本発明の構成をより詳しく説明すれば次の通りである。
先ず、本発明に係る磁気記録媒体用の非磁性下地層用複合非磁性粒子粉末(以下、「複合非磁性粒子粉末」という。)について述べる。
本発明に係る複合非磁性粒子粉末は、芯粒子である酸化チタン粒子の粒子表面に、カーボンブラックが存在している複合非磁性粒子からなる。
本発明における酸化チタン粒子の結晶形は、ルチル型、アナターゼ型、ブルカイト型又はルチル型とアナターゼ型の混合系のいずれをも用いることができるが、触媒活性の低減効果を考慮すれば、ルチル型が好ましい。
本発明における酸化チタン粒子の粒子形状は、針状、紡錘状、米粒状、球状、粒状、多面体状、フレーク状、鱗片状及び板状等のいずれの形状であってもよい。
本発明における酸化チタン粒子粉末の平均粒子径は0.30μm以下であり、好ましくは0.005〜0.25μm、より好ましくは0.010〜0.20μmである。平均粒子径が0.30μmを超える場合には、得られる複合非磁性粒子もまた粗大粒子となり、これを用いて非磁性下地層を形成した場合には、塗膜の表面平滑性が損なわれやすい。平均粒子径が0.005μm未満の場合には、粒子の微細化により触媒活性が増大する傾向にあるため好ましくない。
本発明における酸化チタン粒子粉末のBET比表面積値は15〜250m2/gが好ましく、より好ましくは20〜200m2/g、更により好ましくは25〜150m2/gである。BET比表面積値が15m2/g未満の場合には、酸化チタン粒子粉末が粗大であったり、粒子相互間で焼結が生じた粒子となっており、得られる複合非磁性粒子粉末もまた粗大粒子となり、これを用いて磁気記録層を形成した場合には、塗膜の表面平滑性が損なわれやすい。BET比表面積値が250m2/gを超える場合には、粒子の微細化により触媒活性が増大する傾向にあるため好ましくない。
本発明における酸化チタン粒子粉末の水分量は0.1〜10.0%であることが好ましく、より好ましくは0.3〜9.0%である。水分量が0.1%未満の場合には、酸化チタン粒子粉末の粒子表面への表面改質剤による被覆処理が困難となることがある。
本発明における酸化チタン粒子粉末の触媒活性は、後述する測定方法において、通常200〜600mg/gを有している。結晶形がルチル型の場合には、アナターゼ型に比べて触媒活性が低いため、150〜400mg/gを有している。
本発明における表面改質剤としては、酸化チタン粒子の粒子表面へカーボンブラックを付着できるものであれば何を用いてもよく、アルコキシシラン、フルオロアルキルシラン、シラン系カップリング剤及びオルガノポリシロキサン等の有機ケイ素化合物、チタネート系、アルミネート系及びジルコネート系などのカップリング剤、低分子あるいは高分子界面活性剤等が好適に用いられる。
有機ケイ素化合物としては、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン及びデシルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、トルフルオロプロピルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン及びトリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン等のフルオロアルキルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ―アミノプロピルトリエトキシシラン、γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ―メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ―メタクロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、ポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、変性ポリシロキサン等のオルガノポリシロキサン等が挙げられる。
チタネート系カップリング剤としては、イソプロピルトリステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル・アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスフェートチタネート、テトラ(2,2ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスフェートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート等が挙げられる。
アルミネート系カップリング剤としては、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムジイソプロポキシモノエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート等が挙げられる。
ジルコネート系カップリング剤としては、ジルコニウムテトラキスアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビスアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラキスエチルアセトアセテート、ジルコニウムトリボトキシモノエチルアセトアセテート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート等が挙げられる。
低分子系界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジオクチルスルホンコハク酸塩、アルキルアミン酢酸塩、アルキル脂肪酸塩等が挙げられる。高分子系界面活性剤としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、カルボキシメチルセルロース、アクリル酸−マレイン酸塩コポリマー、オレフィン−マレイン酸塩コポリマー等が挙げられる。
カーボンブラックの付着効果を考慮すれば、アルコキシシラン、フルオロアルキルシラン、ポリシロキサン等の有機ケイ素化合物、シラン系、チタネート系、アルミネート系及びジルコネート系の各種カップリング剤を用いることが好ましい。
