JP2007169671A - 白金薄膜の形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】酸化シリコンの上に剥離しにくい状態で、平坦性が優れて<111>方向に配向した白金の薄膜が形成できるようにする。
【解決手段】主表面が(100)面とされた単結晶シリコンからなるシリコン基板101を用意し、シリコン基板101の主表面に酸化シリコン層102が形成された状態とする。例えば、熱酸化法により酸化シリコン層102のが形成可能である。また、CVD(化学的気相成長法)により、酸化シリコン層102のが形成可能である。次に、白金ターゲットを用い、加えて酸素ガスを導入したECRスパッタ法により、酸化シリコン層102の上に、遷移層103を介して膜厚150〜200nm程度の白金薄膜104が形成された状態とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、金属酸化物薄膜を利用した不揮発メモリ,圧電素子,及び熱電変換素子などの機能デバイスにおいて電極材料として用いられる白金薄膜の形成方法に関する。
金属酸化物には、圧電性,強誘電性,焦電性,金属−絶縁体相転移などの機能を有するものが多く、これらの物性は,圧電素子、強誘電体メモリ、熱電変換素子など数々の機能デバイスに応用されている。また、これらの金属酸化物の機能は、結晶化されている状態で発現される場合が多い。このような特徴を備える金属酸化物は、電圧を印加して素子を駆動し、また、電流や電圧を測定するなどの目的で、電極部材の上に薄膜として形成して用いられている。
ところが、上記金属酸化物は、薄膜を形成した段階ではあまり結晶化されていない場合が多く、前述した上記機能を発現させるために、形成した金属酸化物の薄膜を高温で焼きを入れて結晶化させることが必要である。例えば、不揮発強誘電体メモリの実用的な強誘電体材料として、Pb(Zr,Ti)O3(PZT)、Bi4Ti312(BiT)、SrBi2Ta29(SBT)などが知られている。これらの材料の薄膜は、有機金属化合物分解法,スパッタ法,レーザーアブレーション法,有機金属化合物気相成長法などの成膜手法により形成可能であるが、形成された段階では結晶性を有さないため、強誘電性を有する結晶形態にするためには、高温でアニール(焼き入れ)する必要がある。
従って、これらのような金属酸化物の薄膜が形成される電極部材に対しては、高融点であること、耐酸化性に優れていることなどが要求され、また抵抗が低いことが要求される。これらの条件を唯一満足する電極材料としては、白金があり、実際に白金よりなる電極部材が広く用いられている。白金以外の金属では、結晶化された金属酸化物薄膜形成の過程で、酸素などの雰囲気で加熱されると酸化してしまうため、金属酸化物薄膜を利用した素子には、白金電極は必須の存在となっている。なお、このように利用される白金電極は、抵抗値を十分に低くする観点から、通常150〜200mm程度の膜厚に形成されて用いられている。また、白金電極薄膜の形成には、これまでイオンビームスパッタ法やDCマグネトロンスパッタ法が標準的に用いられてきた。
ところで、上記金属酸化物を用いた素子を形成する場合、他の素子と集積して用いるなどの点から、シリコン基板が汎用的に用いられている。ただし、シリコンに接して白金の薄膜を形成すると、シリコンとの間でシリサイドが形成される。また、白金結晶とシリコン結晶との格子不整合により、形成される白金薄膜に格子ひずみの応力が働き、白金薄膜が剥離し、また、白金薄膜にひび割れが入るなどの問題が生じる。このため、一般には、シリコン基板の上に酸化シリコンの層が形成された状態とし、この酸化シリコンの層の上に白金薄膜が形成されるようにしている。例えば、マイクロエレクトロニクスやMEMSに使用される白金薄膜は、シリコン基板の表面を熱酸化して形成したシリコン熱酸化膜の上に形成して用いられている。また、CVD(化学的気相成長法)法により、シリコン基板の上に酸化シリコン層が形成可能である。白金と酸化シリコンとは反応しないため、シリサイドが形成されるなどの白金薄膜とシリコンとの界面における問題は、酸化シリコンの層を形成しておくことで解消されるようになる。
しかしながら、白金膜とSiO2の間の密着性は極めて悪いものとされている。たとえ成膜した段階で白金膜が剥離しなくても、この後のプロセスで白金膜の上に厚い金属酸化物薄膜が形成され、またアニールなどが行われると、熱負荷や圧縮応力のために、白金とSiO2の界面で容易に剥離が生じる。この問題の一般的な解決策として、通常10〜20mm程度の厚さのチタンあるいは酸化チタン(TiO2)の層を、接着層としてSiO2上に形成し、この上に白金薄膜が形成されるようにしている(非特許文献1参照)。
H.N.Al-Shareef, et al., "ELECTROFES FOR FERROELECTRIC THIN FILMES", Integrated Ferroelectrics, Vol.3, pp.321-332, 1993. Dong-Yeon PARK, et ar., "Preferred Orientation Controlled Giant Grain Growth of Platinum Thin Films", Jpn. J. Appl. Phys. Vol. 40, pp.L1-L3, 2001.
