JP2007160691A - 多孔体の製造方法および多孔体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】厚さ方向に連通性を有する微小孔が多数存在する多孔体の製造方法であって、ハードセグメントとソフトセグメントを有する熱可塑性樹脂からなる中間層を少なくとも1層含み、中間層の両側に熱可塑性樹脂組成物からなる両側外層を積層させた少なくとも3層構造の積層体を作製する工程と、得られた積層体に超臨界状態または亜臨界状態の流体を含浸させた後に、該超臨界状態または亜臨界状態から解放して前記流体を気化させることにより前記積層体に微小孔を形成して多孔化する工程と、前微小孔を形成した後に前記両側外層を剥離する工程とを備える。
【選択図】図1
Description
例えば、特開平5−25305号公報(特許文献1)では超高分子量ポリエチレンと溶媒を混練・シート化し、延伸処理したのち溶媒を抽出することにより多孔膜が得られることが提案されている。
しかしながら、当該方法では、段落番号0045等で記載されているように溶媒の抽出が洗浄用の有機溶媒で洗浄することにより行われるため、有機溶媒が大量に必要となり、環境上の観点から好ましくない。
同じく、特開2004−95550号公報(特許文献3)でもリチウム二次電池用セパレーターとして用いる多孔性フィルムを、熱可塑性樹脂と充填剤とを含む樹脂組成物から成形したシートを少なくとも一軸方向に延伸することにより得ている。
しかしながら、これらの方法により得られる多孔性フィルムまたはシートでは全層に充填剤が存在していることにより単位面積あたりの質量(坪量)が大きくなるため、軽量化に向けた改善を行う余地がある。
一般的に単一ポリマーによる開孔延伸法と呼ばれている当該方法においては、製造工程において有機溶媒を必要とせず、かつ充填剤が存在していないので単位面積あたりの質量(坪量)も大きくはならない。しかしながら、該方法は結晶制御が非常に難しく、延伸温度や延伸倍率、多段延伸等の延伸条件において好ましい多孔構造を得ることができる条件が非常に狭いため(0025欄〜0028欄等)、工業的規模で生産する際の工程管理を考えると好ましくない。
当該方法は細かくて均質な発泡が得られ、また二酸化炭素や窒素等の不活性ガスの亜臨界または超臨界流体を用いれば環境への負荷が極めて少ないという利点がある。
しかしながら、表面付近では急激な圧力の低下等が起きたときに過飽和状態とならず、直ちに拡散・蒸発により表面から気体が放出されるため、発泡を生じない領域、所謂、スキン層が必ず存在する。このために、厚さ方向に連通性を有する微小孔をもつ多孔体を作ることは出来なかった。
さらに、本発明は全体に均等な連通孔を有し、かつ単位面積あたりの質量が小さい多孔体を提供することを課題としている。特に電池用セパレーターとして使用した場合、電池重量を大きく増加させることなく、電解液の保持が良好であり、安全性が高い非水電解質2次電池を提供することができるセパレーターおよび電池を提供することを課題とするものである。
ハードセグメントとソフトセグメントを有する熱可塑性樹脂組成物からなる中間層を少なくとも1層含み、中間層の両側に熱可塑性樹脂組成物からなる両側外層を積層させた少なくとも3層構造の積層体を作製する工程と、
得られた積層体に超臨界状態または亜臨界状態の流体を含浸させた後に、該超臨界状態または亜臨界状態から解放して前記流体を気化させることで前記積層体に微小孔を形成する工程と、
前記積層体に微小孔を形成した後に前記両側外層を剥離する工程を備えることを特徴とする多孔体の製造方法を提供している。
本発明者らは、亜臨界または超臨界流体を利用して多孔化する研究・実験を行い種々の検討を加えたが、前記した表面にスキン層が生じるという問題は回避できなかった。そこで、スキン層が表面にのみ生じることに着目して発想の転換を図り、スキン層の形成を抑えるのではなく、形成されたスキン層を剥離することにより厚さ方向に連通性を有する微小孔が多数存在する多孔体が得られることを知見した。
すなわち、亜臨界または超臨界流体を利用して多孔化する層の両側外層の表面に無孔層(スキン層)を設けて、中間層に蓋をする構成とすることにより、積層体に亜臨界または超臨界流体を含浸させ次いで急激な圧力の低下等を発生させた時に、中間層の表面において過飽和状態を作り出すことができ、中間層の表面にスキン層を生じさせないことに成功した。その後、表面にはスキン層が形成されて蓋の役割をする両側外層を剥離することで、両側の表裏両面に開口を有し、厚さ方向に連通する微小孔を有する多孔体を得ることができる。
