JP5000682B2 - レーザー彫刻可能な円筒状フレキソ印刷原版 - Google Patents

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Description

本発明は、レーザー彫刻によるフレキソ印刷版用レリーフ画像作成、エンボス加工等の表面加工用パターンの形成、タイル等の印刷用レリーフ画像形成、電子回路形成における導体、半導体、絶縁体のパターン印刷に適したレーザー彫刻可能な円筒状フレキソ印刷原版に関するものである。
段ボール、紙器、紙袋、軟包装用フィルムなどの包装材、壁紙、化粧板などの建装材、ラベル印刷などに用いられるフレキソ印刷は各種の印刷方式の中でその比重を高めている。これに用いる印刷版の製作には、通常、感光性樹脂が用いられることが多く、液状の樹脂、又はシート状に成形された固体樹脂板を用い、フォトマスクを感光性樹脂上に置き、マスクを通して光を照射し架橋反応を起こさせた後、非架橋部分を現像液で洗い落とすという方法が用いられてきた。近年、感光性樹脂表面にブラックレーヤーという薄い光吸収層を設け、これにレーザー光を照射し感光性樹脂板上に直接マスク画像を形成後、そのマスクを通して光を照射し架橋反応を起こさせた後、光の非照射部分の非架橋部分を現像液で洗い落とす、いわゆるフレキソCTPという技術が開発され、印刷版製作の効率改善効果から、採用が進みつつある。しかしながら、この技術も現像工程が残るなど、効率改善効果も限られたものであり、レーザーを使って直接印刷原版上にレリーフ画像を形成し、しかも現像不要である技術の開発が求められている。
その方法として直接レーザーで印刷原版を彫刻する方法が挙げられる。この方法で凸版印刷版やスタンプを作成することは既に行なわれており、それに用いられる材料として種々のものが知られている。
例えば、特公昭47−5121号公報(米国特許3549733号明細書)ではポリオキシメチレンまたはポリクロラールを用いることが開示されている。また特表平10−512823号公報(ドイツ国特許A19625749号)にはシリコーンポリマーもしくはシリコーンフッ素ポリマーを用いることが記載されており、その実施例ではアモルファスシリカ等の充填剤を配合している。しかし、これらの公報に記載の発明では感光性樹脂は用いられておらず、また、アモルファスシリカ添加の効果についても機械的強化と高価なエラストマー量を減らす目的としている。アモルファスシリカについては特定形状について記載もない。
特開2001−121833号公報(欧州特許公開1080883号公報)には、シリコーンゴムを用い、その中にレーザー光線の吸収体としてカーボンブラックを混合する記載があるが、感光性樹脂を用いたものではない。
特開2002−3665号公報では、エチレンを主成分とするエラストマー材料が使用されており、樹脂の補強硬化を目的としてシリカを混合してもよいことが記載されている。実施例において多孔質シリカが用いられているが、混合されている量が極めて多量であり、従来のゴムの補強を目的とした技術を出るものではない。更に感光性樹脂を用いているものではなく、熱により硬化させているため、硬化速度が遅く、そのため成膜精度が劣る。
ドイツ国特許A19918363号公報は再生原料をベースにした重合物を用いることが特徴の発明が記載されている。熱硬化性樹脂の他、感光性樹脂の記載があり、実施例では、熱硬化性樹脂にカーボンブラックを混合して用いている。
カーボンブラックは少量の混合でも光線透過性が極めて低くなり、感光性樹脂にカーボンブラックを1wt%を越えて含有させた系では内部まで十分硬化させることができないため、レーザー彫刻印刷版としては不向きとなる。特に液状感光性樹脂を用いた場合、硬化性の低下は顕著である。更に、この特許において、無機多孔質体の記述も全くなく、液状カスの除去に関しても記載がない。
他方、日本国特許第2846954号公報、第2846955号公報(米国特許第5798202号、第5804353号)にはSBS、SIS、SEBS等の熱可塑性エラストマーを機械的、光化学的、熱化学的に強化した材料を用いることが開示されている。熱可塑性エラストマーを用いる場合、赤外線領域の発振波長を有するレーザーを用いて彫刻を実施すると、熱によりレーザービーム径の寸法を大きく逸脱した部分の樹脂までが溶融するため、高解像度の彫刻パターンを形成することができない。そのため、熱可塑性エラストマー層に充填剤を添加することにより機械的に強化を図ることが必須とされている。前記特許では、熱可塑性エラストマー層の機械的強化とレーザー光の吸収性向上を目的として、特に機械的強化効果の極めて高いカーボンブラックが混合されている。しかしながら、カーボンブラックが混合されているために、光を用いて光化学的強化を試みる場合、光線透過性を犠牲にすることになる。したがって、これらの材料をレーザー彫刻すると除去が難しいカス(液状の粘稠物を含む)が大量に発生し、その処理に多大な時間を要するばかりでなく、レリーフに融解によるエッジ部に盛り上がりが生じたり、エッジ部がだれて不鮮明になったり、また、網点の形状が崩れるなどの難点を生じる。日本国特許第2846955号では、可燒性支持体、クッション層、レーザー彫刻可能な印刷版層をこの順序で積層したシート状多層印刷版に関する記載があり、その中で円筒状物体上に前記シート状多層印刷を巻き付け、継ぎ目の部分を溶着させる方法が述べられている。しかしながら、この方法は、円筒状物体上への貼り付け工程、継ぎ目の部分の溶着工程、更には継ぎ目の部分で盛り上がった箇所を圧縮する工程が必要であり、極めて煩雑な処理が必要となる。更に、継ぎ目の部分を溶着させる工程では、多層印刷版を構成する各層が混合してしまうため、各層の物性低下を招く問題を有する。また、この特許の中で使用されているクッション層には、隔壁を有する気泡、無機多孔質体についても一切記載されていない。
また、特にレーザー彫刻の際に樹脂の分解生成物であると推定される液状のカスが多量に発生すると、レーザー装置の光学系を汚すばかりでなく、レンズ、ミラー等の光学部品の表面に付着した液状樹脂が焼きつきを発生させ、装置上のトラブルの大きな要因となる。
シート状ゴム版あるいは感光性樹脂版を用いてフレキソ印刷を行なう場合、フレキソ印刷機の版胴上に位置あわせを行い、接着テープを用いてシート状印刷版を固定することが一般的に行なわれているが、煩雑な作業工程が必要であり、より取り扱いの簡便な円筒状印刷原版が望まれていた。
レーザー彫刻用の円筒状印刷原版として架橋ゴムを用いたものが知られている。円筒状ゴム版の製造工程において、流動性のあるゴム材料を円筒状支持体上にコーティングする工程、加硫による熱架橋を行なう工程、表面を研磨する工程が必須であり、煩雑な処理工程に加え、架橋が安定化するまでに多大な時間を要するという致命的な問題を抱えていた。
印刷品質の向上を目的として、印刷版と印刷機の版胴との間にクッション性を有するシートを挿入すること、あるいは印刷版とクッションシートを一体化させたものを用いることが一般的に行なわれている。例えば、一般的なクッションシートとしてウレタンフォームを挙げることができるが、版胴上に取り付ける際には、印刷版とクッションシートをそれぞれ別々に固定する必要があり、作業が煩雑となる。更に、固定する工程では、膜厚均一性の高い接着剤層が必要となる。
クッションシートと印刷版を一体化させたものが、特開平7−28229号、特開平9−160224号、特開平11−184072号の各公報で提案されている。しかしながら、一体化させた印刷版においても版胴への位置合わせ工程と固定する工程が必要となる。また、感光性樹脂を撹拌することにより気泡を導入し、光硬化させたものをクッション層として使用することが、特開昭61−182043号公報、特開平3−136051号公報に記載されているが、気泡の安定性不足から経時で版厚が変化してしまうという問題があった。更に、膨張させた微小球を用いたクッション層に関する記載がWO01/49510号公報にあるが、シート状に成形されたもののみであり、円筒状であって、しかも継ぎ目のないクッション層に関する記載は一切ない。更に、これらの特許において、レーザー彫刻印刷原版に関する記載は一切ない。
スリーブコア層、クッション層、剛性層および継ぎ目のない印刷レリーフ層がこの順番で配置されたシームレススリーブ印刷版構成体が、特開2003−025749号公報に記載がある。しかしながら、この特許ではクッション層をスリーブコア層に接着剤を介して巻き付け固定する構造であり、作製工程が単純ではない。また、隔壁を有する気泡についての記載もなく、レーザー彫刻用の印刷版構成体ではない。
このように、これまで種々のレーザー彫刻用の材料が提案されている。しかし、レーザー彫刻するための版を版厚精度、寸法精度よく提供でき、かつ、レーザー彫刻し易く、カスの発生の問題を解決した材料は知られていなかった。
特開2000−56447号公報 特開2001−121833号公報 特許第2846954号公報 特許第2846955号公報 特開平7−28229号公報 特開平9−160224号公報 特開平11−184072号公報 特開昭61−182043号公報 特開平3−136051号公報 WO01/49510号パンフレット 特開2003−025749号公報
本発明は、版厚精度、寸法精度がよく、かつ、直接レーザー彫刻してレリーフ画像を制作する際のカスの発生を抑制し、そのカスを容易に除去できるばかりでなく、彫刻の形状が優れ、印刷面のタックが小さく、印刷品質が優れ、しかも取り扱いが容易な印刷版を製作しうるレーザー彫刻可能な円筒状フレキソ印刷原版を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討し、レーザー彫刻可能な円筒状フレキソ印刷原版が、円筒状支持体(A)上に、継ぎ目のないクッション層(B)、レーザー彫刻可能な感光性樹脂硬化物層(C)の順に積層された積層体であって、前記クッション層が隔壁を有する気泡を含むこと、更にレーザー彫刻可能な感光性樹脂硬化物層(C)が無機多孔質体を有するレーザー彫刻可能な円筒状フレキソ印刷原版を用いることにより上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、レーザー光照射により分解し易い樹脂を用いること、好ましくは分解し易い樹脂を用いるが故に多量に発生する粘稠性の液状カスを無機多孔質体で吸収除去すること、均一なクッション効果が得られように、継ぎ目がなく、隔壁を有する独立気泡を含有するクッション層を用いることが、本発明の設計思想である。また、本発明の円筒状フレキソ印刷原版に直接レーザーで彫刻でき、彫刻した円筒状印刷版を印刷機に設置するだけで印刷が実施できるため、従来行なわれていた版胴上での印刷版の位置合わせ工程、印刷版の固定工程を省略することができ、工程を大幅に簡略化することが可能である。また、レーザーで彫刻する際に、パターンの位置合わせを正確にできるので、精度の高い印刷を実現することが可能である。
