JP2007157646A - 触媒電極および固体高分子型燃料電池 - Google Patents

触媒電極および固体高分子型燃料電池 Download PDF

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Abstract

【課題】触媒担体の電気伝導性、ぬれ性、触媒の粒成長抑制能を制御して発電特性の更なる向上を実現することができ、また触媒利用率を向上して貴金属触媒の低コスト化を実現できる固体高分子型燃料電池の触媒電極を提供する。
【解決手段】触媒2と触媒を担持する触媒担体4からなる固体高分子型燃料電池の触媒電極であって、前記触媒担体がIVA〜VIA族の硼化物、炭化物あるいは窒化物の微粒子からなる固体高分子型燃料電池の触媒電極。前記IVA〜VIA族の硼化物、炭化物あるいは窒化物の微粒子は、表面酸化層を有し、表面酸化層の厚さは50nm以下である。
【選択図】図1A

Description

本発明は固体高分子型燃料電池の触媒電極およびそれを用いた固体高分子型燃料電池に関するものである。
固体高分子形燃料電池は、エネルギー変換効率が高いこと、クリーンであること、静かであることなどから、将来のエネルギー生成装置として期待されている。とりわけ、近年では、自動車や家庭用発電機などの用途だけではなく、そのエネルギー密度の高さから携帯電話やノート型パソコン、デジタルカメラなど小型の電気機器に搭載することによって、従来の2次電池に比べ長時間駆動できる可能性があり、注目を集めている。しかしながら、車載用、家庭用に関しては、まだまだコストの削減が必要であり、その一手段として触媒使用量を減らすことが望まれている。また、小型の電気機器用としての実用化には、システム全体のコンパクト化、発電効率の向上が必須である。
これまで、触媒を微粒子化し、カーボン粒子などに担持させて3次元的に分散させることで、表面積を増大させ、触媒の利用効率を高めるという試みがなされてきた。また、一方では、触媒電極を厚さ数μm程度と非常に薄く形成することで、物質輸送を良くし、触媒電極が電解質膜近傍に集中することで、触媒有効面積を増大させる試みもなされてきた。特に、燃料電池を小型電気機器に搭載する場合においては、電池自体も小型化する必要があり、空気はポンプやブロワーなどを用いずに通気孔から自然拡散によって空気極へ供給される方式(air breathing)が多く採られている。このような場合、空気極での物質輸送が反応の律速となる場合が多く、触媒電極を薄くすることは、有効な手段となると考えられる。
触媒担体としてカーボンを使用したときの技術課題としては、触媒―担体間の接触抵抗低減、触媒の粒成長抑制等が挙げられるが、これに対して特許文献1はTi,Zr,Hf等の炭化物を接着層として設置することが有効であることを開示している。
特開2003−346814号公報
しかしながら、発電特性の更なる向上を実現するためには、さらに詳細な触媒設計を行う必要がある。
本発明は、この様な背景技術に鑑みてなされたものであり、触媒担体の電気伝導性、ぬれ性、触媒の粒成長抑制能を制御して発電特性の更なる向上を実現することができ、また触媒利用率を向上して貴金属触媒の低コスト化を実現できる固体高分子型燃料電池の触媒電極を提供するものである。
また、本発明は、上記の触媒電極を用いて、安定な発電特性を有する固体高分子型燃料電池を安価で提供するものである。
上記の課題を解決する触媒電極は、触媒と触媒を担持する触媒担体からなる固体高分子型燃料電池の触媒電極であって、前記触媒担体がIVA〜VIA族の硼化物、炭化物あるいは窒化物の微粒子からなることを特徴とする。
前記IVA〜VIA族の硼化物、炭化物あるいは窒化物の微粒子は、表面酸化層を有することが好ましい。
前記表面酸化層の厚さは50nm以下であることが好ましい。
前記触媒担体の平均粒径が0.1〜10μmであることが好ましい。
前記触媒は粒径が2nm〜5nmの微粒子であることが好ましい。
前記触媒はナノ構造体であることが好ましい。
