JP2007160788A - ドライオフセット印刷用円筒状印刷版 - Google Patents

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Abstract

【課題】ドライオフセット印刷版に求められる張り込み精度に優れたドライオフセット印刷版の提供。
【解決手段】少なくとも円筒状支持体(A)、印刷層(B)を順に積層してからなる円筒状印刷版であって、印刷版の表面張力が0.04N/m以上であることを特徴とするドライオフセット印刷用円筒状印刷版。
【選択図】なし

Description

本発明はドライオフセット印刷機に装着して用いる円筒状印刷版に関する。
オフセット印刷は、平版印刷の一種であり、現在、普及している印刷方式の一つである。オフセット印刷とは、直接版から被印刷体にインキを転写させるのではなく、一度、ブランケットと呼ばれるゴム胴にインキを転写させ、その後、被印刷体にインキを転写させる方式である。この方式のため、凸版印刷方式と異なり、印刷物に圧力の痕が残らず、良好な印刷物を得ることができる。また、平版印刷の中でも湿し水を使用しないドライオフセット印刷方式があり、このドライオフセット印刷では、版は凸版を用いるが、凸版の凸部にインキを載せた後、ゴム胴にインキを転写させ、その後、被印刷体にインキを転写させる方式である。このドライオフセット方式では湿し水を使用しないため、インキのにじみがなく、よりインキの色再現に優れた印刷物が得られることや、幅広い被印刷用途への対応が可能であることから、各種プラスチックや缶などの曲面印刷が行われている。
ドライオフセット印刷に用いられる凸版としては、高再現性、生産性の観点から、感光性樹脂凸版が使用される。板状に成型された感光性樹脂を用い、ネガフィルムを感光性樹脂上に置き、ネガフィルムを通して、光を照射し架橋反応を起こさせた後、非架橋部分を現像液で洗い落とすという方法によって、感光性樹脂に凹凸を設け、印刷版とすることができる。
一方、感光性樹脂凸版を使用する印刷方法としてはフレキソ印刷が知られている。しかしながら、フレキソ印刷では凸部に転移させたインキを直接、被印刷体に転写させる方式であり、ドライオフセットとは異なる印刷方式である。インキについても、フレキソ印刷では低粘度化されたインキを使用し、更にインキ成分もオフセット印刷の油系インキではなく、水性インキを用いる。このように、フレキソ印刷用印刷版とドライオフセット印刷版では、印刷環境が大きく異なるため、それに伴い、求められる版性能も異なる。
フレキソ印刷では、印刷物の多色化が進み、印刷版の張り込み精度が求められるようになり、印刷版を印刷胴となるシリンダーや円筒状支持体に張り合わせた場合、顕微鏡などで拡大しながら、張り込むなど労力のかかる作業を行っていた。これに対して、作業時間の短縮化を目的に、円筒状支持体に感光性樹脂を積層させ、その円筒状の状態で製版工程を行うことが特開2000−267264号公報(特許文献1)、特開2003−25749号公報(特許文献2)、特開2003−295471号公報(特許文献3)で提案されている。
この印刷版の張り込み精度に関しては、ドライオフセット印刷ではフレキソ印刷以上の版張り込み精度が要求される。つまり、多色のフレキソ印刷を行う場合、各色ごとに乾燥工程があるため、インキ同士が液状状態で重なることはない。しかし、多色のドライオフセット印刷では用いる各インキ全てを、乾燥なしで、ブランケットに転写させることがあり、このブランケットにインキが転写された状態では、インキは未乾燥である。版の張り込み精度が低い場合は、各インキの転写位置に、正確な位置からのずれが発生し、その場合、インキ同士が混ざることが生じる。この場合、インキの発色が意図したものから変化するため、好ましくない。このため、ドライオフセット用印刷では、印刷版の張り込み精度要求が、フレキソ印刷よりも高い。
更には、シート状の印刷版を円筒状支持体上に、もしくは印刷シリンダー上に張り込んだ場合、印刷版に対して、円周方向に張力が発生するため、印刷版の変形が生じる。このことは、印刷版の画像の位置が変わってしまうことにもなるため、ネガ作成、もしくはレーザー描画によるパターン形成のときに、この変形に対する補正が必要となることになり、そのために実際の印刷テストを行うことがあった。
インキ溶剤に対する印刷版の耐膨潤性についても、フレキソ印刷以上であることがドライオフセット印刷版には求められる。つまり、製版を行った状態では張り込み精度が高い場合でも、インキの溶剤成分によって、版が膨潤した場合は、印刷される網点が大きくなることになり、そのため、隣接する網点同士が重なり、インキが混ざる可能性があるため、印刷版にはフレキソ印刷以上の耐膨潤性も求められる。また、インキ溶剤成分がフレキソ印刷とドライオフセット印刷では異なるため、耐溶剤性を満たす版性能も異なるものになる。
円筒状支持体上に印刷原版層を設け、円筒状態で製版工程を行い、円筒状印刷版を得ることは張り込み精度を改良する方法の有効な手段である。しかしながら、円筒状印刷版の場合は、張り込み精度が良好な反面、印刷版の位置調整を行う余地が少ないため、印刷中、インキ溶剤などによって版が膨潤した場合も、印刷版の位置調整することができない場合がある。もしくは、シート状印刷版の場合は版の取り替えが容易であるため、版がインキ溶剤による膨潤などによってダメージを受けた場合でも、印刷版のみを取り替えることが可能であるが、円筒状印刷版の場合では、円筒状支持体全体から交換する必要があるため、シート状印刷版以上にインキに対する膨潤性が求められる。
円筒状支持体に感光性樹脂を設け、その状態で製版工程を行い、円筒状印刷版を得ることが、特許文献1、特許文献2、特許文献3で提案されている。各公報では感光性樹脂のバインダーとして、モノビニル置換芳香族炭化水素モノマーと共役ジエンモノマーを重合して得られる熱可塑性エラストマーが用いられている。これら各報ではドライオフセット印刷に関する記述はなく、また、溶剤に関する膨潤に関する記述もない。
フレキソ印刷やドライオフセット用印刷を実行する印刷スリーブの作成装置が特開平10−198046号公報(特許文献4)で提案されている。この特許文献4では自動的に印刷スリーブを作成可能な装置について提案されているが、印刷版の溶剤に対する膨潤についての記述はない。
近年、製版工程において、現像工程が不要な製版技術が提案されており、その方法として、レーザーにて直接印刷原版を彫刻する方法が特開2004−314334号公報(特許文献5)、特開2004−262136号公報(特許文献6)、特開2004−262135号公報(特許文献7)で提案されている。これら各公報では、スリーブコア層、必要に応じてクッション層、液状の感光性樹脂を光硬化させた層を積層し、継ぎ目のない円筒状印刷原版について提案を行っており、これらの印刷原版をレーザー彫刻することによって印刷画像の彫刻を行い、印刷版としている。
特許文献6、特許文献5、特許文献7の各公報では円筒状のレーザー彫刻可能な感光性樹脂組成物の硬化層からなる印刷原版が提案されている。しかしながら、各公報においても、ドライオフセット印刷に関する技術、その溶剤に対する記述もない。
特開平11−170718号公報(特許文献8)では、レーザーを用いたレリーフの製造方法が提案されている。特許文献8ではエチレン性不飽和モノマーと光重合開始剤を少なくとも含有する感光性樹脂組成物をシート状に加工し、300〜500nmの光を照射して感光性樹脂組成を硬化させた後、この硬化物にレーザー光を照射することを特徴とするレリーフの製造方法が提案されている。しかしながら、円筒状支持体に感光性樹脂を積層することについては記述がない。感光性樹脂中の担体樹脂として、油性インキを使用する場合についてはポリアミド樹脂、部分ケン化ポリ酢酸ビニルなどの親水性樹脂が使用されることの記述があるが、溶剤に対する膨潤などの記述はない。
特開2005−257727号公報(特許文献9)では、SP値が8.1未満のゴム、エチレン性不飽和結合を有するモノマー、光重合開始剤、水分散性ラテックスを含有することを特徴とする感光性樹脂組成物が提案されている。しかしながら、ドライオフセットに関する記述もなく、更には円筒状印刷原版、円筒状印刷版に関する記述はない。
上述したようにドライオフセット印刷版に求められる張り込み精度に優れたドライオフセット用印刷版は見出されていないのが現状であった。
特開2000−267264号公報 特開2003−25749号公報 特開2003−295471号公報 特開平10−198046号公報 特開2004−314334号公報 特開2004−262136号公報 特開2004−262135号公報 特開平11−170718号公報 特開2005−257727号公報
ドライオフセット印刷版に求められる張り込み精度に優れたドライオフセット印刷版の提供。
本発明者は、鋭意検討し、少なくとも円筒状支持体(A)、印刷層(B)を順に積層してなる円筒状印刷版であって、印刷版の表面張力が0.04N/m以上であることを特徴とするドライオフセット印刷用円筒状印刷版により、ドライオフセット印刷版に求めらる張り込み精度に優れたドライオフセット印刷版の提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記の通りである。
1.少なくとも円筒状支持体(A)、印刷層(B)を順に積層してなる円筒状印刷版であって、印刷版の表面張力が0.04N/m以上であることを特徴とするドライオフセット印刷用円筒状印刷版。
2.印刷層(B)が、円筒状支持体(A)に積層された印刷原版層(C)を製版することによって得られることを特徴とする1.に記載のドライオフセット印刷用円筒状印刷版。
3.印刷層(B)の重量膨潤率が、印刷版溶解度パラメーター(SP値)が20.5(MJ/m1/2未満である溶剤に対して−20%以上20%以下であることを特徴とする1.又は2.に記載のドライオフセット印刷用円筒状印刷版。
4.円筒状支持体(A)が金属スリーブ、プラスチックスリーブ、ガラス強化繊維強化プラスチックスリーブから選ばれることを特徴とする1.から3.のいずれかに記載のドライオフセット印刷用円筒状印刷版。
5.印刷層(B)の硬度がショアDで10度以上90度以下であることを特徴とする1.から4.のいずれかに記載のドライオフセット印刷用円筒状印刷版。
