JP5305587B2 - レーザー彫刻印刷原版 - Google Patents
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Description
特許文献2(特開2001−328365号公報)には、グラフト共重合体を用いたレーザー彫刻印刷原版の記載があり、実施例においてカーボンブラック等の黒色顔料や、Brilliant Blue Rという青色染料、Basazol Red 71Pという赤色染料が用いられている。染料を用いた場合、染料分子は分子レベルで感光性樹脂組成物中に混ざるため、特に紫外線波長領域に吸収の強い化合物を用いた際には、紫外線の光線透過率が極めて低くなり、厚膜での光硬化が非常に困難となる。したがって、染料を添加する場合には、その添加量を極めて低くすることが必要となる。更に、着色が低い場合には、レーザー彫刻法により表面にパターンを形成した際に、パターンコントラストが低くなるという大きな問題があった。
本発明は下記の通りである。
(1)少なくとも1層の感光性樹脂硬化物からなるレーザー彫刻層を有するレーザー彫刻印刷原版であって、該レーザー彫刻層が青色顔料を含有し、該顔料の平均粒子径が5nm以上5μm以下であり、該レーザー彫刻層の最外層の色調が青色であるレーザー彫刻印刷原版。
(2)前記顔料の平均粒子径が10nm以上300nm以下である、上記(1)のレーザー彫刻印刷原版。
(3)前記顔料が、蛍光あるいは燐光を発する発光性化合物である、上記(1)又は(2)のレーザー彫刻印刷原版。
(4)前記顔料が、吸収スペクトルにおいて400nm以下の波長領域にピーク波長を有する、上記(1)〜(3)のいずれかのレーザー彫刻印刷原版。
(5)前記顔料が、フタロシアニン骨格、シアニン骨格、ナフタロシアニン骨格からなる群より選択される少なくとも1種類の分子骨格を有する化合物である、上記(1)〜(5)のいずれかのレーザー彫刻印刷原版。
(6)前記フタロシアニン骨格を有する化合物が中心金属を有する化合物であって、該中心金属が銅、ゲルマニウム、亜鉛、マグネシウム、錫、アルミニウム、インジウム、チタン、ケイ素、コバルト、ニッケル、クロム、パラジウムからなる群より選択される少なくとも1種類の金属イオンである、上記(5)のレーザー彫刻印刷原版。
(7)前記感光性樹脂硬化物が、20℃において液状の感光性樹脂組成物を光硬化させて形成される感光性樹脂硬化物である、上記(1)〜(6)のいずれかのレーザー彫刻印刷原版。
(8)前記レーザー彫刻層と接する下層が、クッション層あるいは支持体である、上記(1)〜(7)のいずれかのレーザー彫刻印刷原版。
(9)前記クッション層が、感光性樹脂硬化物を含み、且つ気泡あるいは有機系微粒子を含有する、上記(8)のレーザー彫刻印刷原版。
(10)前記有機系微粒子が中空マイクロカプセルであって、該中空マイクロカプセルの表面に無機系微粒子が付着している、上記(9)のレーザー彫刻印刷原版。
(11)前記クッション層と前記レーザー彫刻層が直接接着した円筒状積層体であって、該クッション層と該レーザー彫刻層が継ぎ目を有しない、上記(8)〜(10)のいずれかのレーザー彫刻印刷原版。
(12)前記クッション層の密度が0.1g/cm3以上0.9g/cm3以下である、上記(8)〜(11)のいずれかのレーザー彫刻印刷原版。
(13)前記支持体が中空円筒状支持体である、上記(8)のレーザー彫刻印刷原版。
(14)前記中空円筒状支持体が、繊維強化プラスチック、フィルム強化プラスチック、金属からなる群より選択される少なくとも1種類の材料を構成成分とする中空円筒状支持体である、上記(13)のレーザー彫刻印刷原版。
(15)上記(1)〜(14)のいずれかのレーザー彫刻印刷原版にレーザー光が照射されて、レーザー光が照射された部分が除去されて凹パターンが形成されているレーザー彫刻印刷版。
(16)前記レーザー光の発振波長150nm以上15μm以下である、上記(15)のレーザー彫刻印刷版。
(17)上記(1)〜(14)のいずれかのレーザー彫刻印刷原版を製造するための感光性樹脂組成物であって、該感光性樹脂組成物が数平均分子量1000以上30万以下の樹脂(a)、数平均分子量1000未満で分子内に重合性不飽和基を有する有機化合物(b)、平均粒子径5nm以上5μm以下の青色顔料を含有するレーザー彫刻印刷原版用感光性樹脂組成物。
