JP5356835B2 - 硬化性樹脂組成物、印刷原版及び印刷版 - Google Patents
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Description
特に、近年においては、処理時間の短縮を図る観点から、感光性樹脂硬化物にレーザー彫刻を行う技術が増加している。
この方法は、写真製版技術において必須の現像工程を簡略化できるため廃棄物を削減でき、さらには揮発性溶剤を使用しない等の利点を有しており、環境対応技術として期待されている。
特許文献2及び特許文献3には、感光性樹脂組成物に無機多孔質体を添加することによって、レーザー彫刻時に多量に発生する液状カスの除去を行う技術が開示されている。
特許文献4には、分子内に少なくとも1つのSi−O結合を有し、重合性不飽和基を有しない有機珪素化合物を添加したレーザー彫刻印刷原版が開示されている。
特許文献5には、数平均粒子径が5nm以上100nm以下の超微粒子を含有したレーザー彫刻印刷原版用の液状感光性樹脂組成物が開示されており、レーザー彫刻時に発生する液状彫刻カスの除去を行うことについても開示されている。
特許文献4に開示されている技術は、レーザー彫刻時に発生する液状彫刻カスの除去性に関して、未だ解決すべき課題を有している。
特許文献5に開示されている技術は、レーザー彫刻時に発生する彫刻カスに超微粒子が含有され、これが取り扱いの過程において空気中に浮遊する場合があり、彫刻カスの処理に関し、改善すべき余地が多い。
本実施の形態における硬化性樹脂組成物は、レーザー彫刻により所定の凹凸パターンを形成する印刷原版用の硬化性樹脂組成物である。
硬化性樹脂組成物は、数平均分子量が1000以上50万以下の樹脂(a)と、数平均分子量が1000未満で、かつ分子内に重合性不飽和基を有する有機化合物(b)と、数平均粒子径0.1μm以上100μm以下の有機系微粒子(c)とを含有している。
有機系微粒子(c)は、不活性ガス雰囲気下での熱重量分析における重量30%減少温度が450℃以上800℃以下である。
樹脂(a)は、数平均分子量1000以上30万以下の樹脂であり、好ましくは2000以上20万以下、より好ましくは5000以上15万以下の樹脂である。
樹脂(a)の数平均分子量が1000以上であると、本実施の形態における硬化性樹脂組成物を硬化した樹脂硬化物において実用上十分な機械的強度を有するものとなり、印刷版の基材として、繰り返し使用にも耐えうる。
樹脂(a)の数平均分子量が30万以下であると、硬化性樹脂組成物の粘度が過度に高くなることを抑制でき、シート状又は円筒状の樹脂硬化物を作製する際に、加熱押し出し等の複雑な加工方法を必要としなくなるため好ましい。
なお、数平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定し、分子量既知のポリスチレンで検量し換算した値を言うものとする。
樹脂(a)の化合物としては、1分子あたり平均で0.7以上の重合性不飽和基を有するポリマーが好適である。樹脂(a)の化合物が、1分子あたり平均で0.7以上の重合性不飽和基を有するものであると、本実施の形態における硬化性樹脂組成物の硬化物により構成される印刷原版及び印刷版は、機械的強度に優れ、耐久性が高いものとなる。
硬化性樹脂組成物の硬化物において十分な機械的強度を確保する観点からは、樹脂(a)の化合物中の重合性不飽和基は、1分子あたり0.7以上であることが好ましく、1を超えることがより好ましい。また、1分子あたりの重合性不飽和基数の上限については特に限定しないが、20以下ことが好ましい。1分子あたりの重合性不飽和基数が20以下であれば、硬化時の収縮を低く抑制でき、また、表面近傍でのクラック等の発生も抑制できる。
なお、ここで言う「分子内」とは、高分子主鎖の末端、高分子側鎖の末端や、高分子主鎖中や側鎖中に直接重合性不飽和基が結合している場合等も含まれる。
例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリブタジエン、ポリイソプレン等のポリジエン類、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のポリハロオレフィン類、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリアクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル類、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリウレタン、ポリアミド、ポリウレア、ポリイミド等の主鎖にヘテロ原子を有する高分子等からなる群より選ばれる1種又は2種以上のものが用いられる。
複数の高分子を用いる場合の形態としては、共重合体又はブレンドのいずれであってもよい。
このような液状樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリブタジエン、水添ポリブタジエン、ポリイソプレン、水添ポイソプレン等の炭化水素類、アジペート、ポリカプロラクトン等のポリエステル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテル類、脂肪族ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン類、(メタ)アクリル酸及びその誘導体の重合体が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、混合物やコポリマー類であってもよい。
耐候性の観点からは、ポリカーボネート構造を有する不飽和ポリウレタン類が好ましい。
また、他の方法としては、水酸基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、ケトン基、ヒドラジン残基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、環状カーボネート基、エステル基等の反応性基を複数有する化合物に、前記反応性基と結合し得る官能基を複数有する結合剤(例えば、水酸基やアミノ基の場合のポリイソシアネート等)を反応させ、分子量の調節、及び末端の結合性基への変換を行った後に、反応によって得られた化合物と、この化合物の末端結合性基と反応する官能基及び重合性不飽和基を有する化合物とを反応させて、末端に重合性不飽和基を導入する方法等も好適な方法として挙げられる。
有機化合物(b)は、数平均分子量が1000未満で、かつ分子内に重合性不飽和基を有する化合物である。重合性不飽和基は、ラジカル重合反応又は開環重合反応に関与するものである。
数平均分子量を1000未満とすることにより、樹脂(a)との希釈容易性が確保できるため好ましい。
なお、数平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定し、分子量既知のポリスチレンで検量し換算した値を言うものとする。
特に、本実施の形態における硬化性樹脂組成物の硬化物を印刷原版として用いる場合には、印刷用インキの溶剤であるアルコール類やエステル類等の有機溶剤に対する膨潤を抑制する観点から、長鎖脂肪族、脂環族又は芳香族の誘導体を少なくとも1種以上含有していることが好ましい。
この場合、脂環族又は芳香族置換基を有する化合物の含有量は、有機化合物(b)の全体量の20質量%以上100質量%以下であることが好ましく、50質量%以上100質量%以下であることがより好ましい。
分子内に重合性不飽和基を3個以上有する有機化合物(d)の含有率が、上記範囲内であれば、本実施の形態における硬化性樹脂組成物を用いた印刷原版や印刷版において、耐溶剤性の向上効果が得られる。
有機化合物(d)は、分子内に重合性不飽和基を3〜6個有する化合物であることが、より好ましい。
有機系微粒子(c)は、数平均粒子径0.1μm以上100μm以下、好ましくは0.2μm以上20μm以下、より好ましくは0.5μm以上10μm以下の粒子である。
有機系微粒子(c)の数平均粒子径は、レーザー散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定できる。
