JP5430899B2 - レーザー彫刻印刷原版及びレーザー彫刻印刷版 - Google Patents

レーザー彫刻印刷原版及びレーザー彫刻印刷版 Download PDF

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Description

本発明は、レーザー彫刻によりパターン形成される印刷原版又は印刷版の製造に好適な硬化性樹脂組成物に関するものである。
従来から、フレキソ印刷、ドライオフセット印刷、レタープレス印刷といった樹脂凸版を用いた印刷、又はエンボス加工等の表面加工において、写真製版技術によって露光・現像工程を経てパターンを形成する方法、又はレーザー光を照射して照射された部分の樹脂が除去されることにより表面に凹凸パターンを形成するレーザー彫刻法が用いられている。
レーザー彫刻法に適用される材料としては、加硫ゴム、感光性樹脂組成物を光硬化させて得られる感光性樹脂硬化物、熱硬化性樹脂組成物を熱処理により硬化させたものが用いられている。特に、近年、処理時間の短縮の観点から、感光性樹脂組成物を光硬化させて得られる感光性樹脂硬化物にレーザー彫刻する技術が増えてきている。この方法は、写真製版技術で必要な現像工程を簡略化できるので、廃棄物を削減できる、又は揮発性溶剤を使用しない等の利点を有し、環境対応技術として期待されている。
特許文献1には、熱可塑性エラストマーを主原料とする感光性樹脂組成物にカーボンブラックを添加したレーザー彫刻印刷原版が開示されている。
特許文献2及び特許文献3には、感光性樹脂組成物に無機多孔質体を含有させることによって、レーザー彫刻時に多量に発生する液状カスの除去を達成している。
特許文献4には、分子内に少なくとも1つのSi−O結合を有し、重合性不飽和基を有しない有機珪素化合物を添加したレーザー彫刻印刷原版が開示されている。
特許文献5には、数平均粒子径が5nm以上100nm以下の超微粒子を含有したレーザー彫刻印刷原版用の液状感光性樹脂組成物が開示されており、レーザー彫刻時に発生する液状彫刻カスの除去性について記載されている。
日本国特許2846954号公報 日本国特許3801592号公報 日本国特許4033863号公報 WO2005/070691号パンフレット WO2008/029777号パンフレット
しかしながら、特許文献1に記載された発明は、カーボンブラック等で黒色化させる方法を用いているため印刷原版の透明性が極めて低く、また、光硬化性が充分でないためレーザー彫刻時に多量の液状カスが発生する問題を抱えている。
特許文献2及び3に記載された発明は、感光性樹脂組成物に添加される微粒子が多孔質であるため、特に、比表面積が極めて大きく、細孔径又は細孔容積が大きな微粒子の場合には、機械的強度に関して改善の余地を残している。
特許文献4に記載された発明は、レーザー彫刻時に発生する液状彫刻カスの除去性に関して課題を有している。
特許文献5に記載された発明は、レーザー彫刻時に発生する彫刻カスに超微粒子が含有され、版面に残存した粉末状彫刻カスが、取り扱いの過程において一部は空気中に浮遊することもあり、発生する彫刻カスの処理に関して改善の余地を残している。
上述したように、従来のレーザー彫刻技術を用いて製造される印刷版において、機械的強度を十分に確保でき、レーザー彫刻時に多量に発生する液状彫刻カスが飛散することなく容易に除去でき、更に、版面に残存する粉末状彫刻カスが大気中に飛散し難い硬化性樹脂組成物が存在していないのが実情である。
上記事情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、レーザー彫刻技術を用いて製造される印刷版において、機械的強度を十分に確保でき、レーザー彫刻時に多量に発生する液状彫刻カスが飛散することなく容易に除去でき、且つ、版面に残存する粉末状彫刻カスが大気中に飛散し難い硬化性樹脂組成物を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、印刷原版又は印刷版製造用の硬化性樹脂組成物であって、数平均分子量1000以上30万以下の樹脂(a)100質量部に対し、数平均分子量が1000未満で重合性不飽和基を有する有機化合物(b)10〜500質量部、数平均粒子径が0.1μm以上10μm以下のシリコーン微粒子(c)0.5〜50質量部を含有し、前記シリコーン微粒子(c)が3次元架橋したシロキサン骨格を有し、2級シロキサン結合しているケイ素原子数の、3級シロキサン結合又は4級シロキサン結合しているケイ素原子数に対する比が250以下である、硬化性樹脂組成物が、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下の通りである。
〔1〕
シート状又は円筒状支持体と、
硬化性樹脂組成物を前記シート状又は円筒状支持体上で硬化して得られる厚さ0.1mm以上10mm以下の樹脂硬化物層と、
を備え、
前記硬化性樹脂組成物が、印刷原版又は印刷版製造用の硬化性樹脂組成物であって、
数平均分子量1000以上30万以下の樹脂(a)100質量部に対し、数平均分子量が1000未満で重合性不飽和基を有する有機化合物(b)10〜500質量部、数平均粒子径が0.1μm以上10μm以下のシリコーン微粒子(c)0.5〜50質量部を含有し、
前記シリコーン微粒子(c)が3次元架橋したシロキサン骨格を有し、2級シロキサン結合しているケイ素原子数の、3級シロキサン結合又は4級シロキサン結合しているケイ素原子数に対する比が250以下である、
レーザー彫刻印刷原版。
〔2〕
前記シリコーン微粒子(c)は、熱分解特性において、空気雰囲気下での熱重量分析における重量半減温度が900℃以上である、前項〔1〕記載のレーザー彫刻印刷原版。
〔3〕
前記シリコーン微粒子(c)の真比重が1.05以上1.5以下である、前項〔1〕又は〔2〕記載のレーザー彫刻印刷原版。
〔4〕
前記シリコーン微粒子(c)は、球状微粒子を50%以上含有する、前項〔1〕〜〔3〕のいずれか1項記載のレーザー彫刻印刷原版。
〔5〕
前記シリコーン微粒子(c)の粒子径分布の標準偏差が、数平均粒子径の200%以下である、前項〔1〕〜〔4〕のいずれか1項記載のレーザー彫刻印刷原版。
〔6〕
前記シリコーン微粒子(c)は、トリアルコキシシリル誘導体を縮合させて形成された微粒子である、前項〔1〕〜〔5〕のいずれか1項記載のレーザー彫刻印刷原版。
〔7〕
前記硬化性樹脂組成物が、光重合開始剤を更に含有する、前項〔1〕〜〔6〕のいずれか1項記載のレーザー彫刻印刷原版。
〔8〕
前記硬化性樹脂組成物が、20℃において液状の熱重合開始剤を更に含有する、前項〔1〕〜〔7〕のいずれか1項記載のレーザー彫刻印刷原版。
〔9〕
前記硬化性樹脂組成物が、20℃において液状である、前項〔1〕〜〔8〕のいずれか1項記載のレーザー彫刻印刷原版。
〔10〕
前記円筒状支持体は、厚さ0.1mm以上2mm以下の中空円筒状支持体であって、
前記中空円筒状支持体は、繊維強化プラスチック製スリーブ又は金属製スリーブである、前項〔1〕〜〔9〕のいずれか1項記載のレーザー彫刻印刷原版。
〔11〕
前記シート状又は円筒状支持体と、前記樹脂硬化物層との間にクッション層を更に備える、前項〔1〕〜〔10〕のいずれか1項記載のレーザー彫刻印刷原版。
〔12〕
前項〔1〕〜〔11〕のいずれか1項記載のレーザー彫刻印刷原版の表面に、レーザー彫刻によりパターンが形成されたレーザー彫刻印刷版。
本発明により、レーザー彫刻技術を用いて製造される印刷版において、機械的強度を十分に確保でき、レーザー彫刻時に多量に発生する液状彫刻カスが飛散することなく容易に除去でき、且つ、版面に残存する粉末状彫刻カスが大気中に飛散し難い硬化性樹脂組成物を提供することができる。
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記優れた特性を有しているため、レーザー彫刻によりパターン形成される印刷原版又は印刷版の製造に好適に用いることができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、本実施の形態)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施の形態の硬化性樹脂組成物は、印刷原版又は印刷版製造用の硬化性樹脂組成物であって、数平均分子量1000以上30万以下の樹脂(a)100質量部に対し、数平均分子量が1000未満で重合性不飽和基を有する有機化合物(b)10〜500質量部、数平均粒子径が0.1μm以上10μm以下のシリコーン微粒子(c)0.5〜50質量部を含有し、前記シリコーン微粒子(c)が3次元架橋したシロキサン骨格を有し、2級シロキサン結合しているケイ素原子数の、3級シロキサン結合又は4級シロキサン結合しているケイ素原子数に対する比が250以下である。
[シリコーン微粒子(c)]
本実施の形態の硬化性樹脂組成物に含まれるシリコーン微粒子(c)は、3次元架橋したシロキサン骨格を有し、3級及び/又は4級シロキサン結合を有する化合物から形成されるものである。ここで、3級シロキサン結合とは、ケイ素原子が結合する酸素原子が3個存在するシロキサン結合(下記式(1))と定義され、4級シロキサン結合とは、ケイ素原子が結合する酸素原子が4個存在するシロキサン結合と定義される。
また、2級シロキサン結合とは、ケイ素原子が結合する酸素原子が2個存在するシロキサン結合(下記式(2))と定義される。したがって、2級シロキサン結合には、アルコキシ基が結合した構造(下記式(3))又は水酸基が結合した構造(下記式(4))は含まれないものとする。本実施の形態のシリコーン微粒子が、2級〜4級シロキサン結合をどの程度の割合で有するかは、29Siに着目した29Si−NMR(核磁気共鳴スペクトル法)を用いることによって同定することができる。
Figure 0005430899
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ここで、式(2)〜(4)中のRは、水素原子、置換されていてもよい、アルキル基、フェニル基、メチルスチリル基を示す。
