JP2007175058A - 新しい免疫学的レパートリーの開発法 - Google Patents

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Abstract

【課題】V又はV触媒作用性受容体をコードする核酸の生産方法を提供する。
【解決手段】(1)保存されたV又はV受容体コードDNAのレパートリーの鎖を分離し、前記分離された鎖を第1及び第2のポリヌクレオチド合成プライマーで処理することによって、少なくとも10個の異なるV又はV受容体コードDNA相同体を含有する保存されたV又はV受容体コードDNAのライブラリーを合成する工程及び(2)前記ライブラリーから、触媒作用性受容体をコードするV又はV受容体コード核酸を分離する工程、を有する。
【選択図】なし

Description

本発明は所定の活性を有するレセプターをコードする遺伝子を単離する方法に関する。
リガンドとレセプターの間の結合現象は生物系において多くの重要な役割を果している。このような現象の例にはオキシヘモグロビンを形成するデオキシヘモグロビンに対する酸素分子の結合およびたんぱく質とトリプシンのようなプロテアーゼのように基質とこれに作用する酵素の結合がある。さらに生物学的結合現象の例には抗体に対する抗原の結合およびいわゆるCR1レセプターに対する補体要素C3の結合が含まれる。
また多くの薬剤や他の治療剤も結合現象に依存すると考えられる。たとえばモルヒネのような麻酔剤は脳の特定のレセプターに結合すると報告されている。麻酔剤アゴニストおよびアンタゴニストはそれらの結合部位をモルヒネのような薬剤と競合すると報告されている。
モルヒネやその誘導体などの人工の薬剤のようなリガンドやエンドルフィンおよびホルモンのような天然に生物系に存在するリガンドは生物系に天然に存在するレセプターと結合する。よってこれらは本明細書において一緒に扱かわれている。このような結合はたんぱく質がトリプシンやパパインのような酵素によって加水分解され、また脂肪がグリセリンと3つのカルボン酸に切断されるように特にアミドおよびエステル結合の加水分解を含む生物の多くの現象を導き得る。さらにこのような結合はたんぱく質および脂肪の形成におけるアミドおよびエステル結合形成を導くのと同様に、炭素−炭素結合および炭素−窒素結合の形成を導き得る。
脊椎動物における代表的レセプター生成系は免疫系である。哺乳類の免疫系は抗体の形でおそらく1.0×10以上のレセプター特異性を生成し得ることからもっとも多様な生物学的系の1つである。事実多くの現代的生物学的および医学的研究はこのレパートリーの開発を目差している。この十年間広範な免疫学的レパートリーの出力を利用する能力が劇的に増加した。コラー(Kohler)およびミルスタイン(Milstein)によるハイブリドーマ法の開発はモノクローナル抗体すなわち免疫応答の間に誘導される抗体のレパートリーから単一の特異性をもつ抗体組成物を生産し得る。
不幸にもモノクローナル抗体を生成する現在の方法は特定の免疫原によって誘導される全ての抗体応答を有効に探索し得ない。個々の動物では、たとえばジニトロフェノールのような小さくて比較的堅い免疫原に対して特異的な抗体を生成し得る少なくとも5〜10,000種のB細胞クローンが存在する。さらに抗体の多様性の生成の際の体細胞変異過程のため、基本的に無限の特異的抗体分子が生成し得る。種々の抗体のこの巾広い潜在能力とは対照的に、一般に現在のハイブリドーマ法は融合当り数百個の各モノクローナル抗体しか生成しない。
ハイブリドーマ法によるモノクローナル抗体生産の別の難点にはハイブリドーマ培養物の遺伝的不安定性および低い生産性がある。後者2つの問題を克服する1つの方法は目的とする特定のハイブリドーマ由来の免疫グロブリン産生遺伝子を原核性発現系にクローン化することである。たとえばロビンソン(Robinson)等、PCT WO89/0099;ウインター(Winter)等、ヨーロッパ特許出願第0239400号;リーディング(Reading),U.S.特許第4,714,681号;およびキャビリー(Cabilly)等、ヨーロッパ特許出願第0125023号参照。
脊推動物の免疫学的レパートリーには触媒活性を有する免疫グロブリンをコードする遺伝子が含まれることが最近分った。トラモンタノ(Tramontano)等、Sci.234,1566−1570(1986);ポラック(Pollack)等、Sci.,234,1570−1573(1986);ジャンダ(Janda)等、Sci.,241,1188−1191(1988);およびジャンダ(Janda)等、Sci.,244,437−440(1989)。化学反応を触媒し得る、すなわち酵素のような作用をし得る抗体分子の存在またはこれらを作るレパートリーを誘導する能力はほぼ20年前W.P.ジェンクスによってすでに推測されていた(化学および酵素学における触媒作用、マグローヒル版、N.Y.(1969))。
初期に免疫学的レパートリーからの触媒性抗体の単離に失敗した理由およびそれらの実際の発見から今日まで多くのものを単離することに失敗したことは望ましい活性に関するレパートリーの大部分をスクリーニングできないことにあると考えられている。別の理由は触媒作用とは反対に本質的に中和過程に参加するよう設計された高アフィニティー抗体の生産を指向するハイブリドーマ法のような現在使用可能なスクリーニング技術の傾向にあると考えられている。
(本発明の簡単な説明)
本発明は所定の活性を有するレセプターをこれまで以上に広い保存的レセプターコード遺伝子レパートリーからスクリーニングする新しい方法を提供し、それにより先に述べたハイブリドーマ法の欠点を克服し得る。
1つの態様においては保存的レセプターコード遺伝子レパートリーの実質的部分を含む保存的レセプターコード遺伝子ライブラリーを合成する。好ましい態様においては保存的レセプターコード遺伝子ライブラリーは少なくとも約10種、好ましくは少なくとも約10種、そしてより好ましくは少なくとも約10種のレセプターコード遺伝子を含んでいる。
この遺伝子ライブラリーは出発物質に依存して2つの方法のいずれかにより合成し得る。
出発物質が多量のレセプターコード遺伝子であるときそのレパートリーに対し2つの別個のプライマー伸長反応を行った。第1のプライマー伸長反応はそのレパートリー内に保存されるヌクレオチド配列(多くの遺伝子に共有されている)にハイブリダイズすることにより第1反応を開始し得る第1ポリヌクレオチド合成プライマーを使用する。第1プライマー伸長は種々の保存的レセプターコードホモログ相補体(レパートリー中の遺伝子に相補的な核酸鎖)を生成する。
テンプレートとして相補体を用いた第2プライマー伸長反応は多くの異なる保存性レセプターコードDNAホモログを生産する。第2プライマー伸長反応は多くの相補体に保存されるヌクレオチド配列にハイブリダイズすることにより第2反応を開始し得る第2ポリヌクレオチド合成プライマーを使用する。
出発物質が保存的レセプターコード遺伝子の多くの相補体である場合、そのレパートリーについて上述した第2プライマー伸長反応を行う。もちろんもし保存的レセプターコード遺伝子およびそれらの相補体のレパートリーが存在するなら両方法を組合せることができる。
保存的レセプターコードDNAホモログ、すなわち所定のリガンドを結合し得るレセプターをコードする遺伝子がそのライブラリーから分離し単離遺伝子となる。一般にこれはそのライブラリーの種々の保存的レセプターコードDNAホモログを発現するため発現ベクターに機能的に結合させることにより行なわれる。このようにして作ったレセプター発現ベクターを適合宿主細胞すなわち発現するようベクターに機能的に結合した遺伝子を発現し得る細胞に導入する。そのトランスホーマントをレセプターコードDNAホモログをコードするレセプターを発現する条件下で培養する。このトランスホーマントをクローン化し、そのクローンを所定のリガンドを結合するレセプターの発現についてスクリーニングする。レセプターに対ずるリガンドの結合を検出するのに適した方法ならどれでも使用し得る。望ましい活性を発現するトランスホーマントはその集団から分離されその単離遺伝子を生産する。
別の態様において本発明は少なくとも約10、好ましくは少なくとも約10、より好ましくは少なくとも10の保存的レセプターコードDNAホモログの単離混合物を含む遺伝子ライブラリーに関する。その多くは保存的抗原決定基を共有している。そのホモログはその生物学的活性を維持する水やリン酸緩衝液などのようなインビトロの取扱いに適した培地中に存在することが好ましい。
本発明は本方法で生産され、ここで述べているように好ましくはモノマーかダイマーの所定の活性、好ましくは触媒活性を有するレセプターにも関する。
(本発明の詳細な説明)
A.定 義
ヌクレオチド: 糖(ペントース)、リン酸および窒素複素環塩基からなるDNAまたはRNAの単量体ユニット。塩基は糖にグリコシド結合で結合しておりこの塩基と糖の組合せ物はヌクレオシドと呼ばれる。ヌクレオシドがベントースの3′または5′位にリン酸基を含んでいるときこれをヌクレオチドと呼ぶ。
塩基対(bp): 二本鎖DNA分子中のアデニン(A)とチミン(T)またはシトシン(C)とグアニン(G)の対。RNAではチミンの代りにウラシルが用いられている。
核酸: 一本鎖または二本鎖のヌクレオチドのポリマー。
遺伝子: そのヌクレオチド配列がRNAまたはポリペプチドをコードしている核酸。
相補的塩基: DNAまたはRNAが二本鎖構造をとる時に通常対を作るヌクレオチド。
相補的ヌクレオチド配列: 一本鎖のDNAまたはRNAに相補的で最終的に水素結合で特異的にこれにハイブリダイズする一本鎖DNAまたはRNA中のヌクレオチド配列。
保存的: 所定の配列の相補体に非ランダム的にハイブリダイズする場合そのヌクレオチド配列は所定の配列に対し保存的である。
ハイブリダイゼーション: 相補的塩基対間に水素結合ができる二重鎖またはヘテロ二重鎖を形成する実質的に相補的なヌクレオチド配列の対合。それは競合的に阻害され得る2つの相補的ポリヌクレオチド間の特異的、すなわち非ランダムの相互作用である。
ヌクレオチドアナログ: 構造的にA,T,G,C,またはUと異なるが核酸分子中で正しいヌクレオチドと置き換われるほど類似しているプリンまたはピリミジンヌクレオチド。
DNAホモログ: 所定の保存的ヌクレオチド配列および所定のリガンドを結合し得るレセプターをコードする配列を有する核酸。
抗体: 本明細書で使用している種々の文法型の“抗体”という言葉は免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的活性部分すなわち抗体結合部位またはパラトープを含む分子を意味する。代表的抗体分子には本来の免疫グロブリン分子、実質的免疫グロブリン分子およびFab、Fab′、F(ab′)およびF(v)として知られている領域を含む免疫グロブリン分子の一部分が含まれる。
抗体結合部位: 抗体結合部位とは抗原と特異的に結合(免疫反応)する重鎖および軽鎖の可変および超可変領域を含む抗体分子の構造領域である。種々の文法型の免疫反応という語句は抗原決定基含有分子と抗体分子またはその一部分のような抗体結合部位を含む分子との間の特異的結合を意味する。
モノクローナル抗体: 種々の文法型で用いられるモノクローナル抗体という語句は特定の抗原と免疫反応し得る抗体結合部位を唯一種しか持たない抗体分子群を意味する。したがってモノクローナル抗体は一般にそれが免疫反応を起こす抗原に対する唯一の結合アフィニティーを示す。それゆえモノクローナル抗体には種々の抗原に各々免疫特異性を示す複数の抗体結合部位をもつ抗体分子、たとえば二特異的モノクローナル抗体も含まれる。
B.方 法
本発明は保存的遺伝子のレパートリーから所定の活性、好ましくは触媒活性を有するレセプターをコードする遺伝子を単離する方法に関する。このレセプターとしてはポリペプチドでも、トランスファRNA、酵素活性を示すRNAなどのRNAでもよい。このレセプターは酵素、抗体分子またはその免疫学的に活性な部分、細胞レセプター、もしくは保存的遺伝子、すなわち長さが少なくとも10ヌクレオチドの保存的ヌクレオチド配列を含む遺伝子群の1つによってコードされる細胞粘着たんぱく質などのポリペプチドであることが好ましい。
代表的保存的遺伝子群には免疫グロブリン、クラスIまたはIIの主要組織適合性複合体抗原、リンパ球レセプター、インテグリンなどをコードするものがある。
いくつかの方法を用いて保存的遺伝子のレパートリーに属する遺伝子を同定し得る。たとえば単離した遺伝子を低ストリンジェンシー条件下ハイブリダイゼーションプローブとして用いるサウザン(Southern),J,Mol.Biol.98,503(1985))の方法によりゲノムDNA中に存在する保存的遺伝子のレパートリーの他のメンバーを検出することができる。もしハイブリダイゼーションプローブとして用いた遺伝子が多重制限エンドヌクレアーゼフラグメントにハイブリダイズしたなら、その遺伝子は保存的遺伝子のレパートリーの1員である。
(免疫グロブリン)
免疫グロブリンまたは抗体分子はIgD,IgG,IgA,IgMおよびIgEなどいくつかの型の分子を含む非常に大きな分子群である。一般に抗体分子は2本の重鎖(H)および軽鎖(L)からなり各鎖には可変(V)および不変(C)領域が存在する。免疫グロブリンのくつかの領域には免疫グロブリンのレパートリーを単離するのに有効な保存的配列が含まれている。代表的保存的配列を示すアミノ酸および核酸配列データは免疫グロブリン分子に関してカバット(Kabat)等によって編集されている(“免疫学的に興味のあるたんぱく質の配列” National Institute of Health,ベセスダ,MD,1987)。
H鎖のC領域は特定の免疫グロブリン型を決定する。それゆえ、H鎖のC領域から、ここで定義されているような保存的配列を選択すれば選択したC領域の免疫グロブリン型のメンバーを有する免疫グロブリン遺伝子のレパートリーが調製される。
一般にHまたはL鎖のV領域には4つのフレームワーク(FR)領域が含まれ、各々は保存配列を含む比較的低い可変性を含んでいる。V鎖のFR1およびFR4(J領域)フレームワーク領域由来の保存的配列の使用は好ましい代表的態様であり、例で取り上げている。一般にフレームワーク領域はいくつかまたは全ての免疫グロブリン型に保存されており、したがってここに含まれる保存的配列はいくつかの免疫グロブリン型を有するレパートリーの調製には特に適している。
(主要組織適合性複合体)
主要組織適合性複合体(MHC)はクラスI、クラスIIまたはクラスIII MHC分子と呼ばれる数クラスの分子を含む広いたんぱく質群をコードする大きな遺伝子座である。ポール(Paul)等、基礎免疫学、レーベンプレス版、NY,pp.303−378(1984)。
クラスI MHC分子はその抗原が重鎖と非MHCコード軽鎖からなる保存的群を示す移植抗原の多型グループである。その重鎖にはN,C1,C2、メンブレンおよび細胞質領域と呼ばれるいくつかの領域が含まれる。本発明に有用な保存的配列は主にN,C1およびC2領域に見られ、カバット(Kabat)等(上述)の報告では“不変残基”の連続的配列と呼ばれている。
クラスII MHC分子にはアルファおよびベータ鎖からなり、免疫応答に関与する多型的抗原の保存的群が含まれる。各々アルファおよびベータ鎖をコードする遺伝子にはMHCクラスIIアルファまたはベータ鎖のレパートリーを生産するのに適している保存的配列が含まれている。代表的保存的ヌクレオチド配列にはA1領域のアミノ酸残基26〜30、A2領域の残基161−170およびメンブレン領域の残基195〜206、アルファ鎖の全てをコードするものが含まれる。また保存的配列は、各々アミノ酸残基41〜45、150〜162および200〜209をコードするヌクレオチド配列であるベータ鎖のB1,B2およびメンブレン領域中に存在する。
(リンパ球レセプターおよび細胞表面抗原)
リンパ球にはT細胞レセプター、Thy−1抗原およびモノクローナル抗体OKT4(leu3)、OKUT5/8(leu2)、OKUT3、OKUT1(leu1)、OKT11(leu5)、OKT6およびOKT9によって限定される抗原を含む多くのT細胞表面抗原を含む細胞表面上の何種類かのたんぱく質群が含まれる。ポール(Paul)、上述、pp.458−479。
T細胞レセプターとはT細胞表面に存在する一群の抗原結合分子に対して用いられる語句である。一群としてのT細胞レセプターはその多様性において免疫グロブリンと同様の多型的結合特異性を示す。成熟T細胞レセプターはアルファおよびベータ鎖からなりその各々は可変(V)および不変(C)領域を有している。T細胞レセプターが遺伝子組織および機能においてもつ免疫グロブリンに対する類似性は、T細胞レセプターが保存的配列の領域を含んでいることを示している。ライ(Lai)等、Nature、331,543−546(1988)。
代表的保存的配列にはアルファ鎖のアミノ酸残基84〜90、ベータ鎖のアミノ酸残基107〜115およびガンマ鎖のアミノ酸残基91〜95および111〜116をコードする配列が含まれる。カバット(Kabat)等、上述、p.279。
(インテグリンおよび粘着)
細胞粘着に関する粘着性たんぱく質はインテグリンと呼ばれる大きな関連たんぱく質群のメンバーである。インテグリンはベータおよびアルファサブユニットからなるヘテロダイマーである。インテグリン群のメンバーには細胞表面糖たんぱく質血小板レセプターGp II b−III a、ビトロネクチンレセプター(VnR)、フィブロネクチンレセプター(FnR)および白血球粘着レセプターLFA−1,Mac−1、Mo−1および6 0.3が含まれる。ローサチ(Roushahti)等、Science,238,491−497(1987)。核酸およびたんぱく質配列データはこれらの群のメンバー中、特にGp II b−III a VnRおよびFnRのベータ鎖、およびVnR,Mac−1,LFA−1,FnrおよびGp II b−III aのアルファサブユニットに保存的配列領域が存在することを示している。スズキ(Suzuki)等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,83.8614−8618,1986;ギンスバーグ(Ginsberg)等、J.Biol.Chem.262,5437−5440,1987。
以下の議論は本発明の方法が免疫グロブリン遺伝子レパートリーから保存的レセプターコード遺伝子を単離するのに使用し得ることを示している。この議論は制限するものでなく機能的に関連するレセプターをコードする保存的遺伝子群から1つの遺伝子を単離するのに使用し得る原則の応用を示すものである。
一般にこの方法は以下の要素を合せ持っている。
1.免疫学的レパートリーの実質的部分を含む核酸の単離。
2.免疫グロブリンVおよび、またはV領域遺伝子を含むポルヌクレオチドセグメントをクローニングするためのポリヌクレオチドプライマーの調製。
3.レパートリーからの複数の異なるVおよびV遺伝子を含む遺伝子ライブラリーの調製。
4.別個でも同じ細胞中でもよいし、かつ同じ発現ベクターでも異なるベクターによってもよい、原核または真核性の適当な宿主におけるVおよび、またはVポリペプチドの発現。
5.所定の活性に関する発現ポリペプチドのスクリーニングおよびスクリーニング過程で同定されるVおよび、またはVコード遺伝子の分離。
本発明によって生産されるレセプターは競合的に阻害され得ることで示されている抗原、酵素基質などに特異的な結合部位をもつ構造を有している。ある態様において、本発明のレセプターは所定の抗原に特異的に結合しその抗原と単離される複合体の結合部位の間に十分強い結合をもつ複合体を形成する抗原結合部位を形成するリガンド結合ポリペプチドである。レセプターが抗原結合ポリペプチドであるときそのアフィニティーは一般に10−1以上であり、通常は10以上であり好ましくは10−1以上である。
別の態様において本発明のレセプターは基質と結合し、その基質から産物を形成する。触媒性レセプターのリガンド結合部位のトポロジーが所定の活性に関しその基質へのアフィニティー(会合定数、pKa)よりもより重要であるだろうが一方本触媒性レセプターは所定の基質に対し一般に10−1以上、通常10または10−1以上で好ましくは10−1以上の会合定数を有している。
本発明によって産生されるレセプターはヘテロ二量体であり、それゆえ通常各ポリペプチド単独、すなわちモノマーのアフィニティーまたは会合定数とは異なり好ましくは高くなる所定の基質に対する結合アフィニティーまたは会合定数を有する構造を共に有している2つの異なるポリペプチド鎖から成っていることが好ましい。異なるポリペプチド鎖の1つまたは両方は免疫グロブリンの軽鎖および重鎖の可変領域に由来する。典型的に軽鎖(V)および重鎖(V)の可変領域からなるポリペプチドは所定のリガンドの結合に一緒に使用される。
本発明によって産生されるレセプターは単量体同様多量体でも、ホモ体でもヘテロ体でも活性であるがヘテロ二量体が好ましい。たとえば、本発明で産生されるVおよびVリガンド結合ポリペプチドはうまくヘテロ二量体を形成しヘテロ二量体の活性を調節し得るし、またはヘテロ二量体にユニークな活性を生成し得る。個々のリガンド結合ポリペプチドはVおよびVと呼びまたヘテロ二量体はFvと呼ぶ。
しかし、V結合ポリペプチドはVに加えて実質的に全ての、または一部の重鎖不変領域を含んでいる。V結合ポリペプチドはVに加えて、実質的に全ての、または一部の軽鎖不変領域を含んでいる。重鎖不変領域の一部を含むV結合ポリペプチドと実質的に全ての軽鎖不変領域を含むV結合ポリペプチドからなるヘテロ二量体はFabフラグメントと呼ばれる。Fabの生産はFvと比較されるようにFab中に含まれる付加的不変領域配列がVおよびVの相互作用を安定化し得ることからある状況では有利となり得る。このような安定化はFabに抗原に対するより高いアフィニティーを提供し得る。さらにFabは当分野でより一般的に使用されており、従ってFabを特異的に認識するのに使用可能な市販の抗体もある。
個々のVおよびVポリペプチドは一般に約120アミノ酸残基よりも小さく、一方一般に60アミノ酸残基以上で、通常には約100アミノ酸残基以上である。Vは約110〜約125アミノ酸残基長であることが好ましく一方Vは約95〜約115アミノ酸残基長であることが好ましい。
アミノ酸残基配列は関連する特定のイデォオタイプにより巾広く変化する。通常、約60〜75アミノ酸残基で隔てられジスルフィド結合で結合している少なくとも2つのシステインが存在する。本発明で産生されるポリペプチドは通常免疫グロブリンの重鎖および、または軽鎖の可変領域のイディオタイプの実質的コピーであるがある状況ではポリペプチドは望ましい活性に改善するためアミノ酸残基配列にランダム突然変異を含んでいる。