6.印刷層(B)が印刷原版層(C)をレーザー彫刻することによって得られることを特徴とする、1.から5.のいずれかに記載のドライオフセット印刷用円筒状印刷版。
7.印刷原版層(C)が、数平均分子量1000以上30万以下の樹脂(c−1)、数平均分子量1000未満でその分子内に重合性不飽和基を有する有機化合物(c−2)、光重合開始剤(c−3)を含有する感光性樹脂組成物(c)を光硬化させ、印刷原版層(C)とすることを特徴とする1.から6.のいずれかに記載のオフセット印刷用円筒状印刷版。
8.円筒状支持体(A)と印刷層(B)との間に少なくとも1層以上の接着剤層、もしくは粘着剤層があることを特徴とする1.から7.のいずれかに記載のオフセット印刷用円筒状印刷版。
本発明により、ドライオフセット印刷版に求められる張り込み精度に優れたドライオフセット印刷版を提供することができる。
以下、本発明について、特にその好ましい態様を中心に、具体的に説明する。
本発明に使用する円筒状支持体(A)は、中空円筒状のスリーブ材料を用いることが好ましく、ニッケル、ステンレス、鉄、銅、クロム、チタン、アルミから選択される金属単体、合金などからなる金属スリーブ、プラスチックスリーブ、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維を強化繊維とする繊維強化プラスチックスリーブ、高分子フィルムスリーブを用いることができる。
これらの円筒状支持体(A)の厚みは薄いものでは0.01mmから、厚いものでは5mm以上が使用できるが、好ましくは0.05mmから3mmの範囲が好ましく、より好ましくは0.1mmから1.5mm、更に好ましくは0.1mmから0.5mmの範囲である。この0.5から3mmの範囲であれば、取り扱いが容易である。本発明で一般的に使用できる円筒状支持体(A)は例えば、6バール程度の圧縮空気圧で円筒状支持体(A)の内径が膨張でき、当該圧縮空気圧が開放された後に元の内径に戻るような特性を有し、これらスリーブコア層が有する巻き締まり特性が印刷胴上で機能することによって版胴上で固定され、印刷上支障なく使用できるものである。
金属スリーブの製造方法としては、エアーシリンダーなどの円筒状表面への電解めっき法あるいは無電解めっき法、シートの両端を溶接する方法、溶融させた金属液体を型へ押し出す方法などを挙げることができる。表面の均一性、膜厚均一性の観点から、特に電解めっき法、あるいは無電解めっき法が好ましい。
また、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維を強化繊維とし、マトリックスに不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂を用いた繊維強化プラスチック(FRP)スリーブも本発明では用いることができ、例えば、「FRP成型の実際」(森本尚夫著、株式会社高分子刊行会発行、1984年)に記載されているFRPを用いることができる。
また本発明で用いる円筒状支持体(A)の表面に物理的、化学的処理を行なうことにより、印刷層(B)との接着性を向上させることができる。物理的処理方法としてはサンドブラスト法、微粒子を含有して液体を噴射するウェットブラスト法、コロナ放電処理法、プラズマ処理法、紫外線あるいは真空紫外線照射法などを挙げることができる。また、化学的処理方法としては、強酸、強アルカリ処理、酸化剤処理、カップリング剤処理法などがある。
本発明の印刷層(B)は表面張力が0.04N/m以上であることが必要である。本発明でいう表面張力とは「化学大辞典」(東京化学同人株式会社発行、1989年)に定義されている表面張力を言う。つまり、液体が気体と接しているとき、液体はその表面をできるだけ縮小しようとする性質があり、この性質を単位長さ当たりの表面を縮める力として表わしたのが、表面張力である。
本発明の表面張力は特定の試験溶液の液滴を接触させて表面の濡れ性を測定する方法によって、求めることができ、JIS K 6768「プラスチック−フィルム及びシート−濡れ性試験方法」(日本規格協会編集、「JISハンドブック26プラスチックI」、2001年発行)に記載されている方法によって、表面張力の測定を行う。特定の試験溶液とは、水、メタノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、ホルムアミドを段階的に混合して調製する。測定する濡れ張力に応じて、各溶液の混合比率は公知であり、本発明でも使用することができる。測定する印刷版の表面に混合溶液を数滴、滴下して、ワイパー、綿棒、またはブラシを引いて広げ、試験用混合溶液の被膜を明るいところで観察し、2秒後の液膜の状態で行う。このとき、液膜が破れを生じないで、2秒以上、塗布されたときの状態で保っているのは濡れたことになる。濡れが2秒以上保つ場合は、さらに、次に表面張力の高い混合溶液に進み、また、逆に2秒以下で塗膜が破れる場合は、次の表面張力の低い混合溶液に進む。この操作を繰り返し、試験片の表面を正確に2秒間で濡らす混合液を選ぶ。このときの混合溶液の表面張力を印刷層(B)の表面張力とする。
本発明の溶解度パラメーター(SP値)とは、物質相互間の親和性を見るために一般的な尺度として使用されている値であり、多くの文献で定義されており、本発明でも用いることができる。例えば、「プラスチック・データブック」(旭化成アミダス株式会社、「プラスチック」編集部編、株式会社工業調査会発行、1999年)に述べられている。 つまり、溶解度パラメーター(SP値)とは、分子間の凝集エネルギー密度の平方根で表わされ、SP=(ΔE/V)1/2(ΔE:蒸発エネルギー、V:モル体積)であり、その単位は(MJ/m1/2である。
本発明では印刷層(B)が溶解度パラメーター(SP値)が20.5(MJ/m1/2未満である溶剤に対して、重量膨潤率が−20%以上20%以下であることが好ましく、印刷への影響の観点から、より好ましくは−15%以上15%以下、更に好ましくは−10%以上、10%以下である。
。ドライオフセット印刷のインキ成分の観点から、溶剤の溶解度パラメーターは20.5(MJ/m1/2未満であることが好ましく、より好ましくは、19.5(MJ/m1/2未満であり、更に好ましくは18.5(MJ/m1/2未満である。
溶解度パラメーターが20.5(MJ/m1/2未満の溶剤は上述した式でも求めることができ、また、既に算出され、報告されている溶剤も多く、本発明でも用いることができる。例えば、「プラスチック・データブック」(旭化成アミダス株式会社、「プラスチック」編集部編、株式会社工業調査会発行、1999年)に記載されている値を使用することがきる。溶解度パラメーターが20.5(MJ/m1/2未満の溶剤として、例えば、n−ブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−オクタンを挙げることができる。
溶剤に対する重量膨潤率の求め方は公知の方法で求めることができ、本発明ではJIS K 7114、プラスチックの耐薬品性試験方法(「JISハンドブック26プラスチックI」、日本規格協会編集、2001年発行)にて測定する。つまり、試験片を溶解度パラメーター(SP値)が既知である溶剤に23℃の条件下で、24時間、浸漬させそのときの重量変化を測定することで求めることができる。浸せき前後での重量の増加または損失百分率(%)は、M=(M−M)/M×100で表わされ、式中、M:重量変化率(%)、M:試験片の試験前の質量(g)、M:試験片の試験後の質量(g)であり、膨潤によって重量が増加した場合をプラス、抽出によって重量が減少した場合はマイナスとして表わすことができる。
本発明の印刷層(B)の硬度はショアDで10度以上、90度以下であることが好ましく、より好ましくは、20度以上80度以下、更に好ましくは10度以上90度以下の範囲が好ましい。ショアD以上であれば、ドライオフセットに使用されるブランケットへのインキ転移性や網点の再現性で好ましい結果を得ることができる。
本発明のショアD硬度は公知の方法で測定でき、本発明ではJIS K 7215 プラスチックのデュロメーター硬さ試験方法(「JISハンドブック26プラスチックI」、日本規格協会編集、2001年発行)のタイプDで測定される硬度である。つまり、圧子を用いて、くぼみ深さに対応して変化する試験荷重を試料に負荷し、生じたくぼみ深さから硬度を求めることができる。
本発明の印刷層(B)は印刷版の表面張力が0.04N/m以上であれば、印刷層(B)は公知の印刷版を使用することができ、製版を行い、レリーフを有する印刷版を、公知の粘着テープ、公知の接着剤を介して、円筒状支持体(A)に固定し、印刷層(B)とすることもできる。また、印刷原版層(C)を公知の印刷原版を、公知の粘着テープ、接着剤を介して円筒状支持体(A)に固定し、固定後、製版工程を行い、印刷層(B)を得ることもできる。
製版を行った印刷版を印刷層(B)とする場合には生産効率の観点から、感光性樹脂、より好ましくは液状型感光性樹脂を用いて印刷層(B)を作成することが行われており、本発明でも使用することができる。
液状型感光性樹脂は樹脂の回収が可能であることや水系の洗浄剤で現像できるため、印刷版として使用されており、本発明でも使用できる。本発明では公知の液状型感光性樹脂を使用でき、例えば、特開平7−295218号公報に記載の感光性樹脂などを挙げることができる。
液状型感光性樹脂は少なくとも1種類以上のプレポリマー、少なくとも1種類以上のエチレン性不飽和化合物、少なくとも1種類以上の光重合開始剤からなることが好ましい。
プレポリマーはウレタン結合を介して、ポリエステルセグメント、ポリエーテルセグメント、ポリブタジエンセグメントのいずれか、もしくはそれらの組み合わせから構成されることが好ましい。組み合わせるときの各セグメント比は被印刷体の種類によって調整し、また、プレポリマーは平均分子量が1000〜30000であることが好ましい。更にはプレポリマーには両末端にエチレン性不飽和基を導入することが好ましく、例えば、活性水素を有する官能基とエチレン性不飽和基を同時に有する化合物などを添加することで導入できる。物性などの観点から、プレポリマーは液状感光性樹脂全体の40重量%以上であることが好ましい。