表面改質剤による被覆量は、表面改質剤被覆芯粒子粉末に対してC換算で0.01〜15.0重量%が好ましい。表面改質剤を0.01〜15.0重量%の範囲で処理することにより、芯粒子粉末表面にカーボンブラックを効果的に付着することができる。より好ましくは0.02〜12.5重量%であり、更により好ましくは0.03〜10.0重量%である。
本発明におけるカーボンブラックとしては、ファーネスブラック、チャンネルブラック及びアセチレンブラック等のカーボンブラック粒子粉末を用いることができる。
本発明におけるカーボンブラックの付着量は、芯粒子粉末100重量部に対して0.1〜500重量部であり、好ましくは0.5〜400重量部、より好ましくは1.0〜300重量部である。0.1重量部未満の場合には、芯粒子の粒子表面を被覆するカーボンブラックが少なすぎるため、本発明の目的とする触媒活性を低減した酸化チタンからなる複合非磁性粒子粉末を得ることが困難となる。500重量部を超える場合には、カーボンブラックが芯粒子表面から脱離しやすくなり、その結果、得られた粒子粉末はビヒクル中への分散性が低下するため好ましくない。
本発明に係る複合非磁性粒子粉末の粒子形状は、芯粒子粉末である非磁性粒子粉末の粒子形状に大きく依存し、芯粒子に相似する粒子形態を有している。
即ち、本発明に係る複合非磁性粒子の粒子形状は、針状、紡錘状、米粒状、球状、粒状、多面体状、フレーク状、鱗片状及び板状等のいずれの形状であってもよい。
本発明に係る複合非磁性粒子粉末の平均粒子径は0.3μm以下が好ましく、より好ましくは0.005〜0.25μm、更により好ましくは0.010〜0.20μmである。平均粒子径が0.30μmを超える場合には、複合非磁性粒子が大粒子となり、これを用いて非磁性下地層を形成した場合には、塗膜の表面平滑性が損なわれやすい。平均粒子径が0.005μm未満の場合には、粒子の微細化により触媒活性が増大する傾向にあるため好ましくない。また、分子間力の増大により凝集を起こしやすく、その結果、粗大粒子が生成し非磁性塗料の製造時におけるビヒクル中への均一な分散が困難となる。
本発明に係る複合非磁性粒子粉末のBET比表面積値は15〜250m2/gが好ましく、より好ましくは20〜200m2/g、更により好ましくは25〜150m2/gである。BET比表面積値が15m2/g未満の場合には、複合非磁性粒子粉末が粗大であり、これを用いて非磁性下地層を形成した場合には、塗膜の表面平滑性が損なわれやすい。BET比表面積値が250m2/gを超える場合には、粒子の微細化により触媒活性が増大する傾向にあるため好ましくない。
本発明に係る複合非磁性粒子粉末の触媒活性は90mg/g以下であり、好ましくは80mg/g以下、より好ましくは70mg/g以下である。触媒活性が90mg/gを超える場合には、非磁性塗料中の溶媒やバインダー樹脂、架橋剤等の添加剤が変性してしまい、非磁性塗料の保存安定性が低下すると共に、これを用いて得られた磁気記録媒体の経時安定性も低下するため好ましくない。酸化チタン粒子の結晶形がルチル型である酸化チタンを用いた場合には、触媒活性は80mg/g以下であり、好ましくは70mg/g以下、より好ましくは60mg/g以下である。
本発明に係る複合非磁性粒子粉末は、触媒活性の抑制効果をより向上させるために、必要により、酸化チタン粒子粉末の粒子表面をあらかじめ、Al、Si、Ti、Zr及びZnの含水酸化物、水和物もしくは酸化物から選ばれる一種又は二種以上の中間被覆物で被覆しておくことが好ましい。中間被覆物で被覆しない場合に比べ、触媒活性をより低減することができる。
中間被覆物による被覆量は、中間被覆物が被覆された酸化チタン粒子粉末に対して各元素換算量との総和で0.01〜40量%が好ましい。
中間被覆物で被覆されている本発明に係る複合非磁性粒子粉末(以下、「本発明3に係る複合非磁性粒子粉末」という。)は、中間被覆物で被覆されていない本発明1又は本発明2に係る複合非磁性粒子粉末の場合とほぼ同程度の粒子サイズ及びBET比表面積値を有している。又、触媒活性は中間被覆物を被覆することによって改善し、触媒活性は70mg/g以下、好ましくは60m/g以下、より好ましくは50mg/g以下であり、酸化チタン粒子の結晶形がルチル型である酸化チタンを用いた場合には、触媒活性は60mg/g以下、好ましくは50mg/g以下、より好ましくは40mg/g以下である。
次に、本発明に係る非磁性下地層用非磁性塗料について述べる。
本発明に係る非磁性下地層用非磁性塗料は、非磁性粒子粉末、結合剤樹脂及び溶剤とからなる。また、必要に応じて、磁気記録媒体の製造に通常用いられている潤滑剤、研磨剤、帯電防止剤等を添加してもよい。
結合剤樹脂としては、磁気記録媒体の製造にあたって汎用されている熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化型樹脂等を単独又は組み合わせて用いることができる。具体的には、熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−塩化ビニリデン共重合体、アクリル酸エステル−スチレン共重合体、メタクリル酸エステル−アクリロニトリル共重合体、メタクリル酸エステル−塩化ビニリデン共重合体、メタクリル酸エステル−スチレン共重合体、ウレタンエラストマー、ナイロン−シリコーン系樹脂、ニトロセルロース−ポリアニド樹脂、ポリフッ化ビニル、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、ニトロセルロース等セルロース誘導体、スチレン−ブタジエン共重合体、(飽和)ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、クロロビニルエーテル−アクリル酸共重合体、アミノ樹脂、ポリブタジエン等の合成ゴム系樹脂を用いることができる。熱硬化性樹脂及び電子線硬化型樹脂としては、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、(不飽和)ポリエステル樹脂、ポリウレタンカーボネート樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、シリコン樹脂、ポリイソシアネート、電子線硬化型アクリルウレタン樹脂等を用いることができる。また、各結合剤樹脂には極性基として、−COOM、−SO3M及び−OPO2M2(但し、MはH、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は炭化水素基である。)等の酸性基、リン酸エステル類及びアルキルベタイン型の両性類基、−OH、−NH2等が含まれていてもよい。本発明に係る複合非磁性粒子粉末のビヒクル中における分散性を考慮すれば、極性基として−COOM、−SO3M又はアルキルベタイン型両性類基が含まれている結合剤樹脂が好ましい。
