JP4493600B2 - レーザー彫刻可能な印刷基材の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、印刷版用レリーフ画像の作成、エンボス加工等の表面加工用パターンの形成、タイル等の印刷用レリーフ画像の形成、電子回路形成における導体、半導体、絶縁体のパターン印刷、光学部品の反射防止膜、カラーフィルター、(近)赤外線カットフィルター等の機能性材料のパターンの形成、更には液晶ディスプレイ又は有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ等の表示素子の製造における配向膜、下地層、発光層、電子輸送層、封止材層の塗膜・パターン形成に適したレーザー彫刻可能な円筒状又はシート状フレキソ印刷原版、レタープレス印刷原版、グラビア印刷原版、スクリーン印刷原版、又はオフセット印刷用ブランケット製造に適するレーザー彫刻可能な印刷基材の製造方法に関するものである。
段ボール、紙器、紙袋、軟包装用フィルムなどの包装材、壁紙、化粧版などの建装材、ラベル印刷などにフレキソ印刷、レタープレス印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷等の各種印刷方式が用いられている。特にフレキソ印刷、又は比較的硬度の高い樹脂凸版を使用するレタープレス印刷は、各種の印刷方式の中でその比重を高めている。これらの印刷方式に用いる印刷版の製作には、通常、感光性樹脂が用いられることが多い。例えば、液状の感光性樹脂、又はシート状に成形された固体感光性樹脂版を用い、フォトマスクを該感光性樹脂上に置き、マスクを通して光を照射し架橋反応を起こさせた後、非架橋部分を現像液で洗い落とすという方法が用いられてきた。近年、感光性樹脂表面にブラックレーヤ−という薄い光吸収層を設け、これにレーザー光を照射し感光性樹脂版上に直接マスク画像を形成後、そのマスクを通して光を照射し架橋反応を起こさせた後、光の非照射部分の非架橋部分を現像液で洗い落とす、いわゆるフレキソCTP技術が開発され、印刷版製作の効率改善の効果から、その採用が進みつつある。しかしながら、この技術の効率改善効果も限られたものであり、現像工程が不可欠であるなどの課題が残っており、レーザーを使って直接印刷原版上にレリーフ画像を形成し、しかも現像が不要であるような技術の開発が求められている。
そのための1つの方法として直接レーザーで印刷原版を彫刻する方法が挙げられる。この方法で凸版印刷版やスタンプを作成することは既に行われている。それに用いられる材料としてEPDM等の合成ゴムやシリコーンを加熱・加硫したものが既に使用されてきている。しかし、これらの材料は必要な機械物性を発現させるための加熱・加硫に時間がかかり、更に物性が安定するまでの養生が必要など、製造に時間がかかるのみならず、前者の合成ゴム等を原料とするものはレーザー彫刻を行った際に彫刻カスが版面に固着しこれを除去するのが非常に難しく高精細な画像が形成できない欠点があり、後者のシリコーンを原料とする材料はレーザー彫刻の速度が遅く版の作成に時間がかかることや溶剤系インキに対する耐性が低いなどの欠点がある。
上記材料の欠点を克服する方法として感光性樹脂組成物を光硬化させて得られた感光性樹脂硬化物にレーザー光を照射して表面に凹凸パターンを形成するレーザー彫刻フレキソ印刷版の製造方法が提案されている。
例えば、特許文献1(日本国特許第2846954号公報(米国特許第5798202号))、及び特許文献2(日本国特許第2846955号公報(米国特許第5804353号))には、SBS、SIS、SEBS等の熱可塑性エラストマーを機械的、光化学的、熱化学的に強化した材料を用いることが開示されている。
また、特許文献3(特開昭56−64823号公報)、及び特許文献4(特開2002−79645号公報)には液状の感光性樹脂を光硬化させたロール状材料を形成する方法が開示されている。更に本発明者らは特許文献5(WO03−022594号パンフレット)に、20℃においてプラストマーである高分子材料を含有する液状感光性樹脂組成物を用いたレーザー彫刻印刷原版を提案しており、無機多孔質体を共存させてレーザーの発生する液状のデブリの発生を抑制し、版面のタックを抑制したり、光学系の汚染を防止する改良を可能にする方法を提案している。また、本発明者らは特許文献6(PCT/JP2004/005839)において、液状感光性樹脂組成物を用いたレーザー彫刻印刷原版の製造装置及びそれを用いた原版の製造方法を提案している。
感光性樹脂硬化物を用いるレーザー彫刻法では、形成されたパターンのエッジがシャープになり印圧による画像の太りが抑制される利点、更にはレーザー光の焦点が小さい特性を活かし非常に微細な網点の形成が可能になる点など、従来の露光・現像による印刷版を使用する場合に比べて高品質の印刷ができるのではないかという期待が強く、その技術の完成が待望されている。
近年のレーザー彫刻装置の進歩により、シャープなエッジの形成や非常に微細な網点の形成は可能になりつつあるが、これを実際の印刷で実現しようとする時には更に解決しなければならない問題があることが明らかになった。より具体的に言うと、一つの例として細線や網点部分のエッジがシャープであると確かに印圧による画像の太りは抑制される方向に向かうが、同時に印圧による変形が起こりやすくなるために印刷に忠実に再現することに結びつかない。そのため、材料の機械物性の一層の向上が必要となる。
また、版上の画像のエッジがシャープになり微細なパターンの形成が可能になっても、高品位の印刷を実現するためには、それだけでは不充分であり、前提として印刷版がその版厚精度を確保することができるような機械的物性を有することがきわめて重要となってくる。レーザー彫刻による方法の場合、画像を彫刻により形成する前にまず感光性樹脂を硬化した後、表面に切削、研削、研磨等の表面加工を行うことにより、現在汎用に用いられている露光・現像による印刷版に比べて、高い膜厚精度を確保することが可能である。一方で、本発明者らは前出の従来の感光性樹脂組成物を用いて、切削、研削、研磨等の表面加工プロセスを更に詳細に検討したところ、これらのプロセスで発生する粘着性カスが表面に付着し、付着した粘着性カスが除去し難いために、表面に切削、研磨痕が残ることがあり、得られる表面の加工精度が不十分となって、特に高精細な印刷を行う際に印刷品質に問題が生じることが判った。また、前記粘着性カスは切削バイト又は研削ホイール表面に付着し、場合によっては絡みついたりする。これらの問題を回避するために、切削バイト又は研削ホイールに粘着性カスが絡みついた際に、作業を止めて付着したカスを清掃、除去する等、慎重に加工を行うことが必要となるために加工に要する時間が多大なものになることが判明した。その他、高精細な画像の版を用いる際の課題として版拭きなどのときに画像が欠落しやすくなることも大きな問題となることがしばしばである。
このように、レーザー彫刻による凸版印刷版の良好な画像形成性の利点を最大限活かしつつ、フレキソ印刷であるため、印刷版の硬度を上げることなく、上述の通りの高解像度の印刷をも可能とするように機械的強度を向上させる必要がある。
例えば前出の特許文献1(日本国特許第2846954号(米国特許第5798202号))、及び特許文献2(日本国特許第2846955(米国特許第5804353号))には、SBS、SIS、SEBS等の熱可塑性エラストマーを機械的、光化学的、熱化学的に強化した材料を用いることが開示されており、充填剤を添加することにより機械的に強化を図ることが提示されている。しかしながら、充填剤を混合すると、材料の硬度も同時に高くなってしまうなど、上記の課題の解決は望めない。
一方、特許文献3〜6には上記課題について記載がない。特許文献4(特開2002−79645号公報)には、レーザー彫刻用のシームレスシリンダー印刷版を製造する方法が記載され、液状感光性樹脂に光を照射して光硬化させる工程において、波長200nmから400nmを主体に発光する光源を使用するという記載がある。具体的な光源としてケミカルランプ、殺菌線ランプ、高圧水銀灯、メタルハライドランプ等の比較的強度の高い光源から低い光源まで幅広い光源が挙げられている。しかしながら、特定の高照度の光を照射することについては何ら言及されていない。
以上述べた通り、レーザー彫刻技術を実用可能とし、一段高い印刷パフォーマンスを実現しようとした場合、これまでの材料設計技術では印刷版の硬度に影響することなく、機械的物性を向上させることができる技術は存在しなかった。
特許第2846954号公報 特許第2846955号公報 特開昭56−64823号公報 特開2002−79645号公報 WO03/022594号パンフレット PCT/JP2004/005839号パンフレット
本発明は、感光性樹脂組成物に光を照射して得られる感光性樹脂硬化物からなるレーザー彫刻可能な印刷基材の機械的物性を向上させつつ、硬度を容易に低くすることが可能な画期的な方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、意外にも光硬化工程で用いる光源の条件、すなわち高照度の光を感光性樹脂に照射することで、材料を変更することなしに機械物性を大幅に向上できることを見出した。
すなわち円筒状支持体又はシート状支持体上に感光性樹脂組成物層を形成する工程を経て、形成された感光性樹脂組成物層に光を照射し感光性樹脂硬化物層を形成する工程において、感光性樹脂組成物層に照射する光が200nm以上450nm以下の波長の光を含み、かつ感光性樹脂組成物層表面での光の照度が、オーク製作所社製のUVメーター「UV−M02」(商標)オーク製作所社製のフィルター「UV−35−APRフィルター」(商標)を用いて測定した場合、20mW/cm2以上2W/cm2 以下であり、前記オーク製作所社製のUVメーター「UV−M02」(商標)オーク製作所社製のフィルター「UV−25フィルター」(商標)を用いて測定した場合、3mW/cm2以上2W/cm2以下であることを特徴とする感光性樹脂硬化物の製造方法により、上記のような課題を容易に解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は下記の通りである。
1. 円筒状支持体又はシート状支持体上に感光性樹脂組成物層を形成する工程、及び形成された感光性樹脂組成物層に光を照射し厚さ50μm以上50mm以下の感光性樹脂硬化物層を形成する工程を含み、該感光性樹脂組成物層に照射する光が200nm以上450nm以下の波長の光を含み、かつ該感光性樹脂組成物層の表面での光の照度が、オーク製作所社製のUVメーター「UV−M02」(商標)オーク製作所社製のフィルター「UV−35−APRフィルター」(商標)を用いて測定した場合、20mW/cm2以上2W/cm2 以下であり、かつ前記オーク製作所社製のUVメーター「UV−M02」(商標)オーク製作所社製のフィルター「UV−25フィルター」(商標)を用いて測定した場合、3mW/cm2 以上2W/cm2以下である、レーザー彫刻可能な印刷基材の製造方法。
2. 更に、前記感光性樹脂組成物層に光を照射し感光性樹脂硬化物層を形成する工程の後に、該感光性樹脂硬化物層の膜厚を調整し感光性樹脂硬化物層の表面を整形する工程を含む上記1.に記載の方法。
3. 更に、前記感光性樹脂硬化物層の膜厚を調整し感光性樹脂硬化物層の表面を整形する工程の後に、再度、該感光性樹脂硬化物層に光を照射する工程を含み、該感光性樹脂硬化物層に再度照射される光が200nm以上450nm以下の波長の光を含み、かつ該感光性樹脂硬化物層の表面での光の照度が、オーク製作所社製のUVメーター「UV−M02」(商標)オーク製作所社製のフィルター「UV−35−APRフィルター」(商標)を用いて測定した場合、20mW/cm2 以上2W/cm2以下であり、前記オーク製作所社製のUVメーター「UV−M02」(商標)オーク製作所社製のフィルター「UV−25フィルター」(商標)を用いて測定した場合、3mW/cm2以上2W/cm2以下である、上記1.に記載の方法。
4. 前記感光性樹脂組成物層又は感光性樹脂硬化物層に光を照射する雰囲気が大気中である上記1.に記載のレーザー彫刻可能な印刷基材の製造方法。
5. 前記感光性樹脂組成物層又は感光性樹脂硬化物層の温度が−50℃以上150℃ 以下である上記1.記載の方法。
6. 前記感光性樹脂組成物層が20℃において液状である上記1.に記載の方法。
7. 前記感光性樹脂組成物層が20℃において固体である上記1.に記載の方法。
8. 前記感光性樹脂硬化物層が継ぎ目のない層である上記1.に記載の方法。