数平均粒子径が上記範囲であれば、本実施の形態における硬化性樹脂組成物を用いた印刷原版に対しレーザー彫刻を行う際に発生する液状彫刻カスの粘度を高くする効果が得られ、彫刻カスの飛散を抑制できる。
また、有機系微粒子は、レーザー彫刻の熱によって分解又は溶融する性質を有しているため、無機系微粒子のようにレーザー彫刻表面に粒子の形態で残存しないという利点もある。
一方、無機系微粒子は、レーザー彫刻後において表面に微粒子が残存してしまい、これが印刷工程で剥離し、被印刷物上に転写されてしまうという問題を招来する。
有機系微粒子(c)の熱重量分析においては、所定の熱重量分析機器を用い、不活性ガス、例えば窒素ガスを流しながら、所定の速度、例えば10℃/分により昇温していき重量減少率を測定する。
熱重量分析における重量30%減少温度が上記数値範囲内であるものとすることにより、熱分解性を他の樹脂成分に比較して低くでき、レーザー彫刻の熱によって他の樹脂成分が分解又は溶融して粘度の低い液体となる際に、彫刻カスの粘度を高くする機能を発揮する。
上述したような効果が得られることから、彫刻カス中において有機系微粒子(c)は高温で炭化した微粒子として存在しているものと推定される。
有機系微粒子(c)の含有量を上記範囲とすることにより、レーザー彫刻時に多量に発生する液状彫刻カスを高粘度化させる効果が確実に発揮でき、硬化性樹脂組成物そのものの粘度を極端に高くすることなく、良好な成形性を確保できる。
有機系微粒子(c)のシリコーン含有率を上記範囲とすることにより、本実施の形態における硬化性樹脂組成物を用いた印刷原版及び印刷版の耐溶剤性を高くすることができる。
有機系微粒子(c)のシリコーン含有率は、29Siに着目した29Si−NMR(核磁気共鳴スペクトル法)又は蛍光X線分析法により定量できる。具体的には、シリコーン化合物を既知量含有したサンプルのシグナル強度と比較し、比率により算出できる。
これらの分子骨格を有する化合物は耐熱性が高いという特徴を有している。特に、ポリイミド、ポリアミドが好ましい化合物であり、ポリイミド又はポリアミドは芳香族炭化水素由来の炭素原子を前記ポリイミド又はポリアミドの全炭素原子数の70原子%以上90原子%以下有することが好ましく、75原子%以上90原子%以下有することがより好ましく、80原子%以上90原子%以下有することがさらに好ましい。
なお、芳香族炭化水素由来の炭素原子とは、芳香族官能基を形成する炭素原子と定義する。例えばフェニル基の場合、ベンゼン環を形成する6個の炭素原子を意味する。芳香族炭化水素由来の炭素原子の比率は、13C−NMRを用いて定量化できる。
芳香族テトラカルボン酸としては、例えば、ピロメリット酸、1,2,7,8−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,8,9−アントラセンテトラカルボン酸、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸、2,3,6,7−キノリンテトラカルボン酸、3,3’、4,4’−ジフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ジフェニル−テルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,4,3,4’−ジフェニルエタンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホキシドテトラカルボン酸等が挙げられる。
芳香族ジアミンとしては、例えば、1,4−フェニレンジアミン、2,7−ナフタレンジアミン、3,5−ジアミノピリジン、5,8−ジアミノキノリン、3,4'又は4,4’−ジアミノジフェニル、3,4’又は4,4’−ジアミノジフェニルーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ビス(3又は4−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホキシド、4,4’−ビス(3又は4−アミノフェノキシ)ジフェニメタン、4,4’−ビス(3又は4−アミノフェノキシ)ジフェニルエーテル、4,4’−ビス(3又は4−アミノフェノキシ)ジフェニルスルフィド、ビス〔2−(4−アミノフェニル)−ベンゾチアゾイル〕オキシド、ビス〔2−(4−アミノフェニル)−ベンズイミダゾイル〕スルホキシド、ビス〔2−(4−アミノフェニル)−ベンズオキサゾイル〕、1,3−又は1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ジ−(4-アミノベンゾイルオキシ)ブタン等が挙げられる。
脂環族ジアミンとしては、例えば、4,4’−ジアミノ−ジシクロヘキシレンプロパン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチル−ジシクロ−ヘキシレンメタン、イソフォロネジアミン、ジアミノ−「2,2,2」ビシクロオクタン、ジアミノアダマンタン等が挙げられる。
また、上記ポリイミドの微粒子は、例えば、非特許文献「大阪府立産業技術総合研究所報告」(No.21、2007年、ページ17〜21)に記載されている製造方法により得られる。
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ピレンジカルボン酸、テトラセンジカルボン酸、ペンタセンジカルボン酸、ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸等の化合物が挙げられる。
芳香族ジアミンとしては、例えば、1,4−フェニレンジアミン、2,7−ナフタレンジアミン、3,5−ジアミノピリジン、5,8−ジアミノキノリン、3,4'又は4,4’−ジアミノジフェニル、3,4’又は4,4’−ジアミノジフェニルーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ビス(3又は4−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホキシド、4,4’−ビス(3又は4−アミノフェノキシ)ジフェニメタン、4,4’−ビス(3又は4−アミノフェノキシ)ジフェニルエーテル、4,4’−ビス(3又は4−アミノフェノキシ)ジフェニルスルフィド、ビス〔2−(4−アミノフェニル)−ベンゾチアゾイル〕オキシド、ビス〔2−(4−アミノフェニル)−ベンズイミダゾイル〕スルホキシド、ビス〔2−(4−アミノフェニル)−ベンズオキサゾイル〕、1,3−又は1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ジ−(4−アミノベンゾイルオキシ)ブタン等が挙げられる。
有機系微粒子(c)が、球状微粒子を50%以上含有するものであると、本実施の形態における硬化性樹脂組成物を用いた印刷原版及び印刷版の耐久性を高めることができる。
なお、球状とは、真球状に限定されず、概ね球形であればよい。
有機系微粒子(c)の形状は、走査型電子顕微鏡により観察でき、顕微鏡のモニター画面に微粒子が100個程度は入る倍率で観察することが望ましい。球状の判定基準は、注目する微粒子の縦横寸法比が、1.0〜1.8の範囲にあり、外周部に突起がないこととする。
また、有機系微粒子(c)は、多孔質体であってもよい。有機系微粒子(c)を多孔質体とすることにより、レーザー彫刻において液状化した彫刻カスの除去を有効に行うことができるようになる。
多孔質性を有する有機系微粒子(c)の比表面積は、10m2/g以上1000m2/g以下であることが好ましく、100m2/g以上800m2/g以下であることがより好ましく、200m2/g以上500m2/g以下であることがさらに好ましい。
多孔質性を有する有機系微粒子(c)の細孔容積は、0.1mL/g以上10mL/g以下であることが好ましく、0.2mL/g以上5mL/g以下であることがより好ましい。
多孔質性を有する有機系微粒子(c)の細孔径は、1nm以上1000nm以下であることが好ましく、2nm以上200nm以下であることがより好ましく、2nm以上50nm以下であることがさらに好ましい。
上述した比表面積、細孔容積及び細孔径は、−196℃における窒素の吸着等温線から求められる。