前記触媒は、Pt,Al,Si,Ti,V,Cr,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ge,Zr,Nb,Mo,Ru,Rh,Pd,Ag,In,Sn,Hf,Ta,W,Os,Ir,Au,La,Ce,Ndから選ばれる少なくとも一種類の金属からなることが好ましい。
前記触媒は、白金酸化物、あるいは白金酸化物と白金以外の金属酸化物との複合酸化物あるいは前記白金酸化物、含白金複合酸化物を還元処理してなる白金、含白金多元金属、金属白金と白金以外の金属酸化物との化合物、金属白金を含む多元金属と白金以外の金属酸化物との化合物であり、前記白金以外の金属元素としては、Al,Si,Ti,V,Cr,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ge,Zr,Nb,Mo,Ru,Rh,Pd,Ag,In,Sn,Hf,Ta,W,Os,Ir,Au,La,Ce,Ndから選ばれる少なくとも一種類の金属からなることが好ましい。
また、上記の課題を解決する固体高分子型燃料電池は、上記の触媒電極を用いたことを特徴とする。
本発明は、触媒担体の電気伝導性、ぬれ性、触媒の粒成長抑制能を制御して発電特性の更なる向上を実現することができ、また触媒利用率を向上して貴金属触媒の低コスト化を実現できる固体高分子型燃料電池の触媒電極を提供することができる。
また、本発明は、上記の触媒電極を用いて、安定な発電特性を有する固体高分子型燃料電池を安価で提供することができる。
以下、図面を参照して、本発明の固体高分子型燃料電池の触媒電極について、好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部材の材質、寸法、形状、その相対配置等は、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。同様に以下に記述する製造方法も唯一のものではない。
図1Aは、本発明のIVA〜VIA族の硼化物、炭化物あるいは窒化物の微粒子からなる触媒担体4上に触媒微粒子2を形成してなる触媒電極9を有する固体高分子型燃料電池の単セルの断面構成を表す模式図の一例である。
図1Bは、本発明のIVA〜VIA族の硼化物、炭化物あるいは窒化物の微粒子からなる触媒担体4上にナノ構造体触媒3を形成してなる触媒電極9を有する固体高分子型燃料電池の単セルの断面構成を表す模式図の一例である。
図1Aおよび図1Bにおいて、1は固体高分子電解質膜、これを挟んで一対の触媒層、すなわちアノード側とカソード側の触媒電極が配置される。本実施の形態では、両極ともに同じ構成の触媒電極が配置された例であるが、触媒電極の配置構成としてはこれに限定するものではない。例えばカソード側のみに本発明の触媒担体、すなわちIVA〜VIA族の硼化物、炭化物あるいは窒化物の微粒子を適用する場合をも含んでおり、種々の構成を好ましく選択することができる。
本発明の触媒担体上には触媒微粒子2あるいはナノ構造体触媒3を好ましく配置することができる。触媒電極9、10の外側にはガス拡散層5、6と電極7、8が配置される。電極7、8は、一方がアノード電極で、他方がカソード電極である。
固体高分子電解質膜1としては、炭化弗素骨格にスルホン酸基を末端につけた側鎖が結合した構造のパーフルオロスルホン酸ポリマーを好適に使用することができる。パーフルオロスルホン酸ポリマーは炭化弗素骨格が架橋しておらず、骨格部分がファンデルワールス力で結合した結晶を形成しており、さらにスルホン酸基はいくつかが凝集して逆ミセル構造をとっており、ここがプロトンH+の伝導チャネルとなっている。
なお、プロトンH+が電解質膜中をカソード側に向かって移動する場合には水分子を媒体として移動するので、電解質膜は水分子を保有する機能も有していなければならない。
したがって、固体高分子電解質膜の機能としては、アノード側で生成したプロトンH+をカソード側に伝達するとともに未反応の反応ガス(水素および酸素)を通さないこと、所定の保水機能があることである。この条件を満たすものであれば、任意のものを選択して使用することができる。