シリコーン微粒子(c)は、2級シロキサン結合しているケイ素原子数の、3級シロキサン結合又は4級シロキサン結合しているケイ素原子数に対する割合が250以下である。より好ましくは50以下、更に好ましくは25以下、特に好ましくは5以下である。2級シロキサン結合しているケイ素原子数の、3級シロキサン結合又は4級シロキサン結合しているケイ素原子数に対する割合が上記範囲であれば、レーザー彫刻のレーザー照射においてシリコーン微粒子が溶融することなく、多量に発生する液状彫刻カスを除去する効果を奏する。2級シロキサン結合しているケイ素原子数の、3級シロキサン結合又は4級シロキサン結合しているケイ素原子数に対する比は、29Si−NMRにおける積分値から算出する。シリコーン微粒子を含有した硬化性樹脂組成物又は樹脂硬化物であっても、29Si−NMRの測定は可能である。
シリコーン微粒子(c)の数平均粒子径は、0.1μm以上10μm以下である。より好ましくは0.3μm以上5μm以下、更に好ましくは0.5μm以上2μm以下である。シリコーン微粒子の数平均粒子径が、0.1μm未満であると、硬化性樹脂組成物に混合する際に飛散が著しく取り扱いが困難となり、10μmを超えると、微細パターン形成時にパターン間に露出して印刷品質に悪影響を及ぼす。
また、シリコーン微粒子(c)は、熱分解特性において、空気雰囲気下での熱重量分析における重量半減温度が900℃以上であることが好ましい。より好ましくは1000℃以上、更に好ましくは1200℃以上である。空気雰囲気下での熱重量分析における重量半減温度が900℃以上であると、レーザー彫刻時に多量に発生する液状彫刻カスを効果的に除去できる。ここで、熱重量分析においては、昇温速度10℃/分の条件で、空気を毎分100mLの流量で流しながら重量減少を測定する。ここで、重量半減温度とは、試料重量が半分になった時の温度を言う。
シリコーン微粒子(c)は、真比重が1.05以上1.5以下であることが好ましい。より好ましくは1.1以上1.4以下、更に好ましくは1.15以上1.35以下である。真比重が上記範囲であれば、3次元架橋が充分となり、レーザー彫刻時に発生する液状彫刻カスが効果的に除去される傾向にある。
シリコーン微粒子(c)は、下記組成式で示されるシルセスキオキサン構造を有することが好ましい。
RSiO1.5
(ここで、Rは、水素原子、フェニル基、メチルスチリル基、アルキル基、又は前記官能基で置換されたケイ素数1〜10のケイ素原子含有基から選ばれる少なくとも1種の官能基であって、1分子中の複数のRは同一でも異なっていてもよい。)
シリコーン微粒子(c)は、球状微粒子を50%以上含有することが好ましく、より好ましくは60%以上、更に好ましくは80%以上含有する。球状微粒子を50%以上含有すると、印刷版としての耐久性が向上する傾向にある。ここで、球状とは、真球状である必要はなく、概ね球形であればよい。シリコーン微粒子の形状観察には、走査型電子顕微鏡を用いることができ、顕微鏡のモニター画面に微粒子が100個程度は入る倍率で観察する。球状の判定基準は、注目する微粒子の縦横寸法比が、1.0〜1.8の範囲にあり、外周部に突起がないこととする。
シリコーン微粒子(c)の粒子径分布の標準偏差は、数平均粒子径の200%以下であることが好ましく、より好ましくは数平均粒子径の100%以下、更に好ましくは80%以下である。粒子径分布の標準偏差が、数平均粒子径の200%以下であると、微細パターン形成の障害となるリスクが低減する。
シリコーン微粒子(c)は、トリハロゲン化シリル誘導体又はトリアルコキシシリル誘導体を縮合させて形成された微粒子であることが好ましく、取り扱いの容易さの観点からは、トリアルコキシシリル誘導体を縮合させて形成された微粒子がより好ましい。トリアルコキシシリル誘導体としては、トリエトキシシリル誘導体、トリメトキシシリル誘導体を好ましい化合物として挙げることができる。具体的には、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシジルプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルスチリルトリエトキシシラン、メチルスチリルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等の化合物を挙げることができる。
[樹脂(a)]
本実施の形態の硬化性樹脂組成物に含まれる樹脂(a)は、数平均分子量1000以上30万以下であり、より好ましくは2000以上20万以下、更に好ましくは5000以上15万以下である。樹脂(a)の数平均分子量が1000以上であると、硬化性樹脂組成物を硬化して得られる樹脂硬化物が強度を保ち、印刷版等の印刷用基材として用いる場合に、繰り返しの使用にも耐え得る。また、樹脂(a)の数平均分子量が30万以下であると、硬化性樹脂組成物の粘度が過度に上昇することなく、シート状又は円筒状樹脂硬化物を作製する際に、加熱押し出し等の複雑な加工方法を必要としなくなる。なお、ここでの数平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定し、分子量既知のポリスチレンで検量し換算した値を言う。
樹脂(a)は、分子内に重合性不飽和基を有していても構わない。樹脂(a)の特に好ましい化合物としては、1分子あたり平均で0.7以上の重合性不飽和基を有するポリマーを挙げることができる。樹脂(a)が1分子あたり平均で0.7以上の重合性不飽和基を有する場合、硬化性樹脂組成物から得られる樹脂硬化物の機械強度に優れ、耐久性も良好で、特に、印刷用基材等として用いる場合に繰り返しの使用にも耐え得る。樹脂硬化物の機械強度を考慮すると、樹脂(a)の重合性不飽和基は1分子あたり0.7以上であることが好ましく、1を超えることがより好ましい。また、1分子あたりの重合性不飽和基数の上限については特に限定しないが、好ましくは20以下である。1分子あたりの重合性不飽和基数が20以下であれば、硬化時の収縮を低く抑えることができ、また、表面近傍でのクラック等の発生も抑制される傾向にある。なお、ここで言う分子内とは、高分子主鎖の末端、高分子側鎖の末端や、高分子主鎖中や側鎖中に直接重合性不飽和基が結合している場合等も含まれる。
樹脂(a)としては、具体的には、下記に示すようなポリマーを骨格として有するものを挙げることができる。骨格となるポリマーの例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリブタジエン、ポリイソプレン等のポリジエン類、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のポリハロオレフィン類、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリアクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル類、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリウレタン、ポリアミド、ポリウレア、ポリイミド等の主鎖にヘテロ原子を有する高分子等からなる群より選ばれる1種若しくは2種以上のものを用いることができる。複数の高分子を用いる場合の形態としては、共重合体又はブレンドのどちらでもよい。
特に、フレキソ印刷版用途のように柔軟なレリーフ画像を必要とする場合には、樹脂(a)として、ガラス転移温度が20℃以下の液状樹脂、より好ましくはガラス転移温度0℃以下の液状樹脂を添加することもできる。このような液状樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリブタジエン、水添ポリブタジエン、ポリイソプレン、水添ポイソプレン等の炭化水素類、アジペート、ポリカプロラクトン等のポリエステル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテル類、脂肪族ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン類、(メタ)アクリル酸及び/又はその誘導体の重合体及びこれらの混合物やコポリマー類が挙げられる。その含有量は、樹脂(a)全体に対して30質量%以上100質量%以下含有することが好ましい。特に、耐候性の観点からは、ポリカーボネート構造を有する不飽和ポリウレタン類が好ましい。
樹脂(a)を構成する化合物に重合性不飽和基を導入する方法としては、例えば、直接、重合性の不飽和基をその分子末端又は分子鎖中に導入する方法を用いることができる。また、別法として、水酸基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、ケトン基、ヒドラジン残基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、環状カーボネート基、エステル基等の反応性基を複数有する化合物に、前記反応性基と結合し得る官能基を複数有する結合剤(例えば、水酸基やアミノ基の場合のポリイソシアネート等)を反応させ、分子量の調節、及び末端の結合性基への変換を行った後に、反応によって得られた化合物と、この化合物の末端結合性基と反応する官能基及び重合性不飽和基を有する化合物とを反応させて、末端に重合性不飽和基を導入する方法等も好適に用いることができる。
また、本実施の形態の硬化性樹脂硬化物をレーザー彫刻用の印刷基材として使用する場合、樹脂(a)としては、熱分解性の高い化合物を使用することが好ましい。そのような化合物としては、例えば、α−メチルスチレン、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、カーボネート結合、カルバメート結合等を分子内に有する化合物等が挙げられる。
熱分解性の指標としては、不活性ガス雰囲気中でサンプルを加熱した際の重量減少を測定した熱重量分析法のデータを用いることができる。樹脂(a)は、重量が半減する時点の温度が、150℃以上450℃以下の範囲であることが好ましい。より好ましい範囲は250℃以上400℃以下であり、更に好ましい範囲は250℃以上380℃以下である。また、樹脂(a)は、熱分解が狭い温度範囲で起こる化合物であることが好ましい。その指標としては、前記熱重量分析において、重量が初期重量の80%に減少する温度と、重量が初期重量の20%に減少する温度との差が、100℃以下であることが好ましい。より好ましくは80℃以下、更に好ましくは60℃以下である。
[有機化合物(b)]
本実施の形態の有機化合物(b)は、ラジカル重合反応又は開環重合反応に関与する重合性不飽和結合を有した化合物であり、樹脂(a)との希釈のし易さの観点から、その数平均分子量は1000未満である。