ある状況ではVおよびVポリペプチドに共有結合による架橋を提供することが望ましく、このことはカルボキシル末端にシスティン残基を提供することで行なわれる。このポリペプチドは通常免疫グロブリン不変領域を含まないように調製するが、DNA合成プライマーの有利な選択に基づき少量のJ領域が含まれることがある。通常D領域がVの転写物に含まれる。
別の状況ではVおよびVを結合するペプチドリンカーを提供し、VおよびVからなる一本鎖抗原結合たんぱく質を形成することが望ましい。この一本鎖抗原結合たんぱく質は単一たんぱく質鎖として合成される。このような一本鎖抗原結合たんぱく質はバード(Bird)等(Science,242,423−426(1988))によって報告されている。適当なペプチドリンカー領域の設計はロバート・ランドナー(Robert Landner)により米国特許第4,704,692号に報告されている。
このようなペプチドリンカーは発現ベクターに含まれる核酸配列の一部として設計し得る。このペプチドリンカーをコードする核酸配列はVおよびVDNAホモログの間にあり、発現ベクターにVおよびVDNAホモログを機能的に結合させるのには制限エンドヌクレアーゼ部位が使用される。
またこのようなペプチドリンカーは種々の遺伝子ライブラリーを調製するのに用いるポリヌクレオチドプライマーの一部である核酸配列にコードし得る。このペプチドリンカーをコードする核酸配列は遺伝子ライブラリーを作るのに使用するいくつかのポリヌクレオチドプライマーに付随する核酸配列に由来するペプチドリンカーをコードする核酸配列またはプライマーの1つに結合する核酸から作り得る。
一般にVおよびVポリペプチドのC端領域はN端よりも配列の多様性が大きく、また本戦術に基づき、天然のVおよびV鎖を変化させるよう修正できる。また、合成ポリヌクレオチドを用い超可変領域の1つ以上のアミノ酸を変化させ得る。
1.レパートリーの単離
免疫学的遺伝子レパートリーの実質的部分を含む核酸の組成物を調製するためVおよび、またはVポリペプチドをコードする遺伝子源が必要である。その遺伝子源は異種の抗体産生細胞群、すなわちリンパ球(B細胞)、好ましくは脊椎動物の循環器系または脾臓に存在するような転位B細胞群であることが好ましい(転位B細胞とは免疫グロブリン遺伝子の転座すなわち転位が起った細胞でこれは隣接して存在する免疫グロブリン遺伝子V,DおよびJ領域転写物を含むmRNAの存在で証明される)。
ある場合に核酸源として種々の年令、健康および免疫応答の脊椎動物由来の細胞(ソース細胞)を使用することによるなど所定の活性についてそのレパートリーをふり分けることが望ましい。たとえば転位B細胞採集前に健康な動物を反復し免疫化すると高アフィニティーのリガンド結合ポリペプチドを産生する遺伝物質に冨んだレパートリーが得られる。逆に、その免疫系が最近チャレンジを受けていない健康な動物由来の転位B細胞の採集は高アフィニティVおよび、またはV、ポリペプチドの産生にバイアスがかかっていないレパートリーが生成する。
核酸を得るための細胞集団の遺伝的異種性が大きければ大きいほど本発明の方法に従がうスクリーニングに使用し得る免疫学的レパートリーの多様性も大きくなることに注意しなければならない。したがって種々の個体からの細胞、特に免疫学的に有意な年令差のある細胞および種々の株、種族または種由来の細胞をうまく組合せてそのレパートリーの異種性を高めることができる。
このように好ましい態様においてソース細胞は脊椎動物、好ましくはそれに対する活性が求められている抗原性リガンドすなわち所定の抗原で免疫化または部分的に免疫化した哺乳類から得られる。免疫化は従来のように行った。動物中の抗体濃度は目的とするレパートリーの豊富さに従がう望ましい免疫化段階を測定することによりモニターし得る。一般的に部分的免疫化を行った動物は1回の免疫化のみが行なわれ、その細胞を応答が検出された直後に採集する。十分に免疫化した動物は最高値を示し、このことは宿主動物に通常2〜3週間間隔で1回以上の注射をくり返すことで得られる。通常、最後の注射後3〜5日目にその脾臓を取り出し、その約90パーセントが転位B細胞である脾細胞の遺伝的レパートリーを標準法で単離する。Current Protocols in Molecular Biology、オースベル(Ausubel)等、編、ジョンウィリー・アンド・サン社版、NY,VおよびVポリペプチドをコードする核酸はIgA,IgD、IgE、IgGまたはIgM、最も好ましくはIgMおよびIgG産生細胞から誘導し得る。免疫グロブリン可変遺伝子を多様性集団としてクローニングし得るゲノムDNAのフラグメントの調製法はよく知られている。たとえばハーマン(Herrmann)等、Methods in Enzymol.152,180−183(1987);フリッシャウフ(Frischauf)Methods in Enzymol,152,183−190(1987)、フリッシャウフ(Frischauf),Methods in Enzymol.152,190−199(1987)、およびジレラ(Dilella)等、Methods in Enzymol.152,199−212(1987)参照。(ここで引用している参考文献中の事項は参考として提示されている)。
望ましい遺伝子レパートリーは可変領域の転写物を示すメッセンジャーRNAまたは可変領域を発現する遺伝子を含むゲノムから単離し得る。他の非転位Bリンパ球由来のゲノムDNAを用いる際の困難はイントロンで分離されている可変領域コード配列を並置することにある。適正なエクソンを含むDNAフラグメントを単離し、イントロンを切除し、さらにエクソンを正しい順序で正しい方向にスプライスしなければならない。多くの場合このことは困難であり、その結果転位B細胞を用いる別の方法はC,DおよびJ免疫グロブリン遺伝子領域が隣り合うよう転位するような方法であり、この方法によりその配列は全可変領域に関して連続的となる。(イントロンなし)。
mRNAを用いる場合、細胞をRNase阻害条件下で溶解する。1つの態様における第1ステップはオリゴdTセルロースカラムへのハイブリダイゼーションによる全細胞mRNAの単離である。重鎖および、または軽鎖ポリペプチドをコードするmRNAの存在は、適当な遺伝子の一本鎖DNAとのハイブリダイゼーションにより検定し得る。VおよびV、の不変領域をコードする配列をポリヌクレオチドプローブとして用いると便利であり、その配列は使用可能なものから得ることができる。たとえばアーリー(Early)およびブード(Hood),Genetic Engineering,セットロ−(Setlow)およびホレンダー(Hollaender)編、第3巻、プレナムパブリッシングコーポレーション,NY,(1981),pp.157−188、およびカバット(Kabat)等、“免疫学的に興味のある配列”、National Institute of Health,ベセスダ、MD(1987)参照。好ましい態様においてまず細胞性mRNAについてVおよびVコードmRNAを濃縮する。一般に濃縮は全mRNA調製物またはその部分精製mRNAを本発明のポリヌクレオチド合成プライマーを用いたプライマー伸長反応にかけることにより行なわれる。
2.ポリヌクレオチドプライマーの調製
プライマー、プローブおよびプライマー伸長により合成される核酸フラグメントまたはセグメントに関し本明細書で用いている“ポリヌクレオチド”という言葉は2つ以上、好ましくは3つ以上のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドからなる分子を意味する。その正確な大きさは多くの因子に依存しまたその事自体が使用する条件に依存する。
本明細書で用いている“プライマー”という語は核酸の制限消化物から精製される場合も合成的に作られる場合もある核酸鎖に相補的なプライマー伸長産物の合成が誘導される条件下、すなわちヌクレオチドおよび重合に必要なDNAポリメラーゼ、逆転写酵素などの試薬の存在下および適当な温度およびpHに置かれたときに合成の開始点として働き得るポリヌクレオチドを意味する。効率が最高となるためにはこのプライマーは一本鎖であることが好ましいが二本鎖でもよい。もし二本鎖ならプライマーをまず伸長反応に使うまえに鎖を解離しておく。このプライマーはポリデオキシリボヌクレオチドであることが望ましい。プライマーは重合用の試薬の存在下伸長反応物の合成を開始するのに十分な長さ長さをもっていなければならない。プライマーの正しい長さは温度およびプライマーの起源などを含む多くの因子に依存する。たとえば標的配列の複雑性に依存して通常ポリヌクレオチドプライマーは15〜25以上のヌクレオチドを含むがより少ないヌクレオチドからなることもある。一般に短かいプライマー分子はテンプレートと十分に安定なハイブリッド複合体を形成するためにより低い温度を必要とする。
ここで使用されるプライマーは合成もしくは増巾される各特異的配列をもつ鎖に“実質的に”相補的となるように選択される。このことはそのプライマーが各々のテンプレート鎖に非ランダムにハイブリダイズするのに十分な相補性を有していなければならない。それゆえ、このプライマー配列はテンプレートの配列を正確に反映しているものではない。たとえば非相補的ヌクレオチドフラグメントも、そのプライマー配列の別の部分がその鎖に実質的に相補的であるならそのプライマーの5′末端に結合し得る。一般にこのような非相補的フラグメントはエンドヌクレアーゼ制限部位をコードしている。別にもしプライマー配列が合成または増巾される鎖の配列と実質的に相補的でそれと非ランダム的にハイブリダイズし、それによりポリヌクレオチド合成条件下伸長産物を形成するなら非相補的塩基またはより長い配列はそのプライマー中に点在し得る。
ポリヌクレオチドプライマーはたとえばホスホトリエステルまたはホスホジエステル法など適当な方法で調製し得る(ナラング(Narang)等、Meth.Enzymol.68.90(1979);米国特許第4,356,270号およびブラウン(Brown)等、Meth.Enzymol.68,109(1979))。
プライマーのヌクレオチド配列の選択は目的とするレセプターをコードする領域からの核酸における距離、使用する第2プライマーに対する核酸上のハイブリダイゼーション部位、それがハイブリダイズするレパートリー中の遺伝子の数などの因子に依存する。
たとえばプライマー伸長によりVコードDNAホモログを作るため、プライマーのヌクレオチド配列は機能性(結合し得る)ポリペプチドが得られるようにVコード領域に実質的に隣接する部位で多数の免疫グロブリン重鎖遺伝子とハイブリダイズするように選択する。多種類のVコード核酸配列とハイブリダイズするにはプライマーは種々の鎖内に保存されているヌクレオチド配列に実質的に相補的でなければならない。このような部位には不変領域、可変領域フレームワーク領域、好ましくは第3フレームワーク領域、リーダー領域、プロモーター領域、J領域などに会まれるヌクレオチド配列がある。
モシVコードおよびVコードDNAホモログをポリメラーゼチェーンリアクション(PCR)増巾で生成する場合、増巾する核酸の各コード鎖用に2つのプライマーが用いられる。第1プライマーはナンセンス(マイナスまたは相補)鎖の一部であり、レパートリー内のV(プラス)鎖に保存されるヌクレオチド配列にハイブリダイズする。VコードDNAホモログを生成するためには第1プライマーを選んで免疫グロブリン遺伝子のJ領域、CH1領域、ヒンジ領域、CH2領域またはCH3領域内に保存される領域にハイブリダイズ(すなわち相補的である)させる。VコードDNAホモログを生成するためには第1プライマーを選んで免疫グロブリン軽鎖遺伝子のJ領域または不変領域内に保存される領域にハイブリダイズ(すなわち相補的)させる。第2プライマーはコード(プラス)鎖の一部でありマイナス鎖に保存されるヌクレオチド配列にハイブリダイズする。VコードDNAホモログを生成するためには第2プライマーを選んでリーダ領域または最初のフレームワーク領域をコードする領域内のようなVコード免疫グロブリン遺伝子の5′端に保存されるヌクレオチド配列にハイブリダイズさせる。VおよびVコードDNAホモログ両方の増巾には第2プライマーの保存的5′側ヌクレオチド配列はロー(Loh)等により報告されている方法により(Sci.243,217−220(1989))外から付加した配列に相補的であることに注意せよ。第1および第2プライマーのいずれかまたは両方はエンドヌクレアーゼ制限部位を示すヌクレオチド配列を含み得る。この部位は増巾される免疫グロブリン遺伝子とは異なり得て一般にそのプライマーの5′末端またはその近傍にある。
また本発明のプライマーはDNA依存RNAポリノラーゼプロモーターまたはその相補配列を含む。たとえばクリーグ(Krieg)等、Nucleic Acids Res.12,7057−70(1984);スタジア(Studier)等、J.Mol.Biol.189,113−130(1986);およびモレキュラークローニング;ラボラトリーマニュアル、第2編、マニアチス(Maniatis)等編、コールドスプリングハーバー、NY(1989)参照。
DNA依存RNAポリメラーゼプロモーターを含むプライマーを用いるときそのプライマーは増巾するポリヌクレオチド鎖にハイブリダイズし、かつDNA依存RNAポリメラーゼプロモーターの第2のポリヌクレオチド鎖は大腸菌DNAポリメラーゼIまたは大腸菌DNAポリメラーゼのクレノーフラグメントなどの誘導試剤を用いて完全なものとなる。RNAポリヌクレオチドとDNAポリヌクレオチドの間を往復することにより出発ポリヌクレオチドが増巾する。
またプライマーにテンプレート配列またはRNA指向RNAポリメラーゼの複製開始部位を含めることもある。典型的RNA指向RNAポリメラーゼにはリザルディ(Lizardi)等により報告されているQβレプリカーゼが含まれる(Biotechnology,6,1197−1202(1988))。
RNA指向RNAポリメラーゼはテンプレート配列または複製開始部位を含む少ないテンプレートRNA鎖から大量のRNA鎖を生成する。一般にこれらのポリメラーゼはクレマー(Kramer)等(J.Mol.Biol.89,719−736(1974))により報告されているようにテンプレート鎖を100万倍に増巾する。
3.遺伝子ライブラリーの調製
単離したレパートリー内に含まれるVおよび、またはV遺伝子をクローニングすなわち実質的に再生するのに用いる戦術は当分野でよく知られているようにレパートリーを作り上げている核酸のタイプ、複雑性および純度に依存する。他の因子にはその遺伝子が増巾および、または変異を受けるかどうかが含まれる。
1つの戦術においてその目的はmRNAおよび、またはゲノムDNAのセンス鎖などポリヌクレオチドコード鎖からなるレパートリーからVおよびVコード遺伝子をクローン化することである。もしそのレパートリーが二本鎖ゲノムDNAの形体であるならば通常まず一般的には融解により1本鎖に変性される。そのレパートリーを所定のヌクレオチド配列を有する第1ポリヌクレオチド合成プライマーで処理することにより第1プライマー伸長反応を行う。この第1プライマーはレパートリー内に保存されている長さ少なくとも約10ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも約20ヌクレオチドのヌクレオチドにハイブリダイズすることにより第1プライマー伸長反応を開始し得る。この第1プライマーは核酸のコードまたはセンス鎖にハイブリダイズすることからしばしばセンスプライマーと呼ばれる。さらに第2プライマーは核酸の非コードまたはアンチセンス鎖、すなわちコード鎖に相補的な鎖にハイブリダイスすることから“アンチセンス鎖”と呼ばれる。
第1プライマー伸長は好ましくは所定量のレパートリーの核酸を好ましくは所定量の第1プライマーと混合し第1プライマー伸長反応混合物を作ることにより行う。この混合物をポリヌクレオチド合成条件下に第1プライマー伸長反応産物が形成するのに十分な一般的には所定の時間維持することにより多種多様なVコードDNAホモログ相補体が生成する。それからこの相補体を所定のヌクレオチド配列をもつ第2ポリヌクレオチド合成プライマーで処理することにより第2プライマー伸長反応を行う。この第2プライマーはたとえば第1プライマー伸長反応によって生産されたものなどの多様なVコード遺伝子相補体に保存される好ましくは長さ少なくとも約10ヌクレオチド、より好ましくは長さ少なくとも約20ヌクレオチドのヌクレオチド配列にハイブリダイズすることにより第2反応を開始し得る。このことは好ましくは所定量の相補的核酸と好ましくは所定量の第2プライマーを混合し第2プライマー伸長反応混合物を作ることにより行う。この混合物を第1プライマー伸長反応産物の形成に十分な一般的には所定の時間ポリヌクレオチド合成条件に維持することで多種のVおよび、またはVコードDNAホモログを含む遺伝子ライブラリーを作る。
多数の第1および、または多数の第2プライマーを各増巾で使用し得るし、また第1および第2プライマーの個々のペアも使用し得る。どちらの場合でも第1および第2プライマーの同じまたは異なる組合せ物を使用した増巾産物を合せて遺伝子ライブラリーの多様性を増加し得る。
別の戦術ではその目的はmRNAを逆転写反応にかけることにより生産されるポリヌクレオチドまたはゲノム二本鎖のアンチセンス鎖などのレパートリーのボリヌクレオチド相補体を提供することによりそのレパートリーからV−および、またはVコード遺伝子をクローン化することである。これらの相補体を生成する方法はよく知られている。この相補体に対し上述の第2プライマー伸長反応、すなわち多種のVコード遺伝子相補体に保存されているヌクレオチド配列にハイブリダイズし得るポリヌクレオチド合成プライマーを用いたプライマー伸長反応と同じプライマー伸長反応を行う。
このプライマー伸長反応はいくつかの適当な方法で行なわれる。一般に好ましくはpH7〜9、もっとも好ましくは約8の緩衝液中で行う。モル数で過剰のプライマー(ゲノム核酸については通常約10°:1プライマー:テンプレート)をテンプレート鎖を含むバッファに添加する。この過程を効率よく行うためには大モル過剰のプライマーを用いるのが好ましい。
またデオキシリボヌクレオチド三リン酸dATP,dCTP,dGTPおよびdTTPを適当量このプライマー伸長(ポリヌクレオチド合成)反応混合物に入れ、90℃〜100℃で約1〜10分間、好ましくは1〜4分間加熱する。加熱後この溶液を室温まで冷却する。このことでプライマーのハイブリダイゼーショが起こる。冷却した混合物にプライマー伸長反応を誘導または触媒する適当な試薬を入れ、この分野でよく知られている条件下で反応を進行させる。この合成反応は室温から誘導試薬がもはや有効に機能しなくなる温度までの範囲で進行する。したがってたとえばDNAポリメラーゼを誘導試薬として用いると一般にその温度はせいぜい約40℃である。
誘導試薬としてはプライマー伸長産物の合成を遂行するよう機能するならどのような化合物でもシステムでもよく、これには酵素も含まれる。本目的のための酵素には、たとえば大腸菌DNAポリメラーゼI、大腸菌DNAポリメラーゼのクレノーフラグメント、T4DNAポリメラーゼ、その他使用可能なDNAポリメラーゼ、逆転写酵素および熱的に安定な酵素も含む、各核酸鎖に相補的なプライマー伸長産物を形成するようにヌクレオチドを正しく結合していく酵素が含まれる。一般にこの合成は各プライマーの3′端から開始しテンプレート鎖に沿って合成が止まるまで5′方向に進行していき、種々の長さの分子を生成する。しかしながら上述と同様のプロセスを用いながらその5′端から合成を開始し、上述の方向に進行する誘導試薬もある。
またこの誘導試薬はRNAプライマー伸長産物の合成を遂行する化合物またはシステムでもよく、これには酵素が含まれる。好ましい態様においてその誘導試薬にはT4RNAポリメラーゼ、T3RNAポリメラーゼまたはSP6RNAポリメラーゼなどのDNA依存RNAポリメラーゼがある。これらのポリメラーゼは相補的なRNAポリヌクレオチドを生成する。チャンバリン(Chamberlin)等(The Enzyme,P.ボイアー(Boyer),pp.87−108、アカデミックプレス、ニューヨーク(1982))によて報告されているようにRNAポリメラーゼは高ターンオーバー速度で出発ポリヌクレオチドを増巾する。T7RNAポリメラーゼのもう1つの利点はcDNAの1部を1つ以上の変異原オリゴヌクレオチド(ポリヌクレオチド)で置換し、この部分的にミスマッチしたテンプレートを直接転写することによりポリヌクレオチド合成に変異を導入し得ることである(ジョイス(Joyce)等、Nucleic Acids Research,17,711−722(1989)。転写に基づく増巾システムはギンゲラス(Gingeras)等(PCRプロトコール、方法と応用へのガイド、pp.245−252、アカデミックプレス、サンディエゴ、CA(1990))によって報告されている。
もし誘導試薬がDNA依存RNAポリメラーゼで、それゆえ、リボヌクレオチド三リン酸を含んでいるなら、十分な量のATP,CTP,GTPおよびUTPをプライマー伸長反応混合物に添加し、この溶液を上述のように処理する。
新しく合成された鎖およびその相補鎖は二本鎖を形成しこのプロセスの次のステップに使用し得る。
先に議論した第1および、または第2プライマー伸長反応をうまく使用しレセプターの中にレセプターの免疫学的検出および、または単離に有用な所定のエピトープを組込むことができる。このことは第1および、または第2ポリヌクレオチド合成プライマーまたは発現ベクターを用い所定のアミノ酸残基配列をレセプターのアミノ酸残基配列の中に組込むことによって行う。
レパートリー内の多種多様なVおよびVコード遺伝子に対しVおよび、またはVコードDNAホモログを作った後一般的にはそのホモログを増巾する。Vおよび、またはVコードDNAホモログは自己複製ベクターへの組込みなどの従来技術で増巾し得るがまず、それらのDNAホモログをベクターに挿入する前にこれらをポリメラーゼチェーンリアクション(PCR)にかけ増巾した方が好ましい。事実好ましい戦術では遺伝子ライブラリーの作製に用いた第1および、または第2プライマー伸長反応はポリメラーゼチェーンリアクションの第1および第2プライマー伸長反応である。
一般的にPCRはポリヌクレオチド合成と形成された二本鎖の変性を含むサイクルを回す、すなわち1つの混合物内で上述の第1および第2プライマー伸長反応を同時に行うことにより行う。DNAホモログを増巾する方法およびシステムはムリス(Mullis)等(米国特許第4,683,195号および第4,683,202号)により報告されている。
好ましい態様においては増巾反応に第1および第2プライマー1対が使用される。各々種々のプライマー対を用いた種々の増巾に由来する増巾反応産物を合せる。
しかし、本発明は共増巾(2対のプライマーの使用)および多重増巾(約8、9または10対までのプライマーの使用)によるDNAホモログ産物にも関する。