ガス拡散層5、6は、電極反応を効率良く行わせるために、燃料ガスまたは空気を燃料極または空気極の触媒電極中の電極反応領域へ、面内で均一に充分に供給する。また、アノード電極反応によって生じる電荷を単セル外部に放出させること、さらに反応生成水や未反応ガスを単セル外部に効率よく排出する役割を担うものである。ガス拡散層としては、電子伝導性を有する多孔質体、例えばカーボンクロスやカーボンペーパーを好ましく用いることができる。
次に、本発明における触媒を担持するIVA〜VIA族の硼化物、炭化物あるいは窒化物の微粒子からなる触媒担体について詳細に説明する。
一般に固体高分子型燃料電池で使用される触媒担体は、比表面積が大きいこと、良好な電子伝導体であること、耐酸性を有すること、安価であること等が必要とされる。これらの条件を満足するものとして、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイトナノファイバー等のカーボン系材料が広く使われている。一方、本発明の触媒担体はこれらの条件を満たすとともに、さらに触媒電極のぬれ性向上、触媒凝集抑制の機能を有するものであり、これらの機能は起動特性や電池寿命の向上につながるものである。
すなわち、酸素ポテンシャルΔG<0である金属材料は、その最表面が酸化していると考えてよく、表面は水酸基あるいは吸着水で終端されており、表面は親水性を有している。
例えば、このような材料をアノード側の触媒担体として使用すれば、電解質膜の活性化工程(高含水の定常状態にすること)を行うことなく、初期状態から所望の発電特性を得ることが可能である。また、ある種の貴金属複合ペロブスカイト型酸化物では、酸化雰囲気では貴金属元素(Pd,Co)が酸化物中に固溶し、還元雰囲気では表面に微粒子として偏析して酸化還元を繰り返しても粒成長を起こさないことが知られている。
本発明の触媒担体、例えば表面酸化した窒化チタン微粒子上に設けられた、触媒のPt,Pd,Co等の貴金属超微粒子についても同様の現象が起きることが確認されている。表面酸化層の結晶構造の確認等、詳細については鋭意検討中であるが、この構成で触媒電極を形成した場合、長時間発電を行っても触媒担体上の触媒微粒子の粒成長は確認されななかった。触媒微粒子の粒成長抑制は発電性能の劣化を防止でき、長寿命の燃料電池を提供できる。
本発明における触媒担体は、IVA〜VIA族の硼化物、炭化物あるいは窒化物の微粒子からなるが、IVA〜VIA族の元素としては、例えばTi,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,Wが挙げられる。
触媒担体の表面は酸化されて表面酸化層が形成されているのが好ましく、表面酸化層の厚さは50nm以下、好ましくは5〜20nmであるのが望ましい。
また、触媒担体の平均粒径は0.1〜10μm、好ましくは0.1〜5μmであるのが望ましい。
また、本発明の触媒担体に形成する触媒としては、Pt,Al,Si,Ti,V,Cr,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ge,Zr,Nb,Mo,Ru,Rh,Pd,Ag,In,Sn,Hf,Ta,W,Os,Ir,Au,La,Ce,Ndから選ばれる少なくとも一種類の金属を好適に使用することができる。さらに、触媒としては、白金酸化物、あるいは白金酸化物と白金以外の金属酸化物との複合酸化物、あるいは前記白金酸化物、含白金複合酸化物を還元処理してなる白金、含白金多元金属、金属白金と白金以外の金属酸化物との化合物、金属白金を含む多元金属と白金以外の金属酸化物との化合物であり、前記白金以外の金属元素としては、Al,Si,Ti,V,Cr,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ge,Zr,Nb,Mo,Ru,Rh,Pd,Ag,In,Sn,Hf,Ta,W,Os,Ir,Au,La,Ce,Ndから選ばれる少なくとも一種類の金属を好適に使用することもできる。
前記触媒は粒径が2nm〜5nmの微粒子であることが好ましい。
また、触媒はナノ構造体であることが好ましい。ナノ構造体は、樹枝状構造を有するデンドライト、薄片構造を有するナノフレーク等である。
