JP2007191882A - 親綱取付装置及びそれを用いた親綱張設方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】安全に作業することができるとともに、作業性を向上させることができる親綱取付装置及びそれを用いた親綱張設方法を提供する。
【解決手段】親綱取付装置の代表的な構成は、躯体の角型断面の柱11に固定するための柱包囲部Aを有し、該柱包囲部は、前記柱の1対の対角のコーナーを片側から包囲するL字形状の1対の腕部と、前記柱の対角のコーナーを包囲するように前記1対の腕部を回動可能に軸支する回動軸と、前記1対の腕部を回動して前記柱を挟み込んだ状態に固定する固定手段と、親綱13を取り付ける親綱取付部と、を有することを特徴とする。
【選択図】図3

Description

建設作業特に住宅などの躯体工事において特に高所で柱梁などの組立作業を行う際に作業者の墜落防止安全帯を作業移動可能にする親綱を躯体に固定する冶具に関するものである。
一般に親綱は、躯体工事の柱を建てた時点で作業者の腰の高さを基準に作業床の周囲に張り廻らされる。そして、この親綱に作業者の安全帯を繋いで作業することにより、作業者の作業範囲(移動領域)の確保と墜落事故防止を両立させている。
従来、特許文献1(特開平11−350743)に記載されているように、仮設支柱(スタンションポール)を作業床の周囲に配置し、親綱を張設することが行われていた。さらに、特許文献2〜4(特開平8−158663、特開平10−317681、実登3045613)には、躯体の外周部の柱を利用して柱部材全周を包囲する形の装置、金具などを取付ける技術が記載されている。
特開平11−350743号公報 特開平8−158663号公報 特開平10−317681号公報 実登3045613号公報
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、仮設支柱は躯体の梁のウェブに固定するので、外壁パネルを取り付ける(躯体の梁に吊り込む)工程では、仮設支柱と外壁パネルが干渉して躯体に外壁パネルを取り付けることができない。したがって、躯体の梁に外壁パネルを取り付ける前に梁のウェブから仮設支柱を取り外す必要がある。この点で、特許文献2〜4に記載の技術では、当初から仮設支柱は不要なものとなり有利であるが、角型断面の柱の全周囲に抱かせてある該装置や金具などが躯体の外周部の柱の外側が外壁パネルにより覆い被さってしまうので、該装置や金具の必要が無くなる工程(躯体工事以後)に入っても該装置や金具などを取り外すことができなってしまう問題がある。このため、これらの場合も躯体に外壁パネルを取り付ける前に該装置や該金具などを取り外す必要がある。
従って、特許文献1〜4に記載の技術のいずれを採用した場合においても、外壁パネルを取り付ける(躯体の梁に吊り込む)工程では、躯体施工中の安全作業の確保(墜落事故防止)を重視する立場から親綱に安全帯を繋いで作業することをあきらめて、外部足場の適当な部品(クランプ等)に安全帯を緊結して作業をするなどの対応を採らざるを得ず、作業者は、安全帯の長さの範囲内に作業範囲(移動領域)が規制されるから、次の作業に移るに際し、安全帯の取り外しと緊結を伴うこととなり、この繰り返しが頻繁となって、非常に作業性が悪いものとなっていた。
そこで本発明は、安全に作業することができるとともに、作業性を向上することができる親綱取付装置及びそれを用いた親綱張設方法を提供することを目的とする。
(1)上記課題を解決するために本発明に係る親綱取付装置の第一の構成は、躯体の角型断面の柱に固定するための柱包囲部を有し、該柱包囲部は、前記柱の1対の対角のコーナーを片側から包囲するL字形状の1対の腕部と、前記柱の対角のコーナーを包囲するように前記1対の腕部を回動可能に軸支する回動軸と、前記1対の腕部を回動して前記柱を挟み込んだ状態に固定する固定手段と、親綱を取り付ける親綱取付部と、を有することを特徴とする。
ここで、柱包囲部は、柱の全周囲を包囲するものではなく、柱の1対の対角コーナー部分を片側から把み持つ構成に留まるものである。そして、固定手段により安全帯が繋がれた親綱の取付部に作用する外力に抵抗でき、その柱を把み持った位置からずれず、その位置を維持することができる。