また、レーザー光照射により樹脂を除去し印刷版を形成する場合、彫刻カスが多量に発生する凸版印刷版形成で特に効果がある。
本発明は下記の通りである。
1. レーザー彫刻可能な円筒状フレキソ印刷原版が、円筒状支持体(A)、継ぎ目のないクッション層(B)、レーザー彫刻可能な感光性樹脂硬化物層(C)の順に積層された積層体であって、前記クッション層(B)が隔壁を有する気泡を含み、かつ前記感光性樹脂硬化物層(C)が無機多孔質体(f)を含むことを特徴とするレーザー彫刻可能な円筒状フレキソ印刷原版。
2. クッション層(B)が、少なくとも1種類以上のバインダー(a)、少なくとも1種類以上のエチレン性不飽和化合物(b)、少なくとも1種類以上の光重合開始剤(c)を有する感光性樹脂組成物(ア)を光照射により硬化させた硬化物層であることを特徴とする1.に記載のレーザー彫刻可能な円筒状フレキソ印刷原版。
3. クッション層内に存在する隔壁を有する気泡の平均径が0.5μm以上500μm以下、該隔壁の厚さが0.05μm以上10μm以下であって、かつ該クッション層の厚さが0.01mm以上10mm以下、クッション層の密度が0.1g/cm3以上0.7g/cm3以下であることを特徴とする1.または2.に記載のレーザー彫刻可能な円筒状フレキソ印刷原版。
4. 感光性樹脂硬化物層(C)が、数平均分子量1000以上20万以下の樹脂(d)、数平均分子量1000未満でその分子内に重合性不飽和基を有する有機化合物(e)を含有し、かつ20℃において液状の感光性樹脂組成物を光硬化させた硬化物層であることを特徴とする1.から3.のいずれかに記載のレーザー彫刻可能な円筒状フレキソ印刷原版。
5. 無機多孔質体(f)の平均細孔径が1nm以上1000nm以下、細孔容積が0.1ml/g以上10ml/g以下、比表面積が10m2/g以上1500m2/g以下、かつ吸油量が10ml/100g以上2000ml/100g以下であることを特徴とする1.から4.のいずれかに記載のレーザー彫刻可能な円筒状フレキソ印刷原版。
6. 無機多孔質体(f)が、数平均粒子径0.1μm以上100μm以下であって、少なくとも70%の粒子の真球度が0.5〜1の範囲の球状粒子であることを特徴とする1.から5.のいずれかに記載のレーザー彫刻可能な円筒状フレキソ印刷原版。
7. 有機化合物(e)の全体量の20wt%以上が脂環族、芳香族の少なくとも1種類以上の誘導体であることを特徴とする4.から6.のいずれかに記載のレーザー彫刻可能な円筒状フレキソ印刷原版。
8. レーザー彫刻可能な感光性樹脂硬化物層(C)が継ぎ目のない層であることを特徴とする1.から7.のいずれかに記載のレーザー彫刻可能な円筒状フレキソ印刷原版。
9. 無機多孔質体(f)が、下記式で表される多孔度が20以上である1.から8.のいずれかに記載のレーザー彫刻可能な円筒状フレキソ印刷原版。
Figure 0005000682
(上記式(1)中、Pは比表面積、Sは単位重量あたりの表面積、Dは平均粒子径、dは粒子を構成する物質の密度、をそれぞれ表す)
9. 1.から8.のいずれかに記載のレーザー彫刻可能な円筒状フレキソ印刷原版表面にレーザー光を照射し、凹凸パターンを形成することにより得られることを特徴とするレーザー彫刻印刷版。
本発明によれば、版厚精度、寸法精度がよく、かつ、直接レーザー彫刻してレリーフ画像を制作する際のカスの発生を抑制し、そのカスを容易に除去できるばかりででなく、彫刻の形状が優れ、印刷面のタックが小さく、印刷品質が優れ、しかも取り扱いが容易な印刷版を製作しうるレーザー彫刻可能な円筒状フレキソ印刷原版を提供できる。
また、本発明の円筒状フレキソ印刷原版は、直接レーザーで彫刻でき、彫刻した円筒状印刷版を印刷機に設置するだけで印刷が実施できるため、従来行なわれていた版胴上での印刷版の位置合わせ工程、印刷版の固定工程を省略することができ、工程を大幅に簡略化することが可能である。レーザーで彫刻する際に、パターンの位置合わせを正確にできるので、精度の高い印刷を実現することも可能である。
以下、本発明について、特にその好ましい実施態様を中心に、詳細に説明する。
本発明の印刷原版は、レーザー光を用いて彫刻可能な円筒状の印刷原版である。レーザー光が照射された部分が除去され凹部が形成される。
本発明のレーザー彫刻可能な円筒状フレキソ印刷原版は、円筒状支持体(A)上に、隔壁を有する気泡を含有する継ぎ目のないクッション層(B)、レーザー彫刻可能な感光性樹脂硬化物層(C)の順に積層された積層体である。好ましい方法としては、(i)熱膨張性マイクロカプセルを含有した樹脂層(g)を円筒状支持体(A)上に形成する工程、(ii)得られた樹脂層(g)を60〜250℃に加熱して前記マイクロカプセルを膨張させることにより前記樹脂層(g)の厚さを1.1から100倍に膨張させ、継ぎ目のない円筒状クッション層(B)を形成する工程、(iii)得られた円筒状クッション層(B)上に、感光性樹脂組成物層を形成する工程、(iv)形成した感光性樹脂組成物層を光照射により硬化させ、レーザー彫刻可能な感光性樹脂硬化物層(C)を形成する工程を経る方法である。この方法では、熱膨張性マイクロカプセルを含有する樹脂が硬化性樹脂である場合、該マイクロカプセルを膨張させる前あるいは後で、光照射あるいは熱により樹脂層を硬化させることが可能である。
本発明の特徴の一つは、隔壁を有する独立気泡を含有する継ぎ目のないクッション層(B)を円筒状支持体上に有することである。該クッション層(B)は、熱膨張性のあるマイクロカプセルを含有する樹脂組成物を円筒状支持体上に塗布して形成することができる。形成方法は特に限定するものではないが、スプレーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、リバースローラー塗工法、キスタッチ塗工法、高圧エアナイフ塗工法など、一般的に用いられている塗布方法を挙げることができる。
したがって、シート状に成形されたクッション層を円筒状支持体上に貼り付け、継ぎ目の部分を溶着させ、更に、研磨あるいは切削することにより継ぎ目を無くしたクッション層は、本発明における円筒状クッション層(B)には含まれない。
熱膨張させて形成したクッション層(B)の厚さは、熱膨張マイクロカプセルを膨張させる前の厚さの1.1倍から100倍の範囲が好ましく、より好ましくは1.1倍から50倍の範囲である。1.1倍以上であれば、クッション性を得ることができ、100倍以下であればクッション層の機械的強度を得ることができる。クッション層の厚さは、断面を露出させ走査型電子顕微鏡あるいは光学顕微鏡を用いて観察することが好ましい。
クッション層(B)内に存在する隔壁を有する気泡の平均径は0.5μm以上500μm以下であることが好ましい。0.5μm以上であれば、クッション性を付与することができ、500μm以下であれば厚さ数mmのクッション層においても機械的物性の確保が可能である。クッション層内の気泡の大きさは、光学顕微鏡、あるいはレーザー共焦点顕微鏡を用いて観察することが好ましい。
隔壁の厚さの平均値は、0.05μm以上10μm以下であることが好ましい。0.05μm以上であれば気泡を保持することができ、10μm以下でればクッション性を確保することが可能である。隔壁の厚さは、クッション層を切断し、その断面を高分解能走査型電子顕微鏡を用いて観察し、評価することができる。
クッション層(B)の好ましい密度の範囲は、0.1g/cm3以上0.9g/cm3以下、より好ましくは0.3g/cm3以上0.7g/cm3以下である。0.1g/cm3以上であれば、クッション層の機械的強度を確保することができ、0.9g/cm3以下であればクッション性を確保することができる。
クッション層を形成するための樹脂組成物は、感光性樹脂組成物であっても、非感光性の樹脂組成物であっても構わない。また、熱硬化性樹脂組成物であっても構わない。取り扱いの容易さ、光を照射し硬化させることにより機械的物性を短時間で大幅に向上させることができる点などから、感光性樹脂組成物(ア)であることが好ましい。
感光性樹脂組成物(ア)は、熱膨張性マイクロカプセル以外に、少なくとも1種類以上のバインダー(a)、少なくとも1種類以上のエチレン性不飽和化合物(b)、少なくとも1種類以上の光重合開始剤(c)を有する化合物であることが好ましい。また、20℃において液状であることが成形性の観点から好ましく、膜厚の均一な継ぎ目のない層を形成することができる。また、成形する膜厚が薄い場合には、粘度を低く抑えることが望ましい。粘度を低くする方法としては、溶剤を添加する方法が簡便である。
熱膨張性マイクロカプセルは、熱可塑性エラストマーを隔壁とし内部に揮発性有機系液体を含有する微粒子であり、60から250℃が好ましく、より好ましくは100から200℃に加熱することにより体積膨張する。通常用いられる熱可塑性エラストマーとしては、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレートなどを挙げることができる。また、揮発性有機系液体としては、ブタン、イソブタン、ブテン、イソブテン、ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、ヘキサン、ヘプテン等の炭化水素を挙げることができる。熱膨張性マイクロカプセルを用いることにより、熱膨張した時に比較的粒子径の揃った独立気泡を形成できる。また、隔壁は無機系微粒子でコーティングされていても構わない。無機系微粒子としては、シリカ、炭酸カルシウム、酸化チタン等を挙げることができる。
円筒状支持体(A)上に形成した熱膨張性マイクロカプセルを含有する樹脂層(g)を熱膨張させる工程において、該円筒状支持体(A)と一定の間隔を離して設置された板状あるいはロール状物体(h)との間を、樹脂層(g)を加熱しながら円筒状支持体(A)を回転させることにより前記樹脂層(g)を、前記物体(h)に接触させながら通過させることが、均一な厚さのクッション層(B)を形成させる方法として好ましい。加熱する方法としては、熱風を吹付ける方法、赤外線を照射する方法、板状あるいはロール状物体(h)を、ヒーターを用いて加熱する方法などを挙げることができ、これらの方法を組み合わせて使用することもできる。また、加熱による発泡を急速に停止させる方法として、冷風を吹付け冷却する方法、あるいは冷却ロールまたは冷却板に接触させる方法を挙げることができる。