本発明に係る複合非磁性粒子粉末と結合剤樹脂との配合割合は、結合剤樹脂100重量部に対して複合非磁性粒子粉末が5〜2000重量部、好ましくは100〜1000重量部である。
溶剤としては、磁気記録媒体に汎用されているアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びテトラヒドロフラン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール及びイソプロピルアルコール等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル及び酢酸グリコール等のエステル類、グリコールジメチルエーテル、グリコールモノエチルエーテル及びジオキサン等のグリコールエーテル類及びその混合物等を使用することができる。
溶剤の使用量は、非磁性粒子粉末100重量部に対してその総量で65〜1000重量部である。65重量部未満では塗料とした場合に粘度が高くなりすぎ塗布が困難となる。1000重量部を超える場合には、塗膜を形成する際の溶剤の揮発量が多くなりすぎ工業的に不利となる。
本発明に係る非磁性下地層用非磁性塗料は、保存安定性(25℃、24時間静置後の粘度の変化率)が90%以下、好ましくは75%以下、より好ましくは60%以下である。
次に、本発明に係る磁気記録媒体について述べる。
本発明に係る磁気記録媒体は、非磁性支持体、該非磁性支持体上に形成された非磁性下地層及び該非磁性下地層上に形成された磁気記録層とからなる。また、必要に応じて、非磁性支持体の一方の面に形成される磁気記録層に対し、非磁性支持体の他方の面にバックコート層を形成させてもよい。殊に、コンピュータ記録用のバックアップテープの場合には、巻き乱れの防止や走行耐久性向上の点から、バックコート層を設けることが好ましい。
本発明における非磁性支持体としては、現在、磁気記録媒体に汎用されているポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、芳香族ポリアミド、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミドイミド、ポリスルフォン、セルローストリアセテート、ポリベンゾオキサゾール等の合成樹脂フィルム、アルミニウム、ステンレス等金属の箔や板及び各種の紙を使用することができる。得られる磁気記録媒体の強度を考慮すれば、ポリエステル類、ポリアミド又は芳香族ポリアミドが好ましい。
非磁性支持体の厚みは、その材質及び用途により種々異なるが、通常好ましくは1.0〜300μm、より好ましくは2.0〜200μmである。殊に、記録容量を上げるために薄層化する傾向にあるコンピュータ記録用のバックアップテープの場合、その厚みは、通常1.0〜7.0μmが好ましく、より好ましくは2.0〜6.0μmである。
本発明における非磁性下地層は、前述の本発明に係る非磁性下地層用非磁性塗料を用いて形成される。
非磁性支持体上に形成された非磁性下地層のカレンダー処理後の塗膜厚さは、0.1〜5.0μmが好ましく、より好ましくは0.3〜4.0μmであり、更により好ましくは0.5〜3.0μmである。殊に、記録容量を上げるために薄層化する傾向にあるコンピュータデータ記録用のバックアップテープの場合、その厚みは、通常0.1〜3.0μmが好ましく、より好ましくは0.3〜2.5μm、更により好ましくは0.5〜2.0μmである。0.1μm未満の場合には、非磁性支持体の表面粗さを改善することが困難となると共に、得られる磁気記録媒体の強度も不十分となりやすい。5.0μmを超える場合には、磁気記録媒体の薄層化が困難となるため好ましくない。
本発明に係る複合非磁性粒子粉末を用いた非磁性下地層用非磁性塗料より得られた非磁性下地層は、塗膜の光沢度が180〜300%、好ましくは185〜300%、より好ましくは190〜300%であって、塗膜の表面粗度Raが0.5〜7.5nm、好ましくは0.5〜7.0nm、より好ましくは0.5〜6.5nmである。
本発明における磁気記録層は、磁性粒子粉末と結合剤樹脂とを含んでいる。
磁性粒子粉末としては、マグヘマイト粒子粉末(γ−Fe2O3)やマグネタイト粒子粉末(FeOx・Fe2O3、0<x≦1)等の磁性酸化鉄粒子粉末にCo又はCo及びFeを被着させたCo被着型磁性酸化鉄粒子粉末、前記Co被着型磁性酸化鉄粒子粉末にFe以外のCo、Al、Ni、P、Zn、Si、B、希土類金属等の異種元素を含有させたCo被着型磁性酸化鉄粒子粉末、鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末、鉄以外のCo、Al、Ni、P、Zn、Si、B、希土類金属等を含有する鉄合金磁性粒子粉末、Ba、Sr、又はBa−Srを含有する板状マグネトプランバイト型フェライト粒子粉末並びにこれらにCo、Ni、Zn、Mn、Mg、Ti、Sn、Zr、Nb、Cu、Mo等の2価及び4価の金属から選ばれた保磁力低減剤の一種又は二種以上を含有させた板状マグネトプランバイト型フェライト粒子粉末等のいずれをも用いることができる。
尚、近年の短波長記録、高密度記録を考慮すれば、鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末、鉄以外のCo、Al、Ni、P、Zn、Si、B、希土類金属等を含有する針状鉄合金磁性粒子粉末、板状マグネトプランバイト型フェライト粒子粉末等が好ましい。
磁性粒子粉末は、平均一次長軸径(板状粒子の場合は平均一次粒子径)が0.01〜0.50μmであることが好ましく、より好ましくは0.03〜0.30μmである。該磁性粒子粉末の粒子の形状は針状もしくは板状が好ましい。ここで「針状」とは、文字通りの針状はもちろん、紡錘状や米粒状等を含む意味である。
また、磁性粒子粉末の粒子形状が針状の場合、軸比は3.0以上が好ましく、より好ましくは5.0以上であり、ビヒクル中における分散性を考慮すれば、その上限値は15.0が好ましく、より好ましくは10.0である。