9. 光を照射するための光源と前記感光性樹脂組成物層の間に光を集光するための光学系が存在する上記1.に記載の方法。
10. 印刷基材が、レーザー光を照射して凹凸パターンの形成可能なフレキソ印刷原版、レタープレス印刷原版、グラビア印刷原版、レーザー光を照射して貫通したパターンの形成可能なスクリーン印刷原版、又はオフセット印刷用ブランケットである上記1.から7.のいずれか一項に記載の方法。
11. 前記1.〜10.のいずれか一に記載の製造方法で得られたレーザー彫刻可能な印刷基材であって、周波数が1Hzの引っ張りモードの正弦波、チャック間距離の試料長が30mm、振動変位が15μm、測定温度範囲が−150℃〜60℃、昇温条件が等速昇温で4℃/分、測定雰囲気が窒素ガス気流下の条件で非共振強制伸張振動型装置を用いて測定した、前記印刷基材から前記円筒状支持体または前記シート状支持体を剥離して得られる感光性樹脂硬化物層であって幅が10mm、厚さが1mmの感光性樹脂硬化物層の動的粘弾性測定において、損失弾性率(E”)と貯蔵弾性率(E’)の比で定義される損失正接(tanδ)が、−100℃以上20℃以下の測定温度範囲にピークを有し、−50℃以上20℃以下の温度範囲でピークを有する場合に、該ピーク温度でのtanδの値が0.87以上1.5以下であり、また、損失正接(tanδ)が−100℃以上−50℃未満の温度範囲でピークを有する場合に、該ピーク温度でのtanδの値が0.7以上1.5以下であることを特徴とするレーザー彫刻可能な印刷基材。
本発明の印刷基材の製造方法により、高照度光の照射により得られる感光性樹脂硬化物の硬度が大きく低下するだけでなく、機械的物性の中でも印刷基材として特に重要である破断強度の向上、更に、引張り伸度も向上し、これにより印刷に用いる感光性樹脂版の材料設計技術の自由度が飛躍的に向上し、レーザー彫刻に好適な高性能の印刷基材を得ることができるようになる。
以下、本発明について、特にその好ましい実施態様を中心に、詳細に説明する。
本発明の印刷基材は、感光性樹脂組成物を光硬化させて得られる感光性樹脂硬化物から形成されたレーザー彫刻が可能なものである。レーザー彫刻とは、レーザー光が照射された部分が除去され凹部が形成されるパターン形成方法である。
本発明の感光性樹脂硬化物の製造方法は、円筒状支持体又はシート状支持体上に、感光性樹脂組成物層を形成する工程、形成された感光性樹脂層に光を照射しレーザー彫刻可能な感光性樹脂硬化物層を形成する工程を含んでいる。更に、感光性樹脂層に照射される光が200nm以上450nm以下の波長領域の光を含み、かつ感光性樹脂層表面での光の照度が、UVメーター(オーク製作所社製、商標「UV−M02」)とフィルター(オーク製作所社製、商標「UV−35−APRフィルター」)を用いて測定した場合に、20mW/cm以上2W/cm以下、より好ましくは50mW/cm以上1W/cm以下、更に好ましくは80mW/cm以上1W/cm以下、最も好ましくは80mW/cm以上500mW/cm以下であり、前記UVメーターとフィルター(オーク製作所社製、商標「UV−25フィルター」)を用いて測定した場合に、好ましくは3mW/cm以上2W/cm以下、より好ましくは5mW/cm以上1W/cm以下、更に好ましくは10mW/cm以上1W/cm以下、最も好ましくは10mW/cm以上100mW/cm以下であることを特徴とする。上記の照度範囲であれば、感光性樹脂硬化物の硬度を低下させる効果が十分であり、光照射中に感光性樹脂組成物中の成分が分解又は蒸発することも避けられる。また、照度がより高い領域では、光硬化物の硬度が低下する効果が一定値に近づく傾向が見られる。
上記のように照度の高い光を照射することにより、感光性樹脂組成物層の内部及び表面の硬化性を確保することができるのみならず、得られる光硬化物の硬度を容易に低くすることができ、更に機械的物性で特に重要な破断強度と引張り伸度を向上させることができるという、驚くべき効果を本発明者らは発見した。感光性樹脂組成物では、光硬化物の硬度を高くすることは架橋密度を上げることにより比較的容易に達成することができるが、硬度を低い方向へシフトさせることは、用いる感光性樹脂組成物中の高分子成分又は重合性不飽和基を有する有機化合物の種類若しくは量を大幅に変更する必要があるなど、極めて難しい。その理由は、感光性樹脂組成物中の成分を変更すると、耐溶剤性、耐摩耗性、機械的物性など、他の物性を大幅に低下させてしまうことが多々あるからである。それゆえ、光源として照度の高いものを用いることにより容易に低硬度化が達成できる効果は材料設計上大きなメリットであり、その効果は驚くべきものであった。この低硬度化の要因は、硬化が不十分であることに拠るものではない。すなわち、感光性樹脂組成物の機械的物性において破断強度及び引張り伸度は向上するという結果からも、硬化が不十分でないことが裏付けられている。この効果についても大きな驚きであった。この要因は現時点で不明であるが、低照度の光で徐々に光硬化反応が進行していく場合と、非常に高照度の光により瞬時に光硬化反応が進む場合とで、感光性樹脂組成物中の光重合反応のメカニズムが大きく異なるためであると推測される。
また、高照度の光を照射して得られる感光性樹脂硬化物の場合、レーザー彫刻印刷基材製造時に特有の切削、研削、研磨等の表面加工プロセスにおいて発生する粘着性カスの除去が容易であり、かつレーザー彫刻時に発生する液状カス量が少なく、発生した液状カスによって網点パターンが膨潤し太る現象を抑制する効果もある。
また、高照度の光を照射し急速に光硬化させて得られる感光性樹脂硬化物の動的粘弾性測定を行った場合、低照度の光を照射しゆっくりと光硬化させて得られる感光性樹脂硬化物に比較して、貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E”)、及び損失正接(tanδ)の挙動が大きく異なることを見出した。損失正接(tanδ)は、高照度系と低照度系のいずれも、−100℃から20℃の領域にピークを示し、いずれの系でもほぼ同じ温度範囲にピークを示す。しかしながら、貯蔵弾性率(E’)は高照度光で急速に硬化させた高照度系の方が20〜40%小さい値を示す。また、損失正接(tanδ)の値は、ピーク温度において、高照度系の方が大きな値を示す。高照度系では、貯蔵弾性率が低く、損失正接が大きいことから、架橋点間密度が小さく、光硬化物の分子量分布が狭いこと、すなわち光硬化後の分子鎖長がそろっていることが示唆される。したがって、感光性樹脂組成物の組成が同じであっても、光硬化に用いる光の照度が異なるのみで、得られる光硬化物の分子量分布が大きく異なるという驚くべき結果を得た。
本発明の感光性樹脂光硬化物は、非共振強制伸張振動型装置を用いた動的粘弾性測定において、損失弾性率(E”)と貯蔵弾性率(E’)との比で定義される損失正接(tanδ)が、−100℃以上20℃以下の測定温度範囲にピークを有し、−50℃以上20℃以下の温度範囲でピークを有する場合に、該ピーク温度でのtanδの値が0.87以上1.5以下であり、また、損失正接(tanδ)が−100℃以上−50℃未満の温度範囲でピークを有する場合に、該ピーク温度でのtanδの値が0.7以上1.5以下であることが好ましい。大別すると、tanδのピークが−50℃以上20℃以下に存在するものは、20℃において液状の感光性樹脂組成物を光硬化させたものであり、−100℃以上−50℃未満の温度領域にピークを有するものは、20℃において固体状の感光性樹脂組成物を光硬化させたものに対応する傾向がある。tanδが−50℃以上20℃以下の温度領域にピークを有する場合に、ピーク温度でのtanδの値は、好ましくは0.87以上1.5以下、より好ましくは0.87以上1.2以下、更に好ましくは0.87以上1.0以下である。また、−100℃以上50℃以下の温度領域にピークを有する場合に、ピーク温度でのtanδの値は、好ましくは0.7以上1.5以下、より好ましくは0.7以上1.2以下、更に好ましくは0.7以上1.0以下である。tanδが、この範囲であれば、光硬化物の硬度を低くすることができ、更に印刷基材としての機械的特性を確保することが可能である。
円筒状支持体又はシート状支持体上に感光性樹脂組成物層を形成する方法として、特に限定するものではないが、20℃において液状の感光性樹脂組成物を塗布する方法、20℃において固体状の感光性樹脂組成物を加熱溶融させ押し出し機等の装置を用いて前記支持体上に押し出し、カレンダーロール等を用いて膜厚を均一にする方法などを挙げることができる。液状感光性樹脂組成物を塗布する方法は、ドクターブレード法、スプレーコート法、グラビアコート法、スピンコート法等、公知の方法を採ることができる。
形成された感光性樹脂組成物は、光の照射により架橋せしめ、感光性樹脂硬化物を形成する。また、感光性樹脂組成物を成型しながら光の照射により架橋させることもできる。光を使って架橋させる方法は、装置が簡便で厚み精度が高くできるなどの利点を有し好適である。硬化に用いられる光源としてはメタルハライドランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、紫外線蛍光灯、カーボンアーク灯、キセノンランプ等強度の強い光源を挙げることができる。また、複数種類の光源の光を照射しても構わない。しかしながら、高強度の光源を用いても、光源から感光性樹脂組成物層までの距離、光源に使用するガラスの種類、光源と感光性樹脂組成物層の間に光を吸収するフィルム等の存在により、実際に感光性樹脂組成物層に照射される光の照度は大きく影響を受けるので注意が必要である。
一般的に感光性樹脂組成物からフレキソ印刷版等の樹脂凸版を形成する際に使用する露光装置では、用いるランプの中心波長が350nmから380nmにあり、発光照度の波長半値巾が10nmから20nm程度の、ケミカルランプ等の極めて波長範囲の狭く、照度の低い光源を用いることが一般的である。これは、微細なパターンの形成が必須であるため、用いる光の波長による屈折率の違いの影響を最小限に留める狙いから、このような波長範囲の狭い光源を用いて、この課題解決を達成していたと考えられる。更に、印刷基材のパターン化においては、大きな面積を一度に露光するため、黒色パターンで遮光した露光マスクフィルムを用いることが一般的である。この際に、露光マスクフィルムが光源からの熱吸収により熱膨張する懸念から、微細パターンを形成する場合には、露光マスクフィルムを通して感光性樹脂組成物に照射する光として高照度の光を避けることが一般的である。また、特に、印刷基材作製時に使用する厚膜感光性樹脂組成物を光硬化させて凹凸パターンを形成する場合には、微細パターン形成において、パターン形成性、パターン形状の観点から高照度の光を用いないのが一般的であった。例えば、2〜5kWという高強度の超高圧水銀灯を搭載したプリント配線板作製用の露光装置において照度は、7〜12mW/cm(UVメーター(オーク製作所社製、商標「UV−M0I」)を使用して測定した値)と低照度であったという記載が、学術文献(日刊工業新聞社、「電子技術」1984年6月臨時増刊号、132ページ)にある。
前述の通り、特開2002−79645号公報には、レーザー彫刻用のシームレスシリンダー印刷版の製造方法に関する記載がある。液状感光性樹脂に光を照射して光硬化させる工程において、波長200nmから400nmを主体に発光する光源を使用するという記載があり、具体的な光源としてケミカルランプ、殺菌線ランプ、高圧水銀灯、メタルハライドランプ等の比較的強度の高い光源から低い光源まで幅広い光源が挙げられている。しかしながら、高照度の光については言及されていない。光源の強度は、低強度のものから高強度のものまで幅広く存在し、市販品を入手することが可能である。更に、光源から感光性樹脂表面までの距離により、照度は大きく変化することが一般的である。また、高圧水銀灯、メタルハライドランプ等の比較的高強度であると言われている光源において、ランプ内に封入する元素、ガスの種類、ランプに使用するガラスの種類等により発光波長は大きく変化することも一般的である。特にメタルハライドランプにおいては、封入する金属ハロゲン化物の種類により発光波長を大幅に変化させることができるため、発光波長は固定されているものではない。また、感光性樹脂表面にフィルムが被覆されている場合、フィルムの光吸収により透過して感光性樹脂表面に到達できる光の照度は大幅に低下することもある。特に芳香族系ポリエステルフィルムの場合には、300nm以下の短波長側の波長領域で光が吸収される。また、光源に使用するガラスの種類、材質によっては、300nm以下の波長の光が著しくカットされてしまうものも存在する。更に、光源からの距離や、使用する光学系、例えばレンズ、ミラー等の光学部品の種類、材質により感光性樹脂組成物表面に到達する光の照度は著しく影響を受けて低下する。ここで言う照度とは、単位面積当たりの光の量であり、光源から発せられる全部の光の量である強度(あるいは出力)とは一般的に区別されている。光源強度と照度は同義ではなく、光源強度が高い光源を用いても感光性樹脂表面に到達する光の照度が低いこともあり、逆に光源強度が低い光源を用いても集光することにより感光性樹脂表面に到達する光の照度を高めることも可能である。したがって、どのような光源を使用し、どのような光学系を組むかによって、感光性樹脂に照射される光の照度は、極めて大きく影響を受けてしまうものである。