バインダー(a)としては、公知の高分子化合物を用いることができる。具体的には、合成ゴム、熱可塑性エラストマー等のゴム弾性のある化合物が好ましく、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、モノビニル置換芳香族炭化水素と共役ジエンモノマーとの重合物が好ましい。該モノビニル置換芳香族炭化水素モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレンなどが、また共役ジエンモノマーとしてはブタジエン、イソプレンなどが用いられ、熱可塑性エラストマーの代表的な例としてはスチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体などが挙げられる。
感光性樹脂組成物(ア)の不揮発成分全重量に基づいて、バインダー(a)成分は10〜90wt%の範囲であることが好ましく、より好ましくは20〜80wt%、さらに好ましくは30〜69wt%である。
感光性樹脂組成物(ア)に含まれるエチレン性不飽和化合物(b)としては感光性樹脂に使用される公知のエチレン性不飽和化合物を使用することができる。
例えば、t−ブチルアルコールやラウリルアルコールなどのアルコールとアクリル酸のエステル、ラウリルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、ベンジルマレイミドなどのマレイミド誘導体、あるいはジオクチルフマレートなどのアルコールのフマル酸エステル、更にはヘキサンジオール(メタ)アクリレート、ノナンジオール(メタ)アクリレート、トリメチロール(メタ)アクリレートなどの多価アルコールとアクリル酸、メタクリル酸とのエステルなどを単独、または組み合わせて感光性樹脂組成中に使用することができる。
感光性樹脂組成物(ア)に用いるエチレン不飽和化合物(b)は積層される感光性樹脂硬化物層(C)に使用されている有機化合物(e)と同一、もしくは異なっても構わない。
感光性樹脂組成物(ア)に含まれる光重合開始剤(c)としては、公知の光重合開始剤を使用することができる。例えば、芳香族ケトン類やベンゾイルエーテル類などの公知のラジカル重合開始剤を使用することができる。例えば、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、α−メチロールベンゾインメチルエーテル、α−メトキシベンゾインメチルエーテル、2,2−ジメトキシフェニルアセトフェノンなどの中から使用することができ、それらを組み合わせても使用できる。
本発明の第二の特徴は、レーザー彫刻可能な感光性樹脂硬化物層(C)中に無機多孔質体(f)を含有させることにより、レーザー彫刻工程で発生する液状カスを吸収除去することにある。光硬化前の感光性樹脂組成物(イ)は、数平均分子量1000以上20万以下の樹脂(d)、数平均分子量1000未満でその分子内に重合性不飽和基を有する有機化合物(e)、および無機多孔質体(f)を含有することが好ましい。
樹脂(d)の種類としては、エラストマーであっても非エラストマーであっても構わないし、20℃において固体状ポリマーであっても液状ポリマーであっても構わない。また、熱可塑性樹脂を用いる場合、ポリマー全重量の30wt%以上、好ましくは50wt%以上、更に好ましくは70wt%以上含有していることが望ましい。熱可塑性樹脂の含有率が30wt%以上であれば、レーザー光線照射により樹脂が充分に流動化するため、後述する無機多孔質体に吸収される。
ただし、軟化温度が300℃を越えて大きい樹脂を用いる場合、円筒状に成形する温度も当然高くなるため、他の有機物が熱で変性、分解することが懸念されるため、溶剤可溶性樹脂を溶剤に溶かした状態で塗布し使用することが好ましい。
特に、円筒状樹脂版への加工の容易性の観点、また、熱に対する分解のし易さの点から、樹脂(d)として20℃において液状のポリマーを使用することが好ましい。樹脂(d)として、20℃において液状のポリマーを使用した場合、形成される感光性樹脂組成物も液状となるので、低い温度で成形することができる。
本発明で用いる樹脂(d)の数平均分子量は、1000から20万の範囲が好ましい。より好ましい範囲としては、5000から10万である。数平均分子量が1000から20万の範囲であれば、印刷原版の機械的強度を確保することができ、レーザー彫刻時、樹脂を充分に溶融あるいは分解させることができる。本発明の数平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定し、分子量既知のポリスチレン標品に対して評価したものである。
本発明の技術的特徴として、レーザー光線の照射により液状化したカスを、無機多孔質体を用いて吸収除去することを挙げることができる。用いる感光性樹脂硬化物としては、液状化し易い樹脂や分解し易い樹脂が好ましい。分解し易い樹脂としては、分子鎖中に分解し易いモノマー単位としてスチレン、α−メチルスチレン、α−メトキシスチレン、アクリルエステル類、メタクリルエステル類、エステル化合物類、エーテル化合物類、ニトロ化合物類、カーボネート化合物類、カルバモイル化合物類、ヘミアセタールエステル化合物類、オキシエチレン化合物類、脂肪族環状化合物類等が含まれていることが好ましい。特にポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラエチレングリコール等のポリエーテル類、脂肪族ポリカーボネート類、脂肪族カルバメート類、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ニトロセルロース、ポリオキシエチレン、ポリノルボルネン、ポリシクロヘキサジエン水添物、あるいは分岐構造の多いデンドリマー等の分子構造を有するポリマーは、分解し易いものの代表例である。また、分子鎖中に酸素原子を多数含有するポリマーが分解性の観点から好ましい。これらの中でも、カーボネート基、カルバメート基、メタクリル基をポリマー主鎖中に有する化合物は、熱分解性が高く好ましい。例えば、(ポリ)カーボネートジオールや(ポリ)カーボネートジカルボン酸を原料として合成したポリエステルやポリウレタン、(ポリ)カーボネートジアミンを原料として合成したポリアミドなどを熱分解性の良好なポリマーの例として挙げることができる。これらのポリマー主鎖、側鎖に重合性不飽和基を含有しているものであっても構わない。
特に、末端に水酸基、アミノ基、カルボキシル基等の反応性官能基を有する場合には、主鎖末端に重合性不飽和基を導入することも容易である。
本発明で用いる熱可塑性エラストマーとして特に限定するものではないが、スチレン系熱可塑性エラストマーであるSBS(ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン)、SIS(ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン)、SEBS(ポリスチレン−ポリエチレン/ポリブチレン−ポリスチレン)等、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、シリコーン系熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。より熱分解性を向上させるために、分子骨格中に分解性の高いカルバモイル基、カーボネート基等の易分解性官能基を主鎖に導入したポリマーを用いることもできる。また、より熱分解性の高いポリマーと混合して用いても構わない。熱可塑性エラストマーは加熱することにより流動化するため、本発明で用いる無機多孔質体と混合することが可能となる。熱可塑性エラストマーとは、加熱することにより流動し通常の熱可塑性プラスチック同様成形加工ができ、常温ではゴム弾性を示す材料である。分子構造としては、ポリエーテルあるいはゴム分子のようなソフトセグメントと、常温付近では加硫ゴムと同じく塑性変形を防止するハードセグメントからなり、ハードセグメントとしては凍結相、結晶相、水素結合、イオン架橋など種々のタイプが存在する。
印刷版の用途により、熱可塑性エラストマーの種類を選択できる。例えば、耐溶剤性が要求される分野では、ウレタン系、エステル系、アミド系、フッ素系熱可塑性エラストマーが好ましく、耐熱性が要求される分野では、ウレタン系、オレフィン系、エステル系、フッ素系熱可塑性エラストマーが好ましい。また、熱可塑性エラストマーの種類により、硬度を大きく変えることができる。通常の印刷版での用途では、ショアA硬度が20〜75度の領域、紙、フィルム、建築材料の表面凹凸パターンを形成するエンボス加工の用途では、比較的硬い材料が必要であり、ショアD硬度で、30〜80度の領域である。
熱可塑性樹脂において非エラストマー性のものとして、特に限定するものではないが、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリイイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、全芳香族ポリエステル樹脂等を挙げることができる。
本発明で用いる熱可塑性樹脂の軟化温度は、50℃以上300℃以下であることが好ましい。より好ましい範囲としては80℃以上250℃以下、更に好ましくは100℃以上200℃以下である。軟化温度が50℃以上であれば常温で固体として取り扱うことができ、シート状あるいは円筒状に加工したものを変形させずに取り扱うことができる。また軟化温度が300℃以下である場合、円筒状に加工する際に極めて高い温度に加熱する必要がなく、混合する他の化合物を変質、分解させずに済む。本発明の軟化温度の測定は、動的粘弾性測定装置を用い、室温から温度を上昇していった場合、粘性率が大きく変化する(粘性率曲線の傾きが変化する)最初の温度で定義する。
また、本発明で用いる樹脂(d)として溶剤可溶性樹脂であっても構わない。具体的には、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂等を挙げることができる。
本発明で用いる樹脂(d)は、通常反応性の高い重合性不飽和基を持たないものが多いが、分子鎖の末端あるいは側鎖に反応性の高い重合性不飽和基を有していても構わない。反応性の高い重合性不飽和基を有するポリマーを用いた場合、極めて機械的強度の高い印刷原版を作製することができる。特にポリウレタン系、ポリエステル系熱可塑性エラストマーでは、比較的簡単に分子内に反応性の高い重合性不飽和基を導入することが可能である。ここで言う分子内とは高分子主鎖の末端、高分子側鎖の末端や高分子主鎖中や側鎖中に直接、重合性不飽和基が付いている場合なども含まれる。例えば直接、重合性の不飽和基をその分子末端に導入したものを用いても良いが、別法として、水酸基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、ケトン基、ヒドラジン残基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、環状カーボネート基、エステル基などの反応性基を複数有する数千程度の分子量の上記成分の反応性基と結合しうる基を複数有する結合剤(例えば水酸基やアミノ基の場合のポリイソシアネートなど)を反応させ、分子量の調節、及び末端の結合性基への変換を行った後、この末端結合性基と反応する基と重合性不飽和基を有する有機化合物と反応させて末端に重合性不飽和基を導入する方法などの方法が好適にあげられる。