磁性粒子粉末の粒子形状が板状の場合、板状比(粒子の平均一次粒子径と粒子の平均一次厚みの比)(以下、「板状比」という。)は2.0以上であることが好ましく、より好ましくは3.0以上であり、ビヒクル中における分散性を考慮すれば、その上限値は20.0が好ましく、より好ましくは15.0である。
磁性粒子粉末の磁気特性は、保磁力値が39.8〜318.3kA/m(500〜4000Oe)、好ましくは43.8〜318.3kA/m(550〜4000Oe)であって、飽和磁化値が40〜200Am2/kg(40〜200emu/g)、好ましくは50〜180Am2/kg(50〜180emu/g)である。
高密度記録化等を考慮して、磁性粒子粉末として鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末又は針状鉄合金磁性粒子粉末を用いた場合の磁気特性は、保磁力値が63.7〜278.5kA/m(800〜3500Oe)、好ましくは71.6〜278.5kA/m(900〜3500Oe)、飽和磁化値が90〜200Am2/kg(90〜200emu/g)、好ましくは90〜180Am2/kg(100〜180emu/g)である。
結合剤樹脂としては、前記非磁性下地層用非磁性塗料を作製するために用いた結合剤樹脂を使用することができる。
非磁性下地層上に設けられた磁気記録層のカレンダー処理後の塗膜厚さは、0.01〜2.0μmが好ましく、より好ましくは0.02〜1.5μmであり、更により好ましくは0.02〜1.0μmである。殊に、記録容量を上げるために薄層化する傾向にあるコンピュータデータ記録用のバックアップテープの場合、その厚みは、通常0.01〜0.30μmが好ましく、より好ましくは0.02〜0.20μmである。0.01μm未満の場合には、均一な塗布が困難であり、塗りむら等の現象が出やすくなるため好ましくない。2.0μmを超える場合には、反磁界の影響により再生出力が小さくなるため好ましくない。
磁性粒子粉末と結合剤樹脂との配合割合は、結合剤樹脂100重量部に対して磁性粒子粉末が100〜2000重量部、好ましくは200〜1500重量部である。
磁気記録層中には、通常用いられている潤滑剤、研磨剤、帯電防止剤等を添加してもよい。
帯電防止剤としては、カーボンブラック、グラファイト、酸化スズ、酸化チタン−酸化スズ−酸化アンチモン等の導電性粉末及び界面活性剤等を用いることができる。
本発明におけるバックコート層中には、結合剤樹脂と共に、バックコート層の表面電気抵抗値及び光透過率低減、並びに強度向上を目的として、帯電防止剤及び無機粒子粉末を含有させることが好ましい。また、必要に応じて、通常の磁気記録媒体の製造に用いられる潤滑剤、研磨剤等が含まれていてもよい。
結合剤樹脂としては、前記非磁性下地層用非磁性塗料を作製するために用いた結合剤樹脂を使用することができる。
無機粉末としては、ヘマタイト、アルミナ、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、酸化セリウム、二酸化チタン、シリカ、酸化亜鉛、窒化ホウ素及び硫酸バリウム等から選ばれる一種又は二種以上を用いることができる。
コンピュータデータ記録用のバックアップテープの中でも、高記録容量化のために記録トラック幅を狭くした場合には、オフトラックによる再生出力の低下が問題となるため、トラックサーボが必要となる。トラックサーボ方式には磁気記録層又はバックコート層にサーボトラックバンドを形成し、それを磁気的に読み取ってサーボトラッキングする磁気サーボ方式とバックコート層に凹部アレイからなるサーボトラックバンドをレーザー照射等で形成し、それを光学的に読み取ってサーボトラッキングする光学サーボ方式がある。
殊に、バックコート層にサーボトラックバンドを形成する磁気サーボ方式の場合には、帯電防止剤及び無機粒子粉末に加えて、磁性粒子粉末を含有させることが必須となる。磁性粒子粉末としては、前記磁性層に用いた磁性粒子粉末を使用することができる。
非磁性支持体の一方の面に形成される磁気記録層に対し、非磁性支持体の他方の面に設けられたバックコート層のカレンダー処理後の塗膜厚さは、0.1〜4.0μmが好ましく、より好ましくは0.2〜2.0μmであり、更により好ましくは0.2〜1.5μmである。0.1μm未満の場合には、バックコート層の強度が不十分となり、また、塗りむら等の現象が出やすくなるため好ましくない。4.0μmを超える場合には、バックコート層の膜厚が厚すぎるため、テープ全厚が厚くなり、高記録容量化が困難となる。
カーボンブラックと前記無機粉末の合計量と結合剤樹脂との配合割合は、結合剤樹脂100重量部に対してカーボンブラックと前記無機粉末の合計量として40〜250重量部、好ましくは50〜200重量部である。
本発明に係る磁気記録媒体は、保磁力値は39.8〜318.3kA/m(500〜4000Oe)が好ましく、より好ましくは43.8〜318.3kA/m(550〜4000Oe)、塗膜の光沢度は160〜300%が好ましく、より好ましくは165〜300%、更により好ましくは170〜300%、塗膜の表面粗度Raは11.5nm以下が好ましく、より好ましくは2.0〜11.0nm、更により好ましくは2.0〜10.5nmである。経時安定性は、紫外線曝露前の走行耐久性は24分以上が好ましく、より好ましくは26分以上であり、すり傷特性は後出の評価法によるA又はBが好ましく、より好ましくはAである。また、曝露後の走行耐久性は16分以上が好ましく、より好ましくは18分以上であり、すり傷特性は後出の評価法によるA、B又はCが好ましく、より好ましくはB又はAである。
高記録容量化を考慮して、磁性粒子粉末として鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末、針状鉄合金磁性粒子粉末又は板状マグネトプランバイト型フェライト粒子粉末を用いた本発明に係る磁気記録媒体の場合には、保磁力値は63.7〜318.3kA/m(800〜4000Oe)が好ましく、より好ましくは71.6〜318.3kA/m(900〜4000Oe)、塗膜の光沢度は180〜300%が好ましく、より好ましくは189〜300%、更により好ましくは190〜300%、塗膜の表面粗度Raは9.0nm以下が好ましく、より好ましくは2.0〜8.5nm、更により好ましくは2.0〜8.0nmである。経時安定性は、紫外線曝露前の走行耐久性は24分以上が好ましく、より好ましくは26分以上であり、すり傷特性は後出の評価法によるA又はBが好ましく、より好ましくはAである。また、曝露後の走行耐久性は16分以上が好ましく、より好ましくは18分以上であり、すり傷特性は後出の評価法によるA、B又はCが好ましく、より好ましくはB又はAである。