(18)前記顔料が前記有機化合物(b)中に微分散処理されたものであって、該微分散処理が超音波分散法、高速撹拌分散法、高速せん断力分散法、ビーズミル分散法からなる群より選択される少なくとも1種類の方法である、上記(17)のレーザー彫刻印刷原版用感光性樹脂組成物。
(19)前記感光性樹脂組成物が20℃において液状感光性樹脂組成物であって、且つ前記青色顔料が銅フタロシアニンである、上記(17)又は(18)のレーザー彫刻印刷原版用感光性樹脂組成物。
(20)前記青色顔料の平均粒子径が、10nm以上300nm以下である、上記(17)〜(19)のいずれかのレーザー彫刻印刷原版用感光性樹脂組成物。
本発明の印刷原版は、少なくとも1層の感光性樹脂硬化物からなるレーザー彫刻層を有するレーザー彫刻印刷原版であって、該レーザー彫刻層が顔料を含有し、前記レーザー彫刻層の最外層の色調が青色である。レーザー彫刻層の最外層の色調が青色であることは、添加する顔料の色も青色であることを意味する。
色調は、CIE(国際照明委員会)表色系において、xyz色度図を基に定義する。すなわち、xy色度図のxy座標(x、y)で、(0.04、0.34)、(0.07、0.2)、(0.1、0.1)、(0.13、0.05)、(0.19、0.01)、(0.23、0.03)、(0.28、0.06)、(0.3,0.13)、(0.32、0.2)、(0.3、0.24)、(0.26、0.3)、(0.2、0.33)、(0.12、0.34)、(0.04、0.34)の各点を順に線で結んで囲まれる領域を本発明の青色と定義する。
本発明で用いる顔料は青色顔料である。平均粒子径は5nm以上5μm以下である。より好ましくは5nm以上800nm以下、更に好ましくは10nm以上300nm以下である。顔料の平均粒子径がこの範囲であれば、感光性樹脂組成物を厚膜で光硬化させることが可能である。感光性樹脂硬化物層中に分散した顔料の平均粒子径は、感光性樹脂硬化物層を深さ方向に切断した切片を高分解能走査型電子顕微鏡あるいは透過型電子顕微鏡で観察することにより求めることとする。顔料粒子がモニター画面に100個程度入る倍率で、撮影した写真を基に測長する方法やカメラからの信号をデジタル処理して画像解析ソフトウエアーを用いて処理する方法などを挙げることができる。また、感光性樹脂組成物中に分散した顔料粒子の場合、特に粘度の高い分散液や室温で固体状物であるものの中に分散されている顔料をレーザー散乱法で測定することが難しいので、そのような場合は、感光性樹脂組成物を光硬化させて上記と同様にして測定することが好ましい。
青色顔料は、感光性樹脂組成物の厚膜状態での光硬化性の点から、吸収スペクトルにおいて400nm以下の波長領域にピーク波長を有することが好ましい。
レーザー彫刻層を形成する感光性樹脂組成物は、数平均分子量1000以上30万以下の樹脂(a)、数平均分子量1000未満で分子内に重合性不飽和基を有する有機化合物(b)、平均粒子径5nm以上5μm以下の青色顔料を含有することが好ましい。数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて示差屈折計あるいは紫外可視分光光度計を用いてモニターすることができる。更に、分子量既知のポリスチレン標準サンプルの値を基準として換算して求めることができる。
青色顔料は、レーザー彫刻層を形成する感光性樹脂組成物で使用する有機化合物(b)が室温で液体の場合には、該有機化合物(b)に分散させて、樹脂(a)等に混合されることが好ましい。また、有機化合物(b)に分散させる処理方法として、超音波分散法、高速撹拌分散法、高速せん断力分散法、ビーズミル分散法から選択される少なくとも1種類の方法を用いることが好ましい。特に、超微粒子に分散させる方法として、高速せん断力分散法が効率の観点から好ましい。例えば、特許第2788010号、特許第3021448号、特許第3412753号、特開平10−337457号、特開2005−144329号に記載の乳化装置を顔料の超微分散処理に用いることができる。前記有機化合物(b)の20℃における粘度は、1mPa・s以上2Pa・s以下が好ましい。より好ましくは1mPa・s以上500mPa・s以下、更に好ましくは1mPa・s以上100mPa・s以下である。顔料の微分散の点から分散媒体の粘度が低い方が、好ましい。