有機化合物(e)は、ラジカル、または付加重合反応に関与する不飽和結合を有した化合物であり、樹脂(d)との希釈のし易さを考慮すると数平均分子量は1000未満が好ましい。ラジカル重合反応に関与する不飽和結合を有する官能基としては、ビニル基、アセチレン基、アクリル基、メタクリル基、アリル基などが好ましい例である。また、付加重合反応に関与する不飽和結合を有する官能基としては、シンナモイル基、チオール基、アジド基、開環付加反応するエポキシ基、オキセタン基、環状エステル基、ジオキシラン基、スピロオルトカーボネート基、スピロオルトエステル基、ビシクロオルトエステル基、シクロシロキサン基、環状イミノエーテル基等を挙げることができる。
有機化合物(e)の具体例としては、エチレン、プロピレン、スチレン、ジビニルベンゼン等のオレフィン類、アセチレン類、(メタ)アクリル酸及びその誘導体、ハロオレフィン類、アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類、(メタ)アクリルアミド及びその誘導体、アリルアルコール、アリルイソシアネート等のアリル化合物、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸及びその誘導体、酢酸ビニル類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール等があげられるが、その種類の豊富さ、価格、レーザー光照射時の分解性等の観点から(メタ)アクリル酸及びその誘導体が好ましい例である。前記化合物の誘導体の例としては、シクロアルキル−、ビシクロアルキル−、シクロアルケン−、ビシクロアルケン−などの脂環族、ベンジル−、フェニル−、フェノキシ−、フルオレン−などの芳香族、アルキル−、ハロゲン化アルキル−、アルコキシアルキル−、ヒドロキシアルキル−、アミノアルキル−、テトラヒドロフルフリル−、アリル−、グリシジル−、アルキレングリコール−、ポリオキシアルキレングリコール−、(アルキル/アリルオキシ)ポリアルキレングリコール−やトリメチロールプロパン等の多価アルコールのエステルなどがあげられる。また、窒素、硫黄等の元素を含有した複素芳香族化合物であっても構わない。
また、開環付加反応するエポキシ基を有する化合物としては、種々のジオールやトリオールなどのポリオールにエピクロルヒドリンを反応させて得られる化合物、分子中のエチレン結合に過酸を反応させて得られるエポキシ化合物などを挙げることができる。具体的には、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールAにエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドが付加した化合物のジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリ(プロピレングリコールアジペート)ジオールジグリシジルエーテル、ポリ(エチレングリコールアジペート)ジオールジグリシジルエーテル、ポリ(カプロラクトン)ジオールジグリシジルエーテル等を挙げることができる。
本発明において、これら重合性の不飽和結合を有する有機化合物(e)はその目的に応じて1種若しくは2種以上のものを選択できる。例えば印刷版として用いる場合、印刷インキの溶剤であるアルコールやエステル等の有機溶剤に対する膨潤を押さえるために用いる有機化合物(e)として長鎖脂肪族、脂環族または芳香族の誘導体を少なくとも1種類以上有することが好ましい。
本発明で用いる樹脂組成物より得られる印刷原版の機械強度を高めるためには、有機化合物(e)としては脂環族または芳香族の誘導体を少なくとも1種類以上有することが好ましく、この場合、有機化合物(e)の全体量の20wt%以上であることが好ましく、更に好ましくは50wt%以上である。また、前記芳香族の誘導体として、窒素、硫黄等の元素を有する芳香族化合物であっても構わない。
印刷版の反撥弾性を高めるため例えば特開平7−239548号に記載されているようなメタクリルモノマーを使用するとか、公知の印刷用感光性樹脂の技術知見等を利用して選択することができる。
無機多孔質体(f)とは、粒子中に微小細孔を有する、あるいは微小な空隙を有する無機粒子である。レーザー彫刻において多量に発生する粘稠性の液状カスを吸収除去するための添加剤であり、版面のタック防止効果も有する。レーザー照射されても溶融しないことの他、特に材質として限定されるものではないが、紫外線あるいは可視光線を用いて光硬化させる場合、黒色の微粒子を添加すると感光性樹脂組成物内部への光線透過性が著しく低下し、硬化物の物性低下をもたらすため、カーボンブラック、活性炭、グラファイト等の黒色微粒子は、本発明で用いる無機多孔質体(f)としては適当でない。
本発明で用いる無機多孔質体(f)は、粘稠な液状カスを吸着させるため、数平均粒子径、比表面積、平均細孔径、細孔容積、灼熱減量がその性能に大きく影響する。本発明における無機多孔質体(f)は、好ましくは、細孔容積が0.1ml/g以上、かつ平均細孔径が1nm以上である。細孔容積が0.1ml/g未満のもの或いは平均細孔径が1nm未満のものは、吸着性が不十分である。
無機多孔質体(f)の細孔容積は、好ましくは0.1ml/g以上10ml/g以下、より好ましくは0.2ml/g以上5ml/g以下である。細孔容積が0.1m/g以上の場合、粘稠性液状カスの吸収量は十分であり、また10ml/g以下の場合、粒子の機械的強度を確保することができる。本発明において細孔容積の測定には、窒素吸着法を用いる。本発明の細孔容積は、−196℃における窒素の吸着等温線から求められる。
無機多孔質体(f)の平均細孔径は、レーザー彫刻時に発生する液状カスの吸収量に極めて大きく影響を及ぼす。平均細孔径の好ましい範囲は、1nm以上1000nm以下、より好ましくは2nm以上200nm以下、更に好ましくは2nm以上50nm以下である。平均細孔径が1nm以上であれば、レーザー彫刻時に発生する液状カスの吸収性が確保でき、1000nm以下である場合、粒子の比表面積も大きく液状カスの吸収量を十分に確保できる。平均細孔径が1nm未満の場合、液状カスの吸収量が少ない理由については明確になっていないが、液状カスが粘稠性であるため、ミクロ孔に入り難いのではないかと推定している。本発明の平均細孔径は、窒素吸着法を用いて測定した値である。平均細孔径が2〜50nmのものは特にメソ孔と呼ばれ、メソ孔を有する多孔質粒子が液状カスを吸収する能力が極めて高い。本発明の細孔径分布は、−196℃における窒素の吸着等温線から求められる。
本発明は、好ましくはレーザー照射により切断され易いように比較的分子量の低い樹脂を採用し、それ故分子の切断時に多量に低分子のモノマー、オリゴマー類が発生するため、この粘稠性の液状カスの除去を多孔質無機吸収剤を用いて行うという、これまでの技術思想に全くない新しい概念を導入していることに最大の特徴がある。粘稠性液状カスの除去を効果的に行なうために、無機多孔質体の数平均粒子径、比表面積、平均細孔径、細孔容積、灼熱減量、給油量等の物性は重要な要素となる。
無機多孔質体(f)は数平均粒径が0.1〜100μmであることが好ましい。この数平均粒径の範囲より小さいものを用いた場合、本発明で用いる樹脂組成物より得られる原版をレーザーで彫刻する際に粉塵が舞いやすく、彫刻装置を汚染するほか、樹脂(d)及び有機化合物(e)との混合を行う際に粘度の上昇、気泡の巻き込み、粉塵の発生等を生じやすい。他方、上記数平均粒径の範囲より大きなものを用いた場合、レーザー彫刻した際レリーフ画像に欠損が生じやすく、印刷物の精細さを損ないやすい傾向がある。より好ましい平均粒子径の範囲は、0.5〜20μmであり、更に好ましい範囲は3〜10μmである。本発明で用いる無機多孔質体の平均粒子径は、レーザー散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定することができる。
多孔質体の特性を評価する上で、多孔度という新たな概念を導入する。多孔度とは、平均粒子径D(単位:μm)と粒子を構成する物質の密度d(単位:g/cm3)から算出される単位重量あたりの表面積Sに対する、比表面積Pの比、すなわちP/Sで定義する。粒子1個あたりの表面積は、πD2×10-12(単位:m2)であり、粒子1個の重量は(πD3d/6)×10-12(単位:g)であるので、単位重量あたりの表面積Sは、S=6/(Dd)(単位:m2/g)となる。比表面積Pは、窒素分子を表面に吸着させ測定した値を用いる。
無機多孔質体(f)の多孔度は、好ましくは20以上、より好ましくは50以上、更に好ましくは100以上である。多孔度が20以上であれば、液状カスの吸着除去に効果がある。粒子径が小さくなればなるほど比表面積Pは大きくなるため、比表面積単独では多孔質体の特性を示す指標として不適当である。そのため、粒子径を考慮し、無次元化した指標として多孔度を取り入れた。例えば、ゴム等の補強材として広く用いられているカーボンブラックは、比表面積は150m2/gから20m2/gと非常に大きいが、平均粒子径は極めて小さく、通常10nmから100nmの大きさであるので、密度をグラファイトの2.25g/cm3として、多孔度を算出すると、0.8から1.0の範囲の値となり、粒子内部に多孔構造のない無孔質体であると推定される。カーボンブラックはグラファイト構造を有することは一般的に知られているので、前記密度にグラファイトの値を用いた。一方、本発明で用いている多孔質シリカの多孔度は、500を優に越えた高い値となる。
本発明の無機多孔質体は、さらに良好な吸着性を得るためには、特定の比表面積、吸油量を持つことが好ましい。
無機多孔質体(f)の比表面積の範囲は、好ましくは10m2/g以上1500m2/g以下である。より好ましい範囲は、100m2/g以上800m2/g以下である。比表面積が10m2/g以上であれば、レーザー彫刻時の液状カスの除去が十分となり、また、1500m2/g以下であれば、感光性樹脂組成物の粘度上昇を抑え、また、チキソトロピー性を抑えることができる。本発明の比表面積は、−196℃における窒素の吸着等温線からBET式に基づいて求められる。