しかしながら、チタンを含む層を用いた場合、前述した結晶化のアニールの際に、白金薄膜の下層にあるTi原子が容易に白金薄膜中を拡散し、白金薄膜と金属酸化物薄膜の界面に析出することが知られている。このように界面に析出したTiは、強く酸素原子と結びつこうとするため、強誘電体薄膜の中に取り込まれるべき酸素原子を奪う。この結果として、強誘電体薄膜の結晶化に要する温度が高くなる。プロセス温度の低温化が重要な課題である材料、とりわけSBTなどにとっては、チタンの存在はプロセスの妨害要因として働くことになる。また強誘電体薄膜と白金電極の間に形成されるTiOx層は、強誘電性を持たない誘電体として振る舞うため、メモリとしての特性に悪影響を与える。このため、従来より、チタンあるいは酸化チタンなどの接着層を用いることなく酸化シリコンとの密着性が十分に良好な白金薄膜の形成技術が望まれていた。
また、白金薄膜は、膜の形成条件によっては白金薄膜の上にヒロックやピンホールのような構造が形成される場合があり、これらはリーク電流を増大させるなどの問題を引き起こす。従って、局所的に特異な構造体が表面に形成されない平坦性の優れた白金薄膜の形成技術も、従来より必要とされていた。このような要求に対し、DCマグネトロンスパッタ法により白金薄膜を形成する際に、酸素ガスを導入して形成される白金薄膜の結晶性を意識的に劣化させ、白金薄膜が形成された後にこれを高温でアニールして白金薄膜中から酸素を追い出し、形成された白金薄膜が(001)方向へ優先配向させる技術が提案されている(非特許文献2参照)。
しかしながら、非特許文献2の技術では、結晶粒の生育のしやすさから配向方向が決定されるため、通常の<111>配向の白金薄膜が得られない。PZTなどの<111>配向膜の形成には、細密充填構造である<111>方向に配向した白金薄膜を用いることが重要であるとされており、<111>方向に配向した白金薄膜の形成技術は重要となる。
以上に説明したように、従来では、<111>方向に配向し、平坦性に優れ、酸化シリコンとの密着性に優れるという要求を同時に満たした状態で、白金薄膜を形成する技術が提案されていない。
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、酸化シリコンの上に剥離しにくい状態で、平坦性が優れて<111>方向に配向した白金の薄膜が形成できるようにすることを目的とする。
本発明に係る白金薄膜の形成方法は、シリコン酸化物からなる酸化シリコン層の上に白金薄膜を形成する白金薄膜の形成方法において、不活性ガスからなるプラズマを生成し、白金から構成されたターゲットに負のバイスを印加してプラズマより発生した粒子をターゲットに衝突させてスパッタ現象を起こし、ターゲットを構成する白金を酸化シリコン層の上に堆積することで、白金薄膜が酸化シリコン層の上に形成された状態とする工程と、酸化シリコン層と白金薄膜との界面に、酸素と白金とから構成された遷移層が形成された状態とする工程とを備え、プラズマは、電子サイクロトロン共鳴により生成されて発散磁界により運動エネルギーが与えられて酸化シリコン層の表面に照射される電子サイクロトロン共鳴プラズマであるようにしたものである。
上記白金薄膜の形成方法において、例えば、不活性ガスに対して4〜12%の範囲の流量比の酸素ガスが、プラズマが生成されている中に導入された状態とし、スパッタ現象により酸化シリコン層の上に白金を堆積することで、酸化シリコン層と白金薄膜との界面に、酸素と白金とから構成された遷移層が形成された状態としてもよい。また、スパッタ現象により白金を酸化シリコン層の上に堆積することで酸化シリコン層の上に白金薄膜が形成された状態とした後、酸素を含む雰囲気で、例えば400〜900℃の範囲で加熱することで、遷移層が形成された状態としてもよい。また、例えば不活性ガスに対して4〜12%の範囲の流量比の酸素ガスが、プラズマが生成されている中に導入された状態とし、スパッタ現象により酸化シリコン層の上に白金を堆積し、ついで、酸素を含む雰囲気で例えば400〜900℃の範囲で加熱することで、遷移層が形成された状態としてもよい。
以上説明したように、本発明によれば、少なくとも、電子サイクロトロン共鳴により生成された電子サイクロトロン共鳴プラズマが照射された状態で、このプラズマによる白金ターゲットのスパッタで、白金薄膜が酸化シリコン層の上に形成された状態とするとともに、これらの界面に酸素と白金とから構成された遷移層が形成された状態とするようにしたので、酸化シリコンの上に剥離しにくい状態で、平坦性が優れて<111>方向に配向した白金の薄膜が形成できるという優れた効果が得られる。
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。図1(a),図1(b),及び図1(c)は、本発明の実施の形態における白金薄膜の形成方法例を説明するための工程図である。まず、図1(a)に示すように、例えば主表面が(100)面とされた単結晶シリコンからなるシリコン基板101を用意し、図1(b)に示すように、シリコン基板101の主表面に酸化シリコン層102が形成された状態とする。例えば、熱酸化法により酸化シリコン層102のが形成可能である。また、CVD(化学的気相成長法)により、酸化シリコン層102のが形成可能である。次に、白金ターゲットを用い、加えて酸素ガスを導入したECRスパッタ法により、図1(c)に示すように、酸化シリコン層102の上に、遷移層103を介して膜厚150〜200nm程度の白金薄膜104が形成された状態とする。