有機化合物(b)としては、例えば、エチレン、プロピレン、スチレン、ジビニルベンゼン等のオレフィン類、アセチレン類、(メタ)アクリル酸及びその誘導体、ハロオレフィン類、アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類、(メタ)アクリルアミド及びその誘導体、アリルアルコール、アリルイソシアネート等のアリル化合物、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸及びそれらの誘導体、酢酸ビニル類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、シアネートエステル類等が挙げられるが、その種類の豊富さ、価格等の観点から、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステルの誘導体が好ましい。
上記各誘導体としては、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、シクロアルケン基、ビシクロアルケン基等の官能基を有する脂環族化合物、ベンジル基、フェニル基、フェノキシ基、メチルスチリル基、スチリル基等の官能基を有する芳香族化合物、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、テトラヒドロフルフリル基、グリシジル基等の官能基を有する化合物、アルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコール、(アルキル/アリルオキシ)ポリアルキレングリコールやトリメチロールプロパン等の多価アルコールのエステル化合物等が挙げられる。
重合性不飽和基を有する有機化合物(b)は、その目的に応じて1種若しくは2種以上のものを選択できるが、樹脂硬化物を印刷版として用いる場合に、印刷インキの溶剤であるアルコールやエステル等の有機溶剤に対する膨潤を抑えることができるため、長鎖脂肪族、脂環族又は芳香族の誘導体を少なくとも1種以上有することが好ましい。
本実施の形態の硬化性樹脂組成物から得られる樹脂硬化物の機械強度を高める観点からは、有機化合物(b)としては、脂環族又は芳香族置換基を有する化合物を少なくとも1種以上有することが好ましい。この場合、脂環族又は芳香族置換基を有する化合物の含有量は、有機化合物(b)の全体量の20質量%以上100質量%以下であることが好ましく、より好ましくは50質量%以上100質量%以下である。
[硬化性樹脂組成物]
本実施の形態の硬化性樹脂組成物は、上述した樹脂(a)100質量部に対し、有機化合物(b)10〜500質量部、好ましくは10〜100質量部、より好ましくは10〜50質量部含有する。有機化合物(b)の含有量が上記範囲であると、得られる樹脂硬化物の硬度と引張強伸度のバランスがとり易く、硬化時の収縮も小さい範囲に収まり、良好な厚み精度を確保することができる。また、樹脂(a)100質量部に対し、シリコーン微粒子(c)0.5〜50質量部、好ましくは1〜50質量部、より好ましくは5〜30質量部含有する。シリコーン微粒子(c)の含有量が上記範囲であると、機械的強度を十分に確保でき、レーザー彫刻時の液状彫刻カスの除去性を向上させる効果を奏する。
本実施の形態の硬化性樹脂組成物は、20℃において固体状あっても液状であっても構わないい。成形性の容易さの観点からは、20℃において液状であることが好ましい。ここで言う液状とは、容易に流動変形し、且つ、冷却により変形された形状に固化できる性質を意味し、外力を加えたときにその外力に応じて瞬時に変形し、且つ、外力を除いたときには短時間に元の形状を回復する性質に対する言葉である。
ここで、上述した樹脂(a)が20℃において液状の樹脂である場合には、硬化性樹脂組成物も20℃において液状となる。硬化性樹脂組成物は、20℃における粘度が、好ましくは10Pa・s以上10kPa・s以下であり、より好ましくは50Pa・s以上5kPa・s以下である。20℃における粘度が10Pa・s以上であると、硬化性樹脂組成物を硬化して得られる樹脂硬化物の機械的強度が十分となり、硬化性樹脂組成物を円筒状に成形する場合においても形状を保持し、加工し易くなる傾向にある。一方、20℃における粘度が10kPa・s以下であると、常温でも変形し易く、加工が容易となる傾向にある。また、シート状又は円筒状の樹脂硬化物に成形し易く、プロセスも簡便となる傾向にある。
特に、厚み精度の高い円筒状樹脂硬化物を得るためには、円筒状支持体上に液状の硬化性樹脂組成物層を形成する際に、該硬化性樹脂組成物が重力により液ダレ等の現象を起こさないように、粘度を100Pa・s以上、より好ましくは200Pa・s以上、更に好ましくは500Pa・s以上の、比較的粘度の高い硬化性樹脂組成物とすることが望ましい。
[光重合開始剤]
本実施の形態においては、硬化性樹脂組成物に光を照射して硬化することで、レーザー彫刻層を形成することができる。照射する光としては、紫外線、可視光線の他、電子線、X線等の高エネルギー線を用いることもできる。特に、紫外線、可視光線を用いて光硬化させる場合、光重合開始剤を添加することが好ましい。光重合開始剤としては、水素引き抜き型光重合開始剤(d)及び/又は崩壊型光重合開始剤(e)を添加することが好ましい。
水素引き抜き型光重合開始剤(d)としては、特に限定されないが、芳香族ケトンを用いることが好ましい。芳香族ケトンは、光励起により効率良く励起三重項状態になり、この励起三重項状態は周囲の媒体から水素を引き抜いてラジカルを生成する化学反応機構が提案されており、上記反応機構により生成したラジカルが光架橋反応に関与するものと考えられる。本実施の形態で用いる水素引き抜き型光重合開始剤(d)としては、励起三重項状態を経て、周囲の媒体から水素を引き抜いてラジカルを生成する化合物であれば特に限定されない。
上記芳香族ケトンとしては、ベンゾフェノン類、ミヒラーケトン類、キサンテン類、チオキサントン類、アントラキノン類を挙げることができ、これらの群から選ばれる少なくとも1種の化合物を用いることが好ましい。ベンゾフェノン類とは、ベンゾフェノン又はその誘導体を言い、具体的には、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−テトラメトキシベンゾフェノン等が挙げられる。ミヒラーケトン類とは、ミヒラーケトン及びその誘導体を言う。キサンテン類とは、キサンテン及びアルキル基、フェニル基、ハロゲン基で置換されたその誘導体を言う。チオキサントン類とは、チオキサントン及びアルキル基、フェニル基、ハロゲン基で置換されたその誘導体を言い、エチルチオキサントン、メチルチオキサントン、クロロチオキサントン等を挙げることができる。アントラキノン類とは、アントラキノン及びアルキル基、フェニル基、ハロゲン基等で置換されたその誘導体を言う。
水素引き抜き型光重合開始剤(d)の添加量は、硬化性樹脂組成物全体量の0.3質量%以上10質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上5質量%以下である。水素引き抜き型光重合開始剤(d)の添加量が上記範囲であれば、硬化性樹脂組成物を大気中で光硬化させた場合に、硬化物表面の硬化性は充分に確保でき、また、長期保存時に表面にクラック等が発生せず、耐候性が確保される。
崩壊型光重合開始剤(e)とは、光吸収後に分子内で開裂反応が発生して活性なラジカルが生成する化合物を指し、特に限定するものではない。具体的には、ベンゾインアルキルエーテル類、2,2−ジアルコキシ−2−フェニルアセトフェノン類、アセトフェノン類、アシルオキシムエステル類、アゾ化合物類、有機イオウ化合物類、アシルホスフィンオキシド類、ジケトン類等を挙げることができ、これらの群から選ばれる少なくとも1種の化合物を用いることが好ましい。ベンゾインアルキルエーテル類としては、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等を挙げることができる。2,2−ジアルコキシ−2−フェニルアセトフェノン類としては、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン等を挙げることができる。アセトフェノン類としては、アセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン等を挙げることができる。アシルオキシムエステル類としては、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム等を挙げることができる。アゾ化合物としては、アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾニウム化合物、テトラゼン化合物等を挙げることができる。ジケトン類としては、ベンジル、メチルベンゾイルホルメート等を挙げることができる。崩壊型光重合開始剤(e)の添加量は、硬化性樹脂組成物全体量の、好ましくは0.3質量%以上10質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上5質量%以下である。崩壊型光重合開始剤(e)の添加量が上記範囲であれば、硬化性樹脂組成物を大気中で光硬化させた場合に、硬化物内部の硬化性を充分に確保することができる。
また、水素引き抜き型光重合開始剤として機能する部位と崩壊型光重合開始剤として機能する部位を同一分子内に有する化合物を光重合開始剤として用いることもできる。そのような光重合開始剤としては、α−アミノアセトフェノン類を挙げることができ、例えば、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン等の化合物を挙げることができる。
水素引き抜き型光重合開始剤として機能する部位と崩壊型光重合開始剤として機能する部位を同一分子内に有する光重合開始剤の添加量としては、硬化性樹脂組成物全体量の0.3質量%以上10質量%以下が好ましく、より好ましくは0.5質量%以上3質量%以下である。添加量が上記範囲であれば、硬化性樹脂組成物を大気中で光硬化させた場合であっても、硬化物の機械的物性を充分に確保することができる。
[光酸発生剤、光塩基発生剤]
