JP2007164998A - 燃料電池システム - Google Patents

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Abstract

【課題】燃料電池の発電停止時に、燃料電池の端セルに水分が偏在することを抑制する。
【解決手段】酸化剤ガスと燃料ガスを電気化学反応させて発電するセル100を複数枚積層した燃料電池1と、燃料電池1から電力供給を受けて充電可能な二次電池3と、燃料電池の温度を検出する温度センサ47と、燃料電池1に循環する冷却水が通過する冷却水経路40と、冷却水経路40に設けられ、燃料電池1に冷却水を循環させるための冷却水循環手段41、42と、冷却水循環手段41、42の作動を制御する制御手段50とを備える燃料電池システムにおいて、燃料電池1の発電停止後、燃料電池1の温度が冷却水の循環停止を判断する基準となる冷却水循環停止温度を下回るまで、燃料電池1に冷却水を循環させる。
【選択図】図1

Description

本発明は、水素と酸素との電気化学反応により電気エネルギーを発生させる燃料電池を備える燃料電池システムに関するもので、特に車両、船舶及びポータブル発電機等の移動体用発電機に適用して有効である。
燃料電池は発電反応に伴い水を生成し、その生成水の一部は発電停止後にも燃料電池内部に残留する。残留水が多い場合には、氷点下のような低温環境下での燃料電池始動時に触媒表面やガス流路等で残留水が凍結して、反応ガスが触媒まで到達できず、燃料電池での発電が継続できないという問題があった。また、氷点下にならずともガス流路や拡散層、触媒層に残留した水が存在し、触媒に反応ガスが到達するのを阻害し、燃料電池での発電が継続できないという問題があった。そこで、従来の技術として、燃料電池に接続した凝縮器を設け、凝縮器内部で生成水を凝縮させることで、燃料電池内部の残留水を低減させる方法が知られている(特許文献1参照)。
特開2003−142136号公報
しかしながら、燃料電池セルが複数枚積層されたスタック構造の燃料電池では、端に位置するセルが相対的に低温になりやすいため、燃料電池の発電停止後、セル間の温度差により端セルに水分が多く凝縮する。このため、燃料電池の再始動時に端セルの発電性能が極端に悪化し、燃料電池が始動できない場合がある。
本発明は上記点に鑑み、燃料電池の発電停止時に、燃料電池の端セルに水分が偏在することを抑制することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明は、酸化剤ガスと燃料ガスを電気化学反応させて発電する燃料電池セル(100)を複数枚積層した燃料電池(1)と、燃料電池の温度を検出する温度センサ(47)と、燃料電池(1)に循環する冷却水が通過する冷却水経路(40)と、冷却水経路(40)に設けられ、燃料電池(1)に冷却水を循環させるための冷却水循環手段(41、42)と、冷却水循環手段(41、42)の作動を制御する制御手段(50)とを備え、制御手段(50)は、燃料電池(1)の発電停止後、燃料電池(1)の温度が、冷却水の循環停止を判断する基準となる冷却水循環停止温度を下回るまで、冷却水循環手段(41、42)により燃料電池(1)に冷却水を循環させることを第1の特徴としている。
このように、燃料電池(1)の発電停止後、燃料電池(1)内に冷却水を循環させることで、各セル(100)の温度を均一化することができ、端セル(100)に水分が偏在することを抑制できる。これにより、燃料電池(1)の再始動時に端セル(100)の発電性能が悪化することを回避でき、燃料電池(1)の始動性を向上させることができる。
冷却水循環手段(41、42)は、燃料電池(1)の発電停止後、燃料電池(1)から電力供給を受けて充電可能な二次電池(3)からの電力供給により作動するように構成することができる。
また、本発明は、制御手段(50)は、冷却水循環手段(41、42)を間欠的に作動させることを第2の特徴としている。これにより、冷却水循環手段(41、42)の消費電力を低減することができる。
また、本発明の第2の特徴において、燃料電池(1)の温度が低くなるにしたがって、冷却水循環手段(41、42)の作動停止時間を短くすることで、燃料電池温度に応じて適切に冷却水循環手段(41、42)の消費電力を低減することができる。