ポリエステルセグメントを構成するジオール成分としては3−メチル−1,5−ペンタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコールなどの低分子ジオールや、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコールなどの高分子ポリエーテルジオールが挙げられる。また、目的に応じてトリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールなどを印刷品質や感光性樹脂の物性などに影響がない範囲で使用しても構わない。また、ジカルボン酸成分としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、マレイン酸、テレフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸などを挙げることができる。同様に開環重合によって得られるポリエステルセグメントを構成するラクトンとしてはβ−メチル−δ−バレロラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンなどを挙げることができる。
ポリエーテルセグメントを与えるポリエーテルジオールとしては例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−オキシプロピレンランダムまたはブロック共重合体ジオール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレン−オキシテトラメチレンランダムまたはブロック共重合体ジオール、ポリオキシプロピレン−オキシテトラメチレンランダムまたはブロック共重合体ジオールなどを挙げることができる。
ポリブタジエンセグメントを与える化合物としては末端水酸基を有する、1,4−ポリブタジエン、水添または非水添の1,2−ポリブタジエン、ブタジエン−スチレン共重合体、1,2−ポリブタジエン−アクリロニトリル共重合体を挙げることができる。
各セグメントはウレタン結合で連結されることが好ましいが、このウレタン結合はイソシアネート基を2個有する公知の芳香族、脂肪族、脂環族ジイソシアネートが用いられる。例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、p−フェレンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
プレポリマーには両末端にエチレン性不飽和基を導入することが好ましいが、この不飽和基の導入方法については特に制限がない。例えば、ポリエステルセグメントとポリエーテルセグメントとをジイソシアネートで連結させるとき、得られるプレポリマー前駆体の両末端をイソシアネート基にしておき、これに活性水素を持つ官能基とエチレン性不飽和基を同時に有する化合物を反応させることで導入できる。このような活性水素を有する官能基とエチレン性不飽和基を同時に有する化合物としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート(分子量300〜1000)、グリコール酸とグリシジル(メタ)アクリレートとの1:1付加反応物、グリセリン酸とグリシジル(メタ)アクリレートとの1:1付加反応生成物、グリセリンジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
エチレン性不飽和化合物として感光性樹脂に使用されている公知の不飽和化合物を使用することができる。例えば、アクリル酸やメタクリル酸などの不飽和カルボン酸または、そのエステル(例えば、アルキル−、シクロアルキル−、ハロゲン化アルキル−、アルコキシアルキル−、ヒドロキシ−アルキル−、アミノアルキル−、テトラヒドロフルフリル−、アリル−、グリシジル−、ベンジル−、フェノキシ−(メタ)アクリレート、アルキレングリコールまたはポリオキシアルキレングリコールのモノまたはジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリットテトラ(メタ)アクリレート)、アクリルアミド、メタクリアミドまたはその誘導体(例えば、アルキル基やヒドロキシアルキル基でN−置換またはN,N’置換した(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N,N’−アルキレンビス(メタ)アクリルアミド)、アリル化合物(例えば、アリルアルコール、アリルイソシアナート、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート)、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸またはそのエステル(例えば、アルキル、ハロゲン化アルキル、アルコキシアルキルのモノまたはジマレエート及びフマレート)、その他の不飽和化合物(例えば、スチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドンなど)が挙げられる。前記エチレン不飽和化合物は単独でも2種類以上を組み合わせても良い。感光性樹脂の物性の観点から、エチレン性不飽和化合物は1〜50重量%であることが好ましい。
本発明で用いる光重合開始剤としては公知の光重合開始剤を用いることができる。このような光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインやベンゾインエチルエーテル、ベンゾイン−n−プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル類、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンジル、ジアセチル、ジフェニルスルフィド、エオシン、チオニン、9,10−アントラキノン、2−エチル−9,10−アントラキノンなどが挙げられる。これらの光重合開始剤は単独でも2種類以上を組み合わせても良い。感光性樹脂の感度などの観点から、光重合開始剤は0.01〜10重量%であることが好ましい。
液状型感光性樹脂には用途や目的に応じて、熱重合禁止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、染料、滑剤、無機充填材、界面活性剤などを添加することができる。
液状型感光性樹脂は公知の手法にてフレキソ印刷版を作成することができ、好適な1例について説明する。
下部光源よりの活性光線を透過するガラス板上にネガフィルムを置き、薄い保護フィルムでカバーした後、その上に液状型感光性樹脂を流し、これを一定の版厚でスキージしながら支持体となるベースフィルムを張り合わせる。次に、上部光源によって支持体側から短時間の露光を行い、版の支持体全面に均一な薄い樹脂層、即ち床部形成層を析出させるバック露光工程を行う。下部光源よりネガフィルムの透明部を通して画像形成露光を行うレリーフ形成露光を行い、未硬化樹脂を除去洗浄する現像を行う。水中に現像済みの版全体を浸漬し、活性光線を照射して不完全硬化部を十分に硬化した後、乾燥する水中後露光及び乾燥工程を実施し、印刷版を製造することができる。
前記製版工程において露光に用いられる活性光線源としては高圧水銀灯、超高圧水銀灯、紫外線蛍光灯、カーボンアーク灯、キセノンランプなどが挙げられる。また、レリーフ像を形成するために用いられる透明画像担体としては、銀塩像による写真製版用のネガまたはポジフィルムが主に用いられる。未硬化樹脂の洗浄液としては例えば、水、アルカリ水溶液、界面活性剤液などが挙げられる。
一方、取り扱いの容易さなどから、固体型の感光性樹脂組成物を製版することで得られる印刷版も使用されており、本発明でも使用することができる。
固体型感光性樹脂組成はバインダーであるポリマー、少なくとも1種類以上のエチレン性不飽和化合物、少なくとも1種類以上の光重合開始剤との混合物からなることが好ましい。
バインダーとしては、公知のポリマーを使用することができ、例えば、ポリアミド樹脂、部分ケン化ポリ酢酸ビニルなどの樹脂を使用することが好ましい。エチレン不飽和化合物としては公知のラジカル重合により架橋可能な物質であれば特に限定されない。エチレン性不飽和化合物としては、エチレン、プロピレン、スチレン、ジビニルベンゼンなどのオレフィン類、アセチレン類、(メタ)アクリル酸及びその誘導体、ハロオレフィン類、アクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類、(メタ)アクリルアミド及びその誘導体、アリルアルコール、アリルイソシアネートなどのアリル化合物、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸及びその誘導体、酢酸ビニル類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、シアネートエステル類などが挙げられるが、その種類の豊富さ、価格などの観点から(メタ)アクリル酸及びその誘導体が好ましい例である。該誘導体は、アルキル−、シクロアルキル−、ビシクロアルキル−、シクロアルケン−、ヒドロキシ−、ビシクロアルケン−などの脂環族、ベンジル−、フェニル−、フェノキシ−などの芳香族、アルキル−、ハロゲン化アルキル−、アルコシアルキル−、ヒドロキシアルキル−、アミノアルキル−、テトラヒドロフルフリル−、アリル−、グリシジル−、アルキレングリコール−、ポリオキシアルキレングリコール−、(アルキル/アリルオキシ)ポリアルキレングリコール−やトリメチロールプロパンなどの多価アルコールのエステルなどが挙げられる。
光重合性開始剤としては、芳香族ケトン類やベンゾイルエーテル類などの公知のラジカル重合開始剤を使用することができる。例えば、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、α−メチロールベンゾインメチルエーテル、α−メトキシベンゾインメチルエーテル、2,2−ジメトキシフェニルアセトフェノンなどの中から使用することができ、それらを組み合わせても使用できる。
これら固体型感光性樹脂組成を、ポリエチレンテレフタレートフィルムや鉄、アルミ、ニッケルなどの金属板に積層し、固体型感光性樹脂版とすることできる。この固体型感光性樹脂を公知の方法で製版を行い、印刷版を得ることができる。
製版処理において用いられる、感光性樹脂を光硬化させる紫外線露光源として、高圧水銀灯や紫外線蛍光灯、カーボンアーク灯、キセノンランプなどがある。紫外線を透明画像担体を通して少なくとも、感光性樹脂に露光することにより目的の画像を得ることができる。