本実施の形態においては、光照射によって酸又は塩基を発生する化合物を光重合開始剤として用いることができる。これらの光重合開始剤は、開環重合反応する官能基を有する化合物、例えば、エポキシ化合物、オキセタン化合物等を開環重合させることができる。
[熱重合開始剤]
本実施の形態においては、硬化性樹脂組成物中に熱重合開始剤を含有していてもよい。熱重合開始剤として好適な化合物は、ラジカル重合反応、開環重合反応に使用できる全ての熱重合開始剤である。ラジカル重合反応に用いられる熱重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物、無機過酸化物、有機珪素過酸化物、ヒドロペルオキシド、アゾ化合物、チオール化合物、フェノール樹脂、アミノ樹脂、ハロゲン化合物、アルデヒド化合物等を挙げることができる。また、開環重合反応に用いられる熱重合開始剤としては、マイクロカプセル中に熱重合開始剤を入れた潜在性熱重合開始剤を選択することが好ましい。
熱重合開始剤は、樹脂(a)又は有機化合物(b)との混合の容易性の観点から、20℃において液状であることが好ましい。
熱重合開始剤の含有量は、硬化性樹脂組成物全体量に対し、0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、より好ましくは0.5質量%以上5質量%以下、更に好ましくは1質量%以上5質量%以下である。熱重合開始剤の含有率が上記範囲であれば、硬化性樹脂組成物を十分に硬化させることができ、熱硬化物の表面の粘着性を低減することが可能となる。
熱重合開始剤の熱安定性は、通常、10時間半減期の温度10h−t1/2の方法によって、即ち、熱重合開始剤の当初の量の50%が10時間後に分解してフリーラジカルを形成する温度で示される。これに関する更なる詳細については、「Encyclopedia of Polymer Science and Engineering」,11巻、1頁以降、John Wiley & Sons,ニューヨーク,1988年、に示されている。
特に好適な熱重合開始剤は、通常、好ましくは少なくとも60℃、より好ましくは少なくとも70℃の10h−t1/2を有する。特に好ましくは80℃〜150℃の10h−t1/2である。
熱重合開始剤としては、熱硬化性の観点及び硬化性樹脂組成物との相溶性の観点から、有機過酸化物が特に好ましい。有機過酸化物の具体例としては、例えば、過オクタン酸t−ブチル、過オクタン酸t−アミル、ペルオキシイソ酪酸t−ブチル、ペルオキシマレイン酸t−ブチル、過安息香酸t−アミル、ジペルオキシフタール酸ジ−t−ブチル、過安息香酸t−ブチル、過酢酸t−ブチル及び2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン等のペルオキシエステル類;例えば、1,1−ジ(t−アミルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブタン及びエチル3,3−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブチレート等のジペルオキシケタール類;例えば、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド及び2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン等のジアルキルペルオキシド類;例えば、ジベンゾイルペルオキシド及びジアセチルペルオキシド等のジアシルペルオキシド類;例えば、t−ブチルヒドロペルオキシド、t−アミルヒドロペルオキシド、ピナンヒドロペルオキシド及びクミルヒドロペルオキシド等のt−アルキルヒドロペルオキシド類等が挙げられる。また、後述する気泡を含有させるクッション層を形成する際に好ましいものとして、アゾ化合物を挙げることができる。アゾ化合物としては、例えば、1−(t−ブチルアゾ)ホルムアミド、2−(t−ブチルアゾ)イソブチロニトリル、1−(t−ブチルアゾ)シクロヘキサンカルボニトリル、2−(t−ブチルアゾ)−2−メチルブタンニトリル、2,2’−アゾビス(2−アセトキシプロパン)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)及び2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)等の化合物が挙げられる。
[微粒子]
本実施の形態の硬化性樹脂組成物には、上述したシリコーン微粒子(c)以外にも、目的に応じて各種無機系微粒子、有機系微粒子、有機無機複合微粒子を添加することができる。これらの微粒子を添加することにより、硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる樹脂硬化物の機械的物性の更なる向上、樹脂硬化物表面の濡れ性改善、又は硬化性樹脂組成物の粘度の調整、樹脂硬化物の粘弾性特性の調整等が可能となる。無機系微粒子又は有機系微粒子の材質としては、特に限定するものではなく公知のものを用いることができる。また、有機無機複合微粒子としては、無機系微粒子の表面に有機物層又は有機系微粒子を形成した微粒子、又は有機系微粒子表面に無機物層又は無機微粒子を形成した微粒子等を挙げることができる。
樹脂硬化物の機械的物性を向上させる目的では、窒化珪素、窒化ホウ素、炭化珪素等の剛性の高い無機系微粒子又はポリイミド等の有機系微粒子を用いることができる。更に、得られた樹脂硬化物の耐溶剤特性を向上させる目的で、無機系微粒子や、使用する溶剤への膨潤特性の良好な材質で形成された有機系微粒子を添加することもできる。
上記微粒子は、数平均粒径が0.01〜100μmであることが好ましい。この数平均粒径の範囲の微粒子を用いた場合、樹脂(a)及び有機化合物(b)との混合を行う際に、粘度の上昇、気泡の巻き込み、粉塵の大量発生等の不都合を生じるおそれが少なく、樹脂硬化物表面への凹凸の発生を抑制することができる。微粒子の数平均粒子径のより好ましい範囲は0.1〜20μmであり、更に好ましい範囲は1〜10μmである。本実施の形態の微粒子の数平均粒子径は、レーザー散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定した値を言う。
上記微粒子の粒子形状としては特に限定されず、球状、扁平状、針状、無定形、又は表面に突起のある粒子等を使用することができる。特に、耐磨耗性の観点からは、球状粒子が好ましい。
また、微粒子の表面をシランカップリング剤、チタンカップリング剤、その他の有機化合物で被覆して表面改質処理を行い、より親水性化又は疎水性化した粒子を用いることもできる。これらの微粒子は1種類若しくは2種類以上のものを選択して用いることができる。
硬化性樹脂組成物中の上記微粒子の含有量は、樹脂(a)100質量部に対して、好ましくは1〜100質量部、より好ましくは2〜50質量部、更に好ましくは2〜20質量部である。
その他、本実施の形態の硬化性樹脂組成物には、用途や目的に応じて重合禁止剤、紫外線吸収剤、滑剤、界面活性剤、可塑剤、香料等を添加することができる。
[レーザー彫刻印刷原版の作製]
本実施の形態のレーザー彫刻印刷原版は、シート状又は円筒状支持体と、硬化性樹脂組成物を前記シート状又は円筒状支持体上で硬化して得られる厚さ0.1mm以上10mm以下の樹脂硬化物層と、を備える。
本実施の形態の硬化性樹脂組成物をシート状若しくは円筒状に成形する方法は、既存の樹脂の成形方法を用いることができ、例えば、注型法、ポンプや押し出し機等の機械で樹脂をノズルやダイスから押し出し、ブレードで厚みを合わせる、ロールによりカレンダー加工して厚みを合わせる方法、スプレー等を用いて噴霧する方法等が挙げられる。その際、硬化性樹脂組成物の熱分解を起こさない範囲で加熱しながら成形を行うことも可能である。また、必要に応じて圧延処理、研削処理等をほどこしてもよい。
[シート状又は円筒状支持体]
シート状支持体としては、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンチオエーテル等のプラスチックや、ニッケル、アルミニウム、鉄等の金属を挙げることができる。シート状支持体の厚さは、50μm以上500μm以下が好ましく、より好ましくは100μm以上200μm以下である。
本実施の形態の円筒状支持体は、金属製、ゴム製、プラスチック製シリンダーや、プラスチック製、金属製、繊維強化プラスチック製スリーブ、フィルム強化プラスチック製スリーブ等の中空円筒状支持体であることが好ましい。取り扱い、重量の観点からは、繊維強化プラスチック製の中空円筒状支持体であることがより好ましい。また、繊維強化プラスチックは、ガラス繊維、ポリアミド繊維、ポリイミド繊維、ポリエステル繊維、ポリウレタン繊維、セルロース繊維、炭素繊維、金属繊維、セラミックス繊維から選択される少なくとも1種の繊維を含有することが好ましい。円筒状支持体の厚さは、0.1mm以上2mm以下であることが好ましく、より好ましくは0.3mm以上1.5mm以下、更に好ましくは0.4mm以上0.8mm以下である。円筒状支持体の厚さが上記範囲であれば、機械的強度を充分に確保でき、軽量化も達成できる。
[光硬化]
支持体上に成形された硬化性樹脂組成物層を光照射により架橋させて、樹脂硬化物層を形成することができる。また、成型しながら光照射により架橋させることもできる。硬化に用いられる光源としては、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、紫外線蛍光灯、殺菌灯、カーボンアーク灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ等が挙げられる。感光性樹脂組成物層に照射される光は、200nmから300nmの波長の光を有することが好ましい。特に、水素引き抜き型光重合開始剤は、この波長領域に強い光吸収を有するものが多いため、200nmから300nmの波長の光を有する場合、感光性樹脂硬化物層表面の硬化性を充分に確保することができる。光硬化に用いる光源は、1種でも構わないが、波長の異なる2種以上の光源を用いて硬化させることにより樹脂の硬化性が向上することがあるので、2種類以上の光源を用いることもなんら差し支えない。
[熱硬化]
また、支持体上に形成された硬化性樹脂組成物を加熱することによって、樹脂硬化物を形成することができる。加熱方法としては、赤外線を照射する方法、オーブン等で加熱した雰囲気に曝す方法、加熱した金属等の物体と接触する方法等を挙げることができる。加熱温度は、熱重合開始剤の種類によって異なる。
