JP2007185138A - 親油性酸化防止剤、およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【発明の課題】
光、熱などによる油脂および油脂含有食品の酸化劣化を効果的に防止することのできる親油性酸化防止剤およびその製造方法を提供する。
【解決手段】ヤマモモ抽出物および/または酵素処理イソクエルシトリン、水溶性酸化防止剤および油溶性酸化防止剤を親油性乳化剤で油中水型に乳化してなる親油性酸化防止剤およびその製造方法。
【選択図】なし
光、熱などによる油脂および油脂含有食品の酸化劣化を効果的に防止することのできる親油性酸化防止剤およびその製造方法を提供する。
【解決手段】ヤマモモ抽出物および/または酵素処理イソクエルシトリン、水溶性酸化防止剤および油溶性酸化防止剤を親油性乳化剤で油中水型に乳化してなる親油性酸化防止剤およびその製造方法。
【選択図】なし
Description
本発明は、油脂含有食品用の親油性酸化防止剤およびその製造方法に関し、更に詳しくは、ヤマモモ抽出物および/または酵素処理イソクエルシトリン、水溶性酸化防止剤および油溶性酸化防止剤を親油性乳化剤で油中水型に乳化してなる食用油脂または油脂含有食品用の親油性酸化防止剤、およびその製造方法に関する。
従来、食用油脂やドレッシング、マヨネーズ、即席麺、油揚げ菓子、ポテトチップス、チョコレートなどの油脂含有食品はその製造工程中または保存中において、油脂の自動酸化によって、変色、酸化臭の生成等といった品質劣化が問題となっている。特に、内容物の状態を外部から容易に確認しうるという利点を生かすことを目的として、透明または半透明の包材で製造された容器に食品を収納することが増えており、こうした透明または半透明の容器を使用する場合は光酸化によっても油脂の酸化は促進されるので、油脂含有食品の賞味期間が極めて短くなるなどの問題があった。この油脂類の酸化を防止することが油脂含有食品の品質を保持する上で重要である。
現在、油溶性の酸化防止剤としては一般的にトコフェロールやその誘導体、アスコルビン酸パルミテートなどが使用されているが、これらは全ての油脂の酸化に対して十分な効果を示すものでは無く、油脂含有食品の劣化を防止するのに満足できるものではない。
そこで、食用油脂や油脂含有食品の品質保持方法については種々の提案がこれまでになされている。例えば、アスコルビン酸、エリソルビン酸、コウジ酸、没食子酸、リンゴ酸等の油脂に難溶性の酸化防止剤を均一に溶解または分散させ溶剤性を改善した油脂酸化防止剤組成物(例えば、特許文献1参照)、油脂含有食品と酢酸菌あるいはパン酵母を接触させることを特徴とする油脂含有食品の品質劣化防止法(例えば、特許文献2参照)、エチルアルコールを添加してなる油脂含有食品素材の品質保持方法(例えば、特許文献3参照)、フェルラ酸エステルとアミノ化合物を併用した油脂類の酸化防止法(例えば、特許文献4参照)、没食子酸、水溶性抗酸化剤および油溶性抗酸化剤を親油性乳化剤で油中水型に乳化してなる親油性酸化防止剤(例えば、特許文献5参照)などが提案されている。
また、ヤマモモ抽出物および酵素処理イソクエルシトリンの抗酸化作用は既に公知であり、例えば、ヤマモモ科ヤマモモ属植物から有機溶媒を用いて抽出することを特徴とする酸化防止剤の製造法(例えば、特許文献6参照)、ヤマモモ科植物抽出物を含むことを特徴とする色素の安定化法(例えば、特許文献7参照)、水易溶性フラボノール配糖体を含有することを特徴とする活性酸素消去活性及びまたはフリーラジカル消去活性を有する飲食品(例えば、特許文献8参照)などが提案されている。
しかしながら、上述したような従来提案されている酸化防止剤は、油脂の酸化防止にそれなりの効果を有するが、必ずしも満足できるものではなかった。