以下、白金薄膜104の形成についてより詳細に説明する。白金薄膜104の形成には、図2に例示するECRスパッタ装置を用いればよい。図2は、ECRスパッタ装置の構成例を示す構成図であり、概略的な断面を示している。はじめに、図2に示すECRスパッタ装置について説明すると、まず、処理室201とこれに連通するプラズマ生成室202とを備えている。処理室201は、図示していない真空排気装置(例えばターボ分子ポンプ)に連通し、真空排気装置によりプラズマ生成室202とともに内部が真空排気される。処理室201には、膜形成対象のシリコン基板101が固定される基板ホルダ204が設けられている。基板ホルダ204は、図示しない傾斜回転機構により所望の角度(例えば25°)に傾斜し、かつ回転可能とされている。基板ホルダ204を傾斜して回転させることで、堆積させる材料による膜の面内均一性と段差被覆性とを向上させることが可能となる。
また、処理室201内のプラズマ生成室202からのプラズマが導入される開口領域において、開口領域を取り巻くようにリング状のターゲット205が備えられている。ターゲット205は、絶縁体からなる容器205a内に載置され、内側の面が処理室201内に露出している。また、ターゲット205には、マッチングユニット221を介して高周波電源222が接続され、例えば、13.56MHzの高周波が印加可能とされている。ターゲット205が導電性材料の場合、直流の負電圧を印加するようにしても良い。なお、ターゲット205は、上面から見た状態で、円形状だけでなく、多角形状態であっても良い。
プラズマ生成室202は、真空導波管206に連通し、真空導波管206は、石英窓207を介して導波管208に接続されている。導波管208は、図示していないマイクロ波発生部に連通している。また、プラズマ生成室202の周囲及びプラズマ生成室202の上部には、磁気コイル(磁場形成手段)210が備えられている。これら、マイクロ波発生部、導波管208,石英窓207,真空導波管206により、マイクロ波供給手段が構成されている。なお、導波管208の途中に、モード変換器を設けるようにする構成もある。
図2のECRスパッタ装置の動作例について説明すると、まず、処理室201及びプラズマ生成室202内を真空排気した後、不活性ガス導入部211より不活性ガスであるアルゴン(Ar)ガスを導入(例えば流量25sccm)する。加えて、ターゲット205のプラズマ流下流側に配置されている酸素ガス導入部212より酸素ガスを導入し、プラズマ生成室202内を例えば10-5〜10-4Pa程度の圧力にする。この状態で、磁気コイル210よりプラズマ生成室202内に0.0875Tの磁場を発生させた後、導波管208,石英窓207を介してプラズマ生成室202内に2.45GHzのマイクロ波を導入し、電子サイクロトロン共鳴(ECR)プラズマを発生させる。
ECRプラズマは、磁気コイル210からの発散磁場により、基板ホルダ204の方向にプラズマ流を形成する。生成されたECRプラズマのうち、電子は磁気コイル210で形成される発散磁場によりターゲット205の中を貫通してシリコン基板101の側に引き出され、酸化シリコン層102の表面に照射される。このとき同時に、ECRプラズマ中のプラスイオンが、電子による負電荷を中和するように、すなわち、電界を弱めるようにシリコン基板101側に引き出され、成膜している層の表面に照射される。このように各粒子が照射される間に、プラスイオンの一部は電子と結合して中性粒子となる。また、このようにプラズマが照射されることで、加熱機構による加熱をしなくても、シリコン基板101の温度は、100℃程度に上昇する。
なお、図2の薄膜形成装置では、図示していないマイクロ波発生部より供給されたマイクロ波電力を、導波管208において一旦分岐し、プラズマ生成室202上部の真空導波管206に、プラズマ生成室202の側方から石英窓207を介して結合させている。このようにすることで、石英窓207に対するターゲット205からの飛散粒子の付着が、防げるようになり、ランニングタイムを大幅に改善できるようになる。また、処理対象のシリコン基板101とターゲット205との間にシャッターなどを設け、酸化シリコン層102に対する原料の到達を制御するようにしてもよい。
白金薄膜104の形成では、図2に示すECRスパッタ法において、まず、プラズマ生成室202内を10-5Pa台の高真空状態に真空排気した後、プラズマ生成室202内に、不活性ガス導入部211より、例えば希ガスであるArガスを流量25sccm程度で導入し、プラズマ生成室202の内部を例えば10-2〜10-3Pa台の圧力に設定する。なお、sccmは流量の単位あり、0℃・1気圧の流体が1分間に1cm3流れることを示す。
また、プラズマ生成室202には、磁気コイル210にコイル電流を例えば28Aを供給することで電子サイクロトロン共鳴条件の磁場を与える。例えば、プラズマ生成室202内の磁束密度が87.5mT(テスラ)程度の状態とする。また、図示していないマイクロ波発生部より、例えば2.45GHzのマイクロ波(例えば500W)を供給し、これを導波管208、石英窓207、真空導波管206を介してプラズマ生成室202の内部に導入し、プラズマ生成室202にArのプラズマが生成された状態とする。上述したことにより生成されたプラズマは、磁気コイル210の発散磁場によりプラズマ生成室202より処理室201の側に放出される。