低強度光源を用いて高照度化する方法として、光源から感光性樹脂組成物の間の位置に、レンズ又は凹面鏡等の光を集光するための光学系を導入することが好ましい。これらの光学系を用いることにより、低強度光源であっても高照度の光を感光性樹脂組成物に照射することが可能となる。
本発明では、感光性樹脂組成物を支持体上に塗布し、形成された感光性樹脂組成物層に高照度光を照射して光硬化させた後に、所定の膜厚になるように切削、研磨等の整形工程を経ることができる。この整形工程の後、再度、高照度光を照射し、感光性樹脂硬化物層の表面及び内部を処理することが、より効果的である。
本発明では、感光性樹脂組成物に光照射する雰囲気は、気体雰囲気であることが好ましい。特に大気中で光硬化させることが好ましく、光照射に用いる装置を、より簡略化することができる。
光が照射されている感光性樹脂組成物層又は感光性樹脂硬化物層の温度は、好ましくは、−50℃以上150℃以下、より好ましくは0℃以上100℃以下、更に好ましくは0℃以上80℃以下である。この温度範囲であれば、感光性樹脂組成物を一定膜厚でシート状又は円筒状に成形することが可能であり、光照射中に感光性樹脂組成物が分解又は蒸発することも防ぐことができる。
レーザー彫刻可能な感光性樹脂硬化物層中に無機多孔質体(c)を含有させることにより、レーザー彫刻工程で発生する液状カスを吸収除去することができる。光硬化前の感光性樹脂組成物は、数平均分子量1000以上20万以下の樹脂(a)、数平均分子量1000未満でその分子内に重合性不飽和基を有する有機化合物(b)、及び無機多孔質体(c)を含有することが好ましい。
樹脂(a)の種類としては、エラストマーであっても非エラストマーであっても構わないし、20℃において固体状ポリマーであっても液状ポリマーであっても構わない。また、熱可塑性樹脂を用いる場合、ポリマー全重量の30wt%以上、好ましくは50wt%以上、更に好ましくは70wt%以上含有していることが望ましい。熱可塑性樹脂の含有率が30wt%以上であれば、レーザー光線照射により樹脂が充分に流動化するため、後述する無機多孔質体に吸収される。ただし、軟化温度が300℃を超えて大きい樹脂を用いる場合、円筒状に成形する温度も当然高くなるため、他の有機物が熱で変性、分解することが懸念されるため、溶剤可溶性樹脂を溶剤に溶かした状態で塗布し使用することが好ましい。
特に、円筒状樹脂版への加工の容易性の観点、また、熱に対する分解のし易さの点から、樹脂(a)として20℃において液状の高分子を使用することが好ましい。樹脂(a)として、20℃において液状のポリマーを使用した場合、形成される感光性樹脂組成物も液状となるので、低い温度で成形することができる。
本発明で用いる樹脂(a)の数平均分子量は、1000から20万の範囲が好ましい。より好ましい範囲としては、5000から10万である。数平均分子量が1000から20万の範囲であれば、印刷原版の機械的強度を確保することができ、レーザー彫刻時、樹脂を充分に溶融又は分解させることができる。本発明の数平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定し、分子量既知のポリスチレン標品に対して評価したものである。
用いる樹脂(a)としては、液状化し易い樹脂や分解し易い樹脂が好ましい。分解し易い樹脂としては、分子鎖中に分解し易いモノマー単位としてスチレン、α−メチルスチレン、α−メトキシスチレン、アクリルエステル類、メタクリルエステル類、エステル化合物類、エーテル化合物類、ニトロ化合物類、カーボネート化合物類、カルバモイル化合物類、ヘミアセタールエステル化合物類、オキシエチレン化合物類、脂肪族環状化合物類等が含まれていることが好ましい。特にポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラエチレングリコール等のポリエーテル類、脂肪族ポリカーボネート類、脂肪族カルバメート類、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ニトロセルロース、ポリオキシエチレン、ポリノルボルネン、ポリシクロヘキサジエン水添物、又は分岐構造の多いデンドリマー等の分子構造を有するポリマーは、分解し易いものの代表例である。また、分子鎖中に酸素原子を多数含有するポリマーが分解性の観点から好ましい。これらの中でも、カーボネート基、カルバメート基、メタクリル基をポリマー主鎖中に有する化合物は、熱分解性が高く好ましい。例えば、(ポリ)カーボネートジオールや(ポリ)カーボネートジカルボン酸を原料として合成したポリエステルやポリウレタン、(ポリ)カーボネートジアミンを原料として合成したポリアミドなどを熱分解性の良好なポリマーの例として挙げることができる。これらのポリマー主鎖、側鎖に重合性不飽和基を含有しているものであっても構わない。特に、末端に水酸基、アミノ基、カルボキシル基等の反応性官能基を有する場合には、主鎖末端に重合性不飽和基を導入することも容易である。
本発明で用いる熱可塑性エラストマーとして特に限定するものではないが、スチレン系熱可塑性エラストマーであるSBS(ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン)、SIS(ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン)、SEBS(ポリスチレン−ポリエチレン/ポリブチレン−ポリスチレン)等、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、シリコーン系熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。より熱分解性を向上させるために、分子骨格中に分解性の高いカルバモイル基、カーボネート基等の易分解性官能基を主鎖に導入したポリマーを用いることもできる。
また、より熱分解性の高いポリマーと混合して用いても構わない。熱可塑性エラストマーは加熱することにより流動化するため、本発明で用いる無機多孔質体と混合することが可能となる。熱可塑性エラストマーとは、加熱することにより流動し通常の熱可塑性プラスチック同様成形加工ができ、常温ではゴム弾性を示す材料である。分子構造としては、ポリエーテル又はゴム分子のようなソフトセグメントと、常温付近では加硫ゴムと同じく塑性変形を防止するハードセグメントからなり、ハードセグメントとしては凍結相、結晶相、水素結合、イオン架橋など種々のタイプが存在する。
印刷版の用途により、熱可塑性エラストマーの種類を選択できる。例えば、耐溶剤性が要求される分野では、ウレタン系、エステル系、アミド系、フッ素系熱可塑性エラストマーが好ましく、耐熱性が要求される分野では、ウレタン系、オレフィン系、エステル系、フッ素系熱可塑性エラストマーが好ましい。また、熱可塑性エラストマーの種類により、硬度を大きく変えることができる。通常の印刷版での用途では、ショアA硬度が20〜75度の領域、紙、フィルム、建築材料の表面凹凸パターンを形成するエンボス加工又はレタープレス印刷の用途では、比較的硬い材料が必要であり、ショアD硬度で、30〜80度の領域である。
熱可塑性樹脂において非エラストマー性のものとして、特に限定するものではないが、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリイイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、全芳香族ポリエステル樹脂等を挙げることができる。
本発明の熱可塑性樹脂の軟化温度は、50℃以上300℃以下であることが好ましい。より好ましい範囲としては80℃以上250℃以下、更に好ましくは100℃以上200℃以下である。軟化温度が50℃以上であれば常温で固体として取り扱うことができ、シート状又は円筒状に加工したものを変形させずに取り扱うことができる。また軟化温度が300℃以下である場合、円筒状に加工する際に極めて高い温度に加熱する必要がなく、混合する他の化合物を変質、分解させずに済む。本発明の軟化温度の測定は、動的粘弾性測定装置を用い、室温から温度を上昇させた場合、粘性率が大きく変化する(粘性率曲線の傾きが変化する)最初の温度で定義する。
また、本発明の樹脂(a)として溶剤可溶性樹脂であっても構わない。具体的には、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂等を挙げることができる。
本発明の樹脂(a)は、分子鎖の末端又は側鎖に反応性の高い重合性不飽和基を有していても構わない。反応性の高い重合性不飽和基を有するポリマーを用いた場合、極めて機械的強度の高い印刷原版を作製することができる。特にポリウレタン系、ポリエステル系熱可塑性エラストマーでは、比較的簡単に分子内に反応性の高い重合性不飽和基を導入することが可能である。ここで言う分子内とは高分子主鎖の末端、高分子側鎖の末端や高分子主鎖中や側鎖中に直接、重合性不飽和基が付いている場合なども含まれる。例えば、重合性の不飽和基をその分子末端に直接導入したものを用いてもよいが、別法として、水酸基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、ケトン基、ヒドラジン残基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、環状カーボネート基、エステル基などの反応性基を複数有する数千程度の分子量の化合物と、該成分の反応性基と結合しうる基を複数有する結合剤(例えば水酸基やアミノ基の場合のポリイソシアネートなど)とを反応させ、分子量の調節、及び末端の結合性基への変換を行った後、この末端結合性基と反応する基と重合性不飽和基を有する有機化合物と反応させて末端に重合性不飽和基を導入する方法などが好適に挙げられる。
有機化合物(b)は、ラジカル又は付加重合反応に関与する不飽和結合を有する化合物であり、樹脂(a)との希釈のし易さを考慮すると、その数平均分子量は1000未満が好ましい。ラジカル重合反応に関与する不飽和結合を有する官能基としては、ビニル基、アセチレン基、アクリル基、メタクリル基、アリル基などが好ましい例である。また、付加重合反応に関与する不飽和結合を有する官能基としては、シンナモイル基、チオール基、アジド基、開環付加反応するエポキシ基、オキセタン基、環状エステル基、ジオキシラン基、スピロオルトカーボネート基、スピロオルトエステル基、ビシクロオルトエステル基、シクロシロキサン基、環状イミノエーテル基等を挙げることができる。
有機化合物(b)の具体例としては、エチレン、プロピレン、スチレン、ジビニルベンゼン等のオレフィン類、アセチレン類、(メタ)アクリル酸及びその誘導体、ハロオレフィン類、アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類、(メタ)アクリルアミド及びその誘導体、アリルアルコール、アリルイソシアネート等のアリル化合物、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸及びその誘導体、酢酸ビニル類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール等が挙げられる。その種類の豊富さ、価格、レーザー光照射時の分解性等の観点から、(メタ)アクリル酸及びその誘導体が好ましい例である。該誘導体として、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、シクロアルケン基、ビシクロアルケン基などを有する脂環族化合物、ベンジル基、フェニル基、フェノキシ基、フルオレン骨格等を有する芳香族化合物、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、グリシジル基等を有する化合物、アルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、トリメチロールプロパン等の多価アルコールとのエステル化合物などが挙げられる。
