へ軸線を向けて固定されたボルト部材56と、第1支持部50に形成されてボルト部材56が軸線直交方向へ相対移動不能に且つ軸線方向へ所定量だけ相対移動可能に挿通される規制孔58とを有するので、膨出部12bが前後方向に振動することを確実に抑制すると共に、膨出部12bとウォータポンプハウジング45との左右方向への組み付け位置のバラツキを吸収して、膨出部12bとウォータポンプハウジング45の組み付け性を保持することができる。
取付面12eを膨出部12bのうちの後方へ突出した環状部分12cに形成し、更に、環状部分12cの周囲に補強用の複数のリブ12dを設けたので、燃料ポンプ4を取り付ける部分の膨出部12bの強度・剛性を確実に高めることができ、取付面12eを有する環状部分12cの上側に第1支持部50を設けたので、第1支持部50を環状部分12cを利用して簡単に且つ高強度に形成し、燃料ポンプ4の振動源付近において第1,第2支持部50,51を連結して、膨出部12bの振動を確実に抑制することができる。
チェーンカバー3のうち膨出部12bに対応する部分に、補機駆動用のベルト駆動系8のベルト37に張力を付与するテンショナ40を設けたので、前記のように、膨出部12bの振動を抑制できることから、テンショナ40を含む補機駆動系を正常に作動させることが可能になる。
尚、実施例1の拘束手段55においては、第2支持部51に左右方向へ軸線を向けて先端部分が左側から螺合され固定されたボルト部材と、第1支持部50に形成されてボルト部材が軸線直交方向へ相対移動不能に且つ軸線方向へ所定量だけ相対移動可能に筒状の合成樹脂製のカラー部材を介して挿通される規制孔とを有するものに変更してもよい。また、カラー部材を省略して、ボルト部材を挿通孔に摺動自在に内嵌させてもよい。
実施例2のエンジン1の補機取付構造は、実施例1の第1,第2支持部50,51と拘束手段55を変更したものであり、実施例1と基本的に同じものには同一符号を付して説明する。図9〜図11に示すように、このエンジン1の補機取付構造では、タイミングケース12の膨出部12bとウォータポンプハウジング45に、膨出部12bの近傍において互いに連結可能な1対の第1,第2支持部60,61が形成され、第1,第2支持部60,61を少なくとも前後方向へ相対移動不能に拘束する拘束手段65を備えている。
第1,第2支持部60,61は上下に接近対向するように突出状に形成され、詳細には、例えば、第1支持部60は、膨出部12bのうち環状部分12cの上側部位に水平突出状に一体的に形成され、第2支持部61は、ウォータポンプハウジング45のフランジ部45bの下部に水平突出状に一体的に形成されて、第1支持部60に上側から対向する。
拘束手段65は、第1支持部60に上下方向へ軸線を向けて先端部分が上側から螺合され固定されたボルト部材66と、第2支持部61に形成されてボルト部材66が軸線直交方向へ相対移動不能に且つ軸線方向へ所定量だけ相対移動可能に筒状の合成樹脂製のカラー部材67を介して挿通される規制孔68とを有する。ボルト部材66とカラー部材67と挿通孔68の構成は基本的に実施例1と同様である。
このエンジン1の補機取付構造によれば、第1,第2支持部60,61を上下方向に接近対向させるように突出状に形成したので、第1,第2支持部60,61を簡単に確実に連結することができ、拘束手段65が、第1支持部60に上下方向へ軸線を向けて固定されたボルト部材66と、第2支持部61に形成されてボルト部材66が軸線直交方向へ相対移動不能に且つ軸線方向へ所定量だけ相対移動可能に挿通される規制孔68とを有するので、膨出部12bが前後方向に振動することを確実に抑制すると共に、膨出部12bとウォータポンプハウジング45との上下方向への組み付け位置のバラツキを吸収して、膨出部12bとウォータポンプハウジング45の組み付け性を保持することができる。その他の効果は実施例1と基本的に同様の効果を奏する。