未露光部を洗い出すのに用いられる現像溶剤としては、例えば、1,1,1−トリクロロエタン、テトラクロロエチレンなどの塩素系溶剤や、ヘプチルアセテート、3−メトキシブチルアセテートなどのエステル類、石油留分、トルエン、デカリンなどの炭化水素類やこれらにプロパノール、ブタノールなどのアルコール類を混合したもの、水、もしくは水に界面活性剤を加えた溶液を挙げることができる。未露光部洗い出しはノズルからの噴射によって、またはブラシによるブラッシングによって行われる。得られた印刷版はリンス洗浄し、乾燥後に後露光を実施して印刷版を得る。
得られた印刷版は公知の接着剤、粘着剤を介して、円筒状支持体(A)に積層され、印刷層(B)とすることができる。接着剤もしくは粘着剤としては、(メタ)アクリル樹脂、シリコン樹脂、ポリスチレンブロックを有するブロックコポリマー、ポリアミドを挙げることができる。更には「接着・粘着の事典」(山口章三郎監修、株式会社朝倉書店発行、1986年)を参照することができる。
また、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリイミドフィルムの両面に粘着剤、もしくは接着剤を塗布した粘着テープ、接着テープも得られた印刷版と円筒状支持体(A)を固定するときに使用できる。粘着剤、接着剤は公知の粘着剤、接着剤を使用することができ、例えば、(メタ)アクリル樹脂、シリコン樹脂、ポリスチレンブロックを有するブロックコポリマー、ポリアミドを挙げることができる。更には「接着・粘着の事典」(山口章三郎監修、株式会社朝倉書店発行、1986年)を参照することができる。
また、版張り込み精度の観点からは円筒状支持体(A)に、公知の接着剤、粘着剤を介して、上述した感光性樹脂を積層し、製版を行い、印刷層(B)を得ることが好ましい。製版方法は、露光、洗浄を円筒状に適したランプ設備、ブラシ設備とする以外は上述した方法にて行うことが可能である。
円筒状支持体(A)に積層する感光性樹脂は上述した公知の液状型感光性樹脂、固体型感光性樹脂を用いることができる。
生産効率の観点から、製版工程が不要なレーザーによって直接彫刻することにより印刷版を作成することが好ましい。公知のレーザー彫刻可能な感光性樹脂を、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどのポリエステルフィルムや、鉄、アルミ、ニッケルなどの金属板に積層し、光硬化させ、印刷原版層(C)とし、その後レーザー彫刻し、印刷版を得ることができる。この印刷版を公知の粘着剤、もしくは接着剤を介して、円筒状支持体(A)に固定し、印刷層(B)とすることができる。このようなレーザー彫刻可能な感光性樹脂としては、特開2004−314334号公報、特開2004−262136号公報、特開2004−262135号公報、特開2004−255812号公報、特開2004−255811号公報に記載の液状型感光性樹脂を挙げることができる。
しかしながら、張り込み精度や生産効率の観点から、製版工程が不要なレーザーによって直接彫刻することが可能な感光性樹脂を円筒状支持体(A)に積層した後、光硬化させ、印刷原版層(C)とし、レーザーにより直接彫刻し、印刷版を作成することが生産効率の観点から好ましい。
レーザー彫刻可能な感光性樹脂は、成形性の容易さの観点から、数平均分子量1000以上30万以下の樹脂(c−1)、数平均分子量1000未満でその分子内に重合性不飽和基を有する有機化合物(c−2)、光重合開始剤(c−3)を含有する感光性樹脂組成物(c)からなることが好ましい。
樹脂(c−1)は20℃で液状であることが好ましい。ここで言う液状の樹脂とは容易に流動変形し、かつ冷却により変形された形状に固化できるという性質を有する高分子体を意味し、外力を加えたときに、その外力に応じて瞬時に変形し、かつ外力を除いたときには短時間に元の形状を回復する性質を有するエラストマーに対応する言葉である。樹脂(c−1)が20℃において液状樹脂であれば、感光性樹脂組成物も液状となる。これから得られるレリーフ画像作成用原版を円筒状に成型するとき、良好な厚み精度や寸法精度を得ることができる感光性樹脂組成物(c)は、好ましくは20℃における粘度が10Pa・s以上10kPa・s以下である。さらに好ましくは50Pa・s以上5kPa・s以下である。10Pa・s以上であれば、作製される印刷原版の機械的強度が十分であり、円筒状印刷原版に変形するときであっても形状を保持し易く、加工し易い。粘度が10kPa・s以下であれば、常温でも変形し易く、加工が容易である。本発明に使用できる感光性樹脂組成物(c)は円筒状の印刷原版に成型し易く、プロセスも簡便である。
本発明の樹脂(c−1)は、特にその組成は限定されない。好ましくは樹脂(c−1)として数平均分子量1000以上30万以下、より好ましくは2000以上20万以下、更に好ましくは5000以上10万以下である。樹脂(c−1)の数平均分子量が1000以上であれば、後に架橋して作成する原版が強度を保ち、この原版から作成したレリーフ画像は強く、印刷版などとして用いる場合、繰り返しの使用にも耐えられる。また、樹脂(c−1)の数平均分子量の上限は30万以下が好ましい。30万以下であれば、感光性樹脂組成物(c)の粘度が過度に上昇することもなく、シート状、あるいは円筒状のレーザー彫刻印刷原版を作成する際に過熱押し出しなどの複雑な工法は必要ない。ここで言う数平均分子量とはゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定し、分子量既知のポリスチレンで検量換算した値である。
用いる樹脂(c−1)としては、液状化し易い樹脂や分解し易い樹脂が好ましい。分解し易い樹脂としては、分子中に分解し易いモノマー単位としてα―メチルスチレン、α−メトキシスチレン、アクリルエステル類、メタクリエステル類、エステル化合物、エーテル化合物、ニトロ化合物、カーボネート化合物類、カルバモイル化合物、ヘミアセタールエステル化合物類、オキシエチレン化合物、脂肪族環状化合物などが含まれていることが好ましい。特にポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラエチレングリコールなどのエーテル類、脂肪族ポリカーボネート類、脂肪族カルバネート類、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ニトロセルロース、ポリオキシエチレン、ポリノルボルネン、ポリシクロヘキサンジエン水添物、あるいは分岐構造の多いデンドリマーなどの分子構造を有するポリマーは、分解し易いものの代表例である。また、分子中に酸素原子を多数含有するポリマーが分解性の観点から好ましい。これらの中でもカーボネート基、カルバメート基、メタクリル基をポリマー主鎖中に有する化合物は熱分解性が高く好ましい。例えば、(ポリ)カーボネートジオールや(ポリ)カーボネートジアミンを原料として合成したポリアミドなどを熱分解性の良好なポリマーとして挙げることができる。これらのポリマー主鎖、側鎖に重合性不飽和基を含有しているものであっても構わない。特に、末端に水酸基、アミノ基、カルボキシル基などの反応性官能基を有する場合には、主鎖末端に重合性不飽和基を導入することも容易である。
樹脂(c−1)は分子内に重合性不飽和基を有しても構わない。特に好ましいものとしては1分子あたり平均で0.7以上の重合性不飽和基を有するポリマーを挙げることができる。1分子あたり平均で0.7以上であれば、本発明の、樹脂組成物より得られる印刷原版の機械強度に優れ、レーザー彫刻時にレリーフ形状が崩れ難くなる。さらにその耐久性も良好で、繰り返しの使用にも耐えられるものとなり好ましい。印刷版原版の機械強度を考慮すると、樹脂(c−1)の重合性不飽和基は1分子あたり0.7以上が好ましく、1を超える量が更に好ましい。ここで言う分子内とは高分子主鎖の末端、高分子側鎖の末端や高分子主鎖中や側鎖中に直接、重合性不飽和基が付いている場合なども含まれる。
樹脂(c−1)の例として、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類、ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのポリジエン類、ポリ塩化ビニルポリ塩化ビニリデンなどのポリハロオレフィン類、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリアクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル類、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリビニルエーテルなどのC−C連鎖高分子の他、ポリフェニレンエーテルなどのポリエーテル類、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリウレタン、ナイロン、ポリウレア、ポリイミドなどの主鎖にヘテロ原子を有する高分子などからなる群より選ばれる1種若しくは2種以上のものを用いることができる。複数の高分子を用いる場合の形態としては共重合体、ブレンドのどちらでもよい。
特にフレキソ印刷版用途のように柔軟なレリーフ画像が必要な場合には樹脂(c−1)として、一部、ガラス転移温度が20℃以下の液状樹脂、更に好ましくはガラス転移温度0℃以下の液状樹脂を用いることが好ましい。このような液状樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリブタジエン、水添ポリブタジエン、ポリイソプレン、水添ポリイソプレンなどの炭化水素類、アジペート、ポリカプロラクトンなどのポリエステル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラエチレングリコールなどのポリエーテル類、脂肪族ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサンなどのシリコーン類、(メタ)アクリル酸及び/またはその誘導体の重合体及びこれらの混合物やコポリマー類が挙げられる。その含有量は樹脂(c−1)全体に対して30wt%以上含有することが好ましい。