また、有機化合物(b)としての、付加重合反応するエポキシ基を有する化合物としては、種々のジオールやトリオールなどのポリオールにエピクロルヒドリンを反応させて得られる化合物、分子中のエチレン結合に過酸を反応させて得られるエポキシ化合物などを挙げることができる。具体的には、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールAにエチレンオキシド又はプロピレンオキシドが付加した化合物のジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリ(プロピレングリコールアジペート)ジオールジグリシジルエーテル、ポリ(エチレングリコールアジペート)ジオールジグリシジルエーテル、ポリ(カプロラクトン)ジオールジグリシジルエーテル等を挙げることができる。
本発明において、これら重合性の不飽和結合を有する有機化合物(b)はその目的に応じて1種又は2種以上のものを選択できる。例えば印刷版として用いる場合、印刷インキの溶剤であるアルコールやエステル等の有機溶剤による膨潤を抑えるために用いる有機化合物(b)として、長鎖脂肪族、脂環族又は芳香族の誘導体を少なくとも1種類以上有することが好ましい。
本発明の樹脂組成物から得られる印刷原版の機械強度を高めるためには、有機化合物(b)としては脂環族又は芳香族の誘導体を少なくとも1種類以上有することが好ましい。この場合、誘導体の量は有機化合物(b)の全体量の、好ましくは20wt%以上、更に好ましくは50wt%以上である。また、前記芳香族の誘導体として、窒素、硫黄等の元素を有する芳香族化合物であっても構わない。
印刷版の反撥弾性を高めるため例えば特開平7−239548号に記載されているようなメタクリルモノマーを使用するとか、公知の印刷用感光性樹脂の技術知見等を利用して選択することができる。
本発明の樹脂(a)及び/又は有機化合物(b)が、分子鎖中にカーボネート結合、エステル結合、エーテル結合からなる群から選ばれる少なくとも1種類の結合を有するか、及び/又は脂肪族飽和炭化水素鎖、及び脂肪族不飽和炭化水素鎖からなる群から選ばれる少なくとも1種類の分子鎖を有し、かつウレタン結合を有する化合物であることが、耐溶剤性を必要とする用途では好ましい。その中でも、カーボネート結合を有する化合物又は脂肪族炭化水素鎖を有する化合物は、溶剤インキで多用されるエステル系溶剤について特に高い耐溶剤性を示す。
無機多孔質体(c)は、粒子中に微小細孔を有する、又は微小な空隙を有する無機粒子である。レーザー彫刻において多量に発生する粘稠性の液状カスを吸収除去するための添加剤であり、版面のタック防止効果も有する。レーザー照射されても溶融しないことの他、特に材質として限定されるものではないが、紫外線又は可視光線を用いて光硬化させる場合、黒色の微粒子を添加すると感光性樹脂組成物内部への光線透過性が著しく低下し、硬化物の物性低下をもたらすため、カーボンブラック、活性炭、グラファイト等の黒色微粒子は、本発明の無機多孔質体(c)としては適当でない。
無機多孔質体(c)の細孔容積は、好ましくは0.1ml/g以上10ml/g以下、より好ましくは0.2ml/g以上5ml/g以下である。細孔容積が0.1m/g以上の場合、粘稠性液状カスの吸収量は十分であり、また10ml/g以下の場合、粒子の機械的強度を確保することができる。本発明において細孔容積の測定には、窒素吸着法を用いる。本発明の細孔容積は、−196℃における窒素の吸着等温線から求められる。
無機多孔質体(c)の平均細孔径は、レーザー彫刻時に発生する液状カスの吸収量に極めて大きく影響を及ぼす。平均細孔径の範囲は、好ましくは1nm以上1000nm以下、より好ましくは2nm以上200nm以下、更に好ましくは2nm以上50nm以下である。平均細孔径が1nm以上であれば、レーザー彫刻時に発生する液状カスの吸収性が確保でき、1000nm以下である場合、粒子の比表面積も大きく液状カスの吸収量を十分に確保できる。平均細孔径が1nm未満の場合、液状カスの吸収量が少ない理由については明確になっていないが、液状カスが粘稠性であるため、ミクロ孔に入り難いのではないかと推定される。本発明の平均細孔径は、窒素吸着法を用いて測定した値である。平均細孔径が2〜50nmのものは特にメソ孔と呼ばれ、メソ孔を有する多孔質粒子が液状カスを吸収する能力が極めて高い。本発明の細孔径分布は、−196℃における窒素の吸着等温線から求められる。
本発明は、好ましくはレーザー照射により切断され易いように比較的分子量の低い樹脂を採用し、それ故分子の切断時に多量に低分子のモノマー、オリゴマー類が発生するため、この粘稠性の液状カスの除去を多孔質無機吸収剤を用いて行うという、これまでの技術思想に全くない新しい概念を導入していることに最大の特徴がある。粘稠性液状カスの除去を効果的に行うために、無機多孔質体の数平均粒子径、比表面積、平均細孔径、細孔容積、灼熱減量、給油量等の物性は重要な要素となる。
無機多孔質体(c)は数平均粒径が0.1〜100μmであることが好ましい。この数平均粒径の範囲より小さいものを用いた場合、本発明の樹脂組成物より得られる原版をレーザーで彫刻する際に粉塵が舞いやすく、彫刻装置を汚染するほか、樹脂(a)及び有機化合物(b)との混合を行う際に粘度の上昇、気泡の巻き込み、粉塵の発生等を生じやすい。他方、上記数平均粒径の範囲より大きなものを用いた場合、レーザー彫刻した際レリーフ画像に欠損が生じやすく、印刷物の精細さを損ないやすい傾向がある。より好ましい平均粒子径の範囲は、0.5〜20μmであり、更に好ましい範囲は3〜10μmである。本発明で用いる無機多孔質体の平均粒子径は、レーザー散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定することができる。
多孔質体の特性を評価する上で、多孔度という新たな概念を導入する。多孔度とは、平均粒子径D(単位:μm)と粒子を構成する物質の密度d(単位:g/cm)から算出される単位重量あたりの表面積Sに対する、比表面積Pの比、すなわちP/Sで定義する。粒子1個あたりの表面積は、πD×10−12(単位:m)であり、粒子1個の重量は(πDd/6)×10−12(単位:g)であるので、単位重量あたりの表面積Sは、S=6/(Dd)(単位:m/g)となる。比表面積Pは、窒素分子を表面に吸着させ測定した値を用いる。
無機多孔質体(c)の多孔度は、好ましくは20以上、より好ましくは50以上、更に好ましくは100以上である。多孔度が20以上であれば、液状カスの吸着除去に効果がある。粒子径が小さくなればなるほど比表面積Pは大きくなるため、比表面積単独では多孔質体の特性を示す指標として不適当である。そのため、粒子径を考慮し、無次元化した指標として多孔度を取り入れた。例えば、ゴム等の補強材として広く用いられているカーボンブラックは、比表面積は150m/gから20m/gと非常に大きいが、平均粒子径は極めて小さく、通常10nmから100nmの大きさであるので、密度をグラファイトの2.25g/cmとして、多孔度を算出すると、0.8から1.0の範囲の値となり、粒子内部に多孔構造のない無孔質体であると推定される。カーボンブラックはグラファイト構造を有することは一般的に知られているので、前記密度にグラファイトの値を用いた。一方、本発明で用いている多孔質シリカの多孔度は、500を優に超えた高い値となる。
本発明の無機多孔質体は、更に良好な吸着性を得るためには、特定の比表面積、吸油量を持つことが好ましい。
無機多孔質体(c)の比表面積の範囲は、好ましくは10m/g以上1500m/g以下、より好ましくは、100m/g以上800m/g以下である。比表面積が10m/g以上であれば、レーザー彫刻時の液状カスの除去が十分となり、また、1500m/g以下であれば、感光性樹脂組成物の粘度上昇を抑え、また、チキソトロピー性を抑えることができる。本発明の比表面積は、−196℃における窒素の吸着等温線からBET式に基づいて求められる。
液状カス吸着量を評価する指標として、吸油量がある。これは、無機多孔質体100gが吸収する油の量で定義する。本発明で用いる無機多孔質体の吸油量の範囲は、好ましくは10ml/100g以上2000ml/100g以下、より好ましくは50ml/100g以上1000ml/100g以下、更に好ましくは200ml/100g以上800ml/100g以下である。吸油量が10ml/100g以上であれば、レーザー彫刻時に発生する液状カスの除去に効果があり、また2000ml/100g以下であれば、無機多孔質体の機械的強度を十分に確保できる。吸油量の測定は、JIS−K5101に従って行うことが好ましい。
本発明の無機多孔質体(c)は、特に赤外線波長領域のレーザー光照射により変形又は溶融せずに多孔質性を保持することが好ましい。950℃において2時間処理した場合の灼熱減量は、好ましくは15wt%以下、より好ましくは10wt%以下である。
無機多孔質体の粒子形状は特に限定するものではなく、球状、扁平状、針状、無定形、又は表面に突起のある粒子などを使用することができる。その中でも、印刷版の耐摩耗性の観点から、球状粒子が特に好ましい。また、粒子の内部が空洞になっている粒子、シリカスポンジ等の均一な細孔径を有する球状顆粒体など使用することも可能である。特に限定するものではないが、例えば、多孔質シリカ、メソポーラスシリカ、シリカ−ジルコニア多孔質ゲル、メソポーラスモレキュラーシーブ、ポーラスアルミナ、多孔質ガラス等を挙げることができる。
また、層状粘土化合物などのように、層間に数nm〜100nmの空隙が存在するものについては、細孔径を定義できないため、本発明においては層間に存在する空隙すなわち面間隔を細孔径と定義する。また、層間に存在する空間の総量を細孔容積と定義する。これらの値は、窒素の吸着等温線から求めることができる。
更にこれらの細孔又は空隙にレーザー光の波長の光を吸収する顔料、染料等の有機色素を取り込ませることもできる。
球状粒子を規定する指標として、真球度を定義する。本発明で用いる真球度とは、粒子を投影した場合に投影図形内に完全に入る円の最大値Dの、投影図形が完全に入る円の最小値Dの比(D/D)で定義する。真球の場合、真球度は1.0となる。本発明で用いる球状粒子の真球度は、好ましくは0.5以上1.0以下、より好ましくは0.7以上1.0以下である。0.5以上であれば、印刷版としての耐磨耗性が良好である。真球度1.0は、真球度の上限値である。球状粒子として、70%以上、より好ましくは90%以上の粒子が、真球度0.5以上であることが望ましい。真球度を測定する方法としては、走査型電子顕微鏡を用いて撮影した写真を基に測定する方法を用いることができる。その際、少なくとも100個以上の粒子がモニター画面に入る倍率において写真撮影を行うことが好ましい。また、写真を基に前記D及びDを測定するが、写真をスキャナー等のデジタル化する装置を用いて処理し、その後画像解析ソフトウエアーを用いてデータ処理することが好ましい。
また、無機多孔質体の表面をシランカップリング剤、チタンカップリング剤、その他の有機化合物で被覆し表面改質処理を行い、より親水性化あるいは疎水性化した粒子を用いることもできる。
本発明において、これらの無機多孔質体(c)は1種類又は2種類以上のものを選択でき、無機多孔質体(c)を添加することによりレーザー彫刻時の液状カスの発生抑制、及びレリーフ印刷版のタック等の改良が有効に行われる。
本発明の感光性樹脂組成物において、通常、樹脂(a)100重量部に対して、有機化合物(b)は5〜200重量部が好ましく、20〜100重量部の範囲がより好ましい。また、無機多孔質体(c)は1〜100重量部が好ましく、2〜50重量部の範囲がより好ましく、2〜20重量部が更に好ましい。
有機化合物(b)の割合が、上記の範囲であれば、得られる印刷版などの硬度と引張強伸度のバランスがとり易く、架橋硬化の際の収縮が小さくなり、厚み精度を確保することができる。
また、無機多孔質体(c)の量が上記の範囲であれば、版面のタック防止効果、及びレーザー彫刻した際に、彫刻液状カスの発生を抑制するなどの効果が十分発揮され、印刷版の機械的強度を確保することができ、透明性を保持することもできる。また、特にフレキソ版として利用する際にも、硬度が高くなりすぎないように抑えることができる。光、特に紫外線を用いて感光性樹脂組成物を硬化させレーザー彫刻印刷原版を作製する場合、光線透過性が硬化反応に影響する。したがって、用いる無機多孔質体の屈折率が感光性樹脂組成物の屈折率に近いものを用いることが有効である。