ハードセグメントは層の強度を保つ役割をし、ソフトセグメントは亜臨界または超臨界流体を含浸させる役割を有する。ぞれぞれのセグメントが前記役割を確実に果たすためには、ハードセグメントの比率が5〜95質量%であり、ソフトセグメントの比率が95〜5質量%であることが好ましい。ハードセグメントの比率を5質量%未満であると、5質量%未満であると中間層が柔らかすぎて強度が保てず、また亜臨界または超臨界流体が中間層にとどまることができず脱気してしまい、中間層が多孔化できないおそれがある。一方、ソフトセグメントの比率が5質量%未満であると、亜臨界または超臨界流体の含浸量が少なくなり、十分な連通性を得ることが困難となる。
なお、ソフトセグメントの比率は、好ましく90〜10質量%、特に70〜20質量%が好ましい。
前記スチレン系熱可塑性樹脂としては、ハードセグメントとして、スチレンもしくはメチルスチレンなどのスチレン誘導体、インデンまたはビニルナフタレン等、好ましくはポリスチレンを用い、ソフトセグメントとしてポリブタジエンもしくはポリイソプレンなどの共役ジエン系ポリマー、またはエチレン/ブチレン共重合体、エチレン/プロピレン共重合体もしくはポリイソブテンなどのポリオレフィン系エラストマーを用いたスチレン系熱可塑性樹脂が挙げられる。
前記ポリアミド系熱可塑性樹脂としては、ハードセグメントとして、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12等のポリアミドまたはこれらの共重合体を用い、ソフトセグメントとしてポリテトラメチレングリコールやポリ(エチレン/プロピレン)ブロックポリグリコールなどのポリアルキレングリコールなどを用いたポリアミド系熱可塑性樹脂が挙げられる。
・エチレンの単独重合体樹脂、エチレンを主成分とし炭素数3以上のα−オレフィンを副成分とする共重合体樹脂;
・プロピレンの単独重合体樹脂、プロピレンを主成分としこれとエチレンもしくは炭素数4以上のα−オレフィンとの共重合体樹脂;
・1−ブテンの単独重合体樹脂、1−ブテンを主成分としこれとエチレン、プロピレンもしくは炭素数5以上のα−オレフィンとの共重合体樹脂;
・4−メチル−1−ペンテンの単独重合体樹脂、4−メチル−1−ペンテンを主成分とし、これとエチレン、プロピレン、1−ブテンもしくは炭素数6以上のα−オレフィンとの共重合体樹脂;
・上記樹脂の変性物
が挙げられる。これら2種類以上が混合されていても良い。
ジエン系ゴムとしては、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、プロピレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム等が挙げられる。
水素添加ジエン系ゴムは、ジエン系ゴム分子の二重結合の少なくとも一部分に水素原子を付加させてなるものである。
オレフィンエラストマーは、2種類または3種類以上のオレフィンと共重合しうるポリエンを少なくとも1種加えた弾性共重合体であり、オレフィンとしてはエチレンもしくはプロピレン等のα−オレフィン等が使用され、ポリエンとしては1,4−ヘキサジエン、環状ジエン、ノルボルネン等が使用される。好ましいオレフィンエラストマーとしては、例えばエチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、エチレン−ブタジエン共重合体ゴム等が挙げられる。
前記オレフィン系熱可塑性樹脂のなかでも、ハードセグメントとしてプロピレン系樹脂を有するオレフィン系熱可塑性樹脂がより好ましい。特に、ハードセグメントとしてプロピレン系樹脂を有し、ソフトセグメントとしてエチレン−プロピレンゴムを5〜95質量%の割合で有するオレフィン系熱可塑性樹脂が好ましい。
プロピレン系樹脂には、プロピレン系単独重合体よりも融点が低い樹脂を混合することもできる。そのような融点が低い樹脂として、高密度あるいは低密度ポリエチレン等を例示することができ。その配合量は2〜50質量%であることが好ましい。