樹脂(c−1)を製造する方法としては、例えば直接、重合性の不飽和基をその分子末端に導入したものを用いても良いが、別法として、水酸基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、ケトン基、ヒドラジン基、イソシアネート基、環状カーボネート基、エステル基などの反応性基を複数有する数千程度の分子量の上記成分の反応性基と結合しうる基を複数有する結合剤(例えば水酸基やアミノ基の場合のポリイソシアネートなど)を反応させ、分子量の調節、及び末端の結合性基への変換を行った後、この末端結合基と反応する基と重合性不飽和基を有する有機化合物と反応させて末端に重合性不飽和基を導入する方法が好適に挙げられる。
本発明の有機化合物(c−2)はラジカル重合反応に関与する不飽和結合を有した化合物であり、樹脂(c−1)との希釈のし易さを考慮すると数平均分子量は1000以下が好ましい。有機化合物(c−2)は例えば、エチレン、プロピレン、スチレン、ジビニルベンゼンなどのオレフィン類、アセチレン類、(メタ)アクリル酸及びその誘導体、ハロオレフィン類、アクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類、(メタ)アクリルアミド及びその誘導体、アリルアルコール、アリルイソシアネートなどのアリル化合物、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸及びその誘導体、酢酸ビニル類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、シアネートエステル類などが挙げられるが、その種類の豊富さ、価格などの観点から(メタ)アクリル酸及びその誘導体が好ましい例である。
該誘導体は、シクロアルキル−、ビシクロアルキル−、シクロアルケン−、ビシクロアルケン−などの脂環族、ベンジル−、フェニル−、フェノキシ−などの芳香族、アルキル−、ハロゲン化アルキル−、アルコシアルキル−、ヒドロキシアルキル−、アミノアルキル−、テトラヒドロフルフリル−、アリル−、グリシジル−、アルキレングリコール−、ポリオキシアルキレングリコール−、(アルキル/アリルオキシ)ポリアルキレングリコール−やトリメチロールプロパンなどの多価アルコールのエステルなどが挙げられる。
本発明において、これら重合性の不飽和結合を有する有機化合物(c−2)はその目的に応じて1種もしくは2種以上のものを選択できる。例えば、印刷版として用いる場合、印刷インキの溶剤であるアルコールやエステルなどの有機溶剤に対する膨潤を抑えるために用いる有機化合物として長鎖脂肪族、脂環族または芳香族の誘導体を少なくとも1種以上有することが好ましい。本発明の樹脂成分より得られる印刷原版の機械強度を高めるためには、有機化合物(c−2)としては脂肪族または芳香族の誘導体が少なくとも1種以上有することが好ましく、この場合、有機化合物(c−2)の全体量の20wt%であることが好ましく、更に好ましくは50wt%以上である。
印刷版の反発弾性を高めるため、例えば特開平7−239548号に記載されているようなメクリルモノマーを使用するとか、公知の印刷用感光性樹脂の技術知見などを目的に応じて用いることができる。
本発明の光重合開始剤(c−3)は公知の光重合開始剤を使用することができる。光重合開始剤として、水素引き抜き型光重合開始剤及び/または崩壊型光重合開始剤を用いることができる。
水素引き抜き型光重合開始剤は公知の水素引き抜き型光重合開始剤を使用することができ、限定されないが、芳香族ケトンを用いることが好ましい。芳香族ケトンは光励起により効率良く励起三重項状態になり、この励起三重項状態は周囲の媒体から水素を引き抜いてラジカルを発生する機構が提案されている。本発明で用いる水素引き抜き型光重合開始剤は励起三重項状態を経て周囲の媒体から水素を引き抜いてラジカルを発生する化合物であれば、何でも構わない。芳香族ケトンとして、ベンゾフェノン類、ミヒラーケトン類、キサンテン類、チオキサントン類、アントラキノン類を挙げることができ、これらの群から選ばれる少なくとも1種の化合物を用いることが望ましい。ベンゾフェノン類とはベンゾフェノンあるいはその誘導体を指し、具体的には3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−テトラメトキシベンゾフェノンなどである。ミヒラーケトン類とはミヒラー及びその誘導体をいう。キサンテン類とはキサンテン及びアルキル基、フェニル基、ハロゲン基で置換された誘導体をさし、エチルチオキサントン、メチルチオキサントン、クロロチオキサントンなどを挙げることができる。アントラキノン類とはアントラキノン及びアルキル基、フェニル基、ハロゲン基で置換された誘導体をいう。
崩壊型重合開始剤は、光吸収後に分子内で開裂反応が発生し、活性ラジカルが生成する化合物であり、本発明でも特に限定されない。具体的には、ベンゾインアルキルエーテル類、2,2−ジアルコシ−2−フェニルアセトフェノン類、アセトフェノン類、アシルオキシムエステル類、アゾ化合物、有機イオウ化合物類、ジケトン類などを挙げることができる。これらの群から選ばれる少なくとも1種の化合物を用いることが好ましい。ベンゾインアルキルエーテル類としてはベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、「感光性高分子」(講談社、1977年出版、頁228)に記載の化合物を挙げることができる。2,2−ジアルコシ−2−フェニルアセトフェノン類としては2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンなどを挙げることができる。アセトフェノン類としてはアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノンなどを挙げることができる。アシルオキシムエステル類としては、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−ベンゾイル)オキシムなどを挙げることができる。アゾ化合物としては、アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾニウム化合物、テトラゼン化合物などを挙げることができる。有機イオウ化合物としては芳香族チオール、モノ及びジスルフィド、チウラムスルフィド、ジチオカルバメート、S−アシルジチオケルバメート、チオスルホネート、スルホキシド、スルフェネート、ジチオカルボネートなどを挙げることができる。
光重合開始剤(c−3)は感光性樹脂組成物(c)全体に対し、0.1wt%以上10wt%以下であることが好ましい。水素引き抜き型光重合開始剤の添加量は感光性樹脂組成物(c)全体量の0.1wt%以上10%以下が好ましく、より好ましくは0.5wt%以上5wt%以下であることが好ましい。崩壊型光重合開始剤の添加量は感光性樹脂組成物(c)全体の0.1wt%以上10%以下が好ましく、より好ましくは0.3wt%以上3wt%以下である。感光性樹脂の光硬化性の観点から、光重合開始剤は水素引く抜き型光重合開始剤と崩壊型光重合開始剤を組み合わせることが好ましい。
本発明に使用できる感光性樹脂組成物(c)には無機多孔質体を添加することが好ましく、特にレーザー彫刻用印刷原版を製造するときはより好ましい。無機多孔質体とは、粒子中に微小細孔を有する、あるいは微小な空隙を有する無機粒子であり、レーザー彫刻において多量に発生する粘稠な液状カスの除去を最大の目的として添加するものであり、数平均粒子径、比表面積、平均細孔径、細孔容積、灼熱減量がその性能に大きく影響する。
本発明の無機多孔質体は数平均粒径が0.1〜100μmであることが好ましい。この数平均粒径の葉により小さいものを用いた場合、本発明の樹脂組成物より得られる原版をレーザーで彫刻するときに粉塵が舞い、彫刻装置を汚染しやすい。他方、上記数平均粒径の範囲より大きなものを用いた場合、レーザー彫刻したときレリーフ画像に欠損が生じる場合がある。より好ましい平均粒子径の範囲は0.5〜20μmであり、更に好ましい範囲は3〜10μmである。本発明の多孔質無機吸収剤の平均粒子径はレーザー散乱粒子径分布測定装置を用いて測定することができる。
本発明の無機多孔質体の比表面積の範囲は10m/g以上1500m/g以下であることが好ましい。より好ましい範囲は100m/g以上800m/g以下である。比表面積が10m/g以上である場合、レーザー彫刻時の液状カスの除去が充分となり、また、1500m/g以下であれば、感光性樹脂組成物(c)の粘度上昇を抑え、また、チキソトロピー性を抑えることができる。比表面積は−196℃における窒素の吸着等温線からBET式に基づいて求められる。
本発明に使用される無機多孔質体の平均細孔径はレーザー彫刻時に発生する液状カスの吸収量に極めて大きく影響を及ぼす。平均細孔径の好ましい範囲は1nm以上1000nm以下、より好ましくは2nm以上200nm以下、更に好ましくは2nm以上200nm以下、特に好ましくは2nm以上50nm以下である。平均細孔径が1nm以上であれば、レーザー彫刻時に発生する液状カスの吸収性が確保でき、1000nm以下である場合、粒子の比表面積が大きく液状カスの吸収量を十分に確保できる。
無機多孔質体の平均細孔径は窒素吸着法を用いて測定した値である。平均細孔径が2〜50nmのものはメソ孔と呼ばれ、メソ孔を有する多孔質粒子が液状カスを吸収する能力が極めて高い。本発明の細孔径分布は−196℃における窒素の吸着等温線から求められる。
無機多孔質体の細孔容積は0.1ml/g以上10ml/g以下が好ましく、より好ましくは0.2ml/g以上5ml/g以下である。細孔容積が0.1ml/g以上の場合、粘稠性液状カスの吸収量は十分であり、また、10ml/g以下の場合、粒子の機械強度を確保することができる。本発明において細孔容積の測定には、窒素吸着法を用いる。
液状カス吸着量を評価する指標として、吸油量がある。これは、無機多孔質体100gが吸収する油の量で定義する。本発明で用いる無機多孔質体の吸油量の好ましい範囲は、10ml/100g以上2000ml/100g以下、より好ましくは50ml/100g以上1000ml/100g以下である。吸油量が10ml/100g以上であれば、レーザー彫刻時に発生する液状カスの除去が十分であり、また2000ml/100g以下であれば、無機多孔質体の機械的強度を十分に確保できる。吸油量の測定は、JIS−K5101にて行った。