ヤマモモ抽出物および酵素処理イソクエルシトリンは油に難溶性であり、これらを用いた既存の酸化防止剤は全て水溶性である(例えば、三栄源エフ・エフ・アイ社製、サンメリン Y−AF)。これら水溶性の酸化防止剤は乳製品などの水中油型乳化食品中の油脂に対してはある程度の効果を有するがそれも十分なものではない。当然、食用油脂や油中水型食品に対しては溶解もしくは均一に分散するものではなく、食用油脂や油脂含有食品に対しては使用が困難であった。
また、ヤマモモ抽出物および酵素処理イソクエルシトリンを乳化剤を用い油中に均一に乳化し、製剤化するのは非常に困難であり、単に分散するだけなら可能であるが、安定性が悪く上記成分がすぐに析出・沈殿したり、不透明になってしまい透明な飲食品等には利用できないなどの問題があった。よってヤマモモ抽出物および酵素処理イソクエルシトリンを用いた透明かつ安定性の高い親油性酸化防止剤を調製するのは困難であった。
従って本発明の目的は、光、熱などによる油脂含有食品の酸化劣化を効果的に防止することができ、透明で安定性の高い油中水型の親油性酸化防止剤およびその製造方法を提供することである。
本発明者等は、食用油脂や油脂含有食品の光、熱などによる酸化劣化を防止することのできる素材及び方法について鋭意研究を行なった結果、ヤマモモ抽出物および/または酵素処理イソクエルシトリン、水溶性酸化防止剤および油溶性酸化防止剤を親油性乳化剤で油中水型に乳化した親油性酸化防止剤を油脂含有食品に配合することにより、油脂の光、熱などによる酸化劣化を飛躍的に防止できることを見出すことにより、本発明に至った。
すなわち、本発明は下記にあげるものである:
(親油性酸化防止剤)
項1.ヤマモモ抽出物および/または酵素処理イソクエルシトリン、水溶性酸化防止剤および油溶性酸化防止剤を親油性乳化剤で油中水型に乳化してなる親油性酸化防止剤。
項2.水溶性酸化防止剤がアスコルビン酸、クエン酸、フィチン酸、リン酸、クロロゲン酸、プロアントシアニジン、茶抽出物、ローズマリー抽出物、ブドウ種子抽出物、羅布麻抽出物、フラボノール類から選ばれる1種または2種以上である項1記載の親油性酸化防止剤。
項3.油溶性酸化防止剤がトコフェロールおよびその誘導体、アスコルビン酸パルミテート、レシチン、セサモールおよびγ−オリザノールから選ばれる1種または2種以上である項1乃至2に記載の親油性酸化防止剤。
(親油性酸化防止剤)
項1.ヤマモモ抽出物および/または酵素処理イソクエルシトリン、水溶性酸化防止剤および油溶性酸化防止剤を親油性乳化剤で油中水型に乳化してなる親油性酸化防止剤。
項2.水溶性酸化防止剤がアスコルビン酸、クエン酸、フィチン酸、リン酸、クロロゲン酸、プロアントシアニジン、茶抽出物、ローズマリー抽出物、ブドウ種子抽出物、羅布麻抽出物、フラボノール類から選ばれる1種または2種以上である項1記載の親油性酸化防止剤。
項3.油溶性酸化防止剤がトコフェロールおよびその誘導体、アスコルビン酸パルミテート、レシチン、セサモールおよびγ−オリザノールから選ばれる1種または2種以上である項1乃至2に記載の親油性酸化防止剤。
(親油性酸化防止剤の製造方法)
項4.油脂類、油溶性酸化防止剤および親油性乳化剤からなる油層部に、ヤマモモ抽出物および/または酵素処理イソクエルシトリンと水溶性酸化防止剤および水性溶媒からなる水層部を添加して油中水型に乳化することを特徴とする親油性酸化防止剤の製造方法。
項4.油脂類、油溶性酸化防止剤および親油性乳化剤からなる油層部に、ヤマモモ抽出物および/または酵素処理イソクエルシトリンと水溶性酸化防止剤および水性溶媒からなる水層部を添加して油中水型に乳化することを特徴とする親油性酸化防止剤の製造方法。
本発明は、光、熱などによる食用油脂や油脂含有食品の酸化劣化を効果的に防止することのできる、透明かつ安定性の高い酸化防止剤を提供できる。
以下に、本発明の具体的態様について説明する。
本発明の食用油脂や油脂含有食品用の親油性酸化防止剤はヤマモモ抽出物および/または酵素処理イソクエルシトリン、水溶性酸化防止剤および油溶性酸化防止剤を親油性乳化剤で油中水型に乳化してなる。