また、柱包囲部が把み持つ柱は、角型断面のものであればよく、中空パイプ状の閉鎖型断面型に限らず、C型断面を背中合わせにして形成した開放型断面のものなど、柱の1対の対角コーナーを有する柱であればよい。また柱は鋼管に限らず、木造の柱など柱自身の材料が限定されることはない。
また、柱の1対の対角のコーナーを包囲するL型形状の腕部は、腕部に別部材であるL型形状の押圧板を固定したものでもよく、腕部自身をL型形状に一体成形してたものでもよい。
(2)本発明に係る親綱取付装置の第2の構成は、前記第一の構成の親綱取付装置において、前記柱の1対の対角のコーナーを片側から包囲するL字形状の1対の腕部を先端が略直角に曲がった押圧板で構成したことを特徴とする。
ここで、押圧板は金属プレートなどを先端を折り曲げた形状にしたものであるが形状や強度などが確保されれば、材料は限定されない。
(3)本発明に係る親綱取付装置の第三の構成は、前記第一又は第二の構成の親綱取付装置において、前記柱包囲部の落下を防止する落下防止部を有し、該落下防止部は、前記柱と前記柱包囲部を繋ぐことを特徴とする。
ここで、落下防止部材は、特に限定せず、後述する(5)の鍵型のフック部材とカラビナ部材の組み合せ、または安全ロープとカラビナ部材の組み合せなどを使用して繋いでも良い。
(4)本発明に係る親綱取付装置の第四の構成は、前記第一〜第三のいずれかの構成の親綱取付装置において、前記固定手段は、前記一方の腕部の外側に立設した押圧片と、他方の腕部の端部に設けた締込具とを有し、該締込具で前記押圧片を押圧して前記柱を挟み込んだ状態で前記一対の腕部を固定することを特徴とする。
(5)本発明に係る親綱取付装置の第五の構成は、前記第一〜第四のいずれかの構成の親綱取付装置において、柱包囲部の親綱取付部が回動軸の先端に設けられていることを特徴とする。
(6)本発明に係る親綱取付装置の第六の構成は、前記第一〜第五のいずれかの構成の親綱取付装置において、前記落下防止部は、鍵型のフック部材の一端を前記柱に引っ掛け、他端をカラビナ部材を介して前記柱包囲部の前記親綱取付部と繋いだことを特徴とする。
(7)本発明に係る建物の施工作業における親綱張設方法の代表的な構成は、スタンションポールと前記第一〜第六のいずれかの構成の親綱取付装置を併用する建物の施工作業における親綱張設方法であって、当該階において躯体柱が設置されていない作業時には、スタンションポールを所定の当該階の梁に固定し、当該階に躯体柱が設置された後の作業時には、前記第一〜第六のいずれかの構成の親綱取付装置を当該階の所定の柱に取り付けて、当該階に親綱を張設することを特徴とする。
ここで、スタンションポールとは、親綱を張設するために躯体の梁などに固定する仮設支柱のことである。
(1)、(2)第一及び第二の構成の親綱取付装置によれば、柱包囲部は、柱の片側のみ把み持ち、柱を完全に包囲していないので、柱に外壁パネルが取付けられた後でも取り外すことができる。すなわち、柱包囲部を躯体外周部の柱に取り付けた場合には、柱を立設した後、外壁パネルを設置する際にも親綱を張り廻らしたまま作業を継続することができ、安全性、施工性が向上する。
また、作業者は、親綱を張り廻らせた範囲を自由に移動することができ、従来の外部足場の適当な部品(単管、クランプ材、足場板等)に安全帯を緊結して作業をする場合に比べて、移動範囲が拡大する。
また、親綱を躯体の内側に張り廻らせることができ、足場と躯体との間で外壁パネルを扱う際に親綱が邪魔になることがない。また、落下物が親綱に取り付けた安全帯の上に落ちる危険性もなく、作業性、安全性が向上する。また、狭小地等で隣地境界線との距離が確保できず、躯体外周に足場を設置できない場合においても、親綱を張り廻らせることができ、安全性が向上する。
(3)第三の構成の親綱取付装置によれば、柱包囲部が柱からずれ落ちてしまった場合にも、落下防止部は柱包囲部を柱にぶら下げた状態で繋ぎ止め、柱包囲部の落下を抑制することができる。
(4)第四の構成の親綱取付装置によれば、締込具で押圧片を押圧するという簡単な作業で柱包囲部を柱に取り付けることができ、施工性が向上する。
(5)第五の構成の親綱取付装置によれば、親綱取付装置のアイナットなどの掛止部に親綱を簡易に通すことができ、張設が容易である。