一般にPCR増巾で得たVおよびVコードDNAホモログは二本鎖であり、かつ各末端近傍にエンドヌクレアーゼ制限部位のヌクレオチド配列を有している。それらの末端近傍に制限部位をもつVおよびVコードDNAホモログの1つ以上のエンドヌクレアーゼによる消化で所定の特異性を有する粘着末端をもつホモログができる。
好ましい態様においてはこのPCR工程はライブラリーのVおよび、またはVコードDNAホモログを増巾するだけでなくライブラリーに変異を誘導しより異質性の高いライブラリーを提供する。まずPCRは当分野でよく知られている多くの因子により本質的に変異原的性質を有することに注意しなければならない。第2に上述のU.S.特許第4,683,195号で報告されているような変化を誘導する変異に加えて、他の変異を誘導するPCRも使用し得る。たとえば、PCR反応混合物、すなわち第1および第2プライマー伸長反応混合物を合せたものは伸長反応産物に取り込まれる1つ以上のヌクレオチドの量を変えて調製する。このような条件ではPCR反応は特定の塩基の涸渇の結果伸長産物内にヌクレオチド置換を起こす。同様にX回のサイクルを行うのに十分な量でほぼ等モル量のヌクレオチドで最初のPCR反応混合物を作りついでたとえば2XのようなX過剰で反応サイクルをまわす。別に、通常増巾されるレパートリーの核酸中には見られないイノシンなどのヌクレオチド誘導体を反応混合物中に入れることによりPCR反応中に変異を誘導し得る。つづくインビボ増巾の際、このヌクレオチド誘導体は置換ヌクレオチドに置き換えられ点突然変異が誘導される。
4.VまたはVDNAホモログの発現
上述の方法で作られたライブラリー中のVおよび、またはVDNAホモログは増巾および、または発現のためベクターに機能的に結合する。
本明細書で用いられているように“ベクター”とは機能的に結合するもう1つの核酸を別の遺伝的環境から転移し得る核酸分子である。1つの好ましいベクターはエピソーム、すなわち染色体外複製可能な核酸分子である。好ましいベクターは自己複製およびそれが結合している核酸の発現が可能なものである。機能的に結合する遺伝子の発現を行ない得るベクターを“発現ベクター”と呼ぶ。Vおよび、またはVコードDNAホモログを機能的に結合するベクターの選択は当分野ではよく知られているように望ましい機能性、たとえば複製またはたんぱく質発現およびトランスホームされる宿主細胞に依存するがこれらは組換えDNA分子の構築技術に本質的な制限となる。
好ましい態様において使用するベクターは原核性レプリコン、すなわち自己複製および細菌宿主細胞などトランスホームされた原核性宿主細胞中で染色体外でその組換えDNA分子を維持する能力を有するDNA配列が含まれる。このようなレプリコンは当分野でよく知られている。さらに原核性レプリコンを含むこれらの態様は、その発現が薬剤耐性のような選択的利点をトランスホームした宿主細菌に付与する遺伝子も含んでいる。典型的細菌薬剤耐性遣伝子はアンピシリンまたはテトラザイクリンに対する耐性を付与するものである。
原核性レプリコンを含むベクターにはトランスホームを受けた大腸菌など細菌宿主細胞中でVおよび、またはVコードホモログを発現(転写および翻訳)し得る原核性プロモーターも含んでいる。プロモーターとはRNAポリメラーゼの結合を可能にし転写を開始させるDNA配列で形成される発現コントロール要素である。細菌宿主に適合するプロモーター配列は一般に本発明のDNAセグメントを挿入するのに便利な制限部位を含むプラスミドベクター中に提供される。これらのベクタープラスミドにはバイオラドラボラトリー(リッチモンド,CA)から市販されているpUC8,pUC9,pBR322およびpBR329およびファルマシア(ピスカタウェイ,NJ)から市販されているpPLおよびpKK223がある。
真核細胞に適合する発現ベクター、好ましくは脊椎動物細胞に適合するものも使用し得る。真核細胞発現ベクターもこの分野ではよく知られており、いくつかの業者から市販されている。一般にこのようなベクターは目的とするDNAホモログの挿入用に便利な制限部位を含んでいる。このようなベクターにはpSVLおよびpKSV−10(ファルマシア)、pBPV−1/pML2d(インターナショナルバイオテクノロジー)およびpTDT1(ATCC,No.31255)がある。
好ましい態様において使用される真核細胞発現ベクターには真核細胞中で有効な選択マーカー、好ましくは薬剤耐性選択マーカーが含まれている。好ましい薬剤耐性マーカーは発現によってネオマイシン耐性となる遺伝子、すなわちネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(heo)遺伝子である。サウザーン(Southern)等,J.Mol.Appl.Genet.1,327−341(1982)。
本発明はVおよび、またはVコードDNAホモログの遺伝子の発現用のレトロウイルス発現ベククーの使用にも関する。本明細書で用いられているように“レトロウイルス発現ベクター”とはレトロウイルスゲノムのロングターミナルリピート(LTR)領域由来のプロモーター配列を含むDNA分子を意味する。
好ましい態様において一般に発現ベクターは真核細胞中好ましくは複製不能なレトロウイルス発現ベクターである。レトロウイルスベクターの構築および使用法はソルジ(Sorge)等(Nol.Cel.Biol.,4,1730−1737(1984))により報告されている。
相補的な粘着末端を介してDNAをベクターに機能的に結合する多くの方法が開発されてきている。たとえば相補的粘着末端を先に議論したように適当に設計したポリヌクレオチド合成プライマーを用いてプライマー伸長反応の際にVおよび、またはVコードDNAホモログに作ることができる。そのベクターおよび必要ならばDNAホモログを制限酵素で切断しDNAホモログの末端に相補的な末端を作る。このベクターおよびDNAホモログの相補的粘着末端を機能的に結合させ1つの二本鎖DNA分子とする。
好ましい態様においては多様なライブラリーのVおよびVコードDNAホモログをインビトロでランダムに結合し、個々のベクターからポリシストロニックな発現を可能にする。すなわち二本鎖DNA発現ベクターの多様性集団ができる。そこでは単一のプロモーターのコントロール下各ベクターは1つのVコードDNAホモログおよび1つのVコードDNAホモログを発現するがその集団の多様性は異なるVおよびVコードDNAホモログの組合せによる。インビトロでのランダムな組合せは両方に共通な各々の制限部位の位置により互いに区別可能な2つの発現ベクターを用いて行ない得る。そのベクターは本明細書に述べられてるようなラムダZap由来のベクターのように線状二本鎖DNAであることが好ましい。第1のベクターではその部位はプロモーターとポリリンカーの間、すなわちポリリンカーの5′側(発現の方向で上流)であるがプロモーターの3′側(発現の方向で下流)に位置する。第2ベクターではポリリンカーはプロモーターと制限部位の間にあり、すなわち制限部位はポリリンカーの3′側にあり、かつそのポリリンカーはプロモーターの3′側にある。
好ましい態様では各々のベクターはリボゾーム結合配列およびリーダー配列を有しており、その配列はプロモーターおよびポリリンカーの間に位置するがもし制限部位がプロモーターとポリリンカーの間にあるならそれは共有される制限部位の下流(3′側)に位置する。またベクターは停止コドンをポリリンカーの下流で、もし制限部位がポリリンカーの下流にあるときは共有される制限部位の上流に含むことが好ましい。第1および、または第2のベクターはペプチドtagをコードするヌクレオチド配列を含み得る。一般にこのtag配列はポリリンカーの下流でもし停止コドンがあるならその上流に位置する。好ましい態様ではベクターはそのベクターの一部分、すなわち特定のラムダアームの存在を選択し得る選択可能マーカーを含んでいる。典型的選択マーカーは当分野でよく知られている。このようなマーカーの例には抗生物質耐性遺伝子、遺伝的選択マーカー、マンバーサプレッションなどの変異サプレンサーなどがある。一般に選択可能マーカーはプロモーターの上流および、または第2の制跟部位の下流に位置する。好ましい態様においては1つの選択可能マーカーはVコードDNAホモログを含む第1ベクターのプロモーターの上流に位置する。
第2の選択可能マーカーはVコードDNAホモログを含むベクターの第2制限部位の下流に位置する。VコードベクターおよびVコードベクターが第1制限部位を介してランダムに結合するとき両VおよびVおよび両選択可能マーカーを含むベクターが選択されるならばこの第2選択可能マーカーは第1マーカーと同じものでも異なるものでもよい。
一般にポリリンカーは1つ以上、好ましくは少なくとも2つの制限部位を含んでいる。そしてそれら各々はそのベクターにユニークなものでかつ別のベクターに共有されていないことが好ましい。すなわちそれが第1ベクターにあるなら、第2ベクターにない方がよい。ポリリンカー制限部位は、リーダー、tagまたは停止コドン配列が存在するのと同じ読み枠でベクター中にVまたはVコードDNAホモログをライゲーションし得るよう配向させる。
ランダムな組合せは一般的にはポリリンカー内の制限部位で第1ベクターにVコードDNAホモログをライゲーションすることにより行う。同様にVコードDNAホモログは第2ベクターにライゲーションされ、それにより2つの多様性発現ベクター集団ができる。どちらのタイプのDNAホモログ、すなわちVまたはVがどちらのベクターにライゲーションしても問題ないが、たとえば全てのVコードDNAホモログが第1または第2ベクターのいずれかとライゲーションし、かつ全てのVコードDNAホモログが第1または第2ベクターのいずれかとライゲーションすることが望ましい。それから両集団のメンバーを共有される制限部位を一般的には同じ酵素で両集団を消化することにより切断する。生成した産物はメンバーの粘着末端が他のメンバーの粘着末端と相補的であるような制限フラグメントの2つの多様性集団である。この2つの集団の制限フラグメントを互いにランダムにライゲーションする。すなわちランダムな集団間ライゲーションを行ない同じ読み枠に存在しかつ第2のベクターのプロモーターのコントロール下のVコードおよびVコードDNAホモログを各々有するベクターの多様性集団を作る。もちろん2つの集団からのメンバーのライゲーションで再生する共有される制限部位での切断と再ライゲーションにより組換えが可能である。
生成した構築物を適当な宿主に導入し別々にまたは組合せてVおよび、またはVコードDNAホモログを増巾および、または発現させる。同じもしくは別々のベクターで同じ生物内で共発現させたとき、機能性Fが生成する。VおよびVポリペプチドを別の生物中で発現させる場合は各ポリペプチドを単離し適当な媒体中で合せることによりFが形成される。Vおよび、またはVコードDNAホモログ含有構築物を導入した細胞宿主は本明細書で“トランスホームされたもの”または“トランスホーマント”と呼ぶ。
この宿主細胞は原核生物でも真核生物でもよい。細菌細胞は好ましい原核性宿主細胞であり一般にベセスダリサーチラボラトリーズ社(ベセスダ、MD)から市販されてる大腸菌DH5株などの大腸菌が用いられる。好ましい真核性宿主細胞にはイーストおよび哺乳類細胞が含まれ、マウス、ラット、モンキーまたはヒトの細胞系列など脊推動物細胞が好ましい。
本発明の組換えDNA分子による適当な宿主細胞のトランスホーメーションは一般的に使用されるベクターのタイプに依存した方法で行う。原核性宿主細胞のトランスホーメーションに関してはたとえばコーエン(Cohen)等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,69,2110(1972);およびマニアチス(Maniatis)等、Molecular CIoning,ラボラトリーマニュアル、コールドスプリングハーバー,NY(1982)参照。rDNAを含むレトロウイルスベクターによる脊椎動物のトランスホーメーションに関してはソルジ(Sorge)等、Mol.Cell.Biol.4,1730−1737(1984)、グラハム(Graham)等、Virol.52,456(1973):およびウィグラー(Wigler)等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,76,1373−1376(1979)参照。
5.Vおよび、またはVポリペプチドの発現に関するスクリーニング
うまくトランスホームした細胞、すなわちベクターに機能的に結合したVおよび、またはVコードDNAホモログを含む細胞はリガンドへのレセプターの結合またはそのレセプター好ましくは活性部位をコードするポリヌクレオチドの存在を検出する適当な従来技術により同定し得る。好ましいスクリーニング法には直接的にしろ間接的にしろ検出可能なシグナルがレセプターとリガンドの結合により生成する方法である。このようなシグナルにはたとえば複合体の生成、触媒反応産物の形成、エネルギーの放出または取込みなどが含まれる。たとえば問題のrDNAでトランスホーメーションした細胞をクローン化し、モノクローナルコロニーを調製し得る。コロニーから細胞を収穫し、溶解後、それらのDNAについてサウザーン(Southern)(J.Mol.Biol.98,503(1975))またはベレント(Berent)等(Biotech.3,208(1985)の方法に従がいrDNAの存在を試験する。
およびVコードDNAホモログの存在を直接検定するのに加えてトランスホーメーションは特にVおよび、またはVポリペプチドが所定のエピトープを含む場合など従来の免疫学的方法により確認される。たとえばトランスホームした細胞サンプルいついて所定のエピトープに対する抗体を用い、そのエピトープの存在を検定する。
6.Vおよび、またはVコード遺伝子ライブラリー
本発明は好ましくはここで述べられているプライマー伸長反応またはプライマー伸長反応の組合せで生成され、少なくとも約10、好ましくは少なくとも10、そしてより好ましくは約10の異なるVおよび、またはVコードDNAホモログを含む遺伝子ライブラリーに関する。このホモログはたとえばプライマー伸長反応試薬および、または基質、ゲノムDNAセグメントなどの物質を実質的に含まないことが好ましい。
好ましい態様においてライブラリー中に存在するホモログの実質的部分はベクターに機能的に結合しており、好ましくは発現のために発現ベクターに機能的に結合している。
このホモログは水や緩衝剤を含む水などインビトロでの取扱いに適した媒体中に存在することが好ましい。この媒体はホモログの生物学的活性の維持に適合しているべきである。さらに、このホモログは合理的頻度でホモログに適合する宿主細胞にトランスホーメーションすることが十分可能な濃度で存在するべきである。
さらにこのホモログはこれでトランスホームした適合する宿主細胞中に存在することが好ましい。
D.発現ベクター
本発明はとりわけ本発明の方法を行うのに有用な種々の発現ベクターに関する。各々の発現ベクターはラムダZapの新しい誘導体である。
1.ラムダZap II
ラムダZap IIは例6に述べられてるようにベクターラムダZapのラムダS遺伝子をラムダgt10ベクター由来のラムダS遺伝子に置き換えることにより調製する。
2.ラムダ Zap II V
ラムダZap II Vは第6A図に示した合成DNA配列を上述のラムダZap IIベクターに挿入することにより調製する。この挿入ヌクレオチド配列は都合よくリボゾーム結合部位(シャインダルガルノ配列)を提供しmRNAのたんぱく質への翻訳を可能にし、かつリーダー配列を提供し翻訳されたたんぱく質を細胞周辺腔に効率的に誘導する。ラムダZap II Vの調製は例9でより詳細に述べており、またその特徴を第6A図および第7図に示した。
3.ラムダZap II V
ラムダZapVは例12で述べているようにラムダZap IIに第6B図で示した合成DNA配列を挿入することにより調製する。ラムダZap II Vの重要な特徴は第8図に示した。
4.ラムダZap II V II
ラムダZap II V IIは例11に述べているようにラムダZap IIに第10図に示した合成DNA配列を挿入することにより調製する。
上述のベクターは大腸菌宿主に適合する。すなわちこれらは発現のために機能的に結合された遺伝子によりコードされるたんぱく質を細胞周辺腔へ分泌するように発現し得る。

以下の例は本発明の範囲を説明するものであり、これを制限するものではない。
1.ポリヌクレオチド選択
免疫グロブリンたんぱく質CDRをコードするヌクレオチド配列は非常に可変性が高い。しかしVドメインに隣接する非常に保存的配列をもつ領域がいくつかある。たとえば実質的に保存されるヌクレオチド配列、すなわち同じプライマー配列にハイブリダイズする配列を含む。それゆえ、保存的配列にハイブリダイズし、ベクターに合成されたDNAフラグメントを機能的に結合するのに適した制限部位を生成するDNAホモログ中に組込むポリヌクレオチド合成(増巾)プライマーを構築した。特定するとそのDNAホモログはラムダZap IIベクター(ストラタジーンクローニングシステム、ラジョラ、CA)のXho IおよびEcoR I部位に挿入した。Vドメインの増巾には3′プライマー(第1表のプライマー12)をJ領域のmRNAに相補的となるように設計した。全ての場合、5′プライマー(第1表、プライマー1〜10)は保存的N末端領域中の第1鎖cDNA(アンチセンス鎖)に相補的となるように選んだ。最初の増巾は5つの部位で縮退している32個のプライマー(第1、プライマー1)の混合物で行う。ハイブリドーマmRNAは混合プライマーで増巾し得たが脾臓からのmRNAを増巾する最初の試みは種々の結果を生じた。それゆえ、混合5′プライマーを用いた増巾以外にいくつかの方法を比較した。
最初の方法は混合プライマープールの個々のメンバーに対応する多重ユニークプライマー(そのうちの8個は第1表に示した)を構築することであった。第1表のプライマー2〜9は5個の縮退位置の3つに2つの可能なヌクレオチドを組込むことにより構築した。
第2の方法はタカハシ(Takahashi)等(Proc.Natl.Acad.sci.(USA)82、1931−1935(1985))およびオーツカ(Ohtsuka)等(J.Biol.Chem.260,2605〜2608(1985))の研究に基づき可変部位の4つにイノシンを含むプライマー(プライマー10、第1表)を構築するものである。このプライマーはマーチン(Martin)等、Nuc.Acids.Res.13,8927(1985)により議論されているように縮退しておらず、かつ同時に非保存的部位でのミスマッチのネガティブ効果を最小限にする利点を有している。しかしイノシンヌクレオチドの存在がクローン化したV領域中に望ましくない配列を組み入れるかどうかは分っていない。それゆえイノシンは制限部位の切断後増巾されたフラグメントに残っている1つの部位には含まれていない。
さらにユニークな3′プライマーを含むV増巾プライマーはガンマ1重鎖mRNAの第1不変領域ドメインの一部に相補的となるように設計した(プライマー15および16、第1表)。これらのプライマーは重鎖のVおよび第1不変領域ドメインのアミノ酸をコードするポリヌクレオチドを含むDNAホモログを生成する。これらのDNAホモログはFではなくFabフラグメントを作るのに用いられる。
本発明はIgM、IgEおよびIgAなど免疫グロブリン重鎖の別のクラスの同じ領域にハイブリダイズするよう設計されたユニークな3′プライマーにも関する。また、特定のクラスのCH不変領域の特定の領域にハイブリダイズし、かつ別のクラスの重鎖または軽鎖不変領域を有するVドメインを発現し得る発現ベクターにこのプライマーを用いて増巾したVドメインを転移するのに適したオーバー3′プライマーにも関する。
脾臓またはハイブリドーマmRNAから不変領域IgG内の保存性の高い領域にハイブリダイズする一組のプライマーを増巾するコントロールとして重鎖遺伝子を構築した。その5′プライマー(プライマー11、第1表)はC2領域中のcDNAに相補的であり、一方3′プライマー(プライマー13、第1表)はC3領域中のmRNAに相補的である。これらのプライマーおよびテンプレートの間にミスマッチはないと考えている。
CDRをコードするヌクレオチド配列は可変性が高い。しかし、J、Vフレームワーク領域およびVリーダー/プロモーターを含むVCDRドメインに隣接する保存的配列の領域がいくつかある。それゆえ、この保存的配列にハイブリダイズしかつ、Nco IおよびSpe Iで切断したpBluescript SKベクターへの増巾したフラグメントのクローニングを可能にする制限部位を組込む増巾プライマーを構築した。VCDRドメインの増巾のためにJ領域内のmRNAに相補的であるような3′プライマー(プライマー14、第1表)を設計した。5′プライマーは保存的N末端領域中の第1鎖cDNAに相補的となるように選択した。
CDRドメインの増巾用の2番目の増巾用プライマーセットである5′プライマー(プライマー1〜8、第2表)は保存的N末端領域中の第1鎖cDNAに相補的となるように設計した。またこれらのプライマーはSac I制限エンドヌクレアーゼ部位を導入しVDNAホモログのV II発現ベクターへのクローニングを可能にする。3′V増巾プライマー(プライマー9、第2表)はJ領域中のmRNAに相補的であり、かつVDNAホモログをV II発現ベクターに挿入するときに必要なXba I制限エンドヌクレアーゼ部位を導入するよう設計した(第a図)。
さらに3′V増巾プライマーをカッパまたはラムダmRNAいずれかの不変領域にハイブリダイズするよう設計した(プライマー10および11、第2表)。これらのプライマーはカッパまたはラムダ鎖の不変領域アミノ酸をコードするポリヌクレオチド配列を含むDNAホモログの生成を可能にする。これらのプライマーはFよりむしろFabフラグメントの生成を可能にする。
Fabを構築するためのカッパ軽鎖配列の増巾に使用するプライマーを第2表に示す。これらのプライマーを用いた増巾は5個の別々の反応で行なった。それぞれの反応には5′プライマー1つ(プライマー3〜6および12)および3′プライマー1つ(プライマー13)が含まれている。残りの3′プライマー(プライマー9)はFフラグメントを構築するのに用いた。5′プライマーはSac I制限部位を含んでおり、また3′プライマーはXba I制限部位を含んでいる。
Fab構築のための重鎖Fdフラグメント増巾に用いるプライマーを第1表に示す。増巾は8個の別々の反応で行った。各々の反応は5′プライマー1つ(プライマー2〜9)および3′プライマー1つ(プライマー15)を含む。単一反応の増巾で使用する5′プライマーは縮退プライマー(プライマー1)または4つの縮退部位にイノシンを組込んだプライマー(プライマー10、第1表、プライマー17および18、第2表)である。残りの3′プライマー(プライマー14、第2表)はFフラグメントの構築に使用した。5′プライマーの多くはXho I部位を有し、また3′プライマーはSpe I制限部位を有する。