エチレン−プロピレンゴムとしては、ゴム全体に対するエチレン含有率が7〜80質量%であるエチレン−プロピレンゴムが好ましく、10〜60質量%であるエチレン−プロピレンゴムがより好ましい。
エチレン−プロピレンゴムの含有量またはエチレン−プロピレンゴム中のエチレン含有率を調整することにより中間層を構成する樹脂組成物全体に対するエチレン含有率を5〜95質量%とすることが好ましい。
ソフトセグメントを構成するエチレン−プロピレンゴム等の軟質成分の分散性の観点から、重合型ポリマーを用いる方が好ましい。
同様にプロピレンホモポリマーにエチレンプロピレンゴムやポリエチレン等を二軸押出機等の混練機を使ってブレンドすることにより、好ましいソフトセグメントの含有率をもつオレフィン系熱可塑性樹脂を得ることができる。
該両側外層を構成する熱可塑性樹脂は、その剥離の容易さから中間層を構成する樹脂組成物と適度な相溶性と非相溶性を有する樹脂であることが好ましい。すなわち、両側外層を構成する熱可塑性樹脂が中間層を構成する樹脂組成物と相溶性が良すぎる場合には両側外層を剥離により除去しにくくなるからであり、中間層を構成する樹脂組成物と相溶性が悪すぎる場合には、両側外層がいわゆる蓋の役割を果たさず、臨界または超臨界流体を含浸させたのち急激な圧力の低下等を発生させたときに両側外層と中間層の界面において前記流体が気体となって放出してしまうため、中間層の表面に孔を形成できなくなる可能性があるからである。
例えば、中間層にポリオレフィン系樹脂を用いる場合、両側外層がポリエステル樹脂やナイロン樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体から構成されていることが好ましい。
両側外層が凝集剥離タイプである場合、両側外層を構成する熱可塑性樹脂としては例えば低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブテン樹脂またはポリブタジエン樹脂など相溶性の異なるオレフィン系樹脂を溶融混合することによって得られる熱可塑性樹脂が挙げられる。また、前記オレフィン系樹脂とオレフィン系および/またはスチレン系エラストマーとを混合することによって得られる熱可塑性樹脂組成物であってもよい。このとき、樹脂相互または樹脂とエラストマーの相溶性を上げるために、双方の樹脂に相溶性を有する共重合体を第3成分として添加するか、一方または双方の樹脂を互いに相手の溶解性に近づける為に共重合体にして樹脂間の相溶性を増し、該樹脂混合物の強度を向上することもできる。
両側外層が界面剥離タイプである場合、両側外層を構成する熱可塑性樹脂としては、低結晶性ポリオレフィン、ポリプロピレン−ポリエチレンのブレンドポリマーアロイ、エチレン−酢酸ビニル共重合体またはポリエチレン樹脂などが挙げられる。その他エチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合体を用いることもでき、前記不飽和カルボン酸エステルとしては例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチルまたはメタクリル酸エチルなどが挙げられる。
両側外層が相間剥離タイプである場合、両側外層としては例えば低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、メタロセン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタアクリル酸共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリプロピレン、変性ポリエステル、ポリブテン−1、酸変性ポリオレフィン、環状オレフィン、スチレングラフト共重合体およびそれらの2種以上からなるブレンド樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む2〜7層の共押出しフィルムが挙げられる。
本発明における両側外層は、上述のような中間層からの剥離に適した剥離層に更に支持等の役割を果たす支持層を1または2層以上積層してもよい。
なお、フィラーを配合する場合は、無機フィラーおよび有機フィラーの何れのフィラーも使用でき、1種または2種以上を組み合わせて使用できる。