[クッション層]
本実施の形態においては、シート状又は円筒状支持体と、樹脂硬化物層の間にエラストマーからなるクッション層を形成することもできる。樹脂硬化物層の厚さは0.05〜10mmであり、それ以外の下部層は組成の異なる材料であっても構わない。クッション層としては、ショアA硬度が10以上70度以下、又はASKER−C型硬度計で測定したASKER−C硬度が20度以上85度以下のエラストマー層であることが好ましい。ショアA硬度が10度以上又はASKER−C硬度が20度以上である場合には、適度に変形するため、印刷品質を確保することができる。また、ショアA硬度が70度以下又はASKER−C硬度が85度以下である場合には、クッション層としての役割を果たすことができる。より好ましいショアA硬度の範囲は20〜60度、ASKER−C硬度では45〜75度の範囲である。ショアA硬度とASKER−C硬度は、クッション層に使用する材質により使い分けることが好ましい。2種類の硬度の違いは、測定に用いる硬度計の押針形状の違いに由来する。硬度の指標としては、均一な樹脂組成の場合にはショアA硬度を用いることが好ましく、発泡ポリウレタン、発泡ポリエチレン等の発泡性基材のように不均一な樹脂組成の場合にはASKER−C硬度を用いることが好ましい。ASKER−C硬度は、JIS K7312規格に準拠する測定法である。
前記クッション層としては、熱可塑性エラストマー、光硬化型エラストマー、熱硬化型エラストマー等、ゴム弾性を有するものであれば特に限定されない。特に、シート状又は円筒状印刷版への加工性の観点から、光で硬化する液状感光性樹脂組成物であって、硬化後にエラストマー化する材料を用いることが簡便であり好ましい。
クッション層は、感光性樹脂硬化物を含み、且つ、気泡又は有機系微粒子を含有することが好ましい。また、前記有機系微粒子が中空マイクロカプセルであって、該中空マイクロカプセルの表面に無機系微粒子が付着しているものを用いることが好ましい。前記有機系微粒子の平均粒子径は、1μm以上500μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以上300μm以下、更に好ましくは80μm以上200μm以下である。
クッション層の密度は、0.1g/cm3以上0.9g/cm3以下であることが好ましく、より好ましくは0.3g/cm3以上0.7g/cm3以下、更に好ましくは0.4g/cm3以上0.6g/cm3以下である。クッション層の密度が上記範囲であれば、印刷工程においてレーザー彫刻層にかかる衝撃を充分に吸収することができる。
クッション層に用いる熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン系熱可塑性エラストマーであるSBS(ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン)、SIS(ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン)、SEBS(ポリスチレン−ポリエチレン/ポリブチレン−ポリスチレン)等、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、シリコン系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。
クッション層に用いる光硬化型エラストマーとしては、例えば、上記熱可塑性エラストマーに光重合性モノマー、可塑剤及び光重合開始剤等を混合したもの、液状樹脂に光重合性モノマー、光重合開始剤等を混合した液状感光性樹脂組成物等を挙げることができる。本実施の形態においては、微細パターンの形成機能が重要な要素である感光性樹脂組成物の設計思想とは異なり、光を用いて微細なパターンの形成を行う必要がなく、全面露光により硬化させることにより必要な機械的強度を確保できればよいため、材料の選定において自由度が極めて高い。
また、クッション層としては、硫黄架橋型ゴム、有機過酸化物、フェノール樹脂初期縮合物、キノンジオキシム、金属酸化物、チオ尿素等の化合物を架橋剤として用いる非硫黄架橋型ゴムでも構わない。更に、テレケリック液状ゴムを反応する硬化剤を用いて3次元架橋させてエラストマー化したものを使用することもできる。
また、クッション層としては、発泡ポリウレタン、発泡ポリエチレン等の材質で、独立又は連続気泡を層内に有するクッション層であってもよく、市販品として入手可能なクッション材、クッションテープを使用することもできる。また、クッション層の片面又は両面に接着剤や粘着剤が塗布されたものであっても構わない。
[レーザー彫刻]
本実施の形態の硬化性樹脂組成物を用いて得られたレーザー彫刻印刷原版の表面に、レーザー彫刻によりパターンを形成してレーザー彫刻印刷版を製造することができる。レーザー彫刻法においては、形成したい画像をデジタル型のデータとしてコンピューターを利用してレーザー装置を操作し、印刷原版にレリーフ画像を作成する。レーザー彫刻に用いるレーザーは、原版が吸収を有する波長を含むものであればどのようなものを用いてもよいが、彫刻を高速度で行うためには出力の高いものが望ましく、炭酸ガスレーザーやYAGレーザー、半導体レーザー等の赤外線又は赤外線放出固体レーザー等が好ましい。また、可視光線領域に発振波長を有するYAGレーザーの第2高調波、銅蒸気レーザー、紫外線領域に発振波長を有する紫外線レーザー、例えば、エキシマレーザー、第3又は第4高調波へ波長変換したYAGレーザーは、有機分子の結合を切断するアブレージョン加工が可能であり、微細加工に適する。また、レーザーは連続照射でも、パルス照射でもよい。
レーザーによる彫刻は、酸素含有ガス下、一般には空気存在下若しくは気流下に実施するが、炭酸ガス、窒素ガス下でも実施できる。彫刻終了後、レリーフ印刷版面にわずかに発生する粉末状若しくは液状の物質は、適当な方法、例えば、溶剤や界面活性剤の入った水等で洗いとる方法、高圧スプレー等により水系洗浄剤を照射する方法、高圧スチームを照射する方法等を用いて除去することができる。
また、レーザー光を照射して凹パターンを形成する彫刻後に、版表面に残存する粉末状又は粘性のある液状カスを除去する工程に引き続き、パターンを形成した印刷版表面に波長200nm〜450nmの光を照射する後露光を実施することもできる。この方法は、表面のタック除去に効果がある。後露光は、大気中、不活性ガス雰囲気中、水中のいずれの環境で行っても構わない。用いる硬化性樹脂組成物中に水素引き抜き型光重合開始剤が含まれている場合には特に効果的である。更に、後露光工程前に、印刷版表面を水素引き抜き型光重合開始剤を含む処理液で処理し露光しても構わない。また、水素引き抜き型光重合開始剤を含む処理液中に印刷版を浸漬した状態で露光しても構わない。
[写真製版]
本実施の形態の硬化性樹脂組成物が感光性樹脂組成物である場合には、感光性樹脂組成物を写真製版技術により部分的に光硬化させてパターンを形成することで、樹脂凸版印刷版を製造することができる。写真製版技術は、露光工程と現像工程を有する。露光工程では、ガラス製又はプラスチックフィルム製の露光マスクを通して紫外線を照射することにより光が照射された部分の樹脂組成物が光硬化し、現像液に不溶化する。近年の技術として、露光マスクを使用しないでレーザーで直接描画し光硬化させるダイレクトイメージング法も利用することができる。また、シート状感光性樹脂組成物の場合には、表面にカーボンブラックを高濃度に含有する薄膜層が積層された構成体において、該黒色薄膜層を近赤外線レーザーでアブレーション加工することで、該黒色薄膜を露光マスクとして使用するデジタル化技術を用いることもできる。
現像工程では、光が照射されていない未硬化部分を、現像液に溶解又は分散させることによって除去する。現像液は、揮発性溶剤又は水系現像液を用いることができる。また、未硬化部を加熱することによって液状化させ、不織布等と接触させて吸収除去する熱現像法も用いることができる。
[用途]
本実施の形態の硬化性樹脂組成物の用途は、厚膜に光硬化させる必要のあるものであれば、特に限定するものではないが、レーザー彫刻により表面に凹凸パターンを形成するフレキソ印刷原版用シート又はロール、グラビア印刷用シート又はロール、又はレーザー光を照射して貫通した孔状パターンを形成するスクリーン印刷用シート又はロータリースクリーン、孔版印刷用原版材料、オフセット印刷法で用いられるブランケット、アニロックスロールに接して用いられるインキ量調整用ロール、印刷用クッションロール、インクジェットプリンター、レーザープリンター、複写機等に搭載されているロール等の印刷基材、又は3次元立体成形等の用途として用いることができる。
ドライオフセット印刷においてインキが脂肪族炭化水素及び/又は芳香族炭化水素を含む場合、シート状樹脂にポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体を含有することが好ましい。これらの樹脂材料は、上記の溶剤に対する耐性を有するため好ましい。上記脂肪族炭化水素としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、ジペンテン、ゴム揮発油、ミネラルスピリット、高沸点石油溶剤(インキオイル)等の化合物を挙げることができる。また、芳香族炭化水素としては、トルエン、キシレン、ジメチルベンゼン、ジクロロベンゼン、ソルベントナフタ、テトラリン等の化合物を挙げることができる。
本実施の形態のレーザー彫刻印刷版を用いて、電子素子の導体、半導体、絶縁体の形成、又は光学素子の形成を、印刷により実施することができる。電子素子としては、例えば、有機電界発光素子、有機太陽電池、有機半導体、アンテナ回路、液晶ディスプレイ素子、プラズマ発光素子等を挙げることができる。また、光学素子としては、例えば、マイクロレンズアレイ、光導波路等を挙げることができる。
本実施の形態を更に詳細に説明するために、以下に、実施例及び比較例を示すが、これらの実施例は本実施の形態の説明及びそれによって得られる効果等を具体的に示すものであって、本実施の形態を何ら制限するものではない。なお、以下の実施例及び比較例における各特性は、下記の方法に従って測定した。
[測定方法]
(1)レーザー彫刻