本実施の形態における硬化性樹脂組成物は、上述した樹脂(a)100質量部に対し、有機化合物(b)10〜500質量部、好ましくは10〜100質量部、より好ましくは10〜50質量部含有する。有機化合物(b)の含有量が上記範囲であると、得られる樹脂硬化物の硬度と引張強伸度のバランスを制御しやすく、硬化時の収縮も小さい範囲に収まり、良好な厚み精度を確保できる。
本実施の形態における硬化性樹脂組成物は、20℃において固体状あっても液状であってもよいが、成形性の容易さを確保する観点からは、20℃において液状であることが好ましい。なおここで「液状」とは、容易に流動変形し、かつ冷却により変形された形状に固化できる性質であるものとし、外力を加えたときにその外力に応じて瞬時に変形し、かつ外力を除いたときには短時間に元の形状を回復する性質に対する言葉である。
上述した樹脂(a)が20℃において液状の樹脂である場合には、硬化性樹脂組成物も20℃において液状となる。
硬化性樹脂組成物の20℃における粘度は、10Pa・s以上10kPa・s以下であることが好ましく、50Pa・s以上5kPa・s以下であることがより好ましい。20℃における粘度が10Pa・s以上であると、硬化性樹脂組成物を硬化して得られる樹脂硬化物の機械的強度が実用上十分なものとなり、硬化性樹脂組成物を円筒状に成形する場合においても形状を保持し、容易に加工できるという利点を有している。
一方、20℃における粘度が10kPa・s以下であると、常温でも変形し易く、加工が容易となる傾向にある。また、シート状又は円筒状の樹脂硬化物に成形し易く、作製プロセスも簡便となる。
特に、厚み精度の高い円筒状樹脂硬化物を得るためには、円筒状支持体上に液状の硬化性樹脂組成物層を形成する際に、硬化性樹脂組成物が重力により液ダレ等の現象を起こさないように、粘度を100Pa・s以上、より好ましくは200Pa・s以上、更に好ましくは500Pa・s以上の、比較的粘度の高い硬化性樹脂組成物とすることが望ましい。
本実施の形態における硬化性樹脂組成物が光硬化性樹脂組成物である場合、光照射することにより印刷原版を構成する樹脂硬化物層が得られる。
照射光としては、例えば、紫外線、可視光線の他、電子線、X線等の高エネルギー線が適用できる。特に、紫外線、可視光線により光硬化させる場合、光重合開始剤を添加することが好ましい。
光重合開始剤としては、水素引き抜き型光重合開始剤(e)及び/又は崩壊型光重合開始剤(f)を添加することが好ましい。
芳香族ケトンは、光励起により効率良く励起三重項状態になり、この励起三重項状態が周囲の媒体から水素を引き抜いてラジカルを生成する化学反応機構が知られている。この反応機構により生成したラジカルが光架橋反応に関与するものと考えられる。
水素引き抜き型光重合開始剤(e)としては、励起三重項状態を経て、周囲の媒体から水素を引き抜いてラジカルを生成する化合物であれば特に限定されない。
芳香族ケトンとしては、ベンゾフェノン類、ミヒラーケトン類、キサンテン類、チオキサントン類、アントラキノン類が挙げられ、これらの群から選ばれる少なくとも1種の化合物を用いることが好ましい。なお、ベンゾフェノン類とは、ベンゾフェノン又はその誘導体を言うものとし、例えば、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、3,3',4,4'−テトラメトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
ミヒラーケトン類とは、ミヒラーケトン及びその誘導体を言う。キサンテン類とは、キサンテン及びアルキル基、フェニル基、ハロゲン基で置換されたその誘導体を言う。チオキサントン類とは、チオキサントン及びアルキル基、フェニル基、ハロゲン基で置換されたその誘導体を言い、エチルチオキサントン、メチルチオキサントン、クロロチオキサントン等が挙げられる。アントラキノン類とは、アントラキノン及びアルキル基、フェニル基、ハロゲン基等で置換されたその誘導体を言う。
水素引き抜き型光重合開始剤(e)の添加量が上記範囲であれば、硬化性樹脂組成物を大気中で光硬化させた場合に、硬化物表面の硬化性が十分に確保できる。また、長期保存時に表面にクラック等が発生せず、耐候性が確保される。
ベンゾインアルキルエーテル類としては、例えば、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等が挙げられる。
2,2−ジアルコキシ−2−フェニルアセトフェノン類としては、例えば、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン等が挙げられる。
アセトフェノン類としては、例えば、アセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン等が挙げられる。
アシルオキシムエステル類としては、例えば、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム等が挙げられる。
アゾ化合物としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾニウム化合物、テトラゼン化合物等が挙げられる。
ジケトン類としては、例えば、ベンジル、メチルベンゾイルホルメート等が挙げられる。
崩壊型光重合開始剤(f)の添加量が上記範囲であれば、硬化性樹脂組成物を大気中で光硬化させた場合に、硬化物内部の硬化性を充分に確保できる。
そのような光重合開始剤としては、例えば、α−アミノアセトフェノン類が挙げられ、具体的には、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン等の化合物を挙げられる。
添加量が上記範囲であれば、硬化性樹脂組成物を大気中で光硬化させた場合であっても、硬化物の機械的物性を十分に確保できる。
このような光重合開始剤は、開環重合反応する官能基を有する化合物、例えば、エポキシ化合物、オキセタン化合物等を開環重合させることができる。
熱硬化性樹脂組成物中には、熱重合開始剤を含有させることが好ましい。
熱重合開始剤として好適な化合物は、ラジカル重合反応、開環重合反応に使用できる全ての熱重合開始剤である。
ラジカル重合反応に用いられる熱重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物、無機過酸化物、有機珪素過酸化物、ヒドロペルオキシド、アゾ化合物、チオール化合物、フェノール樹脂、アミノ樹脂、ハロゲン化合物、アルデヒド化合物等が挙げられる。
開環重合反応に用いられる熱重合開始剤としては、マイクロカプセル中に熱重合開始剤を封入した潜在性熱重合開始剤を用いることが好ましい。
熱重合開始剤の含有量は、硬化性樹脂組成物全体量に対し、0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、0.5質量%以上5質量%以下がより好ましく、1質量%以上5質量%以下がさらに好ましい。
熱重合開始剤の含有率が上記範囲であれば、硬化性樹脂組成物を十分に硬化させることができ、かつ硬化物の表面の粘着性の低減化が図られる。
この10時間半減期の温度については、「Encyclopedia of Polymer Science and Engineering」,11巻、1頁以降、John Wiley & Sons,ニューヨーク,1988年、に示されている。
熱重合開始剤は、前記10時間半減期の温度(10h−t1/2)が、好ましくは少なくとも60℃、より好ましくは少なくとも70℃、さらに好ましくは、80℃〜150℃である。
有機過酸化物の具体例としては、過オクタン酸t−ブチル、過オクタン酸t−アミル、ペルオキシイソ酪酸t−ブチル、ペルオキシマレイン酸t−ブチル、過安息香酸t−アミル、ジペルオキシフタール酸ジ−t−ブチル、過安息香酸t−ブチル、過酢酸t−ブチル及び2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン等のペルオキシエステル類;例えば、1,1−ジ(t−アミルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブタン及びエチル3,3−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブチレート等のジペルオキシケタール類;例えば、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド及び2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン等のジアルキルペルオキシド類;例えば、ジベンゾイルペルオキシド及びジアセチルペルオキシド等のジアシルペルオキシド類;例えば、t−ブチルヒドロペルオキシド、t−アミルヒドロペルオキシド、ピナンヒドロペルオキシド及びクミルヒドロペルオキシド等のt−アルキルヒドロペルオキシド類等が挙げられる。