本発明で用いる感光性樹脂組成物は、20℃において固体状であっても液状であっても構わないが、成形性の容易さから、20℃において液状の感光性樹脂組成物であることが特に好ましい。ここで言う液状樹脂とは、容易に流動変形し、かつ冷却により変形された形状に固化できるという性質を有する高分子体を意味し、外力を加えたときに、その外力に応じて瞬時に変形し、かつ外力を除いたときには、短時間に元の形状を回復する性質を有するエラストマーに対する言葉である。
重合性不飽和基を有する有機化合物(b)はその目的に応じて1種若しくは2種以上のものを選択できる。例えば印刷版として用いる場合、印刷インキの溶剤であるアルコールやエステル等の有機溶剤に対する膨潤を押さえるために用いる有機化合物として長鎖脂肪族、脂環族または芳香族の誘導体を少なくとも1種類以上有することが好ましい。
レーザー彫刻層は、上記感光性樹脂組成物に光を照射して硬化させることにより形成される。光としては、紫外線、可視光線の他、電子線、X線等の高エネルギー線を用いることもできる。特に紫外線、可視光線を用いて光硬化させる場合、光重合開始剤を添加することが好ましい。光重合開始剤としては、水素引き抜き型光重合開始剤(d)あるいは/および崩壊型光重合開始剤(e)を添加することが好ましい。
水素引き抜き型光重合開始剤として機能する部位と崩壊型光重合開始剤として機能する部位を同一分子内に有する光重合開始剤(c)の添加量としては、感光性樹脂組成物全体量の0.3wt%以上10wt%以下が好ましく、より好ましくは0.5wt%以上3wt%以下である。添加量がこの範囲であれば、感光性樹脂組成物を大気中で光硬化させた場合であっても、硬化物の機械的物性は充分に確保できる。
有機化合物(b)の割合が、上記の範囲である場合、得られる感光性樹脂硬化物の硬度と引張強伸度のバランスがとりやすく、光硬化時の収縮も小さい範囲に収まり、厚み精度を確保することができる。
本発明で用いる感光性樹脂組成物には用途や目的に応じて重合禁止剤、紫外線吸収剤、滑剤、界面活性剤、可塑剤、香料などを添加することができる。
本発明の印刷原版の形状は特に限定されず、シート状、円筒状いずれでもよい。またレーザー彫刻層はクッション層や支持体上に直接接するように設けられてもよいし、クッション層や支持体上に他の中間層を設けた後設けられていてもよい。
通常はPETやニッケルなどの素材からなるシート状支持体上に成形される場合が多いが、直接印刷機のシリンダー上あるいは中空円筒状支持体に成形することも好ましい。中空円筒状支持体が、繊維強化プラスチック、フィルム強化プラスチック、金属から選択される少なくとも1種類の材料を構成成分とする中空円筒状支持体であることが好ましい。また、ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維等の繊維で強化されたポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等のプラスチック製スリーブ、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルチューブ等の円筒状支持体を具体例として挙げることができる。シート状支持体あるいは円筒状支持体の役割は、感光性樹脂硬化物の寸法安定性を確保することである。したがって、寸法安定性の高いものを選択する必要がある。線熱膨張係数を用いて評価すると、好ましい材料の上限値は100ppm/℃以下、更に好ましくは70ppm/℃以下である。
成形された感光性樹脂組成物層は光照射により架橋せしめ、感光性樹脂硬化物を形成する。また、成型しながら光照射により架橋させることもできる。硬化に用いられる光源としては高圧水銀灯、超高圧水銀灯、紫外線蛍光灯、殺菌灯、カーボンアーク灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ等が挙げることができる。感光性樹脂組成物層に照射される光は、200nmから300nmの波長の光を有することが好ましい。特に水素引き抜き型光重合開始剤は、この波長領域に強い光吸収を有するものが多いため、200nmから300nmの波長の光を有する場合、感光性樹脂硬化物層表面の硬化性を充分に確保することができる。光硬化に用いる光源は、1種類でも構わないが、波長の異なる2種類以上の光源を用いて硬化させることにより、樹脂の硬化性が向上することがあるので、2種類以上の光源を用いることも差し支えない。