レーザー彫刻は炭酸ガスレーザー彫刻機(商標:ZED−mini−1000、英国、ZED社製、米国、コヒーレント社製、出力250W炭酸ガスレーザーを搭載、レーザーの発振波長は10.6μm)を用いて行った。彫刻は、網点(120線/インチ、面積率10%)パターンを作成して実施した。彫刻深さは0.55mmとした。
(2)粘度
硬化性樹脂組成物又は有機化合物(b)の粘度は、B型粘度計(商標、B8H型;日本国、東京計器社製)を用い、20℃で測定した。
(3)数平均分子量の測定
樹脂(a)、有機化合物(b)の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ法(GPC法)を用いて、分子量既知のポリスチレンで換算して求めた。高速GPC装置(日本国、東ソー社製、商標、HLC−8020)とポリスチレン充填カラム(商標:TSKgel GMHXL;日本国、東ソー社製)を用い、テトラヒドロフラン(THF)で展開して測定した。カラムの温度は40℃に設定した。GPC装置に注入する試料としては、樹脂濃度が1質量%のTHF溶液を調製し、注入量10μLとした。また、検出器としては、示差屈折計を用いた。
(4)29Si−NMR(核磁気共鳴スペクトル)測定
シリコーン微粒子の2級シロキサン結合の3級及び4級シロキサン結合に対する比率は、29Si−NMR測定によって求めた。シリコーン微粒子の29Si−NMR測定は、Bruker社製、商標「Biospin DSX400」を用いて実施した。観測核:29Si、観測周波数:79.49MHz、積算回数:2400回、パルス幅:4.5μ秒、待ち時間:30秒、MAS(マジック角回転速度):3500Hz、マジックアングルスピニング:5000Hz、パルスプログラム:hpdec(ハイパワーデカップリング)、サンプル管径:7mmΦの条件で測定を行った。化学シフトの外部基準を、ジメチルシリコーンゴムを別途測定し、得られた1本のピークを−22ppmとした。
(5)シリコーン微粒子の熱重量分析
シリコーン微粒子の熱重量分析は、セイコーインスツルメント社製、商標「TG/DTA320」を用いた。昇温速度は10℃/分、空気を毎分100mLの流量で流しながら重量減少を測定した。加熱温度の上限は900℃とした。
(6)シリコーン微粒子の真比重
シリコーン微粒子の真比重は、液体ピクノメータ法を用いて行った。浸漬する液体はエタノールとした。
(7)シリコーン微粒子の数平均粒子径及び粒子径分布測定
シリコーン微粒子の数平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(キーエンス社製、商標「VE−9800」)で観察した画像データを基に、画像解析によって測定した。画面上にシリコーン微粒子が100個程度は入る倍率で観察し、粒子が完全に入る最小円の径を微粒子の粒子径とした。粒子径分布における標準偏差は、微粒子1000個程度のデータを基に算出した。
(実施例1)
[樹脂(a)の製造]
温度計、攪拌機、還流器を備えた1Lのセパラブルフラスコに、旭化成株式会社製ポリカーボネートジオールである商標「PCDL L4672」(数平均分子量1990、OH価56.4)447.24gとトリレンジイソシアナート30.83gを加え、80℃に加温下に約3時間反応させた後、2−メタクリロイルオキシイソシアネート14.83gを添加し、さらに約3時間反応させて、末端がメタアクリル基(分子内の重合性不飽和基が1分子あたり平均約2個)である数平均分子量約10000の樹脂を製造した。この樹脂は20℃では水飴状であり、外力を加えると流動し、かつ外力を除いても元の形状を回復しなかった。
樹脂(a)として、上記のように作製した樹脂100質量部、有機化合物(b)として、フェノキシエチルメタクリレート(分子量190)20質量部及びポリプロピレングリコールモノメタクリレート(分子量400)10質量部、シリコーン微粒子(c)(信越化学工業社製、商標「X−52−854」、数平均粒子径:0.8μm、真比重:1.3、粒子径分布の標準偏差:1.2μm、球状粒子の存在比率:95%)10質量部、光重合開始剤としてベンゾフェノン0.5質量部及び2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン0.6質量部、安定剤として2,6−ジ−t−ブチルアセトフェノン0.5質量部を混合して硬化性樹脂組成物を調製した。得られた硬化性樹脂組成物は、20℃において液状であった。また、B型粘度計を用いて測定した粘度は、20℃において、1000Pa・sであった。
シリコーン微粒子(c)の熱重量分析の結果、重量半減温度は、900℃を超えて高いものであった。900℃においては10%しか重量が減少していなかった。シリコーン微粒子の3級シロキサン結合しているケイ素原子数を100とすると2級シロキサン結合しているケイ素原子数は検出限界以下であったので、2級シロキサン結合しているケイ素原子数の3級シロキサン結合しているケイ素原子数に対する比は、ほぼ0であった。シリコーン微粒子の粒子径分布における標準偏差は、数平均粒子径の150%であった。
ガラス板上に設置した、易接着処理された厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)上に光硬化性接着剤を厚み20μmで塗布し、その上に、上記で作製した液状の硬化性樹脂組成物を厚み1.1mmで塗布し、上下からケミカルランプ(蘭国、フィリップス社製、商標「10R」)の紫外線を4000mJ/cm2照射してシート状樹脂硬化物を得た。
シート状樹脂硬化物を、炭酸ガスレーザー彫刻機のシリンダーに固定し、画像パターンを形成した。レーザー彫刻時に発生する彫刻カスは、粉末状であった。
得られた印刷版を、ガラス基板上に印刷できる精密印刷機(日本電子精機社製、商標「JSC−m60.60−M」)を用いて、銀ナノペースト(ハリマ化成社製、商標「NPS−J」)を印刷し厚さ約2μmの導電体パターンを得た。
(実施例2)
実施例1で作製した液状硬化性樹脂組成物を用いた。厚さ0.45mmのガラス繊維で強化されたエポキシ樹脂製スリーブをエアーシリンダーに装着し、その上に光硬化性接着剤層を厚さ0.2mmで塗布し、その上に実施例1で作製した液状硬化性樹脂組成物を厚さ1.3mmで積層し、メタルハライドランプ(米国フュージョン社製、商標「F450V型UVランプ」)からの紫外線を4000mJ/cm2(波長350nmにおける積算光量)照射し、全面を光硬化させた。その後、表面粗度Raが0.5μmとなるように研削・研磨により表面調整を行い、円筒状印刷原版を作製した。樹脂硬化物の表面タックは極めて低く、表面の研削・研磨は非常に容易に実施することができた。
得られた円筒状印刷原版に、実施例1と同様に、炭酸ガスレーザー彫刻機で表面に画像パターンを形成した。レーザー彫刻時に発生した彫刻カスは、粉末状であった。版面に残存した粉末状彫刻カスは、円筒を机の上で振動させた程度では空気中に飛散するものではなかった。
得られた円筒状印刷版を、実施例1で用いた精密印刷機のエアーシリンダーに装着し、フルオレン骨格を有する数平均分子量10000のポリマーを主成分とし、酢酸エチル/イソプロピルアルコールを溶剤として含有する液状感光性樹脂をインキとして用い、ガラス基板上に印刷を行い、溶剤成分を乾燥除去することにより、ガラス基板上に厚み15μmの円形パターンを得た。更に、加熱することによって印刷した感光性樹脂を溶融させ、曲面を有するパターンに変形させた。その後、光硬化させることによってマイクロレンズパターンを得ることができた。
(実施例3)
シリコーン微粒子(c)を、信越化学工業社製、商標「X−52−1621」としたこと以外は実施例1と同様の方法により、液状硬化性樹脂組成物を作製した。用いたシリコーン微粒子は、数平均粒子径:5μm、真比重:1.3、粒子径分布の標準偏差:1.5μm、球状粒子の存在比率:95%であった。シリコーン微粒子の熱重量分析の結果、重量半減温度は、900℃を超えて高いものであった。900℃においては10%しか重量が減少していなかった。シリコーン微粒子の3級シロキサン結合しているケイ素原子数を100とすると2級シロキサン結合しているケイ素原子数は検出限界以下であったので、2級シロキサン結合しているケイ素原子数の3級シロキサン結合しているケイ素原子数に対する比は、ほぼ0であった。シリコーン微粒子の粒子径分布における標準偏差は、数平均粒子径の30%であった。
その後、実施例1と同様の方法を用いて、レーザー彫刻を実施した。レーザー彫刻時に発生した彫刻カスは粉末状であった。その後の洗浄工程で、表面に残存していた彫刻カスの除去を行った。
(実施例4)
シリコーン微粒子(c)を、信越化学工業社製、商標「KMP−600」」としたこと以外は実施例1と同様にして、液状硬化性樹脂組成物を作製した。用いたシリコーン微粒子は、数平均粒子径:5μm、真比重:0.99、粒子径分布の標準偏差:3.5μm、球状粒子の存在比率:95%であった。シリコーン微粒子の熱重量分析の結果、重量半減温度は390℃であった。シリコーン微粒子の3級シロキサン結合しているケイ素原子数が3.2に対し、2級シロキサン結合しているケイ素原子数は100であったので、2級シロキサン結合しているケイ素原子数の3級シロキサン結合しているケイ素原子数に対する比は、31.3であった。用いたシリコーン微粒子の粒子径分布における標準偏差は、数平均粒子径の70%であった。
その後、実施例1と同様の方法を用いて、レーザー彫刻を実施した。レーザー彫刻時に発生した彫刻カスは粘着性のあるペースト状であった。その後の洗浄工程で、表面に残存していた彫刻カスの除去を行った。
(実施例5)
シリコーン微粒子(c)を、信越化学工業社製、商標「KMP−597」としたこと以外は実施例1と同様にして、液状硬化性樹脂組成物を作製した。用いたシリコーン微粒子は、数平均粒子径:5μm、真比重:0.97、粒子径分布の標準偏差:1.5μm、球状粒子の存在比率:95%であった。シリコーン微粒子の熱重量分析の結果、重量半減温度は360℃であった。シリコーン微粒子の4級シロキサン結合しているケイ素原子数が0.4に対し、2級シロキサン結合しているケイ素原子数は100であったので、2級シロキサン結合しているケイ素原子数の4級シロキサン結合しているケイ素原子数に対する比は、250であった。3級シロキサン結合しているケイ素原子は検出感度以下であった。シリコーン微粒子の粒子径分布における標準偏差は、数平均粒子径の30%であった。