これらのようにプラズマが生成されている状態で、プラズマ生成室202の出口に配置されたターゲット205に、高周波電源222より高周波電力(例えば500W)を供給する。このことにより、ターゲット205にAr粒子が衝突してスパッタリング現象が起こり、Pt粒子がターゲット205より飛び出す。この状態とされた後、ターゲット205とシリコン基板101との間の図示しないシャッターを開放すると、ターゲット205より飛び出したPt粒子は、プラズマ生成室202より放出されたプラズマ(プラズマ流)と共に酸化シリコン層102の表面に到達する。加えて、酸素ガス導入部212より導入されてプラズマにより活性化された酸素も、プラズマ流により酸化シリコン層102の表面に到達する。これらの結果、酸化シリコン層102の上に、酸素と白金とから構成された遷移層103を介して白金薄膜104が形成された状態となる。
上述したように、酸素ガスを導入したECRスパッタ法により形成された白金薄膜104によれば、従来より用いられているイオンビームスパッタ法やDCマグネトロンスパッタ法により形成された白金薄膜に比較して、酸化シリコン層102に対してより高い密着力を備えている。酸素ガスを導入したECRスパッタ法では、酸化シリコン層102上に、プラズマが照射されると共に活性状態の酸素も供給されるため、酸化シリコン層102に到達する白金のスパッタ粒子の酸化が促進され、数原子層程度の酸化白金(PtOx)よりなる遷移層103が、酸化シリコン層102と白金薄膜104との間に形成されるものと推察される。このために、酸化シリコン層102に対してより高い密着力の状態で、白金薄膜104が形成されるものと考えられる。なお、ECRスパッタ法により白金薄膜104が形成された後、例えば、800℃・3時間の加熱処理を行うようにしてもよい。この加熱処理により、白金薄膜104中に残留して結晶化を阻害している酸素原子(分子)が抜け、白金薄膜104の結晶化が促進されるようになる。
次に、本発明の実施の形態における他の白金薄膜の形成方法について、図1を用いて説明する。まず、図1(a)に示すように、例えば主表面が(100)面とされた単結晶シリコンからなるシリコン基板101を用意し、図1(b)に示すように、シリコン基板101の主表面に酸化シリコン層102が形成された状態とする。これらは、上述した白金薄膜の形成方法と同様である。次に、本形成方法では、酸素ガスを導入せずに、白金ターゲットを用いたECRスパッタ法により、酸化シリコン層102の上に膜厚150〜200nm程度の白金薄膜が形成された状態とする。
ついで、白金薄膜が形成されたシリコン基板101(酸化シリコン層102)に対し、酸素が含まれた雰囲気中で800℃・3時間の加熱処理を加えることで、図1(c)に示すように、酸化シリコン層102の上に、遷移層103を介して白金薄膜104が形成された状態が得られる。本形成方法の場合、酸素雰囲気における加熱処理(アニール)により、酸素分子が白金薄膜の結晶粒界に沿って酸化シリコン層102との界面まで浸透し、界面近傍の一部の白金を酸化し、密着性を向上させる遷移層103が形成されるものと考えられる。なお、当然ではあるが、前述したように、酸素ガスを導入したECRスパッタ法により白金薄膜104が形成された後、酸素を含む雰囲気で上記アニールを行うようにしてもよい。ところで、上述では、不活性ガスとしてアルゴンを用いるようにしたが、これに限るものではなく、キセノン(Xe)などの他の希ガスを用いるようにしてもよいことは、いうまでもない。
次に、ECRスパッタ法により酸化シリコン層の上に形成される白金薄膜について、より詳細に説明する。以下では、他の条件で酸化シリコン層の上に形成した白金薄膜の試料と比較することで、各特性について説明する。比較するために、まず、酸素を導入せずにECRスパッタ法により加熱をして形成した白金薄膜(第1試料)を用意する。第1試料では、ECRスパッタ法による薄膜の形成時に、基板の裏面側より赤外線加熱を行うことで、基板温度条件を300℃とした。また、前述したように、酸素を導入(1sccm)してECRスパッタ法により加熱をせずに形成した白金薄膜(第2試料)を用意する。酸素導入量1sccmは、Arガス導入量に対する流量比では4%となる。なお、基板を加熱していなくても、プラズマの照射により基板表面の温度は100℃程度に上昇する。また、酸素を導入したDCマグネトロンスパッタ法を用いて酸化シリコン層の上に形成し、この後、大気中で1000℃にアニールした白金薄膜(第3試料)を用意する。1000℃のアニールにより、白金薄膜中に含まれている酸素が追い出され、<200>配向した白金薄膜となる。
また、各第1試料〜第3試料において、後処理として、膜を形成したのみの状態と、膜を形成した後に、真空排気雰囲気で800℃3時間のアニールをした状態と、膜を形成した後に、酸素ガスが含まれる雰囲気中で800℃3時間のアニールをした状態と、Arガス中で800℃3時間のアニールをした状態とについて比較した。
まず、第1試料のエックス線回折による測定結果について図3に示す。これは、ω−2θスキャンX線回折パタンである。図3に示すように、強い<111>(2θ=39.68°)と<222>(2θ=85.44°)との回折ピークが観察され、白金薄膜が<111>方向へ優先配向していることが分かる。このことは、表面エネルギーが最も低い白金(111)面が出現するように、結晶が配向されていることに起因している。なお、図4に、<111>回折ピークのロッキングカーブを示す。図4に示すロッキングカーブにおいて、ピークの半値幅(FWHM)が、白金薄膜の構造(結晶グレインの大きさ)に関しての情報を与える。