(6)第六の構成の親綱取付装置によれば、フック部材に強度があるので、柱頭部に設けられたボルト孔を利用して簡易かつ強固に装置が柱から脱落することを防止できる。また、カラビナを用いて柱包囲部と繋ぐことで、簡単に設置できる。
(7)建物の施工作業における親綱張設方法の代表的な構成によれば、スタンションポールと親綱取付装置を併用することで、躯体工事作業の各段階で隙間なく墜落防止の安全対策を施すことができる。
すなわち、極めて短時間に親綱取付が出来、躯体内部の床上から安全に作業ができ、外壁を取付けても安全帯を取外す必要が無いため、躯体工事終了まで安全対策の効果が持続する。
また、3階建て以上の建物に使用する場合、下階で使ったスタンションポールを取り外して上階にも使用することができ、準備するスタンションポールの数が1階の分で済むので施工手間がかからない。
本発明に係る親綱取付装置及びそれを用いた親綱張設方法の実施形態について、図を用いて説明する。図1は本発明に係る親綱取付装置の柱包囲部の構成図である。(a)は、柱包囲部を建物の柱に把持させた状態の正面図であり、(b)は(a)の底面図、(c)は右側面である。図2は本発明に係る親綱取付装置の落下防止部であるフック部材の構成図である。図3は本発明に係る親綱取付装置の設置方法の説明図である。
(親綱取付装置100の構成)
図3に示すように、親綱取付装置100は、柱包囲部Aと落下防止部Bから構成されている。
(柱包囲部A)
図1に示すように、柱包囲部Aは、押圧板1である金属プレート1a、1b、腕部2a、2b、回動軸であるボルト6、掛止部であるアイナット7、締込具であるボルト8、押圧片9を有している。
腕部2a、2bの一端内側には、金属プレート1a、1bがそれぞれ固定されている。腕部2a、2bは、腕部2aの中央と腕部2bの他端である交差部5において、ボルト6でヒンジ結合されており、互いに回動可能に軸支されている。
ボルト6の先端は、アイナット7のネジ穴にねじ込まれる。アイナット7は、親綱取付部であるリング部7aを有しており、リング部7aにはカラビナ12(カラビナ部材)が取り付けられるとともに、親綱13が通される。
これにより、親綱を簡易に通すことができ、張設が容易となる。なお、親綱13が取り付けられる親綱取付部と、カラビナ12が取り付けられる箇所は別の箇所としてもよい。
金属プレート1a、1bの先端1c、1dは、角型断面の柱11の形状に合うように略直角に(L字形状に)曲げられている。腕部2a、2bを回動することで、略直角に曲げられている先端1c、1dが柱11の対角のコーナーを包囲し、金属プレート1a、1bが柱11を挟んで圧接する。
腕部2aの他端にはボルト穴2a1が穿孔されており、腕部2bの中央外側には押圧片9が立設されている。押圧片9は、ボルト8のねじ込み方向に直交する方向に立設している。ボルト8と押圧片9は、1対の腕部2a、2bを回動して柱11を挟み込んだ状態に固定する固定手段を構成する。
ボルト8をボルト穴2a1にねじ込むことで、ボルト8の先端で押圧片9を押圧し、腕部2a、2bを柱11を挟む方向に回動する。ボルト8を奥までねじ込むことで、柱11をしっかりと挟んだ状態に固定できる。すなわち、略直角に曲げられている先端1c、1dが柱11の対角のコーナーを包囲した状態(対角のコーナーに係止した状態)で柱11を挟み込み、親綱取付装置100を柱11に固定できる。
柱包囲部Aは、柱11を完全に包囲していないので、柱11に外壁パネルが取付けられた後でも取り外すことができる。
なお、押圧板1は、金属製の金属プレート1a、1bとしたが、本発明はかかる構成に限定されるものではなく、ゴムラバー等で形成してもよい。押圧板をゴムラバーとした場合には、柱11を傷つけることなく、柱11に密着させて強固に固定することができ、柱包囲部Aをずり落ちにくくすることができる。
また、押圧板1である金属プレート1a、1bは、腕部2a、2bとは、別部材となっているが、腕部2a、2bとして一体に成形して、腕部自体をL字形状としてもよい。
(落下防止部B)
図2に示すように、落下防止部Bは、柱11と柱包囲部Aを繋ぐものであり、フック部材10、カラビナ12を有している。フック部材10は、一端がJ型形状のフック部10aとなっており、他端は環状部10bとなっている。フック部材10の長さは、柱包囲部Aの設置位置と柱頭部11aを結ぶ距離とほぼ同じに合わせている。