液状カス吸着量を評価する指標として、吸油量がある。これは、無機多孔質体100gが吸収する油の量で定義する。本発明で用いる無機多孔質体の吸油量の好ましい範囲は、10ml/100g以上2000ml/100g以下、より好ましくは50ml/100g以上1000ml/100g以下、更に好ましくは200ml/100g以上800ml/100g以下である。吸油量が10ml/100g以上であれば、レーザー彫刻時に発生する液状カスの除去に効果があり、また2000ml/100g以下であれば、無機多孔質体の機械的強度を十分に確保できる。吸油量の測定は、JIS−K5101にて行うことが好ましい。
本発明で用いる無機多孔質体(f)は、特に赤外線波長領域のレーザー光照射により変形あるいは溶融せずに多孔質性を保持することが必要である。950℃において2時間処理した場合の灼熱減量は、好ましくは15wt%以下、より好ましくは10wt%以下である。
無機多孔質体の粒子形状は特に限定するものではなく、球状、扁平状、針状、無定形、あるいは表面に突起のある粒子などを使用することができる。その中でも、印刷版の耐摩耗性の観点から、球状粒子が特に好ましい。また、粒子の内部が空洞になっている粒子、シリカスポンジ等の均一な細孔径を有する球状顆粒体など使用することも可能である。特に限定するものではないが、例えば、多孔質シリカ、メソポーラスシリカ、シリカ−ジルコニア多孔質ゲル、メソポーラスモレキュラーシーブ、ポーラスアルミナ、多孔質ガラス等を挙げることができる。
また、層状粘土化合物などのように、層間に数nm〜100nmの空隙が存在するものについては、細孔径を定義できないため、本発明においては層間に存在する空隙すなわち面間隔を細孔径と定義する。また、層間に存在する空間の総量を細孔容積と定義する。これらの値は、窒素の吸着等温線から求めることができる。
更にこれらの細孔あるいは空隙にレーザー光の波長の光を吸収する顔料、染料等の有機色素を取り込ませることもできる。
球状粒子を規定する指標として、真球度を定義する。本発明で用いる真球度とは、粒子を投影した場合に投影図形内に完全に入る円の最大値D1の、投影図形が完全に入る円の最小値D2の比(D1/D2)で定義する。真球の場合、真球度は1.0となる。本発明で用いる好ましい球状粒子の真球度は、0.5以上1.0以下、より好ましくは0.7以上1.0以下が望ましい。0.5以上であれば、印刷版としての耐磨耗性が良好である。真球度1.0は、真球度の上限値である。球状粒子として、70%以上、より好ましくは90%以上の粒子が、真球度0.5以上であることが望ましい。真球度を測定する方法としては、走査型電子顕微鏡を用いて撮影した写真を基に測定する方法を用いることができる。その際、少なくとも100個以上の粒子がモニター画面に入る倍率において写真撮影を行うことが好ましい。また、写真を基に前記D1およびD2を測定するが、写真をスキャナー等のデジタル化する装置を用いて処理し、その後画像解析ソフトウエアーを用いてデータ処理することが好ましい。
また、無機多孔質体の表面をシランカップリング剤、チタンカップリング剤、その他の有機化合物で被覆し表面改質処理を行い、より親水性化あるいは疎水性化した粒子を用いることもできる。
本発明において、これらの無機多孔質体(f)は1種類もしくは2種類以上のものを選択でき、無機多孔質体(f)を添加することによりレーザー彫刻時の液状カスの発生抑制、及びレリーフ印刷版のタック防止等の改良が有効に行われる。
本発明で用いる感光性樹脂組成物(イ)における樹脂(d)、有機化合物(e)、及び無機多孔質体(f)の割合は、通常、樹脂(d)100重量部に対して、有機化合物(e)は5〜200重量部が好ましく、20〜100重量部の範囲がより好ましい。又、無機多孔質体(f)は1〜100重量部が好ましく、2〜50重量部の範囲がより好ましい。更に好ましい範囲は、2〜20重量部である。
有機化合物(e)の割合が、上記の範囲であれば、得られる印刷版などの硬度と引張強伸度のバランスがとり易く、架橋硬化の際の収縮が小さくなり、厚み精度を確保することができる。
また、無機多孔質体(f)の量が上記の範囲であれば、版面のタック防止効果、及びレーザー彫刻した際に、彫刻液状カスの発生を抑制するなどの効果が十分発揮され、印刷版の機械的強度を確保することができ、透明性を保持することもできる。また、特にフレキソ版として利用する際にも、硬度が高くなりすぎないように抑えることができる。光、特に紫外線を用いて感光性樹脂組成物を硬化させレーザー彫刻印刷原版を作製する場合、光線透過性が硬化反応に影響する。
したがって、用いる無機多孔質体の屈折率が感光性樹脂組成物の屈折率に近いものを用いることが有効である。
本発明で用いる感光性樹脂組成物(イ)を光照射により架橋して印刷版などとしての物性を発現させるが、その際に重合開始剤を添加することができる。重合開始剤は一般に使用されているものから選択でき、例えば高分子学会編「高分子データ・ハンドブック−基礎編」1986年培風館発行、に例示されているラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合の開始剤等が使用できる。また、光重合開始剤を用いて光重合により架橋を行なうことは、本発明で用いる樹脂組成物の貯蔵安定性を保ちながら、生産性良く印刷原版を生産出来る方法として有用であり、その際に用いる開始剤も公知のものが使用できるが、例えばベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル類、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、4‘−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2、2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノンなどのアセトフェノン類;1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、フェニルグリオキシル酸メチル、ベンゾフェノン、ベンジル、ジアセチル、ジフェニルスルフィド、エオシン、チオニン、アントラキノン類等の光ラジカル重合開始剤のほか、光を吸収して酸を発生する芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩等の光カチオン重合開始剤あるいは光を吸収して塩基を発生する重合開始剤などが挙げられる。重合開始剤の添加量は樹脂(d)と有機化合物(e)の合計量の0.01〜10wt%範囲が好ましい。
その他、本発明で用いる樹脂組成物には用途や目的に応じて重合禁止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、滑剤、界面活性剤、可塑剤、香料などを添加することができる。
本発明で用いる感光性樹脂組成物を円筒状に成形する方法は、既存の樹脂の成形方法を用いることができる。例えば、注型法、ポンプや押し出し機等の機械で樹脂をノズルやダイスから押し出し、ブレードで厚みを合わせる、ロールによりカレンダー加工して厚みを合わせる方法等が例示できる。その際、樹脂の性能を落とさない範囲で加熱しながら成形を行なうことも可能である。また、必要に応じて圧延処理、研削処理などをほどこしても良い。また、感光性樹脂組成物を円筒状支持体上に塗布した後、光を照射し該感光性樹脂組成物を硬化・固化させる装置内に、レーザー彫刻用のレーザー光源を組み込んだ円筒状印刷原版成形・彫刻装置を用いて印刷版を形成することもできる。このような装置を用いた場合、円筒状印刷原版を形成した後、直ちにレーザー彫刻し印刷版を形成することができ、成形加工に数週間の期間を必要としていた従来のゴムスリーブでは到底考えられない短時間加工が実現可能となる。円筒状印刷原版を作製する工程において、感光性樹脂組成物を用いることにより円筒状印刷原版を極めて短時間で作製することが可能である。
本発明で用いる円筒状支持体(A)は、剛直性であってもフレキシブルであっても構わない。本発明で用いる円筒状支持体の役割は、印刷原版の寸法安定性を確保することである。したがって、寸法安定性の高いものを選択することが好ましい。線熱膨張係数を用いて評価すると、好ましい材料の上限値は100ppm/℃以下、更に好ましくは70ppm/℃以下である。材料の具体例としては、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリビスマレイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンチオエーテル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、全芳香族ポリエステル樹脂からなる液晶樹脂、全芳香族ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、金属などを挙げることができる。また、これらの樹脂を積層して用いることもできる。
また、円筒状支持体の線熱膨張係数を小さくする方法として、充填剤を添加する方法、全芳香族ポリアミド等のメッシュ状クロス、ガラスクロスなどに樹脂を含浸あるいは被覆する方法などを挙げることができる。充填剤としては、通常用いられる有機系微粒子、金属酸化物あるいは金属等の無機系微粒子、有機・無機複合微粒子などを用いることができる。また、多孔質微粒子、内部に空洞を有する微粒子、マイクロカプセル粒子、低分子化合物が内部にインターカレーションする層状化合物粒子を用いることもできる。特に、アルミナ、シリカ、酸化チタン、ゼオライト等の金属酸化物微粒子、ポリスチレン・ポリブタジエン共重合体からなるラテックス微粒子、高結晶性セルロース、生物が生成した高結晶性セルロースナノファイバー等の天然物系の有機系微粒子、繊維等が有用である。繊維強化プラスチック(FRP)等の材料は、円筒状支持体として特に有用である。
本発明で用いる円筒状支持体の表面に物理的、化学的処理を行うことにより、クッション層との接着性を向上させることができる。物理的処理方法としては、サンドブラスト法、微粒子を含有した液体を噴射するウエットブラスト法、コロナ放電処理法、プラズマ処理法、紫外線あるいは真空紫外線照射法などを挙げることができる。また、化学的処理方法としては、強酸・強アルカリ処理法、酸化剤処理法、カップリング剤処理法などである。
