以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の画像形成装置の1実施形態としてのカラーインクジェットプリンタ1を示す断面図である。本カラーインクジェットプリンタ1は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(Bk)の4色のカラーインクがそれぞれ充填されるインクカートリッジから供給されるインクを記録媒体(記録用紙P)に吐出して印刷を行うものであり、記録動作と記録用紙Pの搬送動作とを交互に実行するように構成されている。
また、記録用紙Pの搬送動作は、図20(b),図20(c)に示すのと同様に、3回の小フィードと1回の大フィードとの不均等送りによって実行される。その上、記録用紙Pの後端が搬送ローラ60のニップ点を通過するタイミングおよびその直後では搬送停止を回避するように構成されている。
このカラーインクジェットプリンタ1には、パーソナルコンピュータ(以下単に「PC」)100(図4参照)が外部機器として接続されており、このPC100から送信される印刷データの印刷が実行されるようになっている。
図1に示すように、カラーインクジェットプリンタ1の下方には、給紙カセット3と給紙ユニット59とが設けられている。給紙カセット3は、例えばA4サイズ、レターサイズ、はがきサイズ等にカットされた記録用紙Pを、その短辺が主走査方向(用紙搬送方向と直交する方向、紙面手前から紙面奥方へ向かう方向)に沿うように複数枚堆積して収納できる形態とされている。
給紙ユニット59は、給紙カセット3に堆積される記録用紙Pをインクジェットヘッド6に向けて送出するためのものであり、給紙カセットの上方に配設されるアーム59aを備えている。アーム59aは、その一端部を軸として、他端部を上下方向に回動可能に形成されている。アーム59aの他端部にはピックアップローラ59bが回動可能に配設されており、非図示のギヤなどの伝達機構を介して搬送モータ(LFモータ)40(図4参照)に接続されている。LFモータ40の駆動力によってピックアップローラ59bは、紙送り方向(図1において反時計回り)へ回転される。印刷実行が要求されると、アーム59aが下方へ回動され給紙カセット3に堆積される記録用紙Pに当接する。そして、ピックアップローラ59bの紙送り方向への駆動により、給紙カセット3から記録用紙Pが搬送方向下流側へ送出される。
給紙カセット3の奥側(図1において右側)には、用紙分離用の土手部8が配置されており、給紙カセット3から送出された記録用紙Pは、土手部(傾斜分離板)8により、一枚ずつ分離されて搬送される。分離された記録用紙Pは上横向きのUターンパス(給送路)9を介して給紙カセット3より上側(高い位置)に設けられた一対の搬送ローラ60まで給送される。
搬送ローラ60の下流側には、インクジェットヘッド6、インクジェットヘッド6を搭載するキャリッジ64、インクジェットヘッド6と対向配設されるプラテン66とが設けられている。インクジェットヘッド6の更に下流側には、インクジェットヘッド6の対向面を通過した記録用紙Pを挟持搬送する排出ローラ61が設けられている。この搬送ローラ60と排出ローラ61の動作によって、記録用紙Pは矢印B方向(副走査方向)に搬送され、インクジェットヘッド6の対向面を通過して、排出口から装置外へと排出される。
尚、プリンタ内部には、キャリッジ64を往復移動させるためにプラテン66と平行で且つ主走査方向に沿って延設されたキャリッジ軸と、そのキャリッジ軸に平行に配置されるガイド部材と、キャリッジ軸の両端部に配設される2のプーリと、プーリに掛け渡されたタイミングベルトとが設けられている。そして、一方のプーリが、キャリッジモータ(CRモータ)16(図4参照)にて正逆回転されると、そのプーリの正逆回転に伴って、タイミングベルトに接合されているキャリッジ64が、キャリッジ軸およびガイド部材に沿って、主走査方向に往復移動される。
また、キャリッジ64の位置を検出するためのリニアエンコーダ43の帯状のエンコーダストリップが、主走査方向に沿って延びるように配置されている。このリニアエンコーダ43(図4参照)によって、キャリッジの現在位置が検出される。
また、図示を省略しているが、カラーインクジェットプリンタ1には、フルカラー記録のための4色(ブラック(BK)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y))のインクを各々収容したインクカートリッジや、各インクカートリッジからインクジェットヘッド6にインクを供給する複数本のインク供給管、記録動作中に定期的にノズルの目詰まり防止のためのインク吐出(フラッシング)を行うためのフラッシング部、インクジェットヘッド6のノズル面のクリーニングや、インクジェットヘッド6上の図示しないバッファタンク内の気泡を除去するための回復処理等を行うメンテナンスユニット等が設けられている。
図2は、図1の要部側断面図であり、インクジェットヘッド6近傍部分の構成を示した図である。インクジェットヘッド6の上流側に配設された1対の搬送ローラ60は、そのニップ力によって記録用紙Pを挟持搬送する上下一対のローラ部材である。搬送ローラ60は、非図示のギヤなどの伝達機構を介してLFモータ40に接続されており、LFモータ40の駆動力により、搬送方向下流側へ記録用紙Pを送出する紙送り方向(上側のローラが時計回り、下側のローラが反時計回り)へ回転される。尚、本実施形態では、一対の搬送ローラ60の内、下側のローラがLFモータ40の駆動力にて駆動される駆動ローラとなっており、上側のローラは駆動ローラに従動して回転する従動ローラとなっている。
この搬送ローラ60が紙送り方向に回転することにより、搬送ローラ60よりも搬送方向(矢印B方向)下流側に設けられたインクジェットヘッド6の下面即ちプラテン66上へと、記録用紙Pが搬送される。
尚、この搬送ローラ60は、正逆回転可能に構成されており、給紙ユニット59による給紙期間中は逆回転(反紙送り方向へ回転)して、記録用紙Pの給送が終了するまで搬送ローラ60に到達した記録用紙Pを搬送ローラ60のニップ点手前で待機させる。この搬送ローラ60の逆回転により、搬送ローラ60に導入される記録用紙Pの先端が主走査方向に沿って揃えられる。
この搬送ローラ60に対し、インクジェットヘッド6を挟んで下流側には、排出ローラ61が配設されている。排出ローラ61は、インクジェットヘッド6の対向面を通過した記録用紙Pを挟持搬送する上下一対のローラ部材である。
この排出ローラ61の内、上側のローラは、拍車で形成されている。拍車は、表面が凹凸となるように形成されたローラである。上側のローラは、印刷された記録用紙Pの印字面と接触する。印刷直後の印字面は、インクが未乾燥であるので、接触面積の大きなローラが当接すると、にじみやよれ、転写等を発生させ、印字品質を低下させ易い。よって、印刷された記録用紙Pの印字面に接触するローラを拍車にして、印字面に対する接触面積を低減し、印字品質の低下を防止している。
この排出ローラ61もまた、非図示のギヤなどの伝達機構を介してLFモータ40に接続されており、LFモータ40の駆動力により、搬送方向下流側へ記録用紙Pを送出する紙送り方向(拍車が時計回り、下側のローラが反時計回り)へ回転される。尚、本実施形態では、一対の排出ローラ61の内、下側のローラがLFモータ40の駆動力にて駆動される駆動ローラとなっており、上側の拍車は駆動ローラに従動して回転する従動ローラとなっている。
搬送ローラ60まで搬送された記録用紙Pは、まず、この搬送ローラ60のみによって搬送されて、インクジェットヘッド6の下面へと案内される。その後、記録用紙Pの先端は、排出ローラ61に導入される。排出ローラ61に記録用紙Pの先端が挟持されると、記録用紙Pは、搬送ローラ60と排出ローラ61とによって搬送される。そして、記録用紙Pの後端が搬送ローラ60のニップ点を通過すると、記録用紙Pの搬送は、排出ローラ61のみによって実行される。
ここで、搬送ローラ60による記録用紙Pの挟持力(ニップ力)は、排出ローラ61による記録用紙Pの挟持力(ニップ力)よりも大きく設定されている。このため、記録用紙Pが搬送ローラ60に挟持される状態にある場合、即ち、記録用紙Pの後端が搬送ローラ60のニップ点を通過するまでは、記録用紙Pは、搬送ローラ60の回転周速度によって搬送される。つまり、搬送ローラ60の回転周速度が記録用紙Pの搬送速度となる。
一方、記録用紙Pの後端が搬送ローラ60のニップ点を通過した後は、記録用紙Pは、排出ローラ61の回転周速度によって搬送される。かかる場合には、排出ローラ61の回転周速度が、記録用紙Pの搬送速度となる。
本実施形態では、排出ローラ61の回転周速度が搬送ローラ60の回転周速度を上回るように設計されており、記録用紙Pが、搬送ローラ60と排出ローラ61との両ローラにより搬送される場合には、排出ローラ61は記録用紙Pに対して滑ることととなり、記録用紙Pに対して張力を付与する。
ここで、記録用紙Pの後端が搬送ローラ60のニップ点を通過すると、記録用紙Pは、搬送ローラ60のニップ力から解放され、その結果、規定の搬送量よりも過剰に記録用紙Pが下流側に搬送されてしまう(先走りの発生)。この先走り、即ち、規定の搬送量よりも過剰となる記録用紙Pの搬送は、記録用紙Pが本来のタイミングより早く先の位置へ搬送されることによるものである。
一方で、記録用紙Pの搬送量は、LFモータ40の駆動量(LFモータ40側の駆動ギヤの回転量)に支配される。上記した先走りは、駆動ギヤに歯合する搬送ローラ60側のギヤ歯の遊び分、余剰に記録用紙Pが搬送されるものである。ここで、LFモータ40にて、駆動ギヤは、先走りの発生に関わらず正規のタイミングで正規のポジションに回転されるので、駆動ギヤがその正規のポジションに到達した段階で、先走りによって発生した過剰な搬送量は吸収される。言い換えれば、先走りは、一時的な搬送ムラを発生させるものであり、駆動ギヤが正規のポジションに回動されたタイミングでは、正規の搬送量で搬送がなされた状態となっており、記録用紙Pは正規の位置に配置されることとなる。
搬送ローラ60の上流側には、記録用紙Pの後端を検出するための用紙下端センサ50が配設されている。用紙下端センサ50は、発光ダイオードからなる発光部と、光学式センサからなる受光部とを備えた一般的な光センサである。用紙下端センサ50の発光部は、記録用紙Pの搬送経路であるガイド板63上の検出点Kに向かって光を照射し、その光の反射光を受光部が受光するように構成されている。
検出点Kは、小フィードの総搬送量SF(SF1+SF2+SF3)に、インターレース1周期(3回の小フィードと1回の大フィード)の搬送量F(SF+LF)を加算した距離以上、搬送ローラ60のニップ点から上流側の位置とされており、この検出点Kにおける記録用紙Pの有無を検出するように、用紙下端センサ50は配置されている。本実施形態においては、検出点Kは、ニップ点からSF+F上流側の位置とされている。尚、第1実施形態において、各搬送量SF1〜SF3,SF,LF,Fは、通常の記録動作において搬送される搬送量であって予め設定された理論搬送量を示している。
検出点Kを含むガイド板63の所定範囲は、例えば黒色のように記録用紙Pと反射率が異なる色の態様とされており、記録用紙Pが存在しない場合には、反射率の低いガイド板63からの反射光を受光部が受光するので、用紙下端センサ50の検出値(AD値)は低い値(用紙なしの値)となる。一方、記録用紙Pが存在する場合には、反射率の高い記録用紙Pからの反射光を受光部が受光するので用紙下端センサ50の検出値(AD値)は高い値(用紙有りの値)となる。したがって、用紙下端センサ50が受光する反射光量の差により記録用紙Pの有無(記録用紙Pの後端)を検知することができる。
尚、大フィードの搬送量LFおよび小フィードの総搬送量SFは、要求された記録密度に応じて変化する値であるため、図示を省略しているが、用紙下端センサ50は、カラーインクジェットプリンタ1で実行し得る記録密度(300dpi、600dpi、1200dpi)のそれぞれに対応できるように設けられている。
本実施形態では、この記録密度に対応する用紙下端センサ50にて記録用紙Pの後端が検出点Kを通過したことが検出されると、搬送ローラ60のニップ点に記録用紙Pの後端が到達する前に、搬送量の変更を行い、記録用紙Pの後端が搬送ローラ60のニップ点を通過する際の搬送量が大フィード(搬送量LF)で実行され、かつ、搬送停止時の記録用紙Pの後端の位置が、該ニップ点下流側の所定のポイント(第1のポイント)を超える位置(下流側の位置)となるように、ニップ点を通過する際の搬送開始時の記録用紙Pの位置を調節する。
これにより、カラーインクジェットプリンタ1では、記録用紙Pの後端が、搬送ローラ60のニップ点およびニップ点直下流に配置された状態では記録用紙Pの搬送を停止させず、記録用紙Pの後端がニップ点から十分に離間されたタイミングでその搬送を停止することができる。
上記したように、記録用紙Pが搬送ローラ60の挟持から開放されると、記録用紙Pに先走りが生じ、一時的な搬送ムラが発生する。かかる状態において直ちに搬送が停止すると、搬送ムラが発生した状況下で記録用紙Pの搬送が停止することとなり、記録用紙Pの正規の位置に記録を行うことができない。
しかし、本実施形態では、このような搬送ムラが発生した状態(搬送精度が低下した状態)では記録を回避し、記録用紙Pの後端がニップ点から十分に離間されたタイミング(即ち、駆動ギヤが先走りを解消するに十分な駆動量で回転されて正規の搬送量での搬送がなされた状況下)で搬送を停止する制御を実行している。その結果、搬送の停止に引き続いて実行される記録は、正規の位置に適切に配置された記録用紙Pに対して実行される(高精度の搬送の実現)。故に、画像品質を向上させることができる。かかる搬送の制御については、図5および図6のフローチャートにより後述する。
図3は、インクジェットヘッド6の下面、即ち、記録用紙Pに対向する面を示した図である。インクジェットヘッド6は、図3に示すように、その下面6aにノズル53aが、CMYBkの各色インク毎に記録用紙Pの搬送方向B(副走査方向)に列設されている。なお、ノズル53aの配列方向のピッチや数は、記録画像の解像度等を考慮して適宜設定されるものである。また、カラーインクの種類数に応じてノズル53aの列数を増減することも可能である。
本実施形態では、インクジェットヘッド6には、148のノズルが形成されており、副走査方向に沿ってノズル番号00からノズル番号147までの各番号がそれぞれのノズルに付与されている。また、各ノズルのノズルピッチは1/150インチで形成されている。記録密度によって形成するドットの間隔(ピッチ)は異なるので、必ずしもノズルピッチとドット間隔(ピッチ)とは一致しない。
尚、インターレース1周期は、インクジェットヘッド6のヘッド長(搬送方向先頭ノズルから最終ノズルまでの距離相当)を越えることはできない。本実施形態では、先頭ノズル(ノズル番号00)から最終ノズル(ノズル番号147)までの距離分の送りが、上記した通常の記録動作におけるインターレース1周期の搬送量Fとされている。つまり、搬送量Fは、本インクジェットヘッド6で実現し得る限界搬送量とされている。