次に、本発明に係る複合非磁性粒子粉末の製造法について述べる。
本発明に係る複合非磁性粒子粉末は、芯粒子粉末である酸化チタン粒子粉末と表面改質剤とを混合し、酸化チタン粒子粉末の粒子表面を表面改質剤によって被覆し、次いで表面改質剤によって被覆された酸化チタン粒子粉末とカーボンブラックとを混合することによって得ることができる。
酸化チタン粒子粉末の粒子表面への表面改質剤による被覆に当たって、酸化チタン粒子粉末の粒子表面の水分量を、好ましくは0.1〜10.0%、より好ましくは0.3〜9.0%の範囲となるよう予め調湿しておくことが好ましい。水分量を0.1〜10.0%の範囲にコントロールすることにより、より効率的に酸化チタン粒子粉末の粒子表面への表面改質剤による被覆を行うことができる。
酸化チタン粒子粉末の粒子表面への表面改質剤による被覆は、酸化チタン粒子粉末と表面改質剤とを機械的に混合攪拌したり、酸化チタン粒子粉末に表面改質剤を噴霧しながら機械的に混合攪拌すればよい。添加した表面改質剤は、ほぼ全量が酸化チタン粒子の粒子表面に被覆される。
尚、表面改質剤としてアルコキシシラン又はフルオロアルキルシランを用いた場合、被覆されたアルコキシシラン又はフルオロアルキルシランは、その一部が被覆工程を経ることによって生成する、アルコキシシランから生成するオルガノシラン化合物又はフルオロアルキルシランから生成するフッ素含有オルガノシラン化合物として被覆されていてもよい。この場合においてもその後のカーボンブラックの付着に影響することはない。
尚、表面改質剤を均一に酸化チタン粒子の粒子表面に被覆するためには、酸化チタン粒子粉末の凝集をあらかじめ粉砕機を用いて解きほぐしておくことが好ましい。
芯粒子粉末と表面改質剤との混合攪拌、顔料誘導体と粒子表面に表面改質剤が被覆されている芯粒子粉末との混合攪拌をするための機器としては、粉体層にせん断力を加えることのできる装置が好ましく、せん断、へらなで及び圧縮が同時に行える装置、例えば、ホイール形混練機、ボール型混練機、ブレード型混練機、ロール型混練機を用いることができる。本発明の実施にあたっては、ホイール型混練機がより効果的に使用できる。
上記ホイール型混練機としては、具体的に、エッジランナー(「ミックスマラー」、「シンプソンミル」、「サンドミル」と同義語である)、マルチマル、ストッツミル、ウエットパンミル、コナーミル、リングマラー等があり、好ましくはエッジランナー、マルチマル、ストッツミル、ウエットパンミル、リングマラーであり、より好ましくはエッジランナーである。上記ボール型混練機としては、具体的に、振動ミル等がある。前記ブレード型混練機としては、具体的に、ヘンシェルミキサー、プラネタリーミキサー、ナウタミキサー等がある。前記ロール型混練機としては、具体的に、エクストルーダー等がある。
酸化チタン粒子粉末と表面改質剤との混合攪拌時における条件は、酸化チタン粒子の粒子表面に表面改質剤ができるだけ均一に被覆されるように、線荷重は19.6〜1960N/cm(2〜200Kg/cm)、好ましくは98〜1470N/cm(10〜150Kg/cm)、より好ましくは147〜980N/cm(15〜100Kg/cm)、処理時間は5分〜24時間が好ましく、より好ましくは10分〜20時間の範囲で処理条件を適宜調整すればよい。尚、撹拌速度は2〜2000rpm、好ましくは5〜1000rpm、より好ましくは10〜800rpmの範囲で処理条件を適宜調整すればよい。
表面改質剤の添加量は、酸化チタン粒子粉末100重量部に対して0.15〜45重量部が好ましい。0.15〜45重量部の添加量により、酸化チタン粒子粉末100重量部に対してカーボンブラックを1〜500重量部付着させることができる。
酸化チタン粒子粉末の粒子表面に表面改質剤を被覆した後、カーボンブラックを添加し、混合攪拌して該表面改質剤被覆にカーボンブラックを付着させる。必要により更に、乾燥乃至加熱処理を行ってもよい。
混合攪拌時における条件は、カーボンブラックが均一に付着するように処理条件を適宣選択すればよく、線荷重は19.6〜1960N/cm(2〜200Kg/cm)が好ましく、より好ましくは98〜1470N/cm(10〜150Kg/cm)、最も好ましくは147〜980N/cm(15〜100Kg/cm)であり、処理時間は5〜24時間が好ましく、より好ましくは10〜20時間の範囲であり、撹拌速度は2〜2000rpmが好ましく、より好ましくは5〜1000rpm、最も好ましくは10〜800rpmの範囲で処理条件を適宜調整すればよい。
カーボンブラックの添加量は、酸化チタン粒子粉末100重量部に対して0.1〜500重量部である。カーボンブラックの添加量が上記範囲外の場合には、本発明の目的とする複合非磁性粒子粉末が得られない。
乾燥乃至加熱処理を行う場合の加熱温度は、通常40〜150℃が好ましく、より好ましくは60〜120℃であり、加熱時間は、10分〜12時間が好ましく、30分〜3時間がより好ましい。
酸化チタン粒子粉末は、光触媒活性を抑制するため、表面改質剤との混合攪拌に先立って、あらかじめ、Al、Si、Ti、Zr及びZnの含水酸化物、水和物もしくは酸化物から選ばれる一種又は二種以上の中間被覆物で被覆しておくことが好ましい。また、ルチル結晶形形成前にAl3+やZn2+等を条件剤として添加し、結晶中のTi4+と置換することも光触媒活性低減には有効である。
次に、本発明における磁気記録媒体の製造法について述べる。
前記磁気記録層及び前記バックコート層の形成にあたって用いる溶剤としては、磁気記録媒体に汎用されているアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びテトラヒドロフラン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール及びイソプロピルアルコール等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル及び酢酸グリコール等のエステル類、グリコールジメチルエーテル、グリコールモノエチルエーテル及びジオキサン等のグリコールエーテル類及びその混合物等を使用することができる。
溶剤の使用量は、粒子粉末100重量部に対してその総量で65〜1000重量部である。65重量部未満では塗料とした場合に粘度が高くなりすぎ塗布が困難となる。1000重量部を超える場合には、塗膜を形成する際の溶剤の揮発量が多くなりすぎ工業的に不利となる。