無機多孔質体は、特に赤外線波長領域のレーザー光照射により変形あるいは溶融せずに多孔質性を保持することが好ましい。950℃において2時間処理した場合の灼熱減量は、15wt%以下が好ましく、より好ましくは10wt%以下である。
無機多孔質体の粒子形状は特に限定するものではなく、球状、扁平状、針状、無定形、あるいは表面に突起のある粒子などを使用することができる。特に耐磨耗性の観点からは、球状粒子が好ましい。また、粒子の内部が空洞になっている粒子、シリカスポンジ等の均一な細孔径を有する球状顆粒体などを使用することも可能である。特に限定するものではないが、例えば、多孔質シリカ、メソポーラスシリカ、シリカ−ジルコニア多孔質ゲル、ポーラスアルミナ、多孔質ガラス等を挙げることができる。また、層状粘土化合物などのように、層間に数nm〜100nmの空隙が存在するものについては、細孔径を定義できないため、本発明においては層間に存在する空隙の間隔を細孔径と定義する。
更に、これらの細孔あるいは空隙にレーザー光の波長の光を吸収する顔料、染料等の有機色素を取り込ませることもできる。
また、無機多孔質体の表面をシランカップリング剤、チタンカップリング剤、その他の有機化合物で被覆し表面改質処理を行い、より親水性化あるいは疎水性化した粒子を用いることもできる。
本発明において、これらの無機多孔質体は1種類もしくは2種類以上のものを選択でき、無機多孔質体を添加することによりレーザー彫刻時の液状カスの発生抑制、及びレリーフ印刷版のタック防止等の改良が有効に行われる。
本発明に用いる感光性樹脂組成物(c)における樹脂(c−1)、有機化合物(c−2)、及び無機多孔質体の割合は、通常、樹脂(c−1)100重量部に対して、有機化合物(c−2)は5〜200重量部が好ましく、20〜100重量部の範囲がより好ましい。又、無機多孔質体は1〜100重量部が好ましく、2〜50重量部の範囲がより好ましい。更に好ましい範囲は、2〜20重量部である。
有機化合物(c−2)の割合が、5重量部以上の場合、得られる印刷版などの硬度と引張強伸度のバランスが良く、200重量部以下の場合には架橋硬化の際の収縮を抑え、厚み精度の悪化を防ぐことができる。
又、無機多孔質体の量が1重量部以上の場合、樹脂(c−1)及び有機化合物(c−2)の種類によらず、版面のタック防止効果、及びレーザー彫刻した際に、彫刻液状カスの発生を抑制するなどの効果を十分発揮することができ、100重量部以上の場合には、印刷版が脆くならず、透明性を保つことができ、また、特にフレキソ版として利用する際には、硬度が高くなりすぎることを抑えることができる。光、特に紫外線を用いて感光性樹脂組成物(c)を硬化させレーザー彫刻印刷原版を作製する場合、光線透過性が硬化反応に影響する。したがって、用いる無機多孔質体の屈折率が感光性樹脂組成物(c)の屈折率に近いものを用いることが有効である。
感光性樹脂組成物(c)中に無機多孔質体を混合する方法として、熱可塑性樹脂を加熱して流動化させた状態で直接無機多孔質体を添加する方法、あるいは熱可塑性樹脂と光重合性有機化合物(c−2)を最初に混錬した中に無機多孔質体を添加する方法のいずれでも構わない。ただし、特に分子量の低い光重合性有機物(c−2)に直接、無機多孔質体を混合する方法は避けることが好ましい。すなわち、この第三の方法を用いた場合、無機多孔質体のカス吸収性能を低下させることがある。
その他、本発明の感光性樹脂組成物(c)には用途や目的に応じて重合禁止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、滑剤、界面活性剤、可塑剤、香料などを添加することができる。
印刷原版層(C)がレーザー彫刻可能である場合は、無機多孔質体微粒子を含有した感光性材料を光架橋硬化させ、形成したものであることが好ましい。したがって、有機化合物(c−2)の重合性不飽和基、あるいはポリマーと有機化合物(c−2)の重合性不飽和基が反応することにより3次元架橋構造が形成され、通常用いるエステル系、ケトン系、芳香族系、エーテル系、アルコール系、ハロゲン系溶剤に不溶化する。この反応は、有機化合物(c−2)同士、ポリマー同士、あるいはポリマーと有機化合物(c−2)との間で起こり、重合性不飽和基が消費される。また、光重合開始剤を用いて架橋硬化させる場合、光重合開始剤が光により分解されるため、前記架橋硬化物を溶剤で抽出し、GC−MS法(ガスクロマトグラフィーで分離したものを質量分析する方法)、LC−MS法(液体クロマトグラフィーで分離したものを質量分析する方法)、GPC−MS法(ゲル浸透クロマトグラフィーで分離し質量分析する方法)、LC−NMR法(液体クロマトグラフィーで分離したものを核磁気共鳴スペクトルで分析する方法)を用いて解析することにより、未反応の光重合開始剤および分解生成物を同定することができる。
更に、GPC−MS法、LC−MS法、GPC−NMR法を用いることにより、溶剤抽出物中の未反応のポリマー、未反応の有機化合物(c−2)、および重合性不飽和基が反応して得られる比較的低分子量の生成物についても溶剤抽出物の分析から同定することができる。3次元架橋構造を形成した溶剤に不溶の高分子量成分については、熱分解GC−MS法を用いることにより、高分子量体を構成する成分として、重合性不飽和基が反応して生成した部位が存在するかを検証することが可能である。例えば、メタクリレート基、アクリレート基、ビニル基等の重合性不飽和基が反応した部位が存在することを質量分析スペクトルパターンから推定することができる。熱分解GC−MS法とは、試料を加熱分解させ、生成するガス成分をガスクロマトグラフィーで分離した後、質量分析を行う方法である。架橋硬化物中に、未反応の重合性不飽和基又は重合性不飽和基が反応して得られた部位と共に、光重合開始剤に由来する分解生成物や未反応の光重合開始剤が検出されると、感光性樹脂組成物を光架橋硬化させて得られたものであると結論付けることができる。
本発明の感光性樹脂組成物(c)を円筒状に成形する方法は、既存の樹脂成形方法を用いることができる。例えば、注型法、ポンプや押し出し機などの機械で樹脂をノゾルやダイスから押し出し、ブレードで厚みを合わせる、ロールによりカレンダー加工して厚みを合わせる方法などを例示できる。その際、樹脂の性能を落とさない範囲で加熱しながら、成形を行うことは可能である。また、必要に応じて圧延処理、研削処理などを施しても良い。
成形した感光性樹脂組成物(c)層は光照射により架橋せしめ、印刷原版層(C)を作成する。また、成形しながら光照射により架橋させることもできる。硬化に用いられる光源としては高圧水銀灯、超高圧水銀灯、紫外線蛍光灯、殺菌灯、カーボンアーク灯、キセノンランプ、メタルハライドランプなどが挙げることができる。感光性樹脂組成物(c)層に照射される光は200nmから300nmの光を有することが好ましい。特に水素引き抜き型光重合開始剤はこの波長領域に強い光吸収を有するものが多いため、200nmから300nmの波長の光を有する場合、感光性樹脂硬化物層表面の硬化性を確保できるため、好ましい。硬化に用いる光源は1種類でも構わないが、波長の異なる2種以上の光源を用いて硬化させることにより、樹脂の硬化性が向上することがあるので、2種類以上の光源を用いることも差し支えない。
レーザー彫刻に用いる印刷原版層(C)の厚みはその目的に応じて任意に設定して構わないが、印刷版として用いる場合には、一般的に0.1〜7mmの範囲が好ましい。場合によっては組成の異なる材料を複数積層しても構わない。
本発明の印刷原版層(C)と円筒状支持体(A)の間に、エラストマーからなるエラストマークッション層を形成することもできる。一般的にレーザー彫刻される層の厚さは0.1〜数mmであるため、それ以外の下部層は組成の異なる材料であっても構わない。エラストマークッション層としてはショアA硬度が20から70度のエラストマーであることが好ましい。ショアA硬度が20度以上である場合、適度に変形するため、印刷品質を確保できる。より好ましいショアA硬度の範囲は30から60度である。
前記エラストマークッション層は特に限定せず、熱可塑性エラストマー、光硬化型エラストマー、熱硬化型エラストマーなどゴム弾性を有するものであれば、何でも構わない。ナノメーターレベルの微細孔を有する多孔質エラストマー層であっても良い。特に加工性の観点から、液状型感光性樹脂組成物を用い、硬化後にエラストマー化する材料を用いることが好ましい。
エラストマークッション層に用いる熱可塑性エラストマーの具体例としては、スチレン系熱可塑性エラストマーである、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンブロックコポリマー、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレンブロックコポリマー、ポリスチレン−ポリエチレン/ポリブチレン−ポリスチレンブロックコポリマーなど、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、シリコン系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマーなどを挙げることができる。
光硬化型エラストマーとしては、前記熱可塑性エラストマーに光重合モノマー、可塑剤及び光重合開始剤を混合したもの、プラストマー樹脂に光重合モノマー、光重合開始剤などを混合した液状成分を挙げることができる。また、硫黄架橋型ゴム、有機過酸化物、フェノール樹脂初期縮合物、キノンジオキシム、金属酸化物、チオ尿素などの非硫黄架橋ゴムを用いることもできる。更に、テレケリック液状ゴムを反応する酸化剤を用いて3次元架橋させてエラストマー化したものも使用できる。
本発明のレーザー彫刻版の表面に改質層を形成させることにより、印刷版表面のタックの低減、インク濡れ性の向上を行うことができる。改質剤としては、シランカップリング剤あるいはチタンカップリング剤などの表面水酸基と反応する化合物で処理した被膜、あるいは多孔質無機粒子を有するポリマーフィルムを挙げることができる。シランカップリング剤、およびチタンカップリング剤は、例えば、特開2004−314334号公報に記載の各カップリング剤を使用することができる。