無機系微粒子を添加することにより、硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる樹脂硬化物層、印刷原版、及び印刷版の機械的物性の向上効果、表面の濡れ性改善効果が得られる。
また、硬化性樹脂組成物の粘度や、粘弾性特性の調整等が可能になる。
無機系微粒子の材質としては、公知のものを用いることができ、特に限定されるものではない。
また、無機系微粒子の表面に有機物層又は有機系微粒子を形成した微粒子、又は有機系微粒子表面に無機物層又は無機微粒子を形成した微粒子等を混合してもよい。
硬化性樹脂組成物を硬化させた樹脂硬化物層の機械的物性を向上させるためには、窒化珪素、窒化ホウ素、炭化珪素等の剛性の高い無機系微粒子が好適である。
樹脂硬化物層の耐溶剤特性を向上させるためには、無機系微粒子が好適である。
このような微粒子の数平均粒径は、0.01〜100μmが好ましい。この範囲の微粒子であれば、樹脂(a)及び有機化合物(b)との混合を行う際に、粘度の上昇、気泡の巻き込み、粉塵の大量発生等の不都合の発生が回避でき、樹脂硬化物層表面の凹凸の発生が抑制できる。微粒子の数平均粒子径は0.1〜20μmがより好ましく、1〜10μmがさらに好ましい。微粒子の数平均粒子径は、レーザー散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定できる。
なお、上記微粒子の粒子形状は、特に限定されるものではなく、球状、扁平状、針状、無定形、又は表面に突起のある粒子等をいずれも使用できる。特に、耐磨耗性を確保する観点からは球状粒子が好ましい。
また、上記微粒子は、表面をシランカップリング剤、チタンカップリング剤、その他の有機化合物で被覆して表面改質処理を行い、より親水性化又は疎水性化したものとしてもよい。
上述した微粒子は単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施の形態における樹脂組成物中の上記微粒子の含有量は、樹脂(a)100質量部に対して1〜100質量部が好ましく、2〜50質量部がより好ましく、2〜20質量部がさらに好ましい。
本実施の形態の印刷原版は、上述した硬化性樹脂組成物よりなる樹脂硬化物層を具備しており、この樹脂硬化物層をレーザー彫刻することにより所定の凹凸パターンを形成し、印刷版を得るものである。
印刷原版は、例えば、シート状又は円筒状の支持体と硬化性樹脂組成物を前記シート状又は円筒状支持体上で硬化した厚さ0.1mm以上10mm以下の樹脂硬化物層とを備えた構成とすることができる。
印刷原版の表面の中心線平均粗さRaが上記範囲であれば、印刷時の被印刷物へのインキ転移性を実用上十分に良好な状態とすることができ、均一にインキが塗布された印刷物が得られる。
有機系微粒子(c)を含有しない硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物は、重量が半減する時点の温度が150℃以上400℃以下の範囲であることが好ましく、250℃以上400℃以下であることがより好ましく、250℃以上380℃以下であることがさらに好ましい。
また、有機系微粒子(c)を含有しない硬化性樹脂組成物の硬化物は、熱分解が狭い温度範囲で起こることが好ましい。具体的には、前記熱重量分析において、不活性ガス雰囲気下での熱重量分析における重量90%減少温度と重量10%減少温度との差が150℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましく、80℃以下であることがさらに好ましい。熱重量分析における重量90%減少温度と重量10%減少温度との差が上記範囲であれば、分解が急速に進行し正確なパターン形成が可能となる。
支持体は、上述した硬化性樹脂組成物を硬化した樹脂硬化物層や、後述するクッション層を安定保持する機能を有している。
支持体は、シート状支持体、円筒状支持体のいずれであってもよい。
シート状支持体の材料としては、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンチオエーテル等のプラスチックや、ニッケル、アルミニウム、鉄等の金属が挙げられる。
シート状支持体の厚さは、50μm以上500μm以下が好ましく、100μm以上200μm以下がより好ましい。厚さが上記範囲であれば、実用上十分な寸法安定性が確保できる。また、印刷機のシリンダーへシート状印刷版を装着させる工程を経るため、フレキシビリティーを充分に確保することも可能である。
円筒状支持体としては、金属製、ゴム製、プラスチック製シリンダーや、プラスチック製、金属製、繊維強化プラスチック製スリーブ、フィルム強化プラスチック製スリーブ等の中空円筒状支持体が好ましい。良好な取扱性や、重量の観点からは、繊維強化プラスチック製の中空円筒状支持体が好適である。
繊維強化プラスチックは、ガラス繊維、ポリアミド繊維、ポリイミド繊維、ポリエステル繊維、ポリウレタン繊維、セルロース繊維、炭素繊維、金属繊維、セラミックス繊維から選択される少なくとも1種の繊維を含有することが好ましい。
円筒状支持体の厚さは、0.1mm以上2mm以下が好ましく、0.3mm以上1.5mm以下がより好ましく、0.4mm以上0.8mm以下がさらに好ましい。
円筒状支持体の厚さが上記範囲であれば、実用上十分な機械的強度を確保でき、軽量化も達成できる。
クッション層は、印刷版に弾力を与え、印刷機能を向上させる層であり、上述した樹脂硬化物層の下部層として任意に形成する層である。
クッション層は、例えば0.05〜10mm程度の厚さに形成する。
クッション層としては、ショアA硬度が10度以上70度以下、又はASKER−C型硬度計で測定したASKER−C硬度が20度以上85度以下のエラストマー層であることが好ましい。
ショアA硬度が10度以上又はASKER−C硬度が20度以上であると、適度に変形するため、高品質印刷が可能となる。
また、ショアA硬度が70度以下又はASKER−C硬度が85度以下であれば、クッション層としての役割を果たすことができる。
より好ましいショアA硬度は20〜60度の範囲であり、ASKER−C硬度では45〜75度の範囲である。
ショアA硬度、ASKER−C硬度は、形成するクッション層の材質により適宜使い分けることが好ましい。2種類の硬度の違いは、測定用の硬度計の押針形状に由来するものである。クッション層が均一な樹脂組成により形成されている場合には、ショアA硬度を用いることが好ましく、発泡ポリウレタン、発泡ポリエチレン等の発泡性基材等のように、不均一な樹脂組成により形成されている場合には、ASKER−C硬度を用いることが好ましい。
ASKER−C硬度は、JIS K7312規格に準拠する測定法である。
ショアA硬度は、JIS K6253規格に準拠する測定法である。
特に、シート状又は円筒状印刷版への加工性を確保する観点から、液状の光硬化型樹脂組成物を用い、光硬化後にエラストマー化する材料が好ましい。
前記有機系微粒子は、中空マイクロカプセルであって、この中空マイクロカプセルの表面に無機系微粒子が付着しているものを用いることが好ましい。前記有機系微粒子の平均粒子径は1μm以上500μm以下であることが好ましく、10μm以上300μm以下であることがより好ましく、80μm以上200μm以下であることがさらに好ましい。
クッション層の密度は、0.1g/cm3以上0.9g/cm3以下が好ましく、0.3g/cm3以上0.7g/cm3以下がより好ましく、0.4g/cm3以上0.6g/cm3以下がさらに好ましい。
クッション層の密度を上記範囲とすることにより、印刷工程において、印刷層にかかる衝撃を充分に吸収できる。