本発明の感光性樹脂組成物を光又は電子線の照射により架橋して印刷版などとしての物性を発現させるが、その際に重合開始剤を添加することができる。重合開始剤は一般に使用されているものから選択でき、例えば高分子学会編「高分子データ・ハンドブック−基礎編」1986年培風館発行、に例示されているラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合の開始剤等が使用できる。また、光重合開始剤を用いて光重合により架橋を行うことは、本発明の樹脂組成物の貯蔵安定性を保ちながら、生産性良く印刷原版を生産できる方法として有用であり、その際に用いる開始剤も公知のものが使用できる。ラジカル重合反応を誘起させる光重合開始剤としては、水素引き抜き型光重合開始剤と崩壊型光重合開始剤が、特に効果的な光重合開始剤として広く用いられている。大気中で光硬化させるためには、水素引き抜き型光重合開始剤と崩壊型光重合開始剤を組み合わせて使用することが特に好ましい。
水素引き抜き型光重合開始剤として、特に限定するものではないが、芳香族ケトンを用いることが好ましい。芳香族ケトンは光励起により効率良く励起三重項状態になり、この励起三重項状態は周囲の媒体から水素を引き抜いてラジカルを生成する化学反応機構が提案されている。生成したラジカルが光架橋反応に関与するものと考えられる。本発明で用いる水素引き抜き型光重合開始剤として、励起三重項状態を経て周囲の媒体から水素を引き抜いてラジカルを生成する化合物であれば何でも構わない。芳香族ケトンとして、ベンゾフェノン類、ミヒラーケトン類、キサンテン類、チオキサントン類、アントラキノン類を挙げることができ、これらの群から選ばれる少なくとも1種類の化合物を用いることが好ましい。ベンゾフェノン類とは、ベンゾフェノン及びその誘導体を指し、具体的には3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−テトラメトキシベンゾフェノン等である。ミヒラーケトン類とはミヒラーケトン及びその誘導体を言う。キサンテン類とはキサンテン及びアルキル基、フェニル基、ハロゲン基で置換された誘導体を言う。チオキサントン類とは、チオキサントン及びアルキル基、フェニル基、ハロゲン基で置換された誘導体を指し、エチルチオキサントン、メチルチオキサントン、クロロチオキサントン等を挙げることができる。アントラキノン類とはアントラキノン及びアルキル基、フェニル基、ハロゲン基等で置換された誘導体を言う。水素引き抜き型光重合開始剤の添加量は、感光性樹脂組成物全体量の、好ましくは0.1wt%以上10wt%以下、より好ましくは0.5wt%以上5wt%以下である。添加量がこの範囲であれば、液状感光性樹脂組成物を大気中で光硬化させた場合、硬化物表面の硬化性は充分に確保でき、また、耐候性を確保することができる。
崩壊型光重合開始剤とは、光吸収後に分子内で開裂反応が発生し活性なラジカルが生成する化合物を指し、特に限定するものではない。具体的には、ベンゾインアルキルエーテル類、2,2−ジアルコキシ−2−フェニルアセトフェノン類、アセトフェノン類、アシルオキシムエステル類、アゾ化合物類、有機イオウ化合物類、ジケトン類等を挙げることができ、これらの群から選ばれる少なくとも1種類の化合物を用いることが好ましい。ベンゾインアルキルエーテル類としては、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、「感光性高分子」(講談社、1977年出版、頁228)に記載の化合物を挙げることができる。2,2−ジアルコキシ−2−フェニルアセトフェノン類としては、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン等を挙げることができる。アセトフェノン類としては、アセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン等を挙げることができる。アシルオキシムエステル類としては、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム等を挙げることができる。アゾ化合物としては、アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾニウム化合物、テトラゼン化合物等を挙げることができる。有機イオウ化合物としては、芳香族チオール、モノ及びジスルフィド、チウラムスルフィド、ジチオカルバメート、S−アシルジチオカルバメート、チオスルホネート、スルホキシド、スルフェネート、ジチオカルボネート等を挙げることができる。ジケトン類としては、ベンジル、メチルベンゾイルホルメート等を挙げることができる。崩壊型光重合開始剤の添加量は、感光性樹脂組成物全体量の、好ましくは0.1wt%以上10wt%以下、より好ましくは0.3wt%以上3wt%以下である。添加量がこの範囲であれば、感光性樹脂組成物を大気中で光硬化させた場合、硬化物内部の硬化性は充分に確保できる。
水素引き抜き型光重合開始剤として機能する部位と崩壊型光重合開始剤として機能する部位を同一分子内に有する化合物を、光重合開始剤として用いることもできる。その例として、α−アミノアセトフェノン類を挙げることができる。例えば、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、下記一般式(1)で示される化合物を挙げることができる。
Figure 0004493600

(式中、Rは各々独立に、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表す。また、Xは炭素数1〜10のアルキレン基を表す。)
水素引き抜き型光重合開始剤として機能する部位と崩壊型光重合開始剤として機能する部位を同一分子内に有する化合物の添加量は、好ましくは感光性樹脂組成物全体量の0.1wt%以上10wt%以下、より好ましくは0.3wt%以上3wt%以下である。添加量がこの範囲であれば、感光性樹脂組成物を大気中で光硬化させた場合であっても、硬化物の機械的物性は充分に確保できる。
また、光を吸収して酸を発生することにより、付加重合反応を誘起させる光重合開始剤を用いることもできる。例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩等の光カチオン重合開始剤、又は光を吸収して塩基を発生する重合開始剤などが挙げられる。これらの光重合開始剤の添加量は、感光性樹脂組成物全体量の0.1wt%以上10wt%以下の範囲が好ましい。
その他、本発明の樹脂組成物には用途や目的に応じて重合禁止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、滑剤、界面活性剤、可塑剤、香料などを添加することができる。
本発明の感光性樹脂組成物を円筒状に成形する方法としては、既存の樹脂の成形方法を用いることができる。例えば、注型法、ポンプや押し出し機等の機械で樹脂をノズルやダイスから押し出し、ブレードで厚みを合わせる、ロールによりカレンダー加工して厚みを合わせる方法等が例示できる。その際、樹脂の性能を落とさない範囲で加熱しながら成形を行うことも可能である。また、必要に応じて圧延処理、研削処理などを施してもよい。また、感光性樹脂組成物を円筒状支持体上に塗布した後、光を照射し該感光性樹脂組成物を硬化・固化させる装置内に、レーザー彫刻用のレーザー光源を組み込んだ円筒状印刷原版成形・彫刻装置を用いて印刷版を形成することもできる。このような装置を用いた場合、円筒状印刷原版を形成した後、直ちにレーザー彫刻し印刷版を形成することができ、成形加工に数週間の期間を必要としていた従来のゴムスリーブでは到底考えられない短時間加工が実現可能となる。円筒状印刷原版を作製する工程において、感光性樹脂組成物を用いることにより円筒状印刷原版を極めて短時間で作製することが可能である。
本発明で用いる円筒状支持体は、剛直性であってもフレキシブルであっても構わない。また、シート状支持体であっても構わない。本発明で用いる支持体の役割は、印刷原版の寸法安定性を確保することである。したがって、寸法安定性の高いものを選択することが好ましい。線熱膨張係数を用いて評価すると、好ましい材料の上限値は100ppm/℃以下、更に好ましくは70ppm/℃以下である。材料の具体例としては、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリビスマレイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンチオエーテル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、全芳香族ポリエステル樹脂からなる液晶樹脂、全芳香族ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、金属などを挙げることができる。また、これらの樹脂を積層して用いることもできる。
また、支持体の線熱膨張係数を小さくする方法として、充填剤を添加する方法、全芳香族ポリアミド等のメッシュ状クロス、ガラスクロスなどに樹脂を含浸又は被覆する方法などを挙げることができる。充填剤としては、通常用いられる有機系微粒子、金属酸化物又は金属等の無機系微粒子、有機・無機複合微粒子などを用いることができる。また、多孔質微粒子、内部に空洞を有する微粒子、マイクロカプセル粒子、低分子化合物が内部にインターカレーションする層状化合物粒子を用いることもできる。特に、アルミナ、シリカ、酸化チタン、ゼオライト等の金属酸化物微粒子、ポリスチレン・ポリブタジエン共重合体からなるラテックス微粒子、高結晶性セルロース、生物が生成した高結晶性セルロースナノファイバー等の天然物系の有機系微粒子、繊維等が有用である。繊維強化プラスチック(FRP)等の材料は、円筒状支持体として特に有用である。
本発明で用いる円筒状又はシート状支持体の表面に物理的、化学的処理を行うことにより、クッション層との接着性を向上させることができる。物理的処理方法としては、サンドブラスト法、微粒子を含有した液体を噴射するウエットブラスト法、コロナ放電処理法、プラズマ処理法、紫外線又は真空紫外線照射法などを挙げることができる。また、化学的処理方法としては、強酸・強アルカリ処理法、酸化剤処理法、カップリング剤処理法などである。
レーザー彫刻可能な感光性樹脂硬化物層の厚みは、その使用目的に応じて任意に設定して構わないが、印刷版として用いる場合には、一般的に0.1〜7mmの範囲である。場合によっては、組成の異なる材料を複数積層しても構わない。
本発明のレーザー彫刻可能な印刷原版は、無機多孔質体微粒子を含有した感光性材料を光架橋硬化させて形成したものが好ましい。したがって、有機化合物(b)の重合性不飽和基、又はポリマーと有機化合物(b)の重合性不飽和基が反応することにより3次元架橋構造が形成され、通常用いるエステル系、ケトン系、芳香族系、エーテル系、アルコール系、ハロゲン系溶剤に不溶化する。この反応は、有機化合物(b)同士、樹脂(a)同士、又は樹脂(a)と有機化合物(b)との間で起こり、重合性不飽和基が消費される。また、光重合開始剤を用いて架橋硬化させる場合、光重合開始剤が光により分解されるため、前記架橋硬化物を溶剤で抽出し、GC−MS法(ガスクロマトグラフィーで分離したものを質量分析する方法)、LC−MS法(液体クロマトグラフィーで分離したものを質量分析する方法)、GPC−MS法(ゲル浸透クロマトグラフィーで分離し質量分析する方法)、LC−NMR法(液体クロマトグラフィーで分離したものを核磁気共鳴スペクトルで分析する方法)を用いて解析することにより、未反応の光重合開始剤及び分解生成物を同定することができる。更に、GPC−MS法、LC−MS法、GPC−NMR法を用いることにより、溶剤抽出物中の未反応の樹脂(a)、未反応の有機化合物(b)、及び重合性不飽和基が反応して得られる比較的低分子量の生成物についても溶剤抽出物の分析から同定することができる。3次元架橋構造を形成した溶剤に不溶の高分子量成分については、熱分解GC−MS法を用いることにより、高分子量体を構成する成分として、重合性不飽和基が反応して生成した部位が存在するか、を検証することが可能である。例えば、メタクリレート基、アクリレート基、ビニル基等の重合性不飽和基が反応した部位が存在することを質量分析スペクトルパターンから推定することができる。熱分解GC−MS法とは、試料を加熱分解させ、生成するガス成分をガスクロマトグラフィーで分離した後、質量分析を行う方法である。架橋硬化物中に、未反応の重合性不飽和基又は重合性不飽和基が反応して得られた部位と共に、光重合開始剤に由来する分解生成物や未反応の光重合開始剤が検出されると、感光性樹脂組成物を光架橋硬化させて得られたものであると結論付けることができる。