レーザー彫刻においては形成したい画像をデジタル型データとしてコンピューターを利用してレーザー装置を操作し、原版上にレリーフ画像を形成する。レーザー彫刻に用いるレーザーは原版が吸収する波長を含むものであればどうようなものを用いてもよいが、彫刻を高速度で行うためには出力の高いものが望ましく、炭酸ガスレーザーやYAGレーザー、半導体レーザーなどの赤外線放出固体レーザーが好ましい。また、紫外領域に発信波長を有する紫外線レーザー、例えば、エキシマーレーザー、第3あるいは第4高調波へ波長変換したYAGレーザー、銅蒸気レーザーは有機分子の結合を切断するアブレーション加工が可能であり、微細加工に適する。また、レーザーは連続照射でもパルスレーザーでも構わない。一般には樹脂は炭酸ガスレーザーの10μm近傍に吸収を持つため、特にレーザー光の吸収を助けるような成分の添加は必須ではないが、YAGレーザーは1.06μm近傍の波長であり、この波長の吸収を有するものはあまりない。その場合、これらの吸収を助ける成分である、染料、顔料の添加が好ましい。
このような染料の例としてはポリ(置換)フタロシアニン化合物及び金属含有フタロシアニン化合物;シアニン化合物;スクアリウム染料、カルコゲノピリロアリリデン染料;クロロニウム染料;金属チオレート染料;ビス(カルコゲノピリロ)ポリメチン染料;オキシインドリジン染料;ビス(アミノアリール)ポリメチン染料;メロシアニン染料;及びキノイド染料などが挙げられる。顔料の例として、カーボンブラック、グラファイト、亜クロム酸銅、酸化クロム、コバルトクロームアルミネート、酸化鉄などの暗色の無機顔料や鉄、アルミニウム、銅、亜鉛のような金属紛及びこれら金属にSi、Mg、P、Co、Ni、Yなどをドープしたものが挙げられる。これら染料、顔料は単独で使用しても良いし、複数を組み合わせて使用しても良いし、複数構造にするなどのあらゆる形態で組み合わせても良い。
レーザーによる彫刻は酸素含有ガス下、一般には空気存在下もしくは気流下に実施するが、炭酸ガス、窒素ガス下でも実施できる。彫刻終了後、レリーフ印刷版表面にわずかに発生する粉末状もしくは液状の物質は適当な方法、例えば、溶剤や界面活性剤の入った水など洗いとる方法、高圧スプレーなどにより水系洗浄剤を照射する方法、高圧スチームを照射する方法などを用いて除去しても良い。
本発明において、レーザー彫刻印刷原版にレーザー光を照射し、凹パターンを形成するとき、該レーザー彫刻印刷原版表面を加熱し、レーザー彫刻を補助することもできる。レーザー彫刻印刷原版の加熱方法としてはレーザー彫刻機の円筒状定盤をヒーターを用いて加熱する方法、赤外線ヒーターを用いて該レーザー彫刻印刷原版表面を直接加熱する方法を挙げることができる。この加熱工程により、レーザー彫刻性を向上させることができる。
以下、実施例に基づき詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
後述する組成に関しては特に記載がない限り、重量部とする。
(1)レーザー彫刻
レーザー彫刻は炭酸ガスレーザー彫刻機(商標:ZED−mini−1000、英国、ZED社製、米国、コヒーレント社製、出力250W炭酸ガスレーザーを搭載)を用いて行った。彫刻は網点(133lines per inch)、ベタ部(面積率100%)を含むパターンを作成し、レーザー彫刻を行った。彫刻深さを大きく設定すると、微細な網点部のパターンのトップ部の面積が確保できず、形状も崩れて不鮮明になるため、彫刻深さは0.4mmとした。
(2)印刷評価
印刷評価はドライオフセット印刷機を用いて、脂肪族炭化水素であるn−ヘキサンを主成分とする黒インキを用いて、アルミニウム製ツーピース缶表面に、スクリーン線数が133線/インチで構成される画像を、ベタに十分なインキで転写される条件を調整しながら、印刷テストを行った。
(3)表面張力の測定
濡れ性指示薬(商標「ぬれ張力試験用混合液」、和光純薬株式会社製)を用いて、印刷層上に支持薬を滴下し、その液滴体積の保持にて濡れ性を判断し、印刷層の表面張力を測定した。
(4)重量膨潤率の測定
10mm×50mm、厚さ1.70mmとした印刷層を23℃の条件下、24時間、溶剤に浸せきし、その前後の重量変化を測定し、重量膨潤率を求めた。
(5)硬度の測定
印刷層のショアD硬度は、株式会社テクロック社製、商標「GS−720G TypeD」を用いて測定した。このとき、用いた錘の重さは8kgであった。
[実施例1]
(1) 液状型感光性樹脂組成物の調製
ポリ(3−メチル−1,5−ペンタンジオールアジペート)ジオール(水酸基価37.40)0.13モルとポリオキシエチレン(EO)−オキシプロピレン(PO)ブロック共重合体ジオール(EO/POモル比1/4、水酸基価44.80)0.48モルと触媒としてジブチル錫ジラウレート0.09gを反応容器に入れよく混合した。そこにトルエンジイソシアネート(2,4−体/2,6−体モル比率4/1)0.72モルを添加し、良く撹拌してから外温を40℃から80℃に昇温し、そのまま約5時間反応させたのち、不飽和基導入化合物であるポリ(オキシプロピレン)グリコールモノメタクリレート(分子量380)0.93モルを添加しよく撹拌した。約2時間反応させたところで、反応を止め、ポリスチレン換算の数平均分子量が約2.3×10(ゲルパーメーションクロマトグラフィ法による測定値)のプレポリマーを得た。
得られたプレポリマー100部に、ラウリルメタクリレート15部、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(分子量400)30部、テトラエチレングリコールジメタクリレート2.8部、トリメチロールプロパントリメタクリレート1.7部、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン0.6部、ベンゾフェノン0.1部、2,6−ジ−t-ブチル−p−クレゾール0.5部を加え、液状型感光性樹脂1を得た。
(2)印刷原版の作成
得られた液状型感光性樹脂1をAPR製版装置「AF210E」(旭化成株式会社製、商標)を用いて、下部光源より活性光線を透過するガラス板上にネガフィルムを置き、薄い保護フィルムでカバーした後、その上に液状型感光性樹脂を流し、これを一定の版厚でスキージしながら下地層を有する支持体を張り合わせた。次に、上部光源によって支持体側からの550mJ/cmの露光を行い、下部光源より、透明部のみからなるネガフィルムを通して画像形成露光を行うレリーフ形成露光を600mJ/cm行った。このとき、露光強度をオーク製作所製のUV照度計「MO−2型」(商標)でUV−35フィルターを用いて露光量を測定した。未硬化樹脂を除去洗浄し、水中に現像に現像済みの版全体を浸漬し、水中後露光及び乾燥工程を実施し、全体の版厚0.8mm(支持体を含む)の印刷原版1を得た。また、同様に厚みを1.70mmに調製した印刷原版1も合わせて作成した。
(3)表面張力の測定
0.30N/m、0.035N/m、0.040N/m、0.045N/mの濡れ性指示薬について、その濡れ性を評価したところ、全ての濡れ性指示薬を濡らすことができ、印刷版1の表面張力は0.045N/m以上であることが分かった。
(4)重量膨潤率の測定
溶解度パラメーター(SP値)が14.7(MJ/m1/2であるn−ヘキサン、16.9(MJ/m1/2であるシクロヘキサン(「プラスチック・データブック」、旭化成アミダス株式会社、「プラスチック」編集部編、株式会社工業調査会発行、1999年)を用いて、重量膨潤率を求めた。
厚さ1.70mmに調製した印刷版1を10mm×50mmに調製し、n−ヘキサン、シクロヘキサンに24時間、浸せきし、浸せき前後での重量の増加または損失百分率(%)が、M=(M−M)/M×100(式中、M:重量変化率(%)、M:試験片の試験前の質量(g)、M:試験片の試験後の質量(g)であり、膨潤によって重量が増加した場合をプラス、抽出によって重量が減少した場合はマイナス)で表わされる重量膨潤率を求めたところ、n−ヘキサンでは11%、シクロヘキサンでは20%であった。
(5)円筒状印刷作成、印刷評価
内径213.384mm、幅300mm、厚さ0.15mmのニッケル製の中空である円筒状支持体の表面にアクリル樹脂が両面に塗布してある両面接着テープを慎重に被覆した。得られた接着剤テープ上に厚さ0.8mmに作成した印刷版1を両面接着テープと印刷版1の間に気泡が入らないように注意しながら積層し、円筒状印刷原版1を得た。
円筒状印刷原版1をエアーシンリンダーに固定し炭酸ガスレーザーにて彫刻を行った。レーザー彫刻後、表面に残存していた彫刻カスを圧力5MPaの高圧スチームで洗浄し、円筒状印刷版1を得た。
印刷機の版胴にはエアーシリンダーを用い、エアーシリンダーの微小孔からエアーを噴出させながら、円筒状印刷版1をエアーシリンダーに装着し、エアーの噴出しを停止させることにより、エアーシリンダー上に円筒状印刷版1を固定した。
得られた円筒状印刷版1を用いて、ドライオフセット印刷を2色で行ったところ、画像の太りもなく良好な印刷ができ、更には、各色の網点が接触することなく、印刷することができた。印刷の後半から、画像の太りが見られたが、問題なく、印刷を終了した。
円筒状支持体を通して、印刷機版胴に固定しているため、版の装着が容易であり、円筒状印刷版1を版銅に装着するのみで、正確な位置合わせが可能であった。
[実施例2]
(1) 液状型感光性樹脂組成物の調製
温度計、攪拌機、還流器を備えた1Lのセパセルフラスコに旭化成ケミカルズ株式会社製ポリカーボネートジオールである、商標「PCDL L4672」(数平均分子量1990、OH価56.4)447.24gとトリレンジイソシアネート30.83gを加え、80℃に加温下に約3時間反応させた後、2−メタクリロイルオキシイソシアネート14.83gを添加し、さらに約3時間反応させて、末端がメタアクリル基(分子内の重合性不飽和基が1分子あたり平均約1個)である数平均分子量10000の樹脂(ア)を製造した。この樹脂は20℃で水飴状であり、外力を加えると、流動し、かつ外力を除いても元の形状に回復しなかった。
樹脂として、樹脂(ア)を用い、表1に示すように、有機化合物、光重合開始剤、富士シリシア株式会社製、多孔質粉末シリカである、商標「サイロスフェアーC−1504」(以下、略してC−1504、数平均粒子径4.5μm、比表面積520m/g、平均細孔径12μm、細孔容積1.5ml/g、灼熱減量2.5重量%、吸油量290ml/100g)、その他添加剤を加えて感光性樹脂組成物2を作成した。