本発明の触媒担体を用いた固体高分子型燃料電池の作製方法としては様々な方法が考えられるが、図1Aに示した構成の場合を例として、以下にその一例を挙げて説明する。
(1)触媒担体を作製する。
触媒担体として、平均粒径1.2μmの窒化チタン微粒子(日本新金属製)を予め大気中300℃で30minアニールして表面を約20nmの酸化を行い酸化層を形成する。次いで、通常の析出沈殿法や含浸法により白金微粒子触媒を高分散担持し、白金担持酸窒化チタン触媒を得る。
(2)転写用PTFEシート上に触媒電極を形成する。
高分子電解質膜への転写膜としてのPTFEシート上に、ドクターブレードを用いて触媒電極を形成する。ここで使用する触媒スラリーは、(1)で作製した白金担持触媒、Nafion、PTFE、IPA、水の混錬物である。このときのPt担持量は0.3mg/cm2である。
(3)こうして作製した触媒電極によって固体高分子電解質膜(Dupont製Nafion112)を挟みこんでホットプレスを行う。さらにPTFEシートを剥離することにより、一対の触媒電極を高分子電解質膜に転写して、電解質膜と一対の触媒電極を接合する。
(4)この接合体をガス拡散層としてのカーボンクロス(E−TEK製 LT1400−W)、さらに燃料極電極および空気極電極によって挟んで単セルを作製する。
以上、図1Aに示した構成の場合を例として、固体高分子型燃料電池の単セルの作製方法を説明したが、本発明はこの単セル構成の固体高分子型燃料電池に限定されるものではなく、単セルを複数スタックした構成の固体高分子型燃料電池をも含むものである。
次に、上記実施の形態に基づくより具体的な実施例を詳細に説明する。
実施例1
本実施例は、実施形態の中の図1Aに示した固体高分子型燃料電池の構成を本発明の触媒電極およびその製造方法によって作製した例である。
以下、本実施例に係わる固体高分子型燃料電池の製造工程を詳細に説明する。
(工程1)
本工程では本発明の白金担持触媒を作製する。
触媒担体としての窒化チタン微粒子(日本新金属製、平均粒径1.2μm)を予め大気中で350℃、1時間アニールして表面を約20nm酸化した。次いで、通常の析出沈殿法により白金微粒子触媒を前記触媒担体に担持する。すなわち、先ず塩化白金酸を5.5wt%(窒化チタン換算)の仕込み量で蒸留水に溶解し、60℃に加熱しながら1M NaOHを滴下してpHを7.0に調整した溶液に前記触媒担体を加えて攪拌する。
次いで、蒸留水による攪拌洗浄を行った後、試料を吸引ろ過した後、真空乾燥を行う。
大気中で350℃、3時間アニール後、2%水素/N2気流下(0.1MPa)で200℃1時間水素還元を行う。以上により、Pt(5.0wt%)/TiON担持触媒を作製した。
(工程2)
本工程では、工程1で作製した担持触媒を用いて、転写膜としてのPTFEシート上に白金担持酸窒化チタン触媒電極を作製する。
高分子電解質膜への転写膜としてのPTFEシート上に、ドクターブレードを用いて白金担持酸窒化チタン触媒を形成する。ここで使用する触媒スラリーは、前記白金担持カーボン、Nafion、PTFE、IPA、水の混錬物である。このときのPt担持量は0.3mg/cm2であった。この触媒電極をカソード側に用いる。
(工程3)
次に、白金担持カーボン触媒電極を作製した。白金担持カーボン触媒電極は、カソード側と同様にドクターブレードにより作製した。この触媒電極をアノード側に用いる。
(工程4)
工程1〜工程3によって作製した一対の触媒電極で固体高分子電解質膜(Dupont製、Nafion112)を挟み、8MPa、150℃、1minなるプレス条件でホットプレスを行った。
PTFEシートを剥離することにより、一対の触媒電極を高分子電解質膜に転写して、電解質膜と一対の触媒電極を接合した。
(工程5)
本実施例の触媒電極をカソード側、白金担持カーボン触媒電極をアノード側として、この接合体をガス拡散層としてのカーボンクロス(E−TEK製 LT1200−W)、さらに燃料極電極および空気極電極によって挟んで単セルを形成した。