上記で得られた液状硬化性樹脂組成物を、厚さ1.5mmのガラス繊維強化プラスチックスリーブ上に厚み1.5mmで塗布し、メタルハライドランプ(米国、フュージョン社製、商標「F450V型UVランプ」)から放出される紫外線を4000mJ/cm2(350nmでの積算光量)照射し、円筒状樹脂硬化物を形成した。
その後、実施例1と同様の方法により、炭酸ガスレーザー彫刻機を用いて表面にパターンを形成した。レーザー彫刻時に発生した彫刻カスは、粘着性のあるペースト状であった。版面に残存した彫刻カスは、飛散することはなかった。版面に残存した彫刻カスは、弱アルカリ性水系洗浄液で簡単に除去することができた。
(実施例6)
実施例1で用いた樹脂(a)100質量部、有機化合物(b)として、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(共栄社化学社製、商標「ライトエステルHO」、分子量130)20質量部及び1,3−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ベンゼン(東亜合成社製、商標「RSOX」、分子量306)10質量部、シリコーン微粒子(c)(信越化学工業社製、商標「X−52−854」)5質量部、光酸発生剤としてトリアリールスルホニウムヘキサフルオリン酸塩混合物プロピレンカーボネート50質量%溶液(ユニオンカーバイド社製、商標「UVI−6990」)4質量部、安定剤として2,6−ジ−t−ブチルアセトフェノン0.5質量部を混合して液状硬化性樹脂組成物を調製した。
得られた液状硬化性樹脂組成物を、厚さ1.5mmのガラス繊維強化プラスチックスリーブ上に厚み1.5mmで塗布し、メタルハライドランプ(米国、フュージョン社製、商標「F450V型UVランプ」)から放出される紫外線を4000mJ/cm2(350nmでの積算光量)照射し、円筒状樹脂硬化物を形成した。
その後、実施例1と同様の方法により、炭酸ガスレーザー彫刻機を用いて表面にパターンを形成した。レーザー彫刻時に発生した彫刻カスは、粘着性のあるペースト状であった。版面に残存した彫刻カスは、飛散することはなかった。版面に残存した彫刻カスは、弱アルカリ性水系洗浄液で簡単に除去することができた。
(実施例7)
樹脂(a)として、実施例1で作製した樹脂100質量部、有機化合物(b)として、フェノキシエチルメタクリレート(分子量 206)20質量部及びポリピレングリコールモノメタクリレート(分子量400)10質量部、シリコーン微粒子(c)(信越化学工業社製、商標「X−52−1621」)10質量部、熱重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート(日本油脂株式会社製 商標「パーブチルE」)1質量部を70℃にて混合し、更に、安定剤として2,6−ジ−t−ブチルアセトフェノン0.5質量部を混合して硬化性樹脂組成物を調製した。
得られた硬化性樹脂組成物を、金属板上に固定したPET製カバーフィルム上に、厚み1.5mmで塗布し、その上に厚み50μmのPETフィルムを被せ、更に、その上に金属板を置き、150℃に温調したオーブン中に入れて、20分間加熱してシート状樹脂硬化物を形成した。
得られたシート状樹脂硬化物を、実施例1と同様の方法を用いて、炭酸ガスレーザー彫刻機を用いて表面に画像パターンを形成した。レーザー彫刻時に発生した彫刻カスは、粉末状であった。版面に残存した彫刻カスは、飛散することはなかった。版面に残存した彫刻カスは、弱アルカリ性水系洗浄液で簡単に除去することができた。
(実施例8)
樹脂(a)として、数平均分子量が約10万のスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体100質量部、有機化合物(b)として、ヘキサメチレンジアクリレート(分子量254)10質量部、数平均分子量2000の液状ポリブタジエン15質量部、脂環族炭化水素可塑剤10質量部、実施例5で使用したシリコーン微粒子(c)50質量部、光重合開始剤として2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン0.6質量部、安定剤として2,6−ジ−t−ブチルアセトフェノン0.5質量部を、小容量加圧型ニーダー(モリヤマ社製、商標「D1−5」)を用いて温度150℃で混合し、硬化性樹脂組成物を調製した。得られた硬化性樹脂組成物を2軸押し出し装置(テクノベル社製、商標「KZW−TW」)を用いて、接着剤が表面に薄く塗布されている厚さ188μmのPETフィルム上に、厚さ1.7mmで押し出し、更にシリコーン離型処理した厚み15μmのカバーシートで挟み、シート状の硬化性樹脂組成物を形成した。この硬化性樹脂組成物は、20℃において固体状であった。
作製したシート状硬化性樹脂組成物を、ガラス平板上に設置し、両面からケミカルランプ(蘭国、フィリップス社製、商標「10R」)から放出される紫外線を4000mJ/cm2(350nmでの積算光量)照射し、シート状樹脂硬化物を形成した。
その後、実施例1と同様の方法を用いて、レーザー彫刻を実施した。レーザー彫刻時に発生した彫刻カスは粉末状であった。その後の洗浄工程で、表面に残存していた彫刻カスの除去を行った。
(実施例9)
実施例1と同じ樹脂(a)100質量部、有機化合物(b)として、フェノキシエチルメタクリレート(分子量190)10質量部及びポリプロピレングリコールモノメタクリレート(分子量400)10質量部、シリコーン微粒子(c)(信越化学工業社製、商標「X−52−854」)1質量部、光重合開始剤としてベンゾフェノン0.5質量部及び2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン0.6質量部、安定剤として2,6−ジ−t−ブチルアセトフェノン0.5質量部を混合して硬化性樹脂組成物を調製した。得られた硬化性樹脂組成物は、20℃において液状であった。
その後、実施例1と同様の方法を用いて、レーザー彫刻を実施した。レーザー彫刻時に発生した彫刻カスは粘着性のある粉末状であった。その後の洗浄工程で、表面に残存していた彫刻カスの除去を行った。
(実施例10)
実施例1と同じ樹脂(a)100質量部、有機化合物(b)として、フェノキシエチルメタクリレート(分子量190)10質量部及びポリピレングリコールモノメタクリレート(分子量400)10質量部、シリコーン微粒子(c)(信越化学工業社製、商標「X−52−854」)1質量部及びシリコーン微粒子(c)(信越化学工業社製、商標「KMP−600」)5質量部、光重合開始剤としてベンゾフェノン0.5質量部及び2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン0.6質量部、安定剤として2,6−ジ−t−ブチルアセトフェノン0.5質量部を混合して硬化性樹脂組成物を調製した。得られた硬化性樹脂組成物は、20℃において液状であった。用いた2種類のシリコーン微粒子の混合物からなるシリコーン微粒子の、2級シロキサン結合しているケイ素原子数の3級シロキサン結合しているケイ素原子数に対する比は、25であった。
実施例1と同様の方法で、レーザー彫刻により表面にパターンを形成した。レーザー彫刻時に発生した彫刻カスは、粘着性のある粉末状であった。版面に残存した彫刻カスは、飛散することはなかった。版面に残存した彫刻カスは、5MPaスチームジェットで簡単に除去することができた。
(実施例11)
実施例1と同じ樹脂(a)100質量部、有機化合物(b)としてフェノキシエチルメタクリレート(分子量190)10質量部及びポリピレングリコールモノメタクリレート(分子量400)10質量部、シリコーン微粒子(c)(信越化学工業社製、商標「X−52−854」)0.5質量部、光重合開始剤としてベンゾフェノン0.5質量部及び2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン0.6質量部、安定剤として2,6−ジ−t−ブチルアセトフェノン0.5質量部を混合して硬化性樹脂組成物を調製した。得られた硬化性樹脂組成物は、20℃において液状であった。
実施例1と同様の方法でレーザー彫刻により表面にパターンを形成した。レーザー彫刻時に発生した彫刻カスは、粘着性のあるペースト状であった。版面に残存した彫刻カスは、飛散することはなかった。版面に残存した彫刻カスは、5MPaスチームジェットで簡単に除去することができた。
(実施例12)
実施例1と同じ樹脂(a)100質量部、有機化合物(b)として、フェノキシエチルメタクリレート(分子量190)10質量部及びポリピレングリコールモノメタクリレート(分子量400)10質量部、シリコーン微粒子(c)(信越化学工業社製、商標「X−52−854」)1質量部及びシリコーン微粒子(信越化学工業社製、商標「KMP−600」)5質量部、光重合開始剤としてベンゾフェノン0.5質量部及び2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン0.6質量部、安定剤として2,6−ジ−t−ブチルアセトフェノン0.5質量部を混合して硬化性樹脂組成物を調製した。得られた硬化性樹脂組成物は、20℃において液状であった。用いた2種類のシリコーン微粒子の混合物からなるシリコーン微粒子の、2級シロキサン結合しているケイ素原子数の3級シロキサン結合しているケイ素原子数に対する比は10であった。
実施例1と同様の方法で、レーザー彫刻により表面にパターンを形成した。レーザー彫刻時に発生した彫刻カスは、粉末状であった。版面に残存した彫刻カスは、飛散することはなかった。版面に残存した彫刻カスは、5MPaスチームジェットで簡単に除去することができた。
(実施例13)
実施例1と同じ樹脂(a)100質量部、有機化合物(b)として、フェノキシエチルメタクリレート(分子量190)10質量部及びポリピレングリコールモノメタクリレート(分子量400)10質量部、シリコーン微粒子(c)(信越化学工業社製、商標「X−52−854」)4質量部及びシリコーン微粒子(c)(信越化学工業社製、商標「KMP−597」)1質量部、光重合開始剤としてベンゾフェノン0.5質量部及び2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン0.6質量部、安定剤として2,6−ジ−t−ブチルアセトフェノン0.5質量部を混合して硬化性樹脂組成物を調製した。得られた硬化性樹脂組成物は、20℃において液状であった。用いた2種類のシリコーン微粒子の混合物からなるシリコーン微粒子の、2級シロキサン結合しているケイ素原子数の、3級シロキサン又は4級シロキサン結合しているケイ素原子数に対する比は50であった。