また、冷却水循環停止温度は、燃料電池(1)内での水分の蒸発量が減少し、燃料電池(1)内における水分の移動が起こりにくくなる温度として設定することができる。冷却水循環停止温度は、飽和蒸気圧が充分低くなる50℃とすることが望ましく、冷却水循環停止温度を20℃とすることがより望ましい。
また、本発明は、冷却水を放熱する放熱器(44)と、放熱器(44)に送風するファン(43)と、放熱器(44)をバイパスさせるバイパス経路(45)と、冷却水の流路を放熱器(44)とバイパス経路(45)とに切り替える流路切替弁(46)とを備え、制御手段(50)は、燃料電池(1)の発電停止時に、燃料電池(1)の温度が燃料電池(1)を急速に冷却する必要があるか否かを判定する基準となる強制冷却停止温度を上回っている場合に、流路切替弁(46)により冷却水の流路を放熱器(44)側に切り替えるとともに、ファン(43)を作動させることを第3の特徴としている。
このように、放熱器(44)に冷却水を通過させ、ファン(43)を作動させることで、燃料電池(1)を急速に冷却して水の飽和蒸気圧を迅速に低くすることができる。このため、燃料電池(1)内で水分が移動することを抑制でき、端セル(100)に水分が偏ることを抑制できる。これにより、燃料電池(1)の再始動時に端セル(100)の発電性能が悪化することを回避でき、燃料電池(1)の始動性を向上させることができる。
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態を図1〜図5に基づいて説明する。本実施形態は、本発明を燃料電池を電源として走行する電気自動車(燃料電池車両)に適用した実施例である。
図1は、本実施形態の燃料電池システムの概念図である。図1に示すように、本実施形態の燃料電池システムは、水素と酸素との電気化学反応を利用して電力を発生する燃料電池1を備えている。本実施形態では燃料電池1として固体高分子型燃料電池を用いており、基本単位となる燃料電池セル100が複数積層されて構成されている。
燃料電池1では、以下の水素と酸素の電気化学反応が起こり電気エネルギーが発生する。なお、水素が本発明の燃料ガスに相当し、酸素(空気)が本発明の酸化剤ガスに相当している。
アノード(水素極)H2→2H++2e-
カソード(酸素極)2H++1/2O2+2e-→H2
全体 H2+1/2O2→H2
図2は燃料電池1の断面図である。図2に示すように、各セル100は、電解質膜101、触媒層102、拡散層103、セパレータ104、電極板105、絶縁板106、締結板107を備えている。電解質膜101の両外側には一対の触媒層102は配置され、触媒層102の外側には一対の拡散層103が配置されている。触媒層102と拡散層103は電極(水素極と酸素極)を構成している。
拡散層103には、セパレータ104が配置されている。水素極側に配置されたセパレータ104には、水素が通過する溝状の水素経路104aが形成されており、空気極側に配置されたセパレータ104には、酸素(空気)が通過する溝状の空気経路104bが形成されている。さらにセパレータ104には、冷却水が通過する冷却水経路104cが形成されている。そして、上記電気化学反応によって酸素極側で生成した水分は空気経路104bに滞留することとなる。
図1に戻り、燃料電池1と二次電池3は、DC−DCコンバータ2を介して電気的に接続されている。DC−DCコンバータ2は、燃料電池1から二次電池3あるいは二次電池3から燃料電池1への電力の流れをコントロールする。DC−DCコンバータ2は昇降圧チョッパ回路で、燃料電池1で発生した電力を二次電池3に充電したり、二次電池3に蓄えられた電力を燃料電池1や走行用インバータ4に供給することができる装置である。DC−DCコンバータ2は電圧の大きさに関わらず双方向に電力のやり取りが可能となっている。
二次電池3は、燃料電池1から供給された電気エネルギーを蓄えると共に、蓄えた電気エネルギーを各種の電気負荷に供給するものであり、例えばニッケル水素電池やリチウムイオン電池等を用いることができる。二次電池3は、充電量に関する信号を後述の制御部50に出力するように構成されている。二次電池3は、充電量に関する信号を後述の制御部50に出力するように構成されている。