本発明で用いるヤマモモ抽出物は、ヤマモモ科植物を本出願人による特許出願の方法(特開平05−156249号、特開平09−087619号)を用いて抽出することによって調製取得でき、このような操作により得られるヤマモモ抽出物はフラボノール配糖体であるミリシトリン(ミリセチン−3−O−ラムノシド)を主成分とする。またこのヤマモモ抽出物は、そのままで使用することもできるが、さらに特開平09−095672号公報記載の方法に従って糖転移酵素処理を施すこともでき、これは水易溶性ヤマモモ抽出物として使用することができる。
また、ヤマモモ抽出物中の主成分であるミリシトリンは自然界では街路樹や果樹などとして日本でも栽培されているヤマモモ(Myrica rubra)(月刊フードケミカル,9月号, 51-56 (1998))、チューインガムの原料として用いられていたサポジラ(Manilkara zapota)(J.Nat.Prod., 66, 983-986 (2003))やツルマンリョウ(Myrisine seguinii)(Phytochemistry, 46, 943-946 (1997))等からもアルコール等の有機溶媒で抽出できる。
本発明で用いる酵素処理イソクエルシトリンとは、イソクエルシトリンに糖供与体の存在下、糖転移酵素を作用して得られるもので、下式で示される、イソクエルシトリンと種々の程度にグルコシル化されたα−グリコシルイソクエルシトリンとの混合物をいう。
上記式において具体的には、「酵素処理イソクエルシトリン」は、α−1,4結合のグルコース残基数(n)が0のイソクエルシトリンと、α−1,4結合のグルコース残基数(n)が1以上、通常1〜15、好ましくは1〜10のα−グリコシルイソクエルシトリンとの混合物である。
本発明で用いる酵素処理イソクエルシトリンは、異なるグルコース基の結合数(n)を有する種々の酵素処理イソクエルシトリンの混合物であってもよいが,グルコース基の結合数(n)が単一である一種の酵素処理イソクエルシトリンであってもよい。
かかる酵素処理イソクエルシトリンは、本出願人による特許出願の方法(特開平04−066096号、特開平04−066098号、WO2005/030975)等を用いて、イソクエルシトリンをグルコース基転移酵素で処理することによって調製することができる。制限されないが、通常、酵素処理イソクエルシトリンは、グルコシダーゼまたはトランスグルコシダーゼ等のグルコース残基転移酵素を用いて、イソクエルシトリンにグルコース残基を等モル以上転移させて配糖化することによっても製造することができる。
斯くして得られる酵素処理イソクエルシトリンは、イソクエルシトリン(ケルセチン3−0−モノグルコサイド)のグルコース残基に更にグルコースが等モル以上量結合したα-グリコシルイソクエルシトリンを主成分とするものであって水易溶性である。
本発明で使用するヤマモモ抽出物、酵素処理イソクエルシトリンは、精製品でも未精製品でもよく、またはこれらを含有する植物等の天然物から得られる粗精製品であってもかまわないし、更にこの成分を含有する抽出物や製剤でもよい。例えば、ヤマモモ抽出物は、サンメリン Y−AF(三栄源エフ・エフ・アイ社製)、酵素処理イソクエルシトリンは、サンメリン AO−1007(三栄源エフ・エフ・アイ社製)などを挙げることができる。
ヤマモモ抽出物、酵素処理イソクエルシトリンの使用量は特に限定されず適宜に設定することができるが、例えば、親油性酸化防止剤の全量に対してヤマモモ抽出物0.1〜30質量%、好ましくは1〜15質量%、酵素処理イソクエルシトリン0.1〜30質量%、好ましくは1〜15質量%を例示することができる。ヤマモモ抽出物と酵素処理イソクエルシトリンを用いる場合には、その総添加量が0.1〜30質量%、好ましくは1〜20質量%を挙げることができる。