前記クッション層は、特に限定せず、熱可塑性エラストマー、光硬化型エラストマー、熱硬化型エラストマー等ゴム弾性を有するものであれば何でも構わない。特にシート状あるいは円筒状印刷版への加工性の観点から、光で硬化する液状感光性樹脂組成物を用い、硬化後にエラストマー化する材料を用いることが簡便であり好ましい。
クッション層は、感光性樹脂硬化物を含み、且つ気泡あるいは有機系微粒子を含有することが好ましい。また、前記有機系微粒子が中空マイクロカプセルであって、該中空マイクロカプセルの表面に無機系微粒子が付着しているものを用いることが好ましい。前記有機系微粒子の平均粒子径が1μm以上500μm以下であることが好ましい。より好ましい範囲は10μm以上300μm以下、更にこのましくは80μm以上200μm以下である。
クッション層に用いる熱可塑性エラストマーの具体例としては、スチレン系熱可塑性エラストマーであるSBS(ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン)、SIS(ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン)、SEBS(ポリスチレン−ポリエチレン/ポリブチレン−ポリスチレン)等、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、シリコン系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。
また、硫黄架橋型ゴム、有機過酸化物、フェノール樹脂初期縮合物、キノンジオキシム、金属酸化物、チオ尿素等の化合物を架橋剤として用いる非硫黄架橋型ゴムでも構わない。
また、発泡ポリウレタン、発泡ポリエチレン等の材質で、独立あるいは連続気泡を層内に有するクッション層であっても構わず、市販品として入手可能なクッション材、クッションテープを使用することもでき、クッション層の片面あるいは両面に接着剤あるいは粘着剤が塗布されたものであっても構わない。
多層化した印刷原版とする場合、シート状支持体あるいは円筒状支持体を設けることも可能であり、その場合前記支持体の位置は、クッション層の下、すなわち印刷基材の最下部、あるいは、感光性樹脂硬化物層とクッション層との間の位置、すなわち印刷基材の中央部、いずれの位置でも構わない。
広く用いられているシランカップリング剤は、基材の表面水酸基との反応性の高い官能基を分子内に有する化合物であり、そのような官能基とは、例えばトリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリクロロシリル基、ジエトキシシリル基、ジメトキシシリル基、ジモノクロロシリル基、モノエトキシシリル基、モノメトキシシリル基、モノクロロシリル基を挙げることができる。また、これらの官能基は分子内に少なくとも1つ以上存在し、基材の表面水酸基と反応することにより基材表面に固定化される。更に本発明のシランカップリング剤を構成する化合物は、分子内に反応性官能基としてアクリロイル基、メタクリロイル基、活性水素含有アミノ基、エポキシ基、ビニル基、パーフルオロアルキル基、及びメルカプト基から選ばれた少なくとも1個の官能基を有するもの、あるいは長鎖アルキル基を有するものを用いることができる。
レーザーによる彫刻は酸素含有ガス下、一般には空気存在下もしくは気流下に実施するが、炭酸ガス、窒素ガス下でも実施できる。彫刻終了後、レリーフ印刷版面にわずかに発生する粉末状もしくは液状の物質は適当な方法、例えば溶剤や界面活性剤の入った水等で洗いとる方法、高圧スプレー等により水系洗浄剤を照射する方法、高圧スチームを照射する方法などを用いて除去しても良い。
レーザー光を照射し凹パターンを形成する彫刻後に、版表面に残存する粉末状あるいは粘性のある液状カスを除去する工程に引き続き、パターンを形成した印刷版表面に波長200nm〜450nmの光を照射する後露光を実施することもできる。表面のタック除去に効果がある方法である。後露光は大気中、不活性ガス雰囲気中、水中のいずれの環境で行っても構わない。用いる感光性樹脂組成物中に水素引き抜き型光重合開始剤が含まれている場合、特に効果的である。更に、後露光工程前に印刷版表面を、水素引き抜き型光重合開始剤を含む処理液で処理し露光しても構わない。また、水素引き抜き型光重合開始剤を含む処理液中に印刷版を浸漬した状態で露光しても構わない。