光硬化型エラストマーとしては、前記熱可塑性エラストマーに、光重合性モノマー、可塑剤及び光重合開始剤等を混合したもの、液状樹脂に光重合性モノマー、光重合開始剤等を混合した液状光硬化型樹脂組成物等が挙げられる。
クッション層は、全面露光により硬化させ、必要な機械的強度を確保できればよく、材料選定の自由度が極めて高い。
また、テレケリック液状ゴムを、反応する硬化剤を用いて3次元架橋させてエラストマー化したものも使用できる。
また、発泡ポリウレタン、発泡ポリエチレン等、層内に、独立又は連続する気泡を有するものであってもよく、市販品として入手可能なクッション材、クッションテープを使用でき、クッション層の片面あるいは両面に接着剤あるいは粘着剤が塗布されたものであってもよい。
本実施の形態における印刷原版は、硬化性樹脂組成物が光硬化性樹脂組成物である場合には、支持体上に上述したクッション層を任意に形成し、その上層として光硬化性樹脂組成物層を形成した後、下記光硬化処理を施すことにより作製できる。
硬化性樹脂組成物が熱硬化性樹脂組成物である場合には、同様に支持体上に上述したクッション層を任意に形成し、その上層として熱硬化性樹脂組成物を形成した後、下記熱硬化処理を施すことにより作製できる。
硬化性樹脂組成物層を光照射により架橋させて、樹脂硬化物層が得られる。
また、成型しながら光照射を行い、架橋させてもよい。
光硬化に適用する光源としては、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、紫外線蛍光灯、殺菌灯、カーボンアーク灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ等が挙げられる。
照射光としては、200nm〜300nmの波長の光が好ましい。特に、水素引き抜き型光重合開始剤は、上記波長領域に強い光吸収を有するものが多いため、200nm〜300nmの波長の光を有する場合、感光性樹脂硬化物層表面の硬化性を充分に確保できる。光硬化に用いる光源は、1種でもよいが、波長の異なる2種以上の光源を用いて硬化させることにより樹脂硬化性の向上効果が得られる。
(熱硬化)
硬化性樹脂組成物層を加熱処理することにより、樹脂硬化物層が得られる
加熱処理方法としては、赤外線を照射する方法、オーブン等で加熱した雰囲気に曝す方法、加熱した金属等の物体と接触する方法等が挙げられる。加熱温度は、熱重合開始剤の種類によって適宜選択することが好ましい。
上述した印刷原版の表面に、レーザー彫刻で所定のパターンを形成することにより、印刷版が得られる。
レーザー彫刻法においては、形成したい画像をデジタル型のデータとしてコンピューターを利用してレーザー装置を操作し、印刷原版にレリーフ画像を作成する。
レーザー彫刻に用いるレーザーは、印刷原版が吸収を有する波長を含むものであればどのようなものを用いてもよいが、彫刻を高速度で行うためには出力の高いものが好ましい。例えば、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、半導体レーザー等の赤外線又は赤外線放出固体レーザー等が好ましい。
また、可視光線領域に発振波長を有するYAGレーザーの第2高調波、銅蒸気レーザー、紫外線領域に発振波長を有する紫外線レーザー、例えば、エキシマレーザー、第3又は第4高調波へ波長変換したYAGレーザーは、有機分子の結合を切断するアブレージョン加工が可能であり、微細加工に適する。また、レーザーは連続照射でも、パルス照射でもよい。
レーザー彫刻終了後、レリーフ印刷版面にわずかに発生する粉末状又は液状の物質は、所定の方法、例えば、溶剤や界面活性剤を含有している洗浄水により除去してもよく、高圧スプレー等により水系洗浄剤を照射して除去してもよく、高圧スチームを照射する方法等を用いて除去してもよい。
なお、後露光処理の前に、予め印刷版表面を水素引き抜き型光重合開始剤を含む処理液を用いて処理しておき、その後、露光を行ってもよい。
また、水素引き抜き型光重合開始剤を含む処理液中に印刷版を浸漬した状態で露光してもよい。
本実施の形態の硬化性樹脂組成物は、フレキソ印刷原版用シート又はロール、グラビア印刷用シート又はロール、レーザー光を照射して貫通した孔状パターンを形成するスクリーン印刷用シート又はロータリースクリーン、孔版印刷用原版材料、オフセット印刷法で用いられるブランケット、アニロックスロールに接して用いられるインキ量調整用ロール、印刷用クッションロール、インクジェットプリンター、レーザープリンター、複写機等に搭載されているロール等の印刷基材、又は3次元立体成形用基材等に適用できる。
なお、ドライオフセット印刷用途において、インキが脂肪族炭化水素及び/又は芳香族炭化水素を含む場合、シート状の硬化性樹脂組成物に、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体を含有させ、溶剤に対する高い耐久性を確保することが好ましい。
上記脂肪族炭化水素としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、ジペンテン、ゴム揮発油、ミネラルスピリット、高沸点石油溶剤(インキオイル)等の化合物が挙げられる。
芳香族炭化水素としては、トルエン、キシレン、ジメチルベンゼン、ジクロロベンゼン、ソルベントナフタ、テトラリン等の化合物が挙げられる。
本実施の形態の印刷版は、電子素子の導体、半導体、絶縁体の形成、又は光学素子形成に用いることができる。
電子素子としては、例えば、有機電界発光素子、有機太陽電池、有機半導体、アンテナ回路、液晶ディスプレイ素子、プラズマ発光素子等が挙げられる。また、光学素子としては、例えば、マイクロレンズアレイ、光導波路等が挙げられる。
(1)レーザー彫刻
レーザー彫刻は、炭酸ガスレーザー彫刻機(商標:ZED−mini−1000、英国、ZED社製、米国、コヒーレント社製、出力250W炭酸ガスレーザーを搭載、レーザーの発振波長は10.6μm)を用いて行った。
彫刻は、網点(120線/インチ、面積率10%)パターンを形成した。彫刻深さは0.55mmとした。
硬化性樹脂組成物の粘度及び有機化合物(b)の粘度を、B型粘度計(商標、B8H型;日本国、東京計器社製)を用いて20℃の温度条件で測定した。
樹脂(a)、有機化合物(b)の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ法(GPC法)を用いて、分子量既知のポリスチレンで換算して求めた。
高速GPC装置(日本国、東ソー社製、商標、HLC−8020)とポリスチレン充填カラム(商標:TSKgel GMHXL;日本国、東ソー社製)を用い、テトラヒドロフラン(THF)で展開して測定した。カラムの温度は40℃に設定した。GPC装置に注入する試料としては、樹脂濃度が1質量%のTHF溶液を調製し、注入量10μLとした。また、検出器としては示差屈折計を用いた。
シリコーン微粒子の2級シロキサン結合の3級及び4級シロキサン結合に対する比率を、29Si−NMR測定により求めた。
シリコーン微粒子の29Si−NMR測定は、Bruker社製、商標「Biospin DSX400」を用いて実施した。
観測核:29Si、観測周波数:79.49MHz、積算回数:2400回、パルス幅:4.5μ秒、待ち時間:30秒、MAS(マジック角回転速度):3500Hz、マジックアングルスピニング:5000Hz、パルスプログラム:hpdec(ハイパワーデカップリング)、サンプル管径:7mmΦの条件で測定を行った。
化学シフトの外部基準を、ジメチルシリコーンゴムを別途測定し、得られた1本のピークを−22ppmとした。
有機系微粒子(c)の13C−NMR測定を、Bruker社製、商標「Biospin DSX400」を用いて実施した。
積算回数:1800回、待ち時間:10秒、MAS:5kHz、パルスプログラム:hpdec(ハイパワーデカップリング)、サンプル管径:7mmΦの条件で測定を行った。
有機系微粒子(c)の熱重量分析は、セイコーインスツルメント社製、商標「TG/DTA320」を用いた。昇温速度は10℃/分、窒素を毎分100mLの流量で流しながら重量減少を測定した。加熱温度の上限は1000℃とした。
シリコーン微粒子の数平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(キーエンス社製、商標「VE−9800」)で観察した画像データを基に、画像解析によって測定した。