無機フィラーは樹脂中の分散性向上のため、表面処理剤で無機フィラーの表面を被覆して疎水化してもよい。この表面処理剤としては、例えばステアリン酸またはラウリル酸等の高級脂肪酸またはそれらの金属塩を挙げることができる。
該有機フィラーとしては、超高分子量ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、メラミン、ベンゾグアナミンなどの熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂が挙げられる。これらの中でも、特に架橋させたポリスチレンなどが好ましい。
具体的にはプラスチック配合剤(株式会社 大成社発行 昭和62年11月30日 第2版発行)P31〜P64、P83、P97〜P100、P154〜P158、P178〜P182、P271〜P275、P283〜294に記載の化合物等が挙げられる。より具体的には、P29〜64の可塑剤の項目に記載され、P49からP50の表4と、P52〜P54の表6に列挙されている可塑剤(TCP,TOP,PS,ESBO等)が使用可能である。また新・界面活性剤入門(三洋化成工業株式会社発行 1992年8月 第3版発行)に挙げられている界面活性剤類の化合物も可塑剤として好適に使用できる。
例えば、中間層が組成の異なる複数層から構成されていてもよい。具体的には、フィラーを含有しない層とフィラーを含有する層が交互に積層されている場合、またはフィラーを含有しない層が連続して積層されている場合等が挙げられる。
また、両側外層の一方または両方が組成の異なる複数層から構成されていてもよい。さらに、2つの両側外層のそれぞれの層の組成または構造は同一であってもよいし、異なっていても良い。
trが0.05より小さければ、両側外層の実質的な厚みが極端に薄くなってしまい、両側外層を取り除きにくくなる。また、両側外層の厚みが極端に薄いと蓋の役割を果たさない。すなわち、超臨界状態または亜臨界状態の流体を含浸させ、次いで超臨界状態または亜臨界状態から逸脱させたときに、中間層の表面から気体が薄い両側外層を通り抜けて拡散・蒸発により放出されるため、中間層に発泡を生じない領域、いわゆるスキン層が生じるおそれがあるので好ましくない。一方、trが0.95より大きければ、中間層が極端に薄くなってしまい。この場合も両側外層を取り除きにくくなる。
なお、本発明においていずれかの工程で延伸処理を行う場合には、全層の厚みtに対する両側外層の厚みの合計toの割合tr(=to/t)は延伸処理後における測定値から算出されるものである。
まず、各層を構成する成分をヘンシェルミキサー等の粉体混合機や、一軸あるいは二軸混練機もしくはニーダー等の混練機を用いて混合し、一旦造粒してもよい。 両側外層を構成する樹脂組成物または造粒物と、中間層を構成する樹脂組成物または造粒物とを用いて前記積層体を作製する。
積層体の作製方法としては、熱接着法、押出しラミネーション法、ドライラミネーション法、共押出法等が挙げられる。なかでも、Tダイ成形法またはインフレーション成形法による共押出法が特に好適に用いられる。これは、中間層および両側外層を別々に製膜してから熱ロールなどで融着させる方法は均一な接着強度で接着させにくく、皺などの欠陥も発生しやすいからである。特にフィルムなどの厚さが薄い場合はこの傾向が顕著であるため、通常は共押出法を用いる。
中間層の表面においては両側外層の表面がスキン層となって、蓋の役割を果たすため、中間層の表面において過飽和状態を作り出すことができ、中間層の表面にスキン層を生じさせることなく厚さ方向に連通性を有する微小孔を形成できる。
本工程においては、通常中間層と共に前記両側外層にも超臨界状態または亜臨界状態で含浸させた流体が該状態から解放された時に微小孔が形成される。さらに、両側外層の表面においてはスキン層が形成されてしまうが、該両側外層は後の工程で取り除かれるので厚さ方向に連通性は損なわれない。
なかでも好ましい気体としては、二酸化炭素、窒素、亜酸化窒素、エチレン、エタン、テトラフルオロエチレン、パーフルオロエタン、テトラフルオロメタン、トリフルオロメタンおよび1,1−ジフルオロエチレンが挙げられる。 このうち不活性ガスである二酸化炭素と窒素は非可燃性であり非毒性であり、かなりの安価であり、さらに、ほとんどのポリマーに対して非反応性であるという点で特に好ましい。