また、架橋硬化物中に存在する無機多孔質体微粒子の量については、架橋硬化物を空気中で加熱することにより、有機物成分を焼き飛ばし、残渣の重量を測定することにより得ることができる。
また、前記残渣中に無機多孔質体微粒子が存在することは、電界放射型高分解能走査型電子顕微鏡での形態観察、レーザー散乱式粒子径分布測定装置での粒子径分布、及び窒素吸着法による細孔容積、細孔径分布、比表面積の測定から同定することができる。
レーザー彫刻においては、形成したい画像をデジタル型のデータとしてコンピューターを利用してレーザー装置を操作し、原版上にレリーフ画像を作成する。レーザー彫刻に用いるレーザーは、原版が吸収を有する波長を含むものであればどのようなものを用いてもよい。彫刻を高速度で行うためには出力の高いものが望ましく、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、半導体レーザー、ファイバーレーザー等の赤外線又は近赤外線領域に発振波長を有するレーザーが好ましいものの一つである。また、紫外線領域に発振波長を有する紫外線レーザー、例えばエキシマレーザー、第3又は第4高調波へ波長変換したYAGレーザー、銅蒸気レーザー等は、有機分子の結合を切断するアブレージョン加工が可能であり、微細加工に適する。フェムト秒レーザーなど極めて高い尖頭出力を有するレーザーを用いることもできる。また、レーザーは連続照射でも、パルス照射でもよい。一般には樹脂は炭酸ガスレーザーの発振波長である約10μmの近傍に吸収を持つため、特にレーザー光の吸収を助けるような成分の添加は必須ではない。YAGレーザー、半導体レーザー、ファイバーレーザーは1μm近辺に発振波長を有するが、この波長領域に光吸収を有する有機物はあまりない。その場合、これの吸収を助ける成分である、染料、顔料の添加が必要となる。このような染料の例としては、ポリ(置換)フタロシアニン化合物及び金属含有フタロシアニン化合物、;シアニン化合物;スクアリリウム染料;カルコゲノピリロアリリデン染料;クロロニウム染料;金属チオレート染料;ビス(カルコゲノピリロ)ポリメチン染料;オキシインドリジン染料;ビス(アミノアリール)ポリメチン染料;メロシアニン染料;及びキノイド染料などが挙げられる。顔料の例としてはカーボンブラック、グラファイト亜クロム酸銅、酸化クロム、コバルトクロームアルミネート、酸化鉄等の暗色の無機顔料や鉄、アルミニウム、銅、亜鉛のような金属粉及びこれら金属にSi、Mg、P、Co、Ni、Y等をドープしたもの等が挙げられる。これら染料、顔料は単独で使用してもよいし、複数を組み合わせて使用してもよいし、複層構造にするなどのあらゆる形態で組み合わせてもよい。ただし、紫外線又は可視光線を用いて感光性樹脂組成物を硬化させる場合、印刷原版内部まで硬化させるためには、用いる光線領域に吸収のある色素、顔料の添加量は低く抑えることが好ましい。
レーザーによる彫刻は酸素含有ガス下、一般には空気存在下又は気流下に実施するが、炭酸ガス、窒素ガス下でも実施できる。彫刻終了後、レリーフ印刷版面にわずかに発生する粉末状又は液状の物質は適当な方法、例えば溶剤や界面活性剤の入った水等で洗い取る方法、高圧スプレー等により水系洗浄剤を照射する方法、高圧スチームを照射する方法などを用いて除去してもよい。
本発明において、レーザー光を照射し凹パターンを形成する彫刻後に、版表面に残存する粉末状又は粘性のある液状カスを除去する工程に引き続き、パターンを形成した印刷版表面に波長200nm〜450nmの光を照射する後露光を実施することもできる。後露光は表面のタック除去に効果がある方法である。後露光は大気中、不活性ガス雰囲気中、水中のいずれの環境で行っても構わない。用いる感光性樹脂組成物中に水素引き抜き型光重合開始剤が含まれている場合、後露光は特に効果的である。更に、後露光工程前に印刷版表面を、水素引き抜き型光重合開始剤を含む処理液で処理し露光しても構わない。また、水素引き抜き型光重合開始剤を含む処理液中に印刷版を浸漬した状態で露光しても構わない。
本発明により製造される原版は、印刷版用レリーフ画像の他、スタンプ・印章、エンボス加工用のデザインロール、電子部品作成に用いられる絶縁体、抵抗体、導電体ペーストのパターニング用レリーフ画像、窯業製品の型材用レリーフ画像、広告・表示板などのディスプレイ用レリーフ画像、各種成型品の原型・母型など各種の用途に応用し利用できる。
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。
実施例及び比較例中、レーザー彫刻は炭酸ガスレーザー彫刻機(英国、ZED社製、商標「ZED−mini−1000」)を用いて行い、彫刻のパターンは、網点、500μm幅の凸線による線画、及び、500μm幅の白抜き線を含むパターンを作成して実施した。彫刻深さを大きく設定すると、微細な網点部パターンのトップ部分の面積が確保できず、形状も崩れて不鮮明となるため、彫刻深さは0.55mmとした。
レーザー彫刻後、エタノール又はアセトンを含浸させた不織布(旭化成株式会社製、商標「BEMCOT M−3」)を用いてレリーフ印刷版上のカスを拭き取った。レーザー彫刻前の印刷原版、レーザー彫刻直後の印刷版、及び拭き取り後のレリーフ印刷版各々重量を測定し、下式により、彫刻時のカス残存率を求めた。
(彫刻直後の版の重量−拭き取り後の版の重量)÷(彫刻前の原版重量−拭き取り後の版の重量)×100
また、拭き取り後のレリーフ印刷版面のタック測定は株式会社東洋精機製作所製タックテスターを用いて行った。タック測定は、20℃において、試料片の平滑な部分に半径50mm、幅13mmのアルミニウム輪の幅13mmの部分を接触させ、該アルミニウム輪に0.5kgの荷重を加え4秒間放置した後、毎分30mmの一定速度で前記アルミニウム輪を引き上げ、アルミニウム輪が試料片から離れる際の抵抗力をプッシュプルゲージで読み取る。この値が大きいもの程、ベトツキ度が大きく、接着力が高い。
更に、彫刻した部位のうち、80lpi(lines per inch)で面積率約10%の網点部の形状を電子顕微鏡にて観察した。
動的粘弾性測定は、非共振強制伸張振動型装置(セイコーインスツルメンツ社製、商標「DMS6100」)を用いて、周波数が1Hz(引っ張りモード、正弦波)、試料長が30mm(チャック間距離)、振動変位が15μm、最少荷重が約100〜300mN、測定温度範囲が−150℃〜60℃(等速昇温、4℃/分)、測定雰囲気が窒素ガス気流下という条件で行った。試料の幅は10mm、厚さは1mmであった。
感光性樹脂硬化物の引張り物性測定は、オートグラフ(島津製作所社製、商標「AGS−100G」)を用いて実施した。サンプルはダンベル型に打ち抜き、試験片の幅が3mm、長さ30mmとした。破断強度、引張り伸度測定には、196Nロードセルを用いて、毎分500mmの速度でサンプルを引張した。
微粒子の比表面積、細孔分布測定は、米国カンタクローム社製、オートソープ3MPを用い、液体窒素温度雰囲気下、窒素ガスを吸着させて測定した。
樹脂(a)として、下記製造例1〜3で、樹脂(a1)〜(a3)を製造した。
(製造例1)
温度計、攪拌機、及び還流器を備えた1Lのセパラブルフラスコに、旭化成株式会社製ポリカーボネートジオールである、商標「PCDL L4672」(数平均分子量1990、OH価56.4)447.24gとトリレンジイソシアナート30.83gを加え、80℃に加温下に約3時間反応させた後、2−メタクリロイルオキシイソシアネート14.83gを添加し、更に約3時間反応させて、末端がメタアクリル基(分子内の重合性不飽和基が1分子あたり平均約2個)である数平均分子量約10000の樹脂(a1)を製造した。この樹脂は20℃では水飴状であり、外力を加えると流動し、かつ外力を除いても元の形状を回復しなかった。
(製造例2)
温度計、攪拌機、及び還流器を備えた1Lのセパラブルフラスコに、旭化成株式会社製ポリカーボネートジオールである、商標「PCDL L4672」(数平均分子量1990、OH価56.4)447.24gとトリレンジイソシアナート30.83gを加え、80℃に加温下に約3時間反応させた後、2−メタクリロイルオキシイソシアネート7.42gを添加し、更に約3時間反応させて、末端がメタアクリル基(分子内の重合性不飽和基が1分子あたり平均約1個)である数平均分子量約10000の樹脂(a2)を製造した。この樹脂は20℃では水飴状であり、外力を加えると流動し、かつ外力を除いても元の形状を回復しなかった。
(製造例3)
温度計、攪拌機、及び還流器を備えた1Lのセパラブルフラスコに、旭化成株式会社製ポリカーボネートジオールである、商標「PCDL L4672」(数平均分子量1990、OH価56.4)449.33gとトリレンジイソシアナート12.53gを加え、80℃に加温下に約3時間反応させた後、2−メタクリロイルオキシイソシアネート47.77gを添加し、更に約3時間反応させて、末端がメタアクリル基(分子内の重合性不飽和基が1分子あたり平均約2個)である数平均分子量約3000の樹脂(a3)を製造した。この樹脂は20℃では水飴状であり、外力を加えると流動し、かつ外力を除いても元の形状を回復しなかった。
(実施例1〜7)
(円筒状フレキソ印刷原版の作製)
前記の製造例で得られた樹脂(a1)から(a3)の各々を用い、これに表1に示すような重合性不飽和基を有する有機化合物、無機多孔質体として富士シリシア化学株式会社製の多孔質性微粉末シリカである、商標「サイロスフェアC−1504」(以下略してC−1504、数平均粒子径4.5μm、比表面積520m/g、平均細孔径12nm、細孔容積1.5ml/g、灼熱減量2.5wt%、吸油量290ml/100g)、商標「サイシリア450」(以下略してCH−450、数平均粒子径8.0μm、比表面積300m/g、平均細孔径17nm、細孔容積1.25ml/g、灼熱減量5.0wt%、吸油量200ml/100g)、商標「サイリシア470」(以下略してC−470、数平均粒子径14.1μm、比表面積300m/g、平均細孔径17nm、細孔容積1.25ml/g、灼熱減量5.0wt%、吸油量180ml/100g)、光重合開始剤、その他添加剤を加えて液状感光性樹脂組成物を作成した。厚さ2mm、内径213.384mm、幅300mmのガラス繊維強化プラスチック製の円筒状支持体上に、両面に接着剤層を有するクッションテープを気泡が入らないように貼り付けた。更に厚さ100μmの片面に接着剤付きのPETフィルムを接着剤の付いた面が表側になるように、クッションテープ上に巻きつけ固定した。上記のようにして得られた感光性樹脂組成物を、PETフィルム上に円筒状支持体を回転させながらドクターブレードを用いて厚さ1.9mmに塗布し、継ぎ目のない感光性樹脂組成物層を形成し円筒状積層体を得た。更に、得られた円筒状積層体表面にメタルハライドランプ(アイ・グラフィックス社製、商標「M056−L21」)の紫外線を大気中で4000mJ/cm(UVメーターとUV−35−APRフィルターを用いて積算したエネルギー量)照射し、円筒状の印刷原版を作製した。その後、印刷原版の厚さを調整するため、超硬バイトを用いて切削し、研磨布を用いて研磨することにより、厚さ1.7mmの感光性樹脂硬化物層を形成した。このようにして得られた円筒状印刷原版の表面に、炭酸ガスレーザー彫刻機を用いて凹凸パターンを形成した。
感光性樹脂組成物層表面でのランプ照度は、UVメーター(オーク製作所社製、商標「UV−M02」)を用いて測定した。フィルター(オーク製作所社製、商標「UV−35−APRフィルター」)を使用して測定したランプ照度は、100mW/cm、フィルター(オーク製作所社製、商標「UV−25フィルター」)を使用して測定したランプ照度は、14mW/cmであった。
実施例1から7において、超硬バイトを用いて切削した際に発生するカスは除去され易く、バイトに絡まりつくことなく切削処理が終了した。切削処理後の表面には、特に深い切削痕は観察されなかった。その後の研磨布による研磨工程においても特にトラブルなく処理が終了した。得られた表面は、いずれも滑らかで、表面に傷など見られなかった。