上記のようにインクジェットヘッド6が形成されているので、図20(b)、図20(c)で説明したのと同様に、通常の記録動作として、ドットの1ピッチを1/600インチとし、1パス目印刷後の3回の小フィードの搬送量SF1,SF2,SF3をそれぞれ3ピッチ、4パス目の印刷実行後の大フィードの搬送量LFを583ピッチとすることにより、4パスの印刷を実行すると600dpiが達成される。
図4は、カラーインクジェットプリンタ1の電気回路構成の概略を示すブロック図である。カラーインクジェットプリンタ1を制御するための制御装置は、本体側制御基板12と、キャリッジ基板13とを備えており、本体側制御基板12には、1チップ構成のマイクロコンピュータ(CPU)32と、そのCPU32により実行される各種の制御プログラムや固定値データを記憶したROM33と、各種のデータ等を一時的に記憶するためのメモリであるRAM34と、EEPROM35と、イメージメモリ37と、G/A(ゲートアレイ)36等が搭載されている。
演算装置であるCPU32は、ROM33に予め記憶された制御プログラムに従い、印字タイミング信号およびリセット信号を生成し、各信号を後述するゲートアレイ36へ転送する。また、CPU32には、ユーザが印刷の指示などを行うための操作パネル45、キャリッジ64を動作させるキャリッジモータ(CRモータ)16を駆動するためのCRモータ駆動回路39、搬送ローラ60等を駆動するための搬送モータ(LFモータ)40を動作させるためのLFモータ駆動回路41、ペーパセンサ42、リニアエンコーダ43、用紙下端センサ50が接続されている。接続される各デバイスの動作はこのCPU32により制御される。
ペーパセンサ42は、記録用紙Pの先端を検出するセンサであり、搬送ローラ60よりも上流側に配置されており、例えば、記録用紙Pに接触することにより回動する検出子と、その検出子の回動を検出するフォトインタラプタとによって構成されている。ペーパセンサ42は固定位置に配設され、また、インクジェットヘッド6の位置も固定であるため、ペーパセンサ42からインクジェットヘッド6(記録開始位置HS)までの搬送距離は既知となる。また、記録用紙Pの搬送距離は、記録用紙Pを搬送するために駆動されるLFモータ40の駆動量を検出することにより取得することができる。LFモータ40は、ステッピングモータで構成されているので、CPU32からLFモータ駆動回路41に出力されるパルス信号をカウントすることによってLFモータ40の駆動量は把握される。
従って、このペーパセンサ42にて記録用紙の先端を検出してからのLFモータ40の駆動量が、ペーパセンサ42の検出位置から記録開始位置HSまでの距離に相当するパルス数となるまでLFモータ40を駆動させることにより、記録用紙Pを記録開始位置HSに給送することができる。尚、記録開始位置HSは、印刷開始時に記録用紙Pの先端をセットする位置であり、インクジェットヘッド6の上流側端部(最上流側のノズル位置でも良い)を基点とする距離で表される。つまり、記録開始位置HSにて、印刷開始時にインクジェットヘッド6の上流側端部よりも下流側に配置される記録用紙先端部分の長さが示されることとなる。
リニアエンコーダ43は、キャリッジ64の移動量を検出するものであり、上記したエンコーダストリップと、そのエンコードストリップを挟んで一方側に配置される発光部と、他方側に配置される受光部とを備えている。発光部と受光部とはキャリッジ64の所定箇所に取着されており、キャリッジ64の主走査方向の往復動作に連動して移動される。このリニアエンコーダ43の受光部から出力されるエンコーダ信号によってキャリッジ64の位置はCPU32に認識され、その往復移動が制御される。
ROM33には、カラーインクジェットプリンタ1の印刷動作を制御する印刷制御プログラム33aが格納されている。図5及び図6に記載されるフローチャートのプログラムは、印刷制御プログラム33aの一部としてROM33に記憶されている。
RAM34には、印刷情報メモリ34a、大フィードメモリ34b、小フィードメモリ34c、変更搬送メモリ34d、センサ搬送メモリ34e、フィードカウンタ34f、搬送カウンタ34g、変更フラグ34hが備えられている。
印刷情報メモリ34aは、PC100から送信された印刷データの内の印刷情報を記憶するメモリである。PC100から送信される印刷データには、画像データのみならず、印刷に際して必要な印刷情報が含まれている。この印刷情報には、記録用紙Pの紙種を示す種類情報や記録用紙の用紙サイズ、記録密度、縁なし印刷または通常印刷を指定する印刷手法情報を含むものであり、例えばPC100に予めインストールされたプリンタドライバにより生成される。PC100からの印刷データがカラーインクジェットプリンタ1にて受信されると、その印刷データに含まれる印刷情報が、この印刷情報メモリ34aに書き込まれる。
大フィードメモリ34bおよび小フィードメモリ34cは、理論搬送量を記憶するメモリであり、大フィードメモリ34bは、通常の記録動作における大フィードの理論搬送量である搬送量LF(大搬送量)を記憶するものである。また、小フィードメモリ34cは、通常の記録動作における小フィードの理論搬送量である搬送量SF1〜SF3(小搬送量)を記憶するものである。尚、本実施形態では、3回の小フィードはいずれも同じ搬送量とされているので、この小フィードメモリ34cには1の搬送量(搬送量SF1)を代表値として記憶するようにしても良い。
本実施形態では、カラーインクジェットプリンタ1は、300dpi、600dpi、1200dpiの記録密度で印刷を実行することができるようになっている。理論搬送量は主に、インクジェットヘッド6の仕様(長さ、ノズル数、ノズルピッチ)、記録密度によって決定される値であり、記録密度が異なれば理論搬送量は異なる。
この理論搬送量は、記録密度に対応して後述する設計値メモリ35aに予め記憶されており、印刷の実行に際し、要求された記録密度(印刷情報メモリ34aに記憶される記録密度)に対応する大搬送量LFおよび小搬送量SF1〜SF3が設計値メモリ35aから読み出されて、それぞれ、大フィードメモリ34bおよび小フィードメモリ34cに記憶される。
変更搬送メモリ34dは、変更搬送量CFを記憶するためのメモリである。上記したように、用紙下端センサ50にて記録用紙Pの後端が検出点Kを通過したことが検出されると、記録用紙Pの後端が搬送ローラ60のニップ点に到達する前に、通常の記録動作におけるインターレース1周期の理論搬送量Fとは異なる搬送量(変更搬送量CF)で、記録用紙Pを搬送する変更搬送を行う。
変更搬送量CFは、かかる変更搬送におけるインターレース1周期の搬送量であって、後述する変更搬送設定処理(S416)(図6参照)により算出されるものである。インターレース1周期を、かかる変更搬送量CFによって実行することにより、記録用紙Pの後端が搬送ローラ60のニップ点を通過する場合の搬送を、搬送量LFの大フィードで実行させ、且つその停止位置が、ニップ点から所定距離以上離れた位置とすることができる。
尚、本実施形態では、変更搬送も、通常の搬送と同様に3回の小フィードと1回の大フィードで実行される。ここで、小フィードは搬送量SF1〜SF3のままで実行されることとされているので、算出された変更搬送量CFから小フィードの総搬送量SFを減算して求められる変更搬送時の大フィードの搬送量LF’のみ、変更搬送メモリ34dに記憶されている。
CPU32は、記録用紙Pの後端が検出点Kを通過したことが、用紙下端センサ50にて検出されると、この変更搬送メモリ34dに記憶される搬送量LF’にて大フィードの搬送を1回実行する。これにより、記録用紙Pの配置は、通常の搬送によって搬送される予定位置から、記録用紙Pの後端が搬送ローラ60のニップ点を大フィードで通過した後にニップ点から所定距離以上離れて停止する位置に、変更されることとなる。
センサ搬送メモリ34eは、用紙下端センサ50のAD値が用紙有りの値から用紙無しの値に変化した場合の搬送カウンタ34gのカウント値を記憶するためのメモリである。CPU32は、用紙下端センサ50のAD値を常時監視しており、このAD値が用紙有りの値から用紙無しの値に変化すると、搬送カウンタ34gの値がCPU32に読みとられ、このセンサ搬送メモリ34eに書き込まれる。
搬送カウンタ34gは、LFモータ40の駆動量(記録用紙Pの搬送距離)をカウントするものであるので、センサ搬送メモリ34eには、用紙下端センサ50に記録用紙Pの後端が到達した際の搬送距離が記憶されることとなる。本実施形態においては、小フィードまたは大フィードが終了した時点で、LFモータ40を停止させる。このため、用紙下端センサ50にて記録用紙Pの後端が検出されてから、搬送が停止するまでにタイムラグが発生し、記録用紙は、用紙下端センサ50の検出点Kから更に下流側へとフィードが終了するまで搬送される。
センサ搬送メモリ34eに記憶される値は、記録用紙Pの後端が用紙下端センサ50を通過した直後の搬送停止(フィード終了)のタイミングで、CPU32により参照される。そして、かかるタイミングにおける搬送カウンタ34gの値とセンサ搬送メモリ34eに記憶される値とを比較することにより、記録用紙Pの後端の検出点K通過後の送り量(DF)が、CPU32に把握される。
フィードカウンタ34fは、実行する記録用紙Pの搬送を小フィードで行うか、大フィードで行うかを判断するためのカウンタである。このフィードカウンタ34fのカウント値は、記録用紙Pの搬送が小フィードで行われる毎に1ずつ加算される。このフィードカウンタ34fは、印刷の実行時においてCPU32によって参照され、そのカウンタ値に基づいていずれのフィードを行うタイミングであるかが判断される。
搬送カウンタ34gは、記録用紙Pの搬送距離をカウントするためのカウンタであり、ペーパセンサ42による記録用紙Pの先端検出を契機として0クリアされた後、CPU32からLFモータ駆動回路41へのパルス信号出力毎に1ずつカウントアップされるようになっている。これにより、記録用紙Pの搬送距離がパルス数でカウントされる。CPU32から出力される1のパルス信号に応じて、LFモータ40は、所定量(1ステップ分)回転するので、パルス信号の発生毎に記録用紙Pの所定量の搬送が行われる。よって、パルス数をカウントすることにより記録用紙Pの搬送距離を検知することができる。
変更フラグ34hは、変更搬送量CFに基づいて記録用紙Pの搬送を行うことを指示するフラグである。この変更搬送フラグ34hは、変更搬送設定処理(S416)によって、変更搬送量CFが算出されるとオンされる。つまり、変更搬送量CFで記録用紙Pの搬送を行うタイミングであることを報知するために、変更搬送フラグ34hはオンされる。後述するページ印刷処理において、CPU32は、この変更フラグ34hの状態を参照し、変更フラグ34hがオンであると変更搬送を実行するタイミングであると判断して、変更搬送を実行する。オンされた変更フラグ34hは、変更搬送量CFでの搬送(大フィード)が実行されるとオフされる。
尚、上記した、変更搬送メモリ34d、センサ搬送メモリ34e、フィードカウンタ34f、変更フラグ34hは、後述するページ印刷処理(図5参照)の開始に際して0クリアされる。
EEPROM35は、書換え可能な不揮発性のメモリであり、このEEPROM35に記憶される情報は、電源断後も保持される。このEEPROM35には、設計値メモリ35aと、インターレース周期情報メモリ35bとが備えられている。設計値メモリ35aは、変更搬送量CFの算出に必要なカラーインクジェットプリンタ1の構造設計値を記憶するためのメモリであり、上記した記録開始位置HSやノズルピッチ、更には設定第1距離情報などの値が記憶されている。
設定第1距離情報は、用紙下端センサ50の検出点Kから搬送ローラ60までの間隔を示す値であり、カラーインクジェットプリンタ1の機械的構造(仕様)によって規定された設計値である。つまり、予め定められた固定値である。ここで、設定第1距離情報は、設定第1距離情報Aと、設定第1距離情報Bとの2の値を備えている。
設定第1距離情報Aは、検出点Kから搬送ローラ60のニップ点までの距離(或いはその距離に機械的交差を考慮してマージンを加味した値)であり、変更搬送量CFを算出する場合の要素となる情報の1つである。つまり、記録用紙Pの後端を、搬送ローラ60のニップ点やその直下流で停止させずに大フィード(搬送量LF)で通過させるためには、ニップ点に到達する手前において、記録用紙Pの後端の現在位置を把握することが必須となる。搬送ローラ60のニップ点の手前であって、大フィードでニップ点を通過しきることができる範囲に、記録用紙Pの後端を配置しなくてはならないからである。用紙下端センサ50の検出点Kを通過後の送り量DFは、上記したように、センサ搬送メモリ34eに記憶される値と、搬送カウンタ34gのカウント値との比較(差分)によって求められる。かかる送り量DFを、設定第1距離情報Aから減算することにより、検出点K通過後の記録用紙Pの後端の現在位置が求められる。
設定第1距離情報Bは、検出点Kから搬送ローラ60のニップ点下流側の第1のポイントまでの距離であり、設定第1距離情報A同様、変更搬送量CFを算出する場合の要素となる情報の1つである。本カラーインクジェットプリンタ1は、搬送ローラ60のニップ点のみならず、そのニップ点直下流に記録用紙Pの後端がある状態での搬送停止を回避するものである。このために、搬送ローラ60のニップ点を通過した記録用紙Pの後端を、第1のポイントよりも下流側で停止させるための設定第1距離情報Bが設計値メモリ35aに記憶されている。変更搬送設定処理(S416)において、この設計値メモリ35aから設定第1距離情報A,Bは読み出され、変更搬送量CFの算出するための定数として使用される。
インターレース周期情報メモリ35bは、インターレース周期情報を、記録密度に対応して記憶するメモリである。このインターレース周期情報は、インターレース1周期における各フィードの情報であって、具体的には、各小フィードの理論搬送量(小搬送量、SF1〜SF3)と、その小フィードの総搬送量SFと、大フィードの理論搬送量(大搬送量、LF)と、インターレース1周期の理論搬送量(SF+LF)とを備えた情報である。このインターレース周期情報は、初期値として予めこのインターレース周期情報メモリ35bに記憶されている。
インターレース1周期の各フィードの搬送量SF1〜SF3,LFは、主に、インクジェットヘッド6の仕様と、記録密度によって算出される値である。記録密度が変更されると、理論搬送量は変動する。1のカラーインクジェットプリンタ1に設けられるインクジェットヘッド6は、通常1つであるので、インターレース周期情報は、記録密度毎に設けられる情報となる。
本実施形態のカラーインクジェットプリンタ1においては、記録密度は、300dpi、600dpi、1200dpiを実行可能としているので、かかる記録密度とインクジェットヘッド6の仕様とに基づいて求められた3のインターレース周期情報が、このインターレース周期情報メモリ35bに、各記録密度に対応して記憶されている。
尚、上記したCPU32と、ROM33、RAM34、EEPROM35及びG/E36とは、バスライン45を介して接続されている。
G/A36は、CPU32から転送されるタイミング信号と、イメージメモリ37に記憶されている画像データとに基づいて、その画像データを記録用紙Pに記録するための記録データ(駆動信号)と、その記録データと同期する転送クロックと、ラッチ信号と、基本駆動波形信号を生成するためのパラメータ信号と、一定周期で出力される吐出タイミング信号とを出力し、それら各信号を、ヘッドドライバが実装されたキャリッジ基板13へ転送する。