(1)レーザー彫刻
レーザー彫刻は炭酸ガスレーザー彫刻機(商標:ZED−mini−1000、英国、ZED社製、米国、コヒーレント社製、出力250W炭酸ガスレーザーを搭載、レーザーの発振波長は10.6μm)を用いて行った。彫刻は、網点(120線/インチ、面積率10%)パターンを作成して実施した。彫刻深さは0.55mmとした。
(2)粘度
感光性樹脂組成物あるいは有機化合物(b)の粘度は、B型粘度計(商標、B8H型;日本国、東京計器社製)を用い、20℃で測定した。
(3)数平均分子量の測定
樹脂(a)、有機化合物(b)の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ法(GPC法)を用いて、分子量既知のポリスチレンで換算して求めた。高速GPC装置(日本国、東ソー社製、商標、HLC−8020)とポリスチレン充填カラム(商標:TSKgel GMHXL;日本国、東ソー社製)を用い、テトラヒドロフラン(THF)で展開して測定した。カラムの温度は40℃に設定した。GPC装置に注入する試料としては、樹脂濃度が1wt%のTHF溶液を調製し、注入量10μlとした。また、検出器としては、示差屈折計を用いた。
温度計、攪拌機、還流器を備えた1Lのセパラブルフラスコに旭化成株式会社製ポリカーボネートジオールである、商標「PCDLL4672」(数平均分子量1990、OH価56.4)447.24gとトリレンジイソシアナート30.83gを加え80℃に加温下に約3時間反応させた後、2−メタクリロイルオキシイソシアネート14.83gを添加し、さらに約3時間反応させて、末端がメタアクリル基(分子内の重合性不飽和基が1分子あたり平均約2個)である数平均分子量約10000の樹脂(ア)を製造した。この樹脂は20℃では水飴状であり、外力を加えると流動し、かつ外力を除いても元の形状を回復しなかった。
温度計、攪拌機、還流器を備えた1Lのセパラブルフラスコに旭化成株式会社製ポリカーボネートジオールである、商標「PCDLL4672」(数平均分子量1990、OH価56.4)447.24gとトリレンジイソシアナート30.83gを加え80℃に加温下に約3時間反応させた後、2−メタクリロイルオキシイソシアネート7.42gを添加し、さらに約3時間反応させて、末端がメタアクリル基(分子内の重合性不飽和基が1分子あたり平均約1個)である数平均分子量約10000の樹脂(イ)を製造した。この樹脂は20℃では水飴状であり、外力を加えると流動し、かつ外力を除いても元の形状を回復しなかった。
有機化合物(b)の1成分として、フェノキシエチルメタクリレートを用い、フェノキシエチルメタクリレートを分散媒として、青色顔料である銅フタロシアニン(BASF社製、商標「Heliogen Blue D 6700T」)を超音波ホモジナイザーで分散させ、分散液を調整した。更に、該顔料を分散させた分散液を、超微細分散装置(吉田機械興業社製、商標「ナノマイザーMN II)を用いて平均粒子径が約50nmの超微粒子とした。顔料粒子の平均粒子径は、レーザー散乱型粒度分布計(大塚電子社製、商標「FPAR−1000」)を用いて測定した。銅フタロシアニンを微分散させるために使用した分散媒体であるフェノキシエチルメタクリレートの粘度は、B型粘度計を用いて測定した結果、20℃において、10mPa・sであった。
用いた光重合開始剤の濃度は、ベンゾフェノンが1wt%、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンが0.6wt%とした。
得られた感光性樹脂組成物をPETフィルム上に厚さ1.4mmのシート状に成形し、旭化成株式会社製ALF型213E露光機を用い、大気中でレリーフ面 2000mJ/cm2、バック面1000mJ/cm2の条件で露光し、シート状レーザー彫刻印刷原版を作製した。露光に用いた光は紫外線蛍光灯(ケミカルランプ、中心波長:370nm)と殺菌灯(ジャーミサイダルランプ、中心波長:253nm)の光であった。感光性樹脂組成物は、完全に光硬化していた。深さ方向に切断し、断面の状況を確認したところ、未硬化部分は存在していなかった。