DC−DCコンバータ2と二次電池3の間に走行用インバータ4が接続されている。DC−DCコンバータ2を経由した燃料電池1からの電力あるいは二次電池3からの電力が走行用インバータ4へ供給される。なお、走行用インバータ4は燃料電池1とDC−DCコンバータ2の間に接続してもよい。
走行用インバータ4は、走行用モータ5を駆動させたりあるいは電力を回生させるためのインバータである。本実施形態の走行用インバータ4は3相インバータであり、3相の交流電力を走行用モータ5に供給し、走行用モータ5を回転させることで燃料電池車両を走行させる。
また、燃料電池1の発電時に余った電力を二次電池3に蓄えることができる。二次電池3は回生ブレーキなどによって回生された電力を蓄えることができるため、効率的な車両システムとすることができる。通常、二次電池3は最適な充電状態に充電されている。本実施形態では、二次電池3から走行用インバータ4に電力供給できるように構成されており、例えば急加速時などに急激に大きな電力が必要な場合に、燃料電池1からだけでなく二次電池3からも電力を引き出して走行用インバータ4に供給することで対応することができる。
さらにDC−DCコンバータ2と二次電池3との間には、後述のW/P用モータ42を作動させるためのW/P用インバータ6と圧縮機用モータ23を作動させるための圧縮機用インバータ7が接続されている。さらに、燃料電池システムには、燃料電池1の端子間電圧を検出するための電圧センサ8と、燃料電池1からの出力電流を検出するための電流センサ9が設けられている。
燃料電池システムには、燃料電池1の酸素極に供給される酸素ガス(空気)が通過する空気供給経路20と、燃料電池1の酸素極から排出される空気極側排ガスが通過する空気排出経路21が設けられている。空気供給経路20には、空気を供給するための空気供給装置22が設けられている。本実施形態では、空気供給装置22として空気圧縮機を用いている。空気供給装置22は圧縮機用モータ23と機械的に接続されてている。圧縮機用モータ23は、圧縮機用インバータ7により電力供給されるとともに、回転数制御される。
空気供給経路20における空気供給装置22の上流側には、燃料電池1に供給される空気の流量を検出する空気流量検出手段としてのエアフロセンサ24が設けられている。また、空気排出経路21には、所望の圧力になるよう空気の排気圧力(燃料電池1の背圧)を調整する調圧装置26が設けられている。
また、発電時における電気化学反応のために、燃料電池1内の固体高分子膜を水分を含んだ湿潤状態にしておく必要がある。このため、空気供給経路20における空気供給装置22の下流側には、燃料電池1に供給される空気に加湿するための加湿装置25が設けられている。加湿装置25は、燃料電池1から排出され湿った排気空気に含まれる水分を用いて、空気供給装置22の吐出後の空気を加湿する。
燃料電池システムには、燃料電池1の水素極に供給される水素ガスが通過する水素供給経路30と、燃料電池1の水素極から排出される水素極側排ガスが通過する水素排出経路31が設けられている。水素供給経路30の最上流部には、燃料電池1の水素極に水素ガスを供給するための水素供給装置32が設けられている。本実施形態では、水素供給装置32として、高圧の水素が充填された水素タンクを用いている。
水素供給経路30には、上流側から順に第1シャット弁33、調圧装置34、第2シャット弁35が設けられている。燃料電池1に水素を供給する際には、第1シャット弁33と第2シャット弁35を開き、調圧装置34によって所望の水素圧力にして燃料電池1に供給する。車両停止時には、安全の為第1シャット弁33、第2シャット弁35は閉められる。
水素排出配管31には、第3シャット弁36が設けられている。必要に応じて第3シャット弁36を開くことで、燃料電池1の水素極側から水素排出配管31を介して、未反応水素ガス、蒸気(あるいは水)および空気極側から電解質膜101を通過して水素極側に混入した窒素、酸素などの不純物が排出される。
燃料電池1は発電に伴い発熱を生じる。このため、燃料電池システムには、燃料電池1を冷却して作動温度が効率の良い温度(80℃前後)となるよう冷却システムが設けられている。冷却システムには、燃料電池10に冷却水(熱媒体)を循環させる冷却水経路40、冷却水を循環させるウォータポンプ(W/P)41、ウォータポンプ41を駆動するW/P用モータ42、ファン43を備えたラジエータ(放熱器)44が設けられている。