ヒト重鎖可変領域を増巾するように設計されたV増巾プライマーを第2表に示す。5′重鎖プライマーの1つは縮退ヌクレオチド部位にイノシン残基を含み、単一プライマーの多くの可変領域配列へのハイブリダイズを可能にしている。種々のIgG mRNAの不変領域にハイブリダイズするように設計されたプライマーも第2表に示す。
ラムダおよびカッパ両アイソタイプのヒト軽鎖可変領域にハイブリダイズするように設計されたV増巾プライマーも第2表に示した。
ここで用いられかつ第1〜4表に示された全てのプライマーおよび合成ポリヌクレオチドはリサーチジェネティクス社(ハンツビル、アラバマ)から購入するかまたはアプライドバイオシステムスDNA合成機モデル381Aを業者の説明書に従がい用いて合成した。
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2.FITC結合タンパク質に富むV 暗号レパートリーの生産
螢光性イソチオシアネート(FITC)をレセプター結合のためのリガンドとして選択した。抗FITCレセプターについて暗号化する遺伝子に関して、免疫遺伝子レパートリー、即ちV暗号遺伝子レパートリー及びV暗号遺伝子レパートリーを免疫化により富化することを更に決めた。これは、Antibodies A Labo−ratory Manual、ハーロウ(Harlow)及びロウ(Lowe)編集、コールド・スプリング・ハーバー(cold spring Harbor)、NY(1988年)に記載された技術を用いてFITCをキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)に連鎖することにより行なった。簡単に言えば、キーホールリンペットヘモシアニン10.0mg及びFITC0.5mgを、0.1Mの炭酸ナトリウム、pH9.6を含む緩衝液1mlに添加し、4℃で18〜24時間攪拌した。未結合FITCをセファデックス(Sephadex)G−25によるゲル濾過により除去した。
KLH−FITC複合体は、複合体100μgをリン酸塩緩衝食塩水(PBS)250μlに添加することによりマウスに注射するために調製した。等容量の完全フロイントアジュバントを添加し、全溶液を5分間乳化した。129GlX+マウスにエマルション300μlを注射した。注射は21ゲージ針を用いて幾つかの部位で皮下で施した。KLH−FITCによる第二の免疫化を2週間後に行なった。この注射液は、以下のようにして調製した。KLH−FITC50μgをPBS250μl中で希釈し、等容量の明ばんをKLH−FITC溶液に添加した。マウスに23ゲージ針を用いて溶液500μlを腹腔内に注射した。1ヶ月後、マウスにPBS中で200μlに希釈されたKLH−FITC複合体50μlの最後の注射を施した。この注射は30ゲージ針を用いて尾部側脈中に静脈内に施した。この最後の注射の5日後に、マウスを犠牲にし、全細胞RNAをそれらの脾臓から分離した。
ホスホネートエステルに免疫特異的な抗体を生産するハイブリドーマPCP8D11を、ペニシリン及びストレプトマイシンを補給した10%のウシ胎児血清を含むDMEM培地(ギブコ・ラボラトリィズ(Gibco Laboratories)、グランドアイランド、NY)中で培養した。約5×10個のハイブリドーマ細胞を回収し、リン酸塩緩衝食塩水中で2回洗浄した。全細胞RNAをこれらの分離ハイブリドーマ細胞から調製した。
3. 暗号遺伝子レパートリーの調製
全細胞RNAを、製造業者の指示及びストラタゲン・クローニング・システムズ(Stratagene Cloning Systems)(ラ・ジョラ(La Jolla)、CA)により製造されたRNA分離キットを用いて、クロムシジンスキィ(Chomczynski)らにより記載されたRNA調製方法(Anal.Biochem.162巻、156〜159頁(1987年)を参照のこと)を用いて。実施例2に記載されたKLH−FITCで免疫化された一匹のマウスの脾臓から調製した。簡単に言えば、免疫化されたマウスから脾臓を除去した直後に、組識をガラスホモジナイザーを用いて4.0Mのグアニンイソチオシアネート、0.25Mのクエン酸ナトリウム、pH7.0、及び0.1Mの2−メルカプトエタノールを含む変性溶液10ml中で均一にした。pH4.0の2Mの濃度の酢酸ナトリウム1mlを、均一にした脾臓と混合した。また、予めHOで飽和されたフェノール1mlを、均一にした脾臓を含む変性溶液に添加した。クロロホルム:イソアミルアルコール(24:1v/v)混合物2mlをこの均一液に添加した。均一液を10秒間激しく混合し、氷の上に15分間保った。その後、均一液を厚肉の50mlのポリプロピレン遠心分離管(フィッシャー・サイエンティフィック・カンパニィ(Fisher Scientific Company)、ピッツパーグ、PA)に移した。その溶液を4℃で10,000×gで20分間遠心分離した。上部のRNAを含む水層を新しい50mlのポリプロピレン遠心分離管に移し、等容量のイソプロピルアルコールと混合した。この溶液を少なくとも1時間−20℃に保ってRNAを沈殿させた。沈殿したRNAを含む溶液を4℃で10,000×gで20分間遠心分離した。ペレット化した全細胞RNAを集め、上記の変性溶液3mlに溶解した。イソプロピルアルコール3mlを再懸濁した全細胞RNAに添加し、激しく混合した。この溶液を−20℃で少なくとも1時間保ってRNAを沈殿させた。沈殿したRNAを含む溶液を4℃で10,000×gで10分間遠心分離した。ペレット化したRNAを75%のエタノールを含む溶液で1回洗浄した。ペレット化したRNAを減圧下で15分間乾燥し、ついでジメチルピロカーボネート(DEPC)で処理した水(DEPE−HO)中で再懸濁した。
長いポリA道を含む配列に関して富化されたメッセンジャーRNA(mRNA)を、Molecular Cloning A Laboratory Manu−al、マニアチアス(Maniatias)ら、編集、コールド・スプリング・ハーバー、NY、(1982年)に記載された方法を用いて全細胞RNAから調製した。簡単に言えば、上記のように調製された1個の免疫化マウス脾臓から分離された全RNAの半分をDEPC−−HO1ml中に再懸濁し、65℃で5分間保った。100mMのトリス−HCl、1Mの塩化ナトリウム、2.0mMの二ナトリウムエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、pH7.5、及び0.2%のナトリウムドデシルスルフェート(SDS)からなる2Xの多い塩添加緩衝液1mlを再懸濁したRNAに添加し、混合物を室温に冷却させた。その後、混合物を、オリゴdTを0.1Mの水酸化ナトリウム及び5mMのEDTAを含む溶液で洗浄しついでカラムをDEPC−HOで平衡にすることにより前もって調製されたオリゴ−dT(コラボレイティブ・リサーチ(colla−borative Research)型2または型3)カラムに適用した。溶出液を無菌ポリプロピレン管に集め、溶出液を65℃で5分間加熱した後に同カラムに再度適用した。その後、オリゴdTカラムを、50mMのトリス−HCl、pH7.5、500mMの塩化ナトリウム、1mMのEDTA、pH7.5及び0.1%のSDSからなる多い塩添加緩衝液2mlで洗浄した。その後、オリゴdTカラムを、50mMのトリス−HCl、pH7.5、100mMの塩化ナトリウム、1mMのEDTA及び0.1%のSDSからなる1Xの培地塩緩衝液2mlで洗浄した。メッセンジャーRNAを、10mMのトリス−HCl、pH7.5、1mMのEDTA、pH7.5及び0.05%のSDSからなる緩衝液1mlでオリゴdTカラムから溶出させた。この溶液をフェノール/クロロホルムで抽出し、その後100%のクロロホルムで1回抽出することによりメッセンジャーRNAを精製した。メッセンジャーRNAをエタノール沈殿により濃縮し、DEPC−HO中で再懸濁した。
上記の方法により分離されたメッセンジャーRNAは複数の異なるV暗号ポリヌクレオチド、即ち、約10より大きい異なるV暗号遺伝子を含む。
4.単一のV 暗号ポリヌクレオチドの調製
単一のVに関して暗号化するポリヌクレオチドを、全細胞RNAを実施例2で調製されたモノクローナルハイブリドーマ細胞から抽出した以外は、実施例3に従って分離した。この様にして分離されたポリヌクレオチドは単一Vに関して暗号化する。
5.DNA同族体調製
PCR増幅に関する調製に際し、上記の実施例に従って調製されたmRNAをプライマー延長反応によるcDNA合成の鋳型として使用した。典型的な50μlの転写反応中に、水中の脾臓またはハイブリドーマmRNA5〜10μgを、まず3′Vプライマー(プライマー12、表1)500ng(50.0pモル)で65℃で5分間ハイブリッドを形成した。続いて、混合物を1.5mMのdATP、dCTP、dGTP及びdTTP、40mMのトリス−HCl、pH8.0、8mMのMgCl、50mMのNaCl、及び2mMのスペルミジンに調節した。モロニー−マウス白血病ウイルス逆転写酵素(ストラタゲン・クローニング・システムズ)、26単位を添加し、溶液を37℃で1時間保った。
PCR増幅を、逆転写反応の生産物(cDNA/RNAハイブリッド約5μg)、3′Vプライマー(表1のプライマー12)300ng、夫々の5′Vプライマー(表1のプライマー2〜10)300ng、200mMのdNTPの混合物、50mMのKCl、10mMのトリス−HCl、pH8.3、15mMのMgCl、0.1%のゼラチン及びTaq DNAポリメラーゼ2単位を含む100μlの反応中で行なった。反応混合物を鉱油でオーバーレイし、40サイクルの増幅にかけた。夫々の増幅サイクルは、92℃で1分間の変性、52℃で2分間のアニーリング、ついで72℃で1.5分間のプライマー延長(伸長)によるポリヌクレオチド合成を伴なっていた。増幅したV暗号DNA同族体を含む試料を、フェノール/クロロホルムで2回抽出し、クロロホルムで1回抽出し、エタノールで沈殿させ、10mMのトリス−HCl、(pH、7.5)及び1mMのEDTA中で−70℃で貯蔵した。
特異な5′プライマー(2〜9、表1)を使用して、有効なV暗号DNA同族体合成及び脾臓mRNAからの増幅を第3図中、レーンR17〜R24で示されるように行なった。増幅したcDNA(V暗号DNA同族体)が予想されるサイズ(360bp)の主用バンドとして見られる。夫々の反応中の増幅したV暗号ポリヌクレオチドフラグメントの強さは明らかに類似し、これらのプライマーの全てが増幅を開始するのにほぼ同等に有効であることを示す。これらのプライマーによる増幅の収率及び品質は再現性があった。
また、イノシンを含むプライマーは脾臓mRNAから増幅したV暗号DNA同族体を再現性よく合成し、その他の増幅したcDNA(第4図、レーンR16)の強さと類似する強さの予想されるサイズのフラグメントの生産をもたらした。この結果は、イノシンの存在がまた有効なDNA同族体合成及び増幅を可能にすることを示した。このようなプライマーが複数のV暗号DNA同族体を生じるのに如何に有効であるかを明らかに示す。一定の領域のプライマー(プライマー11及び13、表1)から得られた増幅生産物は一層強く、増幅がおそらく鋳型とプライマー(第4図、レーンR9)との間の高度の相同性のために一層有効であったことを示す。これらの結果に基いて、V暗号遺伝子ライブラリーを8つの増幅の生産物からつくり、夫々異なる5′プライマーを用いて行なった。夫々のプライマー延長反応からの生産物の等しい部分を混合し、その後、混合生産物を使用してV暗号DNA同族体を含むベクターのライブラリーをつくった。
のDNA同族体を、上記のように調製した精製mRNAがら調製した。PCR増幅に関する調製に際し、上記の実施例に従って調製したmRNAをcDNA合成の鋳型として使用した。典型的な50μlの転写反応に於いて、まず水中の脾臓またはハイブリドーマmRNA5〜10μgを65℃で5分間3′Vプライマー(プライマー14、表1)300ng(50.0pモル)でアニーリングした。続いて、混合物を1.5mMのdATP、dCTP、dGTP、及びdTTP、40mMのトリス−HCl、pH8.0、8mMのMgCl、50mMのNaCl、及び2mMのスペルミジンに調節した。マロニー−マウス白血病ウィルス逆転写酵素(ストラタゲン・クローニング・システムズ)、26単位を添加し、溶液を37℃で1時間保った。PCRの増幅を、上記のようにして生産したcDNA/RNAハイブリッド約5μg、3′Vプライマー(表1のプライマー14)300ng、5′Vプライマー(表1のプライマー15)300ng、200mMのdNTPの混合物、50mMのKCl、10mMのトリス−HCl、pH8.3、15mMのNgCl、0.1%のゼラチン及び2単位のTaq DNAポリメラーゼを含む100μlの反応中で行なった。反応混合物を鉱油でオーバーレイし、40サイクルの増幅にかけた。夫々の増幅サイクルは92℃で1分間の変性、52℃で2分間のアニーリング及び72℃で1.5分間の伸長を伴なっていた。増幅試料をフェノール/クロロホルムで2回抽出し、クロロホルムで1回抽出し、エタノールで沈殿させ、10mMのトリス−HCl、pH7.5及び1mMのEDTA中で−70℃で貯蔵した。
6.ベクター中へのDNA同族体の挿入
配列に富むライブラリーをクローニングするための調製に際し、PCR増幅生産物(2.5mg/30μlの150mMのNaCl、8mMのトリス−HCl(pH7.5)、6mMのMgSO、1mMのDTT、200mg/mlのウシ血清アルブミン(BSA)、37℃、を制限酵素Xho(125単位)及びEcoR I(10U)で消化し1%のアガロースゲルで精製した。増幅反応の生産物の混合物を要するクローニング実験に於いて、等容量(50μl、1〜10μgの濃度)の夫々の反応混合物を増幅の後で制限消化の前に組合せた。消化したPCR増幅脾臓mRNAのゲル電気泳動後に、約350bpsのDNAフラグメントを含むゲルの領域を切除し、透析膜に電気溶出し、エタノールで沈殿させ、10mMのトリス−HCl、pH7.5及び1mMのEDTA中で10ng/μlの最終濃度に再懸濁した。その後、等モル量のインサートを、EcoR I及びXho Iにより前もって切断されたラムダZAPTMIIベクター(ストラタゲン・クローニング・システムズ、ラ・ジョラ、CA)1μgに5℃で一夜でつないだ。連鎖混合物の一部(1μl)を、ギガパック・ゴールド(Gigapack Gold)包装抽出物(ストラタゲン・クローニング・システムズ、ラ・ジョラ、CA)を用いて室温で2時間包装し、包装物質をXL1−ブルー宿主細胞に塗布した。そのライブラリーは30%未満の非組換えバックグラウンドを含む2×10個のV同族体からなることを測定した。
上で使用したベクター、即ちラムダZap IIは、もとのラムダZapの全ての特性を保持し6個の特異なクローニング部位、融合タンパク質形質発現、及びインサートをファージミド(ブルースクリプトSK−)の形態で迅速に切除する能力を含むがSAM100突然変異を欠如し、XL−ブルーを含む多くのノン−サップ(Non−Sup)F株上での増殖を可能にするもとのラムダZapの誘導体(ATCC#40,298)である。ラムダZap IIは、ショート(Short)ら著、Nucleic Acids Res.,16巻、7583〜7600頁、1988年に記載されたように、ラムダZapを制限酵素Nco Iで消化することにより生産された4254塩基対(bp)DNAフラグメント中に含まれるラムダS遺伝子を置換することによりつくった。この4254bpDNAフラグメントを、ベクターを制限酵素Nco Iで消化した後、ラムダgt10(ATCC#40,179)から分離されたラムダS遺伝子を含む4254bpDNAフラグメントで置換した。ラムダgt10から分離された4254bpDNAフラグメントを、Current Protocols in Mole−cular Biology,アウスベル(Ausubel)ら、編集、ジョン・ウィリィ・アンド・サンズ(John Wiley and Sons)、NY、1987年に記載されたこのような操作のための標準プロトコル及びT4DNAリガーゼを用いてもとのラムダZapベクターにつないだ。
配列に富むライブラリーをクローン化する調製に際し、PCR増幅生産物2μg(2.5mg/30μlの150mMのNaCl、8mMのトリス−HCl(pH7.5)、6mMのMgSO、1mMのDTT、200mg/mlのBSA、37℃)を制限酵素Nco I(30単位)及びSpe I(45単位)で消化した。消化した増幅生産物を、Molecular Clonig A Laboratory Manual,マニアチスら編集、コールド・スプリング・ハーバー、NY、(1982年)に記載された通常の電気溶出技術を用いて1%のアガロースゲルで精製した。簡単に言えば、消化したPCR増幅生産物のゲル電気溶出の後に、適当なサイズのV暗号DNAフラグメントを含むゲルの領域を切除し、透析膜に電気溶出し、エタノールで沈殿させ、10mMのトリス−HCl、pH7.5及び/mMのEDTAを含む溶液中で10ng/mlの最終濃度で再懸濁した。
複素の異なるV暗号DNA同族体に相当する等モル量のDNAを、Nco I及びSpe Iで前もって切断されたpブルースクリプトSK−ファージミドベクターにつないた。連鎖混合物の一部を、製造業者の指示を用いでユピクイアン・コリ(Epicuian Coli)XL1−ブルーコンピテント細胞(ストラタゲン・クローニング・システムズ、ラ・ジョラ、CA)に形質転換した。形質転換体ライブラリーは3%未満の非組換えバックグラウンドを含む1.2×10個のコロニー形成単位/μgのV同族体からなることを測定した。
7. 暗号cDNAライブラリーからプラスミドの配列の決定
ラムダZap IIファージクローンを分析するために、製造業者の指示(ストラタゲン・クローニング・システム、ラ・ジョラ、CA)に従ってクローンをラムダZapからプラスミドに切除した。簡単に言えば、ファージプラークを寒天プレートからコアを形成し、50mMのトリス−HCl、pH7.5、100mMのNaCl、10mMのMgSO、及び0.01%のゼラチンを含む緩衝液500μl及びクロロホルム20μlを含む無菌ミクロフュージ(microfuge)管に移した。
切除のため、ファージ原液200μl、XL1−ブルー細胞(A600=1.00)200μl及びR408ヘルパーファージ(1×1011pfu/ml)1μlを37℃で15分間保温した。切除したプラスミドをXL1−ブルー細胞に感染させ、アンピシリンを含むLBプレートに塗布した。二本鎖DNAを、ホルメス(Holmes)らにより記載された方法(Anal.Biochem.114巻、193頁(1981年)を参照のこと)に従ってファージミドを含む細胞から調製した。まずクローンをPvu IIまたはBgl Iのいずれかによる制限消化によりDNAインサートに関してスクリーニングし、想像上のVインサートを含むクローンをサンガー(Sanger)らにより記載された一般方法(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75巻、5463〜5467頁、(1977年)を参照のこと)及びストラタゲン・クローニング・システムズ、ラ・ジョラ、CAからのAMV逆転写酵素35S−dATP配列決定キットに於ける製造業者の指示に於いて与えられたこの方法の特別の改良に従って逆転写酵素を用いて配列を決定した。
8.クローン化したV レパートリーの特性決定
Xho I及びEcoR Iで消化されラムダZAPにクローン化された増幅生産物は、9.0×10pfuを有するdDNAライブラリーをもたらした。ライブラリーがV暗号DNA同族体の種々の集団からなることを確かめるために、ライブラリーから任意に選ばれた18のクローンのN−末端120塩基を切除し配列を決定した(第5図を参照のこと)。クローンがV遺伝子源のものであるかどうかを決定するため、クローン化した配列を既知のV配列及びV配列と比較した。クローンは既知のH鎖源の配列と80〜90%の相同性を示し、Sequence of Proteins of Immunological lnterest、カボット(Kabot)ら、第4編、U.S.Dept.of Health and Human Sciences、(1987年)に於いて入手し得る配列と比較する時にL鎖源の配列と殆ど相同性を示さなかった。これは、ライブラリーがL鎖配列の如きその他の配列に優先して所望のV配列に関して富化されることを示した。
集団の多様性を、配列決定クローンを予め特定したサブグループ(第5図)に分類することにより評価した。マウスV配列を11のサブグループ(第5図)に分類した。マウスV配列を、Sequence of Proteins of Immunological Interestカボットら、第4編、U.S.Dept.of Health and Human Sciences、(1987年);ディルドロップ(Dildrop)著、Immunology Today、5巻84頁(1984年);及びブロデュアー(Brodeur)ら著、Eur.J.Immunol.,14巻、922頁、(1984年)に記載されたフレームワークアミノ酘配列に基く11のサブグループ〔I(A、B)、II(A、B、C)、III(A、B、C、D)、V(A、B)〕に分類する。配列決定したクローンの分類は、cDNAライブラリーが少なくとも7つの異なるサブグループのV配列を含むことを示した。更に、配列決定したクローン間の相同性の対状の(pairwise)比較は、二つの配列が全ての部分で同一ではないことを示し、配列分析により特性決定が可能である程度に集団が異なるこ点を示唆した。
クローン(L36〜50、第5図)のうちの6個はサブクラスIII Bに属し、非常に類似するヌクレオチド配列を有していた。これは刺激した脾臓中の一つまたは幾つかの関連する可変遺伝子から誘導されるmRNAの優勢を反映し得るが、そのデータは増幅法に於けるバイアスの可能性を除外することを許さない。
9. 形質発現ベクター構成
ベクター系を選択するのに使用した主な基準は、直接スクリーニングし得る最大数のFabフラグメントを生じることの必要性であった。バクテリオファージラムダを三つの理由で形質発現ベクターとして選択した。第一に、ファージDNAの試験管内パッケージングはDNAを宿主細胞に再導入する最も有効な方法である。第二に、タンパク質形質発現を単一ファージプラークのレベルで検出することが可能である。最後に、ファージライブラリーのスクリーニングは典型的に非特異的な結合による難点を殆ど伴なわない。別のプラスミドクローニングベクターは、それらが同定された後に、クローンの分析にのみ有利である。この利点はラムダZapの使用のために本系に於いて失なわれず、それによりH鎖、L鎖、またはFab形質発現インサートを含むプラスミドが切除されることを可能にする。