積層体に超臨界状態または亜臨界状態の流体を含浸させる具体的な方法は公知の方法に従って良い。
例えば、積層体をオートクレーブ等の耐圧容器に入れ、上に例示したような流体にして積層体に含浸させる気体状または液体状の物質を封入する。ついで、耐圧容器内の温度または/および圧力を上げて超臨界状態または亜臨界状態をつくる。すなわち、耐圧容器内の温度を0.5Tc以上、好ましくは臨界温度以上に上げるか、または/および、耐圧容器内の圧力を0.5Pc以上、好ましくは臨界圧力以上に上げる。特に、耐圧容器内の温度を臨界温度以上に上げるとともに圧力を臨界圧力以上に上げることがより好ましい。
窒素を使用した場合、窒素の臨界温度が126.2K、臨界圧力が3.40MPaであるから、温度は常温のまま圧力を3MPa以上とすることが好ましい。
亜酸化窒素を使用した場合、亜酸化窒素の臨界温度が309.6K、臨界圧力が7.24MPaであるから、温度は常温のまま圧力を7MPa以上とすることが好ましい。
エチレンを使用した場合、エチレンの臨界温度が282.4K、臨界圧力が5.04MPaであるから、温度を283.2K以上とし、圧力を5MPa以上とすることが好ましい。
エタンを使用した場合、エタンの臨界温度が305.2K、臨界圧力が4.88MPaであるから、温度は常温のまま圧力を4.5MPa以上とすることが好ましい。
このとき温度または圧力は急激に常温または常圧まで戻しても良いし、徐々に下げていっても良い。また、常温以下の温度または常圧以下の圧力にまで一端下げてから、常温または常圧まで戻しても良い。
両側外層を剥離方法は特に限定されず公知の手段を用いてよい。例えば両側外層を引きはがしたり、削り取ったりする方法が挙げられる。なかでも、両側外層を引きはがすピーリング方法で剥離することが好ましい。両側外層を剥離する際は加熱または冷却などの前処理を行ってもよく、剥離剤などを用いてもよい。
特に、両側外層を剥離する前に積層体を延伸処理することが好ましい。延伸処理することにより、中間層の微小孔を連通性させることができる。
延伸温度は特に限定されるものではないが、両側外層を構成する熱可塑性樹脂の融点よりも低い温度、好ましくは融点より30℃以下で延伸することが好ましい。延伸温度が融点に近づきすぎると、両側外層が取り除きにくくなる可能性が生じる。
これらの処理は公知方法で行うことができる。例えば前記熱処理は、加熱ロールによる接触加熱、オーブン中での空気中加熱等、公知の任意の方法で行うことができる。また、前述の延伸装置を転用することも可能である。熱処理温度は、中間層および両側外層を構成する熱可塑性樹脂の融点未満の任意の温度で行うことができるが、好ましくは100℃以上で前記樹脂の融点未満、より好ましくは110℃以上130℃以下としている。
本発明の多孔体の物性は、中間層を構成する樹脂の種類、亜臨界または超臨界流体を含浸する条件、延伸条件(延伸倍率、延伸温度等)等によって自由に調整することができる。
また、本発明の多孔体は、ソフトセグメントとして少なくともエチレン−プロピレンゴムを含み、ハードセグメントとしてポリプロピレン樹脂を含んでいることが好ましい。このようなポリプロピレン樹脂組成物を用いると、従来のポリエチレン樹脂のみからなる多孔性フィルムより高い耐熱性を発揮することができる。つまり、高温に曝されてもその形状が保持できる。
なお、平均厚みは、1/1000mmのダイアルゲージにて面内を不特定に5箇所測定し、その平均を算出して得られる値である。
これは透気度が10,000秒/100mlより大きければ、測定上透気度の数値は出るものの、連通性のかなり乏しい構造であることを意味しているので、実質的には連通性がないことに等しいとしてもよい。
前記透気度は、好ましくは1〜5,000秒/100ml、より好ましくは50〜4,000秒/100ml、特に、100〜2,000秒/100mlであることが好ましい。
なお、透気度はJIS P 8117に準拠して測定している。
前記一定範囲の秤量を示すためには、本発明の多孔体の全質量に対するフィラーの質量の割合、つまりフィラーの含有率が0〜40質量%であることがより好ましく、0〜20質量%であることがさらに好ましい。
なかでも、本発明の多孔体は各種電子機器等の電源として利用されるリチウムイオン二次電池等の非水電解液電池用セパレーターとして好適に用いられる。