フック部10aは上階の梁と接合するための柱頭部11aの接合部ボルト穴11a1に引っ掛けられ、環状部10bはカラビナ12を介してアイナット7に連結する。
これにより、柱包囲部Aが柱11からずれ落ちてしまった場合にも、落下防止部Bは柱包囲部Aを柱11にぶら下げた状態で繋ぎ止め、柱包囲部Aの落下を抑制することができる。
フック部材10は、柱包囲部Aが落下した際の衝撃荷重に耐えるために、丸鋼全体を鍵型に加工して強度を確保している。なお、フック部材10は角鋼であってもよいが、丸鋼で形成したことにより、柱11の柱頭部11aに引っ掛け易くなっている。
落下防止部Bは、柱包囲部Aが柱に設置され、外壁パネルが取付けられた後であっても、カラビナ12を用いて柱11と柱包囲部Aとを繋ぐように構成されているので、いつでも簡単に着脱可能である。
(親綱取付装置100の設置方法)
次に、親綱取付装置100の設置方法について説明する。図3に示すように、まず、フック部材10のフック部10aを柱頭部11aのボルト穴11a1に引っ掛ける。そして、環状部10bと柱包囲部Aのアイナット7をカラビナ12で連結する。
次に、床面から親綱13を張り廻らすべき適切な高さ(床面から1m前後の腰高くらい)で、柱包囲部Aを柱11に固定する。具体的には、まず、腕部2a、2bを十分に開き、躯体内部側から角型断面の柱11のコーナーにボルト6で軸支した回動軸の部位を合わせる。そして、腕部2a、2bを閉じながら、先端1c、1dが柱11の対角のコーナーを包囲するように、金属プレート1a、1bで柱11を挟み込む。
次に、ボルト8を締め込んで押圧片9を押圧することで、腕部2a、2bが閉じる。これにより、先端1c、1dが柱11の対角のコーナーに引っ掛かり、金属プレート1a、1bが柱11を強く挟んで密着し、柱包囲部Aが柱11に外れ難く固定される。
この要領で、図4に示すように、躯体の外周の柱11に適切な間隔で親綱取付装置100を取り付ける。そして、各親綱取付装置100のリング部7aに親綱13を通して親綱13を張り廻らせる。この張り廻らせた親綱13に安全帯14の一端をスライド可能に取り付け、安全帯14の他端を作業者に取り付ける。これにより、作業者は、親綱13を張り廻らせた範囲を自由に移動することができ、従来の外部足場の適当な部品に安全帯14を緊結して作業をする場合に比べて、移動範囲が拡大する。
また、親綱取付装置100を取り付けた状態(親綱13を張り廻らせた状態)で外壁パネルを取り付けることができ、安全性、施工性が向上する。
また、ボルト8で押圧片9を押圧するという簡単な作業で柱包囲部Aを柱11に取り付けることができ、施工性が向上する。さらに、フック部10aを引っ掛ける、カラビナ12で連結する、ボルト8で固定する、といった簡単な作業で親綱取付装置100を取り付けることができ、施工性が向上する。
また、親綱13を躯体の内側に張り廻らせることができるので、躯体の外側に設置した足場と躯体との間で外壁パネルを扱う作業をする際に親綱13が邪魔になることがない。また、落下物が安全帯14の上に落ちる危険性もなく、作業性、安全性が向上する。また、狭小地等において足場設置ができない場合においても、躯体を組み立てれば、柱に親綱13を張り廻らせることができるので、躯体に敷き詰めた床パネルを作業床として作業を行うことができ、安全性が向上する。
(開放型の角型断面の柱への適用例)
なお、親綱取付装置100を取り付ける柱は、必ずしも断面が閉塞四角形を構成する柱11でなくてもよい。例えば、図5に示すように、断面が開放型(Cチャネルの鋼材を背中合わせにした)柱54であってもよい。すなわち、柱が対角に角部を形成している限り、柱包囲部Aを取り付けることができる。
(親綱13を取り付けるための補助部材)
また、各階における親綱13の取り付けには、補助的に柱11以外の部材も利用できる。例えば、図6に示すように、耐力フレーム50(耐震壁用フレーム材)の柱材51と斜材52とで形成された部分に、エンドレスのナイロンロープ53を取り付ける。この際、ナイロンロープ53の上方を摘まみ、斜材52を超えて下方の輪の中へ摘まんだ部分を通し、そのまま摘まんだ部分を引っ張ることで輪を作る。そして、ナイロンロープ53で形成した輪の中に親綱13を通すことで親綱13を取り付ける。