大腸菌宿主細胞中で複数のV暗号DNA同族体を形質発現するために、V暗号DNA同族体を適当な読取り枠中に入れ、シャイン(Shine)らにより記載されたリボソーム結合部位(Nature、254巻、34頁、1975年を参照のこと)を与え、形質発現タンパク質をペリプラズム間隙に送るリーダー配列を与え、既知のエピトープ(エピトープtag)に関して暗号化するポリヌクレオチド配列を与え、且つまたV暗号DNA同族体とエピトープtagに関して暗号化するポリヌクレオチドとの間のスペーサータンパク質に関して暗号化するポリヌクレオチドを与えるベクターをつくった。上記のポリヌクレオチド及び特徴の全てを含む合成DNA配列を、互いにハイブリッドを形成し第6図に示された二本鎖合成DNA配列を形成する20〜40の塩基の一本鎖ポリヌクレオチドセグメントを設計することによりつくった。個々の一本鎖ポリヌクレオチド(N〜N12)を表3に示す。
ポリヌクレオチド2、3、9−4′、11、10−5′、6、7及び8を、夫々のポリヌクレオチド(0.1μg/μl)1μl及び20単位のTポリヌクレオチドキナーゼを70mMのトリス−HCl、pH7.6、10mMのMgCl、5mMのDTT、10mMの2ME、500μg/mlのBSAを含む溶液に添加することによりキナーゼ処理した。その溶液を37℃で30分間保ち、溶液を65℃で10分間保つことにより反応を停止した。二つの末端ポリヌクレオチド、即ちポリヌクレオチドN1及びポリヌクレオチドN12 20ngを、20.0mMのトリス−HCl、pH7.4、2.0mMのMgCl及び50.0mMのNaClを含む1/10容量の溶液と共に、上記のキナーゼ処理反応溶液に添加した。この溶液を70℃で5分間加熱し、500mlの水のビーカー中で室温約25℃に1.5時間にわたって冷却した。この期間中に全ての10のポリヌクレオチドはアニールして第6A図に示された二本鎖合成DNAインサートを形成した。個々のポリヌクレオチドを互いに共有結合で連鎖し、上記の反応液40μlを50mMのトリス−HCl、pH7.5、7mMのMgCl、1mMのDTT、1mMのアデノシントリホスフェート(ATP)及び10単位のT4DNAリガーゼを含む溶液に添加することにより合成DNAインサートを安定化した。この溶液を37℃で30分間保ち、その後、溶液を65℃で10分間保つことによりT4DNAリガーゼを失活した。末端ポリヌクレオチドを、上記の反応液52μl、10mMのATPを含む溶液4μl及び5単位のT4ポリヌクレオチドキナーゼを混合することによりキナーゼ処理した。この溶液を37℃で30分間保ち、その後、溶液を65℃で10分間保つことによりT4ポリヌクレオチドキナーゼを失活した。完全合成DNAインサートを、制限酵素Not I及びXho Iで前もって消化したラムダZap IIベクターに直接つないだ。連鎖混合物を、ストラタゲン・クローニング・システムズ、ラ・ジョラ、CAから入手し得るギガパック IIゴールドパッキング抽出物を用いて製造業者の指示に従って包装した。包装した連鎖混合物をxL1ブルー細胞(ストラタゲン・クローニング・システムズ、サンジエゴ、CA)に塗布した。個々のラムダZap IIプラークをコア形成し、インサートを製造業者、ストラタゲン・クローニング・システムズ、ラ・ジョラ、CAにより与えられた生体内切除プロトコルに従って切除した。この生体内切除プロトコルはクローン化したインサートをラムダZap IIベクターからプラスミドベクターへと移動させ、容易な操作及び配列の決定を可能にする。上記のクローニング工程の正確度を、サンガーら著、Proc.Natl.Acad.Sci USA、74巻、5463〜5467頁、(1977年)に記載されたサンガージデオキシド法を用い、ストラタゲン・クローニング・システムズ、ラ・ジョラ、CAからのAMV逆転写酵素35S−ATP配列決定キットに於ける製造業者の指示を用いてインサートを配列決定することにより確認した。得られたV形質発現ベクターの配列を第6A図及び第7図に示す。
Figure 2007175058
10. 形質発現ベクター構成
大腸菌宿主細胞中で複数のV暗号ポリヌクレオチドを形質発現するために、V暗号ポリヌクレオチドを適当な読取り枠に入れ、シャインらにより記載されたようなリボソーム結合部位(Nature、254巻、34頁(1975年)に参照のこと)を与え、形質発現タンパク質をペリプラズム間隙に送るリーダー配列を与え、且つまたVポリヌクレオチドとエピトープtagに関して暗号化するポリヌクレオチドとの間のスペーサータンパク質に関して暗号化するポリヌクレオチドを与えるベクターをつくった。上記のポリヌクレオチド及び特徴の全てを含む合成DNA配列を、互いにハイブリットを形成し第6B図に示された二本鎖合成DNA配列を形成する20〜40の塩基の一本鎖ポリヌクレオチドセグメントを設計することによりつくった。個々の一本鎖ポリヌクレオチド(N〜N)を表3に示す。
ポリヌクレオチドN2、N3、N4、N6、N7及びN8を、夫々のポリヌクレオチド1μl及び20単位のTポリヌクレオチドキナーゼを70mMのトリス−HCl、pH7.6、10mMのMgCl、5mMのDTT、10mMの2ME、500μg/mlのBSAを含む溶液に添加することによりキナーゼ処理した。その溶液を37℃で30分間保ち、溶液を65℃で10分間保つことにより反応を停止した。二つの末端ポリヌクレオチド、即ちポリヌクレオチドN1及びポリヌクレオチドN5 20ngを、20.0mMのトリス−HCl、pH7.4、2.0mMのMgCl及び50.0mMのNaClを含む1/10容量の溶液と共に、上記のキナーゼ処理反応溶液に添加した。この溶液を70℃で5分間加熱し、500mlの水のビーカー中で室温約25℃に1.5時間にわたって冷却した。この期間中に全てのポリヌクレオチドはアニールして二本鎖合成DNAインサートを形成した。個々のポリヌクレオチドを互いに共有結合で連鎖し、上記の反応液40μlを50mMのトリス−HCl、pH7.5、7mMのMgCl、1mMのDTT、1mMのATP及び10単位のT4DNAリガーゼを含む溶液に添加することにより合成DNAインサートを安定化した。この溶液を37℃で30分間保ち、その後、溶液を65℃で10分間保つことによりT4DNAリガーゼを失活した。末端ポリヌクレオチドを、上記の反応液52μl、10mMのATPを含む溶液4μl及び5単位のT4ポリヌクレオチドキナーゼを混合することによりキナーゼ処理した。この溶液を37℃で30分間保ち、その後、溶液を65℃で10分間保つことによりポリヌクレオチドキナーゼを失活した。完全合成DNAインサートを、制限酵素Not I及びXho Iで前もって消化したラムダZap IIベクターに直接つないだ。連鎖混合物を、ストラタゲン・クローニング・システムズ、ラ・ジョラ、CAから入手し得るギガパック IIゴールドパッキング抽出物を用いて製造業者の指示に従って包装した。包装した連鎖混合物をXL1ブルー細胞(ストラタゲン・クローニング・システムズ、ラ・ジョラ、CA)に塗布した。個々のラムダZap IIプラークをコア形成し、インサートを製造業者、ストラタゲン・クローニング・システムズ、ラ・ジョラ、CAにより与えられショートら著Nucleic Acids Res.16巻、7583〜7600頁1988年に記載された生体内切除プロトコルに従って切除した。この生体内切除プロトコルはクローン化したインサートをラムダZap IIベクターからプラスミドベクターへと移動させ、容易な操作及び配列の決定を可能にし、またV形質発現ベクターのファージミド変種を生産する。上記のクローニング工程の正確度を、サンガーら著、Proc.Natl.Acad.Sci USA、74巻、5463〜5467頁、(1977年)に記載されたサンガージデオキシド法を用い、ストラタゲン・クローニング・システムズ、ラ・ジョラ、CAからのAMV逆転写酵素35S−dATP配列決定キットに於ける製造業者の指示を用いてインサートを配列決定することにより確認した。得られたV、形質発現ベクターの配列を第6図及び第8図に示す。
ライブラリーをつくるのに使用したV形質発現ベクターは、V形質発現ベクターのDNAが決定されることを可能にするために生産されたファージミドであった。上で詳述されたように、ファージミドをラムダZap V形質発現ベクター(第8図)からの生体内切除法により生産した。このベクターのファージミド変種を使用した。何となれば、Nco I制限酵素部位はこの変種中で特異であり、こうしてVDNA同族体を形質発現ベクターに操作上連鎖するのに使用し得たからである。
11. II−形質発現ベクター構成
大腸菌宿主細胞中で複数のV暗号DNA同族体を形質発現するために、V暗号DNA同族体を適当な読取り枠中に入れ、シャインらにより記載されたようなリボソーム結合部位(Nature、254巻、34頁、1975年を参照のこと)を与え、ライ(Lei)ら(J.Bac.,169巻、4379頁(1987年))及びベター(Better)ら(Science、240巻、1041頁(1988頁))により大腸菌中でFabフラグメントをうまく分泌するのに従来使用されていたPelB遺伝子リーダー配列を与え、且つまたクローニングのための制限エンドヌクレアーゼ部位を含むポリヌクレオチドを与えるベクターをつくった。上記のポリヌクレオチド及び特徴の全てを含む合成DNA配列を、互いにハイブリッドを形成し、第10図に示された二本鎖合成DNA配列を形成する20〜60の塩基の一本鎖ポリヌクレオチドセグメントを設計することによりつくった。二本鎖合成DNA配列内の夫々個々の一本鎖ポリヌクレオチド(01〜08)の配列を表4に示す。
ポリヌクレオチド02、03、04、05、06及び07を、夫々のポリヌクレオチド(0.1μg/μl)1μl及び20単位のTポリヌクレオチドキナーゼを70mMのトリス−HCl、pH7.6、10mMの塩化マグネシウム(MgCl)、5mMのジチオスレイトール(DTT)、10mMの2−メルカプトエタノール(2ME)、500μg/mlのウシ血清アルブミンを含む溶液に添加することによりキナーゼ処理した。その溶液を37℃で30分間保ち、溶液を65℃で10分間保つことにより反応を停止した。二つの末端ポリヌクレオチド、01及び08の夫々20ngを、20.0mMのトリス−HCl、pH7.4、2.0mMのMgCl、及び15.0mMの塩化ナトリウム(NaCl)を含む1/10容量の溶液と共に、上記のキナーゼ処理反応溶液に添加した。この溶液を70℃で5分間加熱し、500mlの水のビーカー中で室温約25℃に1.5時間にわたって冷却した。この期間中に全ての8のポリヌクレオチドはアニールして第9図に示された二本鎖合成DNAインサートを形成した。個々のポリヌクレオチドを互いに共有結合で連鎖し、上記の反応液40μlを50mMのトリス−HCl、pH7.5、7mMのMgCl、1mMのDTT、1mMのATP及び10単位のT4DNAリガーゼを含む溶液に添加することにより合成DNAインサートを安定化した。この溶液を37℃で30分間保ち、その後、溶液を65℃で10分間保つことによりT4DNAリガーゼを失活した。末端ポリヌクレオチドを、
上記の反応液52μl、10mMのATPを含む溶液4μl及び5単位のT4ポリヌクレオチドキナーゼを混合することによりキナーゼ処理した。この溶液を37℃で30分間保ち、その後、溶液を65℃で10分間保つことによりT4ポリヌクレオチドキナーゼを失活した。完全合成DNAインサートを、制限酵素Not I及びXho Iで前もって消化したラムダZap IIベクターに直接つないだ。連鎖混合物を、ストラタゲン・クローニング・システムズ、ラ・ジョラ、CAから入手し得るギガパック IIゴールドパッキング抽出物を用いて製造業者の指示に従って包装した。包装した連鎖混合物をXL1ブルー細胞(ストラタゲン・クローニング・システムズ、ラ・ジョラ、CA)に塗布した。個々のラムダZap IIプラークをコア形成し、インサートを製造業者、ストラタゲン・クローニング・システムズ、ラ・ジョラ、CAにより与えられた生体内切除プロトコルに従って切除した。この生体内切除プロトコルはクローン化したインサートをラムダZap IIベクターからプラスミドベクターへと移動させ、容易な操作及び配列の決定を可能にする。上記のクローニング工程の正確度を、ストラタゲンクローニング・システムズ、ラ・ジョラ、CAからのAMV逆転写酵素35S−dATP配列決定キットに於ける製造業者の指示を用いてインサートを配列決定することにより確認した。得られたV II形質発現ベクターの配列を第9図及び第11図に示す。
Figure 2007175058
12. +V ライブラリー構成
配列に富む形質発現ライブラリーを調製するために、V配列に富むDNA同族体を、5′プライマーの同じ組を使用するが3′プライマーとしてプライマー12A(表1)を用いて実施例6に従って調製した。その後、これらの同族体を制限酵素Xho I及びSpe Iで消化し、Molecular Cloning A Laboratory Manual、マニアチスら編集、コールド・スプリング・ハーバー、NY、(1982年)に記載された通常の電気溶出技術を用いて1%のアガロースゲルで精製した。その後、これらの調製したVDNA同族体を、Xho I及びSpe Iで前もって消化されたV形質発現ベクターに直接挿入した。
DNA同族体を含む連鎖混合物を、ギガパック・ゴールド IIパッキング抽出物(ストラタゲン・クローニング・システムズ、ラ・ジョラ、CA)を使用して製造業者の仕様書に従って包装した。その後、形質発現ライブラリーをXL−1ブルー細胞に塗布されるように準備した。
配列に富むライブラリーを調製するために、V配列に富むPCR増幅生産物を実施例6に従って調製した。これらのVDNA同族体を制限酵素Nco I及びSpe Iで消化した。消化したVDNA同族体を、Molecular Cloning A Laboratory Manual、マニアチスら編集、コールド・スプリング・ハーバー、NY(1982年)に記載された通常の電気溶出技術を用いて1%のアガロースゲルで精製した。調製したVDNA同族体を、制限酵素Nco I及びSpe Iで前もって消化されたV形質発現ベクターに直接挿入した。VDNA同族体を含む連鎖混合物を、製造業者(ストラタゲン・クローニング・システムズ、ラ・ジョラ、CA)の指示を用いてXL−1ブルーコンピテント細胞に形質転換した。
13. 形質発現ベクター中へのV 暗号DNA同族体の挿入
配列に富むライブラリーをクローン化するための調製に於いて、PCR増幅生産物(2.5μg/30μlの150mMのNaCl、8mMのトリス−HCl(pH7.5)、6mMのMgSO、1mMのDTT、200μg/mlのBSA、37℃を、制限酵素Sac I(125単位)及びXba I(125単位)で消化し、1%のアガロースゲルで精製した。増幅反応の生産物の混合物を必要とするクローニング実験に於いて、等容量(50μl、1〜10μg濃度)の夫々の反応混合物を増幅の後で制限消化の前に組合せた。消化したPCR増幅脾臓mRNAのゲル電気泳動の後に、約350bpのDNAフラグメントを含むゲルの領域を切除し、透析膜に電気溶出し、エタノールで沈殿させ、10mMのトリス−HCl、pH7.5及び1mMのEDTAを含むTE溶液中で50ng/μlの最終濃度に再懸濁した。
形質発現DNAベクターを、このDNA100μgを夫々250単位の制限エンドヌクレアーゼSac I及びXba I(両方ともボーリンガー・マンハイム(Boehringer Mannheim)、インジアナポリス、INから入手した)並びに製造業者により推奨された緩衝液を含む溶液に添加することによりクローン化のために調製した。この溶液を37℃で1.5時間保った。その溶液を65℃で15分間保って制限エンドヌクレアーゼを失活した。溶液を30℃に冷却し、製造業者の仕様書に従って熱死滅性(heat−killable)(HK)ホスファターゼ(エピセンター(Epicenter)、マジソン、WI)25単位及びCaClをそれに添加した。この溶液を30℃で1時間保った。その溶液をフェノールとクロロホルムの混合物で抽出し、続いてエタノールで沈殿させることにより精製した。今ここに、V II形質発現ベクターが、上記の実施例で調製したVDNA同族体への連鎖のために準備された。
配列に富むDNA同族体を、表2に示された3′L鎖プライマー及び5′L鎖プライマーを使用して実施例5に従って調製した。個々の増幅反応を、3′L鎖プライマーと組合せて夫々の5′L鎖プライマーを使用して行なった。これらの別個のV同族体を含む反応混合物を混合し、実施例6に従って制限エンドヌクレアーゼSac I及びXba Iで消化した。V同族体を、Molecular Cloning A Laboratory Manual、マニアチスら、編集、コールド・スプリング・ハーバー、NY、(1982年)に記載された通常の電気溶出技術を用いて1%のアガロースゲルで精製した。その後、これらの調製したVDNA同族体を、3モルのVDNA同族体インサートを各モルのV II形質発現ベクターと5℃で一夜つなぐことにより、上で調製されたSac1−Xba開裂V II形質発現ベクターに直接挿入した。DNAをギガパック IIボールド(ストラタゲン・クローニング・システムズ、ラ・ジョラ、CA)で包装した後、3×10のプラーク形成単位を得、50%が組換体であった。
14.同一の形質発現ベクターに於けるV DNA同族体及びV DNA同族体の無秩序の組合せ
実施例13で調製したV II形質発現ライブラリーを増幅し、V II形質発現ライブラリーファージDNA500μgをMolecular Cloning:A Laboratory ManuaL:、マニアチスら、編集コールド・スプリング・ハーバー、NY(1982年)に記載された操作を用いて増幅ファージ原液から調製した。このV II形質発現ファージDNA50μgを、エンドヌクレアーゼ製造業者により供給された緩衝液200μl中に100単位のMLu I制限エンドヌクレアーゼ(ボーリンガー・マンハイム、インジアナポリス、IN)を含む溶液中で37℃で1.5時間保った。その後、溶液をフェノールとクロロホルムの混合物で抽出した。その後、DNAをエタノールで沈殿させ水100μl中で再懸濁した。この溶液を、製造業者により規定された成分を含む緩衝液の最終容量200μl中の100単位の制限エンドヌクレアーゼEcoR I(ボーリンガー・マンハイム、インジアナポリス、IN)と混合した。この溶液を37℃で1.5時間保ち、その後、溶液をフェノールとクロロホルムの混合物で抽出した。DNAをエタノールで沈殿させ、DNAをTE中で再懸濁した。
実施例12で調製したV形質発現ライブラリーを増幅し、V形質発現ライブラリーファージDNA500μgを上で詳述した方法を使用して調製した。V形質発現ライブラリーファージDNA50μgを、エンドヌクレアーゼ製造業者により供給された緩衝液200μl中に100単位のHind III制限エンドヌクレアーゼ(ボーリンガー・マンハイム、インジアナポリス、IN)を含む溶液中で37℃で1.5時間保った。その後、その溶液を、0.1Mのトリス−HCl、pH7.5で飽和されたフェノールとクロロホルムの混合物で抽出した。その後、DNAをエタノールで沈殿させ水100μl中で再懸濁した。この溶液を、製造業者により規定された成分を含む緩衝液の最終容量200μl中の100単位の制限エンドヌクレアーゼEcoRI(ボーリンガー・マンハイム、インジアナポリス、IN)と混合した。この溶液を37℃で1.5時間保ち、その後、溶液をフェノールとクロロホルムの混合物で抽出した。DNAをエタノールで沈殿させ、DNAをTE中で再懸濁した。
制限消化したV形質発現ライブラリー及びV II形質発現ライブラリーを一緒につないだ。連鎖反応は、ストラタゲン・クローニング・システムズ(ラ・ジヨラ、カリフォルニア)から購入した連鎖キット中に供給された試薬を使用する10μlの反応液中にV 1μg及びV IIファージライブラリー1μgからなっていた。4℃で16時間の連鎖後に、つながれたファージDNA1μlをギガパック・ゴールド II包装抽出物で包装し、製造業者の指示に従って調製されたXL1−ブルー細胞に塗布した。得られた3×10のクローンの一部を使用して組合せの有効性を測定した。得られたV及びV形質発現ベクターを第11図に示す。
及びVの両方を含むクローンを、ショートら著、Nucleic Acid Research、16巻、7583〜7600頁(1988年)に記載された試験管内切除プロトコルを用いてファージからpブルースクリプトに切除した。切除のために選ばれたクローンはデカペプチドtagを形質発現し、2mMのIPTGの存在下にX−galを開裂せず、こうして白色のままであった。これらの特徴を備えたクローンはライブラリーの30%に相当した。切除のために選ばれたクローンの50%は制限分析により測定されるようにV及びVを含んでいた。Vライブラリー中のクローンの約30%はデカペプチドtagを形質発現しV IIライブラリーのクローンの50%はV配列を含んでいたので、組合せライブラリー中のクローンの15%以下はVクローン及びVクローンの両方を含むことが予想された。得られた実際の数はライブラリーの15%であり、組合せの方法が非常に有効であることを示した。
15. 抗原結合タンパク質のためのDNA同族体の分離
抗原結合タンパク質に関して暗号化するDNA同族体を含む個々のクローンを分離するために、実施例11に従って調製したV形質発現ライブラリーの力価を測定した。このライブラリー滴定を、当業者に公知の方法を用いて行なった。簡単に言えば、ライブラリーの連続希釈液を100mMのNaCl、50mMのトリス−HCl、pH7.5及び10mMのMgSOを含む緩衝液中でつくった。夫々の希釈液10μlを指数的に増殖する大腸菌細胞200μlに添加し、37℃で15分間保ってファージを細菌細胞に吸収された。上部の寒天3mlは5g/lのNaCl、2g/lのMgSO、5g/lの酵母エキス、10g/lのNZアミン(カゼイン加水分解産物)及び0.7%の融解した50℃のアガロースからなっていた。ファージ、細菌及び上部の寒天を混合し、その後、予め温めた細菌寒天プレート(5g/lのNaCl、2g/lのMgSO、5g/lの酵母エキス、10g/lのNZアミン(カゼイン加水分解産物)及び15g/lのジフコ寒天)の表面に均等に分布させた。プレートを37℃で12〜24時間保ち、その期間中にラムダプラークが細菌ローン上で発生した。ラムダプラークを計数してもとのライブラリー中の1ml当りのプラーク形成単位の合計数を測定した。