本発明においては、多孔化の手段として亜臨界または超臨界流体を用い、有機溶媒を大量に使用することがないので、環境に対する負荷を軽減できる。特に亜臨界または超臨界流体として二酸化炭素や窒素などの無毒な不活性ガスを用いればさらに環境に対する負荷を軽減できる。
さらに、本発明の多孔体の製造方法は、製造条件の幅が広く、工程管理が行いやすいという利点がある。
また、可塑剤や溶媒を除去することにより多孔化する方法においては当該可塑剤や溶媒が除去されずに残存する可能性があるが、本発明では亜臨界または超臨界流体を利用することから中間層において前記のような残存の問題は生じず、不純物のより少ない多孔体が製造できる。
本発明の多孔体11の製造方法は、
熱可塑性樹脂からなる無孔の両側外層3、4の間に、ポリプロピレン樹脂組成物からなる中間層2を配置して積層体1を作製する第1工程と、
前記工程で得られた積層体1に、超臨界状態または亜臨界状態の流体を含浸させ、次いで該状態から解放して前記流体を気化させる第2工程と、
積層体を少なくとも一軸方向に延伸する第3工程と、
両側外層3、4を剥離する第4工程とからなる。
エチレン−プロピレンゴムとしては、ゴム全体に対するエチレン含有率が30〜55質量%であるエチレン−プロピレンゴムが特に好ましい。
エチレン−プロピレンゴムの含有量およびエチレン−プロピレンゴム中のエチレン含有率を調整することにより、中間層を構成するポリプロピレン樹脂組成物全体に対するエチレン含有率が5〜70質量%となることが好ましく、5〜50質量%となることがより好ましく、10〜30質量%となることが特に好ましい。
なお、両側外層を構成する樹脂組成物または中間層を構成する樹脂組成物が2成分以上含む場合は予め混合してペレット化しておくのが好ましい。
より具体的には、二酸化炭素を使用する場合は圧力を7Mpa以上、好ましくは20Mpa以上に上げている。窒素を使用する場合は圧力を3Mpa以上、好ましくは15Mpa以上に上げている。耐圧容器内の温度は常温でよいが、加熱することもできる。
その後、耐圧容器内の圧力または温度を常圧または常温に戻すことにより、含浸された二酸化炭素または窒素を気化させる。耐圧容器内の圧力または温度は漸減させてもよいし、一気に常圧または常温に戻してもよい。
この第2工程では、中間層2および両側外層3、4の内部は多孔化されるが、両側外層3、4の表面では含浸したガスは外面から解放されて孔は形成されず、いわゆるスキン層5が形成される。
第3工程の延伸方法は、縦方向(長手方向)に延伸してから横方向に延伸する逐次二軸延伸が好ましい。延伸倍率としては、面積倍率で4〜16倍、好ましくは4〜9倍とする。延伸温度は40〜80℃であることが好ましい。
また、中間層2がポリプロピレン樹脂からなるため、従来のポリエチレン樹脂のみからなる多孔性フィルムより高い耐熱性を発揮することができる。
さらに、中間層2にはフィラーを配合しないことで、前記多孔体11は25μmあたりの厚みに換算したときの単位面積あたりの質量(秤量という)を10〜30g/m2、好ましく10〜20g/m2と軽量化されている。
本発明の多孔体11を電池用セパレーターとして使用する場合は、透気度を50〜500秒/100mlとしている。これは、透気度を50秒/100ml未満にすると、電解液保持性が低下して二次電池の容量が低くなったり、サイクル性が低下したりするおそれがある。一方、透気度が500秒/100mlを超えると、イオン伝導性が低くなり十分な電池特性を得ることができないことによる。好ましくは100〜300秒/100mlである。
また、空孔率は30〜70%としている。これは、空孔率が30%未満ではイオン透過性が低く十分な電池性能を得ることが困難である一方、空孔率が70%を越えると電池の安全性の観点から好ましくないことによる。より好ましくは35〜65%である。
正極板21、負極板22の両極をセパレーター10を介して互いに重なるようにして渦巻き状に捲回し、巻き止めテープで外側を止めて捲回体としている。この渦巻き状に巻回する際、セパレーター10は厚さが5〜40μmであることが好ましく、5〜30μmであることがより好ましい。厚みが5μm未満であるとセパレーターが破れやすくなり、40μmを越えると電池用セパレーターとして所定の電池缶に捲回して収納する際、電池面積が小さくなり、ひいては電池容量が小さくなるからである。