また、G/A36は、PC100などの外部機器からUSBなどのインターフェース(I/F)44を介して転送されてくる画像データを、イメージメモリ37に記憶させる。そして、G/A36は、PC100などからI/F44を介して転送されてくるデータに基づいてデータ受信割込信号を生成し、その信号をCPU32へ転送する。なお、G/A36とキャリッジ基板13との間で通信される各信号は、両者を接続するハーネスケーブルを介して転送される。
キャリッジ基板13は、実装されたヘッドドライバ(駆動回路)によってインクジェットヘッド6を駆動するための基板である。インクジェットヘッド6とヘッドドライバとは、厚さ50〜150μmのポリイミドフィルムに銅箔配線パターンを形成したフレキシブル配線板19により接続されている。このヘッドドライバは、本体側制御基板12に実装されたG/A36を介して制御され、記録モードに合った波形の駆動パルスをインクジェットヘッド6を構成する圧電アクチュエータに印加するものである。これにより、インクが所定量吐出される。
次に、図5から図7を参照して上述したように構成されるカラーインクジェットプリンタ1の印刷動作(記録動作と搬送動作)について説明する。図5は、ページ印刷処理を示すフローチャートである。このページ印刷処理は、印刷制御プログラム33aに従って実行される処理であり、インクジェットヘッド6を主走査方向に往復移動させながら記録用紙Pに向けてインクを吐出させる記録動作と、記録用紙Pを副走査方向に搬送する搬送動作とを繰り返すことで1枚の記録用紙Pに画像を形成するための処理である。
また、この処理における記録用紙Pの搬送動作は、図20(b)、図20(c)で説明したのと同様に不均等送りによって実行される。即ち、副走査方向に第1の搬送量で記録用紙Pを3回搬送する小フィードと、その小フィードの後に第1の搬送量よりも大きい第2の搬送量で記録用紙Pを1回搬送する大フィードとから成る一連の搬送動作を繰り返して記録用紙Pを搬送する。
更に、このページ印刷処理は、カラーインクジェットプリンタ1に接続されたPC100からの印刷データの受信が終了した以降の処理を示しており、受信した印刷データに含まれる印刷情報は、印刷情報メモリ34aに既に記憶されている。
このページ印刷処理は、印刷データの受信終了を契機として起動され、まず、記録用紙Pの先端が、設計値メモリ35aに記憶される記録開始位置HSに配置されるように給紙を実行する(S401)。具体的には、LFモータ40を駆動させ、給紙カセットに収容されている記録用紙Pをピックアップローラ59b、搬送ローラ60等によって搬送する。上記したように、ペーパセンサ42の配設位置から記録開始位置HSまでの搬送距離は既知であるので、搬送カウンタ34gの値が、かかる搬送距離に対応するパルス数に到達するまで、記録用紙Pの搬送が実行される。
その後、印刷情報メモリ34aに記憶される記録密度の値に対応する搬送量LF(大搬送量)と搬送量SF1〜SF3(小搬送量)とをインターレース周期情報メモリ35bから読み出して、それぞれ対応するフィードメモリ34b,34cに書き込む(理論搬送量の取得)(S402)。そして、1パス目の印刷(1改行幅分、即ち1バンドの印刷)を実行する主走査印刷処理を実行する(S403)。
主走査印刷処理(S403)によって、1パス目の印刷(1バンドの印刷)が終了すると、改行を行うための搬送を小フィードで行うか大フィードで行うかを選択するべく、フィードカウンタ34fのカウント値が3未満かを確認する(S405)。その結果、フィードカウンタ34fの値が3未満であれば(S405:Yes)、小フィードで記録用紙Pの搬送を行うタイミングであるので、LFモータ40を駆動し小フィードメモリ34cに記憶される搬送量SF1〜SF3(小搬送量)で、記録用紙を搬送する(S406)。つまり、記録用紙Pが小搬送量だけ搬送されるように、LFモータ40を介して搬送ローラ60を駆動させる。小搬送量の搬送が完了するとLFモータ40は停止される。
次に、フィードカウンタ34fのカウント値に1加算する(S407)。これにより、フィードカウンタ34fのカウント値が1であれば、1回目の小フィードが終了したことが示され、フィードカウンタ34fのカウント値が2であれば、2回目の小フィードが終了したことが示され、フィードカウンタ34fのカウント値が3であれば、3回目の小フィードが終了したことが示されることとなる。
S407の処理の後は、ページ印刷が完了したか否かを判断し(S408)、完了していれば(S408:Yes)、記録用紙を排出して(S409)、本処理を終了する。
一方、S405の処理で確認した結果、フィードカウンタ34fのカウント値が3以上であれば(S405:No)、3回目の小フィードが終了したことが示されているので、大フィードを実行するタイミングである。故に、変更フラグ34hがオンであるか否かを確認する(S410)。
ここで、変更フラグ34hがオフであれば(S410:No)、記録用紙Pの後端は、用紙下端センサ50よりも上流側にあって、変更搬送量CFは未だ算出されていない。または、既に変更搬送は終了している。言い換えれば、算出された変更搬送量CFに基づいた大フィードを実行するタイミングではない。故に、LFモータ40を駆動し大フィードメモリ34bに記憶される搬送量LF(大搬送量)、記録用紙を搬送する(S411)。大搬送量の搬送が完了するとLFモータ40は停止される。その後、フィードカウンタ34fのカウント値を0として(S412)、その処理をS408に移行する。ここで、フィードカウンタ34fの値が0とされることにより、ページ印刷が継続される場合には、再び小フィードが実行される。
即ち、S403からS412までの処理を返すことで、主走査印刷処理(S403)と記録用紙Pの搬送とが交互に実行され、また、その搬送は、3回の小フィードと1回の大フィードとにより実行される。尚、図20(b)に示す例で言えば、画像1Pから画像3Pの形成後は小フィード(例えば搬送量SF1〜SF3)により記録用紙Pが搬送され、画像4Pの形成後に大フィード(例えば搬送量LF)により記録用紙が搬送される。
更に、S410の処理で確認した結果、変更フラグ34hがオンであれば(S410:Yes)、記録用紙Pの後端は、既に用紙下端センサ50の検出点Kを通過しており、変更搬送量CFに基づいた搬送を実行するタイミングである。従って、LFモータ40を駆動して、変更搬送メモリ34dに記憶される搬送量(変更搬送における大フィードの搬送量LF’)、記録用紙を搬送する(S413)。変更搬送メモリ34dに記憶される搬送量の搬送が完了するとLFモータ40は停止される。そして、変更フラグ34hをオフしてから(S414)、その処理をS412の処理に移行する。
尚、変更搬送が終了した直後、変更フラグ34hがオンの状態の主走査印刷処理(S403)においては、CPU32は、変更搬送における大フィードの搬送量LF’に応じた使用ノズル範囲で記録を実行する。
また、S408の処理で確認した結果、ページ印刷が完了していなければ(S408:No)、用紙下端センサ50の検出値が用紙有りの値から用紙なしの値に変化したか否かを確認する(S415)。つまり、フィード前に用紙有りの値であった検出値(AD値)が、フィード後に用紙なしの値になったかを判定する。その結果、用紙下端センサ50の検出値が用紙有りの値から用紙なしの値に変化していれば(S415:Yes)、記録用紙Pの後端が用紙下端センサ50の検出点Kを通過しているので、変更搬送量CFを設定する変更搬送設定処理を実行し(S416)、変更搬送を実行するタイミングであることを示すために変更フラグ34hをオンして(S417)、その処理を主走査印刷処理(S403)に移行する。また、用紙下端センサ50の検出値が用紙有りの値から用紙なしの値に変化していなければ(S415:No)、未だ、記録用紙Pの後端は、検出点Kを通過していないか又は既に変更搬送は終了しているので、そのまま、その処理を主走査印刷処理(S403)に移行する。
本実施形態では、記録用紙Pの後端を検出点Kにおいて検出することによって、記録用紙Pの後端が搬送ローラ60のニップ点を通過する場合のフィード開始時における記録用紙Pの後端の位置を把握することができる。従って、搬送量を調整することによってその位置を調節することができ、記録用紙Pの後端を、大フィード(搬送量LF)で搬送ローラ60のニップ点を通過させ、そのニップ点から所定距離以上下流側まで搬送することができる。
また、検出点Kを通過した記録用紙Pの後端の現在位置を把握することができるので、装置内に導入された用紙サイズが不明であっても、ユーザの設定が誤っていても、記録用紙Pの後端を大フィードで搬送ローラ60のニップ点を通過させる上記した記録用紙Pの搬送が、不能となることはない。
図6は、図5のページ印刷処理の中で実行される変更搬送設定処理(S416)のフローチャートである。変更搬送設定処理(S416)は、記録用紙Pの後端が搬送ローラ60のニップ点を通過する場合のインターレース1周期のフィード開始時に記録用紙Pの後端を所定の範囲に配置するための変更搬送量CFを算出する処理である。
大フィードで搬送ローラ60のニップ点を記録用紙Pの後端を通過させると共に、搬送ローラ60のニップ点を通過した記録用紙Pの後端を、第1のポイントよりも下流側で停止させるためには、以下の3の理由により、記録用紙Pの後端が搬送ローラ60のニップ点を通過する場合のインターレース1周期のフィード開始時に、記録用紙Pの後端の位置は、搬送ローラ60のニップ点手前の所定の範囲に配置されてなければならない。
第1の理由は、小フィード3回と大フィード1回とを繰り返す本実施形態では、搬送ローラ60のニップ点から上流側に、小フィードの総搬送量SF以下の距離で記録用紙Pの後端が配置されると、大フィードによって、記録用紙Pの後端を搬送ローラ60のニップ点を通過させることができないからである。また、第2の理由は、記録を実行する上で、インターレース1周期の搬送量Fは、インクジェットヘッド6のヘッド長を最大とする限界値を有するためである。そして、第3の理由は、第1のポイントから上流側に搬送量F以上離間して記録用紙Pの後端が配置されると、その回のインターレースの搬送によって、記録用紙Pの後端を第1のポイントに到達させることができないからである。
このため、変更搬送設定処理(S416)では、まず、印刷情報メモリ34aに記憶される記録密度を読み出し(S521)、その読み出した記録密度に対応してインターレース周期情報メモリ35bに記憶されるインターレース周期情報(搬送量F,SF,LF)を読み出す(S522)。更に、設定第1距離情報A,Bを設計値メモリ35aから読み出す(S523)。
次いで、センサ搬送メモリ34eに記憶される値と、搬送カウンタ34gの値との差分から、記録用紙Pの後端の検出点Kからの送り量DFを算出する(S524)。尚、搬送カウンタ34gのカウント値は、ページ印刷処理とは別で実行される処理によって更新されており、また、CPU32により用紙下端センサ50の検出値が用紙ありの値から用紙なしの値に変化したことを契機として搬送カウンタ34gのカウント値は読みとられて、センサ搬送メモリ34eに書き込まれている。
続いて、変更搬送量CFを以下の式によって算出する(S525)。CF1=A−DF−nF−SF,CF2=B−DF−nF−F,CF=(CF1+CF2)/2+mF、ただし、0<CF<F、m≧0を満たすものとする。そして、算出された変更搬送量CFの内、変更搬送時の大フィードの搬送量LF’(LF’=CF−SF)を変更搬送メモリ34dに書き込んで(S526)、この変更搬送設定処理(S416)を終了する。
尚、大フィードの搬送量LFは、ニップ点から第1ポイントまでの距離であるB−Aよりも大きく設定されている。
図7は、図5のページ印刷処理および図6の変更搬送設定処理(S416)による変更搬送量CFの算出概念と記録用紙Pの搬送動作とを説明する図である。
図7の右側上方には、用紙下端センサ50が表示されており、かかる用紙下端センサ50から紙面下方側への仮想線上に検出点Kが配置されている。また、図7(a)〜図7(d)のそれぞれにおいて、検出点Kの左方には、搬送ローラ60が表示され、搬送ローラ60の更に左方には、インクジェットヘッド6が表示されている。搬送ローラ60とインクジェットヘッド6の下方には、搬送される記録用紙Pを直線で示している。記録用紙P上に表示した垂線の間隔はインターレース1周期の搬送量Fを示している。
図7(a)、図7(b)では、インクジェットヘッド6の下方に表示される記録用紙Pのうち、上側の記録用紙Pは、記録用紙Pの後端が用紙下端センサ50にて検出された状態を示している。また、下側の記録用紙Pは、検出点Kにおいて記録用紙Pの後端が検出されてから、搬送が停止するまでに送られる送り量DFが、最大値(略搬送量LF、搬送量LFを若干下回る距離)で送られた状態を示している。かかる場合の変更搬送量CFを算出するために、図7(a)に示すように、まず設定第1距離情報Aを基準とする変更搬送量CF1が算出される。
図7(a)において示すように、設定第1距離情報Aは、検出点Kから搬送ローラ60のニップ点までの距離(或いはその距離に機械的交差を考慮してマージンを加味した値)である。つまり、記録用紙Pの後端が検出点Kに到達した場合における、搬送ローラ60のニップ点から記録用紙Pの後端までの長さである。
ここで、変更搬送量CF1は、CF1=A−DF−nF−SFで求められるが、本実施形態では、搬送ローラ60のニップ点から検出点Kまでの距離は2F以下であるので、nは0とされ、CF1=A−DF−SFで算出される。
この変更搬送量CF1は、設定第1距離情報Aから送り量DFを減算した値(記録用紙Pのニップ点から上流側の長さ)から、インターレース1周期の搬送量Fをn回分と、更に小フィードの総搬送量SFと減算した値とされている。
上記したように、記録用紙Pの後端を搬送ローラ60のニップ点を大フィードで通過させるインターレース1周期の開始時には、記録用紙Pの後端は、ニップ点から小フィードの総搬送量SFを越える距離以上、上流側に配置されてなくてはならない。つまり、小フィードの総搬送量SFは、搬送ローラ60のニップ点上流側に配分する記録用紙Pの長さの限界値である。かかる値SFを、記録用紙Pのニップ点から上流側の長さから減算することによって、記録用紙Pの後端を、搬送ローラ60のニップ点から小フィードの総搬送量SF上流側に配置する搬送量として、変更搬送量CF1が算出される。
図7(a)からもわかるように、求められた変更搬送量CF1は上限値となっており、かかる変更搬送量CF1よりも小さな値とするほど、搬送ローラ60のニップ点上流側に配分される記録用紙Pの長さを、より、搬送量SFから長くすることができる。
一方で、変更搬送量CFについては、小フィードの総搬送量SFを越える距離を確保する必要がある。搬送の態様は、小フィード3回、大フィード1回の組み合わせであり、本実施形態では、小フィードについては変更しない構成としているからである。本実施形態では、検出点Kは、搬送ローラ60のニップ点からインターレース1周期の搬送量Fに小フィードの総搬送量SFを加えた位置とされているので、検出点Kから最大の送り量(略搬送量LF)で記録用紙Pが搬送されても、ニップ点から記録用紙Pの後端までには、2倍のSF以上の距離が残っている。故に、変更搬送量CFを小フィードの総搬送量SF以上の搬送量で設定することができる。