本発明で使用する水溶性酸化防止剤は特に限定されず、従来公知の水溶性酸化防止剤を使用することができ、例えば、アスコルビン酸やアスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸グルコシド等のアスコルビン酸誘導体、クエン酸やクエン酸ナトリウム等のクエン酸誘導体、フィチン酸やその誘導体、リン酸やメタリン酸等のリン酸誘導体、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)やその誘導体、フェルラ酸、クロロゲン酸、プロアントシアニジン、茶抽出物、ロスマリン酸、ローズマリー抽出物、ブドウ種子抽出物、羅布麻抽出物、フラボノール類を挙げることができる。フラボノール類は、ルチン、ケルセチン、ミリセチン、ケンフェロール、モリン等や、それらを糖転移酵素や合成法によって配糖化したものなどを例示する事ができる。これら水溶性酸化防止剤を1種または2種以上使用することができる。特に、クエン酸、フィチン酸およびリン酸を使用すると、ヤマモモ抽出物および酵素処理イソクエルシトリンの安定性も高め、また製剤の色調等の改善にも有用であるので好ましい。かかる水溶性酸化防止剤の使用量は特に限定されず任意に設定できるが、例えば、親油性酸化防止剤の全量に対して0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%を挙げることができる。
本発明で使用する油溶性酸化防止剤も特に限定されず、従来公知の油溶性酸化防止剤を使用することができ、例えば、トコフェロール、アスコルビン酸パルミテート、レシチン、セサモール、γ−オリザノールなどを挙げることができ、これらの油溶性酸化防止剤を1種または2種以上使用することができる。かかる油溶性酸化防止剤の使用量は特に限定されず任意に設定できるが、例えば、親油性酸化防止剤の全量に対して0.01〜30質量%、好ましくは0.1〜10質量%を挙げることができる。
本発明で使用する親油性乳化剤として好適なものとしては、市販の各種のグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチンなどが挙げられる。かかる親油性乳化剤の使用量は特に限定されないが、例えば、親油性酸化防止剤の全量に対して5〜60質量%、好ましくは10〜50質量%の範囲内を例示することができる。
本発明の親油性酸化防止剤を調製する方法は特に限定されないが、例えば、上記した油溶性酸化防止剤および親油性乳化剤を油脂類に混合した油層部に、上述のヤマモモ抽出物および/または酵素処理イソクエルシトリンと水溶性酸化防止剤を水性溶媒に溶解した水層部を添加して、適宜な乳化手段を用いて油中水型に乳化することにより得ることができる。かかる油脂類としては特に限定されないが、例えば、大豆油、米油、ゴマ油、落花生油、コーン油、菜種油、ヤシ油、パーム油、オリーブ油、サフラワー油、綿実油などの植物油脂類及びそれらの硬化油、牛脂、豚脂、魚油などの動物油脂類及びそれらの硬化油、中鎖脂肪酸トリグリセライドなどを挙げることができる。また、水性溶媒としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、エタノールなどの多価アルコール類などを挙げることができる。
本発明の親油性酸化防止剤を使用することができる食品の具体例としては、食用油脂、即席麺、ポテトチップス、油揚げ菓子、油揚げ天ぷら、揚げ玉、マーガリン、バター、ショートニング、マヨネーズ、ドレッシング、チョコレート、ホイップクリームなどを例示することができる。
これら食用油脂や油脂含有食品に対する本発明の酸化防止剤の添加量としては、比較的選択の範囲は広いが、一般的には、油脂含有食品に対して0.01〜0.3質量%程度の範囲が採用される。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、特に記載のない限り「%」とは「質量%」を意味するものとする。
ヤマモモ抽出物の調製例