次に、第2試料のエックス線回折による測定結果を図5(a)に示す。これは、ω−2θスキャンX線回折パタンである。図3に示した測定結果と比較すると、ピーク高さが低くシャープさにおいては劣っているが、白金薄膜からの強い<111>(2θ=39.68°)及び<222>(2θ=85.32°)回折ピークが観察される。これより、第1試料の白金薄膜も、<111>方向へ優先配向していることが分かる。なお、ECRスパッタ法により形成された試料については、エックス線回折パタンには、<111>と<222>のピークしか観測されなかった。ECRプラズマが基板(酸化シリコン層)の表面に照射されると、電子励起の効果によって実効的に表面が高温状態になるため、表面エネルギーが最も低いPt(111)面が出現するように結晶が配向するものと考えられる。
次に、第3試料のエックス線回折による測定結果を図5(b)に示す。これも、ω−2θスキャンX線回折パタンである。図5(b)に示されているように、<200>ピークの強度が最も強いが、<111>や<311>などのピークも出現している。この<200>ピークのロッキングカーブは非常にブロードで、FWHMは200程度であった。<200>方向へ優先配向してはいるが、第3試料における白金薄膜の配向性は弱いものであると言える。
次に、エックス線の入射角ω=1.5°とした2θスキャンエックス線回折パタンについて、図6(a),図6(b)に示す。図6(a)は、図5(a)に対応し、図6(b)は、図5(b)に対応している。このような低角度でX線を入射すると、白金薄膜だけに敏感な測定条件になり、特に表面垂直方向へ配向していない結晶グレインを高感度に検出することができる。図6(a)、図6(b)共通に白金薄膜からの<111>、<200>、<311>回折ピークが見られるが、図6(b)のDCマグネトロンスパッタ法により作成した白金薄膜の方がはるかに強度は大きい。このことはDCマグネトロンスパッタ法による白金薄膜は、かなり乱れた構造(結晶構造)をしているが、ECRスパッタ法で得られる白金薄膜は、酸素ガスを導入したとしても、強く<111>方向へ配向した結晶グレインだけから構成されていることを示している。
上記の結果と断面TEM像などを参考にし、各条件で形成される白金薄膜の結晶構造の状態を、図7を用いて説明する。図6(a)に示される<111>配向の白金薄膜(第2試料)は、図7(a)に示すように、典型的な柱状構造をしており、縦方向に延びる粒界により結晶グレインが分けられている。一方、図6(b)に示される<200>配向の白金薄膜(第3試料)は、図7(b)に示すように、結晶粒グレインが横方向へ広がり、<200>以外の方向へ向いた結晶グレインも数多く存在する。
次に、前述した各第1試料及び第2試料の各後処理状態における、<111>回折ピークの2θ角について、以下の表1に示す。従来より、スパッタ法により低温で形成した金属薄膜には、圧縮応力が働くことが知られている。この応力ひずみにより、薄膜の表面垂直方向に結晶が伸びるため、格子面間隔が大きくなり、回折角が小さく観察されるようになる。格子歪みのないバルクの白金結晶では、<111>回折ピークは、40.0°に出現する。このことから、スパッタ中に加熱をしていない第2試料(成膜処理のみ)の白金薄膜(2θ=39.6°)には、大きな圧縮歪が加わっており、第1試料の白金薄膜(2θ=39.88°)もある程度歪んでいることが分かる。
これらに対し、800℃の加熱の後処理を行うと、このアニール時の環境が、真空中,酸素中,及びArガス中のいずれにおいても、回折ピークは2θ=40.00±0.04°となり、バルクの結晶に近い値となる。このことは、ECRスパッタ法により成膜した後に高温アニールを行うと、グレインが相互に合体すると同時に、白金薄膜中に貯えられていた圧縮歪みが緩和することを示している。
表1:Pt<111>2θ(deg)
第1試料 第2試料
成膜処理のみ 39.88 39.6
真空加熱 40.04 40.04
酸素雰囲気加熱 40.04 40.00
Ar中加熱 40.00 39.96
次に、各第1試料及び第2試料の、各後処理状態における、<111>回折ピークの強度を以下の表2に示し、ロッキングカーブの半値幅を表3に示す。一般に、白金薄膜を構成する結晶粒が大きくなるほど、観察される回折ピークの強度は大きくなり、ロッキングカーブの半値幅は小さくなる。第1試料の<111>回折ピークの強度は、アニールにより若干増大し、半値幅はわずかに減少する。これは結晶グレインの構造に、大きな変化が起きていないことを意味している。一方、第2試料の成膜処理のみの白金薄膜については、回折ピークの強度は小さく半値幅が広い。これは、第2試料の白金薄膜中に微量に存在する酸素原子(分子)が結晶化を妨げていることを示唆している。これに対し、800℃のアニール処理により、白金薄膜中に存在していた酸素が抜けて、大幅に<111>回折ピークの強度が増大し、ピーク形状がよりシャープになる。
表2:Pt<111>強度(kcount)
第1試料 第2試料
成膜処理のみ 140 32
真空加熱 182 78
酸素雰囲気加熱 199 102
Ar中加熱 195 302
表3:Pt<111>FWHM(deg)
第1試料 第2試料
成膜処理のみ 6.2 9.3
真空加熱 6.2 8.2
酸素雰囲気加熱 6.0 7.0
Ar中加熱 6.1 2.8