成形された感光性樹脂組成物(イ)は、光もしくは電子線の照射により架橋せしめ、レーザー彫刻可能な印刷原版を形成する。また、成型しながら光もしくは電子線の照射により架橋させることができる。光を使って架橋させる方法は、装置が簡便で厚み精度が高くできるなどの利点を有し好適である。硬化に用いられる光源としては高圧水銀灯、超高圧水銀灯、紫外線蛍光灯、カーボンアーク灯、キセノンランプ等が挙げられ、その他公知の方法で硬化を行うことができる。また、複数の種類の光源の光を照射しても構わない。感光性樹脂組成物を光で硬化させる場合、表面に透明なカバーフィルムを被覆し、酸素を遮断した状態で光を照射することもできる。カバーフィルムは、印刷原版の表面を保護するために使用することもできる。ただし、レーザー彫刻時には剥離して用いる。
レーザー彫刻可能な感光性樹脂硬化物層(C)の厚みは、その使用目的に応じて任意に設定して構わないが、印刷版として用いる場合には、一般的に0.1〜7mmの範囲である。場合によっては、組成の異なる材料を複数積層しても構わない。
本発明のレーザー彫刻可能な印刷原版は、無機多孔質体微粒子を含有した感光性材料を光架橋硬化させて形成したものである。したがって、有機化合物(e)の重合性不飽和基、あるいはポリマーと有機化合物(e)の重合性不飽和基が反応することにより3次元架橋構造が形成され、通常用いるエステル系、ケトン系、芳香族系、エーテル系、アルコール系、ハロゲン系溶剤に不溶化する。この反応は、有機化合物(e)同士、樹脂(d)同士、あるいは樹脂(d)と有機化合物(e)との間で起こり、重合性不飽和基が消費される。また、光重合開始剤を用いて架橋硬化させる場合、光重合開始剤が光により分解されるため、前記架橋硬化物を溶剤で抽出し、GC−MS法(ガスクロマトグラフィーで分離したものを質量分析する方法)、LC−MS法(液体クロマトグラフィーで分離したものを質量分析する方法)、GPC−MS法(ゲル浸透クロマトグラフィーで分離し質量分析する方法)、LC−NMR法(液体クロマトグラフィーで分離したものを核磁気共鳴スペクトルで分析する方法)を用いて解析することにより、未反応の光重合開始剤および分解生成物を同定することができる。更に、GPC−MS法、LC−MS法、GPC−NMR法を用いることにより、溶剤抽出物中の未反応の樹脂(d)、未反応の有機化合物(e)、および重合性不飽和基が反応して得られる比較的低分子量の生成物についても溶剤抽出物の分析から同定することができる。3次元架橋構造を形成した溶剤に不溶の高分子量成分については、熱分解GC−MS法を用いることにより、高分子量体を構成する成分として、重合性不飽和基が反応して生成した部位が存在するかを検証することが可能である。
例えば、メタクリレート基、アクリレート基、ビニル基等の重合性不飽和基が反応した部位が存在することを質量分析スペクトルパターンから推定することができる。熱分解GC−MS法とは、試料を加熱分解させ、生成するガス成分をガスクロマトグラフィーで分離した後、質量分析を行なう方法である。架橋硬化物中に、未反応の重合性不飽和基又は重合性不飽和基が反応して得られた部位と共に、光重合開始剤に由来する分解生成物や未反応の光重合開始剤が検出されると、感光性樹脂組成物を光架橋硬化させて得られたものであると結論付けることができる。
また、架橋硬化物中に存在する無機多孔質体微粒子の量については、架橋硬化物を空気中で加熱することにより、有機物成分を焼き飛ばし、残渣の重量を測定することにより得ることができる。また、前記残渣中に無機多孔質体微粒子が存在することは、電界放射型高分解能走査型電子顕微鏡での形態観察、レーザー散乱式粒子径分布測定装置での粒子径分布、および窒素吸着法による細孔容積、細孔径分布、比表面積の測定から同定することができる。
また、レーザー彫刻印刷版の表面に改質層を形成させることにより、印刷版表面のタックの低減、インク濡れ性の向上を行うこともできる。改質層としては、シランカップリング剤あるいはチタンカップリング剤等の表面水酸基と反応する化合物で処理した被膜、あるいは多孔質無機粒子を含有するポリマーフィルムを挙げることができる。
広く用いられているシランカップリング剤は、基材の表面水酸基との反応性の高い官能基を分子内に有する化合物であり、そのような官能基とは、例えばトリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリクロロシリル基、ジエトキシシリル基、ジメトキシシリル基、ジモノクロロシリル基、モノエトキシシリル基、モノメトキシシリル基、モノクロロシリル基を挙げることができる。また、これらの官能基は分子内に少なくとも1つ以上存在し、基材の表面水酸基と反応することにより基材表面に固定化される。更にシランカップリング剤を構成する化合物は、分子内に反応性官能基としてアクリロイル基、メタクリロイル基、活性水素含有アミノ基、エポキシ基、ビニル基、パーフルオロアルキル基、及びメルカプト基から選ばれた少なくとも1個の官能基を有するもの、あるいは長鎖アルキル基を有するものを用いることができる。
また、チタンカップリング剤としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジ−トリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジ−トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(オクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルスルフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等の化合物を挙げることができる。
表面に固定化したカップリング剤分子が特に重合性反応基を有する場合、表面への固定化後、光、熱、あるいは電子線を照射し架橋させることにより、より強固な被膜とすることもできる。
上記のカップリング剤に、必要に応じ、水−アルコール、或いは酢酸水−アルコール混合液で希釈して、調整する。処理液中のカップリング剤の濃度は、0.05〜10.0重量%が好ましい。
カップリング剤処理法について説明する。前記のカップリング剤を含む処理液を、印刷原版、あるいはレーザー彫刻後の印刷版表面に塗布して用いられる。カップリング剤処理液を塗布する方法に特に限定はなく、例えば浸漬法、スプレー法、ロールコート法、或いは刷毛塗り法等を適応することが出来る。また、被覆処理温度、被覆処理時間についても特に限定はないが、5〜60℃であることが好ましく、処理時間は0.1〜60秒であることが好ましい。更に樹脂版表面上の処理液層の乾燥を加熱下に行うことが好ましく、加熱温度としては50〜150℃が好ましい。
カップリング剤で印刷版表面を処理する前に、キセノンエキシマランプ等の波長が200nm以下の真空紫外線領域の光を照射する方法、あるいはプラズマ等の高エネルギー雰囲気に曝すことにより、印刷版表面に水酸基を発生させ高密度にカップリング剤を固定化することもできる。
また、無機多孔質体粒子を含有する層が印刷版表面に露出している場合、プラズマ等の高エネルギー雰囲気下で処理し、表面の有機物層を若干エッチング除去することにより印刷版表面に微小な凹凸を形成させることができる。この処理により印刷版表面のタックを低減させること、および表面に露出した無機多孔質体粒子がインクを吸収しやすくすることによりインク濡れ性が向上する効果も期待できる。
レーザー彫刻においては、形成したい画像をデジタル型のデータとしてコンピューターを利用してレーザー装置を操作し、原版上にレリーフ画像を作成する。
レーザー彫刻に用いるレーザーは、原版が吸収を有する波長を含むものであればどのようなものを用いてもよいが、彫刻を高速度で行なうためには出力の高いものが望ましく、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、半導体レーザー、ファイバーレーザー等の赤外線あるいは近赤外線領域に発振波長を有するレーザーが好ましいものの一つである。また、紫外線領域に発振波長を有する紫外線レーザー、例えばエキシマレーザー、第3あるいは第4高調波へ波長変換したYAGレーザー、銅蒸気レーザー等は、有機分子の結合を切断するアブレージョン加工が可能であり、微細加工に適する。フェムト秒レーザーなど極めて高い尖頭出力を有するレーザーを用いることもできる。また、レーザーは連続照射でも、パルス照射でも良い。一般には樹脂は炭酸ガスレーザーの10μm近傍に吸収を持つため、特にレーザー光の吸収を助けるような成分の添加は必須ではない。YAGレーザー、半導体レーザー、ファイバーレーザーは1μm近辺に発振波長を有するが、この波長領域に光吸収を有する有機物はあまり無い。その場合、これの吸収を助ける成分である、染料、顔料の添加が必要となる。このような染料の例としては、ポリ(置換)フタロシアニン化合物および金属含有フタロシアニン化合物、;シアニン化合物;スクアリリウム染料;カルコゲノピリロアリリデン染料;クロロニウム染料;金属チオレート染料;ビス(カルコゲノピリロ)ポリメチン染料;オキシインドリジン染料;ビス(アミノアリール)ポリメチン染料;メロシアニン染料;及びキノイド染料などが挙げられる。顔料の例としてはカーボンブラック、グラファイト亜クロム酸銅、酸化クロム、コバルトクロームアルミネート、酸化鉄等の暗色の無機顔料や鉄、アルミニウム、銅、亜鉛のような金属粉およびこれら金属にSi、Mg、P、Co、Ni、Y等をドープしたもの等が挙げられる。これら染料、顔料は単独で使用しても良いし、複数を組み合わせて使用しても良いし、複層構造にするなどのあらゆる形態で組み合わせても良い。ただし、紫外線あるいは可視光線を用いて感光性樹脂組成物を硬化させる場合、印刷原版内部まで硬化させるためには、用いる光線領域に吸収のある色素、顔料の添加量は低く抑えることが好ましい。
レーザーによる彫刻は酸素含有ガス下、一般には空気存在下もしくは気流下に実施するが、炭酸ガス、窒素ガス下でも実施できる。彫刻終了後、レリーフ印刷版面にわずかに発生する粉末状もしくは液状の物質は適当な方法、例えば溶剤や界面活性剤の入った水等で洗いとる方法、高圧スプレー等により水系洗浄剤を照射する方法、高圧スチームを照射する方法などを用いて除去しても良い。
本発明のレーザー彫刻可能な印刷原版は印刷版用レリーフ画像の他、スタンプ・印章、エンボス加工用のデザインロール、電子部品作成に用いられる絶縁体、抵抗体、導電体ペーストのパターニング用レリーフ画像、窯業製品の型材用レリーフ画像、広告・表示板などのディスプレイ用レリーフ画像、各種成型品の原型・母型など各種の用途に
応用し利用できる。
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。