ウォータポンプ41はW/P用モータ42と機械的に接続されており、W/P用モータ42を回転させることによりウォータポンプ41を回転させて燃料電池1に冷却液を循環させる。W/P用モータ42は、W/P用インバータ6により電力供給されるとともに、回転数制御される。なお、ウォータポンプ41とW/P用モータ42が本発明の冷却水循環手段に相当している。
冷却水経路40には、冷却水をラジエータ44をバイパスさせるためのバイパス経路45が設けられている。冷却水経路40とバイパス経路45との合流点には、バイパス経路45に流れる冷却水流量を調整するための流路切替弁46が設けられている。流路切替弁46は、電動制御弁を好適に用いることができるが、サーモスタットのような機械式弁を用いてもよい。
また、冷却水経路40における燃料電池1の出口側近傍には、燃料電池1から流出した冷却水の温度を検出する温度検出手段としての温度センサ47が設けられている。この温度センサ47により冷却水温度を検出することで、燃料電池1の温度TFCを間接的に検出することができる。温度センサ47を燃料電池1本体に直接設置し、燃料電池温度TFCを直接的に検出してもよい。
燃料電池1で発生した熱は、冷却水を介してラジエータ44で系外に排出される。このような冷却系によって、ウォータポンプ41による流量制御、ファン43による風量制御、流路切替弁46によるバイパス流量制御で、燃料電池1の冷却量制御を行うことができる。本実施形態では、W/P用モータ42、ファン43、流路切替弁46は、燃料電池1の運転停止時(発電停止時)に二次電池3から電力供給を受けて作動するように構成されている。
燃料電池システムには、各種制御を行う制御手段としての制御部(ECU)50が設けられている。制御部50は、CPU、ROM、RAM、I/Oなどを備えた周知のマイクロコンピュータによって構成され、ROMなどに記憶されたプログラムに従って各種演算などの処理を実行する。制御部50には、各種負荷からの要求電力信号、2次電池3からの充電量の関する信号、電圧センサ8からの電圧信号、電流センサ9からの電流信号、エアフロセンサ24からの空気流量信号、温度センサ47からの温度信号等が入力される。また、制御部50は、DC−DCコンバータ2、二次電池3、インバータ4、6、7、モータ23、42、調圧装置26、シャット弁33、35、36、調圧装置34、ファン43、流路切替弁46等に制御信号を出力するように構成されている。
次に、本実施形態の燃料電池1の発電停止時における燃料電池1の冷却制御について図3〜図5に基づいて説明する。図3は、制御部50がROM等に格納されたプログラムにしたがって行う燃料電池1の冷却制御を示すフローチャートである。
上記「発明が解決しようとする課題」の欄で説明したように、セル100を積層したスタック構造の燃料電池1では、端に位置するセル100が他のセル100より熱損失が多く低温になりやすい。このため、燃料電池1の温度が高い状態では、燃料電池1内で蒸気となった水分が燃料電池1の両端のセル100で凝縮し、燃料電池1内の水分が端セル100に偏在することとなる。そこで、本実施形態では、燃料電池1の発電停止後、燃料電池1の温度が高い場合に、燃料電池1に冷却水を循環させる冷却制御を行うことで、各セル100の温度を均一化し、燃料電池1内の水分が端セル100に偏在することを抑制する。
本制御は、キースイッチがオフになり、燃料電池1の発電が停止することで開始する。まず、温度センサ47で燃料電池1の温度TFCを検出する(S10)。次に、燃料電池温度TFCが冷却水循環停止温度T1を上回っているか否かを判定する(S11)。冷却水循環停止温度T1は、燃料電池1内での水分の蒸発量が減少し、燃料電池1内における水分の移動が起こりにくくなる温度として設定することができ、飽和蒸気圧に基づいて設定することができる。