上述した表2,表3による結晶粒の大きさに関しては、図8に示す走査型原子間力顕微鏡(AFM)による観察結果と整合している。図8(a)に第1試料の観察結果を示し、図8(b)に第3試料の観察結果を示し、図8(c)に第1試料に酸素中アニールの後処理を加えた場合の観察結果を示し、図8(d)に第2試料の観察結果を示す。まず、図8(d)に示すように、第2試料の白金薄膜は非常に小さなグレインにより構成されていることが分かる。これに対し、図8(a)に示すように、第1試料の白金薄膜は、各々の結晶粒が約10倍程度大きい。これらグレインの大きさは、前述したX線回折の結果と整合している。また、図8(c)に示すように、第1試料に酸素中アニールの後処理を加えると、六角形の結晶グレインが明瞭に観察されるようになるが、表面粗さに関しては大差はない。他方、図8(b)に示す用に、DCマグネトロンスパッタ法により形成した白金薄膜(第3試料)の表面の観察像は、表面の粗さが他の試料に比較して大きいことが明白であり、この点だけからもECRスパッタ法の方が特性の良い薄膜が得られることが分かる。
次に、AFMにより1μm角の領域を操作して得られたAFM像から求めたRMS(root-mean-square)表面荒さの値について以下の表4に示す。表4に示す値より、ECRスパッタ法により薄膜を形成する場合、DCマグネトロンスパッタ法に比較して、表面荒さが約1/5と、表面平坦性が優れた状態が得られることが明らかである。
表4:RMS表面荒さ(nm)
第1試料 第2試料 第3試料
成膜処理のみ 1.26 1.06 6.29
真空加熱 1.05 1.88 5.67
酸素雰囲気加熱 1.28 2.56 6.20
Ar中加熱 1.29 1.52
次に、形成した白金薄膜の抵抗率を4端子法により測定した結果を以下の表5に示す。表5に示すように、第2試料の成膜処理のみの抵抗率は22.5μΩcmと幾分高いが、これは膜中に若干の酸素原子が含まれていることを示唆している。他の条件の白金薄膜については、いずれの10μΩcm台の抵抗値である。表5中のすべての条件の白金薄膜について、抵抗率は電極として用いるのに十分小さな値である。これらの抵抗率の測定結果は、白金薄膜は、ほとんど酸化されていない金属状態であることを意味している。
金属膜における抵抗の起源は、主に粒界における電子の散乱によるもので、一般にグレインが大きいほど抵抗率は小さい。第1試料及び第2試料の白金薄膜は、後処理としていずれの条件のアニールを行っても、抵抗率はほとんど変化しない。この理由としては、すでに結晶化が完了しており、結晶粒どうしが合体してより大きな結晶粒になる余地が残されていないことが考えられる。これらに対し、第2試料の白金薄膜は、後処理のアニールにより抵抗率が減少している。これは、後処理のアニールにより、結晶粒が大きくなり、電気抵抗が増大する方向へ寄与する結晶粒界の面積が減少したためと考えられる。
表5:抵抗率(μΩcm)
第1試料 第2試料 第3試料
成膜処理のみ 14.3 22.5 13.3
真空加熱 13.1 12.8 14.6
酸素雰囲気加熱 13.1 12.6 14.3
Ar中加熱 13.1 11.9
次に、ECRスパッタ法により白金薄膜を形成するときの、酸素添加の効果を明らかにするために、添加する酸素の流量と、形成される白金薄膜の膜質との関係について図9を用いて説明する。これは、酸素ガスを導入したECRスパッタ法による白金薄膜として、導入する酸素ガスの流量を1sccmとした試料(第2試料に相当)、2sccmとした試料、3sccmとした試料との3種類の白金薄膜の測定結果である。なお、酸素導入量1sccm,2sccm,及び3sccmは、Arガス導入量に対する流量比では各々4%,8%,及び12%となる。
まず、図9(a)に示すように、添加する酸素の流量が増加すると、形成される白金薄膜の<111>回折ピーク(黒丸)の強度は減少し、半値幅(白丸)は増大する。また、図9(b)に示すように、添加する酸素の流量が増加すると、形成される白金薄膜の2θ角(黒丸)は減少し、抵抗率(白丸)が増大している。ただし、これらの変化はそれほど大きくない。1sccmの酸素を添加して成膜するか否かの影響が非常に大きいことが分かる。
次に、スクラッチ試験による密着性の調査結果について説明する。密着性は、白金薄膜を実際に電極として使う場合に重要となる。この測定では、「CSM Instruments」社の「Nano−Scratch−Tester」を用い、先端の直径が2μmの円錐状ダイヤモンド探針を、測定対象の薄膜に当接させながら、一方向へ2mm/分の定速度で走査する。この走査において、探針から薄膜に加わる荷重を20mN/mmの割合で、走査距離に比例させて増加させていく。このように走査する中で、薄膜が剥離した点における荷重を密着力(abhesion strength)とする。なお、すべての試料に対して同一の条件で試験を行った。
図10(a)に第1試料の白金薄膜対して行ったスクラッチ試験測定結果の一例を示し、図10(b)に酸素添加流量3sccmとした第2試料同等の白金薄膜に対して行ったスクラッチ試験測定結果の一例を示す。第1試料の密着性調査の過程について例示すると、図10(a)に示すように、薄膜の垂直方向に対して荷重を増加させるに従い、探針の薄膜内への進入深さと摩擦力とが変化する。初期の段階では、探針の当接により白金薄膜の下地の酸化シリコン層がたわんだ状態で、白金薄膜がへこみながら探針が走査していく。この過程で、ある臨界点において、白金薄膜が酸化シリコン層より剥離する。