実施例及び比較例中、レーザー彫刻は炭酸ガスレーザー彫刻機(BAASEL社製、商標「TYP STAMPLAS SN 09」)を用いて行い、彫刻のパターンは、網点、500μm幅の凸線による線画、及び、500μm幅の白抜き線を含むパターンを作成して実施した。彫刻深さを大きく設定すると、微細な網点部パターンのトップ部分の面積が確保できず、形状も崩れて不鮮明となるため、彫刻深さは0.55mmとした。
レーザー彫刻後、エタノールもしくはアセトンを含浸させた不織布(旭化成株式会社製、商標「BEMCOT M−3」)を用いてレリーフ印刷版上のカスを拭き取った。レーザー彫刻前の印刷原版、レーザー彫刻直後の印刷版、及び拭き取り後のレリーフ印刷版各々重量を測定し、式(1)により、彫刻時のカス残存率を求めた。
(彫刻直後の版の重量−拭き取り後の版の重量)÷(彫刻前の原版重量−拭き取り後の版の重量)×100
(1)
また、拭き取り後のレリーフ印刷版面のタック測定は株式会社東洋精機製作所製タックテスターを用いて行なった。 タック測定は、20℃において、試料片の平滑な部分に半径50mm、幅13mmのアルミニウム輪の幅13mmの部分を接触させ、該アルミニウム輪に0.5kgの荷重を加え4秒間放置した後、毎分30mmの一定速度で前記アルミニウム輪を引き上げ、アルミニウム輪が試料片から離れる際の抵抗力をプッシュプルゲージで読み取る。この値が大きいもの程、ベトツキ度が大きく、接着力が高い。
更に、彫刻した部位のうち、80lpi(Lines per inch)で面積率約10%の網点部の形状を電子顕微鏡にて観察した。
微粒子の比表面積、細孔分布測定は、米国カンタクローム社製、オートソープ3MPを用い、液体窒素温度雰囲気下、窒素ガスを吸着させて測定した。
樹脂(d)として、下記製造例1〜9で、樹脂(ア)〜(ク)を製造した。
[製造例1]
温度計、攪拌機、還流器を備えた1Lのセパラブルフラスコに旭化成株式会社製ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量1830、OH価61.3)500gとトリレンジイソシアナート52.40gを加え60℃に加温下に約3時間反応させた後、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート25.24gとポリプロピレングリコールモノメタクリレート(Mn400)31.75gを添加し、さらに2時間反応させて、末端がメタアクリル基(分子内の重合性不飽和基が1分子あたり平均で約2個)である数平均分子量約20000の樹脂(ア)を製造した。この樹脂は20℃では水飴状であり、外力を加えると流動し、かつ外力を除いても元の形状を回復しなかった。
[製造例2]
温度計、攪拌機、還流器を備えた1Lのセパラブルフラスコにクラレ株式会社製ポリカーボネートジオールである、商標「クラレポリオールC−2015N」(数平均分子量2000、OH価56.0)500gとトリレンジイソシアナート49.86gを加え60℃に加温下に約3時間反応させた後、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート26.63gとポリプロピレングリコールモノメタクリレート35.27gを添加し、さらに2時間反応させて、末端がメタアクリル基(分子内の重合性不飽和基が1分子あたり平均約2個)である数平均分子量約1
5000の樹脂(イ)を製造した。この樹脂は20℃では水飴状であり、外力を加えると流動し、かつ外力を除いても元の形状を回復しなかった。
[製造例3]
温度計、攪拌機、還流器を備えた1Lのセパラブルフラスコにクラレ株式会社製ポリイソプレンポリオール、商標「LIR−506」(数平均分子量16400、OH価17.1)500gと2−メタクリロイルオキシイソシアネート23.65gを添加し、60℃で7時間反応させて、末端がメタアクリル基(分子内の重合性不飽和基が1分子あたり平均5個)である数平均分子量17200の樹脂(ウ)を製造した。この樹脂は20℃では水飴状であり、外力を加えると流動し、かつ外力を除いても元の形状を回復しなかった。
[製造例4]
温度計、攪拌機、還流器を備えた1Lのセパラブルフラスコに旭化成株式会社
製ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量1830、OH価61.3)500gとトリレンジイソシアネート52.40gを加え60℃に加温下に約3時
間反応させた後、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート6.2gとポリプロピレングリコールモノメタクリレート(Mn400)7.9gを添加し、さらに2時間反応させたのち、エタノールを20g加えてさらに2時間反応させた。末端がメタアクリル基(分子内の重合性不飽和基が1分子あたり平均で0.5個)である数平均分子量約20000の樹脂(エ)を製造した。この樹脂は20℃では水飴状であり、外力を加えると流動し、かつ外力を除いても元の形状を回復しなかった。
[製造例5]
温度計、攪拌機、還流器を備えた1Lのセパラブルフラスコに旭化成株式会社製ポリカーボネートジオールである、商標「PCDL L4672」(数平均分
子量1990、OH価56.4)447.24gとトリレンジイソシアナート30.83gを加え80℃に加温下に約3時間反応させた後、2−メタクリロイルオキシイソシアネート14.83gを添加し、さらに約3時間反応させて、末端がメタアクリル基(分子内の重合性不飽和基が1分子あたり平均約2個)である
数平均分子量約10000の樹脂(オ)を製造した。この樹脂は20℃では水飴状であり、外力を加えると流動し、かつ外力を除いても元の形状を回復しなかった。
[製造例6]
温度計、攪拌機、還流器を備えた1Lのセパラブルフラスコに旭化成株式会社製ポリカーボネートジオールである、商標「PCDL L4672」(数平均分
子量1990、OH価56.4)447.24gとトリレンジイソシアナート30.83gを加え80℃に加温下に約3時間反応させた後、2−メタクリロイルオキシイソシアネート7.42gを添加し、さらに約3時間反応させて、末端がメタアクリル基(分子内の重合性不飽和基が1分子あたり平均約1個)である数
平均分子量約10000の樹脂(カ)を製造した。この樹脂は20℃では水飴状であり、外力を加えると流動し、かつ外力を除いても元の形状を回復しなかった。
[製造例7]
温度計、攪拌機、還流器を備えた1Lのセパラブルフラスコに旭化成株式会社製ポリカーボネートジオールである、商標「PCDL L4672」(数平均分
子量1990、OH価56.4)449.33gとトリレンジイソシアナート12.53gを加え80℃に加温下に約3時間反応させた後、2−メタクリロイルオキシイソシアネート47.77gを添加し、さらに約3時間反応させて、末端がメタアクリル基(分子内の重合性不飽和基が1分子あたり平均約2個)である
数平均分子量約3000の樹脂(キ)を製造した。この樹脂は20℃では水飴状であり、外力を加えると流動し、かつ外力を除いても元の形状を回復しなかった。
[製造例8]
温度計、攪拌機、還流器を備えた1Lのセパラブルフラスコに旭化成株式会社製ポリカーボネートジオールである、商標「PCDL L4672」(数平均分
子量1990、OH価56.4)449.33gとトリレンジイソシアナート12.53gを加え80℃に加温下に約3時間反応させた後、2−メタクリロイルオキシイソシアネート23.89gを添加し、さらに約3時間反応させて、末端がメタアクリル基(分子内の重合性不飽和基が1分子あたり平均約1個)である
数平均分子量約3000の樹脂(ク)を製造した。この樹脂は20℃では水飴状であり、外力を加えると流動し、かつ外力を除いても元の形状を回復しなかった。
[実施例1〜10、比較例1、2]
(クッション層の形成)
スチレン−ブタジエンコポリマー(旭化成株式会社製、商標「タフプレンA」)60重量部、液状ポリブタジエン(日本石油化学株式会社製、商標「B−2000」)29重量部、1,9−ノナンジオールジアクリレート7重量部、2,2−ジメトキシ−フェニルアセトフェノン2重量部、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール1重量部、熱膨張性カプセル(松本油脂製薬株式会社製、商標「マツモトマイクロスフェアーF−30VS」、最適発泡温度110〜120℃、乾燥重量)1重量部をニーダーにて混錬し、得られた混錬物10重量部に対して、トルエン60重量部を混合し、均一な溶液である感光性樹脂組成物(コ)を得た。
スチレン−ブタジエンコポリマー(旭化成株式会社製、商標「タフプレン912」)8.5重量部、熱膨張性マイクロカプセル(松本油脂製薬株式会社製、商標「マツモトマイクロスフェアーF−55」、最適発泡温度135〜145℃、乾燥重量)2.5重量部、2−ヒドロキシメタクリレート2重量部、硬化剤〔トリメチロールプロパン(1モル)のトルエンジイソシアネート(3モル)付加物〕1重量部、トルエン60重量部を混合し、均一な溶液である樹脂組成物(サ)を得た。
得られた感光性樹脂組成物(コ)を、円筒状支持体であるガラス繊維強化プラスチックスリーブ上に所定量の感光性樹脂組成物を載せ、前記スリーブを中心軸の周りに回転させながらブレードコート法を用いて均一に塗布し、その後溶剤であるトルエンを乾燥除去することにより、継ぎ目のない樹脂層を得ることができた。得られた樹脂層の厚さは、150μmであった。その後、前記樹脂層を有する円筒状積層体と加熱機構を有する金属性ロールとを接触するように配置し、両者を回転させながら金属性ロールの加熱を開始し、150℃まで加熱した。熱膨張性カプセルが膨張を開始したことを確認後、円筒状積層体と金属ロールとの間隔を除々に広げた。円筒状積層体と金属ロールの接触部から少し離れた位置に冷却用の金属ロールを配置し、円筒状積層体との間隔を550μmに設定した。この冷却ロールも円筒状積層体の回転速度と同じ速度で回転させた。この加熱処理により、熱膨張性マイクロカプセルを膨張させ、厚さ550μmのクッション層(α)を得た。
得られたクッション層は、失透しており熱膨張性マイクロカプセルが膨張していることを確認した。表面近傍の気泡径を、光学顕微鏡を用いて観察したところ、クッション層(α)では、70%以上の気泡が30から60μmの範囲に入り、平均値は48μmであった。
作製された円筒状クッション積層体の径を10箇所測定したところ、精度は10μm以内に入っていた。
感光性樹脂組成物(サ)についても、円筒状積層体と冷却ロールとの間隔を1.2mmとする以外は、上記の方法と同様の加熱処理を行うことにより、厚さ1.2mmのクッション層(β)を得た。