次に、図7(b)に示すように、設定第1距離情報Bを基準とする変更搬送量CF2が算出される。設定第1距離情報Bは、検出点Kから搬送ローラ60のニップ点下流側の第1のポイントまでの距離である。言い換えれば、設定第1距離情報Bは、搬送停止時に記録用紙Pの後端のニップ点近傍への配置を回避する距離△Wが、設定第1距離情報Aに加味された値である。つまり、変更搬送量CF2は、搬送ローラ60のニップ点を大フィードで通過させた記録用紙Pの後端を、ニップ点から所定距離下流側の第1のポイントまで搬送するための値とされる。
変更搬送量CF2は、CF2=B−DF−nF−Fで求められる。本実施形態では、搬送ローラ60のニップ点から検出点Kまでの距離は2F以下であるので、nは0とされ、CF2=B−DF−Fで算出される。
この変更搬送量CF2は、設定第1距離情報Bから送り量DFを減算した値(第1のポイントから上流側の記録用紙の長さ)から、インターレース1周期の搬送量Fのn回分に、更にインターレース1周期の搬送量Fを減算した値とされている。
上記したように、記録用紙Pの後端を搬送ローラ60のニップ点を大フィードで通過させた後、搬送ローラ60のニップ点下流側の第1のポイントを超える位置(第1のポイントより下流側)に停止させるには、そのインターレース1周期の開始時には、記録用紙Pの後端は、第1のポイントから上流側に搬送量F未満の位置で配置されなくてはならない。
つまり、インターレース1周期の搬送量Fは、第1のポイントの上流側に配分する記録用紙Pの長さの限界値である。かかる値Fを、記録用紙Pの第1のポイントより上流側に配分された長さから減算することによって、記録用紙Pの後端を、第1のポイントからインターレース1周期の搬送量Fの距離上流側に配置する搬送量である変更搬送量CF2が算出される。
算出された変更搬送量CF2は、通常、下限値となり、かかる変更搬送量CF2よりも大きな値とするほど、第1のポイントから上流側に配分される記録用紙Pの長さを、より、インターレース1周期の搬送量から短くすることができる。
そして、変更搬送量CF1および変更搬送量CF2の両者を満足させる変更搬送量CFが、CF=(CF1+CF2)/2+mFで算出される。尚、図7(a),図7(b)に示したケースのように、CF1+CF2の値が0以下となる場合には、mの値を1以上の整数として、CFに対する補正が行われる。
図7(c)には、算出された変更搬送量CFで、記録用紙Pの搬送が実行される場合を図示している。これによれば、変更搬送量CFは、理論搬送量であるインターレース1周期の搬送量Fと同じ値となっており、理論搬送量で搬送が実行されている。
図7(d)は、送り量DFが、上記した図7(a)〜図7(c)のケースよりも小さかった場合において実行される記録用紙Pの搬送動作の例である。図7(a)〜図7(c)と同様にnは0であるので、変更搬送量CF1はCF1=A−DF−SFから、変更搬送量CF2はCF2=A−DF−Fから求められ、変更搬送量CFが、(CF1+CF2)/2+mFで求められる。尚、CF1+CF2が0を越えていれば、m=0とされる。
本実施形態では、上記したように、変更搬送時においても、小フィードは搬送量SF1〜SF3で行うものとしている。従って、図7(d)に示すように、算出された変更搬送量CFから小フィードの総搬送量SFを減算して求められる搬送量LF’による搬送により、搬送量が調整される。
図7(d)においては、上側の記録用紙Pは、変更搬送がなされずに、そのまま記録用紙Pが搬送された状態を示しており、2回目の小フィードの搬送が終了した際に、ニップ点に記録用紙Pの後端が配置された状態となってしまうことが示されている。図7(d)において下側の記録用紙Pは、用紙下端センサ50の検出点Kにおける記録用紙Pの後端通過が確認されると、3回の小フィードが搬送量SF1〜SF3で実行された後、変更搬送量CFから求められた大フィードの搬送量LF’によって、搬送が実現された状態を示している。
これにより、記録用紙Pの後端が搬送ローラ60のニップ点に導入されるまえに、その位置が調整され、搬送ローラ60のニップ点を記録用紙Pの後端は大フィード(搬送量LF)で通過し、その停止位置は、搬送ローラ60のニップ点下流側の第1のポイントを超える位置となることが示されている。
尚、本実施形態において、大フィードのみならず、小フィードについても、その搬送量SF1〜SF3を変更搬送量CFに応じて変更する(搬送量SF1’〜SF3’とする)構成としても良い。
以上、説明したように、本実施形態のカラーインクジェットプリンタ1によれば、記録用紙Pの後端が搬送ローラ60のニップ点及びニップ点直下流に配置された状態で、搬送が停止すること(即ち記録動作が実行されること)を回避している。言い換えれば、記録用紙Pの後端がニップ点を通過した後も、直ちに搬送を停止させず、引き続き、所定距離の搬送(所定時間の搬送駆動)を継続している。このため、搬送ムラが発生した状態での記録を回避し、正規の搬送量で搬送が実行された状態で記録を実行することができる。故に、記録用紙Pの高精度の搬送を実現して画像品質の良好な印刷物を生成することができる。
更に、ニップ点を通過する搬送を小フィードではなく、大フィードで行うように構成しているので、実際の搬送停止のタイミング(停止位置)が、装置の機械的誤差などにより本来の設計値から多少ズレても、確実に、ニップ点およびニップ点直下流で記録用紙Pの後端が停止するような搬送を回避することができる。
次に、図8を参照して、第2実施形態について説明する。上記した第1実施形態では、用紙下端センサ50の検出点Kは、インターレース1周期の搬送量Fに、小フィードの総搬送量SFを加算した距離、搬送ローラ60のニップ点から上流側とされた。また、検出点Kにおける記録用紙Pの後端の通過は、フィードが終了したタイミングで判断し、その検出点Kを記録用紙Pの後端が通過したと判断されると、次のインターレースの1周期における大フィードにおいて、変更搬送量CFに応じたフィードを実行するように構成された。
第2実施形態では、これに代えて、用紙下端センサ50の検出点Kは、搬送ローラ60のニップ点から、小フィードの総搬送量SFの2倍に搬送停止距離を加えた距離、上流側に設定されている。また、実行中の大フィードの搬送において、記録用紙Pの後端が、検出点Kを通過したと判断されると、直ちに、その搬送量を変更搬送量CFに基づいた搬送量に変更して、搬送を実行するように構成されている。尚、上記した第1実施形態と同じ部分には同じ符号を付し、その説明を省略する。
この第2実施形態のカラーインクジェットプリンタ1には、第1実施形態のカラーインクジェットプリンタ1の構成に加え、用紙下端センサ50の状態を記憶するためのセンサフラグがRAM34に設けられている。
センサフラグは、前回の大フィードの搬送において、用紙下端センサ50の検出値が用紙ありの値であったか否かを示すためのフラグである。このセンサフラグは、記録用紙Pの給紙動作後、用紙下端センサ50の検出値(AD値)が用紙有りの値であるとオンされる。また、記録用紙Pの搬送が大フィードで実行される期間において、用紙下端センサ50の検出値が用紙なしの値であることが確認されるとオフされる。
CPU32は、このセンサフラグの状態と現在の大フィードの期間中における用紙下端センサ50の状態とに基づいて、用紙下端センサ50の検出値が、用紙有りの値から用紙なしの値に変化したか否かを判断する。そして、かかる変化が発生したと判断した場合、変更搬送量CFに基づいた搬送を実行する。
小フィードでの搬送期間中に、用紙下端センサ50の検出値が、用紙有りの値から用紙なしの値に変化してしまうと、引き続く大フィードにおいては、用紙下端センサ50の検出値は、既に用紙なしの値となっている。つまり、大フィードでの搬送期間中に、用紙下端センサ50の検出値が、用紙有りの値から用紙なしの値へ変化することはない。
そこで、センサフラグによって前回の大フィードの実行期間中における用紙下端センサ50の状態を示すことにより、かかるセンサフラグの状態と、現在の大フィードにおける用紙下端センサ50の状態とを比較することにより、用紙下端センサ50の状態が遷移したことを把握することができるようになっている。つまり、このセンサフラグの状態と現在の大フィードの期間中における用紙下端センサ50の状態とに基づいて、用紙下端センサ50の検出値が、用紙有りの値から用紙なしの値に変化したかを判断することができ、的確に、変更搬送を実行することができる。
図8は、第2実施形態のページ印刷処理のフローチャートである。第2実施形態のページ印刷処理は、第1実施形態と同様に印刷データの受信終了を契機として起動され、まず、記録用紙Pの先端が所定の記録開始位置HSに配置されるように給紙を実行する(S401)。その後、印刷情報メモリ34aに記憶される記録密度の値に対応する理論搬送量(大搬送量および小搬送量)を対応するフィードメモリ34b,34cに書き込む(理論搬送量の取得)(S402)。
その後、用紙下端センサ50の検出値に応じて、センサフラグをオンする(S450)。給紙がなされた直後の状態では、通常、用紙下端センサ50の検出点Kには、記録用紙Pが配置されており、用紙下端センサ50の検出値は用紙有りの値である。故に、ここで、センサフラグはオンとなる。
そして、1バンドの印刷を実行する主走査印刷処理を実行する(S403)。
次に、変更フラグ34hがオンであるか否かを確認し(S404)、オンでなければ(S404:No)、変更搬送を実行するタイミングではないので、フィードカウンタ34fの値が3未満かを確認し(S405)、その値が3未満であれば(S405:Yes)、第1実施形態と同様に、LFモータ40を駆動し小フィードメモリ34cに記憶される搬送量SF1〜SF3(小搬送量)で記録用紙を搬送して(S406)、フィードカウンタ34fのカウント値に1を加算する(S407)。
また、S404の処理で確認した結果、変更フラグ34hがオンであれば(S404:Yes)、変更搬送量CFに基づいた搬送を実行するタイミングであるので、LFモータ40を駆動して、フィードカウンタ34fのカウント値に対応して変更搬送メモリ34dに記憶される搬送量、記録用紙を搬送する(S462)。
その後、フィードカウンタ34fのカウント値が3未満であるかを確認し(S463)、3未満であれば(S463:Yes)、フィードカウンタ34fのカウント値に1加算する(S465)。また、フィードカウンタ34fの値が3以上であれば(S463:No)、変更フラグ34hをオフして(S464)、その処理をS459の処理に移行する。一方、S405の処理で確認した結果、フィードカウンタ34fのカウント値が3以上であれば(S405:No)、センサフラグがオンであるか否かを確認し(S452)、オンであれば(S452:Yes)、前回の大フィード(又は給紙)では、記録用紙Pの後端は、用紙下端センサ50の検出点Kに到達していない。従って、LFモータ40を駆動して、1ステップの搬送を行う(S453)。そして、用紙下端センサ50の検出値は用紙なしの値かを確認し(S454)、ここで用紙なしの値であると(S454:Yes)、記録用紙Pの後端が前回の大フィード終了後から現在までの間に、検出点Kを通過したことが示されている。故に、LFモータ(搬送モータ)40を直ちに停止し(S455)、第1実施形態の変更搬送設定処理(S416)と同様の変更搬送設定処理を実行する(S456)。
尚、変更搬送設定処理(S456)は、第1実施形態の変更搬送設定処理(S416)と略同様に構成されているが、S526の処理が異なっている。第2実施形態では、変更搬送量CFは大フィードのみならず、小フィードについても、その搬送量を変更搬送量CFに応じて変更可能とされている。従って、S526の処理では、例えば、各小フィードの搬送量SF1’〜SF3’を各1ピッチとし、残りを大フィードの搬送量LF’とするなど、所定の区分方法に基づいて、変更搬送量CFを大フィードの搬送量LF’と小フィードの搬送量SF1’〜SF3’とに区分し、求められた各搬送量が、それぞれフィードの種類(フィードカウンタ34fのカウント値)に対応して変更搬送メモリ34dに書き込まれる。尚、搬送量SF1’〜SF3’は、搬送量SF1〜SF3と同じ値であっても異なる値であっても良い。
次に、変更フラグ34hをオンして(S457)、変更搬送量CFに基づいた搬送を実行するタイミングであることをCPU32に報し、また、センサフラグをオフして(S458)、記録用紙Pの後端が検出点Kを通過したことを示す。その後、フィードカウンタ34fのカウント値を0にセットする(S459)。
一方、S452の処理で確認した結果、センサフラグがオフであれば(S452:No)、既に、変更搬送量CFに基づいた搬送が終了した後の大フィードであるので、LFモータ40を駆動して大フィードメモリ34bに記憶される搬送量LF(大搬送量)で記録用紙の搬送を実行する(S460)。S460の処理においては、1ステップ毎の断続的な搬送ではなく、搬送量LF分の搬送が実行される。故に、変更搬送終了後は、高速で印刷を行うことができる。S460の処理の後は、その処理をS459の処理に移行する。
更に、S454の処理で確認した結果、用紙下端センサ50の検出値が用紙なしの値でなければ(S454:No)、大フィードメモリ34bに記憶される搬送量LFを搬送したかを確認し(S461)、ここで、大フィードメモリ34bに記憶される搬送量LFでの搬送が完了していなければ(S461:No)、その処理をS453の処理に移行して、搬送量LFでの搬送が完了するか、用紙下端センサ50の検出値が用紙なしの値に変化するまで、繰り返して1ステップ搬送を実行する。
また、大フィードメモリ34bに記憶される大搬送量の搬送が完了していれば(S461:Yes)、その処理をS459の処理に移行する。
S407,S459,S465の処理の後は、その処理をS408の処理に移行し、ページ印刷が完了したか否かに応じて、その処理をS403の処理に移行する。これにより、ページ印刷が完了するまで、記録動作と搬送動作とが繰り返して実行される(S408,S409)。
尚、S455の処理にてLFモータ40が停止した場合には、その後に続いて実行される主走査印刷処理(S403)においては、LFモータ40停止までに搬送された距離分に応じ、使用ノズル範囲が通常の範囲から変更され、変更された使用ノズル範囲で記録が実行される。
また、変更搬送が実行された場合には、CPU32は、その搬送量(LF’またはSF1’〜SF3’)に応じて使用ノズル範囲が、通常の範囲から変更され、変更された使用ノズル範囲で記録が実行される。
このように第2実施形態においては、用紙下端センサ50にて記録用紙Pの後端が検出されると、一端、LFモータ40を停止してから変更搬送量CFでの搬送を実行することにより、記録用紙Pの後端を、大フィードで搬送ローラ60のニップ点を通過させることができる。故に、検出点Kを第1実施形態よりも更に搬送ローラ60側へ近づけることができる。従って、第1実施形態よりも、より搬送方向の記録用紙長の短い記録用紙Pを用いた印刷であっても、高精度の搬送を実現することができる。