得られたレーザー彫刻印刷原版の表面に、炭酸ガスレーザー彫刻機を用いて凹凸パターンを形成した。得られたパターンのコントラストが良好であった。図1に網点部を顕微鏡で観察した際の写真を示す。
また、レーザー彫刻印刷原版を深さ方向に切断し、ミクロトームを用いて切片サンプルを作製し、透過型電子顕微鏡で観察し撮影した写真を基に解析した結果、顔料粒子の平均粒子径は約50nmであることがわかった。
得られたレーザー彫刻印刷原版表面の色調を分光測色計計(コニカミノルタ社製、商標「CM−2022」)を用いて測定した。CIE(国際照明委員会)表色系のxy色度図において、x=0.1564、y=0.1957の青色であった。
実施例1と同じ感光性樹脂組成物を用いて、円筒状の感光性樹脂硬化物を形成した。直径200mmのエアーシリンダーに、内径が同径で厚さ1.5mmのガラス繊維強化プラスチック製のスリーブを嵌め込み、エアーシリンダーを回転させながら、前記スリーブ上に前記感光性樹脂組成物を厚さ1.4mmにドクターブレードを用いて塗布した。その後、エアーシリンダーを回転させながら、大気雰囲気下でケミカルランプ(中心波長:370nm)および殺菌灯(中心波長:253nm)の光をそれぞれ2000mJ/cm2、500mJ/cm2照射し、厚さ約1.4mmの感光性樹脂硬化物を得た。得られた感光性樹脂硬化物は、表面および内部まで完全に硬化していた。
円筒表面の状態を観察できる顕微鏡(独国、Mサービス社製、商標「Metric Mタイプ」)を用いて網点部を観察した結果、コントラストが良好であった。
また、レーザー彫刻層中に故意に約50μmの大きさの気泡を含有させた場合、高速微小欠陥検査装置(富士オプト社製、商標「SDR50P025−00」)を用いて検査した結果、前記気泡を発見することができた。
実施例1で用いた内側の感光性樹脂硬化物を形成する際に用いた感光性樹脂組成物を窒素ガス中で激しく撹拌し、感光性樹脂組成物中に微細な気泡を形成した。得られた感光性樹脂組成物を実施例2と同じ方法で、ガラス繊維強化プラスチック製スリーブ上に厚さ0.5mmで塗布し、大気雰囲気下で光照射することにより硬化させた。得られた感光性樹脂硬化物の表面および内部は完全に硬化していた。このようにして感光性樹脂硬化物からなるクッション層を形成した。別途、PETフィルム上に形成したクッション層を、PETフィルムから剥離して密度を測定したところ、0.55g/cm3であった。
次に、実施例2と同様に、形成したクッション層の上にレーザー彫刻層を形成し、クッション層を有する円筒状のレーザー彫刻印刷原版を作製した。
実施例1と同じ炭酸ガスレーザー彫刻機を用いて同様の網点パターンを形成した。円筒表面の状態を観察できる顕微鏡(独国、Mサービス社製、商標「Metric Mタイプ」)を用いて網点部を観察した結果、コントラストが良好であった。
樹脂(a)として、樹脂(ア)の代わりに製造例2で作製した樹脂(イ)を用いる以外は、実施例1と同様にして、感光性樹脂組成物を調製した。
得られた感光性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にしてシート状のレーザー彫刻印刷原版を作製した。感光性樹脂組成物は、完全に光硬化していた。深さ方向に切断し、断面の状況を確認したところ、未硬化部分は存在していなかった。
また、実施例1と同じ炭酸ガスレーザー彫刻機を用いて同様の網点パターンを形成した。得られたパターンのコントラストが良好であった。
実施例1で用いた青色顔料を添加しない以外は、実施例1と同じ成分の感光性樹脂組成物を調製し、調整した感光性樹脂組成物を用いて実施1と同様にしてレーザー彫刻印刷原版を形成し、同じく炭酸ガスレーザー彫刻機を用いて実施例1と同様のパターンを形成した。
顕微鏡を用いて網点部を観察したが、コントラストが明確ではなかった。図2に網点部を顕微鏡で観察した際の写真を示す。
実施例1で用いた青色顔料の代わりに青色染料(チバスペシャリティーケミカル社製、商標「Brilliant Blue R」)を同濃度添加する以外は、実施例1と同じ成分の感光性樹脂組成物を調製した。
実施例1と同様にしてレーザー彫刻印刷原版を作製したが、PETフィルムとの界面で光硬化が不十分であった。深さ方向に切断し、断面の状況を観察したところ、PETフィルムとの界面で未硬化の部分が存在することが確認された。