得られたクッション層は、失透しており熱膨張性マイクロカプセルが膨張していることを確認した。表面近傍の気泡径を、光学顕微鏡を用いて観察したところ、クッション層(β)では、70%以上の気泡が40から70μmの範囲に入り、平均値は59μmであった。
作製された円筒状クッション積層体の径を10箇所測定したところ、精度は10μm以内に入っていた。
(円筒状フレキソ印刷原版の作製)
前記の製造例で得られた樹脂(ア)から(ク)、及び旭化成株式会社製スチレンブタジエン共重合体、商標「タフプレンA」(以下略してSBS)を用い、表1に示すように重合性モノマー、無機多孔質体として富士シリシア化学株式会社
製、多孔質性微粉末シリカである、商標「サイロスフェアC−1504」(以下略してC−1504、数平均粒子径4.5μm、比表面積520m2/g、平均細孔径12nm、細孔容積1.5ml/g、灼熱減量2.5wt%、吸油量290ml/100g)、商標「サイシリア450」(以下略してCH−450、数平均粒子径8.0μm、比表面積300m2/g、平均細孔径17nm、細孔容積1.25ml/g、灼熱減量5.0wt%、吸油量200ml/100g)、商標「サイリシア470」(以下略してC−470、数平均粒子径14.1μm、比表面積300m2/g、平均細孔径17nm、細孔容積1.25ml/g、灼熱減量5.0wt%、吸油量180ml/100g)、光重合開始剤、その他添加剤を加えて感光性樹脂組成物を作成した。SBSを用いた系のみ20℃において固体状となるため、トルエンを添加し粘性の高い溶液状態の感光性樹脂組成物を得た。これらの感光性樹脂組成物を、得られたクッション層(α)あるいは(β)の上に押し出し塗布し、余分な感光性樹脂組成物をドクターブレードで除去し、部分的に盛り上がった箇所をロールで圧縮することにより、継ぎ目のない感光性樹脂組成物層を形成し円筒状積層体を得た。更に、得られた円筒状積層体表面に紫外線蛍光灯の光を1000mJ/cm2の条件で照射し、印刷原版を作製した。SBS系感光性樹脂組成物については、均一の膜厚に成形する過程で溶剤であるトルエンを乾燥除去した。
用いた多孔質性微紛末シリカの多孔度は、密度を2g/cm3として算出すると、サイロスフェアC−1504が780、サイリシア450が800、サイリシア470が1410である。
これらをBAASEL社製の炭酸ガスレーザー彫刻機をもちいて、パターンの彫刻を行なった。その評価結果を表2に示す。
表2の彫刻後のカス拭き取り回数とは、彫刻後発生する粘稠性の液状カスを除去するのに必要な拭き取り処理の回数であり、この回数が多いと液状カスの量が多いことを意味する。
また、表3に本発明の実施例および比較例で用いた感光性樹脂組成物の20℃における粘度を示した。
本発明の実施例で用いている二重結合含有有機化合物の内、脂環族および芳香族の誘導体は、BZMA、CHMAおよびPEMAである。
[比較例3]
有機多孔質球状微粒子を使用する以外は、実施例4と同じ方法で、印刷原版を作製した。有機多孔質微粒子は、架橋ポリスチレンからなり、数平均粒子径8μm、比表面積200m2/g、平均細孔径50nm、細孔容積2.5ml/gの微粒子であった。
炭酸ガスレーザーで彫刻後、粘稠性液状カスが多量に発生し、カス拭き取り回数は30回を越えて必要であった。これは、有機多孔質微粒子がレーザー光照射により溶融・分解し、多孔質性を保持できなかったものと推定される。
[比較例4]
無機多孔質体の代わりにカーボンブラック(東海カーボン社製、商標「シーストSP、SRF−LS」、平均粒子径95nm、比表面積23m2/g、平均細孔径1nm未満)を0.2wt%含有させる以外は、実施例4と同じ方法で、印刷原版の作製を試みた。カーボンブラック粒子のX線回折から求めた面間隔を平均細孔径とした。用いたカーボンブラックの多孔度は、密度を2.25g/cm3として、0.8である。
しかし、液状感光性樹脂組成物を硬化させることはできなかった。更にレリーフ面露光量を6000mJ/cm2まで上げても、硬化したのは表面層の約0.2mm程度であり、レーザー彫刻印刷原版として使用できるものではなかった。
硬化した約0.2mmの硬化物層を取り出し、液状物の残存する面に再度、紫外線を照射し硬化させたものを擬似印刷版とし、彫刻深さを0.1mmに設定し、炭酸ガスレーザー彫刻機を用いて彫刻を実施した。その結果、彫刻カスは粘稠性液状物であった。これは、添加できる黒色のカーボンブラックが極めて少量に制限されるため、擬似印刷版内部の硬化が不十分であることが推定される。本比較例のように極めて少量の添加量では液状カスを除去する効果は期待できない。
紫外線領域に大きな光吸収特性を有する微粒子を感光性樹脂に添加し、それを光硬化する系の場合、一般的な現象である。
[比較例5]
無機多孔質体の代わりに無孔質体としてアルミノシリケート(水澤化学社製、商標「シルトンAMT08L」)を用いる以外は、実施例4と同じ方法により印刷原版を作製した。用いた無孔質体は平均粒子径0.9μm、細孔容積0.08ml/g、比表面積21m2/g、吸油量60ml/100gであった。多孔度は、密度を2g/cm3として、6.3であった。
炭酸ガスレーザーで彫刻後、粘稠性液状カスが多量に発生し、カス拭き取り回数は10回を越えて必要であった。
網点部の形状は、円錐状で良好であった。また、拭き取り後のレリーフ上のタックは280N/mであった。
[比較例6]
無機多孔質体の代わりに無孔質体としてアルミノシリケート(水澤化学社製、商標「シルトンAMT25」)を用いる以外は、実施例4と同じ方法により印刷原版を作製した。用いた無孔質体は平均粒子径2.9μm、細孔容積0.006ml/g、比表面積2.3m2/g、吸油量40ml/100gであった。多孔度は、密度を2g/cm3として、2.2であった。
炭酸ガスレーザーで彫刻後、粘稠性液状カスが多量に発生し、カス拭き取り回数は10回を越えて必要であった。
網点部の形状は、円錐状で良好であった。また、拭き取り後のレリーフ上のタックは300N/mであった。
[比較例7]
無機多孔質体の代わりに無孔質体としてソジュウムカルシウムアルミノシリケート(水澤化学社製、商標「シルトンJC50」)を用いる以外は、実施例4と同じ方法により印刷原版を作製した。用いた無孔質体は平均粒子径5.0μm、細孔容積0.02ml/g、比表面積6.7m2/g、吸油量45ml/100gであった。多孔度は、密度を2g/cm3として、11であった。
炭酸ガスレーザーで彫刻後、粘稠性液状カスが多量に発生し、カス拭き取り回数は10回を越えて必要であった。
網点部の形状は、円錐状で良好であった。また、拭き取り後のレリーフ上のタックは260N/mであった。
[比較例8]
実施例と同じ円筒状支持体上に厚さ25μmの両面テープを貼り付け、その上に連続気泡を有する発泡ポリウレタンシートを貼り付けたが、所々気泡が入ってしまい、その部分が100μm以上盛り上がってしまった。また、隙間が発生しないように継ぎ目を注意深く合わせる作業を行なったが、隙間を0.5mm以下に抑えることはできなかった。
Figure 0005000682
Figure 0005000682
Figure 0005000682

Claims (10)

  1. 円筒状支持体(A)上に、継ぎ目のないクッション層(B)、レーザー彫刻可能な感光性樹脂硬化物層(C)の順に積層された積層体であって、前記クッション層(B)が隔壁を有する気泡を含み、かつ前記感光性樹脂硬化物層(C)が無機多孔質体(f)を含むことを特徴とするレーザー彫刻可能な円筒状フレキソ印刷原版。
  2. クッション層(B)が、少なくとも1種類以上のバインダー(a)、少なくとも1種類以上のエチレン性不飽和化合物(b)、少なくとも1種類以上の光重合開始剤(c)を有する感光性樹脂組成物(ア)を光照射により硬化させた硬化物層であることを特徴とする請求項1に記載のレーザー彫刻可能な円筒状フレキソ印刷原版。
  3. クッション層内に存在する隔壁を有する気泡の平均径が0.5μm以上500μm以下、該隔壁の厚さが0.05μm以上10μm以下であって、かつ該クッション層の厚さが0.01mm以上10mm以下、クッション層の密度が0.1g/cm3以上0.7g/cm3以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のレーザー彫刻可能な円筒状フレキソ印刷原版。
  4. 感光性樹脂硬化物層(C)が、数平均分子量1000以上20万以下の樹脂(d)、数平均分子量1000未満でその分子内に重合性不飽和基を有する有機化合物(e)を含有し、かつ20℃において液状の感光性樹脂組成物を光硬化させた硬化物層であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のレーザー彫刻可能な円筒状フレキソ印刷原版。
  5. 無機多孔質体(f)の平均細孔径が1nm以上1000nm以下、細孔容積が0.1ml/g以上10ml/g以下、比表面積が10m2/g以上1500m2/g以下、かつ吸油量が10ml/100g以上2000ml/100g以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のレーザー彫刻可能な円筒状フレキソ印刷原版。
  6. 無機多孔質体(f)が、数平均粒子径0.1μm以上100μm以下であって、少なくとも70%の粒子の真球度が0.5〜1の範囲の球状粒子であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のレーザー彫刻可能な円筒状フレキソ印刷原版。
  7. 有機化合物(e)の全体量の20wt%以上が脂環族、芳香族の少なくとも1種類以上の誘導体であることを特徴とする請求項4から6のいずれかに記載のレーザー彫刻可能な円筒状フレキソ印刷原版。
  8. レーザー彫刻可能な感光性樹脂硬化物層(C)が、継ぎ目のない層であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のレーザー彫刻可能な円筒状フレキソ印刷原版。
  9. 無機多孔質体(f)が、下記式で表される多孔度が20以上である請求項1から8のいずれかに記載のレーザー彫刻可能な円筒状フレキソ印刷原版。
    Figure 0005000682
    (1)
    (上記式(1)中、Pは比表面積、Sは単位重量あたりの表面積、Dは平均粒子径、dは粒子を構成する物質の密度、をそれぞれ表す)
  10. 請求項1から9のいずれかに記載のレーザー彫刻可能な円筒状フレキソ印刷原版表面にレーザー光を照射し、凹凸パターンを形成することにより得られることを特徴とするレーザー彫刻印刷版。
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