なかでも、エチレンカーボネート1質量部に対してメチルエチルカーボネートを2質量部混合した溶媒中に六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1.4mol/Lの割合で溶解した電解質が好ましい。
負極に炭素材料を用いる場合、炭素材料としてはリチウムイオンをドープ、脱ドープできるものであればよく、例えば黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭などを用いることができる。
(実施例1)
両側外層を構成する熱可塑性樹脂組成物としてポリエステル樹脂(PETG、イーストマンケミカル製「イースターPETG6763」)を準備した。
中間層を構成する熱可塑性樹脂組成物としてポリプロピレンにエチレンプロピレンゴムを含有させた熱可塑性樹脂組成物(三菱化学株式会社製「Zelas5013」)を準備した。
層比が外層/中間層/外層=35/30/35となるように調整しながら、多層成型用のTダイを用いて200℃の温度下で成形し、2種3層の積層体を得た。
得られた積層体を圧力容器に仕込み、常温下で圧力容器内に不活性ガスである二酸化炭素を封入した。ついで圧力を24MPaまで上げて二酸化炭素を亜臨界状態または超臨界状態とし、この状態を1時間保持して積層体に亜臨界状態または超臨界状態の二酸化炭素を含浸させた。その後、圧力容器のバルブを全開放して容器内の圧力を解放した。
得られた積層体をストレッチャーにて延伸温度65℃で、縦方向(長手方向)に2倍、横方向に2倍の延伸倍率で逐次延伸を行い、その後125℃で熱固定を行った。
その後、両側外層を剥離して、実施例1の多孔体を得た。
使用する樹脂、層比、流体含浸条件、延伸条件を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして多孔体を得た。
比較例1は前記特許文献1の特開平5−25305号公報の実施例1に記載の方法で多孔膜を作製した。
即ち、重量平均分子量が2.0×106の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)20質量%と、重量平均分子量が3.9×105の高密度ポリエチレン(HDPE)66.7質量%と、メルトインデックス(190℃、2.16kg荷重)2.0g/10分の低密度ポリエチレン(LDPE)13.3質量%とを混合した原料樹脂15質量部と、流動パラフィン(64cst/40℃)85質量部とを混合し、ポリエチレン組成物の溶液を調製した。 次に、このポリエチレン組成物の溶液100質量部に、2,5−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(「BHT」、住友化学工業(株)製)0.125質量部と、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシルフェニル)−プロピオネート〕メタン(「イルガノックス1010」、チバガイギー製)0.25質量部とを酸化防止剤として加えた。この混合液を撹拌機付のオートクレーブに充填し、200℃で90分間撹拌して均一な溶液を得た。
この溶液を直径45mmの押出機により、Tダイから押出し、冷却ロールで引取りながらゲル状シートを成形した。
得られたシートを二軸延伸機にセットして、温度115℃、延伸速度0.5m/分で5
×5倍に同時二軸延伸を行った。得られた延伸膜を塩化メチレンで洗浄して残留する流動パラフィンを抽出除去した後、100℃で30秒熱セットすることによってポリエチレン微多孔膜を得た。
比較例2は前記特許文献3の特開2004−95550号公報の実施例1に記載の方法で多孔性フィルムを作製した。
高密度ポリエチレン(株式会社プライムポリマー製「HI−ZEX7000FP」、密度;0.956g/cm3、メルトフローレート;0.04g/10分)100質量部、軟質ポリプロピレン(出光石油化学社製「PER R110E」)15.6質量部、硬化ひまし油(豊国製油株式会社製「HY−CASTOR OIL」、分子量938)9.4質量部、硫酸バリウム(堺化学社製「B−55」)187.5質量部をブレンドしてコンパウンドを行った。
次に、得られたコンパウンドを用いて温度210℃でインフレーション成形を行い、原反シートを得た。