次に、図9から図11を参照して第3実施形態について説明する。上記した第1実施形態は、用紙下端センサ50により記録用紙Pの後端を検出することにより、変更搬送量CFを算出し、その算出された変更搬送量CFに基づいた搬送量LF’での大フィードを、記録用紙Pの後端がニップ点に到達する前に行うように構成された。
これに代えて、第3実施形態では、用紙下端センサ50による記録用紙Pの後端検出によらず、予め既知である用紙サイズに応じて変更搬送量CFを算出して変更搬送を実行するように構成されている。尚、上記した第1実施形態と同じ部分には同じ符号を付し、その説明を省略する。
具体的には、第3実施形態では、第1実施形態でカラーインクジェットプリンタ1に備えられた用紙下端センサ50は非設とされる。また、設計値メモリ35aには、用紙サイズに応じて変更搬送量CFを算出するための設定第2距離情報C,Dが、設定第1距離情報A,Bに代えて記憶されている。尚、第3実施形態のカラーインクジェットプリンタ1を、第1実施形態における用紙下端センサ50による記録用紙Pの後端検出に基づいて変更搬送量CFを算出する構成に加えて、用紙サイズに応じて変更搬送量CFを算出する構成を備えたものとしても良い。
図9は、第3実施形態のページ印刷処理を示すフローチャートである。このページ印刷処理は、第1実施形態と同様に、印刷データの受信が終了することを契機として起動され、まず、記録用紙Pの先端が設計値メモリ35aに記憶される記録開始位置HSに配置されるように給紙を実行してから、理論搬送量を取得する(S401,S402)。そして、変更搬送設定処理を実行する(S470)。
変更搬送設定処理(S470)によって変更搬送量CFが設定された後は、変更搬送量CFでの搬送を実行するタイミングであることを示すために変更フラグ34hをオンし(S471)、1バンドの印刷を実行する主走査印刷処理を実行する(S403)。
続いて、変更フラグ34hがオンであるかを確認する(S404)。第3実施形態においては、一度、変更搬送量CFで搬送を実行すれば、記録用紙Pの後端は、搬送ローラ60のニップ点を大フィード(搬送量LF)で通過し、また、ニップ点下流の第1のポイントを超えるまで搬送が継続されるように、変更搬送量CFを設計している(図10、図11参照)。また、ページ印刷処理は、印刷が開始されると直ちに変更搬送量CFでの搬送を実行するように構成されている。このため、S404の処理で確認した結果、変更フラグ34hがオフであれば(S404:No)、インターレースの2周期目以降であって、既に変更搬送量CFでの搬送は完了している。故に、理論搬送量での搬送を実行するべく、S405以降の処理を行う。
尚、かかる構成に代えて、理論搬送量に対し、複数回、搬送量変更を行うことによって、記録用紙Pの後端の停止位置がニップ点近傍となることを回避するように変更搬送量CFを設計しても良い。また、搬送ローラ60のニップ点を通過するまでのいずれのタイミングにおいて、かかる変更搬送量CFに応じた搬送量で搬送を行っても良い。
S405以降の処理では、第1実施形態と同様に、フィードカウンタ34fのカウント値に応じて、小フィードまたは大フィードで記録用紙Pの搬送を行うと共に、この搬送動作と主走査印刷処理(S403)とを、ページ印刷が完了するまで繰り返して実行し、ページ印刷が完了すると記録用紙Pを排出して、ページ印刷処理を終了する(S405〜S409,S411,S412)。
一方、S404の処理で確認した結果、変更フラグ34hがオンであれば(S404:Yes)、変更搬送量CFに基づいた搬送を実行するタイミングである。ここで、変更搬送量CFは大フィードのみならず、小フィードについても、その搬送量を変更搬送量CFに応じて変更可能とされており、小フィードと大フィードとのそれぞれの搬送量がそれぞれフィードの種類(フィードカウンタ34fの値)に対応して変更搬送メモリ34dに記憶されている。
従って、フィードカウンタ34fのカウンタ値に対応して変更搬送メモリ34dに記憶される搬送量で記録用紙Pを搬送する(S472)。即ち、フィードカウンタ34fのカウント値が0,1,2であれば、変更搬送メモリ34dに記憶される小フィードの搬送量SF1’〜SF3’で搬送が実行され、フィードカウンタ34fのカウント値が3であれば、変更搬送メモリ34dに記憶される大フィードの搬送量LF’で搬送が実行される。
次に、フィードカウンタ34fのカウンタ値が3未満かを確認し(S473)、フィードカウンタ34fのカウント値が3以下である即ち、0,1,2であると(S473Yes)、インターレースの1周期の搬送が未完了であるので、フィードカウンタ34fのカウント値に1加算して(S474)、その処理を408の処理に移行する。一方、S473の処理で確認した結果、フィードカウンタ34fのカウント値が3未満でなければ(S473:No)、フィードカウンタ34fのカウント値は3以上であって、変更搬送量CFによるインターレースの1周期の搬送が終了したことが示されているので、変更フラグ34hをオフして(S475)、その処理をS412の処理に移行し、フィードカウンタ34fのカウント値を0とする。
図10は、図9のページ印刷処理の中で実行される変更搬送設定処理(S470)を示すフローチャートである。変更搬送設定処理(S470)は、記録用紙Pの後端が搬送ローラ60のニップ点を通過する場合のフィード開始時に、記録用紙Pの後端を、所定の範囲に配置するための変更搬送量CFを算出する処理である。
この変更搬送設定処理(S470)では、まず、印刷情報メモリ34aに記憶される用紙サイズと記録密度とを読み出し(S531)、その読み出した記録密度に対応してインターレース周期情報メモリ35bに記憶されるインターレース周期情報(搬送量F,SF,LF)を読み出す(S532)。更に、設定第2距離情報C,Dと、記録開始位置HSとを設計値メモリ35aから読み出す(S533)。次いで、CF1<F,CF2<Fの条件を成立させる変更搬送量CFを以下の式によって算出する(S534)。CF1=T−C−HS−nF−SF,CF2=T−D−HS−nF−F,CF=(CF1+CF2)/2。そして、算出された変更搬送量CFを変更搬送メモリ34dに書き込んで(S535)、この変更搬送設定処理(S516)を終了する。
尚、S532の処理においては、例えば、各小フィードの搬送量SF1’〜SF3’を各1ピッチとし、残りを大フィードの搬送量LF’とするなど、所定の区分方法に基づいて、変更搬送量CFを大フィードの搬送量LF’と小フィードの搬送量SF1’〜SF3’とに区分して、小フィード及び大フィードのそれぞれの搬送量を導出し、導出された各搬送量が、それぞれフィードの種類(フィードカウンタ34fのカウント値)に対応して変更搬送メモリ34dに書き込まれる。尚、搬送量SF1’〜SF3’は、搬送量SF1〜SF3と同じ値であっても異なる値であっても良い。
尚、上記算出式において、TはS531の処理で読み出された用紙サイズ(副走査方向の長さ、記録用紙長T)である。また、算出された変更搬送量CFの変更搬送メモリ34dへの書き込みに際しては、変更搬送量CFは、所定の区分方法に基づいて大フィードの搬送量と小フィードの搬送量とに区分され、その搬送量が、変更搬送メモリ34dにそれぞれ書き込まれる。
図11は、図9のページ印刷処理および図10の変更搬送設定処理(S470)による変更搬送量CFの算出概念と記録用紙Pの搬送動作とを説明する図である。図11(a)〜図11(d)のそれぞれにおいて、右方側には搬送ローラ60が表示され、搬送ローラ60の左方には、インクジェットヘッド6が表示されている。また、搬送ローラ60とインクジェットヘッド6の下方には、搬送される記録用紙Pを直線で示している。記録用紙P上に表示した垂線の間隔はインターレース1周期の搬送量Fを示している。紙面左側は搬送方向下流側、紙面右側は搬送方向上流側とされている。
図11(a)〜図11(d)では、1枚の記録用紙Pについて、各フィード後の位置を並べて表示することにより、搬送方向に順次移送される記録用紙Pの搬送状態を示している。
図11(a)は、変更搬送を行わない場合の搬送動作を示している。記録用紙Pは、予め定められた記録開始位置HSにその先端が配置され、搬送量Fずつ下流側へと搬送される。そして、記録用紙Pの後端は、大フィードが終了した時点で、搬送ローラ60のニップ点直下(ニップ点を通過した直後)で停止されている。このような状態を回避するための変更搬送量CFを求めるべく、まず、図11(b)に示す手法によって変更搬送量CF1が求められる。
設定第2距離情報は、カラーインクジェットプリンタ1の機械的構造(仕様)によって規定された設計値である。つまり、予め定められた固定値である。図11(b)において示すように、設定第2距離情報Cは、インクジェットヘッド6の上流側端部から搬送ローラ60のニップ点までの距離(或いはその距離に機械的交差を考慮してマージンを加味した値)である。
変更搬送量CF1は、設定第2距離情報Cを基準にして算出される変更搬送量であって、具体的には、用紙サイズ(記録用紙長T)から、設定第2距離情報Cと記録開始位置HSとインターレース1周期の搬送量Fのn倍と小フィードの総搬送量SFとを減算することによって算出される。図11において示した記録用紙長Tは、説明を簡単にするためにn=0である場合を用いている。
つまり、記録開始位置HSに記録用紙Pの先端が配置された場合に、搬送ローラ60のニップ点より上流に配分される記録用紙Pの長さは、T−C−HSである。記録用紙Pにおいてニップ点から後端側は、搬送量Fで順次搬送される。従って、その長さはFずつ減少し、n回搬送後には、F未満となる余剰部分が搬送ローラ60の上流側に残る。この余剰部分が小フィードの総搬送量SFを越えていれば、記録用紙Pの後端は、大フィードでニップ点を通過することとなる。
故に、搬送量Fでのn回搬送後の余剰部分を搬送量SFの長さとする変更搬送量として変更搬送量CF1がT−C−HS−nF−SFで求められる。図11(b)から解るように、この変更搬送量CF1は上限値となっており、変更搬送量CFを、かかる変更搬送量CF1未満とすることにより、適切な位置に記録用紙Pの後端を配置し得る。
更に、図11(c)に示すように、設定第2距離情報Dを基準とする変更搬送量CF2が算出される。設定第2距離情報Dは、搬送ローラ60のニップ点下流側の第1のポイントからインクジェットヘッド6の上流側端部までの距離である。言い換えれば、設定第2距離情報Dは、搬送停止時に記録用紙Pの後端のニップ点近傍への配置を回避するための距離△Wが、設定第2距離情報Cに加味された値である。つまり、変更搬送量CF2は、搬送ローラ60のニップ点を大フィードで通過させた記録用紙Pの後端を、ニップ点から所定距離下流側の第1のポイントまで搬送するための値とされる。
搬送ローラ60のニップ点を通過する搬送において、その搬送停止時に、ニップ点よりも下流側の第1のポイントを超える位置(第1のポイントより下流側)まで記録用紙Pの後端が搬送された状態とするには、その搬送開始時に、記録用紙Pの後端は、上記第1のポイントから搬送量F未満の距離に配置されていなければならない。故に、変更搬送量CF2が、CF2=T−HS−D−nF−Fで求められる。図11(c)から解るように、この変更搬送量CF2は下限値となっており、変更搬送量CFをかかる変更搬送量CF2を超える値とすることにより、適切な位置に記録用紙Pの後端を配置し得る。
第3実施形態では、図11において示した記録用紙長Tに、n=0である場合を採用しているので、変更搬送量CF2は、T−HS−D−Fで算出される。そして、変更搬送量CF1および変更搬送量CF2の両者を満足させる変更搬送量CFが、CF=(CF1+CF2)/2で算出される。
図11(d)には、算出された変更搬送量CFで、記録用紙Pの搬送が実行される場合を図示している。第3実施形態では、変更搬送は、最初のインターレース1周期の搬送で実行されるので、記録用紙先頭部分の最初の1バンドの記録が完了すると、記録用紙Pは、変更搬送量CFで下流側(紙面左方)へと移動される。ここで、変更搬送は、搬送量SF1’、搬送量SF2’、搬送量SF3’での3回の小フィードと、搬送量LF’での1回の大フィードとにより実行される。図11(d)においては、図示を省略しているが、実際には、最上部に示した記録用紙Pは、かかる搬送量SF1’〜SF3’、LF’で順次搬送されて、その下に示した状態へと配置される。
その後は、搬送量SF1〜SF3の小フィード3回と搬送量LFによる大フィード1回の通常の搬送動作が繰り返されるが、変更搬送により記録用紙Pの位置が調整されているので、記録用紙Pの後端は、搬送ローラ60のニップ点を大フィードで通過する。また、その搬送停止時には、ニップ点よりも下流側の第1のポイントを超える位置まで記録用紙Pの後端は搬送されている。
このように第3実施形態においては、用紙サイズに基づいて変更搬送量CFを導出するので、用紙下端センサ50を非設とすることができる。このため、装置コストを抑制することができる。
尚、用紙サイズが同じであれば、変更搬送量CFは同じであるので、用紙サイズに対応して変更搬送量CFを予め記憶するメモリを設けると共に、取得した(PC100から送信された)用紙サイズに応じて該メモリから対応する変更搬送量CFを読み出し、その読み出した変更搬送量CFにて変更搬送を実行する構成としても良い。かかる場合の用紙サイズを記憶するメモリが請求項記載の搬送量記憶手段に該当する。
次に、図12から図14を参照して第4実施形態について説明する。上記した第1実施形態は、搬送量を理論搬送量Fから変更搬送量CFに変更することにより、記録用紙Pの後端を大フィードで搬送ローラ60のニップ点を通過させた。また、その搬送により、ニップ点下流側の第1のポイントを超える位置まで、記録用紙Pの後端は移送された。
これに代えて、第4実施形態では、記録開始位置HSを変更することにより、記録用紙Pの後端を大フィードで搬送ローラ60のニップ点を通過させ、且つ、その搬送により、ニップ点下流側の第1のポイントまで、記録用紙Pの後端が移送されるように構成されている。尚、上記した第1実施形態と同じ部分には同じ符号を付し、その説明を省略する。
具体的には、第4実施形態では、第1実施形態でカラーインクジェットプリンタ1に備えられた用紙下端センサ50及び変更搬送メモリ34dは非設とされる。また、設計値メモリ35aには、記録開始位置HSを算出するための設定第2距離情報C,Dが、設定第1距離情報A,Bに代えて記憶されている。加えて、RAM34には、算出された記録開始位置HSを記憶するための印刷開始情報メモリが設けられている。印刷開始時には、設計値メモリ35aにデフォルトで記憶されている記録開始位置HSに代えて、この印刷開始情報メモリに記憶される記録開始位置HSに、記録用紙Pの先端がセットされる。
図12は、第4実施形態のページ印刷処理を示すフローチャートである。このページ印刷処理は、第1実施形態と同様に印刷データの受信終了を契機として起動される。そして、まず、記録用紙Pの先端を用紙サイズに応じた記録開始位置HSへ配置するべく、記録開始位置HSを求める記録開始位置算出処理を実行する(S400)。次に、LFモータ40を駆動して、記録用紙Pの先端が記録開始位置HSに配置されるように給紙を実行する(S401)。尚、この第4実施形態では、このS401の処理において、記録開始位置算出処理(S400)にて算出され印刷開始情報メモリに記憶された記録開始位置HSに記録用紙Pが給送される。