以上の工程によって作製した単セルに関して、図2に示した構成の評価装置を用いて特性評価を行った。アノード電極側に水素ガスを、カソード電極側に空気を流し、電池温度80℃にて放電試験を行った。このとき、比較例1として白金担持カーボン触媒を用いて作製した単セルに関して同様の試験を行った。
まず反応律速領域である900mVでの電流密度を比較すると、本実施例1が4.5mA/cm2であったのに対し、比較例1では2.0mA/cm2であった。さらに、これをPt担持量で除した触媒比活性を比較すると、本実施例1が15.3A/gであったのに対し、比較例1では5.7A/gであった。
また、限界電流領域で比較すると、本実施例1の単セルが590mA/cm2の電流密度が取れるのに対し、比較例1では520mA/cm2であった。すなわち、本実施例1の触媒電極は比較例1の触媒電極に対し、活性分極、抵抗分極および拡散分極のいずれにおいても、特性を大幅に向上にすることができた。
さらに単セルの初期状態を揃えて、起動特性の試験を行ったところ、比較例1のセルでは起動初期に十分な特性が得られなかったのに対し、本実施例1のセルでは起動初期からほぼ定格出力を得ることができた。
以上のように、固体高分子型燃料電池の触媒電極として本実施例1に係わる触媒電極を用いることにより、触媒活性が大幅に向上でき、優れた電池特性を有する燃料電池が得られた。さらに本実施例1にかかわる触媒電極の製造方法は、簡易かつ安価で再現性のよいプロセスであるため、安定な特性を持った固体高分子型燃料電池を低コストで実現できた。
実施例2
本実施例は、図1Bに示した固体高分子型燃料電池の構成を本発明の触媒電極およびその製造方法によって作製した例である。
以下、本実施例に係わる固体高分子型燃料電池の製造工程を、実施例1と構成および製法上異なる工程1と工程2のみ詳細に説明する。
(工程1)
本工程では、転写膜としてのPTFEシート上に酸窒化チタン触媒担体を形成する。触媒担体としての窒化ハフニウム微粒子(日本新金属製、平均粒径4μm)を予め大気中450℃、1時間アニールして表面を約20nm酸化した。高分子電解質膜への転写膜としてのPTFEシート上に、ドクターブレードを用いて酸窒化ハフニウムを膜厚20μm形成する。ここで使用するスラリーは、酸窒化ハフニウム微粒子、PTFE、DMSO、IPA、水の混錬物である。
(工程2)
次いで、このシートをスパッタ装置に移し、Ptターゲットを使用した反応性スパッタ法によりナノ構造をとる白金酸化物触媒を1000nmの厚さに形成した。このときのPt担持量は0.27mg/cm2であった。反応性スパッタは、全圧4Pa、酸素流量比(QO2/(QAr+QO2))70%、投入パワー4.9W/cm2なる条件にて行った。引き続き、このナノ構造をとる白金酸化物触媒を2%H2/He雰囲気(0.1MPa)にて120℃、30分間の還元処理を行った。
さらに、PTFEとNafionの混合懸濁溶液を含浸させることによって、触媒表面に有効に電解質チャネルを形成するとともに適切な撥水処理を行った。
その後の工程は、実施例1と同様に行い、単セルを形成した。
以上の工程によって作製した単セルに関して、図2に示した構成の評価装置を用いて特性評価を行った。アノード電極側に水素ガスを、カソード電極側に空気を流し、電池温度80℃にて放電試験を行った。このとき、比較例1として白金担持カーボン触媒を用いて作製した単セルに関して同様の試験を行った。
まず反応律速領域である900mVでの電流密度を比較すると、本実施例2が7.0mA/cm2であったのに対し、比較例2では2.0mA/cm2であった。さらに、これをPt担持量で除した触媒比活性を比較すると、本実施例が25.9A/gであったのに対し、比較例2では5.7A/gであった。
また限界電流領域で比較すると、本実施例2の単セルが600mA/cm2以上の電流密度が取れるのに対し、比較例2では520mA/cm2であった。すなわち、本実施例2の触媒電極は比較例2の触媒電極に対し、活性分極、抵抗分極および拡散分極のいずれにおいても、特性を大幅に向上にすることができた。
さらに単セルの初期状態を揃えて、起動特性の試験を行ったところ、比較例2のセルでは起動初期に十分な特性が得られなかったのに対し、本実施例2のセルでは起動初期からほぼ定格出力を得ることができた。