実施例1と同様の方法で、レーザー彫刻により表面にパターンを形成した。レーザー彫刻時に発生した彫刻カスは、粘着性のある粉末状であった。版面に残存した彫刻カスは、飛散することはなかった。版面に残存した彫刻カスは、5MPaスチームジェットで簡単に除去することができた。
(実施例14)
実施例1と同じ樹脂(a)100質量部、有機化合物(b)として、フェノキシエチルメタクリレート(分子量190)10質量部及びポリピレングリコールモノメタクリレート(分子量400)10質量部、シリコーン微粒子(c)(信越化学工業社製、商標「X−52−854」)6質量部及びシリコーン微粒子(c)(信越化学工業社製、商標「KMP−600」)1質量部、光重合開始剤としてベンゾフェノン0.5質量部及び2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン0.6質量部、安定剤として2,6−ジ−t−ブチルアセトフェノン0.5質量部を混合して硬化性樹脂組成物を調製した。得られた硬化性樹脂組成物は、20℃において液状であった。用いた2種類のシリコーン微粒子の混合物からなるシリコーン微粒子の、2級シロキサン結合しているケイ素原子数の3級シロキサン結合しているケイ素原子数に対する比は4.5であった。
実施例1と同様の方法で、レーザー彫刻により表面にパターンを形成した。レーザー彫刻時に発生した彫刻カスは、粉末状であった。版面に残存した彫刻カスは、飛散することはなかった。版面に残存した彫刻カスは、5MPaスチームジェットで簡単に除去することができた。
(実施例15)
実施例1と同じ樹脂(a)100質量部、有機化合物(b)として、フェノキシエチルメタクリレート(分子量190)10質量部及びポリピレングリコールモノメタクリレート(分子量400)10質量部、シリコーン微粒子(c)(信越化学工業社製、商標「X−52−854」)4.85質量部及びシリコーン微粒子(c)(信越化学工業社製、商標「KMP−600」)0.15質量部、光重合開始剤としてベンゾフェノン0.5質量部及び2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン0.6質量部、安定剤として2,6−ジ−t−ブチルアセトフェノン0.5質量部を混合して硬化性樹脂組成物を調製した。得られた硬化性樹脂組成物は、20℃において液状であった。用いた2種類のシリコーン微粒子の混合物からなるシリコーン微粒子の、2級シロキサン結合しているケイ素原子数の3級シロキサン結合しているケイ素原子数に対する比は0.94であった。
実施例1と同様の方法で、レーザー彫刻により表面にパターンを形成した。レーザー彫刻時に発生した彫刻カスは、粉末状であった。版面に残存した彫刻カスは、飛散することはなかった。版面に残存した彫刻カスは、5MPaスチームジェットで簡単に除去することができた。
(比較例1)
実施例1で作製した液状硬化性樹脂組成物からシリコーン微粒子を除いた液状硬化性樹脂組成物を調製した。調製した液状硬化性樹脂組成物を、実施例2と同様にして中空円筒状の繊維強化プラスチック製スリーブ上に塗布し、円途状印刷原版を得た。表面研削、研磨工程では、発生する研削屑が粘着性のため、3倍以上の処理時間を要した。
その後、実施例2と同様にして、レーザー彫刻法によって表面にパターンを形成した。炭酸ガスレーザーによる彫刻時には、液状彫刻カスが多量に発生し、シリンダーの回転に伴い、液状カスが飛散した。
(比較例2)
実施例1で作製した液状硬化性樹脂組成物のシリコーン微粒子を、架橋ポリアクリル酸エステル微粒子(積水化成品工業社製、商標「ARX−30」)に置き換えた液状硬化性樹脂組成物を調製した。実施例1と同様にしてレーザー彫刻用シート状印刷原版を作製した。
その後、炭酸ガスレーザー彫刻機を用いて、表面にパターンを形成した。炭酸ガスレーザーによる彫刻時には、液状彫刻カスが多量に発生し、シリンダーの回転時に液状彫刻カスが飛散した。
(比較例3)
実施例1で作製した液状硬化性樹脂組成物のシリコーン微粒子を、多孔質架橋ポリメタクリル酸メチル微粒子(積水化成品工業社製、商標「MBP−8」)に置き換えた液状硬化性樹脂組成物を調製した。実施例1と同様にしてレーザー彫刻用シート状印刷原版を作製した。
その後、炭酸ガスレーザー彫刻機を用いて、表面にパターンを形成した。炭酸ガスレーザーによる彫刻時には、液状彫刻カスが多量に発生し、シリンダーの回転時に液状彫刻カスが飛散した。
(比較例4)
実施例1で作製した液状硬化性樹脂組成物のシリコーン微粒子を、シリカ超微粒子(日本アエロジル社製、商標「AEROSIL R972」、数平均粒子径:16nm)に置き換えた液状硬化性樹脂組成物を調製した。実施例1と同様にしてレーザー彫刻用シート状印刷原版を作製した。
その後、炭酸ガスレーザー彫刻機を用いて、表面にパターンを形成した。炭酸ガスレーザーによる彫刻時には、粉末状彫刻カスが多量に発生し、シリンダーの回転時に粉末状彫刻カスがレーザー彫刻機内で飛散した。また、レーザー彫刻機から取り出したシート状印刷版上に粉末状彫刻カスが残存し、少しの振動で粉末状彫刻カスが飛散した。
(比較例5)
実施例1と同じ樹脂(a)100質量部、有機化合物(b)として、フェノキシエチルメタクリレート(分子量190)10質量部及びポリピレングリコールモノメタクリレート(分子量400)10質量部、シリコーン微粒子(c)(信越化学工業社製、商標「X−52−854」)0.2質量部、光重合開始剤としてベンゾフェノン0.5質量部及び2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン0.6質量部、安定剤として2,6−ジ−t−ブチルアセトフェノン0.5質量部を混合して硬化性樹脂組成物を調製した。得られた硬化性樹脂組成物は、20℃において液状であった。
実施例1と同様の方法で、レーザー彫刻により表面にパターンを形成した。レーザー彫刻時に発生した彫刻カスは、液状で多量に発生し、レーザー彫刻機のシリンダー回転方向に飛散した。版面に残存した彫刻カスは、5MPaスチームジェットで簡単に除去することができた。
(比較例6)
実施例1と同じ樹脂(a)100質量部、有機化合物(b)として、フェノキシエチルメタクリレート(分子量190)10質量部及びポリピレングリコールモノメタクリレート(分子量400)10質量部、シリコーン微粒子(c)(信越化学工業社製、商標「X−52−854」)70質量部、光重合開始剤としてベンゾフェノン0.5質量部及び2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン0.6質量部、安定剤として2,6−ジ−t−ブチルアセトフェノン0.5質量部を混合して硬化性樹脂組成物を調製した。
実施例1と同様の方法で、レーザー彫刻により表面にパターンを形成した。レーザー彫刻時に発生した彫刻カスは、粉末状で多量に発生し、レーザー彫刻機のシリンダー回転時に飛散し、レーザー彫刻機内の視界が低下した。彫刻が終了し、真空吸引によって視界が正常に戻るまでは、シート状印刷版を彫刻機から取り出すことができなかった。
レーザー彫刻技術において製造される印刷版において、機械的強度を十分に確保でき、レーザー彫刻時において多量に発生する液状彫刻カスが飛散することなく除去し易く、版面に残存する粉末状彫刻カスが大気中に飛散し難い硬化性樹脂組成物としての産業上利用可能性を有する。

Claims (12)

  1. シート状又は円筒状支持体と、
    硬化性樹脂組成物を前記シート状又は円筒状支持体上で硬化して得られる厚さ0.1mm以上10mm以下の樹脂硬化物層と、
    を備え、
    前記硬化性樹脂組成物が、印刷原版又は印刷版製造用の硬化性樹脂組成物であって、
    数平均分子量1000以上30万以下の樹脂(a)100質量部に対し、数平均分子量が1000未満で重合性不飽和基を有する有機化合物(b)10〜500質量部、数平均粒子径が0.1μm以上10μm以下のシリコーン微粒子(c)0.5〜50質量部を含有し、
    前記シリコーン微粒子(c)が3次元架橋したシロキサン骨格を有し、2級シロキサン結合しているケイ素原子数の、3級シロキサン結合又は4級シロキサン結合しているケイ素原子数に対する比が250以下である、
    レーザー彫刻印刷原版。
  2. 前記シリコーン微粒子(c)は、熱分解特性において、空気雰囲気下での熱重量分析における重量半減温度が900℃以上である、請求項1記載のレーザー彫刻印刷原版
  3. 前記シリコーン微粒子(c)の真比重が1.05以上1.5以下である、請求項1又は2記載のレーザー彫刻印刷原版
  4. 前記シリコーン微粒子(c)は、球状微粒子を50%以上含有する、請求項1〜3のいずれか1項記載のレーザー彫刻印刷原版
  5. 前記シリコーン微粒子(c)の粒子径分布の標準偏差が、数平均粒子径の200%以下である、請求項1〜4のいずれか1項記載のレーザー彫刻印刷原版
  6. 前記シリコーン微粒子(c)は、トリアルコキシシリル誘導体を縮合させて形成された微粒子である、請求項1〜5のいずれか1項記載のレーザー彫刻印刷原版
  7. 前記硬化性樹脂組成物が、光重合開始剤を更に含有する、請求項1〜6のいずれか1項記載のレーザー彫刻印刷原版
  8. 前記硬化性樹脂組成物が、20℃において液状の熱重合開始剤を更に含有する、請求項1〜7のいずれか1項記載のレーザー彫刻印刷原版
  9. 前記硬化性樹脂組成物が、20℃において液状である、請求項1〜8のいずれか1項記載のレーザー彫刻印刷原版
  10. 前記円筒状支持体は、厚さ0.1mm以上2mm以下の中空円筒状支持体であって、
    前記中空円筒状支持体は、繊維強化プラスチック製スリーブ又は金属製スリーブである、請求項1〜9のいずれか1項記載のレーザー彫刻印刷原版。
  11. 前記シート状又は円筒状支持体と、前記樹脂硬化物層との間にクッション層を更に備える、請求項1〜10のいずれか1項記載のレーザー彫刻印刷原版。
  12. 請求項1〜11のいずれか1項記載のレーザー彫刻印刷原版の表面に、レーザー彫刻によりパターンが形成されたレーザー彫刻印刷版。
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