尚、実施例2の拘束手段65においては、第2支持部61に上下方向へ軸線を向けて先端部分が下側から螺合され固定されたボルト部材と、第1支持部60に形成されてボルト部材が軸線直交方向へ相対移動不能に且つ軸線方向へ所定量だけ相対移動可能に筒状の合成樹脂製のカラー部材を介して挿通される規制孔とを有するものに変更してもよい。また、カラー部材を省略して、ボルト部材を挿通孔に摺動自在に内嵌させてもよい。
実施例3のエンジン1の補機取付構造は、実施例1の第1,第2支持部50,51と拘束手段55を変更したものであり、実施例1と基本的に同じものには同一符号を付して説明する。図12〜図14に示すように、このエンジン1の補機取付構造では、第1,第2支持部70,71は接近対向せず、例えば、膨出部12bの上部に第1支持部70が設けられ、ウォータポンプハウジング45の下部に第2支持部71が設けられている。
拘束手段75は、第1,第2支持部70,71に両端部が連結される連結部材76と、連結部材76の一端部を第1支持部70に固定する第1ボルト部材77と、第2支持部71に固定された第2ボルト部材78と、連結部材76の他端部に形成されて第2ボルト部材78が上下方向へ所定量だけ相対移動可能に挿通される長孔79とを有する。
第1支持部70は第2支持部71よりも右側且つ下側に位置して、第1支持部70の支持面が上向きに形成され、第2支持部71の支持面が右向きに形成されている。連結部材76が下部の水平部76aと水平部76aから立ち上がる鉛直部76bとを有するL形に形成され、水平部76aの端部が第1支持部70に上側から接近対向して、第1ボルト部材77が水平部76aに上側から挿通され第1支持部70に螺合されて、水平部76aが第1支持部70に固定され、鉛直部76bの端部が第2支持部71に右側から接近対向して、鉛直部76bの端部に上下に長い長孔79が形成され、第2ボルト部材78が長孔79に右側から挿通され第2支持部71に螺合されている。
このエンジン1の補機取付構造によれば、膨出部12bとウォータポンプハウジング45に、第1,第2支持部70,71を大きく突出させた形状とすることなくスペース的に余裕のある箇所に設けて形状を簡単化して、第1,第2支持部70,71を連結部材76を介して連結でき、膨出部12bが少なくとも前後方向に振動することを確実に抑制すると共に、膨出部12bとウォータポンプハウジング45との上下方向への組み付け位置のバラツキを吸収して、膨出部12bとウォータポンプハウジング45の組み付け性を保持でき、最終的に、第2ボルト部材78を締めて、第1,第2支持部70,71を強固に固定することができる。その他の効果は実施例1と基本的に同様の効果を奏する。
尚、実施例3の拘束手段75においては、連結部材76に、上下に長い前記長孔79の代わりに、左右に長い長孔を形成するように変更してもよく、この場合、膨出部12bとウォータポンプハウジング45との左右方向への組み付け位置のバラツキを吸収して、膨出部12bとウォータポンプハウジング45の組み付け性を保持することができる。
また、実施例3の拘束手段75においては、第2支持部71が、第2ボルト部材78が貫通可能な厚さに形成されている場合には、連結部材76の鉛直部76bに固定された第2ボルト部材と、第2支持部71に形成されて第2ボルト部材が上下方向又は左右方向へ所定量だけ相対移動可能に挿通される長孔とを有するものに変更してもよい。
更に、実施例3の拘束手段75においては、連結部材76の鉛直部76bを第2支持部71に固定する第1ボルト部材と、第1支持部70に固定された第2ボルト部材と、連結部材76の水平部76aに形成されて第2ボルト部材が左右方向へ所定量だけ相対移動可能に挿通される長孔とを有するものに変更してもよい。
尚、膨出部12bをタイミングケース12ではなく、シリンダブロック10に一体的に設けることが可能である。その他、本発明のエンジンの補機取付構造については、前記開示事項以外の種々の変更を付加して実施可能であり、また、種々の直噴ディーゼルエンジン、或いは、直噴ガソリンエンジンに適用することができる。