ヤマモモ抽出物は本出願人による特許出願の方法(特許第3710854号実施例参照)にて調製した。すなわち、ヤマモモ樹皮乾燥物の粉砕物1kgにメタノール10kgを加え、約60℃で5時間抽出したのち、濾過し、残滓をメタノール3kgで洗浄し、メタノール抽出液約10kgを得た。この抽出液を濃縮後別の容器に移し替え、真空度666.6Pa(5mmHg)、浴温60℃で減圧乾燥して黄色の粉末0.25kgを得た。得られた固形物を粉砕後、室温で水5Lと懸濁したのち濾過し、残った固形物を水5Lで洗浄した。次いで固形分を真空度666.6Pa(5mmHg)、浴温80℃で減圧乾燥して黄白色の固形物からなるヤマモモ科植物抽出物0.13kgを得た。
ヤマモモ抽出物は本出願人による特許出願の方法(特許第3710854号実施例参照)にて調製した。すなわち、ヤマモモ樹皮乾燥物の粉砕物1kgにメタノール10kgを加え、約60℃で5時間抽出したのち、濾過し、残滓をメタノール3kgで洗浄し、メタノール抽出液約10kgを得た。この抽出液を濃縮後別の容器に移し替え、真空度666.6Pa(5mmHg)、浴温60℃で減圧乾燥して黄色の粉末0.25kgを得た。得られた固形物を粉砕後、室温で水5Lと懸濁したのち濾過し、残った固形物を水5Lで洗浄した。次いで固形分を真空度666.6Pa(5mmHg)、浴温80℃で減圧乾燥して黄白色の固形物からなるヤマモモ科植物抽出物0.13kgを得た。
酵素処理イソクエルシトリンの調製例
酵素処理イソクエルシトリンは本出願人による特許出願の方法(WO2005/030975)実施例参照)にて調製した。すなわち、イソクエルシトリン2kgに、100Lの水を加え、コーンスターチ8kgを添加し、均質にした。これにCGTase(天野エンザイム株式会社、商品名コンチザイム)2000mLを添加し、温度60℃、pH7.25にて26時間保持した。得られた反応溶液を吸着樹脂カラム(三菱化成(株)製ダイヤイオンHP−21)に通してα−グリコシルイソクエルシトリンを吸着させ、次いで当該カラムに50容量%メタノール水溶液を通液して脱着させた。脱着液を濃縮後、噴霧乾燥して酵素処理イソクエルシトリンを得た。
酵素処理イソクエルシトリンは本出願人による特許出願の方法(WO2005/030975)実施例参照)にて調製した。すなわち、イソクエルシトリン2kgに、100Lの水を加え、コーンスターチ8kgを添加し、均質にした。これにCGTase(天野エンザイム株式会社、商品名コンチザイム)2000mLを添加し、温度60℃、pH7.25にて26時間保持した。得られた反応溶液を吸着樹脂カラム(三菱化成(株)製ダイヤイオンHP−21)に通してα−グリコシルイソクエルシトリンを吸着させ、次いで当該カラムに50容量%メタノール水溶液を通液して脱着させた。脱着液を濃縮後、噴霧乾燥して酵素処理イソクエルシトリンを得た。
実施例1〜3
表1に示した配合割合にて、油層部を混合した後、その油層部にあらかじめ混合した水層部を混合しTKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)を使用して油中水型に乳化後、本発明の親油性酸化防止剤を得た(本発明品1〜3)。
表1に示した配合割合にて、油層部を混合した後、その油層部にあらかじめ混合した水層部を混合しTKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)を使用して油中水型に乳化後、本発明の親油性酸化防止剤を得た(本発明品1〜3)。
比較例1
実施例1において、ヤマモモ抽出物および酵素処理イソクエルシトリンをサフラワー油に変更した以外は実施例1と同様に処理して酸化防止剤を得た(比較品1)。配合割合を表1に示した。
実施例1において、ヤマモモ抽出物および酵素処理イソクエルシトリンをサフラワー油に変更した以外は実施例1と同様に処理して酸化防止剤を得た(比較品1)。配合割合を表1に示した。
比較例2
実施例2において、トコフェロール(日清オイリオ社製、ミックストコフェロール、純度99.5%以上)をサフラワー油に変更した以外は実施例2と同様に処理して酸化防止剤を得た(比較品2)。配合割合を表1に示した。