画面上にシリコーン微粒子が100個程度は入る倍率で観察し、粒子が完全に入る最小円の径を微粒子の粒子径とした。
粒子径分布における標準偏差は、微粒子1000個程度のデータを基に算出した。
(樹脂(a)の製造)
温度計、攪拌機、還流器を具備する1Lのセパラブルフラスコに、旭化成株式会社製ポリカーボネートジオール:商標「PCDL L4672」(数平均分子量1990、OH価56.4)447.24gと、トリレンジイソシアナート30.83gとを加え、80℃に加温下で約3時間反応させた。
その後、2−メタクリロイルオキシイソシアネート14.83gを添加し、さらに約3時間反応させて、末端がメタアクリル基(分子内の重合性不飽和基が1分子あたり平均約2個)である数平均分子量約10000の樹脂を製造した。
この樹脂は20℃では水飴状であり、外力を加えると流動し、かつ外力を除いても元の形状を回復しなかった。
樹脂(a):上記方法により作製した樹脂:100質量部
有機化合物(b):フェノキシエチルメタクリレート(共栄社化学社製、「ライトエステル(登録商標)PO」、分子量190):45質量部
トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学社製、「NKエステル(登録商標)TMPT」分子量338):5質量部
有機系微粒子(c):ポリイミド微粒子(宇部興産社製、商標「UIP−R」、数平均粒子径:12.5μm、真比重:1.39、粒子径分布の標準偏差:1.5μm、球状粒子の存在比率:95%):3質量部
光重合開始剤:ベンゾフェノン(日本化薬社製、「KAYACURE(登録商標)BP−100」):0.5質量部
2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(スイス国、チバスペシャリティーケミカル社製):0.6質量部
安定剤:2,6−ジ−t−ブチルアセトフェノン(ジャパンケムテック社製、「アイオノール(登録商標)CP」):0.5質量部
上記材料を混合して、硬化性樹脂組成物を調製した。
得られた硬化性樹脂組成物は、20℃において液状であった。また、B型粘度計を用いて測定した粘度は、20℃において、900Pa・sであった。
ポリイミド微粒子は、ポリ(N,N’−オキシジフェニレン−ビフェニルテトラカルボキシルイミド)からなるものである。また、ポリイミド微粒子の芳香族炭化水素由来の炭素原子の割合は、13C−NMRのシグナルの積分値の比率から85原子%であった。
ポリイミド微粒子の熱重量分析の結果、30%重量減少温度は、650℃であった。1000℃における残存重量率は55%であった。
ガラス板上に設置した、易接着処理された厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)上に光硬化性接着剤を厚み20μmで塗布し、その上に、上記により作製した液状の硬化性樹脂組成物を、厚み1.1mmで塗布し、上下からケミカルランプ(オランダ国、フィリップス社製、商標「10R」)の紫外線を4000mJ/cm2照射してシート状の樹脂硬化物(樹脂硬化物層)を形成し、支持体と樹脂硬化物層により構成される印刷原版を得た。
熱重量分析のために、前記(硬化性樹脂組成物の調製)に記載されている組成において、ポリイミド微粒子を含有しない樹脂を別途調製した。
この樹脂を用いて、上記(樹脂硬化物層の作製)に従い、シート状の樹脂硬化物層を得た。
熱重量分析の結果、重量半減温度は350℃であり、重量10%減少温度は315℃、重量90%減少温度は410℃であった。従って、重量90%減少温度と重量10%減少温度の差は95℃であった。
シート状の樹脂硬化物を炭酸ガスレーザー彫刻機(商標:ZED−mini−1000、英国、ZED社製、米国、コヒーレント社製、出力250W炭酸ガスレーザーを搭載、レーザーの発振波長は10.6μm)のシリンダーに固定し、パターンを形成した。
レーザー彫刻時に発生する彫刻カスはペースト状であった。表面を洗浄した後の彫刻パターンを走査型電子顕微鏡で観察した結果、形成されたパターン表面に粒子状物は観測されなかった。また、形成パターンも良好な状態であった。
このようにして得られた印刷版と、を、ガラス基板上に印刷できる精密印刷機(日本電子精機社製、商標「JSC−m60.60−M」)とを用いて、銀ナノペースト(ハリマ化成社製、商標「NPS−J」)を印刷し厚さ約2μmの導電体パターンを得た。
上記実施例1により作製した硬化性樹脂組成物を用いた。
厚さ0.45mmの、ガラス繊維により強化されたエポキシ樹脂製スリーブ(チェコ国、Ligum社製)をエアーシリンダーに装着し、その上層として光硬化性接着剤層を厚さ0.2mmで塗布した。
この光硬化性接着剤層の上層として、上記実施例1で作製した硬化性樹脂組成物を厚さ1.3mmに積層し、メタルハライドランプ(米国フュージョン社製、商標「F450V型UVランプ」)からの紫外線を4000mJ/cm2(波長350nmにおける積算光量)照射し、全面を光硬化させた。
その後、研削・研磨により表面調整を行い、表面粗度Raが0.5μmとした円筒状の印刷原版を得た。
なお、この研削・研磨工程においては、樹脂硬化物の表面タックは極めて低く、表面の研削・研磨は非常に容易に実施できた。
このようにして得られた円筒状の印刷原版に、上記実施例1と同様に、炭酸ガスレーザー彫刻機を用いて表面に画像パターンを形成した。レーザー彫刻時に発生した彫刻カスは、ペースト状であった。表面を洗浄した後の画像パターンを走査型電子顕微鏡で観察した結果、形成されたパターン表面に粒子状物は観測されなかった。また、形成パターンも良好な状態であった。
この円筒状の印刷版を、上記実施例1と同様に精密印刷機のエアーシリンダーに装着し、フルオレン骨格を有する数平均分子量10000のポリマーを主成分とし、酢酸エチル/イソプロピルアルコールを溶剤として含有する液状感光性樹脂をインキとして用いて、ガラス基板上に印刷を行った。その後、溶剤成分を乾燥除去し、ガラス基板上に厚み15μmの円形パターンを形成した。
さらに加熱することにより印刷した感光性樹脂を溶融させ、曲面を有するパターンに変形させた。
その後、光硬化させることによってマイクロレンズパターンが得られた。
有機系微粒子(c)として、宇部興産社製、商標「UIP−S」を使用した。
その他の条件は、実施例1と同様として液状の硬化性樹脂組成物を作製した。
有機系微粒子(c)であるポリイミド微粒子(宇部興産社製、「UIP−S」)は、数平均粒子径:9μm、真比重:1.48、粒子径分布の標準偏差:1.4μm、球状粒子の存在比率:95%であった。
ポリイミド微粒子を熱重量分析した結果、30%重量減少温度は、650℃であった。1000℃における残存重量率は36%であった。
ポリイミド微粒子は、ポリ(N,N’−p−フェニレン−ビフェニルテトラカルボキシルイミドであった。
また、ポリイミド微粒子の芳香族炭化水素由来の炭素原子の割合は、13C−NMRシグナルの積分値の比率から81原子%であった。
上記硬化性樹脂組成物を用い、その他の条件は実施例1と同様にして印刷原版を作製し、次にレーザー彫刻を行った。
レーザー彫刻時に発生した彫刻カスはペースト状であった。その後、表面洗浄を行い、彫刻カスを除去し、印刷版を得た。表面を洗浄した後の彫刻パターンを走査型電子顕微鏡で観察した結果、形成されたパターン表面に粒子状物は観測されなかった。また、形成パターンも良好な状態であった。
このようにして得られた印刷版と、ガラス基板上に印刷できる精密印刷機(日本電子精機社製、商標「JSC−m60.60−M」)とを用いて、銀ナノペースト(ハリマ化成社製、商標「NPS−J」)を印刷し厚さ約2μmの導電体パターンを得た。
下記の組成に従い、硬化性樹脂組成物を調製した。
実施例1で用いた樹脂(a):100質量部
有機化合物(b):2−ヒドロキシエチルメタクリレート(共栄社化学社製、商標「ライトエステルHO」、分子量130):20質量部
有機化合物(b):1,3−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ベンゼン(東亜合成社製、商標「RSOX」、分子量306):10質量部
有機系微粒子(c):ポリイミド微粒子(宇部興産社製、商標「UIP−R」):10質量部