ここで、冷却水循環停止温度T1の設定について説明する。図4は、飽和蒸気圧曲線を示している。図4に示すように、水の飽和蒸気圧は温度の上昇にともなって急激に上昇する。具体的には、燃料電池温度TFCが50℃を境にして水の飽和蒸気圧が急激に上昇している。このため、燃料電池温度TFCが50℃を下回る範囲で水の飽和蒸気圧が充分小さくなり、蒸気として燃料電池1内で移動する水分量が充分に減少する。そして、燃料電池温度TFCが30℃を下回る範囲で水の飽和蒸気圧がより充分小さくなり、燃料電池温度TFCが20℃を下回る範囲で水の飽和蒸気圧がさらにより充分小さくなる。したがって、冷却水循環停止温度T1を50℃に設定することが望ましく、冷却水循環停止温度T1を30℃に設定することがより望ましく、冷却水循環停止温度T1を20℃に設定することがさらにより望ましい。本実施形態では、冷却水循環停止温度T1を20℃に設定している。
S11の判定処理の結果、燃料電池温度TFCが冷却水循環停止温度T1を上回っていないと判定された場合には(S11:NO)、燃料電池温度TFCが充分低く、蒸気として燃料電池1内で移動する水分量が充分に少ないと判断できるので、そのまま冷却制御を終了する。一方、燃料電池温度TFCが冷却水循環停止温度T1を上回っていると判定された場合には(S11:YES)、燃料電池温度TFCが高く、燃料電池1内で蒸気として移動する水分量が多いと判断できる。
次に、二次電池3の残存容量QBを検出する(S12)。この結果、二次電池3の残存容量QBが基準容量QRを上回っているか否かを判定する(S13)。基準容量QRは、燃料電池1の次回始動時に必要とされる残存容量であり、本実施形態では二次電池3の充電率(SOC)が40%を下回らない容量に設定している。
S13による判定処理の結果、二次電池3の残存容量QBが基準容量QRを上回っていないと判定された場合には(S13:NO)、本実施形態の冷却制御を終了する。一方、二次電池3の残存容量QBが基準容量QRを上回っていると判定された場合には(S13:YES)、二次電池3の残存容量QBに余裕があるので、ウォータポンプ41を作動させる(S14)。これにより、冷却水経路40を介して燃料電池1に冷却水が循環し、燃料1を構成する各セル100の温度が均一化し、燃料電池1を構成する各セル100の温度分布を小さくすることができる。これにより、燃料電池1の両端に位置するセル100が他のセル100より低温となって、端セル100に水分が偏在することを抑制することができる。このとき、燃料電池1の各セル100の温度が均一になる程度に冷却水を循環させることができればいいので、ウォータポンプ41の回転数は燃料電池1の発電時における回転数より小さくてよい。
次に、ウォータポンプ41を所定停止時間だけ停止させる(S15)。この所定停止時間は、燃料電池温度TFCによって設定される。図5は、燃料電池温度TFCとウォータポンプ41のオンオフ時間との関係を示している。本実施形態では、ウォータポンプ41のオンオフを繰り返し行い、ウォータポンプ41を間欠的に作動させている。
図5に示すように、本実施形態ではウォータポンプ41の作動時間を一定とし、ウォータポンプ41の作動停止時間を、燃料電池温度TFCが高いほど短くし、燃料電池温度TFCが低くなるほど長くしている。つまり、上述のように燃料電池温度TFCが高いほど飽和蒸気圧が高く、燃料電池1内部の水分が蒸気として移動しやすいため、ウォータポンプ41の作動停止時間を短くしている。一方、燃料電池温度TFCが低いほど飽和蒸気圧が低く、燃料電池1内部の水分が移動しにくくなるため、ウォータポンプ41の作動停止時間を長くしている。これにより、ウォータポンプ41を作動させるモータ42の消費電力を燃料電池温度TFCに応じて低減することができる。
燃料電池温度TFCとウォータポンプ41の作動停止時間との関係は、燃料電池温度TFCに対するウォータポンプ41の適切な作動停止時間を予めマップ化しておけばよい。
次に、ウォータポンプ41の作動停止時間の経過後、上記S10に戻り、S11で燃料電池温度TFCが冷却水循環停止温度T1を上回っていないと判定されるか、あるいはS13で二次電池3の残存容量QBが基準容量QRを上回っていないと判定されるまで、S10〜S15の処理を繰り返し行う。
以上のように、燃料電池1の発電停止後、燃料電池温度TFCが燃料電池1内部での水分移動が起こりにくくなる温度となるまで、燃料電池1内に冷却水を循環させることで、各セル100の温度を均一化することができ、端セル100に水分が偏在することを抑制できる。これにより、燃料電池1の再始動時に端セル100の発電性能が悪化することを回避でき、燃料電池1の始動性を向上させることができる。