実施例1のエンジンの正面図である。 エンジンの前部の側面図である。 エンジンの前部の要部の前方斜め上側からの斜視図である。 ベルト駆動系の正面図である。 エンジンの前部の要部の前方斜め上側からの斜視図である。 エンジンの前部の要部の後方斜め下側からの斜視図である。 エンジンの前部の要部の背面図である。 拘束手段の断面図である。 実施例2のエンジンの前部の要部の側面図である。 エンジンの前部の要部の背面図である。 拘束手段の断面図である。 実施例3のエンジンの前部の要部の側面図である。 エンジンの前部の要部の背面図である。 拘束手段の断面図である。
符号の説明
1 エンジン
1a クランク軸
2 エンジン本体
3 チェーンカバー
4 燃料ポンプ
5 ウォータポンプ
10 シリンダブロック
12 タイミングケース
12b 膨出部
12e 取付面
37 ベルト
40 テンショナ
45 ウォータポンプハウジング
50,60,70 第1支持部
51,61,71 第2支持部
55,65,75 拘束手段
56 ,66 ボルト部材
58,68 規制孔
76 連結部材
77 第1ボルト部材
78 第2ボルト部材
79 長孔

Claims (6)

  1. エンジン本体の前部に一側方へ膨出する膨出部を設け、この膨出部を含むエンジン本体の前面側をチェーンカバーで覆い、エンジンクランク軸によりチェーン駆動される燃料ポンプを膨出部の後側の取付面に取り付けたエンジンの補機取付構造において、
    前記エンジン本体の前部のうち燃料ポンプよりも上側の部位に、ウォータポンプのウォータポンプハウジングが固定され、
    前記膨出部とウォータポンプハウジングとに、前記膨出部の近傍において互いに連結可能な1対の支持部が形成され、
    前記1対の支持部を少なくとも前後方向へ相対移動不能に拘束する拘束手段を備えたことを特徴とするエンジンの補機取付構造。
  2. 前記膨出部が、前記エンジン本体のシリンダブロックと別体に形成されシリンダブロックに固定されたタイミングケースに設けられ、このタイミングケースと前記チェーンカバーが、軽金属合金からなるダイキャスト成形品で構成されたことを特徴とする請求項1に記載のエンジンの補機取付構造。
  3. 前記1対の支持部がエンジン幅方向又は上下方向に接近対向するように突出状に形成され、
    前記拘束手段が、前記1対の支持部の一方にエンジン幅方向又は上下方向へ軸線を向けて固定されたボルト部材と、前記1対の支持部の他方に形成されて前記ボルト部材が軸線直交方向へ相対移動不能に且つ軸線方向へ所定量だけ相対移動可能に挿通される規制孔とを有することを特徴とする請求項1又は2に記載のエンジンの補機取付構造。
  4. 前記拘束手段が、前記1対の支持部に両端部が連結される連結部材と、この連結部材の一端部を前記1対の支持部の一方に固定する第1ボルト部材と、前記1対の支持部の他方に固定された第2ボルト部材と、前記連結部材の他端部に形成されて前記第2ボルト部材が上下方向又はエンジン幅方向へ所定量だけ相対移動可能に挿通される長孔とを有することを特徴とする請求項1又は2に記載のエンジンの補機取付構造。
  5. 前記取付面が膨出部のうちの後方へ突出した環状部分に形成され、この取付面の上側に膨出部側の支持部が設けられたことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のエンジンの補機取付構造。
  6. 前記チェーンカバーのうち膨出部に対応する部分に、補機駆動用のベルトに張力を付与するテンショナが設けられたことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のエンジンの補機取付構造。
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