非磁性下地層、磁気記録層、バックコート層は、各層を構成する成分及び溶剤を一般に使用される混練機及び分散機により混練・分散処理を行い、各塗料を作製する。該各塗料を用いて、非磁性支持体上の一面に非磁性下地層、磁気記録層の順に塗布、乾燥後、カレンダー処理を行う。その際の塗布方法としては、磁性層と非磁性層をほぼ同時に塗布するWet on Wet法でも、非磁性下地層を塗布・乾燥後、その上に磁気記録層を塗布するWet on Dry法のどちらでもよい。また、必要により、バックコート層を設ける場合には、非磁性下地層及び磁気記録層とは反対面の非磁性支持体上にバックコート層用塗料を塗布、乾燥後、カレンダー処理を行い、磁気記録媒体を得る。
<作用>
本発明においては最も重要な点は、酸化チタン粒子粉末の粒子表面が表面改質剤によって被覆されていると共に該表面改質剤被覆粒子表面にカーボンブラックが存在している複合非磁性粒子粉末は、触媒活性が抑制されていると共に、非磁性塗料中における分散性及び保存安定性に優れているという事実である。
本発明に係る複合非磁性粒子粉末の触媒活性が抑制されている理由について、本発明者は、次のように考えている。一般に、酸化チタンは光触媒活性を有していることが知られており、アルミナ又は/及びシリカ等で表面処理することで触媒活性を抑制することが行われているが、これらの処理だけでは触媒活性を十分に低減することは困難である。本発明においては、酸化チタン粒子粉末の粒子表面を表面改質剤によって被覆し、更に該表面改質剤被覆粒子表面にカーボンブラックを存在させることによって酸化チタン粒子粉末の触媒活性を効果的に封じることができたものと考えている。
本発明に係る複合非磁性粒子粉末の非磁性塗料中における分散性が優れている理由について、本発明者は、一般的なアルミナ又は/及びシリカ等で表面処理された酸化チタン粒子粉末は親水性であり、磁気記録媒体に用いられる有機溶剤とはなじみが悪く分散性の悪いものであったが、本発明の酸化チタン粒子粉末の粒子表面を表面改質剤によって被覆し、更に該表面改質剤被覆粒子表面にカーボンブラックを存在させることによって酸化チタン粒子表面は疎水化し、有機溶剤との相溶性が向上したためと考えている。
そして、前記複合非磁性粒子粉末を含有する非磁性下地層用非磁性塗料は、保存安定性に優れるという事実である。
本発明に係る非磁性下地層用非磁性塗料の保存安定性が優れている理由について、本発明者は、次のように考えている。触媒活性が十分に抑制されていない酸化チタン粒子粉末を非磁性塗料用非磁性粒子粉末として用いた場合、溶媒やバインダー樹脂、架橋剤等の添加剤が変性してしまい、粘度が増加する等の問題が生じるが、本発明の複合非磁性粒子粉末は触媒活性が十分に抑制されており、上記のような問題を生じないため、保存安定性が優れているものと考えている。
以下、本発明における実施例を示し、本発明を具体的に説明する。
粒子の平均粒子径、平均長軸径、平均短軸径及び平均厚みは、透過型電子顕微鏡を用いて写真撮影を行い、そこに示された粒子350個の粒子径をそれぞれ測定し、その平均値で示した。
軸比は平均長軸径と平均短軸径との比で示し、板状比は平均粒子径と平均厚みの比で示した。
比表面積値はBET法により測定した値で示した。
酸化チタン粒子粉末の水分量は、「微量水分測定装置AQ−6」(平沼産業株式会社製)を用いて測定した。
酸化チタン粒子粉末の粒子内部や粒子表面に存在するAl量、Si量及びZr量のそれぞれは、「蛍光X線分析装置3063M型」(理学電機工業株式会社製)を使用し、JIS K0119の「けい光X線分析通則」に従って測定した。また、板状マグネトプランバイト型フェライト粒子粉末のTi量、Ni量及びFe量は、上記と同様にして測定した。
酸化チタン粒子粉末の粒子表面に被覆されている表面改質剤の被覆量及びカーボンブラックの付着量は、「堀場金属炭素・硫黄分析装置EMIA−2200型」(株式会社堀場製作所製)を用いて炭素量を測定することにより求めた。
酸化チタン粒子粉末及び複合非磁性粒子粉末の触媒活性は、下記の方法によりシクロヘキサノン二量体生成量(mg/g)を求めた値で示した。
先ず、試料粉体を60℃の乾燥機で1時間乾燥させ、該乾燥試料粉体2.00gとシクロヘキサノン20mlを50ml三角フラスコに入れ、シールをして50℃で15分間超音波分散を行った後、10日間静置し、得られた懸濁液を50ml沈降管に入れ回転数10,000rpmで15分間遠心分離を行い、固形部分と上澄み液とを分離する。
次に、得られた上澄み液を、「GC−MS QP5000」(株式会社島津製作所製)を用いて分析し、シクロヘキサノン二量体のピーク面積を測定して得られた値をシクロヘキサノン二量体の生成量とした。
磁性粒子粉末の磁気特性は、「振動試料型磁力計VSM−3S−15」(東英工業株式会社製)を用いて外部磁場795.8kA/m(10kOe)の下で測定した値であり、磁気テープの諸特性は外部磁場795.8kA/m(10kOe)の下で測定した結果である。
塗料粘度は、得られた塗料の25℃における塗料粘度E0を、「E型粘度計EMD−R」(株式会社東京計器製)を用いて測定し、ずり速度D=1.92sec−1における値で示した。
塗料の保存安定性は、得られた塗料を25℃で24時間静置した後の塗料粘度Eを、「E型粘度計EMD−R」(株式会社東京計器製)を用いて測定し、下記数1に従って求めた。
<数1>
塗料の保存安定性(%)=〔(E−E0)/E0〕×100
塗膜の表面光沢度は、「グロスメーター UGV−5D」(スガ試験機株式会社製)を用いて入射角45°で測定した値であり、標準板光沢を86.3%とした時の値を%で示したものである。
表面粗度Raは、「Surfcom−575A」(東京精密株式会社製)を用いて塗膜の中心線平均粗さを測定した。
磁気記録媒体の走行耐久性は、後述する方法にて作製した磁気テープを、「アイ スーパーUVテスター」(SUV−W13(岩崎電気株式会社製))を用いて、紫外線を照射強度100mW/cm2で6時間連続照射した後、紫外線照射前の磁気テープと紫外線照射後の磁気テープそれぞれについて、「Media Durability Tester MDT−3000」(Steinberg Associates社製)を用いて、負荷0.98N(100gw)、ヘッドとテープとの相対速度8m/sにおける実可動時間で評価した。