光酸発生剤:トリアリールスルホニウムヘキサフルオリン酸塩混合物プロピレンカーボネート50質量%溶液(ユニオンカーバイド社製、商標「UVI−6990」):4質量部
安定剤:2,6−ジ−t−ブチルアセトフェノン:0.5質量部
上記材料を混合して、液状の硬化性樹脂組成物を調製した。
このようにして得られた硬化性樹脂組成物を、厚さ1.5mmのガラス繊維強化プラスチックスリーブ上に厚み1.5mmで塗布し、メタルハライドランプ(米国、フュージョン社製、商標「F450V型UVランプ」)から放出される紫外線を4000mJ/cm2(350nmでの積算光量)照射し、樹脂硬化物層を形成し、円筒状の印刷原版を得た。
このようにして得られた円筒状の印刷原版に、上記実施例1と同様に、炭酸ガスレーザー彫刻機を用いて表面にパターンを形成した。レーザー彫刻時に発生した彫刻カスは、粉末状であった。版面に残存した彫刻カスは飛散しないことが確認され、弱アルカリ性水系洗浄液で簡単に除去できた。表面を洗浄した後の彫刻パターンを走査型電子顕微鏡で観察した結果、形成されたパターン表面に粒子状物は観測されなかった。また、形成パターンも良好な状態であった。
下記の組成に従い、硬化性樹脂組成物を調製した。
実施例1で用いた樹脂(a):100質量部
有機化合物(b):フェノキシエチルメタクリレート(分子量 206):45質量部
有機化合物(b):トリメチロールプロパントリアクリレート(分子量338):16質量部
有機系微粒子(c):ポリイミド微粒子(宇部興産社製、商標「UIP−S」):10質量部
熱重合開始剤:t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート(日本油脂株式会社製 商標「パーブチルE」):1質量部
上記材料を70℃の温度条件で混合し、更に、安定剤として2,6−ジ−t−ブチルアセトフェノン:0.5質量部を加えて、硬化性樹脂組成物を調製した。
このようにして得られた硬化性樹脂組成物を、金属板上に固定したPET製カバーフィルム上に、厚み1.5mmで塗布し、その上に厚み50μmのPETフィルムを被せ、更に、その上に金属板を置き、150℃に温調したオーブン中に入れて、20分間加熱してシート状の樹脂硬化物(樹脂硬化物層)を形成し、支持体と樹脂硬化物層により構成される印刷原版を得た。
シート状の樹脂硬化物を実施例1と同様の方法により炭酸ガスレーザー彫刻機を用いて表面にパターンを形成した。レーザー彫刻時に発生した彫刻カスは、粉末状であった。版面に残存した彫刻カスは飛散しないことが確認され、弱アルカリ性水系洗浄液で簡単に除去できた。表面を洗浄した後の彫刻パターンを走査型電子顕微鏡で観察した結果、形成されたパターン表面に粒子状物は観測されなかった。また、形成パターンも良好な状態であった。
下記の組成に従い、硬化性樹脂組成物を調製した。
樹脂(a):数平均分子量が約8万のスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(旭化成ケミカルズ社製、「タフプレンA(登録商標)」):100質量部
有機化合物(b):ヘキサメチレンジアクリレート(分子量254):10質量部
数平均分子量2000の液状ポリブタジエン(新日本石油化学社製、「B2000」):15質量部
脂環族炭化水素可塑剤(クラレ社製):10質量部
有機系微粒子(c):ポリイミド微粒子(宇部興産社製、「UIP−R」):5質量部
光重合開始剤:2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン:0.6質量部
安定剤:2,6−ジ−t−ブチルアセトフェノン:0.5質量部
上記材料を150℃の温度条件で、小容量加圧型ニーダー(モリヤマ社製、商標「D1−5」)を用いて混合し、硬化性樹脂組成物を調製した。
このようにして得られた硬化性樹脂組成物を、2軸押し出し装置(テクノベル社製、商標「KZW−TW」)を用いて、予め接着剤を表面に薄く塗布されている厚さ188μmのPETフィルム上に、厚さ1mmで押し出した。
さらに、シリコーン離型処理を施した厚み15μmのカバーシートで挟み、シート状の硬化性樹脂組成物を得た。この硬化性樹脂組成物は、20℃において固体状であった。
上記シート状の硬化性樹脂組成物を、ガラス平板上に設置し、両面からケミカルランプ(オランダ国、フィリップス社製、商標「10R」)を用いて紫外線を4000mJ/cm2(350nmでの積算光量)照射し、シート状の樹脂硬化物を形成し、支持体と樹脂硬化物層により構成される印刷原版を得た。
その後、上記印刷原版を用いて、上記実施例1と同様の方法によりレーザー彫刻を行い、パターンを形成した。
レーザー彫刻時に発生した彫刻カスはペースト状であった。表面を洗浄し、彫刻カスを除去し、彫刻パターンを走査型電子顕微鏡で観察した結果、形成されたパターン表面に粒子状物は観測されなかった。また、形成パターンも良好な状態であった。
また、上記方法により調製した硬化性樹脂組成物の組成において、ポリイミド微粒子を含有しない樹脂を別途調製し、上記と同様の方法によりシート状の樹脂硬化物を得た。この樹脂硬化物を熱重量分析したところ、重量半減温度は450℃、重量10%減少温度は400℃、重量90%減少温度は470℃であった。従って重量90%減少温度と重量10%減少温度の差は70℃であった。
下記の組成に従い、硬化性樹脂組成物を調製した。
実施例1で作製した樹脂(a):100質量部
有機化合物(b):トリメチロールプロパントリアクリレート(分子量338):45質量部
有機系微粒子(c):ポリイミド微粒子(宇部興産社製、商標「UIP−R」、数平均粒子径:12.5μm、真比重:1.39、粒子径分布の標準偏差:1.5μm、球状粒子の存在比率:95%):2質量部
光重合開始剤:ベンゾフェノン0.5質量部
光重合開始剤:2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン:0.6質量部
安定剤:2,6−ジ−t−ブチルアセトフェノン:0.5質量部
上記材料を混合して硬化性樹脂組成物を調製した。この硬化性樹脂組成物は、20℃において液状であった。
この硬化性樹脂組成物を用いて、実施例2と同様にして円筒状の樹脂硬化物(樹脂硬化物層)を作製し、支持体と樹脂硬化物層により構成される印刷原版を得た。
樹脂硬化物の硬度は、ショアD硬度で50度であった。
その後、実施例1と同様の方法により、上記印刷原版に対するレーザー彫刻を実施した。
レーザー彫刻時に発生した彫刻カスはペースト状であった。その後、高圧スチームによる洗浄工程で、表面に残存していた彫刻カスを除去し、円筒状の印刷版を得た。
表面を洗浄した後の彫刻パターンを走査型電子顕微鏡で観察した結果、形成されたパターン表面に粒子状物は観測されなかった。また、形成パターンも良好な状態であった。円筒状の印刷版を用いてエンボス加工を行ったところ、紙に凹凸パターンを転写させることができた。
また、上記方法により調製した硬化性樹脂組成物の組成において、ポリイミド微粒子を含有しない樹脂を別途調製し、上記と同様の方法によりシート状の樹脂硬化物を得た。この樹脂硬化物を熱重量分析したところ、重量半減温度は370℃、重量10%減少温度は325℃、重量90%減少温度は460℃であった。従って、重量90%減少温度と重量10%減少温度の差は135℃であった。
さらに、酢酸エチルを30体積%含有するイソプロパノールを溶剤として4時間浸漬する溶剤膨潤テストを行ったところ、実施例1において作製した樹脂硬化物に比較して膨潤が低く、耐溶剤性が高いものであることが確認された。
実施例1に示した液状の硬化性樹脂組成物の組成において、ポリイミド微粒子を含有しない液状の硬化性樹脂組成物を調製した。
この硬化性樹脂組成物を用いて、実施例2と同様の方法により、中空円筒状の繊維強化プラスチック製スリーブ上に塗布し、円途状の印刷原版を得た。
実施例2に示した表面研削、研磨工程を行ったところ、発生する研削屑が粘着性を有しているため、実施例2と比較して3倍以上の処理時間を要した。
その後、上記印刷原版に、実施例2と同様の方法によりレーザー彫刻を行い、表面に画像パターンを形成した。
レーザー彫刻時には、液状彫刻カスが多量に発生し、シリンダーの回転に伴い、液状カスが多量に飛散した。
実施例1の硬化性樹脂組成物の組成において、ポリイミド微粒子を、架橋ポリアクリル酸エステル微粒子(積水化成品工業社製、商標「ARX−30」、数平均粒子径:30μm)に替えて液状の硬化性樹脂組成物を調製した。
この硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様の方法により、シート状の印刷原版を得た。
架橋ポリアクリル酸エステル微粒子を熱重量分析した結果、30%重量減少温度は350℃であった。また、1000℃における残存重量率は0%であった。
上記シート状の印刷原版を用いて、炭酸ガスレーザー彫刻機により表面にパターン形成を行ったところ、彫刻時には液状彫刻カスが多量に発生し、シリンダーの回転時に液状彫刻カスが多量に飛散した。これは、添加している架橋ポリアクリル酸エステル微粒子が、熱分解する際に液状化したためである。
実施例1の硬化性樹脂組成物の組成において、ポリイミド微粒子を、多孔質架橋ポリメタクリル酸メチル微粒子(積水化成品工業社製、商標「MBP−8」、数平均粒子径:8μm)に替えて液状の硬化性樹脂組成物を調製した。
この硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様の方法により、シート状の印刷原版を得た。
多孔質架橋ポリメタクリル酸メチル微粒子を熱重量分析した結果、30%重量減少温度は300℃であった。また、1000℃における残存重量率は0%であった。
上記シート状の印刷原版を用いて、炭酸ガスレーザー彫刻機により表面にパターン形成を行ったところ、彫刻時には液状彫刻カスが多量に発生し、シリンダーの回転時に液状彫刻カスが多量に飛散した。これは、添加している多孔質架橋ポリメタクリル酸メチル微粒子が、熱分解する際に液状化したためである。
実施例1の硬化性樹脂組成物の組成において、ポリイミド微粒子を、ポリフェニレンエーテル微粒子(旭化成ケミカルズ社製、「P−402」、数平均粒子径:70μm)に替えて液状の硬化性樹脂組成物を調製した。
この硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様の方法により、シート状の印刷原版を得た。
ポリフェニレンエーテル微粒子を熱重量分析した結果、30%重量減少温度は420℃であった。また、1000℃における残存重量率は25%であった。
上記シート状の印刷原版を用いて、炭酸ガスレーザー彫刻機により表面にパターン形成を行ったところ、彫刻時には液状彫刻カスが多量に発生し、シリンダーの回転時に液状彫刻カスが飛散した。
実施例1の硬化性樹脂組成物の組成において、ポリイミド微粒子を、ポリジメチルシロキサン製シリコーンゴム微粒子(信越化学工業社製、「KMP−597」、数平均粒子径:5μm)に替えて液状の硬化性樹脂組成物を調製した。
この硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様の方法により、シート状の印刷原版を得た。
シリコーンゴム微粒子を熱重量分析した結果、30%重量減少温度は420℃であった。また、1000℃における残存重量率は34%であった。
上記シート状の印刷原版を用いて、炭酸ガスレーザー彫刻機により表面にパターン形成を行ったところ、彫刻時には液状彫刻カスが多量に発生し、シリンダーの回転時に液状彫刻カスが飛散した。
実施例1の硬化性樹脂組成物の組成において、ポリイミド微粒子を、ポリフェニレンエーテル微粒子(旭化成ケミカルズ社製、「P−402」、数平均粒子径:70μm)に替え、さらにこの添加量を10質量部として、液状の硬化性樹脂組成物を調製した。
この硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様の方法により、シート状の印刷原版を得た。
上記シート状の印刷原版を用いて、炭酸ガスレーザー彫刻機により表面にパターン形成を行った。レーザー彫刻時の彫刻カスは粘稠性のある粉末状であった。また、上記のようにして形成したパターン(網点パターン)の側面は凸凹が多数あり歪な形状であった。
実施例5の硬化性樹脂組成物の組成において、ポリイミド微粒子を、ポリオルガノシルセスキオキサン製シリコーン微粒子(信越化学工業社製、「X−52−1621」、数平均粒子径:5μm)に替え、液状の硬化性樹脂組成物を調製した。
シリコーン微粒子を熱重量分析した結果、30%重量減少温度は1000℃を超えていた。また、1000℃における残存重量率は約90%であった。
上記硬化性樹脂組成物を、金属板上に固定したPET製カバーフィルム上に、厚み1.5mmで塗布し、その上に厚み50μmのPETフィルムを被せ、更に、その上に金属板を置き、150℃に温調したオーブン中に入れて、20分間加熱して、シート状の樹脂硬化物(樹脂硬化物層)を形成し、支持体と樹脂硬化物層により構成される印刷原版を得た。
シート状の樹脂硬化物を実施例1と同様の方法により炭酸ガスレーザー彫刻機を用いて表面にパターンを形成した。レーザー彫刻時に発生した彫刻カスは、粉末状であった。弱アルカリ性水系洗浄液を用いて表面の洗浄処理を行った後、彫刻パターンを走査型電子顕微鏡で観察したところ、パターン表面に粒子状物が多数観察された。
比較例1においては、硬化性樹脂組成物が有機系微粒子(c)を含有していないため、 レーザー彫刻時に液状彫刻カスが多量に発生し、シリンダーの回転に伴い液状カスが多量に飛散し、作業効率が悪化した。
比較例2〜5においては、いずれも有機系微粒子(c)としてポリイミド微粒子を用いず、また不活性ガス雰囲気下での熱重量分析における重量30%減少温度が低い材料の微粒子を用いたため、レーザー彫刻時に液状彫刻カスが多量に発生し、シリンダーの回転時に液状彫刻カスが飛散し、作業効率が悪化した。
比較例6においては、有機系微粒子(c)としてポリイミド微粒子を用いず、また不活性ガス雰囲気下での熱重量分析における重量30%減少温度が低い材料の微粒子を用いたため、レーザー彫刻時に粘稠性のある粉末状の彫刻カスが発生し、また、形成したパターン(網点パターン)側面は歪な形状となり、実用上十分な品質の印刷版が得られなかった。
比較例7においては、有機系微粒子(c)としてポリイミド微粒子を用いず、また不活性ガス雰囲気下での熱重量分析における重量30%減少温度が極めて高い材料の微粒子を用いたため、レーザー彫刻を行い、表面の洗浄処理を行った後においても、パターン表面に粒子状物が多数残留した。
Claims (7)
- レーザー彫刻によりパターン形成を行う印刷原版用の硬化性樹脂組成物であって、
数平均分子量が1000以上50万以下の樹脂(a)と、
数平均分子量が1000未満で、かつ分子内に重合性不飽和基を有する有機化合物(b)と、
数平均粒子径0.1μm以上100μm以下の有機系微粒子(c)と、
を含有し、
前記有機系微粒子(c)は、不活性ガス雰囲気下での熱重量分析における重量30%減少温度が450℃以上800℃以下である硬化性樹脂組成物。 - 前記有機系微粒子(c)の不活性ガス雰囲気下での熱重量分析における、1000℃での残存重量率が35%以上70%以下である請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
- 前記有機系微粒子(c)が、イミド骨格、アミド骨格、オキサジン骨格、ベンゾビスチアゾール骨格からなる群から選ばれる、少なくとも1種類の分子骨格を有する請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
- 前記有機系微粒子(c)がポリイミド又はポリアミドを含有し、
当該ポリイミド又はポリアミドは、芳香族炭化水素由来の炭素原子を、当該ポリイミド又はポリアミドの全炭素原子数の70原子%以上90原子%以下含有している請求項3に記載の硬化性樹脂組成物。 - 前記有機系微粒子(c)の含有率が、硬化性樹脂組成物全体量の0.1質量%以上20質量%以下である請求項1乃至4のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
- 請求項1乃至5のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を硬化させた樹脂硬化物層を有する印刷原版。
- 請求項6に記載の印刷原版の表面をレーザー彫刻することにより形成した凹凸パターンを有する印刷版。
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