この剥離する点は、図10(a)において、進入深さと摩擦力との変化の中で、不連続点として現れる。図10(a)に示す第1試料の場合、8.7 mNで剥離しているが、図10(b)に示す試料(第2試料)においては、117mNにおいて初めて剥離が観測される。これらのことにより、酸素添加が著しく白金薄膜の密着性を高めていることが分かる。このような測定を1試料につき3回行い、剥離点の荷重の平均値を計算して密着力とした。以下の表6に、上記剥離点の荷重の平均値を密着力として示す。
表6:密着力(mN)
第1試料 第2試料 第3試料
成膜処理のみ 8.7 110 67
真空加熱 9.7 7.0
酸素雰囲気加熱 91 91
Ar中加熱 9.7
第1試料の白金薄膜の密着力は8.7mNであり、これに対して後処理として真空中における800℃・3時間のアニールを行っても、密着力は9.7mNへとわずかに変化する程度である。これに対し、第1試料に対して後処理として酸素中のアニール処理を行うと、密着力が91mNと大幅に増大している。すでにX線回折、AFM、抵抗率の結果に示したように、白金薄膜の結晶グレイン構造は、アニール時の雰囲気に依存しない。これにもかかわらず、酸素中のアニールにより10倍程度も密着力が向上することは、酸素雰囲気下にアニールにより、酸素分子が結晶粒界に沿って白金薄膜と酸化シリコン層の界面まで浸透し、界面付近の白金薄膜を一部酸化してPtOX遷移層が形成され、これが密着性を格段に向上させるためと考えられる。
一方、第2試料の白金薄膜は110mNと表6中で最大の密着力を示している。第2試料の白金薄膜を酸素雰囲気下でアニールすると、第1試料の白金薄膜をアニールしたときと同じ密着力(91mN)になる。成膜時の環境によらず、後処理として酸素中で高温アニールすると平衡状態に到達することを示している。真空中あるいはAr雰囲気中でのアニールでは、密着力は第1試料と同様な密着力まで低下している。これは、界面のPtOX層が還元されたためと考えられる。
他方、良好な密着性が得られることで知られる酸素添加のDCマグネトロンスパッタ成膜による第3試料の白金薄膜の密着力は、67mNという結果が得られた。この結果より、ECRスパッタ法による第1試料(酸素中アニール有り)及び第2試料の方が、密着性で上回っていることが実証された。密着力が大きいほど、白金を電極とする素子を製造するときの、白金薄膜を形成した後のプロセスにおいて、温度や雰囲気に関してより過酷な条件が可能になり、白金薄膜の上に形成する金属酸化物に関しては、より膜厚の厚いものまで許容できる。密着力の差は2倍以下ではあるが、白金薄膜の応用範囲の点からは非常に大きな差である。
以上の実験結果をまとめると、酸素ガス添加なしでECRスパッタ法により形成した白金薄膜(第1試料)は、端面が100nm程度の大きさの<111>方向へ強く配向した柱状結晶グレインから構成され、構造的には平衡状態になっている。酸素ガス添加で室温においてECRスパッタ法で形成した白金薄膜(第2試料)は、わずかに酸素を含有しているものの、端面が10nm程度の<111>方向へ強く配向した柱状結晶から形成され、アニールすれば結晶ドメイン同士が合体してより大きなドメインへと変化する。なお、上記実験で対象にした白金薄膜は、すべてがほぼ金属状態であり、電極としての使用に支障はない。
また、ECRスパッタ法による白金薄膜の表面粗さはDCマグネトロンスパッタの白金薄膜の約1/5と、表面平坦性に優れている。また、酸素を添加してECRスパッタした白金薄膜(第2試料)の密着力は最も高いが、酸素添加なしでスパッタしたもの(第1試料)でも、後処理として酸素雰囲気下でアニールすることで、図7(a)に示すように、結晶粒界に沿って酸素分子が容易に浸透して界面に到達して界面層を形成し、容易に密着力を向上させることができる。
また、酸素添加によるDCマグネトロンスパッタ法では、<111>方向へ強く配向した白金薄膜を形成することができないが、ECRスパッタ法によれば、<111>配向の柱状構造を保持したまま、酸化シリコン層に対して密着性の極めて良好な白金薄膜が得られる。
上述したように、酸素が含まれた雰囲気による処理を利用することで、ECRスパッタ法により形成される白金薄膜の<111>方向への高い配向性を利用し、界面の酸化状態を制御することができる。白金薄膜の上に成膜する金属酸化物によっては、白金薄膜の表面原子配列が(111)面であることが本質的に必要である場合がある。前述した形成方法による白金薄膜はこのような系に対して適用する効果が特に大きい。
次に、第1試料に対する酸素雰囲気でのアニール温度と酸化シリコン層に対する白金薄膜の密着性との関係について説明する。以下では、密着性をテープテストにより評価している。まず、以下の表7に示すように、酸素添加なしで300℃においてECRスパッタで成膜した白金薄膜(成膜処理のみ)は、テープテストで剥離した(×で示す)。また、成膜処理の後、後処理として酸素雰囲気中で300℃の加熱条件では、テープテストで剥離が確認された(×で示す)。これに対し、後処理として酸素雰囲気中で400℃の加熱条件では、テープテストで剥離が確認されない(○で示す)。これらの結果から、密着力を増すための後処理としての酸素雰囲気中におけるアニールは、400℃以上の温度で行うことが適当であることが分かる。ただし、900℃を超える温度で加熱すると、遷移層を構成しているPtOxが分解されて表面が荒れ、他の層との密着力が低下する。このため、密着力向上のためには、加熱温度は900℃以下とした方がよい。