用いた多孔質性微紛末シリカの多孔度は、密度を2g/cmとして算出すると、サイロスフェアC−1504が780、サイリシア450が800、サイリシア470が1410であった。
表2にレーザー彫刻された印刷版の評価結果を示す。表2の彫刻後のカス拭き取り回数とは、彫刻後発生する粘稠性の液状カスを除去するのに必要な拭き取り処理の回数であり、この回数が多いと液状カスの量が多いことを意味する。
非共振強制伸張振動型装置を用いた動的粘弾性測定用の試料を別途準備した。実施例1で用いた感光性樹脂組成物を、PETフィルム上に厚さ1mmで塗布し、大気中でメタルハライドランプの光を照射し光硬化させたサンプルを作製した。動的粘弾性測定用に幅10mmに切断して試料とした。また、動的粘弾性測定においては、PETフィルムは剥がして使用した。図1のA及び図2のAが、実施例1の感光性樹脂組成物をメタルハライドランプで光硬化させた試料の貯蔵弾性率(E’)の温度依存性と、損失正接(tanδ)の温度依存性を示すグラフである。貯蔵弾性率は、室温で5.5MPaであり、照度の低い光を照射して光硬化させた系(比較例2)に比較して小さい値となった。また、損失正接は、−15℃付近にピークを有し、ピーク温度での値は0.97となり、照度の低い光を照射して光硬化させた系(比較例2)に比較して大きな値となった。
また、実施例1から7の光硬化物のショアA硬度は、大気中でケミカルランプと殺菌灯の光を照射し光硬化させたサンプルに比較して、4度から5度低い値を示した。ケミカルランプと殺菌灯の照度は、UVメーター(オーク製作所社製、商標「UV−M02」)を用いて測定した。フィルター(オーク製作所社製、商標「UV−35−APRフィルター」)を使用して測定したランプ照度は、3.1mW/cm、フィルター(オーク製作所社製、商標「UV−25フィルター」)を使用して測定したランプ照度は、1mW/cmであった。照射した光のエネルギー量は、UV−35フィルターを用いて積算した値で4000mJ/cm、UV−25フィルターを用いて積算した値で500mJ/cmであった。
表面に接着剤層の付いていないPETフィルムを支持体として使用する以外は、実施例1と同様にして円筒状感光性樹脂硬化物を形成した。円筒状支持体からPETフィルムを剥がし、更にPETフィルムも剥がして、引張り試験用のサンプルを形成した。引張り試験を実施したところ、破断強度は、14MPa、引張り伸度は374%であった。これらの値は、前記ケミカルランプと殺菌灯を光源として用いた以外は実施例1と同じ感光性樹脂組成物、同じエネルギー量の光を照射して同様の方法で形成したサンプル(比較例1)に比較して、破断強度で63%、引張り伸度で23%高い値であった。
実施例1から7において、光照射中の感光性樹脂組成物表面及び感光性樹脂硬化物表面の温度は、温度計を用いて測定した結果、60℃未満であった。
(実施例8)
シート状支持体として厚さ125μmの接着剤付きPETフィルムを用い、このPETフィルムの接着剤の塗布されている表面上に、実施例1で用いた感光性樹脂組成物を、ドクターブレードを用いて塗布した。得られた感光性樹脂組成物層に実施例1と同じメタルハライドランプを移動させながら、積算光量で4000mJ/cm(UVメーターとUV−35−APRフィルターを用いて測定した値)の光を大気中で照射し、厚さ1.7mmの感光性樹脂硬化物層を得た。
得られた印刷原版を、炭酸ガスレーザー彫刻機を用いて、パターンを形成した。微細な網点パターン部では、円錐状の良好なパターンであった。
得られた印刷版の一部を切り出し、硬度測定のサンプルとした。Zwick自動硬度計を用いて、測定開始から15秒後の値をショアA硬度とした。その結果、ショアA硬度は、72度であった。
感光性樹脂組成物層表面でのランプ照度は、UVメーター(オーク製作所社製、商標「UV−M02」)を用いて測定した。フィルター(オーク製作所社製、商標「UV−35−APRフィルター」)を使用して測定したランプ照度は、100mW/cm、フィルター(オーク製作所社製、商標「UV−25フィルター」)を使用して測定したランプ照度は、14mW/cmであった。
(実施例9)
樹脂(a)として数平均分子量が約13万のSBS系熱可塑性エラストマー(SBS:ポリスチレン・ポリブタジエン・ポリスチレンのブロック共重合体)100重量部、有機化合物(b)として1,9−ノナンジオールジアクリレート5重量部、可塑剤として数平均分子量が約2000の液状ポリブタジエン30重量部、光重合開始剤として2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン1重量部、重合禁止剤として2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.3重量部を130度でニーダーを用いて混錬し、20℃で固体状の感光性樹脂組成物を得た。
得られた感光性樹脂組成物を押し出し装置を用いて、厚さ125μmのPETフィルム上に、厚さ1mmで押し出し装置を用いて加熱して押し出し、冷却後、大気中でメタルハライドランプの光を照射し光硬化させたサンプルを作製した。動的粘弾性測定用に幅10mmに切断して試料とした。また、動的粘弾性測定においては、PETフィルムは剥がして使用した。図3のA及び図4のAが、実施例9の感光性樹脂組成物をメタルハライドランプで光硬化させた試料の貯蔵弾性率(E’)の温度依存性と、損失正接(tanδ)の温度依存性を示したグラフである。貯蔵弾性率は、20℃で3.6MPaであり、照度の低い光を照射して光硬化させた系(比較例3)に比較して小さい値となった。また、損失正接は、−76℃にピークを有し、ピーク温度での値は0.78となり、照度の低い光を照射して光硬化させた系(比較例3)に比較して大きな値となった。
光硬化に用いた、メタルハライドランプは、実施例1から7で用いたものと同じランプを使用した。感光性樹脂表面でのランプの照度も同じであった。
更に、PETフィルムを支持体として前記感光性樹脂組成物を、押し出し装置を用いて130℃で厚み2mmに押し出し、シート状感光性樹脂組成物を形成した。エアーシリンダーに装着された厚さ2mm、内径213.384mm、幅300mmのガラス繊維強化プラスチック製の円筒状支持体上に、両面接着テープを貼り付け、その上にPETフィルムを支持体とするシート状感光性樹脂組成物をPETフィルムが内側になるように貼り付け固定した。継ぎ目の空隙には、前記感光性樹脂組成物を加熱しながら充填し、円筒状感光性樹脂組成物を形成した。その後、前記メタルハライドランプの光を大気中で照射し、円筒状感光性樹脂硬化物を形成した。実施例1と同様に超硬バイトを用いて切削処理し、研磨布を用いて表面を研磨した。切削処理において発生したカスはバイトに絡まりつくことなく切削処理が終了し、また、研磨処理後は滑らかな表面を得ることができた。得られた円筒状印刷基材表面には、傷などは観察されなかった。
(実施例10)
実施例1と同じ感光性樹脂組成物を、PETフィルム上に厚さ1.7mmで塗布し、大気中で高圧水銀灯の光を照射し、感光性樹脂硬化物を得た。得られた感光性樹脂硬化物のショアA硬度は、Zwick自動硬度計を用いて測定し、測定開始から15秒後の値を採用した。ショアA硬度は、72.5度であった。
照射に使用した高圧水銀灯の感光性樹脂表面での照度は、UVメーター(オーク製作所社製、商標「UV−M02」)を用いて測定した。フィルター(オーク製作所社製、商標「UV−35−APRフィルター」)を使用して測定したランプ照度は、31.3mW/cm、フィルター(オーク製作所社製、商標「UV−25フィルター」)を使用して測定したランプ照度は、3.95mW/cmであった。照射した光のエネルギー量は、UV−35フィルターを用いて積算した値で4000mJ/cm、UV−25フィルターを用いて積算した値で505mJ/cmであった。
光照射中の感光性樹脂組成物表面及び感光性樹脂硬化物表面の温度は、温度計を用いて測定した結果、60℃未満であった。
(実施例11)
シート状支持体として厚さ125μmの接着剤付きPETフィルムを用い、このPETフィルムの接着剤の塗布されている表面上に、実施例1で用いた感光性樹脂組成物を、ドクターブレードを用いて塗布した。得られた感光性樹脂組成物層に、無電極タイプのメタルハライドランプ(米国、フュージョン社製、商標「F450T I250B Dバルブ」)の光を積算光量で4000mJ/cm(UVメーターとUV−35−APRフィルターを用いて測定した値)の光を大気中で照射し、厚さ1.7mmの感光性樹脂硬化物層を得た。
得られた印刷原版を、炭酸ガスレーザー彫刻機を用いて、パターンを形成した。微細な網点パターン部では、円錐状の良好なパターンであった。
得られた印刷版の一部を切り出し、硬度測定のサンプルとした。Zwick自動硬度計を用いて、測定開始から15秒後の値をショアA硬度とした。その結果、ショアA硬度は、71度であった。
感光性樹脂組成物層表面でのランプ照度は、UVメーター(オーク製作所社製、商標「UV−M02」)を用いて測定した。フィルター(オーク製作所社製、商標「UV−35−APRフィルター」)を使用して測定したランプ照度は、363mW/cm、フィルター(オーク製作所社製、商標「UV−25フィルター」)を使用して測定したランプ照度は、50mW/cmであった。
光照射中の感光性樹脂組成物表面及び感光性樹脂硬化物表面の温度は、温度計を用いて測定した結果、80℃未満であった。
(比較例1)
実施例8と同様にして感光性樹脂組成物層を形成した。得られた感光性樹脂組成物層の上に厚さ15μmの離型剤付きPETカバーフィルムを貼り付け、ランプがケミカルランプ(東芝社製、商標「APR用−370蛍光ランプ(東芝社製、商標「FLR20S−B−DU−37C/M」、20ワット)」、中心波長:370nm)であることだけが実施例8と異なる条件で、感光性樹脂組成物を光硬化させ印刷原版を形成した。
PETカバーフィルムを剥離し、炭酸ガスレーザー彫刻機を用いてパターンを形成した。微細な網点パターン部では、円錐状の良好なパターンであった。
得られた印刷版の一部を切り出し、硬度測定のサンプルとした。Zwick自動硬度計を用いて、測定開始から15秒後の値をショアA硬度とした。その結果、ショアA硬度は、76度であった。実施例8と比較して4度も高い値であった。
感光性樹脂組成物層表面でのランプ照度は、UVメーター(オーク製作所社製、商標「UV−M02」)を用いて測定した。フィルター(オーク製作所社製、商標「UV−35−APRフィルター」)を使用して測定したランプ照度は、3.1mW/cm、フィルター(オーク製作所社製、商標「UV−25フィルター」)を使用して測定したランプ照度は、0mW/cmであった。
得られた印刷版のパターンを形成していない一部分を切り出し、感光性樹脂硬化物をPETから外し、液体窒素で冷却し、その後ハンマーを用いて粉砕し粉末(G)を得た。また、同じようにして実施例8の印刷版からも粉末(H)を得た。粉末(G)及び(H)を、同じ重量で秤量し、熱分解ガスクロマトフラフ装置(質量分析計付き)に、各々セットした。この装置は、熱分解装置(フロンティアラボ社製、商標「Py−2010D」)とキャピラリーガスクロマトグラフ装置(GCと略す)、質量分析装置(MSと略す、日本電子社製、商標「Automass Sun」)から構成される。加熱炉中で各々のサンプルを250℃に30分間加熱し、発生するガスを液体窒素でトラップするクライオフォーカシング法を用いて採取した。採取したガスをGC/MSを用いて分析し、量を比較した。その結果、採取されたガスは、感光性樹脂組成物中の有機化合物(b)であることがわかった。熱重量分析法(TG法、分析に用いた装置:島津製作所社製、商標「TGA−50」)による解析から、250℃では熱分解していないことが確認されているので、採取されたガスは、未反応の有機化合物(b)であると推定される。未反応の有機化合物(b)と推定される化合物の量は、実施例8の方が、比較例1に比べて3分の1程度と少なかった。
(比較例2)
非共振強制伸張振動型装置を用いた動的粘弾性測定用のシート状サンプルを準備した。実施例1で用いた感光性樹脂組成物を、離型処理されたPETフィルム上に厚さ1mmで塗布し、大気中でケミカルランプと殺菌灯の光を照射し光硬化させたサンプルを作製した。
図1のB及び図2のBに、動的粘弾性測定における、貯蔵弾性率の温度依存性及び損失正接(tanδ)の温度依存性を示す。貯蔵弾性率は、室温で6.9MPaであり、高照度の光を照射して光硬化させた系(実施例1)に比較して大きな値となった。また、損失正接の温度依存性では、−11℃にピークを有し、ピーク温度での損失正接の値は0.86であり、高照度の光を照射して光硬化させた系(実施例1)に比較して小さな値となった。