実施例2において、トコフェロール(日清オイリオ社製、ミックストコフェロール、純度99.5%以上)をサフラワー油に変更した以外は実施例2と同様に処理して酸化防止剤を得た(比較品2)。配合割合を表1に示した。
比較例3
実施例3において、トコフェロールをサフラワー油に変更した以外は実施例3と同様に処理して酸化防止剤を得た(比較品3)。配合割合を表1に示した。
実施例3において、トコフェロールをサフラワー油に変更した以外は実施例3と同様に処理して酸化防止剤を得た(比較品3)。配合割合を表1に示した。
比較例4
実施例2において、クエン酸をサフラワー油に変更した以外は実施例2と同様に処理して酸化防止剤を得た(比較品4)。配合割合を表1に示した。
実施例2において、クエン酸をサフラワー油に変更した以外は実施例2と同様に処理して酸化防止剤を得た(比較品4)。配合割合を表1に示した。
比較例5
実施例3において、クエン酸をサフラワー油に変更した以外は実施例3と同様に処理して酸化防止剤を得た(比較品5)。配合割合を表1に示した。
実施例3において、クエン酸をサフラワー油に変更した以外は実施例3と同様に処理して酸化防止剤を得た(比較品5)。配合割合を表1に示した。
(酸化防止効果の試験)
大豆油、コーン油およびパーム油に、実施例1〜3および比較例1〜5で得られた本発明品1〜3および比較品1〜5を0.1%添加し、CDM試験(基準油脂分析試験法,2.5.1.2−1996参照)により、油脂の変敗開始時間を測定した。その結果を表2に示した。
大豆油、コーン油およびパーム油に、実施例1〜3および比較例1〜5で得られた本発明品1〜3および比較品1〜5を0.1%添加し、CDM試験(基準油脂分析試験法,2.5.1.2−1996参照)により、油脂の変敗開始時間を測定した。その結果を表2に示した。
表2より、本発明品1〜3は大豆油、コーン油およびパーム油ともに比較例1〜5と比べて同程度以上に変敗開始時間を延長した。
(製剤の外観および安定性)
実施例1〜3および比較例1〜5で調製した各製剤の特徴を表3に示した。製剤の透明性は、各製剤を調製後、50mlの透明ガラスバイアルに入れ、その透明性を観察した結果を表した。製剤の色調はヤマモモ抽出物と酵素処理イソクエルシトリンが安定に乳化された状態の黄褐色を基準として評価した。油脂への溶解性はサフラワー油に各製剤を0.1%添加した場合の濁りを観察して評価した。また、酸化防止効果は表2の結果をもとに、本発明品に対する比較品の効果の強さを示した。
実施例1〜3および比較例1〜5で調製した各製剤の特徴を表3に示した。製剤の透明性は、各製剤を調製後、50mlの透明ガラスバイアルに入れ、その透明性を観察した結果を表した。製剤の色調はヤマモモ抽出物と酵素処理イソクエルシトリンが安定に乳化された状態の黄褐色を基準として評価した。油脂への溶解性はサフラワー油に各製剤を0.1%添加した場合の濁りを観察して評価した。また、酸化防止効果は表2の結果をもとに、本発明品に対する比較品の効果の強さを示した。
○ 〜 △ 〜 ×
製剤の色調 安定 不安定
○ 〜 △ 〜 ×
油脂への溶解性 高い 低い
○ 〜 △ 〜 ×
酸化防止効果 高い 低い
○ 〜 △ 〜 ×
総合評価 良い 悪い
○ 〜 △ 〜 ×
表3より本発明品1〜3は製剤が透明であり、サフラワー油への溶解性も高く、沈殿や析出物も生成していないことが判った。一方、ヤマモモ抽出物、酵素処理イソクエルシトリンもしくはトコフェロールを除いた比較品1〜3は乳化が十分ではなく、不透明で濁っており、サフラワー油への溶解性も劣っていた。
また、クエン酸を除いた比較例4、5では、酸化防止効果は減じてはいなかったが、酸化防止剤の製剤自体が黒褐色に変色していた。またこれをサフラワー油に溶解すると油が濁ってしまったことから、比較品4、5の製剤は、商業的利用価値は低いものと考えられる。よって本発明品にはクエン酸などの水溶性酸化防止剤も有効であることが判った。