以上のように、固体高分子型燃料電池の触媒電極として本実施例2に係わる触媒電極を用いることにより、触媒活性が大幅に向上でき、優れた電池特性を有する燃料電池が得られた。さらに本実施例2にかかわる触媒電極の製造方法は、簡易かつ安価で再現性のよいプロセスであるため、安定な特性を持った固体高分子型燃料電池を低コストで実現できた。
本発明の触媒電極は、触媒担体の電気伝導性、ぬれ性、触媒の粒成長抑制能を制御して発電特性の更なる向上を実現することができるので、安定な発電特性を有する固体高分子型燃料電池に利用することができる。
本発明の触媒担体上に触媒微粒子を形成してなる触媒電極を有する固体高分子型燃料電池の単セルの断面構成を表す模式図の一例である。 本発明の触媒担体上にナノ構造体触媒を形成してなる触媒電極を有する固体高分子型燃料電池の単セルの断面構成を表す模式図の一例である。 固体高分子型燃料電池の評価装置の模式図である。
符号の説明
1 固体高分子電解質膜
2 触媒微粒子
3 ナノ構造体触媒
4 触媒を担持する触媒担体
5、6 ガス拡散層
7、8 電極
9、10 触媒電極
11 膜−電極接合体

Claims (9)

  1. 触媒と触媒を担持する触媒担体からなる固体高分子型燃料電池の触媒電極であって、前記触媒担体がIVA〜VIA族の硼化物、炭化物あるいは窒化物の微粒子からなることを特徴とする固体高分子型燃料電池の触媒電極。
  2. 前記IVA〜VIA族の硼化物、炭化物あるいは窒化物の微粒子は、表面酸化層を有することを特徴とする請求項1に記載の固体高分子型燃料電池の触媒電極。
  3. 前記表面酸化層の厚さは50nm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の固体高分子型燃料電池の触媒電極。
  4. 前記触媒担体の平均粒径が0.1〜10μmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの項に記載の固体高分子型燃料電池の触媒電極。
  5. 前記触媒は粒径が2nm〜5nmの微粒子であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかの項に記載の固体高分子型燃料電池の触媒電極。
  6. 前記触媒はナノ構造体であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかの項に記載の固体高分子型燃料電池の触媒電極。
  7. 前記触媒は、Pt,Al,Si,Ti,V,Cr,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ge,Zr,Nb,Mo,Ru,Rh,Pd,Ag,In,Sn,Hf,Ta,W,Os,Ir,Au,La,Ce,Ndから選ばれる少なくとも一種類の金属からなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかの項に記載の固体高分子型燃料電池の触媒電極。
  8. 前記触媒は、白金酸化物、あるいは白金酸化物と白金以外の金属酸化物との複合酸化物あるいは前記白金酸化物、含白金複合酸化物を還元処理してなる白金、含白金多元金属、金属白金と白金以外の金属酸化物との化合物、金属白金を含む多元金属と白金以外の金属酸化物との化合物であり、前記白金以外の金属元素としては、Al,Si,Ti,V,Cr,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ge,Zr,Nb,Mo,Ru,Rh,Pd,Ag,In,Sn,Hf,Ta,W,Os,Ir,Au,La,Ce,Ndから選ばれる少なくとも一種類の金属からなることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかの項に記載の固体高分子型燃料電池の触媒電極。
  9. 請求項1乃至8のいずれかに記載の触媒電極を用いた固体高分子型燃料電池。
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