使用したランプの照度は、UVメーター(オーク製作所社製、商標「UV−M02」)を用いて測定した。フィルター(オーク製作所社製、商標「UV−35−APRフィルター」)を使用して測定したランプ照度は、3.1mW/cm、フィルター(オーク製作所社製、商標「UV−25フィルター」)を使用して測定したランプ照度は、1mW/cmであった。照射した光のエネルギー量は、UV−35フィルターを用いて積算した値で4000mJ/cm、UV−25フィルターを用いて積算した値で500mJ/cmであった。
(比較例3)
非共振強制伸張振動型装置を用いた動的粘弾性測定用のシート状サンプルを準備した。実施例9で用いた感光性樹脂組成物を、PETフィルム上に厚さ1mmで押し出し装置を用いて加熱して押し出し、冷却後、大気中でケミカルランプと殺菌灯の光を照射し光硬化させたサンプルを作製した。
図3のB及び図4のBに、動的粘弾性測定における、貯蔵弾性率の温度依存性及び損失正接(tanδ)の温度依存性を示す。貯蔵弾性率は、20℃で5.0MPaであり、高照度の光を照射して光硬化させた系(実施例9)に比較して大きな値となった。また、損失正接の温度依存性では、−75℃にピークを有し、ピーク温度での損失正接の値は0.69であり、高照度の光を照射して光硬化させた系(実施例9)に比較して小さな値となった。
(比較例4)
実施例1と同じ感光性樹脂組成物を、PETフィルム上に厚さ1.7mmで塗布し、感光性樹脂組成物の上に厚み15μmのPETカバーフィルムを被覆した。その後、PETカバーフィルム側から高圧水銀灯の光を照射し、感光性樹脂硬化物を得た。得られた感光性樹脂硬化物のショアA硬度は、Zwick自動硬度計を用いて測定し、測定開始から15秒後の値を採用した。ショアA硬度は、74度であった。
照射に使用した高圧水銀灯の感光性樹脂表面での照度は、UVメーター(オーク製作所社製、商標「UV−M02」)を用いて測定した。フィルター(オーク製作所社製、商標「UV−35−APRフィルター」)を使用して測定したランプ照度は、31.3mW/cm、フィルター(オーク製作所社製、商標「UV−25フィルター」)を使用して測定したランプ照度は、0mW/cmであった。照射した光のエネルギー量は、UV−35フィルターを用いて積算した値で4000mJ/cm、UV−25フィルターを用いて積算した値で0mJ/cmであった。
(比較例5)
光硬化に用いた光源をメタルハライドランプを、比較例2で用いたケミカルランプと殺菌灯に代えた以外は、実施例1と同様にして、円筒状感光性樹脂硬化物を形成した。超硬バイトでの切削処理において発生したカスは、複数回、バイトに絡みついたため、その都度処理を停止し、カスの除去を実施した。切削処理工程の後、表面には部分的に深い切削痕が観察された。研磨布を用いた研磨処理では、この切削痕は除去できなかった。
(比較例6)
実施例1で用いた有機化合物(b)を全量、ジエチレングリコールモノブチルエーテルモノメタクリレートで置き換える以外は、実施例1と同様に液状感光性樹脂組成物を調製した。
調整した液状感光性樹脂組成物を用いる以外、比較例1と同様に低照度光を照射してシート状感光性樹脂硬化物を形成した。得られた感光性樹脂硬化物のショアA硬度は、実施例8と同様にして測定したところ72度であった(実施例8と同じ硬度になるように感光性樹脂組成物を設計した)。機械的物性において、破断強度は、実施例8に比較して65%低下し、引張り伸度は35%低下した。また、酢酸エチルを20vol%含有するイソプロピルアルコールに浸漬する耐溶剤性試験では、24時間浸漬後の重量変化率で22.3wt%となり、耐溶剤性が大幅に低下したものになった(実施例8では、8wt%であった)。このように、実施例8と硬度が同じになるように感光性樹脂組成を設定した系では、耐溶剤性、機械的物性の大幅な低下が確認された。
(比較例7)
実施例1で用いた有機化合物(b)を全量、フェノキシ−ポリエチレングリコールアクリレート(共栄社化学社製、商標「ライトアクリレートP−200A」)で置き換える以外は、実施例1と同様に液状感光性樹脂組成物を調製した。
調整した液状感光性樹脂組成物を用いる以外、比較例1と同様に低照度光を照射してシート状感光性樹脂硬化物を形成した。得られた感光性樹脂硬化物のショアA硬度は、実施例8と同様にして測定したところ72.5度であった(実施例8とほぼ同じ硬度になるように感光性樹脂組成物を設計した)。機械的物性において、破断強度は、実施例8に比較して50%低下し、引張り伸度は40%低下した。また、酢酸エチルを20vol%含有するイソプロピルアルコールに浸漬する耐溶剤性試験では、24時間浸漬後の重量変化率で9wt%となり、耐溶剤性は同レベルものになった(実施例8では、8wt%であった)。このように、実施例8と硬度がほぼ同じになるように感光性樹脂組成を設定した系では、機械的物性の大幅な低下が確認された。
(比較例8)
実施例1で用いた有機化合物(b)を、フェノキシエチルアクリレート(共栄社化学社製、商標「ライトアクリレートPO−A」)30重量部、ジエチレングリコールモノブチルエーテルモノメタクリレート10重量部、フェノキシ−ポリエチレングリコールアクリレート(共栄社化学社製、商標「ライトアクリレートP−200A」)8重量部で置き換える以外は、実施例1と同様に液状感光性樹脂組成物を調製した。
調整した液状感光性樹脂組成物を用いる以外、比較例1と同様に低照度光を照射してシート状感光性樹脂硬化物を形成した。得られた感光性樹脂硬化物のショアA硬度は、実施例8と同様にして測定したところ72.5度であった(実施例8とほぼ同じ硬度になるように感光性樹脂組成物を設計した)。機械的物性において、破断強度は、実施例8に比較して50%低下し、引張り伸度は32%低下した。また、酢酸エチルを20vol%含有するイソプロピルアルコールに浸漬する耐溶剤性試験では、24時間浸漬後の重量変化率で9wt%となり、耐溶剤性は同レベルものになった(実施例8では、8wt%であった)。このように、実施例8と硬度がほぼ同じになるように感光性樹脂組成を設定した系では、機械的物性の大幅な低下が確認された。
(比較例9)
実施例1で用いた有機化合物(b)を、フェノキシエチルメタクリレート(共栄社化学社製、商標「ライトアクリレートPO」)36重量部、ジエチレングリコールモノブチルエーテルモノメタクリレート12重量部で置き換える以外は、実施例1と同様に液状感光性樹脂組成物を調製した。
調整した液状感光性樹脂組成物を用いる以外、比較例1と同様に低照度光を照射してシート状感光性樹脂硬化物を形成した。得られた感光性樹脂硬化物のショアA硬度は、実施例8と同様にして測定したところ72.5度であった(実施例8とほぼ同じ硬度になるように感光性樹脂組成物を設計した)。機械的物性において、破断強度は、実施例8に比較して38%低下し、引張り伸度は20%低下した。また、酢酸エチルを20vol%含有するイソプロピルアルコールに浸漬する耐溶剤性試験では、24時間浸漬後の重量変化率で8wt%となり、耐溶剤性は同等であった(実施例8では、8wt%であった)。このように、実施例8と硬度がほぼ同じになるように感光性樹脂組成を設定した系では、機械的物性の大幅な低下が確認された。
Figure 0004493600

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本発明は、レーザー彫刻によるフレキソ印刷版用レリーフ画像作成、エンボス加工等の表面加工用パターンの形成、タイル等の印刷用レリーフ画像形成、電子回路形成における導体、半導体、絶縁体のパターン印刷、光学部品の反射防止膜、カラーフィルター、(近)赤外線カットフィルター等の機能性材料のパターン形成、更には液晶ディスプレイ又は有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ等の表示素子の製造における配向膜、下地層、発光層、電子輸送層、封止材層の塗膜・パターン形成に適したレーザー彫刻可能な円筒状又はシート状印刷基材の製造方法として好適である。
実施例1及び比較例2における貯蔵弾性率の温度依存性を示すグラフ。 実施例1及び比較例2における損失正接の温度依存性を示すグラフ。 実施例9及び比較例3における貯蔵弾性率の温度依存性を示すグラフ。 実施例9及び比較例3における損失正接の温度依存性を示すグラフ。

Claims (11)

  1. 円筒状支持体又はシート状支持体上に感光性樹脂組成物層を形成する工程、及び形成された感光性樹脂組成物層に光を照射し厚さ50μm以上50mm以下の感光性樹脂硬化物層を形成する工程を含み、
    該感光性樹脂組成物が崩壊型光重合開始剤を含み、
    該感光性樹脂組成物層に照射する光が200nm以上450nm以下の波長の光を含み、かつ該感光性樹脂組成物層の表面での光の照度が、オーク製作所社製のUVメーター「UV−M02」(商標)オーク製作所社製のフィルター「UV−35−APRフィルター」(商標)を用いて測定した場合、20mW/cm2以上2W/cm2以下であり、かつ前記オーク製作所社製のUVメーター「UV−M02」(商標)オーク製作所社製のフィルター「UV−25フィルター」(商標)を用いて測定した場合、3mW/cm2以上2W/cm2以下である、
    レーザー彫刻可能な印刷基材の製造方法。
  2. 更に、前記感光性樹脂組成物層に光を照射し感光性樹脂硬化物層を形成する工程の後に、該感光性樹脂硬化物層の膜厚を調整し感光性樹脂硬化物層の表面を整形する工程を含む請求項1に記載の方法。
  3. 更に、前記感光性樹脂硬化物層の膜厚を調整し感光性樹脂硬化物層の表面を整形する工程の後に、再度、該感光性樹脂硬化物層に光を照射する工程を含み、該感光性樹脂硬化物層に再度照射される光が200nm以上450nm以下の波長の光を含み、かつ該感光性樹脂硬化物層の表面での光の照度が、オーク製作所社製のUVメーター「UV−M02」(商標)オーク製作所社製のフィルター「UV−35−APRフィルター」(商標)を用いて測定した場合、20mW/cm2以上2W/cm2以下であり、前記オーク製作所社製のUVメーター「UV−M02」(商標)オーク製作所社製のフィルター「UV−25フィルター」(商標)を用いて測定した場合、3mW/cm2以上2W/cm2以下である、請求項1に記載の方法。
  4. 前記感光性樹脂組成物層又は前記感光性樹脂硬化物層に光を照射する雰囲気が大気中である請求項1に記載の方法。
  5. 前記感光性樹脂組成物層又は前記感光性樹脂硬化物層の温度が−50℃以上150℃以下である請求項1記載の方法。
  6. 前記感光性樹脂組成物層が20℃において液状である請求項1記載の方法。
  7. 前記感光性樹脂組成物層が20℃において固体である請求項1に記載の方法。
  8. 前記感光性樹脂硬化物層が継ぎ目のない層である請求項1に記載の方法。
  9. 光を照射するための光源と前記感光性樹脂組成物層との間に光を集光するための光学系が存在する請求項1に記載の方法。
  10. 印刷基材が、レーザー光を照射して凹凸パターンの形成可能なフレキソ印刷原版、レタープレス印刷原版、グラビア印刷原版、レーザー光を照射して貫通したパターンの形成可能なスクリーン印刷原版、又はオフセット印刷用ブランケットである請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
  11. 請求項1〜10のいずれか一項に記載の製造方法で得られたレーザー彫刻可能な印刷基材であって、周波数が1Hzの引っ張りモードの正弦波、チャック間距離の試料長が30mm、振動変位が15μm、測定温度範囲が−150℃〜60℃、昇温条件が等速昇温で4℃/分、測定雰囲気が窒素ガス気流下の条件で非共振強制伸張振動型装置を用いて測定した、前記印刷基材から前記円筒状支持体または前記シート状支持体を剥離して得られる感光性樹脂硬化物層であって幅が10mm、厚さが1mmの感光性樹脂硬化物層の動的粘弾性測定において、損失弾性率(E")と貯蔵弾性率(E')の比で定義される損失正接(tanδ)が、−100℃以上20℃以下の測定温度範囲にピークを有し、−50℃以上20℃以下の温度範囲でピークを有する場合に、該ピーク温度でのtanδの値が0.87以上1.5以下であり、また、損失正接(tanδ)が−100℃以上−50℃未満の温度範囲でピークを有する場合に、該ピーク温度でのtanδの値が0.7以上1.5以下であることを特徴とするレーザー彫刻可能な印刷基材。
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