以上、表3の結果より、本発明品1〜3の酸化防止剤は、酸化防止効果が強く、加えて製剤の透明性や安定性に優れていることが判った。よって、様々な食品への利用が可能であり商業的な利用価値が高く非常に有用である。
(食品に対する酸化防止効果)
市販のマヨネーズに、実施例2、3で得られた本発明品2、3および比較対照としてトコフェロールを各々0.1%添加し、これをシャーレに分注し、2万ルクスの蛍光灯照射もしくは60℃の暗所にて3日間保存後、過酸化物の生成量を測定した(基準油脂分析試験法,2.5.2.1−1996参照)。
市販のマヨネーズに、実施例2、3で得られた本発明品2、3および比較対照としてトコフェロールを各々0.1%添加し、これをシャーレに分注し、2万ルクスの蛍光灯照射もしくは60℃の暗所にて3日間保存後、過酸化物の生成量を測定した(基準油脂分析試験法,2.5.2.1−1996参照)。
その結果を図1に示した。蛍光灯の光や熱をマヨネーズに照射することで、マヨネーズ中には過酸化物が生成した。これに油溶性酸化防止剤として一般的に使用されているトコフェロールを添加すると蛍光灯の光による酸化にはある程度の抑制効果を示したが、熱に対しては明確な効果が確認されなかった。しかし、本発明品を添加したものは光と熱のどちらにおいてもトコフェロール以上に強く過酸化物の生成を抑制した。
以上よりヤマモモ抽出物、酵素処理イソクエルシトリンを含有する本発明品は、熱と光によるマヨネーズ中の油脂の酸化を防止することが判った。よって、本発明品は、マヨネーズという食品の系においても、既存の酸化防止剤であるトコフェロール以上に油脂の酸化防止効果を示し、非常に有用であることが判った。
製剤の調製例
表4に記載の配合にて、本発明の親油性酸化防止剤を調製した。酸化防止剤の調製方法は実施例1〜3と同様にして行なった。なお、表4中で用いた成分を以下に説明する。
表4に記載の配合にて、本発明の親油性酸化防止剤を調製した。酸化防止剤の調製方法は実施例1〜3と同様にして行なった。なお、表4中で用いた成分を以下に説明する。
(1)ローズマリー抽出物:三菱化学フーズ社製ローズマリー抽出物製剤(RMキーパー、ローズマリー抽出物10%)を用いた。
(2)羅布麻抽出物:羅布麻葉を70%エタノールにて60℃、5時間攪拌抽出した。冷却後固液分離を行い、この抽出液を合成吸着剤(SP−207:三菱化学社製)で通液処理を行なった。得られた通液を減圧濃縮後、エタノール50%、グリセリン15%になるように調整して羅布麻抽出物を得た。
表4に示した製剤は、透明性、安定性も良く、本発明品1〜3と同様に油脂への溶解性が優れていた。
本発明は、光、熱などによる油脂含有食品の酸化劣化を効果的に防止することのでき、透明で安定性の高い油中水型の親油性酸化防止剤およびその製造方法を提供する。
Claims (4)
- ヤマモモ抽出物および/または酵素処理イソクエルシトリン、水溶性酸化防止剤および油溶性酸化防止剤を親油性乳化剤で油中水型に乳化してなる親油性酸化防止剤。
- 水溶性酸化防止剤がアスコルビン酸、クエン酸、フィチン酸、リン酸、クロロゲン酸、プロアントシアニジン、茶抽出物、ローズマリー抽出物、ブドウ種子抽出物、羅布麻抽出物、フラボノール類から選ばれる1種または2種以上である請求項1記載の親油性酸化防止剤。
- 油溶性酸化防止剤がトコフェロールおよびその誘導体、アスコルビン酸パルミテート、レシチン、セサモールおよびγ−オリザノールから選ばれる1種または2種以上である請求項1乃至2に記載の親油性酸化防止剤。
- 油脂類、油溶性酸化防止剤および親油性乳化剤からなる油層部に、ヤマモモ抽出物および/または酵素処理イソクエルシトリンと水溶性酸化防止剤および水性溶媒からなる水層部を添加して油中水型に乳化することを特徴とする親油性酸化防止剤の製造方法。
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