その後、印刷情報メモリ34aに記憶される記録密度の値に対応する理論搬送量を取得(インターレース周期情報メモリ35bから読み出し)してから、1バンドの印刷を実行する主走査印刷処理を実行する(S402,S403)。
次に、フィードカウンタ34fのカウント値に応じて、小フィードまたは大フィードでの記録用紙の搬送を実行し、実行したフィードに応じて、フィードカウンタ34fのカウント値を更新する(S405〜S407,S411,S412)。
そして、ページ印刷が完了した場合には、記録用紙Pを排出してページ印刷処理を終了し、一方、ページ印刷が未完了である場合にはページ印刷処理を継続するべく、その処理をS403へ移行する(S408,S409)。
図13は、図12のページ印刷処理の中で実行される第4実施形態の記録開始位置算出処理(S400)を示すフローチャートである。この第4実施形態の記録開始位置算出処理(S400)では、まず、印刷情報メモリ34aに記憶される用紙サイズ(記録用紙長T)と記録密度とを読み出し(S541)、その読み出した記録密度に対応してインターレース周期情報メモリ35bに記憶されるインターレース周期情報(搬送量F,SF,LF)を読み出す(S542)。更に、設定第2距離情報C,Dを設計値メモリ35aから読み出す(S543)。次いで、HS1<F,HS2<Fの条件を成立させる記録開始位置HSを以下の式によって算出する(S544)。HS1=T−C−nF−SF,HS2=T−D−nF−F,HS=(HS1+HS2)/2。そして、算出された記録開始位置HSと設計値メモリ54aに記憶されるノズルピッチとに基づいて、記録開始時の使用ノズル範囲を選定し(S545)、その選定された使用ノズル範囲と算出された記録開始位置HSとを印刷開始情報メモリに記憶(出力)した後、この記録開始位置算出処理を終了する(S546)。
これにより、上記した第4実施形態のページ印刷処理(図12参照)では、記録開始位置算出処理(S400)にて算出された記録開始位置HSに記録用紙Pの先端が給送される。また、主走査印刷処理(S403)における最初の1バンドの記録は、通常のノズル使用範囲に代えて、記録開始位置算出処理(S400)で選定された範囲のノズルによって実行される。
図14は、図13の記録開始位置算出処理(S400)による記録開始位置HSの算出概念と記録用紙Pの搬送動作を説明する図である。
図14(a)〜図14(c)のそれぞれにおいて、右方側には搬送ローラ60が表示され、搬送ローラ60の左方には、インクジェットヘッド6が表示されている。また、搬送ローラ60とインクジェットヘッド6の下方には、搬送される記録用紙Pを直線で示している。記録用紙P上に表示した垂線の間隔はインターレース1周期の搬送量Fを示している。紙面左側は搬送方向下流側、紙面右側は搬送方向上流側とされている。また、図14(a)〜図14(c)では、1枚の記録用紙Pについて、各フィード後の位置を並べて表示することにより、搬送方向に順次移送される記録用紙Pの搬送状態を示している。
図14(a)は、予め設定された記録開始位置HSに記録用紙Pが給送されて印刷が実行された場合の例を示している。ここで、予め定められた記録開始位置HSに記録用紙先端が配置された記録用紙Pは、搬送に伴って、搬送量Fずつ下流側へと搬送される。そして、記録用紙Pの後端は、小フィードが終了した時点で、搬送ローラ60のニップ点直下(ニップ点を通過した直後)で停止されていることが示されている。
この図14(a)に示されるように、ニップ点を通過させるインターレース1周期の開始時において、記録用紙Pが、ニップ点より上流側に小フィードの総搬送量SF以下であると、大フィードで記録用紙Pの後端を搬送ローラ60のニップ点を通過させることはできない。また、インターレース1周期の搬送量はFであるので、ニップ点を通過させるインターレース1周期の開始時には、図14(a)において太矢印の始点から、その太矢印の右方の一点鎖線までの間に、記録用紙Pの後端が配置されることとなる。
ここで、設定第2距離情報Cは、上記した第3実施形態と同様、カラーインクジェットプリンタ1の機械的構造(仕様)によって規定された設計値であり、図14(a)に示すように、インクジェットヘッド6の上流側端部から搬送ローラ60のニップ点までの距離(或いはその距離に機械的交差を考慮してマージンを加味した値)である。
記録用紙Pの後端を、搬送ローラ60のニップ点を大フィードで通過させるために重要なのは、印刷開始時において上記ニップ点より上流側へ配分される記録用紙Pの長さであるので、かかる長さを決定するためには、まず、記録用紙長Tから設定第2距離情報Cを減算する。減算後の値は、記録開始位置HSと印刷開始時の状態においてニップ点上流側に配分された記録用紙Pの長さとの合計値となる。
記録用紙Pの後端がニップ点を通過するインターレース1周期の開始されるタイミングにおいて、記録用紙Pの後端を、搬送ローラ60のニップ点から小フィードの総搬送量SFより上流側に配置する必要がある。従って、かかる長さを確保するための限界値である搬送量SFを、上記合計値より減算する。
印刷開始時にセットされた位置から、記録用紙Pは、インターレース1周期毎にFずつ、記録用紙Pの後端がニップ点に近づくように搬送されるので、減算後の値から更に記録開始位置HSを除いた値が搬送量Fのn倍であれば、記録用紙Pの後端がニップ点を通過するインターレース1周期の開始時において、SF分の長さの記録用紙Pがニップ点上流側に配分されることとなる。
従って、図14(a)および図13の記録開始位置算出処理(S400)のS544の処理で示したように、用紙サイズ(記録用紙長T)から、設定第2距離情報Cとインターレース1周期の搬送量Fのn倍と小フィードの総搬送量SFとを減算する(HS1=T−C−nF−SF)ことによって、記録用紙Pの後端を搬送ローラ60のニップ点から搬送量SF上流側に配置する記録開始位置HS1が算出される。尚、図14において示した記録用紙長Tは、説明を簡単にするためにn=0である場合を用いている。
図14(a)からも解るように、求められた記録開始位置HS1は上限値であって、記録開始位置HSをかかる記録開始位置HS1未満とすることにより、記録用紙Pの後端がニップ点を通過するインターレース1周期の搬送が開始されるタイミングにおいて、ニップ点から小フィードの総搬送量SFを越える位置に、記録用紙Pの後端を配置することができる。
一方、図14(b)は、設定第2距離情報Dを基準とする記録開始位置HS2を算出する手法を示した図である。設定第2距離情報Dは、上記した第3実施形態と同様、カラーインクジェットプリンタ1の機械的構造(仕様)によって規定された設計値であり、搬送ローラ60のニップ点下流側の第1のポイントからインクジェットヘッド6の上流側端部までの距離である。
記録用紙Pの後端がニップ点を通過する搬送が停止した際において、ニップ点よりも下流側の第1のポイントを超えて(第1のポイントより下流側に)記録用紙Pの後端を配置するには、その搬送開始時に、上記第1のポイントから上流側に搬送量F未満の距離で、記録用紙Pの後端が配置されていなければならない。これを第4実施形態においては、印刷開始時にセットする記録用紙Pの位置(記録開始位置HS2)を調節することによって実現する。
このため、まず、記録用紙長Tから設定第2距離情報Cを減算する。記録用紙長Tから設定第2距離情報Dを減算した値は、記録開始位置HS2と印刷開始時において第1のポイントより上流側に配分された記録用紙Pの長さとの合計値となる。ここで、記録用紙Pの後端がニップ点を通過するインターレース1周期の開始されるタイミングにおいて、記録用紙Pの後端は、第1のポイントから上流側に、搬送量F未満の距離(長さ)で配置されていなくてはならないので、かかる長さを確保するための限界値である搬送量Fを、上記合計値より減算する。
印刷開始時にセットされた位置から、記録用紙Pは、インターレース1周期毎にFずつ下流側に搬送されるので、減算後の値から更に記録開始位置HSを除いた値が搬送量Fのn倍であれば、記録用紙Pの後端がニップ点を通過するインターレース1周期の開始時において、第1のポイントの上流側にF分の長さの記録用紙Pが配分されることとなる。
従って、図14の(b)および図13の記録開始位置算出処理(S400)のS544の処理で示したように、用紙サイズ(記録用紙長T)から、設定第2距離情報Dと、インターレース1周期の搬送量Fのn倍と、更に搬送量Fとを減算する(HS2=T−D−nF−F)ことによって、上記第1のポイントから搬送量Fの距離上流側に記録用紙Pの後端を配置する記録開始位置HS2が算出される。
図14(b)からも解るように、求められた記録開始位置HS2は下限値であって、記録開始位置HSをかかる記録開始位置HS2を超える位置とすることにより、ニップ点を記録用紙Pが通過するインターレース1周期の搬送が開始されるタイミングにおいて、第1のポイントより上流側に搬送量F未満の距離で、記録用紙Pの後端を配置することができる。
従って、図14(c)に示すように、記録開始位置HS1と記録開始位置HS2との間に記録開始位置HSを設定すると、記録用紙Pの後端は、搬送量SF1〜SF3での3回の小フィードの後、搬送量LFの大フィードで搬送ローラ60のニップ点を通過し、ニップ点下流の第1のポイントを超えるまで搬送される。
このように、第4実施形態によれば、用紙サイズに応じて記録開始位置HSを変更することにより、記録用紙Pの後端が搬送ローラ60のニップ点やその近傍に停止してしまうことを回避できる。つまり、第4実施形態では、印刷の開始前に、記録用紙Pの後端が上記ニップ点近傍で停止することを回避するための処理を完了してしまうことができる。故に、印刷期間中に搬送量を調整するために制御を行う必要がない。その結果、記録用紙Pの後端の現在位置を検出するための用紙下端センサ50や、用紙下端センサ50からの検出値に基づいた記録用紙Pの後端の監視動作を省略することができる。このため、記録用紙Pの後端が上記ニップ点近傍で停止することを回避するため構成を加えても、記録用紙Pの搬送を実現するプログラムを簡素な構造とすることができ、その開発を容易とすることができる。また、印刷期間中におけるCPU32の制御負担を軽減することができる。
次に、図15と図16とを参照して、第5実施形態について説明する。上記した第1実施形態は、記録用紙Pの後端が搬送ローラ60のニップ点やその直下流側にある場合に記録動作がなされることを回避するべく、記録用紙Pの後端が、搬送ローラ60のニップ点を大フィードで通過し、且つ、ニップ点より下流側の第1のポイントを超えてから搬送が停止するように構成された。つまり、第1実施形態は、記録用紙Pの後端が搬送ローラ60のニップ点を通過する際の搬送ムラに起因する記録品質(搬送精度)の低下を解決するものであった。
これに対し、第5実施形態は、インクジェットヘッド6の下流側のローラ部材(排出ローラ61)に記録用紙Pの先端が導入される場合の搬送ムラに起因する記録品質(搬送精度)の低下を解決するものである。このため、記録用紙Pの先端が、排出ローラ61のニップ点を大フィードで通過し、且つ、そのニップ点より下流側の所定のポイント(第2のポイント)を超えてから搬送が停止するように、記録開始位置HSの位置を規定するように構成されている。尚、上記した第1実施形態と同じ部分には同じ符号を付し、その説明を省略する。
具体的には、第5実施形態では、第1実施形態でカラーインクジェットプリンタ1に備えられた用紙下端センサ50及び変更搬送メモリ34dは非設とされる。また、設計値メモリ35aには、記録開始位置HSを算出するための設定第3距離情報G,Hが、設定第1距離情報A,Bに代えて記憶されている。加えて、RAM34には、算出された記録開始位置HSを記憶するための印刷開始情報メモリが設けられている。印刷開始時には、設計値メモリ35aにデフォルトで記憶されている記録開始位置HSに代えて、この印刷開始情報メモリに記憶される記録開始位置HSに、記録用紙Pの先端がセットされる。
排出ローラ61に記録用紙Pの先端が導入される場合に、記録用紙Pの先端が丸まっていると、上下の排出ローラ61の間隙に円滑に記録用紙Pが導入されず、記録用紙Pの拍車への接触状態によっては、拍車に紙送り方向の回転とは逆方向へのバックテンションを作用させる。このバックテンションの作用により、規定の搬送量分の搬送が未達となる搬送の遅延(搬送量不足)が発生する。かかる状態で記録が実行されると著しく記録品質を低下させる。
一方で、記録用紙Pの搬送量は、LFモータ40の駆動量(LFモータ40側の駆動ギヤの回転量)に支配される。上記した搬送の遅延は、駆動ギヤに歯合する排出ローラ61側のギヤ歯の遊び分、記録用紙Pの搬送が滞るものである。ここで、LFモータ40にて、駆動ギヤは、正規のタイミングで正規のポジションに回転されるので、駆動ギヤがその正規のポジションに到達した段階で、拍車と記録用紙Pとの接触によって発生した搬送の遅延は解消される。言い換えれば、上記の搬送の遅延は、一時的な搬送ムラであり、駆動ギヤが正規のポジションに回動されたタイミングでは、正規の搬送量での搬送がなされた状態となっており、記録用紙Pは正規の位置に配置されることとなる。
そこで、第5実施形態では、記録用紙Pの先端が、排出ローラ61のニップ点を大フィードで通過し、且つ、そのニップ点より下流側の第2のポイントを超えてから搬送が停止するように、カラーインクジェットプリンタ1を構成している。これにより、拍車に起因する搬送ムラが発生した状況下で記録が実行されることを回避し、記録用紙Pの先端が排出ローラ61のニップ点から十分に離間されたタイミング(即ち、搬送の遅延を回復するに十分な駆動量で駆動ギヤが回動されて正規の搬送量での搬送がなされた状況下)で、記録を実行することができるようになっている。
図15は、第5実施形態の記録開始位置算出処理(S400)を示すフローチャートである。第5実施形態のページ印刷処理は、第4実施形態のページ印刷処理(図12参照)と同様に構成されており、かかるページ印刷処理の中でこの第5実施形態の記録開始位置算出処理は実行される。このため、第5実施形態においては、記録開始位置算出処理(S400)についてのみ説明する。
この第5実施形態の記録開始位置算出処理(S400)では、まず、印刷情報メモリ34aに記憶される記録密度を読み出し(S551)、その読み出した記録密度に対応してインターレース周期情報メモリ35bに記憶されるインターレース周期情報(搬送量F,SF,LF)を読み出す(S552)。更に、設定第3距離情報G,Hを設計値メモリ35aから読み出す(S553)。
次いで、HS1<F,HS2<Fの条件を成立させる記録開始位置HSを以下の式によって算出する(S554)。HS1=G−nF−SF,HS2=H−nF−F,HS=(HS1+HS2)/2。そして、算出された記録開始位置HSと設計値メモリ54aに記憶されるノズルピッチとに基づいて、記録開始時の使用ノズル範囲を選定し(S555)、その選定された使用ノズル範囲と算出された記録開始位置HSとを印刷開始情報メモリに記憶した後(S556)、この記録開始位置算出処理(S400)を終了する。
これにより、図12に示すページ印刷処理が実行されると、S556の処理で印刷開始情報メモリに記憶された記録開始位置HSに、記録用紙Pの先端が給送される。
図16は、図15の記録開始位置算出処理(S400)による記録開始位置HSの算出概念と記録用紙Pの搬送動作を説明する図である。