その後、滴定した形質発現ライブラリーを、複製フィルターがライブラリーからつくれるようにプレートアウト(plate out)した。複製フィルターは、関係する抗原結合タンパク質を形質発現しているライブラリー中の個々のクローンをその後に分離するのに使用される。簡単に言えば、150mmのプレート当り20,000のプラークを生じる容量の滴定したライブラリーを、指数的に増殖する大腸菌細胞600μlに添加し、37℃で15分間保ってファージを細菌細胞に吸収させた。その後、上部の寒天7.5mlを、細菌細胞及び吸収ファージを含む溶液に添加し、全混合物を予め温めた細菌寒天プレートの表面に均等に分布させた。この方法を、ライブラリーサイズに少なくとも等しい合計数のプラークをプレートアウトするのに充分な数のプレートに関して繰返した。その後、これらのプレートを37℃で5時間保った。その後、プレートを、10mMのイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)を含む溶液で前処理されたニトロセルロースフィルターでオーバーレイし、37℃で4時間保った。プレートに対するニトロセルロースフィルターの配向を、フィルターを通って数ケ所で細菌プレートに至る防水インク中に浸漬されたニードルで穴をあけることによりマークした。ニトロセルロースフィルターをピンセットで取り出し、20mMのトリス−HCl、pH7.5、150mMのNaCl及び0.05%モノラウレート(トゥイーン−20)を含むTBST溶液中で1回洗浄した。また、10mMのIPTGを含む溶液中で浸軟された第二ニトロセルロースフィルターを細菌ブレートに再度適用して二重フィルターをつくった。
フィルターをTBSTの新しい溶液中で15分間更に洗浄した。
その後、フィルターを、20mMのトリス−HCl、pH7.5、150mMのNaCl及び1%のBSAからなるブロッキング溶液中に入れ、室温で1時間攪拌した。ニトロセルロースフィルターを、一次抗体の1:500希釈液を含む新しいブロッキング溶液に移し、室温で少なくとも1時間にわたって穏かに攪拌した。フィルターを一次抗体を含む溶液中で攪拌した後、フィルターをTBST中で毎回5分間で3〜5回洗浄して残留の未結合一次抗体を除去した。フィルターを新しいブロッキング溶液及びアルカリホスファターゼ接合二次抗体の1:500〜1:1000希釈液を含む溶液に移した。フィルターを、その溶液中で室温で少なくとも1時間にわたって穏かに攪拌した。フィルターをTBSTの溶液中で毎回少なくとも5分間で3〜5回洗浄して残留の未結合二次抗体を除去した。フィルターを、20mMのトリス−HCl、pH7.5及び150mMのNaClを含む溶液中で1回洗浄した。フィルターをこの溶液から取り出し、過剰の水分を濾紙でそれらから吸い取った。フィルターを、100mMのトリス−HCl、pH9.5、100mMのNaCl、5mMのMgCl、0.3mg/mlのニトロブルーテトラゾリウム(NBT)及び0.15mg/mlの5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−ホスフェート(BCIP)を含む
溶液中に室温で少なくとも30分間入れることにより発色させた。残留発色溶液を、20mMのトリス−HCl、pH7.5及び150mMのNaClを含む溶液でフィルターからすすいだ。その後、フィルターを20mMのトリス−HCl、pH2.9及び1mMのEDTAからなるストップ溶液中に入れた。強い紫色の発色が陽性の結果を示す。フィルターを使用して所望のタンパク質を生産したファージプラークを配置する。そのファージプラークを分離し、その後、更に分析するために増殖させる。
一次抗体及び二次抗体の幾つかの異なる組合せを使用した。第一の組合せは、V抗原結合タンパク質が翻訳の解読をV抗原タンパク質に共有結合で付着されるデカペプチドエピトープを含むようにさせるのに適当な読取り枠で形質発現される場合にのみ形質発現されるデカペプチドに対して免疫特異的な一次抗体を使用した。このデカペプチドエピトープ及びこのデカペプチドエピトープに対し免疫特異的な抗体は、グリーン(Green)ら著、Cell28巻、477頁(1982年)及びニーマン(Niemann)ら著、Proc.Nat.Acad.Sci.U.S.A.80巻、4949頁(1983年)に記載されていた。認識されたデカペプチドの配列を第11図に示す。デカペプチドに対し免疫特異的であるモノクローナル抗体の機能上の均等物はグリーンらの方法及びニーマンらの方法に従って調製し得る。この一次抗体と共に使用した二次抗体は、ヤギ抗マウスIgG(フィッシャー・サイエンティフック(Fisher Scientific)であった。この抗体はマウスIgGの一定の領域対して免疫特異的であり、H鎖の可変領域の部分を認識しなかった。一次抗体及び二次抗体のこの特別な組合せは、上記のプロトコルに従って使用された場合に、クローンの25%〜30%がデカペプチドを形質発現していることを測定し、それ故これらのクローンはまたV抗原結合タンパク質を形質発現していることが推定された。
別の組合せに於いて、抗デカペプチドマウスモノクローナル抗体を一次抗体として使用し、ストラタゲン・クローニング・システムズ、ラ・ジョラ、CAからピコブルー免疫スクリーニングキットの部分として市販されるアフィニティー精製ヤギ抗マウスIgを二次抗体として使用した。この組合せは多数の偽陽性クローンを生じた。何となれば、二次抗体がまたH鎖のVと免疫反応したからである。それ故、この抗体はVタンパク質を形質発現する全てのクローンと反応し、一次抗体と二次抗体のこの組合せは適当な読取り枠中のVポリヌクレオチドを含むクローンを特異的に検出せず、こうしてデカペプチドの形質発現を可能にする。
一次抗体が螢光性イソチオシアネート(FITC)に接合される場合に、一次抗体と二次抗体の幾つかの組合せが使用され、こうして抗体の免疫特異性は重要ではなかった。何となれば、抗体が予め選択された抗原(FITC)に接合され、形質発現ライブラリー中のクローンにより生産されるV抗原結合タンパク質により結合されるべきものはその抗原であるからである。この一次抗体が有効に結合された後、それはFITC接合マウスモノクローナル抗体p2 5764(ATCC#HB−9505)である。この一次抗体と使用される二次抗体は、Antibodies A Laboratory Manual、ハーロウ(Harlow)及びロウ(Lowe)、編集、コールド・スプリング・ハーバー、NY、(1988年)に記載された方法を用いてアルカリホスファターゼに接合されたヤギ抗マウスIg(フィッシャー・サイエンティフィック、ピッツバーグ、PA)である。V形質発現ライブラリー中の特別なクローンが一次抗体に共有結合でカップリングされたFIFCを結合するV結合タンパク質を形質発現する場合、二次抗体が特異的に結合し、発色される場合アルカリホスファターゼは明瞭な紫色を生じさせる。
その型の抗体の第二の組合せは、FITC接合ウサギ抗ヒトIgG(フィッシャー・サイエンティフィック、ピッツバーグ、PA)である一次抗体を使用する。この一次抗体と共に使用される二次抗体は、Antibodies A Laboratory Manual、ハーロウ及びレーン、編集、コールド・スプリング・ハーバー、NY、(1988年)に記載された方法を用いてアルカリホスファターゼに接合されたヤギ抗ウサギIgGである。V形質発現ライブラリー中の特別なクローンが一次抗体に接合されたFITCを結合するV結合タンパク質を形質発現する場合、二次抗体は特異的に結合し、発色される場合アルカリホスファターゼは明瞭な紫色を生じさせる。
その他の一次抗体は、FITCと125Iの両方に接合されたマウスモノクローナル抗体p2 5764(ATCC#HB−9505)であった。その抗体は形質発現されたいずれかのV抗原結合タンパク質により結合される。その場合、抗体はまた125Iでラベルされるので、アルカリホスファターゼに接合される二次抗体を使用する代わりにフィルターのオートラジオグラムがつくられる。オートラジオグラムのこの直接の生産が関係のあるV抗原結合タンパク質を形質発現するライブラリー中のクローンの分離を可能にする。
16.抗原結合F を形成するV 及びV のためのDNA同族体の分離
抗原結合Fを形成するV及びVに関して暗号化するDNA同族体を含む個々のクローンを分離するため、V及びV形質発現ライブラリーを実施例15に従って滴定した。その後、滴定した形質発現ライブラリーを、実施例15に記載された方法を用いてVで形質発現されたデカペプチドtagの存在に関してスクリーニングした。その後、DNAをデカペプチドtagを形質発現するクローンから調製した。このDNAを制限エンドヌクレアーゼPvu IIで消化して、これらのクローンがまたVDNA同族体を含むか否かを測定した。Pvu II制限エンドヌクレアーゼフラグメントの一層遅い移行は、特別なクローンがVDNA同族体及びVDNA同族体の両方を含むことを示した。
DNA同族体及びVDNA同族体の両方を含むクローンを分析して、これらのクローンがVDNA同族体及びVDNA同族体から組立てFタンパク質分子を生産するか否かを測定した。
及びVの両方を含むクローン中に生産されたFタンパク質フラグメントを、クローン中に形質発現された放射能でラベルしたタンパク質の免疫沈殿により視覚化した。100μg/μlのアンピシリンを含むLBブロース(5g/lの酵母エキス、10g/lのトリプトン及び10g/lのNaCl、pH7.0)の培養液に、V及びVを含むプラスミドを含む大腸菌を接種した。培養液を、550nmで測定される光学密度が0.5になるまで振とうしながら37℃に保ち、その後、培養液を3,000gで10分間遠心分離し、メチオニンまたはシステインを含まずアミノ酸で補給されたM9培地50ml(6g/lのNaHPO、3g/lのKHPO、0.5g/lのNaCl、1g/lのNHCl、2g/lのグルコース、2mMのMgSO及び0.1mMのCaCl)中に再懸濁した。この溶液を37℃で5分間保ち、その後HSO としての35S(ニュー・イングランド・ヌクレアー(New England Nuclear)、ボストン、MA)0.5mCiを添加し、その溶液を37℃で更に2時間保った。その後、溶液を3000×gで遠心分離し、上澄液を廃棄した。得られた細菌細胞ペレットを凍結し、融解し、その後40mMのトリス、pH8.0、100mMの蔗糖及び1mMのEDTAを含む溶液中で再懸濁した。その溶液を10000×gで10分間遠心分離し、得られたペレットを廃棄した。上澄液を抗デカペプチドモノクローナル抗体10μlと混合し、氷上で30〜90分間保った。セファローズビーズ(ファーマシア(Pharmacia)、ピスカタウェイ(Piscataway)、NJ)に結合されたプロテインG40μlをその溶液に添加し、添加溶液を氷上で30分間保って免疫沈殿物を生成させた。溶液を10,000×gで10分間遠心分離し、得られたペレットを100mMのトリス−HCl、pH7.5を含む溶液1ml中に再懸濁し、10,000×gで10分間遠心分離した。この操作を2回繰返した。得られた免疫沈殿ペレットを、製造業者の指示に従ってファストゲル・ホモジナウス(Phast Gel Homogenous)20ゲル(ファーマシア、ピスカタウェイ、NJ)に装填した。ゲルを乾燥し、X線フィルムを露出するのに使用した。
得られたオートラジオグラムを第12図に示す。組立てF分子の存在は、免疫沈殿させられたVの存在によりわかる。何となれば、それは沈殿する抗体により認識されるV−デカペプチドtag、に付着されたからである。
17.選択性V 及びV 形質発現の構成
A.変異体S遺伝子形質発現プラスミドの構成
バクテリアファージラムダS遺伝子は、リーダー(Reader)ら著、Virology、43巻、607〜622頁(1971年)に記載されるように溶菌に直接関与されると示されていた。S遺伝子は、ガレット(Garrett)ら著、J.Virology、44巻、886〜892頁(1982年)に記載されているようにそれがペプチドグリカンを分解する場合に細胞の周辺質中へのR遺伝子生産物の放出を可能にする細胞質膜中の致命的な出来事に対して応答性である
107アミノ酸ポリペプチドを暗号化する。優性S遺伝子変異体(S100SAM5)は、正常なSタンパク質膜チャンネルの形成を妨害し、こうして細胞溶解を防止すると示された突然変異である。ラアブ(Raab)ら著、J.Mol.Biol.199巻、95〜105頁(1988年)を参照のこと。この変異体S遺伝子は優性である。何となれば、それが形質発現される場合に、野生型Sタンパク質の存在下であっても、それは細菌細胞の溶解を防止するからである。また、S100SAM5優性突然変異はアンバー変異を含み、それ故、変異体Sタンパク質が生産されるために細菌細胞中のサプレッサーtRNAの形質発現を必要とする。更に、このアンバー変異は溶解しないで変異体S遺伝子構成物を含む細菌の増殖を可能にする。何となれば、このアンバー抑制tRNAなしでは、機能性S遺伝子タンパク質が生産されないからである。
ラムダZap Sam5からの優性S遺伝子を、ポリメラーゼ鎖反応を使用して分離した。簡単に言えば、ラムダZap Sam5DNAを、Molecular Clonig:A Laboratory Manual、マニアチスら、編集、コールド・スプリング・ハーバー、NY(1982年)に記載された方法を用いて分離した。ラムダZap Sam5DNA0.1μgを、プライマーRG15(表5)150ng及びプライマー RG16(表5)150ng、夫々0.25mMのdTTP、dCTP、dGTP、及びdATP(dNTPs)、50mMのKCl、10mMのトリス−HCl、pH8.3、1.5mMのMgCl、及び0.15%の無菌ゼラチンを含む緩衝液と混合した。得られた溶液を91℃に5分間加熱し、その後54℃の水浴中に5分間入れた。0.5μlのTaqポリメラーゼ(パーキン・エルマー−セタス(Perkin Elmer−Cetus)、ノーウォーク、CT)を添加し、その溶液を鉱油の層でオーバーレイした。
その後、その溶液をDNTサーマル・サイクラー(Thermal Cycler)(パーキン・エルマー−セタス、ノーウォーク、CT)に入れ、下記の温度及び時間条件に暴露した。(1)プライマー延長を可能にするために72℃で2分間、(2)二重らせんDNAを熱変性するために91℃で1分間、及び(3)一本鎖の核酸をハブリッド形成させるために54℃で2分間。同溶液を、製造業者の指示に従って合計30のサイクルのために工程(1)、(2)及び(3)の更なるサイクルに暴露した。その後、サイクルした溶液を72℃で10分間保ち、その後使用するまで4℃で貯蔵した。
上記のポリメラーゼ鎖反応により生産された変異体S遺伝子DNAを制限エンドヌクレアーゼHind III及びBgl IIで消化した。簡単に言えば、上で生産されたポリメラーゼ鎖反応生成物の半分をフェノール抽出、その後のエタノールによる沈殿により精製した。その後、DNAを、100mMのNaCl、10mMのトリス−HCl、pH7.7、19mMのMgCl、1mMのDTT、100μg/mlのBSA、20単位のHind III及び10車位のBgl IIを含む溶液と混合した。この溶液を37℃で1時間保った。この制限エンドヌクレアーゼ消化の効率を、Current Protocols in Molecular Biology、アウスベルら、編集、ジョン・ウィリィ・アンド・サンズ(John Wiley and Sons)、NY(1987年)に記載された方法に従ってゲル電気泳動により測定した。
ポリメラーゼ鎖反応生成物の半分を制限エンドヌクレアーゼSau3A及びBgl IIで消化した。簡単に言えば、DNAを、100mMのNaCl、10mMのトリス−HCl、pH7.7、10mMのMgCl、1mMのDTT、100μg/mlのウシ血清アルブミン(BSA)、10単位のSau3A、及び10単位のBgl II(ストラタゲン、ラ・ジヨラ、CA)を含む緩衝液と混合した。この溶液を37℃で1時間保った。この制限エンドヌクレシス消化の効率をゲル電気泳動により測定した。
得られた優占種、約500塩基対バンドを分騅し、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、マニアチズら、編集、コールド・スプリング・ハーバー、NY(1982年)に記載された操作に従ってアガロースゲルで精製した。DNAを、Molecular Cloc−ing:A Laboratory Manual、マニアチスら、編集、コールド・スプリング・ハーバー、NY(1982年)に記載された方法に従って電気溶出によりアガロース薄片から精製した。電気溶出したDNAをフェノール抽出、その後のエタノールによる沈殿により精製した。
変異体S遺伝子を、制限エンドヌクレアーゼHind III及びBamH Iで前もって消化されたpブルースクリプトKS+(ストラタゲン)に挿入した。簡単に言えば、pブルースクリプトKS+を、100mMのNaCl、10mMのトリス−HCl、pH7.7、10mMのMgCl、1mMのDTT、100μg/mlのBSA、40単位のBamH I及び40単位のHind III(ストラタゲン)を含む緩衝液と混合した。この溶液を37℃で1時間保った。pブルースクリプトKS+を含む溶液を、その後、トリス−HCl、pH8.0を0.1Mの最終濃度まで添加することによりpH8.0に調節した。子ウシの腸アルカリホスファターゼ(ストラタゲン)5単位を、この溶液に添加し、その溶液を37℃で30分間保った。その後、子ウシの腸アルカリホスファターゼを、その溶液を65℃で10分間保つことにより失活した。その後、pブルースクリプトKS+を、フェノール抽出、その後のエタノールによる沈殿により精製した。その後、制限エンドヌクレアーゼで清浄したpブルースクリプトKS+を、10mMのトリス−HCl、pH8.0及び1mMのEDT、Aを含む溶液中で再懸濁した。
変異体S遺伝子を、Hind III及びBamH I制限エンドヌクレアーゼによる消化により上で調製されたpブルースクリプトベクターに挿入(連鎖)した。簡単に言えば、Hind III及びBamH Iで前もって切断されたpブルースクリプトベクター1μlを、上で調製された変異体S遺伝子インサート1μl、0.66Mのトリス−HCl、pH7.6、50mMのMgCl、50mMのジチオスレイトール(DTT)を含む緩衝液1μl並びに10mMのATP及び0.5μl(4単位)のT4DNAリガーゼ(ストラタゲン)を含む溶液1μlと混合した。この溶液を37℃で1時間保った。
その連鎖混合物を、製造業者の指示に従ってXL1ブルー細胞(ストラタゲン)中で形質転換した。
上記のクローニング工程の正確度をDNA配列決定により確かめた。
B.選択性V 形質発現ベクター構成
暗号DNA同族体を含まない形質発現ベクターに対して選択する能力を付加するために、サプレッサーtRNA遺伝子を実施例9で調製されたV形質発現ベクターに挿入した。選択性V形質発現ベクターを、サプレッサーtRNA遺伝子及びデカペプチドtagに関して暗号化するDNA配列を含む合成DNA配列を、制限エンドヌクレアーゼXho I及びEcoR Iで前もって開裂された実施例9で調製したV形質発現ベクターに挿入することにより調製した。
サプレッサー遺伝子及びデカペプチドtagに関して暗号化するポリヌクレオチド配列を含む合成DNA配列を、互いにハイブリッドを形成し第18A図に示された二本鎖合成DNA配列を形成する20〜40の塩基の一本鎖ポリヌクレオチドセグメントを設計することによりつくった。個々の一本鎖ポリヌクレオチドを表5に示す。
Figure 2007175058
ポリヌクレオチド926、927、928、929、930、931、AB23及び971を、70mMトリス−HCl(pH7.6)、10mM MgCl、5mM DTT、10mM2ME、及び1mlあたり500μgのBSAを含有する溶液に各ポリヌクレオチド(0.1μg/μl)1.0μl及びTポリヌクレオチドキナーゼ20単位を加えることによりキナーゼ化した(were kinased)。溶液を37℃で30分保持し、ついで65℃で10分保つことにより反応を停止させた。
得られた(the required)ポリヌクレオチドをアニール化して図18Aに示す合成DNA配列を形成させた。手短かに述べると(Briefly)、以下のポリヌクレオチドの溶液を1/10容量の20.0mMトリス−HCl(pH7.4)、2.0mM MgCl及び50.0mM NaClを含有する溶液と混合した:ポリヌクレオチド926、927、928、929、930及び931を2.5μg/ml含有する別個の溶液5μl;キナーゼ化されていないポリヌクレオチドAB24及びキナーゼ化されたポリヌクレオチドAB23を2.0μg/ml含有する別個の溶液4μl;キナーゼ化されたポリヌクレオチド971及びキナーゼ化されていないポリヌクレオチド970を1.0μg/ml含有する別個の溶液2μl。
この溶液を70℃に5分加熱し、水の入った500mlビーカー中で1.5時間保持して40℃に冷刧した。この時間中に10のポリヌクレオチドはすべてアニール化し図18Aに示す二本鎖合成DNA挿入物を形成した。上記反応物(46.6μl)のすべてを、50mMトリス−HCl(pH7.5)、7mM MgCl、1mMDDT、1mMアデノシン三リン酸(ATP)及び10単位のT4DNAリガーゼを含有する溶液と混合して連結反応混合物を形成させることによって個々のポリヌクレオチドをお互いに共有結合させて合成DNA挿入物を安定化させた。この混合物を37℃で1時間保ち、ついで溶液を65℃で15分保持することによりT4DNAリガーゼを失活させた。上記連結反応混合物反応物のすべてと10mM ATP及び5単位のT4ポリヌクレオチドキナーゼを含有する溶液6μlとを混合して目的ポリヌクレオチドをキナーゼ化した。この溶液を37℃で30分保持し、ついで溶液を65℃で10分保持してT4ポリヌクレオチドキナーゼを失活させた。かくして、予め制限エンドヌクレアーゼXho I及びEcoR Iで消化したV−発現ベクター(図7)に連結するための完全合成DNA挿入物(図18A)が調製された。
−発現ベクター(図7)は製造者のすすめに従って制限エンドヌクレアーゼXho I及びEcoR Iで消化した。手短に述べると、50μgのV−発現ベクター(38.5μl)、225単位のXho I(Stratagene)及び150単位のEcoR I(Stratagene)を、50mMトリス−塩酸(pH7.7)、10mM MgCl、50mM NaCl及び100μg/mlBSAよりなる一般的な制限エンドヌクレアーゼ緩衝液と混合して消化混合物を形成した。消化混合物を37℃で2時間維持した。
ついで1.0mMトリス−HCl溶液(pH8.0)の添加によって消化混合物をpH8.0に調製し、最終濃度0.1Mとした。この溶液に2.5単位の子牛腸アルカリ性ホスファターゼ(Stratagene)を加え、得られた溶液を37℃で30分維持した。この溶液を65℃で10分維持して子牛腸アルカリ性フォスファターゼを失活させた。ついでV−発現ベクターDNAをフェノール抽出によって精製し、ついでエタノール沈殿させた。ついで制限エンドヌクレアーゼで切断したV−発現ベクターDNAを10mMトリス−HCl(pH8.0)及び1mM EDTAを含有する溶液50μlに再懸濁した。