(親綱取付装置100を利用した躯体の施工及び親綱張設方法)
次に、親綱取付装置100を利用した躯体の施工及び親綱張設方法について説明する。図7に示すように、躯体の施工は、下階から順次上階に積み上げる方式で行う。
図7に示すように、まず、基礎20の施工後、1階の床パネル21を敷き込み、柱11を建てこみ、2階梁22を取り付けることにより1層目の躯体の柱梁を組み立てる。
(水平ネット、親綱取り付け作業)
高所作業の墜落防止対策のため、2階の床パネル27を敷き込む前に、2階床部に対して水平安全ネット23を張設する。そして、躯体外周を構成する2階梁部(外梁)に梁固定スタンションポール24(仮設支柱)を等間隔に取り付け、親綱25を張り廻らす。
ここで、スタンションポール24は、特開平11−350743に開示される梁のウェブ部に緊結するタイプを使用する。すなわち、スタンションポール24の固定部は、梁のウェブに床パネルの下階側にて強固に緊結されているので、親綱が引っ張られることにより該固定部に引抜力が作用しても外れることはない。しかし、仮にスタンションポール24の固定部をコンクリート床パネル面に直接固定する場合は、該固定部に作用する引抜力によりコンクリート材料が破断するので、スタンションポールは、床面から外れてしまい、作業者を支えきれず墜落事故につながる可能性があるからである。
次に、作業者は、安全帯14を介して親綱25に繋がれた状態で、躯体外周方向から作業者が作業するための外部足場26を設置する。なお、外部足場26を設置した場合でも、躯体と足場板の間は距離が離れ、作業者の墜落の恐れがあるため、スタンションポール24を使用して親綱25をつけたままにしておく必要がある。
(2階の床パネルの敷き込み)
吊り上げ重機を使用して輸送車の荷台や敷地等に仮置きされている2階用の床パネル27を2階梁を支持材として所定の設計図に示された位置に1枚ずつ載せて設置する。
そして、1階のサッシ28、コーナー板29を取り付け、2階床部の水平安全ネット23を外す。
(2階の柱11を立設)
図8に示すように、吊り上げ重機を使用して2階の柱11を吊り上げ、該柱11を1本ずつ所定の設計図に示された位置に立設して柱脚部を2階梁22にボルト固定する。
(親綱13の取り付け作業)
上記柱11の設置は、外梁を優先して行い、上述のごとく親綱取付装置100を使用して親綱13を取り付ける。
親綱13を取り付けた後、先に取り付けたスタンションポール24に張り廻らせた親綱25を外すことができる。ここで、スタンションポール24を使って張設した親綱25から親綱取付装置100を使った親綱13に置き換えるのは、スタンションポール24と外壁パネルが干渉して、2階梁に該外壁パネルを取り付けられないからである。
次に、作業者は、安全帯14を介して親綱25に繋がれた状態で、1階の外壁パネル30を吊り込む。そして、屋上階梁31を2階の柱11に接続して屋上床を構成し、水平安全ネット32を張設する。
この作業は、部材どうしの干渉がないため、親綱取付装置100により取り付けた親綱13を張り廻らせた状態で行うことができる。このため、作業者は、安全帯14をつけたまま移動作業領域を確保することができ、作業の安全を確保できる。
次に、屋上階においては、屋上階梁31の上側フランジ面にその上にスタンションポール24の固定用の支柱受部材24aを取り付け、スタンションポール24を所要の本数立設し、親綱33を設置すれば足りる。屋上階には躯体の柱を立設することはなく、本発明に係る親綱取付装置を使用することができないからである。なお、この支柱受部材24aは、屋上梁上に固定され、防水張替え作業等の建物のメンテナンス工事時の安全確保のためにスタンションポール24をいつでも設置することができるように屋上仕上げ面に設けられたものである。
作業者は、安全帯14を介して親綱33に繋がれた状態で、屋上階に床パネル34を敷き込む。
そして、2階のサッシ35、コーナー部の柱用の外壁パネル36を取り付ける。2階の外壁パネル37を取り付ける。最後に親綱13及び親綱取付装置100を取り外す。
なお、本実施形態では、2階建の建物について親綱取付装置100を利用した躯体の施工及び親綱張設方法について説明したが、3階以上の建物であってもよい。