図16(a)〜図16(c)のそれぞれにおいて、左方側には排出ローラ61の上側ローラである拍車が表示され、拍車の右方には、インクジェットヘッド6が表示されている。また、拍車とインクジェットヘッド6との下方には、搬送される記録用紙Pを直線で示している。記録用紙P上に表示した垂線の間隔はインターレース1周期の搬送量Fを示している。紙面左側は搬送方向下流側、紙面右側は搬送方向上流側とされている。また、図16(a)〜図16(c)では、1枚の記録用紙Pについて、各フィード後の位置を並べて表示することにより、搬送方向に順次移送される記録用紙Pの搬送状態を示している。
図16(a)は、予め設定された記録開始位置HSに記録用紙Pが給送されて印刷が実行された場合の例を示している。ここで、予め定められた記録開始位置HSに配置された記録用紙Pは、3回の小フィードと1回の大フィードとにより、搬送量Fずつ下流側へと搬送される。そして、記録用紙Pの先端は、ある小フィードが終了した時点において、排出ローラ61のニップ点直下(ニップ点を通過した直後)に配置されてしまっている。
この図16(a)に示されるように、排出ローラ61のニップ点を通過させるインターレース1周期の開始時において、記録用紙Pの先端が、排出ローラ61のニップ点から上流側であって小フィードの総搬送量SF以下の距離にあると、大フィードで記録用紙Pの先端を排出ローラ61のニップ点を通過させることはできない。言い換えれば、大フィードで記録用紙Pの先端を排出ローラ61のニップ点を通過させるためには、排出ローラ61のニップ点を通過させるインターレース1周期の開始時において、記録用紙Pの先端を、排出ローラ61のニップ点から上流側の搬送量SFの距離を超える位置(ただし搬送量F未満)に配置する必要がある。
記録用紙Pの先端は、記録開始位置HSから搬送量Fずつ下流側へと搬送されるので、印刷開始時に、排出ローラ61のニップ点からnF+SF上流側となる記録開始位置HS1に記録用紙Pの先端を配置すれば、排出ローラ61のニップ点を通過させるインターレース1周期の開始時において、記録用紙Pの先端を、排出ローラ61のニップ点から搬送量SF上流側に離間した位置にセットすることができる。
つまり、記録開始位置HS1は、排出ローラ61のニップ点を通過させるインターレース1周期の開始時において、記録用紙Pの先端を、排出ローラ61のニップ点から搬送量SF上流側に離間した位置にセットする記録開始位置である。
ここで、設定第3距離情報Gは、上記した第3、第4実施形態と同様、カラーインクジェットプリンタ1の機械的構造(仕様)によって規定された設計値であり、図16(a)に示すように、インクジェットヘッド6の上流側端部から排出ローラ61のニップ点までの距離(或いはその距離に機械的交差を考慮してマージンを加味した値)である。
故に、記録開始位置HS1は、図16(a)に示すように、設定第3距離情報Gから(nF+SF)を減算することにより、求めることができる(図15、S554参照)。
図16(a)からも解るように、求められた記録開始位置HS1は上限値であって、かかる記録開始位置HS1未満とする(即ち、インクジェットヘッド6の上流側端部から下流方向にはみ出す距離をHS1より短くする)ことにより、記録用紙Pの先端が排出ローラ61のニップ点を通過するインターレース1周期の搬送開始時に、排出ローラ61のニップ点から搬送量SF以上、上流側の位置に、記録用紙Pの先端を配置することができる。即ち、記録用紙Pの先端を、大フィード(搬送量LF)で、排出ローラ61のニップ点を通過させることができる。
一方、図16(b)に示されるように、排出ローラ61のニップ点を通過させるインターレース1周期の開始時において、記録用紙Pの先端が、上記第2のポイント上流側であって搬送量F以上の距離にあると、大フィード(搬送量LF)でニップ点を通過した記録用紙Pの先端を、上記の第2のポイントを超える位置(第2のポイントの下流側)まで移送することができない。
ここで、印刷開始時に、第2のポイントからnF+F上流側となる記録開始位置HS2に記録用紙Pの先端を配置すれば、排出ローラ61のニップ点を通過させるインターレース1周期の終了時において、記録用紙Pの先端を、上記第2のポイントに配置することができる。
つまり、記録開始位置HS2は、排出ローラ61のニップ点を通過させるインターレース1周期で搬送がなされた場合に、記録用紙Pの先端を、排出ローラ61のニップ点下流側の第2のポイントまで記録用紙Pの先端を移送する記録開始位置である。
ここで、設定第3距離情報Hは、上記した第3、第4実施形態と同様、カラーインクジェットプリンタ1の機械的構造(仕様)によって規定された設計値であり、排出ローラ61のニップ点下流側の第2のポイントからインクジェットヘッド6の上流側端部までの距離である。つまり、設定第3距離情報Hは、搬送停止時に記録用紙Pの先端のニップ点近傍への配置を回避するための距離△Wが、設定第3距離情報Gに加味された値である。
故に、記録開始位置HS2は、図16(b)に示すように、設定第3距離情報Hから(nF+F)を減算することにより、求めることができる(図15、S554参照)。
図16(b)からも解るように、求められた記録開始位置HS2は下限値であって、記録開始位置HSをかかる記録開始位置HS2を超える位置とする(即ち、インクジェットヘッド6の上流側端部から下流方向にはみ出す距離をHS2より長くする)ことにより、記録用紙Pの先端が排出ローラ61のニップ点を通過するインターレース1周期の搬送開始時に、第2のポイントから上流側であって該第2のポイントから搬送量F未満の位置に、記録用紙Pの先端を配置することができる。即ち、大フィード(搬送量LF)で排出ローラ61のニップ点を通過した記録用紙Pの先端を、上記所定のポイントより下流側まで搬送することができる。
従って、図16(c)に示すように、記録開始位置HS1と記録開始位置HS2との間に記録開始位置HSを設定することにより、記録用紙Pの先端を、大フィードで排出ローラ61のニップ点を通過させると共に、記録用紙Pの先端がニップ点下流の第2のポイントを超えるまで搬送された状態で搬送を停止することができる。
このように、第5実施形態によれば、記録用紙Pの先端が排出ローラ61のニップ点やその近傍に停止してしまうことを回避できる。つまり、第5実施形態では、記録用紙Pの先端が排出ローラ61に導入される際に発生する搬送ムラが発生しても、かかる搬送ムラが解消された状態で記録を実行することができるので、記録品質の良好な印刷物を作製することができる。
次に、図17から図19を参照して第6実施形態について説明する。上記した第1実施形態は、記録用紙Pの後端が搬送ローラ60のニップ点やその直下流側にある場合に記録動作がなされることを回避するべく、記録用紙Pの後端が、搬送ローラ60のニップ点を大フィードで通過し、且つ、ニップ点より下流側の第1のポイントを超えてから搬送が停止するように構成された。これに加えて、第6実施形態は、インクジェットヘッド6の下流側のローラ部材に記録用紙Pの先端が導入される場合の搬送ムラに起因する記録品質(搬送精度)の低下を解決する構成を備えて構成されている。尚、上記した第1実施形態と同じ部分には同じ符号を付し、その説明を省略する。
具体的には、第6実施形態では、第1実施形態でカラーインクジェットプリンタ1に備えられた用紙下端センサ50は非設とされる。また、設計値メモリ35aには、搬送ローラ60(記録用紙Pの後端)および排出ローラ61(記録用紙Pの先端)に起因して発生する搬送ムラを回避して記録を実行することのできる記録開始位置HSを算出するために、設定第2距離情報C,Dと設定第3距離情報G,Hとが記憶されている。設定第2距離情報C,Dは、第3実施形態にて用いられた設定第2距離情報C,Dと同じ定数である。また、設定第3距離情報G,Hは、第5実施形態で用いられた第3設定距離情報G,Hと同じ定数である。
加えて、RAM34には、算出された記録開始位置HSを記憶するための印刷開始情報メモリが設けられている。印刷開始時には、設計値メモリ35aにデフォルトで記憶されている記録開始位置HSに代えて、この印刷開始情報メモリに記憶される記録開始位置HSに、記録用紙Pの先端がセットされる。
更には、第6実施形態では、記録用紙Pの先端が拍車を通過することにより変更搬送のタイミングが到来するので、変更フラグ34hは、記録用紙変更搬送量CFが算出されたタイミングではなく、記録用紙Pの先端が拍車を通過するとオンされる。オンされた変更フラグ34hは、変更搬送量CFでの搬送(大フィード)が終了するとオフされる。
また、RAM34には、回避フラグが設けられている。回避フラグは、記録用紙Pの先端に起因する搬送ムラと記録用紙Pの後端に起因する搬送ムラとの両者を回避することができたか否かを示すフラグである。
この回避フラグはページ印刷の開始時に0クリア(フラグオフ)される。また、ページ印刷処理の記録開始位置算出処理(S400)において、次の2の条件を成立させることのできる記録開始位置HSを算出することができた場合にオンされる。一方の条件は、排出ローラ61に導入された記録用紙Pの先端を大フィードで排出ローラ61のニップ点を通過させると共に、その停止位置を排出ローラ61のニップ点下流の第2のポイントを超える位置とすることである。他方の条件は、搬送ローラ60に導入された記録用紙Pの後端を大フィードで搬送ローラ60のニップ点を通過させると共に、その停止位置を搬送ローラ60のニップ点下流の第1のポイントを超える位置とすることである。
このため、回避フラグは、両者の条件を満足させる記録開始位置HSが算出された場合にオンとなり、かかる記録開始位置HSが算出不能であった場合にはオフのままとなる。
CPU32は、第6実施形態のページ印刷処理の中で、この回避フラグの状態を参照し、両者の条件を満足させる記録開始位置HSが算出不能であったことが示されている場合には、所定のタイミングで変更搬送を実行する。変更搬送が実行された後は、記録用紙Pの先端に起因する搬送ムラと記録用紙Pの後端に起因する搬送ムラとの両者を回避することができた状態となるので、かかる場合にも回避フラグはオンされる。
図17は、第6実施形態のページ印刷処理を示すフローチャートである。この第6実施形態のページ印刷処理は、第1実施形態と同様に印刷データの受信が終了することを契機として起動される。そして、まず、記録用紙Pの先端を配置する記録開始位置HSを求める記録開始位置算出処理を実行する(S400)。
次に、LFモータ40を駆動して、記録用紙Pの先端が、記録開始位置算出処理(S400)にて算出され印刷開始情報メモリに記憶された記録開始位置HSに配置されるように給紙を実行する(S401)。その後、印刷情報メモリ34aに記憶される記録密度の値に対応する理論搬送量を取得(インターレース周期情報メモリ35bから読み出し)してから、1バンドの印刷を実行する主走査印刷処理を実行する(S402,S403)。
その後、更に、変更フラグ34hがオンであるか否かを確認し(S404)、オンでなければ(S404:No)、変更搬送を実行するタイミングではないので、フィードカウンタ34fのカウント値に応じたフィード(搬送)を実行してから、実行したフィードに応じてフィードカウンタ34fのカウント値を更新した後(S405〜S407,S411,S412)、ページ印刷が完了したかを確認し(S408)、ページ印刷完了であれば(S408:Yes)、記録用紙Pを排出して(S409)、ページ印刷処理を終了する。
また、S404の処理で確認した結果、変更フラグ34hがオンであれば(S404:Yes)、変更搬送量CFに基づいた搬送を実行するタイミングであるので、LFモータ40を駆動して、フィードカウンタ34fのカウント値に対応して変更搬送メモリ34dに記憶される搬送量、記録用紙Pを搬送する(S480)。
その後、フィードカウンタ34fのカウント値が3未満であるかを確認し(S481)、3未満であれば(S481:Yes)、フィードカウンタ34fのカウント値に1加算して(S482)、その処理をS408の処理に移行する。また、フィードカウンタ34fの値が3以上であれば(S461:No)、変更フラグ34hをオフして(S483)、その処理をS412の処理に移行する。
一方、S408の処理で確認した結果、ページ印刷が未完了である場合には(S408:No)、回避フラグがオンであるかを確認し(S484)、回避フラグがオンであれば(S484:Yes)、記録開始位置算出処理(S400)にて算出された記録開始位置HSに記録用紙Pがセットされたことにより、排出ローラ61に導入される記録用紙Pの先端を大フィードで排出ローラ61のニップ点を通過させ、且つ、その停止位置を排出ローラ61のニップ点下流の第2のポイントを超える位置とすると共に、搬送ローラ60に導入される記録用紙Pの後端を大フィードで搬送ローラ60のニップ点を通過させた後、その停止位置を搬送ローラ60のニップ点下流の第1のポイントを超える位置とする搬送状態にあることが示されている。
即ち、回避フラグのオンは、算出された記録開始位置HSに記録用紙Pがセットされて印刷が開始されたことにより、理論搬送量LF,SFに従って搬送を実行するだけで、搬送精度が低下した状態での記録動作が回避されることが示されている。故に、S485〜S488の処理をスキップして、その処理をS403の処理に移行する。
一方、S484の処理で確認した結果、回避フラグがオフであれば(S484:No)記録用紙Pの先端が排出ローラ61に導入される場合の搬送ムラと、記録用紙Pの後端が搬送ローラ60に導入される場合の搬送ムラとの両者を回避できる記録開始位置HSが算出不能であったことが示されている。 後述する第6実施形態の記録開始位置算出処理(S400、図18参照)では、記録用紙Pの先端が排出ローラ61に導入される場合の搬送ムラと、記録用紙Pの後端が搬送ローラ60に導入される場合の搬送ムラとの両者を回避できる記録開始位置HSが算出不能であった場合には、記録用紙Pの先端が排出ローラ61に導入される場合の搬送ムラを回避する記録開始位置を記録開始位置HSとして設定する。
故に、回避フラグがオフであれば、記録用紙Pの先端が拍車を通過したか、即ち、記録用紙Pの先端が拍車を通過するインターレースの1周期が終了したかを確認し(S485)、ここで、記録用紙Pの先端が拍車を通過していなければ(S485:No)、現在の搬送状態を維持するために、その処理をS403の処理に移行する。
また、S485の処理で確認した結果、記録用紙Pの先端が拍車を通過していれば(S485:Yes)、記録用紙Pの後端を、大フィードで搬送ローラ60のニップ点を通過させ、その停止位置をニップ点下流の第1のポイントを超えた位置とするために、変更搬送を実行するべく、変更フラグ34hをオンする(S486)。
また、変更フラグ34hがオンされると、次の大フィードの搬送は、変更搬送量CFに基づいて実行され、その後は、理論搬送量LF,SFに従って搬送を実行すれば、搬送ローラ60に導入された記録用紙Pの後端は、大フィードで搬送ローラ60のニップ点を通過した後、第1のポイントを超えてから停止することとなる。つまり、搬送精度が低下した状態での記録動作が回避されたこととなるので、回避フラグをオンしてこれを示し(S487)、変更搬送設定処理を実行する(S488)。