すり傷特性は、上記紫外線照射前の磁気テープと紫外線照射後の磁気テープそれぞれについて、走行後のテープの表面を顕微鏡で観察し、すり傷の有無を目視で評価し、下記の4段階の評価を行った。
A:すり傷なし。
B:すり傷若干有り。
C:すり傷有り。
D:ひどいすり傷有り。
磁気記録媒体を構成する非磁性支持体、非磁性下地層及び磁気記録層の各層の厚みは、下記のようにして測定した。
「デジタル電子マイクロメーター K351C」(安立電気株式会社製)を用いて、先ず、非磁性支持体の膜厚(A)を測定する。次に、非磁性支持体と該非磁性支持体上に形成された非磁性下地層との厚み(B)(非磁性支持体の厚みと非磁性下地層の厚みとの総和)を同様にして測定する。更に、非磁性下地層上に磁気記録層を形成することにより得られた磁気記録媒体の厚み(C)(非磁性支持体の厚みと非磁性下地層の厚みと磁気記録層の厚みとの総和)を同様にして測定する。そして、非磁性下地層の厚みは(B)−(A)で示し、磁気記録層の厚みは(C)−(B)で示した。
また、非磁性支持体の一方の面に形成される磁気記録層に対し、非磁性支持体の他方の面にバックコート層を設けた場合には、上記と同様に、「デジタル電子マイクロメーター K351C」(安立電気株式会社製)を用いて、先ず、非磁性支持体の膜厚(A)を測定する。次に、非磁性支持体と該非磁性支持体上に形成された非磁性下地層との厚み(B)(非磁性支持体の厚みと非磁性下地層の厚みとの総和)を同様にして測定する。更に、非磁性下地層上に磁気記録層を形成することにより得られた磁気記録媒体の厚み(C)(非磁性支持体の厚みと非磁性下地層の厚みと磁気記録層の厚みとの総和)を同様にして測定する。更に、磁気記録層とは反対の非磁性支持体面に設けたバックコート層との厚み(D)(非磁性支持体の厚みと非磁性下地層の厚みと磁気記録層の厚みとバックコート層の厚みとの総和)を同様にして測定する。そして、非磁性下地層の厚みは(B)−(A)で示し、磁気記録層の厚みは(C)−(B)で示し、バックコート層の厚みは(D)−(C)で示した。
<実施例1−1:複合非磁性粒子粉末の製造>
酸化チタン粒子粉末(結晶形:ルチル型、表面処理:Al(OH)3、粒子形状:粒状、平均粒子径:0.041μm、BET比表面積値:41.3m2/g、水分量:2.6%、触媒活性:196mg/g)5.0kgをエッジランナー「MPUV−2型」(製品名、株式会社松本鋳造鉄工所製)に投入し、次いで、メチルトリエトキシシラン(商品名:TSL8123:GE東芝シリコーン株式会社製)100gを、エッジランナーを稼動させながら酸化チタン粒子粉末に添加し、588N/cmの線荷重で30分間混合攪拌を行った。なお、このときの撹拌速度は22rpmで行った。
次に、カーボンブラック(粒子形状:粒状、平均粒子径0.022μm、BET比表面積値133.5m2/g、pH値3.4)500gを、エッジランナーを稼動させながら10分間かけて添加し、更に588N/cmの線荷重で30分間、混合攪拌を行い、メチルトリエトキシシラン被覆にカーボンブラックを付着させた後、乾燥機を用いて105℃で60分間加熱処理を行い、複合非磁性粒子粉末を得た。尚、このときの撹拌速度は22rpmであった。
得られた複合非磁性粒子粉末の粒子形状は粒状であり、平均粒子径は0.042μm、BET比表面積値は39.6m2/g、触媒活性は38mg/gであった。メチルトリエトキシシランから生成するオルガノシラン化合物の被覆量はC換算で0.13重量%、付着しているカーボンブラックの量はC換算で9.05重量%(酸化チタン粒子粉末100重量部に対して約10重量部に相当する)であった。電子顕微鏡観察の結果、カーボンブラックがほとんど認められないことから、カーボンブラックのほぼ全量がメチルトリエトキシシランから生成するオルガノシラン化合物被覆層に付着していることが認められた。
<実施例2−1:非磁性下地層用非磁性塗料の製造>
前記複合非磁性粒子粉末12gと結合剤樹脂溶液(スルホン酸カリウム基を有する塩化ビニル系共重合樹脂30重量%とシクロヘキサノン70重量%)及びシクロヘキサノンとを混合して混合物(固形分率72%)を得、この混合物を更にプラストミルで30分間混練して混練物を得た。
この混練物を1.5mmφガラスビーズ95g、追加の結合剤樹脂溶液(スルホン酸ナトリウム基を有するポリウレタン樹脂30重量%、溶剤(メチルエチルケトン:トルエン=1:1)70重量%)、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン及びトルエンと共に140mlガラス瓶に添加し、ペイントシェーカーで6時間混合・分散を行って塗料組成物を得た。その後、潤滑剤及び硬化剤を加え、更に、ペイントシェーカーで15分間混合・分散した後、3μmの平均孔径を有するフィルターを用いてろ過し、非磁性下地層用非磁性塗料を調整した。また、非磁性塗料の保存安定性を評価するために、得られた非磁性下地層用非磁性塗料の一部を25℃の環境下、24時間静置した。
得られた非磁性下地層用非磁性塗料の組成は、下記の通りであった。
複合非磁性粒子粉末 100.0重量部、
スルホン酸カリウム基を有する塩化ビニル系共重合樹脂 10.0重量部、
スルホン酸ナトリウム基を有するポリウレタン樹脂 10.0重量部、
シクロヘキサノン 44.6重量部、
メチルエチルケトン 111.4重量部、
トルエン 66.9重量部、
硬化剤(ポリイソシアネート) 3.0重量部、
潤滑剤(ブチルステアレート) 1.0重量部。
得られた非磁性塗料の塗料粘度は424mPa・sであり、25℃、24時間静置後の塗料粘度は576mPa・sであり、非磁性塗料の保存安定性は35.9%であった。
<実施例2−1:非磁性下地層の製造>
上記非磁性下地層用非磁性塗料を厚さ4.5μmの芳香族ポリアミドフィルム上に塗布し、次いで、乾燥させることにより非磁性下地層1−1を形成した。非磁性下地層の特性を評価するために、得られた塗布片の半分に対してカレンダー処理を行った後、60℃で24時間硬化反応を行った。
得られた非磁性下地層1−1は、膜厚が1.7μm、塗膜の光沢度が195%、表面粗度Raが6.0nmであった。
<実施例3−1:磁気記録媒体(構成:磁気記録媒体1)の製造>
鉄を主成分とする針状金属磁性粒子粉末(平均長軸径0.061μm、平均短軸径0.0115μm、軸比5.3、保磁力値187.3kA/m(2,353Oe)、飽和磁化値130.0Am2/kg(130.0emu/g))12g、研磨剤(商品名:AKP−30、住友化学株式会社製)1.2g、カーボンブラック(商品名:#3250B、三菱化成株式会社製)0.12g、結合剤樹脂溶液(スルホン酸カリウム基を有する塩化ビニル系共重合樹脂30重量%とシクロヘキサノン70重量%)及びシクロヘキサノンとを混合して混合物(固形分率78%)を得、この混合物を更にプラストミルで30分間混練して混練物を得た。