上述のごとく、親綱取付装置100を用いることで、2階(下階)で使ったスタンションポール24を取り外して屋上階(上階)にも使用することができ、準備するスタンションポール24の数が1階分で済むので施工手間がかからない。
墜転落事故の多い住宅等の躯体工事において、簡便に転落防止用親綱を設置し、安全に作業を進めようとする場合に、有用性が極めて高い。
本発明に係る親綱取付装置の柱包囲部の構成図である。 本発明に係る親綱取付装置の落下防止部であるフック部材の構成図である。 親綱取付装置の設置方法の説明図である。 親綱取付装置の設置方法の説明図である。 開放型の角型断面の柱へ取り付けた柱包囲部の断面図である。 耐震壁用フレーム材を利用した親綱張設方法の説明図である。 躯体の施工及び親綱張設方法の説明図である。 躯体の施工及び親綱張設方法の説明図である。
符号の説明
A…柱包囲部、B…落下防止部、1…押圧板、1a、1b…金属プレート、1c、1d…先端、2a、2b…一対の腕部、2a1…ボルト穴、5…交差部、6、8…ボルト、7…アイナット、7a…リング部、9…押圧片、10…フック部材、10a…フック部、10b…環状部、11、54…柱、11a…柱頭部、11a1…ボルト穴、12…カラビナ部材、13、25、33…親綱、20…基礎、21、27、34…床パネル、22、31…梁、23、32…水平安全ネット、24…スタンションポール、24a…支柱受部材、26…外部足場、28、35…サッシ、29…コーナー板、30、36、37…外壁パネル、50…耐力フレーム、51…柱材、52…斜材、53…ナイロンロープ、100…親綱取付装置

Claims (7)

  1. 躯体の角型断面の柱に固定するための柱包囲部を有し、
    該柱包囲部は、
    前記柱の1対の対角のコーナーを片側から包囲するL字形状の1対の腕部と、
    前記柱の対角のコーナーを包囲するように前記1対の腕部を回動可能に軸支する回動軸と、
    前記1対の腕部を回動して前記柱を挟み込んだ状態に固定する固定手段と、
    親綱を取り付ける親綱取付部と、を有することを特徴とする親綱取付装置。
  2. 前記柱の1対の対角のコーナーを片側から包囲するL字形状の1対の腕部を先端が略直角に曲がった押圧板で構成したことを特徴とする請求項1に記載の親綱取付装置。
  3. 前記柱包囲部の落下を防止する落下防止部を有し、
    該落下防止部は、前記柱と前記柱包囲部を繋ぐことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の親綱取付装置。
  4. 前記固定手段は、前記一方の腕部の外側に立設した押圧片と、他方の腕部の端部に設けた締込具とを有し、
    該締込具で前記押圧片を押圧して前記柱を挟み込んだ状態で前記一対の腕部を固定することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の親綱取付装置。
  5. 柱包囲部の親綱取付部が回動軸の先端に設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の親綱取付装置。
  6. 前記落下防止部は、鍵型のフック部材の一端を前記柱に引っ掛け、他端をカラビナ部材を介して前記柱包囲部の前記親綱取付部と繋いだことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の親綱取付装置。
  7. スタンションポールと請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の親綱取付装置を併用する建物の施工作業における親綱張設方法であって、
    当該階において躯体柱が設置されていない作業時には、スタンションポールを所定の当該階の梁に固定し、
    当該階に躯体柱が設置された後の作業時には、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の親綱取付装置を当該階の所定の柱に取り付けて、当該階に親綱を張設することを特徴とする建物の施工作業における親綱張設方法。
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