第6実施形態の変更搬送設定処理(S488)は、第3実施形態の変更搬送処理(S470)と同様に構成されており、1度、変更搬送を実行すれば、搬送ローラ60のニップ点を記録用紙Pの後端が通過する搬送開始時において、記録用紙Pの後端を搬送ローラ60手前の規定の範囲(大フィードで搬送ローラ60のニップ点を通過させ、第1のポイントを超えてから停止させる位置)に配置することができるように、変更搬送量CFが算出される。変更搬送設定処理(S488)の後に主走査印刷処理(S403)で記録が実行されると、変更フラグ34hのオンに従ってS480の処理に移行するので、変更搬送設定処理(S488)で変更搬送メモリ34dに記憶された変更搬送量CFに対応する搬送が実行される。
変更搬送の終了後は、回避フラグはオンであり、変更フラグ34hはオフであるので(S484:Yes)、S485以降の処理は回避され、変更フラグ34hがオンされることなく、理論搬送量LF、SFでの記録用紙Pの搬送が、ページ印刷完了するまで繰り返して実行される。
次に、図18及び図19を参照して、第6実施形態で記録開始位置HSを選定する処理について説明する。図18は、図17のページ印刷処理の中で実行される第6実施形態の記録開始位置算出処理(S400)を示すフローチャートである。図19は、第6実施形態の記録開始位置算出処理(S400)において算出される記録開始位置HSの例を模式的に示した図である。
第6実施形態の記録開始位置算出処理(S400)は、記録用紙Pの先端または後端が、搬送ローラ60または排出ローラ61を通過するどちらの場合においても、搬送ムラを回避した状態で記録を実行すことのできる共通の記録開始位置HSを算出する処理であり、まず、印刷情報メモリ34aに記憶される用紙サイズと記録密度とが読み出される(S561)。
その後、読み出した記録密度に対応するインターレース周期情報(搬送量F,SF,LF)をインターレース周期情報メモリ35bから読み出し(S562)、更に、設定第2距離情報C,D及び設定第3距離情報G,Hを設計値メモリ35aから読み出す(S563)。
続いて、記録用紙Pの先端を基準とする記録開始位置HS1a,HS2aを以下の式によって算出する(S564)。HS1a=G−nF−SF,HS2a=H−nF−F。この記録開始位置HS1a,HS2aは、第5実施形態の記録開始位置算出処理(S400)におけるS554の処理にて算出される記録開始位置HS1,HS2と同じであり、排出ローラ61に導入される記録用紙Pの先端を大フィードで排出ローラ61のニップ点を通過させた後、その停止位置を該ニップ点下流の第2のポイントを超えた位置とするための記録開始位置の上限値と下限値とを示すものである。
次に、記録用紙Pの後端を基準とする記録開始位置HS1b,HS2bを以下の式によって算出する(S565)。HS1b=T−C−nF−SF,HS2b=T−D−nF―F。この記録開始位置HS1b,HS2bは、第4実施形態の記録開始位置算出処理(S400)におけるS544の処理にて算出される記録開始位置HS1,HS2と同じであり、搬送ローラ60に導入される記録用紙Pの後端を大フィードで搬送ローラ60のニップ点を通過させた後、その停止位置を該ニップ点下流の第1のポイントを超えた位置とするための記録開始位置の上限値と下限値とを示すものである。
かかるS564、S565の処理により、4つの記録開始位置HS1a,HS2a,HS1b,HS2bが暫定的に算出される。図19(a)〜図19(d)には、算出された記録開始位置HS1a,HS2a,HS1b,HS2bの例を示している。尚、図19においては、紙面左側を記録用紙の搬送方向先端側(下流側)とし、紙面右側を搬送方向後端側(上流側)として図示している。また、記録用紙P上に搬送方向に沿って表示される直線は、1パス目(1P)〜4パス目(4P)の搬送の軌道を示している。
図19の例によれば、記録開始位置HS1aは、図19(a)にて両矢印で示される距離で与えられている。記録開始位置は、インクジェットヘッド6の上流側端部を基点とする記録用紙Pの先端までの距離であるので、記録開始位置HS1aにおいては、その両矢印右側先端で示される位置が、インクジェットヘッド6の上流側端部に対向して配設される位置となる。また、記録開始位置HS2aは、図19(b)に示すように、記録用紙Pの先端である(距離0)。即ち、記録開始位置HS2aが与えられた場合は、記録用紙Pの先端をインクジェットヘッド6の上流側端部に対向して配設することとなる。
第5実施形態にて詳細に述べたように、記録用紙Pの先端を大フィードで排出ローラ61のニップ点を通過させた後、その停止位置を該ニップ点下流の第2のポイントを超えた位置とするためには、記録開始位置HSは、記録開始位置HS2aを超え記録開始位置HS1a未満の範囲になければならない。故に、図19においては、記録用紙Pの先端から記録開始位置HS1aの両矢印の右側先端までの範囲が、記録用紙Pの先端を基準とする記録開始位置に適応する位置となる。
同様に、図19の例によれば、記録開始位置HS1bは、図19(c)にて両矢印で示される距離で与えられている。記録開始位置HS2bは、図19(d)にて両矢印で示される距離で与えられている。第4実施形態にて詳細に述べたように、記録用紙Pの後端を大フィードで搬送ローラ60のニップ点を通過させた後、その停止位置を該ニップ点下流の第1のポイントを超えた位置とするためには、記録開始位置HSは、記録開始位置HS2bを超え記録開始位置HS1b未満の範囲になければならない。故に、図19においては、記録開始位置HS2bの両矢印右側先端から記録開始位置HS1bの両矢印右側先端までの範囲が、記録用紙Pの後端を基準とする記録開始位置に適応する位置となる。
次に、上記条件を満足しつつ、更に、記録用紙Pの先端および後端のそれぞれを基準として算出された記録開始位置間の共通領域を算出するために、記録開始位置HS1aが記録開始位置HS1bよりも大きいか(HS1a>HS1b)を確認する(S566)。その結果、HS1a>HS1bであれば(S566:Yes)、より小さい方の値であるHS1bを記録開始位置HS1として決定する(S567)。逆に、HS1a>HS1bでなければ(S566:No)、より小さい方の値であるHS1aを記録開始位置HS1として決定する(S568)。
ここで、記録開始位置HS1aは、その算定方式上、記録開始位置HS2aよりも大きな値となり、同様に、記録開始位置HS1bもまた記録開始位置HS2bよりも大きな値となっている。従って、記録開始位置HS1aと記録開始位置HS1bとの内の小さい方を選択することにより、記録開始位置HS1aと記録開始位置HS1bとの共通領域を抽出することができる。尚、図19の例によれば、記録開始位置HS1としてHS1aが選択されることとなる(図19(e)参照)。
S567の処理又はS568の処理の後は、記録開始位置HS2aが記録開始位置HS2bよりも小さいか(HS2a<HS2b)を確認する(S569)。その結果、HS2a<HS2bであれば(S569:Yes)、より大きい方の値であるHS2bを記録開始位置HS2として決定する(S570)。逆に、HS2a<HS2bでなければ(S569:No)、より大きい方の値であるHS2aを記録開始位置HS2として決定する(S571)。
S570の処理又はS571の処理の後は、導出された記録開始位置HS1が記録開始位置HS2よりも大きいか(HS1>HS2)を確認する(S572)。ここで、HS1>HS2であれば(S572:Yes)、記録開始位置HS1と記録開始位置HS2とをそれぞれ上限値、下限値とする範囲、即ち、記録用紙Pの先端を基準として算出された記録開始位置と記録用紙Pの後端を基準として算出された記録開始位置との共通領域を示している。従って、記録開始位置HSを記録開始位置HS1と記録開始位置HS2との平均((HS=(HS1+HS2)/2)で算出する(S573)。
その後、回避フラグをオンして(S574)、記録用紙Pの先端および後端を基準した記録開始位置を1の(共通の)記録開始位置で設定したこと、即ち、搬送精度が低下した状態での記録動作が回避されたことを示してから、算出された記録開始位置HS(S573の処理またはS575の処理のいずれかで算出された記録開始位置HS)と、設計値メモリ35aに記憶されるノズルピッチとに基づいて、印刷開始時の使用ノズル範囲を選定し(S577)、算出された記録開始位置HSと選定された使用ノズル範囲とを印刷開始情報メモリに記憶して(S578)、この記録開始位置算出処理(S400)を終了する。図19(e)には、この算出された共通の記録開始位置HSに記録用紙Pが配置された場合が示されている。これによれば、記録用紙Pの先端が排出ローラ61を通過する区間においても、記録用紙Pの後端が搬送ローラ60を通過する区間においても、その搬送は大フィードで実行され、また、搬送停止位置は、各ニップ点から十分離間された位置となる。
一方、S572の処理で確認した結果、HS1>HS2でなければ(S572:No)、記録用紙Pの先端を基準として算出された記録開始位置と記録用紙Pの後端を基準として算出された記録開始位置とには、共通領域がないこと、つまり、記録用紙Pの先端が排出ローラ61に導入される場合の搬送ムラと、記録用紙Pの後端が搬送ローラ60に導入される場合の搬送ムラとの両者を回避できる記録開始位置HSが算出不能であったことを示している。記録開始位置HSは、記録開始位置HS2を超え記録開始位置HS1未満となる範囲でなければならないからである。
かかる場合には、記録用紙Pの先端が排出ローラ61に導入される場合に適した(即ち、記録用紙Pの先端が排出ローラ61に導入される場合の搬送ムラを回避できる)記録開始位置HS(HS=(HS1a+HS2a)/2)を設定してから(S575)、回避フラグをオフとして(S576)、記録用紙Pの先端を基準した記録開始位置を記録開始位置HSとして設定したこと、言い換えれば、記録用紙Pの先端および後端を基準した記録開始位置を1の記録開始位置HSで設定できなかったことを示し、その処理をS577の処理に移行する。
記録用紙Pの先端を基準として算出された記録開始位置HSに記録用紙Pをセットしてページ印刷処理が実行される場合、記録用紙Pの後端が搬送ローラ60のニップ点を通過するインターレース周期の搬送が開始される前に、記録用紙Pの搬送位置を調整する必要がある。そこで、上記した第6実施形態のページ印刷処理では、記録用紙Pの先端が拍車を通過すると、第3実施形態の変更搬送処理(S470、図10参照)と同様の変更搬送処理(S488)を実行するように構成されているのである。
これにより、記録用紙Pの後端が搬送ローラ60を通過する場合には、大フィード(搬送量LF)でその後端を通過させることができる。また、排出ローラ61のニップ点を通過した後の記録用紙Pの先端の位置は、設定第3距離情報Hにて示される距離よりも下流側へ配置されて停止する。同様に、搬送ローラ60のニップ点を通過した後の記録用紙Pの後端の位置は、設定第2距離情報Dにて示される距離よりも下流側へ配置されて停止する。
このように、第6実施形態によれば、記録用紙Pの先端または後端が、排出ローラ61または搬送ローラ60に導入される場合にそれぞれ発生する搬送ムラを回避した状況下で、記録を実行することができるので、記録品質の良好な印刷物を得ることができる。
尚、上記各実施形態において、図5、図8、図9、図12、図17に示したページ印刷処理において、記録用紙Pの後端の搬送位置を調節するための各ステップが請求項記載の後端搬送制御手段および後端搬送制御ステップに該当する。また、第5実施形態として実施される図12に示したページ印刷処理と、図17に示したページ印刷処理とにおいて、記録用紙Pの先端の搬送位置を調節するための各ステップが先端搬送制御手段および先端搬送制御ステップに該当する。
以上実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものでなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
例えば、小フィードを2回以上する場合に、その搬送量を全て同一にする必要はなく、少なくとも1以上の搬送量が異なるように構成しても良い。
更には、上記各実施形態においては、小フィード3回、大フィード1回の組み合わせをインターレースの1周期としたが、フィードの組み合わせはこれに限られるものではない。尚、フィードの回数および、順序が変更された場合には、搬送ローラ60のニップ点を記録用紙Pの後端が通過する場合の搬送、または、排出ローラ61のニップ点を記録用紙Pの先端が通過する場合の搬送に際して配置される記録用紙Pの後端および先端の位置は、設定第1距離情報〜設定第3距離情報および各フィード量に応じて適宜変更されるものとされる。
加えて、上記第4〜第6実施形態では、算出された記録開始位置HSへの記録用紙Pの搬送は、記録用紙Pを給送するために設けられたステップにより、1度の搬送で実行されるように、ページ印刷処理は構成されたが、必ずしも、1度の搬送で記録開始位置HSに記録用紙Pを給送する必要はなく、複数回数の搬送で記録開始位置まで搬送しても良い、更には、記録用紙Pを搬送する別のステップ(例えば、インターレースと同じ搬送で)、その複数回の搬送の少なくとも一部を行うようにしても良い。
更に、上記各実施形態では、本発明の画像形成装置をカラーインクジェットプリンタとして説明したが、本発明の画像形成装置としては、ドットインパクト、サーマルプリンタ等であっても良い。
また、上記各実施形態において印刷制御プログラム33aは、カラーインクジェットプリンタ1に搭載され、カラーインクジェットプリンタ1において、変更搬送量CFや記録開始位置HSを算出する構成として。これに代えて、変更搬送量CFや記録開始位置HSを算出するアルゴリズムをPC100に保有させ、用紙サイズに応じて算出された変更搬送量CFや記録開始位置HSをPC100からカラーインクジェットプリンタ1に出力することにより、上記各実施形態にて説明した記録用紙Pの搬送をカラーインクジェットプリンタ1に実行させても良い。
加えて、上記第4、第5、第6実施形態では、記録開始位置HSを印刷の開始毎に算出する構成としたが、これに代えて、記録用紙長Tと記録密度とに対応つけて、予め、対応する記録開始位置HSを記憶するメモリを設け、取得した記録用紙長Tと記録密度とに対応する記録開始位置HSをかかるメモリから読み出すと共に、その読み出した記録開始位置HSへ記録用紙Pの先端がセットされるように、カラーインクジェットプリンタ1を構成しても良い。これによれば、ページ印刷の実行毎に、いちいち記録開始位置HSを算出する必要がないので、印刷処理全体に要する時間を短縮することができる。
更に、上記各実施形態においてカラーインクジェットプリンタ1が、小フィードの搬送量が、機械的誤差や制御誤差を考慮しても、十分に搬送ローラ60や排出ローラ61のニップ点を通過させることのできる距離である場合や、高精度の搬送制御機構を備えている場合には、必ずしも、ニップ点を通過させる搬送を大フィードで行う必要はなく、小フィードで行っても良い。
加えて、記録密度が低い場合には、均等送りにおいても1回の搬送量は大きくなる。かかる場合に、その搬送量が、十分に搬送ローラ60や排出ローラ61のニップ点を通過させることのできる距離である場合には、上記各実施形態のカラーインクジェットプリンタ1を、均等送りによってページ印刷処理を実行するよう構成しても良い。