また、燃料電池温度TFCに応じてウォータポンプ41を間欠的に作動させることで、ウォータポンプ41を作動させるための消費電力を低減することができる。さらに、本実施形態では、従来から燃料電池システムに備えられている冷却系を用いるので、システムを複雑化させることなく、端セル100に水分が偏在することを抑制できる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。上記第1実施形態と同様の部分については説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
本第2実施形態の燃料電池1の発電停止時における燃料電池1の冷却制御について図6に基づいて説明する。図6は、制御部50がROM等に格納されたプログラムにしたがって行う掃気処理を示すフローチャートである。
本制御は、キースイッチがオフになり、燃料電池1の発電が停止することで開始する。まず、温度センサ47で燃料電池1の温度TFCを検出する(S20)。次に、燃料電池温度TFCが強制冷却停止温度T2を上回っているか否かを判定する(S21)。強制冷却停止温度T2は、燃料電池1内での水分の蒸発量が減少し、燃料電池1内における水分の移動が起こりにくくなる温度として設定することができる。本第2実施形態の強制冷却停止温度T2は、上記第1実施形態の冷却水循環停止温度T1と同一温度としてもよく、異なる温度としてもよい。
S21の判定処理の結果、燃料電池温度TFCが強制冷却停止温度T2を上回っていないと判定された場合には(S21:NO)、燃料電池温度TFCが充分低く、蒸気として燃料電池1内で移動する水分量が充分に少ないと判断できるので、そのまま冷却制御を終了する。一方、燃料電池温度TFCが強制冷却停止温度T2を上回っていると判定された場合には(S21:YES)、燃料電池温度TFCが高く、燃料電池1内の水分が蒸気として移動すると判断できる。
次に、二次電池3の残存容量QBを検出する(S22)。この結果、二次電池3の残存容量QBが基準容量QRを上回っているか否かを判定する(S23)。基準容量QRは、燃料電池1の次回始動時に必要とされる残存容量であり、本実施形態では二次電池3の充電率(SOC)が40%を下回らない容量に設定している。
S23による判定処理の結果、二次電池3の残存容量QBが基準容量QRを上回っていないと判定された場合には(S23:NO)、本実施形態の冷却制御を終了する。一方、二次電池3の残存容量QBが基準容量QRを上回っていると判定された場合には(S23:YES)、二次電池3の残存容量QBに余裕があるので、流路切替弁41により冷却水の流路をラジエータ44側に切り替え(S24)、ウォータポンプ41とファン43を作動させる(S25)。
次に、S20に戻り、S21で燃料電池温度TFCが強制冷却停止温度T2を上回っていないと判定されるか、あるいはS23で二次電池3の残存容量QBが基準容量QRを上回っていないと判定されるまで、S20〜S25の処理を繰り返し行う。本制御を終了する際に、ウォータポンプ41およびファン43が作動している場合には、これらの作動を停止させる(S26、27)。
以上のように、上記第1実施形態と同様、ウォータポンプ41を作動させることで、燃料電池1を構成する各セル100の温度分布を小さくすることができ、端セル100に水分が偏在することを抑制することができる。また、本実施形態では、ラジエータ44に冷却水を通過させ、ファン43を作動させているので、燃料電池1を急速に冷却することができる。
これにより、水の飽和蒸気圧を迅速に低くすることができるので、燃料電池1内で水分が移動することを抑制でき、端セル100に水分が偏ることを抑制でき、燃料電池1の再始動時に端セル100の発電性能が悪化することを回避でき、燃料電池1の始動性を向上させることができる。さらに、本実施形態では、従来より燃料電池システムに備えられている冷却系を用いるので、システムを複雑化させることなく、端セル100に水分が偏在することを抑制できる。