Claims (20)
- 少なくとも1層の感光性樹脂硬化物からなるレーザー彫刻層を有するレーザー彫刻印刷原版であって、該レーザー彫刻層を形成する感光性樹脂組成物が青色顔料を含有し、該顔料の平均粒子径が5nm以上5μm以下であり、該顔料の濃度が感光性樹脂組成物全重量の50ppm以上1000ppm以下であり、該レーザー彫刻層の最外層の色調が青色であるレーザー彫刻印刷原版。
- 前記顔料の平均粒子径が10nm以上300nm以下である請求項1に記載のレーザー彫刻印刷原版。
- 前記顔料が、蛍光あるいは燐光を発する発光性化合物である請求項1又は2に記載のレーザー彫刻印刷原版。
- 前記顔料が、吸収スペクトルにおいて400nm以下の波長領域にピーク波長を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載のレーザー彫刻印刷原版。
- 前記顔料が、フタロシアニン骨格、シアニン骨格、ナフタロシアニン骨格からなる群より選択される少なくとも1種類の分子骨格を有する化合物である請求項1〜5のいずれか一項に記載のレーザー彫刻印刷原版。
- 前記フタロシアニン骨格を有する化合物が中心金属を有する化合物であって、該中心金属が銅、ゲルマニウム、亜鉛、マグネシウム、錫、アルミニウム、インジウム、チタン、ケイ素、コバルト、ニッケル、クロム、パラジウムからなる群より選択される少なくとも1種類の金属イオンである請求項5に記載のレーザー彫刻印刷原版。
- 前記感光性樹脂硬化物が、20℃において液状の感光性樹脂組成物を光硬化させて形成される感光性樹脂硬化物である請求項1〜6のいずれか一項に記載のレーザー彫刻印刷原版。
- 前記レーザー彫刻層と接する下層が、クッション層あるいは支持体である請求項1〜7のいずれか一項に記載のレーザー彫刻印刷原版。
- 前記クッション層が、感光性樹脂硬化物を含み、且つ気泡あるいは有機系微粒子を含有する請求項8に記載のレーザー彫刻印刷原版。
- 前記有機系微粒子が中空マイクロカプセルであって、該中空マイクロカプセルの表面に無機系微粒子が付着している請求項9に記載のレーザー彫刻印刷原版。
- 前記クッション層と前記レーザー彫刻層が直接接着した円筒状積層体であって、該クッション層と該レーザー彫刻層が継ぎ目を有しない請求項8〜10のいずれか一項に記載のレーザー彫刻印刷原版。
- 前記クッション層の密度が0.1g/cm3以上0.9g/cm3以下である請求項8〜11のいずれか一項に記載のレーザー彫刻印刷原版。
- 前記支持体が中空円筒状支持体である請求項8に記載のレーザー彫刻印刷原版。
- 前記中空円筒状支持体が、繊維強化プラスチック、フィルム強化プラスチック、金属からなる群より選択される少なくとも1種類の材料を構成成分とする中空円筒状支持体である請求項13に記載のレーザー彫刻印刷原版。
- 請求項1〜14のいずれか一項に記載のレーザー彫刻印刷原版にレーザー光が照射されて、レーザー光が照射された部分が除去されて凹パターンが形成されているレーザー彫刻印刷版。
- 前記レーザー光の発振波長150nm以上15μm以下である請求項15に記載のレーザー彫刻印刷版。
- 請求項1〜14のいずれか一項に記載のレーザー彫刻印刷原版を製造するための感光性樹脂組成物であって、該感光性樹脂組成物が数平均分子量1000以上30万以下の樹脂(a)、数平均分子量1000未満で分子内に重合性不飽和基を有する有機化合物(b)、平均粒子径5nm以上5μm以下の青色顔料を含有するレーザー彫刻印刷原版用感光性樹脂組成物。
- 前記顔料が前記有機化合物(b)中に微分散処理されたものであって、該微分散処理が超音波分散法、高速撹拌分散法、高速せん断力分散法、ビーズミル分散法からなる群より選択される少なくとも1種類の方法である請求項17に記載のレーザー彫刻印刷原版用感光性樹脂組成物。
- 前記感光性樹脂組成物が20℃において液状感光性樹脂組成物であって、且つ前記青色顔料が銅フタロシアニンである請求項17又は18に記載のレーザー彫刻印刷原版用感光性樹脂組成物。
- 前記青色顔料の平均粒子径が、10nm以上300nm以下である請求項17〜19のいずれか一項に記載のレーザー彫刻印刷原版用感光性樹脂組成物。
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