表7
成膜処理のみ ×
300℃酸素雰囲気加熱 ×
400℃酸素雰囲気加熱 ○
なお、酸素を導入してECRスパッタ法により加熱をせずに形成した白金薄膜は、酸素の導入量が、1sccm,2sccm,3sccmのいずれの条件においても、テープテストで剥離は確認されない。同様に、酸素を導入したDCマグネトロンスパッタで成膜した白金薄膜も、テープテストで剥離は確認されない。また、酸素を導入してECRスパッタ法により加熱をせずに形成した白金薄膜に対し、後処理として酸素雰囲気で加熱する処理を加えても、テープテストで剥離は確認されない。以上に説明したことから明らかなように、酸素と白金とから構成された遷移層が、酸化シリコン層と白金薄膜との間(界面)に形成された状態とすることで、高い密着力が得られるようになる。なお、上述では、酸化シリコン層の上に白金薄膜を形成する場合について説明したが、酸化シリコン層に限らず、石英などの田のシリコン酸化物からなる層(基板)であっても同様である。
以上に説明したように、本発明によれば、電極として使用可能な低抵抗の白金薄膜が、シリコン酸化物よりなる下地構造体の上に非常に高い密着力を有した状態で形成できる。また、DCマグネトロンスパッタ法による白金薄膜では、図1を用いて説明した形成方法例と同等流量の酸素が導入されているにもかかわらず、結晶性が劣化しているが(非特許文献2参照)、本発明によれば、白金の金属膜としての<111>配向が保たれ、加えて密着性がよい状態が得られる。また、TiあるいはTiO2などの中間層の形成という工程を必要とせずに、高い密着力で白金薄膜が形成できるので、素子作製の生産性を高めることができるとともに、チタンの存在による後工程に対する悪影響が排除できる。
本発明の実施の形態における白金薄膜形成方法例を説明するための工程図である。 ECRスパッタ装置の構成例を示す構成図である。 ECRスパッタ法により形成した白金薄膜のエックス線回折による測定結果を示す特性図である。 白金薄膜のエックス線回折による<111>回折ピークのロッキングカーブである。 スパッタ法により形成した白金薄膜のエックス線回折による測定結果を示す特性図である。 スパッタ法により形成した白金薄膜のエックス線回折による測定結果を示す特性図である。 白金薄膜の結晶構造を模式的に説明する説明図である。 白金薄膜の走査型原子間力顕微鏡(AFM)による観察結果(写真)である。 添加する酸素の流量と、形成される白金薄膜の膜質との関係について説明する特性図である。 酸化シリコン層の上に形成された白金薄膜の密着性調査の結果を示す特性図である。
符号の説明
101…シリコン基板、102…酸化シリコン層、103…遷移層、104…白金薄膜。

Claims (7)

  1. シリコン酸化物からなる酸化シリコン層の上に白金薄膜を形成する白金薄膜の形成方法において、
    不活性ガスからなるプラズマを生成し、白金から構成されたターゲットに負のバイスを印加して前記プラズマより発生した粒子を前記ターゲットに衝突させてスパッタ現象を起こし、前記ターゲットを構成する白金を前記酸化シリコン層の上に堆積することで、前記白金薄膜が前記酸化シリコン層の上に形成された状態とする工程と、
    前記酸化シリコン層と前記白金薄膜との界面に、酸素と白金とから構成された遷移層が形成された状態とする工程と
    を備え、
    前記プラズマは、電子サイクロトロン共鳴により生成されて発散磁界により運動エネルギーが与えられて前記酸化シリコン層の表面に照射される電子サイクロトロン共鳴プラズマである
    ことを特徴とする白金薄膜の形成方法。
  2. 請求項1記載の白金薄膜の形成方法において、
    前記プラズマが生成されている中に酸素ガスが導入された状態とし、前記スパッタ現象により前記酸化シリコン層の上に白金を堆積することで、
    前記酸化シリコン層と前記白金薄膜との界面に、酸素と白金とから構成された遷移層が形成された状態とする
    ことを特徴とする白金薄膜の形成方法。
  3. 請求項2記載の白金薄膜の形成方法において、
    前記酸素ガスは、前記不活性ガスに対して4〜12%の範囲の流量比で導入する
    ことを特徴とする白金薄膜の形成方法。
  4. 請求項1記載の白金薄膜の形成方法において、
    前記スパッタ現象により白金を前記酸化シリコン層の上に堆積することで前記酸化シリコン層の上に白金薄膜が形成された状態とした後、酸素を含む雰囲気で加熱することで、前記遷移層が形成された状態とする
    ことを特徴とする白金薄膜の形成方法。
  5. 請求項4記載の白金薄膜の形成方法において、
    前記加熱は、400〜900℃の範囲である
    ことを特徴とする白金薄膜の形成方法。
  6. 請求項1記載の白金薄膜の形成方法において、
    前記プラズマが生成されている中に酸素ガスが導入された状態とし、前記スパッタ現象により前記酸化シリコン層の上に白金を堆積し、
    ついで、酸素を含む雰囲気で加熱することで、前記遷移層が形成された状態とする
    ことを特徴とする白金薄膜の形成方法。
  7. 請求項6記載の白金薄膜の形成方法において、
    前記酸素ガスは、前記不活性ガスに対して4〜12%の範囲の流量比で導入し、
    前記加熱は、400〜900℃の範囲とする
    ことを特徴とする白金薄膜の形成方法。
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