また、燃料電池1の発電停止時に燃料電池1の開放電圧が高いと、燃料電池1が劣化しやすいことが知られている(例えば特開2005−158555号公報参照)。燃料電池1の劣化反応は化学反応であるため、燃料電池温度TFCを低下させることで劣化反応を大幅に抑制できる。このため、本実施形態のように、燃料電池1の発電停止後、燃料電池1を強制的に冷却することで、燃料電池1の耐久性を向上させることができる。
(他の実施形態)
なお、上記第1実施形態でのウォータポンプ41の間欠的に作動させる制御と、上記第2実施形態での流路切替弁46による冷却水流路のラジエータ44側への切り替えとファン43を作動させる強制冷却制御を同時に行ってもよい。
各実施形態の燃料電池システムの構成図である。 図1の燃料電池の断面図である。 第1実施形態の燃料電池の冷却制御を示すフローチャートである。 水の飽和蒸気圧曲線を示すグラフである。 第1実施形態の燃料電池温度とウォータポンプのオンオフ制御との関係を示す図である。 第2実施形態の燃料電池の冷却制御を示すフローチャートである。
符号の説明
1…燃料電池、2…DC−DCコンバータ、3…二次電池、4…走行用インバータ、5…走行用モータ、6…W/P用インバータ、7…圧縮機用インバータ、8…電圧センサ、9…電流センサ、20…空気供給配管、21…空気放出配管、22…空気供給装置、圧縮機用モータ、24…エアフロセンサ、25…加湿装置、26…調圧装置、30…水素供給経路、31…水素排出経路、32…水素供給装置、33、35、36…シャット弁、34…調圧装置、40…冷却水経路、41…ウォータポンプ(W/P)、42…W/P用モータ、44…ラジエータ、47…温度センサ、50…制御部(ECU)。

Claims (6)

  1. 酸化剤ガスと燃料ガスを電気化学反応させて発電する燃料電池セル(100)を複数枚積層した燃料電池(1)と、
    前記燃料電池の温度を検出する温度センサ(47)と、
    前記燃料電池(1)に循環する冷却水が通過する冷却水経路(40)と、
    前記冷却水経路(40)に設けられ、前記燃料電池(1)に冷却水を循環させるための冷却水循環手段(41、42)と、
    前記冷却水循環手段(41、42)の作動を制御する制御手段(50)とを備え、
    前記制御手段(50)は、前記燃料電池(1)の発電停止後、前記前記燃料電池(1)の温度が、冷却水の循環停止を判断する基準となる冷却水循環停止温度を下回るまで、前記冷却水循環手段(41、42)により前記燃料電池(1)に冷却水を循環させることを特徴とする燃料電池システム。
  2. 前記制御手段(50)は、前記冷却水循環手段(41、42)を間欠的に作動させることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
  3. 前記燃料電池(1)の温度が低くなるにしたがって、前記冷却水循環手段(41、42)の作動停止時間を短くすることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池システム。
  4. 前記冷却水循環停止温度が50℃であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の燃料電池システム。
  5. 前記冷却水循環停止温度が20℃であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の燃料電池システム。
  6. 前記冷却水を放熱する放熱器(44)と、前記放熱器(44)に送風するファン(43)と、前記放熱器(44)をバイパスさせるバイパス経路(45)と、冷却水の流路を前記放熱器(44)と前記バイパス経路(45)とに切り替える流路切替弁(46)とを備え、
    前記制御手段(50)は、前記燃料電池(1)の発電停止時に、前記燃料電池(1)の温度が前記燃料電池(1)を急速に冷却する必要があるか否かを判定する基準となる強制冷却停止温度を上回っている場合に、前記流路切替弁(46)により冷却水の流路を前記放熱器(44)側に切り替えるとともに、前記ファン(43)を作動させることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の燃料電池システム。
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