上記で調製した合成DNA挿入物を制限エンドヌクレアーゼで切断したV−発現ベクターに挿入した。手短に述べると、Xho I及びEcoR Iで切断したV−発現ベクター1μg、合成DNA挿入物(0.5μg)2μl及びT4DNAリガーゼ(Stratagene)0.5μl(4単位)を66mMトリス−HCl(pH7.6)、5.0mM MgCl、5.0mM DTT及び1.0mM ATPを含有する溶液と混合して連結混合物を生成させた。連結混合物を37℃で2時間維持した。ついで連結混合物を製造者の指示に従ってStratageneから入手し得るギカパックIIゴールドパッキングエキストラクト(Gigapack II Gold packing extract)を用いてパッケージした(was packaged)。ついでパッケージした連結混合物をXL Iブル−セル(XL I blue cells)(Stratagene)上に置いた。
個々のラムダファージプラークを、合成DNA挿入物中に含まれたポリヌクレオチド(polynucleotides)とハイブリッドした個々のプラーク(plaques)をCurreut Protocols in Molecular Biology(分子生物学における最近のプロトコル)、Ausubol ら編、ジョンウィリーアンドサンズ、ニューヨーク(1987)に記述された方法に従って選択することによって、DNA配列決定のために、選択した。選択し得るV−発現ベクターを図19Aに示す。
C.選択し得るV −発現ベクターの構築
をコード化するDNAを含有しない発現ベクターに相同体を選択する能力を付加するために、実施例11で調製したV−発現ベクター中にサプレッサーtRNA遺伝子を挿入した。制限エンドヌクレアーゼSac I及びXba Iで予め切断した、実施例11で調製したV−発現ベクター中にサプレッサーtRNA遺伝子を含有する合成DNA配列を挿入することにより選択し得るV−発現ベクターを調製した。
サプレッサーtRNA遺伝子を含有する合成DNA配列は、互いにハイブリットして図18Bに示す二本鎖合成DNA配列を形成する、20−40塩基の一本鎖ポリヌクレオチド断片を設計することによって構築した。個々の一本鎖ポリヌクレオチドを表5に示す。
ポリヌクレオチド926、927、928、929、930、972及び975を、各ポリヌクレオチド(0.1μg/μl)1.0μl及び20単位のT4ポリヌクレオチドキナーゼを70mMトリス−HCl(pH7.6)、10mM MgCl、5mM DTT、10mM2ME、100μg/mlBSAを含有する溶液に加えることによってキナーゼ化した。この溶液を37℃で30分維持し、ついで溶液を65℃で10分維持することにより反応を停止させた。
得られたポリヌクレオチドをアニール化して図18Bに示す合成DNA配列を形成させた。手短かに述べると、以下のポリヌクレオチド溶液を20.0mMトリス−HCl(pH7.4)、2.0mM MgCl及び50.0mM NaClを含有する1/10容積の溶液と混合した:キナーゼ化したポリヌクレオチド926、227、928、929、930及び931を2.5μg/ml含有する別個の溶液5μl;キナーゼ化されていないポリヌクレオチド974及び973を2.0μg/ml含有する別個の溶液2μl;キナーゼ化されたポリヌクレオチド972及び975を2.0μg/ml含有する別個の溶液2μl。
この溶液を70℃で5分加熱し、ついで水の入った500mlビーカー中で1.5時間保持して40℃に冷却した。この時間内に10のポリヌクレオチドはすべてアニール化して図18Bに示す二本鎖合成DNA挿入物を形成した。上記反応物(42.2μl)のすべてを、50mMトリス−HCl(pH7.5)、7mM MgCl、1mM DDT、1mMアデノシン三リン酸(ATP)及び10単位のT4DNAリガーゼを含有する溶液と混合して連結反応混合物を形成させることによって個々のポリヌクレオチドをお互いに共有結合させて合成DNA挿入物を安定化させた。この混合物を37℃で1時間保ち、ついで溶液で65℃で15分維持してT4DNAリガーゼを失活させた。上記連結反応混合物反応物のすべてと10mM ATP及び5単位のT4ポリヌクレオチドキナーゼを含有する溶液6μlとを混合して目的ポリヌクレオチドをキナーゼ化した。この溶液を37℃で30分保持し、ついで溶液を65℃で10分保持してT4ポリヌクレオチドキナーゼを失活させた。かくして予め制限エンドヌクレアーゼSac I及びXba Iで消化したV−発現ベクター(図9)に連結するための完全合成DNA挿入物(図18B)が用意された。
−発現ベクター(図9)は製造者のすすめに従って制限エンドヌクレアーゼSac I及びXba Iで消化した。手短かに述べると5.0μgのV−発現ベクター(30.5μl)、50単位のSac I(Stratagene)及び50単位のXba I(Stratagene)を、10mM トリス−HCl(pH7.7)、10mM MgCl、100mM NaCl及び100μg/mlBSAよりなる一般的な制限エンドヌクレアーゼ緩衝液と混合して消化混合物を形成した。消化混合物を37℃で2時間維持した。
ついで1.0mMトリス−HCl溶液(pH8.0)の添加によって消化混合物をpH8.0に調整し、最終濃度0.1Mとした。この溶液に2.5単位の子牛腸アルカリ性ホスファターゼ(Stratagene)を加え、得られた溶液を37℃で30分維持した。この溶液を65℃で10分維持して子牛腸アルカリ性フォスファターゼを失活させた。ついでV−発現ベクターDNAをフェノール抽出によって精製し、ついでエタノール沈殿させた。ついで制限エンドヌクレアーゼで切断したV−発現ベクターDNAを10mMトリス−HCl(pH8.0)及び1mM EDTAを含有する溶液50μlに再懸濁した。
上記で調製した合成DNA挿入物を制限エンドヌクレアーゼで切断したV−発現ベクターに挿入した。手短かに述べると、Sac I及Xba Iで切断したV−発現ベクター1μg、合成DNA挿入物(0.5μg)2μl及びT4DNAリガーゼ(Stratagene)0.5μl(4単位)を66mMトリス−HCl(pH7.6)、5.0mM MgCl、5.0mM DTT及び1.0mM ATPを含有する溶液と混合して連結混合物を生成させたた。連結混合物を37℃で2時間維持した。ついで連結混合物を製造者の指示に従ってStratageneから入手し得るギガパックIIゴールドパッキングエキストラクトを用いてパッケージした。ついでパッケージした連結混合物をXL Iブルーセル(Stratagene)上に置いた。
個々のラムダファージプラークを、合成DNA挿入物中に含まれたポリヌクレオチド(polynucleotides)とハイブリッドしたプラーク(plaques)をMolecular Cloning:A Laboratory Manual(分子クローニング:実験室指針)、Maniatisら編、Cold Spring Harbor、ニューヨーク(1989)に記述された方法に従ってスクリーニングすることによって、DNA配列決定のために、選択した。選択し得るV−発現ベクターを図19Bに示す。
D.選択し得るV −及びV −発現ベクターの構築
実施例17Bで調製したV−発現ベクターをそれがXho IまたはSpe I制限エンドヌクレアーゼ部位を含まないように修飾する。このベクターの修飾は1セットのポリヌクレオチド及び実施例17Bに記述した方法と同様な方法を用いて達成する。
実施例17Cで調製したV−発現ベクターをそれがSac IまたはXba I制限エンドヌクレアーゼ部位を含有しなくなるように修飾する、このV−発現ベクターの修飾は1セットのポリヌクレオチド及び実施例17Cに記述した方法と同様な当業界で周知の方法を用いて達成する。修飾したV−発現ベクターと修飾したV−発現ベクターを組み合わせて選択し得るV−及びV−発現ベクターを生成させる。手短かに述べると、修飾したV−発現ベクターを制限エンドヌクレアーゼEcoR I及びHind IIIで酵素製造業者によって推奨された条件を用いて消化し、他方修飾したV−発現ベクターを制限エンドヌクレアーゼEcoR I及びMlu Iで消化する。制限エンドヌクレアーゼで切断したV及びV−発現ベクターを標準的技術を用いて連結して図20に示す選択し得るV−及びV−発現ベクターを形成させた。
−及びV−発現ベクター(vector)は2つのサプレッサーtRNA遺伝子を含有しており、1つはVDNA相同体で代替されており、他はVDNA相同体で代替されている。従って、ベクターがVとVDNA相同体の両方を含有する場合には、そのベクターはV及びV含有ベクター(vector)が適当な選択条件下にファージプラークを生じさせることを可能にするサプレッサーtRNA遺伝子を含有していない。
E.DNA相同体の選択し得るDNA発現ベクターへの挿入
実施例5で調製したV及び/またはVをコードするDNA相同体を提供された制限エンドヌクレアーゼ部位を用いてV及びV発現ベクター、V発現ベクターまたはV発現ベクターに挿入する。V−コードDNA相同体は代表的には提供されたXho I及びSpe I制限エンドヌクレアーゼ部位(図20)中に標準的手法を用いて挿入する。V−コードDNA相同体は代表的には提供された制限エンドヌクレアーゼ部位(図20)に挿入する。従って、選ばれた特定の発現ベクターによって、ここに記述した方法はV−コードDNA相同体単独、V−コードDNA相同体単独、またはV及びVDNA相同体を含有する発現ベクターを生成させる。
−コードDNA相同体をまず発現ベクターに挿入し、ついでVDNA相同体を挿入することができる。別法として、V−コード相同体をまず挿入し、ついでV−コード相同体を挿入できる。いずれの挿入順序もV−コードDNA相同体のライブラリーとV−コードDNA相同体のライブラリーのランダム組換えを可能にする。V相同体をV+V発現ベクターに挿入した後、この発現ベクターを増殖させてより多くのV含有発現ベクターを生成させることができる。ついでV−コードDNA相同体をV及びV発現ベクターに挿入できる。これらの手順のいずれも大きな組合せライブラリーの生産を可能にする。
F. 及び/またはV DNA相同体含有ファージの選択
最終ライブラリー中に存在する、V及び/またはVDNA相同体を含有しない発現ベクターの数を減ずるために強力な選択系を用いる。この選択系は優性ラムダS遺伝子突然変異をV及び/またはV発現ベクター中に存在するサプレッサーtRNAと組み合わせる。発現ベクター中にサプレッサーtRNAが存在すると、突然変異ラムダSタンパク質が生産されて感染菌体(infected cell)の溶菌(lysis)を防止し、それによってファージプラークの生成を防止する。DNA相同体がサプレッサーtRNAに代替すると、発現ベクターはファージプラークを生成させ得る。V及び/またはVを検出するには、V及び/またはV発現ベクターはファージプラークを生産しなければならない。なぜなら、プラークの生産がない場合には、免疫学的または結合アッセイを用いて検出するに十分な発現されたV及びVがないからである。従って、V及び/またはVを含有しないファージは検出されない。この選択を達成するのに、実施例17Aで生産した変異体S遺伝子プラスミドを含有する適当な宿主細菌菌体を目的とする発現ベクターライブラリーで感染させる。サプレッサ−tRNA遺伝子を有しない発現ベクター、すなわちDNA相同体を含有する発現ベクターがファージプラークを生産する。
18.ファージにおける免疫グロブリンレパートリーの大きな組合せのライブラリーの生成(generation)
、V、F及びFab配列の発現に通したベクターを図7及び9に図示する。前述の如く、これらのベクターはラムダZapを、多重クローニング部位に合成オリゴヌクレオチドを挿入することにより修飾することによって構築した。ベクターはクローニング部位及び発現部位の側面に位置するNot I及びEcoR I制限部位に関し反対称となるように設計した。下記に示すごとく、バクテリオファージのような線状ベクター中の制限部位の配置における反対称はL鎖を発現するライブラリーをH鎖を発現するライブラリーと結合して組合せのFab発現ライブラリーを構築するのを可能にする系の本質的特徴である。ラムダZap II V II(図9)はL鎖断片のためのクローニングベクターとして役立つよう設計されており、ラムダZap II V(図7)はライブラリー構築の初期工程におけるH鎖配列のためのクローニングベクターとして役立つよう設計されている。これらのベクターは、各末端に移入された特定の制限部位を有する、PCR増幅の生産物を効率的にクローン化するよう設計されている。
A.抗体断片のPCR増幅
増幅された生産物の末端に制限部位を移入するオリゴヌクレオチドを有する脾臓細胞から単離されたmRNAのPCR増幅をFd及びカッパ鎖配列を含むH鎖配列をクローン化し、発現するのに用いることができる。これらの増幅に用いられるオリゴヌクレオチドプライマーを表1及び2に示す。これらのプライマーはV配列の増幅のために実施例5で成功裏に用いられたプライマーと類似である(analogous)。H鎖増幅のための5′プライマーのセットはVを増幅するのに以前に用いたものと同じであり、L鎖増幅のための5′−プライマーは同様な原則に基づいて選ばれた;Sastryら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,8G:5728(1989)及びOrlandi ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,8G:3833(1989)。H(IgG1)及びL(k)鎖配列の独特の3′プライマーはH−L鎖ジスルフィド結合の生成に関与するシステインを含むように選んだ。この段階ではラムダL鎖を増幅するプライマーは構築されていなかった。なぜならラムダL鎖はネズミの抗体の小さな分画しか構成しないからである。さらに、J(結合(joining))領域(アミノ酸128)におけるmRNAに相補的な3′プライマーと加工されたタンパク質の保存されたN−末端領域にある1次鎖cDNA(first strand cDNA)に相補的な独特な5′プライマー(5′primers)の1セットを用いてF断片を構築した。制限エンドヌクレアーゼ認識配列をプライマーに入れて、発現のために設定された読取り枠において増幅された断片をラムダファージベクター中にクローニングするための準備をする(allow for)。

B.ライブラリーの構築
組合せライブラリーの構築は2工程で行った。最初の工程では、別々のH及びL鎖ライブラリーをそれぞれラムダZap II V及びラムダZap II V II中に構築した。第2の工程で、これら2つのライブラリーを各ベクター中に存在する反対称EcoR I部位で結合させた(were combined)。これによりH及びL鎖を共に発現し得るクローンのライブラリーが得られる。現実の組合せはランダムであり、親動物中のB細胞集団中に存在する組合せを反映する必要はない。キーホールリンプレットヘモシアニン(KLH)と複合化させた式I(図13)のp−ニトロフェニルホスホンアミデート(NPN)抗原1で予め免疫化した129Gix+マウスの脾臓から単離したmRNAのPCR増幅によって得られたDNAから、ラムダZap II V発現ベクターを用いてH鎖配列のライブラリーを作出した。NPN−KLH複合体はジメチルホルムアミド中式1(図13)のNPN2.5mgを含有する250μlの溶液と0.01Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)中にKLH2mgを含有する750μlの溶液とを混合して調製した。すなわち2つの溶液を、回転する攪拌棒による攪拌下のKLH溶液にNPN溶液を徐々に添加することによって混合した。ついで混合物を同じ攪拌下に4℃で1時間維持して複合化を進行させた。複合化NPN−KLHを非複合化NPN及びKLHからセファデックスG−25を用いるゲル濾過によって単離した。単離したNPN−KLH複合体を実施例2に記述した如きマウスの免疫化に用いた。
上述の免疫化で得られた脾臓mRNAを単離し、ラムダZap II V発現ベクターを用いてVの遺伝子配列の1次ライブラリー(primary library)を作出するのに用いた。1次ライブラリーは1.3×10のpfuを含んでおり、Fd配列を発現するクローンのパーセンテージを決定するデカペプチド標識の発現についてスクリーニングした。このペプチドの配列はFd(またはV)断片のベクターへのクローニングに続く発現のためのフレーム中にのみ存在する。ライブラリー中のクローンの少なくとも80%がデカペプチド標識の免疫検出に基づくFd断片を発現する。
H鎖と同様にしてL鎖ライブラリーを構築した。このL鎖ライブラリーは2.5×10のメンバーを含有することが判明した。抗カッパ鎖抗体を用いるプラーク配列決定はライブラリーの60%が発現されるL鎖挿入物を含むことを示した。この比較的小さな、挿入物のパーセンテージはSac I及びXba Iでの切断後のベクターの不完全な脱リン酸化に由来すると考えられる。
一旦得た後、この2個のライブラリーはEcoR I部位でそれらを交叉させることにより組合わせライブラリーを構築するのに用いられた。この交叉を達成するため、DNAははじめに各々のライブラリーから精製された。L−鎖ライブラリーはMlu I制限エンドヌクレアーゼにより切断され、得られる5′末端は脱リン酸され、生成物はEcoR Iで消化された。この工程はベクターの左アーム(arm)を数個の断片に切断したが、L−鎖配列を含む右アームはそのまま残存した。
同様に、重い鎖ライブラリーのDNAはHind IIIで切断され、脱リン酸化され、及びEcoR Iにより切断され、右アームを破壊したがH−鎖配列を含む左アームはそのまま残存した。このようにして調製されたDNAは次いで結合され、(Combined)、連結(ligate)された。連結後、L−鎖を含むクローンの右アームとH−鎖を含むクローンの左アームとの組合わせから得られたクローンのみが生存可能なファージを再構築した。連結及びパッケージングの後、2.5×10のクローンが得られた。これはNPNに対するアフィニティーを有するクローンを同定するためにスクリーンされた、組合せFab発現ライブラリーである。
L−及びH−鎖断片を共に発現(co−express)するファージクローンの頻度を決定するために、L−鎖の重複リフト(lift)、H−鎖及び組合せライブラリーは、L−及びH−鎖発現のために上述のようにスクリーンされた。約500の組換えファージのこの研究において、約60%がL−及びH−鎖蛋白質を共に発現した。
C.抗原結合
すべての3種のライブラリー、L−鎖、H−鎖及びFabは、それらが、NPNを結合する抗体断片を発現する組換えファージを含むかどうか決定するためにスクリーンされた。代表的な工程においては、30,000ファージがプレートされ(plated)、ニトロセルロースとの重複リフトが125I標識BSAに連結された(coupled)NPNへ結合するためにスクリーンされた(第15図)。L−鎖ライブラリーからの80,000組換えファージ及びH−鎖ライブラリーからの同数の重複スクリーンは、抗原に結合するいずれのクローンも同定しなかった。これと対照的に、Fab発現ライブラリーからの同様の数のクローンのスクリーンは、NPNに結合した多くのファージプラークを同定した(第15図)。この観測は、多くのH−鎖がL−鎖と組み合わされて抗原に結合する条件下では同じH−鎖又はL−鎖のみが得られないことを示唆する。したがって、NPNの場合、多くのH−及びL−鎖が特別なL−及びH−鎖に各々結合されたとき、多くのH−及びL−鎖は抗原に単に結合するものと信じられている。
数多くのクローンをスクリーンする能力を測定するために、及び組合せライブラリーにおける抗原結合クローンの頻度についてより定量的な予測を得るために、百万のファージプラークがスクリーンされ及び抗原に結合した約100のクローンが同定された。NPNに結合すると信じられている6クローンについて、正の及び約20サランディング(surrounding)バクテリオファージプラークを含むプレートの領域が「コア」され、リプレートされ(re−plated)、及び重複リフトともにスクリーンされた(第15図)。予測されたとおり、20個のファージのうち約1個が特異的に抗原に結合した。負と信じられていた、プレートされたファージの領域の「コア」はリプレートの際に正を与えなかった。
抗原−抗体相互作用の特異性を決定するために、第16図に示されるように、抗原結合は遊離の標識しない抗原との競合に付された。競合研究は個々のクローンが抗原アフィニティーに基づいて識別できたことを示した。結合の抑制を競合させるために要求される遊離の抗原の濃度は10−100×10Mの間で変動し、このことは発現Fab断片がナノ(nano)モル範囲内で結合定数を有することを示唆している。
D.クローンの組成及びそれらの発現生成物
実施例18Cで述べたようなNPNを結合することができる蛋白生成物の特性化(characterization)の調製において、H−及びL−鎖遺伝子を含むプラスミドがM13mp8ヘルパーファージを用いておおよそ「コアされた」(Cored)バクテリオファージプラークから削り取られた。削り取られたプラスミドのマッピングはH−及びL−鎖配列の挿入と一致する制限パターンを立証した。クローンの1つの蛋白生成物はエライザ(ELISA)及びウェスタンブロッティングにより分析され、NPN結合蛋白質の組成を確立した。LPTG誘導(induction)に引き続く細菌の上清は濃縮され、ゲルロ過に付された。分子量範囲40〜60kDの分画がプールされ(pooled)、濃縮され及び更にゲルロ過分離に付された。第17図に示されるように、溶離分画のエライザ分析は、NPN結合が分子量50kDの蛋白質と結合しており、それはH−及びL−鎖を含むことが免疫検出により示されることを立証した。非還元性条件下濃縮細菌の上澄調製物のウェスタンブロット(図示されない)はアンチ−デカペプチド抗体とともに展開された。これは、50kDの分子量の蛋白質バンドを示した。これらの結果は、H−及びL−鎖が共有結合しているFab断片のファンクション(function)であるNPN結合と一致している。
E.生体内のレパートリーの性質対ファージ組合せライブラリーの性質の比較
この実施例においては、わずかに限定された数のプライマーがEd配列のPCR増幅のために用いられるので、比較的制限されたライブラリーが調製された。このライブラリーはカッパ/ガンマ1配列を発現するクローンのみを含むことが予測されている。しかし、抗体クラスはサブクラスを増幅するために追加的プライマーを加えることができるので、これは本質的な方法の制限とはならない。この制限にもかかわらず、我々は数多くの抗原結合クローンを単離することができる。
この研究から生じる中心的な問題は、上記のように調製されたファージライブラリーを生体内の抗体レパートリーと、大きさ、多様性の特徴及びアクセスのし易さの諸点においていかにして比較するかということである。