感光性樹脂組成物2は20℃において液状であった。また、B型粘度計を用いて測定した粘度は20℃において、5kPa・s以下であった。
(2)印刷原版の作成
得られた感光性樹脂組成物2をブレードコーターを用いて、厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に厚さ1mmで成形し、シート状とした。メタルハライドランプを用いて、照度計(オーク製作所社製、商標「MO2」)とフィルター(オーク製作所製、商標「UV−35−APRフィルター」)にて照度を測定後、4000mJ/cmとなるように露光し、感光性樹脂組成物2を硬化させ、印刷原版2を得た。同様にして、厚さ1.7mmに調整した印刷原版2も作成した。
(3)表面張力の測定
得られた印刷原版2を実施例1と同じように濡れ性指示薬を用いて、表面張力を評価したところ、0.045N/mの指示薬の濡らすことができ、印刷原版2の表面張力が0.045N/m以上であることが分かった。
(4)硬度、重量膨潤率の測定
1.70mmに調整した印刷原版2について硬度を測定したところ、ショアD硬度は55度であった。
実施例1と同様に、n−ヘキサン、シクロヘキサンの重量膨潤率を測定したところ、それぞれ、0.4%、0.3%であった。
(5)印刷版の作成
内径213.384mm、幅300mm、厚さ0.15mmのニッケル製の中空である円筒状支持体の表面にアクリル樹脂が両面に塗布してある両面接着テープを慎重に被覆した。得られた接着剤テープ上に厚さ1mmに作成した印刷原版2を両面接着テープと印刷原版2の間に気泡が入らないように注意しながら積層し、円筒状印刷原版2を得た。
円筒状印刷原版2をエアーシンリンダーに固定し炭酸ガスレーザーにて彫刻を行った。レーザー彫刻後、表面に残存していた彫刻カスを圧力5MPaの高圧スチームで洗浄し、円筒状印刷版2を得た。
(6)印刷評価
実施例1と同様に、印刷機の版胴にはエアーシリンダーを用い、エアーシリンダーの微小孔からエアーを噴出させながら、円筒状印刷版2をエアーシリンダーに装着し、エアーの噴出しを停止させることにより、エアーシリンダー上に円筒状印刷版2を固定した。
得られた円筒状印刷版2を用いて、ドライオフセット印刷を行ったところ、画像の太りもなく良好な印刷ができ、更には、各色の網点が接触することなく、印刷することができた。また、印刷終了まで画像の太りもなく、安定した品質を得ることができた。
円筒状支持体を通して、印刷機版胴に固定しているため、版の装着が容易であり、円筒状印刷版2を版銅に装着するのみで、正確な位置合わせが可能であった。
[実施例3]
(1)液状型感光性樹脂組成物の調製
実施例2と同じように液状型感光性樹脂の調製を行い、感光性樹脂組成物2を得た。
(2)円筒状印刷原版の作成
実施例1で使用した円筒状支持体に、厚さ0.05mmとなるように、ブレードで掻き取りながら、湿気硬化型接着剤(白色ペースト、23℃における粘度90Pa・s、密度1.3g/cm)を塗布し、10分間放置し、接着剤を硬化させた。
10分放置後、感光性樹脂組成物2を厚さ0.8mmとなるように塗布し、メタルハライドランプの光を4000mJ/cmの条件で照射し、硬化させ、23℃湿度50%の条件で24時間経過させ、円筒状印刷原版3を得た。
(3)表面張力、硬度、重量膨潤率の測定
実施例2と同じ感光性樹脂組成物2を用いているため、表面張力、硬度、重量膨潤率は全て、実施例2と同じであった。
(4)円筒状印刷版の作成
円筒状印刷原版3を使用した以外は実施例2と同様に円筒状印刷版の作成を行い、円筒状印刷版3を得た。
(5)印刷評価
実施例1と同様に、印刷機の版胴にはエアーシリンダーを用い、エアーシリンダーの微小孔からエアーを噴出させながら、円筒状印刷版2をエアーシリンダーに装着し、エアーの噴出しを停止させることにより、エアーシリンダー上に円筒状印刷版3を固定した。
得られた円筒状印刷版3を用いて、ドライオフセット印刷を行ったところ、画像の太りもなく良好な印刷ができ、更には、各色の網点が接触することなく、印刷することができた。また、印刷終了まで画像の太りもなく、安定した品質を得ることができた。
円筒状支持体を通して、印刷機版胴に固定しているため、版の装着が容易であり、円筒状印刷版2を版銅に装着するのみで、正確な位置合わせが可能であった。
[比較例1]
(1)液状型感光性樹脂組成物の調製
実施例2と同じように液状型感光性樹脂の調製を行い、感光性樹脂組成物2を得た。
(2)印刷原版の作成
実施例2と同様に印刷原版の作成を行い、印刷原版4を作成した。
(3)表面張力、硬度、
実施例2と同じ感光性樹脂組成物2を用いているため、表面張力、硬度、重量膨潤率は全て、実施例2と同じであった。
(4)印刷版の作成
得られた印刷原版4をドラム上に両面粘着テープを介して固定し、炭酸ガスレーザーにて彫刻を行った。レーザー彫刻後、ドラムから剥がし、更には表面に残存している彫刻カスを圧力5Mpaの高圧スチームで洗浄し、印刷版4を得た。
(5)印刷評価
印刷機の版胴上に両面テープを、版胴と両面テープの間に気泡が入らないように慎重に貼り付けた。この両面テープ上に印刷版4を、印刷版4と両面テープ間に気泡が入らないように貼り付けたが、このとき、版胴上に直接張るという手作業を行うため、貼る位置が正確に行うことが大変困難であり、労力のかかる作業であった。また、版を引っ張りながら、張り込むため、樹脂に張力が発生し、樹脂が伸びてしまった。
実施例1と同様に印刷テストを行ったところ、各色の印刷版の位置が不正確であったため、各色の網点同士が接触し、各色のインキが混ざったため、良好な印刷を行うことができなかった。
[比較例2]
(1)印刷原版の作成
スチレン−ブタジエンブロックコポリマー(商標「タフプレンA」、旭化成ケミカルズ株式会社製)60部、液状ポリブタジエン(商標「B−2000」新日本石油化学株式会社製)30部、1,9−ノナンジオールジアクリレート 7部、2,2−ジメトキシ−フェニルアセトフェノン 2部、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール 1部をニーダーにて混練し、感光性樹脂組成物5を得た。感光性樹脂組成物5はポリエステルフィルムとポリアミド膜を有するポリエチレンテレフタレートフィルムで挟み、3mmのスペーサーを用いて130℃の条件で4分間、1.96×10Paの圧力をかけて加圧成形を行った。得られた感光性樹脂層の厚みを測定したところ、1.0mmであった。
得られた感光性樹脂層をAFP−1500(旭化成株式会社製)上で370nmに中心波長を有する紫外線蛍光灯を用いて、両面からそれぞれ、3000mJ/cmの全面露光を行い、印刷原版5を得た。
(2)表面張力、重量膨潤率の測定
実施例1と同様に表面張力を測定したところ、0.040N/mの濡れ性指示薬を濡らすことができず、印刷版5の表面張力は0.040未満であった。
また、実施例1と同様にn−ヘキサンとシクロヘキサンの重量膨潤率を測定したところ、それぞれ53%、148%となった。
(3)円筒状印刷版の作成
印刷原版5を用いた以外は実施例1と同様に円筒状印刷版の作成を行い、円筒状印刷版5を得た。
(4)印刷評価
実施例1と同様に、印刷機の版胴にはエアーシリンダーを用い、エアーシリンダーの微小孔からエアーを噴出させながら、円筒状印刷版5をエアーシリンダーに装着し、エアーの噴出しを停止させることにより、エアーシリンダー上に円筒状印刷版5を固定した。
得られた円筒状印刷版2を用いて、ドライオフセット印刷を行ったところ、印刷開始当初から、印刷版が膨潤し、画像に太りが発生した。更には、膨潤したため、各色の網点が接触し、インキ同士が混ざったため、良好な印刷物を得ることができなかった。
Figure 2007160788
本発明はドライオフセット印刷機に装着して用いる円筒状印刷版として好適に利用できる。

Claims (8)

  1. 少なくとも円筒状支持体(A)、印刷層(B)を順に積層してなる円筒状印刷版であって、印刷版の表面張力が0.04N/m以上であることを特徴とするドライオフセット印刷用円筒状印刷版。
  2. 印刷層(B)が、円筒状支持体(A)に積層された印刷原版層(C)を製版することによって得られることを特徴とする請求項1に記載のドライオフセット印刷用円筒状印刷版。
  3. 印刷層(B)の重量膨潤率が、印刷版溶解度パラメーター(SP値)が20.5(MJ/m1/2未満である溶剤に対して−20%以上20%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のドライオフセット印刷用円筒状印刷版。
  4. 円筒状支持体(A)が金属スリーブ、プラスチックスリーブ、ガラス強化繊維強化プラスチックスリーブから選ばれることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のドライオフセット印刷用円筒状印刷版。
  5. 印刷層(B)の硬度がショアDで10度以上90度以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のドライオフセット印刷用円筒状印刷版。
  6. 印刷層(B)が印刷原版層(C)をレーザー彫刻することによって得られることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載のドライオフセット印刷用円筒状印刷版。
  7. 印刷原版層(C)が、数平均分子量1000以上30万以下の樹脂(c−1)、数平均分子量1000未満でその分子内に重合性不飽和基を有する有機化合物(c−2)、光重合開始剤(c−3)を含有する感光性樹脂組成物(c)を光硬化させ、印刷原版層(C)とすることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のオフセット印刷用円筒状印刷版。
  8. 円筒状支持体(A)と印刷層(B)との間に少なくとも1層以上の接着剤層、もしくは粘着剤層があることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のオフセット印刷用円筒状印刷版。
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