この混練物を1.5mmφガラスビーズ95g、追加結合剤樹脂溶液(スルホン酸ナトリウム基を有するポリウレタン樹脂30重量%、溶剤(メチルエチルケトン:トルエン=1:1)70重量%)、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン及びトルエンと共に140mlガラス瓶に添加し、ペイントシェーカーで6時間混合・分散を行って磁性塗料を得た。その後、潤滑剤及び硬化剤を加え、更に、ペイントシェーカーで15分間混合・分散した後、3μmの平均孔径を有するフィルターを用いてろ過し、磁気記録層用磁性塗料を調製した。
得られた磁気記録層用磁性塗料の組成は下記の通りであった。
鉄を主成分とする金属磁性粒子粉末 100.0重量部、
スルホン酸カリウム基を有する塩化ビニル系共重合樹脂 10.0重量部、
スルホン酸ナトリウム基を有するポリウレタン樹脂 10.0重量部、
研磨剤(AKP−30) 10.0重量部、
カーボンブラック(#3250B) 1.0重量部、
潤滑剤(ミリスチン酸:ステアリン酸ブチル=1:2) 3.0重量部、
硬化剤(ポリイソシアネート) 5.0重量部、
シクロヘキサノン 65.8重量部、
メチルエチルケトン 164.5重量部、
トルエン 98.7重量部。
磁気記録層用塗料を前記非磁性下地層1−1の上に塗布した後、磁場中において配向・乾燥し、次いで、カレンダー処理を行った後、60℃で24時間硬化反応を行い12.7mm幅にスリットして磁気記録媒体(実施例3−1)を得た。
得られた磁気記録媒体(実施例3−1)は、磁気記録層の膜厚が0.5μm、保磁力値が199.9kA/m(2512Oe)、光沢度が198%、表面粗度Raが6.2nm、経時安定性のうち、紫外線曝露前の走行耐久性が30分以上、すり傷特性がA、紫外線曝露後の走行耐久性が24.1分、すり傷特性がBであった。
<実施例4−1:磁気記録媒体(構成:磁気記録媒体2)の製造>
前記磁気記録層用磁性塗料を前記非磁性下地層2−1の上に塗布した後、磁場中において配向・乾燥した。
カーボンブラック(平均粒子径 25nm)12.0g、カーボンブラック(平均粒子径 370nm)1.8g、酸化鉄1.8g、結合剤樹脂溶液(ニトロセルロース30重量%とシクロヘキサノン70重量%)及びシクロヘキサノンとを混合して混合物(固形分率78%)を得、この混合物を更にプラストミルで30分間混練して混練物を得た。
この混練物を1.5mmφガラスビーズ95g、追加結合剤樹脂溶液(スルホン酸ナトリウム基を有するポリウレタン樹脂30重量%、溶剤(メチルエチルケトン:トルエン=1:1)70重量%)、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン及びトルエンと共に140mlガラス瓶に添加し、ペイントシェーカーで6時間混合・分散を行ってバックコート塗料を得た。その後、潤滑剤及び硬化剤を加え、更に、ペイントシェーカーで15分間混合・分散した後、3μmの平均孔径を有するフィルターを用いてろ過し、バックコート層用塗料を調製した。
得られたバックコート層用塗料の組成は下記の通りであった。
カーボンブラック(平均粒子径 25nm) 100.0重量部、
カーボンブラック(平均粒子径 370nm) 15.0重量部、
酸化鉄 15.0重量部、
ニトロセルロース樹脂 55.0重量部、
スルホン酸ナトリウム基を有するポリウレタン樹脂 35.0重量部、
硬化剤(ポリイソシアネート) 18.0重量部、
シクロヘキサノン 325.0重量部、
メチルエチルケトン 655.0重量部、
トルエン 325.0重量部。
上記で得られたバックコート層用塗料を磁気記録層とは反対面の非磁性支持体上に塗布した後、乾燥し、次いで、カレンダー処理を行った。バックコート層の厚みは0.5μmであった。その後、60℃で24時間硬化反応を行い、0.5インチ幅にスリットして磁気記録媒体(実施例4−1)を得た。
得られた磁気記録媒体(実施例4−1)は、磁気記録層の膜厚が0.2μm、保磁力値が200.4kA/m(2,518Oe)、光沢度が196%、表面粗度Raが6.4nm、経時安定性のうち、紫外線曝露前の走行耐久性が30分以上、すり傷特性がA、紫外線曝露後の走行耐久性が23.4分、すり傷特性がBであった。
前記実施例1−1〜4−1に従って複合非磁性粒子粉末、非磁性塗料及び磁気記録媒体を作製した。各製造条件及び得られた複合非磁性粒子粉末、非磁性塗料及び磁気記録媒体の諸特性を示す。
芯粒子1〜6:
酸化チタン粒子粉末として、表1に示す特性を有する酸化チタン粒子粉末を用意した。
カーボンブラックA〜D:
カーボンブラックとして、表2に示す特性を有するカーボンブラックを用意した。
実施例1−2〜1−6、比較例1−1、1−2:
酸化チタン粒子の種類、表面改質剤による被覆工程における添加物の種類及び添加量、エッジランナー処理の荷重及び時間、カーボンブラックの種類及び添加量、カーボンブラックの付着工程におけるエッジランナーによる処理の荷重及び時間を種々変えた以外は、前記実施例1−1と同様にして複合非磁性粒子粉末を得た。
このときの製造条件を表3に、得られた複合非磁性粒子粉末の諸特性を表4に示す。
実施例1−2〜1−6の各実施例で得られた複合非磁性粒子粉末は、電子顕微鏡観察の結果、カーボンブラックがほとんど認められないことから、カーボンブラックのほぼ全量が酸化チタン粒子表面の表面改質剤被覆に付着していることが確認された。
<非磁性塗料及び非磁性下地層の製造>
実施例2−2〜2−6、比較例2−1〜2−3:
非磁性粒子の種類を種々変化させた以外は、前記実施例2−1と同様にして非磁性塗料及び非磁性下地層を得た。
このときの製造条件及び得られた非磁性塗料並びに非磁性下地層の諸特性を表5に示す。
<磁気記録媒体の製造>
実施例3−2〜3−6、4−2〜4−6、及び比較例3−1〜3−3、4−1〜4−3:
非磁性下地層の種類及び磁性粒子粉末の種類を種々変化させた以外は、前記実施例3−1又は4−1と同様にして磁気記録媒体を製造した。
尚、使用した磁性粒子(1)乃至(3)の諸特性を表6に示す。
このときの製造条件及び得られた磁気記録媒体の諸特性を表7乃至表8に示す。