哺乳類の抗体のレパートリーの大きさを判断することは困難であるが、抗原特異性とは異なる10〜10程度の数値がしばしば引用される。幾分が控えめに後述されるように、この大きさかまたはこれより大きいファージライブラリーを現行の方法の改良によって容易に構築することができる。事実、初期の組合せライブラリーが一旦構築された後、H−及びL−鎖は組み換えられ、例外的に大きい数のライブラリーを得ることができる。
原理上、ナイーブな(naive)(非免疫の)生体内のレパートリー及びこれに対応するファージライブラリーはH−及びL−鎖のランダムな組合せを含むという点で同様であると予測される。しかし、異なるファクターが生体内レパートリー及びファージライブラリーにより発現される多様性を制限する役割を果たすであろう。例えば、耐性(tolerance)のような生理的な変化(modifica−tion)が生体内レパートリーからのある種の抗原特異性の発現を制限するであろうがこれらの特異性はまだファージライブラリーにおいて現われるかもしれない。一方、クローニング工程におけるバイアス(bias)が制限をファージライブラリーの多様化導くかもしれない。例えば、刺激されたB−細胞により発現される配列のためのmRNAの表現(representation)は、高レベルの発現のために、刺激されない細胞のそれらに優先するものと予測し得る。異なるンース(source)組織(例えば、末梢血液、骨髄又は局所のリンパ節)及びPCRプライマー(例えば、異なる抗原クラスを増幅すると予測されるもの)は、異なる多様性特性を有するライブラリーをもたらすかもしれない。
生体内のレパートリーとファージライブラリー間の別の相違は、前者がH−及びL−鎖の結合後の体腔(somatic)変異によるアフィニティー成熟を利用できるのに対して、後者は成熟したH−及びL−鎖をランダムに結合することである。特定の生体内レパートリーに由来する十分に大きいファージライブラリーであれば、元の成熟したH−及びL−鎖が組み換えられるであろう。この新しい技術の潜在的な利益の一つは単一の高度に多様な属に通有な(generic)ファージライブラリーが生じることにより免疫の必要性を回避することであるため、体腔(somatic)変異及びクローン選択の欠損を補填するための配列を至適化する方法を有することは有用であろう。本発明の方法においては3種の方法が容易に適用し得る。第1に、飽和突然変異生成(saturation mutagenesis)がCDR’s上で行なわれるかもしれず、及び得られたFabsは増加した機能のために分析され得る。第2に、抗原を結合するクローンのH−又はL−鎖が、組合せライブラリーを構築するのに用いたのと同様の操作により、全体のL−又はH−鎖ライブラリーと組み換えられ得る。第3に、上述の2種の手順の反復サイクルは、イムノグロブリンのアフィニティー又は触媒特性をさらに至適化するために行い得る。後の2種の操作がB−細胞クローン選択において許容されないことは、ここに述べられる方法が実際に至適な配列を同定する能力を増加するかもしれないことを示唆していることは留意されるべきである。
アクセスは、生体内抗原レパートリーとファージライブラリーとを比較するのが興味深い第3の領域である。実際上、ファージライブラリーはかなりアクセスし易い。スクリーニング方法は、人間がプレート1個当たり少なくとも50,000のクローンを調べ1日当たり10の抗体を容易に検査し得ることを可能にする。このファクターのみで、ハイブリドーマ技術をここに記載される方法に代えることは勇気づけられるべきである。最も強力なスクリーニング方法は、選択可能なマーカーを、栄養要求性細菌株の複製に必要とされる脱離基や触媒によって不活性化され易い毒性置換基のような抗原へ導入することによって達成されるかもしれない、選択を利用する。生体内抗原レパートリーは結合アフィニティーに基づく選択である免疫を通してのみアクセスされるという事実に関連する、更なる有利性も存在する。このファージライブラリーは同様に制限されない。例えば、触媒特性とともに抗体を同定する唯一の一般的な方法は抗体の遷移状態類似体へのアフィニティーに基づく前選択(pre−selection)による。このような制限は、触媒反応が原理上直接的に分析し得る生体外ライブラリーに適用されない。数多くの抗体を機能のために直接的に分析する能力は機構がよく解明されていないかまたは遷移状態類似体の合成が困難である、触媒の選択を可能にするかもしれない。触媒反応の分析は、合成類似体に悪化させる(pejorative to)反応機構のためのスクリーニング操作のバイアス(bias)を直接除去する。したがって、一定の化学変換の多重反応経路を同時に解明することが可能となる。
ここに開始された方法は、多くの重要な点においてそのままの(全体の)抗体と明らかに異なるFab断片の生成を記載している。疑いなく、一価のFab抗原バインダー(binder)を有することにおいて、アフィニティーの損失があるが、これは適切なきつい(tight)バインダー(binder)の選択によって補填できる。診断法やバイオセンサー等の多くの用途においては、一価のFab断片を有することが好ましいかもしれない。Fc効果器(effector)機能が要求される用途においては、H−鎖遺伝子を拡張し及び哺乳細胞内でグリコシル化された(glycosylated)抗体全体を発現する技術は既に存在する。
ここに提示された考えは、抗体の同定及び評価における重要な点(bottle neck)である。単一の特異性(mono−specificity)を有しつつ、従来可能であったより、少なくとも3倍多いクローンを構築しスクリーンすることが可能になった。この方法の潜在的な用途は棊礎研究及び応用科学に及ぶ。
上記の記述は本発明の例として意図されたものであり、本発明を制限するものではない。本発明の真の精神及び範囲から逸脱せずに多くの変更及び改良ができる。
図は本公開の一部を構成している。
基本的構造を示す免疫グロブリン分子の模式図である。重鎖の円形領域は可変領域(V)を表わしており、その領域の生物学的活性(リガンド結合)部分を含むポリペプチドおよびそのポリペプチドをコードする遺伝子は本発明の方法で生産される。配列L03,L35,L47およびL48はどの既存のサブグループにも分類し得なかった。 ヒトIgG(IgG1サブクラス)のH鎖の模式図。番号付けは左のN端から右のC端の方向である。各々約60個のアミノ酸残基にまたがる鎖内ジスルフィド結合(S−S)を含む4個のドメインの存在に注意せよ。記号CH0は炭水化物を意味している。重(H)鎖のV頷域(V)は3つの超可変CDRをもつ点でVに似ている。 ヒトK鎖の模式図(パネル1)。番号付けは左のN端から右のC端への方向である。V、およびCドメイン中ほぼ同数のアミノ酸残基にまたがる鎖内ジスルフィド結合(S−S)に注意せよ。パネル2はVドメイン中の相補性決定領域(CDR)の位置を示している。CDRの外側のセグメントはフレームワークセグメント(FR)である。 ホスホリルコリンに特異的な19個のマウスモノクローナル抗体のV領城のアミノ酸配列。HPとはそのたんぱく質がハイブリドーマの産物であることを表わしている。その他はミエローマたんぱく質である(ギアハート(Gearhart)等、Nature,291,29,1981より)。 FITCで免疫化したマウスの脾臓由来のmRNAのPCR増巾の結果を示している。レーンR17〜R24はユニークな5′プライマー(2〜9、第1表)および3′プライマー(12、第1表)を用いた増巾反応に対応しており、R16はイノシンを含む5′プライマー(10、第1表)およひ3′プライマー(12、第1表)を用いたPCR反応を示している。ZおよびR9は増巾のコントロールである。コントロールZはプラスミド(PLR2)由来のVの増巾を示しまたR9はプライマー11および13(第1表)を用いた脾臓のmRNAの不変領域の増巾を示している。 ヌクレオチド配列はラムダZAP中のPCR増巾したV領域のcDNAライブラリー由来のクローンのものである。N末端の110塩基をリストした。下線のヌクレオチドはcDR1(相補的決定領域)を示している。 ラムダZap II V(パネルA)およびラムダZapV(パネルB)発現ベクターを作製するためにラムダZAPに挿入した合成DNA挿入物の配列。VおよびVコードDNAホモログを発現するためにこのベクターに必要とされるものにはシャインダルガルノリボゾーム結合部位、モウバ(Mouva)等(J.Biol.Chem.,255,27,1980)によって報告されている細胞周辺腔に発現たんぱく質を送り出すのに必要なリーダー配列および発現ベクターにVおよびVホモログを結合するのに用いる種々の制限酵素部位が含まれる。またV発現ベクター配列には可変領域重鎖(Vバックボーン)に典型的に見られるアミノ酸をコードする短かい核酸配列を含む。このVバックボーンはXho IおよびSpe Iに機能的に結合するVDNAホモログと同様に直ぐ上流に正しい読み枠で存在する。VDNAホモログはNco IおよびSpe I制限酵素部位のところでV配列(パネルB)と機能的に結合しており、したがってVバックボーン領域はVDNAホモログがVベクターに機能的に結合したとき欠失する。 細菌発現ベクターラムダZap II V(V発現ベクター)の主要な特徴が示されている。第6図からの合成DNA配列がラムダZap II由来のTポリメラーゼプロモーターとともに上に示してある。ラムダZap II中の挿入物の方向が示されている。VDNAホモログはXho IおよびSpe I制限部位に挿入され、転写により、クローニング部位の丁度3′側に位置するデカペプチドのエピトープ(tag)を生成成する。 細菌発現ベクターラムダZap IIV(V発現ベクター)の主要な特徴が示されている。第6図に示した配列はラムダZap IIのTポリメラーゼプロモーターと一緒に上に示してある。ラムダZap中の挿入物の方向が示してある。VDNAホモログはショート(Short)等(Nucleic Acids Res.16,7583−7600,1988)によって報告されているインビボ切除操作によって作製されたファージミドに挿入される。VDNAホモログはこのファージミドのNco IおよびSpe Iクローニング部位に挿入する。
Figure 2007175058
ラムダZap IIに挿入してラムダVII発現ベクターを作る合成DNAセグメントの配列。種々の特徴および制限エンドヌクレアーゼ認識部位が示してある。 およびVを発現するためのベクターが別々におよび合せて示してある。これらのベクターの種々の基本的要素が示してある。軽鎖ベクターあるいはV発現ベクターはV発現ベクターと合せて発現のために同じプロモーターと機能的に結合する両VおよびVを含む組合せベクターを作製し得る。 おおよびVDNAホモログを含む大腸菌から免疫沈殿した標識たんぱく質が示されている。レーン1にはVまたはVDNAホモログを含まない大腸菌から免疫沈殿したバックグランドたんぱく質が示されている。レーン2にはVDNAホモログのみを含む大腸菌から免疫沈殿したVたんぱく質が含まれている。レーン3および4ではVおよびVの両方のDNAホモログを含む大腸菌から免疫沈殿したVたんぱく質とVたんぱく質の共泳動の様子が示されている。レーン5にはVおよびVDNAホモログから発現されるVたんぱく質とVたんぱく質の存在が2つの区別可能なたんぱく質種により示されている。レーン5にはマウス腹水中に存在する抗大腸菌抗体により免疫沈殿するバックグランドたんぱく質が含まれる。 カルボキシアミド基質(式2)を加水分解する抗体を誘導する遷移状態アナログ(式1)。グルタリルスペーサーおよびN−ヒドロキシスクシンイミドリンカー付加物を含む式1の化合物はたんぱく質キャリヤーKLHおよびBSAにハプテンを結合させるのに用いられる形状である。一方式3の化合物はインヒビターである。ホスホナミデートの機能はアミド結合の加水分解の遷移状態の立体−電子的構造の模倣である。 NPNで免疫化したマウスの脾臓mRNAからのFdおよびカッパ領域のPCR増巾を示している。増巾は軽鎖配列(第2表)または重鎖配列(第1表)の増巾に特異的なプライマーとmRNAの逆転写で得られるRNA cDNAハイブリッドを用い例18で述べる方法で行った。レーンF1−F8は8個の5′プライマー(プライマー2−9、第1表)の1つおよびユニークな3′プライマー(プライマー15、第2表)を用いた重鎖増巾反応の産物を示している。5′プライマー(プライマー3−6、および12、第2表)および適当な3′プライマー(プライマー13、第2表)を用いた軽鎖(k)の増巾はレーンF9〜F13に示してある。全てのレーンに見られる700bpのバンドはFdおよびk領域の増巾がうまく行ったことを示している。 抗原結合に関するファージライブラリのスクリーニングが例18Cに従って示されている。Fab(フィルターA,B),重鎖(フィルターE,F)および軽鎖(フィルターG,H)発現ライブラリーの二回のプラークリフトをプレート当り約30,000プラークの密度でNPNと結合した125I標識BSAに対しスクリーニングした。フィルターCおよびDはテキスト中で議論しているように一次フィルターA(矢印)由来のコアのあるポジティブ体の2度にわたる二次スクリーニングを示している。スクリーニングには標準的プラークリフト法を使用した。プラークで感染したXL1ブルー細胞を150mmプレート上、37℃で4時間インキュベートし、10mMイソプロピルチオガラクトシドに浸したニトロセルロースフィルターを重ねることによりたんぱく質の発現を誘導した後このプレートを25℃で8時間インキュベートした。同じ条件を用いた2回目のインキュベーションの際に2枚のフィルターを得た。それからこれらのフィルターをPBS中1%のBSA溶液中1時間でブロックし、その後1%BSA/PBS中NPNに結合した125I標識BSA溶液(2×10cpm ml−1;BSA濃度0.1M;BSA分子当り約15個のNPN)と25℃で1時間振とうしながらインキュベーションした。バックグランドはストックの放射能標識BSA溶液を100,000g15分間の予備遠心および挿入物のないファージを感染させた細菌を含むプレート由来のプラークリフトとこの溶液をプレインキュベーションすることにより減少した。標識後フィルターは一晩のオートラジオグラフの現像前にPBS/0.05%トゥイーン20でくり返し洗浄した。 競合的阻害で示されるように抗原結合の特異性は例18Cで示される。ポジティブプラークからのプラークリフトにインヒビターNPNの濃度を漸次上げながら125I−BSA−NPNを作用させた。この実験で第15図に見られるようなNPN結合に関連する多くのファージを細菌グランド上に直接スポットした(スポット当り約100個)。それからこのプレートにIPTG浸漬フィルターを重ね、25℃で19時間インキュベートした。標識溶液中に種々の濃度のNPNを含めること以外は第15図について先に述べた方法と同様に125I−BSA−NPN中でのインキュベーション前にPSB中1%BSA中でフィルターをブロックした。他の条件および操作は第15図と同様である。中程度のアフィニティーをもつファージの結果は図に2つづつ示してある。同様の結果が有効インヒビター濃度範囲にいくらか差がある他の4つのファージについても得られている。 例18Dに従がい抗原結合たんぱく質の特性が示されている。濃縮し部分的に精製したNPN結合クローンの細菌上清をゲル濾過で分離し各フラクションからの一部を、BSA−NPNでコートしたマイクロプレートに入れた。アルカリホスファターゼに結合した抗デカペプチド(−−−)または抗カッパ鎖(−)抗体のいずれかを添加後発色させた。矢印は既知のFabフラグメントの溶出位置を示している。この結果は抗原結合が重鎖および軽鎖の両方を含む50kDたんぱく質の性質であることを示している。2個のNPNポジティブクローンの単一プラーク(第15図)をピックアップし重鎖および軽鎖挿入物を含むプラスミドを切り出した(19)。L培地500ml培養物に切り出したプラスミドを含む飽和培養物3mlを接種し、37℃で4時間インキュベートした。最終濃度が1mMとなるようにIPTGを添加したんぱく質の誘導を行ない、その培養物を25℃で10時間インキュベートした。細胞上清200mlを2mlにまで濃縮し、TSKG4000カラムにかけた。容出フラクションの50μlをELISAで検定した。ELISA分析ではマイクロプレートをBSA−NPN1μg/mlでコーティングし、50μlのサンプルを50μlのPBS−−トゥイーン20(0.05%)−BSA(0.1%)と混ぜたものを添加した後このプレートを25℃で2時間インキュベートする。PBS−トゥイーン20−BSAで洗浄後、適当な濃度のアルカリホスファターゼと結合したウサギ抗デカペプチド抗体(20)およびヤギ抗マウスカッパ軽鎖(サウザンバイオテク)溶液50μlを加え、25℃で2時間インキュベートした。さらに洗浄後、50μlのp−ニトロフェニルホスフェート(50mM MgClを含む0.1Mトリス(pH9.5)中1mg/ml)を加え、そのプレートを15〜30分間インキュベートしてから405nmのODを測定する。 選択可能なV発現ベクターを作るためにラムダZap II Vに挿入し(パネルA)また選択可能なV発現ベクターを作るために例17に従ってラムダZap II Vに挿入する(パネルB)合成DNA挿入物の配列。 (A)選択可能なV発現ベクターの主要な特徴をパネルAに示す。第18図Aの合成DNA配列の特徴をラムダZap IIのTポリメラーゼプロモーターと一緒に上に示した。ラムダZap II中の挿入物の方向も示してある。VDNAホモログはXho IおよびSpe I制限酵素部位に挿入してある。VDNAホモログはXho IおよびSpe I部位に挿入してあり、その転写はクローニング部位の丁度3′側に位置するデカペプチドエピトープ(tag)を生成する。(B)細菌発現ベクターラムダZap II V(V発現ベクター)の主要な特徴を示す。第6図の合成DNA配列はラムダZap IIのTポリメラーゼプロモーターと一緒に上に示してある。ラムダZap II中の挿入物の方向も示してある。VDNAホモログはXho IおよびSpe I制限酵素部位に挿入されている。VDNAはXho IおよびSpe I部位に挿入されており、その転写はクローニング部位の丁度3′側に位置するデカペプチドエピトープ(tag)を生成する。 およびVの発現を組合せたベクターの1つを示している。これらのベクターの種々の基本的要素が示されている。選択マーカー(Sup F)も示されている。

Claims (11)

  1. 又はV触媒作用性受容体をコードする核酸を生産する方法であって、以下の工程、
    (1)以下の工程により、少なくとも10個の異なるV又はV受容体コードDNA相同体を含有する保存されたV又はV受容体コードDNAのライブラリーを合成する工程、
    (i)保存されたV又はV受容体コードDNAのレパートリーの鎖を分離する工程であって、前記レパートリーが、二本鎖の核酸からなり、それぞれの鎖が、相補鎖にアニール化されたV又はV受容体コード鎖を含有する工程、
    (ii)前記分離された鎖を、第1のポリヌクレオチド合成プライマー及び第2のポリヌクレオチド合成プライマーにより、ポリメラーゼ連鎖反応増幅に適した条件の下で、処理する工程であって、前記第1のポリヌクレオチド合成プライマーのそれぞれが、前記V又はV受容体コード鎖間において保存された配列にハイブリダイズすることができ、また、前記第2のポリヌクレオチド合成プライマーが、前記相補鎖において保存されている配列にハイブリダイズすることができ、前記プライマーが、前記V又はV受容体コード遺伝子レパートリーと異なる複数のV又はV受容体コード相同体の増幅をプライムすることができ、かつ前記処理によって、前記保存された受容体コード遺伝子ライブラリーを調製する、工程、及び
    (2)前記ライブラリーから、触媒作用性受容体をコードするV又はV受容体コード核酸を分離する工程、
    を含むことを特徴とする方法。
  2. 前記保存された受容体コード核酸がVHをコードし、前記保存された受容体コード遺伝子が、Vコード遺伝子であり、かつ前記受容体コードDNA相同体が、VコードDNA相同体である請求項1に記載の方法。
  3. 前記第1のポリヌクレオチド合成プライマーが、免疫グロブリンJ又はフレームワーク領域のヌクレオチド配列とハイブリダイズする請求項2に記載の方法。
  4. 前記第2のポリヌクレオチド合成プライマーが、V免疫グロブリン遺伝子のフレームワーク、リーダー又はプロモーター領域にハイブリダイズする請求項2に記載の方法。
  5. 前記分離が、以下の工程、
    (1)複数の前記異なるVコードDNA相同体を、発現ベクターに、発現のために、作動し得るように結合し、それによって複数の異なるV発現ベクターを形成する工程、
    (2)該発現ベクターと和合性のある宿主細胞の集団を複数の該異なるVH発現ベクターで形質転換して前記VH発現ベクターを含有する形質転換された宿主細胞集団を生産する工程、
    (3)形質転換された集団を、VコードDNA相同体によってコードされた受容体を発現する条件下で培養する工程、
    (4)形質転換された集団のメンバーを、予め選択された配位子と結合し得る受容体の発現についてアッセイし、それによって保存されたVコードDNA相同体を含有する形質転換体を同定する工程、
    (5)工程(4)の同定された形質転換体を集団から分離し、それによって保存されたVコード核酸を生産する工程、
    を含有する請求項2に記載された方法。
  6. 前記宿主細胞が、V分子を発現し、かつ前記特定された形質転換体が、前記予め選択された配位子と結合するFを発現する、請求項5に記載された方法。
  7. 前記合成が、複数の異なる第1のポリヌクレオチド合成プライマーを使用して実施される、請求項1に記載の方法。
  8. 前記発現ベクター分子が、線状DNA発現ベクター分子である請求項5に記載の方法。
  9. 前記発現ベクター分子が、ラムダZap II V分子である請求項8に記載の方法。
  10. 前記ポリヌクレオチド合成プライマーが、予め選択された制限エンドヌクレアーゼ認識部位をコードする請求項3又は4に記載の方法。
  11. 触媒作用性受容体の産生方法であって、以下の工程、
    (1)請求項1又は5に記載された方法によって単離された遺伝子を、適当な発現ベクターに、発現のために作動し得るように結合して、V発現ベクターを形成する工程、
    (2)前記発現ベクターに和合性の宿主細胞を形質転換して、形質転換体を産生する工程、
    (3)前記形質転換体を、前記VコードDNA相同体によってコードされる触媒作用性受容体を発現する条件の下で培養し、もって、前記触媒作用性受容体を培地において産生させる工程、そして
    (4)前記触媒作用性受容体を、前記培地から分離する工程、
    を含有することを特徴とする方法。
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