次に得られた原反シートを70℃でシートの長手方向(MD)に1.23倍、次いでll5℃で横方向(TD)に2.86倍の逐次延伸を行い、多孔性フィルムを得た。
中間層を構成する樹脂として、エチレン−プロピレンゴムを含有するポリプロピレン樹脂組成物の代わりに、ポリプロピレンホモポリマーまたはエチレン−プロピレンゴムを用いた以外は、実施例1と同様にして多孔体を得た。
「PETG」;ポリエステル樹脂(イーストマンケミカル製「イースターPETG6763」)
「EVAL」;エチレン−ビニルアルコール共重合体((株)クラレ製「エバールSP292」、密度;1.13g/cm3、メルトフローレート;2.2g/10分)
「ゼラス5013」;ポリプロピレンホモポリマーにエチレン−プロピレンゴムを含有されている重合型のポリプロピレン樹脂組成物(三菱化学株式会社製「Zelas5013」、密度0.88g/cm3、メルトフローレート0.8g/10分)
「ゼラス7023」;ポリプロピレンホモポリマーにエチレン−プロピレンゴムを含有されている重合型のポリプロピレン樹脂組成物(三菱化学株式会社製「Zelas7023」、密度0.88g/cm3、メルトフローレート0.8g/10分)
「F104A」;ポリプロピレンホモポリマー(三井住友ポリオレフィン株式会社製「F104A」、密度0.9g/cm3、メルトフローレート3.2g/10分))
(測定1;厚み)
1/1000mmのダイアルゲージにて、面内を不特定に5箇所測定しその平均を厚みとした。
(測定2;透気度(ガーレ値))
JIS P 8117に準拠して透気度(秒/100ml)を測定した。
(測定3;空孔率)
空孔率は多孔体中の空間部分の割合を示す数値である。空孔率の算出方法は、多孔体の実質量W1を測定し、樹脂組成物の密度と厚みから空孔率0%の場合の質量W0を計算し、多孔体の実質量との差から下記式に基づき空孔率を算出する。
空孔率Pv(%)={(W0−W1)/W0}×100
(測定4;坪量)
坪量は単位面積あたりの質量を表す数値である。その測定方法は、多孔体を10cm角に切り出し、その質量を測定する。厚みによる依存性が大きいので、今回は25μmあたりの厚みに換算し、この操作を3回繰り返し、その平均を坪量とした。
比較例2の多孔性フィルムでは全層に充填剤が存在しているため坪量が33g/m2と重たくなってしまうが、実施例1〜10の多孔性フィルムでは坪量が10〜14g/m2と小さく、軽量化が可能であることがわかった。
2 中間層
3、4 両側外層
10 セパレーター
11 多孔体
20 非水電解質電池
21 正極板
22 負極板
Claims (8)
- 厚さ方向に連通性を有する微小孔が多数存在する多孔体の製造方法であって、
ハードセグメントとソフトセグメントを有する熱可塑性樹脂組成物からなる中間層を少なくとも1層含み、中間層の両側に、熱可塑性樹脂組成物からなる両側外層を積層させた少なくとも3層構造の積層体を作製する工程と、
得られた積層体に超臨界状態または亜臨界状態の流体を含浸させた後に、該超臨界状態または亜臨界状態から解放して前記流体を気化させることで前記積層体に微小孔を形成する工程と、
前記積層体に微小孔を形成した後に前記両側外層を剥離する工程を備えることを特徴とする多孔体の製造方法。 - 前記両側外層の剥離工程の前または後に、少なくとも一軸方向に延伸させて前記微小孔を連通させる工程を含む請求項1に記載の多孔体の製造方法。
- 前記超臨界状態または亜臨界状態で含浸させる流体が、二酸化炭素または窒素である請求項1または請求項2に記載の多孔体の製造方法。
- 請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の方法で製造される多孔体。
- ソフトセグメントとして少なくともエチレン−プロピレンゴムを含み、ハードセグメントとしてポリプロピレン樹脂を含んでいる請求項4に記載の多孔体。
- 請求項4乃至請求項5のいずれか1項に記載の多孔体からなるフィルムで、透気度が1〜10,000秒/100mlであることを特徴とする多孔性フィルム。
- 請求項6記載の多孔性フィルムを用いている電池用セパレーター。
- 請求項7記載の電池用セパレーターを備えることを特徴とする電池。
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